説明

調湿シート

【課題】周囲環境の湿度が高い場合には湿気を速やかに吸収し、逆に周囲環境の湿度が低い場合には吸収した湿気を速やかに放出することができる吸放湿性能の可逆性と応答性に優れた調湿シートを提供する。
【解決手段】水蒸気を可逆的に吸放湿する調湿粒子3が、熱可塑性樹脂粉体4により互いに接着されてシート状に成形されてなる調湿層7を備える調湿シート10。調湿層7の空隙は5%以上である。調湿粒子3,3間に形成される空隙8の割合が大きいために、調湿粒子3,3間の空隙8を吸放湿のための保水スペースとして利用し、調湿粒子本来の吸放湿能力のみならず、調湿粒子間の空隙による吸放湿能力をも援用して、高い可逆的吸放湿性能と、優れた吸放湿応答性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建築物・倉庫の内壁や天井、冷蔵(冷凍)庫・冷蔵(冷凍)車などの内壁、電灯・精密電子機器など電気電子部品が装着される筐体の内壁において、水蒸気を可逆的に素早く吸放湿することにより、内部の湿度を調整して、結露を防止するなどの用途に有効な調湿シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の洋風化により建築物の室内の気密性が向上してきたが、その一方で通気性が失われることで、壁面の結露等の問題が発生してきている。特に、室内暖房器具の使用による水蒸気の発生で、冬場における結露の問題は大きい。このような現象は、一般住宅の居室内に限らず、営業用建築物、倉庫などにおいても問題となっている。具体的には、結露による外観上の問題、天井からの結露水の落下による床の汚れ、倉庫においては保管品の汚れ、水による劣化などの問題が生じる。
【0003】
また、冷蔵庫(ないしは冷凍庫)、冷蔵車(ないしは冷凍車)においては、冷却用の冷気の循環や扉の開閉による暖気の流入などのために、庫内の湿度が変化してやはり結露が生じ、冷蔵庫の例えば野菜室では、野菜室に水が溜まって野菜の鮮度を損なう原因となる。また、冷蔵車においては、搬送中の製品(商品)に天板内壁に生じた結露が落下して、外観や品質を悪化させる原因となる。
【0004】
湿度変化による結露の問題は、例えば、電灯や精密電子機器が内部に装着された筐体においても起こり、結露によるレンズの曇り、電気回路のショートといった問題を引き起こす。
【0005】
このような密閉空間における結露を防止する場合、単に乾燥材などにより湿気を吸湿すれば良いというものではなく、例えば冷蔵庫の野菜室などでは、野菜の貯蔵に適した適度な湿度条件に維持した上で結露を防止する必要がある。居室空間においても同様に適度な湿度に維持することは重要である。
【0006】
また、単に吸湿のみを行う吸湿材では、吸湿性能が飽和した後は、もはやそれ以上使用することはできないが、周囲環境の湿度が高い場合には湿気を吸収し、逆に周囲環境の湿度が低い場合には吸収した湿気を放出するような吸放湿性を有する材料であれば、吸放湿を繰り返して、長期に亘って継続的に使用することができる。
【0007】
このようなことから、周囲環境の湿度が高い場合には湿気を吸収して結露を防止し、逆に、周囲環境の湿度が低い場合には吸収した湿気を放出することにより、湿度を高めると共に放湿により吸湿性を回復する調湿材が提供され、これらは主にシート状に成形された調湿シートとして実用に供されている。
【0008】
しかし、ポリアクリル酸ナトリウムなどの吸水性ポリマーなどの吸湿材を使用した従来の調湿シートは、吸湿性には優れるものの、放湿性には劣り、通常の使用条件下では、殆ど放湿しないか、放湿したとしても放湿速度が遅く、元の吸湿性を回復するまでに長時間を要するという欠点がある。
【0009】
このような放湿性の低い調湿シートを使用し続けた場合、やがてシート内の吸湿水が飽和に達し、調湿シートとしては、もはや機能しなくなり、前述の結露による問題を防止し得ない。
【0010】
また、放湿機能が不十分な調湿シートでは、経時的に保有している水に起因するカビの発生や細菌の増殖などといった衛生面での問題も発生する。
【0011】
従って、調湿シートには、水蒸気を可逆的に素早く吸放湿する機能が望まれる。
【0012】
従来、このような調湿シートとして、例えば、特開2000−43179号公報に、平均細孔径が制御されたテンプレート型メソポーラスシリカとバインダーの混合物を基材シートにコーティングして調湿層を形成したものが提案されている。しかし、この調湿シートでは、コーティングにより調湿層を作成しているため、厚膜化には限界があり、調湿材であるメソポーラスシリカ本来の優れた調湿機能を有効に利用しているとは言いがたい。
【0013】
また、特開2001−334596号公報には、2枚のシート間にシリカゲル粒子をホットメルトパウダーで接着して調湿層を形成したものが提案されているが、この調湿シートもまた、調湿性において十分であるとは言えない。
【特許文献1】特開2000−43179号公報
【特許文献2】特開2001−334596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、周囲環境の湿度が高い場合には湿気を速やかに吸収し、逆に周囲環境の湿度が低い場合には吸収した湿気を速やかに放出することができる吸放湿性能の可逆性と応答性に優れた調湿シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、水蒸気を可逆的に吸放湿する調湿粒子を、熱可塑性樹脂粉体で互いに接着してシート状に成形して調湿層を形成した場合、調湿粒子間に形成される空隙が吸放湿性能及びその応答性に影響する重要な因子となり、また、湿度が過度に上昇し、結露が生じる条件になっても、この空隙も重要な保水スペースとなり得ることから、調湿粒子間の空隙の割合がある程度大きいことが必要であること、また、この空隙に表出する接着剤(バインダー)としての熱可塑性樹脂粉体の親水性が悪いと、この空隙を調湿のために有効利用し得ないことから、熱可塑性樹脂粉体は吸水性の高い親水性樹脂の粉体であることが好ましいこと、更には、調湿粒子の表出面積を大きくして調湿粒子本来の調湿機能を有効に発揮させるためには、接着剤としての熱可塑性樹脂粉体に調湿粒子表面が過度に覆われず、また調湿粒子の細孔が塞がれることがないように、熱可塑性樹脂のMFRが小さく、熱融着時の樹脂の流動が少ないことが必要とされることを見出した。
【0016】
本発明は、このような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0017】
[1] 水蒸気を可逆的に吸放湿する調湿粒子が、熱可塑性樹脂粉体により互いに接着されてシート状に成形されてなる調湿層を備える調湿シートであって、該調湿層の空隙率が5%以上であることを特徴とする調湿シート。
【0018】
[2] [1]において、前記調湿層を構成する熱可塑性樹脂粉体と調湿粒子との重量比が1/4〜4/1であることを特徴とする調湿シート。
【0019】
[3] [1]又は[2]において、前記熱可塑性樹脂粉体の平均粒径と調湿粒子の平均粒径との比が1/8〜15/1であることを特徴とする調湿シート。
【0020】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記調湿粒子の平均粒径が5〜1000μmであることを特徴とする調湿シート。
【0021】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、前記調湿粒子がケイ素化合物が含有されていることを特徴とする調湿シート。
【0022】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、前記調湿層に抗菌剤及び/又は防カビ剤が含有されていることを特徴とする調湿シート。
【0023】
[7] [1]ないし[6]のいずれかにおいて、前記熱可塑性樹脂の吸水率が0.2%以上で、MFRが55g/10min以下であることを特徴とする調湿シート。
【0024】
[8] [1]ないし[7]のいずれかにおいて、前記調湿層の少なくとも一方の面に通気性材料よりなる基材シートが積層されて一体化された積層調湿シートであることを特徴とする調湿シート。
【0025】
[9] [1]ないし[8]のいずれかにおいて、前記調湿層の少なくとも一方の面に基材シートが積層されて一体化されており、該基材シートの調湿層と反対側の面に粘着剤層が設けられており、該粘着剤層に剥離シートが積層された積層調湿シートであることを特徴とする調湿シート。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、吸放湿性能の可逆性と応答性に優れた調湿シートが提供される。
即ち、本発明の調湿シートは、調湿粒子を、熱可塑性樹脂粉体で互いに接着してシート状に成形してなる調湿層において、調湿粒子間に形成される空隙の割合が大きいために、調湿シート内部での水蒸気の拡散が容易となり、調湿粒子本来の吸放湿能力が十分に発揮されることによって、高い可逆的吸放湿性能と、優れた吸放湿応答性を得ることができる。
【0027】
本発明において、調湿層を構成する熱可塑性樹脂粉体と調湿粒子との重量比は、1/4〜4/1であることが好ましい。
【0028】
また、熱可塑性樹脂粉体の平均粒径と調湿粒子の平均粒径との比は1/8〜15/1であることが好ましく、調湿粒子の平均粒径は5〜1000μmであることが好ましい。この調湿粒子としては、少なくとも1種のケイ素化合物が好ましく、特に、シリカが、その優れた調湿機能の面から好ましい。
【0029】
また、本発明に係る調湿層は、抗菌剤及び/又は防カビ剤が含有されていることが、吸湿時の水分によるカビの発生、細菌の増殖を防止する点において好ましい。
【0030】
また、熱可塑性樹脂粉体の熱可塑性樹脂は、吸水率が0.2%以上で、MFRが55g/10min以下であるものが好ましい。この場合には、調湿粒子間に形成される空隙に吸水率の高い親水性の熱可塑性樹脂粉体が表出し、また、この熱可塑性樹脂粉体のMFRが小さく、熱融着時の樹脂の流動が少ないために、調湿粒子表面や細孔が熱可塑性樹脂粉体によって過度に覆われたり塞がれたりすることなく、空隙に臨む調湿粒子の細孔面を大きく確保することができる。このため、調湿粒子の細孔のうち、吸放湿に利用する有効利用率を高くすると共に、調湿粒子間の空隙を吸放湿のための保水スペースとしてより一層有効に利用して、高い可逆的吸放湿性能と、優れた吸放湿応答性を得ることができる。
【0031】
また、本発明において、調湿粒子を熱可塑性樹脂粉体で互いに接着してシート状に成形してなる調湿層は、それのみで十分に調湿シートとして使用可能であるが、調湿層の少なくとも一方の面に通気性材料よりなる基材シートを積層して一体化して用いても良い。また、調湿層の少なくとも一方の面に基材シートを積層一体化し、この基材シートの調湿層と反対側の面に粘着剤層を設け、更に、この粘着剤層に剥離シートを積層したものとしても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に本発明の調湿シートの実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
なお、本発明において、熱可塑性樹脂の吸水率及びMFR、並びに調湿層の空隙率は、以下のようにして測定されたものである。
【0034】
<熱可塑性樹脂の吸水率>
ポリエステル製剥離フィルム又はアルミ箔上に熱可塑性樹脂粉体を均一に散布した後、この上にポリエステル製剥離フィルム又はアルミ箔を重ね合わせて熱可塑性樹脂粉体を挟持させ、次いでこの積層体をホットプレスにより、熱可塑性樹脂粉体の融点よりも10℃高い温度にて0.5MPaで2分間処理し、その後、剥離フィルム又はアルミ箔を剥がし取り、吸水率測定用フィルム(厚さ約1mm)を作成する。このフィルムを25℃の水に3時間浸漬した後引き上げ、吸水性の良い紙にはさみ込んで表面の水滴を取り去った後、重量を測定し、重量増加分から吸水率(=重量増加分/吸水前の重量 ×100)を算出する。
【0035】
<熱可塑性樹脂のMFR>
JISK6760に従って、190℃、2.16kg荷重で測定する。
【0036】
<調湿層の空隙率>
調湿層の空隙率とは、調湿層の両面に表面平滑なシートを積層したときに、そのシート間に形成される体積のうち、空隙(ただし、調湿粒子の細孔容積は含まない)が占める割合(百分率)をさし、調湿層を構成する材料の比重及び使用重量から求めた調湿層に占める構成材料の体積と、調湿層の見掛け体積(上述のシート間に形成される体積)から計算によって求められる。
具体的には、12cm×12cm(面積)の調湿層について、次のような方法で算出される。
調湿層体積[cm] 12×12×(調湿層厚さ)
調湿粒子体積[cm] (調湿層重量)×(調湿層構成粉体中の調湿粒子 重量割合)/(調湿粒子真比重)
調湿粒子細孔容積[cm] (調湿層重量)×(調湿層構成粉体中の調湿粒子 重量割合)×(調湿粒子の細孔容積[cm/g ])
熱可塑性樹脂粉体体積[cm] (調湿層重量)×(調湿層構成粉体中の熱可塑性 樹脂粉体重量割合)/(熱可塑性樹脂粉体密度)
空隙容積[cm] (調湿層体積[cm]−調湿粒子体積[cm] −調湿粒子細孔容積[cm]−熱可塑性樹脂粉 体体積[cm])
調湿層空隙率[%] (空隙容積[cm])/(調湿層体積[cm ])×100
【0037】
図1,2は、本発明の調湿シートの実施の形態を示す模式的な断面図である。
図1の調湿シート10は、2枚の基材シート1,2の間に、調湿粒子3を熱可塑性樹脂粉体4で互いに接着してシート状に成形した調湿層7を形成した積層調湿シートであり、図2の調湿シート10Aは、この図1に示す調湿シート10において、更に一方の基材シート2の調湿層7と反対側の面に粘着剤層5を形成し、この粘着剤層5に剥離シート6を積層した積層調湿シートである。図1,2において、8は調湿粒子3間に形成された空隙を示す。
【0038】
本発明の調湿シートに用いられる調湿粒子3としては特に制限はないが、少なくとも1種のケイ素化合物を含むことが好ましい。この場合、ケイ素化合物の例としては、シリカ、ゼオライト、多孔質ガラス、アパタイト、珪藻土、カオリナイト、セピオライト、アロフェン、イモゴライト、活性白土、シリカ−アルミナ複合酸化物、シリカ−チタニア複合酸化物、シリカ−ジルコニア、シリカ−酸化マグネシウム、シリカ−酸化ランタン、シリカ−酸化バリウム、シリカ−酸化ストロンチウムなどの複合金属酸化物等が挙げられ、中でも、ケイ素化合物としては、シリカ、セピオライト、ゼオライト等が好ましい。
ケイ素化合物以外の調湿粒子の材料の例としては、活性炭、アルミナ、チタニア、ジルコニア等が挙げられ、中でも、アルミナ、チタニア、ジルコニア等が好ましい。
これらの調湿粒子の材料は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0039】
なお、本発明の調湿シートにおいては、調湿粒子として少なくともケイ素化合物を使用することが好ましく、以下に説明する特定の物性を備えたシリカ(これを適宜「本発明のシリカ」という。)を使用することがとりわけ好ましい。
【0040】
本発明の調湿シートに用いる調湿粒子の平均粒径は、通常5μm以上、中でも10μm以上、また、通常1000μm以下、中でも900μm以下であることが好ましい。調湿シートにおいて、調湿粒子の平均粒径が小さ過ぎると、調湿層における調湿粒子の充填率が増加するため、粒子間空隙が減少し、保水量の低下を生じる場合がある。一方、調湿粒子の平均粒径が大き過ぎると、調湿層における調湿粒子の充填率が低下し、粒子間空隙が増加するものの、調湿層表面の空隙開口部の大きさが大きく、保水することが困難となるため、保水量の低下を生じる場合がある。また、熱可塑性樹脂と調湿粒子との接点が少ないため、調湿層から調湿粒子が脱離し易く、耐擦傷性・耐候性の低下が生じ易くなる。
なお、調湿粒子の平均粒径は、例えば、後出の<シリカの特徴>に記載の、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いた手法等により求めることができる。
【0041】
また、本発明の調湿シートに用いる調湿粒子の細孔最頻直径は、通常2nm以上、好ましくは3nm以上で、通常20nm以下、更には18nm以下であることが好ましい。本発明では、調湿粒子の細孔最頻直径をこの様に広範な範囲内において適当に調整することにより、得られる調湿シートの吸湿領域を変化させることができる。
なお、調湿粒子の細孔最頻直径は、例えば、後出の<シリカの特徴>に記載の、窒素ガス吸脱着法で測定した等温脱着曲線からBJH法により算出される細孔分布曲線を用いた手法等により求めることができる。
【0042】
[シリカの特徴]
以下に、本発明の調湿シートに用いる調湿粒子として好適なシリカ(以下「本発明のシリカ」と称す。)の特徴について説明する。
【0043】
(a)非晶質であること:
本発明のシリカは、その三次元構造を見るに、非晶質であること、即ち、結晶性構造が認められないことが好ましい。このことは、本発明のシリカをX線回折で分析した場合に、結晶性ピークが実質的に認められないことを意味する。なお、本明細書において非晶質のシリカとは、X線回折パターンで0.6ナノメートル(nm Units d-spacing)を越えた位置に、結晶構造のピーク(結晶性ピーク)が一つも観察されないものを指す。このようなシリカの例としては有機テンプレートを用いて細孔を形成するミセルテンプレートシリカが挙げられる。非晶質のシリカは、結晶性のシリカに較べて、極めて生産性に優れている。
【0044】
(b)比表面積:
本発明のシリカは、その比表面積の値が、通常200m/g以上、好ましくは250m/g以上、また、通常1000m/g以下、好ましくは900m/g以下の範囲である。本発明のシリカがこの様に大きな比表面積を有していることによって、本発明の調湿シートの調湿層において、シリカの細孔内に吸着される吸着物質(水分)とシリカとの相互作用面積を大きくすることができ、また、シリカの細孔の表面状態を変えることで、物質との相互作用を大きく調整することが可能となる。なお、シリカの比表面積の値は、窒素ガス吸脱着によるBET法で測定される。
【0045】
(c)細孔容積:
本発明のシリカの単位重量当たりの細孔容積(本明細書ではこの「細孔容積/重量」で表される量を、特に断り書きの無い限り単に「細孔容積」という。一方、容積の絶対値としての細孔容積を指す場合には「総細孔容積」といい、両者を区別するものとする。)は、通常0.3ml/g以上、好ましくは0.35ml/g以上である。本発明のシリカがこの様に大きな細孔容積を有していることによって、本発明の調湿シートの調湿層は、高い水蒸気の吸放出性能を発揮することができる。細孔容積の上限は特に制限されないが、通常3.0ml/g以下、更には2.5ml/g以下であることが好ましい。なお、シリカの細孔容積は、吸着等温線の相対圧0.98における窒素ガスの吸着量から求めることができる。
【0046】
(d)細孔最頻直径:
本発明のシリカは、窒素ガス吸脱着法で測定した等温脱着曲線から、E.P.Barrett,L.G.Joyner,P.H.Haklenda,J.Amer.Chem.Soc.,vol.73,373(1951)に記載のBJH法により算出される細孔分布曲線、即ち、細孔直径d(nm)に対して微分窒素ガス吸着量(ΔV/Δ(logd);Vは窒素ガス吸着容積)をプロットした図上で求められる細孔の最頻直径(Dmax)が、通常2nm以上、好ましくは2.3nm以上、また、通常20nm以下、好ましくは18nm以下の範囲である。本発明では、シリカ細孔の最頻直径(Dmax)をこの様に広範な範囲内において適当に調整することにより、本発明の調湿シートの調湿層の水蒸気の吸湿領域を変化させることができる。従って、本発明のシリカは、その細孔分布曲線において、細孔の最頻直径(Dmax)を表す最大ピークがシャープである必要はない。一方、十分な吸湿量を得るためには、上述したように、シリカの細孔容積が前記(c)の範囲内であることが重要である。
【0047】
なお、後述するように、本発明のシリカの製造方法は特に制限されず、公知の任意の方法によって製造することができるが、その製造方法によっては、細孔直径を任意に調整することができる。本発明の調湿シートが発揮する水蒸気吸放出性能の中には、この細孔直径に応じてその性能を発揮するものがあるため、用いるシリカの細孔直径は用途に応じて適宜設定することが望ましい。即ち、シリカの吸放湿性能により、シリカにより調整される湿度は一般に、その細孔直径に応じたものとなる。
【0048】
(e)平均粒径:
本発明のシリカは、その平均粒径が、通常5μm以上、中でも10μm以上、また、通常1000μm以下、中でも900μm以下であることが好ましい。シリカの平均粒径が小さ過ぎると、粒子の充填率が増加するため、粒子間空隙が減少し、保水量の低下を生じる。一方、シリカの平均粒径が大き過ぎると、粒子間空隙が増加するものの、保水することができないため、保水量の低下を生じる。そのため、シリカの平均粒径が小さ過ぎても大き過ぎても適さず、上記範囲内であることが重要である。なお、シリカの平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(例えば、セイシン企業製レーザーマイクロンサイザーLMS−24)等によって粒度分布を測定し、その結果から求めることができる。
【0049】
(f)シラノール量:
本発明のシリカは、そのシラノール量が、通常2個/nm以上、好ましくは2.5個/nm以上、より好ましくは3個/nm以上、また、通常10個/nm以下、好ましくは8.5個/nm以下、より好ましくは7個/nm以下の範囲である。シラノール量が少な過ぎると、疎水性で湿度感受性が悪化し、吸湿性が低下する。一方、シラノール量が多過ぎると、熱可塑性樹脂粉体との密着性が悪化し、耐久性の低下、調湿層の不良を生じるため、上記範囲内であることが好ましい。なお、シリカのシラノール量は、例えば以下に説明する、熱重量測定による重量変化に基づく手法によって算出することができる。
【0050】
<シラノール量の算出方法>
まず、シリカの吸着水を除去するため、160℃に加熱して2時間保持した後、1000℃に昇温して更に1時間保持し、その過程におけるシリカの重量変化を測定する。シラノール由来の水分量は、昇温時の重量変化(即ち、160℃から1000℃での減少重量)から、水熱処理時のアルコール由来のCO重量を除いた値に相当する。具体的には、以下の式(1)を用いて算出することができる。
シラノール由来の水分量(g)=160℃から1000℃での減少重量(g)
−アルコール由来のCO重量(g) …(1)
【0051】
ここで、シラノール分子2個からHO分子1個が形成されるとすると、シリカのシラノール数及びシラノール量は、それぞれ以下の式(2),(3)に基づいて算出することができる。
シラノール数(個)=〔シラノール由来の水分量(g)×アボガドロ定数6.02×
1023(個/mol)×2〕/HO分子量(g/mol)
…(2)
シラノール量(個/nm)=シラノール数(個)/表面積(nm) …(3)
【0052】
(g)その他の特徴:
本発明のシリカは、上述の(a)〜(f)の特徴を満たしていれば、その他は特に制限されないが、更に以下の特徴を満たしていることが好ましい。
【0053】
粒子形状及び粒度分布:
シリカの粒子形状については、特開2003−220657号公報に、球状粒子を用いることで無機多孔体の充填率が増し、吸放湿性能を向上させることができると言う記載がある。しかしながら、本発明のシリカの粒子形状は、球状及び破砕状のどちらでもよい。破砕状の方が、粒子間空隙が多くなるため、より好ましい。一方、微粉凝集体が多いと、細孔の利用効率が低下する、更なる凝集を生じて調湿層の均一性を低下させ、熱可塑性樹脂との密着性が低下することによって、粒子の脱落が生じる場合がある。よって、粒度分布が狭い方がより好ましい。なお、シリカの粒子形状は、SEM(走査型電子顕微鏡)等の手法により確認することができる。また、シリカの粒度分布は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(セイシン企業製レーザーマイクロンサイザーLMS−24)等の手法により測定することができる。
【0054】
耐水熱試験に関する特徴:
本発明のシリカは、水中での加熱処理(耐水熱試験)を施されても、細孔特性の変化が少ないことが好ましい。耐水熱試験後におけるシリカの細孔特性の変化は、例えば比表面積、細孔容積、細孔径分布などの多孔性に関する物性の変化として観察される。例えば、本発明のシリカにおいては、200℃、6時間の耐水熱試験をした際、該試験後の比表面積が該試験前の比表面積に対して20%以上(比表面積残存率が20%以上)であることが好ましい。この様な特性を有する本発明のシリカは、長時間の厳しい使用条件下においても、多孔性の特徴が失われないので好ましい。また、この比表面積の残存率は、中でも35%以上、特に50%以上であることが好ましい。
【0055】
なお、本発明における耐水熱試験とは、密閉系内において、特定温度(200℃)の水とシリカとを一定時間(6時間)接触させることであり、シリカの全てが水中に存在するのであれば、密閉系内が全て水で満たされていても、また、系内の一部が加圧下の気相部を有し、この気相部に水蒸気があってもよい。この場合の気相部の圧力は、例えば60000hPa以上、好ましくは63000hPa以上であればよい。なお、特定温度の誤差は通常±5℃以内、中でも±3℃以内、特に±1℃以内とするのが好ましい。
【0056】
固体Si−NMR測定に関する特徴:
本発明のシリカの構造に関しては、固体Si−NMR(nuclear magnetic resonance:核磁気共鳴)測定による分析において、以下の結果が得られることが好ましい。
【0057】
シリカは非晶質ケイ酸の水和物であり、SiO・nHOの示性式で表されるが、構造的には、Siの四面体の各頂点にOが結合され、これらのOに更にSiが結合して、ネット状に広がった構造を有する。そして、Si−O−Si−O−の繰り返し単位において、Oの一部が他の成員(例えば−H、−CHなど)で置換されているものもあり、一つのSiに注目した場合、下記式(A)に示す様に4個の−OSiを有するSi(Q)や、下記式(B)に示す様に3個の−OSiを有するSi(Q)等が存在する(下記式(A)及び(B)では、上記の四面体構造を無視し、Si−Oのネット構造を平面的に表している)。そして、固体Si−NMR測定において、上記の各Siに基づくピークは、順にQピーク、Qピーク、・・・と呼ばれる。
【0058】
【化1】

【0059】
本発明のシリカにおいては、固体Si−NMR測定における、−OSiが3個結合したSi(Q)と−OSiが4個結合したSi(Q)とのモル比を示すQ/Qの値が、通常1.2以上、中でも1.3以上、更には1.4以上、特に1.5以上であることが好ましい。なお、上限値は特に制限されないが、通常は10以下である。
【0060】
一般に、この値が高い程、シリカの熱安定性が高いことが知られており、ここから本発明のシリカは、熱安定性に極めて優れていることが判る。つまり、本発明のシリカは熱によって構造が壊れる虞が小さいので、本発明の調湿シートは長期間にわたって安定して使用することが可能である。これに対して、結晶性のミセルテンプレートシリカの中には、Q/Qの値が1.2を下回るものがあり、熱安定性、特に水熱安定性などが低い。
【0061】
加えて、本発明のシリカは、骨格を形成するシロキサン結合の結合角に歪みが少ないことが望ましい。ここで、シリカの構造的な歪みは、固体Si−NMR測定におけるQピークのケミカルシフトの値によって表すことができる。
【0062】
上記の、シリカの構造的な歪みと、前記のQピークのケミカルシフトの値との関連の点から、本発明のシリカは、上記のQピークのケミカルシフトをδ(ppm)とした場合に、δが下記式(4)を満足することが望ましい。
−0.0705×(Dmax)−110.36>δ …(4)
即ち、δの値が上記式(4)の左辺で表される値(−0.0705×(Dmax)−110.36)よりも小さく、よりマイナス側に存在することが望ましい。なお、本明細書において「ppm」とは、重量に対する割合を表すものである。
【0063】
従来のシリカでは、上記のQピークのケミカルシフトの値δは、上記式(4)の左辺に基づいて計算した値よりも、一般に大きくなる(よりプラス側に存在する)。よって、本発明のシリカは、従来のシリカに比べて、Qピークのケミカルシフトがより小さな値を有することになる。これは、本発明のシリカにおいて、Qピークのケミカルシフトがより高磁場に存在するということに他ならず、ひいては、Siに対して2個の−OSiで表される結合角がより均質であり、構造的な歪みがより少ないことを意味している。
【0064】
本発明のシリカにおいて、Qピークのケミカルシフトδは、上記式(4)の左辺(−0.0705×(Dmax)−110.36)に基づき算出される値よりも、好ましくは0.05%以上小さい値であり、更に好ましくは0.1%以上、特に好ましくは0.15%以上小さい値である。通常、シリカゲルのQピークの最小値は−113ppmである。
【0065】
本発明のシリカは、優れた耐熱性や耐水性等を有しており、また、物性変化し難い。従って、高温・高湿度下でも長期間調湿機能が持続される。このような点と、上記の様な構造的歪みとの関係については、必ずしも明らかではないが、次の様に推定される。すなわち、シリカは大きさの異なる球状粒子の集合体で構成されているが、上記の様な構造的に歪みの少ない状態においては、球状粒子全体のミクロ構造的な高度の均質性が維持されるので、その結果、優れた耐熱性や耐水性等が発現されるものと考えられる。なお、Q以下のピークは、Si−Oのネット構造の広がりに制限があるため、シリカの構造的な歪みが現れ難い。
【0066】
なお、シリカのQ/Q及びQピークのケミカルシフトの値は、固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基いて算出することができる。また、測定データの解析(ピーク位置の決定)は、例えば、ガウス関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
【0067】
金属不純物の含有量:
本発明のシリカは、シリカの骨格を構成するケイ素を除いた金属元素(金属不純物)の合計の含有率が、通常500ppm以下、中でも100ppm以下、更には50ppm以下、特に30ppm以下と、非常に高純度であることが好ましい。このように不純物の影響が少なければ、耐久性、耐熱性、耐水性などの優れた性質を発現できる。また、金属不純物が少ないことにより、これを含む本発明の調湿シートの調湿層において、バインダ樹脂となる熱可塑性樹脂と金属不純物とが接触することによる光劣化、熱劣化、経時劣化などを抑制することができ、その結果、本発明の調湿シートは長期に亘って安定して使用することが可能となる。なお、シリカの金属不純物含有量は、ICP発光分光分析法等の各種の元素分析法を用いて測定することができる。
【0068】
但し、後述するように、本発明のシリカは、その用途等に応じて、特定の原子や原子団などの他の成分を意図的に含有させることにより、有利な機能を獲得することができる場合もある。従って、本発明のシリカにシリカ以外の成分を含有させるか否かは、その用途等に応じて選択するべきである。
【0069】
本発明において、これらの調湿粒子は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して使用しても良い。また、有機系、無機系を問わず、これら以外の調湿材、乾燥剤と混合して使用することもできる。
【0070】
調湿粒子3の粒径については、調湿シートの寸法や用途、後述の熱可塑性樹脂粉体の粒径との関係もあり、一概に決定することはできないが、過度に小さいと、調湿粒子間に有効な空隙を形成し得ず、また、熱可塑性樹脂粉体との均一な混合が困難であり、逆に過度に大きいと、調湿粒子内部の調湿機能を有効に使うことができない上に、調湿シートが厚くなり、好ましくない。従って、調湿粒子3は平均粒径5〜1000μm、特に10〜900μmであることが好ましい。
【0071】
なお、本発明において、調湿粒子3の平均粒径は、レーザー回折・散乱法(水分散湿式法)により求められた値である。
【0072】
一方、熱可塑性樹脂粉体4の材質としては、調湿粒子3同士を熱融着により接着することができるものであれば良く、好ましくは以下に記載する吸水率及びMFRを満足するものであり、特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、アイオノマー樹脂などの熱可塑性樹脂、及びこれらの変性物など、好ましくは、ポリ酢酸ビニル、ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、アイオノマー樹脂などの熱可塑性樹脂、及びこれらの変性物などを用いることができる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0073】
本発明において、熱可塑性樹脂粉体4の熱可塑性樹脂は、吸水率が0.2%以上であることが好ましい。吸水率が0.2%未満の熱可塑性樹脂粉体では、疎水性が強く、調湿層7において、調湿粒子3間の空隙8に表出した熱可塑性樹脂粉体4が水をはじくことによって、調湿シートの吸放湿性、特に吸水性が劣るものとなる場合がある。熱可塑性樹脂の吸水率は高い程好ましく、特に0.5%以上であることが好ましい。ただし、熱可塑性樹脂の吸水率の上限としては、通常10%以下である。
【0074】
なお、本発明において、熱可塑性樹脂の吸水率は、熱可塑性樹脂の親水性の指標として用いているが、熱可塑性樹脂の親水性は、水接触角によっても表すことができる。本発明で用いる熱可塑性樹脂粉体の熱可塑性樹脂は、これを前述の吸水率測定用フィルムと同様の方法でフィルム状とし、このフィルム面に対してθ/2法により測定した水接触角が95°以下、特に85°以下であることが好ましい。ただし、前述の吸水率とこの水接触角とは必ずしも対応しておらず、水接触角が小さくても吸水率が低い熱可塑性樹脂や、吸水率が大きくても水接触角が大きい熱可塑性樹脂もある。これら両方の特性の指標とした場合、吸水率が大きくかつ水接触角が小さいものが最も好ましいが、吸水率が0.2%に近く、比較的小さくても水接触角が小さいものであれば本発明に有効であると言える。
【0075】
本発明で用いる熱可塑性樹脂粉体4の熱可塑性樹脂はまた、MFRが55g/10min以下であることが好ましい。MFRが55g/10minを超えるような流動性の大きいものでは、熱融着時の流動で、調湿粒子3の表面を広く覆うこととなり、調湿粒子3の表出面積を低減し、また、調湿粒子3の細孔をふさいでしまい、調湿粒子本来の調湿機能を有効に発揮し得なくなる場合がある。熱可塑性樹脂のMFRは小さいほうが好ましいが、MFRが過度に小さいものは熱溶融時の流動性が小さ過ぎて、調湿粒子3同士を十分に接着することができない。従って、熱可塑性樹脂のMFRは1〜55g/10min、特に5〜50g/10minであることが好ましい。
【0076】
なお、熱可塑性樹脂の融点について特に制限はないが、50〜250℃の範囲内にあること、特に80〜150℃の範囲内にあることが好ましい。熱可塑性樹脂の融点が50℃未満の場合は、常温での使用において熱変形しやすいという問題があり、逆に、250℃を超えると調湿層の加熱溶融成形時に、後述の基材シートを熱変形させてしまうおそれがある。
【0077】
また、本発明で用いる熱可塑性樹脂粉体4には、調湿粒子3の粒径との関係において、好適な粒径が存在する。即ち、調湿粒子3の粒径に対して、熱可塑性樹脂粉体4の粒径が過度に大きいと、調湿粒子3間に良好な空隙8を形成し得ず、また、成形時に熱可塑性樹脂粉体中に調湿粒子が埋没してしまい、十分な調湿機能を発揮することができない。逆に、熱可塑性樹脂粉体4の粒径が過度に小さくても、調湿粒子3同士が密接し、調湿層7の空隙率が小さくなってしまう。また、粒径が過度に小さい熱可塑性樹脂粉体は市販品として入手し難く、また調湿粒子との均一混合性にも劣るという欠点がある。
【0078】
従って、熱可塑性樹脂粉体4の平均粒径は、調湿粒子3の平均粒径に対して、熱可塑性樹脂粉体の平均粒径/調湿粒子の平均粒径=1/8〜15/1、特に1/7〜8/1の範囲であることが好ましい。なお、熱可塑性樹脂粉体の平均粒径自体は、上記平均粒径比を満たす範囲において任意であるが、入手し易さ、取り扱い性等の面から5〜900μm程度であることが好ましい。
【0079】
なお、本発明において熱可塑性樹脂粉体の平均粒径は、レーザー回折・散乱法(水分散湿式法)により求められた値である。
【0080】
また、本発明において、調湿層7を構成する熱可塑性樹脂粉体4と調湿粒子3との重量比は1/4〜4/1、特に1/3〜3/1であることが好ましい。この範囲よりも熱可塑性樹脂粉体が少ないと、調湿粒子同士の接着性・成形性が悪く、シート状の調湿層を形成しにくい。一方、この範囲よりも熱可塑性樹脂粉体が多いと、成形時に溶融した樹脂が粒子間の空隙を埋めやすくなり、空隙率の低下を生じる。さらに、調湿粒子の細孔内に樹脂が入ったり、細孔を覆うことによって、吸放湿性能が低下してしまい、吸放湿性能に優れた調湿シートを得ることができない。
【0081】
本発明において、調湿層7には、調湿粒子3と接着剤としての熱可塑性樹脂粉体4の他、抗菌剤や防カビ剤の1種又は2種以上を混合して用いても良く、これにより調湿層7に吸湿した水分によるカビの発生や細菌の増殖を防止して、調湿シートを衛生的に保つことができる。
【0082】
ここで用いられる抗菌・防カビ剤は無機系及び有機系の2種に大別され、無機系抗菌・防カビ剤は金属(銀、銅、亜鉛)及びその化合物系、無機/有機複合系、酸化物光触媒系から成る。有機系抗菌・防カビ剤は合成系、天然系から成る。
【0083】
具体的な無機系抗菌剤としては、銀、銅、亜鉛などの金属単体、及びこれらの少なくとも1種の金属をリン酸塩(リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト)、又はケイ酸塩(ゼオライト、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、粘土鉱物)、又は溶融性ガラス、又は活性炭に担持させた化合物が挙げられる。更には、無機/有機複合系としては層状リン酸塩の層間に存在する水素イオンをイオン交換反応で四級アンモニウム塩に置き換えたもの、酸化物光触媒系としては酸化チタンなどがある。
【0084】
具体的な有機系抗菌剤としては、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸メチル、2−メチルカルボニルアミノベンツイミダゾールなどのイミダゾール系、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンツチアゾールなどのチアゾール系、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどのイソチアゾリン系、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホン)ピリジン、ビス(ピリジン−2−チオール−1−オキシド)亜鉛酸、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム塩、2,2’−ジチオビスピリジン−1−オキシドなどのピリジン系、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジンなどのトリアジン系、α−ブロモシンナムアルデヒド、ホルマリンなどのアルデヒド系、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、石炭酸などのフェノール系、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアナイド系、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリルなどのニトリル系、3−ヨード−2−プロピルチオカルバメートなどのハロゲン系、トリクロロカルバニリドなどのアニリド系、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド系、ソジウムN−メチルジチオカルバメートなどのチオカルバメート系、オクタデシルジメチル(3−トリメトキシプロピル)アンモニウムクロライドなどの有機ケイ酸塩系、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩系、10,10’−オキシビスフェノキシアルシンなどの有機金属系、エタノール、プロパノールなどのアルコール系、プロピオン酸などのカルボン酸系、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル系、及びヒノキチオール、キトサン、カラシ抽出物、ユーカリ抽出物などの天然有機物系がある。
【0085】
これらは1種を単独で、若しくは2種以上を混合して使用することができる。
【0086】
本発明においては、持続性効果の高い無機系抗菌剤を使用することが望ましい。より高度な抗菌・防カビ性効果を得るためには、銅、亜鉛よりも銀を使用することが更に望ましく、また、抗菌・防カビ効果を長期間維持するためには、金属単体で使用するよりも、これらの金属をゼオライトに担持させて用いた方が更に効果的である。本発明では、銀をゼオライトに担持させたもの(銀ゼオライト)が、効力が高く、かつ持続性のある抗菌・防カビ剤として最も好ましい。
【0087】
このような抗菌剤や防カビ剤の使用量は、少な過ぎると、これを用いたことによる抗菌、防カビ効果を十分に得ることができず、多過ぎると抗菌・防カビ剤により調湿粒子の表面が覆われることにより調湿性能が損なわれることから、調湿粒子と熱可塑性樹脂粉体との合計100重量部に対して0.5〜10重量部程度とすることが好ましい。
【0088】
調湿層7には、その他、空隙を形成しやすくするために嵩高い繊維状又は板状フィラー;断熱性を付与するために中空フィラー;を添加することもできる。また、耐光性を向上させるために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、遮蔽性フィラー;消臭性を付与するために活性炭;意匠性を付与するために顔料;などを含有させてもよい。他にもウイルス吸着剤、ウイルス分解剤、導電剤、制電剤などの機能性フィラーを含有させてもよい。また、これらはいずれも組み合わせて使用することができる。
【0089】
本発明において、調湿層7は、空隙率が5%以上であることを必須とする。調湿層7の空隙率が5%未満では調湿粒子3による優れた調湿性能を十分に得ることができず、また、調湿層7の空隙8を調湿のための特に保水スペースとして有効利用して、調湿性能の向上を図ることができない。空隙率は5%以上である程度高いことが好ましいが、過度に高いと相対的に調湿粒子の割合が減ることにより調湿性能が低下し、また、調湿粒子や熱可塑性樹脂粉体が少ないことにより調湿層の成形性、形状保持性が劣るものとなる。従って、調湿層7の空隙率は特に5〜75%、とりわけ6〜50%であることが好ましい。
【0090】
本発明の調湿シートの調湿層7の厚さには特に制限はなく、用途、即ち、適用対象に応じて適宜決定されるが、十分量の調湿粒子を含有させるためにはある程度の厚さが必要であり、また、狭い場所への適用のためには薄肉化が要求されるなどの観点から、5〜3000μm程度、特に10〜2500μm程度であることが好ましい。
【0091】
本発明で用いる基材シート1,2としては、不織布、織布、和紙、洋紙、ネット、スポンジ、多孔質フィルムのような通気性を有するものの他、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンサルファイドフィルム、ポリエーテルサルファイドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンエーテルフィルム、トリアセチルセルロースフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルム、更にはアルミニウム、鉄などの金属箔などを用いることができる。これらの基材シートは複数層積層して用いても良く、例えば、アルミニウム蒸着樹脂フィルム、アルミニウム蒸着紙などとして用いることもできる。
【0092】
本発明において、図1に示す如く、調湿層7の両面にそれぞれ基材シート1,2を設ける場合、少なくとも一方の基材シートは通気性を有する材料で構成されている必要がある。図2に示す如く、一方の基材シート2に粘着剤層5を形成する場合、基材シート2は必ずしも通気性である必要はないが、基材シート1については通気性である必要がある。材料自体に通気性が乏しい樹脂フィルムや金属箔などを用いる場合、必要に応じて微細な穴やスリットを開けて使用することも可能である。
【0093】
ここで基材シートに用いる不織布又は織布としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド繊維のような合成繊維、アセテート繊維のような半合成繊維などを1種以上、組み合わせたものを挙げることができる。
ここでの不織布の目付け量は20〜100g/mの範囲であることが、十分な通気度を有することができるので、好ましい。
このような繊維から成る不織布や織布は表面に数μmの繊維の毛羽立ちがあるため、樹脂との密着性がよく、より強度のある調湿シートを得ることができる。
【0094】
また、本発明で用いる基材シートは、JIS L 1096 6.27.1 A法(フラジール法)に準じて測定した通気度が50〜250cc/cm・secであることが好ましく、70〜200cc/cm・secであることがより好ましい。基材シートの通気度が小さいと、調湿層内における水蒸気の拡散が律速となり調湿粒子の吸放湿性能が十分に発揮されず、大きいと調湿粒子の吸放湿速度が律速となり、十分な調湿効果が得られない。
【0095】
基材シート1,2の厚さとしては特に制限はないが、強度と薄肉化の観点から通常10〜1000μm程度である。
【0096】
なお、この基材シート1,2には、前述の抗菌剤や防カビ剤を添着して抗菌、防カビ処理を施しても良く、また、各種の塗料を塗布して意匠性を付与したり、品番、商品名などを印刷することもできる。
【0097】
図2の調湿シート10Aにおいて、粘着剤層5の形成に用いる粘着剤としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等の公知のものを用いることが可能であり、特に規定するものではない。
【0098】
また、剥離シート6としても、特に規定するものではなく、従来多用されている、剥離面がシリコーン処理された剥離紙(セパレーター)などを使用すれば良い。
【0099】
粘着剤層5を形成して剥離シート6を設けた図2の調湿シート10Aであれば、剥離シート6を取り去って粘着剤層5を表出させ、この面を施工対象面に貼着することにより、容易に施工することができる。
【0100】
図1,2においては、調湿層7の両面に基材シート1,2を有する調湿シートを示したが、この基材シートは調湿層7の一方の面に設けられていても良く、また、本発明の調湿シートは、基材シートのない調湿層のみからなるものであっても良い。
【0101】
図1,2に示す如く、調湿層7の両面に基材シート1,2を有する調湿シートは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0102】
まず、調湿粒子と熱可塑性樹脂粉体、更に必要に応じて添加される抗菌剤、防カビ剤等を一方の基材シート上に散布した後、他方の基材シートをこの上に積層する。散布に当たり、調湿粒子及び熱可塑性樹脂粉体等は予め混合して混合物として散布しても良く、これらを別々に散布しても良いが、調湿性に影響がなければ、予め混合して混合物として散布することが好ましい。散布の方法としては、ホッパーの下部からの自由落下による散布、グラビアロールなど凹部を有するロールに連続供給して基材シート上に供給する方法、空気中に分散した送風による散布などを採用することができる。この他、粉体をより均一に混合したい場合は、混合粉体を水や溶剤などの媒体に分散させた後、基材シート上にスプレーコーティングやダイコーティングし、その後、乾燥させる方法もある。ただし、この液状物コーティングの場合は、厚塗りが困難なこと、加えて乾燥工程が必要でエネルギー的に不利であることから、混合粉体の乾式散布による方法が好ましい。
【0103】
このようにして、一方の基材シート上に調湿粒子と熱可塑性樹脂粉体、その他の添加剤を散布した後は、その上に他方の基材シートを積層し、この積層体を加熱又は、加熱しながら加圧することにより調湿粒子同士を熱可塑性樹脂粉体で接着すると共に、この調湿層に基材シートを接着する。
【0104】
このときの加熱方法は特に限定されるものではないが、ホットプレス、加熱ロール、加熱ベルトなどによる接触式の熱伝導による加熱、又は赤外線ヒーターやガスバーナーヒーターのような非接触式の放射熱による加熱などがある。本発明では、熱伝導による加熱方法が好ましい。加熱温度は、用いた熱可塑性樹脂粉体に応じて、熱可塑性樹脂の溶融で調湿粒子同士及び調湿粒子と基材シートとを接着一体化できる程度であれば良い。
【0105】
また、加圧方法としては、例えばホットプレスによる方法、又は加圧したロール間を通す方法などを採用することができる。加圧の程度は、接着強度、調湿粒子の潰れ、空隙率の確保、通気性への影響などを考慮して、適宜設定すれば良い。
【0106】
上述の調湿シートの成形加工は以下に示すパウダーラミネート法によって効率的に実施することもできる。この方法を採用することにより、本発明の調湿シートを連続的に製造することが可能となる。
【0107】
図3に加熱ローラー式パウダーラミネート装置の製造ラインを簡略化したものを示す。製造ラインの上流側には上側シート37を繰り出す上側シート用ローラー36と下側シート32を繰り出す下側シート用ローラー31が回転可能に支持されている。下側シート用ローラー31の下流側には同ローラーから繰り出される下側シート32の搬送経路の上方に位置するように混合粉体フィードホッパー34が設けられており、このホッパー34内において少なくとも調湿粒子と熱可塑性樹脂粉体とが一定比率をもって混合して貯蓄されているとともに、混合粉体フィードホッパー34の下方を下側シート32が通過する際に前記混合粉体が散布されるようになっている。このようにして、上下2枚のシート間に狭持された混合粉体は回転可能に支持された上側加熱ローラー39及び回転可能に支持された下側シリコーンゴム製ローラー40間を通過する際に熱可塑性樹脂粉体が加熱されて溶融し、調湿粒子及び上下のシート間が接着される。なお、下側シリコーンゴム製ローラー40は、その内部を温水、スチームなどで加熱して使用することもできる。その後、製造ラインの下流側の巻き取りローラーにより、本発明における調湿シート41を連続的に生産することができる。
【0108】
図4には加熱ベルト式パウダーラミネート装置の製造ラインを示す。図4において図3と同一部材には同一符号が付してある。40Aは下側加熱ベルトである。図4の装置の基本構成は図3の装置とほぼ同様であるが、混合粉体散布後の熱圧着工程が異なる。図4の装置は加熱ベルト式のため長時間加熱が可能である。そのため、図3の装置よりも混合粉体中の熱可塑性樹脂粉体をより均一に低温で加熱溶融させることができて、厚物シートの連続成形も可能となる。従って、本発明の調湿シートを連続成形する際には、図3の加熱ローラー式パウダーラミネート装置よりも、図4の加熱ベルト式パウダーラミネート装置のほうが望ましい。
【0109】
基材シートに抗菌、防カビ処理を施す場合には、この熱融着処理後に薬剤の噴霧、燻蒸処理等を行えば良い。また、粘着剤層5を形成する場合は、この後に粘着剤層5及び剥離シート6の積層を行えば良い。
【0110】
前述した調湿層の一方の面にのみ基材シートを有する積層調湿シートや、調湿層のみの調湿シートを製造する場合には、上述した製造方法において、基材シートとして剥離性のものを用い、熱融着処理後に一方又は双方の基材シートを取り去れば良い。
【0111】
このようにして得られる調湿シート又は積層調湿シートを、センサーやカメラなどに好適に用いられるように微小パーツに加工することもできる。例えば、打ち抜き加工やスリット加工を行うことで、微小パーツを作製することができる。また、端面を高周波ウェルダー、熱エンボス、超音波、接着剤などで部分的に圧着させることによって、端面からの調湿粒子の脱落や、調湿シート又は積層調湿シートの破壊を防ぐことができる。
【0112】
前述の如く、本発明において、調湿粒子としては、少なくとも1種のケイ素化合物が好ましく、なかでもシリカが好ましい。
以下に、前述の本発明のシリカの製造方法について説明する。
本発明のシリカの製造方法は特に制限されず、公知の任意の方法によって製造することができる。シリカの製造方法としてよく用いられる方法の例としては、次のような方法が挙げられる。
i.水ガラスを硫酸等の酸により中和してからゲル化する方法。
ii.アルコキシシランを加水分解してからゲル化する方法。
iii.アルコキシシラン又は水ガラスを原料とし、界面活性剤を有機テンプレートとして細孔形成を行なう方法(いわゆる、ミセルテンプレートシリカ)。
【0113】
以下、本発明のシリカを製造する方法の一例について説明するが、これはあくまでも例であって、本発明のシリカの製造方法は以下の例に制限されるものではない。
【0114】
この方法は、従来のゾル−ゲル法とは異なり、シリコンアルコキシド又はケイ酸アルカリ塩(好ましくはシリコンアルコキシド)を加水分解する加水分解工程と共に得られたシリカヒドロゾルを縮合する縮合工程を経てシリカヒドロゲルを形成する加水分解・縮合工程と、当該加水分解・縮合工程に引き続き、シリカヒドロゲルを熟成することなく水熱処理することにより、所望の物性範囲のシリカゲルを得る物性調節工程とを、ともに包含する方法である。
【0115】
本発明のシリカの原料として使用されるシリコンアルコキシドとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の炭素数1〜4の低級アルキル基を有するトリ又はテトラアルコキシシラン或いはそれらのオリゴマーが挙げられる。中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリゴマー、特にテトラメトキシシランやそのオリゴマーを用いると、良好な細孔特性を有するシリカが得られるので好ましい。その主な理由としては、シリコンアルコキシドは蒸留により容易に精製し、高純度品が得られるので、高純度のシリカの原料として好適であることが挙げられる。シリコンアルコキシド中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属に属する金属元素(金属不純物)の総含有量は、通常100ppm以下、中でも50ppm以下、更には10ppm以下、特に1ppm以下が好ましい。これらの金属不純物の含有率は、一般的なシリカ中の不純物含有率の測定法と同じ方法で測定できる。
【0116】
本発明では、先ず、加水分解・縮合工程において、触媒の不存在下にシリコンアルコキシドを加水分解すると共に得られたシリカヒドロゾルを縮合してシリカヒドロゲルを形成する。
【0117】
シリコンアルコキシドの加水分解に用いる水の量は任意であるが、シリコンアルコキシド1モルに対して、通常2モル倍以上、好ましくは3モル倍以上、特に好ましくは4モル倍以上、また、通常20モル倍以下、好ましくは10モル倍以下、特に好ましくは8モル倍以下の水を用いて行なう。シリコンアルコキシドの加水分解により、シリカのヒドロゲルとアルコールとが生成し、生成したシリカヒドロゾルは逐次縮合してシリカヒドロゲルとなる。
【0118】
また、加水分解時の温度も任意であるが、通常室温以上、100℃以下であるが、加圧下で液相を維持することで、より高い温度で行なうことも可能である。加水分解に要する反応時間は反応液組成(シリコンアルコキシドの種類や、水とのモル比)並びに反応温度に依存し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定されない。この反応時間は、本発明のシリカのように細孔特性に優れたシリカを得る為には、ヒドロゲルの破壊応力が6MPaを越えない時間であることが好ましい。
【0119】
なお、この加水分解反応系に、触媒として、酸、アルカリ、塩類などを共存させることで加水分解を促進させることができる。しかしながら、かかる触媒の使用は、後述のように、生成したヒドロゲルの熟成を引き起こすことになるので、本発明のシリカの製造においてはあまり好ましいことではない。
【0120】
上述したシリコンアルコキシドの加水分解に際しては、攪拌を充分に行なうことが重要となる。例えば、回転軸に攪拌翼を備えた攪拌装置を用いた場合、その攪拌速度(回転軸の回転数)としては、攪拌翼の形状・枚数・液との接触面積等にもよるが、通常は30rpm以上、好ましくは50rpm以上である。
【0121】
また、この攪拌速度は、一般的に速過ぎると、槽内で生じた飛沫が各種のガスラインを閉塞させたり、また反応器内壁に付着して熱伝導を悪化させ、物性制御に重要な温度管理に影響を及ぼしたりする場合がある。更に、この内壁の付着物が剥離し、製品に混入して品質を悪化させる場合もある。この様な理由から、攪拌速度は2000rpm以下、中でも1000rpm以下であることが好ましい。
【0122】
本発明において、分液している二液相(水相及びシリコンアルコキシド相)の攪拌方法は、反応を促進させる方法であれば任意の攪拌方法を用いることができる。中でも、この二液相をより混合させるような装置としては、例えば以下の(i)、(ii)が挙げられる。
【0123】
(i):回転軸が液面に対し垂直又は僅かに角度を持って挿入され、上下に液の流動が生じる攪拌翼を有する装置。
(ii):回転軸方向を二液相の界面と略平行に設け、二液相間に攪拌を生じさせる攪拌翼を有する攪拌装置。
【0124】
上述した(i)、(ii)の様な装置を用いた際の攪拌翼の回転速度は、攪拌翼の周速度(攪拌翼先端速度)で、通常0.05m/sec以上、中でも0.1m/sec以上、また、通常10m/sec以下、中でも5m/sec以下、更には3m/sec以下であることが好ましい。
【0125】
攪拌翼の形状や長さ等は任意であり、攪拌翼としては例えばプロペラ型、平羽根型、角度付平羽根型、ピッチ付平羽根型、平羽根ディスクタービン型、湾曲羽根型、ファウドラー型、ブルマージン型等が挙げられる。
【0126】
翼の幅、枚数、傾斜角等は反応器の形状、大きさ、目的とする攪拌動力に応じて適宜選定すればよい。例えば、反応器の槽内径(回転軸方向に対して垂直面を形成する液相面の最長径:D)に対する翼幅(回転軸方向の翼の長さ:b)の比率(b/D)が0.05〜0.2で、傾斜角(θ)90゜±10゜、翼枚数3〜10枚の攪拌装置が好適な例として挙げられる。
【0127】
中でも、上述の回転軸を反応容器内の液面よりも上に設け、この回転軸から伸ばした軸の先端部分に攪拌翼を設ける構造が、攪拌効率及び設備メンテナンスの観点から好適に使用される。
【0128】
上記のシリコンアルコキシドの加水分解反応では、シリコンアルコキシドが加水分解してシリカヒドロゾルが生成するが、引き続いて該シリカヒドロゾルの縮合反応が起こり、反応液の粘度が上昇し、最終的にゲル化してシリカヒドロゲルとなる。
【0129】
次いで、本発明では、物性調節工程として、上記の加水分解により生成したシリカヒドロゲルの硬さが上昇しないように、実質的に熟成することなく、シリカヒドロゲルの水熱処理を行なう。シリコンアルコキシドを加水分解すると、軟弱なシリカヒドロゲルが生成する。なお、このヒドロゲルの物性を安定させるべく、熟成、或いは乾燥させ、次いで水熱処理を施すという方法では、本発明のシリカを製造することは通常、困難である。
【0130】
上記にある、加水分解により生成したシリカヒドロゲルを、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうということは、シリカヒドロゲルが生成した直後の軟弱な状態が維持されたままで、次の水熱処理に供するようにするということを意味する。
【0131】
具体的には、シリカヒドロゲルが生成した時点から、通常10時間以内、中でも8時間以内、更には6時間以内、特に4時間以内にシリカヒドロゲルを水熱処理することが好ましい。
【0132】
また、工業用プラント等においては、大量に生成したシリカヒドロゲルを一旦サイロ等に貯蔵し、その後水熱処理を行なう場合が考えられる。この様な場合、シリカヒドロゲルが生成してから水熱処理に供されるまでの時間、いわゆる放置時間が、上述の範囲を超える場合が考えられる。この様な場合には、熟成が実質的に生じないように、サイロ内での静置中に、例えばシリカヒドロゲル中の液体成分が乾燥しないようにすればよい。
【0133】
具体的には、例えば、サイロ内を密閉したり、湿度を調節したりすればよい。また、水やその他の溶媒にシリカヒドロゲルを浸した状態で、シリカヒドロゲルを静置してもよい。
【0134】
静置の際の温度は、できるだけ低くすることが好ましく、例えば50℃以下、中でも35℃以下、特に30℃以下で静置することが好ましい。
【0135】
また、熟成が実質的に生じないようにする別の方法としては、シリカヒドロゲル中のシリカ濃度が低くなるように、予め原料組成を制御してシリカヒドロゲルを調製する方法が挙げられる。
【0136】
シリカヒドロゲルを実質的に熟成せずに水熱処理することにより奏する効果と、この効果が得られる理由を考察すると、以下のことが考えられる。
【0137】
まず、シリカヒドロゲルを熟成させると、−Si−O−Si−結合によるマクロ的網目構造が、シリカヒドロゲル全体に形成されると考えられる。この網目構造がシリカヒドロゲル全体に有ることで、水熱処理の際、この網目構造が障害となり、メソポーラスの形成が困難となることが考えられる。またシリカヒドロゲル中のシリカ濃度が低くなるように、予め原料組成を制御して得られたシリカヒドロゲルは、静置中に生ずるシリカヒドロゲルにおける架橋の進行を抑制できる。その為、シリカヒドロゲルが熟成しないと考える。
【0138】
よって、このシリカの製造方法では、シリカヒドロゲルを熟成することなく、水熱処理を行なうことが重要である。
【0139】
シリコンアルコキシドの加水分解反応系に酸、アルカリ、塩類等を混合すること、又は加水分解反応の温度を厳しくし過ぎることなどは、ヒドロゲルの熟成を進行させる場合もある。また、加水分解後の後処理における水洗、乾燥、放置などにおいて、必要以上に温度や時間をかけないことが好ましい。
【0140】
更に、シリコンアルコキシドの加水分解で得られたシリカヒドロゲルは、水熱処理を行なう前に、これを平均粒径が通常10mm以下、中でも5mm以下、更には1mm以下、特に0.5mm以下となるよう、粉砕処理等を施すことが好ましい。
【0141】
上述の通り、この本発明のシリカの製造方法では、シリカヒドロゲルの生成の直後に、直ちにこれを水熱処理する方法が重要である。但し、この本発明のシリカの製造方法においては、水熱処理するシリカヒドロゲルが熟成していなければよいので、例えば暫時低温下で静置した後に水熱処理するなど、必ずしもシリカヒドロゲルの生成直後、直ちにこれを水熱処理することを必要としない。
【0142】
このように、シリカヒドロゲルの生成の直後、直ちにこれを水熱処理しない場合には、例えばシリカヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認してから水熱処理を行なえばよい。ヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認する手段は任意であるが、例えば、ヒドロゲルの硬度を参考にする方法が挙げられる。即ち、先述した通り、この破壊応力が通常6MPa以下の柔らかい状態のヒドロゲルを水熱処理することで、本発明で規定する物性範囲のシリカを得ることができる。この破壊応力は、中でも3MPa以下であることが好ましく、特に2MPa以下であることが好ましい。
【0143】
この水熱処理の条件は任意であり、水の状態が液体、気体の何れでもよいが、中でも、液体の水を使い、シリカヒドロゲルに加えてスラリー状として、水熱処理を行なうことが好ましい。また、水熱処理においては、まず、処理するシリカヒドロゲルに、シリカヒドロゲルの重量に対して通常0.1重量倍以上、好ましくは0.5重量倍以上、特に好ましくは1重量倍以上、また、通常10重量倍以下、好ましくは5重量倍以下、特に好ましくは3重量倍以下の水を加えてスラリー状とする。そしてこのスラリーを、通常30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは100℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下の温度で、通常0.1時間以上、好ましくは1時間以上、また、通常100時間以下、好ましくは10時間以下にわたって、水熱処理を行なう。水熱処理の温度が低過ぎると、細孔容積を大きくすることが困難となる場合がある。
【0144】
なお、水熱処理に使用される水には、有機溶媒が含まれていてもよい。有機溶媒の具体例としては、低級アルコール類であるメタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。この溶媒は、例えばアルコキシシランを加水分解して得られたシリカヒドロゲルを水熱処理する際には、その原料であるアルコキシシランに由来するアルコール類であってもよい。
【0145】
熱処理に用いる水における、この様な溶媒の含有量は任意であるが、少ない方が好ましい。例えば、上述した様な、アルコキシシランを加水分解して得られたシリカヒドロゲルを水熱処理する際には、このシリカヒドロゲルを水洗し、水洗されたものを水熱反応に供することにより、150℃程度まで温度を下げて水熱処理を行なった場合でも、細孔特性に優れ且つ細孔容積の大きいシリカを製造することができる。また、溶媒を含んでいる水で水熱処理を行なっても、200℃程度の温度での水熱処理を行なうことで、本発明のシリカを容易に得ることができる。
【0146】
以上の水熱処理の条件において、温度を高くすると、得られるシリカの径、細孔容積が大きくなる傾向がある。また、処理時間とともに、得られるシリカの比表面積は、一度極大に達した後、緩やかに減少する傾向がある。以上の傾向を踏まえて、所望の物性値に応じて条件を適宜選択することが好ましい。例えば、調湿性能に注目すれば、高度な調湿性能を発揮するシリカを製造する場合には、水熱処理温度は、100℃〜200℃の範囲であることが好ましい。水熱処理は、シリカの物性を変化させることが目的なので、通常、前記の加水分解の反応条件より高温条件とすることが好ましい。
【0147】
なお、ミクロ構造的な均質性に優れるシリカを製造するためには、水熱処理の際に、反応系内の温度が5時間以内に目的温度に達する様に、速い昇温速度条件とすることが好ましい。具体的には、槽に充填して処理される場合、昇温開始から目標温度到達までの平均昇温速度として、通常0.1℃/min以上、好ましくは0.2℃/min以上、また、通常100℃/min以下、好ましくは30℃/min以下、更に好ましくは10℃/min以下の範囲の値を採用するのが好ましい。
【0148】
熱交換器などを利用した昇温方法や、あらかじめ作っておいた熱水を仕込む昇温方法なども、昇温速度を短縮することができて好ましい。また、昇温速度が上記範囲であれば、段階的に昇温を行なってもよい。反応系内の温度が目的温度に達するまでに長時間を要した場合には、昇温中にシリカヒドロゲルの熟成が進み、ミクロ構造的な均質性が低下する場合がある。
【0149】
上記の目的温度に達するまでの昇温時間は、好ましくは4時間以内、更に好ましくは3時間以内である。昇温時間の短縮化のため、水熱処理に使用する水を予熱することもできる。
【0150】
水熱処理の温度、時間を上記範囲外に設定すると、本発明のシリカを得ることが困難となる場合がある。例えば、水熱処理の温度が高過ぎると、シリカの細孔径、細孔容積が大きくなり過ぎ、また、細孔分布も広がる場合がある。逆に、水熱処理の温度が低過ぎると、生成するシリカは、架橋度が低く、熱安定性に乏しくなり、細孔分布にピークが発現しなくなったり、前述した固体Si−NMRにおけるQ/Q値が極端に小さくなったりする場合がある。
【0151】
なお、水熱処理をアンモニア水中で行なうと、純水中で行なう場合よりも低温で同様の効果が得られる。また、アンモニア水中で水熱処理すると、アンモニアを含まない水を用いた水熱処理と比較して、最終的に得られるシリカは一般に疎水性となる。この際、水熱処理の温度を通常30℃以上、好ましくは40℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは200℃以下という比較的高温とすると、特に疎水性が高くなる。ここでのアンモニア水のアンモニア濃度としては、好ましくは0.001重量%以上、特に好ましくは0.005重量%以上、また、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
【0152】
得られた本発明のシリカは適当な条件下で乾燥させる。乾燥時の条件は任意であるが、通常40℃以上、好ましくは60℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは120℃以下で乾燥する。乾燥方法は特に限定されるものではなく、バッチ式でも連続式でもよく、且つ、常圧でも減圧下でも乾燥することができる。中でも、真空乾燥を行なうことは、乾燥が迅速に行なえるのみならず、得られるシリカの細孔容積、比表面積が大きくなるので好ましい。
【0153】
必要に応じ、原料のシリコンアルコキシドに由来する炭素分が含まれている場合には、通常400℃〜600℃で焼成除去することができる。また、表面状態をコントロールするため最高900℃の温度で焼成することもある。更に、シランカップリング剤や無機塩,各種有機化合物などにより親疎水性を調節するための表面処理を行なってもよい。なお、この表面処理で用いるシランカップリング剤の種類は任意であるが、例えば、有機基導入に用いるものとして以下のようなシランカップリング剤を用いることができる。
【0154】
更に、得られたシリカを、必要に応じて粉砕、分級することで、最終的に目的としていた本発明のシリカを得る。
【0155】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤とは、ケイ素原子に有機基が直結しているものの総称であり、具体的には、以下の式(I)〜(IV)で表される化合物である。
【0156】
SiR (I)
式(I)において、Xはそれぞれ独立に、水溶液中、空気中の水分又は無機質表面に吸着された水分などにより加水分解されて、反応性に富むシラノール基を生成する加水分解性シリル基を表す。その具体的な種類に制限は無く、従来公知のものを任意に使用することができる。例えば、炭素数が通常1以上4以下の低級アルコキシ基、アセトキシ基、ブタノキシム基、クロル基等が挙げられる。なお、これらの加水分解性シリル基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、Rは上記の有機基のうち、1価のものを表す。
【0157】
式(I)で表されるシランカップリング剤は最も汎用であり、その具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、4−クロロフェニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0158】
SiR (II)
式(II)において、Xはそれぞれ独立に、式(I)のXと同様の加水分解性シリル基を表す。
また、R及びRは、それぞれ式(I)のRと同様、1価の有機基を表す。なお、R及びRはそれぞれ同じ基であっても異なる基であってもよい。
【0159】
式(II)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン等を挙げることができる。
【0160】
XSiR (III)
式(III)において、Xは式(I)のXと同様の加水分解性シリル基を表す。
また、R,R,Rは、それぞれ式(I)のRと同様、1価の有機基を表す。なお、R,R,Rはそれぞれ同じ基であっても異なる基であってもよい。
【0161】
式(III)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン等を挙げることができる。
【0162】
(XSi) (IV)
式(IV)において、Xはそれぞれ独立に、式(I)のXと同様の加水分解性シリル基を表す。
また、Rはm価の有機基を表す。なお、mは2以上の整数を表す。
【0163】
式(IV)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、各種有機ポリマーやオリゴマーに側鎖として加水分解性シリル基が複数結合しているものなどが挙げられる。
【0164】
これら式(I)〜式(IV)に具体的に例示した化合物は、入手容易な市販のシランカップリング剤の一部であり、更に詳しくは、科学技術総合研究所発行の「カップリング剤最適利用技術」第9章のカップリング剤及び関連製品一覧表に記載されている。
また、当然のことながら、本発明に使用できるシランカップリング剤は、これらの例示により制限されるものではない。
【0165】
なお、上記の水熱処理の後に、シリカに含まれる水を親水性有機溶媒と置換してから乾燥を行なうことが好ましい。これによって、乾燥工程におけるシリカの収縮を抑制し、シリカの細孔容積を大きく維持でき、細孔特性に優れ、且つ細孔容積の大きいシリカを得ることができる。この理由は定かではないが、以下のような現象によるものと考えられる。
【0166】
水熱処理後のシリカスラリー中における液体成分の多くは水である。この水は、シリカと互いに強く相互作用し合っている為に、シリカから完全に水を除去するには大きなエネルギーが必要であると考えられる。
【0167】
多量の水分が存在する条件下で乾燥過程(例えば加熱乾燥)を行なうと、熱エネルギーを受けた水が未反応のシラノール基と反応し、本発明のシリカの構造が変化する。この構造変化のうち最も顕著な変化はシリカ骨格の縮合であり、縮合によってシリカが局所的に高密度化することが考えられる。シリカ骨格は3次元的構造を有するので、骨格の局所的な縮合(シリカ骨格の高密度化)はシリカ骨格により構成されているシリカ粒子全体の細孔特性に影響を及ぼし、結果的に粒子が収縮して、細孔容積や細孔径が収縮すると考えられる。
【0168】
そこで、例えばシリカスラリー中の(水を多量に含む)液体成分を親水性有機溶媒で置換することで、このシリカスラリー中の水を除去し、上述したようなシリカの収縮を抑えることが可能となる。
【0169】
ここで用いる親水性有機溶媒とは、上述した考えに基づき、水を多く溶かすものであればよい。中でも、分子内分極の大きいものが好ましい。更に好ましくは、比誘電率が15以上のものがよい。
【0170】
また、ここで説明した本発明のシリカの製造方法においては、純度の高いシリカを得るために、親水性有機溶媒にて水を除去した後の乾燥工程で、この親水性有機溶媒を除去することが好ましい。よって、親水性有機溶媒としては、乾燥(例えば加熱乾燥や真空・減圧乾燥等)により容易に除去可能な低沸点のものが好ましい。親水性有機溶媒の沸点としては、通常150℃以下、中でも120℃以下、特に100℃以下のものが好ましい。
【0171】
具体的な親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、アルデヒド類、エーテル類等が挙げられる。中でも、アルコール類やケトン類が好ましく、特に、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類やアセトンが好ましい。本発明のシリカの製造時には、これら例示の親水性有機溶媒のうち、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び任意の割合で混合して使用してもよい。
【0172】
なお、水の除去が可能であれば、使用する親水性有機溶媒中に水が含まれていてもよい。もっとも、親水性有機溶媒における水分含有量は当然少ない方が好ましく、通常20重量%以下、中でも15重量%以下、更には10重量%以下、特に5重量%以下であることが好ましい。
【0173】
本発明のシリカの製造において、上述の親水性有機溶媒による置換処理時の温度及び圧力は任意である。処理温度は任意であるが、通常0℃以上、中でも10℃以上、また、通常100℃以下、中でも60℃以下とすることが好ましい。処理時の圧力は常圧、加圧、減圧の何れでもよい。
【0174】
シリカスラリーと接触させる親水性有機溶媒の量も任意である。但し、用いる親水性有機溶媒の量が少な過ぎると水との置換進行速度が充分でなく、逆に多過ぎると水との置換効率は高まるが、親水性有機溶媒の使用量増加に見合う効果が頭打ちとなり、経済的に不利となる場合がある。よって、用いる親水性有機溶媒の量は、シリカの嵩体積に対して通常0.5〜10容量倍である。この親水性有機溶媒による置換操作は、複数回繰り返して行なうと、水の置換がより確実となるので好ましい。
【0175】
親水性有機溶媒とシリカスラリーとの接触方法は任意であり、例えば攪拌槽でシリカスラリーを攪拌しながら親水性有機溶媒を添加する方法や、シリカスラリーから濾別したシリカを充填塔に詰めて、この充填塔に親水性有機溶媒を通液する方法、また、親水性有機溶媒中にシリカを入れて浸漬し、静置する方法などが挙げられる。
【0176】
親水性有機溶媒による置換操作の終了は、シリカスラリーの液体成分中の水分測定を行なって決定すればよい。例えば、定期的にシリカスラリーをサンプリングして水分測定を行ない、水分含有量が通常5重量%以下、好ましくは4重量%以下、更に好ましくは3重量%以下となった点を終点とすればよい。水分の測定方法は任意であり、例えばカールフィッシャー法が挙げられる。
【0177】
親水性有機溶媒による置換操作の後、シリカと親水性有機溶媒とを分離し、乾燥することで、本発明のシリカを製造することができる。この際の分離法としては、従来公知の任意の固液分離方法を用いればよい。即ち、シリカ粒子のサイズに応じて、例えばデカンテーション、遠心分離、濾過等の方法を選択して固液分離すればよい。これらの分離方法は、一種を単独で用いてもよく、また二種以上を任意の組み合わせで用いてもよい。
【0178】
ところで、上述したように製造されたシリカは、通常、粉砕、分級などして造粒し、粒子状のシリカとして用いられる。この際製造されるシリカの粒子の形状は限定されず任意であるが、例えば、球状であってもよいし、形の規定されないその他の塊状であってもよいし、破砕して細かな形状(破砕状)としてもよいし、更には、破砕状のものを集めて造粒したものであってもよい。コスト的には、粒径の制御が容易な破砕状又はこれを造粒したものが好ましい。更に、シリカをハニカム状に成形するなどしてもよい。また、シリカの粒径は、その使用条件によって適宜設定されるものである。
【0179】
更に、シリカの粉砕、分級の方法は、それぞれ任意である。
具体例を挙げると、シリカの分級は、例えば篩、重力分級機、遠心分級機などを使用して行なわれる。
【0180】
また、シリカの粉砕は、例えば、ボールミル(転動ミル、振動ボールミル、遊星ミル等)、攪拌ミル(塔式粉砕器、攪拌槽型ミル、流通管型ミル、アニュラー(環状)ミル等)、高速回転微粉砕機(スクリーンミル、ターボ型ミル、遠心分級型ミル)、ジェット粉砕機(循環ジェットミル、衝突タイプミル、流動層ジェットミル)、せん断ミル(擂解機、オングミル)、コロイドミル、乳鉢などの装置・器具を用いることができる。また、粉砕時の状態としては、湿式法及び乾式法があり、何れも採用可能であるが、シリカを比較的に小さな径とする場合には湿式法がより好ましい。湿式法の場合、使用する分散媒としては、水及びアルコール等の有機溶媒の何れを用いても、また2種以上の混合溶媒としてもよく、目的に応じて使い分ける。微粉砕時に不必要に強い圧力や剪断力を長時間かけ続けることは、シリカの細孔特性を損なう場合がある。
【0181】
なお、上述したように製造されたシリカが粉砕等されることで粒子状となっている場合、粉砕されたシリカの粒子(一次粒子)を公知の方法により造粒し、粒状(例えば球状)等の二次粒子としてもよい。シリカは一般に一次粒子径2μm以下の場合、特にバインダ樹脂を混合しなくても水スラリーとしてこれを乾燥するだけで二次粒子を得ることができるが、2μmを越える粒子の場合、二次粒子を形成させるためにはバインダ樹脂が必要であることが多い。
【0182】
二次粒子を製造する場合にバインダ樹脂として用いることができる物質は任意であるが、例えば水に溶解する場合は砂糖、デキストロース、コーンシロップ、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、その他の水溶性高分子、水ガラス、シリコンアルコキシド加水分解液(これは溶媒系にも使用可)などを用いることができ、溶媒に溶解して用いる場合には各種ワックス、ラッカー、シラック、油溶性高分子等を用いることができる。なお、この際のバインダ樹脂としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。但し、シリカの多孔質性能を損なわずに二次粒子とするためには、バインダ樹脂を使用しないことが望ましく、やむを得ず使用する場合には最低限の使用量とし、シリカの物性変化を誘起するような金属不純物量の少ない高純度なものを用いることが好ましい。
【0183】
ところで、上記のように、シリカの造粒方法(粉砕方法)は公知の何れの方法を用いてもよいが、代表的な方法として、転動法、流動層法、攪拌法、解砕法、圧縮法、押し出し法、噴射法等が挙げられる。このうち、本発明の制御された細孔特性のシリカの粒子を得るためには、バインダ樹脂の種類及び使用量、純度の選択に注意を払い、シリカを造粒する際に不要な圧力をかけないこと等が重要である。
【0184】
以上、本発明のシリカの製造方法の具体例について説明したが、上述したようにこれはあくまでも本発明のシリカの製造方法の一例に過ぎず、その製造方法は実質的に制限されるべきではない。
【実施例】
【0185】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下において「部」は「重量部」を意味する。
【0186】
[使用材料]
以下の実施例及び比較例で用いた調湿粒子、熱可塑性樹脂粉体、基材シート、その他の使用材料は次の通りである。
【0187】
<調湿粒子,吸水粒子>
【表1】

【0188】
<熱可塑性樹脂粉体>
【表2】

【0189】
<抗菌剤>
銀ゼオライト:シナネンゼオミック社製「ゼオミックLB10N」平均粒径7μm
【0190】
<基材シート>
ポリエステル製スパンボンド不織布:旭化成せんい株式会社製「エルタス エステル E1040」目付量40g/m、厚さ240μm
ポリエステル製平織織布(テキスタイル):トロピカル「T5000」目付量100g/m、厚さ300μm
【0191】
<粘着剤>
アクリル系粘着剤:綜研化学社製「SKダイン1720」固形分46〜48%
【0192】
<剥離シート>
半晒クラフト紙よりなるベースシートの片面にシリコンコートの剥離層を形成したもの:サンエー化研社製「N−80HS」
【0193】
後述する各実施例及び比較例において、調湿粒子として使用したシリカの物性の測定、熱可塑性樹脂粉体、基材シート、その他の使用材料の評価等は、文献等により公知のものを除いて、以下の手法により行った。
【0194】
[測定方法]
<細孔容積、比表面積、細孔最頻直径>
シリカについて、カンタクローム社製AS−1にてBET窒素吸着等温線(等温脱着曲線)を測定し、細孔容積(ml/g)、比表面積(m/g)、細孔最頻直径Dmax(nm)を求めた。具体的には、細孔容積は相対圧P/P=0.98のときの値を採用し、比表面積はP/P=0.1,0.2,0.3の3点の窒素吸着量よりBET多点法を用いて算出した。
また、細孔最頻直径(Dmax)が5nm以下のものについては、当業者に公知のHK法又はSF法で、5nm以上のものについてはBJT法で、それぞれ細孔分布曲線を求めることとした。なお、測定する相対圧の各点の間隔は0.025とした。
【0195】
<粉末X線回折>
理学電機社製RAD−RB装置を用い、CuKαを線源として、試料の粉末X線回折図の測定を行なった。測定時の条件は、発散スリット1/2deg、散乱スリット1/2deg、受光スリット0.15mmとした。
【0196】
<平均粒径>
シリカの平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(セイシン企業製レーザーマイクロンサイザーLMS−24)によって粒度分布を測定し、その結果から求めた。
【0197】
<シラノール量>
シリカのシラノール量は、前述した熱重量測定による重量変化から算出した。
【0198】
<熱可塑性樹脂の吸水率>
熱可塑性樹脂の吸水率は、前述した吸水処理による重量変化から算出した。
【0199】
<熱可塑性樹脂のMFR>
熱可塑性樹脂のMFRは、前述したJISK6760に従って測定した。
【0200】
<調湿層の空隙率>
調湿層の空隙率は、前述したように調湿層を構成する材料の比重及び使用重量から求めた調湿層に占められる構成材料の体積と、調湿層の見掛け体積から算出した。
【0201】
[評価方法]
<成形性>
調湿シートをカッターで10cm角にカットし、以下の状態を確認して判定した。
◎:熱溶融した熱可塑性樹脂粉体により基材シート、調湿粒子、及びその他の構成材料がしっかりと接着固定されている。カットした調湿シートの基材シートと調湿層間の剥離がなく、かつ10cm角にカットした際に粉落ちは目視確認されない。
○:上記各材料間がしっかりと接着固定されている。カットした調湿シートの基材シートと調湿層間の剥離がなく、10cm角にカットした際に発生する粉落ち量が10mg未満である。
△:上記各材料間が接着固定されている。カットした調湿シートの基材シートと調湿層間の剥離があり、10cm角にカットした際に発生する粉落ち量が10mg未満である。
×:上記各材料間の接着固定が不十分である。カットした調湿シートの基材シートと調湿層間の剥離があり、かつ10cm角にカットした際に発生する粉落ち量が10mg以上である。
【0202】
<吸湿性>
10cm角にカットした調湿シートを、温度20℃、相対湿度25%の恒温恒湿器中で3時間放置、恒量とした後、温度20℃のまま相対湿度を60%にして1時間放置する。さらに温度20℃のまま相対湿度を95%にして1時間放置する。このときの調湿シートの重量増加量を測定して、以下の基準により吸湿性を判定した。
◎:相対湿度60〜95%に変化させたとき、調湿粒子1.0gあたりの吸湿変化量が0.6g以上であり、相対湿度95%における、調湿粒子1.0gあたりの総吸湿量が0.8g以上である。
○:相対湿度60〜95%に変化させたとき、調湿粒子1.0gあたりの吸湿変化量が0.6g以下であるものの、相対湿度95%における、調湿粒子1.0gあたりの総吸湿量が0.8g以上である。
△:相対湿度95%に変化させたとき、調湿粒子1.0gあたりの総吸湿量が0.2g以上0.8g未満である。
×:相対湿度95%に変化させたとき、調湿粒子1.0gあたりの総吸湿量が0.2g未満である。
【0203】
<放湿性>
10cm角にカットした調湿シートを、温度20℃、相対湿度25%の恒温恒湿器中で3時間放置、恒量とした後、温度20℃のまま相対湿度を95%にして2時間放置して、吸湿させる。その後、すぐに20℃のまま相対湿度を25%に戻し、再放湿させた。この時点から1時間後及び2時間後の調湿シート重量減少量を測定して、以下の基準により放湿性を判定した。
◎:調湿粒子1.0gあたりの吸湿量が0.2g以上であり、かつ吸湿した水分の90%以上を1時間で再放湿する。
○:調湿粒子1.0gあたりの吸湿量が0.2g以上であり、かつ吸湿した水分の75%以上90%未満を1時間で再放湿し、2時間で90%以上を再放湿する。
△:調湿粒子1.0gあたりの吸湿量が0.2g以上であり、かつ吸湿した水分の75%未満しか1時間で再放湿しないものの、2時間で75%以上90%未満を再放湿する。
×:調湿粒子1.0gあたりの吸湿量が0.2g未満である。又は吸湿した水分の75%未満しか2時間で再放湿しない。
【0204】
<吸水性>
10cm角にカットした調湿シート上に50μLの水滴をのせ、下記に示す水のしみ込み速さの基準により、吸水性を確認した。
◎:3分以内に水滴がすべてシート内に吸収される。
○:3分以内に水滴がすべてシート内に吸収されないが、水滴拭き取り後にウォータースポット(水がしみ込んだ跡)が観察される。
×:3分以内に水滴がすべてシート内に吸収されず、水滴拭き取り後もウォータースポットが観察されない。
【0205】
<防カビ性>
4cm角にカットした調湿シートのカビ抵抗性をJIS Z2911(かび抵抗性試験方法)に則り評価し、以下の基準により判定した。
◎:肉眼及び顕微鏡下でカビの発生は認められない。
○:肉眼ではカビの発生は認められない。
×:肉眼でカビの発生が認められる。
【0206】
[実施例1]
ガラス型で、上部に大気開放の水冷コンデンサが取り付けてある5Lセパラブルフラスコ(ジャケット付き)に、純水1000gを仕込んだ。80rpmで攪拌しながら、これにテトラメトキシシラン1400gを3分間かけて仕込んだ。水/テトラメトキシシランのモル比は約6/1である。
セパラブルフラスコのジャケットには50℃の温水を通水した。引き続き攪拌を継続し、内容物が沸点に到達した時点で、攪拌を停止した。引き続き約0.5時間、ジャケットに50℃の温水を通水して、生成したゾルをゲル化させた。
【0207】
その後、速やかにゲルを取り出し、目開き600ミクロンのナイロン製網を通してゲルを粉砕し、粉体状のウェットゲル(シリカヒドロゲル)を得た。このヒドロゲル450gと純水450gとを1Lのガラス製オートクレーブに仕込み、180℃で3時間、水熱処理を実施した。その後、目開き100ミクロンのナイロン製網を通して液を切り、濾滓を水洗することなく160℃で恒量となるまで減圧乾燥した。
【0208】
得られたシリカゲル(本発明のシリカ)をコーミル粉砕機で粉砕し、網を用いて分級を行なうことによって、平均粒径200μmのシリカ粉体(シリカゲル)を得た。得られたシリカ粉体中の各々の粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、これらの粒子は何れも破断面を持った破砕状の粒子であった。
得られたシリカについて、上述の手法によりその物性を測定したところ、比表面積が390m/g、細孔容積が1.00ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が8.8nm、平均粒径が200μm、シラノール量が3.9個/nmであった。
また、粉末X線回折図には結晶性のピークは出現しておらず、周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピークも認められなかった。
【0209】
このシリカと熱可塑性樹脂粉体(ポリエステル粉体;吸水率0.30%、水接触角93°、MFR45g/10min、融点125℃、平均粒径27μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/2で均一に混合し、この混合粉体の合計100部に対して抗菌剤である銀ゼオライトを更に1部加えて均一混合した。この混合粉体を基材シートであるポリエステル製スパンボンド不織布「エルタス エステル E1040」の上に400g/mとなるよう、均一に散布した。この上に更にスパンボンド不織布を重ね合わせて、2枚の基材シートの間に混合粉体を狭持させた。
次いで、この積層体をホットプレスにより、熱可塑性樹脂粉体の融点よりも10℃高い温度にて、0.5MPaで2分間処理して、熱圧着することにより、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0210】
なお、調湿層の厚さ及び空隙率は次のようにして求めた。即ち、基材シートとしてポリエステル製剥離フィルム又はアルミ箔を用いたこと以外は、各実施例及び比較例と同様にして調湿シートを製造し、その後、剥離フィルム又はアルミ箔を剥し取り、調湿層のみの厚さをマイクロメーターで各シート毎、8点測定し、その平均値を厚さとした。また、このシートから12cm×12cmのサンプルを切り出し、前述の空隙率の算出方法で、シリカの真比重=2、メソポーラスシリカの細孔容積=1.089cm/gとして、空隙率を計算した。
【0211】
[実施例2]
実施例1と同様のシリカと熱可塑性樹脂粉体とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0212】
[実施例3]
実施例1と同様のシリカと、熱可塑性樹脂粉体(ポリウレタン粉体;吸水率1.34%、水接触角75°、MFR12g/10min、融点115℃、平均粒径34μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/2で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0213】
[実施例4]
実施例1と同様のシリカと、実施例3と同様の熱可塑性樹脂粉体とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0214】
[実施例5]
実施例1と同様のシリカと、熱可塑性樹脂粉体(ポリアミド粉体;吸水率1.66%、水接触角64°、MFR50g/10min、融点115℃、平均粒径51μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/4で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0215】
[実施例6]
実施例1と同様のシリカと、実施例5と同様の熱可塑性樹脂粉体とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/2で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0216】
[実施例7]
実施例1と同様のシリカと、実施例5と同様の熱可塑性樹脂粉体とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0217】
[実施例8]
実施例1と同様のシリカと、実施例5と同様の熱可塑性樹脂粉体とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)2/1で均一に混合しした他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0218】
[実施例9]
実施例1と同様のシリカと、実施例5と同様の熱可塑性樹脂粉体とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)4/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0219】
[実施例10]
実施例1と同様のシリカと、熱可塑性樹脂粉体(ポリエチレン粉体(低密度ポリエチレン);吸水率0.09%、水接触角93°、MFR24g/10min、融点105℃、平均粒径21μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/2で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0220】
[実施例11]
実施例1と同様のシリカと、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径40μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/2で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0221】
[実施例12]
実施例1と同様のシリカと、熱可塑性樹脂粉体(ケン化EVA粉体;吸水率0.16%、水接触角82°、MFR90g/10min、融点100℃、平均粒径51μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/2で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0222】
[比較例1]
実施例1と同様のシリカと、実施例5と同様の熱可塑性樹脂粉体とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/8で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0223】
[比較例2]
実施例1と同様のシリカと、実施例5と同様の熱可塑性樹脂粉体とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)5/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0224】
[比較例3]
実施例1と同様のシリカと、実施例11と同様の熱可塑性樹脂粉体とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/5で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0225】
[比較例4]
実施例1と同様のシリカと、実施例11と同様の熱可塑性樹脂粉体とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)5/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表3に示した。
表3には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0226】
【表3】

【0227】
表3より明らかなように、調湿粒子を熱可塑性樹脂粉体により熱融着して成形するとき、熱可塑性樹脂粉体の重量がシリカの重量に比べて少ないほど、成形性(基材シートと調湿層の密着性)を得るのが困難なものの、シリカの細孔や粒子間空隙を溶融した樹脂が塞ぐことなく、保水スペースが増えることで、吸放湿性、吸水性が向上する。一方、熱可塑性樹脂粉体の重量がシリカの重量に比べて多いほど、成形性に優れるものの、溶融した樹脂が、シリカの細孔や粒子間空隙を塞ぐことによって吸放湿性、吸水性が低下する。従って、十分な成形性の調湿シートを得るためには、空隙率5%以上の調湿層を形成する必要があることがわかる。
【0228】
[実施例13]
実施例1と同様のシリカと、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径40μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表4に示した。
表4には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0229】
[実施例14]
実施例1と同様のシリカと、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径80μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表4に示した。
表4には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0230】
[実施例15]
実施例1の減圧乾燥で得られたシリカゲル(本発明のシリカ)を粉砕機(ホソカワミクロンAFG−200型)で粉砕し、更に気力分級を行なうことによって、平均粒径5μmのシリカ粉体を得た。得られたシリカ粉体中の各々の粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、これらの粒子は何れも破断面を持った破砕状の粒子であった。
得られたシリカについて、上述の手法によりその物性を測定したところ、比表面積が487m/g、細孔容積が1.06ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が8.3nm、平均粒径が5μm、シラノール量が3.9個/nmであった。
また、粉末X線回折図には結晶性のピークは出現しておらず、周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピークも認められなかった。
【0231】
このシリカと、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径20μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表4に示した。
表4には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0232】
[実施例16]
実施例15と同様のシリカと、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径40μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表4に示した。
表4には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0233】
[比較例5]
実施例13と同様のシリカと、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径20μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表4に示した。
表4には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0234】
[比較例6]
実施例15と同様のシリカと、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径80μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表4に示した。
表4には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0235】
【表4】

【0236】
表4より、調湿粒子を熱可塑性樹脂粉体により熱融着して成形するとき、シリカの粒径と熱可塑性樹脂粉体の粒径差が大きいと、粒径の小さな粒子が粒子間空隙に充填されてしまうため、均一な調湿層が得られず、十分な成形性を得ることができない。さらに、溶融した樹脂が、粒子間空隙を塞ぐことによって、吸放湿性、吸水性が低下する。一方、粒径差が小さいほど、シリカ及び熱可塑性樹脂粉体を均一に散布することができるため、シリカの細孔を塞ぐことなく、粒子間空隙を保持したまま十分な成形性(基材シートと調湿層の密着性)を得ることができ、また、そのような調湿シートは成形性、吸放湿性、吸水性、及び防カビ性に優れた調湿シートとなることがわかる。
【0237】
[実施例17]
水熱処理を130℃で行った他は実施例1と同様の条件で調製されたシリカ(比表面積が660m/g、細孔容積が0.78ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が4.7nm、平均粒径が200μm、シラノール量が5個/nm)と、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径40μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表5に示した。
【0238】
[実施例18]
水中に、シリカ:20重量%テトラエチルアンモニウム水酸化物(TEAOH)水溶液:セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTMABr)を、順に0.2:0.25:35の重量組成で含有するゲル混合物を調製した。具体的には、まず、水404gに62gのCTMABrを加え、室温で混合・攪拌した。攪拌を続けながら、次いでTEAOH水溶液100g、最後に41gのヒュームドシリカを加え、ゲル混合物とした。
得られたゲル混合物を、更に70℃で2時間攪拌し、室温で24時間熟成させた。次にオートクレーブを用いて、150℃で48時間加熱し、合成を行なった。冷却後、生成物を濾過洗浄、自然乾燥し、600℃で6時間焼成することにより、結晶性を有するシリカ(MCM−41)を得た。
このシリカ(比表面積が985m/g、細孔容積が0.78ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が3.60nm、平均粒径が200μm)と、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径40μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表5に示した。
【0239】
[実施例19]
調湿粒子としてA型シリカ(比表面積が650m/g、細孔容積が0.36ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が2.5nm、平均粒径が200μm)と、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径40μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表5に示した。
【0240】
[実施例20]
調湿粒子としてB型シリカ(比表面積が450m/g、細孔容積が0.80ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が7.0nm、平均粒径が200μm)と、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径40μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表5に示した。
【0241】
[実施例21]
調湿粒子としてセピオライト(比表面積が320m/g、細孔容積が0.70ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が1.1nm、平均粒径が200μm)と、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径40μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表5に示した。
【0242】
[実施例22]
調湿粒子としてゼオライト(比表面積が400m/g、細孔容積が0.50ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が1.0nm、平均粒径が200μm)と、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径40μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表5に示した。
【0243】
[比較例7]
調湿粒子としてアルミナ(比表面積が160m/g、細孔容積が0.40ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が7.1nm、平均粒径が180μm)と、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径40μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表5に示した。
【0244】
[比較例8]
調湿粒子として吸水性ポリマー(平均粒径が50μm)と、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径40μm)とを重量比(樹脂重量/シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表5に示した。
なお、表5には、実施例13の結果を併記した。
【0245】
【表5】

【0246】
表5より、調湿粒子としてケイ素化合物を含むものは短時間における吸湿性及び放湿性に優れていることがわかる。また、細孔径が大きいほど、より高湿度側で吸放湿を行うことができ、逆に細孔径が小さいほど、より低湿度側で吸放湿を行うことができ、このような特性を利用すれば、周囲環境に応じて細孔径の異なる調湿粒子からなる調湿シートを用いることで、適切な調湿を行うことができることがわかる。また、ケイ素化合物を含むものは、調湿粒子表面が親水性であるため、吸水性に優れた調湿シートを得ることができることがわかる。なお、吸水性ポリマーも優れた吸水性を示すものの、吸水による体積膨張により、調湿シートが破壊されてしまうため、好ましくない。
【0247】
[実施例24]
実施例17で用いたシリカ(破砕状)(比表面積が660m/g、細孔容積が0.78ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が4.7nm、平均粒径が200μm、シラノール量が5個/nm)と球状シリカ(比表面積が450m/g、細孔容積が0.60ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が6.0nm、平均粒径が200μm)とを重量比で1:1になるように均一に混合し、さらに熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径40μm)とを重量比(樹脂重量/混合シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表6に示した。
表6には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
【0248】
[比較例9]
実施例24の球状シリカ(比表面積が450m/g、細孔容積が0.60ml/g、細孔最頻直径(Dmax)が6.0nm、平均粒径が200μm)と、熱可塑性樹脂粉体(EVA粉体;吸水率0.09%、水接触角91°、MFR70g/10min、融点97℃、平均粒径40μm)とを重量比(樹脂重量/混合シリカ重量)1/1で均一に混合した他は実施例1と同様の条件で、調湿シートを得た。
得られた調湿シートの評価結果を表6に示した。
表6には、形成された調湿層の厚さ及び空隙率を併記した。
なお、表6には実施例17の結果を併記した。
【0249】
【表6】

【0250】
表6より明らかなように、調湿粒子として球状シリカを用いた場合には、シリカが最密充填されることによって、空隙率が小さくなる。球状シリカと破砕状シリカを混合して用いると、破砕状シリカと同じく最密充填されずに十分な空隙率を保持することができる。空隙率が大きいほど、空隙に保水することができるため、吸水性に優れ、より結露防止効果を発揮することができる。
【0251】
[実施例25]
実施例13で用いたシリカと、熱可塑性樹脂粉体との合計100部に対して抗菌剤である銀ゼオライトを更に5部加えて、均一混合した以外は、実施例13と同様の方法で調湿シートを得、その評価結果を表7に示した。
【0252】
[実施例26]
基材シートとしてテキスタイル(ポリエステル製平織織布:トロピカル「T5000」目付量100g/m、厚さ300μm)を片面に用いた以外は、実施例13と同様の方法で調湿シートを得、その評価結果を表7に示した。
【0253】
[実施例27]
剥離シートである半晒クラフト紙のシリコーンコート側にアクリル系粘着剤を70g/mとなるように均一に塗工して、十分に乾燥させ片面粘着シートを得た。更に、この粘着層面と実施例13で作製した調湿シートの片面とを張り合わせ、片面粘着処理調湿シートとし、その評価結果を表7に示した。
なお、表7には実施例13の結果も併記した。
【0254】
【表7】

【0255】
表7より、調湿層に抗菌剤をより多く添加することにより、防カビ性が改善されることが分かる。また、基材シートにテキスタイルを用いても、同程度の性能を得ることができ、吸水性においては、特に優れた調湿シートを得ることができる。なお、片面粘着処理により、施工性が向上する。
【0256】
[実施例28〜31、比較例10〜13]
図3又は図4に示すパウダーラミネート装置で本発明の調湿シートを作成した。上側シート37及び下側シート32をいずれもポリエステル製スパンボンド不織布とした。混合粉体フィードホッパー34には、実施例7に用いた調湿粒子及び熱可塑性樹脂粉体、さらに抗菌剤である銀ゼオライトを50/50/1の重量比で均一に混合し、充填した。上側シート37及び下側シート32のラインスピードは、いずれも2m/minとし、下側シート32の上方より、混合粉体フィードホッパー34で混合粉体を400g/minの速度で均一に散布した。この上に更に上側シート37を重ね合わせて、2枚の基材シート間に混合粉体を狭持させた。次いで、この積層体を表8に示す熱圧着条件で処理することにより、調湿シートを得た。得られた調湿シートの評価結果を表8に示した。
【0257】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0258】
本発明の調湿シートは、例えば、次のような用途に有用である。
(1) 建築物、倉庫の壁や天井面に取り付けて、結露による建材や家具、保管品の劣化を防止する。
(2) 冷蔵(冷凍)庫、冷蔵(冷凍)車の天井面等に取り付けて、結露による内蔵品の劣化を防止する。
(3) 電灯、精密電子機器など電気電子部品が内蔵される筺体の内壁に取り付けて、結露によるレンズの曇りや電気回路のショートを防止する。
(4) 楽器、絵画、人形等の保管ケースの内壁に取り付けてケース内を調湿し、保管雰囲気の湿度を好適な湿度に保つ。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】本発明の調湿シートの実施の形態を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の調湿シートの他の実施の形態を示す模式的な断面図である。
【図3】加熱ローラー式パウダーラミネート装置の製造ラインを示す模式的な構成図である。
【図4】加熱ベルト式パウダーラミネート装置の製造ラインを示す模式的な構成図である。
【符号の説明】
【0260】
1,2 基材シート
3 調湿粒子
4 熱可塑性樹脂粉体
5 粘着剤層
6 剥離シート
7 調湿層
10,10A 調湿シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を可逆的に吸放湿する調湿粒子が、熱可塑性樹脂粉体により互いに接着されてシート状に成形されてなる調湿層を備える調湿シートであって、
該調湿層の空隙率が5%以上であることを特徴とする調湿シート。
【請求項2】
請求項1において、前記調湿層を構成する熱可塑性樹脂粉体と調湿粒子との重量比が1/4〜4/1であることを特徴とする調湿シート。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記熱可塑性樹脂粉体の平均粒径と調湿粒子の平均粒径との比が1/8〜15/1であることを特徴とする調湿シート。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記調湿粒子の平均粒径が5〜1000μmであることを特徴とする調湿シート。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記調湿粒子がケイ素化合物が含有されていることを特徴とする調湿シート。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記調湿層に抗菌剤及び/又は防カビ剤が含有されていることを特徴とする調湿シート。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記熱可塑性樹脂の吸水率が0.2%以上で、MFRが55g/10min以下であることを特徴とする調湿シート。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、前記調湿層の少なくとも一方の面に通気性材料よりなる基材シートが積層されて一体化された積層調湿シートであることを特徴とする調湿シート。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、前記調湿層の少なくとも一方の面に基材シートが積層されて一体化されており、該基材シートの調湿層と反対側の面に粘着剤層が設けられており、該粘着剤層に剥離シートが積層された積層調湿シートであることを特徴とする調湿シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−174730(P2008−174730A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318498(P2007−318498)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000230652)日本化成株式会社 (85)
【Fターム(参考)】