説明

調光用液晶組成物、並びに、その光硬化物及び調光素子

【課題】低電圧での駆動と高温での調光が可能であり、多様な着色とヘイズ10%以下とを同時に達成することが可能な調光素子を得ることができる調光用液晶組成物、並びに、その光硬化物及びそれを用いた調光素子を提供する。
【解決手段】下記の(A)、(B)、及び(C)成分を含む調光用液晶組成物、並びに、該組成物の(B)成分が光硬化されてなる光硬化物、及び、透明基板が対向配置された一対の基板間に該組成物の光硬化物の層が挟持された調光素子。(A)成分;相転移温度が100℃以上である含弗素又は/及び含塩素系ネマチック液晶を含む液晶(B)成分;炭素数が5〜13のアルキル基を有するモノ(メタ)アクリレート、及び炭素数が4〜13の直鎖状アルキレンジオールのジ(メタ)アクリレートを含む光硬化性化合物(C)成分;特定化学式で表され、有する芳香環が四つ以下であるアントラキノン系色素を含む色素(D)成分;光重合開始剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光用液晶組成物、並びに、その光硬化物及びそれを用いた調光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電車、自動車等の車両、ビジネスビル、病院等の建物等の窓、扉、間仕切り等において、プライバシーの保護等を目的として、ブラインド代わりにポリマー中に液晶を分散させて得られるフィルムや、光硬化性ビニル系化合物と液晶との組成物の光硬化性ビニル系化合物の光硬化に伴う液晶物質の相分離を利用して調光層を形成させたフィルム等を調光パネルとして用いることが一般化してきている。通常、このような調光パネルでは、電圧印加の有無により、光の透過、散乱を制御して調光を行い視界を遮ることはできるが、光散乱によるため遮光はできず眩しさが増す傾向があり、この軽減やコントラスト向上等を目的に、色素を添加することが行われる。この場合、例えば自動車の窓ガラスに調光性能を付与するにおいては、透明時に曇りがなく視界良好であることと、白濁時に濃い着色が得られることが好ましい。
【0003】
このような調光用液晶組成物として、特許文献1には、シアノ系液晶に、光硬化性化合物としてのジ(メタ)アクリレートモノマーとアントラセン系二色性色素とを含む液晶組成物が開示されている。特許文献1の調光用液晶組成物によって得られる調光素子は、多様な着色(色調・濃淡)が可能であるものの、駆動のために100V程度の高い電圧が必要であり、又、本発明者らの検証によれば、使用温度範囲が70℃未満に限定され、よって、自動車用調光素子として、昇圧機を用いないバッテリー駆動や高温での動作を実現するためには不十分であり、更に、透明時の視認性を表すヘイズも10%こそ切っているが4%止まりである。
【0004】
又、特許文献2には、シアノ系液晶に、光硬化性化合物としてのジ(メタ)アクリレート、モノ(メタ)アクリレート及びアントラセン系二色性色素を含む液晶組成物が開示されている。特許文献2の調光用液晶組成物によって得られる調光素子は、特許文献1の液晶組成物同様に多様な着色(色調・濃淡)を実現することが可能であり、しかも、100℃未満までの動作が可能である。しかし、駆動のために100V程度の高い電圧が必要であり、自動車用調光素子として、昇圧機を用いないバッテリー駆動を達成することはできず、更に、ヘイズも10%以上であり、透明時の視認性の点でも不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−264193号公報
【特許文献2】特開平5−307171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、調光用液晶組成物における前述の従来技術に鑑みてなされたもので、従って、本発明は、低電圧での駆動と高温での調光が可能であり、多様な着色(色調・濃淡)とヘイズ10%以下とを同時に達成することが可能な調光素子を得ることができる調光用液晶組成物、並びに、その光硬化物及びそれを用いた調光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題に鑑みて鋭意検討の結果、以下の調光用液晶組成物によれば、50V以下での駆動、100℃まででの調光が可能であり、更に、青〜黄までの幅広い色調の色素を高濃度で含むことができるため、任意の色調及び濃淡が達成可能であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、下記の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有することを特徴とする調光用液晶組成物、に存する。
(A)成分;相転移温度(Tni)が100℃以上である含弗素又は/及び含塩素系ネマチック液晶を含む液晶成分
(B)成分;炭素数が5〜13の直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレート(B−1)成分、及び下記一般式(I) で表されるジ(メタ)アクリレート(B−2)成分を含む光硬化性化合物成分
【0009】

CH=CH−C−O−X−O−C−CH=CH (I)
‖ ‖
O O

〔式中、Xは炭素数4〜13の直鎖状アルキレン基を示す。〕
【0010】
(C)成分;下記一般式(II)で表され、有する芳香環が四つ以下であるアントラキノン系色素を含む色素成分
【0011】
【化1】

【0012】
〔式(II)中、Rは、−NHR(Rは、水素原子、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環残基を示す。)、又は−SR(Rは、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環残基を示す。)を示し、
、R、及びRは各々独立して、水素原子、−NHR(Rは前記と同様である。)、−SR(Rは前記と同様である。)、又は−OR10(R10は、水素原子、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環残基を示す。)を示す。但し、R〜Rの一つが−NHである場合、他の三つは−NHではない。又、R〜R10のシクロアルキル基、アリール基、及び複素環残基が有する置換基は連結環構造を含まない。
、R、及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、−SR(Rは前記と同様である。)、又は−COYR11(Yは、酸素原子、硫黄原子、又は−NR(Rは前記と同様である。)を示し、R11は、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環残基を示す。)を示す。但し、R〜Rの一つが−NHである場合、R〜Rの少なくとも一つは水素原子ではない。又、R〜Rは3環以上の連結環構造を有さない。〕
(D)成分;光重合開始剤成分
【0013】
又、本発明の要旨は、前記調光用液晶組成物の(B)成分の光硬化性化合物成分が光硬化されてなることを特徴とする、調光用液晶組成物の光硬化物、及び、少なくとも一方が透明電極を有する透明基板である基板が対向配置された一対の基板間に前記調光用液晶組成物の光硬化物の層が挟持されてなることを特徴とする調光素子、に存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の調光用液晶組成物によれば、50V以下での駆動によって十分な調光性能が得られ、人体への影響を最小限に抑え得ると同時に、省エネルギー化を図ることができる。更に、100℃まででの調光が可能であることから、高温環境下での使用にも耐える。又、色調の異なる色素を組み合わせて配合することにより、透明時の視認性を表すヘイズも10%以下に抑えつつ、任意の色調及び濃淡、例えば黒色を呈する調光素子とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
I.調光用液晶組成物
I−1.(A)液晶成分
本発明の調光用液晶組成物に用いられる(A)液晶成分は、相転移温度(Tni)が100℃以上である含弗素又は/及び含塩素系ネマチック液晶を含む。液晶成分が含弗素又は/及び含塩素系ネマチック液晶を含まない場合、本発明の効果が得られない。
【0016】
ここで、相転移温度(Tni)は、130℃以下であるのが好ましく、120℃以下であるのが特に好ましい。相転移温度(Tni)が低すぎると、使用できる温度範囲が狭まり高温域で調光機能をなさなくなり、高すぎると室温付近の粘度が高くなり、室温での駆動が困難な傾向となる。尚、相転移温度(Tni)は、液晶のネマチックアイソトロピック相転移温度を表し、相転移温度測定装置を用いて、相転移に伴う透過光強度変化を測定する等により評価することができる。
【0017】
又、本発明の調光用液晶組成物に用いられる含弗素又は/及び含塩素系ネマチック液晶は、白濁時の遮蔽性を確保する点から、屈折率異方性(Δn)が大きいのが好ましく、又、本発明の調光性液晶組成物の屈折率異方性(Δn)はΔnの絶対値が大きいのが好ましい。液晶の屈折率異方性(Δn)は、具体的には、0.14以上が好ましく、更には0.16以上が好ましい。調光性液晶組成物における液晶の屈折率異方性(Δn)が、この値よりも小さいと液晶の動きに応じた色素の濃淡は期待できるが、白濁時の遮蔽性が損なわれる。尚、ここでいう屈折率異方性(Δn)とは、下式に示すように、液晶分子の長軸方向の屈折率(n‖)と液晶分子の短軸方向の屈折率(n⊥)との差として定義される。
Δn=n‖−n⊥
【0018】
尚、本発明における含弗素又は/及び含塩素系ネマチック液晶の基本骨格としては、アゾメチン系、ビフェニル系、フェニルエステル系、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル系、フェニルシクロヘキサン系、フェニルピリミジン系、フェニルジオキサン系、トラン系、アルケニルシクロヘキシルベンゼン系等が挙げられ、その液晶化合物としては、例えば、「液晶デバイスハンドブック」(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社、1989年)の第154〜192頁及び第715〜722頁に記載の液晶化合物を用いることができ、具体的には、例えば、メルク社製「MLC−2058」、「ZLI−1132」等が挙げられる。
【0019】
I−2.(B)光硬化性化合物成分
I−2−1.(B−1)モノ(メタ)アクリレート成分
本発明の調光用液晶組成物に用いられる(B)光硬化性化合物成分は、炭素数が5〜13の直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレート(B−1)成分を含む。
【0020】
本発明の調光用液晶組成物に用いられるモノ(メタ)アクリレートは、調光用液晶組成物における液晶との相溶性を付与する作用、及び、後述する調光素子として本発明の調光用液晶組成物を光照射して光硬化性化合物成分を光硬化させたときに、光硬化性化合物中に分散していた液晶が相分離して、光硬化性化合物の硬化物の相と液晶相とが形成されることとなるが、モノ(メタ)アクリレートは、その硬化物相を形成し、液晶相との界面相互作用を緩和する作用を有する。そのため、モノ(メタ)アクリレートの極性が高いと、液晶相との界面相互作用が強くなって液晶の動きを阻害し、駆動電圧が高くなることから、モノ(メタ)アクリレートの極性は低い方が好ましい。
【0021】
本発明の調光用液晶組成物に用いられるモノ(メタ)アクリレートとしては、具体的には、例えば、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシルアクリレート等の直鎖状アルキルモノ(メタ)アクリレート、2−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−プロピルヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−プロピルヘプチル(メタ)アクリレート等の分岐鎖状アルキルモノ(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。
【0022】
I−2−2.(B−2)ジ(メタ)アクリレート成分
本発明の調光用液晶組成物に用いられる(B)光硬化性化合物成分は、前記モノ(メタ)アクリレートと共にジ(メタ)アクリレート(B−2)成分も含む。
【0023】
本発明の調光用液晶組成物に用いられるジ(メタ)アクリレートは、後述する調光素子として本発明の調光用液晶組成物を光照射して光硬化性化合物成分を光硬化させたときに、光硬化性化合物中に分散していた液晶が相分離して、光硬化性化合物の硬化物の相と液晶相とが形成されることとなるが、ジ(メタ)アクリレートは、前記モノ(メタ)アクリレートと共にその硬化物相を形成し、硬化物相と液晶相との分離相の安定化のための作用を有する。そのため、ジ(メタ)アクリレートの極性が高いと、液晶相との界面相互作用が強くなって液晶の動きを阻害し、駆動電圧が高くなることから、ジ(メタ)アクリレートの極性も低い方が好ましい。
【0024】
本発明の調光用液晶組成物に用いられるジ(メタ)アクリレートは、下記一般式(I) で表されるジ(メタ)アクリレートである。
【0025】

CH=CH−C−O−X−O−C−CH=CH (I)
‖ ‖
O O

〔式中、Xは炭素数4〜13の直鎖状アルキレン基を示す。〕
【0026】
本発明の調光用液晶組成物に用いられるジ(メタ)アクリレートとしては、具体的には、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,11−ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,13−トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート等がが好適に用いられる。
【0027】
I−2−3.(B−1)成分と(B−2)成分との配合割合
本発明の調光用液晶組成物に用いられる(B)光硬化性化合物成分としての、前記モノ(メタ)アクリレートと前記ジ(メタ)アクリレートとの割合は、前者:後者が重量比で、1:9〜9:1であるのが好ましく、5:5〜9:1であるのが特に好ましい。モノ(メタ)アクリレートを単独で用いる場合、及びジ(メタ)アクリレートとの割合を前記範囲より多い状態で用いる場合には、液晶との相溶性が高くなりすぎ、光照射による光硬化によって形成されるポリマー相と液晶相の分離が十分に起こらずゲル化してしまう傾向となり、一方、ジ(メタ)アクリレートを単独で用いる場合、及びモノ(メタ)アクリレートとの割合を前記範囲より多い状態で用いる場合には、ポリマー相と液晶相との分離相形成が困難な傾向となる。
【0028】
I−2−4.(B)光硬化性化合物成分の(A)液晶成分との相溶性
本発明の調光用液晶組成物に用いられる(B)光硬化性化合物成分の(A)液晶成分との相溶性としては、液晶と光硬化性化合物を一旦相溶させ、温度降下による相分離を偏光顕微鏡によって観察するか、又はDSCによって測定する等により得られる相分離温度によって評価することができるが、その相分離温度として、0〜50℃の範囲であるのが好ましく、10〜40℃の範囲であるのが特に好ましい。この温度よりも低いと、液晶組成物としての相溶性としてはよい状態であるが、光硬化によるポリマー相と液晶相の相分離が起こる際に相分離が重合が進行してから起こる傾向となって、光硬化で得られる液晶相が小さくなるため、調光素子としての駆動電圧が高くなる傾向となり、一方、この温度より高いと、光硬化前に均一相として保持するのが難しい傾向となる。
【0029】
I−3.(C)色素成分
本発明の調光用液晶組成物に用いられる(C)色素成分は、下記一般式(II)で表され、有する芳香環が四つ以下であるアントラキノン系色素を含む。
【0030】
【化2】

【0031】
〔式(II)中、Rは、−NHR(Rは、水素原子、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環残基を示す。)、又は−SR(Rは、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環残基を示す。)を示し、
、R、及びRは各々独立して、水素原子、−NHR(Rは前記と同様である。)、−SR(Rは前記と同様である。)、又は−OR10(R10は、水素原子、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環残基を示す。)を示す。但し、R〜Rの一つが−NHである場合、他の三つは−NHではない。又、R〜R10のシクロアルキル基、アリール基、及び複素環残基が有する置換基は連結環構造を含まない。
、R、及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、−SR(Rは前記と同様である。)、又は−COYR11(Yは、酸素原子、硫黄原子、又は−NR(Rは前記と同様である。)を示し、R11は、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環残基を示す。)を示す。但し、R〜Rの一つが−NHである場合、R〜Rの少なくとも一つは水素原子ではない。又、R〜Rは3環以上の連結環構造を有さない。〕
【0032】
式(II)において、Rの−NHRのR、及び−SRのR、並びに、R〜Rの−NHRのR、−SRのR、及び−OR10のR10の直鎖状アルキル基としては、炭素数が1〜13のものが、又、分岐鎖状アルキル基としては、炭素数が3〜13のものが、又、置換基を有していてもよいシクロアルキル基の置換基としては、炭素数が1〜13の直鎖状アルキル基、又は炭素数が3〜13の分岐鎖状アルキル基等が、又、置換基を有していてもよいアリール基の置換基としては、炭素数が1〜13の直鎖状アルキル基、又は炭素数が3〜13の分岐鎖状アルキル基等が、又、置換基を有していてもよい複素環残基の複素環残基としては、ピリジル基等が、その置換基としては、炭素数が1〜13の直鎖状アルキル基、炭素数が3〜13の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数が1〜13の直鎖状アルキル基を置換基として有するシクロアルキル基等が、それぞれ挙げられる。
【0033】
尚、一般式(I) において、R〜Rとして−NHを二つ以上有する場合、組成物を光照射して光硬化物とするにおいて、−NHがラジカルをクエンチし光重合を阻害することから、R〜Rの一つが−NHである場合、他の三つは−NHではないこととする。又、R〜R10のシクロアルキル基、アリール基、及び複素環残基が連結環構造を含む置換基を有する場合、組成物を光照射して光硬化物とするにおいて、連結環構造部分で解裂して色を呈さなくなることから、R〜R10のシクロアルキル基、アリール基、及び複素環残基が有する置換基は連結環構造を含まないこととする。
【0034】
又、R〜Rのハロゲン原子としては、弗素原子、塩素原子、臭素原子等が、又、直鎖状アルキル基としては、炭素数が1〜13のものが、又、分岐鎖状アルキル基としては、炭素数が3〜13のものが、又、置換基を有していてもよいアリール基の置換基としては、炭素数が1〜13の直鎖状アルキル基、炭素数が3〜13の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数が1〜13の直鎖状アルキル基を置換基として有するシクロアルキル基等が、又、−SRのRの直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基の置換基、置換基を有していてもよいアリール基の置換基、及び置換基を有していてもよい複素環残基の複素環残基とその置換基しては、前述したと同様のものが、又、−COYR11のYが−NRであるときのRの直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基の置換基、置換基を有していてもよいアリール基の置換基、及び置換基を有していてもよい複素環残基の複素環残基とその置換基しては、前述したと同様のものが、又、−COYR11のYが酸素原子又は硫黄原子であるときのR11の直鎖状アルキル基としては、炭素数が1〜13のものが、又、分岐鎖状アルキル基としては、炭素数が3〜13のものが、又、置換基を有していてもよいシクロアルキル基の置換基としては、炭素数が1〜13の直鎖状アルキル基、又は炭素数が3〜13の分岐鎖状アルキル基等が、又、置換基を有していてもよいアラルキル基の置換基としては、炭素数が1〜13の直鎖状アルキル基、又は炭素数が3〜13の分岐鎖状アルキル基等が、又、置換基を有していてもよいアリール基の置換基としては、炭素数が1〜13の直鎖状アルキル基、炭素数が3〜13の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数が1〜13の直鎖状アルキル基を置換基として有するシクロアルキル基等が、又、置換基を有していてもよい複素環残基の複素環残基としては、ピリジル基等が、その置換基としては、炭素数が1〜13の直鎖状アルキル基、炭素数が3〜13の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数が1〜13の直鎖状アルキル基を置換基として有するシクロアルキル基等が、それぞれ挙げられる。
【0035】
尚、一般式I) において、R〜Rの一つが−NHである場合、R〜Rの全てが水素原子であると、色素としての色調調整等がなされ難いことから、R〜Rの一つが−NHである場合、R〜Rの少なくとも一つは水素原子ではないこととする。又、R〜Rが3環以上の連結環構造を有する場合、組成物を光照射して光硬化物とするにおいて、連結環構造部分で解裂して色を呈さなくなることから、R〜Rは3環以上の連結環構造を有さないこととする。
【0036】
前記一般式(II)で表されるアントラキノン系色素において、好適な黄色色素としては、以下の一般式(IIa) で表されるものが挙げられる。
【0037】
【化3】

【0038】
〔式(IIa) 中、R12は、炭素数が1〜5の直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、又は炭素数が1〜6の直鎖状アルキル基を置換基として有するシクロアルキル基を示し、R、R、R、R、及びRは各々独立して、水素原子、炭素数が1〜5の直鎖状アルキル基、炭素数が1〜6の直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基を置換基として有していてもよいフェニルチオ基、ピリジルチオ基、、又は炭素数が1〜6の直鎖状アルキル基を置換基として有するシクロヘキシルカルボキシル基を示す。〕
【0039】
前記一般式(IIa) で表される黄色色素の好適なものとして、具体的に以下のものが挙げられる。
【0040】
【化4】

【0041】
又、前記一般式(II)で表されるアントラキノン系色素において、好適な赤色色素としては、以下の一般式(IIb) で表されるものが挙げられる。
【0042】
【化5】

【0043】
〔式(IIb) 中、Rは、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数が1〜8の直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基を置換基として有するフェニルチオ基、又は炭素数が1〜8の直鎖状アルキル基を置換基として有するシクロヘキシル基を置換基として有するフェニルチオ基を示し、Rは、炭素数が1〜8の直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基を置換基として有するカルボキシル基、炭素数が1〜8の直鎖状アルキル基を置換基として有するシクロヘキシルカルボキシル基、炭素数が1〜8の直鎖状アルキル基を置換基として有するフェニルカルボキシル基、又は炭素数が1〜8の直鎖状アルキル基を置換基として有するフェノキシ基を示し、Rは、水素原子、炭素数が1〜8の直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基を置換基として有するカルボキシル基、炭素数が1〜8の直鎖状アルキル基を置換基として有するシクロヘキシルカルボキシル基、炭素数が1〜8の直鎖状アルキル基を置換基として有するフェニルカルボキシル基、又は炭素数が1〜8の直鎖状アルキル基を置換基として有するシクロヘキシル基を置換基として有するフェニルカルボキシル基を示す。〕
【0044】
又、前記一般式(II)で表されるアントラキノン系色素において、好適な赤色色素としては、以下の一般式(IIc) で表されるものも挙げられる。
【0045】
【化6】

【0046】
〔式(IIc) 中、R13は、炭素数が1〜8の直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、又は炭素数が1〜8の直鎖状アルキル基を置換基として有するシクロヘキシル基を示し、R14は、炭素数が1〜8の直鎖状アルキル基を置換基として有するフェニル基を示す。〕
【0047】
前記一般式(IIb) 及び(IIc) で表される赤色色素の好適なものとして、具体的に以下のものが挙げられる。
【0048】
【化7】

【0049】
又、前記一般式II)で表されるアントラキノン系色素において、好適な青色色素としては、以下の一般式(IId) で表されるものが挙げられる。
【0050】
【化8】

【0051】
〔式(IId) 中、Rは、炭素数が1〜8の直鎖状アルキルチオ基、炭素数が1〜8の直鎖状アルキル基を置換基として有するフェニルアミド基、又は炭素数が1〜8の直鎖状アルキル基を置換基として有するフェニルチオ基を示し、R、R、及びRは各々独立して、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数が1〜13の直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基を置換基として有するフェニルチオ基を示し、Rは、水素原子、炭素数が1〜8の直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基を置換基として有するカルボキシル基、炭素数が1〜8の直鎖状アルキル基を置換基として有するシクロヘキシルカルボキシル基、又は炭素数が1〜8の直鎖状アルキル基を置換基として有するフェニルカルボキシル基を示し、R15は、水素原子、又は炭素数が1〜8の直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基又は弗素原子又は塩素原子を置換基として有するフェニル基を示す。〕
【0052】
前記一般式(IId) で表される青色色素の好適なものとして、具体的に以下のものが挙げられる。
【0053】
【化9】

【0054】
尚、前記一般式(II)で表されるアントラキノン系色素は、例えば、特開昭56−55479号公報、特開昭58−53954号公報等に記載される従来公知の方法を組み合わせて合成することができる。
【0055】
又、本発明における前記アントラキノン系色素の前記液晶に対する溶解性としては、色素を液晶に添加し1時間振とう後、一晩放置し、濾過後の液晶中の色素濃度を測定した値として、液晶に対して0.5〜10重量%であるのが好ましく、0.5〜6重量%であるのが特に好ましい。色素の液晶に対する溶解性がこの範囲より低いと、十分な色素添加効果が得られず、一方、この範囲より多いと、組成物を光照射して硬化物とするにおいて、前記光硬化性化合物の重合を阻害する傾向となる。
【0056】
I−4.(D)光重合開始剤成分
本発明の調光用液晶組成物は、更に、(D)光重合開始剤成分を含む。本発明において、その光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましく、具体的には、例えば、BASF社製「ルシリンTPO」等の2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0057】
I−5.(A)〜(D)成分の配合割合
前記(A)液晶成分、前記(B)光硬化性化合物成分、前記(C)色素成分、及び前記(D)光重合開始剤成分を含有する本発明の調光用液晶組成物において、色素成分は液晶成分100重量部に対して0.5〜5重量部であるのが好ましく、又、色素成分が添加された液晶成分と光硬化性化合物成分との割合としては、重量比で90:10〜50:50であるのが好ましく、80:20〜50:50であるのが特に好ましい。光硬化性化合物成分の割合がこの範囲未満であると、液晶成分が過剰となって光硬化性化合物成分との相溶性が低下し、光照射による硬化前に両者が分離する傾向となり、一方、光硬化性化合物成分の割合がこの範囲超過であると、硬化物としての遮光性が低下する傾向となる。尚、光重合開始剤成分の割合は、光硬化性化合物成分100重量部に対して0.1〜5重量部程度であるのが好ましい。
【0058】
I−6.その他の成分
尚、本発明の調光用液晶組成物には、前記(A)〜(D)成分以外に、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等の光安定剤、ホスファイト系、ヒンダードフェノール系等の抗酸化剤、熱重合禁止剤、チオール化合物、光鋭感剤、光増感剤、連鎖移動禁止剤、重合禁止剤、接着性付与剤、消泡剤、架橋剤、界面活性剤、熱硬化促進剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ウレタンジアクリレート等の増粘剤等が含有されていてもよい。又、調光素子としてのセルギャプを制御するために、シリカやガラス、プラスチック、セラミック等の球状或いは円筒状のスペーサーを加えてもよい。この際のセルギャプは2〜100μmの範囲で設定できる。
【0059】
II.調光用液晶組成物の光硬化物
本発明において、調光用液晶組成物を光照射して前記光硬化性化合物を光硬化させることにより、光硬化物とされる。その際の光照射光源としては、紫外線が照射できる高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等が挙げられる。又、硬化させる温度は液晶組成物が均一状態に保てる温度、つまり相分離温度よりも高い温度とするのが好ましく、相分離温度よりも1〜5℃高い温度の範囲に保つことが好ましい。この温度よりも低いと、液晶と光硬化性化合物が重合前に分離してしまうため均一な重合物が得られにくい傾向となり、一方、この温度よりも高いと、光硬化によって得られるポリマーと液晶が分離する際に、液晶のドメインサイズが小さくなる傾向となる。
【0060】
III.調光素子
III−1.調光素子の構造
本発明の調光素子は、少なくとも一方が透明電極を有する透明基板である基板が対向配置された一対の基板間に前記調光用液晶組成物の光硬化物の層が挟持されてなるものである。ここで、基板としては、例えば、ガラスや石英等の無機透明物質、金属、金属酸化物、半導体、セラミック、プラスチック板、プラスチックフィルム等の無色透明或いは着色透明、又は不透明のものが挙げられ、電極は、その基板の上に、例えば、金属酸化物、金属、半導体、有機導電物質等の薄膜を基板全面或いは部分的に既知の塗布法や印刷法やスパッタ等の蒸着法等により形成されたものである。又、導電性の薄膜形成後に部分的にエッチングしたものでもよい。特に大面積の調光素子を得るためには、生産性及び加工性の面からPET等の透明高分子フィルム上にITO(酸化インジウム、酸化スズ)電極をスパッタ等の蒸着法や印刷法等を用いて形成した電極基板を用いることが望ましい。尚、基板上に電極間或いは電極と外部を結ぶための配線が設けられていてもよい。例えば、セグメント駆動用電極基板やマトリックス駆動用電極基板、アクティブマトリックス駆動用電極基板等であってもよい。更に、基板上に設けられた電極面上が、ポリイミドやポリアミド、シリコン、シアン化合物等の有機化合物、SiO、TiO、ZrO等の無機化合物、又はこれらの混合物よりなる保護膜や配向膜で全面或いは一部が覆われていてもよい。
【0061】
これらの基板としてプラスチックフィルムを基板として用いた場合、フレキシブルで軽量な調光素子が得られる。このため、一対の平面状叉は曲面状のガラスや硬質プラスチック等の間にポリビニルブチラールや酢酸ビニルエステル、両面テープ、接着剤等の接着層を介して挟んだり、一枚の平面状叉は曲面状のガラスや硬質プラスチック等の面に両面テープや接着剤等で貼り付けて使用することができる。又、軟質プラスチックの間に挟んだり、片面や両面に貼り付けたりしてもよい。又、調光素子の電極面とは反対側の基板面上にハードコート、紫外線カット層や赤外線カット層、ハーフミラー等の保護層が設けられてもよいし、カラーフィルターを積層したり、偏光子フィルターを付けたりしてもよい。叉、調光素子の後側に色板を置いてもよい。更に、調光素子は所望の大きさや形に切断して使用することもできる。又、エレクトロルミネッセンス表示素子、発光ダイオード表示素子、エレクトロクロミック表示素子、他の液晶表示素子と積層して使用してもよい。
【0062】
尚、本発明における調光素子は二色性色素を光硬化物中に含んでいるために、該調光素子の端面より色付きの液晶等が染みだし、周辺を汚す可能性がある。これを防ぐため、調光素子の端面を、粘着テープ、熱圧着テープ、熱硬化性テープ等のテープ類、又は/及び、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、湿気硬化型樹脂、室温硬化型接着剤、嫌気性接着剤、シリコ−ン系接着剤、弗素樹脂系接着剤、ポリエステル系接着剤、塩化ビニル系接着剤等の硬化性樹脂類や熱可塑性樹脂類で保護することにより、周辺を汚すことを防止することができる。又、この保護は同時に、調光素子の劣化を防ぐ働きがあってもよい。その際の端面の保護法としては、端面を全体に覆ってもよいし、端面から調光素子内部に硬化性樹脂類や熱可塑性樹脂類を流し込み固化させることによりなしてもよく、更にこの上をテープ類で覆ってもよい。
【0063】
III−2.調光素子の特性
III−2−1.色調
本発明の調光素子は、二色性色素を用いることで黄色〜青色の調光素子が得られるだけでなく、色素を混合することにより茶色、灰色、黒等の様々な色調をもつ調光素子が得られる。
【0064】
III−2−2.ヘイズ
本発明の調光素子の電圧OFF時のヘイズは、30〜100であるのが好ましい。この範囲未満であると視界を遮る程度が悪くなる。又、電圧ON時のヘイズは10以下であるのが好ましい。10未満であると視界が曇った状態となる。。尚、ヘイズは、電圧ONとOFF状態での調光素子についてヘイズメーターにて測定することにより得られる。
【0065】
III−2−3.表示温度範囲
本発明の調光素子の表示温度範囲は、10〜100℃であるのが好ましい。10℃未満であると液晶の応答速度が遅くなり、一方、100℃超過であると用いる液晶の相転移温度を超えてしまい調光素子として機能しなくなる。
【0066】
III−2−4.駆動電圧
本発明の調光素子に電圧を印可するための駆動装置としては、2〜50Vの直流電圧や10〜10000Hzの交流電圧を印可することのできる装置であり、電圧を印加しないときには電極間をオープンするか短絡するものであればよい。又、この駆動装置には、セグメント駆動用の電圧印加回路、マトリックス駆動用の電圧印加回路、アクティブマトリックス用の電圧印加回路等が備えられたものであってもよい。更に、赤外線センサー、音感センサー、感圧センサー、感熱センサー、ガスセンサー、光センサー、湿度センサー、放射線センサー等の種センサー類が備えられたものであってもよい。
【実施例】
【0067】
実施例1
(A)液晶成分として、相転移温度(Tni)が106.4℃である含弗素又は/及び含塩素系ネマチック液晶(メルク社製「MLC2058」)73.7重量部、(B)光硬化性化合物成分として、2−エチルヘキシルアクリレート(アルドリッチ社製)15.9重量部と1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学社製)7.96重量部、(C)色素成分として、下記構造の青色色素(B1)2.3重量部、及び(D)光重合開始剤成分として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製「ルシリンTPO」)0.14重量部を室温で混合し、調光用液晶組成物を調製した。得られた調光用液晶組成物について、以下の示す方法で、相分離温度を測定し、結果を表1に示した。
<相分離温度>
調光用液晶組成物をプレパラート上に1滴垂らしカバーガラスを被せ、顕微鏡用温度コントローラー付きホットステージ(メトラー社製「FP−80」)に40℃でセットし、偏光顕微鏡で偏光板2枚がクロスニコルの状態で、観察前に暗視野(等方状態)であることを確認し、1℃/分で冷却しながら偏光顕微鏡観察をし、観察視野中に小さな明視野が観察され始めた温度を相分離温度とした。
【0068】
引き続いて、得られた調光用液晶組成物を、2cm角ITOガラス板2枚を10μmギャップで5mmずらして貼り合わせたものに注入し、ウシオ社製メタルハライドランプを用い、365nmの光強度が17mJ/cmになる位置に22℃にサンプル温度を保てるようアズワン社製サーモプレートにサンプルをセットし、2分間光照射を行って光硬化性化合物成分を光硬化させることにより、青色調光素子を得た。得られた調光素子について、以下に示す方法で、電圧無印加状態及び駆動時でのヘイズ、駆動電圧、及び動作温度範囲を測定し、結果を表1に示した。
【0069】
【化10】

【0070】
<ヘイズ>
電圧無印加状態、及び、正弦波50Hz印加で14V印加したときの各々について、東洋精機社製ヘイズメーターを用いて測定した。
<駆動電圧>
調光素子サンプルを分光光度計にセットし、印加電圧を変化させながら光透過率を測定し、印加電圧を増加させても光透過率が殆ど増加しなくなったときの光透過率を100%とし、それに対して90%の光透過率となる印加電圧を駆動電圧(V90)とした。
<動作温度範囲>
エスペック社製環境試験器「SH641」にファイバー式分光器「USB2000」をセットして、温度条件を変化させながら、印加電圧0Vのときの光透過率(T;%)と駆動電圧(V90)を印加したときの光透過率(T90;%)を測定し、TとT90との差が10%ある温度を動作温度範囲とした。
【0071】
実施例2
実施例1において、(C)光硬化性化合物成分としての2−エチルヘキシルアクリレート15.9重量部をヘキシルアクリレート(東京化成社製)15.9重量部に変更し、更に、(C)色素成分として、下記構造の青色色素(B2)2.3重量部を用いた外は、実施例1と同様にして調光用液晶組成物を調製し、前記と同様の方法で、相分離温度を測定し、更に、光硬化させ、青色調光素子を得、得られた調光素子について、前記と同様の方法で、電圧無印加状態及び駆動時でのヘイズ、駆動電圧、及び動作温度範囲を測定し、結果を表1に示した。
【0072】
【化11】

【0073】
実施例3
(A)液晶成分としてのメルク社製「MLC2058」を67.2重量部、(B)光硬化性化合物成分としてのヘキシルアクリレートを15.8重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを7.65重量部、(C)色素成分として、前記構造の青色色素(B2)を4.07重量部、下記構造の赤色色素(R1)を2.2重量部、下記構造の黄色色素(Y1)を1.42重量部、下記構造の黄色色素(Y2)を0.72重量部、及び(D)光重合開始剤成分としてのBASF社製「ルシリンTPO」を0.5重量部用いた外は、実施例1と同様にして調光用液晶組成物を調製し、前記と同様の方法で、相分離温度を測定し、更に、光硬化させ、青色調光素子を得、得られた調光素子について、前記と同様の方法で、電圧無印加状態及び駆動時でのヘイズ、駆動電圧、及び動作温度範囲を測定し、結果を表1に示した。
【0074】
【化12】

【0075】
実施例4
(A)液晶成分としてのメルク社製「MLC2058」を73.3重量部、(B)光硬化性化合物成分としてのヘキシルアクリレートを15.8重量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを7.65重量部、(C)色素成分として、前記構造の青色色素(B1)を2.29重量部、及び(D)光重合開始剤成分としてのBASF社製「ルシリンTPO」を0.14重量部用いた外は、実施例1と同様にして調光用液晶組成物を調製し、得られた調光用液晶組成物について、前記と同様の方法で、相分離温度を測定し、結果を表1に示した。引き続いて、得られた調光用液晶組成物を、5cm角ITO−PET上にアプリケーターを用いて塗布し、組成物面がITO電極面になるように重ね合わせた後、ウシオ社製メタルハライドランプを用い、365nmの光強度が17mJ/cmになる位置に22℃にサンプル温度を保てるようアズワン社製サーモプレートにサンプルをセットし、2分間光照射を行って光硬化性化合物成分を光硬化させることにより、青色調光素子を得た。得られた調光素子について、前記と同様の方法で、電圧無印加状態及び駆動時でのヘイズ、駆動電圧、及び動作温度範囲を測定し、結果を表1に示した。
【0076】
比較例1
実施例1において、(A)液晶成分としてのメルク社製「MLC2058」)を、相転移温度(Tni)が70.3℃であり、弗素及び塩素非含有のネマチック液晶(メルク社製「BDH−E8)に変更した外は、実施例1と同様にして調光用液晶組成物を調製し、前記と同様の方法で、相分離温度を測定し、更に、光硬化させ、青色調光素子を得、得られた調光素子について、前記と同様の方法で、電圧無印加状態及び駆動時でのヘイズ、駆動電圧、及び動作温度範囲を測定し、結果を表1に示した。
【0077】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の調光用液晶組成物により得られる調光素子は、窓、間仕切り、扉、ステンドグラス等の建築材料、ウインドウ、サンルーフ等の車両用材料、絵画や文字、数字等を表示するディスプレー、ショーウインドウやショーケース等の展示物用材料、花や蝶等の様々な形に組み合わせたり切り抜いたりした装飾品、ライトアップ効果を狙ったイベント用装置等に使用することができ、多彩な彩りを添えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有することを特徴とする調光用液晶組成物。
(A)成分;相転移温度(Tni)が100℃以上である含弗素又は/及び含塩素系ネマチック液晶を含む液晶成分
(B)成分;炭素数が5〜13の直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレート(B−1)成分、及び下記一般式(I) で表されるジ(メタ)アクリレート(B−2)成分を含む光硬化性化合物成分

CH=CH−C−O−X−O−C−CH=CH (I)
‖ ‖
O O

〔式(I) 中、Xは炭素数4〜13の直鎖状アルキレン基を示す。〕
(C)成分;下記一般式(II)で表され、有する芳香環が四つ以下であるアントラキノン系色素を含む色素成分
【化1】

〔式(II)中、Rは、−NHR(Rは、水素原子、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環残基を示す。)、又は−SR(Rは、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環残基を示す。)を示し、
、R、及びRは各々独立して、水素原子、−NHR(Rは前記と同様である。)、−SR(Rは前記と同様である。)、又は−OR10(R10は、水素原子、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環残基を示す。)を示す。但し、R〜Rの一つが−NHである場合、他の三つは−NHではない。又、R〜R10のシクロアルキル基、アリール基、及び複素環残基が有する置換基は連結環構造を含まない。
、R、及びRは各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、−SR(Rは前記と同様である。)、又は−COYR11(Yは、酸素原子、硫黄原子、又は−NR(Rは前記と同様である。)を示し、R11は、直鎖状或いは分岐鎖状アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環残基を示す。)を示す。但し、R〜Rの一つが−NHである場合、R〜Rの少なくとも一つは水素原子ではない。又、R〜Rは3環以上の連結環構造を有さない。〕
(D)成分;光重合開始剤成分
【請求項2】
請求項1に記載の調光用液晶組成物の(B)成分の光硬化性化合物成分が光硬化されてなることを特徴とする、調光用液晶組成物の光硬化物。
【請求項3】
少なくとも一方が透明電極を有する透明基板である基板が対向配置された一対の基板間に請求項2に記載の調光用液晶組成物の光硬化物の層が挟持されてなることを特徴とする調光素子。
【請求項4】
一対の基板の両方が透明電極を有する透明基板である請求項3に記載の調光素子。
【請求項5】
自動車用である請求項4に記載の調光素子。
【請求項6】
建材用である請求項4に記載の調光素子。

【公開番号】特開2011−190314(P2011−190314A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56021(P2010−56021)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】