説明

調剤監査支援装置

【課題】調剤内容の識別情報に加えて調剤者5の識別情報も印刷物40,50の撮影画像からカラービットコード読取にて取得する調剤監査支援装置10を実現する。
【解決手段】撮影対象物70を上面に並べうる監査台15と、それを撮る撮像装置12と、その撮像画像からカラービットコードを読み取る読取手段28と、調剤者5の識別情報を記憶した調剤者データ34と、調剤内容を識別情報と共に記憶した処方データ22と、読取手段28にて読み取れたカラービットコードがデータ34,22の識別情報の何れかに合致するか否かを調べる検索手段26と、合致時に調剤内容を提示する手段31と、合致時に調剤者5を特定する特定手段33とを備える。一部だけ読み取れたカラービットコードの読取試行位置を強調表示する。その強調表示部位を識別情報の候補に絞り込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処方箋や,調剤指示箋,薬袋などといった調剤内容印刷物を見ながら調剤者が取り揃えた薬剤を処方箋情報等と突き合わせて適否確認する調剤監査作業を支援する調剤監査支援装置に関し、詳しくは、カラービットコードで印刷した識別情報を読み取って監査者の作業負担の軽減に役立つ処理を行う調剤監査支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既に実用化されている調剤監査支援装置として、識別情報の読取装置が付設された複数の調剤機器から調剤対象の薬剤容器の識別情報を収集し、それらの収集された識別情報を用いて薬剤情報の検索を行うとともに、その検索で得た薬剤情報を処方箋情報に付加して提示するようになった監査支援装置が挙げられる(例えば特許文献1参照)。
この監査支援装置の場合、バーコードで印刷した識別情報をバーコードリーダで読み取って監査者の作業負担の軽減に役立つ処理を行うようになっている。調剤済み薬剤を撮像してパターン認識および計数の処理を行うとともに、そのパターン認識に際し識別情報を用いて認識用特徴データの検索を行うようにもなっている。
【0003】
また、互いに非接触で通信しうるICタグとタグ検知装置とを備えることで、薬剤を納めた薬品箱や薬袋の形状や収容状態が多種多様であっても、薬剤を自動管理することができるようになったタグ検知システムが実用化されている(例えば特許文献2参照)。
さらに、薬袋などに処方箋データと共に処方箋識別コードや調剤指示箋識別コードをバーコード印刷しておき、識別コードを携帯情報端末で読み取って対応する処方内容を携帯情報端末の画面に表示するようになったものもある(例えば特許文献3参照)。
【0004】
また、印刷に適した識別コードの一つとして、色の配列で符号化情報を表すカラービットコード(1Dや1.5Dのカラービットコードと呼ばれたりリフレクティブカラーコードと呼ばれることもある)が開発されている(例えば特許文献4,5参照)。その読取は、カラービットコードを含んだ画像データをエリアセンサ等の撮像装置で取り込んで複数の色領域あるいは色領域群に区分けし、区分けした各領域色や各領域群を境界条件や個数条件等を用いて絞り込んでから実際にデコードを行うことで、二次元バーコードのような切り出しマーク等を用いなくても、シンプルにデコードできるものとなっている。
【0005】
そして、このようなカラービットコードを導入した薬品管理システムが実用化されている(例えば特許文献6参照)。このシステムは、トレーにセットして医療現場で使用される薬品類の使用状況を管理するためのものであり、トレーを仕切って各区画に薬品類を収容するとともに薬品類の使用の有無を区画毎に把握するようになっている。具体的には、トレーにセットすべき薬品類の配置を調剤指示に応じて決定する配置決定手段と、トレーの内底に敷ける印刷用紙に薬品類の識別コードを配置に対応させて印刷する印刷手段と、トレーと共に印刷用紙を上から撮る撮像手段と、その画像から識別コードを読み取って薬品類の使用の有無を判別する判定手段とを備えており、その判定では、識別コードを読み取れたときには該当箇所の薬品類は使用されたと判定し、識別コードを読み取れなかったときには該当箇所の薬品類は使用されていないと判定するようになっている。
【0006】
さらに、そのような撮像方式の薬品管理システムについて、トレー内部空間の区画分けの自由度を向上させたものも開発されている(例えば特許文献7参照)。
具体的には、この薬品管理システムでは、仕切部材挿着用孔をマトリクス状に多数形成した中敷部材をトレーの内底に敷くとともに、トレーの内部空間を仕切って複数の区画に分割する仕切片に機械読取用識別コードと目視読取用薬品名とを付しておき、そのような仕切片を中敷部材の仕切部材挿着用孔に挿着するようになっている。
【0007】
また、病棟や調剤室などへの入退室管理と調剤管理用や調剤制御用のログイン管理装置とに併用される個人認証システムに、カラービットコードの印刷と撮像とを応用したものも開発されている(例えば特許文献8参照)。このシステムでは、認証対象者識別用コードをカラービットコードで印刷した情報担体を、予め、認証対象者に撮影可能に保持させておく。そして、出入口のところにカラーの撮像装置を設置しておいて、入室者が出入口から入室しようとすると、入室者の顔や上半身と共に情報担体が撮像装置で撮られ、その画像が入退室管理装置に取り込まれる。また、室内では、ログイン管理装置にカラーの撮像装置を付設しておいて、ログイン操作を行うと、その操作者の顔や上半身と共に情報担体が撮像装置で撮られ、その画像がログイン管理装置に取り込まれる。何れの装置も、画像からカラービットコードを読み取って認証用の検索キーを得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−279068号公報
【特許文献2】特開2005−157694号公報
【特許文献3】特開2006−247150号公報
【特許文献4】特開2008−287414号公報
【特許文献5】特開2009−003721号公報
【特許文献6】特開2011−024663号公報
【特許文献7】特願2010−268848号
【特許文献8】特願2011−094431号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来の調剤監査支援装置では(特許文献1参照)、識別情報の表示にバーコードが用いられており、監査時にはもちろん調剤時にも識別情報の取得のためにバーコード読取作業を行う必要がある。バーコードリーダが携帯可能になって(特許文献3参照)、操作性が向上しても、識別情報の取得試行の度にバーコードにリーダを向けて読み取らせる作業まで無くなった訳ではない。ICタグ(電子タグ,データキャリア)を用いれば(特許文献2参照)、非接触通信範囲内ではコード読取作業を自動化できるが、その範囲が目視では分かり難く、コード読取を調剤時や監査時の特定作業に限定するのも難しいため、調剤作業時や監査作業時のコード読取作業を完全に自動化するには至っていない。
【0010】
また、上述した従来の調剤監査支援装置のうち、自動計数などのために調剤済み薬剤を撮影台の上に並べて撮像してパターン認識するものについては(特許文献1参照)、薬剤容器等の識別情報がパターン認識の識別率向上に役立つため重宝される。また、そのような調剤監査支援装置には、後刻の確認に備えて画像データをログファイル等に蓄積しておくといった改良も試みられているが、その大量の画像データの検索キー等として調剤者や調剤内容印刷物の識別情報が重宝される。そのため、撮像装置での画像取得が加わっても、識別情報の取得はなくならず、人手介助を要するバーコードリーダやタグ検知装置でのコード読取作業も識別情報の取得のため依然として行われている。
【0011】
これに対し、印刷面が平坦面に限定されないうえ撮影画像からのコード読取に二次元バーコードよりも適したカラービットコード(特許文献4,5参照)を導入した薬品管理システムでは(特許文献6,7)、トレーに仕切を組み合わせたうえで更に薬品をトレーに収容するとその下にカラービットコードが隠れるようにしたことにより、バーコードやICタグの併用を排除する訳ではないがそれを用いるまでもなく、撮影画像からのカラービットコード読取にてトレーセット薬品の個別検出ができるようになっている。
【0012】
しかしながら、そのような薬品管理システムでは、トレーの内部を仕切らないといけないうえ、セット薬品の識別コードといった調剤内容そのものに加えて処方箋番号や調剤指示番号といった調剤内容の識別情報はカラービットコードで調剤内容印刷物に印刷されるが、監査時やその後に時刻を遡って調剤内容を確認するのに欲しい調剤者の識別情報まで印刷されるようにはなっていない。このため、薬品管理システムの手法をそのまま調剤監査支援装置に適用することはできない。監査では、仕切られていない薬剤も確認しなければならない。また、調剤者の識別情報も手軽に取得できるのが望ましい。
【0013】
そこで、調剤内容の識別情報に加えて調剤者の識別情報も印刷物の撮影画像からカラービットコード読取にて取得する調剤監査支援装置を実現することが、基本的な技術課題となる。
また、調剤内容の識別情報に加えて調剤者の識別情報も印刷物の撮影画像からカラービットコード読取にて取得するに際して監査台の撮影面上に置いた薬剤等の下に隠れて所望の識別情報が読み取れないときに識別情報を簡便に露見させることができる調剤監査支援装置を実現することが、更なる技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の調剤監査支援装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、調剤されて監査対象となった薬剤とその調剤内容の識別情報をカラービットコードで印刷した調剤内容印刷物とその調剤を行った調剤者の識別情報をカラービットコードで印刷した調剤者印刷物とを並べて上面に載置しうる監査台と、前記監査台の前記上面を撮る撮像装置と、前記撮像装置で撮った画像からカラービットコードを読み取る読取手段と、登録された調剤者の識別情報を複数保持しうるとともに処方された調剤内容とその識別情報とを複数保持しうる記憶手段と、前記読取手段にて読み取れたカラービットコードが前記記憶手段の保持する識別情報の何れかに合致するか否かを調べる検索手段と、前記検索手段にて合致した識別情報として得られた「調剤内容の識別情報」に対応する調剤内容を提示する提示手段と、前記検索手段にて合致した識別情報として得られた「調剤者の識別情報」を用いて調剤者を特定する特定手段とを備えている。
【0015】
また、本発明の調剤監査支援装置は(解決手段2)、上記解決手段1の調剤監査支援装置であって、前記読取手段が、完全に読み取れたカラービットコードに加えて一部しか読み取れなかったカラービットコードについても読取結果と読取試行位置情報とを出すものであり、前記提示手段を兼ねる表示手段または前記提示手段とは別に設けられた表示手段が、一部しか読み取れなかったカラービットコードの読取試行位置を強調表示するようになっている、ことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の調剤監査支援装置は(解決手段3)、上記解決手段2の調剤監査支援装置であって、前記検索手段が、完全に読み取れたカラービットコードの完全合致に加えて一部しか読み取れなかったカラービットコードの部分合致についても調べるものであり、前記表示手段が、部分合致したカラービットコードの読取試行位置を強調表示するようになっている、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の調剤監査支援装置は(解決手段4)、上記解決手段2,3の調剤監査支援装置であって、画面表示装置が、監査者の目視可能な所に設けられており、前記表示手段が、カラービットコードの読取試行位置の強調表示を前記画面表示装置の画面上で行うようになっている、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の調剤監査支援装置は(解決手段5)、上記解決手段2,3の調剤監査支援装置であって、前記監査台の前記上面を照らす照明装置が、照明部位毎に照明度合を変えられるものであり、前記表示手段が、前記照明装置を制御することによりカラービットコードの読取試行位置の強調表示を前記監査台の前記上面で行うようになっている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このような本発明の調剤監査支援装置にあっては(解決手段1)、監査に先立つ調剤において、調剤者が、調剤対象となった薬剤を取り揃える際に、その調剤内容の識別情報をカラービットコードで印刷した調剤内容印刷物と、その調剤を行った調剤者の識別情報をカラービットコードで印刷した調剤者印刷物も、調剤済み薬剤と一緒に取り扱えるよう纏めておく、という運用が前提とされる。
そして、調剤後の監査時には、調剤されて監査対象となった薬剤と一緒に調剤内容印刷物と調剤者印刷物も監査台の上面に並べられる。それから、撮像装置によって監査台の上面が撮影され、その撮影画像から読取手段によってカラービットコードが読み取られ、そのコードが検索手段によって記憶手段の識別情報に合致するか否かが調べられる。
【0020】
上記画像には薬剤と共に両印刷物も写り込んでいることから、検索で合致した場合には調剤者や調剤内容が判明し、提示手段によって調剤内容が提示され、特定手段によって調剤者が特定されるので、それを監査者が参照する等のことで監査作業が支援される。
また、カラービットコードが読み取れなかった場合や、読み取れても検索で合致しなかった場合は、監査者が監査台上の薬剤や印刷物を動かしたり散らしたりして並べ直せば、カラービットコードの読取や識別情報の検索が再試行される。
【0021】
したがって、この発明によれば、調剤内容の識別情報に加えて調剤者の識別情報も印刷物の撮影画像からカラービットコード読取にて取得する調剤監査支援装置を実現することができる。
そのため、調剤時に薬剤を収集する度にコード読取の作業を行う必要が無くなって調剤者の作業負担が軽減されるとともに、調剤時にも監査時にも薬剤を個々に仕切って厳密に整列させる作業も行う必要が無くなって調剤者も監査者も作業負担が軽減される。
【0022】
また、本発明の調剤監査支援装置にあっては(解決手段2)、カラービットコードが完全には読み取れなくても一部でも読み取れれば、それに対応する読取試行位置が表示手段によって強調表示される。このため、その強調表示を参考にして監査者が監査台上の薬剤や印刷物の並べ直しを行えば、監査台の上面のうち該当部位の局所で並べ直しを行うだけで、例えば監査台の撮影面上に置いた薬剤等の下に隠れて一部しか読み取れなかった識別情報の全体が撮像可能に露見する可能性が高いので、広範囲で並べ直すより簡便に、カラービットコードの読取確度を向上させることができる。
【0023】
したがって、この発明によれば、調剤内容の識別情報に加えて調剤者の識別情報も印刷物の撮影画像からカラービットコード読取にて取得するに際して監査台の撮影面上に置いた薬剤等の下に隠れて所望の識別情報が読み取れないときに識別情報を簡便に露見させうる調剤監査支援装置を実現することができる。
なお、完全に読み取れたカラービットコードに対応する読取試行位置についても監査者が確認できるよう準強調表示することにすれば、そこの並びを不所望に乱すのを簡便に避けることができるので、更に良くなる。
【0024】
さらに、本発明の調剤監査支援装置にあっては(解決手段3)、強調表示の部位が所望の識別情報の候補に絞り込まれるので、カラービットコードの読取確度を損なうことなく、並べ直しの作業負担が軽減されることとなる。
【0025】
また、本発明の調剤監査支援装置にあっては(解決手段4)、調剤内容を提示する提示手段として監査者目視用の画面表示装置を装備することが多いが、そのような画面表示装置が流用・援用されて又は同様の画面表示装置が追加されて、その画面にカラービットコードの読取試行位置の強調表示がなされるので、表示手段が簡便に具現化される。
【0026】
また、本発明の調剤監査支援装置にあっては(解決手段5)、監査台の上面を撮る撮像装置には監査台の上面を照らす照明装置が添設されることが多いが、そのような照明装置として照明部位毎に照明度合を変えられるものが採用されて、カラービットコードの読取試行位置の強調表示が監査台の上面で行われる。そのため、監査者が並べ直し対象の印刷物等を注視したまま、並べ直し対象の印刷物等から視線を外さなくても、並べ直すべき局所を知ることができるので、並べ直しの作業負担がより軽減されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1について、調剤監査支援装置の構造を示し、(a)が調剤部門の模式図、(b)が監査部門の模式図、(c)が調剤監査支援装置のブロック図である。
【図2】調剤監査支援装置の撮影対象を示し、(a)が調剤内容印刷物の印刷面、(b)が調剤者印刷物の印刷面、(c)が薬剤の品名印刷面である。
【図3】監査台の上面における撮影対象物の並べ方を示し、(a)が区分載置の例、(b)がトレー載置の例、(c)が自由載置の例である。
【図4】カラービットコード読取試行位置の強調表示の方式を示し、(a)が照明の例、(b)が画面表示の例である。
【図5】調剤監査支援装置を用いた調剤と監査の作業手順を示すフローチャートであり、(a)が調剤者を登録する準備作業の概要、(b)が調剤から監査までの一連の作業の概要、(c)が監査作業の典型例である。
【図6】カラービットコードその他の読取結果の強調表示の変形例を示し、(a)〜(g)が画面表示の例、(h)が照明の例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
このような本発明の調剤監査支援装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1〜5に示した実施例1は、上述した解決手段1〜5(出願当初の請求項1〜5)を総て具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、機械部品や,電気回路,電子回路などの詳細な図示は割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に模式図やブロック図で示した。
【実施例1】
【0029】
本発明の調剤監査支援装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が調剤部門の模式図、(b)が監査部門の模式図、(c)が調剤監査支援装置10の概要ブロック図である。
【0030】
また、図2は、調剤監査支援装置10の撮影対象物70を示し、(a)が撮影対象物70のうち調剤内容印刷物40の識別情報印刷面、(b)が撮影対象物70のうち調剤者印刷物50の識別情報印刷面、(c)が撮影対象物70のうち薬剤60の品名印刷面である。さらに、図3は監査台15の上面における撮影対象物70の並べ方を示し、(a)が区分載置の例、(b)がトレー載置の例、(c)が自由載置の例である。また、図4は、カラービットコード読取試行位置の強調表示の方式を示し、(a)が照明にて強調する例、(b)が画面表示にて強調する例である。
【0031】
この調剤監査支援装置10は(図1参照)、調剤機器6と共に調剤部門に設置されたプリンタ11と(図1(a)参照)、監査部門に置かれた監査台15と(図1(b)参照)、その上方に離れて設置された撮像装置12及び照明装置13と、監査部門の監査台15の上に載置された画面表示装置14及び本体部20と、調剤者5の出入りする適宜な場所に設置されたプリンタ16とを具えている(図1(c)参照)。なお、調剤部門と監査部門は、規模の大きな薬局や病院等では仕切られて分離されることが多いが、小規模な所では一体化していることが多いので、設置先の部門分けは必須でない。
【0032】
また、調剤機器6に収納されている薬剤60から必要なものを取り出して収集する調剤作業を行う調剤者5と、調剤されて監査対象となった薬剤60の適否や過不足を確認する監査作業を監査台15の所で行う監査者7は、同一人であることもあれば、別人であることもある(図1(a),(b)参照)。この調剤監査支援装置10では、調剤者5が調剤作業を行う際に調剤内容印刷物40を参照することで、処方された又は調剤指示された薬剤60を取り揃え(図1(a)参照)、調剤作業から監査作業へ移行するときには、必須の監査対象の薬剤60だけでなく調剤内容印刷物40と調剤者印刷物50も監査台15の上面に並べて一緒に撮影して確認する撮影対象物70に含めることを前提としている。
【0033】
調剤内容印刷物40は(図2(a)参照)、薬品名や用量などの処方内容を印刷したものであり、処方箋や,それを分割や統合した調剤指示箋,薬剤を収容するための薬袋などが典型例であり、それらの事項については従来品と同様で足りるが、従来と異なり、調剤内容の識別情報41がバーコード等でなくカラービットコードで印刷されている。
調剤者印刷物50は(図2(b)参照)、調剤者5の特定に必要な氏名等を印刷したIDカード等が典型例であり、それについては従来品と同様で足りるが、従来と異なり、調剤者の識別情報51が二次元コード等でなくカラービットコードで印刷されている。
【0034】
そのため、プリンタ11,16には(図1参照)、カラービットコードを印刷できるものが採用されている。調剤内容印刷物40に必要事項を印刷できるとともに、調剤者印刷物50にも必要事項を印刷できれば、両プリンタ11,16は、独立した別個の物でも良く、兼用される一台の物であっても良い。
薬剤60は(図2(c)参照)、手作業での取り揃えとパターン認識での自動計数に好適なものとしてPTP包装剤を示したが、パターン認識に適う薬品名61やそれに代わる薬品コード等が印刷されていれば、散薬や水剤など他の薬剤であっても良い。
【0035】
監査作業では(図1(b)参照)、調剤内容印刷物40と調剤者印刷物50と薬剤60とを含む撮影対象物70を監査台15の上面のうち監査者7寄りの所に並べて載置し、それを監査者7が目視で確認するので、そこを明るく上空から照らせる所に照明装置13が配設され、そこを明瞭に上空から撮影できる所に撮像装置12が配置されている。撮像装置12には、画素数の十分に多いカラーのCCDカメラ等が採用され、照明装置13には、十分な光量の白色光を斑無く照射するものであって、照明範囲を多数の領域に区分けして各領域の照明具合を個別に可変制御しうるものが必要なので、例えば、一領域を担当する発光素子をマトリクス配置したものや、照射光を部分的にマスクするプロジェクタ方式のもの、液晶パネルのLEDバックライトを投影するものなどが、採用されている。
【0036】
画面表示装置14は(図1(b)参照)、液晶パネルやプラズマパネルのディスプレイが採用されていて、調剤内容等の文字表示や撮影画像等の映像表示のため、監査台15の上面のうち奥側に設置されて、監査者7の目視のため画面を監査者7に向けている。
本体部20は(図1(b),(c)参照)、ハードディスク等の記憶手段を内蔵または外装したコンピュータが採用されていて、検索手段や提示手段などを具現化したプログラムがインストールされるとともに、登録された識別情報等を保持するデータ領域が記憶手段に確保されている。画面表示装置14と一体型の場合は、監査台15の上面に置かれるが、分離型の場合は、監査台15の上でも中でも良く、他の場所に置かれても良い。
【0037】
具体的なプログラムとしては(図1(c)参照)、処方箋入力プログラム21と調剤内容印刷プログラム23と確認入力プログラム24と薬剤計数プログラム25と識別情報検索プログラム26(検索手段)とパターン認識プログラム27とコード読取プログラム28(読取手段)と提示プログラム31(提示手段および表示手段)と調剤者登録プログラム32と調剤者特定プログラム33(特定手段)と調剤者印刷プログラム36とが、インストールされている。また、具体的なデータ領域としては、処方データ22と調剤者データ34とログデータ35とを保持する領域が、記憶手段に確保されている。
【0038】
それぞれを詳述すると(図1(c)参照)、処方データ22は、薬品名や用量などの処方内容に患者名や処方番号などの付加データを組み合わせた組データを多数組保持するようになっているが、さらに、調剤時に処方箋単位や,調剤指示箋単位,薬袋単位などの適宜な単位で取り扱うための管理情報と、調剤内容を特定すると共に検索キーにもなる「調剤内容の識別情報」も、保持するようになっている。そして、処方箋入力プログラム21は、外部の処方オーダリングシステムや処方箋受付装置などから処方情報Aが送信されてくると、それを入力して処方データ22に追加蓄積するようになっている。また、調剤内容印刷プログラム23は、処方データ22から調剤単位で必要なデータを読み出してプリンタ11に調剤内容印刷物40を印刷させるものであり、その際、調剤内容印刷物40の印刷面に調剤内容とその識別情報とを印刷させるが、特に調剤内容の識別情報はカラービットコードで印刷させるようになっている。調剤内容の識別情報の印刷は一カ所だけでも良く表裏で複数箇所に行うのでも良い。
【0039】
調剤者データ34は、調剤作業を行える者に関する氏名や所属などの情報に加えて、麻薬等も扱えるか否かといった権限の情報と、その者を特定すると共に検索キーにもなる「調剤者の識別情報」とを組み合わせた組データを、多数組保持するようになっている。そして、調剤者登録プログラム32は、登録権限を持った管理者がログインして調剤者の登録に係る登録情報Cの入力操作を行うと、その登録情報Cを入力して調剤者データ34に追加蓄積したり該当データを更新したり削除したりするようになっている。また、調剤者印刷プログラム36は、調剤者データ34の中から指定された調剤者に関する情報を読み出してプリンタ16に調剤者印刷物50を印刷させるものであり、その際、調剤者印刷物50の印刷面に調剤者の氏名等と調剤者の識別情報とを印刷させるが、特に調剤者の識別情報はカラービットコードで印刷させるようになっている。調剤者の識別情報の印刷についても、一カ所だけで印刷するのでも良く、表裏で複数箇所に行うようにしても良い。
【0040】
ログデータ35は、調剤されて監査対象となった薬剤60の調剤内容を示すデータと、その薬剤60とその調剤内容の識別情報41をカラービットコードで印刷した調剤内容印刷物40とその調剤を行った調剤者5の識別情報をカラービットコードで印刷した調剤者印刷物50とが撮影対象物70として一緒に写っている撮影画像データと、タイムスタンプ等の付加データとを組み合わせた組データを、多数組保持するようになっている。監査者7が監査台15の上面に撮影対象物70でもある監査対象物を並べて監査作業をしているときに撮影対象物70の画像を自動で及び/又は手動で取得することができるよう、監査台15の上面には撮影対象物70を並べて載置しうるのに十分な作業領域が確保され、撮像装置12の撮影範囲と照明装置13の照明範囲は何れも監査台15の上面のうち撮影対象物70の載置範囲と同じかそれより広くなっている(図3(a)〜(c)参照)。
【0041】
撮影対象物70の並べ方は、監査台15の上面を予め幾つかの区画に分割しておいて調剤内容印刷物40と調剤者印刷物50と薬剤60とを区分載置しても良く(図3(a)参照)、調剤時に取り揃えた撮影対象物70を総て投入したトレー71を監査時にもそのまま監査台15の上面に載せて監査作業や撮像に供するのでも良く(図3(b)参照)、気軽に撮影対象物70を監査台15の上面に撒き散らすのでも良い(図3(c)参照)。何れの並べ方で運用する場合でも、本体部20では(図1(c)参照)、監査支援のために、撮像装置12による撮影が手動で開始されたのに伴って、あるいは撮像装置12によって監査台15の上面が継続的に撮影されていてその画像変化等に応じて自動で、パターン認識プログラム27やコード読取プログラム28が起動されるようになっている。
【0042】
コード読取プログラム28(読取手段)は、撮像装置12で撮った撮影対象物70の画像からカラービットコードを読み取るものであり(図1(c)参照)、コードの読み取り方は従来手法で良いが(例えば特許文献4,5参照)、完全にコード全体を読み取れたカラービットコードに加えて、一部分しか読み取れなかったカラービットコードについても、読取結果と読取試行位置情報とを出すようになっている。撮影画像を部分領域に区分けし更に条件で絞り込んでからデコードを試みる度にその画像領域の例えば中心位置を読取試行位置情報とし、デコードして得られたバイナリデータを対応する読取結果とするが、ビット数やチェックサム等が規定通りであれば完全に読み取れたとし、そうでなければ一部だけ読み取れたとし、読取結果と読取試行位置情報とを一対に限らず幾つでも読み出して識別情報検索プログラム26に引き渡すようになっている。
【0043】
識別情報検索プログラム26(検索手段)は、コード読取プログラム28からカラービットコードの読取結果と読取試行位置情報を受け取ると、完全に読み取れたカラービットコードの読取結果であれ、一部しか読み取れなかったカラービットコードの読取結果であれ、処方データ22と調剤者データ34とを検索して、読取結果に合致する識別情報を探し出す。その際、完全に読み取れたカラービットコードの読取結果については、処方データ22と調剤者データ34とに保持されている識別情報の何れかと完全に合致するか否かを調べるが、一部しか読み取れなかったカラービットコードの読取結果については、処方データ22と調剤者データ34とに保持されている識別情報の何れかと部分的にでも合致するか否かを調べて、その結果をカラービットコードの読取結果と読取試行位置情報と共に提示プログラム31に引き渡し、さらに、調剤者データ34から完全合致の識別情報が得られたときには、それを調剤者特定プログラム33に引き渡すようになっている。
【0044】
調剤者特定プログラム33(特定手段)は、識別情報検索プログラム26にて調剤者データ34のものと完全に合致した識別情報を識別情報検索プログラム26から受け取ると、それを「調剤者の識別情報」として、それに該当する登録済みの調剤者を調剤作業実行者として特定するとともに、調剤内容と調剤者データ34とを照合して、調剤内容の薬剤を調剤者が取り揃える権限を与えられているか否かのチェックを行うようになっている。また、その「調剤者の識別情報」を提示プログラム31に引き渡すとともに、撮像装置12で撮った撮影対象物70の画像データに「調剤者の識別情報」やタイムスタンプを付けてログデータ35に追加蓄積するようになっている。その際、調剤内容を示すデータも可能な限り付け足すようにもなっている。
【0045】
パターン認識プログラム27は、撮像装置12で撮った撮影対象物70の画像から文字認識等にて薬品名を読み取るものであり、薬剤計数プログラム25は、パターン認識プログラム27で読み取れた薬品名を剤種毎に数え上げるものであり、これらのパターン認識プログラム27と薬剤計数プログラム25は、従来装置と同様(特許文献1参照)、認識用特徴データが利用できれば読取や計数の確度が向上するので、識別情報検索プログラム26によって「調剤内容の識別情報」が確認できた後はそれに対応する調剤内容を処方データ22から取得し更には図示しない特徴データベース等が利用可能であればそれに対する検索を行って認識用特徴データを取得するようになっている。また、薬剤計数プログラム25は、その計数結果に加えて、パターン認識プログラム27による文字認識位置情報も、提示プログラム31に引き渡すようになっている。
【0046】
提示プログラム31(提示手段および表示手段)は、識別情報検索プログラム26からカラービットコードの読取結果と読取試行位置情報とを受け取ると、一部しか読み取れなかったカラービットコードの読取試行位置を強調表示するが、総て強調するのではなく、部分合致したカラービットコードの読取試行位置に絞りこんでから、そこを強調表示するようになっている。その強調表示は異なる二態様で並行実施される。一つ目の態様は、照明装置13を制御して監査台15の上面における照明部位毎に照明度合を変えるものであり、二つ目の態様は、画面表示装置14の画面に表示した撮影対象物70の映像に重ねて画面上の該当箇所にマーキングしたり該当箇所を点滅させたりするというものである。
【0047】
調剤内容の識別情報41は完全に読み取れたが調剤者の識別情報51は一部しか読み取れなかった場合を具体例にして説明すると(図4参照)、監査台15の上面における照明範囲を例えば4行6列に分割して照明できるとして、一つ目の態様での強調表示では(図4(a)参照)、監査者7に並べ直しを促すために最も強調したい部位である調剤者の識別情報51の実在箇所は強い白色光で明るく照らすが、現状の並びを維持したい部位である調剤内容の識別情報41の実在箇所は少し弱い白色光か適当な色を付けて照らし、それ以外の所は薄暗く照らす、といったことが行われるようになっている。
【0048】
一方、二つ目の態様での強調表示では(図4(b)参照)、監査者7に並べ直しを促すために最も強調したい部位である調剤者の識別情報51の映像部分は目立つ短周期で点滅させるが、現状の並びを維持したい部位である調剤内容の識別情報41の所は比較的長い周期で点滅させ、それ以外の所は点滅させない、といったことが行われる。また、画面表示装置14の画面表示については、薬品名を読み取れた薬剤の映像部分に例えば丸印などのマークが付けられる。さらに、従来の調剤監査支援装置と同様、調剤者や,患者名,処方番号,処方内容なども、画面表示装置14の画面上に表示するが、その際、識別情報検索プログラム26によって合致した識別情報として得られた「調剤者の識別情報」や「調剤内容の識別情報」に対応する調剤者や調剤内容を提示するようになっている。
【0049】
確認入力プログラム24は(図1(c)参照)、従来の調剤監査支援装置と同様、監査者7が実際の監査対象物(70)を目視で確認しながら手動で確認情報Bの入力操作を行うと、その確認情報Bを入力して、薬剤60の計数結果などを修正するとともに、それに応じて画面表示装置14の画面表示を提示プログラム31に更新させるようになっている。監査者から監査中止の指示が入力されたときや、調剤者の権限の有無を確認して権限不足の場合は、警告等を出して異常終了し、そのようなことがなくて更に調剤内容表示と計数結果との照合が一致したときには正常終了するようになっている。なお、一患者の処方が複数に分割されて並行調剤されている場合には、その確認もとるようになっている。
【0050】
この実施例1の調剤監査支援装置10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図5は、調剤監査支援装置10を用いた調剤と監査の作業手順を示すフローチャートであり、(a)が調剤者5を登録する準備作業の概要、(b)が調剤から監査までの一連の作業の概要、(c)が監査の作業手順の典型例である。また、図1(a)は調剤作業の模式図、図1(b)は監査作業の模式図、図2(a)は調剤内容印刷物40の識別情報印刷面、図2(b)は調剤者印刷物50の識別情報印刷面、図2(c)は薬剤60の品名印刷面、図3は監査台15の上面に監査対象物並べて撮影しているところの斜視図、図4(a)は監査台15の上面の照明例、図4(b)は画面表示例である。
【0051】
この調剤監査支援装置10を使用するには、予め(図5(a)参照)、調剤者5になりうる者を本体部20に登録しておくとともに、調剤者印刷物50を幾つか印刷して対象者に管理させる。登録時には、対象者の指名や調剤権限などを含む登録情報Cを本体部20の調剤者登録プログラム32に入力すると、それが確認表示されるとともに、既登録者と重複しない「調剤者の識別情報」が自動生成されてそれも画面表示されるので、それらを確認し必要なら修正等も行ってから、登録する。登録後も、調剤作業の権限など登録事項に変更があれば、随時更新する。また、調剤者印刷物50も不足したら随時印刷する。
【0052】
そして(図5(b)参照)、処方箋が受け付けられて、その処方情報Aが調剤監査支援装置10の本体部20に届くと、本体部20の処方箋入力プログラム21によって処方データの入力と解析が行われ、それによって調剤部門で行う調剤内容が確定する。
それから、調剤監査支援装置10のうち調剤部門に置かれたプリンタ11によって、一枚または複数枚の調剤内容印刷物40が作成され、それぞれの調剤内容印刷物40によって一人の調剤者5が担当すべき調剤作業が指示される。
【0053】
次いで(図5(b)参照)、調剤者5によって調剤が実行されるが、その際(図1(a)参照)、調剤者5は、調剤内容印刷物40を手に取り、それに印刷されている調剤内容に従って調剤機器6から薬剤60を取り出す。調剤内容印刷物40で指示された薬剤60を総て調剤者5が取り揃えたら、それに調剤内容印刷物40と自己の調剤者印刷物50を付け、それらをトレーや袋などで一纏めにしてから監査部門へ送る。
続く監査作業は(図5(b)参照)、調剤監査支援装置10の要部を装備した監査台15のところで、監査者7によって実行される(図1(b)参照)。
【0054】
その監査作業を詳述すると(図5(c)参照)、先ず監査者7が監査台15の上面の上に監査対象物の調剤内容印刷物40と調剤者印刷物50と薬剤60とを載置するが、その際、なるべく重ならないように広げて並べる(ステップS1)。そうすると、それら40,50,60の監査対象物が調剤監査支援装置10の撮影対象物70となって撮像装置12で上方から撮られ(図3参照)、その撮影画像に対する本体部20のコード読取プログラム28の画像処理によって、カラービットコードの読取が試行され、調剤内容印刷物40から調剤内容の識別情報41が読み取られとともに(図2(a)参照)、調剤者印刷物50から調剤者の識別情報51が読み取られる(図2(b)参照)。
【0055】
その読取でカラービットコードが一部しか読み取れなかった等のため、識別情報検索プログラム26の検索によって両識別情報41,51を総て取得することができなかった場合、提示プログラム31によって照明装置13と画面表示装置14を用いたカラービットコード読取試行位置の強調表示が行われる(図5(c)ステップS2及び図4参照)。この強調表示が調剤監査支援装置10によって行われたときには(図5(c)ステップS2の有)、監査者7が、監査台15の上面の照明(図4(a)参照)や画面表示装置14の画面の点滅(図4(b)参照)を参考にして、読み取れずに強調されている該当箇所について、調剤者の識別情報51などのカラービットコードの全体が露見して読取可能になるよう、該当箇所の調剤者印刷物50などを並べ直す(図5(c)ステップS3)。
【0056】
そして、カラービットコードがコード読取プログラム28によって総て読み取られ、識別情報検索プログラム26の検索によって両識別情報41,51が何れも取得されると、提示プログラム31による強調表示が無くなり(図5(c)ステップS2の無)、調剤者特定プログラム33によって、ログデータ35に撮影画像データや両識別情報41,51などの組データが追加記録されるとともに、調剤者の識別情報51が調剤者データ34に登録されていて更に調剤権限も与えられているか否かが調べられ(図5(c)ステップS4)、否定的なときには調剤監査支援装置10が警告を発して異常終了するので、権限を与えられた調剤者5を手配したうえで調剤から遣り直す。
【0057】
調剤者の確認結果が正常であれば、調剤監査支援装置10が監査支援の処理を更に先へ進め、本体部20のパターン認識プログラム27と薬剤計数プログラム25によって、薬品名61の自動読取と薬剤60の自動計数が試行され(図2(c)参照)、その結果が画面表示装置14の画面で表示される(図4(b)参照)。画面表示装置14の画面では、読取結果が撮影対象物70の映像に重畳表示されるとともに、計数結果と処方内容とが対比しやすいよう並べて表示されるので、監査者7は、それを参考にしながら監査台15の上面上の実際の監査対象物を目視で確かめることで、容易かつ的確に、調剤内容表示と計数結果を照合することができる(図5(c)ステップS5)。
【0058】
その照合結果が不一致の場合(図5(c)ステップS6)、自動で読取計数されなかった薬剤60を監査者7が目視で確認してその確認情報Bを本体部20に入力したり、自動で読取計数されなかった薬剤60を監査者7が並べ直してみたり、薬剤の収集に漏れがあれば監査者7が調剤者5に再調剤を依頼して不足分を補ったり、といった不一致解消策を実施する。そして、調剤内容表示と計数結果とが一致すると、調剤監査支援装置10の監査支援処理が正常終了するので、監査者7は確信を持って一回分の監査作業を終えることができる。
【0059】
[その他]
なお、上記実施例では、画面表示に際して視認性向上のために行われる丸印などのマーク付けが、薬品名を読み取れた薬剤60の映像部分だけであったが(図4(b)参照)、全部または一部を読みとれたカラービットコード印刷部に対して行われるようにしても良い(図6(a)参照)。また、読み取れたコードや薬品名を処方データ22と照合した判定結果を画面表示しても良く、例えば、薬剤60が一個不足していれば「NG(−1)」などと表示し(図6(b)参照)、薬剤60が総て揃っていれば「OK」や適宜な記号「O」などを表示するのも良い。
【0060】
さらに、読取と照合の状態を細分化して、例えば、そもそも読取ができないときには、故障や,未登録,端数等のチェックを促す警告表示を行い、読取は出来たのに照合が不一致のときには、薬剤取揃の不足・過剰・間違いのチェックを促す警告表示を行い、読取が出来て照合も総て一致したときに初めて合格判定を表示するようにしても良い。警告表示だけでも良いが、警告表示に補足表示を付け加えても良く、例えば補足表示の例としては「不一致有」,「不足有」,「数量過剰」,「数量不足」などの表示が挙げられる。さらに、数量不一致の場合に並べ直しや再取揃えを行える動作モードを任意に選択できるモード変更機能や、やはり数量不一致の場合に束薬品や端数の有無を入力したければ入力することができる拡張機能などを設けても良い。
【0061】
また、明暗照明による強調表示(図4(a)参照)を画面表示にも援用して、読取や照合の結果に応じて区画毎に明度や色を変えるようにしても良く(図6(c)参照)、そのような明度や色による強調表示を採用した代わりにマーク付けを省いても良く(図6(d)参照)、読み取れた区画を中間レベルにするのを薬品名の読取にまで拡張適用しても良く(図6(e),(f)参照)、コードに加え、薬品名についても、一部又は全く読み取れていない区画のみを強調し、読取や照合が行えた区画は隠すようにしても良く(図6(g)参照)、さらには薬品名の読取にまで三段階レベルで明暗化する強調表示を監査台15の上面の照明による強調表示に適用するようにしても良い(図6(h)参照)。
【0062】
また、上記実施例では、作業担当権限の有無チェックを調剤者5についてだけ行い監査者7については行っていないが、監査者7についても作業担当権限の有無チェックを行うようにしても良い。その場合、調剤者印刷物50と同様の監査者印刷物を用いる類似手法で具体化しても良く、個人認証を導入しても良い(特許文献8参照)。
また、上記実施例では、調剤監査支援装置10にプリンタ16や調剤者印刷プログラム36さらには調剤者登録プログラム32まで含まれていたが、これらは、調剤監査支援装置10から分離されて別装置になっていても良く、その場合、その別装置から通信等にて調剤者データ34を調剤監査支援装置10が取得できるようにすると良い。
【0063】
さらに、上記実施例では、調剤監査支援装置10にプリンタ11や調剤内容印刷プログラム23まで含まれていたが、これらは、調剤監査支援装置10から分離されて別装置になっていても良く、その場合、調剤監査支援装置10は、調剤内容印刷物40に印刷される調剤内容やその識別情報を、上記の別装置から通信等にて貰うようにしても良く、処方データ22から上記の別装置と同様の情報処理を行って別途求めるようにしても良い。
また、上記実施例では、薬剤60の自動計数を行うパターン認識プログラム27と薬剤計数プログラム25まで調剤監査支援装置10に含まれていたが、これらは省略可能であり、薬剤60の確認を目視とプログラム24利用の手入力とで行うようにしても良い。
【0064】
また、上記実施例では、ログデータ35へのデータ追加を調剤者特定プログラム33による調剤者5の特定時に行うようになっていたが、ロギングのタイミングがそれに限定される訳でなく、例えば、調剤内容の識別情報41を取得したときや、カラービットコードを読み取れたとき、カラービットコードの読取を試行したとき、薬剤60をパターン認識したとき、確認入力プログラム24が確認情報Bを入力したとき、提示プログラム31が照明装置13の照明や画面表示装置14の表示を変更したときなど、適宜な時期にログデータ35へ追記するようにしても良い。データの種類も限定が無く、静止画像でも動画でも良く、圧縮しても良く、識別情報等を検索キーにして検索できるようにしても良い。
【0065】
また、上記実施例では、カラービットコードや薬品名の読取を自動的に開始・終了する他、手動で開始・終了することにも言及したが、手動でのプログラム起動の具体例としては、監査者7によるボタン操作やマウス操作が挙げられる。
また、上記実施例では、一人の調剤者が取り揃えた薬剤だけを監査対象物とする場合を説明したが、複数の監査結果を患者単位で纏めるようプログラムを拡張しても良い。あるいは、調剤内容印刷物40や調剤者印刷物50が複数枚でもそれぞれの識別情報41,51を読み取るようプログラムを拡張すれば、一人の患者に処方された薬剤を複数人の調剤者が分担して取り揃え、それらの薬剤を纏めて一回の監査対象物とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の調剤監査支援装置は、処方箋やその一部の調剤指示箋などでの調剤作業を終えた中間段階の調剤監査(狭義の調剤監査)にも、患者や施用者などへ引き渡す前の最終段階の調剤監査(最終監査,総合監査)にも、適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
5…調剤者、6…調剤機器、7…監査者、
10…調剤監査支援装置、
11…プリンタ、12…撮像装置、13…照明装置、
14…画面表示装置、15…監査台、16…プリンタ、
20…本体部、
21…処方箋入力プログラム、22…処方データ、
23…調剤内容印刷プログラム、24…確認入力プログラム、
25…薬剤計数プログラム、26…識別情報検索プログラム、
27…パターン認識プログラム、28…コード読取プログラム、
31…提示プログラム(表示手段)、32…調剤者登録プログラム、
33…調剤者特定プログラム、34…調剤者データ、
35…ログデータ、36…調剤者印刷プログラム、
40…調剤内容印刷物、41…調剤内容の識別情報、
50…調剤者印刷物、51…調剤者の識別情報、
60…薬剤、61…薬品名、70…撮影対象物、71…トレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調剤されて監査対象となった薬剤とその調剤内容の識別情報をカラービットコードで印刷した調剤内容印刷物とその調剤を行った調剤者の識別情報をカラービットコードで印刷した調剤者印刷物とを並べて上面に載置しうる監査台と、前記監査台の前記上面を撮る撮像装置と、前記撮像装置で撮った画像からカラービットコードを読み取る読取手段と、登録された調剤者の識別情報を複数保持しうるとともに処方された調剤内容とその識別情報とを複数保持しうる記憶手段と、前記読取手段にて読み取れたカラービットコードが前記記憶手段の保持する識別情報の何れかに合致するか否かを調べる検索手段と、前記検索手段にて合致した識別情報として得られた調剤内容の識別情報に対応する調剤内容を提示する提示手段と、前記検索手段にて合致した識別情報として得られた調剤者の識別情報を用いて調剤者を特定する特定手段とを備えている調剤監査支援装置。
【請求項2】
前記読取手段が、完全に読み取れたカラービットコードに加えて一部しか読み取れなかったカラービットコードについても読取結果と読取試行位置情報とを出すものであり、前記提示手段を兼ねる表示手段または前記提示手段とは別に設けられた表示手段が、一部しか読み取れなかったカラービットコードの読取試行位置を強調表示するようになっている、ことを特徴とする請求項1記載の調剤監査支援装置。
【請求項3】
前記検索手段が、完全に読み取れたカラービットコードの完全合致に加えて一部しか読み取れなかったカラービットコードの部分合致についても調べるものであり、前記表示手段が、部分合致したカラービットコードの読取試行位置を強調表示するようになっている、ことを特徴とする請求項2記載の調剤監査支援装置。
【請求項4】
画面表示装置が、監査者の目視可能な所に設けられており、前記表示手段が、カラービットコードの読取試行位置の強調表示を前記画面表示装置の画面上で行うようになっている、ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載された調剤監査支援装置。
【請求項5】
前記監査台の前記上面を照らす照明装置が、照明部位毎に照明度合を変えられるものであり、前記表示手段が、前記照明装置を制御することによりカラービットコードの読取試行位置の強調表示を前記監査台の前記上面で行うようになっている、ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載された調剤監査支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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