説明

調整力測定装置

【課題】 一人で平衡性、柔軟性、敏捷性及び巧緻性の4種の運動能力を1台で測定することのできる調整力測定装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る調整力測定装置は、a)ベース11、b)ベース11に対して傾動可能に支持された操作板12、c)操作板12の傾きを検出する傾斜センサ、d)被験者が左右の手でそれぞれ操作する操作ボタン、e)被験者が視認できる位置に設けられた表示器20、21、f)表示器20、21に左又は右を表す表示を適宜行うとともに、それに応じて被験者が操作するスイッチの出力及び/又は操作板12の傾斜出力をその表示と関連づけて検出する巧緻性測定手段、を備える。傾斜センサにより、平衡性、柔軟性及び敏捷性を測定することができる。所定時間内の傾動回数を計数する傾動計数手段を設けることにより、敏捷性測定を自動化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の平衡性、柔軟性、敏捷性及び巧緻性を測定することができる調整力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間が行う運動をスムーズにまとめる能力を調整力と言い、その要素として平衡性、柔軟性、敏捷性、巧緻性の4つの個別能力があることが知られている。近年、高齢者の転倒を予防するためには、これらの運動能力を維持し、また向上することが重要であることがわかってきた。また、これらの運動能力を維持、向上させるための方法は個々に異なるため、高齢者・若年者に関わらず、適切なトレーニングの方法を開発し、その効果を検証するためには、これら各運動能力を個別に測定する必要がある。現在、これらの運動能力を測定するためには、各々専用の測定機が用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開2003-199728号公報(平衡性)
【特許文献2】特表2004-532699号公報(敏捷性)
【特許文献3】特表2005-503229号公報(巧緻性)
【非特許文献1】インターネット<http://www.suncrea.com/measurement/flex/>(柔軟性)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、従来は、平衡性等の個別の運動能力はそれぞれ専用の測定器で測定しなければならず、調整力を総合的に測定しようとすると、これらの装置を全て揃えなければならなかった。また、各測定を行うためには測定装置を操作する人が必要であり、被験者一人で測定を行うことは困難であった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、一人で平衡性、柔軟性、敏捷性及び巧緻性の4種の個別能力を1台で測定することのできる調整力測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明に係る調整力測定装置は、
a) ベースと、
b) 該ベースに対して傾動可能に支持された操作板と、
c) 該操作板の傾きを検出する傾斜検出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
この傾斜検出手段により、後述のように、上記4種の個別能力のうち平衡性、柔軟性及び敏捷性を測定することができる。
【0008】
ここで、操作板はベースに対して一方向のみ傾動可能であってもよいし、x-yの2方向、或いは全方向に傾動可能であってもよい。一方向のみ傾動可能である場合は傾斜検出手段はその方向の傾斜のみを検出すればよいし、2方向以上に傾動可能である場合は傾斜検出手段は少なくとも独立の2方向の傾斜を検出することが必要となる。なお、更に操作板を回転可能とし、それに対応する回転センサを設けるようにしてもよい。
【0009】
傾斜検出手段は、操作板が所定角度以上傾斜したか否かを検出するON/OFFタイプのものであってもよいし、その傾斜角度を検出するアナログタイプのものであってもよい。
【0010】
ON/OFFタイプのものは単なるマイクロスイッチで構成することができ、装置を低コストで製造することができる。一方、アナログタイプのものも、所定角度を閾値としてそれ以上傾斜したか否かを検出することにより、ON/OFFタイプとして使用することができる。
【0011】
本発明に係る調整力測定装置は、所定時間内の傾動回数を計数する傾動計数手段を備えることが望ましい。
【0012】
敏捷性は、後述のように、操作板の傾動回数を計数することにより測定するが、その計数を被験者自身が行う代わりにこの傾動計数手段を用いることで、正確な測定が可能となる。
【0013】
本発明に係る調整力測定装置には更に、操作板の傾動反力を調整することのできる傾動調整手段を設けることが望ましい。
これにより、敏捷性に加えて運動能力の強さを測定することができるようになる。
【0014】
本発明に係る調整力測定装置には更に、
d) 被験者が視認できる位置に設けられた表示器と、
e) 該表示器に操作に関する表示を適宜行うとともに、それに応じて出力される傾斜検出手段からの出力を該表示と関連づけて検出する巧緻性測定手段と、
を設けることが望ましい。
これにより、巧緻性を測定することができるようになる。
【0015】
更に、
g) 被験者が左右の手の指でそれぞれ操作するための操作ボタン
を設け、巧緻性測定手段はこの操作ボタンの出力をも該表示と関連づけて検出するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る調整力測定装置によれば、被験者が一人で平衡性、柔軟性、敏捷性、巧緻性等の特性を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る調整力測定装置の一実施例の構成を図1〜図5により説明する。なお、本実施例に係る調整力測定装置は、本件出願人による特願2004-362751に記載の複合運動機器を基本として構成されているものであり、詳細については同特許出願の出願書類を参照されたい。
【0018】
図1(a)は実施例の調整力測定装置10の外観斜視図であり、手前側には本発明に係るベース11及び操作板12が設けられ、その前方(図1(a)では左上)にはスタンド13が立設されている。スタンド13の上部には左右にハンドル14が設けられ、各ハンドル14の先には操作ボタン15(左手用15L、右手用15R)が設けられている。スタンド13の上部はコンソール16となっている。
【0019】
図2(a)は操作板12を取り去った状態のベース11の平面図である。ベース11の中心には球体111が設けられており、操作板12は、その中心で球体111に支持されることにより任意の方向に傾動可能となっている。なお、前述のとおり、本発明に係る調整力測定装置としては1方向にのみ傾動可能であってもよいのであり、その場合、傾動中心にはカマボコ型の支持台が設けられることとなる。
【0020】
ベース11の中心の近くには、傾斜検出手段である傾斜センサ112x、112yがx軸及びy軸方向に各々設けられている。図3に示すように、傾斜センサ112x、112yは、固定した位置でベース11と操作板12の間の距離を測定することにより、操作板12の傾斜角を測定している。なお、特願2004-362751に記載の複合運動機器のように、x軸方向及びy軸方向のプラス方向及びマイナス方向にそれぞれ1台、計4台の傾斜センサを設けるようにしてもよい。
【0021】
図3に示した傾斜センサ112x、112yは傾斜角を連続的に測定することができるアナログタイプのものであるが、マイクロスイッチを用いて単に(所定角度以上)傾斜したか否かだけを検出するON/OFFタイプのものを使用しても、後述のように各運動能力の測定は可能である。
【0022】
ベース11の中心から、両傾斜センサ112x、112yと干渉しない4方向に、90度ずつの間隔で、それぞれクッション113が設けられている。4個のクッション113は、径方向に設けられたガイド溝により移動可能となっており、ベースの横に設けられたレバー114を操作することにより、中心からの距離が同一となるように連動して移動する。クッション113はウレタン、硬質ゴム等の弾性材質から成り、図4に示すように、ベース11と操作板12の間にあって、傾斜した操作板12を緩やかに受け止める作用を持つ。この作用の強さはクッション113の位置によって異なり、クッション113が中心に近い位置にセットされたとき(図4(b))は、操作板12を傾斜したときの反力が比較的小さいのに対し、クッション113が中心から遠い位置にセットされたとき(図4(c))は、操作板12を傾斜したときの反力が大きい。すなわち、レバー114により、反力の強さを調節することができる。なお、図2に示すように、ベース11の端(周囲)にはストッパ115が設けられ、操作板12の過度の傾斜を防止している。
【0023】
図1(a)に戻り、説明する。本調整力測定装置10の前方には表示スクリーン20が設けられる。この表示スクリーン20には、後述の巧緻性測定の際の指示や調整力測定結果等が表示される。なお、このように装置本体とは別に表示スクリーンを設ける構成の他、図1(d)に示すように、装置本体に表示器21を固定するようにしてもよい。以下、表示スクリーン20と表示器21を合わせて表示器20、21と呼ぶ。
【0024】
スタンド13の下部にはコンピュータを中心に構成される制御装置22が内蔵され、図5に示すように、2個の傾斜センサ112x、112y及び2個の操作ボタン15L、15Rの出力はこの制御装置22に送られ、制御装置22からは表示データが表示器20、21に送られる。また、制御装置22にはタイマー23が内蔵されている。
【0025】
以上のような構成を有する本実施例の調整力測定装置により、調整力を測定する方法を次に説明する。
【0026】
まず、平衡性は次のようにして測定する。図6(a)に示すように、被験者は本調整力測定装置10のベース11の側に立ち、操作板12に片足を載せて準備する。測定の準備が整った時点で、図6(b)に示すように、操作板12に載せた足を上げ、反対側の脚だけで立つ。この時、操作板12はクッション113の作用によりほぼ水平状態に戻り、傾斜センサ112x又は112yからの出力により制御装置22は平衡性測定が開始したことを検出する。被験者が片脚で立っていられなくなり、上げた足を操作板12に降ろした時点で、傾斜センサ112x又は112yからの出力により制御装置22は平衡性測定が終了したことを検出し、片脚立ちの時間を算出する。この片脚立ち時間が被験者の平衡性を表す指標となる。
【0027】
柔軟性は次のようにして測定する。図7(a)に示すように、被験者はベース11の側に立ち、膝を曲げずに上半身を曲げ、両手で操作板12の端を下に押す。制御装置22は、傾斜センサからの出力に基づき、操作板12の端の移動量dを算出する。この移動量d、すなわち押し込み深さが被験者の柔軟性を表す指標となる。なお、柔軟性の高い被験者(いわゆる、柔らかい人)の場合、操作板12の端がストッパ115に当接してそれ以上の移動量dの測定ができない。そのような場合には、図7(b)に示すように、被験者は所定の高さの台30の上に乗り、測定量にその台30の高さを加えるようにするとよい。
【0028】
なお、傾斜センサ112x、112yがON/OFFタイプのものである場合、押し込み深さを連続量として測定することはできないが、所定の目標値を決め、押し込み深さがその目標値となるような高さの台の上から操作板12の端を押し込むことにより、柔軟性が目標値を達成しているか否かという判定を行うことができる。
【0029】
敏捷性は次のようにして測定する。図8に示すように、被験者は左右の足を操作板12の両側の端に置くようにして立ち、コンソール16の所定のボタンを押して測定をスタートする。測定の間、被験者はできるだけ速く左右の足を交互に上下する。内蔵タイマー23の計時により所定の測定時間の経過が検出されると、制御装置22は終了音を発すると共に表示器20、21上に測定終了の表示を行う。この測定時間の間に操作板12が上下した回数が敏捷性の指標となる。なお、このような制御装置22の動作は上記本発明の傾動計数手段に相当するものであるが、このような傾動計数を自動的に行う機能が無くとも、被験者が自ら計数を行うことにより敏捷性の測定は可能である。
【0030】
前記の通り、レバー114でクッション113の位置を変えることにより、操作板12を傾斜させるに要する力(傾斜力)を変化させることができる。そこで、敏捷性の高い被験者は、クッション113をベース11の周辺側に移動させて傾斜力を強くし、敏捷性の低い被験者はクッション113をベース11の中心側に移動させて傾斜力を弱くして測定することにより、脚力の強さを加味した敏捷性を測定することができるようになる。
【0031】
最後に、巧緻性は次のようにして測定する。巧緻性は、指の動きに関する巧緻性と脚(足)の動きに関する巧緻性の2種がある。本実施例の装置ではその双方を測定することができる。
【0032】
まず、制御装置22は表示器20、21に図9(a)に示すように、左と右にそれぞれ箱を表示する。そして、測定開始とともにランダムに左又は右の箱に指示表示を行う。図9(a)の例では、指示すべき方の箱に点灯表示を行っている。被験者はその表示器20、21上の指示表示を見て、図9(b)に示すように、表示された方のハンドル14の操作ボタン15L又は15Rを素早く押すとともに、操作板12をそちらの方に傾斜させる。押された操作ボタン15及び操作板12の傾斜方向の双方が正しい側のものであるときは+1点とし、少なくともいずれか一方が誤っているときは0点とする。そして、制御装置22は、操作ボタンが押され、操作板12の傾斜があった時点で直ちに次の指示表示を行う。こうして所定時間で測定を終え、その被験者の獲得した点数を巧緻性の指標とする。
【0033】
なお、図9(c)に示すように、手(指)と足の指示方向を別異としてもよい。この場合、足に対する指示は、単に左右の2方向だけではなく、前後左右の4方向、或いは斜め前後等を含めた8方向としてもよい。更に、各方向への傾斜角を指示し、そのような角度まで操作板12を傾斜させるようにという細かい指示を出すようにしてもよい。これらにより、高度な巧緻性の指標を得ることができる。
【0034】
なお、被検者の希望或いは身体状況によっては、手(指)(操作ボタン15L、15R)だけ、又は足(操作板12の傾斜)だけの巧緻性を測定するようにしてもよい。
【0035】
以上のようにして求められた平衡性、柔軟性、敏捷性及び巧緻性の全ての測定が終了した後、制御装置22はその被験者のこれら4種の特性の指標値を、例えば図10に示すように、表示器20、21上に表示する。これにより被験者は現時点での自らの運動能力を知ると共に、過去の指標と比較してトレーニングの効果を確認したり、今後のトレーニングの目標設定に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る調整力測定装置の一実施例の外観斜視図(a)、平面図(b)、側面図(c)、及び、コンソールに表示器を設けたタイプの外観斜視図(d)。
【図2】操作板を取り去った状態のベースの平面図(a)、及び側面図(b)。
【図3】実施例の調整力測定装置の傾斜センサの作用を示す側面図(a)、及び傾斜角−出力図(b)。
【図4】実施例の調整力測定装置のクッションの作用を示す側面図。
【図5】実施例の調整力測定装置のシステム構成を示すブロック図。
【図6】実施例の調整力測定装置を平衡性測定に用いる場合の使用説明図。
【図7】実施例の調整力測定装置を柔軟性測定に用いる場合の使用説明図。
【図8】実施例の調整力測定装置を敏捷性測定に用いる場合の使用説明図。
【図9】巧緻性測定時における画面表示(a)と操作ボタンの操作状況を示す説明図(b)。
【図10】調整力測定後の画面表示の一例を示す図。
【符号の説明】
【0037】
10…調整力測定装置
11…ベース
111…球体
112x、112y…傾斜センサ
113…クッション
114…レバー
115…ストッパ
12…操作板
13…スタンド
14…ハンドル
15…操作ボタン
15L…左手用
15R…右手用
16…コンソール
20…表示スクリーン
21…表示器
22…制御装置
23…タイマー
30…台


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) ベースと、
b) 該ベースに対して傾動可能に支持された操作板と、
c) 該操作板の傾きを検出する傾斜検出手段と、
を備えることを特徴とする調整力測定装置。
【請求項2】
前記操作板がその傾動中心に関して2次元面内の任意の方向に傾動可能であり、前記傾斜検出手段が少なくとも独立の2方向の傾斜を検出するものである請求項1に記載の調整力測定装置。
【請求項3】
前記傾斜検出手段が、該操作板が所定角度以上傾斜したか否かを検出するものである請求項1又は2に記載の調整力測定装置。
【請求項4】
前記傾斜検出手段が、該操作板の傾斜角度を検出するものである請求項1又は2に記載の調整力測定装置。
【請求項5】
所定時間内の傾動回数を計数する傾動計数手段を備える請求項1〜4のいずれかに記載の調整力測定装置。
【請求項6】
操作板の傾動反力を調整することのできる傾動調整手段を有する請求項1〜5のいずれかに記載の調整力測定装置。
【請求項7】
前記傾動調整手段が、操作板の傾動中心からの距離が可変である、ベースと操作板との間に介挿された弾性材料から成る請求項6に記載の調整力測定装置。
【請求項8】
d) 被験者が視認できる位置に設けられた表示器と、
f) 該表示器に操作に関する表示を適宜行うとともに、それに応じて出力される傾斜検出手段からの出力を該表示と関連づけて検出する巧緻性測定手段と、
を備える請求項1〜7のいずれかに記載の調整力測定装置。
【請求項9】
更に、
g) 被験者が左右の手の指でそれぞれ操作するための操作ボタン
を備え、巧緻性測定手段が、該操作ボタンの出力をも該表示と関連づけて検出する請求項8に記載の調整力測定装置。


【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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