説明

読取装置

【課題】斜行補正の際に記憶領域を圧迫せずに画像データを斜行補正することが可能な読取装置を提供すること。
【解決手段】下面読取部15による読み取りを開始し(S2)、記憶された読取データから斜行角度θを検出してメモリ18に記憶する(S5)。上面読取部14にてラインデータを読み取る毎にラインメモリ16に記憶し、画像処理部17にて斜行角度−θに基づき斜行補正を実行する。さらに斜行補正後の原稿画像データを画像メモリ19に記憶することで、原稿1枚分の読み取りが終了するまでの間、ラインデータを読み取る度に、その処理を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を読み取り可能な読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原稿を読み取って取得した画像データに基づいて、原稿が搬送されてくる際の斜行量を検出し、検出した斜行量に基づいて画像データの斜行を補正する原稿読取装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−294559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献のような斜行量から画像データの斜行を補正する技術において、斜行量を補正する際に、読み取った原稿1枚分の画像データを一旦全て記憶部に記憶し、その後記憶された画像データに対して補正を行っていた。
【0005】
即ち原稿読取装置の記憶部には、少なくとも、原稿1枚分の補正前の画像データと、補正後の画像データとを記憶する領域が必要となるため、当該二つの画像データにより記憶部の記憶領域が圧迫される課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、斜行補正の際に記憶領域を圧迫せずに画像データを斜行補正することが可能な読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1に記載の読取装置は、原稿を搬送する搬送部と、前記搬送部にて搬送される原稿を読み取り、画像データを取得する読取部と、前記搬送部にて搬送される原稿の斜行量を検出する検出部と、前記検出部により検出した斜行量から画像データの傾斜を補正する補正部と、前記補正部による補正前の画像データを記憶する補正前記憶部と、前記補正部による補正後の画像データを記憶する補正後記憶部と、前記補正前記憶部に画像データの一部が記憶されたことに応じて、前記補正部により前記画像データの一部を補正し前記補正後記憶部に記憶する制御を実行する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の読取装置は、請求項1に記載の読取装置において、前記検出部は、読取部によって読み取った原稿の画像データから斜行量を検出することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の読取装置は、請求項2に記載の読取装置において、前記読取部は、原稿の両面に対しそれぞれ一つずつ備えることで原稿の両面を読み取り、前記検出部は、前記読取部にて先に読み取られた原稿面による画像データから斜行量を検出し、前記制御部は、検出された斜行量に基づいて、前記原稿面とは他方の原稿面の画像データの一部に対し前記制御を実行することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の読取装置は、請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の読
取装置において、前記読取部は、原稿の両面に対しそれぞれ一つずつ備えることで原稿の両面を読み取り、前記読取部にて原稿の片面を読み取る片面読取モードと、前記読取部にて原稿の両面を読み取る両面読取モードと、を選択可能な選択部を備え、前記選択部にて片面読取モードが選択されたことに応じて、前記制御部は前記片面の画像データの一部に対し前記制御を実行し、前記選択部にて両面読取モードが選択されたことに応じて、前記制御部は前記他方の面の画像データの一部に対してのみ前記制御を実行することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の読取装置は、請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の読取装置において、前記補正前記憶部に記憶される画像データの一部は、前記原稿の所定のライン分の画像データであることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の読取装置は、請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の読取装置において、前記補正前記憶部と前記補正後記憶部とは、共通の記憶機構にて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
<請求項1の発明>
補正前記憶部に補正前の画像データ全てを記憶する必要がないため、補正前及び補正後記憶部を効率よく使用することが可能である。
【0014】
<請求項2の発明>
検出部は読取部によって取得した画像データから傾斜量を検出するため、読取部及び検出部により複数回原稿を読み取る必要がない。
【0015】
<請求項3の発明>
原稿の両面の斜行量は同等であるため、先に読み取った原稿面による画像データから斜行量を検出することで、予め斜行量を検出し、後に読み取る原稿面に対して当該斜行量を適用し補正することで、処理に無駄がなく、補正前及び補正後記憶部を効率よく使用することが可能である。
【0016】
<請求項4の発明>
補正部による画像データの補正が片面ずつしか出来ない構成の場合、このように構成することで、片面読取モード及び両面読取モードに対して適切に処理可能である。
【0017】
<請求項5の発明>
所定ライン分の画像データを補正前記憶部に記憶することに応じて制御部による制御が実行されることで、補正部による補正が細かく実行されるため好適に傾斜の補正が可能である。
【0018】
<請求項6の発明>
補正前記憶部と補正後記憶部が共通であることで、補正前記憶部と補正後記憶部にそれぞれ記憶機構を設けなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1はスキャナの外観を示す模式的斜視図である。
【図2】図2はスキャナの構成例を示すブロック図である。
【図3】図3は原稿読取部の構成例を示すブロック図である。
【図4】図4は下面読取部が読み取った読取データを示す模式図である。
【図5】図5は原稿読取部が読み取った読取データを示す模式図である。
【図6】図6は原稿画像の読取処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<スキャナの全体構成>
以下に、本発明に係る読取装置を、イメージスキャナ(以下、スキャナという)に適用した実施形態に基づいて詳述する。図1は本実施形態に係るスキャナの外観を示す模式的斜視図である。本実施形態のスキャナ1は、装置本体2の一側面に、複数の原稿からなる原稿束を積層する原稿トレイ3が垂直方向に移動可能に取り付けられており、原稿トレイ3が取り付けられた側面の反対側の側面には、装置本体2で処理された原稿が排出される排出トレイ(図示せず)が取り付けられている。
【0021】
装置本体2の上面には操作パネル4が設けられている。装置本体2の原稿トレイ3が取り付けられた側面には、原稿トレイ3上に積層された原稿を装置本体2内部へ給送するための給送口2aが開口されている。給送口2aの上部中央には、原稿トレイ3上に積層された原稿を最上層から1枚ずつ取り込むためのピックアップローラ5が設けられている。
【0022】
原稿トレイ3の上面には、積層された原稿束の幅方向の位置を規制する原稿規制板3a,3aが原稿の搬送方向に交差する方向、本実施形態では直交する方向に移動可能に取り付けられている。なお、原稿規制板3a,3aは、原稿トレイ3の中央に原稿が積層されるように原稿の位置を規制する。
【0023】
<スキャナの制御構成>
図2は本実施形態のスキャナ1の構成例を示すブロック図である。スキャナ1は、制御部10、ROM11、RAM12、原稿読取部13、本発明の検出部及び補正部の一例としての画像処理部17、本発明の選択部の一例としての操作部20、表示部21、通信部22、メモリ18等を備えており、夫々はバス1aを介して相互に接続されている。
【0024】
また、メモリ18内には、本発明の補正前記憶部の一例としてのラインメモリ16及び本発明の補正後記憶部の一例としての画像メモリ19としての記憶領域が存在し、それぞれの記憶領域にはラインデータ及び画像データが記憶される。なお、ラインデータは画像データを構成するライン毎のデータを示している。
【0025】
制御部10は、具体的にはCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)等で構成されており、バス1aを介して接続される上述したようなハードウェア各部を制御すると共に、ROM11に格納された制御プログラムに従って、種々のソフトウェア的機能を実現する。
【0026】
ROM11は、スキャナ1を本発明の原稿読取装置として動作させるために必要な種々の制御プログラムを予め記憶している。RAM12は、SRAM又はフラッシュメモリ等で構成され、制御部10による制御プログラムの実行時に発生するデータを一時的に記憶する。
【0027】
原稿読取部13は、原稿トレイ3上に積層された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して所定の読取位置まで搬送する本発明の搬送部の一例としての原稿搬送部13aと、原稿搬送部13aによって搬送されてくる原稿の上面を読み取るための上面読取部14と、原稿の下面を読み取るための下面読取部15とを備え、原稿を読み取って画像データを取得する読取部として動作する。なお、上面読取部14と下面読取部15は、本発明の読取部に相当する。原稿読取部13は、原稿から読み取った画像データをラインデータ毎にメモリ18内のラインメモリ16へ出力する。
【0028】
ラインメモリ16は、原稿読取部13が原稿から読み取った画像データをラインデータとしてライン単位で一時的に記憶するためのメモリである。ラインメモリ16に記憶されたラインデータは、制御部10からの指示に従って画像処理部17へ出力される。
【0029】
画像処理部17は、ラインメモリ16から出力されたラインデータに斜行補正を行ない、処理したラインデータをメモリ18内の画像メモリ19に記憶させる。なお、本実施形態における画像処理部17は、同時に原稿の両面分のラインデータを斜行補正できない構成となっている。即ち、いずれか一方の面のラインデータ順次を補正している間は他方の面の画像データ(ラインデータ)を補正することは不可能である。
【0030】
画像メモリ19は、原稿読取部13により原稿から読み取られて画像処理部17により所定の処理が施されたラインデータを順次記憶し、複数のラインデータから形成された画像データを記憶する。なお、メモリ18は、DRAM又はフラッシュメモリ等により構成されている。
【0031】
また後述にて説明するが、本実施形態の非補正読取の場合は、原稿読取部13にて読み取ったラインデータをラインメモリ16に記憶せずに画像メモリ19に記憶し、画像メモリ19に記憶された画像データを画像処理部17にて斜行補正する。なおその場合、画像処理部17による斜行補正された後の画像データも画像メモリ19に保存される。
【0032】
操作部20は、ユーザがスキャナ1を操作するために必要な各種のキーを備えている。ユーザにより各キーが操作された場合、操作部20は操作されたキーに対応した制御信号を制御部10へ送出し、制御部10は操作部20から取得した制御信号に対応した処理を実行する。
【0033】
表示部21は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)で構成されており、スキャナ1の動作状況、ユーザに通知すべき情報、操作部20から入力された情報等を表示する。なお、表示部21をタッチパネル方式のものとすることにより、操作部20の各種のキーのうちの一部又は全部を代用することも可能である。また、操作部20及び表示部21は操作パネル4にて構成されている。
【0034】
通信部22は、例えばLANのようなネットワーク(図示せず)に接続するためのインタフェースであり、画像メモリ19に記憶してある画像データを、ネットワークに接続されている外部の装置へ送信する。これにより、スキャナ1は、原稿から読み取った画像データを外部の装置へネットワークを介して送信するネットワークスキャナとして機能する。
【0035】
<原稿読取部の構成>
以下に、本実施形態の原稿読取部13の構成について説明する。図3は原稿読取部13の構成例を示すブロック図である。図3(a)は図1において装置本体2の内部を矢符Aで示す方向から見た縦断面図、図3(b)は補正プレート15aの構成例を示す模式的平面図である。
【0036】
装置本体2は直方体状の筺体を有しており、内部の所定位置にプラテンガラス9が配置されている。また、装置本体2の内部には、ピックアップローラ5によって原稿束から1枚ずつ分離された原稿を、図3(a)中の矢符Bで示す搬送方向へプラテンガラス9の上面まで搬送するセパレートローラ6、リタードローラ7及び搬送ローラ8,8がそれぞれ適宜箇所に設けられている。従って、原稿搬送部13aは、ピックアップローラ5、セパレートローラ6、リタードローラ7、搬送ローラ8,8等によって構成される。
【0037】
セパレートローラ6、リタードローラ7、搬送ローラ8,8はそれぞれ、制御部10からの指示に従って動作する駆動回路によって回転駆動される。ピックアップローラ5とセパレートローラ6との間にはベルト5aが張架されており、駆動回路によって制御されるセパレートローラ6の回転がベルト5aを介してピックアップローラ5に伝達され、ピックアップローラ5を原稿束に押圧させると共に、ピックアップローラ5を回転させてセパレートローラ6に向けて最上層の原稿を給紙させる。
【0038】
ピックアップローラ5、セパレートローラ6、搬送ローラ8,8は原稿を搬送方向Bへ搬送させる方向に回転するように制御されるが、リタードローラ7は逆方向に回転するように制御される。これにより、重送状態の原稿をセパレートローラ6及びリタードローラ7の回転によって1枚ずつ分離して搬送することができる。
【0039】
なお、原稿搬送部13aは、原稿束を押圧するピックアップローラ5の位置を検出するセンサ(図示せず)、原稿トレイ3を上昇させるための駆動回路等を更に備えており、センサによってピックアップローラ5が所定位置よりも下方に下がったことを検知した場合、駆動回路を動作させて原稿トレイ3を上昇させる。これにより、ピックアップローラ5は、原稿束における最下層の原稿まで確実に装置本体2内部へ取り込むことができる。
【0040】
プラテンガラス9の上部には、搬送ローラ8に近い位置に、図3(b)に示すような補正プレート15aが長手方向を原稿の搬送方向Bに交差させて、本実施形態では直交させて配置されている。
【0041】
プラテンガラス9の下部には、白色蛍光灯又は冷陰極管等からなり、プラテンガラス9の補正プレート15aと対向する部分の下面に光を照射する光源ランプ15bと、プラテンガラス9上に搬送されてきた原稿の下面からの反射光を結像レンズ15dへ導くためのミラー15cとをそれぞれ所定箇所に、長手方向を原稿の搬送方向Bに直交させて配置してある。
【0042】
プラテンガラス9の下部には、更に、ミラー15cによって光路が変更された原稿の下面からの反射光を集光する結像レンズ15dと、結像レンズ15dを通して入射される反射光を取得するCCD(Charge Coupled Device)ラインセンサ等からなるイメージセンサ15eとが備えられている。
【0043】
このような構成により、1枚ずつ分離されて搬送されてくる原稿が、補正プレート15aによってプラテンガラス9の上面に押し付けられ、光源ランプ15bによって照射されている光の原稿からの反射光を1ラインずつイメージセンサ15eが取り込む。
【0044】
1枚の原稿が補正プレート15aを通過するまでの間、イメージセンサ15eが原稿からの反射光の取得を継続することにより、1枚分の原稿の下面画像の読み取りを行なう。なお、光源ランプ15b、ミラー15c、結像レンズ15d及びイメージセンサ15eは、搬送されてくる原稿の下面の画像を読み取る下面読取部15(図2参照)を構成する。
【0045】
プラテンガラス9の下面には、搬送ローラ8から遠い位置に、プラテンガラス9への貼付面が白い白プレート14aが長手方向を原稿の搬送方向Bに交差させて、本実施形態では直交させて貼付されている。なお、この白プレート14aは、幅が略5mmで長さが略30cmの白い板からなる。
【0046】
プラテンガラス9の上部には、プラテンガラス9の下部と上下が逆転した構成で、光源ランプ14b、ミラー14c、結像レンズ14d、イメージセンサ14eとが備えられており、1枚ずつ分離されて搬送され、下面読取部15によって下面の読み取りが行なわれ
た原稿が、白プレート14aの配置位置において光源ランプ14bによって光が照射され、この光の原稿からの反射光を1ラインずつイメージセンサ14eが取り込む。
【0047】
1枚の原稿が白プレート14aの配置位置を通過するまでの間、イメージセンサ14eが原稿からの反射光の取得を継続することにより、1枚分の原稿の上面画像の読み取りを行なう。なお、光源ランプ14b、ミラー14c、結像レンズ14d及びイメージセンサ14eは、搬送されてくる原稿の上面の画像を読み取る上面読取部14(図2参照)を構成する。
【0048】
なお、下面読取部15及び上面読取部14によって画像の読み取りが行なわれた原稿は、適宜箇所に設けられた搬送ローラ(図示せず)によって搬送され、所定の排出トレイ上に排出される。上述した構成により、スキャナ1は、ピックアップローラ5によって1枚ずつ分離された原稿が排出トレイまで搬送される1回の搬送動作において、原稿の上面及び下面の両方の画像を読み取ることができる。
【0049】
ここで、下面読取部15は、原稿から読み取った画像データに対して画像処理部17が行なう斜行補正の際に用いる原稿の斜行角度θ(斜行量)を取得するためのプレートとして、図3(b)に示すように、幅が略5mmで長さが略30cmの白地の板に、長手方向に略7cmの間隔を隔てた3箇所に略5mmの幅の帯状の黒い領域、具体的には黒ストライプ15aa,15aa,15aaを設けた補正プレート(基準部材)15aを用いている。
【0050】
なお、補正プレート15aは、黒ストライプ15aa,15aa,15aaを設けた面が下面読取部15による読取面となるように、黒ストライプ15aa,15aa,15aaを設けた面を下に向けて配置される。
【0051】
なお、読取対象の原稿は白地のものが多いため、上記したように白プレート14aを白地のもので構成することが好ましく、補正プレート15aを白地に黒のストライプを設けた構成とすることが好ましい。
【0052】
また、スキャナ1において、例えばユーザが操作部20を介して原稿の読取処理を指示した場合、下面読取部15は、制御部10からの指示に従って、補正プレート15aの配置位置まで搬送されてきた原稿の下面(一面)からの反射光を読み取って画像データを取得し、上面読取部14は、制御部10からの指示に従って、白プレート14aの配置位置まで搬送されてきた原稿の上面(他面)からの反射光を読み取って画像データを取得する。
【0053】
ここで、白プレート14a,15aは、上面読取部14及び下面読取部15によって読み取りが可能な原稿の幅よりも長く設計されており、上面読取部14及び下面読取部15は、搬送されてくる原稿のサイズに拘わらず白プレート14a,15aの全領域を読み取れるように構成されている。
【0054】
従って、原稿読取部13は、搬送されてきた原稿を読み取る際に、搬送されてくる原稿と共に、白プレート14a,15aの原稿に覆われていない部分も読み取る。なお、原稿読取部13は、原稿の搬送経路の所定箇所にセンサ(図示せず)が設けられており、このセンサによって原稿の通過が検知された場合に原稿の読み取りを開始するので、原稿の搬送方向Bに対しても原稿サイズよりも長い領域を読み取るように構成されている。
【0055】
<画像データ及び斜行角度の説明>
図4は下面読取部15が読み取った画像データの全体(以下、読取データという)の状
態を示す模式図である。スキャナ1において、例えばA4サイズの原稿が短辺を先頭として搬送されてきた場合、下面読取部15は、図4(a)に示すような読取データを取得する。
【0056】
なお、以下に説明する図4(a),(b),(c),図5(a),(b)は画像処理部17による斜行補正が行われる前の画像データを表しているが、実際にはこの様な斜行補正が行われる前の原稿1枚分の画像データは作成されず、メモリ18等にも記憶されない場合もある。
【0057】
後述にて説明するが、本実施形態における補正読取の際には、ラインデータ毎に画像処理部17による斜行補正がなされるため、実際の画像データは斜行補正がなされた後のデータのみが画像メモリ17に記憶されることになる。また、後述する非補正読取の際には、この様な原稿1枚分の画像データが作成される。
【0058】
図4(a)において一点鎖線で示した領域は読取データ101を、ハッチングを付して実線で示した領域は原稿から読み取った画像データ(以下、原稿画像データともいう)100をそれぞれ示している。
【0059】
従って、読取データ101には、原稿画像データ100以外の領域として補正プレート15aから読み取った反射光に基づくデータが含まれている。この反射光に基づくデータを説明の簡略化のために余剰データと呼ぶ。また、余剰データのうちの、補正プレート15aに設けられた黒ストライプ15aa,15aa,15aaから読み取ったデータを黒データと呼ぶ。
【0060】
図4(b)には原稿が斜行して搬送された場合の読取データの状態を、図4(c)には図4(b)に示した読取データの先端部分(図4(b)における上方部分)の拡大図をそれぞれ示している。図4(b)に示すように、原稿が斜行して搬送されると、図4(a)に示した原稿が斜行していない場合の読取データと比較して、余剰データ中の黒データの形状、面積及び搬送方向への長さが相異する。
【0061】
具体的には、図4(c)に示すように、読取データの先端から原稿画像データの先端までの間の余剰データにおいて、3本の黒データの長さd1,d2,d3がそれぞれ異なる。なお、図4(c)に示すように原稿が右肩下がりに斜行している場合、3本の黒データの長さはd1<d2<d3となり、原稿が右肩上がりに斜行している場合、3本の黒データの長さはd1>d2>d3となる。
【0062】
従って、画像処理部17は、下面読取部15が取得した読取データに基づいて、読取データの先端から原稿画像データの先端までの間の3本の黒データの長さを検出し、検出した各長さに基づいて原稿の斜行角度θ(斜行量)を検出することができる。従って、画像処理部17は、補正プレート15aの読取面上を搬送されてくる原稿を補正プレート15aと共に読み取った場合に取得された読取データに含まれる余剰データ及び原稿画像データの境界部分のデータに基づいて、原稿の斜行角度θを検出する検出部として動作する。
【0063】
また、画像処理部17は、検出した斜行角度θをメモリ18の記憶領域に記憶させ、斜行角度θに基づいて、下面読取部15が原稿の下面から読み取った原稿画像データの傾斜を補正する。
【0064】
なお、画像処理部17は、上述したように原稿の斜行量を検出する処理は、下面読取部15によって原稿の下面から取得された読取データの先端領域においての斜行角度θが検出可能なライン分の読取データ(ラインデータ)がラインメモリ16に記憶された後に実
行する。具体的には、図4(c)に示すように3本の黒データの長さd1,d2,d3が検出可能な分のラインデータが記憶されたことに応じて、斜行角度θが検出される。
【0065】
また、本実施形態のスキャナ1では、1回の搬送動作によって原稿の両面を読み取ることができるので、上述したように下面読取部15が取得した読取データに基づいて検出された斜行角度θを、上面読取部14が原稿の上面から読み取った原稿画像データの傾斜を補正する際にも利用することができる。
【0066】
図5は原稿読取部13が読み取った読取データの状態を示す模式図である。図5(a)には上面読取部14が読み取った読取データの状態を、図5(b)には下面読取部15が読み取った読取データの状態をそれぞれ示している。図5(a)に示すように原稿の上面から読み取った原稿画像データ100が読取データ101に対して右肩下がりに傾いている場合、図5(b)に示すように原稿の下面から読み取った原稿画像データ100は読取データ101に対して右肩上がりに傾くことになり、両者の斜行角度(絶対値)は一致する。従って、画像処理部17は、下面読取部15が取得した読取データに基づいて斜行角度θを検出した場合、原稿の下面から読み取った原稿画像データに対しては斜行角度θに基づいて傾斜を補正し、原稿の上面から読み取った原稿画像データに対しては斜行角度−θに基づいて傾斜を補正する。
【0067】
このように、原稿の一方の面から読み取った読取データに基づいて検出した斜行量を、原稿の両面それぞれから読み取った画像データに対する斜行補正に共通して用いることができるので、原稿の各面毎に斜行角度を検出する場合と比較して、画像処理部17による斜行角度の検出処理の負担を軽減できる。
【0068】
<読取処理>
以下に、上述した構成のスキャナ1による原稿画像の読取処理について説明する。図6はスキャナ1による原稿画像の読取処理の手順を示すフローチャートである。なお、以下の処理は、ROM11に格納されている制御プログラムに従って制御部10により実行される。
【0069】
制御部10は、例えばユーザが操作部20を介して原稿画像の読取処理を指示した場合、原稿読取部13を動作させ、原稿搬送部13aによる原稿の搬送を開始する(S1)。なお、この操作部20による読取指示の際に、ユーザは原稿の両面を読み取る両面読取を実行するか、原稿の片面を読み取る片面読取を実行するか、の設定を選択指示可能である。また、片面読み取りを実行する場合は、下面読取部15にて読み取りが実行されるため、ユーザは原稿トレイ3に対して原稿を下向きにして積層する。
【0070】
原稿の搬送が開始されると、制御部10は、搬送されてくる原稿の画像の下面読取部15による読み取りを開始し(S2)、読み取った読取データ(ラインデータ)をラインメモリ16に記憶する(S3)。さらに、制御部10は、記憶された読取データから斜行角度が検出可能か否かを判断し(S4)、検出可能でないと判断した場合(S4:NO)、下面読取部15による読み取りと読取データ(ラインデータ)のラインメモリ16への記憶とを継続する(S3)。
【0071】
斜行角度が検出可能であると判断した場合(S4:YES)、制御部10は、下面読取部15が取得した読取データを画像処理部17によって解析し、検出した各黒データの長さを画像処理部17によって検出し、検出した各長さに基づいて原稿の先端での斜行角度θを検出してメモリ18に記憶する(S5)。
【0072】
次に制御部10は、読取指示にて指示された設定が両面読取であるか否かを判断し(S
6)、両面読取である場合(S6:YES)、上面読取部14にて補正読取処理を実行し、下面読取部15にて非補正読取を実行する(S7)。
【0073】
ここでの補正読取処理とは、上面読取部14にてラインデータを読み取る毎にラインメモリ16に記憶し、画像処理部17にて斜行角度−θに基づき斜行補正を実行する。さらに斜行補正後の原稿画像データを画像メモリ19に記憶することで、原稿1枚分の読み取りが終了するまでの間、ラインデータを読み取る度に、その処理を繰り返す処理である。また、非補正読取処理とは、読取データをラインデータ毎にラインメモリ16に記憶せず読取データとして画像メモリ19に記憶する処理である。
【0074】
原稿1枚分の読み取りが終了すると、非補正読取処理を実行し画像メモリ19に記憶されている原稿の下面の読取データに対して、画像処理部17にて斜行角度θに基づき斜行補正を実行し、斜行補正後の原稿画像データを画像メモリ19に記憶する(S8)。
【0075】
なお本実施形態における、両面読取では、画像処理部17による斜行角度θの検出が上面読取部14による補正読取処理の前に検出されていることを想定している。即ち、原稿の上面が読み取り始められるまでには、斜行角度θが検出完了されており、その検出された斜行角度θ(−θ)に基づいて原稿の上面に対して補正読取処理が実行される。
【0076】
一方、読取指示にて指示された設定が片面読取である場合(S6:NO)、制御部10は、S3の処理にてラインメモリ16に既に記憶されている読取データを、画像処理部17にて斜行角度θに基づき斜行補正を実行し画像メモリ19に原稿画像データとして記憶する(S9)。
【0077】
その後、下面読取部15にて補正読取を実行する(S10)。ここでの補正読取処理とは、下面読取部15にてラインデータを読み取る毎にラインメモリ16に記憶し、画像処理部17にて斜行角度θに基づき斜行補正を実行する。さらに斜行補正後の原稿画像データを画像メモリ19に記憶することで、原稿1枚分の読み取りが終了するまでの間、ラインデータを読み取る度に、その処理を繰り返す処理である。
【0078】
S8及びS10の処理が完了すると、原稿トレイ3上に積層されている原稿が全て読み取られたか否かを判断し(S11)、まだ原稿が残っている場合(S11:NO)、処理がS1の処理の戻りS1からS10の処理が再度実行される。一方、原稿が全て読み取られたと判断された場合(S11:YES)、本読取処理が終了する。
【0079】
この様に読取処理が実行されると、いずれか一方の面を読み取る際に、随時斜行補正を実行しているため、読み取りをしながら斜行補正が可能である。従って、片面読取処理における下面及び両面読取処理における上面の斜行補正がされる前の画像データが、全てラインメモリ16に記憶されることがないため、ラインメモリ16の記憶領域を圧迫することを回避することが可能である。
【0080】
また、画像処理部17が同時に両面分のラインデータを斜行補正できない構成の場合、両面読取において、少なくとも一方の面(本実施形態では上面)のみを読み取りながら斜行補正(補正読取処理)が可能である。
【0081】
<他の実施形態>
上述した実施形態では、本発明の読取装置をスキャナ1に適用した例について説明したが、原稿から画像を読み取る読取装置を備えるものであればスキャナに限らない。例えば、複写機、ファクシミリ装置、複合機等においても本発明の読取装置を利用することができる。
【0082】
上述した実施形態では、1回の搬送動作において原稿の両面を読み取るように構成されたスキャナ1を例に説明したが、1つの読取部と原稿を表裏反転させるADF機構とを備え、原稿の表面を読み取った後に原稿の表裏を反転させ、原稿の裏面を読み取る構成の読取装置においても本発明を適用できる。なお、この場合、原稿の表面から読み取った画像データの斜行量と、原稿の裏面から読み取った画像データの斜行量とは異なるため、斜行量の検出処理はそれぞれ行なう必要がある。
【0083】
上述した実施形態では、斜行角度を原稿読取部13にて読み取った読取データから検出しているが、上述した方法以外の検出方法にて検出してもよい。例えば、斜行角度を検出するセンサを新たに備えて検出する方法等が考えられる。
【0084】
上述した実施形態では、画像処理部17の都合上、一方の面のみに対して補正読取処理を実行したが、両面読取において両面に対して補正読取処理が実行される形態であってもよい。これは画像処理部17が原稿の両面を同時に斜行補正が可能な処理部であれば実施可能である。
【0085】
上述した実施形態では、ラインデータ毎に補正読取処理を実行したが、ラインデータ毎ではなく、例えば原稿の四分の一を読み取ったこと等に応じて補正読取処理を実行する形態であってもよい。
【0086】
上述した実施形態では、1つのメモリ18内にラインメモリ16と画像メモリ19としての記憶領域が存在しているが、これらラインメモリ16と画像メモリ19が異なるメモリであってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 スキャナ
10 制御部
13 原稿読取部
14 上面読取部
15 下面読取部
15a 補正プレート
16 ラインメモリ
17 画像処理部
18 メモリ
19 画像メモリ
20 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を搬送する搬送部と、
前記搬送部にて搬送される原稿を読み取り、画像データを取得する読取部と、
前記搬送部にて搬送される原稿の斜行量を検出する検出部と、
前記検出部により検出した斜行量から画像データの傾斜を補正する補正部と、
前記補正部による補正前の画像データを記憶する補正前記憶部と、
前記補正部による補正後の画像データを記憶する補正後記憶部と、
前記補正前記憶部に画像データの一部が記憶されたことに応じて、前記補正部により前記画像データの一部を補正し前記補正後記憶部に記憶する制御を実行する制御部と、
を備えることを特徴とする読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の読取装置において、
前記検出部は、読取部によって読み取った原稿の画像データから斜行量を検出することを特徴とする読取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の読取装置において、
前記読取部は、原稿の両面に対しそれぞれ一つずつ備えることで原稿の両面を読み取り、
前記検出部は、前記読取部にて先に読み取られた原稿面による画像データから斜行量を検出し、
前記制御部は、検出された斜行量に基づいて、前記原稿面とは他方の原稿面の画像データの一部に対し前記制御を実行することを特徴とする読取装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の読取装置において、
前記読取部は、原稿の両面に対しそれぞれ一つずつ備えることで原稿の両面を読み取り、
前記読取部にて原稿の片面を読み取る片面読取モードと、前記読取部にて原稿の両面を読み取る両面読取モードと、を選択可能な選択部を備え、
前記選択部にて片面読取モードが選択されたことに応じて、前記制御部は前記片面の画像データの一部に対し前記制御を実行し、前記選択部にて両面読取モードが選択されたことに応じて、前記制御部は前記他方の面の画像データの一部に対してのみ前記制御を実行することを特徴とする読取装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の読取装置において、
前記補正前記憶部に記憶される画像データの一部は、前記原稿の所定のライン分の画像データであることを特徴とする読取装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の読取装置において、
前記補正前記憶部と前記補正後記憶部とは、共通の記憶機構にて構成されていることを特徴とする読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−258803(P2010−258803A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106904(P2009−106904)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】