説明

調光制御装置、調光制御方法、ストロボ装置

【課題】ストロボ装置の発光量をより適正に制御すること。
【解決手段】ストロボ装置100の発光部2の調光制御を行うための装置であって、受光素子10と、受光素子の出力信号を積分する積分回路12と、積分回路の出力信号を所定の増幅率で増幅する増幅回路14と、増幅回路の増幅率を経過時間に応じて可変に設定する増幅率設定部18,20と、増幅回路の出力信号が所定の基準値を上回ったときに、ストロボ装置の発光部に対して発光停止信号を出力する判定回路16と、を備える、調光制御装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等に用いられるストロボ装置の調光制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ストロボ装置の調光制御に関する従来技術としては、例えば特開平09−115682号公報(特許文献1)に開示の技術が挙げられる。調光制御の基本原理は、ストロボ装置による照射光が被写体等で反射して生じた光(反射光)を受光素子によって受光し、当該受光量を積分回路によって積分し、積分電圧が所定の基準値に達した時点で発光を停止させる、というものである。これにより、被写体等からの反射光の光量に合わせて、ストロボ装置の発光量を調整することができるので、撮影条件に合わせたストロボ発光が可能になる。
【0003】
しかし、上記した従来の方法では、発光停止後にも残光が残ってしまうため、適正な光量を超過してしまいやすく、適正な調光が難しかった。この残光による影響は、撮影感度が高い場合や被写体等が近距離にいて発光時間が短い場合には特に顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−115682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る具体的態様は、ストロボ装置の発光量をより適正に制御し得る技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様の調光制御装置は、ストロボ装置の発光部の調光制御を行うための装置であって、(a)受光素子と、(b)上記受光素子の出力信号を積分する積分回路と、(c)上記積分回路の出力信号を所定の増幅率で増幅する増幅回路と、(d)上記増幅回路の増幅率を経過時間に応じて可変に設定する増幅率設定部と、(e)上記増幅回路の出力信号が所定の基準値を上回ったときに、上記ストロボ装置の上記発光部に対して発光停止信号を出力する判定回路と、を備える。
【0007】
上記の調光制御装置においては、積分回路の出力信号を増幅しており、かつその際の増幅率を、経過時間ごとに変化する発光部の発光量と残光量の比率に合わせて設定している。このため、より適切なタイミングで発光停止信号を出力することができるようになり、光量オーバーを防ぐことができる。すなわち、ストロボ装置の発光量をより適正に制御することが可能となる。
【0008】
上述した増幅率設定部は、例えば、上記経過時間と上記増幅率との関係を規定したテーブルを格納するメモリと、上記メモリから読み出した上記テーブルに基づいて上記増幅率を設定するマイコンと、を含んで構成することができる。
【0009】
かかる構成によれば、予め用意しておいたテーブルを読み出すことにより、増幅率を容易に設定することができる。また、テーブルの内容を変更するだけで種々のタイプ(機種)のストロボ装置に対応し得る利点もある。
【0010】
上述した増幅率は、例えば上記発光部からの全発光量に占める残光量の割合に応じて設定することができる。
【0011】
これにより、比較的簡便に増幅率を設定することができる。
【0012】
本発明に係る一態様のストロボ装置は、上記した本発明に係る調光制御装置と、発光部と、を備える。
【0013】
かかる構成によれば、発光量をより適正に制御することが可能なストロボ装置が得られる。
【0014】
本発明に係る一態様の調光制御方法は、ストロボ装置の発光部の調光制御を行うための方法であって、(a)受光素子から出力される信号を積分する第1ステップと、(b)上記第1ステップにおいて積分された上記信号を所定の増幅率で増幅する第2ステップと、(c)上記第2ステップにおいて増幅された上記信号が所定の基準値を上回ったときに、所定の発光停止信号を上記発光部へ出力する第3ステップと、を含み、(d)上記第2ステップにおける上記増幅率が経過時間に応じて可変に設定される。
【0015】
上記の調光制御方法においては、受光素子の出力信号を積分し、さらに増幅しており、その際の増幅率を、経過時間ごとに変化する発光部の発光量と残光量の比率に合わせて設定している。このため、より適切なタイミングで発光停止信号を出力することができるようになり、光量オーバーを防ぐことができる。すなわち、ストロボ装置の発光量をより適正に制御することが可能となる。
【0016】
上述した第2ステップは、例えば(e)マイコンが、上記経過時間と上記増幅率との関係を規定したテーブルをメモリから読み出すステップと、(f)上記テーブルに基づいて上記マイコンが上記増幅率を設定するステップと、を含んでもよい。
【0017】
かかる方法によれば、予め用意しておいたテーブルを読み出すことにより、増幅率を容易に設定することができる。また、テーブルの内容を変更するだけで種々のタイプ(機種)のストロボ装置に対応し得る利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態の調光制御装置およびこれを含んで構成されたストロボ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】メモリに予め格納される増幅率テーブルの一例を説明する図である。
【図3】本実施形態の調光制御装置の動作内容について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、一実施形態の調光制御装置およびこれを含んで構成されたストロボ装置の構成を示すブロック図である。図1に示す本実施形態のストロボ装置100は、調光制御装置(調光制御回路)1と、この調光制御装置1によって調光制御される発光部2と、を含んで構成される。発光部2は、例えば閃光管とこれを駆動するための駆動回路を含んで構成される。
【0021】
本実施形態の調光制御装置1は、受光素子10、積分回路12、電圧増幅回路14、判定回路16、マイコン18およびメモリ20を含んで構成される。図示のように本実施形態では、電圧増幅回路14、判定回路16、マイコン18およびメモリ20は、一体の集積回路(IC)22として構成されている。
【0022】
受光素子10は、受光量に応じた電気信号を出力するものである。受光素子10としては、例えばホトダイオード等の素子が用いられる。この受光素子10は、発光部2から放射された照射光が被写体等に反射して生じた光(反射光)を受光し得るように設けられている。受光素子10には、図示しない電源から駆動電圧V1が供給される。
【0023】
積分回路12は、受光素子10から出力される電圧を積分する。受光素子10から出力される電圧は反射光の光量にほぼ比例している。換言すれば、当該出力電圧は、発光部2からの照射光の発光量に比例している。積分回路12によって積分された電圧をV3と表す。
【0024】
電圧増幅回路14は、積分回路12によって積分された電圧V3を所定の増幅率で増幅する。増幅率は発光部2の仕様等によって個々に設定される。
【0025】
判定回路16は、電圧増幅回路14からの出力電圧V4を所定の基準電圧V2と比較し、出力電圧V4が基準電圧V2を上回ったときに、発光部2に対して発光の停止を指示する信号(発光停止信号)を出力する。
【0026】
マイコン18は、電圧増幅回路14における電圧の増幅率を設定する。この増幅率は、発光部2の発光開始からの経過時間に応じて可変に設定される。発光開始のタイミングは、例えば、発光部2から出力される発光信号に基づいて判断できる。あるいは、電圧V3またはV4の立ち上がりを検出してもよい。
【0027】
メモリ20は、経過時間に対応した増幅率のデータ(増幅率テーブル)を格納する。上記のマイコン18は、このメモリ20に格納された増幅率テーブルを読み出すことにより、電圧増幅回路14の増幅率を経過時間に伴って可変に設定する。なお、本実施形態においてはマイコン18とメモリ20が「増幅率設定部」に相当する。
【0028】
図2は、メモリに予め格納される増幅率テーブルの一例を説明する図である。増幅率の設定方法としては下記の方法が考えられる。あらかじめストロボ装置の機種ごとに、発光時間毎の発光量A及び残光量B(図2(B)参照)を測定しておき、発光時間と残光比のタイムテーブルを作成する。例えば、発光時間が1μ秒のときの発光量をa1、残光量をb1とすると、全体光量(実際光量)はa1+b1となる。このとき増幅率は、例えば、N((a1+b1)/a1)と設定することができる。ここで「N」は補正値であり、その値は任意に設定される。同様にして、発光時間の経過に伴った増幅率を設定することができる。これを示したのが図2(A)である。なお、図2(A)に示す例では、説明の便宜上、発光時間を1μ秒間ごとに6μ秒まで示しているが、発光時間をより細かく設定してもよいし、発光時間の設定範囲をより広くしてもよい。
【0029】
図3は、本実施形態の調光制御装置の動作内容について説明するための図である。詳細には、図3(A)は電圧V4の時間変化を示す波形図であり、図3(B)は発光部2による発光量の時間変化を示す波形図である。図3(B)に示すように発光開始から時間が経過するのに伴って発光量が徐々に増加する。それに対応し、図3(A)に示すように電圧V4も時間の経過に伴って増加する。電圧V4が所定の基準値V2に達すると、上記のように判定回路16から発光部2に対して発光停止信号が出力され、発光部2における発光が停止する。発光停止からもしばらくは残光が存在するため発光量は徐々に低下する。ここで、比較例として、積分回路12によって積分された電圧V3を図3(A)に示すとともに、この電圧V3に基づいて発光制御を行った場合の発光量の時間変化を図3(B)に示す。図3(A)に示すように、電圧V3と電圧V4とを比べると、増幅されている分だけ電圧V4のほうがより早く基準値V2に達する。したがって、発光停止信号もより早いタイミングで出力される。それにより、図3(B)に示すように、発光部2の発光時間をより短くし、照射光の光量オーバーを回避することができる。
【0030】
以上の本実施形態によれば、受光素子によって得られる電圧を積分し、さらに増幅することにより、発光部の発光時間をより適正な値に近付け、照射光の光量オーバーを防ぐことができる。すなわち、ストロボ装置の発光量をより適正に制御することが可能となる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…調光制御装置、2…発光部、10…受光素子、12…積分回路、14…電圧増幅回路、16…判定回路、18…マイコン、20…メモリ、22…集積回路、100…ストロボ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストロボ装置の発光部の調光制御を行うための装置であって、
受光素子と、
前記受光素子の出力信号を積分する積分回路と、
前記積分回路の出力信号を所定の増幅率で増幅する増幅回路と、
前記増幅回路の増幅率を経過時間に応じて可変に設定する増幅率設定部と、
前記増幅回路の出力信号が所定の基準値を上回ったときに、前記ストロボ装置の前記発光部に対して発光停止信号を出力する判定回路と、
を備える、調光制御装置。
【請求項2】
前記増幅率設定部は、
前記経過時間と前記増幅率との関係を規定したテーブルを格納するメモリと、
前記メモリから読み出した前記テーブルに基づいて前記増幅率を設定するマイコンと、
を含む、請求項1に記載の調光制御装置。
【請求項3】
前記増幅率は、前記発光部からの全発光量に占める残光量の割合に応じて設定される、
請求項1又は2に記載の調光制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の調光制御装置と、を備えたストロボ装置。
【請求項5】
ストロボ装置の発光部の調光制御を行うための方法であって、
受光素子から出力される信号を積分する第1ステップと、
前記第1ステップにおいて積分された前記信号を所定の増幅率で増幅する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて増幅された前記信号が所定の基準値を上回ったときに、所定の発光停止信号を前記発光部へ出力する第3ステップと、
を含み、
前記第2ステップにおける前記増幅率が経過時間に応じて可変に設定される、調光制御方法。
【請求項6】
前記第2ステップは、
マイコンが、前記経過時間と前記増幅率との関係を規定したテーブルをメモリから読み出すステップと、
前記テーブルに基づいて前記マイコンが前記増幅率を設定するステップと、
を含む、請求項5に記載の調光制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−22503(P2011−22503A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169345(P2009−169345)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】