説明

誘電体フィルタ

比誘電率が異なる2つ以上の誘電体層(702、703、704、705、706、707、708)が積層されて形成された誘電体多層構造体(701)と、上記誘電体多層構造体におけるいずれかの上記誘電体層間、あるいはいずれかの上記誘電体層内部に形成された少なくとも1つの給電用電極(709)と、上記誘電体多層構造体の外面を覆い、かつ、当該外面と隙間なく配置された導電体からなる遮蔽部(710)とを誘電体フィルタに備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、複数の誘電体層が積層されることにより形成される誘電体フィルタに関する。
【背景技術】
従来、このような誘電体フィルタとしては、マイクロ波帯およびミリ波帯のフィルタとし用いられており、特に、導波管内に構造物を設けた導波管型フィルタあるいは誘電体共振器フィルタがよく用いられている。このような、導波管型フィルタの一例として導波管型フィルタ101の斜視図を図23に示す。
図23Bに示すように、導波管型フィルタ101は、互いに一対の形状を有し、互いに接合されることでその内部に1つの導波管を形成可能な分割導波管102及び103の間に、複数の窓104aが形成された金属板104を配置させて互いを接合し、図23Aに示すように、夫々の窓104aを上記導波管内に位置させることにより、フィルタ特性を得るものである。このような導波管型フィルタ101は、特にミリ波帯(30〜300GHz)において低損失な伝送路であり、共振器のQ値(Quality Factor)も大きいという特徴がある。その反面、マイクロストリップ線路で給電する場合は、導波管−マイクロストリップ変換が必要となるため、導波管型フィルタ101の小型化が困難であるという問題点を有している。
また、上記誘電体共振器フィルタは、金属製の筐体内に誘電体により形成されたフィルタ素子を配置し、導波管により直接給電あるいは、マイクロストリップ線路などを用いて給電することにより、上記筐体内で所望の周波数の電磁波を共振させ、所望の周波数の電磁波を取り出すものである。
従来、このような上記誘電体共振器フィルタにおいて、マイクロストリップ線路で給電するものに関しては、その小型化が可能で、回路基板への表面実装も可能となっている反面、そのQ値が小さいという欠点がある。(例えば、榎原 晃、他3名、“26GHz帯TM11δモード誘電体共振器フィルタ”、2002年3月13日、輻射科学研究会技術報告(RS01−16)参照)。
一方、このような上記フィルタ素子として複数の誘電体が積層されることにより形成された誘電体多層構造体を使用した誘電体フィルタが知られており、異なる2種類の誘電体セラミック材料を交互にエポキシ系接着剤で接着して積層し、導波管型の短絡器を作製することも行なわれている(例えば、特開平10−290109号公報参照)。このような上記誘電体フィルタは、光学で用いられる多重反射を利用した誘電体多層ミラーをミリ波帯に応用した例である。
【発明の開示】
しかしながら、特にミリ波帯においては、波長が短くなるに従って、遮断波長も小さくなるという特性を有しており、これにより、上記誘電体共振器フィルタや上記誘電体フィルタは、ある程度小型化が可能となる反面、高い寸法精度が要求されることとなり、当該誘電体フィルタの製造や調整が非常に困難になるという問題点がある。
また、特に上記誘電体共振器フィルタでは金属筐体を使用するため小型化には限界があり、設計上の制限事項となる場合があるという問題がある。
例えば、図24に示す上記誘電体共振器フィルタの一例であるTM01δ矩形モードを利用したミリ波帯(60GHz)フィルタ201においては、その内部にフィルタとして用いられて設置される夫々の誘電体共振器207の大きさが、縦1mmx横1mmx長さ3mm程度であり、断面形状が約1.5mmx1.5mmの遮蔽筐体202内に設置されている。従って、夫々の誘電体共振器207と遮蔽筐体202との間隔が約0.25mmと狭く、また、互いに隣接されて設置されている夫々の誘電体共振器207の間の間隔(段間)も狭くなっている。一方、夫々のセラミック基板203及び204上に形成されている夫々のマイクロストリップ線路206及び205も、その線幅が0.2mm程度となっており、また、セラミック基板203及び204に対する夫々のマイクロストリップ線路206及び205の位置精度としても、10μm程度の精度が必要となっている。さらに、このようなミリ波帯フィルタ201は、立体的な構造を有しているため、微細な平面的構造を形成するのに非常に適している半導体プロセスを応用して製造することが困難であり、今後、周波数が増加するに従って、その組立や調整が困難になるという問題が発生することが予想される。
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、非常に高い加工精度が要求される誘電体や筐体の加工の必要がなく、容易に製造することが可能であって、さらに、誘電体の内部に電極を設けることにより、回路形成体に直接実装することができる誘電体フィルタを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、比誘電率が異なる2つ以上の誘電体層が積層されて形成された誘電体多層構造体と、
上記誘電体多層構造体の外面を覆い、かつ、当該外面と隙間なく配置された導電体からなる遮蔽部とを備える誘電体フィルタを提供する。
また、上記誘電体多層構造体がその内部に略密着して設置される導波管をさらに備えさせることもできる。
また、上記誘電体多層構造体における外面の少なくとも一部を覆うように金属により形成された遮蔽部をさらに備えさせることもできる。
また、上記導波管と上記誘電体多層構造体との間に生じた空隙の少なくとも一部に、導電性材料を充填させることもできる。
本発明の第2態様によれば、上記誘電体多層構造体におけるいずれかの上記誘電体層間、あるいはいずれかの上記誘電体層内部に形成された少なくとも1つの給電用電極とを備える第1態様に記載の誘電体フィルタを提供する。
本発明の第3態様によれば、上記異なる比誘電率の差は、少なくとも10以上である第1態様に記載の誘電体フィルタを提供する。
本発明の第4態様によれば、互いに隣接する上記夫々の誘電体層同士が接合されている(あるいは、密接している)第1態様に記載の誘電体フィルタを提供する。
本発明の第5態様によれば、上記夫々の誘電体層は、焼結温度が800℃以上1000℃以下の誘電体セラミック材料により形成されている第1態様に記載の誘電体フィルタを提供する。
本発明の第6態様によれば、上記夫々の誘電体層は、誘電体セラミック材料を混合した樹脂により形成されている第1態様に記載の誘電体フィルタを提供する。
本発明の第7態様によれば、上記給電用電極は、銀、銅、金、若しくはパラジウム、又は、これらの合金で形成されている第1態様に記載の誘電体フィルタを提供する。
本発明の第8態様によれば、上記夫々の誘電体層は、厚さが傾斜的に変化されている第1態様に記載の誘電体フィルタを提供する。
本発明の第9態様によれば、上記各々の誘電体層において、上記厚さにおける最小値が、最大値の70%以上となるように、上記厚さが傾斜的に変化されている第7態様に記載の誘電体フィルタを提供する。
本発明の第10態様によれば、上記誘電体フィルタが、マイクロ波帯用フィルタ又はミリ波帯用フィルタであり、
上記夫々の誘電体層は、その層の厚さ寸法とその比誘電率の平方根との積が、上記誘電体多層構造体に入射されるマイクロ波又はミリ波の波長の1/4の整数倍の値であって、かつ、上記夫々の誘電体層のうちの少なくとも1つの誘電体層は、その層の厚さ寸法とその比誘電率の平方根との積が、上記波長の1/2の整数倍の値である第1態様に記載の誘電体フィルタを提供する。
本発明の第11態様によれば、上記給電用電極は、
上記誘電体多層構造体の積層方向と略直交するように延在して、当該誘電体多層構造体の内部に配置された矩形部材と、
上記積層方向及び上記矩形部材の延材方向の夫々と略直交して配置されるとともに、上記誘電体多層構造体の外部に露出されたその一端と、当該誘電体多層構造体の内部にて上記矩形部材と接続されて配置されたその他端とを有する円柱部材とを備える第2態様に記載の誘電体フィルタを提供する。
本発明の第12態様によれば、上記円柱部材の上記他端は、略円周状の端部を有し、
上記矩形部材は、上記略円周において互いに平行に配置された接線を各々含み、上記積層方向及び上記円柱部材の軸心の夫々と略直交するように配置された夫々の端部を有する第11態様に記載の誘電体フィルタを提供する。
本発明の第13態様によれば、上記矩形部材は、上記夫々の端部を連結する連結部をさらに有する平板部材である第12態様に記載の誘電体フィルタを提供する。
本発明の第14態様によれば、比誘電率が異なる2以上の誘電体層を、いずれかの上記誘電体層間に少なくとも1つの給電用電極が配置されるように積層し、
上記夫々の誘電体層を加圧しながら、800℃以上1000℃以下の範囲内のいずれかの温度で上記夫々の誘電体層を焼結させて、上記夫々の誘電体層により誘電体多層構造体を形成する誘電体フィルタの製造方法を提供する。
本発明の第15態様によれば、互いに積層された上記夫々の誘電体層を、加圧して圧着させた後、上記夫々の誘電体層の焼結を行う第13態様に記載の誘電体フィルタの製造方法を提供する。
本発明の第16態様によれば、上記誘電体多層構造体を導波管の内部に設置し、
上記導波管と上記誘電体多層構造体との間に生じた空隙の少なくとも一部を導電性材料で充填する第14態様又は第15態様に記載の誘電体フィルタの製造方法を提供する。
本発明の上記第1態様によれば、互いに比誘電率が異なる2つ以上の誘電体層が積層されて誘電体多層構造体が形成されていることにより、光学における多重反射の原理を用いて上記夫々の誘電体層の厚みを決定して、所定の波長帯域の周波数のみを通過させる帯域透過フィルタとしての特性を、上記誘電体多層構造体に備えさせることができる。
また、上記誘電体多層構造体の外面を覆う導電体からなる遮蔽部がさらに備えられていることにより、上記誘電体多層構造体を透過される、若しくは透過されずに反射されるマイクロ波やミリ波等の上記誘電体多層構造体よりの放射を、上記遮蔽部により制限することができる。また、例えば、上記遮蔽部が、上記誘電体多層構造体をその内部に設置することができる導波管であるような場合にあっては、上記誘電体フィルタを導波管型の誘電体フィルタとして用いることができ、従来からの誘電体フィルタの使用方法にも対応することができる。
さらに、上記夫々の態様による効果に加えてさらに、上記誘電体多層構造体の外面と隙間(空隙)なく上記遮蔽部が配置されていることにより、当該空隙の存在により上記誘電体フィルタのフィルタ特性が影響を受けることを防止することができ、フィルタ特性の品質を安定させることができる。
また、上記誘電体フィルタにおいて、上記誘電体多層構造体における外面の少なくとも一部を覆うように遮蔽部が形成されているような場合にあっては、上記誘電体多層構造体を透過される、若しくは透過されずに反射されるマイクロ波やミリ波等の上記誘電体多層構造体よりの放射を、上記遮蔽部において制限することができる。すなわち、上記誘電体多層構造体の外面において、上記放射(あるいは透過)を防止したい部分に上記遮蔽部を形成し、上記放射(あるいは透過)を積極的に行いたい部分には、上記遮蔽部を形成しないというようにすることができる。
また、上記導波管と上記誘電体多層構造体との間に上記空隙が存在するような場合であっても、当該空隙の少なくとも一部に、導電性材料を充填することで、当該空隙が与える上記誘電体フィルタのフィルタ特性への影響を低減させることができ、よりフィルタ特性の品質が安定されて誘電体フィルタを提供することができる。
本発明の上記第2態様によれば、さらに、上記誘電体多層構造体におけるいずれかの上記誘電体層間、あるいはいずれかの上記誘電体層内部に少なくとも1つの給電用電極が形成されていることにより、当該給電用電極を用いて回路形成体に直接実装することができるチップ型の誘電体フィルタを提供することができる。従って、上記回路形成体への誘電体フィルタの直接的な実装を容易とすることができ、より様々な形態の光・電子回路の形成に利用することができる誘電体フィルタを提供することができる。
また、このような誘電体フィルタにおいては、上記誘電体層に直接的に、上記給電用電極が形成されていることにより、従来の誘電体フィルタにおいては必要であった導波管−マイクロストリップ変換を行う構成を不要とすることができ、より小型化された誘電体フィルタを提供することができ、上記回路形成体への利用性を良好なものとすることができる。特に、小型化が要望されているミリ波帯回路等への実装には効果的なものとすることができる。
本発明の上記第3態様によれば、上記2つ以上の誘電体層の上記夫々の比誘電率の差が、少なくとも10以上であること(好ましくは20以上であること)によって、より少ない積層数で、誘電体フィルタのQ値(Quality Factor)を大きくすることができる。これにより、上記誘電体フィルタのフィルタ特性の急峻性を向上させることを可能としながら、上記夫々の誘電体層の積層数を少なくして、上記誘電体フィルタのさらなる小型化を実現可能とすることができる。
本発明の上記第4態様によれば、上記夫々の態様による効果に加えてさらに、上記誘電体多層構造体において、互いに隣接して積層された上記夫々の誘電体層同士が、従来の誘電体フィルタのように上記夫々の誘電体層間に接合剤等の他の材料が介在することなく、互いに接合されている(あるいは、密接されている)ことにより、上記夫々の誘電体層間の界面の誘電率が変化したりすることもなく、安定したフィルタ特性を有する誘電体フィルタを提供することができる。
本発明の上記第5態様によれば、上記夫々の誘電体層が、焼結温度が800℃以上1000℃以下の誘電体セラミック材料により形成されていることにより、従来の誘電体フィルタのように、上記夫々の誘電体層を接合剤を用いて接着するというような製造方法を用いることなく、上記夫々の誘電体層を積層させて上記温度範囲で加熱しながら焼結させて、上記誘電体多層構造体を形成することができる。さらに、このような温度条件にて上記加熱を行うことにより、上記夫々の層の熱膨張差を少なく抑えることができ、上記夫々の層の剥がれの発生を防止することができる。従って、安定した品質を有する誘電体フィルタを提供することができる。
本発明の上記第6態様によれば、上記夫々の誘電体層が、誘電体セラミック材料を混合した樹脂により形成されていることにより、例えば、未焼結生シートであるグリーンシートを複数枚積層させることにより、上記夫々の誘電体層を形成することができ、従来のようにバルク状の誘電体セラミックから板状の誘電体セラミックを切り出して用いるというような手間や、高い精度を要する切り出しや研磨というような加工を不要とすることができ、より容易に製造することが可能な誘電体フィルタを提供することができる。
本発明の上記第7態様によれば、上記給電用電極が、銀、銅、金、若しくはパラジウム、又は、これらの合金というように、従来からの電子部品の電極の形成材料として用いられている導電率の高い材料で形成されていることにより、上記回路形成体への実装を容易とすることができるチップ型の誘電体フィルタを提供することができる。
本発明の上記第8態様又は上記第9態様によれば、上記夫々の誘電体層において、厚さが傾斜的に変化されていることにより、上記誘電体多層構造体内を伝搬される電界を、上記夫々の誘電体層の厚さが薄くなっている部分に集中させることができる。これにより、透過帯域での上記誘電体層による反射損が低減されるというフィルタ特性を有する誘電体フィルタを提供することができる。特にこのような効果は、上記厚さにおける最小値が最大値の60〜70%以上となるように、望ましくは、60%〜95%の範囲内となるように、さらに望ましくは、70%〜90%の範囲内となるように、上記厚さが傾斜的に変化されている場合により効果的に得ることができる。
本発明の上記第10態様によれば、上記夫々の誘電体層は、その層の厚さ寸法とその比誘電率の平方根との積が、上記誘電体多層構造体に入射されるマイクロ波又はミリ波の波長の1/4の整数倍の値であって、かつ、上記夫々の誘電体層のうちの少なくとも1つの誘電体層は、その層の厚さ寸法とその比誘電率の平方根との積が、上記波長の1/2の整数倍の値となるように、夫々の層の厚さと比誘電率が決定されて形成されていることにより、多重反射の原理を利用した帯域透過フィルタとして、上記夫々の効果を有する誘電体フィルタを、マイクロ波帯用フィルタ又はミリ波帯用フィルタとして用いることができる。
これにより、夫々の誘電体層が接合剤で貼り合わせて形成されているような従来の誘電体フィルタを、周波数帯域が高いマイクロ波帯やさらにミリ波帯で用いる場合には、その形成寸法誤差のため、設計通りのフィルタ特性が得られず調整機構が必要となり、上記周波数帯域が高くなる程、その適用が非常に困難になるという問題を解消することができる。
本発明の上記第11態様によれば、上記給電用電極が、上記円柱部材と当該円柱部材の他端に接続されて配置された上記矩形部材とで構成されることにより、その周面より電気力線が生じず、伝送ロスが少ないという上記円柱部材の利点を得ることができながら、上記矩形部材の周囲における電気力線の分布の乱れを低減することができる。従って、上記誘電体フィルタにおいて、所定のモードを得るための上記夫々の誘電体層の積層方向における距離寸法を短縮化することができ、上記誘電体フィルタの小型化を図ることができる。
本発明の上記第12態様によれば、上記矩形部材が、上記円柱部材の円周状の端部における互いに平行な接線を各々含むような端部を有していることで、上記円柱部材の上記端部と上記矩形部材との接続部分において、稜部の形成箇所を低減することができ、電気力線の乱れを低減することができる。
本発明の上記第13態様によれば、上記矩形部材が、上記夫々の端部を連結する連結部をさらに有する平板部材であることにより、上記矩形部材の形成、及び当該矩形部材と上記円柱部材との接続を容易なものとすることができ、上記給電用電極の製造の簡素化を図ることができる。
本発明の上記第14態様又は上記第15態様によれば、互いに比誘電率が異なる2つ以上の誘電体層が積層されて誘電体多層構造体が形成されることにより、光学における多重反射の原理を用いて上記夫々の誘電体層の厚みを決定して、所定の波長帯域の周波数のみを通過させる帯域透過フィルタとしての特性を備える上記誘電体多層構造体を形成することができる。
さらに、いずれかの上記誘電体層間に少なくとも1つの給電用電極が配置されるように、上記夫々の誘電体層が積層されることにより、上記給電用電極を有する上記誘電体多層構造体を形成することができ、当該給電用電極を用いて回路形成体に直接実装することができるチップ型の誘電体フィルタを製造することができる。
また、このような誘電体フィルタにおいては、上記誘電体層に直接的に、上記給電用電極が形成されていることにより、従来の誘電体フィルタにおいては必要であった導波管−マイクロストリップ変換を行う構成を不要とすることができ、より小型化された誘電体フィルタを製造することができ、上記回路形成体への利用性を良好なものとすることができる。特に、小型化が要望されているミリ波帯回路等への実装には効果的なものとすることができる。
さらに、上記夫々の誘電体層が積層された後、800℃以上1000℃以下の範囲内のいずれかの温度で上記夫々の誘電体層を焼結させることにより、上記誘電体多層構造体が形成されていることにより、従来の誘電体フィルタの製造方法のように、上記夫々の誘電体層を接合剤を用いて接着するというような製造方法を用いることなく、上記夫々の誘電体層間に接合剤等の他の材料が介在することなく、互いに密接させて形成することができる。これにより、上記夫々の誘電体層間の界面の誘電率が変化したりすることもなく、安定したフィルタ特性を有する誘電体フィルタを製造することができる。
また、このような温度条件にて上記加熱を行うことにより、上記夫々の層の熱膨張差を少なく抑えることができ、上記夫々の層の剥がれの発生を防止することができ、安定した品質を有する誘電体フィルタを製造することができる。
従来のようにバルク状の誘電体セラミックから板状の誘電体セラミックを切り出して用いるというような手間や、高い精度を要する切り出しや研磨というような加工を不要とすることができ、より容易に誘電体フィルタを製造することができる。
また、上記積層された夫々の誘電体層を加圧して圧着させた後に、上記加熱・焼結を行っているため、確実に上記夫々の誘電体層を焼結させることができ、製造される誘電体フィルタの品質を良好なものとすることができる。
また、従来の導波管型フィルタや誘電体共振器フィルタにおいて必要であった高精度な金属加工を不要とすることができるため、従来の夫々のフィルタと比較して、上記誘電体フィルタを低コストで製造することができる。
本発明の上記第16態様によれば、上記夫々の態様による効果に加えてさらに、上記導波管と上記誘電体多層構造体との間に生じた空隙の少なくとも一部に、導電性材料を充填することにより、当該空隙が与える上記誘電体フィルタのフィルタ特性への影響を低減させることができ、よりフィルタ特性の品質が安定されて誘電体フィルタを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
本発明のこれらと他の目的の特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
図1は、本発明で用いられる多重反射の原理の模式説明図であり、
図2は、図1の多重反射の原理を利用した誘電体多層膜ミラーの模式平面図であり、
図3は、図2の誘電体多層膜ミラーの反射特性を示す図であり、
図4は、本発明の第1の実施形態にかかるチップ型の誘電体フィルタの内部構造の模式説明図であり、
図5は、図4の上記誘電体フィルタの外観の模式図であり、
図6は、上記第1実施形態の誘電体フィルタを説明するための実施例1にかかる誘電体フィルタの模式説明図であり、
図7は、図6の誘電体フィルタのフィルタ特性測定装置の概略構成図であり、
図8は、図7の上記フィルタ特性測定装置における測定用導波管の部分拡大模式平面図であり、
図9は、図6の誘電体フィルタのフィルタ特性を示すプロット図であり、
図10は、上記第1実施形態の実施例2にかかる誘電体フィルタ(高誘電率層と低誘電率層との配置を入れ替えたもの)が上記測定用導波管に設置された状態の模式説明図であり、
図11は、図10の誘電体フィルタのフィルタ特性を示すプロット図であり、
図12は、上記第1実施形態の実施例3にかかる誘電体フィルタ(気泡が存在する場合)が上記測定用導波管に設置された状態の模式説明図であり、
図13は、図12の誘電体フィルタのフィルタ特性を示すプロット図であり、
図14は、上記第1実施形態の実施例4にかかる誘電体フィルタ(導波管と誘電体多層構造体との間に隙間がある場合)が上記測定用導波管に設置された状態の模式説明図であり、
図15は、図14の誘電体フィルタのフィルタ特性を示すプロット図であり、
図16は、図4及び図5の上記第1実施形態の上記チップ型の誘電体フィルタのフィルタ特性を示すプロット図であり、
図17は、本発明の第2の実施形態にかかる誘電体フィルタ(夫々の誘電体層に傾斜があるもの)の構成の模式説明図であり、
図18は、図17の上記誘電体フィルタのフィルタ特性を示すプロット図であり、
図19は、本発明の第3の実施形態にかかる誘電体フィルタの構成(金属電極が形成されていないもの)を示す模式説明図であり、
図20は、図19の上記誘電体フィルタに金属電極が形成された場合の内部構造の模式説明図であり、
図21は、図20の上記誘電体フィルタの外観の模式図であり、
図22は、図20及び図21の上記誘電体フィルタのフィルタ特性を示すプロット図であり、
図23A及び図23Bの夫々は、従来の導波管型フィルタを示す斜視図であり、図23Aは組み立てられた状態の斜視図であり、図23Bは分解された状態の斜視図であり、
図24は、従来のミリ波帯フィルタの透視斜視図であり、
図25は、本発明の第4実施形態の一実施例にかかる矩形電極が用いられた状態の誘電体フィルタの模式斜視図であり、
図26は、上記第4実施形態の別の実施例にかかる円柱電極が用いられた状態の誘電体フィルタの模式斜視図であり、
図27は、上記第4実施形態のより望ましい実施例にかかる電極が用いられた状態の誘電体フィルタの模式斜視図であり、
図28は、図25の誘電体フィルタ内の電気力線を示す模式図であり、
図29は、図26の誘電体フィルタ内の電気力線を示す模式図であり、
図30は、図27の電極の模式拡大図であり、
図31は、図30の電極の寸法を説明するための電極及び誘電体フィルタの模式説明図であり、
図32は、上記第4実施形態の最良の形態における電極の寸法の模式説明図であり、
図33は、図32の上記誘電体フィルタのフィルタ特性を示すプロット図であり、
図34は、図27の誘電体フィルタ内の電気力線を示す模式図であり、
図35は、上記第4実施形態のより望ましい実施例にかかる電極が用いられた誘電体フィルタの実施例モデルを示す模式図であり、
図36は、図35の誘電体フィルタにおけるYZ平面の電気力線を示す解析図であり、
図37は、図35の誘電体フィルタにおけるXZ平面の電気力線を示す解析図であり、
図38は、図35の誘電体フィルタにおけるXY平面の電気力線を示す解析図であり、
図39は、図35の誘電体フィルタにおける3次元的な電気力線を示す解析図であり、
図40は、上記第4実施形態の一実施例にかかる矩形電極が用いられた誘電体フィルタの実施例モデルを示す模式図であり、
図41は、図40の誘電体フィルタにおけるYZ平面の電気力線を示す解析図であり、
図42は、図40の誘電体フィルタにおけるXZ平面の電気力線を示す解析図であり、
図43は、上記第4実施形態の別の実施例にかかる円柱電極が用いられた誘電体フィルタの実施例モデルを示す模式図であり、
図44は、図43の誘電体フィルタにおけるYZ平面の電気力線を示す解析図であり、
図45は、図43の誘電体フィルタにおけるXZ平面の電気力線を示す解析図であり、
図46は、図43の誘電体フィルタにおけるXY平面の電気力線を示す解析図であり、
図47は、上記第4実施形態の変形例にかかる電極の模式図であり、
図48は、上記第4実施形態のさらに別の変形例にかかる電極の模式図であり、
図49は、図48の電極における夫々の矩形部材を連結部で連結した場合の模式図であり、
図50は、図49の電極の連結部に半円状の端部を形成した場合の模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
以下に本発明の実施の形態を説明するに先立って、本発明において用いられる基本的な原理についての説明を行う。本発明においては、誘電体多層膜による光学ミラーと同じ多重反射にて用いられている原理を用いている。この多重反射において用いられている原理について以下に説明する。
図1に示すように、比誘電率ε、屈折率n、厚さtを有する誘電体の板(媒質2)が比誘電率εの空間(媒質1)中に置かれている場合に、媒質1から媒質2に電磁波が入射する場合について考える。図1に示すように、電磁波が媒質1から媒質2に図示右向きに入射角度θ’で入射した場合、媒質2内での屈折角をθとすれば光路の異なる波W1およびW2の光路差ΔLは数1で与えられる。なお、数1において、(BC+CE)は、媒質2内の点Bおよび点Cで反射されることによりできる波W2とW1との光路差を示している。

ここで波面BDとC’Eの間の屈折率nを加味した光路長は等しいので、数2のように与えられる。

従って、光路差ΔLは、数3のようになる。

また、数3より入射波の真空中の波長をλとすると、位相差は数4で与えられる。

また、媒質2を透過する電磁波の透過率は、数5のように与えられる。

ここで、C=4R/(1−R)であり、Cはコントラスト、Rは反射率を表している。
さらに、数4のδ(位相差)が2mπ(mは任意の整数)の場合に透過率は最大となり、真空中の光の速度をcとすると透過率が最大となる周波数fmaxは、数6のように与えられる。

一方、数4のδ(位相差)が(2m+1)πの場合に透過率は最小(反射率は最大)となり、透過率が最小となる周波数fminは、数7のように与えられる。

また、垂直入射の場合θ=0であるので、数6及び数7は、夫々数8及び数9のようになる。


また、数8及び数9より、比誘電率の平方根と誘電体の厚さの積と透過率との関係は、夫々数10及び数11で与えられる。


数10は、比誘電率の平方根と誘電体の厚さの積を、入射する波長λの1/4の奇数倍とすることで、透過率が最小、つまり反射率が最大になることを示している。
一方、数11は、比誘電率の平方根と誘電体の厚さの積を、入射する波長λの1/2の倍数とすることで、透過率が最大、つまり反射率が最小になることを示している。
以上が多重反射で用いられている原理である。
次に、このような原理を利用した誘電体多層光学フィルタの一例である誘電体多層膜ミラー301の模式的な構成を示す模式平面図を図2に示し、この誘電体多層膜ミラー301の反射特性を図3に示す。
図2に示すように、誘電体多層膜ミラー301は、互いに比誘電率が異なる2種類の誘電体層である低誘電率膜302と高誘電率膜303とが交互に積層されて、比誘電率の平方根と誘電体の厚さの積が、入射する波長の1/4となるように形成された誘電体多層構造体の一部に、比誘電率の平方根と誘電体の厚さの積が、入射する波長の1/2とされた高誘電率中間層304が形成された構造を有している。このような構造の誘電体多層膜ミラー301は、図3に示すように、波長750nm付近の波長帯域のみを透過させるというような特性を有する帯域透過フィルタとなる。
これが、本発明の誘電体フィルタの一例であるマイクロ波及びミリ波帯のフィルタの原理となっている。
本原理を用いることにより、電磁波の透過/反射特性は誘電体の厚みのみで決定され、従来の導波管フィルタや誘電体共振器フィルタと比較して、高精度な金属加工や非常に高い技術を要するフィルタの後調整を必要とせず、容易にマイクロ波およびミリ波帯のフィルタを得ることを可能とするものである。
また、本明細書において、「誘電体多層構造体」とは、比誘電率が異なる2つ以上の誘電体層が積層されて形成された複数の層により一体的に構成される部材であり、上記誘電体多層構造体を「誘電体積層部材」ということもできる。このような誘電体多層構造体は、主に直方体形状を有するものであるが、その他、円柱形状等を有するような場合であってもよい。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。もちろん本発明は、以下の例によって制限されるものではない。また、理解し易いように、説明に使用する図面は一部分を誇張して表現した個所が存在するものであり、図面内の寸法、寸法比率および位置関係は必ずしも正しいものではない。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかる誘電体フィルタ(あるいは誘電体フィルタ素子というような場合であってもよい)の一例であるチップ型の誘電体フィルタ701の模式的な構成として、図4に誘電体フィルタ701の内部構造の模式説明図を示し、図5にその外観の模式説明図を示す。図4及び図5に示すように、この誘電体フィルタ701は、夫々の誘電体層の間に形成された給電用電極を有しており、誘電体フィルタ701の外部より電位付加可能にチップ型に形成されたチップ型の誘電体フィルタである。
図4に示すように、誘電体フィルタ701は、互いに比誘電率が異なる2種類の誘電体セラミック材料として、高誘電率セラミック材料と低誘電率セラミック材料とを用いて、上記高誘電率セラミック材料により薄膜状に形成された誘電体層の一例である高誘電率セラミック層703、705、及び707と、上記低誘電率セラミック材料により薄膜状に形成された誘電体層の一例である低誘電率セラミック層702、704、706、及び708とを、交互に積層させた誘電体多層構造体となっている。
また、図4に示すように、低誘電率セラミック層702と高誘電率セラミック層703との間、及び、高誘電率セラミック層707と低誘電率セラミック層708との間の夫々には、給電用電極の一例である金属電極709における内部電極709aが形成されている。
また、図5に示すように、誘電体フィルタ701において、上記誘電体多層構造体の外面全体を覆うように、金属(導電体)により遮蔽部の一例である導波管710(金属薄膜710というような場合であってもよい)が形成されており、さらに、夫々の内部電極709aには外部電極709bが接続されて形成され、上記誘電体多層構造体の外面に突起された状態の夫々の金属電極709が形成されている。
誘電体フィルタ701が上述のような構成を有することで、夫々の金属電極709の電位を印加可能に回路形成体(例えば、回路基板)に直接実装することができるチップ型の誘電体フィルタを提供することができる。このような特徴を有する誘電体フィルタ701の詳細な構造、及びその製造方法について、本第1実施形態の実施例にかかるいくつかの種類の誘電体フィルタを用いて、以下に説明する。
【実施例1】
まず、誘電体フィルタにおける誘電体多層構造体の構成について、実施例1にかかる誘電体フィルタ401を用いて説明する。また、この誘電体フィルタ401の模式的な構成を示す模式説明図を図6に示す。
図6に示すように、誘電体フィルタ401は、互いにその比誘電率が異なる2種類の誘電体セラミック材料として、高誘電率セラミック材料と、低誘電率セラミック材料とを用いて、上記高誘電率セラミック材料により薄膜層状に形成された誘電体層の一例である高誘電率セラミック層402、404、及び406と、上記低誘電率セラミック材料により薄膜層状に形成された誘電体層の一例である低誘電率セラミック層403及び405とを、交互に積層させた誘電体多層構造体となっている。また、夫々の高誘電率セラミック層402、404、及び406と、夫々の低誘電率セラミック層403及び405とは、交互に積層された状態で、隣接する夫々の層同士が密接されている。すなわち、上記夫々の層の間には、他の材料、例えば、接着剤等が介在することなく、上記隣接する夫々の層同士が密着された状態で接合されている。さらに、上記夫々の層は、互いに略平行となるように形成され、かつ、積層されている。なお、このように上記夫々の層が互いに略平行となるような場合にのみ限定されるものではなく、例えば、上記夫々の層がテーパ形状(すなわち、非平行)となっている方がより好ましい場合もある。このような場合についての説明は後述するものとする。
ここで、「比誘電率が異なる」とは、夫々の材料における比誘電率の差が、少なくとも10以上あり、好ましくは20以上あることを意味している。本第1実施形態においては、上記高誘電率セラミック材料と上記低誘電率セラミック材料の夫々の比誘電率の差が、20以上となるように夫々の材料を選定している。例えば、本第1実施形態では、上記高誘電率セラミック材料として、Bi−Ca−Nb−O系誘電体セラミック材料(BCN:比誘電率=59、tanδ=2.33x10−4)と、上記低誘電率セラミック材料として、Al−Mg−Sm−O系誘電体セラミック材料にガラスを混合したもの(AMSG:比誘電率=7.4、tanδ=1.11x10)とを用いている。また、このような材料の他に、MgSiOからなる結晶層とSi−Ba−La−B−O系ガラス層からなる誘電体セラミック材料(比誘電率=7)や、MgO−CaO−TiO系材料なども使用できる。
なお、上記誘電体多層構造体における高誘電率セラミック層402、404、及び406と、低誘電率セラミック層403及び405の層数あるいは誘電率等の物性値は、上述のような夫々の値に制限されるものではなく、種々の態様を取ることが可能である。特に、層数に関しては、上記誘電体多層構造体が、比誘電率が異なる2つ以上の誘電体層が積層されることにより形成されていればよく、本第1実施形態においては、4つの層により上記誘電体多層構造体が形成されている例となっている。
次に、このような誘電体フィルタ401の製造方法について説明する。まず、上記高誘電率セラミック材料であるBCNにより形成されたグリーンシート(未焼結生シート)状の夫々の高誘電率セラミック層402、404、及び406と、上記低誘電率セラミック材料であるAMSGにより形成されたグリーンシート状の夫々の低誘電率セラミック層403及び405とを、交互に積層させて、40℃の温度で29.4MPaの圧力で上記夫々の層を圧着する。その後、さらに加圧しながら、800℃以上1000℃以下の範囲、より好ましくは850℃から950℃の範囲のいずれかの温度で加熱して、上記夫々の層を互いに焼結させる(ホットプレス工程)。これにより、夫々の高誘電率セラミック層402、404、及び406と、夫々の低誘電率セラミック層403及び405とが、互いに密接されて積層された状態にて、焼結されて、一体的な上記誘電体多層構造体を形成することができ、誘電体フィルタ401を製造することができる。なお、上記夫々のグリーンシートは、酢酸ブチルを溶媒としてジブチルフタレート、ポリビニルブチラール樹脂を溶かした溶液(バインダ)中に、上記高誘電率セラミック材料又は上記低誘電率セラミック材料を加えて混合した後、シート状に形成したものである。すなわち、夫々の高誘電率セラミック層402、404、及び406は、上記高誘電率セラミック材料が混合された樹脂により形成されており、また、夫々の低誘電率セラミック層403及び405は、上記低誘電率セラミック材料が混合された樹脂により形成されている。また、このようなグリーンシートを積層させて加圧しながら加熱して焼結させるという手法は、その形成条件は夫々の特徴に応じて異なるものの、高周波用多層セラミック基板やセラミックコンデンサ等を製造するときに用いられる手法である。なお、このような手法を用いて形成される上記高周波用多層セラミック基板等における夫々の層の形成厚さの精度は数百nm程度であるのに対して、誘電体フィルタとして要求される夫々の層の形成厚さの精度は数μm程度であり、上記手法は誘電体フィルタの形成に用いるための精度条件を十分に満たしている。また、上述のようにホットプレス工程における加熱温度範囲の条件を定めているのは、上記加熱の際における夫々の層の熱膨張差を少なく抑えて、夫々の層の剥がれの発生を防止するためである。
なお、本実施例1では、誘電体として、誘電体セラミック材料を使用しているが、フッ素樹脂あるいはポリカーボネートなどの樹脂材料にTiOあるいはAl等誘電体の粉体を分散させたコンポジット材料等を用いることももちろん可能である。
また、バルク状の誘電体セラミックから、板状の誘電体セラミックを切り出し、貼り付ける方法も可能であるが、板状セラミック材料の切り出し時に、高い精度の切削や研磨等の加工が必要であったり、誘電体材料を接着する際に接着剤としてエポキシ系樹脂あるいは低融点ガラス材料を使用した場合に、貼り合わせ工程で寸法誤差が生じやすいことや、界面の誘電率が変化したりするため、製造される誘電体フィルタのフィルタ特性に悪影響を与える場合がある。以上のことから、本第1実施形態においては、上述の製造方法あるいは上記コンポジット材料を使用した方法を採用することがより望ましい。
また、本実施例1の誘電体フィルタ401においては、上記夫々の層の形成厚さとして、高誘電率セラミック層402及び406の夫々の形成厚さが170μm、低誘電率セラミック層403及び405の夫々の形成厚さが510μm、高誘電率セラミック材料404の形成厚さが340μmと形成されており、また、上記夫々の形成厚さに直交する平面沿いの形成寸法(断面寸法)が、3.76mmx1.88mmに形成されている。なお、この断面寸法は、導波管規格WR−15に合致させたものである。
また、夫々の層の形成厚さは、基本的にはλg/4・ε−1/2で決定されており、また、上記夫々の層のうちの1つの層である中間層としての高誘電率セラミック層404の形成厚さはλg/2・ε−1/2で決定される値である。なお、実際には、上記夫々の値を若干操作することにより、中心波長の微調整を行うことができる。ただし、λgは導波管内の管内波長を表しており、本実施例1では、上記夫々の式から算出される値に基づいて、電磁界シミュレーター(Ansoft社:High Frequency Simulation System:HFSS)を用いて、周波数が約57GHzにおいて中心波長を持つように上記夫々の層の形成厚さの微調整を行うことにより、誘電体フィルタ401を設計している。
このようにして作製した誘電体フィルタ401を、導波管規格WR−1に基づいた導波管内に挿入し、ネットワークアナライザ(アンリツ:37200B)にて、誘電体フィルタ401の透過特性S21及び反射特性S11を測定した。この測定時におけるセットアップ模式図を図7に示す。
図7に示すように、被測定試料である誘電体フィルタ401は、測定用導波管502内に配置されており、同軸−導波管変換器503及び同軸線路504を介してネットワークアナライザ505と接続されている。
また、誘電体フィルタ401が配置されている近傍における測定用導波管502の部分拡大模式平面図を図8に示し、また、ネットワークアナライザ505による誘電体フィルタ401の測定結果を図9に示す。
図8に示すように、誘電体フィルタ401は、略角筒状の形状を有する測定用導波管502の内部に、測定用導波管502の内周面と誘電体フィルタ401の外周面とが隙間なく密着するように設置されている。また、誘電体フィルタ401の夫々の層の厚さ方向が、測定用導波管502の長手方向と一致するように、誘電体フィルタ401が設置されている。
また、図9に示すネットワークアナライザ505による誘電体フィルタ401の測定結果においては、横軸に周波数(GHz)を示し、縦軸に減衰量(dB)を示している。また、図9においては、誘電体フィルタ401のフィルタ特性として、夫々の周波数における反射特性S11及び透過特性S21を示している。図9によると、周波数約57.5GHzにおいて反射特性S11の下端点及び透過特性S21の上端点となっていることから、透過周波数は約57.5GHzであることが判る。また、この値は電磁界シミュレーターを用いて計算した結果と略同じ値であった。また、誘電体フィルタ401の透過特性S21は、上記透過周波数において、約0.2dB程度の損失であり、遮断されている周波数における減衰量、すなわち、アイソレーションが約25dBのフィルタ特性が得られた。
【実施例2】
次に、このような上記実施例1の誘電体フィルタ401の変形例として、実施例2にかかる低誘電率セラミック層と高誘電率セラミック層とが入れ替えて形成された誘電体フィルタについて説明する。このような変形例にかかる誘電体フィルタの一例である誘電体フィルタ601が、上述のフィルタ特性の測定装置における測定用導波管502内に設置された状態の模式説明図を図10に示す。
図10に示すように、誘電体フィルタ601は、上記誘電体フィルタ401における高誘電率セラミック層402、404、及び406と、低誘電率セラミック層403及び405と夫々の積層の順序を入れ替えて形成されたものである。具体的には、誘電体フィルタ601は、低誘電率セラミック層604を中間層として、その両面に高誘電率セラミック層603及び605を積層させ、さらに夫々に低誘電率セラミック層602及び606を積層させることにより、誘電体多層構造体を形成している。なお、誘電体フィルタ601の製造方法については、上述の実施例1の誘電体フィルタ401の製造方法と同じである。
このような構成の本実施例2の誘電体フィルタ601のフィルタ特性として、反射特性S11と透過特性S21とを図11に示す。なお、図11のフィルタ特性の図は、上述した図9と同様な軸構成となっている。図11に示すように、反射特性S11及び透過特性S21の夫々の特性曲線が、図9に示す上記実施例1の誘電体フィルタ401の特性曲線と比較して、ブロード状になっていることが判る。このことより、高誘電率層と低誘電率層とを組み合わせて、誘電体多層構造体を形成する場合、その中間層には高誘電率層を使用する方が、より急峻なフィルタ特性が得られ、帯域透過フィルタとしては望ましいことが判る。
さらに、急峻な透過特性を得るためには、選定される誘電体セラミック材料の周期数を大きくする(8周期程度)ことが望ましい。その際、誘電体セラミック材料単層の熱収縮係数や焼結後の収縮率に注意して上記誘電体多層構造体を形成する必要がある。上記ホットプレス工程における加熱による剥がれ等の発生による焼結不良を未然に防止するためである。
【実施例3】
次に、実施例3として、図10に示した上記実施例2の誘電体フィルタ601において、図12の誘電体フィルタ601の模式説明図に示すように、夫々の誘電体層の界面に複数の気泡(ポア)607がわずかに存在した場合のフィルタ特性として、透過特性S21及び反射特性S11を図13に示す。図13の特性曲線と、図11の特性曲線とを比較しても、透過特性S21及び反射特性S11に変化はないことが判る。従って、夫々の誘電体層の界面に数個程度のオーダーの気泡607が存在する程度であれば、これらの気泡607の存在がそのフィルタ特性に影響しないことが判る。
【実施例4】
さらに、実施例4として、図10に示した上記実施例2の誘電体フィルタ601において、図14の誘電体フィルタ601の模式説明図に示すように、夫々の誘電体層の外面と測定用導波管502の内面との間に空隙(隙間)608がわずかに存在した場合のフィルタ特性として、透過特性S21及び反射特性S11を図15に示す。図15の特性曲線と、図10の特性曲線とを比較すると、透過特性S21及び反射特性S11とが大幅に変化しており、空隙608の存在がそのフィルタ特性に大きく影響を与えることが判る。従って、誘電体フィルタ601を導波管に挿入する際には、上記誘電体多層構造体の外面と導波管の内壁面との間に空隙がなくなるように、導電性材料の一例である導電ペースト等を当該空隙に充填、例えば、ディスペンサ等を用いて充填して、当該空隙を埋めるなどの処理をする必要があることが判る。なお、実際には当該空隙を完全に埋めることが困難なことも考えられるため、当該空隙がより小さくなるように、当該空隙の一部に導電性ペースト等を充填するような場合であってもよい。
(チップ型の誘電体フィルタ701の構造及びその製造方法)
次に、上述のような夫々の実施例に基づいて説明した上記誘電体多層構造体を備えるような本第1実施形態のチップ型の誘電体フィルタ701の詳細な構造及びその製造方法について、図4及び図5を用いて以下に説明する。なお、誘電体フィルタ701が備える上記誘電体多層構造体の構成等については、既に説明した実施例1から実施例4を参照されながら理解されるべきである。
図4に示すように、誘電体フィルタ701において、夫々の高誘電率セラミック層703、705、及び707と、夫々の低誘電率セラミック層702、704、706、及び708とは、交互に積層された状態で、隣接する夫々の層同士が密接されている。すなわち、上記夫々の層の間には、他の材料、例えば、接着剤等が介在することなく、密着された状態とされている。さらに、上記夫々の層は、互いに略平行となるように形成され、かつ、積層されている。また、図4に示すように、低誘電率セラミック層702と高誘電率セラミック層703との間、及び、高誘電率セラミック層707と低誘電率セラミック層708との間に形成された夫々の内部電極709aは、その一端が、図示上方における夫々の層の端面より露出されるように形成されており、この露出部分に後述するように夫々の外部電極が接続されて形成され、金属電極709が形成されることとなる。なお、このような金属電極709は、当該金属電極709が設けられている誘電体層への、外部よりの電位の付加を目的とするものである。従って、夫々の金属電極709は、最終的には、誘電体フィルタ701の外部に露出されて、電位付加が可能な状態に形成される必要がある。
また、上記高誘電率セラミック材料としてBi−Ca−Nb−O系誘電体セラミック材料(BCN:比誘電率=59、tanδ=2.33x10−4)と、上記低誘電率セラミック材料として、Al−Mg−Sm−O系誘電体セラミック材料にガラスを混合したもの(AMSG:比誘電率=7.4、tanδ=1.11x10−4)とを用いている。また、このような材料の他に、MgSiOからなる結晶層とSi−Ba−La−B−O系ガラス層からなる誘電体セラミック材料(比誘電率=7)や、MgO−CaO−TiO系材料なども使用できる。
なお、上記誘電体多層構造体における高誘電率セラミック層703、705、及び707と、低誘電率セラミック層702、704、706及び708との層数あるいは誘電率等の物性値は、上述のような夫々の値に制限されるものではなく、種々の態様を取ることが可能である。特に、層数に関しては、上記誘電体多層構造体が、比誘電率が異なる2つ以上の誘電体層が積層されることにより形成されていればよく、本第1実施形態においては、7つの層により上記誘電体多層構造体が形成されている例となっている。
次に、このような誘電体フィルタ701の製造方法について説明する。まず、上記高誘電率セラミック材料であるBCNにより形成されたグリーンシート(未焼結生シート)状の夫々の高誘電率セラミック層703、705、及び707と、上記低誘電率セラミック材料であるAMSGにより形成されたグリーンシート状の夫々の低誘電率セラミック層702、704、706及び708とを、交互に積層させて、40℃の温度で29.4MPaの圧力で上記夫々の層を圧着する。その後、さらに加圧しながら、800℃以上1000℃以下の範囲、より好ましくは850℃から950℃の範囲のいずれかの温度で加熱して、上記夫々の層を互いに焼結させる(ホットプレス工程)。これにより、夫々の高誘電率セラミック層703、705、及び707と、夫々の低誘電率セラミック層702、704、706及び708とが、互いに密接されて積層された状態にて、焼結されて、一体的な上記誘電体多層構造体を形成することができ、誘電体フィルタ701を製造することができる。
また、図4に示すように、誘電体フィルタ701における上述した夫々の層間に、夫々の内部電極709aを形成する場合において、内部電極709aの形成材料として銅を用いる場合には、加湿した窒素雰囲気中で、また、上記形成材料として銀やパラジウムを用いる場合には、大気中で600℃−2時間処理してバインダを焼却し、その後、窒素雰囲気に切り替えて、上記ホットプレス工程を行う。
また、上記夫々のグリーンシートは、酢酸ブチルを溶媒としてジブチルフタレート、ポリビニルブチラール樹脂を溶かした溶液(バインダ)中に、粉末状の上記高誘電率セラミック材料又は上記低誘電率セラミック材料を加えて混合した後、シート状に形成したものである。また、このようなグリーンシートにおいて、銀、銅、又はパラジウムの各々の金属粉末と有機溶剤に溶解させた導電ペーストを、スクリーン製版を用いて印刷し乾燥させる工程でもって、上記グリーンシートの表面に付着させて、矩形状の内部電極709aのパターンを形成することができる。このような形成方法は、高周波用多層セラミック基板やセラミックコンデンサ等を製造するときに用いられている。
なお、本第1実施形態では、誘電体として、誘電体セラミック材料を使用しているが、フッ素樹脂あるいはポリカーボネートなどの樹脂材料にTiOあるいはAl等の粉体を分散させたコンポジット材料等を用いることももちろん可能である。
また、バルク状の誘電体セラミックから、板状の誘電体セラミックを切り出し、貼り付ける方法も可能であるが、板状セラミック材料の切り出し時に高い精度の切削、研磨等の加工が必要であったり、誘電体材料を接着する際に接着剤としてエポキシ系樹脂あるいは低融点ガラス材料を使用した場合に、貼り合わせ工程で寸法誤差が生じやすいことや、界面の誘電率が変化したりするため、製造される誘電体フィルタのフィルタ特性に悪影響を与える場合がある。以上のことから、本第2実施形態においては、上述の製造方法あるいは上記コンポジット材料を使用した方法を採用することがより望ましい。
また、上記夫々の誘電体層の形成材料として、AMSG、BCNやZTG(Zn−Ti−ガラス)、BNT(Ba−Nb−Ti−ガラス)(なお、ガラスの主成分は、PbO,B,SiOである)をはじめとする、LTCC(Low Temperature Co−fired Ceramic)基板に用いられる誘電体セラミック材料を使用することにより、その焼結温度を低くすることができるため、内部電極709aの形成材料として、導電率が高い銀や銅系の金属を使用することができるのでより望ましい。
また、本第1実施形態の誘電体フィルタ701においては、上記夫々の層の形成厚さとして、高誘電率セラミック層703及び707の夫々の形成厚さが170μm、低誘電率セラミック層704及び706の夫々の形成厚さが510μm、さらに、高誘電率セラミック層705の形成厚さが340μmと形成されており、また、上記夫々の形成厚さに直交する平面沿いの形成寸法が(断面寸法)が、3.76mm x 1.88mmに形成されている。
また、誘電体フィルタ701において、夫々の内部電極709aは、一方の端面が高誘電率セラミック層703と低誘電率セラミック層702との境界面に位置するように、低誘電率セラミック層702に埋め込まれて形成、あるいは、一方の端面が高誘電率セラミック層707と低誘電率セラミック層708と共界面に位置するように、低誘電率セラミック層708に埋め込まれて形成されている。そのため、低誘電率セラミック層702及び708の夫々の形成厚さは、夫々の内部電極709aの上記一方の端面と、誘電体フィルタ701の終端面との間の距離となるため、夫々の内部電極709aのインピーダンスが50オーム程度となるように、上記夫々の層の形成厚さを定める必要がある。一般的にはλg/4√ε程度の距離として決定されることが多く、本第2実施形態においては、低誘電率セラミック層702及び708の夫々の形成厚さが、約500μmとして形成されている。
上述のような形成方法にて、上記誘電体多層構造体が形成された後、図5に示すように、夫々の内部電極709aの上記露出部分を除いて、上記誘電体多層構造体の外面全体を覆うように、金属により形成された導波管710(あるいは金属薄膜710)を形成する。それとともに、夫々の内部電極709aの上記夫々の露出部分に、同様な金属材料により形成されている夫々の外部電極709bを接続させて形成し、上記誘電体多層構造体の外面に突起された状態の夫々の金属電極709を形成する。なお、導波管710は、上記誘電体多層構造体の外面に、金属粉末と有機溶剤とを混合した金属ペーストを塗布するか、電子ビーム蒸着法・スパッタ法等で堆積するなどして形成するのが望ましい。なお、上記誘電体多層構造体の外面への導波管710の形成は、例えば、上記誘電体多層構造体を透過される、若しくは上記誘電体多層構造体にて透過されずに反射されるマイクロ波やミリ波が、上記誘電体多層構造体より放射されないようにすることを目的としたものである。また、夫々の金属電極709と、上記誘電体多層構造体の外面に形成された導波管710とは、互いに電気的な絶縁が取られているため、互いの金属電極709が導波管710を介して電気的に導通されることはない。なお、このようにして形成される導波管710(金属薄膜710、若しくは金属)の厚みは、導通を確認することができれば、例えば、数百Å程度とすることも可能である。ただし、実際には、上記導通以外の機能、例えば、表皮効果や耐久性を考慮すれば、数十μm以上の厚みとすることが望ましい。
なお、上記においては誘電体フィルタ701に2つの金属電極709が形成されている場合について説明したが、このような場合に限定されるものではなく、少なくとも1つの金属電極709が形成されているような場合であればよい。また、夫々の内部電極709aは、上記夫々の層間に形成されているような場合のみに限定されるものではなく、このような場合に代えて、上記いずれかの層の内部に形成されているような場合であってもよい。いずれかの層に関連されて内部電極709aが形成されていれば、電極としての機能を果たし得るからである。
また、上記誘電体多層構造体の外面全体を覆うように導波管710が形成されているような場合に代えて、導波管710、すなわち、金属薄膜710が上記外面の一部を覆うように形成されているような場合であってもよい。当該覆われていない外面を、誘電体フィルタ701以外の構造物で覆うような場合も考えられるからである。また、上記外面の一部を遮蔽して、一部を遮蔽せずに、当該遮蔽されていない部分より積極的にマイクロ波やミリ波を放射させるような使い方も考えられる。例えば、図5において、図示左右方向に互いに対向する夫々の側面において、金属薄膜710が形成されていないような場合がある。
このような製造方法により、チップ型の誘電体フィルタ701が完成する。このようにして作製されたチップ型の誘電体フィルタ701におけるフィルタの透過特性S21、及び反射特性S11を、上記第1実施形態で用いたネットワークアナライザ(アンリツ:37200B)にて測定した。この測定結果を図16に示す。なお、図16においては、横軸に周波数(GHz)を示し、縦軸に減衰量(dB)を示している。図16に示すように、周波数約57.5GHzにおいて、反射特性S11の下端点、及び透過特性S21の上端点となっていることから、透過周波数は約57.5GHzであることが判る。また、上記透過周波数において−7.5dB程度の損失があり、遮断されている周波数における減衰量、すなわち、アイソレーションについては、−25dB(ただし、この数値は図示しない)の反射特性が得られた。
さらに急峻な透過特性を得るためには、選定される夫々の誘電体セラミック材料の周期数を大きくする(8周期程度)ことが望ましい。その際に、誘電体セラミック材料単層の熱収縮係数や焼結後の収縮率に注意して上記誘電体多層構造体を形成する必要がある。上記ホットプレス工程における加熱による剥がれ等の発生による焼結不良を未然に防止するためである。
また、夫々の誘電体層の夫々の面が互いに略平行になるように積層されて上記誘電体多層構造体が形成されているが、このような場合に限定されるものではなく、後述するように夫々の誘電体層がテーパー形状(非平行)となっている方がより好ましい場合もある。
さらに、金属電極709の形状については、図4及び図5に示す形状は一例であり、これら以外に様々形状を取り得ることは言うまでもない。
本発明の上記第1実施形態によれば、以下のような種々の効果を得ることができる。
まず、上述のように、光学における多重反射の原理(例えば、電磁波の多重反射の原理)を用いて、誘電体フィルタを形成することにより、電磁波の透過/反射特性(フィルタ特性)は、夫々の誘電体層の形成厚さのみで決定されることとなる。そのため、上記夫々の誘電体層の形成厚みを、例えば、セラミックコンデンサの製造等で用いられる層の形成厚さを精密に決定する技術を使用することにより、比較的精度の高い誘電体フィルタの上記誘電体多層構造体を形成することができる。
具体的には、例えば、実施例1のように誘電体フィルタ401における上記誘電体多層構造体を形成する際に、従来の製造方法にように、バルク状の誘電体セラミックから、板状の誘電体セラミックを切り出(切削)して、夫々の表面を研磨した上で、互いを貼り付けて形成しているのではなく、本第1実施形態においては、誘電体セラミック材料により形成されたグリーンシート状の夫々の誘電体層を互いに圧着して、その後、さらに、加圧しながら所定の温度条件にて加熱して焼結させることにより上記誘電体多層構造体を形成しているため、高い精度での上記切削や上記研磨等の加工を不要とすることができる。従って、従来の上記誘電体多層構造体の製造方法と比べて、容易に製造することが可能となる。
また、上記従来の製造方法のように、上記夫々の誘電体層を接着剤等を介して接着するのではなく、上述のように、互いに圧着して焼結させることにより、上記夫々の誘電体層の積層を行っているため、上記夫々の誘電体層の層間に他の物質が介在されることがなく、上記夫々の層間の界面の誘電率が変化したりすることもなく、誘電体フィルタ401を確実に製造することができる。従って、製造される誘電体フィルタ401のフィルタ特性の品質を安定させることができ、より信頼性の高い誘電体フィルタを製造することができる。また、さらに、上記フィルタ特性の品質を安定させることができるため、導波管への取り付け等の際に、非常に高い技術を要する調整作業を不要とすることができる。
また、誘電体フィルタ401における上記誘電体多層構造体を形成する夫々の誘電体セラミック材料として、その焼結温度が800℃から1000℃までの範囲のものを用い、この温度条件にて加熱して上記焼結を行うことにより、上記夫々の層の熱膨張差を少なく抑えることができ、上記夫々の層の剥がれの発生を防止することができ、製造される誘電体フィルタ401の品質を安定させることができる。
また、誘電体フィルタ401において、互いに比誘電率が異なる2種類の誘電体層として、例えば、実施例1にように、高誘電率セラミック層402、404、及び406と、低誘電率セラミック層403及び405とが積層されて形成されていること、及び、夫々の層の形成厚さが、基本的にはλg/4・ε−1/2で決定されており、中間層である高誘電率セラミック層404の形成厚さはλg/2・ε−1/2で決定されていることにより、所定の波長帯域の周波数のみを透過させる帯域透過フィルタとしての特性を、誘電体フィルタ401に備えさせることができる。また、このような誘電体フィルタ401は、マイクロ波用フィルタやミリ波用フィルタとして用いることができる。
また、高誘電率セラミック層と低誘電率セラミック層とを組み合わせて積層させて上記誘電体多層構造体を形成する場合に、その中間層として上記低誘電率セラミック層を用いる場合と比べて、上記中間層として上記高誘電率セラミック層を用いる方が、より急峻なフィルタ特性曲線を得ることができ、帯域透過フィルタとして良好な誘電体フィルタを提供することができる。
また、夫々の誘電体層の形成材料における比誘電率の差を、少なくとも10以上、好ましくは20以上とすることにより、誘電体フィルタ401のQ値(Quality Factor)を大きくすることができる。例えば、比誘電率差が10以下である、AMSGとZrO−TiO系ガラス(ZTG:ε=17)の組み合わせにより周期数3の誘電体フィルタを形成した場合には、その負荷Q値は23.1(無負荷Q値は2024)となるが、比誘電率の差が20以上となる、AMSGとBCNの組み合わせにより周期数3の誘電体フィルタを形成した場合には、その負荷Q値が51(無負荷Q値は5000)となり、約2倍の負荷Q値を得ることができる。以上から分かるように、上記第1実施形態では、上記高誘電率セラミック材料と上記低誘電率セラミック材料との夫々の比誘電率の差が、20以上となるように夫々の材料の選定を行なっていることによって、より少ない積層数で、誘電体フィルタ401のQ値を大きくすることができる。これにより、誘電体フィルタ401のフィルタ特性の急峻性を向上させることを可能としながら、上記高誘電率セラミック材料と上記低誘電率セラミック材料との積層数を少なくして、誘電体フィルタ401のさらなる小型化を実現可能とすることができる。
さらに、上記誘電体多層構造体におけるいずれかの誘電体層間(あるいは内部)に、金属電極709を形成して、その外面全体を導波管(金属薄膜)710で覆って遮蔽させることにより、チップ型の誘電体フィルタ701を形成することができる。このようにチップ型の誘電体フィルタ701を形成することにより、上記誘電体多層構造体による小型化された形状とすることができるとともに、夫々の金属電極709が内蔵されて、かつ、外面が導波管(金属薄膜)710により遮蔽されて、導波管−マイクロストリップ変換を不要とすることができ、さらなる小型化が実現可能となる。従って、このようなチップ型の誘電体フィルタ701を、超小型の回路形成体(例えば、回路基板)に直接実装することができ、かつ、非常に高い加工精度が要求される誘電体や筐体の加工を必要とせずに、マイクロ波帯用やミリ波帯用のフィルタを提供することが可能となる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態にかかる誘電体フィルタ及び誘電体フィルタの製造方法により製造された誘電体フィルタの一例である導波管型の誘電体フィルタ801について説明する。この誘電体フィルタ801は、夫々の誘電体層の形成厚さを連続的に変化させることにより、リターンロスを大きくしたフィルタ素子の例である。本第2実施形態においては、夫々の誘電体層の形成厚さを連続的に変化させている。このような構造の誘電体フィルタ801の構造を模式的に示す模式説明図を図17に示す。
図17に示すように、誘電体フィルタ801は、導波管規格WR−15に合致された導波管810内に設置されており、この導波管810の内部にて、高誘電率セラミック層(BCNを高誘電率セラミック材料として形成)802、804、及び806と、低誘電率セラミック層(AMSGを低誘電率セラミック材料として形成)803及び805とが交互に積層された誘電体多層構造体となっているが、上記夫々の層の厚みが連続的に変化、すなわち、傾斜的に変化されている。具体的には、高誘電率セラミック層802及び806の夫々は、最も厚い部分の形成厚さが0.17mmであり、かつ、最も薄い部分の形成厚さが0.13mmとなっている。また、低誘電率セラミック層803及び805の夫々は、最も厚い部分の形成厚さが0.51mmであり、かつ、最も薄い部分の形成厚さが0.45mmとなっている。さらに、中間層でもある高誘電率セラミック層804は、最も厚い部分の形成厚さが0.34mmであり、最も薄い部分の形成厚さが0.25mmとなっている。なお、このような形成厚さの傾斜的な変化は、その形成厚さの最小値が最大値の60%〜70%以上となるように変化されていることが好ましい。より具体的には、60%〜95%の範囲とすることで傾斜効果を得ることができ、さらに70%〜90%の範囲とすることが望ましい。基本となる上記形成厚さを大きく逸脱して変化させると、フィルタとしての特性を損なうばかりか、所望のフィルタ特性を得ることも不可能となるため、このように形成厚さの変化範囲条件を定めることが望ましい。また、図17に示すように、上記夫々の誘電体層の形成厚さは、図示上方に向かうほど薄くなり、図示下方に向かうほど厚くなるように形成されている。また、上記夫々の誘電体層の断面形状はくさび状となっており、上記第1実施形態のように、上記夫々の誘電体を略平行に配置した場合と比較して、誘電体フィルタ801に入射された電磁波は複雑な経路を取り、上記夫々の誘電体層内を通過するような形状となっている。なお、このような夫々の誘電体層の傾斜の角度は、例えば、導波管810の長手方向に直交する平面に対して、45度以内程度の傾斜角度であることが好ましい。また、このような夫々の誘電体層の傾斜は、膜面内一方向だけでなく、二方向とする場合であっても有効である。
また、本第2実施形態においては、上記第1実施形態と同様に、上記高誘電率セラミック材料としてBi−Ca−Nb−O系誘電体セラミック材料(BCN:比誘電率=59、tanδ=2.33x10−4)と、上記低誘電率セラミック材料として、Al−Mg−Sm−O系誘電体セラミック材料にガラスを混合したもの(AMSG:比誘電率=7.4、tanδ=1.11x10−4)とを用いている。また、このような材料の他に、MgSiOからなる結晶層とSi−Ba−La−B−O系ガラス層からなる誘電体セラミック材料(比誘電率=7)や、MgO−CaO−TiO系材料なども使用できる。
なお、上記誘電体多層構造体における高誘電率セラミック層802、804、及び806と、低誘電率セラミック層803及び805との層数あるいは誘電率等の物性値は、上述のような夫々の値に制限されるものではなく、種々の態様を取ることが可能である。特に、層数に関しては、上記誘電体多層構造体が、比誘電率が異なる2つ以上の誘電体層が積層されることにより形成されていればよく、本第3実施形態においては、5つの層により上記誘電体多層構造体が形成されている例となっている。
次に、このような誘電体フィルタ801の製造方法について説明する。まず、上記高誘電率セラミック材料であるBCNにより形成されたグリーンシート(未焼結生シート)状の夫々の高誘電率セラミック層802、804、及び806と、上記低誘電率セラミック材料であるAMSGにより形成されたグリーンシート状の夫々の低誘電率セラミック層803及び805とを、交互に積層させて、40℃の温度で29.4MPaの圧力で上記夫々の層を圧着する。その後、さらに加圧しながら、800℃以上1000℃以下の範囲、より好ましくは850℃から950℃の範囲のいずれかの温度で加熱して、上記夫々の層を互いに焼結させる(ホットプレス工程)。これにより、夫々の高誘電率セラミック層802、804、及び806と、夫々の低誘電率セラミック層803及び805とが、互いに密接されて積層された状態にて、焼結されて、一体的な上記誘電体多層構造体を形成することができ、誘電体フィルタ801を製造することができる。なお、誘電体フィルタ801における上記誘電体多層構造体の製造方法は上記第1実施形態に記載の方法と略同様であるが、上記夫々の誘電体層の断面形状をくさび形とするために、傾斜的に厚さを変化させたグリーンシートを使用し、かつ、上記夫々の誘電体層の互いの接合面沿いの方向において、圧着圧力を傾斜的に変化させることにより、上記くさび形の夫々の誘電体層の形状を得ることを可能としている。
このようにして作製された誘電体フィルタ801におけるフィルタの透過特性S21、反射特性S11を、上記第1実施形態で用いたネットワークアナライザ(アンリツ:37200B)にて測定した。この測定結果を図18に示す。なお、図18においては、横軸に周波数(GHz)を示し、縦軸に減衰量(dB)を示している。図18に示すように、周波数約57.3GHzにおいて、反射特性S11の下端点、及び透過特性S21の上端点となっていることから、透過周波数は約57.3GHzであることが判る。また、上記透過周波数において、0.2dB程度の損失があり、また、リターンロスは、上記夫々の誘電体層の形成厚さを一定とした場合(上記第1実施形態における図9)は−15dB程度であったが、本第2実施形態の場合では−22dB程度であり、透過帯域での誘電体層の表面による反射損が低減されていることが明らかに判る。このようなフィルタ特性が得られる理由としては、電界が誘電体層内部を伝搬する際、層の形成厚さが薄くなっている部分に電界集中が発生するためである。
また、上記第1実施形態の場合と同様に、本第2実施形態においても、さらに急峻な透過特性を得るためには、選定される夫々の誘電体セラミック材料の周期数を大きくする(8周期程度)ことが望ましい。その際に、誘電体セラミック材料単層の熱収縮係数や焼結後の収縮率に注意して上記誘電体多層構造体を形成する必要がある。上記ホットプレス工程における加熱による剥がれ等の発生による焼結不良を未然に防止するためである。
なお、本第2実施形態は誘電体フィルタ801を導波管810内に挿入し、導波管型の誘電体フィルタ801として形成する場合について述べたが、このような場合に代えて、上記第1実施形態に示したようなチップ型の誘電体フィルタとして形成することも可能である。
上記第2実施形態によれば、上記夫々の実施形態による効果に加えて、さらに、上記誘電体多層構造体を形成する際に、上記夫々の誘電体層に形成厚さを意図的に変化させていることにより、電界が上記誘電体多層構造体を伝搬される際に、上記夫々の誘電体層の形成厚さが薄くなっている部分に電界集中を発生させることができ、これにより、透過帯域での誘電体層の表面による反射損が低減されるというフィルタ特性を有する誘電体フィルタを提供することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態にかかる誘電体フィルタ及び誘電体フィルタの製造方法により製造された誘電体フィルタの一例である誘電体フィルタ901について説明する。誘電体フィルタ901は、上記第1実施形態の誘電体フィルタ(例えば、誘電体フィルタ401)を複数個直列に接続することにより形成された誘電体フィルタの例である。また、この誘電体フィルタ901の構造を模式的に示す模式説明図を図19に示す。
図19に示すように、誘電体フィルタ901は、上記誘電体多層構造体である第1の多層セラミック構造体10、第2の多層セラミック構造体20、第3の多層セラミック構造体30の3つの上記誘電体多層構造体が、直列に接続された構造となっている。また、夫々の上記誘電体多層構造体は、上述の夫々の実施形態において説明したように、高誘電率セラミック材料により形成された高誘電率セラミック層11、13、22、24、26、28、31、及び33と、低誘電率セラミック材料により形成された低誘電率セラミック層12、21、23、25、27、29、及び32とが夫々交互に積層されることにより形成されている。
また、本第3実施形態においては、高誘電率セラミック材料としてBi−Ca−Nb−O系誘電体セラミック材料(BCN:比誘電率=59、tanδ=2.33x10−4)と、低誘電率セラミック材料として、Al−Mg−Sm−O系誘電体セラミック材料にガラスを混合したもの(AMSG:比誘電率=7.4、tanδ=1.11x10−4)とを用いている。また、このような材料の他に、MgSiOからなる結晶層とSi−Ba−La−B−O系ガラス層からなる誘電体セラミック材料(比誘電率=7)やMgO−CaO−TiO系材料なども使用できる。
なお、誘電体セラミック材料の層数あるいは誘電率等の物性値はこのような値に制限されるものではなく、種々の態様を取ることが可能である。特に、層数に関しては、上記夫々の誘電体多層構造体が、比誘電率が異なる2つ以上の誘電体層が積層されることにより形成されていればよい。
また、本第3実施形態における誘電体フィルタ901の形成方法は、上記第1実施形態に記載した方法と同様である。この際に、夫々の多層セラミック構造体10、20、及び30を、夫々個別に焼結した後、低誘電率セラミック層21又は29を介して、夫々の多層セラミック構造体10、20、及び30を互いに圧着しながら再焼結させることにより、夫々の多層セラミック構造体10、20、及び30を一体化することができる。また、このような場合に代えて、上記夫々の誘電体層を積層させて、1回の焼結で一体的に形成するような場合であってもよい。ただし、積層される層数が多くなるような場合にあっては、上記焼結の際に剥離やクラックが発生しやすくなるため、夫々の多層セラミック構造体を個別に焼結した後に、夫々を接続して一体的な誘電体フィルタを形成することが望ましい。
また、本第3実施形態では、誘電体層を形成する材料として、誘電体セラミック材料を使用しているが、フッ素樹脂あるいはポリカーボネートなどの樹脂材料にTiOあるいはAl等の誘電体の粉体を分散させたコンポジット材料等を用いることももちろん可能である。
また、バルク状の誘電体セラミックから、板状の誘電体セラミックを切り出し、貼り付ける方法も可能であるが、板状セラミック材料の切り出し時に高い精度の切削、研磨等の加工が必要であったり、誘電体材料を接着する際に接着剤としてエポキシ系樹脂あるいは低融点ガラス材料を使用した場合に、貼り合わせ工程で寸法誤差が生じやすいことや、界面の誘電率が変化したりするため、製造される誘電体フィルタのフィルタ特性に悪影響を与える場合がある。以上のことから本第4実施形態においては、上述の製造方法あるいは上記コンポジット材料を使用した方法を採用することがより望ましい。
また、このように作製される誘電体フィルタ901における夫々の層の形成厚さは、第1の多層セラミック構造体10及び第3の多層セラミック構造体30においては、夫々の高誘電率セラミック層11、13、31及び33の形成厚さが0.179mmであり、夫々の低誘電率セラミック層12及び32の形成厚さが4.044mmとなっている。また、第2の多層セラミック構造体20においては、夫々の高誘電率セラミック層22、24、26、及び28の形成厚さが0.179mmであり、低誘電率セラミック層23及び27の形成厚さが0.5055mmであり、中間層でもある低誘電率セラミック層25の形成厚さが3.033mmとなっている。なお、夫々の多層セラミック構造体10、20、及び30を接続する低誘電率セラミック層21及び29の形成厚さは0.5055mmとなっている。また、このような構成における第1の多層セラミック構造体10及び第3の多層セラミック構造体30の負荷Q値は118(無負荷Q値は6900)であり、第2の多層セラミック構造体20の負荷Q値は57(無負荷Q値は4400)である。
なお、上記第1実施形態及び上記第2実施形態においては、上記誘電体多層構造体が1つのみの場合であり、このような場合にあっては、中間層は高誘電率材料とするのが望ましい。しかしながら、本第3実施形態の誘電体フィルタ901のように、多層セラミック構造体を多数接続する場合においては、透過帯域でのリップルを低減することができるという理由から低誘電率材料を中間層とすることが望ましい。
次に、このような誘電体フィルタ901の多層セラミック構造体の内部に給電用電極の一例である金属電極909を形成した場合の構造を示す模式説明図を図20及び図21に示す。
図20に示すように、第1の多層セラミック構造体10における高誘電率セラミック層11の外側表面、及び第3の多層セラミック構造体30における高誘電率セラミック層33の外側表面の夫々には、金属電極909の一部となる内部電極909aが夫々形成されている。また、高誘電率セラミック層11の外側表面、及び高誘電率セラミック層33の外側表面には、低誘電率セラミック層40及び50が形成されており、夫々の内部電極909aが夫々の低誘電率セラミック層40及び50に埋め込まれた構造となっている。また、低誘電率セラミック層40及び50の夫々の形成厚さは、夫々の内部電極909aの夫々の高誘電率セラミック層11又は33側の端面と、低誘電率セラミック層40及び50の夫々の終端との間の距離となるため、夫々の内部電極909aのインピーダンスが50オーム程度となるように、上記夫々の層の形成厚さを定める必要がある。一般的にはλg/4√ε程度の距離として決定されることが多く、本第4実施形態においては、低誘電率セラミック層40及び50の夫々の形成厚さが、約500μmとして形成されている。なお、夫々の内部電極909aの一端は、誘電体フィルタ901の外面より露出された状態とされている。
さらに、夫々の内部電極909aを含んだ誘電体フィルタ901が形成された後、図21に示すように、夫々の内部電極909aの上記露出部分を除いて、誘電体フィルタ901の外面全体を覆うように、金属により形成される遮蔽部の一例である導波管910(あるいは金属薄膜910)を形成する。それとともに、夫々の内部電極909aの上記露出部分に、同様な金属材料により形成されている夫々の外部電極909bを接続させて形成し、誘電体フィルタ901の外面に突起された状態の夫々の金属電極909を形成する。なお、導波管910は、誘電体フィルタ901の外面に、金属粉末と有機溶剤とを混合した金属ペーストを塗布するか、電子ビーム蒸着法・スパッタ法等で堆積するなどして形成するのが望ましい。
また、本実施例で使用した、AMSG、BCNやZTG、BNTをはじめとする、LTCC(Low Temperature Co−fired Ceramic)基板に用いられる誘電体セラミック材料を使用した場合、焼結温度を低くすることができるため、内部電極として導電率が高い銀・銅系の金属を使用する事ができるのでより望ましい。
このように誘電体フィルタ901に夫々の金属電極909が形成されて、かつ、外面が導波管910により遮蔽されたチップ型の誘電体フィルタ901が完成する。このようにして作製されたチップ型の誘電体フィルタ901におけるフィルタの透過特性S21、及び反射特性S11を、上記第1実施形態で用いたネットワークアナライザ(アンリツ:37200B)にて測定した。この測定結果を図22に示す。なお、図22においては、横軸に周波数(GHz)を示し、縦軸に減衰量(dB)を示している。図22に示すように、周波数約56.4GHzにおいて、反射特性S11の下端点であり、かつ、透過特性S21の上限値となっていることから、透過周波数は約56.4GHzであることが判る。また、上記透過周波数において0.5dB以下の損失があり、遮断されている周波数においても減衰量が50dBという反射特性が得られた。さらに、透過帯域(−3dBとなる周波数のバンド幅)も600MHz程度(56.1GHz〜56.7GHz)のものが得られている。
なお、本第3実施形態の誘電体フィルタ901においては、夫々の誘電体層の夫々の接合面が互いに略平行になるように形成されているが、このような場合に限定されるものではなく、このような場合に代えて、例えば、上記第2実施形態における誘電体フィルタ810のように、夫々の誘電体層がテーパー形状(非平行)となっている方がより好ましい場合もある。また、夫々の金属電極909の形状は、図20及び図21に示すような形状にのみ限定されるものではなく、それ以外にも様々な形態を取ることが可能であることは言うまでもない。
上記第3実施形態によれば、上記第1〜第3実施形態による夫々の効果を得ることができるとともに、さらに加えて、上記第1実施形態及び第2実施形態のように、1つの上記誘電体多層構造体により形成されている誘電体フィルタでは困難であった透過帯域を広く取ることが、上記第3実施形態の誘電体フィルタ901では可能となり、例えば、無線通信用フィルタとして優れた特性を得ることが可能となる。
また、誘電体フィルタ901において、第1の多層セラミック構造体10及び第3の多層セラミック構造体30の夫々に、金属電極909を形成し、かつ、誘電体フィルタ901の外面全体を覆うように金属薄膜910を形成し、誘電体フィルタ901とその外部とを遮蔽することにより、導波管−マイクロストリップ変換を不要とすることができ、さらなる小型化が実現可能なチップ型の誘電体フィルタを形成することができる。従って、超小型の回路基板に直接実装可能であり、かつ非常に高い加工精度が要求される誘電体や筐体の加工を必要としないマイクロ波帯又はミリ波帯用の誘電体フィルタを提供することが可能となる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態にかかる誘電体フィルタ及び誘電体フィルタの製造方法により製造された誘電体フィルタの一例である誘電体フィルタについて説明する。本第4実施形態においては、誘電体フィルタが有する給電用電極が特徴的な構造を有していることにより、以下の説明においては、この給電用電極の構造の説明を中心に行なうものとする。なお、この誘電体フィルタにおける上記給電用電極以外の構成、すなわち、夫々の誘電体層の積層構造である誘電体多層構造体の構成、及び当該誘電体多層構造体への上記給電用電極の配置位置等の構成については、上記第1実施形態から上記第3実施形態までの夫々の誘電体フィルタと同様な構成を採ることができる。
まず、本第4実施形態の一実施例にかかる誘電体フィルタとして、給電用電極の一例である矩形電極1002が、上記夫々の実施形態にかかる誘電体フィルタ1001に用いられた状態を示す模式説明図を図25に示す。さらに、図25に示すような矩形電極1002が誘電体フィルタ1001に用いられるような場合において、矩形電極1002に所定の電位を印加したときの誘電体フィルタ1001内に生じる電気力線P1を示す模式説明図を図28に示す。なお、図28は、図25の誘電体フィルタ1001における夫々の誘電体層の積層方向の縦断面を用いた模式説明図となっている。
図28に示すように、矩形電極1002を構成する四角柱の稜となる部分から電気力線P1が生じるため、矩形電極1002の図示夫々の側面の接合部である稜部分よりは、図示左右方向の電気力線P1が生じ、矩形電極1002の図示上面の周部の稜部分よりは、図示上向きあるいは上向きよりも傾斜された方向の電気力線P1が生じている。このような夫々の電気力線P1が形成されることにより、矩形電極1002の近傍における広い範囲において、電気力線の乱れが生じることとなり、誘電体フィルタ1001において所望のTE10モードを得るまでに、図28に示すように距離L1が必要となる。このような距離L1の確保の必要性は、誘電体フィルタ1001のサイズの大型化を招くこととなるとともに、誘電体フィルタ1001に導入する途中での電界放射が大きいこと(すなわち、矩形電極1002における誘電体フィルタ1002内への挿入配置部分以外に部分からも大きな電界放射が行なわれること)から伝送ロスが大きくなるという問題を招くことになる。
次に、本第4実施形態の別の実施例にかかる誘電体フィルタとして、給電用電極の別の例にかかる円柱電極1003が、上記夫々の実施形態にかかる誘電体フィルタ1001に用いられた状態を示す模式説明図を図26に示す。さらに、図26に示すような円柱電極1003が誘電体フィルタ1001に用いられるような場合において、円柱電極1003に所定の電位を印加したときの誘電体フィルタ1001内に生じる電気力線P2を示す模式説明図を図29に示す。なお、図29は、図26の誘電体フィルタ1001における夫々の誘電体層の積層方向の縦断面を用いた模式説明図となっている。
図29に示すように、このような円柱電極1003においては、当該円柱の周面部分よりは電気力線を生じることはなく、当該円柱の端面部分から電気力線P2を生じるため、円柱電極1003の図示上面より、図示上向き及び上向きよりも傾斜された方向の電気力線P2が生じている。このように電気力線P2が形成されることにより、円柱電極1003より誘電体フィルタ1003に導入する途中での電界放射が小さく伝送ロスを低減可能であるとともに、図28の矩形電極1002における電界分布と比較すると電界分布が幾分改善されていることが判る。しかしながら、誘電体フィルタ1001において所望のTE10モードが得られるまでの距離L2は、矩形電極1002の場合の距離L1と略同じである。よって、このような円柱電極1003を用いるような場合であっても、誘電体フィルタ1001のサイズの小型化を図ることが困難であるという問題がある。
そこで、本発明の目的を達成しながら、給電用電極の構造的な特徴に基づく上記夫々の問題点の解決を図り、給電用電極における伝送ロスの低減と、当該給電用電極の周囲に生じる電気力線の乱れの低減とを併せて実現することにより、誘電体フィルタにてTE10モードが得られるまでの必要距離を小さくし、誘電体フィルタ形状のさらなる小型化を図ることを可能とする本第4実施形態のより望ましい実施例にかかる誘電体フィルタについて以下に説明する。
本第4実施形態のより望ましい実施例にかかる誘電体フィルタ1101に備えられた給電用電極の一例である電極1102の模式的な構造を示す模式説明図を図27に示す。
図27に示すように、電極1102は、伝送ロスが少ないという周面部分を有する円柱部材の一例である円柱電極部1103と、この円柱電極部1103の先端部分に接続され、当該先端部分での電界放射特性を改善するための矩形部材の一例である矩形平板電極部1104とを備えている。また、円柱電極部1103の図示下方側の端部1103aは、誘電体フィルタ1101の外部に露出された状態とされており、端部1103aに電位を印加することが可能となっている。従って、端部1103aは給電用端子の役割を担っている。また、円柱電極部1103の図示上方側の端部1103bは、誘電体フィルタ1101内に配置されており、この端部1103bに矩形平板電極部1104の略中央部分が接続されている。また、円柱電極部1103は、その軸心が、誘電体フィルタ1101における夫々の誘電体層の積層方向と略直交するように配置されており、矩形平板電極部1104は、上記積層方向と略直交し、かつ、円柱電極部1103の上記軸心とも略直交するように延材して配置されている。従って、円柱電極部1103と矩形平板電極部1104により構成される電極1102は、全体として略T字型状に形成されている。なお、矩形平板電極部1104は誘電体フィルタ1101の内部に配置されている。
このような概略構成を有する電極1102の寸法、材質等の詳細な構成について説明する。電極1102における円柱電極部1103の寸法は、例えば、入力インピーダンスが50オームとなるように形成されており、直径170μmとなるように金属加工したチタンで形成されている。また、円柱電極部1103の長さ寸法については、誘電体フィルタ1101との入出力結合度に関係しているが、長さ寸法を変更することで入力インピーダンスが大きく変化することはなく、円柱電極部の端部1103bに矩形状平板構造(すなわち、矩形平板電極部1104)を設けた場合も大きく変化することはないため、端部1103bの形状が変化しても共通に使用できる。円柱電極部1103における誘電体フィルタ1101の内部への埋め込み長さ寸法は、誘電体層の高さ(すなわち、図27の図示上下方向の寸法)の1/2を超えた場合には高次モードが接近するとともにモードが乱れるため、誘電体層高さの1/2程度とすることが望ましい。
次に、電極1102における矩形平板電極部1104の構造について、図30に示す電極1102の拡大模式図、及び図31の模式説明図を用いて詳細に説明する。
図30に示すように、矩形平板電極部1104は、その平板状の略中央部分において、円柱電極部1103の上方側の端部1103bに接続されており、この矩形平板電極部1104における幅寸法wは、円柱電極部1103の直径と同一とすることが望ましい。この理由としては、幅寸法wが上記直径と異なるような場合にあっては、当該接続の部分において稜部分を増やすことととなり、電気力線の発生点が増加して、電気力線を乱す原因となるためである。
また、矩形平板電極部1104の長さ寸法lは、誘電体フィルタ1101の誘電体幅Sの85%以下とすることが望ましい。このような理由としては、誘電体幅Sを同一とした場合には、電極1102の端部と誘電体フィルタ1101の外表面に形成される金属薄とが接触する可能性が高くなるため、このような接触を生じると誘電体フィルタとして全く役目を果たさなくなるのは明らかであるためである。また、矩形平板電極部1104の長さ寸法lを誘電体幅Sと略同一寸法とせずに、誘電体幅Sの85%以上とするような場合にあっては、入力信号の反射が大きくなるため良好なフィルタ特性が得られないためである。以上から矩形平板電極部1104の長さ寸法lとしては、円柱電極部1103の直径寸法以上であって、誘電体幅Sの85%以下の範囲内の寸法であることが望ましい。
さらに、矩形平板電極部1104の厚さ寸法tは、矩形平板電極部1104の製作の容易性及び入出力特性を考慮して、50μm以上であって、誘電体高さの1/2以下の範囲内の寸法であることが望ましく、100μm以上であって、矩形平板電極部1104の幅寸法w以下の範囲内の寸法とすることがより望ましい。
ここで、本第4実施形態にかかる電極1102を実施例として、最良な状態で設計した電極1102の形状を図32の模式図に示し、この電極1102が形成された誘電体フィルタ1101における反射特性を図33に示す。
図32においては図示しないが、この電極1102が形成された誘電体フィルタ1101の外形寸法は、誘電体層の積層方向の寸法である長さ寸法、幅寸法、高さ寸法の順で、1.253mm x 0.625mm x 3mmとなっている。
また、図32に示すように、円柱電極部1103の直径寸法が0.17mm、矩形平板電極部は、幅寸法wが0.17mm、長さ寸法lが0.9mm、厚さ寸法tが0.05mmとなっている。このような寸法の形状を有する電極1102に電位を印加させて誘電体フィルタ1101のフィルタ特性を測定すると、図33に示すように、その反射特性はピーク部分において−30dB以上の減衰量を得ていることが判る。
また、電極1102に電位を印加したときの誘電体フィルタ1101内に生じる電気力線P3を示す模式説明図を図34に示す。なお、図34は、図27の誘電体フィルタ1101における夫々の誘電体層の積層方向の縦断面を用いた模式説明図となっている。
図34に示すように、電極1102を構成する円柱電極部1102は、上記一実施例の円柱電極1003と同様な機能を有しているため、円柱電極部1102の周面部分よりは電気力線を生じることはなく、電極1102より誘電体フィルタ1101に導入する途中での電界放射が小さく伝送ロスを低減できることが判る。また、円柱電極部1102の上方側の端部1103bに接続された矩形平板電極部1104における上面側の稜部より上方側あるいは上方側よりも傾斜された方向に夫々の電気力線P3が生じており、これらの電気力線P3の上方側への指向性は、図28に示す矩形電極1002、及び図29に示す円柱電極1003の場合よりも強くなっていることが判る。従って、電極1102において、上記モードが安定するまでに必要な距離L3は、矩形電極1002の距離L1及び円柱電極1003の距離L2よりも短くすることができることが判る。
上記寸法形状を有する誘電体フィルタ1101及び電極1102の組み合わせを用いた場合においては、上記モードが安定するまでの距離L3は0.2mm程度であった。一方、円柱電極1003或いは矩形電極1002を用いた場合は、距離L2又はL1が0.7〜0.8mm必要であり、電極1102を用いることにより、モード安定までの距離L3を、円柱電極1003あるいは矩形電極1002のみを用いた場合における距離の1/4程度まで短縮することができることが判る。このようなモード安定までの必要距離L3の大幅な短縮化は、誘電体フィルタ1101の小型化を実現可能とする。なお、このような誘電体フィルタ1101及び電極1102においては、夫々の寸法比率(すなわち、長さ、幅、高さ、厚さ等の寸法比率)が、±10%以内程度の範囲で採用されることで、上述のような良好な電気力線の分布を得ることができる。
ここで、図35の模式図に示す本第4実施形態における電極1102の実施例モデルM1における3次元的な電気力線の解析結果を図36から図39に示し、と、図40の模式図に示す矩形電極1002の実施例モデルM2における3次元的な電気力線の解析結果を図41及び図42に示し、図43の模式図に示す円柱電極1003の実施例モデルM3における3次元的な電気力線の解析結果を図44から図46に示す。なお、これら夫々の模式図及び解析結果の説明図においては、夫々の誘電体フィルタ1001あるいは1101における夫々の誘電体層の積層方向をY軸、円柱電極部1103、円柱電極1003、及び矩形電極1002の軸心沿いの方向をZ軸、上記Y軸及びZ軸と直交する方向をX軸としている。
図41及び図42に示すように、モデルM2では、矩形電極1002の端部近傍にて電気力線P1の大きな乱れを、YZ平面内及びXZ平面内において確認することができる。また、図44から46に示すように、モデルM3では、モデルM2と比べてはややその乱れは改善されてはいるものの、円柱電極1003の端部近傍にてやはり電気力線P2の大きな乱れを、YZ平面、XZ平面、及びXY平面において確認することができる。
一方、図36から図39に示すように、本第4実施形態のモデルM1では、電極1102の矩形平板電極部1104における図示X軸方向の稜部より、略Z軸方向上向きに向けて、略均等な強さの電気力線P3が形成されており、YZ平面、XZ平面、及びXY平面のいずれにおいても、モデルM2及びM3と比して電気力線P3の大きな乱れを生じていないことを確認することができる。
上記においては、略円柱形状を有する円柱電極部1103の一端に、略矩形平板形状を有する矩形平板電極部1104が接続された構造の電極1102が用いられるような場合について説明したが、本第4実施形態の給電用電極の構造はこのような場合にのみ限定されるものではない。本第4実施形態の変形例にかかる給電用電極について以下に説明する。
まず、上記変形例にかかる給電用電極の一例として、電極1202の模式的な構成を示す模式図を図47に示す。図47に示すように、電極1202は、前述の電極1102が有する円柱電極部1103と同じ形状を有する円柱電極部1203と、この円柱電極部1203の上方側における円形断面を有する端部1203bに接続された2本の棒材であるワイヤ1204とを備えている。この2本のワイヤは、例えば、矩形状の形状を有しており、さらに、端部1203bの上記円の互いに平行な2本の接線上に夫々配置されている。また、夫々のワイヤ1204は、円柱電極部1103の軸心、及び、図示しない誘電体フィルタにおける夫々の誘電体層の積層方向と、略直交するように配置される。
このように夫々のワイヤ1204と円柱電極部1203とで電極1202が構成されていることにより、夫々のワイヤ1204が、前述の電極1102における矩形平板電極1104としての機能を有することになる。また、このような夫々のワイヤ1204は、前述の矩形平板電極1104における延在方向沿いの互いに対向する夫々の端部のみが抽出されることにより構成されたものということもできる。
また、このような2本の矩形部材を用いた給電用電極の構成は、2本のワイヤ1204が用いられるような場合にのみ限られるものではない。例えば、図48に示す電極1302のように、上記夫々の矩形部材がワイヤ1204よりも大きな断面を有するような矩形部材1304が用いられるような場合であってもよい。このような場合であっても、電極1102と同様に電気力線の乱れを低減することができることには変わりがない。なお、このような構造は、前述の電極1102における矩形平板電極部1103が、その延在方向に沿って2分割とされた構造であるということもできる。また、このような構造を採用するような場合であっても、円柱電極部1303の端部1303bにおける互いに平行な接線上に、夫々の矩形部材1304の外側の端部1304aが配置されることが望ましい。
また、図49に示すように、円柱電極部1303の端部1303bにおいて、夫々の矩形部材1304を互いに連結する連結部1305が形成され、平板部材として構成されるような場合であってもよい。このような場合にあっては、誘電体フィルタが小型化されるような場合であっても、夫々の矩形部材1304と円柱電極部1303との接合を容易に行なうことができ、小型化された誘電体フィルタの製造の容易化を図ることができるという利点がある。なお、このような連結部1305が形成されるような場合には、図50に示すように、この連結部1305から不要な電気力線の発生を防ぐために、その端部1305aを半円状とすることが望ましい。
なお、上記夫々の実施形態においては、電極の材料としてチタンを使用するものとするが、その他、金、白金(パラジウム、イリジウムなどの白金属の金属単体及び合金を含む)、銅、などを使用しても同様の効果が得られるものである。また、加工方法も上記夫々の実施形態に記載の方法に限定されるものでないことは言うまでもない。
また、導電性ペーストで誘電体内部電極を形成し、金、白金、白金(パラジウム、イリジウムなどの白金属の金属単体及び合金を含む)、銅、などの金属と組み合わせて使用しても同様の効果が得られるものである。
なお、導電性ペーストのみを使用した場合、円柱状の電極を形成することは非常に困難となる場合も考えられるため、導電性ペーストを用いた矩形平板電極部と金属製の円柱電極部とを組み合わせて、給電用電極を形成することが望ましい。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】


【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】

【図44】

【図45】

【図46】

【図47】

【図48】

【図49】

【図50】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
比誘電率が異なる2つ以上の誘電体層(702、703、704、705、706、707、708)が積層されて形成された誘電体多層構造体(701)と、
上記誘電体多層構造体の外面を覆い、かつ、当該外面と隙間なく配置された導電体からなる遮蔽部(710)とを備える誘電体フィルタ。
【請求項2】
上記誘電体多層構造体におけるいずれかの上記誘電体層間、あるいはいずれかの上記誘電体層内部に形成された少なくとも1つの給電用電極(709)を備える請求項1に記載の誘電体フィルタ。
【請求項3】
上記異なる比誘電率の差は、少なくとも10以上である請求項1に記載の誘電体フィルタ。
【請求項4】
互いに隣接する上記夫々の誘電体層同士が接合されている請求項1に記載の誘電体フィルタ。
【請求項5】
上記夫々の誘電体層は、焼結温度が800℃以上1000℃以下の誘電体セラミック材料により形成されている請求項1に記載の誘電体フィルタ。
【請求項6】
上記夫々の誘電体層は、誘電体セラミック材料を混合した樹脂により形成されている請求項1に記載の誘電体フィルタ。
【請求項7】
上記給電用電極は、銀、銅、金、若しくはパラジウム、又は、これらの合金で形成されている請求項1に記載の誘電体フィルタ。
【請求項8】
上記夫々の誘電体層は、厚さが傾斜的に変化している請求項1に記載の誘電体フィルタ。
【請求項9】
上記各々の誘電体層において、上記厚さにおける最小値が、最大値の70%以上となるように、上記厚さが傾斜的に変化されている請求項8に記載の誘電体フィルタ。
【請求項10】
上記誘電体フィルタが、マイクロ波帯用フィルタ又はミリ波帯用フィルタであり、
上記夫々の誘電体層は、その層の厚さ寸法とその比誘電率の平方根との積が、上記誘電体多層構造体に入射されるマイクロ波又はミリ波の波長の1/4の整数倍の値であって、かつ、上記夫々の誘電体層のうちの少なくとも1つの誘電体層(705)は、その層の厚さ寸法とその比誘電率の平方根との積が、上記波長の1/2の整数倍の値である請求項1に記載の誘電体フィルタ。
【請求項11】
上記給電用電極(1102)は、
上記誘電体多層構造体の積層方向と略直交するように延在して、当該誘電体多層構造体の内部に配置された矩形部材(1104)と、
上記積層方向及び上記矩形部材の延材方向の夫々と略直交して配置されるとともに、上記誘電体多層構造体の外部に露出されたその一端(1103a)と、当該誘電体多層構造体の内部にて上記矩形部材と接続されて配置されたその他端(1103b)とを有する円柱部材(1103)とを備える請求項2に記載の誘電体フィルタ。
【請求項12】
上記円柱部材(1303)の上記他端(1303b)は、略円周状の端部を有し、
上記矩形部材(1304)は、上記略円周において互いに平行に配置された接線を各々含み、上記積層方向及び上記円柱部材の軸心の夫々と略直交するように配置された夫々の端部(1304a)を有する請求項11に記載の誘電体フィルタ。
【請求項13】
上記矩形部材は、上記夫々の端部を連結する連結部(1305)をさらに有する平板部材である請求項12に記載の誘電体フィルタ。

【国際公開番号】WO2004/059784
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【発行日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−509752(P2005−509752)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016703
【国際出願日】平成15年12月25日(2003.12.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】