認知症ケア支援システム
【課題】患者や介護者に患者の症状に応じた適切な対応策を医師が患者や介護者に提示できるよう医師を支援する。
【解決手段】記憶部203が、認知症の患者またはその患者の介護者に対して行う質問の情報と、認知症に対する対応策情報とを記憶し、対応策情報選択部212が、質問に対する患者または介護者の回答の情報に基づいて、記憶部203に記憶された対応策情報のいずれかを選択し、対応策情報出力部214が、対応策情報選択部212により選択された対応策情報を出力する。
【解決手段】記憶部203が、認知症の患者またはその患者の介護者に対して行う質問の情報と、認知症に対する対応策情報とを記憶し、対応策情報選択部212が、質問に対する患者または介護者の回答の情報に基づいて、記憶部203に記憶された対応策情報のいずれかを選択し、対応策情報出力部214が、対応策情報選択部212により選択された対応策情報を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知症に対する対応策情報を出力する認知症ケア支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
認知症は、85歳以上の4人に1人が発症しているといわれており、超高齢化社会を迎えるにあたり、今後20年で倍増すると予測されている。しかしながら、認知症は完治することがなく、患者及び介護者の心身の負担は非常に大きい。そのため、症状のレベルを正しく診断し、適切な対処を行うことによって、認知症の進行を遅らせ、患者が自信と誇りを回復し、患者と介護者が共に健やかな生活を過ごせるようにすることが望まれている。
【0003】
従来、医師による患者の認知症レベルの診断を支援するシステムが提案されている。例えば、特許文献1には、患者に対して、患者の行動や属性に応じた非定型的な質問を行い、その回答の正誤を判定することによって、患者の認知症レベルを簡易診断すると共に、RO(リアリティー・オリエンテーション)に基づいて患者に刺激を与えることができる認知症診断支援システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、認知症検査を実施するための事前知識、認知症検査の実施における注意事項、認知症検査の実施において医療従事者がなすべき言動、及び医療従事者の言動に対する被検者の応答の評価方法、および、認知症検査における被検者の応答を点数に変換するための点数データを医療従事者に提供することにより、認知症検査に対する習熟度に依存せず、均一な検査結果を得ることができる認知症検査支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−282992号公報
【特許文献2】特開2010−259634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術は、患者の認知症の診断や検査、ROを行うものであるが、認知症に対する対応策を提示するものではない。単に診断結果や検査結果を提示するだけでなく、認知症がもたらす中核症状(健忘、失見当識、失認、失行、失語の症状)、中核症状に伴って現れる周辺症状(不安、抑鬱、幻覚、妄想等の精神症状、および、徘徊、不潔行動等の行動障害)に応じて選択された適切な対応策を提示することが望ましいが、上述した従来技術は、そのような処理を行うものではない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑み、患者や介護者に患者の症状に応じた適切な対応策を医師が患者や介護者に提示できるよう、医師を支援することが可能な認知症ケア支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、本発明の第1の技術手段は、認知症に対する対応策情報を出力する認知症ケア支援システムであって、前記認知症の患者または該患者の介護者に対して行う質問の情報と、前記認知症に対する対応策情報とを記憶する記憶部と、前記質問に対する前記患者または前記介護者の回答の情報に基づいて、前記記憶部に記憶された対応策情報のいずれかを選択する対応策情報選択部と、該対応策情報選択部により選択された対応策情報を出力する対応策情報出力部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記対応策情報選択部は、前記回答の情報、および、前記患者または前記介護者に対して質問がなされた際の、該患者または該介護者の言動または情動の情報に基づいて、前記対応策情報のいずれかを選択することを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の技術手段は、第2の技術手段において、前記患者または前記介護者の言動または情動の情報が選択肢の選択、または、テキスト入力により受け付けられる場合に、前記テキスト入力により受け付けられた前記言動または情動の情報の頻度に基づいて、前記選択肢に含める言動または情動の情報を設定する言動・情動情報選択肢設定部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の技術手段は、第1〜第3のいずれかの技術手段において、前記患者または前記介護者に対してすでに行った質問に対する回答結果の情報に基づいて、前記患者または前記介護者に対して行う質問の情報を検索する質問情報検索部と、該質問情報検索部により検索された質問の情報を出力する質問情報出力部とをさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の技術手段は、第1〜第3のいずれかの技術手段において、前記患者の認知症の進行度情報に基づいて、前記患者または前記介護者に対して行う質問の情報を検索する質問情報検索部と、該質問情報検索部により検索された質問の情報を出力する質問情報出力部とをさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の第6の技術手段は、第4または第5の技術手段において、前記質問情報検索部によりユーザが所望する質問が検索されなかった場合に、前記質問情報出力部は、ユーザにより入力された前記質問を前記患者または前記介護者に対して行う質問として出力することを特徴とする。
【0014】
本発明の第7の技術手段は、第1〜第6のいずれかの技術手段において、前記回答が選択肢の選択、または、テキスト入力のいずれかにより受け付けられる場合に、前記テキスト入力により受け付けられた回答の頻度に基づいて、前記選択肢に含める回答を設定する回答選択肢設定部をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の第8の技術手段は、第1〜第7のいずれかの技術手段において、前記対応策情報選択部により選択された対応策情報に対して編集がなされた場合に、該編集後の対応策情報を受け付ける編集情報受付部をさらに備え、前記記憶部は、前記編集情報受付部が受け付けた編集後の対応策情報を記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、患者の症状等を患者および介護者に質問を行うことによって把握し、医師が患者や介護者に患者の症状に応じた適切な対応策を提示できるよう、医師を支援することができる。これにより、介護者が患者に合った適切な対応策を理解し、実行することによって、患者の周辺症状が緩和されることが期待できる。また、認知症患者および介護者の心身の負担を軽減することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る認知症ケア支援システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る端末装置の構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る認知症ケア支援装置の構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る認知症ケア支援処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る質問情報送信処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る回答および言動・情動受付処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る対応策情報送信処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】患者の回答および患者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面の一例を示す図である。
【図9】患者が回答をしている際の介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面の一例を示す図である。
【図10】介護者の回答および介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面の一例を示す図である。
【図11】介護者が回答をしている際の患者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る認知症ケア支援システムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、この認知症ケア支援システムは、端末装置10と認知症ケア支援装置20とがネットワーク30を介して接続されている。なお、ネットワーク30は、有線ネットワークでもよいし、無線ネットワークでもよい。
【0019】
端末装置10は、認知症ケア支援装置20にアクセスして認知症ケアに関するさまざまな情報を取得し、取得した情報を患者や介護者、医師等に提供するパーソナルコンピュータやスマートフォンなどの端末装置である。ここで、介護者とは、患者の家族、福祉施設および特定保健施設の介護職員等を指す。認知症ケア支援装置20は、端末装置10に認知症ケアに関するさまざまな情報を提供するサーバ装置である。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る端末装置10の構成の一例を示す図である。端末装置10は、入力部100、表示部101、ネットワークインターフェース部102、記憶部103、患者情報受付部104、質問情報受付部105、回答情報受付部106、言動・情動情報受付部107、対応策情報受付部108、表示制御部109、制御部110を備える。各機能部100〜110は、バス111を介して相互に接続される。
【0021】
入力部100は、キーボードやマウス、タッチパッドなどの入力デバイスである。表示部101は、液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。入力部100と表示部101は、タッチパネルであってもよい。このタッチパネルは、3インチから15インチの大きさであることが望ましい。このような大きさのタッチパネルは、質問や対応策の情報の閲覧、回答や言動または情動の情報の入力が容易であり、また、携帯にも適する。
【0022】
ネットワークインターフェース部102は、ネットワーク30を介して、認知症ケア支援装置20などの他の装置と接続するネットワークインターフェースである。
【0023】
記憶部103は、フラッシュROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)、HD(Hard Disk)などの記憶デバイスである。
【0024】
この記憶部103は、制御プログラム103a、一時記憶データ103bなどを記憶する。制御プログラム103aは、制御部110により読み出され、端末装置10に各種処理を実行させるコンピュータプログラムである。一時記憶データ103bは、入力部100を介して医師により入力されたデータや、ネットワーク30を介して受信したデータなどの、端末装置10に一時的に記憶されるデータである。
【0025】
患者情報受付部104は、医師が入力部100を介して入力した患者情報を受け付け、その患者情報をネットワークインターフェース部102を介して認知症ケア支援装置20に送信する処理部である。
【0026】
患者情報とは、患者の氏名や年齢、住所、家族構成、生活状況等の基本情報、患者が受けた認知症診断用検査、および、その診断結果の情報(中核症状や周辺症状の情報、認知症診断用検査の採点結果の情報)、患者の病歴、服薬歴の情報などである。
【0027】
認知症診断用検査とは、例えば、Mini Mental State Examination(MMSE)、日本版リバーミード行動記録検査(日本版RBMT)、Frontal Assessment Battery(FAB)等の認知症検査、核磁気共鳴画像法(MRI:Magnetic Resonance Imaging)検査、単一光子放射断層撮影法(SPECT:Single Photon Emission Computed Tomography)検査、血液検査、心電図検査、胸部レントゲン検査などのことである。中核症状は、後に説明するように患者の認知症の進行度に対応付けることができる。
【0028】
質問情報受付部105は、医師が入力部100を介して入力した患者または患者の介護者に対して行う質問の情報を受け付け、その情報をネットワークインターフェース部102を介して認知症ケア支援装置20に送信する処理部である。例えば、質問情報受付部105は、認知症ケア支援装置20から受信した質問の情報に所望のものが含まれていなかった場合に、医師が新たに作成した質問の情報を受け付ける。
【0029】
これにより、医師が独自に質問を作成し、他の患者にもその質問を利用できるようにすることによって、患者の症状を異なる視点から把握することができるようになり、症状を知る判断材料が充実する。
【0030】
回答情報受付部106は、医師が入力部100を介して入力した回答の情報を受け付け、その回答の情報をネットワークインターフェース部102を介して認知症ケア支援装置20に送信する処理部である。この回答の入力は、選択肢の選択、または、テキスト入力により行われる。
【0031】
言動・情動情報受付部107は、医師が入力部100を介して入力した患者または介護者の言動または情動の情報を受け付け、その情報をネットワークインターフェース部102を介して認知症ケア支援装置20に送信する処理部である。この言動または情動の情報の入力は、選択肢の選択、または、テキスト入力により行われる。
【0032】
対応策情報受付部108は、医師が入力部100を介して入力した認知症に対する対応策情報を受け付け、その対応策情報をネットワークインターフェース部102を介して認知症ケア支援装置20に送信する処理部である。例えば、対応策情報受付部108は、認知症ケア支援装置20から受信した対応策情報の一部を医師が編集する場合に、医師により編集された対応策情報を受け付ける。また、対応策情報受付部108は、医師が独自に作成した新規の対応策情報を受け付ける。
【0033】
表示制御部109は、表示部101に対する情報の表示を制御する制御部である。例えば、表示制御部109は、表示部101を制御して、認知症ケア支援装置20から受信した情報を表示部101に表示させる処理を行う。
【0034】
制御部110は、端末装置10の各機能部100〜109を制御するとともに、記憶部103に記憶されている制御プログラム103aを実行するCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの制御デバイスである。
【0035】
なお、端末装置10にプリンタを接続し、認知症ケア支援装置20から受信した対応策情報を印刷することとしてもよい。
【0036】
つぎに、本発明の実施形態に係る認知症ケア支援装置20の構成について説明する。図3は、本発明の実施形態に係る認知症ケア支援装置20の構成の一例を示す図である。認知症ケア支援装置20は、入力部200、表示部201、ネットワークインターフェース部202、記憶部203、情報受付部204、患者特定部205、質問情報検索部206、質問情報出力部207、回答選択肢設定部208、言動・情動選択肢設定部209、選択肢情報出力部210、回答判定部211、対応策情報選択部212、編集情報受付部213、対応策情報出力部214、表示制御部215、制御部216を備える。各機能部200〜216はバス217を介して相互に接続される。
【0037】
入力部200は、キーボードやマウスなどの入力デバイスである。表示部201は、液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。ネットワークインターフェース部202は、ネットワーク30を介して、端末装置10などの他の装置と接続するネットワークインターフェースである。
【0038】
記憶部203は、フラッシュROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)、HD(Hard Disk)などの記憶デバイスである。
【0039】
この記憶部203は、制御プログラム203a、患者データ203b、質問データ203c、回答データ203d、言動・情動データ203e、対応策データ203f、一時記憶データ203gなどを記憶する。
【0040】
制御プログラム203aは、制御部216により読み出され、認知症ケア支援装置20に各種処理を実行させるコンピュータプログラムである。患者データ203bは、端末装置10から受信した患者情報を記憶したデータである。また、患者データ203bは、特定の患者にのみ使用される、医師により編集された対応策情報を、その患者の患者情報に対応付けて記憶する。
【0041】
質問データ203cは、患者または患者の介護者に対して行う質問の情報を記憶したデータである。各質問の情報には、患者情報に関する質問、特有の症状に関する質問、患者および介護者の両者に対する質問を区別するための質問種別フラグが付加されている。
【0042】
この質問データ203cでは、質問の情報、質問種別フラグ、認知症の進行度を表す指標としての中核症状や周辺症状の情報、質問に対する回答の選択肢の情報、質問時にみられる言動または情動の選択肢の情報が対応付けて記憶される。
【0043】
中核症状とは、健忘、失見当識、失認、失行、失語の症状を指す。周辺症状とは、不安、抑鬱、幻覚、妄想等の精神症状、および、徘徊、不潔行動等の行動障害を指す。例えば、認知症の初期には、健忘の中核症状が現れ、中期には、失見当識の中核症状が現れ、後期には、失認、失行、失語の中核症状が現れる。よって、認知症の進行度は、中核症状を用いて表すことができる。
【0044】
このようなことから、中核症状が指定されれば、認知症の進行度に対応する質問が検索できる。そして、このような質問に対する回答や、質問時にみられる言動または情動の情報に基づいて、対応策を選択することにより、中核症状やそれに伴う周辺症状の要因を解決するための対応策を患者や介護者に提示することができる。また、数ある質問の中から、認知症の進行度に応じた質問を選択することにより、患者の症状にあった適切な対応策を提示することができる。
【0045】
なお、中核症状に対応付けて、複数の質問の情報が質問データ203cに登録されている場合、各質問の情報には優先度の情報が付加されているものとする。そして、中核症状が指定されると、優先度の高い質問の情報から検索がなされる。
【0046】
さらに、端末装置10から、医師により新たに作成された質問の情報、質問種別フラグの情報、中核症状や周辺症状の情報、優先度の情報が送信された場合には、質問データ203cには、予め登録された情報に加えて、それらの情報が記憶される。
【0047】
なお、質問データ203cに含まれる質問は、Mini Mental State Examination(MMSE)、日本版リバーミード行動記録検査(日本版RBMT)、Frontal Assessment Battery(FAB)等の公知の認知症検査で用いられる質問を含むこととしてもよい。このような質問を質問データ203cに含め、それを質問の選定や対応策の選定に反映することによって、患者に合った対応策を提示することができる。
【0048】
回答データ203dは、端末装置10から受信した回答の情報を記憶したデータである。この回答データ203dには、選択肢の選択により選択された回答の情報と、テキスト入力により入力された回答の情報が含まれる。そして、テキスト入力により入力された回答の情報には、各回答の頻度の情報が合わせて記憶される。
【0049】
言動・情動データ203eは、端末装置10から受信した患者または介護者の言動または情動の情報を記憶したデータである。この言動・情動データ203eには、選択肢の選択により選択された言動または情動の情報と、テキスト入力により入力された言動または情動の情報が含まれる。そして、テキスト入力により入力された言動または情動の情報には、各言動または情動の情報の頻度の情報が合わせて記憶される。
【0050】
対応策データ203fは、認知症に対する対応策情報を記憶したデータである。対応策データ203fでは、対応策情報が、質問の情報、患者、介護者、または、患者および介護者の両者の回答の情報、患者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報、介護者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報に対応付けて記憶されている。対応策情報には、症状を引き起こしている原因、患者の状況、患者が拘泥する点、患者の症状の特徴、その症状を改善するための工夫や対応策などの情報が含まれる。
【0051】
この対応策データ203fには、予め登録された対応策情報に加えて、医師により新規に作成され、不特定の患者に利用される対応策情報が含まれる。なお、医師により編集された対応策情報は、特定の患者にのみ使用されるため、その患者の患者情報に対応付けて患者データ203bに記憶するが、医師により編集された対応策情報を対応策データ203fに記憶してもよい。この場合には、編集前の対応策情報を更新せずに、編集前の対応策情報と対応付けて編集後の対応策情報を記憶することとすればよい。
【0052】
一時記憶データ203gは、ネットワーク30を介して受信したデータなどの、認知症ケア支援装置20に一時的に記憶されるデータである。
【0053】
情報受付部204は、入力部200を介して医師により入力された情報や、ネットワーク30を介して、端末装置10などの他の装置により送信された情報を受け付け、受け付けた情報を記憶部203に記憶する処理部である。
【0054】
患者特定部205は、端末装置10から患者の氏名や名称などの情報が送信された場合に、その情報を用いて処理対象とする患者を特定し、特定した患者に対応する患者情報を患者データ203bから読み出す処理部である。
【0055】
質問情報検索部206は、患者特定部205により特定された患者、または、その患者の介護者に対して行う質問の情報を、質問データ203から検索する処理部である。例えば、質問情報検索部206は、その患者の中核症状に応じた質問の情報を質問データ203cから検索する。
【0056】
また、中核症状に対応付けて、複数の質問の情報が質問データ203cに登録されている場合、質問情報検索部206は、各質問の優先度の情報を参照し、優先度の高い質問の情報から検索を行う。
【0057】
なお、ある進行度に対応する中核症状が複数ある場合には、最も重い中核症状を見分ける典型的な質問を患者または介護者に対して行い、質問情報検索部206は、その結果から最も重い中核症状を判定し、その中核症状に対応する質問の情報を検索することとしてもよい。典型的な質問とは、例えば、中核症状が発症する原因が患者にあったか否かを調べるための質問である。
【0058】
この場合、質問情報検索部206は、ネットワークインターフェース部202を介して、最も重い中核症状を見分ける典型的な質問の情報を端末装置10に送信し、端末装置10により送信された回答の情報を取得して、上記判定を行う。
【0059】
また、中核症状が発症する原因が複数ある場合には、質問情報検索部206は、どの原因により中核症状が発症したのかを見分けるための副次的な質問を患者または患者の介護者に対して行い、その結果から原因を特定することとしてもよい。特定された原因は、対応策情報とともに端末装置10に送信される。
【0060】
この場合、質問データ203cには、中核症状に対応付けて、その中核症状を発症させる複数の原因の情報と、どの原因によりその中核症状が発症したのかを見分けるための質問の情報が記憶される。そして、中核症状が指定された場合、質問情報検索部206は、質問データ203cを参照し、その中核症状に複数の原因があるか否かを判定する。そして、その中核症状に複数の原因がある場合、質問情報検索部206は、指定された中核症状がどの原因により発症したのかを見分けるための質問の情報を検索する。
【0061】
質問情報出力部207は、質問情報検索部206により検索された質問の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する処理部である。この質問の情報には、予め質問データ203cとして記憶部203に記憶されていた質問の情報だけでなく、医師により新たに作成された質問の情報も含まれ得る。
【0062】
回答選択肢設定部208は、端末装置10が、患者または介護者に対して行う質問の回答を選択肢の選択、または、テキスト入力のいずれかにより受け付ける場合に、テキスト入力により受け付けられた回答の頻度に基づいて、選択肢に含める回答を設定する処理部である。
【0063】
この場合、回答選択肢設定部208は、頻度が高い回答から所定の数だけ回答を選択する。そして、回答選択肢設定部208は、選択した回答を、端末装置10が医師に回答の入力を促す際に表示する選択肢として設定する。
【0064】
これにより、どのような回答でも例外なく選択肢に含めることができ、医師が回答をテキスト入力する必要がなくなるので、入力時間を短縮することができる。なお、上記所定の数は、特に制限されるものではないが、3〜6が好ましい。
【0065】
言動・情動選択肢設定部209は、端末装置10が、患者または介護者の言動または情動の情報を選択肢の選択、または、テキスト入力により受け付ける場合に、テキスト入力により受け付けられた言動または情動の情報の頻度に基づいて、選択肢に含める言動または情動の情報を設定する処理部である。
【0066】
この場合、言動・情動選択肢設定部209は、頻度が高い言動または情動の情報から所定の数だけ言動または情動の情報を選択する。そして、言動・情動選択肢設定部209は、選択した言動または情動の情報を、端末装置10が医師に言動または情動の情報の入力を促す際に表示する選択肢として設定する。
【0067】
これにより、どのような言動または情動の情報でも例外なく選択肢に含めることができ、医師が言動または情動の情報をテキスト入力する必要がなくなるので、入力時間を短縮することができる。なお、上記所定の数は、特に制限されるものではないが、3〜6が好ましい。
【0068】
選択肢情報出力部210は、回答選択肢設定部208、または、言動・情動選択肢設定部209により設定された選択肢の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する処理部である。
【0069】
回答判定部211は、患者の回答が正しいか否か、患者に特有の症状があるか否かを判定する処理部である。具体的には、回答判定部211は、患者の回答に対応する質問の質問種別フラグの情報を質問データ203cから読み出し、その質問が、患者情報に関する質問、特有の症状に関する質問、患者および介護者の両者に対する質問のいずれであるのかを判定する。
【0070】
そして、その質問が患者情報に関する質問である場合、回答判定部211は、患者の回答を患者データ203bに記憶された患者情報と照合することによって、患者の回答が正しいか否かを判定する。
【0071】
また、その質問が特有の症状に関する質問である場合、回答判定部211は、端末装置10から特有の症状があるとの回答を受け付けた場合に、患者に特有の症状があると判定する。
【0072】
また、その質問が患者および介護者の両者に対する質問である場合、回答判定部211は、患者の回答と介護者の回答とを照合することによって、患者の回答が正しいか否かを判定する。
【0073】
対応策情報選択部212は、回答判定部211によりなされた判定の結果や、患者や介護者の回答の情報、患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報のすべて、または、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、記憶部203に対応策データ203fとして記憶された対応策情報のいずれかを選択する処理部である。
【0074】
具体的には、対応策情報選択部212は、患者の回答が正しくなかった質問の情報、患者や介護者の回答の情報、質問をした際の患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報のすべて、または、少なくとも1つ以上の情報に対応する対応策情報を、対応策データ203fに記憶された対応策情報の中から選択する。
【0075】
編集情報受付部213は、対応策情報選択部212により選択された対応策情報の編集を医師が端末装置10を操作して行った場合に、その編集後の対応策情報を取得し、取得した対応策情報を、現在判断対象としている患者の患者情報に対応付けて、記憶部203の患者データ203bに記憶し、または、その対応策情報を編集前の対応策情報と対応付けて、記憶部203の対応策データ203fに記憶する処理部である。
【0076】
対応策情報出力部214は、対応策情報選択部212により選択された対応策情報、または、編集情報受付部213により取得され、記憶部203に記憶された編集後の対応策情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する処理部である。対応策情報選択部212により選択された対応策情報には、医師により新規に作成された対応策情報が含まれ得る。
【0077】
このように、医師により新規に作成された対応策情報を認知症ケア支援装置20が管理し、さまざまな患者に対する認知症のケアに利用することにより、より適切な対応策を患者および介護者に提示することができるようになる。また、対応策が充実し、患者および介護者が試みることができる対応策の選択肢を増やすことができる。
【0078】
また、対応策情報出力部214は、患者データ203bから患者情報を読み出し、回答データ203dから患者または介護者の回答の情報を読み出し、または、言動・情動データ203eから言動または情動の情報を読み出し、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に読み出した情報を送信する。
【0079】
これにより、医師は、患者が受けた認知症診断用検査、および、その診断結果の情報(中核症状や周辺症状の情報、認知症診断用検査の採点結果の情報)、患者の病歴、服薬歴の情報と、患者または介護者の回答の情報、患者または介護者の言動または情動の情報、対応策情報とを比較することができ、患者の症状の経時変化を捉え、対応策の効果を確認できる。また、医師は、経時変化から今後の症状を推測し、それを質問選定および対応策選定に反映させることができる。
【0080】
表示制御部215は、表示部201に対する情報の表示を制御する制御部である。制御部216は、認知症ケア支援装置20の各機能部200〜215を制御するとともに、記憶部203に記憶されている制御プログラム203aを実行するCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの制御デバイスである。
【0081】
以上のように、認知症ケア支援装置20がサーバとして機能して、質問や対応策の情報の選定、患者情報、質問の情報、回答の情報、言動または情動の情報等の蓄積を行い、ネットワーク30を介してそれらの情報を提供することにより、病院や地域、国等の一定区域、または世界各国の病院間で情報を共有し、ある医師が独自に作成した質問や対応策等を幅広い地域で閲覧または利用することができる。また、患者や介護者が患者情報や対応策を閲覧することもできる。
【0082】
また、端末装置10が、質問や対応策の情報の表示、患者情報、患者または介護者の回答の情報、言動または情動の情報等の入力を行うことにより、質問の実施や対応策の提示を行う場所が限定されない。また、訪問診察時にこの認知症ケア支援システムを利用することが可能となる。
【0083】
また、上記実施形態では、端末装置10が備える各機能部と、認知症ケア支援装置20が備える各機能部について説明したが、端末装置10の各機能部と認知症ケア支援装置20の各機能部とを1台の装置が備えることとしてもよい。また、端末装置10が備える各機能部の一部を認知症ケア支援装置20に備えることとしてもよいし、認知症ケア支援装置20が備える各機能部の一部を端末装置10に備えることとしてもよい。
【0084】
つぎに、本発明の実施形態に係る認知症ケア支援処理の処理手順について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る認知症ケア支援処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0085】
医師が端末装置10を操作して患者情報を入力し、その患者情報が認知症ケア支援装置20に送信された場合、認知症ケア支援装置20の情報受付部204は、その患者情報を受け付け、受け付けた患者情報を記憶部203に患者データ203bとして記憶する(ステップS101)。
【0086】
そして、認知症ケア支援装置20の質問情報検索部206、質問情報出力部207は、患者または介護者に対する質問の情報を端末装置10に送信する質問情報送信処理を実行する(ステップS102)。送信された質問の情報は、端末装置10の表示部101に表示される。この質問情報送信処理については、後に図5を用いて詳しく説明する。
【0087】
そして、質問に対する回答の情報、および、患者または介護者の言動または情動の情報が端末装置10により送信された場合、認知症ケア支援装置20の情報受付部204は、回答の情報、および、言動または情動の情報を受け付ける回答および言動・情動情報受付処理を実行する(ステップS103)。この回答および言動・情動情報受付処理については、後に図6を用いて詳しく説明する。
【0088】
そして、認知症ケア支援装置20の回答判定部211、対応策情報選択部212、対応策情報出力部214は、回答の情報、患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報に基づいて、認知症に対する対応策情報を端末装置10に送信する対応策情報送信処理を実行する(ステップS104)。送信された対応策の情報は、端末装置10の表示部101に表示される。この対応策情報送信処理については、後に図7を用いて詳しく説明する。
【0089】
その後、認知症ケア支援装置20の対応策情報選択部212は、すべての質問が完了したか否かを判定する(ステップS105)。すべての質問が完了していない場合(ステップS105においてNOの場合)、ステップS102に移行し、患者または介護者に対するつぎの質問の情報を送信する質問情報送信処理を実行する。すべての質問が完了した場合(ステップS105においてYESの場合)、この認知症ケア支援処理は終了する。
【0090】
つぎに、図4のステップS102に示した質問情報送信処理について説明する。図5は、本発明の実施形態に係る質問情報送信処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0091】
まず、医師が端末装置10を操作して中核症状を含む患者情報を入力し、その患者情報が認知症ケア支援装置20に送信された場合、認知症ケア支援装置20の情報受付部204は、その患者情報から中核症状の情報を取得し、その情報を患者の中核症状の情報として受け付ける(ステップS201)。
【0092】
そして、認知症ケア支援装置20の質問情報検索部206は、患者または介護者に対して行う質問を自動で検索するように設定されているか否かを判定する(ステップS202)。この設定情報は、予め記憶部203などに記憶しておき、必要に応じて変更される。
【0093】
質問を自動で検索するように設定されている場合(ステップS202においてYESの場合)、質問情報検索部206は、質問を自動で検索する(ステップS203)。具体的には、質問情報検索部206は、ステップS201で受け付けた中核症状に対応する質問の情報を、質問データ203cから優先度の高い順に検索する。
【0094】
なお、質問情報検索部206は、患者情報、患者または介護者に対して以前なされた質問に対する回答の情報、その回答を受け付けた際の患者または介護者の言動または情動の情報などに関連する質問を優先して検索することとしてもよい。
【0095】
例えば、質問情報検索部206は、図4のステップS101で受け付けた患者情報の一部または全部に対応する質問を、それ以外の質問に優先して検索することとしてもよい。この場合、質問データ203cには、各質問に対応付けて、患者の氏名や年齢、住所、家族構成、生活状況等の基本情報、患者が受けた認知症診断用検査、および、その診断結果の情報(中核症状や周辺症状の情報、認知症診断用検査の採点結果の情報)、患者の病歴、服薬歴の情報などを記憶しておく。
【0096】
そして、質問情報検索部206は、図4のステップS101で受け付けた患者情報の一部または全部に対応する質問を、質問データ203cから検索する。
【0097】
また、例えば、質問情報検索部206は、以前患者の回答が正しくなかった質問、または、患者の回答と介護者の回答とが一致しなかった質問を、優先して検索することとしてもよい。この場合、質問情報検索部206は、上記質問を他の質問と区別するためのフラグを上記質問の情報と対応付けて質問データ203cに記憶しておき、そのフラグを参照して検索を行う。
【0098】
以前患者の回答が正しくなかった質問、または、患者の回答と介護者の回答とが一致しなかった質問が複数ある場合には、質問情報検索部206は、各質問に割り当てられた優先度の高いものから検索すればよい。
【0099】
また、例えば、質問情報検索部206は、以前その患者または介護者が行った他の質問に対する回答や、その回答を受け付けた際の患者または介護者の言動または情動の情報に対応する質問の情報を、それ以外の質問の情報に優先して検索することとしてもよい。この場合、質問データ203cには、各質問の情報に対応付けて、他の質問に対する回答の情報、および、言動または情動の情報を記憶しておく。
【0100】
そして、質問情報検索部206は、以前その患者または介護者が行った他の質問に対する回答や、その回答を受け付けた際の患者または介護者の言動または情動の情報に対応する質問の情報を質問データ203cから検索する。
【0101】
これにより、以前になされた質問の回答に基づいて提示した対応策の実施状況や効果を確認することができ、また、患者の症状に適した質問を行うことができる。
【0102】
また、質問情報検索部206は、認知症が発症する原因が複数ある場合に、患者が関係する原因がどれかを判断するための質問を、他の質問よりも優先して検索することとしてもよい。この場合、質問データ203cでは、患者が関係する原因がどれかを判断するための質問の優先度を、その他の質問の優先度よりも高くしておけばよい。
【0103】
また、質問情報検索部206は、認知症の進行度が所定のレベルよりも進んでいる場合に、患者に対する質問を検索せずに、介護者に対する質問を検索することとしてもよい。これは、認知症が進行すると、患者の回答能力が低下して患者の回答内容の信頼性が下がり、正しい回答を必要とする質問に対して、介護者による回答が必要となるためである。
【0104】
認知症の進行度のレベルは、例えば、健忘の中核症状が現れる初期レベル、失見当識の中核症状が現れる中期レベル、失認、失行、失語の中核症状が現れる後期レベルに分類できる。
【0105】
この場合、質問データ203cには、各質問の情報に対応付けて、患者用の質問か、介護者用の質問か、患者および介護者の両者に対する質問かを区別する質問対象者フラグを記憶しておく。そして、質問情報検索部206は、認知症の進行度が失見当識の中核症状が現れる中期レベルよりも進んでいる場合に、質問データ203cに記憶された質問対象者フラグを参照し、介護者用の質問の情報を優先度の高い順から検索すればよい。
【0106】
ステップS203の処理の後、質問情報出力部207は、質問情報検索部206により検索された質問の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する(ステップS204)。そして、この質問情報送信処理は終了する。
【0107】
なお、質問に対する回答や、患者または介護者の言動・情動情報を医師に選択肢により選択させる場合、それらの選択肢の情報を質問の情報とともに端末装置10に送信する。
【0108】
具体的には、回答選択肢設定部208は、質問データ203cにおいて、質問の情報と対応付けて記憶されている回答の選択肢の情報を読み出し、また、言動・情動選択肢設定部209は、質問データ203cにおいて、質問の情報と対応付けて記憶されている言動または情動の選択肢の情報を読み出し、選択肢情報出力部210が、それらの選択肢の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する。
【0109】
ここで、回答選択肢設定部208は、端末装置10がテキスト入力により受け付けた回答の頻度が所定の値よりも大きい場合、その回答の情報を回答の選択肢の情報に含めることとする。また、言動・情動選択肢設定部209は、端末装置10がテキスト入力により受け付けた言動または情動の情報の頻度が所定の値よりも大きい場合、その言動または情動の情報を言動または情動の選択肢の情報に含めることとする。
【0110】
ステップS202において、患者または介護者に対しいて行う質問を自動で検索するように設定されていない場合(ステップS202においてNOの場合)、質問情報検索部206は、端末装置10から送信されたキーワードの情報を用いてキーワード検索を行い、または、端末装置10から送信されたカテゴリの指定情報を用いてカテゴリ検索を行う(ステップS205)。このキーワードの情報、または、カテゴリの指定情報は、医師が端末装置10を操作して入力した情報である。
【0111】
その後、質問情報出力部207は、質問情報検索部206により検索された質問の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する(ステップS206)。
【0112】
なお、質問に対する回答や、患者または介護者の言動または情動の情報を医師に選択肢により選択させる場合、選択肢情報出力部210は、前述のようにネットワークインターフェース部202を介して、それらの選択肢の情報を端末装置10に送信する。また、回答選択肢設定部208および言動・情動選択肢設定部209は、テキスト入力により受け付けられた回答の頻度に基づいて、選択肢に含める回答や言動または情動の情報を設定する。
【0113】
そして、質問情報検索部206は、端末装置10から新規質問を作成する旨の通知を受け付けたか否かを判定する(ステップS207)。この通知は、医師が端末装置10を操作して、新規質問の作成要求を行った場合に、端末装置10から送信される。
【0114】
端末装置10から新規質問を作成する旨の通知を受け付けず、端末装置10からステップS206で送信した質問に対する回答や、言動または情動の情報が送信された場合(ステップS207においてNOの場合)、この質問情報送信処理は終了する。
【0115】
端末装置10から新規質問を作成する旨の通知を受け付けた場合(ステップS207においてYESの場合)、情報受付部204は、端末装置10により送信された新規質問の情報を受け付ける(ステップS208)。そして、情報受付部204は、新規質問の情報を質問データ203cに追加する(ステップS209)。
【0116】
ここで、端末装置10からは、新規質問の情報に加えて、質問種別フラグ、中核症状や周辺症状の情報、質問に対する回答の選択肢の情報、質問時にみられる言動または情動の選択肢の情報なども併せて送信される。情報受付部204は、これらの情報に対応付けて、新規質問の情報を質問データ203cに記憶する。
【0117】
その後、質問情報検索部206は、質問データ203cに追加した新規質問の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信し(ステップS210)、この質問情報送信処理は終了する。この情報を受信した端末装置10は、受信した新規質問の情報を、患者または介護者に対して行う質問として表示部201に表示する。
【0118】
また、ここでは、新規質問の情報を質問データ203cに追加することとしたが、回答の選択肢の情報や、言動または情動の選択肢の情報を新たに受け付けることとしてもよい。
【0119】
この場合、端末装置10を操作して医師が入力した回答の選択肢の情報を、回答選択肢設定部208が取得し、回答選択肢設定部208が、その回答の選択肢の情報を、質問の情報に対応付けて質問データ203bに記憶する。
【0120】
また、端末装置10を操作して医師が入力した言動または情動の選択肢の情報を、言動・情動選択肢設定部209が取得し、言動・情動選択肢設定部209が、その言動または情動の選択肢の情報を、質問の情報に対応付けて質問データ203bに記憶する。
【0121】
そして、その質問の情報が端末装置10に送信される場合、選択肢情報出力部210は、その質問に対応する回答の選択肢の情報、および、言動または情動の選択肢の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する。
【0122】
回答の選択肢の情報、言動または情動の選択肢の情報を受信した端末装置10は、回答の選択肢の情報、言動または情動の情報を選択肢として表示し、回答の情報、言動または情動の情報の選択を受け付ける。
【0123】
つぎに、図4のステップS103に示した回答および言動・情動受付処理について説明する。図6は、本発明の実施形態に係る回答および言動・情動受付処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0124】
まず、認知症ケア支援装置20の情報受付部204は、端末装置10により送信された患者または介護者の回答の情報、患者または介護者の言動または情動の情報を受け付ける(ステップS301)。ここで、回答の情報、および、言動または情動の情報は、複数の選択肢の中から選択された項目の情報、または、テキスト入力により入力された情報である。
【0125】
そして、情報受付部204は、受け付けた回答の情報が患者の回答の情報であるか否かを判定する(ステップS302)。なお、受け付けた回答の情報には、端末装置10により患者の情報か、介護者の情報かを識別するための識別フラグが付加されており、情報受付部204は、この識別フラグを参照して、上記判定を行う。
【0126】
受け付けた回答が患者の回答の情報であった場合(ステップS302においてYESの場合)、情報受付部204は、受け付けた患者の回答の情報を、患者の情報であることを示す識別フラグとともに、記憶部203に回答データ203dとして記憶する(ステップS303)。
【0127】
受け付けた回答が患者の回答の情報でなかった場合(ステップS302においてNOの場合)、受け付けた回答は介護者の回答の情報であるので、情報受付部204は、受け付けた介護者の回答の情報を、介護者の情報であることを示す識別フラグとともに、記憶部203に回答データ203dとして記憶する(ステップS304)。
【0128】
ステップS303またはステップS304の処理の後、情報受付部204は、ステップS301で受け付けた患者の言動または情動の情報を、患者の情報であることを示す識別フラグとともに、記憶部203に言動・情動データ203eとして記憶する(ステップS305)。
【0129】
さらに、情報受付部204は、ステップS301で受け付けた介護者の言動または情動の情報を、介護者の情報であることを示す識別フラグとともに、記憶部203に言動・情動データ203eとして記憶し(ステップS306)、この言動・情動受付処理を終了する。
【0130】
つぎに、図4のステップS104に示した対応策情報送信処理について説明する。図7は、本発明の実施形態に係る対応策情報送信処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0131】
まず、認知症ケア支援装置20の回答判定部211は、質問が患者に対して行う患者情報に関するものであったか否かを判定する(ステップS401)。具体的には、対応策情報選択部204は、質問データ203cに記憶されている質問種別フラグを参照して、上記判定を行う。
【0132】
質問が患者に対して行う患者情報に関する質問であった場合(ステップS401においてYESの場合)、回答判定部211は、受け付けた患者の回答の情報を患者データ203bに記憶された患者情報と照合し、患者の回答が正しいか否かを判定する(ステップS402)。
【0133】
患者の回答が正しい場合(ステップS402においてYESの場合)、そのままこの対応策情報送信処理は終了し、図4のステップS105の処理に移行する。患者の回答が正しくない場合(ステップS402においてNOの場合)、対応策情報選択部204は、患者や介護者の回答の情報、患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報のすべて、または、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、患者の認知症に対する対応策情報を選択する(ステップS403)。
【0134】
具体的には、対応策情報選択部204は、対応策データ203fを参照し、患者や介護者の回答の情報、患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報のすべて、または、少なくとも1つ以上の情報に対応付けて対応策データ203fに記憶されている対応策情報を読み出し、読み出した対応策情報を端末装置10に送信する対応策情報として選択する。なお、この対応策情報には、医師により新規に作成され、対応策データ203fに記憶された対応策情報が含まれる。
【0135】
前述のように、対応策情報には、症状を引き起こしている原因、患者の状況、患者が拘泥する点、患者の症状の特徴、その症状を改善するための工夫や対応策などの情報が含まれる。
【0136】
そして、患者が質問に回答している間の介護者の言動または情動の情報、介護者が質問に回答している間の患者の言動または情動の情報などに基づいて、対応策情報を選択することにより、介護者の患者についての理解度や、患者と介護者の間の関係を考慮した適切な対処法を選択できる。また、患者の症状の特徴、患者の拘泥する点、介護者の理解度や患者と介護者との関係性が明確となり、患者と介護者に合った適切な対応策を提示することができる。
【0137】
ステップS403の後、対応策情報出力部214は、対応策情報選択部212が選択した対応策情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する(ステップS404)。そして、対応策情報を受信した端末装置10は、その対応策情報を表示する。
【0138】
その後、編集情報受付部213は、対応策情報が端末装置10に表示された結果、端末装置10から対応策情報の編集指示情報を受け付けたか否かを判定する(ステップS405)。この編集指示情報には、医師が端末装置10を操作して編集した対応策情報が含まれる。
【0139】
端末装置10から対応策情報の編集指示情報を受け付けた場合(ステップS405においてYESの場合)、編集情報受付部213は、対応策データ203fに記憶されている編集前の対応策情報を編集後の対応策情報で更新する(ステップS406)。
【0140】
そして、ステップS404に移行して、対応策情報出力部214は、編集後の対応策情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信し、その後の処理が継続される。
【0141】
このように、医師が対応策情報の最終確認を行い、対応策を編集することにより、それぞれの患者および介護者に合わせて、より適切な対応策を患者および介護者に提示することができる。
【0142】
ステップS405において、端末装置10から対応策情報の編集指示情報を受け付けず、処理が完了したことを示す情報を受け付けた場合(ステップS405においてNOの場合)、この対応策情報送信処理は終了する。
【0143】
ステップS401において、質問が患者情報に関する質問でなかった場合(ステップS401においてNOの場合)、回答判定部211は、質問が周辺症状などの特有の症状の有無に関する質問であったか否かを判定する(ステップS407)。具体的には、対応策情報選択部204は、質問データ203cに記憶されている質問種別フラグを参照して、上記判定を行う。
【0144】
質問が周辺症状などの特有の症状の有無に関する質問であった場合(ステップS407においてYESの場合)、回答判定部211は、特有の症状があるとの回答があったか否かを判定する(ステップS408)。
【0145】
特有の症状があるとの回答があった場合(ステップS408においてYESの場合)、ステップS403に移行して、対応策情報選択部204は、患者や介護者の回答の情報、患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報のすべて、または、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、患者の認知症に対する対応策情報を選択し、その後の処理を継続する。特有の症状はないとの回答があった場合(ステップS408においてNOの場合)、そのままこの対応策情報送信処理は終了する。
【0146】
ステップS407において、質問が特有の症状の有無に関する質問でなかった場合(ステップS407においてNOの場合)、質問は、患者および介護者の両者に対する質問であることになる。そのため、回答判定部211は、同一の質問に対して、患者と介護者の両方の回答の情報が得られているか否かを判定する(ステップS409)。
【0147】
患者と介護者の両方の回答の情報が得られていない場合(ステップS409においてNOの場合)、そのままこの対応策情報送信処理は終了する。患者と介護者の両方の回答の情報が得られている場合(ステップS409においてYESの場合)、回答判定部211は、患者の回答の情報と介護者の回答の情報とを照合することによって、患者の回答の情報と介護者の回答の情報とが一致するか否かを判定する(ステップS410)。
【0148】
患者の回答の情報と介護者の回答の情報とが一致する場合(ステップS410においてYESの場合)、そのままこの対応策情報送信処理は終了する。患者の回答の情報と介護者の回答の情報とが一致しない場合(ステップS410においてNOの場合)、ステップS403に移行して、対応策情報選択部204は、患者や介護者の回答の情報、患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報のすべて、または、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、患者の認知症に対する対応策情報を選択し、その後の処理が継続される。
【0149】
なお、図7のステップS406では、対応策情報の編集を受け付けることとしたが、新たな対応策情報の追加を受け付けることとしてもよい。この場合、編集情報受付部213は、端末装置10により送信された対応策情報を取得する。また、編集情報受付部213は、対応策情報と合わせて、端末装置10により送信された関連情報、すなわち、質問の情報、患者、介護者、または、患者および介護者の両者の回答の情報、患者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報、介護者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報などの情報を取得する。
【0150】
ここで、対応策情報および関連情報は、対応策データ203fに新たに追加するように医師が端末装置10を操作して入力した情報である。そして、編集情報受付部213は、取得した対応策情報を、上記関連情報に対応付けて対応策データ203fに記憶する。
【0151】
このように、医師が独自に対応策情報を作成し、他の患者にもその対応策情報を利用できるようにすることによって、より適切な対応策を患者および介護者に提示することができる。また、対応策が充実し、患者および介護者が試す対応策の選択肢を増やすことができる。
【0152】
つぎに、患者や介護者からの回答および言動または情動の情報を受け付ける受付画面について説明する。図8は、患者の回答および患者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面40の一例を示す図である。
【0153】
図8には、医師が「家の中で徘徊がありますか?」という質問を患者に行い、患者が「ない」と回答した場合の例が示されている。また、受付画面40には、「付添人に尋ねる」、「聞き返す」、「ひとりで考え続ける」、「分からないとイライラする」、「答えない」、「立ち去る」という言動または情動の情報を選択するチェックボックスが示されている。ただし、図8では、どのチェックボックスもチェックされていない。このことは、上記のような患者の言動または情動が特に示されなかったことを意味する。
【0154】
さらに、受付画面40には、「拒絶」、「怒り」、「暴力」、「泣く」という言動または情動の情報について、「無」、「弱」、「強」という患者の反応の程度を示すラジオボタンが示されている。ただし、図8では、すべて「無」のラジオボタンが選択されている。このことは、上記のような患者の言動や情動が特に示されなかったことを意味する。
【0155】
図8の場合、患者の回答の情報として「NO」という情報が、また、患者の言動または情動の情報として「無」という情報が認知症ケア支援装置20に送信されることになる。
【0156】
図9は、患者が回答をした際の介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面41の一例を示す図である。図9には、医師が「家の中で徘徊がありますか?」という質問を患者に行い、患者が「NO」と回答した際の介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面41の例が示されている。
【0157】
この受付画面41には、「否定する」、「肯定する」、「指導する」、「無視する」、「答える」という言動または情動の情報を選択するチェックボックスが示されている。そして、図9では、「否定する」が選択されている。
【0158】
さらに、受付画面41には、「怒り」、「悲しみ」、「安心」という言動または情動の情報について、「無」、「弱」、「強」という介護者の反応の程度を示すラジオボタンが示されている。そして、図9では、「怒り」について「弱」のラジオボタンが選択されている。すなわち、この例は、患者が家の中で徘徊していないとの事実と異なる回答したことに対して、介護者が弱い怒りを感じているという状況にあることを示している。
【0159】
この場合、患者が質問に対して「NO」と回答したことに対する介護者の言動または情動の情報として、「否定する」という情報と、「怒り・弱」という情報とが認知症ケア支援装置20に送信されることになる。
【0160】
図10は、介護者の回答および介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面42の一例を示す図である。図10には、医師が「家の中で徘徊がありますか?」という質問を介護者に行い、介護者が「ある」と回答した際の介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面42の例が示されている。
【0161】
また、受付画面42には、「指導する」、「叱責する」、「覚えていない」という言動または情動の情報を選択するチェックボックスが示されている。そして、図10では、「叱責する」がチェックされている。
【0162】
さらに、受付画面42には、「拒絶」、「怒り」、「投げやり」、「悲しみ」、「不安」という言動または情動の情報について、「無」、「弱」、「強」という介護者の反応の程度を示すラジオボタンが示されている。そして、「怒り」について「弱」のラジオボタンが選択されている。
【0163】
すなわち、この例は、介護者が患者に対して「叱責する」という行動をとったため、介護者の言動・情動情報として、「叱責する」という情報が、また、介護者が弱い怒りを感じているという情報が入力されたことを示している。
【0164】
この場合、介護者の回答の情報として「YES」という情報が、また、介護者の言動または情動の情報として、「叱責する」という情報、および、「怒り・弱」という情報が認知症ケア支援装置20に送信されることになる。
【0165】
図11は、介護者が回答した際の介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面43の一例を示す図である。図11には、医師が「家の中で徘徊がありますか?」という質問を介護者に行い、介護者が「ある」と回答した際の患者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面43の例が示されている。
【0166】
この受付画面43には、「否定する」、「肯定する」、「無視する」という言動または情動の情報を選択するチェックボックスが示されている。そして、図11では、「否定する」が選択されている。
【0167】
さらに、受付画面43には、「拒絶」、「怒り」、「暴力」、「泣く」という言動または情動の情報について、「無」、「弱」、「強」という患者の反応の程度を示すラジオボタンが示されている。そして、「拒絶」について「弱」のラジオボタンが選択されている。すなわち、この例では、介護者が家の中で徘徊していると回答したことに対して、患者が弱い拒絶反応を示しているという状況にあることになる。
【0168】
この場合、介護者が質問に対して「YES」と回答したことに対する患者の言動または情動の情報として、「否定する」という情報と、「拒絶・弱」という情報とが認知症ケア支援装置20に送信されることになる。
【0169】
このように、患者、介護者、または、患者および介護者の両者の回答、患者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報、介護者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報を認知症ケア支援装置20に送信することにより、認知症ケア支援装置20は、介護者の患者についての理解度や、患者と介護者の間の関係を考慮した適切な対処法を選択できるようになる。
【0170】
例えば、図8〜図11の例では、患者は日常生活の中で、家の中を徘徊しているにもかかわらず、その自覚に欠けている。そして、そのことについて介護者に叱責され、怒りを表されると拒絶する。また、介護者は、家の中で徘徊する患者に対して、怒りを感じている。
【0171】
このような患者と介護者には、患者が家の中で徘徊することがある状況の説明およびその原因の説明、および、そのような症状を改善するための工夫や対応策を提示する必要がある。例えば、認知症ケア支援装置20は、患者の認知症進行度(中核症状)が「健忘」である場合、「患者は、探し物があるが、何を探しているか分からなくなっている可能性があるので、患者と一緒に行動してください。」という情報を端末装置10に出力すればよい。
【0172】
また、認知症ケア支援装置20は、患者の認知症進行度が「失認」である場合、「患者は、探し物をしている可能性もあるが、仮に見つかったとしてもそれが何か分からず、探し終えた場所も分らなくなっています。患者に説明をしながら患者と一緒に行動してください。」という情報を端末装置10に出力すればよい。
【0173】
また、認知症ケア支援装置20は、患者の認知症進行度が「失語」である場合、「患者は、周りの人が何を話しているのか分らず、混乱、不安、緊張状態にあり、居場所がないと感じています。患者の行動を制限せずに、時々笑顔で声を掛けたり、一緒に落ち着いて座るよう患者が大好きな果物などを勧めてみたりしてください。」という情報を端末装置10に出力すればよい。ここで、患者の好物が果物であるという情報は、予め患者情報に含めておき、患者情報からその情報を取得して対応策情報に埋め込むこととすればよい。
【0174】
さらに、認知症ケア支援装置20は、患者が質問に回答している間の介護者の言動または情動の情報が「否定する」であり、介護者が質問に回答している間の介護者の言動または情動の情報が「叱責する」であった場合、対応策データ203fを参照し、「否定する」という介護者の言動または情動の情報、「叱責する」という介護者の言動または情動の情報に対応する情報として、「患者に理解と共感を示して下さい。」という情報を読み出し、端末装置10に送信して、介護者に提示することとしてもよい。
【0175】
また、認知症ケア支援装置20は、介護者が質問に回答している間の患者の言動または情動の情報が「拒絶・弱」であった場合、対応策データ203fを参照し、「拒絶・弱」という患者の言動または情動の情報に対応する情報として、「患者に一緒に行動してもよいかを尋ねながら行動して下さい。」という情報を読み出し、端末装置10に送信して、介護者に提示することとしてもよい。
【0176】
このように、本システムでは、患者、介護者、または、患者および介護者の両者の回答、患者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報、介護者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報等から、患者と介護者に合った対応策を提示することができる。
【0177】
さて、これまで端末装置10、認知症ケア支援装置20、および、認知症ケア支援方法の実施形態を中心に説明を行ったが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、端末装置10、認知症ケア支援装置20の機能を実現するためのコンピュータプログラムとしての形態、あるいは、当該コンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体の形態として本発明が実施されることとしてもよい。
【0178】
ここで、記録媒体としては、ディスク系(例えば、磁気ディスク、光ディスク等)、カード系(例えば、メモリカード、光カード等)、半導体メモリ系(例えば、ROM、不揮発性メモリ等)、テープ系(例えば、磁気テープ、カセットテープ等)等、さまざまな形態のものを採用することができる。
【0179】
これら記録媒体に上記実施形態における端末装置10、認知症ケア支援装置20の機能を実現させるコンピュータプログラム、または、認知症ケア支援方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムを記録して流通させることにより、コストの低廉化、及び可搬性や汎用性を向上させることができる。
【0180】
そして、コンピュータに上記記録媒体を装着し、コンピュータにより記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを読み出してメモリに格納し、コンピュータが備えるプロセッサ(CPU:Central Processing Unit、MPU:Micro Processing Unit)が当該コンピュータプログラムをメモリから読み出して実行することにより、本実施形態に係る端末装置10、認知症ケア支援装置20の機能を実現し、認知症ケア支援方法を実行することができる。
【0181】
また、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で各種の変形、修正が可能である。例えば、上述した実施形態では、認知症ケア支援システムが、端末装置10と認知症ケア支援装置20により構成されることとしたが、これに限定されず、認知症ケア支援システムは、端末装置10の機能と認知症ケア支援装置20の機能を有する1台の端末装置により構成されることとしてもよい。この場合、端末装置の記憶部は、上述したさまざまなデータを蓄積し、データの追加を受け付ける。また、医師などのユーザは、端末装置に蓄積されたデータの更新や取り出しを、入力部を介して端末装置に指示し、データの更新や取り出しを行う。
【符号の説明】
【0182】
10…端末装置、100…入力部、101…表示部、102…ネットワークインターフェース部、103…記憶部、103a…制御プログラム、103b…一時記憶データ、104…患者情報受付部、105…質問情報受付部、106…回答情報受付部、107…言動・情動情報受付部、108…対応策情報受付部、109…表示制御部、110…制御部、111…バス、20…認知症ケア支援装置、200…入力部、201…表示部、202…ネットワークインターフェース部、203…記憶部、203a…制御プログラム、203b…患者データ、203c…質問データ、203d…回答データ、203e…言動・情動データ、203f…対応策データ、203g…一時記憶データ、204…情報受付部、205…患者特定部、206…質問情報検索部、207…質問情報出力部、208…回答選択肢設定部、209…言動・情動選択肢設定部、210…選択肢情報出力部、211…回答判定部、212…対応策情報選択部、213…編集情報受付部、214…対応策情報出力部、215…表示制御部、216…制御部、217…バス
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知症に対する対応策情報を出力する認知症ケア支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
認知症は、85歳以上の4人に1人が発症しているといわれており、超高齢化社会を迎えるにあたり、今後20年で倍増すると予測されている。しかしながら、認知症は完治することがなく、患者及び介護者の心身の負担は非常に大きい。そのため、症状のレベルを正しく診断し、適切な対処を行うことによって、認知症の進行を遅らせ、患者が自信と誇りを回復し、患者と介護者が共に健やかな生活を過ごせるようにすることが望まれている。
【0003】
従来、医師による患者の認知症レベルの診断を支援するシステムが提案されている。例えば、特許文献1には、患者に対して、患者の行動や属性に応じた非定型的な質問を行い、その回答の正誤を判定することによって、患者の認知症レベルを簡易診断すると共に、RO(リアリティー・オリエンテーション)に基づいて患者に刺激を与えることができる認知症診断支援システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、認知症検査を実施するための事前知識、認知症検査の実施における注意事項、認知症検査の実施において医療従事者がなすべき言動、及び医療従事者の言動に対する被検者の応答の評価方法、および、認知症検査における被検者の応答を点数に変換するための点数データを医療従事者に提供することにより、認知症検査に対する習熟度に依存せず、均一な検査結果を得ることができる認知症検査支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−282992号公報
【特許文献2】特開2010−259634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術は、患者の認知症の診断や検査、ROを行うものであるが、認知症に対する対応策を提示するものではない。単に診断結果や検査結果を提示するだけでなく、認知症がもたらす中核症状(健忘、失見当識、失認、失行、失語の症状)、中核症状に伴って現れる周辺症状(不安、抑鬱、幻覚、妄想等の精神症状、および、徘徊、不潔行動等の行動障害)に応じて選択された適切な対応策を提示することが望ましいが、上述した従来技術は、そのような処理を行うものではない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑み、患者や介護者に患者の症状に応じた適切な対応策を医師が患者や介護者に提示できるよう、医師を支援することが可能な認知症ケア支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、本発明の第1の技術手段は、認知症に対する対応策情報を出力する認知症ケア支援システムであって、前記認知症の患者または該患者の介護者に対して行う質問の情報と、前記認知症に対する対応策情報とを記憶する記憶部と、前記質問に対する前記患者または前記介護者の回答の情報に基づいて、前記記憶部に記憶された対応策情報のいずれかを選択する対応策情報選択部と、該対応策情報選択部により選択された対応策情報を出力する対応策情報出力部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記対応策情報選択部は、前記回答の情報、および、前記患者または前記介護者に対して質問がなされた際の、該患者または該介護者の言動または情動の情報に基づいて、前記対応策情報のいずれかを選択することを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の技術手段は、第2の技術手段において、前記患者または前記介護者の言動または情動の情報が選択肢の選択、または、テキスト入力により受け付けられる場合に、前記テキスト入力により受け付けられた前記言動または情動の情報の頻度に基づいて、前記選択肢に含める言動または情動の情報を設定する言動・情動情報選択肢設定部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の技術手段は、第1〜第3のいずれかの技術手段において、前記患者または前記介護者に対してすでに行った質問に対する回答結果の情報に基づいて、前記患者または前記介護者に対して行う質問の情報を検索する質問情報検索部と、該質問情報検索部により検索された質問の情報を出力する質問情報出力部とをさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の技術手段は、第1〜第3のいずれかの技術手段において、前記患者の認知症の進行度情報に基づいて、前記患者または前記介護者に対して行う質問の情報を検索する質問情報検索部と、該質問情報検索部により検索された質問の情報を出力する質問情報出力部とをさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の第6の技術手段は、第4または第5の技術手段において、前記質問情報検索部によりユーザが所望する質問が検索されなかった場合に、前記質問情報出力部は、ユーザにより入力された前記質問を前記患者または前記介護者に対して行う質問として出力することを特徴とする。
【0014】
本発明の第7の技術手段は、第1〜第6のいずれかの技術手段において、前記回答が選択肢の選択、または、テキスト入力のいずれかにより受け付けられる場合に、前記テキスト入力により受け付けられた回答の頻度に基づいて、前記選択肢に含める回答を設定する回答選択肢設定部をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の第8の技術手段は、第1〜第7のいずれかの技術手段において、前記対応策情報選択部により選択された対応策情報に対して編集がなされた場合に、該編集後の対応策情報を受け付ける編集情報受付部をさらに備え、前記記憶部は、前記編集情報受付部が受け付けた編集後の対応策情報を記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、患者の症状等を患者および介護者に質問を行うことによって把握し、医師が患者や介護者に患者の症状に応じた適切な対応策を提示できるよう、医師を支援することができる。これにより、介護者が患者に合った適切な対応策を理解し、実行することによって、患者の周辺症状が緩和されることが期待できる。また、認知症患者および介護者の心身の負担を軽減することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る認知症ケア支援システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る端末装置の構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る認知症ケア支援装置の構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る認知症ケア支援処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る質問情報送信処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る回答および言動・情動受付処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る対応策情報送信処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】患者の回答および患者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面の一例を示す図である。
【図9】患者が回答をしている際の介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面の一例を示す図である。
【図10】介護者の回答および介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面の一例を示す図である。
【図11】介護者が回答をしている際の患者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る認知症ケア支援システムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、この認知症ケア支援システムは、端末装置10と認知症ケア支援装置20とがネットワーク30を介して接続されている。なお、ネットワーク30は、有線ネットワークでもよいし、無線ネットワークでもよい。
【0019】
端末装置10は、認知症ケア支援装置20にアクセスして認知症ケアに関するさまざまな情報を取得し、取得した情報を患者や介護者、医師等に提供するパーソナルコンピュータやスマートフォンなどの端末装置である。ここで、介護者とは、患者の家族、福祉施設および特定保健施設の介護職員等を指す。認知症ケア支援装置20は、端末装置10に認知症ケアに関するさまざまな情報を提供するサーバ装置である。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る端末装置10の構成の一例を示す図である。端末装置10は、入力部100、表示部101、ネットワークインターフェース部102、記憶部103、患者情報受付部104、質問情報受付部105、回答情報受付部106、言動・情動情報受付部107、対応策情報受付部108、表示制御部109、制御部110を備える。各機能部100〜110は、バス111を介して相互に接続される。
【0021】
入力部100は、キーボードやマウス、タッチパッドなどの入力デバイスである。表示部101は、液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。入力部100と表示部101は、タッチパネルであってもよい。このタッチパネルは、3インチから15インチの大きさであることが望ましい。このような大きさのタッチパネルは、質問や対応策の情報の閲覧、回答や言動または情動の情報の入力が容易であり、また、携帯にも適する。
【0022】
ネットワークインターフェース部102は、ネットワーク30を介して、認知症ケア支援装置20などの他の装置と接続するネットワークインターフェースである。
【0023】
記憶部103は、フラッシュROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)、HD(Hard Disk)などの記憶デバイスである。
【0024】
この記憶部103は、制御プログラム103a、一時記憶データ103bなどを記憶する。制御プログラム103aは、制御部110により読み出され、端末装置10に各種処理を実行させるコンピュータプログラムである。一時記憶データ103bは、入力部100を介して医師により入力されたデータや、ネットワーク30を介して受信したデータなどの、端末装置10に一時的に記憶されるデータである。
【0025】
患者情報受付部104は、医師が入力部100を介して入力した患者情報を受け付け、その患者情報をネットワークインターフェース部102を介して認知症ケア支援装置20に送信する処理部である。
【0026】
患者情報とは、患者の氏名や年齢、住所、家族構成、生活状況等の基本情報、患者が受けた認知症診断用検査、および、その診断結果の情報(中核症状や周辺症状の情報、認知症診断用検査の採点結果の情報)、患者の病歴、服薬歴の情報などである。
【0027】
認知症診断用検査とは、例えば、Mini Mental State Examination(MMSE)、日本版リバーミード行動記録検査(日本版RBMT)、Frontal Assessment Battery(FAB)等の認知症検査、核磁気共鳴画像法(MRI:Magnetic Resonance Imaging)検査、単一光子放射断層撮影法(SPECT:Single Photon Emission Computed Tomography)検査、血液検査、心電図検査、胸部レントゲン検査などのことである。中核症状は、後に説明するように患者の認知症の進行度に対応付けることができる。
【0028】
質問情報受付部105は、医師が入力部100を介して入力した患者または患者の介護者に対して行う質問の情報を受け付け、その情報をネットワークインターフェース部102を介して認知症ケア支援装置20に送信する処理部である。例えば、質問情報受付部105は、認知症ケア支援装置20から受信した質問の情報に所望のものが含まれていなかった場合に、医師が新たに作成した質問の情報を受け付ける。
【0029】
これにより、医師が独自に質問を作成し、他の患者にもその質問を利用できるようにすることによって、患者の症状を異なる視点から把握することができるようになり、症状を知る判断材料が充実する。
【0030】
回答情報受付部106は、医師が入力部100を介して入力した回答の情報を受け付け、その回答の情報をネットワークインターフェース部102を介して認知症ケア支援装置20に送信する処理部である。この回答の入力は、選択肢の選択、または、テキスト入力により行われる。
【0031】
言動・情動情報受付部107は、医師が入力部100を介して入力した患者または介護者の言動または情動の情報を受け付け、その情報をネットワークインターフェース部102を介して認知症ケア支援装置20に送信する処理部である。この言動または情動の情報の入力は、選択肢の選択、または、テキスト入力により行われる。
【0032】
対応策情報受付部108は、医師が入力部100を介して入力した認知症に対する対応策情報を受け付け、その対応策情報をネットワークインターフェース部102を介して認知症ケア支援装置20に送信する処理部である。例えば、対応策情報受付部108は、認知症ケア支援装置20から受信した対応策情報の一部を医師が編集する場合に、医師により編集された対応策情報を受け付ける。また、対応策情報受付部108は、医師が独自に作成した新規の対応策情報を受け付ける。
【0033】
表示制御部109は、表示部101に対する情報の表示を制御する制御部である。例えば、表示制御部109は、表示部101を制御して、認知症ケア支援装置20から受信した情報を表示部101に表示させる処理を行う。
【0034】
制御部110は、端末装置10の各機能部100〜109を制御するとともに、記憶部103に記憶されている制御プログラム103aを実行するCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの制御デバイスである。
【0035】
なお、端末装置10にプリンタを接続し、認知症ケア支援装置20から受信した対応策情報を印刷することとしてもよい。
【0036】
つぎに、本発明の実施形態に係る認知症ケア支援装置20の構成について説明する。図3は、本発明の実施形態に係る認知症ケア支援装置20の構成の一例を示す図である。認知症ケア支援装置20は、入力部200、表示部201、ネットワークインターフェース部202、記憶部203、情報受付部204、患者特定部205、質問情報検索部206、質問情報出力部207、回答選択肢設定部208、言動・情動選択肢設定部209、選択肢情報出力部210、回答判定部211、対応策情報選択部212、編集情報受付部213、対応策情報出力部214、表示制御部215、制御部216を備える。各機能部200〜216はバス217を介して相互に接続される。
【0037】
入力部200は、キーボードやマウスなどの入力デバイスである。表示部201は、液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。ネットワークインターフェース部202は、ネットワーク30を介して、端末装置10などの他の装置と接続するネットワークインターフェースである。
【0038】
記憶部203は、フラッシュROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)、HD(Hard Disk)などの記憶デバイスである。
【0039】
この記憶部203は、制御プログラム203a、患者データ203b、質問データ203c、回答データ203d、言動・情動データ203e、対応策データ203f、一時記憶データ203gなどを記憶する。
【0040】
制御プログラム203aは、制御部216により読み出され、認知症ケア支援装置20に各種処理を実行させるコンピュータプログラムである。患者データ203bは、端末装置10から受信した患者情報を記憶したデータである。また、患者データ203bは、特定の患者にのみ使用される、医師により編集された対応策情報を、その患者の患者情報に対応付けて記憶する。
【0041】
質問データ203cは、患者または患者の介護者に対して行う質問の情報を記憶したデータである。各質問の情報には、患者情報に関する質問、特有の症状に関する質問、患者および介護者の両者に対する質問を区別するための質問種別フラグが付加されている。
【0042】
この質問データ203cでは、質問の情報、質問種別フラグ、認知症の進行度を表す指標としての中核症状や周辺症状の情報、質問に対する回答の選択肢の情報、質問時にみられる言動または情動の選択肢の情報が対応付けて記憶される。
【0043】
中核症状とは、健忘、失見当識、失認、失行、失語の症状を指す。周辺症状とは、不安、抑鬱、幻覚、妄想等の精神症状、および、徘徊、不潔行動等の行動障害を指す。例えば、認知症の初期には、健忘の中核症状が現れ、中期には、失見当識の中核症状が現れ、後期には、失認、失行、失語の中核症状が現れる。よって、認知症の進行度は、中核症状を用いて表すことができる。
【0044】
このようなことから、中核症状が指定されれば、認知症の進行度に対応する質問が検索できる。そして、このような質問に対する回答や、質問時にみられる言動または情動の情報に基づいて、対応策を選択することにより、中核症状やそれに伴う周辺症状の要因を解決するための対応策を患者や介護者に提示することができる。また、数ある質問の中から、認知症の進行度に応じた質問を選択することにより、患者の症状にあった適切な対応策を提示することができる。
【0045】
なお、中核症状に対応付けて、複数の質問の情報が質問データ203cに登録されている場合、各質問の情報には優先度の情報が付加されているものとする。そして、中核症状が指定されると、優先度の高い質問の情報から検索がなされる。
【0046】
さらに、端末装置10から、医師により新たに作成された質問の情報、質問種別フラグの情報、中核症状や周辺症状の情報、優先度の情報が送信された場合には、質問データ203cには、予め登録された情報に加えて、それらの情報が記憶される。
【0047】
なお、質問データ203cに含まれる質問は、Mini Mental State Examination(MMSE)、日本版リバーミード行動記録検査(日本版RBMT)、Frontal Assessment Battery(FAB)等の公知の認知症検査で用いられる質問を含むこととしてもよい。このような質問を質問データ203cに含め、それを質問の選定や対応策の選定に反映することによって、患者に合った対応策を提示することができる。
【0048】
回答データ203dは、端末装置10から受信した回答の情報を記憶したデータである。この回答データ203dには、選択肢の選択により選択された回答の情報と、テキスト入力により入力された回答の情報が含まれる。そして、テキスト入力により入力された回答の情報には、各回答の頻度の情報が合わせて記憶される。
【0049】
言動・情動データ203eは、端末装置10から受信した患者または介護者の言動または情動の情報を記憶したデータである。この言動・情動データ203eには、選択肢の選択により選択された言動または情動の情報と、テキスト入力により入力された言動または情動の情報が含まれる。そして、テキスト入力により入力された言動または情動の情報には、各言動または情動の情報の頻度の情報が合わせて記憶される。
【0050】
対応策データ203fは、認知症に対する対応策情報を記憶したデータである。対応策データ203fでは、対応策情報が、質問の情報、患者、介護者、または、患者および介護者の両者の回答の情報、患者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報、介護者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報に対応付けて記憶されている。対応策情報には、症状を引き起こしている原因、患者の状況、患者が拘泥する点、患者の症状の特徴、その症状を改善するための工夫や対応策などの情報が含まれる。
【0051】
この対応策データ203fには、予め登録された対応策情報に加えて、医師により新規に作成され、不特定の患者に利用される対応策情報が含まれる。なお、医師により編集された対応策情報は、特定の患者にのみ使用されるため、その患者の患者情報に対応付けて患者データ203bに記憶するが、医師により編集された対応策情報を対応策データ203fに記憶してもよい。この場合には、編集前の対応策情報を更新せずに、編集前の対応策情報と対応付けて編集後の対応策情報を記憶することとすればよい。
【0052】
一時記憶データ203gは、ネットワーク30を介して受信したデータなどの、認知症ケア支援装置20に一時的に記憶されるデータである。
【0053】
情報受付部204は、入力部200を介して医師により入力された情報や、ネットワーク30を介して、端末装置10などの他の装置により送信された情報を受け付け、受け付けた情報を記憶部203に記憶する処理部である。
【0054】
患者特定部205は、端末装置10から患者の氏名や名称などの情報が送信された場合に、その情報を用いて処理対象とする患者を特定し、特定した患者に対応する患者情報を患者データ203bから読み出す処理部である。
【0055】
質問情報検索部206は、患者特定部205により特定された患者、または、その患者の介護者に対して行う質問の情報を、質問データ203から検索する処理部である。例えば、質問情報検索部206は、その患者の中核症状に応じた質問の情報を質問データ203cから検索する。
【0056】
また、中核症状に対応付けて、複数の質問の情報が質問データ203cに登録されている場合、質問情報検索部206は、各質問の優先度の情報を参照し、優先度の高い質問の情報から検索を行う。
【0057】
なお、ある進行度に対応する中核症状が複数ある場合には、最も重い中核症状を見分ける典型的な質問を患者または介護者に対して行い、質問情報検索部206は、その結果から最も重い中核症状を判定し、その中核症状に対応する質問の情報を検索することとしてもよい。典型的な質問とは、例えば、中核症状が発症する原因が患者にあったか否かを調べるための質問である。
【0058】
この場合、質問情報検索部206は、ネットワークインターフェース部202を介して、最も重い中核症状を見分ける典型的な質問の情報を端末装置10に送信し、端末装置10により送信された回答の情報を取得して、上記判定を行う。
【0059】
また、中核症状が発症する原因が複数ある場合には、質問情報検索部206は、どの原因により中核症状が発症したのかを見分けるための副次的な質問を患者または患者の介護者に対して行い、その結果から原因を特定することとしてもよい。特定された原因は、対応策情報とともに端末装置10に送信される。
【0060】
この場合、質問データ203cには、中核症状に対応付けて、その中核症状を発症させる複数の原因の情報と、どの原因によりその中核症状が発症したのかを見分けるための質問の情報が記憶される。そして、中核症状が指定された場合、質問情報検索部206は、質問データ203cを参照し、その中核症状に複数の原因があるか否かを判定する。そして、その中核症状に複数の原因がある場合、質問情報検索部206は、指定された中核症状がどの原因により発症したのかを見分けるための質問の情報を検索する。
【0061】
質問情報出力部207は、質問情報検索部206により検索された質問の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する処理部である。この質問の情報には、予め質問データ203cとして記憶部203に記憶されていた質問の情報だけでなく、医師により新たに作成された質問の情報も含まれ得る。
【0062】
回答選択肢設定部208は、端末装置10が、患者または介護者に対して行う質問の回答を選択肢の選択、または、テキスト入力のいずれかにより受け付ける場合に、テキスト入力により受け付けられた回答の頻度に基づいて、選択肢に含める回答を設定する処理部である。
【0063】
この場合、回答選択肢設定部208は、頻度が高い回答から所定の数だけ回答を選択する。そして、回答選択肢設定部208は、選択した回答を、端末装置10が医師に回答の入力を促す際に表示する選択肢として設定する。
【0064】
これにより、どのような回答でも例外なく選択肢に含めることができ、医師が回答をテキスト入力する必要がなくなるので、入力時間を短縮することができる。なお、上記所定の数は、特に制限されるものではないが、3〜6が好ましい。
【0065】
言動・情動選択肢設定部209は、端末装置10が、患者または介護者の言動または情動の情報を選択肢の選択、または、テキスト入力により受け付ける場合に、テキスト入力により受け付けられた言動または情動の情報の頻度に基づいて、選択肢に含める言動または情動の情報を設定する処理部である。
【0066】
この場合、言動・情動選択肢設定部209は、頻度が高い言動または情動の情報から所定の数だけ言動または情動の情報を選択する。そして、言動・情動選択肢設定部209は、選択した言動または情動の情報を、端末装置10が医師に言動または情動の情報の入力を促す際に表示する選択肢として設定する。
【0067】
これにより、どのような言動または情動の情報でも例外なく選択肢に含めることができ、医師が言動または情動の情報をテキスト入力する必要がなくなるので、入力時間を短縮することができる。なお、上記所定の数は、特に制限されるものではないが、3〜6が好ましい。
【0068】
選択肢情報出力部210は、回答選択肢設定部208、または、言動・情動選択肢設定部209により設定された選択肢の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する処理部である。
【0069】
回答判定部211は、患者の回答が正しいか否か、患者に特有の症状があるか否かを判定する処理部である。具体的には、回答判定部211は、患者の回答に対応する質問の質問種別フラグの情報を質問データ203cから読み出し、その質問が、患者情報に関する質問、特有の症状に関する質問、患者および介護者の両者に対する質問のいずれであるのかを判定する。
【0070】
そして、その質問が患者情報に関する質問である場合、回答判定部211は、患者の回答を患者データ203bに記憶された患者情報と照合することによって、患者の回答が正しいか否かを判定する。
【0071】
また、その質問が特有の症状に関する質問である場合、回答判定部211は、端末装置10から特有の症状があるとの回答を受け付けた場合に、患者に特有の症状があると判定する。
【0072】
また、その質問が患者および介護者の両者に対する質問である場合、回答判定部211は、患者の回答と介護者の回答とを照合することによって、患者の回答が正しいか否かを判定する。
【0073】
対応策情報選択部212は、回答判定部211によりなされた判定の結果や、患者や介護者の回答の情報、患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報のすべて、または、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、記憶部203に対応策データ203fとして記憶された対応策情報のいずれかを選択する処理部である。
【0074】
具体的には、対応策情報選択部212は、患者の回答が正しくなかった質問の情報、患者や介護者の回答の情報、質問をした際の患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報のすべて、または、少なくとも1つ以上の情報に対応する対応策情報を、対応策データ203fに記憶された対応策情報の中から選択する。
【0075】
編集情報受付部213は、対応策情報選択部212により選択された対応策情報の編集を医師が端末装置10を操作して行った場合に、その編集後の対応策情報を取得し、取得した対応策情報を、現在判断対象としている患者の患者情報に対応付けて、記憶部203の患者データ203bに記憶し、または、その対応策情報を編集前の対応策情報と対応付けて、記憶部203の対応策データ203fに記憶する処理部である。
【0076】
対応策情報出力部214は、対応策情報選択部212により選択された対応策情報、または、編集情報受付部213により取得され、記憶部203に記憶された編集後の対応策情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する処理部である。対応策情報選択部212により選択された対応策情報には、医師により新規に作成された対応策情報が含まれ得る。
【0077】
このように、医師により新規に作成された対応策情報を認知症ケア支援装置20が管理し、さまざまな患者に対する認知症のケアに利用することにより、より適切な対応策を患者および介護者に提示することができるようになる。また、対応策が充実し、患者および介護者が試みることができる対応策の選択肢を増やすことができる。
【0078】
また、対応策情報出力部214は、患者データ203bから患者情報を読み出し、回答データ203dから患者または介護者の回答の情報を読み出し、または、言動・情動データ203eから言動または情動の情報を読み出し、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に読み出した情報を送信する。
【0079】
これにより、医師は、患者が受けた認知症診断用検査、および、その診断結果の情報(中核症状や周辺症状の情報、認知症診断用検査の採点結果の情報)、患者の病歴、服薬歴の情報と、患者または介護者の回答の情報、患者または介護者の言動または情動の情報、対応策情報とを比較することができ、患者の症状の経時変化を捉え、対応策の効果を確認できる。また、医師は、経時変化から今後の症状を推測し、それを質問選定および対応策選定に反映させることができる。
【0080】
表示制御部215は、表示部201に対する情報の表示を制御する制御部である。制御部216は、認知症ケア支援装置20の各機能部200〜215を制御するとともに、記憶部203に記憶されている制御プログラム203aを実行するCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの制御デバイスである。
【0081】
以上のように、認知症ケア支援装置20がサーバとして機能して、質問や対応策の情報の選定、患者情報、質問の情報、回答の情報、言動または情動の情報等の蓄積を行い、ネットワーク30を介してそれらの情報を提供することにより、病院や地域、国等の一定区域、または世界各国の病院間で情報を共有し、ある医師が独自に作成した質問や対応策等を幅広い地域で閲覧または利用することができる。また、患者や介護者が患者情報や対応策を閲覧することもできる。
【0082】
また、端末装置10が、質問や対応策の情報の表示、患者情報、患者または介護者の回答の情報、言動または情動の情報等の入力を行うことにより、質問の実施や対応策の提示を行う場所が限定されない。また、訪問診察時にこの認知症ケア支援システムを利用することが可能となる。
【0083】
また、上記実施形態では、端末装置10が備える各機能部と、認知症ケア支援装置20が備える各機能部について説明したが、端末装置10の各機能部と認知症ケア支援装置20の各機能部とを1台の装置が備えることとしてもよい。また、端末装置10が備える各機能部の一部を認知症ケア支援装置20に備えることとしてもよいし、認知症ケア支援装置20が備える各機能部の一部を端末装置10に備えることとしてもよい。
【0084】
つぎに、本発明の実施形態に係る認知症ケア支援処理の処理手順について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る認知症ケア支援処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0085】
医師が端末装置10を操作して患者情報を入力し、その患者情報が認知症ケア支援装置20に送信された場合、認知症ケア支援装置20の情報受付部204は、その患者情報を受け付け、受け付けた患者情報を記憶部203に患者データ203bとして記憶する(ステップS101)。
【0086】
そして、認知症ケア支援装置20の質問情報検索部206、質問情報出力部207は、患者または介護者に対する質問の情報を端末装置10に送信する質問情報送信処理を実行する(ステップS102)。送信された質問の情報は、端末装置10の表示部101に表示される。この質問情報送信処理については、後に図5を用いて詳しく説明する。
【0087】
そして、質問に対する回答の情報、および、患者または介護者の言動または情動の情報が端末装置10により送信された場合、認知症ケア支援装置20の情報受付部204は、回答の情報、および、言動または情動の情報を受け付ける回答および言動・情動情報受付処理を実行する(ステップS103)。この回答および言動・情動情報受付処理については、後に図6を用いて詳しく説明する。
【0088】
そして、認知症ケア支援装置20の回答判定部211、対応策情報選択部212、対応策情報出力部214は、回答の情報、患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報に基づいて、認知症に対する対応策情報を端末装置10に送信する対応策情報送信処理を実行する(ステップS104)。送信された対応策の情報は、端末装置10の表示部101に表示される。この対応策情報送信処理については、後に図7を用いて詳しく説明する。
【0089】
その後、認知症ケア支援装置20の対応策情報選択部212は、すべての質問が完了したか否かを判定する(ステップS105)。すべての質問が完了していない場合(ステップS105においてNOの場合)、ステップS102に移行し、患者または介護者に対するつぎの質問の情報を送信する質問情報送信処理を実行する。すべての質問が完了した場合(ステップS105においてYESの場合)、この認知症ケア支援処理は終了する。
【0090】
つぎに、図4のステップS102に示した質問情報送信処理について説明する。図5は、本発明の実施形態に係る質問情報送信処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0091】
まず、医師が端末装置10を操作して中核症状を含む患者情報を入力し、その患者情報が認知症ケア支援装置20に送信された場合、認知症ケア支援装置20の情報受付部204は、その患者情報から中核症状の情報を取得し、その情報を患者の中核症状の情報として受け付ける(ステップS201)。
【0092】
そして、認知症ケア支援装置20の質問情報検索部206は、患者または介護者に対して行う質問を自動で検索するように設定されているか否かを判定する(ステップS202)。この設定情報は、予め記憶部203などに記憶しておき、必要に応じて変更される。
【0093】
質問を自動で検索するように設定されている場合(ステップS202においてYESの場合)、質問情報検索部206は、質問を自動で検索する(ステップS203)。具体的には、質問情報検索部206は、ステップS201で受け付けた中核症状に対応する質問の情報を、質問データ203cから優先度の高い順に検索する。
【0094】
なお、質問情報検索部206は、患者情報、患者または介護者に対して以前なされた質問に対する回答の情報、その回答を受け付けた際の患者または介護者の言動または情動の情報などに関連する質問を優先して検索することとしてもよい。
【0095】
例えば、質問情報検索部206は、図4のステップS101で受け付けた患者情報の一部または全部に対応する質問を、それ以外の質問に優先して検索することとしてもよい。この場合、質問データ203cには、各質問に対応付けて、患者の氏名や年齢、住所、家族構成、生活状況等の基本情報、患者が受けた認知症診断用検査、および、その診断結果の情報(中核症状や周辺症状の情報、認知症診断用検査の採点結果の情報)、患者の病歴、服薬歴の情報などを記憶しておく。
【0096】
そして、質問情報検索部206は、図4のステップS101で受け付けた患者情報の一部または全部に対応する質問を、質問データ203cから検索する。
【0097】
また、例えば、質問情報検索部206は、以前患者の回答が正しくなかった質問、または、患者の回答と介護者の回答とが一致しなかった質問を、優先して検索することとしてもよい。この場合、質問情報検索部206は、上記質問を他の質問と区別するためのフラグを上記質問の情報と対応付けて質問データ203cに記憶しておき、そのフラグを参照して検索を行う。
【0098】
以前患者の回答が正しくなかった質問、または、患者の回答と介護者の回答とが一致しなかった質問が複数ある場合には、質問情報検索部206は、各質問に割り当てられた優先度の高いものから検索すればよい。
【0099】
また、例えば、質問情報検索部206は、以前その患者または介護者が行った他の質問に対する回答や、その回答を受け付けた際の患者または介護者の言動または情動の情報に対応する質問の情報を、それ以外の質問の情報に優先して検索することとしてもよい。この場合、質問データ203cには、各質問の情報に対応付けて、他の質問に対する回答の情報、および、言動または情動の情報を記憶しておく。
【0100】
そして、質問情報検索部206は、以前その患者または介護者が行った他の質問に対する回答や、その回答を受け付けた際の患者または介護者の言動または情動の情報に対応する質問の情報を質問データ203cから検索する。
【0101】
これにより、以前になされた質問の回答に基づいて提示した対応策の実施状況や効果を確認することができ、また、患者の症状に適した質問を行うことができる。
【0102】
また、質問情報検索部206は、認知症が発症する原因が複数ある場合に、患者が関係する原因がどれかを判断するための質問を、他の質問よりも優先して検索することとしてもよい。この場合、質問データ203cでは、患者が関係する原因がどれかを判断するための質問の優先度を、その他の質問の優先度よりも高くしておけばよい。
【0103】
また、質問情報検索部206は、認知症の進行度が所定のレベルよりも進んでいる場合に、患者に対する質問を検索せずに、介護者に対する質問を検索することとしてもよい。これは、認知症が進行すると、患者の回答能力が低下して患者の回答内容の信頼性が下がり、正しい回答を必要とする質問に対して、介護者による回答が必要となるためである。
【0104】
認知症の進行度のレベルは、例えば、健忘の中核症状が現れる初期レベル、失見当識の中核症状が現れる中期レベル、失認、失行、失語の中核症状が現れる後期レベルに分類できる。
【0105】
この場合、質問データ203cには、各質問の情報に対応付けて、患者用の質問か、介護者用の質問か、患者および介護者の両者に対する質問かを区別する質問対象者フラグを記憶しておく。そして、質問情報検索部206は、認知症の進行度が失見当識の中核症状が現れる中期レベルよりも進んでいる場合に、質問データ203cに記憶された質問対象者フラグを参照し、介護者用の質問の情報を優先度の高い順から検索すればよい。
【0106】
ステップS203の処理の後、質問情報出力部207は、質問情報検索部206により検索された質問の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する(ステップS204)。そして、この質問情報送信処理は終了する。
【0107】
なお、質問に対する回答や、患者または介護者の言動・情動情報を医師に選択肢により選択させる場合、それらの選択肢の情報を質問の情報とともに端末装置10に送信する。
【0108】
具体的には、回答選択肢設定部208は、質問データ203cにおいて、質問の情報と対応付けて記憶されている回答の選択肢の情報を読み出し、また、言動・情動選択肢設定部209は、質問データ203cにおいて、質問の情報と対応付けて記憶されている言動または情動の選択肢の情報を読み出し、選択肢情報出力部210が、それらの選択肢の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する。
【0109】
ここで、回答選択肢設定部208は、端末装置10がテキスト入力により受け付けた回答の頻度が所定の値よりも大きい場合、その回答の情報を回答の選択肢の情報に含めることとする。また、言動・情動選択肢設定部209は、端末装置10がテキスト入力により受け付けた言動または情動の情報の頻度が所定の値よりも大きい場合、その言動または情動の情報を言動または情動の選択肢の情報に含めることとする。
【0110】
ステップS202において、患者または介護者に対しいて行う質問を自動で検索するように設定されていない場合(ステップS202においてNOの場合)、質問情報検索部206は、端末装置10から送信されたキーワードの情報を用いてキーワード検索を行い、または、端末装置10から送信されたカテゴリの指定情報を用いてカテゴリ検索を行う(ステップS205)。このキーワードの情報、または、カテゴリの指定情報は、医師が端末装置10を操作して入力した情報である。
【0111】
その後、質問情報出力部207は、質問情報検索部206により検索された質問の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する(ステップS206)。
【0112】
なお、質問に対する回答や、患者または介護者の言動または情動の情報を医師に選択肢により選択させる場合、選択肢情報出力部210は、前述のようにネットワークインターフェース部202を介して、それらの選択肢の情報を端末装置10に送信する。また、回答選択肢設定部208および言動・情動選択肢設定部209は、テキスト入力により受け付けられた回答の頻度に基づいて、選択肢に含める回答や言動または情動の情報を設定する。
【0113】
そして、質問情報検索部206は、端末装置10から新規質問を作成する旨の通知を受け付けたか否かを判定する(ステップS207)。この通知は、医師が端末装置10を操作して、新規質問の作成要求を行った場合に、端末装置10から送信される。
【0114】
端末装置10から新規質問を作成する旨の通知を受け付けず、端末装置10からステップS206で送信した質問に対する回答や、言動または情動の情報が送信された場合(ステップS207においてNOの場合)、この質問情報送信処理は終了する。
【0115】
端末装置10から新規質問を作成する旨の通知を受け付けた場合(ステップS207においてYESの場合)、情報受付部204は、端末装置10により送信された新規質問の情報を受け付ける(ステップS208)。そして、情報受付部204は、新規質問の情報を質問データ203cに追加する(ステップS209)。
【0116】
ここで、端末装置10からは、新規質問の情報に加えて、質問種別フラグ、中核症状や周辺症状の情報、質問に対する回答の選択肢の情報、質問時にみられる言動または情動の選択肢の情報なども併せて送信される。情報受付部204は、これらの情報に対応付けて、新規質問の情報を質問データ203cに記憶する。
【0117】
その後、質問情報検索部206は、質問データ203cに追加した新規質問の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信し(ステップS210)、この質問情報送信処理は終了する。この情報を受信した端末装置10は、受信した新規質問の情報を、患者または介護者に対して行う質問として表示部201に表示する。
【0118】
また、ここでは、新規質問の情報を質問データ203cに追加することとしたが、回答の選択肢の情報や、言動または情動の選択肢の情報を新たに受け付けることとしてもよい。
【0119】
この場合、端末装置10を操作して医師が入力した回答の選択肢の情報を、回答選択肢設定部208が取得し、回答選択肢設定部208が、その回答の選択肢の情報を、質問の情報に対応付けて質問データ203bに記憶する。
【0120】
また、端末装置10を操作して医師が入力した言動または情動の選択肢の情報を、言動・情動選択肢設定部209が取得し、言動・情動選択肢設定部209が、その言動または情動の選択肢の情報を、質問の情報に対応付けて質問データ203bに記憶する。
【0121】
そして、その質問の情報が端末装置10に送信される場合、選択肢情報出力部210は、その質問に対応する回答の選択肢の情報、および、言動または情動の選択肢の情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する。
【0122】
回答の選択肢の情報、言動または情動の選択肢の情報を受信した端末装置10は、回答の選択肢の情報、言動または情動の情報を選択肢として表示し、回答の情報、言動または情動の情報の選択を受け付ける。
【0123】
つぎに、図4のステップS103に示した回答および言動・情動受付処理について説明する。図6は、本発明の実施形態に係る回答および言動・情動受付処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0124】
まず、認知症ケア支援装置20の情報受付部204は、端末装置10により送信された患者または介護者の回答の情報、患者または介護者の言動または情動の情報を受け付ける(ステップS301)。ここで、回答の情報、および、言動または情動の情報は、複数の選択肢の中から選択された項目の情報、または、テキスト入力により入力された情報である。
【0125】
そして、情報受付部204は、受け付けた回答の情報が患者の回答の情報であるか否かを判定する(ステップS302)。なお、受け付けた回答の情報には、端末装置10により患者の情報か、介護者の情報かを識別するための識別フラグが付加されており、情報受付部204は、この識別フラグを参照して、上記判定を行う。
【0126】
受け付けた回答が患者の回答の情報であった場合(ステップS302においてYESの場合)、情報受付部204は、受け付けた患者の回答の情報を、患者の情報であることを示す識別フラグとともに、記憶部203に回答データ203dとして記憶する(ステップS303)。
【0127】
受け付けた回答が患者の回答の情報でなかった場合(ステップS302においてNOの場合)、受け付けた回答は介護者の回答の情報であるので、情報受付部204は、受け付けた介護者の回答の情報を、介護者の情報であることを示す識別フラグとともに、記憶部203に回答データ203dとして記憶する(ステップS304)。
【0128】
ステップS303またはステップS304の処理の後、情報受付部204は、ステップS301で受け付けた患者の言動または情動の情報を、患者の情報であることを示す識別フラグとともに、記憶部203に言動・情動データ203eとして記憶する(ステップS305)。
【0129】
さらに、情報受付部204は、ステップS301で受け付けた介護者の言動または情動の情報を、介護者の情報であることを示す識別フラグとともに、記憶部203に言動・情動データ203eとして記憶し(ステップS306)、この言動・情動受付処理を終了する。
【0130】
つぎに、図4のステップS104に示した対応策情報送信処理について説明する。図7は、本発明の実施形態に係る対応策情報送信処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0131】
まず、認知症ケア支援装置20の回答判定部211は、質問が患者に対して行う患者情報に関するものであったか否かを判定する(ステップS401)。具体的には、対応策情報選択部204は、質問データ203cに記憶されている質問種別フラグを参照して、上記判定を行う。
【0132】
質問が患者に対して行う患者情報に関する質問であった場合(ステップS401においてYESの場合)、回答判定部211は、受け付けた患者の回答の情報を患者データ203bに記憶された患者情報と照合し、患者の回答が正しいか否かを判定する(ステップS402)。
【0133】
患者の回答が正しい場合(ステップS402においてYESの場合)、そのままこの対応策情報送信処理は終了し、図4のステップS105の処理に移行する。患者の回答が正しくない場合(ステップS402においてNOの場合)、対応策情報選択部204は、患者や介護者の回答の情報、患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報のすべて、または、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、患者の認知症に対する対応策情報を選択する(ステップS403)。
【0134】
具体的には、対応策情報選択部204は、対応策データ203fを参照し、患者や介護者の回答の情報、患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報のすべて、または、少なくとも1つ以上の情報に対応付けて対応策データ203fに記憶されている対応策情報を読み出し、読み出した対応策情報を端末装置10に送信する対応策情報として選択する。なお、この対応策情報には、医師により新規に作成され、対応策データ203fに記憶された対応策情報が含まれる。
【0135】
前述のように、対応策情報には、症状を引き起こしている原因、患者の状況、患者が拘泥する点、患者の症状の特徴、その症状を改善するための工夫や対応策などの情報が含まれる。
【0136】
そして、患者が質問に回答している間の介護者の言動または情動の情報、介護者が質問に回答している間の患者の言動または情動の情報などに基づいて、対応策情報を選択することにより、介護者の患者についての理解度や、患者と介護者の間の関係を考慮した適切な対処法を選択できる。また、患者の症状の特徴、患者の拘泥する点、介護者の理解度や患者と介護者との関係性が明確となり、患者と介護者に合った適切な対応策を提示することができる。
【0137】
ステップS403の後、対応策情報出力部214は、対応策情報選択部212が選択した対応策情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信する(ステップS404)。そして、対応策情報を受信した端末装置10は、その対応策情報を表示する。
【0138】
その後、編集情報受付部213は、対応策情報が端末装置10に表示された結果、端末装置10から対応策情報の編集指示情報を受け付けたか否かを判定する(ステップS405)。この編集指示情報には、医師が端末装置10を操作して編集した対応策情報が含まれる。
【0139】
端末装置10から対応策情報の編集指示情報を受け付けた場合(ステップS405においてYESの場合)、編集情報受付部213は、対応策データ203fに記憶されている編集前の対応策情報を編集後の対応策情報で更新する(ステップS406)。
【0140】
そして、ステップS404に移行して、対応策情報出力部214は、編集後の対応策情報を、ネットワークインターフェース部202を介して端末装置10に送信し、その後の処理が継続される。
【0141】
このように、医師が対応策情報の最終確認を行い、対応策を編集することにより、それぞれの患者および介護者に合わせて、より適切な対応策を患者および介護者に提示することができる。
【0142】
ステップS405において、端末装置10から対応策情報の編集指示情報を受け付けず、処理が完了したことを示す情報を受け付けた場合(ステップS405においてNOの場合)、この対応策情報送信処理は終了する。
【0143】
ステップS401において、質問が患者情報に関する質問でなかった場合(ステップS401においてNOの場合)、回答判定部211は、質問が周辺症状などの特有の症状の有無に関する質問であったか否かを判定する(ステップS407)。具体的には、対応策情報選択部204は、質問データ203cに記憶されている質問種別フラグを参照して、上記判定を行う。
【0144】
質問が周辺症状などの特有の症状の有無に関する質問であった場合(ステップS407においてYESの場合)、回答判定部211は、特有の症状があるとの回答があったか否かを判定する(ステップS408)。
【0145】
特有の症状があるとの回答があった場合(ステップS408においてYESの場合)、ステップS403に移行して、対応策情報選択部204は、患者や介護者の回答の情報、患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報のすべて、または、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、患者の認知症に対する対応策情報を選択し、その後の処理を継続する。特有の症状はないとの回答があった場合(ステップS408においてNOの場合)、そのままこの対応策情報送信処理は終了する。
【0146】
ステップS407において、質問が特有の症状の有無に関する質問でなかった場合(ステップS407においてNOの場合)、質問は、患者および介護者の両者に対する質問であることになる。そのため、回答判定部211は、同一の質問に対して、患者と介護者の両方の回答の情報が得られているか否かを判定する(ステップS409)。
【0147】
患者と介護者の両方の回答の情報が得られていない場合(ステップS409においてNOの場合)、そのままこの対応策情報送信処理は終了する。患者と介護者の両方の回答の情報が得られている場合(ステップS409においてYESの場合)、回答判定部211は、患者の回答の情報と介護者の回答の情報とを照合することによって、患者の回答の情報と介護者の回答の情報とが一致するか否かを判定する(ステップS410)。
【0148】
患者の回答の情報と介護者の回答の情報とが一致する場合(ステップS410においてYESの場合)、そのままこの対応策情報送信処理は終了する。患者の回答の情報と介護者の回答の情報とが一致しない場合(ステップS410においてNOの場合)、ステップS403に移行して、対応策情報選択部204は、患者や介護者の回答の情報、患者や介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報のすべて、または、少なくとも1つ以上の情報に基づいて、患者の認知症に対する対応策情報を選択し、その後の処理が継続される。
【0149】
なお、図7のステップS406では、対応策情報の編集を受け付けることとしたが、新たな対応策情報の追加を受け付けることとしてもよい。この場合、編集情報受付部213は、端末装置10により送信された対応策情報を取得する。また、編集情報受付部213は、対応策情報と合わせて、端末装置10により送信された関連情報、すなわち、質問の情報、患者、介護者、または、患者および介護者の両者の回答の情報、患者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報、介護者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報、中核症状(認知症の進行度)や周辺症状の情報、患者情報などの情報を取得する。
【0150】
ここで、対応策情報および関連情報は、対応策データ203fに新たに追加するように医師が端末装置10を操作して入力した情報である。そして、編集情報受付部213は、取得した対応策情報を、上記関連情報に対応付けて対応策データ203fに記憶する。
【0151】
このように、医師が独自に対応策情報を作成し、他の患者にもその対応策情報を利用できるようにすることによって、より適切な対応策を患者および介護者に提示することができる。また、対応策が充実し、患者および介護者が試す対応策の選択肢を増やすことができる。
【0152】
つぎに、患者や介護者からの回答および言動または情動の情報を受け付ける受付画面について説明する。図8は、患者の回答および患者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面40の一例を示す図である。
【0153】
図8には、医師が「家の中で徘徊がありますか?」という質問を患者に行い、患者が「ない」と回答した場合の例が示されている。また、受付画面40には、「付添人に尋ねる」、「聞き返す」、「ひとりで考え続ける」、「分からないとイライラする」、「答えない」、「立ち去る」という言動または情動の情報を選択するチェックボックスが示されている。ただし、図8では、どのチェックボックスもチェックされていない。このことは、上記のような患者の言動または情動が特に示されなかったことを意味する。
【0154】
さらに、受付画面40には、「拒絶」、「怒り」、「暴力」、「泣く」という言動または情動の情報について、「無」、「弱」、「強」という患者の反応の程度を示すラジオボタンが示されている。ただし、図8では、すべて「無」のラジオボタンが選択されている。このことは、上記のような患者の言動や情動が特に示されなかったことを意味する。
【0155】
図8の場合、患者の回答の情報として「NO」という情報が、また、患者の言動または情動の情報として「無」という情報が認知症ケア支援装置20に送信されることになる。
【0156】
図9は、患者が回答をした際の介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面41の一例を示す図である。図9には、医師が「家の中で徘徊がありますか?」という質問を患者に行い、患者が「NO」と回答した際の介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面41の例が示されている。
【0157】
この受付画面41には、「否定する」、「肯定する」、「指導する」、「無視する」、「答える」という言動または情動の情報を選択するチェックボックスが示されている。そして、図9では、「否定する」が選択されている。
【0158】
さらに、受付画面41には、「怒り」、「悲しみ」、「安心」という言動または情動の情報について、「無」、「弱」、「強」という介護者の反応の程度を示すラジオボタンが示されている。そして、図9では、「怒り」について「弱」のラジオボタンが選択されている。すなわち、この例は、患者が家の中で徘徊していないとの事実と異なる回答したことに対して、介護者が弱い怒りを感じているという状況にあることを示している。
【0159】
この場合、患者が質問に対して「NO」と回答したことに対する介護者の言動または情動の情報として、「否定する」という情報と、「怒り・弱」という情報とが認知症ケア支援装置20に送信されることになる。
【0160】
図10は、介護者の回答および介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面42の一例を示す図である。図10には、医師が「家の中で徘徊がありますか?」という質問を介護者に行い、介護者が「ある」と回答した際の介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面42の例が示されている。
【0161】
また、受付画面42には、「指導する」、「叱責する」、「覚えていない」という言動または情動の情報を選択するチェックボックスが示されている。そして、図10では、「叱責する」がチェックされている。
【0162】
さらに、受付画面42には、「拒絶」、「怒り」、「投げやり」、「悲しみ」、「不安」という言動または情動の情報について、「無」、「弱」、「強」という介護者の反応の程度を示すラジオボタンが示されている。そして、「怒り」について「弱」のラジオボタンが選択されている。
【0163】
すなわち、この例は、介護者が患者に対して「叱責する」という行動をとったため、介護者の言動・情動情報として、「叱責する」という情報が、また、介護者が弱い怒りを感じているという情報が入力されたことを示している。
【0164】
この場合、介護者の回答の情報として「YES」という情報が、また、介護者の言動または情動の情報として、「叱責する」という情報、および、「怒り・弱」という情報が認知症ケア支援装置20に送信されることになる。
【0165】
図11は、介護者が回答した際の介護者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面43の一例を示す図である。図11には、医師が「家の中で徘徊がありますか?」という質問を介護者に行い、介護者が「ある」と回答した際の患者の言動または情動の情報を受け付ける受付画面43の例が示されている。
【0166】
この受付画面43には、「否定する」、「肯定する」、「無視する」という言動または情動の情報を選択するチェックボックスが示されている。そして、図11では、「否定する」が選択されている。
【0167】
さらに、受付画面43には、「拒絶」、「怒り」、「暴力」、「泣く」という言動または情動の情報について、「無」、「弱」、「強」という患者の反応の程度を示すラジオボタンが示されている。そして、「拒絶」について「弱」のラジオボタンが選択されている。すなわち、この例では、介護者が家の中で徘徊していると回答したことに対して、患者が弱い拒絶反応を示しているという状況にあることになる。
【0168】
この場合、介護者が質問に対して「YES」と回答したことに対する患者の言動または情動の情報として、「否定する」という情報と、「拒絶・弱」という情報とが認知症ケア支援装置20に送信されることになる。
【0169】
このように、患者、介護者、または、患者および介護者の両者の回答、患者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報、介護者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報を認知症ケア支援装置20に送信することにより、認知症ケア支援装置20は、介護者の患者についての理解度や、患者と介護者の間の関係を考慮した適切な対処法を選択できるようになる。
【0170】
例えば、図8〜図11の例では、患者は日常生活の中で、家の中を徘徊しているにもかかわらず、その自覚に欠けている。そして、そのことについて介護者に叱責され、怒りを表されると拒絶する。また、介護者は、家の中で徘徊する患者に対して、怒りを感じている。
【0171】
このような患者と介護者には、患者が家の中で徘徊することがある状況の説明およびその原因の説明、および、そのような症状を改善するための工夫や対応策を提示する必要がある。例えば、認知症ケア支援装置20は、患者の認知症進行度(中核症状)が「健忘」である場合、「患者は、探し物があるが、何を探しているか分からなくなっている可能性があるので、患者と一緒に行動してください。」という情報を端末装置10に出力すればよい。
【0172】
また、認知症ケア支援装置20は、患者の認知症進行度が「失認」である場合、「患者は、探し物をしている可能性もあるが、仮に見つかったとしてもそれが何か分からず、探し終えた場所も分らなくなっています。患者に説明をしながら患者と一緒に行動してください。」という情報を端末装置10に出力すればよい。
【0173】
また、認知症ケア支援装置20は、患者の認知症進行度が「失語」である場合、「患者は、周りの人が何を話しているのか分らず、混乱、不安、緊張状態にあり、居場所がないと感じています。患者の行動を制限せずに、時々笑顔で声を掛けたり、一緒に落ち着いて座るよう患者が大好きな果物などを勧めてみたりしてください。」という情報を端末装置10に出力すればよい。ここで、患者の好物が果物であるという情報は、予め患者情報に含めておき、患者情報からその情報を取得して対応策情報に埋め込むこととすればよい。
【0174】
さらに、認知症ケア支援装置20は、患者が質問に回答している間の介護者の言動または情動の情報が「否定する」であり、介護者が質問に回答している間の介護者の言動または情動の情報が「叱責する」であった場合、対応策データ203fを参照し、「否定する」という介護者の言動または情動の情報、「叱責する」という介護者の言動または情動の情報に対応する情報として、「患者に理解と共感を示して下さい。」という情報を読み出し、端末装置10に送信して、介護者に提示することとしてもよい。
【0175】
また、認知症ケア支援装置20は、介護者が質問に回答している間の患者の言動または情動の情報が「拒絶・弱」であった場合、対応策データ203fを参照し、「拒絶・弱」という患者の言動または情動の情報に対応する情報として、「患者に一緒に行動してもよいかを尋ねながら行動して下さい。」という情報を読み出し、端末装置10に送信して、介護者に提示することとしてもよい。
【0176】
このように、本システムでは、患者、介護者、または、患者および介護者の両者の回答、患者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報、介護者が質問に回答している間の患者および介護者の言動または情動の情報等から、患者と介護者に合った対応策を提示することができる。
【0177】
さて、これまで端末装置10、認知症ケア支援装置20、および、認知症ケア支援方法の実施形態を中心に説明を行ったが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、端末装置10、認知症ケア支援装置20の機能を実現するためのコンピュータプログラムとしての形態、あるいは、当該コンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体の形態として本発明が実施されることとしてもよい。
【0178】
ここで、記録媒体としては、ディスク系(例えば、磁気ディスク、光ディスク等)、カード系(例えば、メモリカード、光カード等)、半導体メモリ系(例えば、ROM、不揮発性メモリ等)、テープ系(例えば、磁気テープ、カセットテープ等)等、さまざまな形態のものを採用することができる。
【0179】
これら記録媒体に上記実施形態における端末装置10、認知症ケア支援装置20の機能を実現させるコンピュータプログラム、または、認知症ケア支援方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムを記録して流通させることにより、コストの低廉化、及び可搬性や汎用性を向上させることができる。
【0180】
そして、コンピュータに上記記録媒体を装着し、コンピュータにより記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを読み出してメモリに格納し、コンピュータが備えるプロセッサ(CPU:Central Processing Unit、MPU:Micro Processing Unit)が当該コンピュータプログラムをメモリから読み出して実行することにより、本実施形態に係る端末装置10、認知症ケア支援装置20の機能を実現し、認知症ケア支援方法を実行することができる。
【0181】
また、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で各種の変形、修正が可能である。例えば、上述した実施形態では、認知症ケア支援システムが、端末装置10と認知症ケア支援装置20により構成されることとしたが、これに限定されず、認知症ケア支援システムは、端末装置10の機能と認知症ケア支援装置20の機能を有する1台の端末装置により構成されることとしてもよい。この場合、端末装置の記憶部は、上述したさまざまなデータを蓄積し、データの追加を受け付ける。また、医師などのユーザは、端末装置に蓄積されたデータの更新や取り出しを、入力部を介して端末装置に指示し、データの更新や取り出しを行う。
【符号の説明】
【0182】
10…端末装置、100…入力部、101…表示部、102…ネットワークインターフェース部、103…記憶部、103a…制御プログラム、103b…一時記憶データ、104…患者情報受付部、105…質問情報受付部、106…回答情報受付部、107…言動・情動情報受付部、108…対応策情報受付部、109…表示制御部、110…制御部、111…バス、20…認知症ケア支援装置、200…入力部、201…表示部、202…ネットワークインターフェース部、203…記憶部、203a…制御プログラム、203b…患者データ、203c…質問データ、203d…回答データ、203e…言動・情動データ、203f…対応策データ、203g…一時記憶データ、204…情報受付部、205…患者特定部、206…質問情報検索部、207…質問情報出力部、208…回答選択肢設定部、209…言動・情動選択肢設定部、210…選択肢情報出力部、211…回答判定部、212…対応策情報選択部、213…編集情報受付部、214…対応策情報出力部、215…表示制御部、216…制御部、217…バス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
認知症に対する対応策情報を出力する認知症ケア支援システムであって、
前記認知症の患者または該患者の介護者に対して行う質問の情報と、前記認知症に対する対応策情報とを記憶する記憶部と、
前記質問に対する前記患者または前記介護者の回答の情報に基づいて、前記記憶部に記憶された対応策情報のいずれかを選択する対応策情報選択部と、
該対応策情報選択部により選択された対応策情報を出力する対応策情報出力部と、
を備えることを特徴とする認知症ケア支援システム。
【請求項2】
前記対応策情報選択部は、前記回答の情報、および、前記患者または前記介護者に対して質問がなされた際の、該患者または該介護者の言動または情動の情報に基づいて、前記対応策情報のいずれかを選択することを特徴とする請求項1に記載の認知症ケア支援システム。
【請求項3】
前記患者または前記介護者の言動または情動の情報が選択肢の選択、または、テキスト入力により受け付けられる場合に、前記テキスト入力により受け付けられた前記言動または情動の情報の頻度に基づいて、前記選択肢に含める言動または情動の情報を設定する言動・情動情報選択肢設定部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の認知症ケア支援システム。
【請求項4】
前記患者または前記介護者に対してすでに行った質問に対する回答結果の情報に基づいて、前記患者または前記介護者に対して行う質問の情報を検索する質問情報検索部と、該質問情報検索部により検索された質問の情報を出力する質問情報出力部とをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の認知症ケア支援システム。
【請求項5】
前記患者の認知症の進行度情報に基づいて、前記患者または前記介護者に対して行う質問の情報を検索する質問情報検索部と、該質問情報検索部により検索された質問の情報を出力する質問情報出力部とをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の認知症ケア支援システム。
【請求項6】
前記質問情報検索部によりユーザが所望する質問が検索されなかった場合に、前記質問情報出力部は、ユーザにより入力された前記質問を前記患者または前記介護者に対して行う質問として出力することを特徴とする請求項4または5に記載の認知症ケア支援システム。
【請求項7】
前記回答が選択肢の選択、または、テキスト入力のいずれかにより受け付けられる場合に、前記テキスト入力により受け付けられた回答の頻度に基づいて、前記選択肢に含める回答を設定する回答選択肢設定部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の認知症ケア支援システム。
【請求項8】
前記対応策情報選択部により選択された対応策情報に対して編集がなされた場合に、該編集後の対応策情報を受け付ける編集情報受付部をさらに備え、前記記憶部は、前記編集情報受付部が受け付けた編集後の対応策情報を記憶することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の認知症ケア支援システム。
【請求項1】
認知症に対する対応策情報を出力する認知症ケア支援システムであって、
前記認知症の患者または該患者の介護者に対して行う質問の情報と、前記認知症に対する対応策情報とを記憶する記憶部と、
前記質問に対する前記患者または前記介護者の回答の情報に基づいて、前記記憶部に記憶された対応策情報のいずれかを選択する対応策情報選択部と、
該対応策情報選択部により選択された対応策情報を出力する対応策情報出力部と、
を備えることを特徴とする認知症ケア支援システム。
【請求項2】
前記対応策情報選択部は、前記回答の情報、および、前記患者または前記介護者に対して質問がなされた際の、該患者または該介護者の言動または情動の情報に基づいて、前記対応策情報のいずれかを選択することを特徴とする請求項1に記載の認知症ケア支援システム。
【請求項3】
前記患者または前記介護者の言動または情動の情報が選択肢の選択、または、テキスト入力により受け付けられる場合に、前記テキスト入力により受け付けられた前記言動または情動の情報の頻度に基づいて、前記選択肢に含める言動または情動の情報を設定する言動・情動情報選択肢設定部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の認知症ケア支援システム。
【請求項4】
前記患者または前記介護者に対してすでに行った質問に対する回答結果の情報に基づいて、前記患者または前記介護者に対して行う質問の情報を検索する質問情報検索部と、該質問情報検索部により検索された質問の情報を出力する質問情報出力部とをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の認知症ケア支援システム。
【請求項5】
前記患者の認知症の進行度情報に基づいて、前記患者または前記介護者に対して行う質問の情報を検索する質問情報検索部と、該質問情報検索部により検索された質問の情報を出力する質問情報出力部とをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の認知症ケア支援システム。
【請求項6】
前記質問情報検索部によりユーザが所望する質問が検索されなかった場合に、前記質問情報出力部は、ユーザにより入力された前記質問を前記患者または前記介護者に対して行う質問として出力することを特徴とする請求項4または5に記載の認知症ケア支援システム。
【請求項7】
前記回答が選択肢の選択、または、テキスト入力のいずれかにより受け付けられる場合に、前記テキスト入力により受け付けられた回答の頻度に基づいて、前記選択肢に含める回答を設定する回答選択肢設定部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の認知症ケア支援システム。
【請求項8】
前記対応策情報選択部により選択された対応策情報に対して編集がなされた場合に、該編集後の対応策情報を受け付ける編集情報受付部をさらに備え、前記記憶部は、前記編集情報受付部が受け付けた編集後の対応策情報を記憶することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の認知症ケア支援システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−58020(P2013−58020A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195076(P2011−195076)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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