読取り及び/又は書込みのための光データ記憶システム並びにそのようなシステム内での使用のための光データ記憶媒体
適度な開口数(NA)を用いる多層近距離場光記録装置は、高NA(NA=2.0)表面単層技法よりも優れている。極めて平坦で薄いスペーサ層の使用は、層深度の差に起因する球面収差を制限する。薄いスペーサ層は、高い屈折率を有し得る。何故ならば、それらの厚さは、比較的高い吸収定数を可能にするからである。これは、原則的に、平坦な保護被覆層を含み得るNA=1.6を備えた、m―層システム、例えば、m=4を可能にする。さらに、そのようなシステム中での使用のための媒体が記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光データ記憶媒体のデータ記憶層の上に集束される、波長λを有する放射線ビームを用いて、記録し且つ/或いは読み取るための光データ記憶システムであり、mデータ記憶層と、集束される放射線ビームを透過する被覆層とを有する媒体と、開口数NAを有する対物レンズを備える光学ヘッドとを含み、mは、m≧2であり、被覆層は、厚さh0と、屈折率n0とを有し、データ記憶層は、厚さhj及び屈折率njをそれぞれ有するm−1個のスペーサ層によって分離され、ここで、j=1,...,m−1であり、対物レンズは、媒体の最外側の表面からλ/10よりも小さな自由作動距離での記録及び/又は読取りのために構成され、且つ、光データ記憶媒体の被覆層の側に配置された被覆層固体浸レンズを含み、固体浸レンズから、集束される放射線ビームは、記録及び/又は読取り中に光記憶媒体中に結合するエバネッセント波結合によって結合される光データ記憶システムに関する。
【0002】
本発明は、さらに、そのようなシステム内での使用に適した光データ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
光記録システムにおける焦点サイズ又は光解像度のための典型的な測定値は、
【数19】
によってもたらされ、ここで、λは、空中の波長であり、レンズの開口数は、
【数20】
によって定められる。図1Aには、空気−入射構造が描写されており、データ記憶層がデータ記憶媒体、即ち、所謂表面データ装置の表面にある。図1Bには、屈折率nを備える被覆層が、データ記憶層をスクラッチ及びダストから保護している。
【0004】
これらの図面から、もし被覆層がデータ記憶層の上に塗布されるならば、光解像度は不変であることが推断される。一方では、被覆層において、内部開口角θ’はより小さく、故に、内部開口数NA’も減少するが、媒体内の波長λ’は、同一因数n0だけより短い。光解像度が高ければ高いほど、媒体の同一領域上により多くのデータを記憶し得るので、高い光解像度を有することが望ましい。光解像度を増大する直接的な方法は、レンズの複雑さという犠牲を払った集束ビーム開口角の拡大、許容し得る傾斜限界の縮小等、又は、空中波長の減少、即ち、走査レーザの色の変化を含む。
【0005】
光ディスクシステムにおける焦点サイズを減少する他の提案されている方法は、固体浸レンズ(SIL)の使用を含む。最も単純な形態において、データ記憶層上に中心化されたSILは半球である。図2Aを参照。よって、焦点はSILとデータ層との間の界面にある。同一の屈折率、n0’=nSILの被覆層との組み合わせで、SILは、その(仮想)中心が記憶層の上に再び配置された状態で、被覆層上に配置された球の正接方向に切断された断面である。図2Bを参照。SILの動作原理は、SILが、記憶層で、波長を因数nSIL、即ち、SILの屈折率だけ減少し、開口角θを変更することがないことである。その理由は、全ての光がSILの表面に直角に進入するので、SILでの光の屈折がないからである。図1B及び図2Aを比較。空気間隙の幅は、典型的には、25〜40nm(しかしながら、少なくとも100nm未満)であり、原寸で描写されていない。被覆層の厚さは、典型的には、数ミクロンであるが、それも原寸で描写されていない。
【0006】
極めて重要であるが、この地点まで述べられていないことは、SILと記録媒体との間に極めて薄い空気間隙があることである。これは記録器対物レンズ(レンズにSILを加えたもの)に対する記録ディスクの自由回転を許容するためである。この空気間隙は、光学波長よりも一層小さくあるべきであり、典型的には、ディスクへの並びに戻ってSILへのSIL内の光の所謂エバネッセント結合が依然として可能であるよう、それはλ/10よりも小さくあるべきである。これが発生する範囲は、近距離場レジームと呼ばれる。このレジームの外側では、より大きな空気間隙で、全反射がSIL内部に光を捕捉し、それをレーザまで送り戻す。空気界面に対するSILでの臨界角より下の波は、減衰なしに空気間隙を通じて伝播するのに対し、臨界角より上の波は、空気間隙内でエバネッセントになり、間隙幅を備えた指数関数的な減衰を示す。臨界角では、NA=1である。大きな間隙幅に関して、臨界角よりも上の全ての光は、全反射によって、SILの近接表面から反射する。図3A及び3Bを参照。ここで、NA0は、SILが存在しないレンズの開口数である。双方のこれらのレンズ設計において、空気間隙が過剰に広いならば、全反射は、NA>1の場合に起こる。もし空気間隙が十分に薄いならば、エバネッセント波はそれを他の側になし、透明ディスク内で、再び伝播するようになる。もし透明ディスクの屈折率が、開口数よりも小さい、即ち、n0’<NAであるならば、一部の波はエバネッセントなままであり、有効にNA=n0’であることに留意されるべきである。
【0007】
ブルーレイ光ディスク(BD)のための規格のように、405nmの波長の場合、最大空気間隙はほぼ40nmであり、従来的な光記録と比べると、それは極めて小さな自由作動距離(FWD)である。十分に安定したエバネッセント結合を得るために、データ層と固体浸レンズ(SIL)との間の近距離場空気間隙は、5nm以下に一定に(好ましくは、2nm以下に一定に)保たれるべきである。ハードディスク記録では、そのような小さな空気間隙を維持するために、受動空気軸受に依存するスライダに基づく解決策が用いられなければならない。記録媒体がドライブから取り外し可能でなければならない光記録において、潤滑剤の使用は限定的であり、ディスクの汚染レベルはより大きく、空気間隙を制御するための活性なアクチュエータに基づく解決策が求められる。このために、間隙誤差信号が、好ましくは光媒体によって既に反射された光データ信号から抽出されなければならない。そのような信号は見い出されることができ、典型的な間隙誤差信号は図4中に与えられている。
【0008】
NA=nSILsinθのような開口数を定めるために近距離場SILが用いられる場合には、それは一般的な方法であり、開口数は1よりも大きくあり得るが(θは周縁光線の角度である)、被覆層内で開口角度θ’<π/2及びNA’=sinθ’<1であることが留意されるべきである。
【0009】
被覆層が用いられる場合、データ記憶層は、実際には、近距離場にはないことがさらに留意されるべきである。被覆層内部の大きな開口数と組み合わされたSILから被覆層への波のエバネッセント結合があるだけである。この種類の光記憶装置のより適切な名前は「一定エバネッセント結合光記憶装置」又はCECOS(Constant Evanescent Coupling Optical Storage)である。真正の近距離場光記録の場合には、データは、全反射強度を変調するのみならず、データ担持ディスクと対物レンズとの間のエバネッセント結合の量に直接的に影響を及ぼす表面構造によって表わされ得る。CECOSの場合、このエバネッセント結合は一定値に保たれ、データは、光データ記憶の現代技法に共通する、データ記憶層内の振幅又は位相構造によって表わされる。
【0010】
図4において、我々は1.48の屈折率を備える平坦且つ透明な光表面(「ディスク」)からの直線的に偏光された平行な入力ビームに対して平行な偏光状態及び垂直な偏光状態の双方のための反射光の量の測定値(参考文献[1]から取られた)を示している。垂直偏光状態は、近距離場光記録システムのための空気間隙誤差信号として適している。これらの測定値は、理論とかなり合致する。エバネッセント結合は、200nm未満で知覚可能になり、光は「ディスク」内に消失し、全反射は接触点で殆ど直線的に最低に落下する。空気間隙の閉塞ループサーボシステムのmための誤差信号として、この直線的信号を用い得る。水平偏光における振動は、減少する間隙厚さを有するNA=1内の干渉縞の数の減少によって引き起こされる。
【0011】
典型的な近距離場光ディスクシステムについての一層の詳細は、参考文献[2]内に見い出され得る。
【0012】
典型的には50μm未満の小さな作動距離を有するスライダ又はアクチュエータのいずれかに基づく光記録器対物レンズのために、記憶媒体に最も近い光表面の汚染が生じる。これは、それが、データを書き込むために或いはデータ記録層からデータを読み取るためにさえも必要とされる高いレーザ力及び温度に起因する、典型的には光磁気(MO)記録のための250℃及び位相変更(PC)記録のための650℃の高い表面温度の故の記憶媒体から脱着された直後の水及び他の材料の再凝縮に起因する。汚染は、例えば、焦点及びトラッキングシステムのサーボ制御信号の走路の故に、究極的には光データ記憶装置の誤作動を引き起こす。この問題は、参考文献[3]乃至[5]に与えられる特許出願及び特許に記載されている。
【0013】
問題は、以下の場合により厳しくなる。即ち、高い湿度、高いレーザ力、記憶媒体の低い光反射率、記憶媒体の引く熱伝導率、小さな作動距離、及び、高い表面温度。
【0014】
問題に対する既知の解決策は、記憶媒体上の熱絶縁された被覆層によって、記録器対物レンズの近接する光学表面をデータ層から遮蔽することである。この洞察に基づく発明は、例えば、参考文献[4]において与えられている。
【0015】
被覆層を備える近距離場記憶媒体を提供することは、汚れ及びスクラッチがもはや直接的にデータ層に影響を及ぼさないという追加的な利点を有する。しかしながら、被覆層を近距離場光システム上に置くことによって新しい問題が起こり、それは採られるべき新しい手段につながる。これらの手段の一部は、参照番号PHNL040460及びPHNL04061を備える特許出願人によって同時出願された欧州特許出願に記載され、本発明の開示の主題である重要なさらなる洞察、即ち、多層近距離場記録の可能性である。
【0016】
薄く超平坦な被覆層の幾つかの利点が、以後に議論される。ディスク傾斜に関して、被覆層の導入は、「コマ収差」として既知の収差を引き起こし得る。これは如何なる被覆層も限定的な厚さを有すべきかの第一の理由であるが、それはここでは我々の主要な関心ではない。
【0017】
通常、データ層と固体浸レンズ(SIL)との間の近距離場空気間隙は、十分に安定的なエバネッセント結合を得るために、5nm以下に一定に保持されるべきである。被覆層が用いられる場合、空気間隙は被覆層とSILとの間に位置する。図2Bを参照。再び、空気間隙は5nm内に一定に保持されるべきである。明らかに、SIL焦点距離は、データ層が常時焦点内にあるのを保証するために、被覆層の厚さを補償するためにオフセットを有すべきである。被覆層の屈折率は、もしそれがSILの屈折率よりも低いならば、システムの最大限に可能な開口数を決定する。
【0018】
十分な熱絶縁を得るために、誘電体被覆層の厚さは、ほぼ0.5μmよりも多くなければならないが、好ましくは、2〜10μmのオーダである。総合すれば、これは、空気間隙のみの幅を制御することによって、データ層が焦点、即ち、
【数21】
内にあることを保証するために、被覆層の厚さ変化Δhが、焦点深度
【数22】
(媒体内部の実際の焦点深度は
【数23】
である)よりも(一層)小さくあるべきであることを意味する。図5を参照。もし我々が波長λ=405nm及び開口数NA=1.6を取るならば、
【数24】
を見い出す。数ミクロンの厚さのスピンコート層のために、これはディスクの全データ領域に亘る厚さ変化の百分率のオーダであり、それは挑戦的な確度である。しかしながら、次の所要仕様を備えるスピンコート層を作ることは可能であるように思われる。即ち、数ミクロンの厚さ、30nm未満の厚さ変化。例えば、図6及び参考文献[9]及び[10]を参照。被覆層は、データ領域の既に80%を表わす外側28mmに亘って極めて平坦である。流体は(孔がないので)ディスクの中心で処理されず、18.9mmの半径にあるので、この結果は驚くべきものである。普通、これは被覆層の厚さが中央よりも縁部で一層高い極めて不均一な結果をもたらす。しかしながら、この場合には、ディスク半径の関数としてのスピンプロセス中に流体粘度に適合するために、熱勾配が用いられた。
【0019】
例えば、無機化合物のソルゲル技法又はスパッタリングによって、ほんの数ミクロンの厚さを有するより一層薄い層を作成し得る。1〜3ミクロン以上の範囲のより厚い層のための無機化合物の使用は、処理及び費用の観点から、非現実的である。また、そのような層内の応力蓄積は、ディスクの曲げを引き起こしがちである。
【0020】
全体的に、以下の通り結論付け得る。
− 汚染及びスクラッチに対して被覆層が必要である。
− 近距離場光記録システム、特に、位相変化システムの場合には、熱絶縁のために、1μmよりも厚い被覆層が必要である。
− 被覆の屈折率はNA値よりも大きくなければならない。
− スパッタリングされた(無機)材料は、極めて高い屈折率を有し得るが、1μmよりも厚いスパッタリングされた被覆層は、主として処理時間及び応力の結果としてディスクの曲げの故に、光ディスク上には可能でない。
− 1μmよりも厚いポリマ被覆層をスピンコートすることは可能であるが、ポリマはNAを約1.6に制限する一部の無機材料よりも低い屈折率を有する。
【0021】
多層光記憶装置の場合、データ層は、スペーサ層の間に介装されている。これらのスペーサ層は、被覆層と共通する多くの特性を有する。本発明の開示は、主としてスペーサ層の特性についてであり、被覆層の問題は、主要な洞察に対する導入としての働きをなす。
【0022】
多層光データ記憶装置を今や議論する。層当たり同一の密度のデータで、m層(m>1)を備える多層光データ記憶システムは、単層システムよりもほぼm倍(m=1)より多い記憶容量を提供する。そのようなシステムの実施例は、デジタル多用途ディスク(DVD)及びブルーレイディスク(BD)の二層(m=2)バージョンである。これらのシステムにおいて、データ層は、DVDの場合にはほぼ45ミクロンの厚さ並びにBDの場合には25ミクロンの厚さhの所謂スペーサ層によって分離されている。図7では、二層近距離場光システムの実施例が与えられている。L0と呼ばれる、光学ピックアップユニットに最も近いデータ層は、部分的に透明である。
【0023】
データ層間の分離の最適距離hは、少なくとも以下の4つの基準によって決定される。
【0024】
1.データ層の集束S曲線は分離されなければならない(大きなhのために保証されなければならない)。
【数25】
【0025】
2.層間のコヒーレント漏話(検出器上でのそれらの相互反射の干渉)は、変調深度ηを備えるRF信号の変調を引き起こす。「アイパターン」が一定のレベル(検出器上の他の層、即ち、読み取られない層からの光の量は増加hで減少するので、増加hで減少する)でスライスされることを保証するために、この効果は十分に低くなければならない。もしRm,effがm番目の層の有効反射率であり、全ての光が検出器によって集光されるならば、変調深度はほぼ以下によって与えられる(参考文献[6]を参照)。
【数26】
【0026】
3.焦点外層上のチャネルコードからのインコヒーレント漏話は、十分に小さくなければならない。これは、他の層の上の焦点外スポット内の変化するデータパターンに起因する過剰なノイズである。インコヒーレントノイズは、スポットサイズに反比例し、故に、増大hで減少する。何故ならば、他の層の上のより多くのデータは、より大きなhのためのより大きな照明領域の故に、平均化されるからである。
【0027】
4.双方の層の上のレーザ焦点の回折限界品質を保証するために、層の異なる深さに起因する球面収差は、十分に小さく保たれなければならない。それは増加hで増大し、これは上限をhに置く。
【0028】
明らかに、上記の基準は、スペーサ層の厚さを限界内に置く。
【0029】
さらなる読取りのために、例えば、参考文献[6]を参照。多層近距離場光記録の着想が、参考文献[7](多層)及び参考文献[8](二層)において時折述べられていることに留意。
【0030】
以下に、近距離場光データ記憶装置のために、新しいスケーリングレジームを開発し得ることが分かる。
【0031】
さらに、以下のことを結論付け得る。
− スペーサ層の屈折率は、NA値よりも大きくなければならない。
− スパッタリングされた(無機)材料は、極めて高い屈折率を有し得るが、1ミクロン以上のオーダの厚さを備えるスパッタリングされたスペーサ層は、主として処理時間並びに応力の結果としてディスクの曲げの故に、光ディスク上では可能でない。
− 正しい厚さのポリマスペーサ層をスピンコートすることは可能であるが、ポリマは、NAを約1.6に限定する一部の無機材料よりも低い屈折率を有する。
【0032】
球面収差の問題に関して
空中で完全に集束されるよう生成される光の集束ビームを考えてみよう。もし平坦且つ平行な板がビーム中に置かれるならば、それは光軸に沿って焦点を変位し、且つ、所定量の球面収差を導入する。
【0033】
ブルーレイディスク(BD)は、405nmの波長及びNA=0.85の開口数を備える青色光を用いる遠距離場(FF)光記録規格である。BDのための球面収差は、10mλ/μm光路差(OPD)二乗平均平方根である。二層ブルーレイディスクのために、スペーサ層厚さは25μmであり、故に、1つのデータ記憶層から他のデータ記憶層に行くことによって得られる球面収差の総量は、250mλである。収差がほぼ±20mλを越える場合には、記録システムの総収差が71mλより十分に下に留まるよう、如何なる特定の収差の補償も必要であり、それを越える量については、光学はもはや回折限界とは考えられ得ず、焦点はぼんやりし始める。
【0034】
(近軸収差理論からの)既知の経験則は、球面収差の量が、層の厚さ及びNAと比例して4の累乗に変化することである。青色近距離場(NF)光記録の場合、NA=1.6を備えて、人はブルーレイディスクのためよりも(1.6/0.85)4=12.6倍多い球面収差を予期し、それは25μmの同一スペーサ層厚さを補正するためには大き過ぎるように思われる。実際には、NAを用いたスケーリングは、上述の経験則によって提案されるよりも複雑である(例えば、参考文献[14]を参照)。図8では、正しいスケーリングが与えられている。遠距離場システムのために、被覆層の屈折率は、球面収差に殆ど影響を及ぼさないことが分かる。BD(NA=0.85)のための球面収差値が表示されている。
【0035】
多層近距離場記録のための解決されるべき3つの主要な問題点は以下のことに関する。
− データ記憶層間の漏話。
− 高い屈折率に起因するスペーサ層及び被覆層の光吸収。
− 各スペーサ層の異なる光学的深さに起因する球面収差。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
近距離場固体浸レンズを用いて信頼性のあるデータ記録及び読出しが達成される、冒頭段落において述べられた種類の光データ記憶システムを提供することが本発明の目的である。そのようなシステムにおける仕様のための光データ記憶媒体を提供することがさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0037】
第一の目的は、本発明に従って、hjのいずれか1つが
【数27】
よりも大きく、NA<nj及びNA<n0及びb>10、好ましくは、b>15であり、全てのhjの合計が、
【数28】
よりも小さいことを特徴とする光データ記憶システムによって達成され、ここで、n
【数29】
及びk
【数30】
は、それぞれ、各スペーサ層の厚さで重み付けされた全てのスペーサ層の屈折率の平均実部及び虚部であり、ここで、kjは、スペーサ層の屈折率njの虚部であり、fは、集束放射線ビームの周縁光線の要求複光路透過である。
【0038】
洞察は、多層近距離場記録を実現可能にするために、薄く且つ平坦なスペーサ層が求められることである。さらに、我々は、そのような層を生成し得ること、それらがどのように生成されるか、そこにある精密な特性が何であるか、並びに、どの材料を用い得るかを洞察した(参考文献[10]を参照)。また、光記録システムのためにこれがどんな結果を有するかに関する洞察がある。
【0039】
多層光記録におけるコヒーレント漏話の効果を実質的に削減し得る2つのレジームが存在する。第一のレジームは周知であり、DVD及びBD光記録規格に適用される。即ち、光データ記憶層は、「厚い」スペーサ層によって十分に分離されている。その完全領域を越えて、このスペーサ層は、ディスクを走査するために用いられるレーザの波長に比べて必ずしも極めて平坦である必要はない。
【0040】
新しい洞察は、コヒーレント漏話の効果が抑圧される第二レジームが存在することである。もし所要の平坦性を備えるスペーサ層が十分に「薄い」ならば、これらの層を4分の1波長よりも一層良好にすることが実現可能であるように思われる。もし開口数が大きいならば、他のデータ記憶層からのコヒーレント漏話の結果としてのノイズは、薄いスペーサ層を可能にするほど依然として十分に小さい。極めて大きな開口数は、近距離場記録を用いる主要な理由であり、故に、平坦で薄いスペーサ層は、具体的には、この技法のための新しいレジームを切り開く。
【0041】
さらなる着想は、薄い層が追加的な利点を有することである。
【0042】
第一の追加的な利点は、薄い層が光吸収に起因する光減衰を余り有さないことであり、それは層材料のより高い固有吸収を可能にする。これは層材料のより高い屈折率を伴うので、これはより一層有益である。
【0043】
第二の追加的な利点は、もし薄いスペーサ層が用いられるならば、データ記憶層間の相互距離は小さく、故に、光が異なる層の上に集束されるときに多層記憶媒体を通じる光路の差は、比較的小さい。より小さな光路差は、この光路差の結果として球面収差の量もより小さいことを意味する。具体的には、実際的な状況の下で、例えば、4層近距離場データ記憶システムが実現可能である。
【0044】
光記録及び読取りシステムの実施態様において、1つのスペーサ層を備える媒体に対応して、m=2である。
【0045】
他の実施態様において、媒体全体に亘る如何なるスペーサの厚さ変化Δhも、以下の基準を満足する。
【数31】
、より好ましくは、
【数32】
及び
【数33】
【0046】
好ましくは、NAは1.5よりも大きく、それは殆どの近距離場記録システムの場合に当て嵌まる。
【0047】
システムの代替的な実施態様において、hmax
【数34】
は、以下の方程式によって置換され、固体浸レンズんSILの屈折率は、nSであり、いずれかのスペーサ層の屈折率は、njであり、ここで、変数は以下の意味を有し、
【数35】
WRMSは、依然として補正し得る最大二乗平均平方根波面収差である。“Compact description of substrate−related aberrations in high numerical−aperture optical disc readout,” Applied Optics, vol.44, pp.849−858(2005)も参照。
【0048】
hmaxの値は、WRMS<250m、好ましくは、<60mλ、より好ましくは、<15mλの制約に従った球面収差の最大許容量によって制限される。
【0049】
さらなる目的は、波長λ及び開口数NAを有する集束放射線ビームを用いた記録及び読取りのための光データ記憶媒体によって達成され、少なくとも以下を含む。
− mデータ記憶層、及び、集束放射線ビームに対して透明な被覆層、ここで、m≧2、被覆層は、厚さh0及び屈折率n0を有し、データ記憶層は、厚さhj及び屈折率njをそれぞれ有するm−1スペーサ層によって分離され、ここで、j=1,...,m−1であって、
hjのいずれか1つは、
【数36】
よりも大きく、NA<nj及びNA<n0及びb>10、好ましくは、b>15であり、全てのhjの合計は、
【数37】
よりも小さく、ここで、n
【数38】
及びk
【数39】
は、それぞれ、各スペーサ層の厚さで重み付けられた全てのスペーサ層の屈折率の平均実部及び虚部であり、ここで、kjは、スペーサ層の屈折率njの虚部であり、fは、集束放射線ビームの周縁光線の要求複光路透過である。好ましくは、f>0.50、より好ましくは、f>0.80、より好ましくは、f>0.90である。
【0050】
次に、球面収差に関する要件は
【数40】
を示し、吸収に関する要件は
【数41】
を示し、ここで、fは、層の積み重ねを通じた複光路後の所要最低強度である。
【0051】
光データ記憶媒体の実施態様において、1つのスペーサ層を備える媒体に対応して、m=2である。
【0052】
他の実施態様において、媒体全体に亘る如何なるスペーサ層の厚さ変化Δhも、以下の基準を満足する。
【数42】
より好ましくは、
【数43】
及び
【数44】
【0053】
好ましくは、njは、1.5、より好ましくは、1.6、より好ましくは、1.7よりも大きい。これは、全反射の制限なしに、高いNA>15の完全な利益を用い得るという利点を有する。
【0054】
代替的に、他の実施態様において、hmaxは、以下の方程式
【数45】
によって置換され、固体浸レンズnSILの屈折率は、nSであり、いずれかのスペーサ層の屈折率はnjであり、ここで、レンズ瞳に亘る一部の収差平均の意味を有する変数は、
【数46】
によって与えられ、WRMSは、依然として補正し得る最大二乗平均平方根波面収差である。
【0055】
hmaxの値は、WRMS<250m、好ましくは、<60mλ、より好ましくは、<15mλの制約に従った球面収差の最大許容量によって制限される。
【0056】
光データ記憶媒体の実施態様において、スペーサ層は、放射線ビームに対して実質的に透明なポリイミドを含む。好ましくは、ポリイミドは紫外線(UV)硬化性である。
【0057】
今や図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
多層光データ記憶装置は、単層技法よりも高いデータ容量を有し得る。
− より多くのデータ層は、より多くのスペーサ層が必要とされることを暗示する。
− スペーサ層がスピンコート可能であるべきであり、これはポリマを暗示する。
− 高い開口数NAは、高い屈折率nを必要とする。
− 高いnは、高い吸収kを意味する。
− 高いkは、小さなデータ−層間隔hを必要とする。
− 漏話は、極めて平坦な層を必要とする。
− 球面収差及び光吸収の双方が限界内に留まるので、小さなデータ−層間隔は多層媒体を可能にする。
これは円を閉じる。
【0059】
近距離場光データ記憶装置の場合のスペーサ層厚さのスケーリング
もし被覆層の厚さが、焦点深度
【数47】
よりもずっと小さく、スペーサ層厚さ変化も、Δhj=λ/(4nj)(
【数48】
に留意)よりもずっと小さいならば、間隙及び焦点の双方を制御するために、間隙誤差信号を用いることができ、それ故に、S曲線型の焦点誤差信号の必要はなく、それ故に、それらは分離される必要がない。もし求められるならば、例えば、RF変調から焦点及び球面収差オフセット信号を導出し得る。
【0060】
正に、もしスペーサ層厚さ変化が、Δhj=λ/(4nj)、スペーサ層媒体内の4分の1波長よりもずっと小さいならば、RF信号に対する層間干渉変調はない。図9を参照。もし厚さ変化が十分に小さいならば、Δh<<λ/(4n)、光記録のための極めて有用なパラメータレジームが入れられる。
【0061】
コヒーレント漏話に関しては、もしスペーサ層厚さ変化Δ/(4n)が極めて小さいならば、干渉最小が生じるようにスペーサ層厚さhjを選ぶことは有益に思われる。全ての光がデータ記憶層に対して殆ど直角に伝播する小さな開口数のより単純な場合、これはスペーサ層が、スペーサ層材料中の4分の1波長の奇数整数倍i、即ち、hj=iλ/(4nj)の厚さを有することを暗示する。屈折率=1.70及び波長λvac=405nmのために、これは
【数49】
の厚さ、例えば、i=23のために、h=1.37μmの厚さを暗示する。相当数の4分の1波長(実施例では、i=23)に及ぶスペーサ層厚さとの組み合わせの、ここで検討されるような高い開口数の場合には、多数の同心の干渉縞が存在する。強め合う干渉と弱め合う干渉との間で交互する、これらの縞からの検出器上の光の積分強度は、平均化される傾向にあり、それは、コヒーレント漏話変調深度ηが高い開口数のために大きく減少されることを暗示する。実際には、もしRm,effがm番目の層の有効反射率であり、且つ、全ての光が検出器によって集光されるならば、変調深度は以下によって近似的に与えられる。
【数50】
【0062】
大きな開口数のために、スペーサ層の正確な厚さは、小さな効果のみを有する。
【0063】
これはチャネルコードからのインコヒーレントノイズを最も重要なスケーリングパラメータとして焦点外層の上に残す。隣接層上の焦点外スポット内のランレングスの数を決定することによって、インコヒーレント漏話の結果としてのノイズを推定し得る。図10において、焦点がL1上にあるとき、L0上のスポットサイズは推定される。
【0064】
L0上のスポットサイズAは、スペース層内部の開口数又は内部周縁光線の角度θの関数である。
【数51】
【0065】
もしチャネルビット長がTであるならば、<T>は平均ランレングスである。焦点外で照明されるランレングスの数N<T>は、
【数52】
であり、ここで、我々は、ディスクのトラック構造を無視した。トラックピッチは、平均ランレングス(DVD740nmのために、1.156の因数、BD320nmのために、1.290の因数)とほぼ等しいことに留意。トラック間の領域が一定の反射率を有することにも留意。総インコヒーレントノイズは、層L0及びL1の有効反射率の比、データマークの変調深度及び1/N<T>の平方根に依存する。もしN<T>,minが、十分に低いインコヒーレント漏話を得るためのランレングスの最小数であるならば、スペーサ層の最小厚さは、以下によってもたらされる。
【数53】
【0066】
表Iにおいて、スペーサ層の厚さのスケーリングは、スペーサ層の屈折率、選択された開口数、及び、BD値と比例するランレングスの幾つかの値のために与えられる。hのための値、既知のスペーサ層の厚さを用いてN<T>,minのために明らかに適切な値を計算するために用いられるDVD及びBDのための場合。計算された数は太字に印刷され、推定値は普通に印刷されている。最終列中の太字の数は、5つの異なる組の近距離場システムパラメータのスペーサ層の最小所要厚さを与えている。典型的には、hmin<2μmであることが明らかである。示されている全ての実施例は、紫外線の実施例を示す底部行を除き、405nmの青色波長に関してである。この実施例は、極端な場合には、最低スペーサ層厚さがミクロンよりも一層ずっと少ないことを示している。
【0067】
【表1】
【0068】
吸収を考慮した設計の実施例
我々は、周縁光線の光吸収を計算したい。周縁光線は、一方では、スペーサ材料中に最長光路長D=2h/cosθを有し、他方では、光解像力を決定するので、最も重要である。もし
【数54】
が、相対的な強度又は透過率であるならば、我々は、labs=λvac/(4πk)、材料の吸収長さを備える
【数55】
を有し、我々は、
【数56】
を得る。屈折率の虚部は以下の通りである。
【数57】
【0069】
システムを設計するために、内部開口数NAintは、内部周縁光線の角度θを選択することによって決定される。図10を参照。引き続き、(外部)NAは、層の屈折率nによって決定される。周縁光線の最低許容全透過率
(外1)
を選択することによって、スペーサ層の最適(総)厚さhoptを計算し得る。最適値は、減衰kとインコヒーレント漏話との間でトレードオフされる。
【0070】
以下の実施例は現実的である。
1)θ=70°、n=1.70、
【数58】
、及び、波長λvac=405nmを選択し、次に、次のスペーサ層の設計ルールが得られる。
2)内部周縁光線の角度θ=70°をとる。
NAint=sinθ=0.94
NA=nsingθ=1.60
3)開口数を備えるブルーレイディスクの平均ランレングスのスケーリングは、<T>=210.8/NAをもたらす。これは、N<T>=2543、DVDのための焦点外スポット内のランレングスの平均数と共に、以下の最適厚さを生む。
【数59】
4)最適厚さでとられた周縁光線
【数60】
の全透過率(最大NAでの複光路)は、
【数61】
である。
もし、例えば、
【数62】
であるならば、
【数63】
であることに留意。
【0071】
この実施例の結果を要約すると、我々は、スペーサ層がhopt=1.37μmの最適厚さを有することを見い出した。スペーサ層は、この厚さを備えてディスク上に実際に堆積され得る材料から成らなければならない。ポリマのスピンコーティングは、所要処理の速度及び確度、並びに、十分に高い平坦性(Δh<20nm)及び場合によっては十分に低い応力を提供する(高い応力はディスクを曲げ、光学対物レンズのために求められる極めて小さな距離で従うために表面を硬くする)。材料は屈折率n=1.70及びk=9.0×10−4の吸収を有さなければならない。この範囲のパラメータ内の仕様を備えるポリマ材料は存在する。参考文献[16]を参照。もし選択される材料の実際の吸収がこの値よりも低いならば、より高い屈折率を有する材料(場合によっては選択されるポリマの修正版)が存在しなければならず、故に、それはより高い開口数を支持し、上記条件に合致するより高い吸収係数を有する。
【0072】
上記の実施例中で与えられるパラメータに基づく、例えば、7μmの全体厚さを有する4層及び被覆層を備える多層システムにおいて、吸収はk=1.8×10−4である。被覆層上のスポットの最大直径は、底部層が焦点内にあるとき、39μmである。
【0073】
4層システムの実施例
図11A及び11Bには、多層光データ記憶媒体が描写されている。この実施例において、4層、L0,L1,L2,L3は、厚さh1,h2,h3のスペーサ層によってそれぞれ分離されている。被覆層は、厚さh0を有する。図11Aでは、レーザが頂部層上に集束され、図11Bでは、それは底部層上に集束されている。記憶層間の分離距離は不均一(この場合にはh1≠h2≠h3=h1)に取られており、それは他の層の読取り中に記憶層上に間接的に集束することを防止し、例えば、もし人がh1=h2=h3を取るならば、L3の読取り中、L2からの反射は、L1上にゴースト焦点を引き起こし、余分なインコヒーレント漏話を招く。これはゴース層上のデータが大きなスポットに亘って平均でないからである。
【0074】
よって、図11A及び11Bには、波長λ=405nmを有する放射線ビーム、即ち、レーザビームを用いた記録及び/又は読取りのための光データ記憶システムが示されている。レーザビームは、光データ記憶媒体のデータ記憶層上に集束される。システムは、以下をさらに含む。
− 4(m=4)つのデータ記憶層及び集束レーザビームを透過する被覆層を有する媒体。前記被覆層は、厚さh0=3.0μm及び屈折率n0=1.6を有する。データ記憶層は、厚さh1=2.0μm、h2=4.0μm、及び、h3=2.0μm、並びに、屈折率nj=1.60及びkj=1.4×10−4(f=080に対応する)をそれぞれ有する3(m−1)つのスペーサ層によって分離されており、ここで、j=1、2、又は、3である。
− 開口数NA=1.44を有する対物レンズを備える光学ヘッド。前記対物レンズは、前記媒体の最外側表面からλ/10=40.5よりも小さな自由作動距離での記録及び/又は読取りのために構成され、且つ、前記光データ記憶媒体の被覆層側上に配置された固体浸レンズ(SIL)を含む。集束レーザビームは、記録及び/又は読取り中、エバネッセント波結合によって、固体浸レンズから光記憶媒体中に結合される。
【0075】
いずれか1つのhjは、
【数64】
よりも大きく、NA<nj=1.62及びNA<n0及びb>10であり、全てのhjの合計は、
【数65】
及び
【数66】
よりも小さく、ここで、n
【数67】
及びk
【数68】
は、それぞれ、各スペーサ層の厚さで重み付けされた、全てのスペーサ層の屈折率の平均実部及び虚部であり、ここで、kjは、スペーサ層の屈折率njの虚部であり、fは、集束放射線ビームの周縁光線の要求複光路透過である。1.52のNAでの他の可能な組のパラメータは、h0=3.0、h1=1.3、h2=2.6、及び、h3=1.3、並びに、屈折率nj=1.60及びkj=1.3×10−4(f=0.80に対応する)であり、ここで、j=1、2、又は、3である。
【0076】
媒体全体に亘る如何なるスペーサ層の厚さ変化Δhは、以下の基準を満足する。
【数69】
及び
【数70】
【0077】
薄い被覆層及びスペーサ層を用い得るので、多層近距離場光データ記憶装置は可能である。推論の可能な階層が以下に与えられる。
− 被覆層及びスペーサ層は薄いので、それらを極めて平坦になし得る。
− スペーサ層は極めて平坦であるので、コヒーレント漏話からの負の効果なしに、記憶層を密接に接合し得る(即ち、スペーサ層は薄くあり得る)。
− スペーサ層は薄いので、層間の球面収差は小さい。
− 層は薄いので、それらは、所与の最大減衰のために、より高い光吸収係数kを有することが可能とされ、次いで、それは(因果律によって屈折率の実部と虚部とを接続する(根本的な)クラマース−クローニヒ法則の結果として)より高い屈折率nを可能にする。
− 屈折率はより高いので、層の厚さはより一層小さくあり得る。
− 屈折率はより高いので、NAはより高く、故に、データ容量は二次方程式的により高い。
【0078】
二層近距離場(NF)記録:スペーサの厚さに対する(イン)コヒーレント漏話、光吸収、及び、球面収差の制限
波長λ、開口数NA、スペーサ厚さh、スペーサ屈折率nを備える二層システムを考察しよう。2つの層の反射は、振幅及び位相が等しいと想定される。瞳内の干渉縞は、瞳の中心にある縞及び瞳の縁にある縞を除き、平均化する。対物レンズの集光開口に亘る縞の平均は、信号振幅によって規格化される中央開口信号内の項(term)を招き、以下のコヒーレント漏話(CCT)を生じさせる。
【数71】
ここで、θmは、スペーサ層内の周縁光線の極角であり、ここでは、sinc(χ)=sin(χ)/χである。cos項の周期性は、λ/n(1+cosθm)であり、もしNAが十分に小さいならば、それはほぼλ/2nであり、経路長の差2hに起因する。sinc項内に現れる周期性は、中央縞と外側縞との間の位相差に関係し、周期性λ/n(1−cosθm)を有し、それはスペーサ層内部の焦点深度に関係し、即ち、軸強度プロファイルは、
【数72】
を有し、それはz=λ/n(1−cosθm)にその第一ゼロを有する。十分に小さなNAのために、我々は、焦点深度λ/n(1−cosθm)がほぼ2nλ/NA2であることを見い出した。λ=0.405μm、NA=0.85、n=1.62の遠距離場の場合のCCT信号のプロットが、図12に示されている。この場合には、cos因数は、sinc因数よりもより速く振動している。従って、スペーサ厚さへのCCT信号の依存は、sinc因数のゼロ地点で最小限化される。もし経路長差2hが焦点深度λ/n(1−cosθm)の整数i倍であるならば、これらは得られる。近距離場の場合に関して、cos因数の周期性は、sinc因数の周期性に匹敵し、λ=0.405μm、NA=1.5、n=1.62のために、図13のようなプロットを示す。明らかに、以前の処方(2h=iλ/n(1−cosθm))はもはや有用でない。異なる処方はさほど直接的ではない。例えば、CCT信号が最小又は最大であるようにhが選択されるならば、スペーサ厚さhへの依存は最小である。平坦性のための要求は、例えば、変数Δhが、2つの周期性の最小、λ/n(1+cosθm)に比べて十分に小さくなければならないことであり、例えば、
【数73】
であり、それはhをΔh≦23nmと評価する。
【0079】
焦点外層内の無作為データに起因するノイズ(インコヒーレント漏話、ICCT)を考慮する二層DVDから比例する最小スペーサ厚さは、
【数74】
であり、NA<nj及びNA<n0及びb>10、好ましくは、b>15である。
【0080】
第一の実用的な最大スペーサ層の厚さは、スペーサ材料の吸収によって要求される(他の理由は絶対厚さ均一性であり、それはより薄い層のためにより良好である)。例えば、
【数75】
(θmで複光路)の周縁光線の全透過率のために、我々は、
【数76】
を得た。ここで、n
【数77】
及びk
【数78】
は、それぞれ、各スペーサ層の厚さで重み付けされた、全てのスペーサ層の屈折率の平均実部及び虚部であり、ここで、kjは、スペーサ層の屈折率njの虚部であり、fは、集束放射線ビームの周縁光線の要求複光路透過率である。kは、
【数79】
による消衰係数に関する。
【0081】
高い屈折率nを備える材料は高いkも有することを留意することが重要である。上記から、k≦6×10−4NA2/n=8.3×10−4ということになる。我々がn>1.7を要求する場合、これは殆どの有機材料(即ち、スピンコート可能なポリマ)を除外する。
【0082】
他の実用的な最大スペーサ層厚さは、レーザ焦点が1つのデータ層から隣りのデータ層に移動されるときにスペーサ層によって誘導される球面収差の量によって要求される。実際的な見地から、光路内に追加的な可変光学素子を用いることで、約250ミリ波RMS(二乗平均平方根)の、限定的な量の球面収差だけを補正することが可能である。
【0083】
全光路の十分に低い全収差を保証するために、各層の上の残留球面収差は、ほぼ±30ミリ波RMS未満であるべきである。
【0084】
屈折率n1(SIL)を備える媒体から屈折率n2の層内に集束される開口数NAのビーム及びレンズのために、厚さh当たりのRMS波面収差は、
【数80】
によって与えられ、ここでは、(レンズ瞳に亘るある収差平均の意味を有する)変数は、
【数81】
によって与えられる。
【0085】
例えば、m’=ns/nj及びs’=NA/njのパラメータを導入することによって、これらの方程式は、スペーサ層の屈折率に対して比例され得る。図14において、m’の一部の値のための球面収差は、DVDインコヒーレント漏話から得られるような厚さhminのために与えられる。頂部水平軸は、DVDインコヒーレント漏話から得られるようなnspacerhmin=njhminを示し、それはs’=NA/nj、底部水平軸の簡単な関数である。60mλRMS球面収差の値は、二層システムのために正に許容し得る。同等に、15mλRMS球面収差の値は、4層システムのために正に許容し得る。双方の場合において、層当たり最大±30mλRMA球面収差が得られる。図14から分かるように、小さな比率のmjが好ましい、即ち、m’<1.2、又は、好ましくは、m’<1.02である。
【0086】
表IIは、NA並びにスペーサ層屈折率n2及びSIL屈折率nsの双方の一部の値のためのRMS球面収差を示している。典型的なスペーサ層は、1.4ミクロンの厚さ及び屈折率nj=1.7を有し得る。もしSIL屈折率ns=1.9であるならば、表は球面収差がA40=WRMS/λ=36.95×1.4/2=±26ミリ波であることを示す。これは、所与の実施例において、余分な球面収差補償手段が必要とされないことを意味する。
【0087】
【表2】
【0088】
近磁場光データ記憶装置の場合における球面収差
被覆層及びスペーサ層に起因する多層近距離場光学系のための球面収差の量を許容可能な限界内に保ち得ることが示される(参考文献[14]も参照)。71mλ OPD RMSの全収差が回折限界であると考えられる。球面収差は、この数よりも明確に少なくなければならない。BDシステムにおいて、全収差は250mλ OPD RMSであり、例えば、液晶セルによる活性補償が求められる。近距離場システムにおいて250mλ OPD RMSの量の球面収差を補償することが可能であると推定することは妥当に思われ、我々はそれをベンチマークとして用いる。
【0089】
図15には、Bismuth Germanate(BGO)固体浸レンズ(SIL)を備える近距離場光学素子のための青色波長(405nm)における球面収差が示されている。球面収差は、被覆層の屈折率の3つの値に関して示されている。それは最低値が被覆層の最高屈折率のために得られることを示している。屈折率n=1.7及び開口数NA=1.6に関して、我々は60mλ/μm OPD RMS球面収差を得た。これは多層積層厚さ(被覆層に加えてスペーサ層)をほぼ
(外2)
に制限する。
【0090】
図16には、屈折率n=2.007を備えるSF66から成る固体浸レンズ及び屈折率n=1.9を備えるガラスを有する近距離場光学素子のための青色波長(405nm)における球面収差が示されている。球面収差は、被覆層の屈折率の2つの値に関して示されている。n=1.7の被覆層屈折率に関して、これは多層積層厚さをほぼ
(外3)
に制限する。これは1.37μmスペーサ層及び1.5μm被覆層を備える4層ディスクを作成するのに十分である。
【0091】
図15及び図16の双方からの結果は、被覆層の最高屈折率のために最低値が得られることを示している。
【0092】
もし遠距離場(FF)値が既知であるならば、近距離場(NF)ディスクのための球面収差のスケーリングは直接的に直観的ではないことに留意。図8を参照。そこでは、我々は、ブルーレイディスク(同一の波長)のために、10mλ/μm OPD RMSの値が、25μmのスペーサ層のために、二層ブルーレイディスクのための25μm×10mλ/μm=250mλに増大することを見い出した。我々が参考文献[14]の理論的結果を用いて計算した図15及び図16中のデータは、図8中のデータの補外が示唆するものに比べ、球面収差のためのより低い値を示している(収差はNA=1を越えて発散するように思われる)。これは、収差を決定するのが開口数NA=n sinθではなくむしろ角度θであるという明白な事実に遡らされ得る(図3に関して開口数についてなされた注釈も参照)。
【0093】
図15及び図16に示されるデータは、低い球面収差を得るために、SILと被覆との間の屈折率の差が小さくされなければならないこと、並びに、30mλ/μm OPD RMSよりも低い値も可能でなければならないことも示唆している。これは図14中により明瞭に見られ、その場合には、m=1のために、我々はA40=0を得た。典型的には、スペーサ厚さは2μm未満であり、それは二層近距離場ディスクに関して2μm×30mλ/μm=60mλに増大する。
【0094】
ポリマ被覆層及びスペーサ層の屈折率がn=1.7であるよう選択される場合、SILも、好ましくは、n=1.7の屈折率を有するべきである。しかしながら、対物レンズの高い開口数を得るために、より高い値のSILの屈折率が望ましくあり得る。
【0095】
実施例:単層NA=2.0を覆って二層NA=1.6を備える近距離場システム
(外4)
− 被覆及びスペーサ層のための臨界厚さ変化
− 光路及び対物レンズ複雑性(焦点ジャンプ、球面収差)
− 高い屈折率(n>1.7)スピンコート可能ポリマの入手可能性
【0096】
上記問題点の第一は、本発明の開示の早くに取り扱われた。他の2つは以下に議論される。これらの問題のいずれも本質的な問題ではないように思われる。
【0097】
(外5)
単層NA=2.0システムと比べると、NA=1.6を備える二層システムは28%より多い容量を有し得る。
【0098】
(外6)
のためのスパッタリングされたスペーサと比較された
(外7)
のためのポリマスペーサ:
+ 数μmの厚さを備える層は、ポリマに関して問題ではない。
+ 厚いポリマスペーサは、極めて少ない応力(より少ないディスク曲げ)を引き起こす。
+ スパッタリングよりもずっと高速なスピンコーティング。
【0099】
(外8)
のためのスパッタリングされた被覆と比較された
(外9)
のためのポリマ被覆:
+ ポリマはより低い伝導率を有し、これは位相変化ディスク上のより低い表面温度を暗示する。
+ 数μmの厚さを備える層は、ポリマに関して問題ではない。
+ 厚いポリマ被覆は、極めて少ない応力(より少ないディスク曲げ)を引き起こす。
+ スパッタリングよりもずっと高速なスピンコーティング。
+ 小さなスクラッチに対する感度の減少。
【0100】
(外10)
と比較された
(外11)
のためのピッチ及び溝の寸法:
+ より容易且つより高速なマスタリング。
+ より容易な複製。
+ より大きなデトラッキング限界(de-tracking margin)、サーボのための1.25×より小さなDC利得。
+ 位相変化晶子と比べより大きな位相変化効果。
+ TE(及びTM)偏光スポットのためのより効率的な回折。
【0101】
(外12)
レンズと比較された
(外13)
レンズの利益:
+ 同一NF結合効率のために許容されたより大きな空気間隙(40nm対25nm)。
+ より大きな残留空気間隙誤差
+ より広いレンズマーキング限界
(外14)
のためのより大きなスポット:
(外15)
よりも大きな読取り力(より良好なSNR)。
+ 1.25×より小さなMTF遮断周波数:より少ない媒体ノイズ、より良好なSNR。
【0102】
静電集束(static focus)制御
被覆層及びm個のスペーサ層の全厚さが、十分に小さな厚さ変化、Δh=Δh1+Δh2+...+Δhmを有すると仮定すると、例えば、その組み合わせ厚さは20〜50nm未満だけ変化し、我々は、動的空気間隙補正に加え、被覆層にスペーサ層を加えた組み合わせの厚さ変化を補償する焦点距離の静電補正(static correction)を提案する。
【0103】
目的は、データ(記憶)層が焦点内にあると同時に、正しいエバネッセント結合が保証されるよう、SILと被覆層との間の空気間隙が一定に保たれることである。
【0104】
光学対物レンズの位置は、間隙幅を5nm未満に一定に維持するために、ある間隙誤差信号に従って調節されなければならない。
【0105】
スペーサ層内の4分の1波長及び焦点距離の双方よりも実質的に少ない厚さ変化を伴う被覆層及びスペーサ層の組み合わせは、さもなければ間隙サーボに加えて必要とされる、対物レンズの自動集束制御の必要を排除する。本出願人によって同時出願された整理番号PHNL040460を備える欧州特許出願を参照。ディスク間分散に適合するための静電集束制御及び球面収差補正だけが望ましい。例えば、導入トラックからの既知の信号の変調深度を最適化することによって、これを実現し得る。
【0106】
例えば、対物レンズは2つの素子を含み、空気間隙を大幅に変えることなく対の焦点距離を調節するよう、それらの2つの素子を軸方向に変位し得る。対物レンズを全体として移動することによって、空気間隙を調節し得る。図17A及び17Bを参照。空気間隙は一定に保たれる(SILはディスク表面に従うよう制御される)が、レンズによって、第四記憶層上での焦点を得るよう移動される。一般的に、所定量の球面収差が残る。一部の場合には、レンズ系、被覆層、及び、スペーサ層の組み合わせの最適な設計は、システム要件を満足し、他の場合には、球面収差の活性調節が必要とされ、さらなる手段が採られなければならない。
【0107】
本出願によって同時出願された参照番号PHNL040460及びPHNL040461を備える欧州特許出願は、単層光学系に適合するのみならず、多層光学系にも適合することを留意。
【0108】
ポリマの高い屈折率:n>1.7の実施例
n=1.9程度の高さの屈折率を備える高屈折率ポリマが存在する。例えば、Brewer Science Inc.によって製造される材料を参照。我々の適用のために最も興味深い化合物は、所謂ポリイミドによってもたらされるように思われる。405nmの波長にある光の光吸収は高いが、一部の材料に関しては、それは本発明の開示によって指し示されるような厚さレジーム内で適用可能であるために十分に低い。
【0109】
材料は、屈折率n=1.70及びk=9.0×10−4の吸収を有すべきである。この範囲のパラメータの仕様を備えるポリマ材料は存在する。参考文献[16]を参照。
【0110】
吸収量k(屈折率の虚部)とα(消衰係数)との間で変換するために、以下の方程式を用い得る。
メートルのλのために、
【数82】
【0111】
二層NF対物レンズ:光学設計実施例NA=1.5
この設計は、実用性の実施例としてここで用いられ、本出願人によってなされた。図19及び図20を参照。
設計のために採られるべきパラメータは:
− 405nm波長のためのガラス成形レンズ
− NA=1.5
− 被覆層厚さ3μm(n=1.62)
− スペーサ層厚さ3μm(n=1.62)
− 一定の空気間隙を備えるデータ層L0からL1までの焦点ジャンプ
【0112】
焦点ジャンプは以下を求める:
− コリメータ位置の変更
− 第一レンズとSILとの間の距離の変更
L0上の焦点: NA=1.50、OPD=0mλ RMS、共役距離=無限大
L1上の焦点: NA=1.53’ OPD=14mλ RMS、共益距離=−78mm
15mλ OPD RMS:場:Δφ=0.22°、SIL軸ずれ:Δr=7μm、SIL厚さ:Δt=12μm、非球面軸外し:Δr=1.0μm。
BGO SILの厚さ許容差は極めて大きく、非球面軸外し限界は厳しいが、実現可能である。この実施例は、二層近距離場レンズが実現可能であることを示している。
【0113】
レンズ、補正器、及び、光路の典型的な実施例(PHNL040460も参照)
記録器対物レンズ内の2つのレンズ間の距離を調節するためにローレンツモータを有する二重レンズアクチュエータが設計された。図20及び参考文献[11]を参照。レンズ系が全体としてアクチュエータ内に嵌入する。二重レンズは、反対方向に巻回された2つのコイルと、2つの放射状に磁化された磁石とから成る。コイルは、対物レンズホルダの周りに巻回され、このホルダは2つの板バネ内に懸架される。コイルを通じる電流は、2つの磁石の漂遊磁界との組み合わせで、第一対物レンズをSILに向かう方向或いはSILから離れる方向に移動する垂直力を生む。近距離場設計は、図21中の図面のように見え得る。
【0114】
システムの焦点位置を変更するための図11、17、18、20、及び、21に示されるものの代替的な実施態様は、例えば、レーザコリメータレンズの調節(図22を参照)、或いは、エレクトロウェッティング又は液晶材料に基づく切替可能な光学素子(図23及び24並びに参考文献[7]も参照)を含む。もちろん、これらの手段を同時に採り得る。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】Aは、被覆層を備えない通常の近距離場記録対物レンズ及びデータ記憶ディスクを示す概略図である。Bは、被覆層を備える通常の近距離場記録対物レンズ及びデータ記憶ディスクを示す概略図である。
【図2】Aは、被覆層を備えない近距離場光記憶対物レンズ及びデータ記憶レンズを示す概略図である。Bは、被覆層を備える近距離場光記憶対物レンズ及びデータ記憶レンズを示す概略図である。
【図3】Aは、NA=nSILNA0を有する半球形SILを備えるレンズの近距離場レンズ設計の1つの主要な実施例を示す概略図である。Bは、nSIL2NA0を有する超半円形SILを備えるレンズの近距離場レンズ設計の1つの主要な実施例を示す概略図である。
【図4】照射ビーム偏光状態に対して平行及び垂直な偏光状態の反射光の総量の測定値並びに双方の合計を示すグラフである。
【図5】被覆層の厚さ変化は焦点深度よりも大きく或いは小さくあり得ることを示す概略図である。
【図6】スピンコート層、UV硬化性シリコーンハードコートの実施例を示すグラフである。
【図7】Aは、レーザが頂部層L0上に集束されることを示す概略図であり、二層光データ記憶媒体内で、データ層L0及びL1は厚さhのスペーサ層によって分離され、被覆層は厚さh0を有する。Bは、レーザが底部層L1上に集束されることを示す概略図であり、二層光データ記憶媒体内で、データ層L0及びL1は厚さhのスペーサ層によって分離され、被覆層は厚さh0を有する。
【図8】青色近距離場光記録装置の球面収差(光路差)と開口数とのスケーリングを示すグラフである。
【図9】スペーサ層の厚さが4分の1波長よりも大きく或いは小さくあり得ることを示す概略図である。
【図10】焦点外層上のスポットが多くのデータのランレングスを含むことを示す概略図である。
【図11】Aは、多層光データ記憶媒体内で、データ層が厚さhのスペーサ層によって分離されていることを示す概略図である。Bは、多層光データ記憶媒体内で、データ層が厚さhのスペーサ層によって分離されていることを示す概略図である。
【図12】λ=405μm、NA=0.85、及び、n=1.62の遠距離場の場合のための0.5〜6μmとの間のスペーサ厚さhのためのCCT信号を示すグラフである。
【図13】λ=405μm、NA=1.5、及び、n=1.62の近距離場の場合のための0〜6μmとの間のスペーサ厚さhのためのCCT信号を示すグラフであり、DVD ICCTから比例するような最小厚さは、hmin=1.63である。
【図14】λ=0.405μm、NAは0.5の間の近距離場の場合のための0〜20μmの間のDVD ICCから比例されるような最小スペーサ厚さhminのためのスペーサ屈折率nに比例された球面収差パラメータ空間を示すグラフである。
【図15】Bismuth Germanate(BGO)固体浸レンズ(SIL)を備える近距離場光学素子のための球面収差を示すグラフであり、球面収差は、被覆層の屈折率の3つの値のために示され、最小値は被覆層の最大屈折率に関して得られる。
【図16】Bismuth Germanate(BGO)固体浸レンズ(SIL)の異なる屈折率のためのSILを備える近距離場光学素子のための球面収差を示すグラフであり、SIL及び被覆層が屈折率の最小の差を有するならば、球面収差が最低である。
【図17】Aは、第一記憶層が焦点内にあるときの多層光記憶装置の場合の二重アクチュエータの動作原理を示す概略図である。Bは、対物レンズを全体として移動することによって空気間隙が一定に維持されるときの並びに第四記憶層が焦点内にあるときの多層光記憶装置の場合の二重アクチュエータの動作原理を示す概略図である。
【図18】第一レンズ(上部)とSILとを含む二層レンズ設計を示す概略図であり、SILは、2ミリラジアン又は0.12°のディスク傾斜を可能にするよう円錐形にされ、SILに対して第一レンズの位置を変更し得る。
【図19】図18の二層レンズ設計のL0上の焦点の光ディスクのクローズアップ図である。
【図20】近距離場のための二重レンズアクチュエータの可能な実施態様を示す断面図であり、DVRのためのHNA(高NA)設計に基づいている。参考文献[11]を参照。
【図21】SILに対してレンズを移動することによって焦点ぼけを得ることができることを示す概略図である。
【図22】対物レンズに対してレーザコリメータレンズを移動することによっても焦点ぼけを得ることができることを示す概略図である。
【図23】光学系の焦点距離を調節するために用い得るエレクトロウェッティング(EW)又は液晶(LC)材料に基づく切替可能な光学素子を示す概略図であり、このようにして特定量の球面収差を同時に補償することも可能である。
【図24】光学系の焦点距離を調節するために用い得るエレクトロウェッティング又は液晶材料に基づく切替可能な光学素子を示す概略図であり、ここでは、それは第一レンズとSILとの間に配置され、このようにして特定量の球面収差を同時に補償することも可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光データ記憶媒体のデータ記憶層の上に集束される、波長λを有する放射線ビームを用いて、記録し且つ/或いは読み取るための光データ記憶システムであり、mデータ記憶層と、集束される放射線ビームを透過する被覆層とを有する媒体と、開口数NAを有する対物レンズを備える光学ヘッドとを含み、mは、m≧2であり、被覆層は、厚さh0と、屈折率n0とを有し、データ記憶層は、厚さhj及び屈折率njをそれぞれ有するm−1個のスペーサ層によって分離され、ここで、j=1,...,m−1であり、対物レンズは、媒体の最外側の表面からλ/10よりも小さな自由作動距離での記録及び/又は読取りのために構成され、且つ、光データ記憶媒体の被覆層の側に配置された被覆層固体浸レンズを含み、固体浸レンズから、集束される放射線ビームは、記録及び/又は読取り中に光記憶媒体中に結合するエバネッセント波結合によって結合される光データ記憶システムに関する。
【0002】
本発明は、さらに、そのようなシステム内での使用に適した光データ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
光記録システムにおける焦点サイズ又は光解像度のための典型的な測定値は、
【数19】
によってもたらされ、ここで、λは、空中の波長であり、レンズの開口数は、
【数20】
によって定められる。図1Aには、空気−入射構造が描写されており、データ記憶層がデータ記憶媒体、即ち、所謂表面データ装置の表面にある。図1Bには、屈折率nを備える被覆層が、データ記憶層をスクラッチ及びダストから保護している。
【0004】
これらの図面から、もし被覆層がデータ記憶層の上に塗布されるならば、光解像度は不変であることが推断される。一方では、被覆層において、内部開口角θ’はより小さく、故に、内部開口数NA’も減少するが、媒体内の波長λ’は、同一因数n0だけより短い。光解像度が高ければ高いほど、媒体の同一領域上により多くのデータを記憶し得るので、高い光解像度を有することが望ましい。光解像度を増大する直接的な方法は、レンズの複雑さという犠牲を払った集束ビーム開口角の拡大、許容し得る傾斜限界の縮小等、又は、空中波長の減少、即ち、走査レーザの色の変化を含む。
【0005】
光ディスクシステムにおける焦点サイズを減少する他の提案されている方法は、固体浸レンズ(SIL)の使用を含む。最も単純な形態において、データ記憶層上に中心化されたSILは半球である。図2Aを参照。よって、焦点はSILとデータ層との間の界面にある。同一の屈折率、n0’=nSILの被覆層との組み合わせで、SILは、その(仮想)中心が記憶層の上に再び配置された状態で、被覆層上に配置された球の正接方向に切断された断面である。図2Bを参照。SILの動作原理は、SILが、記憶層で、波長を因数nSIL、即ち、SILの屈折率だけ減少し、開口角θを変更することがないことである。その理由は、全ての光がSILの表面に直角に進入するので、SILでの光の屈折がないからである。図1B及び図2Aを比較。空気間隙の幅は、典型的には、25〜40nm(しかしながら、少なくとも100nm未満)であり、原寸で描写されていない。被覆層の厚さは、典型的には、数ミクロンであるが、それも原寸で描写されていない。
【0006】
極めて重要であるが、この地点まで述べられていないことは、SILと記録媒体との間に極めて薄い空気間隙があることである。これは記録器対物レンズ(レンズにSILを加えたもの)に対する記録ディスクの自由回転を許容するためである。この空気間隙は、光学波長よりも一層小さくあるべきであり、典型的には、ディスクへの並びに戻ってSILへのSIL内の光の所謂エバネッセント結合が依然として可能であるよう、それはλ/10よりも小さくあるべきである。これが発生する範囲は、近距離場レジームと呼ばれる。このレジームの外側では、より大きな空気間隙で、全反射がSIL内部に光を捕捉し、それをレーザまで送り戻す。空気界面に対するSILでの臨界角より下の波は、減衰なしに空気間隙を通じて伝播するのに対し、臨界角より上の波は、空気間隙内でエバネッセントになり、間隙幅を備えた指数関数的な減衰を示す。臨界角では、NA=1である。大きな間隙幅に関して、臨界角よりも上の全ての光は、全反射によって、SILの近接表面から反射する。図3A及び3Bを参照。ここで、NA0は、SILが存在しないレンズの開口数である。双方のこれらのレンズ設計において、空気間隙が過剰に広いならば、全反射は、NA>1の場合に起こる。もし空気間隙が十分に薄いならば、エバネッセント波はそれを他の側になし、透明ディスク内で、再び伝播するようになる。もし透明ディスクの屈折率が、開口数よりも小さい、即ち、n0’<NAであるならば、一部の波はエバネッセントなままであり、有効にNA=n0’であることに留意されるべきである。
【0007】
ブルーレイ光ディスク(BD)のための規格のように、405nmの波長の場合、最大空気間隙はほぼ40nmであり、従来的な光記録と比べると、それは極めて小さな自由作動距離(FWD)である。十分に安定したエバネッセント結合を得るために、データ層と固体浸レンズ(SIL)との間の近距離場空気間隙は、5nm以下に一定に(好ましくは、2nm以下に一定に)保たれるべきである。ハードディスク記録では、そのような小さな空気間隙を維持するために、受動空気軸受に依存するスライダに基づく解決策が用いられなければならない。記録媒体がドライブから取り外し可能でなければならない光記録において、潤滑剤の使用は限定的であり、ディスクの汚染レベルはより大きく、空気間隙を制御するための活性なアクチュエータに基づく解決策が求められる。このために、間隙誤差信号が、好ましくは光媒体によって既に反射された光データ信号から抽出されなければならない。そのような信号は見い出されることができ、典型的な間隙誤差信号は図4中に与えられている。
【0008】
NA=nSILsinθのような開口数を定めるために近距離場SILが用いられる場合には、それは一般的な方法であり、開口数は1よりも大きくあり得るが(θは周縁光線の角度である)、被覆層内で開口角度θ’<π/2及びNA’=sinθ’<1であることが留意されるべきである。
【0009】
被覆層が用いられる場合、データ記憶層は、実際には、近距離場にはないことがさらに留意されるべきである。被覆層内部の大きな開口数と組み合わされたSILから被覆層への波のエバネッセント結合があるだけである。この種類の光記憶装置のより適切な名前は「一定エバネッセント結合光記憶装置」又はCECOS(Constant Evanescent Coupling Optical Storage)である。真正の近距離場光記録の場合には、データは、全反射強度を変調するのみならず、データ担持ディスクと対物レンズとの間のエバネッセント結合の量に直接的に影響を及ぼす表面構造によって表わされ得る。CECOSの場合、このエバネッセント結合は一定値に保たれ、データは、光データ記憶の現代技法に共通する、データ記憶層内の振幅又は位相構造によって表わされる。
【0010】
図4において、我々は1.48の屈折率を備える平坦且つ透明な光表面(「ディスク」)からの直線的に偏光された平行な入力ビームに対して平行な偏光状態及び垂直な偏光状態の双方のための反射光の量の測定値(参考文献[1]から取られた)を示している。垂直偏光状態は、近距離場光記録システムのための空気間隙誤差信号として適している。これらの測定値は、理論とかなり合致する。エバネッセント結合は、200nm未満で知覚可能になり、光は「ディスク」内に消失し、全反射は接触点で殆ど直線的に最低に落下する。空気間隙の閉塞ループサーボシステムのmための誤差信号として、この直線的信号を用い得る。水平偏光における振動は、減少する間隙厚さを有するNA=1内の干渉縞の数の減少によって引き起こされる。
【0011】
典型的な近距離場光ディスクシステムについての一層の詳細は、参考文献[2]内に見い出され得る。
【0012】
典型的には50μm未満の小さな作動距離を有するスライダ又はアクチュエータのいずれかに基づく光記録器対物レンズのために、記憶媒体に最も近い光表面の汚染が生じる。これは、それが、データを書き込むために或いはデータ記録層からデータを読み取るためにさえも必要とされる高いレーザ力及び温度に起因する、典型的には光磁気(MO)記録のための250℃及び位相変更(PC)記録のための650℃の高い表面温度の故の記憶媒体から脱着された直後の水及び他の材料の再凝縮に起因する。汚染は、例えば、焦点及びトラッキングシステムのサーボ制御信号の走路の故に、究極的には光データ記憶装置の誤作動を引き起こす。この問題は、参考文献[3]乃至[5]に与えられる特許出願及び特許に記載されている。
【0013】
問題は、以下の場合により厳しくなる。即ち、高い湿度、高いレーザ力、記憶媒体の低い光反射率、記憶媒体の引く熱伝導率、小さな作動距離、及び、高い表面温度。
【0014】
問題に対する既知の解決策は、記憶媒体上の熱絶縁された被覆層によって、記録器対物レンズの近接する光学表面をデータ層から遮蔽することである。この洞察に基づく発明は、例えば、参考文献[4]において与えられている。
【0015】
被覆層を備える近距離場記憶媒体を提供することは、汚れ及びスクラッチがもはや直接的にデータ層に影響を及ぼさないという追加的な利点を有する。しかしながら、被覆層を近距離場光システム上に置くことによって新しい問題が起こり、それは採られるべき新しい手段につながる。これらの手段の一部は、参照番号PHNL040460及びPHNL04061を備える特許出願人によって同時出願された欧州特許出願に記載され、本発明の開示の主題である重要なさらなる洞察、即ち、多層近距離場記録の可能性である。
【0016】
薄く超平坦な被覆層の幾つかの利点が、以後に議論される。ディスク傾斜に関して、被覆層の導入は、「コマ収差」として既知の収差を引き起こし得る。これは如何なる被覆層も限定的な厚さを有すべきかの第一の理由であるが、それはここでは我々の主要な関心ではない。
【0017】
通常、データ層と固体浸レンズ(SIL)との間の近距離場空気間隙は、十分に安定的なエバネッセント結合を得るために、5nm以下に一定に保持されるべきである。被覆層が用いられる場合、空気間隙は被覆層とSILとの間に位置する。図2Bを参照。再び、空気間隙は5nm内に一定に保持されるべきである。明らかに、SIL焦点距離は、データ層が常時焦点内にあるのを保証するために、被覆層の厚さを補償するためにオフセットを有すべきである。被覆層の屈折率は、もしそれがSILの屈折率よりも低いならば、システムの最大限に可能な開口数を決定する。
【0018】
十分な熱絶縁を得るために、誘電体被覆層の厚さは、ほぼ0.5μmよりも多くなければならないが、好ましくは、2〜10μmのオーダである。総合すれば、これは、空気間隙のみの幅を制御することによって、データ層が焦点、即ち、
【数21】
内にあることを保証するために、被覆層の厚さ変化Δhが、焦点深度
【数22】
(媒体内部の実際の焦点深度は
【数23】
である)よりも(一層)小さくあるべきであることを意味する。図5を参照。もし我々が波長λ=405nm及び開口数NA=1.6を取るならば、
【数24】
を見い出す。数ミクロンの厚さのスピンコート層のために、これはディスクの全データ領域に亘る厚さ変化の百分率のオーダであり、それは挑戦的な確度である。しかしながら、次の所要仕様を備えるスピンコート層を作ることは可能であるように思われる。即ち、数ミクロンの厚さ、30nm未満の厚さ変化。例えば、図6及び参考文献[9]及び[10]を参照。被覆層は、データ領域の既に80%を表わす外側28mmに亘って極めて平坦である。流体は(孔がないので)ディスクの中心で処理されず、18.9mmの半径にあるので、この結果は驚くべきものである。普通、これは被覆層の厚さが中央よりも縁部で一層高い極めて不均一な結果をもたらす。しかしながら、この場合には、ディスク半径の関数としてのスピンプロセス中に流体粘度に適合するために、熱勾配が用いられた。
【0019】
例えば、無機化合物のソルゲル技法又はスパッタリングによって、ほんの数ミクロンの厚さを有するより一層薄い層を作成し得る。1〜3ミクロン以上の範囲のより厚い層のための無機化合物の使用は、処理及び費用の観点から、非現実的である。また、そのような層内の応力蓄積は、ディスクの曲げを引き起こしがちである。
【0020】
全体的に、以下の通り結論付け得る。
− 汚染及びスクラッチに対して被覆層が必要である。
− 近距離場光記録システム、特に、位相変化システムの場合には、熱絶縁のために、1μmよりも厚い被覆層が必要である。
− 被覆の屈折率はNA値よりも大きくなければならない。
− スパッタリングされた(無機)材料は、極めて高い屈折率を有し得るが、1μmよりも厚いスパッタリングされた被覆層は、主として処理時間及び応力の結果としてディスクの曲げの故に、光ディスク上には可能でない。
− 1μmよりも厚いポリマ被覆層をスピンコートすることは可能であるが、ポリマはNAを約1.6に制限する一部の無機材料よりも低い屈折率を有する。
【0021】
多層光記憶装置の場合、データ層は、スペーサ層の間に介装されている。これらのスペーサ層は、被覆層と共通する多くの特性を有する。本発明の開示は、主としてスペーサ層の特性についてであり、被覆層の問題は、主要な洞察に対する導入としての働きをなす。
【0022】
多層光データ記憶装置を今や議論する。層当たり同一の密度のデータで、m層(m>1)を備える多層光データ記憶システムは、単層システムよりもほぼm倍(m=1)より多い記憶容量を提供する。そのようなシステムの実施例は、デジタル多用途ディスク(DVD)及びブルーレイディスク(BD)の二層(m=2)バージョンである。これらのシステムにおいて、データ層は、DVDの場合にはほぼ45ミクロンの厚さ並びにBDの場合には25ミクロンの厚さhの所謂スペーサ層によって分離されている。図7では、二層近距離場光システムの実施例が与えられている。L0と呼ばれる、光学ピックアップユニットに最も近いデータ層は、部分的に透明である。
【0023】
データ層間の分離の最適距離hは、少なくとも以下の4つの基準によって決定される。
【0024】
1.データ層の集束S曲線は分離されなければならない(大きなhのために保証されなければならない)。
【数25】
【0025】
2.層間のコヒーレント漏話(検出器上でのそれらの相互反射の干渉)は、変調深度ηを備えるRF信号の変調を引き起こす。「アイパターン」が一定のレベル(検出器上の他の層、即ち、読み取られない層からの光の量は増加hで減少するので、増加hで減少する)でスライスされることを保証するために、この効果は十分に低くなければならない。もしRm,effがm番目の層の有効反射率であり、全ての光が検出器によって集光されるならば、変調深度はほぼ以下によって与えられる(参考文献[6]を参照)。
【数26】
【0026】
3.焦点外層上のチャネルコードからのインコヒーレント漏話は、十分に小さくなければならない。これは、他の層の上の焦点外スポット内の変化するデータパターンに起因する過剰なノイズである。インコヒーレントノイズは、スポットサイズに反比例し、故に、増大hで減少する。何故ならば、他の層の上のより多くのデータは、より大きなhのためのより大きな照明領域の故に、平均化されるからである。
【0027】
4.双方の層の上のレーザ焦点の回折限界品質を保証するために、層の異なる深さに起因する球面収差は、十分に小さく保たれなければならない。それは増加hで増大し、これは上限をhに置く。
【0028】
明らかに、上記の基準は、スペーサ層の厚さを限界内に置く。
【0029】
さらなる読取りのために、例えば、参考文献[6]を参照。多層近距離場光記録の着想が、参考文献[7](多層)及び参考文献[8](二層)において時折述べられていることに留意。
【0030】
以下に、近距離場光データ記憶装置のために、新しいスケーリングレジームを開発し得ることが分かる。
【0031】
さらに、以下のことを結論付け得る。
− スペーサ層の屈折率は、NA値よりも大きくなければならない。
− スパッタリングされた(無機)材料は、極めて高い屈折率を有し得るが、1ミクロン以上のオーダの厚さを備えるスパッタリングされたスペーサ層は、主として処理時間並びに応力の結果としてディスクの曲げの故に、光ディスク上では可能でない。
− 正しい厚さのポリマスペーサ層をスピンコートすることは可能であるが、ポリマは、NAを約1.6に限定する一部の無機材料よりも低い屈折率を有する。
【0032】
球面収差の問題に関して
空中で完全に集束されるよう生成される光の集束ビームを考えてみよう。もし平坦且つ平行な板がビーム中に置かれるならば、それは光軸に沿って焦点を変位し、且つ、所定量の球面収差を導入する。
【0033】
ブルーレイディスク(BD)は、405nmの波長及びNA=0.85の開口数を備える青色光を用いる遠距離場(FF)光記録規格である。BDのための球面収差は、10mλ/μm光路差(OPD)二乗平均平方根である。二層ブルーレイディスクのために、スペーサ層厚さは25μmであり、故に、1つのデータ記憶層から他のデータ記憶層に行くことによって得られる球面収差の総量は、250mλである。収差がほぼ±20mλを越える場合には、記録システムの総収差が71mλより十分に下に留まるよう、如何なる特定の収差の補償も必要であり、それを越える量については、光学はもはや回折限界とは考えられ得ず、焦点はぼんやりし始める。
【0034】
(近軸収差理論からの)既知の経験則は、球面収差の量が、層の厚さ及びNAと比例して4の累乗に変化することである。青色近距離場(NF)光記録の場合、NA=1.6を備えて、人はブルーレイディスクのためよりも(1.6/0.85)4=12.6倍多い球面収差を予期し、それは25μmの同一スペーサ層厚さを補正するためには大き過ぎるように思われる。実際には、NAを用いたスケーリングは、上述の経験則によって提案されるよりも複雑である(例えば、参考文献[14]を参照)。図8では、正しいスケーリングが与えられている。遠距離場システムのために、被覆層の屈折率は、球面収差に殆ど影響を及ぼさないことが分かる。BD(NA=0.85)のための球面収差値が表示されている。
【0035】
多層近距離場記録のための解決されるべき3つの主要な問題点は以下のことに関する。
− データ記憶層間の漏話。
− 高い屈折率に起因するスペーサ層及び被覆層の光吸収。
− 各スペーサ層の異なる光学的深さに起因する球面収差。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
近距離場固体浸レンズを用いて信頼性のあるデータ記録及び読出しが達成される、冒頭段落において述べられた種類の光データ記憶システムを提供することが本発明の目的である。そのようなシステムにおける仕様のための光データ記憶媒体を提供することがさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0037】
第一の目的は、本発明に従って、hjのいずれか1つが
【数27】
よりも大きく、NA<nj及びNA<n0及びb>10、好ましくは、b>15であり、全てのhjの合計が、
【数28】
よりも小さいことを特徴とする光データ記憶システムによって達成され、ここで、n
【数29】
及びk
【数30】
は、それぞれ、各スペーサ層の厚さで重み付けされた全てのスペーサ層の屈折率の平均実部及び虚部であり、ここで、kjは、スペーサ層の屈折率njの虚部であり、fは、集束放射線ビームの周縁光線の要求複光路透過である。
【0038】
洞察は、多層近距離場記録を実現可能にするために、薄く且つ平坦なスペーサ層が求められることである。さらに、我々は、そのような層を生成し得ること、それらがどのように生成されるか、そこにある精密な特性が何であるか、並びに、どの材料を用い得るかを洞察した(参考文献[10]を参照)。また、光記録システムのためにこれがどんな結果を有するかに関する洞察がある。
【0039】
多層光記録におけるコヒーレント漏話の効果を実質的に削減し得る2つのレジームが存在する。第一のレジームは周知であり、DVD及びBD光記録規格に適用される。即ち、光データ記憶層は、「厚い」スペーサ層によって十分に分離されている。その完全領域を越えて、このスペーサ層は、ディスクを走査するために用いられるレーザの波長に比べて必ずしも極めて平坦である必要はない。
【0040】
新しい洞察は、コヒーレント漏話の効果が抑圧される第二レジームが存在することである。もし所要の平坦性を備えるスペーサ層が十分に「薄い」ならば、これらの層を4分の1波長よりも一層良好にすることが実現可能であるように思われる。もし開口数が大きいならば、他のデータ記憶層からのコヒーレント漏話の結果としてのノイズは、薄いスペーサ層を可能にするほど依然として十分に小さい。極めて大きな開口数は、近距離場記録を用いる主要な理由であり、故に、平坦で薄いスペーサ層は、具体的には、この技法のための新しいレジームを切り開く。
【0041】
さらなる着想は、薄い層が追加的な利点を有することである。
【0042】
第一の追加的な利点は、薄い層が光吸収に起因する光減衰を余り有さないことであり、それは層材料のより高い固有吸収を可能にする。これは層材料のより高い屈折率を伴うので、これはより一層有益である。
【0043】
第二の追加的な利点は、もし薄いスペーサ層が用いられるならば、データ記憶層間の相互距離は小さく、故に、光が異なる層の上に集束されるときに多層記憶媒体を通じる光路の差は、比較的小さい。より小さな光路差は、この光路差の結果として球面収差の量もより小さいことを意味する。具体的には、実際的な状況の下で、例えば、4層近距離場データ記憶システムが実現可能である。
【0044】
光記録及び読取りシステムの実施態様において、1つのスペーサ層を備える媒体に対応して、m=2である。
【0045】
他の実施態様において、媒体全体に亘る如何なるスペーサの厚さ変化Δhも、以下の基準を満足する。
【数31】
、より好ましくは、
【数32】
及び
【数33】
【0046】
好ましくは、NAは1.5よりも大きく、それは殆どの近距離場記録システムの場合に当て嵌まる。
【0047】
システムの代替的な実施態様において、hmax
【数34】
は、以下の方程式によって置換され、固体浸レンズんSILの屈折率は、nSであり、いずれかのスペーサ層の屈折率は、njであり、ここで、変数は以下の意味を有し、
【数35】
WRMSは、依然として補正し得る最大二乗平均平方根波面収差である。“Compact description of substrate−related aberrations in high numerical−aperture optical disc readout,” Applied Optics, vol.44, pp.849−858(2005)も参照。
【0048】
hmaxの値は、WRMS<250m、好ましくは、<60mλ、より好ましくは、<15mλの制約に従った球面収差の最大許容量によって制限される。
【0049】
さらなる目的は、波長λ及び開口数NAを有する集束放射線ビームを用いた記録及び読取りのための光データ記憶媒体によって達成され、少なくとも以下を含む。
− mデータ記憶層、及び、集束放射線ビームに対して透明な被覆層、ここで、m≧2、被覆層は、厚さh0及び屈折率n0を有し、データ記憶層は、厚さhj及び屈折率njをそれぞれ有するm−1スペーサ層によって分離され、ここで、j=1,...,m−1であって、
hjのいずれか1つは、
【数36】
よりも大きく、NA<nj及びNA<n0及びb>10、好ましくは、b>15であり、全てのhjの合計は、
【数37】
よりも小さく、ここで、n
【数38】
及びk
【数39】
は、それぞれ、各スペーサ層の厚さで重み付けられた全てのスペーサ層の屈折率の平均実部及び虚部であり、ここで、kjは、スペーサ層の屈折率njの虚部であり、fは、集束放射線ビームの周縁光線の要求複光路透過である。好ましくは、f>0.50、より好ましくは、f>0.80、より好ましくは、f>0.90である。
【0050】
次に、球面収差に関する要件は
【数40】
を示し、吸収に関する要件は
【数41】
を示し、ここで、fは、層の積み重ねを通じた複光路後の所要最低強度である。
【0051】
光データ記憶媒体の実施態様において、1つのスペーサ層を備える媒体に対応して、m=2である。
【0052】
他の実施態様において、媒体全体に亘る如何なるスペーサ層の厚さ変化Δhも、以下の基準を満足する。
【数42】
より好ましくは、
【数43】
及び
【数44】
【0053】
好ましくは、njは、1.5、より好ましくは、1.6、より好ましくは、1.7よりも大きい。これは、全反射の制限なしに、高いNA>15の完全な利益を用い得るという利点を有する。
【0054】
代替的に、他の実施態様において、hmaxは、以下の方程式
【数45】
によって置換され、固体浸レンズnSILの屈折率は、nSであり、いずれかのスペーサ層の屈折率はnjであり、ここで、レンズ瞳に亘る一部の収差平均の意味を有する変数は、
【数46】
によって与えられ、WRMSは、依然として補正し得る最大二乗平均平方根波面収差である。
【0055】
hmaxの値は、WRMS<250m、好ましくは、<60mλ、より好ましくは、<15mλの制約に従った球面収差の最大許容量によって制限される。
【0056】
光データ記憶媒体の実施態様において、スペーサ層は、放射線ビームに対して実質的に透明なポリイミドを含む。好ましくは、ポリイミドは紫外線(UV)硬化性である。
【0057】
今や図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
多層光データ記憶装置は、単層技法よりも高いデータ容量を有し得る。
− より多くのデータ層は、より多くのスペーサ層が必要とされることを暗示する。
− スペーサ層がスピンコート可能であるべきであり、これはポリマを暗示する。
− 高い開口数NAは、高い屈折率nを必要とする。
− 高いnは、高い吸収kを意味する。
− 高いkは、小さなデータ−層間隔hを必要とする。
− 漏話は、極めて平坦な層を必要とする。
− 球面収差及び光吸収の双方が限界内に留まるので、小さなデータ−層間隔は多層媒体を可能にする。
これは円を閉じる。
【0059】
近距離場光データ記憶装置の場合のスペーサ層厚さのスケーリング
もし被覆層の厚さが、焦点深度
【数47】
よりもずっと小さく、スペーサ層厚さ変化も、Δhj=λ/(4nj)(
【数48】
に留意)よりもずっと小さいならば、間隙及び焦点の双方を制御するために、間隙誤差信号を用いることができ、それ故に、S曲線型の焦点誤差信号の必要はなく、それ故に、それらは分離される必要がない。もし求められるならば、例えば、RF変調から焦点及び球面収差オフセット信号を導出し得る。
【0060】
正に、もしスペーサ層厚さ変化が、Δhj=λ/(4nj)、スペーサ層媒体内の4分の1波長よりもずっと小さいならば、RF信号に対する層間干渉変調はない。図9を参照。もし厚さ変化が十分に小さいならば、Δh<<λ/(4n)、光記録のための極めて有用なパラメータレジームが入れられる。
【0061】
コヒーレント漏話に関しては、もしスペーサ層厚さ変化Δ/(4n)が極めて小さいならば、干渉最小が生じるようにスペーサ層厚さhjを選ぶことは有益に思われる。全ての光がデータ記憶層に対して殆ど直角に伝播する小さな開口数のより単純な場合、これはスペーサ層が、スペーサ層材料中の4分の1波長の奇数整数倍i、即ち、hj=iλ/(4nj)の厚さを有することを暗示する。屈折率=1.70及び波長λvac=405nmのために、これは
【数49】
の厚さ、例えば、i=23のために、h=1.37μmの厚さを暗示する。相当数の4分の1波長(実施例では、i=23)に及ぶスペーサ層厚さとの組み合わせの、ここで検討されるような高い開口数の場合には、多数の同心の干渉縞が存在する。強め合う干渉と弱め合う干渉との間で交互する、これらの縞からの検出器上の光の積分強度は、平均化される傾向にあり、それは、コヒーレント漏話変調深度ηが高い開口数のために大きく減少されることを暗示する。実際には、もしRm,effがm番目の層の有効反射率であり、且つ、全ての光が検出器によって集光されるならば、変調深度は以下によって近似的に与えられる。
【数50】
【0062】
大きな開口数のために、スペーサ層の正確な厚さは、小さな効果のみを有する。
【0063】
これはチャネルコードからのインコヒーレントノイズを最も重要なスケーリングパラメータとして焦点外層の上に残す。隣接層上の焦点外スポット内のランレングスの数を決定することによって、インコヒーレント漏話の結果としてのノイズを推定し得る。図10において、焦点がL1上にあるとき、L0上のスポットサイズは推定される。
【0064】
L0上のスポットサイズAは、スペース層内部の開口数又は内部周縁光線の角度θの関数である。
【数51】
【0065】
もしチャネルビット長がTであるならば、<T>は平均ランレングスである。焦点外で照明されるランレングスの数N<T>は、
【数52】
であり、ここで、我々は、ディスクのトラック構造を無視した。トラックピッチは、平均ランレングス(DVD740nmのために、1.156の因数、BD320nmのために、1.290の因数)とほぼ等しいことに留意。トラック間の領域が一定の反射率を有することにも留意。総インコヒーレントノイズは、層L0及びL1の有効反射率の比、データマークの変調深度及び1/N<T>の平方根に依存する。もしN<T>,minが、十分に低いインコヒーレント漏話を得るためのランレングスの最小数であるならば、スペーサ層の最小厚さは、以下によってもたらされる。
【数53】
【0066】
表Iにおいて、スペーサ層の厚さのスケーリングは、スペーサ層の屈折率、選択された開口数、及び、BD値と比例するランレングスの幾つかの値のために与えられる。hのための値、既知のスペーサ層の厚さを用いてN<T>,minのために明らかに適切な値を計算するために用いられるDVD及びBDのための場合。計算された数は太字に印刷され、推定値は普通に印刷されている。最終列中の太字の数は、5つの異なる組の近距離場システムパラメータのスペーサ層の最小所要厚さを与えている。典型的には、hmin<2μmであることが明らかである。示されている全ての実施例は、紫外線の実施例を示す底部行を除き、405nmの青色波長に関してである。この実施例は、極端な場合には、最低スペーサ層厚さがミクロンよりも一層ずっと少ないことを示している。
【0067】
【表1】
【0068】
吸収を考慮した設計の実施例
我々は、周縁光線の光吸収を計算したい。周縁光線は、一方では、スペーサ材料中に最長光路長D=2h/cosθを有し、他方では、光解像力を決定するので、最も重要である。もし
【数54】
が、相対的な強度又は透過率であるならば、我々は、labs=λvac/(4πk)、材料の吸収長さを備える
【数55】
を有し、我々は、
【数56】
を得る。屈折率の虚部は以下の通りである。
【数57】
【0069】
システムを設計するために、内部開口数NAintは、内部周縁光線の角度θを選択することによって決定される。図10を参照。引き続き、(外部)NAは、層の屈折率nによって決定される。周縁光線の最低許容全透過率
(外1)
を選択することによって、スペーサ層の最適(総)厚さhoptを計算し得る。最適値は、減衰kとインコヒーレント漏話との間でトレードオフされる。
【0070】
以下の実施例は現実的である。
1)θ=70°、n=1.70、
【数58】
、及び、波長λvac=405nmを選択し、次に、次のスペーサ層の設計ルールが得られる。
2)内部周縁光線の角度θ=70°をとる。
NAint=sinθ=0.94
NA=nsingθ=1.60
3)開口数を備えるブルーレイディスクの平均ランレングスのスケーリングは、<T>=210.8/NAをもたらす。これは、N<T>=2543、DVDのための焦点外スポット内のランレングスの平均数と共に、以下の最適厚さを生む。
【数59】
4)最適厚さでとられた周縁光線
【数60】
の全透過率(最大NAでの複光路)は、
【数61】
である。
もし、例えば、
【数62】
であるならば、
【数63】
であることに留意。
【0071】
この実施例の結果を要約すると、我々は、スペーサ層がhopt=1.37μmの最適厚さを有することを見い出した。スペーサ層は、この厚さを備えてディスク上に実際に堆積され得る材料から成らなければならない。ポリマのスピンコーティングは、所要処理の速度及び確度、並びに、十分に高い平坦性(Δh<20nm)及び場合によっては十分に低い応力を提供する(高い応力はディスクを曲げ、光学対物レンズのために求められる極めて小さな距離で従うために表面を硬くする)。材料は屈折率n=1.70及びk=9.0×10−4の吸収を有さなければならない。この範囲のパラメータ内の仕様を備えるポリマ材料は存在する。参考文献[16]を参照。もし選択される材料の実際の吸収がこの値よりも低いならば、より高い屈折率を有する材料(場合によっては選択されるポリマの修正版)が存在しなければならず、故に、それはより高い開口数を支持し、上記条件に合致するより高い吸収係数を有する。
【0072】
上記の実施例中で与えられるパラメータに基づく、例えば、7μmの全体厚さを有する4層及び被覆層を備える多層システムにおいて、吸収はk=1.8×10−4である。被覆層上のスポットの最大直径は、底部層が焦点内にあるとき、39μmである。
【0073】
4層システムの実施例
図11A及び11Bには、多層光データ記憶媒体が描写されている。この実施例において、4層、L0,L1,L2,L3は、厚さh1,h2,h3のスペーサ層によってそれぞれ分離されている。被覆層は、厚さh0を有する。図11Aでは、レーザが頂部層上に集束され、図11Bでは、それは底部層上に集束されている。記憶層間の分離距離は不均一(この場合にはh1≠h2≠h3=h1)に取られており、それは他の層の読取り中に記憶層上に間接的に集束することを防止し、例えば、もし人がh1=h2=h3を取るならば、L3の読取り中、L2からの反射は、L1上にゴースト焦点を引き起こし、余分なインコヒーレント漏話を招く。これはゴース層上のデータが大きなスポットに亘って平均でないからである。
【0074】
よって、図11A及び11Bには、波長λ=405nmを有する放射線ビーム、即ち、レーザビームを用いた記録及び/又は読取りのための光データ記憶システムが示されている。レーザビームは、光データ記憶媒体のデータ記憶層上に集束される。システムは、以下をさらに含む。
− 4(m=4)つのデータ記憶層及び集束レーザビームを透過する被覆層を有する媒体。前記被覆層は、厚さh0=3.0μm及び屈折率n0=1.6を有する。データ記憶層は、厚さh1=2.0μm、h2=4.0μm、及び、h3=2.0μm、並びに、屈折率nj=1.60及びkj=1.4×10−4(f=080に対応する)をそれぞれ有する3(m−1)つのスペーサ層によって分離されており、ここで、j=1、2、又は、3である。
− 開口数NA=1.44を有する対物レンズを備える光学ヘッド。前記対物レンズは、前記媒体の最外側表面からλ/10=40.5よりも小さな自由作動距離での記録及び/又は読取りのために構成され、且つ、前記光データ記憶媒体の被覆層側上に配置された固体浸レンズ(SIL)を含む。集束レーザビームは、記録及び/又は読取り中、エバネッセント波結合によって、固体浸レンズから光記憶媒体中に結合される。
【0075】
いずれか1つのhjは、
【数64】
よりも大きく、NA<nj=1.62及びNA<n0及びb>10であり、全てのhjの合計は、
【数65】
及び
【数66】
よりも小さく、ここで、n
【数67】
及びk
【数68】
は、それぞれ、各スペーサ層の厚さで重み付けされた、全てのスペーサ層の屈折率の平均実部及び虚部であり、ここで、kjは、スペーサ層の屈折率njの虚部であり、fは、集束放射線ビームの周縁光線の要求複光路透過である。1.52のNAでの他の可能な組のパラメータは、h0=3.0、h1=1.3、h2=2.6、及び、h3=1.3、並びに、屈折率nj=1.60及びkj=1.3×10−4(f=0.80に対応する)であり、ここで、j=1、2、又は、3である。
【0076】
媒体全体に亘る如何なるスペーサ層の厚さ変化Δhは、以下の基準を満足する。
【数69】
及び
【数70】
【0077】
薄い被覆層及びスペーサ層を用い得るので、多層近距離場光データ記憶装置は可能である。推論の可能な階層が以下に与えられる。
− 被覆層及びスペーサ層は薄いので、それらを極めて平坦になし得る。
− スペーサ層は極めて平坦であるので、コヒーレント漏話からの負の効果なしに、記憶層を密接に接合し得る(即ち、スペーサ層は薄くあり得る)。
− スペーサ層は薄いので、層間の球面収差は小さい。
− 層は薄いので、それらは、所与の最大減衰のために、より高い光吸収係数kを有することが可能とされ、次いで、それは(因果律によって屈折率の実部と虚部とを接続する(根本的な)クラマース−クローニヒ法則の結果として)より高い屈折率nを可能にする。
− 屈折率はより高いので、層の厚さはより一層小さくあり得る。
− 屈折率はより高いので、NAはより高く、故に、データ容量は二次方程式的により高い。
【0078】
二層近距離場(NF)記録:スペーサの厚さに対する(イン)コヒーレント漏話、光吸収、及び、球面収差の制限
波長λ、開口数NA、スペーサ厚さh、スペーサ屈折率nを備える二層システムを考察しよう。2つの層の反射は、振幅及び位相が等しいと想定される。瞳内の干渉縞は、瞳の中心にある縞及び瞳の縁にある縞を除き、平均化する。対物レンズの集光開口に亘る縞の平均は、信号振幅によって規格化される中央開口信号内の項(term)を招き、以下のコヒーレント漏話(CCT)を生じさせる。
【数71】
ここで、θmは、スペーサ層内の周縁光線の極角であり、ここでは、sinc(χ)=sin(χ)/χである。cos項の周期性は、λ/n(1+cosθm)であり、もしNAが十分に小さいならば、それはほぼλ/2nであり、経路長の差2hに起因する。sinc項内に現れる周期性は、中央縞と外側縞との間の位相差に関係し、周期性λ/n(1−cosθm)を有し、それはスペーサ層内部の焦点深度に関係し、即ち、軸強度プロファイルは、
【数72】
を有し、それはz=λ/n(1−cosθm)にその第一ゼロを有する。十分に小さなNAのために、我々は、焦点深度λ/n(1−cosθm)がほぼ2nλ/NA2であることを見い出した。λ=0.405μm、NA=0.85、n=1.62の遠距離場の場合のCCT信号のプロットが、図12に示されている。この場合には、cos因数は、sinc因数よりもより速く振動している。従って、スペーサ厚さへのCCT信号の依存は、sinc因数のゼロ地点で最小限化される。もし経路長差2hが焦点深度λ/n(1−cosθm)の整数i倍であるならば、これらは得られる。近距離場の場合に関して、cos因数の周期性は、sinc因数の周期性に匹敵し、λ=0.405μm、NA=1.5、n=1.62のために、図13のようなプロットを示す。明らかに、以前の処方(2h=iλ/n(1−cosθm))はもはや有用でない。異なる処方はさほど直接的ではない。例えば、CCT信号が最小又は最大であるようにhが選択されるならば、スペーサ厚さhへの依存は最小である。平坦性のための要求は、例えば、変数Δhが、2つの周期性の最小、λ/n(1+cosθm)に比べて十分に小さくなければならないことであり、例えば、
【数73】
であり、それはhをΔh≦23nmと評価する。
【0079】
焦点外層内の無作為データに起因するノイズ(インコヒーレント漏話、ICCT)を考慮する二層DVDから比例する最小スペーサ厚さは、
【数74】
であり、NA<nj及びNA<n0及びb>10、好ましくは、b>15である。
【0080】
第一の実用的な最大スペーサ層の厚さは、スペーサ材料の吸収によって要求される(他の理由は絶対厚さ均一性であり、それはより薄い層のためにより良好である)。例えば、
【数75】
(θmで複光路)の周縁光線の全透過率のために、我々は、
【数76】
を得た。ここで、n
【数77】
及びk
【数78】
は、それぞれ、各スペーサ層の厚さで重み付けされた、全てのスペーサ層の屈折率の平均実部及び虚部であり、ここで、kjは、スペーサ層の屈折率njの虚部であり、fは、集束放射線ビームの周縁光線の要求複光路透過率である。kは、
【数79】
による消衰係数に関する。
【0081】
高い屈折率nを備える材料は高いkも有することを留意することが重要である。上記から、k≦6×10−4NA2/n=8.3×10−4ということになる。我々がn>1.7を要求する場合、これは殆どの有機材料(即ち、スピンコート可能なポリマ)を除外する。
【0082】
他の実用的な最大スペーサ層厚さは、レーザ焦点が1つのデータ層から隣りのデータ層に移動されるときにスペーサ層によって誘導される球面収差の量によって要求される。実際的な見地から、光路内に追加的な可変光学素子を用いることで、約250ミリ波RMS(二乗平均平方根)の、限定的な量の球面収差だけを補正することが可能である。
【0083】
全光路の十分に低い全収差を保証するために、各層の上の残留球面収差は、ほぼ±30ミリ波RMS未満であるべきである。
【0084】
屈折率n1(SIL)を備える媒体から屈折率n2の層内に集束される開口数NAのビーム及びレンズのために、厚さh当たりのRMS波面収差は、
【数80】
によって与えられ、ここでは、(レンズ瞳に亘るある収差平均の意味を有する)変数は、
【数81】
によって与えられる。
【0085】
例えば、m’=ns/nj及びs’=NA/njのパラメータを導入することによって、これらの方程式は、スペーサ層の屈折率に対して比例され得る。図14において、m’の一部の値のための球面収差は、DVDインコヒーレント漏話から得られるような厚さhminのために与えられる。頂部水平軸は、DVDインコヒーレント漏話から得られるようなnspacerhmin=njhminを示し、それはs’=NA/nj、底部水平軸の簡単な関数である。60mλRMS球面収差の値は、二層システムのために正に許容し得る。同等に、15mλRMS球面収差の値は、4層システムのために正に許容し得る。双方の場合において、層当たり最大±30mλRMA球面収差が得られる。図14から分かるように、小さな比率のmjが好ましい、即ち、m’<1.2、又は、好ましくは、m’<1.02である。
【0086】
表IIは、NA並びにスペーサ層屈折率n2及びSIL屈折率nsの双方の一部の値のためのRMS球面収差を示している。典型的なスペーサ層は、1.4ミクロンの厚さ及び屈折率nj=1.7を有し得る。もしSIL屈折率ns=1.9であるならば、表は球面収差がA40=WRMS/λ=36.95×1.4/2=±26ミリ波であることを示す。これは、所与の実施例において、余分な球面収差補償手段が必要とされないことを意味する。
【0087】
【表2】
【0088】
近磁場光データ記憶装置の場合における球面収差
被覆層及びスペーサ層に起因する多層近距離場光学系のための球面収差の量を許容可能な限界内に保ち得ることが示される(参考文献[14]も参照)。71mλ OPD RMSの全収差が回折限界であると考えられる。球面収差は、この数よりも明確に少なくなければならない。BDシステムにおいて、全収差は250mλ OPD RMSであり、例えば、液晶セルによる活性補償が求められる。近距離場システムにおいて250mλ OPD RMSの量の球面収差を補償することが可能であると推定することは妥当に思われ、我々はそれをベンチマークとして用いる。
【0089】
図15には、Bismuth Germanate(BGO)固体浸レンズ(SIL)を備える近距離場光学素子のための青色波長(405nm)における球面収差が示されている。球面収差は、被覆層の屈折率の3つの値に関して示されている。それは最低値が被覆層の最高屈折率のために得られることを示している。屈折率n=1.7及び開口数NA=1.6に関して、我々は60mλ/μm OPD RMS球面収差を得た。これは多層積層厚さ(被覆層に加えてスペーサ層)をほぼ
(外2)
に制限する。
【0090】
図16には、屈折率n=2.007を備えるSF66から成る固体浸レンズ及び屈折率n=1.9を備えるガラスを有する近距離場光学素子のための青色波長(405nm)における球面収差が示されている。球面収差は、被覆層の屈折率の2つの値に関して示されている。n=1.7の被覆層屈折率に関して、これは多層積層厚さをほぼ
(外3)
に制限する。これは1.37μmスペーサ層及び1.5μm被覆層を備える4層ディスクを作成するのに十分である。
【0091】
図15及び図16の双方からの結果は、被覆層の最高屈折率のために最低値が得られることを示している。
【0092】
もし遠距離場(FF)値が既知であるならば、近距離場(NF)ディスクのための球面収差のスケーリングは直接的に直観的ではないことに留意。図8を参照。そこでは、我々は、ブルーレイディスク(同一の波長)のために、10mλ/μm OPD RMSの値が、25μmのスペーサ層のために、二層ブルーレイディスクのための25μm×10mλ/μm=250mλに増大することを見い出した。我々が参考文献[14]の理論的結果を用いて計算した図15及び図16中のデータは、図8中のデータの補外が示唆するものに比べ、球面収差のためのより低い値を示している(収差はNA=1を越えて発散するように思われる)。これは、収差を決定するのが開口数NA=n sinθではなくむしろ角度θであるという明白な事実に遡らされ得る(図3に関して開口数についてなされた注釈も参照)。
【0093】
図15及び図16に示されるデータは、低い球面収差を得るために、SILと被覆との間の屈折率の差が小さくされなければならないこと、並びに、30mλ/μm OPD RMSよりも低い値も可能でなければならないことも示唆している。これは図14中により明瞭に見られ、その場合には、m=1のために、我々はA40=0を得た。典型的には、スペーサ厚さは2μm未満であり、それは二層近距離場ディスクに関して2μm×30mλ/μm=60mλに増大する。
【0094】
ポリマ被覆層及びスペーサ層の屈折率がn=1.7であるよう選択される場合、SILも、好ましくは、n=1.7の屈折率を有するべきである。しかしながら、対物レンズの高い開口数を得るために、より高い値のSILの屈折率が望ましくあり得る。
【0095】
実施例:単層NA=2.0を覆って二層NA=1.6を備える近距離場システム
(外4)
− 被覆及びスペーサ層のための臨界厚さ変化
− 光路及び対物レンズ複雑性(焦点ジャンプ、球面収差)
− 高い屈折率(n>1.7)スピンコート可能ポリマの入手可能性
【0096】
上記問題点の第一は、本発明の開示の早くに取り扱われた。他の2つは以下に議論される。これらの問題のいずれも本質的な問題ではないように思われる。
【0097】
(外5)
単層NA=2.0システムと比べると、NA=1.6を備える二層システムは28%より多い容量を有し得る。
【0098】
(外6)
のためのスパッタリングされたスペーサと比較された
(外7)
のためのポリマスペーサ:
+ 数μmの厚さを備える層は、ポリマに関して問題ではない。
+ 厚いポリマスペーサは、極めて少ない応力(より少ないディスク曲げ)を引き起こす。
+ スパッタリングよりもずっと高速なスピンコーティング。
【0099】
(外8)
のためのスパッタリングされた被覆と比較された
(外9)
のためのポリマ被覆:
+ ポリマはより低い伝導率を有し、これは位相変化ディスク上のより低い表面温度を暗示する。
+ 数μmの厚さを備える層は、ポリマに関して問題ではない。
+ 厚いポリマ被覆は、極めて少ない応力(より少ないディスク曲げ)を引き起こす。
+ スパッタリングよりもずっと高速なスピンコーティング。
+ 小さなスクラッチに対する感度の減少。
【0100】
(外10)
と比較された
(外11)
のためのピッチ及び溝の寸法:
+ より容易且つより高速なマスタリング。
+ より容易な複製。
+ より大きなデトラッキング限界(de-tracking margin)、サーボのための1.25×より小さなDC利得。
+ 位相変化晶子と比べより大きな位相変化効果。
+ TE(及びTM)偏光スポットのためのより効率的な回折。
【0101】
(外12)
レンズと比較された
(外13)
レンズの利益:
+ 同一NF結合効率のために許容されたより大きな空気間隙(40nm対25nm)。
+ より大きな残留空気間隙誤差
+ より広いレンズマーキング限界
(外14)
のためのより大きなスポット:
(外15)
よりも大きな読取り力(より良好なSNR)。
+ 1.25×より小さなMTF遮断周波数:より少ない媒体ノイズ、より良好なSNR。
【0102】
静電集束(static focus)制御
被覆層及びm個のスペーサ層の全厚さが、十分に小さな厚さ変化、Δh=Δh1+Δh2+...+Δhmを有すると仮定すると、例えば、その組み合わせ厚さは20〜50nm未満だけ変化し、我々は、動的空気間隙補正に加え、被覆層にスペーサ層を加えた組み合わせの厚さ変化を補償する焦点距離の静電補正(static correction)を提案する。
【0103】
目的は、データ(記憶)層が焦点内にあると同時に、正しいエバネッセント結合が保証されるよう、SILと被覆層との間の空気間隙が一定に保たれることである。
【0104】
光学対物レンズの位置は、間隙幅を5nm未満に一定に維持するために、ある間隙誤差信号に従って調節されなければならない。
【0105】
スペーサ層内の4分の1波長及び焦点距離の双方よりも実質的に少ない厚さ変化を伴う被覆層及びスペーサ層の組み合わせは、さもなければ間隙サーボに加えて必要とされる、対物レンズの自動集束制御の必要を排除する。本出願人によって同時出願された整理番号PHNL040460を備える欧州特許出願を参照。ディスク間分散に適合するための静電集束制御及び球面収差補正だけが望ましい。例えば、導入トラックからの既知の信号の変調深度を最適化することによって、これを実現し得る。
【0106】
例えば、対物レンズは2つの素子を含み、空気間隙を大幅に変えることなく対の焦点距離を調節するよう、それらの2つの素子を軸方向に変位し得る。対物レンズを全体として移動することによって、空気間隙を調節し得る。図17A及び17Bを参照。空気間隙は一定に保たれる(SILはディスク表面に従うよう制御される)が、レンズによって、第四記憶層上での焦点を得るよう移動される。一般的に、所定量の球面収差が残る。一部の場合には、レンズ系、被覆層、及び、スペーサ層の組み合わせの最適な設計は、システム要件を満足し、他の場合には、球面収差の活性調節が必要とされ、さらなる手段が採られなければならない。
【0107】
本出願によって同時出願された参照番号PHNL040460及びPHNL040461を備える欧州特許出願は、単層光学系に適合するのみならず、多層光学系にも適合することを留意。
【0108】
ポリマの高い屈折率:n>1.7の実施例
n=1.9程度の高さの屈折率を備える高屈折率ポリマが存在する。例えば、Brewer Science Inc.によって製造される材料を参照。我々の適用のために最も興味深い化合物は、所謂ポリイミドによってもたらされるように思われる。405nmの波長にある光の光吸収は高いが、一部の材料に関しては、それは本発明の開示によって指し示されるような厚さレジーム内で適用可能であるために十分に低い。
【0109】
材料は、屈折率n=1.70及びk=9.0×10−4の吸収を有すべきである。この範囲のパラメータの仕様を備えるポリマ材料は存在する。参考文献[16]を参照。
【0110】
吸収量k(屈折率の虚部)とα(消衰係数)との間で変換するために、以下の方程式を用い得る。
メートルのλのために、
【数82】
【0111】
二層NF対物レンズ:光学設計実施例NA=1.5
この設計は、実用性の実施例としてここで用いられ、本出願人によってなされた。図19及び図20を参照。
設計のために採られるべきパラメータは:
− 405nm波長のためのガラス成形レンズ
− NA=1.5
− 被覆層厚さ3μm(n=1.62)
− スペーサ層厚さ3μm(n=1.62)
− 一定の空気間隙を備えるデータ層L0からL1までの焦点ジャンプ
【0112】
焦点ジャンプは以下を求める:
− コリメータ位置の変更
− 第一レンズとSILとの間の距離の変更
L0上の焦点: NA=1.50、OPD=0mλ RMS、共役距離=無限大
L1上の焦点: NA=1.53’ OPD=14mλ RMS、共益距離=−78mm
15mλ OPD RMS:場:Δφ=0.22°、SIL軸ずれ:Δr=7μm、SIL厚さ:Δt=12μm、非球面軸外し:Δr=1.0μm。
BGO SILの厚さ許容差は極めて大きく、非球面軸外し限界は厳しいが、実現可能である。この実施例は、二層近距離場レンズが実現可能であることを示している。
【0113】
レンズ、補正器、及び、光路の典型的な実施例(PHNL040460も参照)
記録器対物レンズ内の2つのレンズ間の距離を調節するためにローレンツモータを有する二重レンズアクチュエータが設計された。図20及び参考文献[11]を参照。レンズ系が全体としてアクチュエータ内に嵌入する。二重レンズは、反対方向に巻回された2つのコイルと、2つの放射状に磁化された磁石とから成る。コイルは、対物レンズホルダの周りに巻回され、このホルダは2つの板バネ内に懸架される。コイルを通じる電流は、2つの磁石の漂遊磁界との組み合わせで、第一対物レンズをSILに向かう方向或いはSILから離れる方向に移動する垂直力を生む。近距離場設計は、図21中の図面のように見え得る。
【0114】
システムの焦点位置を変更するための図11、17、18、20、及び、21に示されるものの代替的な実施態様は、例えば、レーザコリメータレンズの調節(図22を参照)、或いは、エレクトロウェッティング又は液晶材料に基づく切替可能な光学素子(図23及び24並びに参考文献[7]も参照)を含む。もちろん、これらの手段を同時に採り得る。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】Aは、被覆層を備えない通常の近距離場記録対物レンズ及びデータ記憶ディスクを示す概略図である。Bは、被覆層を備える通常の近距離場記録対物レンズ及びデータ記憶ディスクを示す概略図である。
【図2】Aは、被覆層を備えない近距離場光記憶対物レンズ及びデータ記憶レンズを示す概略図である。Bは、被覆層を備える近距離場光記憶対物レンズ及びデータ記憶レンズを示す概略図である。
【図3】Aは、NA=nSILNA0を有する半球形SILを備えるレンズの近距離場レンズ設計の1つの主要な実施例を示す概略図である。Bは、nSIL2NA0を有する超半円形SILを備えるレンズの近距離場レンズ設計の1つの主要な実施例を示す概略図である。
【図4】照射ビーム偏光状態に対して平行及び垂直な偏光状態の反射光の総量の測定値並びに双方の合計を示すグラフである。
【図5】被覆層の厚さ変化は焦点深度よりも大きく或いは小さくあり得ることを示す概略図である。
【図6】スピンコート層、UV硬化性シリコーンハードコートの実施例を示すグラフである。
【図7】Aは、レーザが頂部層L0上に集束されることを示す概略図であり、二層光データ記憶媒体内で、データ層L0及びL1は厚さhのスペーサ層によって分離され、被覆層は厚さh0を有する。Bは、レーザが底部層L1上に集束されることを示す概略図であり、二層光データ記憶媒体内で、データ層L0及びL1は厚さhのスペーサ層によって分離され、被覆層は厚さh0を有する。
【図8】青色近距離場光記録装置の球面収差(光路差)と開口数とのスケーリングを示すグラフである。
【図9】スペーサ層の厚さが4分の1波長よりも大きく或いは小さくあり得ることを示す概略図である。
【図10】焦点外層上のスポットが多くのデータのランレングスを含むことを示す概略図である。
【図11】Aは、多層光データ記憶媒体内で、データ層が厚さhのスペーサ層によって分離されていることを示す概略図である。Bは、多層光データ記憶媒体内で、データ層が厚さhのスペーサ層によって分離されていることを示す概略図である。
【図12】λ=405μm、NA=0.85、及び、n=1.62の遠距離場の場合のための0.5〜6μmとの間のスペーサ厚さhのためのCCT信号を示すグラフである。
【図13】λ=405μm、NA=1.5、及び、n=1.62の近距離場の場合のための0〜6μmとの間のスペーサ厚さhのためのCCT信号を示すグラフであり、DVD ICCTから比例するような最小厚さは、hmin=1.63である。
【図14】λ=0.405μm、NAは0.5の間の近距離場の場合のための0〜20μmの間のDVD ICCから比例されるような最小スペーサ厚さhminのためのスペーサ屈折率nに比例された球面収差パラメータ空間を示すグラフである。
【図15】Bismuth Germanate(BGO)固体浸レンズ(SIL)を備える近距離場光学素子のための球面収差を示すグラフであり、球面収差は、被覆層の屈折率の3つの値のために示され、最小値は被覆層の最大屈折率に関して得られる。
【図16】Bismuth Germanate(BGO)固体浸レンズ(SIL)の異なる屈折率のためのSILを備える近距離場光学素子のための球面収差を示すグラフであり、SIL及び被覆層が屈折率の最小の差を有するならば、球面収差が最低である。
【図17】Aは、第一記憶層が焦点内にあるときの多層光記憶装置の場合の二重アクチュエータの動作原理を示す概略図である。Bは、対物レンズを全体として移動することによって空気間隙が一定に維持されるときの並びに第四記憶層が焦点内にあるときの多層光記憶装置の場合の二重アクチュエータの動作原理を示す概略図である。
【図18】第一レンズ(上部)とSILとを含む二層レンズ設計を示す概略図であり、SILは、2ミリラジアン又は0.12°のディスク傾斜を可能にするよう円錐形にされ、SILに対して第一レンズの位置を変更し得る。
【図19】図18の二層レンズ設計のL0上の焦点の光ディスクのクローズアップ図である。
【図20】近距離場のための二重レンズアクチュエータの可能な実施態様を示す断面図であり、DVRのためのHNA(高NA)設計に基づいている。参考文献[11]を参照。
【図21】SILに対してレンズを移動することによって焦点ぼけを得ることができることを示す概略図である。
【図22】対物レンズに対してレーザコリメータレンズを移動することによっても焦点ぼけを得ることができることを示す概略図である。
【図23】光学系の焦点距離を調節するために用い得るエレクトロウェッティング(EW)又は液晶(LC)材料に基づく切替可能な光学素子を示す概略図であり、このようにして特定量の球面収差を同時に補償することも可能である。
【図24】光学系の焦点距離を調節するために用い得るエレクトロウェッティング又は液晶材料に基づく切替可能な光学素子を示す概略図であり、ここでは、それは第一レンズとSILとの間に配置され、このようにして特定量の球面収差を同時に補償することも可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光データ記憶媒体のデータ記憶層の上に集束される、波長λを有する放射線ビームを用いて、記録し且つ/或いは読み取るための光データ記憶システムであり、
mデータ記憶層と、集束される放射線ビームを透過する被覆層とを有する前記媒体と、
開口数NAを有する対物レンズを備える光学ヘッドとを含み、
前記mは、m≧2であり、
前記被覆層は、厚さh0と、屈折率n0とを有し、
前記データ記憶層は、厚さhj及び屈折率njをそれぞれ有するm−1個のスペーサ層によって分離され、ここで、j=1,...,m−1であり、
前記対物レンズは、前記媒体の最外側の表面からλ/10よりも小さな自由作動距離での記録及び/又は読取りのために構成され、且つ、前記光データ記憶媒体の前記被覆層の側に配置された前記被覆層固体浸レンズを含み、
該固体浸レンズから、前記集束される放射線ビームは、記録及び/又は読取り中に前記光記憶媒体中に結合するエバネッセント波結合によって結合される光データ記憶システムであって、
いずれか1つのhjは、
【数1】
よりも大きく、
NA<nj及びNA<n0及びb>10、好ましくは、b>15であり、
全てのhjの合計は、
【数2】
よりも小さく、
ここで、n
【数3】
及びk
【数4】
は、それぞれ、各スペーサ層の前記厚さで重み付けされた、全ての層の前記屈折率の平均実部及び虚部であり、
ここで、kjは、前記スペーサ層の前記屈折率njの前記虚部であり、fは、前記集束される放射線ビームの周縁光線の要求複光路透過率であることを特徴とする、
光データ記憶システム。
【請求項2】
1つのスペーサ層を備える媒体に対応してm=2である、請求項1に記載の光データ記憶システム。
【請求項3】
前記媒体全体を覆う如何なるスペーサ層の厚さ変化Δhも、以下の基準
【数5】
を満足する、請求項1又は2に記載の光データ記憶システム。
【請求項4】
前記媒体全体を覆う如何なるスペーサ層の厚さ変化Δhも、以下の基準
【数6】
及び
【数7】
を満足する、請求項3に記載の光データ記憶システム。
【請求項5】
NAは1.5よりも大きい、請求項1、2、3、又は、4のうちいずれか1項に記載の光データ記憶システム。
【請求項6】
hmaxが式
【数8】
によって置換され、前記固体浸レンズの前記屈折率nSILはnsであり、任意の前記スペーサ層の前記屈折率はnjであり、
前記変数は、
【数9】
の意味を有し、
WRMSは、最大二乗平均平方根波面球面収差である、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の光データ記憶システム。
【請求項7】
WRMS<250mλ、好ましくは、<60mλ、より好ましくは、<15mλである、請求項6に記載の光データ記憶システム。
【請求項8】
波長λ及び開口数NAを有する集束放射線ビームを用いて記録し且つ/或いは読み取りを行うための光データ記憶媒体であり、
mデータ記憶層と、集束される放射線ビームを透過する被覆層とを少なくとも含み、
前記mは、m≧2であり、
前記被覆層は、厚さh0と、屈折率n0とを有し、
前記データ記憶層は、厚さhjと、屈折率njとを有するm−1個のスペーサ層によって分離され、ここで、j=1,...,m−1である光データ記憶媒体であって、
いずれか1つのh1,...,hm−1は、
【数10】
よりも大きく、
NA<nj及びNA<n0及びb>10、好ましくは、b>15であり、
全てのhjの合計は、
【数11】
よりも小さく、
ここで、n
【数12】
及びk
【数13】
は、それぞれ、各スペーサ層の前記厚さで重み付けされた、全ての層の前記屈折率の平均実部及び虚部であり、
ここで、kjは、前記スペーサ層の前記屈折率njの前記虚部であり、fは、前記集束される放射線ビームの周縁光線の要求複光路透過率であることを特徴とする、
光データ記憶システム。
【請求項9】
1つのスペーサ層を備える媒体に対応してm=2である、請求項8に記載の光データ記憶媒体。
【請求項10】
前記媒体全体を覆う如何なるスペーサ層の厚さ変化Δhも、以下の基準
【数14】
を満足する、請求項8又は9に記載の光データ記憶媒体。
【請求項11】
前記媒体全体を覆う如何なるスペーサ層の厚さ変化Δhも、以下の基準
【数15】
及び
【数16】
を満足する、請求項10に記載の光データ記憶媒体。
【請求項12】
nは1.5よりも大きい、請求項8、9、10、又は、11のうちいずれか1項に記載の光データ記憶媒体。
【請求項13】
hmaxが式
【数17】
によって置換され、前記固体浸レンズの前記屈折率nSILはnsであり、任意の前記スペーサ層の前記屈折率はnjであり、
前記変数は、
【数18】
の意味を有し、
WRMSは、最大二乗平均平方根波面球面収差である、
請求項8乃至12のうちいずれか1項に記載の光データ記憶媒体。
【請求項14】
WRMS<250mλ、好ましくは、<60mλ、より好ましくは、<15mλである、請求項13に記載の光データ記憶媒体。
【請求項15】
前記スペーサ層は、前記放射線ビームを実質的に透過するポリイミドを含む、請求項8乃至14のうちいずれか1項に記載の光データ記憶媒体。
【請求項16】
前記ポリイミドは、紫外線硬化性を有する、請求項15に記載の光データ記憶媒体。
【請求項1】
光データ記憶媒体のデータ記憶層の上に集束される、波長λを有する放射線ビームを用いて、記録し且つ/或いは読み取るための光データ記憶システムであり、
mデータ記憶層と、集束される放射線ビームを透過する被覆層とを有する前記媒体と、
開口数NAを有する対物レンズを備える光学ヘッドとを含み、
前記mは、m≧2であり、
前記被覆層は、厚さh0と、屈折率n0とを有し、
前記データ記憶層は、厚さhj及び屈折率njをそれぞれ有するm−1個のスペーサ層によって分離され、ここで、j=1,...,m−1であり、
前記対物レンズは、前記媒体の最外側の表面からλ/10よりも小さな自由作動距離での記録及び/又は読取りのために構成され、且つ、前記光データ記憶媒体の前記被覆層の側に配置された前記被覆層固体浸レンズを含み、
該固体浸レンズから、前記集束される放射線ビームは、記録及び/又は読取り中に前記光記憶媒体中に結合するエバネッセント波結合によって結合される光データ記憶システムであって、
いずれか1つのhjは、
【数1】
よりも大きく、
NA<nj及びNA<n0及びb>10、好ましくは、b>15であり、
全てのhjの合計は、
【数2】
よりも小さく、
ここで、n
【数3】
及びk
【数4】
は、それぞれ、各スペーサ層の前記厚さで重み付けされた、全ての層の前記屈折率の平均実部及び虚部であり、
ここで、kjは、前記スペーサ層の前記屈折率njの前記虚部であり、fは、前記集束される放射線ビームの周縁光線の要求複光路透過率であることを特徴とする、
光データ記憶システム。
【請求項2】
1つのスペーサ層を備える媒体に対応してm=2である、請求項1に記載の光データ記憶システム。
【請求項3】
前記媒体全体を覆う如何なるスペーサ層の厚さ変化Δhも、以下の基準
【数5】
を満足する、請求項1又は2に記載の光データ記憶システム。
【請求項4】
前記媒体全体を覆う如何なるスペーサ層の厚さ変化Δhも、以下の基準
【数6】
及び
【数7】
を満足する、請求項3に記載の光データ記憶システム。
【請求項5】
NAは1.5よりも大きい、請求項1、2、3、又は、4のうちいずれか1項に記載の光データ記憶システム。
【請求項6】
hmaxが式
【数8】
によって置換され、前記固体浸レンズの前記屈折率nSILはnsであり、任意の前記スペーサ層の前記屈折率はnjであり、
前記変数は、
【数9】
の意味を有し、
WRMSは、最大二乗平均平方根波面球面収差である、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の光データ記憶システム。
【請求項7】
WRMS<250mλ、好ましくは、<60mλ、より好ましくは、<15mλである、請求項6に記載の光データ記憶システム。
【請求項8】
波長λ及び開口数NAを有する集束放射線ビームを用いて記録し且つ/或いは読み取りを行うための光データ記憶媒体であり、
mデータ記憶層と、集束される放射線ビームを透過する被覆層とを少なくとも含み、
前記mは、m≧2であり、
前記被覆層は、厚さh0と、屈折率n0とを有し、
前記データ記憶層は、厚さhjと、屈折率njとを有するm−1個のスペーサ層によって分離され、ここで、j=1,...,m−1である光データ記憶媒体であって、
いずれか1つのh1,...,hm−1は、
【数10】
よりも大きく、
NA<nj及びNA<n0及びb>10、好ましくは、b>15であり、
全てのhjの合計は、
【数11】
よりも小さく、
ここで、n
【数12】
及びk
【数13】
は、それぞれ、各スペーサ層の前記厚さで重み付けされた、全ての層の前記屈折率の平均実部及び虚部であり、
ここで、kjは、前記スペーサ層の前記屈折率njの前記虚部であり、fは、前記集束される放射線ビームの周縁光線の要求複光路透過率であることを特徴とする、
光データ記憶システム。
【請求項9】
1つのスペーサ層を備える媒体に対応してm=2である、請求項8に記載の光データ記憶媒体。
【請求項10】
前記媒体全体を覆う如何なるスペーサ層の厚さ変化Δhも、以下の基準
【数14】
を満足する、請求項8又は9に記載の光データ記憶媒体。
【請求項11】
前記媒体全体を覆う如何なるスペーサ層の厚さ変化Δhも、以下の基準
【数15】
及び
【数16】
を満足する、請求項10に記載の光データ記憶媒体。
【請求項12】
nは1.5よりも大きい、請求項8、9、10、又は、11のうちいずれか1項に記載の光データ記憶媒体。
【請求項13】
hmaxが式
【数17】
によって置換され、前記固体浸レンズの前記屈折率nSILはnsであり、任意の前記スペーサ層の前記屈折率はnjであり、
前記変数は、
【数18】
の意味を有し、
WRMSは、最大二乗平均平方根波面球面収差である、
請求項8乃至12のうちいずれか1項に記載の光データ記憶媒体。
【請求項14】
WRMS<250mλ、好ましくは、<60mλ、より好ましくは、<15mλである、請求項13に記載の光データ記憶媒体。
【請求項15】
前記スペーサ層は、前記放射線ビームを実質的に透過するポリイミドを含む、請求項8乃至14のうちいずれか1項に記載の光データ記憶媒体。
【請求項16】
前記ポリイミドは、紫外線硬化性を有する、請求項15に記載の光データ記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2007−534102(P2007−534102A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509035(P2007−509035)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051245
【国際公開番号】WO2005/104115
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051245
【国際公開番号】WO2005/104115
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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