誘導加熱装置及び該誘導加熱装置を備えた画像形成装置
【課題】被加熱体へ供給される供給電力を小さくする場合に、スイッチング素子のスイッチング損失を抑制し、比較的簡単な構成で、かつ商用電圧のドロップによる照明機器のちらつき等もなく、供給電力の小域制御を実現できる誘導加熱装置等を提供する。
【解決手段】誘導加熱コイル131とコンデンサ132とが並列接続された共振回路13、共振回路に直列に接続されたスイッチング素子14、共振回路に時間によって瞬時値が変化する直流の入力電圧を印加する電源12、スイッチング素子を所定のタイミングでオンすると共に、該スイッチング素子のオン時間を変化させることにより、被加熱体51への供給電力を制御する電力制御手段2を備える。電力制御手段2は、供給電力の値が予め設定された第1の閾値以下のときに、スイッチング素子14をオンするタイミングを共振回路13の共振周期の整数倍遅延させる。
【解決手段】誘導加熱コイル131とコンデンサ132とが並列接続された共振回路13、共振回路に直列に接続されたスイッチング素子14、共振回路に時間によって瞬時値が変化する直流の入力電圧を印加する電源12、スイッチング素子を所定のタイミングでオンすると共に、該スイッチング素子のオン時間を変化させることにより、被加熱体51への供給電力を制御する電力制御手段2を備える。電力制御手段2は、供給電力の値が予め設定された第1の閾値以下のときに、スイッチング素子14をオンするタイミングを共振回路13の共振周期の整数倍遅延させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば画像形成装置の定着装置の加熱源等として用いられる誘導加熱装置、及び該誘導加熱装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コピー機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置、さらにはこれらの装置の機能を集約したMFP(Multi Function Peripherals)と称される多機能デジタル画像形成装置等には、定着装置における定着ローラを加熱する加熱源として誘導加熱装置が用いられているものがある。
【0003】
このような誘導加熱装置として、誘導加熱用のコイルとコンデンサとが並列に接続された共振回路を備え、この共振回路へ例えば商用の交流電圧を全波整流し直流に変換して印加するとともに、共振回路と直列に接続された例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)等からなるスイッチング素子のオン時間を制御することにより、定着ローラへ供給する電力を制御する方式のものが従来より用いられている。
【0004】
このような共振回路及びスイッチング素子を用いた誘導加熱装置では、スイッチング素子のコレクタ・エミッタ間の電圧が一旦上昇したのち下降して、前記共振回路への入力電圧との差異がほぼゼロとなったタイミングで、前記スイッチング素子をオンしている。このタイミングでオンすることにより、スイッチング素子による損失を少なくすることができる。
【0005】
しかし、共振回路への供給電力を少なく制御する状態では、スイッチング素子のコレクタ・エミッタ間の電圧が低いために十分な電流が流れず、それゆえスイッチング素子のコレクタ・エミッタ間の電圧が十分に下降できず、入力電圧との差異が存在した状態でスイッチング動作することになる。このため、スイッチング損失が過大となり、スイッチング素子が破壊される場合があるという問題があり、定着ローラへの供給電力を小さくするときの制御が容易でなかった。
【0006】
このような問題を解決するために、特許文献1には、共振コンデンサの容量を可変にしてスイッチング素子のスイッチング損失を低減する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、交流のゼロクロスに同期させてスイッチング手段のオン・オフを制御し、半周期毎にスイッチング手段の制御パルスの時間を可変にして定着むらを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−328553号公報
【特許文献2】特開2009−295392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、共振コンデンサの容量を可変にするための構成が複雑な上にコストがかかるという問題があった。
【0010】
また、上記特許文献2に記載の技術では、被加熱体への供給電力が大きいため、商用電圧がドロップして蛍光灯等の照明機器にちらつきを発生させる場合があるという問題があった。
【0011】
この発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたものであって、定着ローラ等の被加熱体への供給電力を小さくする場合に、スイッチング素子のスイッチング損失を抑制し、比較的簡単な構成で、かつ商用電圧のドロップによる照明機器のちらつき等もなく、供給電力の小域制御を実現できる誘導加熱装置を提供し、さらには該誘導加熱装置を備えた画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の手段によって解決される。
(1)被加熱体を誘導加熱するためのコイルとコンデンサとが並列接続された共振回路と、共振回路に直列に接続されたスイッチング素子と、前記共振回路に、時間によって瞬時値が変化する直流の入力電圧を印加する電源と、前記スイッチング素子を所定のタイミングでオンすると共に、該スイッチング素子のオン時間を変化させることにより、前記被加熱体への供給電力を制御する電力制御手段と、を備え、前記電力制御手段は、前記供給電力の値が予め設定された第1の閾値以下のときに、前記スイッチング素子をオンするタイミングを前記共振回路の共振周期の整数倍遅延させることを特徴とする誘導加熱装置。
(2)前記供給電力についての1個または複数の閾値と、各閾値に対応する前記スイッチング素子をオンするタイミングの遅延量が予め設定され、前記電力制御手段は、前記供給電力の値と前記閾値とを比較して前記遅延量を決定する前項1に記載の誘導加熱装置。
(3)前記閾値には第1の閾値と該第1の閾値よりも小さい第2の閾値が含まれ、前記電力制御手段は、前記供給電力の値が、前記第1の閾値以下で前記第2の閾値を上回る場合にスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量よりも、第2の閾値以下の場合のスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量を大きくする前項2に記載の誘導加熱装置。
(4)前記入力電圧の瞬時値を検出する瞬時値検出手段を備え、前記電力制御手段は、前記瞬時値検出手段により検出された入力電圧の瞬時値に応じて、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させる前項1〜3のいずれかに記載の誘導加熱装置。
(5)前記入力電圧の瞬時値について、予め1個またはの複数の閾値が設定され、前記電力制御手段は、前記供給電力の閾値と、前記瞬時値検出手段により検出された入力電圧の瞬時値についての閾値に基づいて、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させる前項2〜5のいずれかに記載の誘導加熱装置。
(6)前記電力制御手段は、前記供給電力の値が、第1の閾値以下で第2の閾値を上回り、前記瞬時値検出手段により検出された入力電圧の瞬時値が第3の閾値以下の場合は、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させない前項4または5に記載の誘導加熱装置。
(7)前記電力制御手段は、前記供給電力の値が第2の閾値以下である場合において、前記入力電圧の瞬時値が第3の閾値以下では、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させず、前記瞬時値が第3の閾値を上回り第4の閾値以下では、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させ、第4の閾値を上回ると、前記スイッチング素子をオンするタイミングの遅延量を増加させる前項6に記載の誘導加熱装置。
(8)前記入力電圧の実効値が所定値よりも高い場合は、前記供給電力の閾値は低く設定され、実効値が所定値以下の場合は、閾値は高く設定される前項1〜7のいずれかに記載の誘導加熱装置。
(9)前記入力電圧の実効値が所定値よりも高い場合は、前記入力電圧の瞬時値についての閾値は低く設定され、実効値が所定値以下の場合は、閾値は高く設定される前項5〜8のいずれかに記載の誘導加熱装置。
(10)前項1〜9のいずれかに記載の誘導加熱装置を定着装置における加熱源として備えていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
前項(1)に記載の発明によれば、電力制御手段は、被加熱体への供給電力の値が予め設定された第1の閾値以下のときに、スイッチング素子をオンするタイミングを共振回路の共振周期の整数倍遅延させるから、供給電力を小さくする場合の時間あたりのスイッチング損失を低減することができ、供給電力の小域制御を実現できる。しかも、共振回路のコンデンサの容量を可変にするような複雑な構成は不要であり、また商用電圧のドロップによる照明機器のちらつき等もなく、供給電力を小さくできる。
【0014】
前項(2)に記載の発明によれば、供給電力についての1個または複数の閾値と、各閾値に対応するスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量が予め設定されているから、電力制御手段は供給電力の値と閾値とを比較して遅延量を簡単に決定することができる。
【0015】
前項(3)に記載の発明によれば、電力制御手段は、前記供給電力の値が、前記第1の閾値以下で前記第2の閾値を上回る場合にスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量よりも、第2の閾値以下の場合のスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量を大きくするから、供給電力がさらに小さくなってもスイッチング損失が大きくなるのを確実に防止することができる。
【0016】
前項(4)に記載の発明によれば、電力制御手段は、前記瞬時値検出手段により検出された共振回路への入力電圧の瞬時値に応じて、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させるから、共振回路への入力電圧の瞬時値を考慮した供給電力の小域制御を実現できる。
【0017】
前項(5)に記載の発明によれば、電力制御手段は、前記供給電力の閾値と、前記入力電圧の瞬時値についての閾値に基づいて、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させるから、遅延量を簡単に決定できる。
【0018】
前項(6)に記載の発明によれば、電力制御手段は、前記供給電力の値が、第1の閾値以下で第2の閾値を上回り、前記入力電圧の瞬時値が第3の閾値以下の場合は、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させないから、入力電圧の瞬時値がスイッチング損失に影響を及ぼさない場合に、スイッチング素子をオンするタイミングが遅延されるのを防止できる。
【0019】
前項(7)に記載の発明によれば、入力電圧の瞬時値を考慮した最適な供給電力の小域制御を実現できる。
【0020】
前項(8)に記載の発明によれば、入力電圧の実効値を考慮した供給電力の小域制御を実現できる。
【0021】
前項(9)に記載の発明によれば、入力電圧の実効値及び入力電圧の瞬時値を考慮した供給電力の小域制御を実現できる。
【0022】
前項(10)に記載の発明によれば、定着装置の加熱源として誘導加熱装置が用いられた場合に、被加熱体への供給電力が小さい場合の時間あたりのスイッチング損失を低減した画像形成装置となし得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態に係る誘導加熱装置の構成を示すブロック図である。
【図2】スイッチング素子のオンオフに伴う共振回路の動作を説明するための図で、誘導加熱装置1の要部を示す図である。
【図3】共振回路の動作時におけるコイルのスイッチング素子側の電圧及び電流の波形を示す図である。
【図4】図3の波形図の一部を拡大して示す図である。
【図5】スイッチング素子の本来のオンタイミングから遅延させたタイミングでスイッチング素子をオンする状態を説明するための波形図である。
【図6】供給電力について予め設定された閾値と各閾値に対する遅延回数の関係を示す表である。
【図7】入力電圧をスイッチングした状態を示す波形図である。
【図8】コイルの両端の電圧が入力電圧の瞬時値に影響を受けることを説明するための図である。
【図9】入力電圧の瞬時値の閾値を説明するための波形図である。
【図10】入力電圧の瞬時値を考慮した場合の供給電力の閾値と遅延回数の関係を示す表である。
【図11】入力電圧の瞬時値を考慮して、スイッチング素子のオンタイミングの遅延回数を決定する際の別の決定方法を説明するための表であり、供給電力の閾値毎に決定された遅延回数の上限値を示す表である。
【図12】同じく、入力電圧の瞬時値の閾値毎の遅延回数を示す表である。
【図13】入力電圧の実効値が予め設定された所定値より高い場合の、供給電力の閾値と遅延回数の上限値を示す表である。
【図14】入力電圧の実効値が予め設定された所定値以下の場合の、供給電力の閾値と遅延回数の上限値を示す表である。
【図15】入力電圧の実効値が予め設定された所定値より高い場合の、入力電圧の瞬時値の閾値と遅延回数を示す表である。
【図16】入力電圧の実効値が予め設定された所定値以下の場合の、入力電圧の瞬時値の閾値と遅延回数を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は、この発明の一実施形態に係る誘導加熱装置の構成を示すブロック図である。この実施形態では、誘導加熱装置1は前述したMFP等の画像形成装置5に搭載され、定着部における被加熱体としての定着ローラ51を加熱するものとなされている。
【0026】
誘導加熱装置1は、商用電源11と、全波整流回路12と、共振回路13と、スイッチング素子14と、寄生ダイオード15と、電力制御部2と、瞬時値検出部3と、実効値検出部4を備えている。
【0027】
商用電源11は100Vの交流電源であり、全波整流回路12は商用電源11の100Vの交流電圧を全波整流して直流に変換するものである。この実施形態では、全波整流回路12が、共振回路13に入力電圧を印加する電源として機能する。
【0028】
共振回路13は、誘導加熱用のコイル(インダクタ)131と該コイル131に並列に接続されたコンデンサ132とからなり、誘導加熱用のコイル131の誘導加熱作用により、画像形成装置5の定着ローラ51を加熱するものとなされている。
【0029】
スイッチング素子14は共振回路13と直列に接続され、全波整流回路12から共振回路13及びスイッチング素子14を巡って全波整流回路へと至る閉ループを形成している。スイッチング素子14の種類は限定されないが、この実施形態では、前述した絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。
【0030】
電力制御部2は、スイッチング素子のオンオフを高周波スイッチング制御することにより、定着ローラ51への供給電力を制御するものである。より具体的には、スイッチング素子のオン時間を制御することにより、供給電力の制御を行う。この実施形態では、スイッチング素子のオフ時間は一定値に設定されている。
【0031】
瞬時値検出部3は、全波整流回路12による全波整流後の前記入力電圧の瞬時値を検出するものである。瞬時値の検出は公知の方法により行えば良く、例えば入力電圧を分圧して、入力電圧の最大値(波高値)と比較することにより求めることができる。
【0032】
実効値検出部4は、全波整流回路12による全波整流後の前記入力電圧の実効値を検出するものである。実効値の検出は公知の方法により行えば良い。
【0033】
瞬時値検出部3及び実効値検出部4の検出結果は、電力制御部2に入力される。電力制御部2は、供給電力値を基に、あるいはさらに瞬時値検出部3で検出された入力電圧の瞬時値及び/または実効値検出部4で検出された入力電圧の実効値を考慮して、スイッチング素子のオン時間を制御し、定着ローラ51への供給電力を制御する。
【0034】
図2は、スイッチング素子14のオンオフに伴う共振回路の動作を説明するための図で、誘導加熱装置1の主要部を示している。なお、この図では、全波整流回路12から出力される共振回路13への入力電圧をV0で示すとともに、スイッチング素子14を単なるスイッチとして示している。
【0035】
図2(A)において、スイッチング素子14をオンにすると、入力電圧V0によりコイル131、スイッチング素子14を通じて電流が流れ、時間の経過と共に電流値が増加する。スイッチング素子14がオフになると、図2(B)に示すように、コイル131を通過した電流がコンデンサ132に流れ込み、コンデンサ132を充電する。このため、スイッチング素子14のコレクタ・エミッタ間に印加される電圧は上昇する。コンデンサ132の充電電圧をVcとすると、コレクタ・エミッタ間の電圧はV0+Vcとなる。
【0036】
コンデンサ132の充電電圧が入力電圧V0に達すると、入力電圧V0によって流れる電流が停止し、図2(C)に示すように、コイル131にはコンデンサ132からの放電電流が流れる。このとき、スイッチング素子14のコレクタ・エミッタ間の電圧は下降する。
【0037】
このような共振回路13の動作時におけるコイル131のスイッチング素子14側の電圧VL及び電流ILの波形を図3(A)に示す。図3において、Tr信号はスイッチング素子14をオンまたはオフするための信号である。この図からも理解できるように、スイッチング素子14をオフにすると、コンデンサ132への充電が開始されるためコイル131に流れる電流が減少し、電圧VLが増加する。電圧VLがピークになり入力電圧V0に達すると電流ILがゼロになり、コンデンサ132からの放電が開始される。
【0038】
コンデンサ132からの放電が終了し、コイルの電圧VL換言すればスイッチング素子14側の電圧がV0になった時点Tで、図2(D)に示すように、スイッチング素子14をオンにする。このように、入力電圧V0とスイッチング素子14のコレクタ・エミッタ間の電圧との差異がゼロになったポイントでスイッチング素子14をオンすることで、スイッチング素子14のスイッチング損失を防止できる。
【0039】
このスイッチング素子14がオンとなるタイミングは、共振回路13の共振周波数に依存するから、スイッチング素子14のオフ時間は共振周波数に基づいて予め一定値に設定されている。
【0040】
スイッチング素子14がオンすると、入力電圧V0によりコイル131に再び電流ILが流れ始め、以下、同様の動作が繰り返される。
【0041】
しかし、定着ローラ51に供給される供給電力を小さく制御する場合は、コイル131に流れる電流ILが十分でないため、コイル131の両端の電圧が十分に下降できず、図3(B)さらには図4に拡大して示すように、スイッチング素子14のオンタイミングTでは、入力電圧V0との差異ΔVが存在した状態となり、この状態でスイッチング素子14がオンされることになる。このため、過大なスイッチング損失が発生することになる。
【0042】
そこで、この実施形態では、スイッチング素子14のオンタイミングTにおいて入力電圧V0との差異ΔVが存在するような状況下、つまり定着ローラ51への供給電力が小さい場合は、図5に示すように、本来のオンタイミングTからΔTだけ遅延させたタイミングT1でスイッチング素子14をオンする。ΔTは共振回路13の共振周期の整数倍に設定される。
【0043】
このように、スイッチング素子14のオンタイミングを遅延させることにより、スイッチング損失の回数を減らすことができ、時間当たりのスイッチング損失を低減できる。しかも、共振回路13のコンデンサ132の容量を可変にするような複雑な構成は不要であり、また商用電圧のドロップによる照明機器のちらつき等もなく、供給電力の小域制御を実現できる。
【0044】
スイッチング素子14のオンタイミングを遅延させたときは、スイッチング素子14の寄生ダイオード15を通過してコイル131に回生電流が流れ、コンデンサ132からの電流が停止した時点で再度コイル131を介してコンデンサ132に充電される動作が、共振回路13の共振周期で繰り返される。つまり、遅延させる共振周期の数(遅延量または遅延回数ともいう)が多くなるほど、時間当たりのスイッチング損失は低減される。
【0045】
なお、供給電力をさらに小さくすると、共振が確保されなくなり、スイッチングによる共振回路の制御ができなくなることから、最低限の供給電力は必要である。
【0046】
この実施形態では、供給電力について予め設定された1個または複数の閾値と各閾値に対する遅延回数のテーブルを、電力制御部2が保持しており、このテーブルに基づいて電力制御部2がスイッチング素子14のスイッチング制御を行うものとなされている。
【0047】
上記テーブルの一例を図6に示す。この例では、供給電力値が600Wより大のときはスイッチング損失は低く、遅延回数は0回つまりオンタイミングの遅延を行う必要はない。供給電力値が400Wより大きく600W以下では、スイッチング損失は中程度であり、遅延回数は1回に設定されている。供給電力値が400W以下では、スイッチング損失は大であり、遅延回数は2回に設定されている。
【0048】
このように、供給電力の1個または複数の閾値と、各閾値に対応するスイッチング素子14をオンするタイミングの遅延回数が予め設定されているから、電力制御部2は供給電力値と閾値とを比較して遅延回数を簡単に決定することができる。しかも、供給電力値が小さいほど、オンタイミングの遅延回数を大きくするから、供給電力値が小さくなってもスイッチング損失が大きくなるのを確実に防止することができる。
【0049】
なお、供給電力値は、実測した値であっても良いし、要求される設定値であっても良い。要求される設定値は、誘導加熱装置1内で作成されても良いし、画像形成装置5等の外部から指示されても良い。
【0050】
ところで、共振回路13に印加される入力電圧V0は、交流電流を全波整流した脈流であるから、時間の経過とともに瞬時値が変動する。このため、図7に示すように、コイル131の両端の電圧VLも入力電圧V0の瞬時値に影響を受ける結果、スイッチング素子14のオンタイミングTで生じる入力電圧V0との電圧差ΔVの値は、図8(A)のように、入力電圧V0の低領域(瞬時値の低い領域)では小さく、高領域(瞬時値の高い領域)では大きくなる。
【0051】
このため、供給電力を小さくする場合のスイッチング素子14のオンタイミングTの遅延回数は、入力電圧V0の瞬時値を考慮して決定するのが望ましい。このように、共振回路13への入力電圧の瞬時値を考慮した供給電力の小域制御を行うことで、より精度の高い制御を行うことができる。
【0052】
この実施形態では、図9に示すように、入力電圧V0の瞬時値について、波高値の40%あるいはさらに60%を閾値とし、この閾値を考慮して遅延回数を決定している。
【0053】
具体的に説明すると、図10のテーブルに示すように、供給電力値が600Wより大のときはスイッチング損失は低く、オンタイミングの遅延を行う必要はなく、供給電力値が400Wより大きく600W以下では、入力電圧V0の瞬時値が波高値の40%より大の場合に遅延回数を1回、40%以下の場合にはスイッチング損失が少ないので遅延を行わない設定となっている。また、供給電力値が400W以下では、入力電圧V0の瞬時値が波高値の60%より大の場合に遅延回数を2回、60%以下で40%より大の場合に遅延回数を1回、40%以下の場合には遅延を行わない設定となされている。このテーブルに従って、電力制御部2がスイッチング素子14のオンオフ制御を行う。
【0054】
次に、入力電圧V0の瞬時値を考慮して、スイッチング素子14のオンタイミングTの遅延回数を決定する際の別の決定方法を、図11及び図12のテーブルを用いて説明する。
【0055】
まず、図11に示すように、供給電力の閾値毎に遅延回数の上限値を決定しておく。例えば、供給電力値が600Wより大のときは遅延回数は0回(パターン1)、供給電力値が400Wより大きく600W以下では遅延回数の上限値は2回(パターン2)、供給電力値が400W以下では遅延回数の上限値は4回(パターン3)がそれぞれ設定されている。
【0056】
一方、図12に示すように、入力電圧V0の閾値毎に遅延回数を決定しておく。例えば、瞬時値が波高値の40%以下では遅延回数0回(パターンA)、瞬時値が40%より大で60%以下では遅延回数2回(パターンB)、瞬時値が60%より大では遅延回数4回(パターンC)がそれぞれ設定されている。
【0057】
そして、図11に示す供給電力の閾値についての遅延回数の上限値の条件を、図12に示す入力電圧V0の瞬時値についての遅延回数が満たしていれば、図12の瞬時値についての遅延回数が採用される。満たしていなければ、図11の上限値が採用される。なお、閾値の数や遅延回数は、適宜設定すればよい。
【0058】
また、前述したように、供給電力を小さくする場合にはスイッチング素子のコレクタ・エミッタ間電圧が低いために十分な電流が流れず、コレクタ・エミッタ間電圧が十分に下降できず、入力電圧V0との差異が存在した状態でスイッチング動作が実行されることになり、スイッチング損失が過大に発生する。つまり、入力電圧V0の実効値が高い場合は、供給電力が小さくてもスイッチング損失は発生しにくいため、供給電力の閾値を低く設定できる。また、逆に入力電圧V0の実効値が低い場合は、供給電力が小さいとスイッチング損失が発生しやすくなるため、供給電力の閾値を高く設定する必要がある。
【0059】
そこで、この実施形態では、入力電圧V0の実効値が予め設定された所定値より高い場合は、図13に示すように、図11のパターン1〜3についてそれぞれ閾値を100W低くし、供給電力値が500Wより大のときは遅延回数は0回(パターン1)、供給電力値が300Wより大きく500W以下では遅延回数の上限値は2回(パターン2)、供給電力値が300W以下では遅延回数の上限値は4回(パターン3)としている。
【0060】
逆に、入力電圧V0の実効値が予め設定された所定値以下の場合は、図14に示すように、図11のパターン1〜3についてそれぞれ閾値を100W高くし、供給電力値が700Wより大のときは遅延回数は0回(パターン1)、供給電力値が500Wより大きく700W以下では遅延回数の上限値は2回(パターン2)、供給電力値が500W以下では遅延回数の上限値は4回(パターン3)としている。
【0061】
なお、供給電力値の閾値を一律に上下させるのではなく、上下させる値を閾値毎に変更しても良い。
【0062】
一方、入力電圧V0の実効値が高い場合は、供給電力を小さくしてもスイッチング損失が発生しにくいため、入力電圧V0の瞬時値の閾値を高く設定できる。また、逆に入力電圧V0の実効値が低い場合は、供給電力が低いとスイッチング損失が発生しやすくなるため、入力電圧V0の瞬時値の閾値を低く設定する必要がある。
【0063】
そこで、この実施形態では、入力電圧V0の実効値が予め設定された所定値より高い場合は、図15に示すように、図12のパターンA〜Cについてそれぞれ閾値を10%高くし、瞬時値が波高値の50%以下では遅延回数0回(パターンA)、瞬時値が50%より大で70%以下では遅延回数2回(パターンB)、瞬時値が70%より大では遅延回数4回(パターンC)がそれぞれ設定されている。
【0064】
逆に、入力電圧V0の実効値が予め設定された所定値以下の場合は、図16に示すように、図11のパターン1〜3についてそれぞれ閾値を10%低くし、瞬時値が波高値の30%以下では遅延回数0回(パターンA)、瞬時値が30%より大で50%以下では遅延回数2回(パターンB)、瞬時値が50%より大では遅延回数4回(パターンC)がそれぞれ設定されている。
【0065】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはない。
【0066】
例えば、誘導加熱装置1が画像形成装置5に用いられた場合を示したが、誘導加熱装置1の用途は限定されることはない。
【符号の説明】
【0067】
1 誘導加熱装置
2 電力制御部
3 瞬時値検出部
4 実効値検出部
5 画像形成装置
11 商用電源
12 全波整流回路
13 共振回路
14 スイッチング素子
51 定着ローラ
131 コイル
132 コンデンサ
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば画像形成装置の定着装置の加熱源等として用いられる誘導加熱装置、及び該誘導加熱装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コピー機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置、さらにはこれらの装置の機能を集約したMFP(Multi Function Peripherals)と称される多機能デジタル画像形成装置等には、定着装置における定着ローラを加熱する加熱源として誘導加熱装置が用いられているものがある。
【0003】
このような誘導加熱装置として、誘導加熱用のコイルとコンデンサとが並列に接続された共振回路を備え、この共振回路へ例えば商用の交流電圧を全波整流し直流に変換して印加するとともに、共振回路と直列に接続された例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)等からなるスイッチング素子のオン時間を制御することにより、定着ローラへ供給する電力を制御する方式のものが従来より用いられている。
【0004】
このような共振回路及びスイッチング素子を用いた誘導加熱装置では、スイッチング素子のコレクタ・エミッタ間の電圧が一旦上昇したのち下降して、前記共振回路への入力電圧との差異がほぼゼロとなったタイミングで、前記スイッチング素子をオンしている。このタイミングでオンすることにより、スイッチング素子による損失を少なくすることができる。
【0005】
しかし、共振回路への供給電力を少なく制御する状態では、スイッチング素子のコレクタ・エミッタ間の電圧が低いために十分な電流が流れず、それゆえスイッチング素子のコレクタ・エミッタ間の電圧が十分に下降できず、入力電圧との差異が存在した状態でスイッチング動作することになる。このため、スイッチング損失が過大となり、スイッチング素子が破壊される場合があるという問題があり、定着ローラへの供給電力を小さくするときの制御が容易でなかった。
【0006】
このような問題を解決するために、特許文献1には、共振コンデンサの容量を可変にしてスイッチング素子のスイッチング損失を低減する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、交流のゼロクロスに同期させてスイッチング手段のオン・オフを制御し、半周期毎にスイッチング手段の制御パルスの時間を可変にして定着むらを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−328553号公報
【特許文献2】特開2009−295392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、共振コンデンサの容量を可変にするための構成が複雑な上にコストがかかるという問題があった。
【0010】
また、上記特許文献2に記載の技術では、被加熱体への供給電力が大きいため、商用電圧がドロップして蛍光灯等の照明機器にちらつきを発生させる場合があるという問題があった。
【0011】
この発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたものであって、定着ローラ等の被加熱体への供給電力を小さくする場合に、スイッチング素子のスイッチング損失を抑制し、比較的簡単な構成で、かつ商用電圧のドロップによる照明機器のちらつき等もなく、供給電力の小域制御を実現できる誘導加熱装置を提供し、さらには該誘導加熱装置を備えた画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の手段によって解決される。
(1)被加熱体を誘導加熱するためのコイルとコンデンサとが並列接続された共振回路と、共振回路に直列に接続されたスイッチング素子と、前記共振回路に、時間によって瞬時値が変化する直流の入力電圧を印加する電源と、前記スイッチング素子を所定のタイミングでオンすると共に、該スイッチング素子のオン時間を変化させることにより、前記被加熱体への供給電力を制御する電力制御手段と、を備え、前記電力制御手段は、前記供給電力の値が予め設定された第1の閾値以下のときに、前記スイッチング素子をオンするタイミングを前記共振回路の共振周期の整数倍遅延させることを特徴とする誘導加熱装置。
(2)前記供給電力についての1個または複数の閾値と、各閾値に対応する前記スイッチング素子をオンするタイミングの遅延量が予め設定され、前記電力制御手段は、前記供給電力の値と前記閾値とを比較して前記遅延量を決定する前項1に記載の誘導加熱装置。
(3)前記閾値には第1の閾値と該第1の閾値よりも小さい第2の閾値が含まれ、前記電力制御手段は、前記供給電力の値が、前記第1の閾値以下で前記第2の閾値を上回る場合にスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量よりも、第2の閾値以下の場合のスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量を大きくする前項2に記載の誘導加熱装置。
(4)前記入力電圧の瞬時値を検出する瞬時値検出手段を備え、前記電力制御手段は、前記瞬時値検出手段により検出された入力電圧の瞬時値に応じて、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させる前項1〜3のいずれかに記載の誘導加熱装置。
(5)前記入力電圧の瞬時値について、予め1個またはの複数の閾値が設定され、前記電力制御手段は、前記供給電力の閾値と、前記瞬時値検出手段により検出された入力電圧の瞬時値についての閾値に基づいて、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させる前項2〜5のいずれかに記載の誘導加熱装置。
(6)前記電力制御手段は、前記供給電力の値が、第1の閾値以下で第2の閾値を上回り、前記瞬時値検出手段により検出された入力電圧の瞬時値が第3の閾値以下の場合は、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させない前項4または5に記載の誘導加熱装置。
(7)前記電力制御手段は、前記供給電力の値が第2の閾値以下である場合において、前記入力電圧の瞬時値が第3の閾値以下では、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させず、前記瞬時値が第3の閾値を上回り第4の閾値以下では、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させ、第4の閾値を上回ると、前記スイッチング素子をオンするタイミングの遅延量を増加させる前項6に記載の誘導加熱装置。
(8)前記入力電圧の実効値が所定値よりも高い場合は、前記供給電力の閾値は低く設定され、実効値が所定値以下の場合は、閾値は高く設定される前項1〜7のいずれかに記載の誘導加熱装置。
(9)前記入力電圧の実効値が所定値よりも高い場合は、前記入力電圧の瞬時値についての閾値は低く設定され、実効値が所定値以下の場合は、閾値は高く設定される前項5〜8のいずれかに記載の誘導加熱装置。
(10)前項1〜9のいずれかに記載の誘導加熱装置を定着装置における加熱源として備えていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
前項(1)に記載の発明によれば、電力制御手段は、被加熱体への供給電力の値が予め設定された第1の閾値以下のときに、スイッチング素子をオンするタイミングを共振回路の共振周期の整数倍遅延させるから、供給電力を小さくする場合の時間あたりのスイッチング損失を低減することができ、供給電力の小域制御を実現できる。しかも、共振回路のコンデンサの容量を可変にするような複雑な構成は不要であり、また商用電圧のドロップによる照明機器のちらつき等もなく、供給電力を小さくできる。
【0014】
前項(2)に記載の発明によれば、供給電力についての1個または複数の閾値と、各閾値に対応するスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量が予め設定されているから、電力制御手段は供給電力の値と閾値とを比較して遅延量を簡単に決定することができる。
【0015】
前項(3)に記載の発明によれば、電力制御手段は、前記供給電力の値が、前記第1の閾値以下で前記第2の閾値を上回る場合にスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量よりも、第2の閾値以下の場合のスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量を大きくするから、供給電力がさらに小さくなってもスイッチング損失が大きくなるのを確実に防止することができる。
【0016】
前項(4)に記載の発明によれば、電力制御手段は、前記瞬時値検出手段により検出された共振回路への入力電圧の瞬時値に応じて、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させるから、共振回路への入力電圧の瞬時値を考慮した供給電力の小域制御を実現できる。
【0017】
前項(5)に記載の発明によれば、電力制御手段は、前記供給電力の閾値と、前記入力電圧の瞬時値についての閾値に基づいて、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させるから、遅延量を簡単に決定できる。
【0018】
前項(6)に記載の発明によれば、電力制御手段は、前記供給電力の値が、第1の閾値以下で第2の閾値を上回り、前記入力電圧の瞬時値が第3の閾値以下の場合は、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させないから、入力電圧の瞬時値がスイッチング損失に影響を及ぼさない場合に、スイッチング素子をオンするタイミングが遅延されるのを防止できる。
【0019】
前項(7)に記載の発明によれば、入力電圧の瞬時値を考慮した最適な供給電力の小域制御を実現できる。
【0020】
前項(8)に記載の発明によれば、入力電圧の実効値を考慮した供給電力の小域制御を実現できる。
【0021】
前項(9)に記載の発明によれば、入力電圧の実効値及び入力電圧の瞬時値を考慮した供給電力の小域制御を実現できる。
【0022】
前項(10)に記載の発明によれば、定着装置の加熱源として誘導加熱装置が用いられた場合に、被加熱体への供給電力が小さい場合の時間あたりのスイッチング損失を低減した画像形成装置となし得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態に係る誘導加熱装置の構成を示すブロック図である。
【図2】スイッチング素子のオンオフに伴う共振回路の動作を説明するための図で、誘導加熱装置1の要部を示す図である。
【図3】共振回路の動作時におけるコイルのスイッチング素子側の電圧及び電流の波形を示す図である。
【図4】図3の波形図の一部を拡大して示す図である。
【図5】スイッチング素子の本来のオンタイミングから遅延させたタイミングでスイッチング素子をオンする状態を説明するための波形図である。
【図6】供給電力について予め設定された閾値と各閾値に対する遅延回数の関係を示す表である。
【図7】入力電圧をスイッチングした状態を示す波形図である。
【図8】コイルの両端の電圧が入力電圧の瞬時値に影響を受けることを説明するための図である。
【図9】入力電圧の瞬時値の閾値を説明するための波形図である。
【図10】入力電圧の瞬時値を考慮した場合の供給電力の閾値と遅延回数の関係を示す表である。
【図11】入力電圧の瞬時値を考慮して、スイッチング素子のオンタイミングの遅延回数を決定する際の別の決定方法を説明するための表であり、供給電力の閾値毎に決定された遅延回数の上限値を示す表である。
【図12】同じく、入力電圧の瞬時値の閾値毎の遅延回数を示す表である。
【図13】入力電圧の実効値が予め設定された所定値より高い場合の、供給電力の閾値と遅延回数の上限値を示す表である。
【図14】入力電圧の実効値が予め設定された所定値以下の場合の、供給電力の閾値と遅延回数の上限値を示す表である。
【図15】入力電圧の実効値が予め設定された所定値より高い場合の、入力電圧の瞬時値の閾値と遅延回数を示す表である。
【図16】入力電圧の実効値が予め設定された所定値以下の場合の、入力電圧の瞬時値の閾値と遅延回数を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は、この発明の一実施形態に係る誘導加熱装置の構成を示すブロック図である。この実施形態では、誘導加熱装置1は前述したMFP等の画像形成装置5に搭載され、定着部における被加熱体としての定着ローラ51を加熱するものとなされている。
【0026】
誘導加熱装置1は、商用電源11と、全波整流回路12と、共振回路13と、スイッチング素子14と、寄生ダイオード15と、電力制御部2と、瞬時値検出部3と、実効値検出部4を備えている。
【0027】
商用電源11は100Vの交流電源であり、全波整流回路12は商用電源11の100Vの交流電圧を全波整流して直流に変換するものである。この実施形態では、全波整流回路12が、共振回路13に入力電圧を印加する電源として機能する。
【0028】
共振回路13は、誘導加熱用のコイル(インダクタ)131と該コイル131に並列に接続されたコンデンサ132とからなり、誘導加熱用のコイル131の誘導加熱作用により、画像形成装置5の定着ローラ51を加熱するものとなされている。
【0029】
スイッチング素子14は共振回路13と直列に接続され、全波整流回路12から共振回路13及びスイッチング素子14を巡って全波整流回路へと至る閉ループを形成している。スイッチング素子14の種類は限定されないが、この実施形態では、前述した絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。
【0030】
電力制御部2は、スイッチング素子のオンオフを高周波スイッチング制御することにより、定着ローラ51への供給電力を制御するものである。より具体的には、スイッチング素子のオン時間を制御することにより、供給電力の制御を行う。この実施形態では、スイッチング素子のオフ時間は一定値に設定されている。
【0031】
瞬時値検出部3は、全波整流回路12による全波整流後の前記入力電圧の瞬時値を検出するものである。瞬時値の検出は公知の方法により行えば良く、例えば入力電圧を分圧して、入力電圧の最大値(波高値)と比較することにより求めることができる。
【0032】
実効値検出部4は、全波整流回路12による全波整流後の前記入力電圧の実効値を検出するものである。実効値の検出は公知の方法により行えば良い。
【0033】
瞬時値検出部3及び実効値検出部4の検出結果は、電力制御部2に入力される。電力制御部2は、供給電力値を基に、あるいはさらに瞬時値検出部3で検出された入力電圧の瞬時値及び/または実効値検出部4で検出された入力電圧の実効値を考慮して、スイッチング素子のオン時間を制御し、定着ローラ51への供給電力を制御する。
【0034】
図2は、スイッチング素子14のオンオフに伴う共振回路の動作を説明するための図で、誘導加熱装置1の主要部を示している。なお、この図では、全波整流回路12から出力される共振回路13への入力電圧をV0で示すとともに、スイッチング素子14を単なるスイッチとして示している。
【0035】
図2(A)において、スイッチング素子14をオンにすると、入力電圧V0によりコイル131、スイッチング素子14を通じて電流が流れ、時間の経過と共に電流値が増加する。スイッチング素子14がオフになると、図2(B)に示すように、コイル131を通過した電流がコンデンサ132に流れ込み、コンデンサ132を充電する。このため、スイッチング素子14のコレクタ・エミッタ間に印加される電圧は上昇する。コンデンサ132の充電電圧をVcとすると、コレクタ・エミッタ間の電圧はV0+Vcとなる。
【0036】
コンデンサ132の充電電圧が入力電圧V0に達すると、入力電圧V0によって流れる電流が停止し、図2(C)に示すように、コイル131にはコンデンサ132からの放電電流が流れる。このとき、スイッチング素子14のコレクタ・エミッタ間の電圧は下降する。
【0037】
このような共振回路13の動作時におけるコイル131のスイッチング素子14側の電圧VL及び電流ILの波形を図3(A)に示す。図3において、Tr信号はスイッチング素子14をオンまたはオフするための信号である。この図からも理解できるように、スイッチング素子14をオフにすると、コンデンサ132への充電が開始されるためコイル131に流れる電流が減少し、電圧VLが増加する。電圧VLがピークになり入力電圧V0に達すると電流ILがゼロになり、コンデンサ132からの放電が開始される。
【0038】
コンデンサ132からの放電が終了し、コイルの電圧VL換言すればスイッチング素子14側の電圧がV0になった時点Tで、図2(D)に示すように、スイッチング素子14をオンにする。このように、入力電圧V0とスイッチング素子14のコレクタ・エミッタ間の電圧との差異がゼロになったポイントでスイッチング素子14をオンすることで、スイッチング素子14のスイッチング損失を防止できる。
【0039】
このスイッチング素子14がオンとなるタイミングは、共振回路13の共振周波数に依存するから、スイッチング素子14のオフ時間は共振周波数に基づいて予め一定値に設定されている。
【0040】
スイッチング素子14がオンすると、入力電圧V0によりコイル131に再び電流ILが流れ始め、以下、同様の動作が繰り返される。
【0041】
しかし、定着ローラ51に供給される供給電力を小さく制御する場合は、コイル131に流れる電流ILが十分でないため、コイル131の両端の電圧が十分に下降できず、図3(B)さらには図4に拡大して示すように、スイッチング素子14のオンタイミングTでは、入力電圧V0との差異ΔVが存在した状態となり、この状態でスイッチング素子14がオンされることになる。このため、過大なスイッチング損失が発生することになる。
【0042】
そこで、この実施形態では、スイッチング素子14のオンタイミングTにおいて入力電圧V0との差異ΔVが存在するような状況下、つまり定着ローラ51への供給電力が小さい場合は、図5に示すように、本来のオンタイミングTからΔTだけ遅延させたタイミングT1でスイッチング素子14をオンする。ΔTは共振回路13の共振周期の整数倍に設定される。
【0043】
このように、スイッチング素子14のオンタイミングを遅延させることにより、スイッチング損失の回数を減らすことができ、時間当たりのスイッチング損失を低減できる。しかも、共振回路13のコンデンサ132の容量を可変にするような複雑な構成は不要であり、また商用電圧のドロップによる照明機器のちらつき等もなく、供給電力の小域制御を実現できる。
【0044】
スイッチング素子14のオンタイミングを遅延させたときは、スイッチング素子14の寄生ダイオード15を通過してコイル131に回生電流が流れ、コンデンサ132からの電流が停止した時点で再度コイル131を介してコンデンサ132に充電される動作が、共振回路13の共振周期で繰り返される。つまり、遅延させる共振周期の数(遅延量または遅延回数ともいう)が多くなるほど、時間当たりのスイッチング損失は低減される。
【0045】
なお、供給電力をさらに小さくすると、共振が確保されなくなり、スイッチングによる共振回路の制御ができなくなることから、最低限の供給電力は必要である。
【0046】
この実施形態では、供給電力について予め設定された1個または複数の閾値と各閾値に対する遅延回数のテーブルを、電力制御部2が保持しており、このテーブルに基づいて電力制御部2がスイッチング素子14のスイッチング制御を行うものとなされている。
【0047】
上記テーブルの一例を図6に示す。この例では、供給電力値が600Wより大のときはスイッチング損失は低く、遅延回数は0回つまりオンタイミングの遅延を行う必要はない。供給電力値が400Wより大きく600W以下では、スイッチング損失は中程度であり、遅延回数は1回に設定されている。供給電力値が400W以下では、スイッチング損失は大であり、遅延回数は2回に設定されている。
【0048】
このように、供給電力の1個または複数の閾値と、各閾値に対応するスイッチング素子14をオンするタイミングの遅延回数が予め設定されているから、電力制御部2は供給電力値と閾値とを比較して遅延回数を簡単に決定することができる。しかも、供給電力値が小さいほど、オンタイミングの遅延回数を大きくするから、供給電力値が小さくなってもスイッチング損失が大きくなるのを確実に防止することができる。
【0049】
なお、供給電力値は、実測した値であっても良いし、要求される設定値であっても良い。要求される設定値は、誘導加熱装置1内で作成されても良いし、画像形成装置5等の外部から指示されても良い。
【0050】
ところで、共振回路13に印加される入力電圧V0は、交流電流を全波整流した脈流であるから、時間の経過とともに瞬時値が変動する。このため、図7に示すように、コイル131の両端の電圧VLも入力電圧V0の瞬時値に影響を受ける結果、スイッチング素子14のオンタイミングTで生じる入力電圧V0との電圧差ΔVの値は、図8(A)のように、入力電圧V0の低領域(瞬時値の低い領域)では小さく、高領域(瞬時値の高い領域)では大きくなる。
【0051】
このため、供給電力を小さくする場合のスイッチング素子14のオンタイミングTの遅延回数は、入力電圧V0の瞬時値を考慮して決定するのが望ましい。このように、共振回路13への入力電圧の瞬時値を考慮した供給電力の小域制御を行うことで、より精度の高い制御を行うことができる。
【0052】
この実施形態では、図9に示すように、入力電圧V0の瞬時値について、波高値の40%あるいはさらに60%を閾値とし、この閾値を考慮して遅延回数を決定している。
【0053】
具体的に説明すると、図10のテーブルに示すように、供給電力値が600Wより大のときはスイッチング損失は低く、オンタイミングの遅延を行う必要はなく、供給電力値が400Wより大きく600W以下では、入力電圧V0の瞬時値が波高値の40%より大の場合に遅延回数を1回、40%以下の場合にはスイッチング損失が少ないので遅延を行わない設定となっている。また、供給電力値が400W以下では、入力電圧V0の瞬時値が波高値の60%より大の場合に遅延回数を2回、60%以下で40%より大の場合に遅延回数を1回、40%以下の場合には遅延を行わない設定となされている。このテーブルに従って、電力制御部2がスイッチング素子14のオンオフ制御を行う。
【0054】
次に、入力電圧V0の瞬時値を考慮して、スイッチング素子14のオンタイミングTの遅延回数を決定する際の別の決定方法を、図11及び図12のテーブルを用いて説明する。
【0055】
まず、図11に示すように、供給電力の閾値毎に遅延回数の上限値を決定しておく。例えば、供給電力値が600Wより大のときは遅延回数は0回(パターン1)、供給電力値が400Wより大きく600W以下では遅延回数の上限値は2回(パターン2)、供給電力値が400W以下では遅延回数の上限値は4回(パターン3)がそれぞれ設定されている。
【0056】
一方、図12に示すように、入力電圧V0の閾値毎に遅延回数を決定しておく。例えば、瞬時値が波高値の40%以下では遅延回数0回(パターンA)、瞬時値が40%より大で60%以下では遅延回数2回(パターンB)、瞬時値が60%より大では遅延回数4回(パターンC)がそれぞれ設定されている。
【0057】
そして、図11に示す供給電力の閾値についての遅延回数の上限値の条件を、図12に示す入力電圧V0の瞬時値についての遅延回数が満たしていれば、図12の瞬時値についての遅延回数が採用される。満たしていなければ、図11の上限値が採用される。なお、閾値の数や遅延回数は、適宜設定すればよい。
【0058】
また、前述したように、供給電力を小さくする場合にはスイッチング素子のコレクタ・エミッタ間電圧が低いために十分な電流が流れず、コレクタ・エミッタ間電圧が十分に下降できず、入力電圧V0との差異が存在した状態でスイッチング動作が実行されることになり、スイッチング損失が過大に発生する。つまり、入力電圧V0の実効値が高い場合は、供給電力が小さくてもスイッチング損失は発生しにくいため、供給電力の閾値を低く設定できる。また、逆に入力電圧V0の実効値が低い場合は、供給電力が小さいとスイッチング損失が発生しやすくなるため、供給電力の閾値を高く設定する必要がある。
【0059】
そこで、この実施形態では、入力電圧V0の実効値が予め設定された所定値より高い場合は、図13に示すように、図11のパターン1〜3についてそれぞれ閾値を100W低くし、供給電力値が500Wより大のときは遅延回数は0回(パターン1)、供給電力値が300Wより大きく500W以下では遅延回数の上限値は2回(パターン2)、供給電力値が300W以下では遅延回数の上限値は4回(パターン3)としている。
【0060】
逆に、入力電圧V0の実効値が予め設定された所定値以下の場合は、図14に示すように、図11のパターン1〜3についてそれぞれ閾値を100W高くし、供給電力値が700Wより大のときは遅延回数は0回(パターン1)、供給電力値が500Wより大きく700W以下では遅延回数の上限値は2回(パターン2)、供給電力値が500W以下では遅延回数の上限値は4回(パターン3)としている。
【0061】
なお、供給電力値の閾値を一律に上下させるのではなく、上下させる値を閾値毎に変更しても良い。
【0062】
一方、入力電圧V0の実効値が高い場合は、供給電力を小さくしてもスイッチング損失が発生しにくいため、入力電圧V0の瞬時値の閾値を高く設定できる。また、逆に入力電圧V0の実効値が低い場合は、供給電力が低いとスイッチング損失が発生しやすくなるため、入力電圧V0の瞬時値の閾値を低く設定する必要がある。
【0063】
そこで、この実施形態では、入力電圧V0の実効値が予め設定された所定値より高い場合は、図15に示すように、図12のパターンA〜Cについてそれぞれ閾値を10%高くし、瞬時値が波高値の50%以下では遅延回数0回(パターンA)、瞬時値が50%より大で70%以下では遅延回数2回(パターンB)、瞬時値が70%より大では遅延回数4回(パターンC)がそれぞれ設定されている。
【0064】
逆に、入力電圧V0の実効値が予め設定された所定値以下の場合は、図16に示すように、図11のパターン1〜3についてそれぞれ閾値を10%低くし、瞬時値が波高値の30%以下では遅延回数0回(パターンA)、瞬時値が30%より大で50%以下では遅延回数2回(パターンB)、瞬時値が50%より大では遅延回数4回(パターンC)がそれぞれ設定されている。
【0065】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはない。
【0066】
例えば、誘導加熱装置1が画像形成装置5に用いられた場合を示したが、誘導加熱装置1の用途は限定されることはない。
【符号の説明】
【0067】
1 誘導加熱装置
2 電力制御部
3 瞬時値検出部
4 実効値検出部
5 画像形成装置
11 商用電源
12 全波整流回路
13 共振回路
14 スイッチング素子
51 定着ローラ
131 コイル
132 コンデンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱体を誘導加熱するためのコイルとコンデンサとが並列接続された共振回路と、
共振回路に直列に接続されたスイッチング素子と、
前記共振回路に、時間によって瞬時値が変化する直流の入力電圧を印加する電源と、
前記スイッチング素子を所定のタイミングでオンすると共に、該スイッチング素子のオン時間を変化させることにより、前記被加熱体への供給電力を制御する電力制御手段と、
を備え、
前記電力制御手段は、前記供給電力の値が予め設定された第1の閾値以下のときに、前記スイッチング素子をオンするタイミングを前記共振回路の共振周期の整数倍遅延させることを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
前記供給電力についての1個または複数の閾値と、各閾値に対応する前記スイッチング素子をオンするタイミングの遅延量が予め設定され、
前記電力制御手段は、前記供給電力の値と前記閾値とを比較して前記遅延量を決定する請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記閾値には第1の閾値と該第1の閾値よりも小さい第2の閾値が含まれ、
前記電力制御手段は、前記供給電力の値が、前記第1の閾値以下で前記第2の閾値を上回る場合にスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量よりも、第2の閾値以下の場合のスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量を大きくする請求項2に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記入力電圧の瞬時値を検出する瞬時値検出手段を備え、
前記電力制御手段は、前記瞬時値検出手段により検出された入力電圧の瞬時値に応じて、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させる請求項1〜3のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記入力電圧の瞬時値について、予め1個またはの複数の閾値が設定され、
前記電力制御手段は、前記供給電力の閾値と、前記瞬時値検出手段により検出された入力電圧の瞬時値についての閾値に基づいて、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させる請求項2〜5のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
前記電力制御手段は、前記供給電力の値が、第1の閾値以下で第2の閾値を上回り、前記瞬時値検出手段により検出された入力電圧の瞬時値が第3の閾値以下の場合は、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させない請求項4または5に記載の誘導加熱装置。
【請求項7】
前記電力制御手段は、前記供給電力の値が第2の閾値以下である場合において、前記入力電圧の瞬時値が第3の閾値以下では、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させず、前記瞬時値が第3の閾値を上回り第4の閾値以下では、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させ、第4の閾値を上回ると、前記スイッチング素子をオンするタイミングの遅延量を増加させる請求項6に記載の誘導加熱装置。
【請求項8】
前記入力電圧の実効値が所定値よりも高い場合は、前記供給電力の閾値は低く設定され、実効値が所定値以下の場合は、閾値は高く設定される請求項1〜7のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項9】
前記入力電圧の実効値が所定値よりも高い場合は、前記入力電圧の瞬時値についての閾値は低く設定され、実効値が所定値以下の場合は、閾値は高く設定される請求項5〜8のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の誘導加熱装置を定着装置における加熱源として備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
被加熱体を誘導加熱するためのコイルとコンデンサとが並列接続された共振回路と、
共振回路に直列に接続されたスイッチング素子と、
前記共振回路に、時間によって瞬時値が変化する直流の入力電圧を印加する電源と、
前記スイッチング素子を所定のタイミングでオンすると共に、該スイッチング素子のオン時間を変化させることにより、前記被加熱体への供給電力を制御する電力制御手段と、
を備え、
前記電力制御手段は、前記供給電力の値が予め設定された第1の閾値以下のときに、前記スイッチング素子をオンするタイミングを前記共振回路の共振周期の整数倍遅延させることを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
前記供給電力についての1個または複数の閾値と、各閾値に対応する前記スイッチング素子をオンするタイミングの遅延量が予め設定され、
前記電力制御手段は、前記供給電力の値と前記閾値とを比較して前記遅延量を決定する請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記閾値には第1の閾値と該第1の閾値よりも小さい第2の閾値が含まれ、
前記電力制御手段は、前記供給電力の値が、前記第1の閾値以下で前記第2の閾値を上回る場合にスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量よりも、第2の閾値以下の場合のスイッチング素子をオンするタイミングの遅延量を大きくする請求項2に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記入力電圧の瞬時値を検出する瞬時値検出手段を備え、
前記電力制御手段は、前記瞬時値検出手段により検出された入力電圧の瞬時値に応じて、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させる請求項1〜3のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記入力電圧の瞬時値について、予め1個またはの複数の閾値が設定され、
前記電力制御手段は、前記供給電力の閾値と、前記瞬時値検出手段により検出された入力電圧の瞬時値についての閾値に基づいて、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させる請求項2〜5のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
前記電力制御手段は、前記供給電力の値が、第1の閾値以下で第2の閾値を上回り、前記瞬時値検出手段により検出された入力電圧の瞬時値が第3の閾値以下の場合は、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させない請求項4または5に記載の誘導加熱装置。
【請求項7】
前記電力制御手段は、前記供給電力の値が第2の閾値以下である場合において、前記入力電圧の瞬時値が第3の閾値以下では、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させず、前記瞬時値が第3の閾値を上回り第4の閾値以下では、前記スイッチング素子をオンするタイミングを遅延させ、第4の閾値を上回ると、前記スイッチング素子をオンするタイミングの遅延量を増加させる請求項6に記載の誘導加熱装置。
【請求項8】
前記入力電圧の実効値が所定値よりも高い場合は、前記供給電力の閾値は低く設定され、実効値が所定値以下の場合は、閾値は高く設定される請求項1〜7のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項9】
前記入力電圧の実効値が所定値よりも高い場合は、前記入力電圧の瞬時値についての閾値は低く設定され、実効値が所定値以下の場合は、閾値は高く設定される請求項5〜8のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の誘導加熱装置を定着装置における加熱源として備えていることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−204119(P2012−204119A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67083(P2011−67083)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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