説明

誘導体化ポリマーの調製方法

【課題】少なくとも1つの官能基を有するポリマーの誘導体を活性化試薬により調製する方法であり、そのような活性化試薬の誘導体化ポリマーの調製のための使用、及びこれらのポリマーの基体結合のための受容体としての使用方法を提供する。
【解決手段】下記工程(i)を含んでなる方法:(i)均質相における、少なくとも1つの官能基を有するポリマーと、少なくとも1つの活性化試薬もしくは少なくとも1つの活性化試薬の誘導体との反応。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、官能基を有するポリマーの誘導体を活性化試薬により調製する方法、そのような活性化試薬の誘導体化ポリマーの調製のための使用、およびこれらのポリマーの基体結合のための受容体としての使用に関する。
【0002】
限定される基で誘導体化されたポリマーは、非常に異なる型の化学的用途および工業的用途に適する。したがって、特に、適宜の使用領域に合わせて作られた基で誘導体化されたそれらのポリマーに対して、大きな需要がある。
【0003】
したがって、広くかつ様々な形で用いられる方法は、官能基を有するポリマーの、すでに適切な形態をとり、かつ後の使用領域に関して反応前にすでに目的に合わせて設計された試薬との反応に大いに価値がある。そのような合理的なポリマー設計で、必要かつ望ましい特性を有するポリマーを簡単に調製、すなわち、合わせて作ることが可能である。
【0004】
特異の相互作用が基と誘導体化により導入された基体との間に達成でき、ポリマー誘導体と接触させられるそれらの誘導体ポリマーは、特に重要である。合理的なポリマー設計ルートにより、すでにポリマー誘導体化の前に計画できる、受容体基の間、すなわち、例えば、誘導体化を介してポリマーに導入された基もしくはこの基(単数もしくは複数)のいくつかと基体間で、選択的、実際のところ特異ですらある相互作用が達成できる。
【0005】
官能基を有するポリマーにそのような受容体基を備えるために、一般にこれまでのところ、たった3つのルートが提案されるのみで、それらは、M.Antonietti、S.Heinz、Nachr.Chem.Tech.Lab.40(1992)第3号、pp.308〜314に載せられている。この刊行によれば、そのような誘導体化ポリマーは、ランダム重合もしくは共重合により、ブロックコポリマーの調製により、および表面官能化ポリマー粒子の調製により得られる。これらの調製ルートは、ポリマーが得られる誘導体化モノマーから出発する。しかし、多くの用途領域に関して、すなわち、例えば、多くの所望のポリマー誘導体−基体相互作用に関して、これらの誘導体化モノマーは、調製できないか、もしくは工業的および経済的に受諾できない出費でしか調製できない。
【0006】
ポリマーを誘導体化するさらなる可能性は、官能基を有するポリマーの誘導体化化合物とのポリマー類似反応である。しかし、この場合、例えば、官能基を有する極性ポリマーの反応により、ポリマーへの用途に有利な基を、その後にあり得る工程で相応に易しい方法でさらに加工できる可溶性誘導体が形成されるように導入することは、今までのところ可能でないか、もしくは極めて大きな困難を有して可能であるにすぎない。
【0007】
異なる目的ゆえに、ポリマー誘導体は、今までのところ、例えば、固体表面で実施されてきた。すなわち、反応は不均質に実施された。この基には、なかんずく、キャリヤー活性化およびキャリヤー固定化が含まれ、それにおいて求核物質は、通例、ポリマー、例えば、エポキシポリアクリルエステルもしくはBrCN−セファローズに不均質に結合される(これに関しては、P.Mohr、M.Holtzhauer、G.Kaiser、Immunosorption Techniques、Fundamentals and Applications、Akademie Verlag、Berlin(1992)、pp.34〜40を参照)。
【0008】
したがって、本発明の目的は、官能基を有するポリマーを均質相において簡単に誘導体化することが可能な方法を利用できるようにすることである。
したがって、本発明は、下記工程(i)を含んでなる、少なくとも1つの官能基を有するポリマーの誘導体の調製方法に関する:
(i)均質相における、少なくとも1つの官能基を有するポリマーと、少なくとも1つの活性化試薬もしくは活性化試薬の誘導体との反応。
【0009】
本発明はまた、下記工程(i)を含んでなる方法により調製できる、少なくとも1つの官能基を有するポリマーの誘導体に関する:
(i)均質相における、少なくとも1つの官能基を有するポリマーと、少なくとも1つの活性化試薬もしくは活性化試薬の誘導体との反応。
【0010】
本発明による方法に関連して、少なくとも1つの官能基を有するポリマーを、先ず均質相において活性化試薬と反応させることが可能である。
さらに、本発明による方法において、少なくとも1つの官能基を有するポリマーを、2つ以上の適宜の活性化試薬の混合物と反応させることも、もちろん可能である。これらは、同時にポリマーと反応させることができる。さらに、2つ以上の活性化試薬も連続してポリマーと反応させることができる。
【0011】
ポリマーを、上述したように、それぞれの場合異なる活性化試薬と、少なくとも2つの官能基に対して反応させると、活性化試薬の選択に応じて、活性化基が同一もしくは選択的に異なる反応性を有することが可能である。
【0012】
本明細書において、反応は、好ましくは液相で起こる。したがって、反応させるポリマーを反応前に適宜の溶媒もしくは溶媒混合物に溶解させることが必要かもしれない。少なくとも1つの官能基を有するポリマーが液体の場合、必要なら、溶媒もしくは溶媒混合物を添加することも可能である。
【0013】
好ましくは、溶媒もしくは溶媒混合物は、活性化試薬が、もしそれ自体固体形で存在するなら、それも溶解できるように選択される。本明細書において活性化試薬は、もしそれ自体固体形で存在するなら、適宜の溶媒もしくは溶媒混合物に溶解し、ついで少なくとも1つの官能基を有するポリマーと反応するが、ポリマーは、任意に適宜の溶媒もしくは溶媒混合物に存在する。しかし、活性化試薬を、もしそれ自体固体形で存在するなら、任意に適宜の溶媒もしくは溶媒混合物に存在するポリマーに直接添加することも可能である。
【0014】
本発明による方法に関連して、ポリマーの溶解度を向上させるために予備誘導体化ポリマーから出発することも可能である。本明細書では、予備誘導体化ポリマーの誘導体化度および/または予備誘導体化ポリマーが含む誘導体化基の性質は、使用される溶媒もしくは溶媒混合物により適宜に設定されるが、そこでは予備誘導体化ポリマーは可溶性であることが意図される。
【0015】
一般に、本明細書において活性化試薬は、ポリマーの少なくとも1つの官能基が、反応の間活性化試薬と反応し、このようにその後の反応で誘導体化試薬との反応性において向上するように、選択される。
【0016】
したがって、本発明はまた、上で定義されるように、さらに工程(ii)を含んでなる方法に関する:
(ii)少なくとも1つの官能基を有するポリマーと活性化試薬からの反応生成物と、誘導体化試薬との反応。
【0017】
本発明による方法のこの実施態様に関連して、少なくとも1つの官能基を有するポリマーは、同時に、すなわち、「ワンポット反応」の意味で、少なくとも1つの活性化および/または少なくとも1つの非活性化誘導体化試薬および/または活性化試薬と反応させることができる。
【0018】
少なくとも1つの官能基を有する活性化ポリマーのこの反応により、所望の基を、誘導体化試薬を用いてポリマーに導入することができる。
上述したように、ポリマーが異なる活性化試薬と反応すると、これらの活性化官能基は、1つ以上の誘導体化試薬に対して異なる反応性を有することができる。したがって、本発明による方法に関連して、官能基をこの方法で選択的に誘導体化することが可能である。これに関連して「選択的」という語は、例えば、互いに異なる2つ以上の官能基を有するポリマーが、例えば、2つの異なる活性化試薬と反応し、誘導体化のための誘導体化試薬とのその後の反応が2つの活性化試薬の1つで活性化した活性化官能基上で、一般に誘導体化試薬に関してより反応的に活性化した官能基上で、独占的に起こるようにすることを意味する。
【0019】
この場合、互いに異なる2つ以上の官能基は、互いに異なるもしくは同一の活性化試薬と反応でき、あるいは2つ以上の同一の官能基は、互いに異なる活性化試薬と反応できる。
【0020】
本明細書において、一般に、活性化試薬を用いて活性化した官能基の誘導体化試薬との反応において、ポリマーの官能基との反応の後今や活性化したポリマーに残る活性化試薬の一部は、誘導体化試薬との反応において放置基として機能する。
【0021】
活性化試薬および/または誘導体化試薬の化学的性質により、活性化ポリマーの誘導体化試薬との反応において、活性化ポリマーに存在する活性化試薬の構造の一部もしくは選択的に全体が、誘導体化ポリマーに残ることも、もちろん可能である。
【0022】
本発明による方法において、さらに、活性化試薬を、少なくとも1つの官能基を有するポリマーとの反応の前に誘導体化試薬と反応させ、ついでこの反応生成物を少なくとも1つの官能基を有するポリマーと反応させることも可能である。
【0023】
したがって、本発明はまた、上述したように、活性化試薬の誘導体が、活性化試薬と誘導体化試薬との先行反応により得られる方法に関する。
本明細書において、原則的には、活性化試薬と誘導体化試薬との反応からの生成物の反応において、この生成物に存在する活性化試薬の一部が、ポリマーとの反応において放置基として機能することが可能である。
【0024】
さらに、活性化試薬および/または誘導体化試薬を適宜に選択した本発明による方法に関連して、活性化試薬と誘導体化試薬との反応からの生成物と、少なくとも1つの官能基を有するポリマーとの反応において、活性化試薬と誘導体化試薬との反応生成物に存在する活性化試薬の構造の一部もしくは全体が、ポリマー中に残ることも可能である。
【0025】
本発明のさらに可能な実施態様は、少なくとも1つの官能基を有するポリマーを、活性化試薬と誘導体化試薬との反応からの異なる生成物と反応させることにある。このように、例えば、化合物の混合物を、ポリマーと反応させることができ、混合物は、1つの活性化試薬と2つ以上の異なる誘導体化試薬との反応生成物を含んでなる。さらに、混合物は、1つの誘導体化試薬と2つ以上の異なる活性化試薬との反応生成物を含んでなることも可能である。もちろん、必要ならば、2つ以上異なる活性化試薬と2つ以上の異なる誘導体化試薬との反応生成物を含んでなる混合物を用いることも可能である。明らかに、本発明に関連して、活性化試薬と誘導体化試薬との異なる反応生成物を混合物としてでなく、個々に所望の順序で、少なくとも1つの官能基を有するポリマーと反応させることも可能である。
【0026】
したがって、本発明は、上述したように、少なくとも1つの官能基を有するポリマーが1つの活性化試薬の少なくとも2つの異なる誘導体と反応し、反応がそれぞれの場合1つの誘導体と連続的に実施される方法も記載している。
【0027】
本明細書において、上述のように調製された誘導体化ポリマーは、少なくとも1つの官能基を有するポリマーの反応後、固体として液体の均質相に存在することが可能である。均質の液相でさらにさらなる反応を実施するために、少なくとも1つの官能基を有するポリマーの反応後、誘導体化ポリマーが溶解基体として再び存在するように、溶媒もしくは溶媒混合物を交換することが可能である。
【0028】
原則的に使用できる活性化試薬は、すべて文献から既知の活性化試薬である。異なる官能基の活性化に用いることができる活性化試薬の全シリーズの概説は、例えば、すでに引用したP.Mohr、M.Holtzhauer、G.Kaiserの論文により与えられ、その内容はすべて本明細書に参考として取り込まれる。
【0029】
特に、クロロホルム酸エステルおよび電子撤回基を有するクロロホルム酸エステルを挙げることができる。
特に、本発明は、上述したように、活性化試薬が下記構造式(I)の化合物から誘導される方法に関する:
【0030】
【化5】

【0031】
式中、R1およびR2は、同一もしくは異なり、直鎖、枝分れ鎖もしくはブリッジしていてカルボサイクルもしくはヘテロサイクルを与えることができ、活性化試薬もしくは活性化試薬の誘導体が均質相において少なくとも1つの官能基を有するポリマーと反応できるように、選ばれる。
【0032】
本明細書において、R1およびR2は、例えば、30以下のC原子を有するシクロアルキル、シクロアルケニル、アルキル、アリールもしくはアラルキル基であり得る。
【0033】
好ましい実施態様において、本発明は、上述したように、活性化試薬が下記構造式(I’)の化合物から誘導される方法を記載している:
【0034】
【化6】

【0035】
式中、R3〜R10は、同一もしくは異なり得、水素、30以下のC原子を有する直鎖もしくは枝分れ鎖アルキル、アリール、シクロアルキル、複素環式およびアラルキル基であり得、あるいはR3〜R10基は、ブリッジしていてカルボサイクルもしくはヘテロサイクルを与えることができ、かつ活性化試薬もしくは活性化試薬の誘導体が均質相において少なくとも1つの官能基を有するポリマーと反応できるように、選ばれる。
【0036】
本発明はさらに、上述したように、活性化試薬が下記構造式(II)を有する方法を記載している:
【0037】
【化7】

【0038】
式中、R3〜R10は、上で定義されるとおりである。
本明細書において、R3〜R10は、例えば、30以下のC原子を有するアルキル、アリールおよびアラルキル基からなる群より適宜に選ぶことができる。
【0039】
特に好ましい実施態様において、本発明は、上述したように、活性化試薬が前記構造式(II)の化合物から誘導され、式中R3〜R10はそれぞれの場合水素である方法を記載している。
【0040】
本発明による方法に用いられる特に好ましい活性化試薬は、前記構造式(II)の化合物であり、式中基R3〜R10は、下にONB−Clとして示される水素である。
【0041】
構造式(I)、(I’)および(II)を有する化合物は、先行技術から既知の全通例法により調製できる。ONB−Clに関するそのような方法は、例えば、P.Henklein等、Z.Chem.9(1986)、pp.329ffに示されている。
【0042】
上述したような活性化試薬もしくは活性化試薬の誘導体を用いて、原則的に活性化試薬と反応できる少なくとも1つの官能基を含む全ポリマーが、反応できる。
【0043】
ごく一般的に、少なくとも1つの官能基として、少なくとも1つの求核ユニットを有する基を有するポリマーが、本発明による方法で用いられる。
挙げることのできる少なくとも1つの官能基を有するポリマーの好ましい官能基は、なかんずく、OH基、任意に置換されたアミン基、SH基、OSO3H基、SO3H基、OPO32基、OPO3HR11基、PO32基、PO3HR11基、COOH基、およびこれらの2つ以上の混合物であり、R11は、いずれの場合も活性化試薬もしくは活性化試薬の誘導体が均質相において少なくとも1つの官能基を有するポリマーと反応できるように、選ばれる。
【0044】
したがって、本発明はまた、上述したように、少なくとも1つの官能基を有するポリマーの官能基が、OH基、NHR11基、SH基、OSO3H基、SO3H基、OPO32基、OPO3HR11基、PO32基、PO3HR11基、COOH基、もしくはこれらの2つ以上の混合物である方法に関する。
【0045】
さらに、少なくとも1つの官能基を有するポリマーは、−CNなどの極性基を含むことができる。
天然および合成ポリマーの両方が、少なくとも1つの官能基を有するポリマーとして用いられる。ポリマーの選択における限定は、ポリマーの反応が本発明による方法に関連して均質相で実施されるなら、かつ誘導体化ポリマーの後の意図された使用からのみ生じ得る。
【0046】
本明細書において、本発明に関連して、「ポリマー」という語には、明らかにポリマー化学において「オリゴマー」として表示される高分子量化合物も含まれる。
【0047】
特定のポリマーに限定することを望まないが、挙げることのできる少なくとも1つの官能基を有するポリマーは、なかんずく、下記のものである:
−セルロース、アミロースおよびデキストランなどの多糖類;
−シクロデキストリンなどのオリゴ糖類;
−キトサン;
−ポリビニルアルコール、ポリ−Thr、ポリ−Ser;
−ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルイミダゾール、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ−Lys;
−ポリ(メタ)アクリル酸(エステル)、ポリイタコン酸、ポリ−Asp;
−ポリ−Cys。
【0048】
さらに、ホモポリマーのみならず、コポリマーも、特にブロックコポリマーおよびランダムコポリマーは、本方法に用いるのに原則的に適する。
本明細書において、例えば、コ−スチレンもしくはコ−エチレンなどの非官能化化合物を有するコポリマー、もしくは選択的に、例えば、コピロリドンなどのコポリマーも、ともに挙げることができる。
【0049】
本明細書において、出発材料として使用される少なくとも1つの官能基を有するポリマーのモル質量は、好ましくは10,000〜50,000ダルトンの範囲である。
【0050】
最適の溶解度を達成するために、混合官能もしくは選択的に予備誘導体化されたポリマーが、好ましくは用いられる。挙げることのできるこれらの例は、例えば、下記のものである:
−部分もしくは完全アルキル化もしくはアシル化セルロース;
−ポリビニルアセテート/ポリビニルアルコール;
−ポリビニルエーテル/ポリビニルアルコール;
−N−ブチルポリビニルアミン/ポリビニルアミン。
【0051】
さらに、ポリマー/コポリマー混合物も使用できる。本明細書において、すべての適宜のポリマー/コポリマー混合物が使用でき、例えば、すでに前述したポリマーおよびコポリマーの混合物などで、なかんずく、例えば、下記のものが挙げられる:
−ポリ(アクリル酸)/コ−ビニルアセテート;
−ポリビニルアルコール/コ−エチレン;
−ポリオキシメチレン/コ−エチレン;
−スチレンと(メタ)アクリル酸(エステル)とのコポリマーなどの改質ポリスチレン;
−ポリビニルピロリドンおよびそのポリ(メタ)アルリレートとのコポリマー。
【0052】
好ましい実施態様において、前記混合物および/またはコポリマーは、1つの成分が官能基を有しておらず、他の成分が、ついで本発明により活性化できる官能基を有するように、構成される。
【0053】
前述したように、少なくとも1つの官能基を有するポリマーが構造式(II)の化合物などの活性化試薬と反応すると、やはり前述したように、この反応生成物が誘導体化試薬と反応することが可能である。
【0054】
本明細書において、原則的に、活性化ポリマーと反応でき、所望の誘導体化ポリマーに直接的もしくは間接的に達する全試薬が、使用できる。なかんずく、化合物は、本発明による方法で少なくとも1つの求核基を有する誘導体化試薬として使用される。
【0055】
例えば、一般組成HY−R12を有する誘導体化試薬が、使用される。式中、Yは、例えば、O、NH、NR13もしくはSであり、式中、R12およびR13は、一般に自由に選ぶことができる。例えば、それらは、任意に適宜に置換されたアルキルもしくはアリール基である。
【0056】
さらに、活性化ポリマーを求核キラル化合物と反応させることも可能である。挙げることのできるそのようなキラル求核試薬の例は、例えば、ボルネオール、(−)−メタノール、(−)−エフェドリン、□−フェニルエチルアミン、アドレナリン、ドーパミンである。
【0057】
さらなる可能性は、本発明による方法において活性化ポリマーを、アミノ基を含む一価もしくは多価アルコールあるいはチオールと反応させることである。少なくとも1つの官能基を含むポリマーが、例えば、ONB−Clで活性化されると、アミノ基を含む一価もしくは多価アルコール、あるいはアミノ基を含む一価もしくは多価チオールは、アミノ基と選択的に反応する。ついで、このようにポリマーに導入されたOHもしくはSH基を、さらなる工程で再び、例えば、前述の活性化試薬の1つと反応させることができ、それにより鎖延長および枝分れが、初めに使用されるアルコールもしくはチオールの官能価に応じて、可能とされる。
【0058】
すでに上述した本発明による方法の別の実施態様において、少なくとも1つの官能基を有するポリマーは、活性化された誘導体化試薬と反応するが、後者は、活性化試薬と誘導体化試薬との反応から得られる。
【0059】
好ましくは、アミン、アルコール、チオール、カルボン酸、スルホン酸、スルフェート、ホスフェートもしくはホスフィン酸の活性化誘導体は、本発明による方法において少なくとも1つの官能基を有するポリマーと反応し、そこでは、好ましい実施態様において、化合物はONB−Clを用いて活性化される。
【0060】
なかんずく、少なくとも1つの官能基を有するポリマーと反応させることができるこれらの活性化された誘導体化試薬は、したがって、下記構造式(III)〜(IX)を有する:
【0061】
【化8】

【0062】
式中、R3〜R10は、上で定義されるとおりであり、R14〜R20は、一般に制限されず、例えば、キラリティーを有することができ、少なくとも1つの官能基を有するポリマーとの反応が、均質相で実施できるように、本発明による方法において選ばれる。一般に、本明細書において置換基R14〜R20は、基体との所望の相互作用に応じて選ばれる。本明細書においてR14〜R20は、同一もしくは異なり得、水素、30以下のC原子を有する直鎖もしくは枝分れ鎖アルキル、アリールもしくはアラルキル基、あるいは適宜のヘテロ原子を有する基である。
【0063】
したがって、本発明はまた、2つの構造式(II’)もしくは(II’’)のうちの1つを有する、構造式(II)による活性化試薬の誘導体を記載している:
【0064】
【化9】

【0065】
式中、R3〜R10は、上で定義されるとおりであり、R22およびR23は、R14〜R20で定義されるとおりであり、同一もしくは異なり得、R’およびR’’は、同一もしくは異なり得、アルキル、アリールもしくはアラルキル基であり得、少なくとも1つの官能基を有するポリマーとの反応が、均質相で実施できるように、本発明による方法において選ばれる。さらに、構造式(II’)および(II’’)の前記置換基も、基体との所望の相互作用が達成できるように、選ばれる。
【0066】
さらに、多官能アミン、アルコール、チオール、カルボン酸、スルホン酸、スルフェート、ホスフェートもしくはホスフィン酸を、活性化試薬と反応させることができ、この反応生成物を、少なくとも1つの官能基を有するポリマーと反応させることができ、そこでは、本明細書において、特にポリオールを挙げることができる。
【0067】
明らかに、前述の2つ以上の異なる型の官能基を有する誘導体化試薬を活性化し、それらを少なくとも1つの官能基を有するポリマーと反応させることもできる。本明細書で挙げることができる例は、なかんずく、アミノアルコール類である。
【0068】
本発明に関連して、そのような多官能価誘導体化試薬は、選択的に活性化試薬により部分的もしくは完全に活性化でき、少なくとも1つの官能基を有するポリマーと反応させることができる。
【0069】
少なくとも1つの官能基を有するポリマーと活性化された多官能価誘導体化試薬との反応は、ポリマー架橋、ポリマー安定化およびポリマー枝分れのために本発明による方法で使用できる。
【0070】
少なくとも1つの官能基を有するポリマーと活性化された誘導体化試薬との反応、および少なくとも1つの官能基を有するポリマーと活性化試薬との反応の両方、ならびにそれに続く生成物と誘導体化試薬との本発明による方法による反応は、非常に異なる立体配置を有し、したがって立体配置が極めて重要な数多くの用途に使用できるポリマー誘導体を調製することを可能とする。
【0071】
このように、例えば、毛のロッド、くしポリマー、網、バスケット、皿、チューブ、漏斗もしくはかごのように構成される配置を実現することが可能である。
反応は、本明細書においては、非プロトン性−双極性および/または極性−プロトン性溶媒もしくは水性溶媒混合物などの溶媒混合物において実施できる。反応させるポリマーおよび使用される活性化および/または誘導体化試薬に応じて、さらに種々の溶媒が、水の他にこれらの溶媒混合物中に存在し得る。好ましくは、本明細書で用いられる溶媒は、なかんずく、DMSO、DMF、ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドン、THFもしくはMTBEなどの非プロトン性−双極性溶媒などである。
【0072】
反応で選択されるpHは、この場合、一般に本発明による方法においては、4〜14の範囲であり、好ましくは5〜12の範囲であり、特に好ましくは5〜10の範囲である。特定のpH範囲の確立のために、適宜の緩衝液で作業することが可能である。
【0073】
誘導体化を介して本発明による方法でポリマーに導入された基により、適宜の化学物質、いわゆる基体は、選択的もしくは特異に結合され得る。導入された基は、本明細書において受容体基として作用し、誘導体化ポリマーも、このようにごく一般的に受容体としても作用する。
【0074】
本明細書において挙げることのできる基体との可能な相互作用は、なかんずく、下記のものである:
−水素結合;
−双極−双極相互作用;
−Van der Waals相互作用;
−疎水性相互作用;
−電荷移動相互作用、例、π−π相互作用;
−イオン相互作用;
−配位結合、例、遷移金属への;
−これらの相互作用の組合せ。
【0075】
誘導体化ポリマーと基体との間の相互作用(単数もしくは複数)は、本明細書においては、固体状態、溶液、液相および気相で形成できる。本発明による方法により、合わせて作った受容体基を用いて受容体−基体相互作用を「設計」することが可能である。これは、誘導体化ポリマーを、例えば、2つ以上の基体の存在下で膜プロセス、触媒作用、ろ過もしくはクロマトグラフィーで使用するときに、1つの基体に関する相互作用の選択性が成就できることを意味する。
【0076】
本発明に関連して、誘導体化ポリマーが受容体として用いられる場合、受容体基密度に相当する誘導体化度を、基体とのあり得る限り最良の相互作用が達成され、ポリマー誘導体の十分な溶解度が得られるように、影響を与えることができる。
【0077】
好ましくは、本発明による方法に関連して、1〜70%の範囲、特に好ましくは3〜60%の範囲、特別に好ましくは5〜50%の範囲の誘導体化度が、選ばれる。
【0078】
したがって、本発明は、少なくとも3つの官能基を有するポリマーの誘導体であって、官能基の少なくとも2つが、適宜の基体と受容体基として相互作用するように誘導体化され、非基体特異作用を有する少なくとも1つの官能基が、これらの誘導体化基2つの間にある、前記誘導体に関する。
【0079】
基体のための受容体基として作用しない官能基がいくつかポリマーに存在するなら、それらは同一もしくは異なる型であり得る。
もし、例えば、1つの型の官能基を有するポリマーが出発材料として使用されるなら、受容体基として作用しない官能基は、当然たった1つの型である。しかし、例えば、2つ以上の異なる型の官能基を有するポリマーが出発材料として使用されることも、可能である。この場合も、受容体基として作用しない基が1つの型であることは、可能である。例えば、問題の官能基の型を除いて、すべての他の型の官能基が、上述のように、特異な誘導体化を介して誘導体化される場合であろう。しかし、この場合、問題の型の官能基のいくぶんかは、やはり誘導体化されるだろう。
【0080】
明らかに、受容体基として作用しない官能基が異なる型であることも、可能である。例えば、少なくとも3つの異なる型の官能基を有するポリマーから出発し、そのうち少なくとも2つは上述の特異な誘導体化で反応しなかったということは、可能である。しかし、ポリマーが2つ以上の異なる型の官能基を有する出発材料として使用され、そのうちそれぞれの場合ほんのいくぶんかが、各型の官能基の一定量が誘導体化されずに残るように、誘導体化されたという場合も、可能である。
【0081】
本発明による誘導体に関して、上述したように、少なくとも1つの官能基を有するポリマーについて、未誘導体化の形で存在する1つ以上の官能基が、受容体基として基体特異もしくは非基体特異作用を有することは、可能である。これは、例えば、受容体基の空間要件ゆえに、それらの基体そのものとの相互作用が立体的に不可能であるという事実のせいであり得る。
【0082】
しかし、出発ポリマーに存在する少なくとも1つの官能基が、未誘導体化の形で基体との相互作用に貢献することも、可能である。
非基体特異作用を有する少なくとも1つの官能基が末端キャッピング基で誘導体化されている、官能基を有するポリマーの誘導体が、好ましい。
【0083】
したがって、本発明はまた、少なくとも3つの官能基を有し、基体特異作用を有さない少なくとも1つの官能基が末端キャッピング基で誘導体化されているポリマーの誘導体も、記載している。
【0084】
末端キャッピング基のじょうずな選択により、与えられたポリマー誘導体の溶解度を末端キャッピング基(単数もしくは複数)で影響を与え、起こり得る後のさらなる反応における要件に適合させることも、可能である。
【0085】
末端キャッピング基としては、原則として、官能基を基体との相互作用に対して不活性もしくはでき得る限り不活性にする基を、いずれも選ぶことができる。これに関連して「不活性」という語は、基体が誘導体化ポリマーの受容体基と受ける相互作用が、この基体が末端キャッピング基により誘導体化された1つ以上の官能基と受ける相互作用と比較して、非常に強いので、基体が本質的に受容体基を介して結合されるのみであることを意味する。
【0086】
2つ以上の異なる基体を、例えば、クロマトグラフィー方法において、基体と受容体基との間の相互作用により分離することが所望されるなら、末端キャッピング基は、上述のように、官能基を起こり得る相互作用に対して完全に不活性にしなければならない。この場合、それは、例えば、末端キャッピング基が、分離される2つ以上の基体と分離プロセスにおいてなんら役割を果たさないほど十分に弱いか、もしくは非特異な相互作用を受けるならば、十分である。
【0087】
末端キャッピング基としては、先行技術によるいかなる適宜の基も、本明細書においては使用できる。基体に応じて、例えば、選ばれた末端キャッピング基がH供与体でない基であることは、可能である。好ましくは、本明細書においては、下記が用いられる:
【0088】
【化10】

【0089】
特に好ましくは、下記が用いられる:
【0090】
【化11】

【0091】
本発明はさらに、本明細書において問題の型の誘導体を記載しており、それは、生物学的基体の結合に決定的な結合ユニットを有する受容体基を少なくとも1つ有する。
【0092】
生物学的基体に合うように作られたこの型の誘導体は、例えば、天然にも生じる構造、もしくは結合に責任があるこの型の構造の部分を有し得る相当する受容体基を有し、ついで、生物学的基体と相互作用することができる。この場合、特に、酵素、アミノ酸、ペプチド、糖、アミノ糖、糖酸およびオリゴ糖基もしくはそれらの誘導体を、挙げることができる。上記受容体基に必須なことは、受容体の基体との天然に起こる結合原理は、この実施態様により、例えば、合成酵素、抗体の結合領域もしくは他の生理学的エピトープが得られるように、保持されるという事実以外にない。
【0093】
本発明による少なくとも3つの官能基を有するポリマーの誘導体に導入された受容体基は、本発明による方法において上述されたようないかなる基でもあり得、それは、ポリマーの、少なくとも1つの求核基を含む少なくとも1つの活性化された誘導体化試薬との反応により、もしくは活性化ポリマーの、少なくとも1つのそのような誘導体化試薬との反応により、得ることができる。
【0094】
なかんずく、本発明に関連して、少なくとも3つの官能基を有するポリマーの誘導体が、上述したように、好まれ、そこにおいて、少なくとも1つの受容体基が、アミノ酸残基もしくはアミノ酸誘導体残基である。
【0095】
したがって、本発明はまた、上述したように、少なくとも1つの受容体基がアミノ酸残基もしくはアミノ酸誘導体残基である、少なくとも3つの官能基を有するポリマーの誘導体を記載している。
【0096】
アミノ酸残基もしくはアミノ酸誘導体残基をもつ官能基を有するポリマーを誘導体化するために、上述した方法による手順を使用することができる。このように、初めにアミノ酸の適宜の活性化試薬との反応を実施し、ついで反応生成物をポリマーと反応させることが、可能である。さらに、初めにポリマーを適宜の活性化試薬で活性化させ、ついでそれをアミノ酸と反応させることも、可能である。もちろん、ポリマー、アミノ酸および活性化試薬を直接混合することも、可能である。
【0097】
アミノ酸の選択に応じて、誘導体化および/または保護基による活性化の間アミノ酸上に存在し得る官能基を保護することが必要かもしれない。この場合、可能な保護基は、すべて先行技術から既知の適宜の基である。ポリマーの後の使用に応じて、これらの保護基は、誘導体化の後アミノ酸残基上に残るか、もしくは再び除去されることが、可能である。
【0098】
可能なアミノ酸は、例えば、下記のものである:
−グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンなど、脂肪族残基を有するアミノ酸;
−セリン、トレオニンなど、1つ以上のヒドロキシル基を含む脂肪族側鎖を有するアミノ酸;
−フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなど、芳香族測鎖を有するアミノ酸;
−リシン、アルギニン、ヒスチジンなど、塩基性測鎖を含むアミノ酸;
−アスパラギン酸、グルタミン酸など、酸性測鎖を有するアミノ酸;
−アスパラギン、グルタミンなど、アミド測鎖を有するアミノ酸;
−システイン、メチオニンなど、硫黄含有測鎖を有するアミノ酸;
−ヒドロキシピロリン、γ−カルボキシルグルタメート、O−ホスホセリンなど、改質アミノ酸;
−前述のアミン酸、あるいは適切なら、例えば、カルボキシル基上、もしくは適切なら、例えば、任意に適宜に置換され得るアルキルもしくはアリール基を有するカルボキシル基上にエステル化されたアミノ酸など他のアミノ酸の誘導体。
【0099】
本明細書において、アミノ酸は、原則として、その官能基のいずれかを介してポリマーに結合できる。
アミノ酸の代わりに、1つ以上のジペプチドもしくはオリゴペプチドの使用も可能であり、特に、同一のアミノ酸から合成されるにすぎないホモペプチドを挙げることができる。挙げることのできるジペプチドの例は、馬尿酸である。□−、γ−もしくは他の構造的に異性のアミノ酸およびデプシペプチドなどそれらから誘導されるペプチドを使用することも、可能である。
【0100】
本発明による方法において、上述したように、官能基を有するポリマーを、それが異なる受容体基を有するように誘導体化することが、可能である。
したがって、本発明は、上述したように、少なくとも2つの異なる受容体基を有する、少なくとも3つの官能基を有するポリマーの誘導体も記載している。
【0101】
上述したことによれば、2つ以上の異なるアミノ酸残基もしくはアミノ酸誘導体残基を有する、官能基を有するポリマーの誘導体も、したがって可能である。
基体との相互作用を最適化するために、本発明に関連して、液体ポリマー誘導体あるいは溶媒もしくは溶媒混合物に溶解もしくは膨張させたポリマー誘導体は、基体の存在下変形でき、基体はこの場合原型として作用する。
【0102】
したがって、本発明はまた、上述したように、工程(iii)において、少なくとも1つの官能基を有するポリマーの誘導体が、原型化合物の存在下で変形させられる方法も記載している。
【0103】
本明細書において、変形においては、例えば、上述したように、誘導体化ポリマーが適宜の溶媒もしくは溶媒混合物中で基体と混合し、ポリマーに1つ以上のエネルギー的に有利な配座を取る可能性を与える手順が、用いられる。
【0104】
さらに、本発明は、少なくとも1つの官能基を有するポリマーの誘導体で、適宜の基体に適合される1つ以上の配座を有することを特徴とする前記誘導体も記載している。
【0105】
もちろん、本明細書において、誘導体化ポリマーを異なる基体と混合し、変形させることも、可能である。さらに、必要なら、異なる誘導体化ポリマーを1つ以上の異なる基体と混合し、変形させることも、可能である。
【0106】
明らかに、少なくとも1つの官能基を有するポリマーの誘導体が原型なしで変形することも、可能である。
変形に続いて、本情報に関連して、原型の存在下で変形により形成されたポリマー誘導体の配座を固定することは、可能である。
【0107】
したがって、本発明は、上述したように、少なくとも1つの官能基を有するポリマーの誘導体の変形から生じる配座が固定される方法も記載している。
本明細書において、変形ポリマーを固定前に支持体に適用することは、可能である。
【0108】
支持体材料および支持体の形は、本明細書においては、本質的に自由に選択できるが、しかし、支持体材料は、ポリマーが支持体に永久的に適用できるように、構成されなければならない。
【0109】
支持体に適用された誘導体化ポリマーが基体分離プロセスに使用されるなら、支持体材料は、誘導体化ポリマーが適用された後、分離される物質との非特異相互作用を受けないか、もしくはたった1回あるいはそれ以上受ける。
【0110】
後の使用領域に応じて、支持体材料が圧力安定性であることが、必要かもしれない。これに関連して「圧力安定性」という語は、支持体材料が100バール以下の圧力で安定した形状であることを意味する。
【0111】
使用できる支持体材料は、多孔質もしくは非多孔質材料である。なかんずく、例えば、二酸化チタン、シリカゲルもしくはセルロースを、本明細書において挙げることができる。
【0112】
支持体材料の形は、本明細書において、方法の要件に適合でき、なんら制限されない。例えば、ペレット形状、球状もしくはストランド状の支持体が、可能である。
【0113】
本発明による方法に関連して、支持体材料への適用も、自由に選択できる。例えば、含浸、適宜のポリマー溶液中での支持体への浸漬、ポリマーの噴霧もしくはポリマーのスピニングによる適用が、可能である。
【0114】
明らかに、誘導体化ポリマーを異なる適宜の支持体に適用することも、可能である。さらに、互いに異なる2つ以上の誘導体化ポリマーを1つ以上の適宜の支持体に適用することも、可能である。
【0115】
本発明による方法のさらなる実施態様において、誘導体化され、変形され、かつ固定されたポリマーは、それ自体加工されて、追加の支持体が必要でないように、多孔質材料を与える。例えば、ビーズ、不規則性粒子、スポンジ、ディスク、ストランド、膜が、ここでは得られる。
【0116】
原則として、すべての可能な方法が、固定のために用いられる。特に、温度変化、溶媒交換、沈殿および架橋を、本明細書において挙げることができる。配座は、好ましくは架橋により固定される。
【0117】
したがって、本発明はまた、上述したように、変形から生じる配座が架橋により固定される方法も記載している。
1つの型の誘導体化ポリマーから形成された配座を、ここで固定できる。しかし、さらに、配座を、互いに異なる2つ以上の型の誘導体化ポリマーから形成することも、可能である。「異なる型の誘導体化ポリマー」という語は、本明細書において、ポリマーが、例えば、ベースポリマー、もしくは活性化試薬の型、もしくは誘導体化により導入される受容体基の型、もしくは活性化度、もしくは誘導体化度、もしくはこれらの点2つ以上の組合せに関して異なることを意味する。特に、ポリマーストランドの陽イオンおよび/または陰イオン受容体基との高分子電解質錯体は、この方法で調製できる。
【0118】
本明細書において、架橋結合は、例えば、誘導体化ポリマーの2つ以上のストランドを直接互いに反応させることにより、実施できる。これは、共有および/または非共有結合がこれらの基の間で形成できるように、誘導体化により導入された基を構成することにより、達成できる。ごく一般的に、2つ以上のポリマーストランドが、架橋結合により1つ以上の部位を介して互いに結合できるように、これら共有および/または非共有結合が、1つのポリマーストランドに付着された基の間に形成されること、および/または2つのポリマーストランドに付着された基の間に形成されることは、可能である。
【0119】
さらに、架橋結合のために1つ以上の適宜の架橋剤を用いることも可能であり、その架橋剤により、上述したように、ポリマーストランド内の基および/または任意に異なる誘導体化ポリマーのいくつかのストランドに付着した基が、共有および/または非共有方法で架橋できる。
【0120】
本明細書において、本発明に関連して、誘導体化試薬を、その化学的構造に関して、なかんずく、後の架橋結合に関して、誘導体化におけるなど初期に設計することが、特に可能である。特に、誘導体化試薬は、共有および/または非共有架橋結合に対して選択的な基を含むことができる。
【0121】
原則として、可能な架橋試薬は、先行技術から既知のすべての適宜の化合物である。したがって、架橋結合は、例えば、共有可逆的方法で、共有不可逆的方法で、もしくは非共有方法で起こり得、例えば、非共有方法における架橋結合の場合、イオン相互作用を介してもしくは電荷移動相互作用を介しての架橋結合を、挙げることができる。架橋プロセスもしくはこの型の試薬は、なかんずく、Han,K.K.等、Int.J.Biochem.、16、129(1984)、Ji,T.H.等、Meth.Enzymol.、91、580(1983)ならびにMeans,GおよびFeeney,R.E.、Bioconj.Chem.、1、2(1990)に記載されている。
【0122】
共有不可逆架橋結合に導かれる、挙げることのできる架橋試薬は、なかんずく、ジオール、ジアミンもしくはジカルボン酸などの二官能価もしくは多官能価化合物である。本明細書において、例えば、二官能価架橋剤は、活性化ポリマー誘導体と反応させられるか、もしくは少なくとも二官能価活性化架橋試薬は、非活性化ポリマーと反応させられる。共有可逆架橋結合は、例えば、1つもしくは2つのポリマーストランドに付着した2つの基の間にジスルフィドブリッジを与えるための硫黄−硫黄結合の結合により、もしくはシッフ塩基の形成により実現できる。イオン相互作用を介する架橋結合は、例えば、2つの基を介して起こり得、そのうちの1つは、構造ユニットとして第四アンモニウムを有し、もう1つは、構造ユニットとして、例えば、下記のものを有する:
【0123】
【化12】

【0124】
水素ブリッジを介する架橋結合は、例えば、2つの補足ベースペアの間で、例えば、下記構造を介して形成される:
【0125】
【化13】

【0126】
ごく一般的に、非共有的に架橋されるポリマー誘導体は、架橋部位に関して補足的な組成であり得、互いに補足的な構造ユニットは、例えば、酸/トリアミンもしくはウラシル/メラミンである。さらに、非共有架橋結合の場合、架橋試薬は、ポリマーストランド上の架橋部位に対して補足的であり得る。挙げることのできるこれの例は、例えば、ポリマーストランド上のアミン基および架橋試薬としてのジカルボン酸である。
【0127】
本発明による方法における架橋度は、本質的に任意に選ぶことができ、例えば、下記の使用領域に合わせて作ることができる。しかし、5%以下の架橋度が好ましい。本明細書において、パーセンテージデータは、最終的に架橋されるベースポリマーに元々存在する官能基の割合に相当する。
【0128】
もちろん、初めにポリマーの配座を固定し、ついで固定構造物を支持体に適用することも、可能である。
本発明による方法で調製できる固定ポリマー誘導体は、なかんずく、クロマトグラフィーに使用される。配座を固定するための誘導体化試薬および条件は、上述のように、本明細書においては、クロマトグラムにおいて可能な基体がポリマー変形前よりも高いk’値、好ましくは存在する物質の混合物中のすべてのうちで最高のk’値で溶出するように、選ばれる。これらの場合において不純物のk’値は、ほぼ同じにとどまるか、もしくは係数□=k2’/k1’(k2’は、本明細書においては対象物質に、k1’は、不純度に相当する)が変形前よりも大きいような方法で、改質される。したがって、連続クロマトグラフィーにおいて、特にSMBクロマトグラフィーにおいて、多物質分離問題を2物質分離問題に減じることが、可能であるが、それは生成物、すなわち、可能な基体が抽出物となり、すべての副生成物がレフィネートとなるからである。
【0129】
上述したように、ポリマーが任意に変形させかつ架橋させたキラル誘導体化試薬を用いて誘導体化されたなら、架橋ポリマーを用いるときは、基体分離プロセス中にラセミ化合物を分離することは、可能である。
【0130】
さらに好ましい実施態様において、本発明は、非共有受容体−基体相互作用を介して少なくとも1つの基体の結合で受容体として作用する、少なくとも1つの官能基を有するポリマーの誘導体を記載しているが、ここでは少なくとも1つの基体の結合は、少なくとも2つ、好ましくは3つの、受容体の化学的構造ゆえに同一もしくは異なる型の相互作用を介して起こり得、これらの多重相互作用は、一般に、例えば、多価エンタルピーゲインにより、相乗的に強化される。
【0131】
挙げることのできる相互作用は、例えば、すでに前述した相互作用である。なかんずく、例えば、電荷移動相互作用、水素結合を介する相互作用およびイオン相互作用を、挙げることができる。
【0132】
本明細書において、少なくとも1つの基体との異なる相互作用は、単一の型の受容体基により形成できるが、また2つ以上の異なる受容体基によっても形成できる。
【0133】
したがって、本発明はさらに、非共有受容体−基体相互作用を介して、少なくとも1つの基体を少なくとも1つの受容体基に結合する方法であって、少なくとも1つの受容体基を有する使用化合物が、上で定義される方法により調製される少なくとも1つの官能基を有するポリマーの誘導体、もしくは上で定義される誘導体である前記方法にも関する。
【0134】
さらに、本発明はまた、上述したように、方法が、クロマトグラフィープロセス、特にSMBプロセス、ろ過プロセス、1つ以上の膜による分離プロセス、もしくは触媒プロセスである方法も記載している。
【0135】
本発明によれば、使用される活性化試薬は、上述したように、一般構造式(I)の化合物であり、式中、R1およびR2は、少なくとも1つの官能基を有するポリマーとの反応が均質相で実施されるように、選ばれる。
【0136】
したがって、本発明は、下記一般構造式(X)の化合物に関する:
【0137】
【化14】

【0138】
式中、R0は、ハロゲン原子もしくは基(X’)であり:
【0139】
【化15】

【0140】
1’、R2’、R1’’およびR2’’は、同一もしくは異なり、水素、30以下のC原子を有する直鎖もしくは枝分れ鎖アルキル、アリール、シクロアルキル、複素環式もしくはアラルキル基であり、あるいはR1’とR2’もしくはR1’’とR2’’、あるいはR1’とR2’およびR1’’とR2’’の両方は、少なくとも1つのカルボサイクルもしくは少なくとも1つのヘテロサイクル、あるいは少なくとも1つのカルボサイクルと少なくとも1つのヘテロサイクルに結合され、下記構造式(X1)〜(X7)の化合物は除外される:
【0141】
【化16】

【0142】
さらに、本発明はまた、上述したように、下記構造式(X8)〜(X39)を含んでなる化合物からなる群より選ばれる化合物も記載している:
【0143】
【化17−1】

【0144】
【化17−2】

【0145】
【化17−3】

【0146】
【化17−4】

【0147】
【化17−5】

【0148】
【化17−6】

【0149】
式中、R’’’は、水素、あるいは30以下のC原子を有する直鎖もしくは枝分れ鎖の、任意に置換されたアルキル、アリールもしくはアラルキル基である。
上述の官能基を有するポリマーの誘導体の調製のための活性化試薬の使用のほかに、これらの化合物は、官能基の活性化のためにもごく一般的に使用され得る。
【0150】
したがって、本発明は、下記一般構造式(X)
の化合物の使用も記載している:
【0151】
【化18】

【0152】
式中、R0は、ハロゲン原子もしくは下記構造式(X’)の基である:
【0153】
【化19】

【0154】
1’、R2’、R1’’およびR2’’は、同一もしくは異なり、水素、30以下のC原子を有する直鎖もしくは枝分れ鎖アルキル、アリール、シクロアルキル、複素環式もしくはアラルキル基であり、あるいはR1’とR2’もしくはR1’’とR2’’、あるいはR1’とR2’およびR1’’とR2’’の両方は、少なくとも1つのさらなる化合物の少なくとも1つの官能基の活性化のために、少なくとも1つのカルボサイクルもしくは少なくとも1つのヘテロサイクル、あるいは少なくとも1つのカルボサイクルと少なくとも1つのヘテロサイクルに結合されている。
【0155】
本発明を、いくつかの実施例により、以下にさらに詳細に説明する。
実施例
実施例1:DS=20(ポテンシャルヒドロキシル基の20%反応)を有するポリ(ベンジル−O−ビニルカルバメート)の調製
3.36g(50mmol)のポリビニルアルコール(45%加水分解、アセテ−ト基の55%が依然として存在)を、三角フラスコ中で攪拌しながら250mlのDMSOに溶解した。1.02g(10mmol)のトリエチルアミンおよび0.61g(5mmol)のN,N−4−ジメチルアミノピリジンを、この溶液に添加した。ついで、50mlのDMSO中の3.12g(10mmol)のN−(ベンジルアミノカルボニロキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキサミドの溶液を、徐々に滴下させて添加した。沈殿物はなんら生ぜず、反応混合物を20℃で60分間攪拌した。
【0156】
ついで、250mlの蒸留水を反応混合物に添加すると、溶液の濁りが生じた。500mlの5%重量強度の水素カーボネートナトリウム水溶液の添加後、小さな白いクラスターが沈殿した。沈殿物を、2時間後膜を通して吸引によりろ過し、100mlの5%重量強度の水素カーボネートナトリウム水溶液および250mlの蒸留水で洗浄した。残留物を、真空乾燥炉内で50℃で18時間予備乾燥させ、ついでさらに50時間高真空ポンプで乾燥させた。収率は、3.6gで、80%の収率に相当する。
【0157】
実施例2:DS=40(NH2基の40%反応)を有するポリ(メンチルN−ビニルカルバメート)の調製
中性条件下で沈殿させた3.44g(80mmol)のポリビニルアミン(平均モル質量:10,000g/mol)を、グラウンド三角フラスコに導入し、200mlの蒸留水に溶解した。4.43mlのトリエチルアミンおよび195.4mg(1.6mmol)のジメチルアミノピリジン(DMAP)を、透明なポリマー溶液に添加した。ついで、混合物を室温で10分間攪拌した。
【0158】
ついで、200mlのDMSOに溶解した11.52g(32mmol)のN−(メンチロキシカルボニロキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド(Men−ONB)を、徐々にこの溶液に滴下させて添加した。
【0159】
2,3滴の添加後、Men−ONBは、再び沈殿した。完全な添加後、やや濃い懸濁液が形成され、ついでそれを2時間攪拌した。ついで懸濁液を、100mlのアセトンで処理した。懸濁液は、明らかにやや濁った溶液を与えた。ついで、これを20℃で72時間攪拌した。
【0160】
混合物を2lの丸底フラスコに移し、アセトンを蒸発させた。アセトンの除去後、溶液は非常に濁った。
DMSO/水混合物を、150mlの5%重量強度水素カーボネートナトリウム水溶液で処理すると、沈殿物が形成された。ついで、混合物を2時間攪拌し、ついで溝付フィルターを通してろ過した。白いかさばる沈殿物を、300mlの水および300mlのアセトンで洗浄し、真空乾燥炉内で35℃で16時間乾燥させた。
3.92g(42%)の薄茶色の固体が得られた。
【0161】
実施例3:7%の誘導体化度を有するポリ(ベンジルN−アリルカルバメート)の調製
12.56g(135mmol)のポリ(アリルアミンヒドロクロリド)を250mlの水に溶解し、10%強度NaHCO3水溶液を用いて、pHを5に調整した。45mlのDMSO中の2.96g(9.45mmol)のN−(ベンジロキシカルボニロキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドを、20℃で30分かけて滴下させて添加した。ついで反応混合物を、20℃で24時間攪拌した。pHを、反応時間の間、10%強度NaHCO3水溶液の添加により5の値に維持した。200mlの10%強度NaHCO3水溶液を、透明な反応混合物に添加した。ついで反応混合物を、1,000mlのメタノールに滴下させて導入した。定量的に沈殿した誘導体化ポリマーを、セルロースニトレートフィルター(8□m)を通してろ過し、高真空で24時間乾燥させた。7%の誘導体化度が、1H−NMR分光分析法により確認された。
【0162】
実施例4:14%の誘導体化度を有するポリ(ベンジルN−アリルカルバメート)の調製
12.56g(135mmol)のポリ(アリルアミンヒドロクロリド)を250mlの水に溶解し、10%強度NaHCO3水溶液を用いて、pHを5に調整した。55mlのDMSO中の5.92g(18.9mmol)のN−(ベンジロキシカルボニロキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドを、20℃で30分かけて滴下させて添加した。ついで反応混合物を、20℃で24時間攪拌した。pHを、反応時間の間、10%強度NaHCO3水溶液の添加により5の値に維持した。反応混合物を、600mlの10%強度NaHCO3水溶液に滴下させて添加した。ここで定量的に沈殿した誘導体化ポリマーを、セルロースニトレートフィルター(8□m)を通してろ過し、高真空で24時間乾燥させた。14%の誘導体化度が、1H−NMR分光分析法により確認された。
【0163】
実施例5:20%の誘導体化度を有するポリ(ベンジルN−アリルカルバメート)の調製
13.95g(150mmol)のポリ(アリルアミンヒドロクロリド)を200mlの水に溶解し、10%強度NaHCO3水溶液を用いて、pHを5に調整した。50mlのDMSO中の9.39g(30mmol)のN−(ベンジロキシカルボニロキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドを、20℃で30分かけて滴下させて添加した。ついで反応混合物を、20℃で24時間攪拌した。pHを、反応時間の間、10%強度NaHCO3水溶液の添加により5の値に維持した。反応混合物を、500mlの10%強度NaHCO3水溶液に滴下させて添加した。定量的に沈殿した誘導体化ポリマーを、セルロースニトレートフィルター(8□m)を通してろ過し、水で洗浄し、高真空で24時間乾燥させた。20%の誘導体化度が、1H−NMR分光分析法により確認された。
【0164】
実施例6:7%の誘導体化度を有するポリ(6−(アリルアミノ)−6−オキソヘキサン酸)の調製
5.00g(54mmol)のポリ(アリルアミンヒドロクロリド)を500mlの水に溶解し、10%強度NaHCO3溶液を用いて、溶液のpHを5の値に調整した。100mlのDMSO中の1.2g(4mmol)の1−アジピン酸(N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)エステルを、20℃で30分かけて滴下させて添加した。ついで反応混合物を、20℃で24時間攪拌した。500mlの10%強度NaHCO3水溶液および1,000mlのメタノールを、透明な反応混合物に添加すると、誘導体化ポリマーが沈殿した。溶媒をデカントし、ポリマーを高真空で24時間乾燥させた。
【0165】
実施例7:DS7%の誘導体化度を有するポリ(2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチルN−アリルカルバメート)の調製
12.46g(134mmol)のポリ(アリルアミンヒドロクロリド)を250mlの水に溶解し、10%強度NaHCO3溶液を用いて、溶液のpHを5の値に調整した。50mlのDMSO中の3.14g(9.4mmol)の下記構造式の化合物を、20℃で30分かけて滴下させて添加した:
【0166】
【化20】

【0167】
ついで反応混合物を、20℃で24時間攪拌した。溶液を100mlに濃縮し、pHを、NaHCO3の添加により9に調整した。反応溶液の500mlのメタノールへの滴下添加により、誘導体化ポリマーを沈殿させ、ろ過し、メタノールで洗浄し、高真空で乾燥させた。7%の誘導体化度が、1H−NMR分光分析法により確認された。
【0168】
実施例8:8%の誘導体化度を有するポリ(エチレン/コ−N−ベンジルビニルカルバメート)の調製
5.04g(165mmol)のポリ(エチレン/コ−ビニルアルコール)(エチレン含有量:84mol%)を、50℃で200mlのテトラヒドロフランに溶解した。1.52g(15mmol)のトリエチルアミンおよび0.31g(2.5mmol)の4−ジメチルアミノピリジンの添加後、50mlのDMSO中の4.12g(13.2mmol)の下記構造式の化合物を、15分かけて滴下させて添加した:
【0169】
【化21】

【0170】
ついで反応混合物を、50℃で48時間攪拌した。透明溶液を650mlの5%強度NaHCO3水溶液に導入すると、ポリマーが、やや黄色がかった沈殿物として沈殿した。ろ過後、沈殿物を高真空で48時間乾燥させた。
【0171】
実施例9:メントヒドラジド−ONBの調製
【0172】
【化22】

【0173】
7.71g(32mmol)のN−(クロロカルボニロキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドを、350mlのジクロロメタンに溶解した。70mlのジクロロメタン中の5.82g(30mmol)のメンチル1−ヒドラジンカルボキシレートおよび3.33g(33mmol)のトリエチルアミンの溶液を、−15℃で1時間かけて滴下して添加した。混合物を、−15℃でさらに15分間攪拌し、ついで0℃で150mlの10%強度KHSO4溶液で処理した。反応溶液を、150mlの10%強度NaHCO3溶液で2回振とうし、有機相を、Na2SO4上で乾燥させた。溶媒の除去後、薄黄色の非晶結晶が残り、それを高真空で乾燥させた。収率:11.5g(91.4%)。
【0174】
実施例10:28%の誘導体化度を有するポリ(エチレン/コ−(1−メンチル2−ビニル1,2−ヒドラジンジカルボキシレート))の調製
0.92g(25mmol)のポリ(エチレン/コ−ビニルアルコール)(エチレン含有量:44mol%)を、50℃で100mlのDMSOに溶解した。0.71g(7mmol)のトリエチルアミンおよび0.09g(0.7mmol)の4−ジメチルアミノピリジンの添加後、25mlのDMSO中の2.93g(7mmol)のメントヒドラジド−ONB溶液を、15分かけて滴下させて添加した:
【0175】
【化23】

【0176】
ついで反応混合物を、20℃で48時間攪拌した。透明溶液を100mlの水および200mlの5%強度NaHCO3水溶液で処理すると、ポリマーが、白い沈殿物として析出した。ろ過および水での洗浄後、沈殿物を高真空で48時間乾燥させた。
【0177】
実施例11:ポリマー変形
化合物の説明:
−ドデカンジオイック酸ビス(N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)エステルで2%に架橋された、7%の誘導体化度を有するポリ(ベンジルN−アリルカルバメート)の3層で被覆した、シリカゲル300Å、20□m(Daisogel SP300−15/30)=(1)、
−琥珀酸ビス(N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)エステル=(2)
(1)を詰め込んだカラムを、CHCl3中の0.2%強度(10.5mmol/l)5−メチル−5−フェニルヒダントイン溶液(基体)および0.6ml/分の流量で状態調節すると、基体の約40mgがカラムに吸収された。ついで、80□lの氷酢酸を注入し、流出物を2つの画分で集めた:
第一画分:注入から基体ピーク後のベースライン再達成まで(6.1分)
基体の18.2mgが、この画分に含まれた。これから、このときの7.32mgの溶離剤から流し込んだ基体量を、10.9mgの値が氷酢酸により洗浄された量の結果となるように、差し引いた。
第二画分:基体ピーク後のベースライン再達成から注入前に存在する平衡の新たな確立まで(6.1〜80分)
72.2mgの基体が、この画分に見出された。88.7mgをこのとき溶離剤により流し込むと(73.9分)、固定相により取り上げられた基体の量は、16.5mgだった。
【0178】
注入完了後、塔を取り除き、0℃に冷却した(約30分)。
架橋剤溶液の調製のために、(2)(186.2mg、0.423mmol)を、19.24mlの0.2%強度(10.5mmol/l)5−メチル−5−フェニルヒダントイン溶液に溶解し、トリエチルアミン(0.76ml)を添加した。この溶液を、0℃に冷却した貯蔵容器から系(無カラム)に流し込んだ。
【0179】
ベースラインが一定になった後、この場合、カラムがさらに0℃に冷却されてとどまるように、カラムを再び系に取り込んだ。架橋剤溶液を、5ml/分でカラムに流し込んだ。架橋剤フロントの漏出(UV265nm)後、流れを止めた。
【0180】
カラムを再び取り除き、さらに0℃に30分間冷却し、ついでカラムサーモスタットに置いた(120分、25℃)。
系(無カラム)を、テトラヒドロフランで洗浄し、カラムを、120分の反応時間後再び系に取り込み、50mlのテトラヒドロフラン(1ml/分)で洗浄した。
【0181】
架橋剤の依然として残っている遊離(N−オキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)基の奪活のために、ジエチルアミン(40.2mg、0.55mmol)(N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドの最大形成量の5当量)を、テトラヒドロフラン(20ml)(急冷溶液)に溶解し、カラムに流し込み(1ml/分)、カラム出口からの溶液を、再びカラムに5時間流し込み、ついでテトラヒドロフランに切り替えた。ベースラインが一定になった後、ポンプを止め、カラムサーモスタットを50℃に調整し、この温度を30分間維持した。ついで、純テトラヒドロフランが溶出するまで、テトラヒドロフランを再び1ml/分でポンピングした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非共有受容体−化学物質相互作用を介して少なくとも1つの化学物質の結合に受容体として作用する、少なくとも1つの官能基を有するポリマーの誘導体であって、少なくとも1つの化学物質の結合が、受容体基の化学構造のために少なくとも2つの異なる型の相互作用を介して生じる、前記誘導体。
【請求項2】
少なくとも1つの化学物質の結合が少なくとも3つの異なる型の相互作用を介して生じる、請求項1に記載の誘導体。
【請求項3】
前記相互作用が多価エンタルピー増大によって相乗的に強化される、請求項1または2に記載の誘導体。
【請求項4】
前記相互作用が、水素結合、双極−双極相互作用、Van der Waals相互作用、疎水性相互作用、電荷移動相互作用、イオン相互作用および配位結合からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項5】
少なくとも1つの化学物質との異なる相互作用が、2つ以上の異なる受容体基によって形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項6】
少なくとも3つの官能基を有するポリマーの誘導体であって、官能基の少なくとも2つが、適宜の化学物質と受容体基として相互作用するように誘導体化され、非化学物質特異作用および/または官能基を有さないモノマーユニットを有する少なくとも1つの官能基が、これらの誘導体化基2つの間にある、請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項7】
少なくとも2つの異なる受容基を有する、請求項6に記載の誘導体。
【請求項8】
前記ポリマーが、合成ポリマーである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の誘導体。
【請求項9】
非共有受容体−化学物質相互作用を介して、少なくとも1つの化学物質を少なくとも1つの受容体基に結合するための方法であって、少なくとも1つの受容体基を有する使用される化合物が請求項1〜8のいずれか1項に規定される誘導体である、前記方法。
【請求項10】
前記方法が、クロマトグラフィー方法、ろ過方法、1つ以上の膜による分離方法、または触媒方法である、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2010−59433(P2010−59433A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251039(P2009−251039)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【分割の表示】特願2000−585289(P2000−585289)の分割
【原出願日】平成11年11月26日(1999.11.26)
【出願人】(500540028)ドクトル・ゴッチャル・インストラクション・ゲゼルシャフト・フィール・テクニーシュ・クロマトグラフィー・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】