説明

誤操作防止用プログラム、誤操作防止装置および方法

【課題】ダイアログボックスに頼らない仕組みにより、実行される処理のリスクの度合い応じて誤操作を防止して莫大な損失を回避する。
【解決手段】入力の誤操作により発生すると予測されるリスクの度合いに応じて算出される制限時間TL をデータ入力領域に入力されたデータX1 に応じて算出するステップS4と、コマンド領域に対する入力操作が算出された制限時間TL だけ継続したか否かを判定するステップS9と、コマンド領域に対する入力操作が制限時間だけ継続されたと判定されたとき所定の命令の実行を許可するステップS10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤操作防止用プログラム、誤操作防止装置および方法に関し、特に、ユーザインターフェースを介して利用者との間でディスプレイの画面上に表示される情報の受け渡しを行う際に起こり得る操作上のヒューマンエラー(人為的なミス)を未然に防止するための誤操作防止用プログラム、誤操作防止装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者の操作ミスを防止するためのユーザインタフェースとして、確認(警告)ダイアログボックスがある。これは、利用者の入力・設定した情報が正しいか否かを、利用者の操作後にウィンドウを表示して再度利用者に問い、その確認を求めるインタフェースである。しかし、確認は、画面上の表示された特定のボタン(例えば「OK」、「実行」など)を押すだけであり、その操作が容易であることから、利用者に注意を喚起するには、不十分である。また、確認ダイアログボックスを二度、三度提示し、確認の回数を増やすことにより、注意喚起をより一層高めることを意図したユーザインタフェースもあるが、同様に、その操作が容易であることから、十分な注意を喚起するには至らない。
【0003】
つまり、上述のようなダイアログボックスは、メッセージとともにOKボタン等が表示されているだけであるため、操作に慣れている利用者の場合は、あまりメッセージを確認せずにOKボタンを押してしまうこととなり、このような利用者に注意を喚起するには不十分である。
【0004】
また、利用者の操作ミスによっては、操作によって実行される処理がリスクの高いものであった場合、操作ミスによって引起される損失が莫大なものとなる場合がある。
【0005】
そこで、利用者の操作ミスを防止するためのユーザインタフェースとしてダイアログボックスに頼らない仕組みが必要である。一方、利用者の操作ミスを防止する発明には次のようなものがある。
【0006】
特許文献1には、情報処理装置において、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を持つオペレーティングシステム(OS)上でマウスと同様にタッチパネルを使用する場合の操作性を向上させたタッチパネル制御装置が開示されている。この装置は、マウスのボタンのシングルクリック操作とダブルクリック操作をタッチパネル上で指またはペンで押圧し離す動作で実現しようとしても、指またはペンのタッチパネルへの触れ方により、シングルクリック操作かダブルクリック操作かを誤判断してしまうという問題を解決しようとするものである。
【0007】
特許文献1に記載の発明は、タッチパネルが押されてから押し続けられた時間をタイマーで計測(カウント)し、そのタイマーのカウント値Cと閾値Mとを比較し、C≧Mのときは「クリック操作有り」と判断し、C<Mのときは「クリック操作無し」と判断することにより、シングルクリック操作かダブルクリック操作かを正しく判断するものである。
【0008】
【特許文献1】特開平9−258899号公報(明細書の[請求項1]、段落番号[0003]〜[0007]、[0014]〜[0021]および図面の[図1]、[図2]参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のタッチパネル制御装置は、上述したダイアログボックスに頼らない仕組みを提供するものではなく、かつ利用者の操作ミスによっては、操作によって実行される処理がリスクの高いものであった場合、操作ミスによって引起される損失が莫大なものとなるという問題がある。
【0010】
しかるに、特許文献1には、タッチパネルの押下操作により実行される処理のリスクの度合いに応じた対策(処理の実行を許可または不許可とする手段)については開示されていない。
【0011】
以上のことから、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、操作により実行される処理のリスクの度合い応じて誤操作を防止することで、莫大な損失を受けずに、ダイアログボックスに頼らない仕組みを備えることで、利用者の操作中に、十分なる注意を喚起させ、ヒューマンエラーの発生を未然に防ぐ、誤操作防止用プログラム、誤操作防止装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明による誤操作防止用プログラムは、表示装置の画面上に表示されるとともに入力装置によりデータを入力する少なくとも一つのデータ入力領域と前記画面上に表示される所定の命令の実行を許可または不許可するため前記入力装置により入力操作するコマンド領域とを備え、前記コマンド領域に対する入力の誤操作を防止する誤操作防止装置に用いられる誤操作防止用プログラムであって、コンピュータに、前記コマンド領域に対する入力操作が前記所定の命令の実行を許可するために継続されなければならない制限時間を前記データ入力領域に入力されたデータに応じて算出する算出ステップと、前記コマンド領域に対する入力操作が前記算出ステップで算出された制限時間だけ継続したか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップで前記コマンド領域に対する入力操作が前記制限時間だけ継続されたと判定されたとき前記所定の命令の実行を許可する許可ステップと、を実行させることを特徴とする。
【0013】
上記誤操作防止用プログラムにおいて、前記算出ステップは、前記データ入力領域に入力されるデータと該データに対応して予め設定した制限時間との関係を示す第1参照テーブルを用いて前記データ入力領域に入力されたデータに対する制限時間を算出する。
【0014】
上記誤操作防止用プログラムにおいて、前記算出ステップは、前記データ入力領域に入力される第1データと該第1データの値に対応して設けられる第2参照テーブルであって前記データ入力領域に入力される第2データと該第2データに対応して予め設定した制限時間との関係を示す第2参照テーブルを用いて前記データ入力領域に入力された第2データに対する制限時間を算出する。
【0015】
上記目的を達成する本発明による誤操作防止装置は、表示装置の画面上に表示されるとともに入力装置によりデータを入力する少なくとも一つのデータ入力領域と前記画面上に表示される所定の命令の実行を許可または不許可するため前記入力装置により入力操作するコマンド領域とを備え、前記コマンド領域に対する入力の誤操作を防止する誤操作防止装置において、入力の誤操作により発生すると予測されるリスクの度合いに応じて算出される制限時間であって、前記コマンド領域に対する入力操作が前記所定の命令の実行を許可するために継続されなければならない制限時間を前記データ入力領域に入力されたデータに応じて算出する算出手段と、前記コマンド領域に対する入力操作が前記算出手段により算出された制限時間だけ継続したか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記コマンド領域に対する入力操作が前記制限時間だけ継続されたと判定されたとき前記所定の命令の実行を許可する許可手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成する本発明による誤操作防止方法は、表示装置の画面上に表示されるとともに入力装置によりデータを入力する少なくとも一つのデータ入力領域と前記画面上に表示される所定の命令の実行を許可または不許可するため前記入力装置により入力操作するコマンド領域とを備え、前記コマンド領域に対する入力の誤操作を防止する誤操作防止方法において、前記コマンド領域に対する入力操作が前記所定の命令の実行を許可するために継続されなければならない制限時間を前記データ入力領域に入力されたデータに応じて算出する算出ステップと、前記コマンド領域に対する入力操作が前記算出ステップで算出された制限時間だけ継続したか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップで前記コマンド領域に対する入力操作が前記制限時間だけ継続されたと判定されたとき前記所定の命令の実行を許可する許可ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、リスクが発生すると予測される操作において、入力の誤操作により発生すると予測されるリスクの度合いに応じて算出される制限時間以上入力操作を継続しないと所定の命令を実行しないよう構成されるので、リスクの度合いに応じた十分な注意が喚起され、入力操作上のヒューマンエラーを抑止することができる。
【0018】
とりわけ、利用者自身が、リスクが小さいと誤認識している操作においては、利用者はディスプレイ上のコマンド領域(実行ボタン)に対して、通常のクリック操作しか行わないため、その実行ボタンで起動される取引等の処理が実行されず、リスクを回避することができる。また、利用者自身が、リスクが大きいと認識している場合でも、実行ボタンで起動される処理が実行されるまでの押下操作の継続時間が、間違いに気づく時間となり、実行ボタンで起動される処理が実行される前に、押下操作を中止することでより確実にリスクを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る誤操作防止装置の概略構成図である。図1全体に示す誤操作防止装置1は、パーソナルコンピュータ(PC)10、入力装置としてのキーボード11やマウス等のポインティングデバイス12、情報を画面上に表示するディスプレイ13、PC10と通信可能に接続されるとともにデータベースを格納するサーバ14等を有する。サーバ14はPC10内に内蔵した記憶装置で代用してもよい。ディスプレイ13の画面上には、○×△で示すような表示情報15、後述するような取引等の実行処理を行うための実行ボタン16およびキーボード11やマウス12の操作でディスプレイ13の画面上を移動するカーソル17が示されている。入力装置としてタッチパネルを用いることもできる。
【0020】
取引等を行う誤操作防止装置1の利用者は、ディスプレイ13の画面に表示される情報との対話的なユーザインタフェースを通じて、キーボード11やマウス12等の入力装置により、取引等の情報(金額、口数など)を入力する。パーソナルコンピュータ(PC)10は、サーバ14に格納された取引情報データベースの情報と、入力された情報とを基に、入力・選択された情報に人為的に間違えたときに発生すると予測されるリスク(損失)を計算する。この計算については後で詳しく説明する。
【0021】
次に、本発明によるリスクの回避について具体例を挙げて以下に説明する。例えば、現金自動預入支払機(ATM)の操作において、扱う金額が大きい場合等、ATMにより実行される処理のリスクの高さに応じて、実行ボタンの押下時間の設定を変更する。例えば、扱う金額が小さい場合には短時間の押下でクリック動作(クリック操作により起動される処理)を受け付け、扱う金額が大きい場合には所定の時間押下し続けないとクリック動作を受け付けないように構成する。
【0022】
このように構成することで、扱う金額が大きい場合には実行ボタンを長時間押下し続けなければならなくなり、実行ボタンの押下操作の間、利用者は自身の操作が正しいか否かを再検討することになり、実行ボタンの押下操作ミスにより生じ得るリスクの回避がより一層可能となる。
【0023】
また、ネットワーク証券取引の場合、取引価格と取引数量とを乗じた値が大きいほど、ヒューマンエラーを生じた際のリスクが高い。また、ヒューマンエラーの発生には、一定の傾向があるため、過去に生じたヒューマンエラーの実績をデータベース化しておくことで、発生するリスクを予測することが可能となる。
【0024】
そこで、平均的な取引単価(相場)、ヒューマンエラーの実績等をデータベースとして整理・記録しておき、入力装置から入力・選択された数値等とを比較することによって、リスクの大きさを予測的に計算することが可能である。
【0025】
この計算されたリスクを、例えば10段階に分類し、リスクが大きい(損失の大きい)ものをリスク度10、リスクの小さいものをリスク度1と呼ぶ。リスク度10の際は、ディスプレイ上に表示された取引等の処理の実行ボタンと、タイマーとを連動させることにより、実行ボタン上でマウス押下開始より10秒経過した時点で処理を実行する。同様に、リスク度9であれば9秒経過時点で処理を実行し、リスク度1であれば即時に処理を実行する。
【0026】
このように、リスクの大きさに連動させて、処理が実行されるまでの時間を制御することにより、リスクの高い場合ほど、操作に要する時間を長く設定する。この操作に要する時間は、処理が実行されるまで、利用者には分からないため、利用者はマウスボタンを押した動作状態のまま、次の動作に移れず、その間、利用者は自身の操作を省みて間違えていなかったかどうかを思案することとなる。この思案により、ヒューマンエラーの不安を感じた場合は、マウス押下を中止することで処理を保留することが可能であり、その結果、ヒューマンエラーを抑止することが可能となる。
【0027】
再び、図1に戻り、本発明の一実施形態に係る誤操作防止装置におけるリスクの回避について以下に説明する。
【0028】
計算されたリスクの大きさに応じて、ディスプレイ13に表示される押しボタンとしての実行ボタン16の動作時間を変更する。すなわち、リスクが小さいと計算された取引等においては、通常のボタン操作同様、実行ボタン16をマウス12等でクリックすることにより動作する。しかし、リスクが一定水準を超えると計算された取引等においては、マウス12等を、一定以上の時間、実行ボタン16上で押し続けることで動作するようにする。リスクの大きさと動作させるために必要な実行ボタン16を押し続ける制限時間とを連動させることで、実行ボタン16を押し続けている時間中に利用者の注意が喚起されることとなる。これにより、リスクが一定水準を超えると計算された取引等においては、動作に必要な時間に達する前に、利用者が実行ボタン16の押下を停止することが期待され、結果として、ヒューマンエラーを抑止することができる。
【0029】
図2は本発明の第1実施形態に係る誤操作防止処理の手順を示すフローチャートであり、図3はネットワーク証券取引での証券購入時のディスプレイ表示画面を示す図であり、図4は本発明の制限時間を算出する一般式を示す図であり、図5は制限時間を算出するデータベースのテーブルの第1具体例を示す図であり、図6はネットワーク証券取引での証券購入確認時のディスプレイ表示画面を示す図である。本発明の第1実施形態に係る誤操作防止処理はネットワーク証券取引での証券購入時のヒューマンエラーを防止する処理であり、PC10により以下のように実行される(図1参照)。
【0030】
ステップS1:ディスプレイ13の画面上に、例えば図3に示すような入力画面を表示する。
ステップS2:利用者(以下、ユーザと記す)はマウス12で入力用テキストボックス31、32、33を適宜クリックし、キーボード11を用いて、入力用テキストボックス31に取引銘柄コード6702を、入力用テキストボックス32に取引(購入)数量2000を、入力用テキストボックス33に取引(購入)価格951をそれぞれ入力する。ここで、取引(購入)価格951は単価を示す。PC10はユーザによる数値入力(X1 )を受ける。この第1実施形態では、証券の取引(購入)数量をX1 とする。ここで、取引とは証券を購入するという取引を意味する。
【0031】
ステップS3:ユーザが実行ボタン34を押す(例えばマウス12でクリックする)イベントを捕らえる。
ステップS4:入力された数値(X1 )、ここでは取引数量X1 =2000に対応する制限時間TL =4(秒)を図5に示すデータベースのテーブルから読取る。なお、制限時間TLの一般式は図4に示すように次式(1)で表される。
TL =f(X1, … Xn,Y1, … Yn)……(1)
ここで、X1, … Xn は入力値を示し、Y1, … Yn は入力値X1, … Xn に応じて予め設定される係数を示す。
【0032】
ステップS5:ディスプレイ13の画面上に、例えば図6に示すような証券取引確認時の入力画面を表示する。OKボタン61は証券取引確認画面の表示内容に同意する時にマウス12でクリックするボタンであり、キャンセルボタン62は同内容に同意せずにキャンセルする時にマウス12でクリックするボタンである。
ステップS6:表示された証券取引確認画面上のOKボタン61をマウス12でクリックする。
【0033】
ステップS7:ユーザがOKボタン61をマウス12でクリックし続けた時間Tm の計測を開始する。
ステップS8:ユーザがOKボタン61をリリース、つまりマウス12でのクリックを解除したことを検知したか否かを確認し、確認結果がYESのときはステップS6に戻り、ステップS6〜S8を繰り返し実行し、ステップS8で確認結果がNOのときはステップS9に進む。
【0034】
ステップS9:ステップS4で読取った制限時間TL =4(秒)とステップS7で開始した計測時間Tm とを比較し、TL < Tm のときはステップS8に戻り、ステップS8、S9を繰り返し実行し、TL ≧ Tm のときはステップS10に進む。
ステップS10:証券の取引(購入)の処理、すなわち○○○社、一株951円を2000株購入する処理を実行する。
【0035】
図7は本発明の第2〜4実施形態に係る誤操作防止処理の手順を示すフローチャートであり、図8は制限時間を算出するデータベースのテーブルの第2具体例を示す図である。本発明の第2実施形態に係る誤操作防止処理はネットワーク証券取引での証券購入時のヒューマンエラーを防止する処理であり、PC10により図2に示すステップS2とステップS4の処理を除き図2に示す処理ステップS1〜S10に対応する同様な処理ステップS101〜S110が実行される。よって、図2に示すステップS2とステップS4に対応するステップS102とステップS104についてのみ以下に説明する。
【0036】
ステップS102:ユーザはマウス12で入力用テキストボックス31、32、33を適宜クリックし、キーボード11を用いて、入力用テキストボックス31に取引銘柄コード6702を、入力用テキストボックス32に取引(購入)数量2000を、入力用テキストボックス33に取引(購入)価格951をそれぞれ入力する。PC10はユーザによる数値入力(X1 、X2 、…、Xn )を受ける。この第2実施形態では、証券の取引(購入)数量をX1 、取引銘柄コードをX2 とする。
【0037】
図8の(A)は取引銘柄コードX2 に対応するテーブル番号を格納するテーブルを示す図であり、図8の(B)は図8の(A)に示すテーブルに格納された取引銘柄コードX2 に対応するテーブル番号のテーブルであって取引数量X1 に対応する制限時間TLとの対応関係を定義するデータベーステーブルを示す図である。
【0038】
ステップS104:入力された数値(X1 、X2 )、ここでは図8の(A)に示すデータベースのテーブルに格納された取引銘柄コードX2 =003に対応するテーブル番号003のテーブルである図8の(B)に示す取引数量X1 に対応する制限時間TL との対応関係を定義するデータベーステーブルから取引数量X1 =2000に対応する制限時間TL =4(秒)を読取る。
【0039】
図9は制限時間を算出するデータベースのテーブルの第3具体例を示す図である。本発明の第3の実施形態では、入力値X1 、X2 およびデータベースの数値Y1 から制限時間TL を算出する。図7に示すフローチャートを用いて第3の実施形態を以下に説明する。
【0040】
ステップS102において、ユーザはマウス12で入力用テキストボックス31、32、33を適宜クリックし、キーボード11を用いて、入力用テキストボックス31に取引銘柄コード6702を、入力用テキストボックス32に取引(購入)数量2000を、入力用テキストボックス33に取引(購入)価格951をそれぞれ入力する。PC10はユーザによる数値入力(X1 、X2 、…、Xn )を受ける。この第3実施形態では、証券の取引(購入)数量をX1 、取引銘柄コードをX2 とする。
【0041】
ステップS104において、第3の実施形態では、図9の(A)に示す入力値X2 (取引銘柄コードX2 =003)とデータベースの数値Y1 (株価の変動率Y1 =1)との対応関係を定義するデータベーステーブルから図9の(B)に示す取引数量X1 =2000に対応する制限時間TL との対応関係を定義するデータベーステーブルから制限時間TL =3×Y1 =3×1=3(秒)を算出する。
【0042】
図10は制限時間を算出するデータベースのテーブルの第4具体例を示す図である。本発明の第4の実施形態では、入力値X1 、X2 、X3 およびデータベースの数値Y1 から制限時間TL を算出する。図7に示すフローチャートを用いて第3の実施形態を以下に説明する。
【0043】
ステップS102において、ユーザはマウス12で入力用テキストボックス31、32、33を適宜クリックし、キーボード11を用いて、入力用テキストボックス31に取引銘柄コード6702を、入力用テキストボックス32に取引(購入)数量2000を、入力用テキストボックス33に取引(購入)価格951をそれぞれ入力する。PC10はユーザによる数値入力(X1 、X2 、…、Xn )を受ける。この第3実施形態では、証券の取引(購入)数量をX1 、取引銘柄コードをX2 、取引(購入)価格をX3 とする。
【0044】
ステップS104において、第4の実施形態では、図10の(A)に示す入力値X2 (取引銘柄コードX2 =003)とデータベースの数値Y1 (株価の変動率Y1 =1)との対応関係を定義するデータベーステーブルおよび取引(購入)価格(X3 )から図10の(B)に示すリスクの度合い(R)を次式(2)により算出する。
R = X1 × X3 × Y1 …… (2)
(ここで、X1 は取引数量、X3 は取引価格、Y1 は株価の変動率を示す。)
X1 =2000、X3 =951、Y1 =1を式(2)に代入してR=1,902,000を得る。
【0045】
次に、図10の(C)に示す上式(2)により算出したリスクの度合い(R=1,902,000)に対応する制限時間TL との対応関係を定義するデータベーステーブルから制限時間TL =10(秒)を読取る。
図10の(D)にリスクの度合いRと制限時間TL との対応関係をグラフで示す。
【0046】
図11は本発明の第5実施形態に係る誤操作防止処理の手順を示すフローチャートであり、図12は図6に示すネットワーク証券取引での証券購入確認時のディスプレイ表示画面においてOKボタン61を押下げてから、一定時間経過後(TL ≧ Tm )に点灯する表示灯63の記号等が表示される具体例を示す図である。図11に示す第5実施形態のフローチャートは、図7に示す第2実施形態のフローチャートにおいて、ステップS8をステップS208に置き換え、ステップS9をステップS209A、S209B、S209Cに置き換えたものである。よって、ステップS208、ステップS209A、S209B、S209Cについてのみ以下に説明する。
【0047】
ステップS208では、OKボタン61を押下げてから一定時間経過後(TL ≧ Tm )までに、ユーザがOKボタン61をリリースされないこと、つまりマウス12でのクリックが解除されなかったことを確認し、確認結果がNOのとき(リリースされたとき)はステップS206に戻り、ステップS206〜S208を繰り返し実行し、ステップS208で確認結果がYESのとき(リリースされなかったとき)はステップS209Aに進む。
【0048】
ステップS209Aでは、図12に示すネットワーク証券取引での証券購入確認時のディスプレイ表示画面において、OKボタン61を押下げてから一定時間経過後(TL ≧ Tm )に点灯する表示灯63の記号等を表示する。
【0049】
ステップS209Bでは、同ディスプレイ表示画面において、OKボタン61をリリースしたことを捕らえる。
【0050】
ステップS209Cでは、ステップS209BでOKボタン61をリリースしたことを捕らえた後に、マウス12により移動されたカーソルがOKボタン61の上に在るか否かを判定し、その判定結果がYESのときはステップS210に進み、その判定結果がNOのときはステップS209Dを経て、ステップS206に戻り、ステップS206〜S209Cを繰り返し実行する。
ステップS209Dでは、ステップS209Aで表示した表示灯63の記号等を消去(非表示)する。
【0051】
上述した第5実施形態によれば、OKボタン61を押下げてから一定時間経過後に表示灯63を点灯し、ユーザがこの点灯を確認後にOKボタン61をリリースしたとき、カーソルがOKボタン61の上にあれば、証券の取引(購入)の処理が実行される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
利用者のヒューマンエラーにより、取引等による経済的な損失、社会的または人身的な損害が発生し得るコンピューターシステムおよびそのソフトウェアに利用することができる。
【0053】
(付記1)
表示装置の画面上に表示されるとともに入力装置によりデータを入力する少なくとも一つのデータ入力領域と前記画面上に表示される所定の命令の実行を許可または不許可するため前記入力装置により入力操作するコマンド領域とを備え、前記コマンド領域に対する入力の誤操作を防止する誤操作防止装置に用いられる誤操作防止用プログラムであって、
コンピュータに、
前記コマンド領域に対する入力操作が前記所定の命令の実行を許可するために継続されなければならない制限時間を前記データ入力領域に入力されたデータに応じて算出する算出ステップと、
前記コマンド領域に対する入力操作が前記算出ステップで算出された制限時間だけ継続したか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで前記コマンド領域に対する入力操作が前記制限時間だけ継続されたと判定されたとき前記所定の命令の実行を許可する許可ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。(1:第1実施形態、図1、2、3)
【0054】
(付記2)
前記算出ステップは、前記データ入力領域にデータが入力された後、所定の操作により当該算出を実行する、
付記1に記載のプログラム。(図3の参照番号34)
【0055】
(付記3)
前記判定ステップは、前記所定の命令に対し前記コマンド領域に対する入力操作を実行可能にする画面を表示する、
付記1または2に記載のプログラム。(図6)
【0056】
(付記4)
前記許可ステップは、前記コマンド領域に対する入力操作が継続解除されたとき前記所定の命令の実行を許可する、
付記1乃至3の何れか一つに記載のプログラム。(図6の参照番号61、図2のステップS8)
【0057】
(付記5)
前記算出ステップは、前記データ入力領域に入力されるデータ(X1 )と該データに対応して予め設定した制限時間(TL )との関係を示す第1参照テーブルを用いて前記データ入力領域に入力されたデータ(X1 )に対する制限時間(TL )を算出する、
付記1乃至4の何れか一つに記載のプログラム。(2:図5)
【0058】
(付記6)
前記算出ステップは、前記データ入力領域に入力される第1データ(X2 )と該第1データの値に対応して設けられる第2参照テーブルであって前記データ入力領域に入力される第2データ(X1 )と該第2データに対応して予め設定した制限時間(TL )との関係を示す第2参照テーブルを用いて前記データ入力領域に入力された第2データ(X1 )に対する制限時間(TL )を算出する、
付記1乃至4の何れか一つに記載のプログラム。(3:第2実施形態、図8)
【0059】
(付記7)
前記算出ステップは、前記データ入力領域に入力される第1データ(X2 )の値に応じて設けられる制限時間(TL )の係数(Y1 )と該第1データ(X2 )との関係を示す第3参照テーブルを備え、前記データ入力領域に入力される第2データ(X1 )に対応して予め設定した制限時間(TL )と前記係数(Y1 )との積と該第2データ(X1 )との関係を示す第4参照テーブルを用いて前記データ入力領域に入力された第2データ(X1 )に対する制限時間(TL )を算出する、
付記1乃至4の何れか一つに記載のプログラム。(第3実施形態、図9)
【0060】
(付記8)
前記算出ステップは、前記データ入力領域に入力される第1データ(X2 )の値に応じて設けられる制限時間の係数(Y1 )と該第1データ(X2 )との関係を示す第3参照テーブルを備え、前記データ入力領域に入力される第2データ(X1 )および第3データ(X3 )と前記係数(Y1 )とからリスクの度合い(R)を算出し、該リスクの度合い(R)と制限時間(TL )との関係を示す第5参照テーブルを用いて前記データ入力領域に入力された第1、第2および第3データ(X1 、X2、X3 )に対する制限時間(TL )を算出する、
付記1乃至4の何れか一つに記載のプログラム。(第4実施形態、図10)
【0061】
(付記9)
前記判定ステップは、前記所定の命令に対し前記コマンド領域に対する入力操作を実行可能にする画面上に前記所定の命令が実行可能な状態であることを示す表示灯を表示し、
前記許可ステップは、前記コマンド領域に対する入力操作が継続解除され、かつ前記表示灯が点灯したとき前記所定の命令の実行を許可する、
付記4に記載のプログラム。(第5実施形態、図6、図11のステップS208〜S210、図12の参照番号61)
【0062】
(付記10)
表示装置の画面上に表示されるとともに入力装置によりデータを入力する少なくとも一つのデータ入力領域と前記画面上に表示される所定の命令の実行を許可または不許可するため前記入力装置により入力操作するコマンド領域とを備え、前記コマンド領域に対する入力の誤操作を防止する誤操作防止装置において、
前記コマンド領域に対する入力操作が前記所定の命令の実行を許可するために継続されなければならない制限時間を前記データ入力領域に入力されたデータに応じて算出する算出手段と、
前記コマンド領域に対する入力操作が前記算出手段により算出された制限時間だけ継続したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記コマンド領域に対する入力操作が前記制限時間だけ継続されたと判定されたとき前記所定の命令の実行を許可する許可手段と、
を備えることを特徴とする誤操作防止装置。(1:第1実施形態、図1、2、3)
【0063】
(付記11)
表示装置の画面上に表示されるとともに入力装置によりデータを入力する少なくとも一つのデータ入力領域と前記画面上に表示される所定の命令の実行を許可または不許可するため前記入力装置により入力操作するコマンド領域とを備え、前記コマンド領域に対する入力の誤操作を防止する誤操作防止方法において、
前記コマンド領域に対する入力操作が前記所定の命令の実行を許可するために継続されなければならない制限時間を前記データ入力領域に入力されたデータに応じて算出する算出ステップと、
前記コマンド領域に対する入力操作が前記算出ステップで算出された制限時間だけ継続したか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで前記コマンド領域に対する入力操作が前記制限時間だけ継続されたと判定されたとき前記所定の命令の実行を許可する許可ステップと、
を備えることを特徴とする誤操作防止方法。(4:第1実施形態、図1、2、3)
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る誤操作防止装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る誤操作防止処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】ネットワーク証券取引での証券購入時のディスプレイ表示画面を示す図である。
【図4】本発明の制限時間を算出する一般式を示す図である。
【図5】制限時間を算出するデータベースのテーブルの第1具体例を示す図である。
【図6】ネットワーク証券取引での証券購入確認時のディスプレイ表示画面を示す図である。
【図7】本発明の第2〜4実施形態に係る誤操作防止処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】制限時間を算出するデータベースのテーブルの第2具体例を示す図であり、(A)は取引銘柄コードX2 に対応するテーブル番号を格納するテーブルを示す図であり、(B)は(A)に示すテーブルに格納された取引銘柄コードX2 に対応するテーブル番号のテーブルであって取引数量X1 に対応する制限時間TLとの対応関係を定義するデータベーステーブルを示す図である。
【図9】制限時間を算出するデータベースのテーブルの第3具体例を示す図であり、(A)は入力値X2とデータベースの数値Y1との対応関係を定義するデータベーステーブルを示す図であり、(B)は取引数量X1 =2000に対応する制限時間TL との対応関係を定義するデータベーステーブルを示す図である。
【図10】制限時間を算出するデータベースのテーブルの第4具体例を示す図であり、(A)は入力値X2とデータベースの数値Y1との対応関係を定義するデータベーステーブルを示す図であり、(B)はリスクの度合いRの算出式を示す図であり、(C)は算出式により算出したリスクの度合いRに対応する制限時間TL との対応関係を定義するデータベーステーブルを示す図であり、(D)はリスクの度合いRと制限時間TL との対応関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第5実施形態に係る誤操作防止処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】図6に示すネットワーク証券取引での証券購入確認時のディスプレイ表示画面においてOKボタンを押下げてから、一定時間経過後に点灯するランプの記号等が表示される具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 誤操作防止装置
10 パーソナルコンピュータ(PC)
11 キーボード
12 マウス(ポインティングデバイス)
13 ディスプレイ
14 サーバ(データベース)
15 表示情報
16 実行ボタン
17 カーソル
31、32、33 入力用テキストボックス
34 実行ボタン
61 OKボタン
62 キャンセルボタン
63 表示灯
TL 制限時間
Tm 経過時間
X1 、X2 、X3 、…、Xn 入力値
Y1 、Y2 、Y3 、…、Yn 係数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置の画面上に表示されるとともに入力装置によりデータを入力する少なくとも一つのデータ入力領域と前記画面上に表示される所定の命令の実行を許可または不許可するため前記入力装置により入力操作するコマンド領域とを備え、前記コマンド領域に対する入力の誤操作を防止する誤操作防止装置に用いられる誤操作防止用プログラムであって、
コンピュータに、
前記コマンド領域に対する入力操作が前記所定の命令の実行を許可するために継続されなければならない制限時間を前記データ入力領域に入力されたデータに応じて算出する算出ステップと、
前記コマンド領域に対する入力操作が前記算出ステップで算出された制限時間だけ継続したか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで前記コマンド領域に対する入力操作が前記制限時間だけ継続されたと判定されたとき前記所定の命令の実行を許可する許可ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
前記算出ステップは、前記データ入力領域に入力されるデータと該データに対応して予め設定した制限時間との関係を示す第1参照テーブルを用いて前記データ入力領域に入力されたデータに対する制限時間を算出する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記算出ステップは、前記データ入力領域に入力される第1データと該第1データの値に対応して設けられる第2参照テーブルであって前記データ入力領域に入力される第2データと該第2データに対応して予め設定した制限時間との関係を示す第2参照テーブルを用いて前記データ入力領域に入力された第2データに対する制限時間を算出する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
表示装置の画面上に表示されるとともに入力装置によりデータを入力する少なくとも一つのデータ入力領域と前記画面上に表示される所定の命令の実行を許可または不許可するため前記入力装置により入力操作するコマンド領域とを備え、前記コマンド領域に対する入力の誤操作を防止する誤操作防止装置において、
入力の誤操作により発生すると予測されるリスクの度合いに応じて算出される制限時間であって、前記コマンド領域に対する入力操作が前記所定の命令の実行を許可するために継続されなければならない制限時間を前記データ入力領域に入力されたデータに応じて算出する算出手段と、
前記コマンド領域に対する入力操作が前記算出手段により算出された制限時間だけ継続したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記コマンド領域に対する入力操作が前記制限時間だけ継続されたと判定されたとき前記所定の命令の実行を許可する許可手段と、
を備えることを特徴とする誤操作防止装置。
【請求項5】
表示装置の画面上に表示されるとともに入力装置によりデータを入力する少なくとも一つのデータ入力領域と前記画面上に表示される所定の命令の実行を許可または不許可するため前記入力装置により入力操作するコマンド領域とを備え、前記コマンド領域に対する入力の誤操作を防止する誤操作防止方法において、
前記コマンド領域に対する入力操作が前記所定の命令の実行を許可するために継続されなければならない制限時間を前記データ入力領域に入力されたデータに応じて算出する算出ステップと、
前記コマンド領域に対する入力操作が前記算出ステップで算出された制限時間だけ継続したか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで前記コマンド領域に対する入力操作が前記制限時間だけ継続されたと判定されたとき前記所定の命令の実行を許可する許可ステップと、
を備えることを特徴とする誤操作防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−225839(P2008−225839A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63156(P2007−63156)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】