説明

誘導加熱装置およびそれを備える発電システム

【課題】加熱部から磁場発生手段への熱影響を抑えることができる誘導加熱装置およびそれを備える発電システムを提供する。
【解決手段】誘導加熱装置101は、回転軸21の一端側に固定された歯車形状の回転体11と、回転体11の外周に配置された円筒状のステータ部12と、回転体の内周面に取り付けられた導電材料の加熱部13と、回転体の一端側に一端側が対向するように配置された円柱状の支持柱部14と、支持柱部に装着された磁場発生手段15と、ステータ部と支持柱部の他端側とを磁気的につなぐヨーク部16と、加熱部に設けられ、熱媒体が流通する配管とを備える。そして、磁場発生手段15により、支持柱部の一端側から、回転体、ステータ部、ヨーク部を通り、支持柱部の他端側に至る磁気回路が形成され、回転体11の回転により、加熱部13を通過する磁束が変化することで、加熱部が誘導加熱され、配管内の熱媒体を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱を利用して熱媒体を加熱する誘導加熱装置およびそれを備える発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水を加熱する装置として、誘導加熱(渦電流)を利用した加熱装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の渦電流加熱装置では、外周に永久磁石が配置された回転可能なロータと、このロータの外周に固定して設けられ、内部に水を流通させる流通路が形成された導電材料の加熱部とを備える。そして、ロータが回転することより、ロータ外周の永久磁石による磁力線が加熱部を貫通して移動することで、加熱部に渦電流が発生して、加熱部自体が発熱する。その結果、加熱部で発生した熱が内部の流通路を流通する水に伝達され、水が加熱される。
【0003】
上記の技術は風力などのエネルギーを利用して給湯を行うことを主目的としたものであるが、近年、同じく風力、水力、波力などの再生可能エネルギーを利用した発電システムが注目されている。
【0004】
例えば非特許文献1〜3には、風力発電に関する技術が記載されている。風力発電は、風で風車を回転させ、発電機を駆動して発電するものであり、風のエネルギーを回転エネルギーに変換して、電気エネルギーとして取り出すものである。風力発電システムは、塔の上部にナセルを設置し、このナセルに水平軸風車(風の方向に対して回転軸がほぼ平行な風車)を取り付けた構造が一般的である。ナセルには、風車の回転軸の回転数を増速して出力する増速機と、増速機の出力によって駆動される発電機とが格納されている。増速機は、風車の回転数を発電機の回転数まで高める(例えば1:100)ものであり、ギアボックスが組み込まれている。
【0005】
最近では、発電コストを下げるため、風車(風力発電システム)を大型化する傾向があり、風車の直径が120m以上、1基当たりの出力が5MWクラスの風力発電システムが実用化されている。このような大型の風力発電システムは、巨大かつ重量物であるため建設上の理由から、洋上に建設されるケースが多い。
【0006】
また、風力発電では、風力の変動に伴い発電出力(発電量)が変動するため、風力発電システムに蓄電システムを併設し、不安定な電力を蓄電池に蓄えて、出力を平滑化することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005‐174801号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“風力発電(01‐05‐01‐05)”、[online]、原子力百科辞典ATOMICA、[平成22年1月12日検索]、インターネット<URL:http://www.rist.or.jp/atomica/>
【非特許文献2】“2000kW大型風力発電システム SUBARU80/2.0 PROTOTYPE”、[online]、富士重工業株式会社、[平成22年1月12日検索]、インターネット<URL:http://www.subaru-windturbine.jp/home/index.html>
【非特許文献3】“風力講座”、[online]、三菱重工業株式会社、[平成22年1月12日検索]、インターネット<URL:http://www.mhi.co.jp/products/expand/wind_kouza.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記した特許文献1に記載されるような従来の誘導加熱装置では、磁場発生手段である永久磁石がロータの外周に配置されているため、次のような不具合が起こり得る。
【0010】
特許文献1には、永久磁石としてネオジウム磁石が使用できることが記載されているが(特に、特許文献1の段落0037を参照)、ネオジウム磁石は熱に弱く、温度が上昇すると、磁気特性が低下する(これは、一般的なフェライト磁石も同じ)。上記した従来の誘導加熱装置では、加熱部と対向するように永久磁石が配置され、永久磁石と加熱部との距離が近い構造であるため、加熱部からの熱の影響により永久磁石の温度が上昇し易く、磁気特性が低下して、結果的に所望の温度まで熱媒体を加熱できない虞がある。
【0011】
一方、一般に広く知られている風力発電システムでは、出力平滑化のため蓄電システムが設置されているが、蓄電システムには電力を蓄電池に蓄えるためにコンバータなどの部品が必要であるため、システムの複雑化、電力損失の増大を招く。また、大型の風力発電システムの場合では、発電量に応じた大容量の蓄電池が必要であり、システム全体としてのコスト増大を招く。
【0012】
また、風力発電システムの故障原因の多くは、増速機、より具体的にはギアボックスのトラブルによるものである。ギアボックスが故障すると、通常はギアボックスを交換することで対処しているが、塔の上部にナセルが設置されている場合は、ギアボックスの取り付け・取り外しに多大な時間と労力を要する。そこで最近では、増速機を必要としないギアレスの可変速式風力発電機もある。
【0013】
しかし、ギアレスの場合、具体的には発電機の極数を増やすこと(多極発電機)で対応するが、増速機を使用する場合と比較して、発電機が大型・重量化する。特に、5MWクラスの大型の風力発電システムでは、発電機の重量が300トン(300000kg)を超えるものと考えられ、ナセル内に配置することが困難である。
【0014】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、簡易な構成でありながら、磁場発生手段の配置を工夫することで、加熱部から磁場発生手段への熱影響を抑えることができる誘導加熱装置を提供することにある。また、別の目的は、上記の誘導加熱装置を備える発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の誘導加熱装置は、回転体と、ステータ部と、加熱部と、支持柱部と、磁場発生手段と、ヨーク部と、配管とを備える。回転体は、回転軸の一端側に固定され、外形が非円形の磁性材料からなる。ステータ部は、回転体の外周に所定間隔をあけて配置され、磁性材料からなる。加熱部は、回転体とステータ部との間に配置され、導電材料からなる。支持柱部は、その一端側が回転体の一端側に対向するように配置される柱状の部材である。磁場発生手段は、支持柱部に装着され、回転体に対し磁場を発生させる。ヨーク部は、磁性材料からなり、ステータ部と支持柱部の他端側とを磁気的につなぐ。配管は、加熱部に設けられ、熱媒体が流通する。この装置は、磁場発生手段により、支持柱部の一端側から、回転体、ステータ部、ヨーク部を通り、支持柱部の他端側に至る磁気回路が形成される。そして、回転軸の回転により、回転体が回転し、回転体とステータ部との間に配置された加熱部の少なくとも一部を通過する磁束が変化することで、加熱部が誘導加熱され、熱媒体を加熱することを特徴とする。
【0016】
本発明の誘導加熱装置によれば、回転体の一端側に配置された支持柱部に磁場発生手段が装着された構造であるため、回転体に対して磁場発生手段が回転体の中心から軸方向にずれた位置に位置する。その結果、従来の誘導加熱装置に比較して、回転体とステータ部との間に配置された加熱部と磁場発生手段とを距離を離して配置することができ、加熱部から磁場発生手段への熱影響を抑えることができる。
【0017】
本発明の誘導加熱装置では、回転体に対して磁場発生手段が軸方向にずれることで、磁場発生手段が回転体に囲まれることがなく、また、回転せず固定された支持柱部に磁場発生手段が装着されていることで、例えば磁場発生手段にコイル(電磁石)を用いる場合、コイルに接続する電源の取り回しが容易である。また、回転せず固定された加熱部に配管を設けることで、配管に連通して外部から熱媒体を供給・排出する給排管と配管との接続に、配管の回動を許容する回転継手を用いる必要がなく、簡易な構成で、堅牢な接続を実現できる。具体的には、熱媒体を加熱すると配管内の圧力が上昇し、例えば熱媒体が水(蒸気)の場合では600℃で約25MPa(250気圧)に達する。加熱部(配管)が回転する場合は、その圧力に耐えられる特殊な回転継手が必要であるところ、回転しない場合は、回転継手の必要がなく、例えば給排管と配管とを溶接するといった単純な方法を採用することで、十分に堅牢な構造を実現できる。
【0018】
本発明の誘導加熱装置における熱媒体が加熱されるメカニズムについて説明する。本発明の誘導加熱装置では、磁場発生手段により、磁束(磁場)を発生させ、支持柱部の一端側から、回転体、ステータ部、ヨーク部を通り、支持柱部の他端側に至る磁気回路が形成される。そして、非円形の回転体が回転することにより、回転体とステータ部との間の一部において、回転体とステータ部との間のギャップ(距離)が変化する。具体的には、回転体‐ステータ部間の距離が狭小になり回転体とステータ部とがほぼ連続状態になるとき、回転体からステータ部に磁束が流れ易くなる。一方、回転体の回転により、回転体‐ステータ部間の距離が広大になり回転体とステータ部とが非連続状態になるとき、回転体からステータ部に磁束が流れ難くなる。その結果、回転体とステータ部との間に配置された加熱部の少なくとも一部を通過する磁束(磁場)が変化することで、誘導電流(渦電流)が発生し、加熱部が誘導加熱され、熱媒体が加熱される。
【0019】
本発明の誘導加熱装置において、回転体の外形は、非円形であり、回転体が1回転する間に回転体とステータ部との間の距離が変化する形状であれば、特に限定されない。回転体の外形形状としては、例えば、矩形状、楕円形状、多角形状、十字形状、歯車形状などが挙げられる。また、磁性材料としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、ケイ素鋼、パーマロイ、及びフェライトなどが挙げられる。導電材料としては、例えば、アルミニウムや銅、鉄などの金属が挙げられる。熱媒体としては、例えば、水、油、液体金属(Na、Pbなど)、溶融塩などの液体並びに気体が挙げられる。
【0020】
本発明の誘導加熱装置の一形態としては、ステータ部が、筒状であり、この筒状部分から求心状に突出する突起部を有し、加熱部は、ステータ部の内周面に取り付けられ、突起部が挿通される孔を有することが挙げられる。
【0021】
この構成によれば、ステータ部の突起部の周囲が加熱部を形成する導電材料によって囲まれる。そして、回転体の回転により、回転体とステータ部の突起部との間の距離が狭小→広大、或いは広大→狭小になり、突起部に流れる磁束が変化すると、突起部周囲の加熱部において、誘導起電力(逆起電力)が発生し、電流が流れることで、加熱される。したがって、この構成によれば、突起部周囲の加熱部における誘導起電力も利用して熱媒体を加熱することができ、また、突起部が存在することで、突起部がない場合と比較して、回転体‐ステータ部間の距離が狭小になるときの回転体からステータ部(突起部)に流れる磁束量が増加する。その結果、ステータ部の突起部に流れる磁束の変化を大きくして、発生する誘導起電力を大きくすることができ、加熱効率を向上できる。
【0022】
本発明の誘導加熱装置の一形態としては、回転体の形状が、径方向に突出する凸部を有する歯車形状であることが挙げられる。
【0023】
この構成によれば、回転体が1回転する間、加熱部の一部を通過する磁束が周期的に変化し、この部分での磁場の強さが周期的に変化する。また、回転体の周方向における凸部の幅を小さくすることで、回転体(凸部)からステータ部に流れる磁束が集中し、加熱部を通過する磁束(磁場)を大きくすることができる。その結果、加熱部での磁場の変化を大きくすることができ、加熱効率を向上できる。
【0024】
上記したステータ部の突起部、或いは回転体の凸部の数は、複数であることが好ましく、4つ以上であることがより好ましい。また、複数の突起部、或いは複数の凸部を設ける場合は、例えばステータ部、或いは回転体の周方向に等間隔に設けることが挙げられる。
【0025】
本発明の誘導加熱装置の一形態としては、磁場発生手段が、超電導コイルであることが挙げられる。
【0026】
磁場発生手段としては、永久磁石やコイル(電磁石)を用いることができる。コイルとしては、銅線などの常電導コイルや超電導コイルが具体的に挙げられる。コイルを用いる場合、永久磁石を用いる場合と比較して、強い磁場を発生させることができる。具体的には、コイルに通電する電流を大きくすることで、強い磁場を発生させることができ、通電電流を制御することで磁場の強さを調整することも可能である。また、コイルであれば、永久磁石と比較して、温度上昇による磁気特性の低下や、経時的な磁気特性の劣化が起こり難い。さらに、加熱部を保温するために加熱部の周囲に断熱材を設けた場合、断熱材が磁気回路の途中(具体的には回転体と加熱部との間)に配置され、回転体とステータ部との間の距離が大きくなることがあっても、通電電流をより大きくすることで、十分な磁場強度を維持し易い。したがって、磁場発生手段にコイルを用いることで、熱媒体を所定の温度(例えば、100℃〜600℃)まで加熱するのに十分な磁場を得ることができる。コイルを用いる場合は、コイルに直流電源を接続し、直流磁場を発生させることが挙げられる。
【0027】
さらに、超電導コイルであれば、電気抵抗がゼロであり、大電流を流してもコイルに発熱が生じない。そのため、常電導コイルに比較して、大電流を流すことによるコイルの発熱を抑制することができ、また、より強い磁場を発生させることができる。
【0028】
本発明の誘導加熱装置の一形態としては、回転軸の他端側が風車に接続され、回転体を回転させる動力に風力を利用することが挙げられる。
【0029】
本発明の誘導加熱装置において、回転体(回転軸)の動力には、電動機やエンジンなどの内燃機関を用いることができる他、風力、水力、波力などの再生可能エネルギーを利用することができる。再生可能エネルギーを利用すれば、CO2の増加を抑制でき、中でも風力を利用することが好適である。
【0030】
本発明の発電システムは、上記した本発明の誘導加熱装置と、熱媒体の熱を電気エネルギーに変換する発電部とを備えることを特徴とする。
【0031】
本発明の発電システムは、上記した誘導加熱装置を利用して加熱した熱媒体の熱を発電に利用するものであり、従来にない新規な発電システムである。例えば、誘導加熱装置の回転軸に風車を接続し、回転体の動力に風力を利用すれば、風のエネルギーを回転エネルギー→熱エネルギーに変換して、電気エネルギーとして取り出すことができる。そして、本発明の発電システムによれば、熱を電気エネルギーに変換する構成としたことで、蓄熱器を用いて熱としてエネルギーを蓄えることにより、効率の良い安定した発電を実現できる。また、熱を蓄熱器に蓄え、発電に必要な熱を取り出すことができる蓄熱システムは、蓄電システムに比べて簡易であり、蓄熱器も蓄電池に比べれば安価である。さらに、従来の風力発電システムのように増速機を設ける必要がなく、ギアボックスのトラブルを回避することが可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の誘導加熱装置は、回転体の一端側に配置された支持柱部に磁場発生手段が装着された構造であるため、加熱部から磁場発生手段への熱影響を抑えることができる。また、本発明の発電システムは、上記した誘導加熱装置を利用して加熱した熱媒体の熱を発電に利用するものであり、従来にない新規な発電システムである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態1に係る誘導加熱装置の概略図であり、(A)は、分解斜視図であり、(B)は、組み立て状態を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る誘導加熱装置の概略図であり、(A)は、回転軸側から見た正面図であり、(B)は、回転軸方向に沿って切断した側面断面図である。
【図3】図2(A)のa点における磁場の時間的変化を模式的に示す図である。
【図4】実施の形態2に係る誘導加熱装置の概略図であり、(A)は、分解斜視図であり、(B)は、回転体の軸方向と直交方向に切断した正面断面図である。
【図5】実施の形態2に係る誘導加熱装置の部分拡大概略図であり、(A)は、回転体が回転中の一状態を示し、(B)は、回転体が回転中の別の状態を示す。
【図6】実施の形態2に係る誘導加熱装置におけるステータ部の変形例を示す概略斜視図である。
【図7】実施の形態3に係る誘導加熱装置の概略図であり、(A)は、回転軸方向に沿って切断した側面断面図であり、(B)は、同図(A)の矢視A‐Aから見た磁場発生手段部分の部分断面図である。
【図8】誘導加熱装置における磁場発生手段の変形例を示す概略図であり、(A)は、永久磁石が埋め込まれた支持柱部の側面図であり、(B)は、同図(A)の矢視A‐Aから見た断面図である。
【図9】誘導加熱装置における配管の配置例を示す概略図であり、(A)は、1つの配管で構成する場合の展開平面図であり、(B)は、2つの配管で構成する場合の展開平面図であり、(C)は、4つの配管で構成する場合の展開平面図である。(D)は、同図(A)の配置例の場合に、配管の部分同士を電気的に接続する接続導体の取り付け例を示す展開平面図である。
【図10】誘導加熱装置における配管の別の配置例を示す概略側面図である。
【図11】本発明に係る発電システムの全体構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態を、図を用いて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0035】
<誘導加熱装置>
(実施の形態1)
図1、2に示す実施の形態1に係る誘導加熱装置101は、回転体11と、ステータ部12と、加熱部13と、支持柱部14、磁場発生手段15と、ヨーク部16と、配管17とを備える。以下、誘導加熱装置101の構成を詳しく説明する。
【0036】
回転体11は、回転可能に支持された回転軸21の一端側に固定されており、軸方向から見た外形形状が、径方向に突出する複数の凸部111を有する歯車形状に形成されている。この例では、8つの凸部111を有し、各凸部が周方向に等間隔に設けられている。この回転体11は、磁性材料からなり、この例では、回転軸方向にケイ素鋼板を積層した積層鋼板で形成されている。その他、鉄粉等の磁性粉末の表面に絶縁被覆を施し、この粉末を加圧成形した圧粉磁心を用いてもよい。なお、ここでは、回転体11が反時計方向に回転するものとする(図2(A)中の矢印は回転方向を示す。図4(B)、図5も同じ)。
【0037】
ステータ部12は、回転体11の外周を覆うように、回転体11との間に所定間隔をあけて配置されている。この例では、ステータ部12が筒状、より具体的には円筒状である。このステータ部12は、磁性材料からなり、回転しないように固定されている。
【0038】
加熱部13は、回転体11とステータ部12との間に配置され、回転体11の周囲を覆うように円筒状に形成されている。加熱部13は、導電材料からなり、例えば、アルミニウムや銅、鉄などの金属で形成されている。また、加熱部13は、ステータ部12の内周面に取り付けられ、回転しない。
【0039】
加熱部13には、熱媒体が流通する配管17が設けられている(図2(A)参照)。この例では、加熱部13の内部に軸方向に沿って延びる複数の流通路を形成し、これらを熱媒体が流通する配管17に利用している。そして、加熱部13と配管17とは熱的に接続されている。例えばこの例では、配管17の一端側から熱媒体を供給し、他端側から排出する構成としたり、配管17の一端側において、配管17と別の配管17とを接続する接続管を取り付け、配管17の他端側から熱媒体を供給し、接続管を介して、別の配管17の他端側から排出する構成としたりすることが挙げられる。後者の場合、前者の場合と比較して、熱媒体の加熱距離を長くすることができる。
【0040】
また、加熱部13の周囲には、断熱材(図示せず)を配置してもよい。例えばこの例では、加熱部13の内外周面、及び加熱部13の端面のうち配管17の配置箇所を除く箇所に断熱材を設けることが挙げられる。断熱材には、例えば、ロックウール、グラスウール、発砲プラスチック、レンガ、セラミックスなどを用いることができる。
【0041】
支持柱部14は、回転体11の一端側に一端側が対向するように配置される柱状の部材である。この例では、回転体11の背面(一端側の面)中央に遊嵌穴115が形成されており、この遊嵌穴115に支持柱部14の一端部が遊嵌されている。支持柱部14の形状は、特に限定されないが、例えば、円柱状、円筒柱状、多角柱状、多角筒柱状などを挙げることができ、この例では、中空の円柱状であり、軽量化が図られている。また、支持柱部14は、磁性材料、非磁性材料のいずれを用いてもよく、この例では、非磁性材料で形成されている。例えば、磁場発生手段に永久磁石や常電導コイルを用いる場合は、支持柱部を磁性材料で形成することが好ましい。一方、超電導コイルを用いる場合は、支持柱部14の飽和磁束のために発生磁場が限定されてしまう虞があることから、支持柱部14を非磁性材料で形成することが好ましい場合もある。
【0042】
支持柱部14には、回転体11に対し磁場を発生させる磁場発生手段のコイル15が装着されており、コイル15は、回転体11に対して回転体の中心から軸方向にずれた位置に位置する。また、コイル15には、図示しない直流電源が接続されている。この例では、コイル15に通電する直流電流の向きを制御して、発生させる磁場(磁束)の方向を決定しており、一端側(回転体11側)がN極、他端側がS極となるようにしている。また、コイル15は、超電導コイルであり、周囲を図示しない冷却用ジャケットで覆われ、冷却することによって超電導状態に保持されている。
【0043】
ヨーク部16は、ステータ部12と支持柱部14の他端側とを磁気的につなぐ部材であり、磁性材料で形成されている。この例では、ヨーク部16は、一端側がステータ部12に接続され、コイル15の外側を覆うように周方向に配された複数のヨーク片161と、これら各ヨーク片の他端側が接続される基部板162とを有する。また、基部板162には、コイル15が装着された支持柱部14の他端側が接続され、これにより、ステータ部12と支持柱部14の他端側とを磁気的につなぐことができる。この例では、複数のヨーク片161を用いてヨーク部16を構成しているが、周方向に連続する実質的に筒状の1つのヨーク片を用いて構成してもよい。
【0044】
次に、誘導加熱装置101における熱媒体が加熱されるメカニズムについて詳しく説明する。
【0045】
誘導加熱装置101では、コイル15に直流通電することにより、磁束(磁場)が発生し、支持柱部14の一端側から、回転体11、ステータ部12、ヨーク部16(ヨーク片161及び基部板162)を通り、支持柱部14の他端側に至る磁気回路が形成される。つまり、回転体11とステータ部12とヨーク部16とで、閉じた磁気回路が形成される(図2(B)中の点線矢印は磁束の流れのイメージを示す。図7(A)も同じ)。ここで、図2(A)のa点では、回転体11の凸部111とステータ部12とが対向し、回転体11‐ステータ部12間の距離が狭小になり、回転体11とステータ部12とがほぼ連続状態になることで、磁気抵抗が小さくなり、回転体11からステータ部12に磁束が流れ易くなる。一方、図2(A)のb点では、凸部111が存在しないことから、回転体11‐ステータ部12間の距離が広大になり、回転体11とステータ部12とが非連続状態になることで、磁気抵抗が大きくなり、回転体11からステータ部12に磁束が流れ難くなる。その結果、回転体11の回転により、加熱部13の全周にわたって通過する磁束が変化し、この部分での磁場の強さが周期的に変化することで、加熱部13に誘導電流(渦電流)が発生し、加熱部13が誘導加熱され、配管17内の熱媒体が加熱される。
【0046】
図3は、図2(A)のa点における磁場の時間的変化を模式的に示す図である。磁場は、回転体‐ステータ部間の距離が最も狭小になるとき、極大かつ最大となり、一方、回転体‐ステータ部間の距離が最も広大になるとき、極小かつ最小となる。
【0047】
誘導加熱装置101において、回転体11の凸部111の数、並びに周方向における凸部111の幅は、適宜設定することができる。ここで、凸部111の数をある程度増やすことで、磁場の周期を短くすることができる。誘導加熱エネルギー(誘導電流)は、磁場の周波数に比例関係にあることから、磁場の周期を短くすることで、加熱効率を向上できる。また、凸部111の幅をある程度小さくすることで、回転体11(凸部111)からステータ部12に流れる磁束が集中し、回転体11‐ステータ部12間の距離が狭小になる箇所に対応する加熱部13を通過する磁束が増加する。その結果、加熱部13に印加される磁場の振幅が大きくなり、加熱効率を向上できる。
【0048】
(実施の形態2)
図4、5に示す実施の形態2に係る誘導加熱装置102は、ステータ部および加熱部の形状が図1、2に示す実施の形態1の誘導加熱装置101と相違し、以下ではその相違点を中心に説明する。
【0049】
実施の形態2の誘導加熱装置102では、ステータ部12が、円筒状部分から求心状に突出する複数の突起部121を有し、かつ、加熱部13には、各突起部121が挿通される孔131を有する。この例では、ステータ部12が8つの突起部121を有し、各突起部が周方向に等間隔に設けられている。また、突起部121は、ステータ部12の軸方向に対して平行で、突出方向と直交方向に切断した断面が略矩形状の四角柱状であり、この断面の面積が、回転体11の凸部111の突出方向と直交方向に切断した凸部の断面の面積と略等しい。
【0050】
誘導加熱装置102における熱媒体が加熱されるメカニズムについて説明すると、回転体11の回転により、加熱部13に印加される磁場の強さが周期的に変化することで、加熱部13に渦電流が発生し、加熱部13が誘導加熱され、配管17内の熱媒体が加熱される点は、実施の形態1の誘導加熱装置101と同様である。さらに、誘導加熱装置102においては、回転体11の回転により、回転体11の凸部111とステータ部12の突起部121との間の距離が狭小→広大、或いは広大→狭小になり、突起部121に流れる磁束が変化する(図5(A)、(B)参照)。それにより、突起部周囲の加熱部において、誘導起電力(逆起電力)が発生し、電流が流れることで、加熱部13が加熱され、配管17内の熱媒体が加熱される。
【0051】
このように、誘導加熱装置102では、誘導起電力が発生した際に、突起部121の周囲に存在する加熱部13の導電材料により、突起部121の周囲に連続する電流経路が形成されることから、実施の形態1の誘導加熱装置101と異なり、誘導起電力も利用して熱媒体を加熱する。
【0052】
この実施の形態2の誘導加熱装置102では、ステータ部12における突起部121の形状が、突出方向と直交方向に切断にした断面が略矩形状の四角柱状である場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、ステータ部12の突起部121をステータ部12の軸方向に対して傾斜させたスキュー構造とすることができる。スキュー構造を採用することで、コギングトルクを低減して、回転体11の回転を滑らかにすることができる。また、回転体11の凸部111をスキュー構造としてもよい。
【0053】
(実施の形態3)
上記した実施の形態1、2の誘導加熱装置101、102では、支持柱部14に1つのコイル15を装着した場合を例に説明したが、誘導加熱装置を後述する本発明に係る発電システムに利用する場合、支持柱部14の直径が1m以上、例えば2m程度に達することが考えられる。そこで、複数のコイルや永久磁石を用いて磁場発生手段を構成することが好ましい場合も考えられる。
【0054】
図7に示す実施の形態3に係る誘導加熱装置103は、複数のコイルを用いて磁場発生手段を構成した一例である。例えば、複数のコイルを用いる場合、図7に例示するように、複数の支持柱部14を円筒状に配置し、各支持柱部14にコイル15cを装着することが挙げられる。この構成の場合、各コイル15cの発生磁場の方向を同じとすることで、図2(B)に示す誘導加熱装置101と同じように、支持柱部14の一端側から、回転体11、ステータ部12、ヨーク部16(ヨーク片161及び基部板162)を通り、支持柱部14の他端側に至る磁気回路が形成される(図7(A)参照)。複数のコイルを用いて磁場発生手段を構成することで、1つあたりのコイルを小型化することができ、コイルの製造が容易である。
【0055】
また、複数の永久磁石を用いる場合は、図8に例示するように、支持部材14の周方向に複数のスリットを設け、各スリットに永久磁石15mを埋め込んで装着することが挙げられる。この構成によっても、各永久磁石15cの発生磁場の方向を同じとすることで、図2(B)に示す誘導加熱装置101と同じように、磁気回路が形成される。
【0056】
上記した実施の形態1〜3の誘導加熱装置101〜103では、加熱部13の内部に流通路を形成し、加熱部13と配管17とを一体に形成した場合を例に説明したが、加熱部13と配管17とを別体で形成してもよい。その場合、配管も導電材料で形成することが好ましい。配管を導電材料で形成することで、配管を加熱部として兼用することができる。また、加熱部と配管とを別体とし、配管を加熱部の表面に設けてもよい。ここで、配管を導電材料で形成し、配管を加熱部として兼用する場合は、例えば、配管のみを配置する他、円筒状の支持台の表面に配管を取り付けるようにしてもよい。このとき、円筒状の支持台を導電材料以外の材料で形成してもよい。
【0057】
図9は、配管を導電材料で形成し、かつ、配管のみ配置する場合の配管の配置例を示す展開平面図である。ここでは、円筒状のステータ部12の内周面に配管17を這わして取り付けた場合を例に説明し、図9は、配管17をステータ部12の内周面側から見た展開平面図である。また、図9中の黒塗り矢印は、熱媒体の供給、並びに排出方向を示す。
【0058】
図9(A)は、1つの配管17で構成した場合であり、ステータ部12の内周面全体に周方向に蛇行するように配管17を折り曲げ形成して配設している。配管17を蛇行させることで、熱媒体の加熱距離を長くすることができる。この場合、配管17の供給側端部と排出側端部とは周方向に略360°ずれる、即ち供給側端部と排出側端部とは周方向の略同じ位置に位置することになる。そのため、排出側端部から排出される加熱された熱媒体が、供給側端部から供給される熱媒体によって冷やされ、加熱効率が低下することが懸念される。そこで、配管17の供給側端部と排出側端部とは周方向にある程度ずらすことが好ましく、例えば10°以上ずらすことが好ましい。
【0059】
図9(B)は、2つの配管17で構成した場合であり、図9(A)と同様に、ステータ部12の内周面全体に配管17が蛇行状態で配設されている。この場合、配管17の供給側端部と排出側端部とは周方向に略180°ずれることになる。また、この例では、隣り合う配管17の供給側端部同士、並びに排出側端部同士がそれぞれ周方向の略同じ位置に位置している。そのため、配管17の排出側端部から排出される加熱された熱媒体が、別の配管17の供給側端部から供給される熱媒体によって冷やされることもない。
【0060】
図9(C)は、4つの配管17で構成した場合であり、図9(B)と同様に、ステータ部12の内周面全体に配管17が蛇行状態で配設され、また、隣り合う配管17の供給側端部同士、並びに排出側端部同士がそれぞれ周方向の略同じ位置に位置している。この場合、配管17の供給側端部と排出側端部とは周方向に略90°ずれることになる。
【0061】
このように、配管を蛇行状態で配置する場合は、複数の配管を用いて構成してもよい。また、図9(A)〜(C)に示した例では、配管17の供給側端部と排出側端部とをステータ部12の軸方向の一方側に設けているが、供給側端部を一方側又は他方側に、排出側端部を他方側又は一方側に設けることも可能である。
【0062】
さらに、上記した実施の形態2、3の誘導加熱装置102、103のように、ステータ部12が突起部121を有する場合は、突起部を挟むように蛇行させた配管のうち、折り曲げ部とは突起部を挟んで反対側の配管部分同士が離隔する側に配管の部分同士を電気的に接続する接続導体171を別途取り付けて(図9(D)参照)、導電材料からなる配管17と接続導体171とで突起部121の周囲を囲むようにしてもよい。これにより、突起部121に流れる磁束が変化することに起因して発生する誘導起電力に伴う電流が、配管17と接続導体171とで形成されるループ状の電流経路を流れることになり、配管17を伝って電流が外部に漏れるのを防ぐことができる。
【0063】
また、ステータ部が突起部を有する場合は、例えば図10に例示するように、突起部121の外周に導電材料からなる配管17を巻回して取り付けてもよい。この構成によっても、突起部121に流れる磁束が変化することで、配管17に誘導起電力が発生し、配管17に電流が流れることで、配管17が加熱され、配管17内の熱媒体が加熱される。さらに、配管17を伝って電流が外部に漏れるのを防ぐため、配管17の巻き始めと巻き終わりの端部同士を接続導体で電気的に接続してもよい。
【0064】
以上説明した本発明の実施の形態に係る誘導加熱装置は、回転体に対して磁場発生手段が回転体の中心から軸方向にずれた位置に位置するため、回転体とステータ部との間に配置された加熱部と磁場発生手段とを距離を離して配置することができ、加熱部から磁場発生手段への熱影響を抑えることができる。また、超電導コイルを採用したことで、大電流を流すことによるコイルの発熱を抑制することができ、また、より強い磁場を発生させることができる。さらに、加熱部(配管)が回転しない構造としたことで、例えば配管に連通して外部から熱媒体を供給・排出する給排管と配管との接続に、配管の回動を許容する回転継手を用いる必要がなく、簡易な構成で、堅牢な接続を実現できる。
【0065】
<発電システム>
次に、図11を用いて、本発明に係る発電システムの全体構成の一例を説明する。図11に示す発電システムPは、誘導加熱装置10と、風車20と、蓄熱器50と、発電部60とを備える。塔91の上部に設置されたナセル92に風車20が取り付けられ、ナセル92内に誘導加熱装置10が格納されている。また、塔91の下部(土台)に建てられた建屋93に蓄熱器50及び発電部60が設置されている。以下、発電システムPの構成を詳しく説明する。
【0066】
誘導加熱装置10は、本発明の誘導加熱装置であり、例えば、上記した実施の形態1〜3に係る誘導加熱装置101〜103を利用することができる。また、回転軸21の他端側が後述する風車20に直結され、回転体を回転させる動力に風力を利用している。なお、ここでは、熱媒体が水である場合を例に説明する。
【0067】
風車20は、水平方向に延びる回転軸21を中心に、3枚の翼201を回転軸21に放射状に取り付けた構造である。出力が5MWを超える風力発電システムの場合、直径が120m以上、回転数が10〜20rpm程度である。
【0068】
誘導加熱装置10の配管には、誘導加熱装置10に水を供給する給水管73と、誘導加熱装置10により加熱した水を蓄熱器50に送る輸送管51が接続されている。そして、誘導加熱装置10は、コイルの直流通電により、回転体とステータ部を通る磁気回路が形成され、回転体の回転により、回転体とステータ部との間に配置された加熱部を通過する磁束を変化させることで、加熱部を誘導加熱し、配管内の水を加熱する。誘導加熱装置10は、磁場発生手段にコイルを用いているため、強い磁場を発生させることができ、熱媒体である水を例えば100℃〜600℃といった高温に加熱することが可能である。また、誘導加熱装置10は、加熱部(配管)が回転しない構造であるので、配管と輸送管51及び給水管73との接続に回転継手を用いる必要がなく、例えば溶接などを用いて、簡易な構成で、堅牢な接続を実現できる。
【0069】
この発電システムPは、誘導加熱装置10により水を発電に適した温度(例えば200℃〜350℃)まで加熱し、高温高圧水を発生させる。高温高圧水は、誘導加熱装置10と蓄熱器50とを連結する輸送管51を通って蓄熱器50に送られる。蓄熱器50は、輸送管51を通って送られてきた高温高圧水の熱を蓄え、また、熱交換器を用いて発電に必要な蒸気を発電部60に供給する。なお、誘導加熱装置10により蒸気を発生させてもよい。
【0070】
蓄熱器50としては、例えば、蒸気アキュムレーターや、溶融塩や油などを用いた顕熱型、或いは、融点の高い溶融塩の相変化を利用した潜熱型の蓄熱器を利用することができる。潜熱型の蓄熱方式は蓄熱材の相変化温度で蓄熱を行うため、一般に、顕熱型の蓄熱方式に比べて蓄熱温度域が狭帯域であり、蓄熱密度が高い。
【0071】
発電部60は、蒸気タービン61と発電機62とを組み合わせた構造であり、蓄熱器50から供給された蒸気によって蒸気タービン61が回転し、発電機62を駆動して発電する。
【0072】
蓄熱器50に送られた高温高圧水又は蒸気は、復水器71で冷却され水に戻される。その後、ポンプ72に送られ、高圧水にして給水管73を通って誘導加熱装置10に送られることで循環する。
【0073】
この発電システムPによれば、再生可能エネルギー(例、風力)を動力として回転エネルギーを得て熱を発生させ、その熱を蓄熱器に蓄熱して発電することで、高価な蓄電池を用いなくても、需要に応じた安定的な発電を実現できる。また、従来の風力発電システムのように増速機を設ける必要がなく、ギアボックスのトラブルを回避することが可能である。さらに、熱媒体の熱を輸送管により例えば塔の下部(土台)に設置された発電部に供給することで、ナセルに発電部を格納する必要がなく、塔の上部に設置されるナセルを小型・軽量化することができる。
【0074】
上記した発電システムでは、熱媒体に水を用いた場合を例に説明したが、水よりも熱伝導率の高い液体金属を熱媒体に用いてもよい。このような液体金属としては、例えば液体金属ナトリウムが挙げられる。液体金属を熱媒体に用いる場合は、例えば、加熱部から熱を受け取る一次熱媒体に液体金属を用い、輸送管を通って送られてきた液体金属の熱で熱交換器を介して二次熱媒体(水)を加熱し、蒸気を発生させることが考えられる。
【0075】
また、常圧で100℃以上の沸点を有する例えば油、液体金属、溶融塩などを熱媒体に用いた場合は、水に比較して、所定の温度まで加熱したときに、配管内の熱媒体の気化による内圧上昇を抑制し易い。
【0076】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、回転体やステータ部の形状を適宜変更したり、回転体及びステータ部を形成する材料を適宜変更したりすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の誘導加熱装置は、再生可能エネルギーを利用した発電システムに利用する他、例えば給湯システムや暖房システムに利用することも可能である。また、本発明の発電システムは、再生可能エネルギーを利用した発電の分野に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
10、101〜103 誘導加熱装置 P 発電システム
11 回転体 111 凸部 115 遊嵌穴
12 ステータ部 121 突起部
13 加熱部 131 孔
14 支持柱部
15 磁場発生手段(コイル) 15c コイル 15m 永久磁石
16 ヨーク部 161 ヨーク片 162 基部板
17 配管 171 接続導体
21 回転軸
20 風車 201 翼
50 蓄熱器 51 輸送管
60 発電部 61 蒸気タービン 62 発電機
71 復水器 72 ポンプ 73 給水管
91 塔 92 ナセル 93 建屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の一端側に固定され、外形が非円形の磁性材料からなる回転体と、
前記回転体の外周に所定間隔をあけて配置され、磁性材料からなるステータ部と、
前記回転体と前記ステータ部との間に配置され、導電材料からなる加熱部と、
前記回転体の一端側に一端側が対向するように配置される柱状の支持柱部と、
前記支持柱部に装着され、前記回転体に対し磁場を発生させる磁場発生手段と、
前記ステータ部と前記支持柱部の他端側とを磁気的につなぐ磁性材料からなるヨーク部と、
前記加熱部に設けられ、熱媒体が流通する配管と、を備え、
前記磁場発生手段により、前記支持柱部の一端側から、前記回転体、前記ステータ部、前記ヨーク部を通り、前記支持柱部の他端側に至る磁気回路が形成され、
前記回転軸の回転により、前記回転体が回転し、前記回転体と前記ステータ部との間に配置された前記加熱部の少なくとも一部を通過する磁束が変化することで、前記加熱部が誘導加熱され、前記熱媒体を加熱することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
前記ステータ部が、筒状であり、この筒状部分から求心状に突出する突起部を有し、
前記加熱部は、前記ステータ部の内周面に取り付けられ、前記突起部が挿通される孔を有することを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記回転体の形状が、径方向に突出する凸部を有する歯車形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記磁場発生手段が、超電導コイルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記回転軸の他端側が、風車に接続され、
前記回転体を回転させる動力に風力を利用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘導加熱装置と、
前記熱媒体の熱を電気エネルギーに変換する発電部と、を備えることを特徴とする発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−159468(P2011−159468A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19250(P2010−19250)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】