説明

語学学習システム

【課題】学習者が教師側から配信された情報のうち現在何処を学習しているのかを一目で容易に認識でき、望ましくは教師側の操作内容についても容易に把握できるようにした、とくに学習者側の使用の便利さを大幅に向上した語学学習システムを提供する。
【解決手段】教師用装置と複数の学習者用装置とを、直接的にまたはサーバーを介して接続し、教師用装置と学習者用装置との間で、語学学習に関するデジタル信号を送受信できるようにしたシステムであって、教師用装置で教師が設定または選択した教材中の音声情報を、その再生音声の現在位置を特定可能な該再生音声と同期した位置情報(例えば、教材番号、センテンス番号、経過時間等)とともに、学習者用装置に配信できるようにしたことを特徴とする語学学習システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LLシステム(ランゲージ・ラボラトリー・システム)等に好適な、デジタル信号を用いた語学学習システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、LLシステムにおいて、複数の学習者(生徒)がそれぞれ対応する子機を持ち、子機毎に、現在学習中の再生音声の単位センテンス番号を表示できるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1)。しかし、このような従来のシステムでは、学習者が任意に再生する時の現在位置は学習者端末で表示できるものの、教師が再生している音声を学習者端末に配信する時には、その再生と同期した位置情報(つまり、現在どの再生センテンス情報が配信されているかの情報)を表示することはできなかった。そのため、学習者側でそのときに与えられた内容を意図的な練習しようとした場合にあっても、例えば学習者側で選択したセンテンスや教材の特定部分を復習しようとした場合にあっても、容易にはその部分を見つけることができず、教師側から与えられた内容を最初から聞きなおす等の作業が強いられることとなって、学習者側にとって必ずしも便利なシステムとはなっていない。
【0003】
また、通常、教師用装置では、配信すべき再生音声情報を各種設定、選択操作できるようにされていることが多いが、学習者用端末では、そのような教師側の操作情報を表示できるようにはなっていない。例えば、教師が、ある特定の学習者に対し、その学習者が現在選択しているのと異なるセンテンスの情報を、挿入したり変更したりして配信した場合、学習者側ではその教師側の操作内容を知ることができるようにはなっていない。そのため、学習者は、自分が現在どのような学習を行わされているのかを容易には把握できず、学習者にとって不便であるとともに、学習意欲低下のおそれもある。
【0004】
このように、現状の語学学習システムは、とくに学習者側にとって必ずしも便利で使いやすいシステムとはなっていない。
【特許文献1】特開平6−202553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の課題は、学習者が教師側から配信された情報のうち現在何処を学習しているのかを一目で容易に認識でき、望ましくは教師側の操作内容についても容易に把握できるようにした、とくに学習者側の使用の便利さを大幅に向上した語学学習システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る語学学習システムは、教師用装置と複数の学習者用装置(端末装置)とを、直接的にまたはサーバーを介して接続し、教師用装置と学習者用装置との間で、語学学習に関するデジタル信号を送受信できるようにした語学学習システムであって、教師用装置で教師が設定または選択した教材中の音声情報を、その再生音声の現在位置を特定可能な該再生音声と同期した位置情報とともに、学習者用装置に配信できるようにしたことを特徴とするものからなる。
【0007】
つまり、従来は、学習者が一体的に取り込んだある教材情報についてその教材中のどの位置を学習しているかを知ることができるようになっているものはあったが、ある学習中にそのときに教師用装置側から配信されてきた再生音声情報のどの位置を学習させられているのかを認識することは困難であった。しかし上記本発明に係る語学学習システムにおいては、教師用装置側から配信される再生音声情報に、例えばセンテンス毎の現在位置情報が付加されて配信されるので、学習者用装置にて、学習者は現在学習している再生音声情報とそれに同期された位置情報とを、ともに同時に認識することが可能になり、現在の自分の学習位置を知ることができるとともに、特定の箇所を復習しようとする場合にもその箇所を即座に特定できるようになる。
【0008】
また、本発明に係る語学学習システムにおいては、さらに、教師用装置で教師が行ったセンテンスの選択、挿入、削除等の操作の情報が、学習者用装置に送信されるようになっていることが好ましい。教師用装置では、例えば個々の学習者に対して、その学習者が最も効果的に学習できるように、適宜、そのとき使用している教材とは一部異なるセンテンスの選択や、別のセンテンスの挿入や差替え、教材中のセンテンスを適当にジャンプさせる等の特定のセンテンスの削除等の操作を行うことができるようになっている場合があるが、このような場合にあっても、教師が行った操作の情報を学習者側で容易に把握できるようになる。その結果、学習者は自分が現在どのようなことを重点的に学習させられているのかや、自分がどのような項目について弱いあるいは強いのか等を知ることが可能になり、学習の効果をより向上させることが可能になる。
【0009】
また、上記位置情報としては、音声情報と同期し音声情報の位置を特定可能な情報として、予め教材中に記録されている形態とすることも可能であり、あるいは、そのときの再生音声と同期し再生音声の現在位置を特定可能な情報として、教師用装置で教師が行った操作毎に自動的に付与され、自動的に付与された位置情報が学習者用装置に配信される形態とすることも可能である。後者の場合には、教師用装置に位置情報の自動付与機能を持たせてもよく、サーバーを介する場合には、サーバー内に位置情報を自動付与可能な制御手段を設けておいてもよい。
【0010】
また、本発明に係る語学学習システムにおいては、とくに、学習者用装置に、つまり、学習者が使用する子機毎に、教師用装置から配信されてきた前記位置情報を表示する表示装置が付設されていることが好ましい。このような位置情報の表示装置を学習者用装置毎に設けておくことにより、個々の学習者毎に、その位置情報の認識や有効利用を容易に行うことができるようになる。
【0011】
この位置情報の表示に関しては、教師用装置についても、学習者用装置に配信する上記位置情報を表示する表示装置が付設されていることが好ましい。このようにすれば、教師側と学習者側とで共通の位置情報を認識でき、例えば学習方法等について協議する場合にあっても、共通の位置情報に基づいて論点の合致した話し合いを行うことが可能になり、学習の効果の向上を期待できる。
【0012】
また、本発明に係る語学学習システムにおいてサーバーを用いる場合には、サーバーに多数の教材を記憶しておくことが可能であり、教師用装置および学習者用装置のいずれかからの要求に応じて、教師用装置または学習者用装置に教材のセンテンス情報を取り込み可能に構成することができる。
【0013】
この場合、サーバーから取り込み可能なセンテンス情報を、教師用装置により、個々の学習者用装置に対して制限可能に構成することも可能である。このようにすれば、例えば、個々の学習者の学習効果が最大に発揮されるよう、教師が教師用装置でコントロール可能になり、教師側についても、その教師能力がより効果的に発揮されるようになる。
【0014】
上記サーバーには、記憶効率を高めるために各教材が連続したセンテンス情報として記憶されている形態とすることができるが、このような形態にてセンテンス情報の取り込みがあった場合には、要求に応じて、各センテンス間に無声情報区間であるポーズを自動付与可能に構成することもできる。このように構成すれば、学習者はポーズ区間でその直前のセンテンスの繰り返し練習を行うことが可能になる。
【0015】
上記のようなポーズの自動付与を備えている場合、そのポーズの自動付与の要求があった場合には、要求に応じて、ポーズの開始時または終了時またはその両時にビープ音(特定の音色でポーズ区間の開始または終了を知らせる電子音)を自動付加可能に構成されている形態とすることも可能である。このように構成すれば、学習者はポーズ区間の開始または終了を容易に認識できるので、自身の発声練習等を、次のセンテンスの聴き取り等と時間的にオーバーラップさせることなく、効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に係る語学学習システムによれば、教師用装置側からは、再生音声情報とともに、その再生音声情報と同期したセンテンス毎の現在位置情報が学習者用装置に配信されるので、学習者用装置にて、学習者は現在学習しているセンテンス毎の位置(他追えば、教材番号とその中のセンテンス番号や経過時間等)をリアルタイムで認識することが可能になり、自分の学習位置の認識や復習箇所の特定を極めて容易に行うことができるようになって、学習効果の向上をはかることができる。
【0017】
また、教師用装置側で教師が行った操作の情報も学習者用装置に送信できるようにすれば、教師側の操作内容についても容易に把握できるようになり、学習者側にとってより効率のよい学習を自ら認識したり、実行したりすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係る語学学習システム1の概略全体構成を示しており、多数の教材が記憶されているサーバー2を用いる場合について示している。サーバー2には、教師用装置3(図示例では、パソコン)が接続されているとともに、複数の子機としての学習者用装置4が接続されており、これら機器間で、語学学習に関するデジタル信号が送受信できるようになっている。
【0019】
本発明に係る語学学習システムのより具体的な構成例を、図2、図3に示す。図2に示す例に係る語学学習システム10においては、マイクロホンを備えたヘッドホン装置11を有する教師用装置12と、マイクロホンを備えたヘッドホン装置13を有する複数の学習者用装置14とが、サーバーを介することなく直接的に接続されている。教師用装置12では、他の記録媒体等(図示略)から、教師の操作により、入力装置15により教材となる音声情報が取り込まれ、その教材中で教師が設定あるいは選択した音声情報が、音声再生装置16で再生されて再生音声のデジタル信号として各学習者用装置14の音声再生装置17に、回線18を介して配信される。配信されるデジタル信号による再生音声は、ヘッドホン装置11により教師が聴くことができるようになっているとともに、配信されたデジタル信号による再生音声は、ヘッドホン装置13により各学習者用が聴くことができるようになっている。
【0020】
上記音声情報の配信と同時に、本実施態様では教師用装置12において、再生音声情報に、その再生音声の現在位置を特定する該再生音声と同期した位置情報(例えば、教材番号、センテンス番号、経過時間等)が自動的に付与され、その位置情報が現在の再生音声と同期されて位置表示装置19に表示される。この位置情報は、デジタル信号として回線20を介して各学習者用装置14の位置表示装置21に配信され、該位置表示装置21に、音声再生装置17による再生音声と同期した形態で表示される。すなわち、本実施態様では、教師の操作による再生音声と同期した位置情報が、回線20を介して、音声信号を配信する回線18を介したデジタル信号とは別の個別デジタル信号として、各学習者用装置14の位置表示装置21に配信される。
【0021】
図3に示す例に係る語学学習システム30においては、マイクロホンを備えたヘッドホン装置31を有する教師用装置32と、マイクロホンを備えたヘッドホン装置33を有する複数の学習者用装置34とが、多数の教材の音声データを記憶したサーバー35を介して接続されている。教師用装置32では、教師の操作により、サーバー35から、教師が設定、選択した教材やその中のセンテンス情報を、入力装置36を介して取り込むことができるようになっている。取り込まれた音声情報は、さらに教師により適宜選択や設定が可能であり、教師が設定あるいは選択した音声情報が、音声再生装置37で再生されて再生音声のデジタル信号として各学習者用装置34の音声再生装置38に、回線39を介して配信される。また、教師用装置32では、再生音声情報に、その再生音声の現在位置を特定する該再生音声と同期した位置情報が自動的に付与され、その位置情報が現在の再生音声と同期されて位置表示装置40に表示される。この位置情報の自動付与は、サーバー35内に設けられた制御手段41によって行わせることも可能であり、その場合には、教師が入力装置36を介してサーバー35から音声情報を取り込む際に、取り込まれる音声情報に同期させて位置情報(例えば、教材番号、センテンス番号、経過時間等)を付与すればよい。このように再生音声と同期した位置情報が、音声情報の配信とともに、つまり音声信号との複合デジタル信号として、同じ回線39を介して各学習者用装置34に配信されるようになっている。各学習者用装置34では、配信されてきた再生音声情報が音声再生装置38によって再生されてヘッドホン装置33を介して聴くことができ、それに同期されて配信されてきた位置情報は、位置表示装置42にリアルタイムで表示できるようになっている。
【0022】
なお、本実施態様では、各学習者用装置34に、サーバー35からサーバー35内の記憶情報を取り込むことが可能な入力装置43が設けられており、各学習者側においてもサーバー35から任意の音声情報を選択して取り込み可能となっている。この場合、教師用装置32における操作により、例えばサーバー35内の制御手段41を介して、各学習者側から取り込み可能な音声情報に制限を加えることができるようにした構成も採用可能である。
【0023】
また、上記図3に示した態様において、とくにサーバー35内の制御手段41にポーズ自動付与機能を付加することも可能である。例えば、サーバー35に各教材が連続したセンテンス情報として記憶されている場合、センテンス情報の取り込みがあった場合には、要求に応じて、制御手段41により各センテンス間に無声情報区間であるポーズを自動付与させることが可能である。さらにこの場合、ポーズの開始時または終了時またはその両時にビープ音を自動付加するようにしてもよい。なお、このようなポーズ自動付与機能は、図2に示した態様においても、教師用装置12に持たせることが可能である。
【0024】
このように、教師用装置12、32から各学習者用装置14、34に、再生音声情報とともに、再生音声におけるセンテンス毎等の現在位置情報を配信でき、その位置情報を各学習者用装置14、34に表示させることができるので、各学習者にとって、従来にない便利な使用方法が採用でき、学習や復習の効果、便宜性が大幅に高められる。
【0025】
また、上記位置表示装置21、42を利用して、あるいはそれとは別の表示装置を設けることにより、教師側の操作情報も学習者側で認識できるようにすれば、学習の効果、便宜性が一層高められるとともに、学習者の学習意欲の向上も期待できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施態様に係る語学学習システムの概略全体構成図である。
【図2】本発明のより具体的な一実施態様に係る語学学習システムのブロック図である。
【図3】本発明のより具体的な別の実施態様に係る語学学習システムのブロック図である。
【符号の説明】
【0027】
1 語学学習システム
2 サーバー
3 教師用装置
4 学習者用装置
10、20 語学学習システム
11、13、31、33 マイクロホンを備えたヘッドホン装置
12、32 教師用装置
14、34 学習者用装置
15、36、43 入力装置
16、17、37、38 音声再生装置
18、20。37 回線
19、21、40、42 位置表示装置
35 サーバー
41 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
教師用装置と複数の学習者用装置とを、直接的にまたはサーバーを介して接続し、教師用装置と学習者用装置との間で、語学学習に関するデジタル信号を送受信できるようにした語学学習システムであって、教師用装置で教師が設定または選択した教材中の音声情報を、その再生音声の現在位置を特定可能な該再生音声と同期した位置情報とともに、学習者用装置に配信できるようにしたことを特徴とする語学学習システム。
【請求項2】
さらに、教師用装置で教師が行ったセンテンスの選択、挿入、削除等の操作の情報が、学習者用装置に送信される、請求項1に記載の語学学習システム。
【請求項3】
前記位置情報が、音声情報と同期し音声情報の位置を特定可能な情報として、予め教材中に記録されている、請求項1または2に記載の語学学習システム。
【請求項4】
前記位置情報が、そのときの再生音声と同期し再生音声の現在位置を特定可能な情報として、教師用装置で教師が行った操作毎に自動的に付与され、自動的に付与された位置情報が学習者用装置に配信される、請求項1または2に記載の語学学習システム。
【請求項5】
学習者用装置に、教師用装置から配信されてきた前記位置情報を表示する表示装置が付設されている、請求項1〜4のいずれかに記載の語学学習システム。
【請求項6】
教師用装置に、学習者用装置に配信する前記位置情報を表示する表示装置が付設されている、請求項1〜5のいずれかに記載の語学学習システム。
【請求項7】
サーバーに教材が記憶されており、教師用装置および学習者用装置のいずれかからの要求に応じて、教師用装置または学習者用装置に教材のセンテンス情報を取り込み可能に構成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の語学学習システム。
【請求項8】
サーバーから取り込み可能なセンテンス情報を、教師用装置により、個々の学習者用装置に対して制限可能に構成されている、請求項7に記載の語学学習システム。
【請求項9】
サーバーに教材が連続したセンテンス情報として記憶されており、センテンス情報の取り込みがあった場合には、要求に応じて、センテンス間に無声情報区間であるポーズを自動付与可能に構成されている、請求項7または8に記載の語学学習システム。
【請求項10】
ポーズの自動付与の要求があった場合には、要求に応じて、ポーズの開始時または終了時またはその両時にビープ音を自動付加可能に構成されている、請求項9に記載の語学学習システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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