説明

誘発目地構造および施工方法

【課題】意匠上、構造耐力上問題のないコンクリートのひび割れ誘発目地構造および施工方法を提供する。
【解決手段】ひび割れ誘発目地5を発生させる部位にモルタルを充填したコンクリートのひび割れ誘発目地構造1およびコンクリート打設型枠7内に、ラス枠8によりモルタル充填空間部を設け、モルタル充填空間部以外にコンクリート4を充填した後、モルタル充填空間部内にコンクリート4からモルタル分5が流れ込むことによりモルタル充填空間部にモルタル5が充填されるコンクリートのひび割れ誘発目地構造の施工方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートのひび割れ誘発目地構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の耐久性や意匠に対する要求が高まるにつれ、コンクリート構造物の施工後に生じるコンクリートのひび割れに対応するため、コンクリートのひび割れが発生する箇所を集中させる目的でひび割れ誘発目地が設けられている。
【0003】
しかし、意匠的な化粧目地は、目地深さが1cm程度であるのに対し、一般的なひび割れ誘発目地は、コンクリート断面をその厚みの20%以上欠損させることが必要であるとされ(日本建築学会:鉄筋コンクリート造のひび割れ対策(設計・施工)指針・同解説)、住宅基礎のようにコンクリート断面の厚みがない場合、目地深さ1cm程度では有効なひび割れ誘発目地として機能しない。また必要なコンクリート断面欠損をとると、意匠上、構造耐力上問題となる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−314182号公報
【特許文献2】特開2006−90039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、意匠上、構造耐力上問題のないコンクリートのひび割れ誘発目地構造および施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題において、本発明者は、研究・調査の結果、モルタルの乾燥収縮率がコンクリートの乾燥収縮率より大きいことに着目し、乾燥収縮率の違いからモルタルの乾燥収縮によるひび割れがコンクリートの乾燥収縮によるひび割れよりも早く発生することを突き止めた。本発明は、かかる究明によって完成されたものである。
【0007】
上記の課題は、基礎、壁体、床などのコンクリート構造において、ひび割れ誘発目地を発生させる部位がモルタルからなることを特徴とするコンクリートのひび割れ誘発目地構造により解決される。
【0008】
モルタルの乾燥収縮率はコンクリートの乾燥収縮率よりも高いため、コンクリートにひび割れ誘発目地としての断面欠損がなくても、乾燥収縮率の違いからモルタル部にひび割れが集中するため、コンクリート部に誘発目地部としての断面欠損を設けなくてもひび割れを集中させる誘発目地部を設けることができ、意匠性、構造耐力上問題のないコンクリート構造物を作ることができる。
【0009】
また、上記の課題は、基礎、壁体、床などのコンクリート構造物の施工において、コンクリート打設型枠内に、格子状の仕切り板によりモルタル充填空間部を設け、当該モルタル充填空間部以外にコンクリートを充填した後、モルタル充填空間部内にコンクリートからモルタル分が流れ込むことによりモルタル充填空間部にモルタルが充填されるコンクリートのひび割れ誘発目地構造の施工方法によっても解決される。
【0010】
コンクリート打設型枠内に格子状の仕切り板によりモルタル充填空間部を設け、当該モルタル充填空間部以外にコンクリートを充填した後、モルタル充填空間部内にコンクリートからモルタル分が廻り込むことにより、コンクリート構造物の中にコンクリートの部分とモルタルの部分ができ、コンクリート部に誘発目地部としての断面欠損を設けなくてもひび割れを集中させる誘発目地部をコンクリートとモルタルを別々に施工することなく、簡易な方法で実現することがでる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のとおりであるから、コンクリートにひび割れ誘発目地としての断面欠損がなくても、乾燥収縮率の違いからモルタル部にひび割れが集中するため、コンクリート部に断面欠損を設けなくてもひび割れを集中させる誘発目地部を設けることができ、意匠性、構造耐力上問題のないコンクリート構造を作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1に示す実施形態において、1はコンクリート基礎、2はひび割れ誘発目地、3は化粧目地、4はコンクリート、5はモルタル、6は鉄筋である。
【0014】
コンクリート基礎1は所定間隔で配筋された鉄筋6とその周囲を包むコンクリート6とからなる。コンクリート基礎立ち上がり部の長手方向には、所定間隔で化粧目地3としてコンクリート基礎1の縦方向に溝が形成されている。
【0015】
通常モルタルの乾燥収縮率はコンクリートの収縮率の2倍程度あるため、コンクリートの乾燥収縮が進行した場合、乾燥収縮率の高いモルタル部分が先にひび割れることになる。そのため、誘発目地の発生のためにコンクリート表面に断面欠損を設けなくても、コンクリート中にモルタル分からなる部分を設けることでひび割れが起こる箇所が集中し、コンクリート基礎のひび割れを適切な箇所で誘発させることができる。
【0016】
つまり、コンクリート基礎1では、ひび割れ誘発目地としての断面欠損がなくても、コンクリート4とモルタル5との乾燥収縮率の違いからモルタル部にひび割れが集中するため、コンクリート部に断面欠損を設けなくてもひび割れを集中させるひび割れ誘発目地部2を設けることができ、意匠性、構造耐力上問題のないコンクリート構造を作ることができることができる。
【0017】
次に、ひび割れ誘発目地構造の施工方法について説明する。
【0018】
図2(イ)に示すように、鉄筋6を配筋しその周囲をコンクリート打設用の型枠7で囲んだ後、図2(ロ)に示す箱型に加工されたラス枠8を型枠7の長手方向に直交するように垂直に設置するとともに、型枠7の表面側には化粧目地形成用の目地材9を設ける。ここで、ラス枠8は図2(ロ)に示すように、ラスを折り曲げ加工し箱型にしたもので、側面四周がラス枠で囲まれ、上面と下面は開口している。ラス枠側面の短手方向の寸法はひび割れ誘発目地2の目地幅と等しく、たとえば1cm程度であり、長手方向の寸法はおよそコンクリート基礎幅から化粧目地幅分を除いた寸法に合わされ、高さ方向の寸法はコンクリート基礎の立ち上がり寸法に合わされている。なお、ラス枠8には図示はしないが、鉄筋6を貫通して設置できるように孔または切り欠きが設けられている。
【0019】
ラス枠8の格子の形状はコンクリート中の砕石を通さず、コンクリート中のモルタル分だけを通す形状であることが求められる。
【0020】
図3(イ)に示すように、ラス枠8が設置された型枠7内のラス枠8で囲まれた範囲にはコンクリート4は打設せず、ラス枠8で囲まれた範囲以外にコンクリート4を打設する。コンクリート打設後、図3(ロ)に示すように、バイブレータ11で振動を与え、コンクリートのつき固めを行うと、ラス枠8の格子を通してコンクリート6中のモルタル分だけが流れ込み、図3(ハ)に示すようにラス枠8内にはモルタル5だけが充填される
【0021】
コンクリートの養生後、型枠8を脱型すると、モルタルのみからなる部分を有するひび割れ誘発目地を有するコンクリート基礎1が完成する。
【0022】
通常モルタルの乾燥収縮率はコンクリートの収縮率の2倍程度あるため、コンクリートの乾燥収縮が進行した場合、乾燥収縮率の高いモルタル部分が先にひび割れることになる。そのため、図4に示すように、誘発目地の発生のためにコンクリート表面に断面欠損を設けなくても、コンクリート中にモルタル分からなる部分を設けることでひび割れ10が起こる箇所が集中し、コンクリート基礎1のひび割れを適切な箇所で誘発させることができる。
【0023】
また、モルタルの乾燥収縮率とコンクリートの乾燥収縮率の相違により、コンクリート4とモルタル5との界面が乖離する形態でひび割れが発生することもある。いずれにしても、誘発目地の発生のためにコンクリート表面に断面欠損を設けなくても、コンクリート中にモルタル分からなる部分を設けることでひび割れ10が起こる箇所が集中し、コンクリート基礎1のひび割れを適切な箇所で誘発させることができる。
【0024】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、本実施例では型枠内にラス枠からなる箱体を用いたが、ラスに限られる事はなく、要はコンクリートからモルタル分だけが流出する格子であればよい。また、型枠8内に設置された配筋6をかわすためにラス枠8に切り込みをいれたが、それ以外の方法であってもよい。
【0025】
また、上記実施形態では、ラス枠8により、モルタル充填部分とそうでない部分を隔てているが、それ以外の方法で行われてもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図は本発明の実施形態である誘発目地構造を示す斜視図である。
【図2】図(イ)は、誘発目地構造の施工方法を示す正面図であり、図(ロ)は、ラス枠を示す斜視図である。
【図3】図(イ)〜(ハ)は、それぞれ誘発目地構造の施工方法を順次示す、断面側面図である。
【図4】図は、誘発目地構造において、ひび割れは発生した状況を示す正面図である。
【符号の説明】
【0027】
1・・・コンクリート基礎
2・・・ひび割れ誘発目地
3・・・化粧目地
4・・・コンクリート
5・・・モルタル
6・・・鉄筋
7・・・型枠
8・・・ラス枠(仕切り板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎、壁体、床などのコンクリート構造において、ひび割れ誘発目地を発生させる部位がモルタルからなることを特徴とするコンクリートのひび割れ誘発目地構造。
【請求項2】
基礎、壁体、床などのコンクリート構造物のコンクリートのひび割れ誘発目地構造の施工において、コンクリート打設型枠内に、格子状の仕切り板によりモルタル充填空間部を設け、当該モルタル充填空間部以外にコンクリートを充填した後、モルタル充填空間部内にコンクリートからモルタル分が流れ込むことによりモルタル充填空間にモルタルが充填されるコンクリートのひび割れ誘発目地構造の施工方法。
【請求項3】
格子状の仕切り板の格子目が、打設されるコンクリートの粗骨材径より小さいことを特徴とする請求項2に記載のコンクリートのひび割れ誘発目地構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−38360(P2008−38360A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210447(P2006−210447)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】