説明

調湿装置

【課題】同一室内空間内の区分別に除湿と加湿をそれぞれ必要とする空間に分けて行い、室内居住空間の快適性ならびに機能性の維持向上を目的とする。
【解決手段】躯体の一方を加湿機2として吸引した室内空気を加湿する水タンク6を有する加湿部7を設け、背反する他方を除湿機8として吸引した室内空気を冷却除湿する蒸発器12を設けて、吸引し除湿または加湿した室内空気をそれぞれの排気口から室内の所定方向に吹出すことにより、暖房した室内の居住者が居る側を加湿、その反対側の結露しやすい窓や壁面は除湿することができ、除湿と加湿をそれぞれ必要とする室内空間の快適性の確保ならびに機能性の維持向上を図ることができる効果のある調湿装置を得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冬期暖房した部屋の調湿装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、暖房した室内を適湿環境に保つために加湿装置が使用されるが、屋内壁面等の温度や材質によっては結露するため、室内絶対湿度の上昇を押えて結露の心配を無くしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その加湿装置、除加湿機および除湿機について図6を参照しながら説明する。
【0004】
この加湿装置は、吸い込んだ室内空気131から回転体102に水分を吸着させて乾燥させ、この乾燥させた空気の一部を乾燥空気132として背面吹出口113から吹き出す。一方、乾燥させた空気の他の部分133は、ヒータ105で暖められてから再び、回転体102を通過させられて、前記吸着した水分が与えられて潤った空気135となって吹出口111から吹き出される。水タンクを用いず、もともと室内の空気が含有している水分を再配分するから、室内の絶対湿度が上昇せず、室内の結露の心配がなく、保守も簡単になる。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−243226号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の除加湿装置は、主に結露防止を目的とし室内の絶対湿度をほとんど変えないことを特徴としており、例えば、室内が16℃45%(2003年1月の実測データ)の時、絶対湿度は5.3g/kgとなり、暖房して室温を20℃まで上げた場合、除湿側を30%とすると、絶対湿度は4.3g/kgとなり、加湿側は6.3g/kg、44%にしかならず、人体への適合値50〜70%と比べて加湿量が不足するという課題があり、結露を防止すると共に人への適度な加湿を行う調湿方法が要求されている。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を解決するもので、同一室内空間の除湿と加湿をそれぞれ必要とする部分に分けて行い、室内居住空間の快適性ならびに機能性を向上することができる調湿装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の調湿装置は上記目的を達成するために、躯体の一方を加湿機として吸引した室内空気を加湿する水タンクを有する加湿部を設け、他方を除湿機として吸引した室内空気を乾燥する除湿部を設けて、吸引し除湿または加湿した室内空気をそれぞれの排気口から室内の所定方向に送風するようにしたものである。
【0009】
本発明によれば、居住者が居る側を加湿、その反対側は除湿とすることができ、室内空間の除湿と加湿をそれぞれ必要とする部分に分けて行い、室内居住空間の快適性ならびに機能性を向上することができる調湿装置が得られる。
【0010】
また他の手段は、躯体天面部に細長い開口を設け、前記開口から送風機によって幕状の気流を噴出するエアカーテン部を備えたものである。
【0011】
そして本発明によれば、室内空間の異なる調湿区域を仕切ることができる調湿装置が得られる。
【0012】
また他の手段は、エアカーテン部の幕状に噴出する気流の噴出方向を可変できるようにしたものである。
【0013】
そして本発明によれば、室内空間の異なる調湿区域を仕切る範囲の調節ができる調湿装置が得られる。
【0014】
また他の手段は、加湿された空気を室内の所定のゾーンに導いて吹出すダクトを備えたものである。
【0015】
そして本発明によれば、冬期の暖房された部屋においては通常加湿を必要とする居住者に向けて集中して加湿することができ、室内居住空間の快適性が確保できる調湿装置が得られる。
【0016】
また、除湿された空気を室内の所定のゾーンに導いて吹出すダクトを備えたとしたものである。
【0017】
本発明によれば、冬期の暖房された部屋においては通常結露が発生する窓等の壁面にむけて乾燥空気を集中して送風することができ、室内居住空間の機能性の向上ができる調湿装置が得られる。
【0018】
また、加湿機ならびに除湿機は調湿風量制御部を設け、加湿機が小風量で運転時には除湿機を大風量で運転する運転制御手段を備えたものである。
【0019】
本発明によれば、室内空間全体と比べて比較的小さい加湿を要する居住者の占める空間には小風量で、冬期暖房された部屋においては結露が発生する窓等の大きい壁面には大風量で調湿する機能的な調湿ができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1記載の発明は、躯体の一方を加湿機として吸引した室内空気を加湿する水タンクを有する加湿部を設け、他方を除湿機として吸引した室内空気を乾燥する除湿部を設けて、吸引し除湿または加湿した室内空気をそれぞれの排気口から室内の所定方向に送風するようにしたものであり、居住者が居る側を加湿、その反対側は除湿とすることができ、室内空間の除湿と加湿をそれぞれ必要とする部分に分けて行い、室内居住空間の快適性ならびに機能性を向上させることができるという作用を有する。
【0021】
また、請求項2記載の発明は、躯体天面部に細長い開口を設け、前記開口から送風機によって幕状の気流を噴出するエアカーテン部を備えたものであり、上方へ噴出する幕状の気流は天井に当って広がり室内空間の異なる調湿区域をそれぞれ包み込むという作用を有する。
【0022】
また、請求項6記載の発明は、加湿機ならびに除湿機は調湿風量制御部を設け、加湿機が小風量で運転時には除湿機を大風量で運転する運転制御手段を備えたものであり、室内空間の調湿を要する空間容積に比例した調湿能力を配分するという作用を有する。
【0023】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0024】
【実施例】
(実施例1)
図1および図2に示すように、調湿装置の本体1は箱体で、躯体の相対する側面の一方を加湿機2として前面下方に周囲空気の吸込口3と、天面には処理された吸込空気を吐出する吐出口4を開口し、内部には室内空気を吸引して排出する多翼送風機5によって吸引した室内空気を加湿する水タンク6を有する加湿部7を設ける。他方の側面は除湿機8として前面下方の周囲空気の吸込口9と、処理された吸込空気を吐出する吐出口10を天面に、それぞれ加湿機2と背反する対称位置に配設し、内部には隔壁を設けて室内空気を吸引・排出する多翼送風機11によって吸引した室内空気を冷却除湿する冷凍サイクルの蒸発器12を設ける。そして蒸発器12から出るドレンは隣の水タンク6に排出される。また、吐出口4、10には空気の吹き出し方向をそれぞれ調節できるようにフレキシブルダクト13、14を回転自在に装着している。
【0025】
上記構成において、室内において装置の各部が運転されると、加湿機2では一方の室内空気を吸込口3から吸引し、加湿部7で水タンク6の水を噴霧し、所定の湿度にして吐出口4から吹き出す。同時に除湿機8では他方の室内空気を吸込口9から吸引し、蒸発器12で露点温度まで冷却し結露水として水分を除去し、所定の湿度にして吐出口10から吹き出す。そして加湿、除湿ともフレキシブルダクト13、14によって吹き出す方向を自在に調節できるから、図2のように人が居る方向は潤いゾーンとして、比較的近くから低めに加湿空気を吹き出す様にする。また結露が発生する窓や壁面に向けては乾燥ゾーンとして、除湿した乾燥空気を比較的遠くから広がり気味に調節することで居室の快適性向上と同時に窓や壁面を乾燥させ、その機能性を維持する。
【0026】
また、図示しないが調湿風量制御部を設け、対象範囲が近くで比較的狭い潤いゾーンには加湿機が小風量で運転し、対象範囲が広がりの大きい乾燥ゾーンには除湿機を大風量で運転する運転制御手段を備え、より効果的な調湿を行うことができる。
【0027】
(実施例2)
図3および図4に示すものは、実施例1の本体1の躯体天面部に細長い開口を設け、この開口から送風機によって幕状の気流を噴出するエアカーテン部を備えたものであり、実施例1と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0028】
調湿装置の本体15は箱体で、躯体の相対する側面の一方を加湿機16として前面下方に周囲空気の吸込口3と、前面上方には処理された吸込空気を吐出する吐出口17を開口し、内部には室内空気を吸引して排出する多翼送風機18によって吸引した室内空気を加湿する水タンク6を有する加湿部7を設ける。他方の側面は除湿機19として前面下方の周囲空気の吸込口9と、処理された吸込空気を吐出する吐出口20を前面上方に、それぞれ加湿機16と背反する対称位置に配設し、内部には隔壁を設けて室内空気を吸引・排出する多翼送風機21によって吸引した室内空気を冷却除湿する冷凍サイクルの蒸発器12を設ける。吐出口17、20には空気の吹き出し方向をそれぞれ調節できるように可動ルーバー17a、20aが装着されている。また、天面の中央部には上方へ幕状の空気を噴出してエアカーテンとする細長い開口22を吐出口17、20を区切るように設ける。回転軸方向に長い翼幅の多翼と、この多翼に合せて回転軸方向に長い吹出口24を有するケーシングとからなるクロスフローフアン23を前記の細長い開口22の内側へ装着している。吹出口24を有するケーシングは回転軸の円周方向へ動かすことで幕状空気の噴出方向の調節が出来るものとしている。
【0029】
上記構成において、装置の各部が運転されると、図4に示すように、吐出口17,20から加湿、除湿空気をそれぞれ吹き出す。そして天面中央の開口22からは上方へ幕状の空気を噴出してエアカーテンが潤いゾーンと乾燥ゾーンを仕切るものである。この時、エアカーテンの噴出空気は加湿、除湿空気をそれぞれ混合して中間の湿度を持ったものとなる。
【0030】
また、図3に示すように調湿風量制御部(図示無し)によって、対象範囲が近くで比較的狭い潤いゾーンには加湿機が小風量で運転し、対象範囲が広がりの大きい乾燥ゾーンには除湿機を大風量で運転する運転制御手段による運転時に、エアカーテンの噴出を潤いゾーン側の斜め上へ傾けると、除湿空気を誘引して潤いゾーンを加湿、除湿空気をそれぞれ混合した中間湿度の空気で囲みより効果的な調湿を行う。
【0031】
【発明の効果】
以上の実施例から明らかなように本発明によれば、吸引した室内空気を居住者が居る側を加湿、その反対側は除湿とすることができ、室内空間の除湿と加湿をそれぞれ必要とする部分に分けて行い、同一室内居住空間でゾーン毎の快適性ならびに機能性を合せて確保できる効果のある調湿装置を提供できる。
【0032】
また、幕状の気流を噴出するエアカーテン部を備えたものであり、上方へ噴出する幕状の気流は室内空間の除湿と加湿の異なる調湿区域を包み込むように分けて、室内居住空間のそれぞれの部分調湿を有効にする効果のある調湿装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の調湿装置構成図
【図2】同室内の調湿状態を示す図
【図3】本発明の実施例2の調湿装置構成図
【図4】同室内のエアカーテン垂直時調湿状態を示す図
【図5】同室内のエアカーテン傾斜時調湿状態を示す図
【図6】従来の除加湿機の構成図
【符号の説明】
1、15 本体
2、16 加湿機
3 吸込口
4、10、17、20 吐出口
5 多翼送風機
6 水タンク
7 加湿部
8、19 除湿機
9 吸込口
11、18、21 多翼送風機
12 蒸発器
13、14 フレキシブルダクト
22 開口
23 クロスフローフアン
24 吹出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体の両側に、それぞれ室内空気を吸引して排出する送風機と吸気口及び排気口を設け、一方を加湿機として吸引した室内空気を加湿する水タンクを有する加湿部を設け、他方を除湿機として吸引した室内空気を乾燥する除湿部を設けて、吸引し除湿または加湿した前記室内空気をそれぞれの前記排気口から所定方向に送風する調湿装置。
【請求項2】
躯体天面部に細長い開口を設け、前記開口から送風機によって幕状の気流を噴出するエアカーテン部を備えた請求項1記載の調湿装置。
【請求項3】
幕状に噴出する気流の噴出方向を可変としたエアカーテン部を備えた請求項1または2記載の調湿装置。
【請求項4】
加湿された空気を室内の所定のゾーンに導いて吹出すダクトを備えた請求項1または2記載の調湿装置。
【請求項5】
除湿された空気を室内の所定のゾーンに導いて吹出すダクトを備えた請求項1または2記載の調湿装置。
【請求項6】
加湿機ならびに除湿機は調湿風量制御部を設け、加湿機が小風量で運転時には除湿機を大風量で運転する運転制御手段を備えた請求項1または2記載の調湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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