説明

調理器具の製造方法

【課題】グリル皿の底面と発熱層との密着性を確保し、調理性能向上と耐久性、安全性、信頼性を確立しうる調理器具の製造方法を提供することを図る。
【解決手段】食品が載置される載置面2と、マイクロ波エネルギーを吸収して発熱するマイクロ波発熱体3を主成分とする発熱層4とを備えたグリル皿1の製造方法で、シート体状の発熱層4Aの表面に複数の連通孔5を形成した後、載置面2の背面側に発熱層4Aを圧着して発熱層4を形成させるので、圧着前または圧着中にこれら連通孔5を通じて円滑な脱気処理が行え、載置面2の底面側と発熱層4との強固な密着性を確保し、調理性能向上と耐久性、安全性、信頼性を確立できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置に用いる調理器具の製造方法、特に調理器具に形成された発熱層が、照射されたマイクロ波エネルギーを吸収することによって発熱する熱を利用して食品を調理する用途に用いられるグリル皿の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子レンジ等のマイクロ波加熱装置においては、食品に直接マイクロ波を照射することで食品を加熱するマイクロ波加熱機能に加え、マイクロ波加熱装置内に設置する調理器具、いわゆる、グリル皿を用いた調理機能が存在する。以下、これをグリル皿調理機能という。
【0003】
このグリル皿調理機能は、マイクロ波エネルギーを吸収して発熱するマイクロ波発熱体からなる発熱層が形成されたグリル皿を加熱室内に設置し、そのグリル皿の上に食品を載置して、マイクロ波エネルギーの照射により発熱層から発生する熱を利用し、その食品を調理するというものである。
【0004】
従来、前記のようなグリル皿機能を有する調理器具は、図10に示されるような構成のものがあり(例えば、特許文献1参照)、その製造方法について、図面を参照して説明する。
【0005】
図10は、特許文献1に記載されたマイクロ波発熱体100からなる発熱層101(発熱層101A、101B)が設けられた従来のグリル皿102の断面図である。
【0006】
これは、樹脂材とフェライトを混合させたマイクロ波発熱体100と金属製の受け皿103からなり、波型に形成された受け皿103の背面105にマイクロ波発熱体100を接着して構成したもので、調理物が載置される凸部104の直下側の発熱層101Aの厚みを、それ以外の部分の発熱層101Bより厚く形成したものである。
【0007】
このようなグリル皿102の一般的な製造方法は、図11、図12に示すようなものがある。
【0008】
図11、図12より、最初に樹脂材とフェライトを混錬したのち、スリット状の開口部をもつ押出し成型機(図示せず)を通して平板状のシート体に成型したマイクロ波発熱体100を、受け皿103の背面105に載置し、その後、マイクロ波発熱体100の圧着金型106および載置面107と嵌合する受け金型108によって挟持する。
【0009】
この時、圧着金型106および受け金型108を百数十度に保持しながら、脱気装置(図示せず)に連結された圧着金型106を通じて、圧着金型106とマイクロ波発熱体100との間、およびマイクロ波発熱体100と受け皿103の底面105との間を一定時間脱気した後、さらに一定時間の加圧工程を経て受け皿103の底面105に発熱層101A、101Bを構成するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−224080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の調理器具の製造方法においては、マイクロ波発熱体100は受け皿103の底面105を被覆する平板状のシート体に成型されているため、圧着金型106とマイクロ波発熱体100との間、およびマイクロ波発熱体100と受け皿103の背面105との間を脱気する工程で、マイクロ波発熱体100と受け皿103の背面105との間に、脱気しきれなかった残留気泡109が独立して発生する場合がある。
【0012】
また、マイクロ波発熱体100は、前記の脱気工程で百数十度に昇温するため、脱気工程の後の圧着工程では、マイクロ波発熱体100の内部から徐々に発生する微量のガスが、これらの残留気泡109を拡大させたりすることがあり、最初の残留気泡109の発生を如何に抑制するかという点が課題であった。
【0013】
このように残留気泡109が発生した状態では、発熱層101が照射されたマイクロ波を吸収して発熱しても、残留気泡109が存在する部位では、発熱層101から受け皿103の背面105に有効に熱伝導せず、受け皿103の載置面107に温度ムラが発生し、結果として調理物に加熱ムラが発生して、良好な調理結果を得られない場合があった。
【0014】
また、発熱層101のうち残留気泡109が存在する部位では、発熱層自体が他の部位より高温化する傾向にあり、多年の使用によるヒートサイクルの結果、部分的な亀裂や剥離に至る場合もあった。
【0015】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、調理器具の背面側と発熱層との密着性を確保し、調理性能向上と耐久性、安全性、信頼性を確立しうる調理器具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の調理器具の製造方法は、食品が載置される載置面と、複数の連通孔が形成され、マイクロ波エネルギーを吸収して発熱するマイクロ波発熱体を含有する発熱層とを備えた調理器具の製造方法であって、前記載置面の背面側に前記マイクロ波発熱体を圧着して前記発熱層を形成するものである。
【0017】
上記の製造方法によれば、載置面の背面側にマイクロ波発熱体を圧着する工程の前に、マイクロ波発熱体の表面に複数の連通孔を形成することにより、圧着金型とマイクロ波発熱体との間、およびマイクロ波発熱体と載置面の背面との間を脱気する工程で、マイクロ波発熱体の両面からだけでなく、これら連通孔を通じて円滑な脱気処理が行える。
【0018】
その結果、マイクロ波発熱体と載置面の背面との間に残留気泡が発生することを防止することが可能となり、その後の圧着工程においては、載置面の背面側とマイクロ波発熱体との強固な密着性を確保することができる。
【0019】
したがって、この圧着工程でマイクロ波発熱体100の内部から微量のガスが徐々に発生しても、これらは微細な独立気泡に留まり、載置面の背面側とマイクロ波発熱体との強固な密着性に影響することはない。
【0020】
したがって、調理器具の載置面の背面側と発熱層との初期からの強固な密着性を確保し、調理性能向上と耐久性、安全性、信頼性を確立しうる製造方法を提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の調理器具の製造方法によれば、マイクロ波発熱体と調理器具の載置面の背面との間に残留気泡が発生することを防止することが可能となり、最終的に載置面の背面側と
マイクロ波発熱体との強固な密着性を確保することができる。
【0022】
したがって、載置面の背面側に構成された発熱層の初期からの強固な密着性を確保し、調理性能向上と耐久性、安全性、信頼性を確立しうる製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1におけるグリル皿の断面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるシート体形状のマイクロ波発熱体の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波発熱体を主成分とする発熱層の構造を示す模式図
【図4】本発明の実施の形態1におけるグリル皿の成型行程(載置工程、脱気工程、脱気・圧着工程)を示す模式図
【図5】本発明の実施の形態2におけるシート体形状のマイクロ波発熱体の斜視図
【図6】本発明の実施の形態2におけるグリル皿の成型行程(載置工程、脱気工程、脱気・圧着工程)を示す模式図
【図7】本発明の実施の形態2におけるグリル皿の断面図
【図8】本発明の実施の形態3におけるグリル皿の成型行程(載置工程、脱気工程、脱気・圧着工程)を示す模式図
【図9】本発明の実施の形態3におけるグリル皿の断面図
【図10】従来のグリル皿の断面図
【図11】従来のグリル皿に用いた平板シート体形状のマイクロ波発熱体の斜視図
【図12】従来のグリル皿の成型行程を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1の発明は、食品が載置される載置面と、複数の連通孔が形成され、マイクロ波エネルギーを吸収して発熱するマイクロ波発熱体を含有する発熱層とを備えた調理器具の製造方法であって、前記載置面の背面側に前記マイクロ波発熱体を圧着して前記発熱層を形成するものである。
【0025】
本発明によれば、載置面の背面側にマイクロ波発熱体を圧着する工程の前に、マイクロ波発熱体の表面に複数の連通孔を形成することにより、圧着金型とマイクロ波発熱体との間、およびマイクロ波発熱体と載置面の背面との間を脱気する工程で、マイクロ波発熱体の両面からだけでなく、これら連通孔を通じて円滑な脱気処理が行える。
【0026】
その結果、マイクロ波発熱体と載置面の背面との間に残留気泡が発生することを防止することが可能となり、その後の圧着工程においては、載置面の背面側とマイクロ波発熱体との強固な密着性を確保することができる。
【0027】
したがって、この圧着工程でマイクロ波発熱体の内部から微量のガスが徐々に発生しても、これらは微細な独立気泡に留まり、載置面の背面側とマイクロ波発熱体との強固な密着性に影響することはない。
【0028】
なお、複数の連通孔の直径によっては、圧着工程でその直径が縮小あるいは連通孔の周壁が接触しあって最終的に連通孔自体が閉塞することもあるが、これらの状態は、載置面の背面側とマイクロ波発熱体との密着強度になんら影響することはない。
【0029】
したがって、調理器具の載置面の底面側と発熱層との初期からの強固な密着性を確保し、調理性能向上と耐久性、安全性、信頼性を確立しうる製造方法を提供できる。
【0030】
第2の発明は、特に、第1の発明で、マイクロ波発熱体を載置面の背面側に圧着させる
金型を用いて、発熱層に複数の穴状の凹部を形成するものである。
【0031】
本発明によれば、マイクロ波発熱体の初期の構成が孔のない平板状で形成されていても、圧着金型に複数の凸部を配設するなどの構成により、圧着金型がマイクロ波発熱体に近接していく段階で、マイクロ波発熱体の表面に複数の穴状の凹部を形成しながら同時に脱気工程を進行させることができる。
【0032】
この時、マイクロ波発熱体で孔状の凹部が形成される部分の厚みは薄くなるため、その該当部分と載置面の背面側で残留気泡はほとんど発生しない。また、複数の孔状の凹部と圧着金型の複数の凸部の間からも同時に脱気されるため、圧着金型とマイクロ波発熱体の間での残留気泡の発生もほとんどなく、載置面の背面側とマイクロ波発熱体との強固な密着性を確保することができる。
【0033】
第3の発明は、特に、第2の発明で、複数の穴状の凹部を、載置面の背面側に連通させて形成することにより、脱気工程だけでなく圧着工程においても、マイクロ波発熱体における載置面の背面側への連通部から脱気することができるため、脱気処理の確実性を高めることができる。
【0034】
第4の発明は、特に、第2から第3のいずれか1つの発明で、発熱層の露出面の中央から周囲方向に向けて配設密度を変化させながら、複数の穴状の凹部を形成することにより、この調理器具を実際に使用した場合に、加熱装置内のマイクロ波エネルギーの偏りに対応して複数の穴状の凹部の配設密度を最適化させることが可能である。
【0035】
実際には、調理器具の中央部近傍がその周囲より高温化しやすいので、それに応じて複数の穴状の凹部は中央部近傍の配設密度を大きく、周囲側を小さく設定しておけば、載置面の温度分布を均一化することができる。
【0036】
このように、載置面の背面側とマイクロ波発熱体との強固な密着性を確保しうると同時に、載置面の温度分布を均一化させた調理器具を製造することができる。
【0037】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態にかかる調理器具の製造方法は、一部従来の製造方法を用いることができる。また、各実施の形態特有の製造方法を適宜組み合わせることもできる。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0038】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における製造方法に基づいて構成されたグリル皿の断面図を示すものである。なお、以降の説明において、本発明による製造方法に基づいて構成された調理器具をグリル皿と呼ぶ。
【0039】
図1において、グリル皿1は、波板形状の載置面2の背面に、マイクロ波発熱体3を主成分とする発熱層4を圧着して構成したもので、発熱層4には載置面2の背面に連通する複数の連通孔5を形成している。
【0040】
図2は、同実施の形態1におけるグリル皿1の載置面2の背面に圧着する前のシート体に成型された発熱層4Aの状態を示す斜視図であり、図3は、同実施の形態1における発熱層4A内のマイクロ波発熱体3の状態を示す断面図である。
【0041】
図2、図3において、発熱層4を圧着前にこのようなシート体に成型する方法は、以下のようなものである。
【0042】
例えばキュリー温度が250〜330℃のマイクロ波発熱体3(フェライト粉末6)と、バインダー7(シリコーンゴム)を所定配合量にして、オープンロール(図示せず)やニーダー(図示せず)などの混練加工装置を用い、フェライト粉末6がバインダー7の中に均一に分散するまで混練し、その後、必要に応じて架橋剤を添加し、再度混練する。
【0043】
次に、これらの混練物の固まりを、スリット状の開口部(図示せず)を持つオープンロールで平板シート状に分出する。しかるのち、複数のピンを設けた打抜き型(図示せず)によって、図2に示すような複数の連通孔5を形成したシート状の発熱層4Aが形成される。
【0044】
図4は、同実施の形態1におけるグリル皿1の成型行程を示す模式図である。以上の図を用いて、本実施の形態1におけるグリル皿1の製造方法の構成、動作、作用について説明する。
【0045】
図4において、成型工程は、(a)載置工程、(b)脱気工程、(c)脱気・圧着工程の順に進行させるものである。
【0046】
まず、(a)載置工程では、グリル皿1の載置面2を下にして受け金型8の上に設置し、グリル皿1の載置面2の背面側にシート状の発熱層4Aを載置する。なお、グリル皿1は、ステンレス鋼板、溶融アルミニウムメッキ鋼板、アルミニウム板などが適用可能であるが、高熱伝導性、低熱膨張性などから見て、溶融アルミニウムメッキ鋼板、アルミニウム板などが比較的好適である。
【0047】
しかるのち、(b)脱気工程では、シート状の発熱層4Aの上方から圧着金型9を下降させてシート状の発熱層4Aをグリル皿1の載置面2の背面形状に合うように押しつけながら、受け金型8と圧着金型9の周囲の空隙から脱気を行う。この時、発熱層4Aには、あらかじめ複数の連通孔5が形成されているので、この連通孔5を通じて発熱層4Aの両面から効率的に脱気処理が進行する。
【0048】
そして、(c)脱気・圧着工程では、最終的に脱気処理が完了し、グリル皿1の載置面2の背面側にシート状の発熱層4Aを完全に圧着させる。これらの工程において、受け金型8、圧着金型9は、常時百数十度に保温されているため、発熱層4Aは円滑にグリル皿1の載置面2の背面形状に沿って広がり、最終的に載置面2の背面に密着する。
【0049】
以上のような製造方法で構成されたグリル皿1では、最終的に圧着された発熱層4と載置面2の背面との間には残留気泡などは発生せず、極めて密着性の高い状態を確保できる。また、(c)脱気・圧着工程で発熱層4Aの内部から微量のガスが徐々に発生しても、これらは微細な独立気泡に留まり、載置面2の背面側とマイクロ波発熱体との強固な密着性に影響することはない。
【0050】
したがって、グリル皿1の載置面2の底面側と発熱層4との初期からの強固な密着性を確保し、調理性能向上と耐久性、安全性、信頼性を共に確立しうる製造方法を提供できる。
【0051】
なお、この製造方法で構成されたグリル皿1の発熱層4には、複数の連通孔5が形成されるが、これらは脱気、圧着前に予め形成されたものであり、完成後の複数の連通孔5は明確な円孔状態を示さず、拡大して見ると比較的不規則な開口状態になり、本製造方法で構成したものであることを検証することができる。
【0052】
(実施の形態2)
図5は、同実施の形態2におけるグリル皿11の載置面12の背面に圧着する前のシート体に成型された発熱層13Aの状態を示す斜視図である。
【0053】
図5では、実施の形態1と同様に、スリット状の開口部を持つオープンロールで平板シート状に分出する。しかるのち、比較的細径の複数のピンを設けた打抜き型(図示せず)によって、図2に示すような複数の連通孔14を形成したシート状の発熱層13Aが形成される。
【0054】
図6は、同実施の形態1におけるグリル皿11の成型行程を示す模式図である。図7は、図6で示す成型工程を経て完成したグリル皿11の断面図である。以上の図を用いて、本実施の形態2におけるグリル皿1の製造方法の構成、動作、作用について説明する。
【0055】
図6において、成型工程は、実施の形態1と同様に、(a)載置工程、(b)脱気工程、(c)脱気・圧着工程の順に進行させるものである。
【0056】
まず、(a)載置工程では、グリル皿11の載置面12を下にして受け金型8の上に設置し、グリル皿11の載置面12の背面側にシート状の発熱層13Aを載置する。
【0057】
しかるのち、(b)脱気工程では、シート状の発熱層13Aの上方から圧着金型9を下降させてシート状の発熱層13Aをグリル皿11の載置面12の背面形状に合うように押しつけながら、受け金型8と圧着金型9の周囲の空隙から脱気を行う。
【0058】
この時、発熱層4Aには、あらかじめ複数の連通孔14が形成されており、この連通孔14を通じて発熱層13Aの両面から効率的に脱気処理が進行する。その過程で発熱層13Aの厚さは徐々に低減し、連通孔14は比較的細径に構成されているので、連通孔14の径も徐々に低減する。
【0059】
そして、(c)脱気・圧着工程では、最終的に脱気処理が完了し、グリル皿1の載置面2の背面側にシート状の発熱層13Aを完全に圧着させるが、この時点では、連通孔14はほぼ閉塞状態となり、最終的に発熱層13としてグリル皿11の載置面12の背面に圧着された状態では、これら連通孔14は小規模の凹部15として残存するか閉塞状態となる。
【0060】
したがって、発熱層13を構成する段階で確実な脱気処理を経て、載置面12の底面側と発熱層13との密着強度を確保して耐久性、安全性、信頼性を確立しうると共に、載置面12の底面側を外気から保護することも可能となる。
【0061】
なお、この製造方法で構成されたグリル皿11の発熱層13には、複数の連通孔14が圧縮されて不規則な凹部15や、微小な痕跡が形成されるので、これら連通孔14が脱気、圧着前に予め形成されたものであり、本製造方法で構成したものであることを検証することができる。
【0062】
(実施の形態3)
図8は、同実施の形態3におけるグリル皿21の成型行程を示す模式図である。図9は、図8で示す成型工程を経て完成したグリル皿21の断面図である。以上の図を用いて、本実施の形態3におけるグリル皿21の製造方法の構成、動作、作用について説明する。
【0063】
図8において、成型工程は、実施の形態1と同様に、(a)載置工程、(b)脱気工程、(c)脱気・圧着工程の順に進行させるものである。
【0064】
まず、(a)載置工程では、グリル皿21の載置面22を下にして受け金型8の上に設置し、グリル皿21の載置面22の背面側に全く孔を設けていない平板シート状の発熱層23Aを載置する。
【0065】
この時、上方に引き上げられている圧着金型24は、圧着面にピン状の凸部25を複数形成したものであり、これらの凸部25は、圧着金型24の中央部近傍に多く配設し、周囲方向に向けて配設密度を低下させた構成である。
【0066】
しかるのち、(b)脱気工程では、平板シート状の発熱層23Aの上方から圧着金型24を下降させて平板シート状の発熱層23Aを、グリル皿21の載置面22の背面形状に合うように押しつけながら、受け金型8と圧着金型24の周囲の空隙から脱気を行う。
【0067】
この過程で、発熱層23Aと圧着金型24の凸部25とが接触するにつれ、発熱層23Aに凸部25に対応した凹部26が複数形成されていく。そして、これらの凹部26を通じても効率的な脱気処理が進行する。
【0068】
そして、(c)脱気・圧着工程では、最終的に脱気処理が完了し、グリル皿21の載置面22の背面側にシート状の発熱層23Aを完全に圧着させて発熱層23として圧着させることができる。
【0069】
このようにして形成された発熱層23には、凹部26がグリル皿21の中央部近傍に密に配設され、周囲方向に向けて疎に配設された状態になる。
【0070】
このように製造されたグリル皿21をマイクロ波加熱装置(図示せず)に使用した場合に、加熱装置内のマイクロ波エネルギーの偏りに対応してグリル皿21の載置面22の温度分布を均一に保つことができる。
【0071】
また、グリル皿の中央部近傍はその周囲より放熱性が低いため、それに応じて複数の穴状の凹部26の配設密度も容易に最適化することができる。
【0072】
なお、この製造方法で構成されたグリル皿21の発熱層23Aには、規則的に凹部26が複数形成されるので、これらは少なくとも脱気、圧着時に圧着金型24で形成されたことが明らかであり、本製造方法で構成したものとして検証することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上詳細に説明してきたように、本発明にかかるグリル皿の製造方法によれば、グリル皿の底面と発熱層との密着性を確保し、調理性能向上と耐久性、安全性、信頼性を確立しうる調理器具の製造方法を提供しうるので、電子レンジ等のマイクロ波加熱装置だけでなく、広範囲なマイクロ波加熱機器の部材の製造方法として適用できる。
【符号の説明】
【0074】
1、11、21、102 グリル皿
2、12、22、107 載置面
3、100 マイクロ波発熱体
4、4A、13、13A、23、23A、101、101A、101B 発熱層
5、14 連通孔
8、108 受け金型
9、24、106 圧着金型
25、104 凸部
15、26 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品が載置される載置面と、複数の連通孔が形成され、マイクロ波エネルギーを吸収して発熱するマイクロ波発熱体を含有する発熱層とを備えた調理器具の製造方法であって、前記載置面の背面側に前記マイクロ波発熱体を圧着して前記発熱層を形成する調理器具の製造方法。
【請求項2】
前記マイクロ波発熱体を前記載置面の背面側に圧着させる金型を用いて、前記発熱層に複数の穴状の凹部を形成する請求項1に記載の調理器具の製造方法。
【請求項3】
前記複数の穴状の凹部を、前記載置面の背面側に連通させて形成する請求項2に記載の調理器具の製造方法。
【請求項4】
前記発熱層の露出面の中央から周囲方向に向けて配設密度を変化させながら、前記複数の穴状の凹部を形成する請求項2または3に記載の調理器具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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