説明

調理用オーブンおよび複数の調理技術を利用した関連方法

コンビオーブンは対流、蒸気およびマイクロ波の各調理源を含む。ユーザーが選択した調理プログラムをマイクロ波調理源と、他の少なくとも1つの調理源とを用いて実行する場合、オーブン制御は、調理プログラムによって設定された調理時間を変えずに、調理プログラムの操作の間に食品生産物に適用されるマイクロ波エネルギーレベルを食品生産物の質量入力値を用いて設定してするように構成されている。このマイクロ波エネルギーレベルは、マイクロ波エネルギー源を用いない調理プログラムと比べ、調理時間を変えずに、また質量に係わらず、同等の調理加減を最終製品で達成できるように設定することができる。オーブン制御部、または分離したコンピュータ化された装置、を使用して、非マイクロ波調理プログラムをマイクロ波強化型調理プログラムに自動変換することができる。このマイクロ波強化型調理プログラムは、オペレータが選択できるように前記オーブン制御部に保存される。対流熱調理源、蒸気調理源およびマイクロ波エネルギー調理源のパワー消費能力の合計がコンビオーブン電源から供給できる定格パワーよりも大きな場合、オーブン制御部がパワー共有利用規則を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般的に複数の調理技術(例えば、放射、対流、蒸気、マイクロ波)を利用して食品生産物に熱を伝達するコンビオーブン関し、更に詳しくは、利用者の入力情報を評価し、食品生産物パラメータに基づいて調理の手順と時間とを規定するコンビオーブンに関する。
【0002】
本願は、2006年3月8日に出願された米国仮出願第60/780,425号の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
食材に熱エネルギーを所定の時間加えて調理を行うことが伝統的に行われている。従来型のオーブンでは、オーブン空洞壁から放射される熱または食材表面の近くにある熱源、によって食材が調理される。対流オーブンでは、オーブン空洞内で食材の表面上を移動する加熱空気から熱エネルギーが対流によって食材の表面に伝達される。マイクロ波オーブンでは、マイクロ波エネルギーが食材の塊に直接吸収されて熱が伝達される。また蒸し器では、食材の表面に凝縮蒸気によって熱が伝達される。
【0004】
コンビオーブンでは、調理時間を短縮したり、味、食感、湿分、調理された食材の見た目を改善するために複数の伝熱過程が用いられる。通常、単一エネルギー源を用いる場合の食材の調理時間は、経験的に確立された温度−時間の関係に基づいて決められている。これらの時間−温度サイクルはレシピ毎に定められている。調理の成否はレシピに厳密に従うことに掛かっており、さもなければ、調理時間の終了が予測される頃に食品をサンプリングして、所望の調理段階が達成されていることを確認する必要がある。
【0005】
レシピに厳密に従う方法では、内部温度を測る内部温度プローブ装置の登場により改善が図られている。しかしながら、これらの装置による測定は点のみで行われるので、所望の調理結果を得るためには測定点を注意深く選ばなければならない。この場合においても、所望の調理結果が達成されていることを確認するため食材をサンプルすることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、対流、蒸気およびマイクロ波エネルギーの各熱源を含む新たなトリプルコンビオーブン開発されている。シングルまたはダブル熱源オーブンに比べ、この新しいトリプルオーブンは調理時間を短縮したり、食感、湿分、あるいは食材の見た目を改善したりできる可能性がある。しかしながら、トリプルオーブンは新しいため最適な調理手順が未だ確立されておらず、各調理師は既にあるレシピと調理法を新しいオーブンにレシピ毎に合わせていくという、よく見ても退屈な仕事を行わざるを得ない。更に新たなオーブンは、食品のタイプや重量と言った厨房で扱いやすいパラメータに基づく自動制御を有していないため、調理師はかなりの時間を掛けて厨房に合った新たな調理法を作り出す必要に迫られている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様では、調理用マイクロ波源と、少なくとも1つの非マイクロ波調理源とを含むコンビオーブンを用いた食品生産物の調理方法が提供される。このオーブンは前記食品生産物に対してユーザー選択が可能な調理プログラムを含み、このユーザー選択が可能な調理プログラムによって実施される調理操作は前記マイクロ波源と前記非マイクロ波源とを使用する。本方法は、オーブン容量を超えない食品生産物質量値を識別して食品生産物が調理プログラムの操作間に調理できるようにすること、ユーザー選択が可能な調理プログラムに従って調理操作を実行することを含み、前記調理プログラムの操作間に前記食品生産物に適用されるマイクロ波エネルギーレベルを、前記調理プログラムによって設定される調理時間を変えずに、前記食品生産物質量値を利用することによって設定できるようにすることを含む。
【0008】
別の態様では、調理用マイクロ波源と、調理用蒸気源と、調理用対流源とを含むコンビオーブンの使用方法が提供される。このオーブンは調理操作を制御するための制御部を含む。本方法は、食品生産物の非マイクロ波調理プログラムを前記制御部が受信し、前記非マイクロ波調理プログラムが蒸気または対流の少なくとも1つを利用し、蒸気または対流の少なくとも1つに加えてマイクロ波を使用するマイクロ波強化型調理プログラムに前記非マイクロ波調理プログラムを前記制御部が自動変換し、前記マイクロ波強化型調理プログラムを後に選択・使用できるように前記制御部が保管することを含む。
【0009】
更に別の態様では、調理用マイクロ波源と、調理用蒸気源と、調理用対流源とを含むコンビオーブンの設定方法が提供される。本オーブンは、調理操作を制御する制御部を含む。本方法は、前記コンビオーブンから分離したコンピュータ装置に食品生産物の非マイクロ波調理プログラムをアップロードすること、前記非マイクロ波調理プログラムは蒸気または対流の少なくとも1つを利用すること、蒸気または対流の少なくとも1つに加えマイクロ波を使用するマイクロ波強化型調理プログラムに前記非マイクロ波調理プログラムを前記コンピュータ装置が自動変換すること、前記マイクロ波強化型調理プログラムを前記コンピュータ装置から前記コンビオーブンの制御部に送信し、前記マイクロ波強化型調理プログラムを後に選択・使用できるように前記コンビオーブンの制御部に保存することを含む。
【0010】
更に他の態様では、対流熱調理源、蒸気調理源およびマイクロ波エネルギー調理源のそれぞれを含むコンビオーブンにおけるパワー共有利用を制御する方法が提供される。前記対流熱調理源、蒸気調理源およびマイクロ波エネルギー調理源の合計パワー消費能力は、前記コンビオーブンの電源から供給できる定格パワーより大きい。本方法は、(a)調理プログラムに従いある量の食品生産物を調理するために必要とされ前記調理源のいずれか1つから要求される個別のパワーが、前記調理源のパワー容量より大きな場合、このような調理源のパワー容量を利用してパワー共有利用の必要性を評価できるようにする工程と、(b)調理プログラムに従い複数の調理源を同時に用いて前記量の食品生産物を調理する際に必要なパワーが、工程(a)での調整を考慮しても、電源の定格パワーより大きい場合、前記複数の調理源からのパワー需要の合計が前記電源の定格パワー以下になるまで、食品生産物への固有パワー吸収率が最も低い調理源に供給されるパワーを減少させる工程とを含む。
【0011】
更に別の態様では、コンビオーブンにおける調理操作の制御方法が提供され、このオーブンは対流熱調理源、蒸気調理源およびマイクロ波エネルギー調理源のそれぞれを含む。これら対流熱調理源、蒸気調理源およびマイクロ波エネルギー調理源の合計パワー消費能力は、前記コンビオーブンの電源から供給できる定格パワーより大きい。所定の調理時間を有する調理プログラムに従いある量の食品生産物を調理する調理源のいずれかから要求される個別のパワーが、前記調理源のパワー容量より大きい場合には、必要とされる延長調理時間の決定にこのような調理源のパワー容量を利用する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
従来の欠点を克服するため、対流、蒸気およびマイクロ波エネルギーを使用した3エネルギー源コンビオーブン用の調理アルゴリズムをいくつか開発した。これらのアルゴリズムは、オーブンを制御するために、食材のタイプ、重量、大きさ、量など厨房で扱いやすい項目を使用するオーブン制御装置のベースとして用いられる。これらの制御アルゴリズムは、理論的および実験的な見解に基づいて開発されたもので、標準的なオーブン構造の実用的な操作条件全体に渡って有効なものである。
【0013】
本アルゴリズムは、オーブン空洞の大きさが0.1m3〜1.2m3まで、内部空洞1辺の寸法が500mmから2000mmまで、オーブン入力パワーが6kWから60kWまで、強制空気の移動速度がほぼ0から500cm/秒まで、蒸気の結露点が最低(すなわち換気オーブンの場合)から凝縮まで、またマイクロ波入力エネルギーが2.4kWから16kWの入力パワーまで対応する。
【0014】
開発されたアルゴリズムは下記の技術機関によって裏付けられている。
【0015】
技術背景
プラハ食品研究所(Food Research Institute Prague、チェコ共和国)のJIRINA HOUSOVAとKAREL HOKEは、マイクロ波オーブン中の水に吸収されるエネルギーが、オーブン中の水全体にわたり均一に分散されることを示すデータを開示している(Czech J. Food Sci. Vol. 20、No.3:117-124)。これは、オーブンへのエネルギー入力が同じ場合に食材の量を2倍にすると、マイクロ波エネルギーを用いて食材をある所定温度に加熱するまでの時間が2倍になることを実際に示している。
【0016】
電磁気論によれば、厚い誘電性媒体に吸収されるパワーは深さに依存する。この現象を一般的に表すため「表面吸収深さ」と呼ばれる量が定義される。この深さにおいて、パワーはその入射時の1/e倍、すなわち約37%まで低下する。表面吸収深さ(ASD:Absorption skin depth)は次式で表される。
【0017】
式1:ASD=λ/(2π×sqrt(ε)×tanδ)
ここでλは波長、εは誘電率、tanδは損失正接である。
【0018】
マイクロ波オーブン周波数3GHzにおいて、水の誘電率は76.7、損失正接は0.057である。一般的なマイクロ波オーブン周波数における波長はおよそ12cmであることから、水の表面吸収深さは約3.8cmとなる。このことは、約65%ものエネルギーが厚い食材の表面厚さ3.8cmに吸収されることを実際に意味している。食材の100%が水分ではないことは確かであるが、食材の大部分、標準的には85%は水分であり、実際に調理を行う際の表面吸収深さは約4cmとなる。図1を用いれば、緻密な食材の各層に吸収されるエネルギー部分を求めることが出来る。
【0019】
水の熱伝導率は0.6W/m℃であり、多くの食材のそれはこの値よりも幾分低く、標準的には約0.5W/m℃である。水の熱容量は4.2J/℃m3である。冷凍食品は非冷凍食品と異なる特性を持つ。いくつかの食材の場合、冷凍食品の熱伝導率は、非冷凍食品の3倍にも達し、標準的には約1.5W/m℃となる。他の多孔性食材の場合、冷凍材の熱伝導率は非冷凍材のそれよりもやや低い。食品を冷凍状態から非冷凍状態に変化させる際には多くのエネルギーを必要とするが、これは水の凝固潜熱(335kJ/kg)のためである。
【0020】
分析および実験的研究によれば、対流オーブン中の食材への熱の移動速度は2から8kJ/秒m2である。この速度は食材の形状および使用される調理用具により異なる。標準的な食品の重量当たりの表面積は、0.02(例えば、小さなリブロース)から0.15m2/kg(例えば、鶏の脚)である。重量当たりの表面積が約0.06m2/kgの物に対し、200℃に加熱された標準的な対流オーブン中の有効対流加熱速度は約120J/kg/秒である。
【0021】
分析および実験的研究によれば、蒸気オーブン中の食材への熱の移動速度は約5kJ/秒m2である。一般に蒸し調理される食品の表面積は0.12(例えば小さなジャガイモ)から1.5m2/kg(例えばエンドウ豆)であり、蒸気の標準的な平均加熱速度はジャガイモなどの高密度な野菜に対して約140J/kg/秒、インゲンなど小さな多孔性の野菜に対して約420J/Kg/秒である。
【0022】
一般にオーブンの性能は、それが対流モードであれ蒸気モードであれ、オーブンのパワー容量で決まる。オーブンのパワー容量が不十分な場合、過度な量の食材をオーブンに入れると上記の加熱速度が得られなくなる。特に、単位重量当たりの表面積が大きなエンドウ豆やインゲンを蒸気加熱する場合、このことが当てはまる。
【0023】
対流および蒸気による加熱工程を食材の表面積で考えることが技術的には自然であるが、表面積は厨房における自然な測定単位ではない。厨房では重量が遙かに使いやすい単位である。食材重量に基づけば、最も有用なアルゴリズムを作ることができる。したがって食材−調理パラメータを重量で分類することが重要である。図2のグラフはいくつかの代表例を示したものである。重量当たりの表面積は、特に野菜などの小さなもので最も大きく変動する。ローストやべークなどの焼き調理をするものには、大きな分類の食材に適した標準的な重量当たり表面積を選定し適用することが出来る。一見すると、重量当たりの表面積を用いた広い一般化が、調理の出来具合を巨視的に分類するための方法と考えられるが、実際のところそうではない。一定の形状と大きさを維持することは、量管理や調理の同等性管理の一環として、全ての業務用厨房における日常業務の1つとなっている。
【0024】
以下に基本的な調理アルゴリズムを例示する。
1) (食材のタイプまたは分類入力)
2) (食材の負荷重量入力)
3) (最終条件入力)
4) (パラメータ検索)
5) (湿度条件自動設定)
6) (曲線因子自動設定)
7) (熱条件自動設定)
8) (マイクロ波条件自動設定)
9) (調理時間自動設定)
10)(調理サイクル開始)
11)(調理終了信号)
【0025】
別の一般型調理アルゴリズムは上記基本アルゴリズムを拡張したもので、一群の食材に一連の調理サイクルを実施して調理を完了させる場合に適用される。
1) (食材のタイプまたは分類入力)
2) (食材の負荷重量入力)
3) (最終条件入力)
4) (パラメータ検索)
5) (湿度条件自動設定 1)
6) (曲線因子自動設定 1)
7) (マイクロ波条件自動設定 1)
8) (熱条件自動設定 1)
9) (調理時間自動設定 1)
10)(調理サブサイクル開始 1)
11)(湿度条件自動設定 2)
12)(曲線因子自動設定 2)
13)(熱条件自動設定 2)
14)(マイクロ波条件自動設定 2)
15)(調理時間自動設定 2)
16)(調理サブサイクル開始 2)
17)その他
18)(調理終了信号)
【0026】
上記で(最終条件)とは、肉について言えば最終の内部温度または焼き加減(レアー、ウェルダン等)、また野菜について言えば固い、柔らかい等を意味する。
【0027】
上記のパラメータ検索では、特定の食材についてのパラメータを呼び出し、次の工程でパラメータ手段を設定し、このパラメータを用いてオーブンパラメータを計算し、計算された情報を用いてオーブンのパラメータを設定する。既に算出されたパラメータの組合せを呼び出し、オーブンのパラメータを設定するようにしてもよい。後者は、厨房で同じ調理が繰り返される場合に有用である。
【0028】
調理時間サブアルゴリズムの一般式は次の通りである。
式2:(調理時間、秒)=(食材質量、kg)×(食材固有の調理エネルギー、J/kg)/{[(オーブン蒸気加熱速度、J/kg秒)+(オーブン熱加熱速度、J/kg秒)]×(食材質量、kg)+(オーブンマイクロ波加熱速度、J/秒)×(曲線因子)}
【0029】
(調理時間)サブアルゴリズム中のの(加熱速度)パラメータは、オーブン構造の詳細や、食材分類の詳細にある程度依存する。熱・蒸気(加熱速度)サブアルゴリズムは次の通りである。
【0030】
式3:(加熱速度、J/kg秒)=(面積当たり加熱速度、J/m2)×(食材の比表面積、m2/kg)
【0031】
(面積当たり加熱速度)はオーブン構造に固有のもので、各構造について決められるものである。(食材の比表面積)は一見したところ大きく変化するパラメータのように見えるが、様々な分類の食品についてそうではない。なぜなら業務用厨房では、食材の大きさ、形状、重量が既に量管理の一環として決められているからである。(面積当たり加熱速度)および(食材の比表面積)はアルゴリズム用として検索テーブル中にあり、(オーブンマイクロ波加熱速度)も同様である。
【0032】
(曲線因子)の項が(オーブンマイクロ波加熱速度)の項と共に含まれているが、これは少量の食材、または多孔性で熱伝導率の低い食材がオーブンに入れられる場合に対処するためである。マイクロ波エネルギーはオーブン内の水に均一に吸収されるが、この際、過剰なエネルギーが投入されてある種の食材を過剰に調理してしまうことがある。(曲線因子)はマイクロ波エネルギーに有利に作用する。(曲線因子)はオーブン負荷、食材および調理サイクルのタイプに基づく検索値としてもよい。
【0033】
(食材固有の調理エネルギー)は多くの分類の各食材について類似した値であるが、各分類固有の特性に依存する。(食材固有の調理エネルギー)サブアルゴリズムの一般式は次の通りである。
【0034】
式4:(食材固有の調理エネルギー、J/kg)={(食材の最終温度、℃)−(食材の初期温度、℃)}×(食材の熱容量、J/kg℃)+(調理時に失われる水、kg)×(水の気化潜熱、J/kg)−(冷凍食材の初期温度、℃)×(冷凍食材の熱容量、J/kg℃)×(食材の質量、kg)+(冷凍する食材の水の潜熱、J/kg)
【0035】
一見したところ熱容量および潜熱パラメータは個別に定められるように考えられるが、実はそうではない。なぜなら食材中の主な成分は水であり、更に水は他の食材成分に対してかなり高い熱容量を有しているため、このパラメータには水単体の値を使用することができるからである。同様にして、初期温度は、どのような業務用厨房においても一般に同じである。最終温度、例えば各種肉の色や焼き具合に対する内部温度、は既に確立されている。多くの場合(食材固有の調理エネルギー)は、アルゴリズム用として検索テーブル中に含むことが出来るが、各個別のケースに対しては計算を行っても良い。
【0036】
上記のアルゴリズムをよく調べると、別の等価な式に書き換えられることが分かる。例えば、
式5:(調理時間)=(食材の質量)×(食材固有の調理エネルギー)/{[(蒸気加熱速度)+(熱加熱速度)]×(食材の質量)+(マイクロ波率)}
【0037】
上式は下式に書き換えられる。
式6:(調理時間)=(食材固有の調理エネルギー)/{[(蒸気加熱速度)+(熱加熱速度)]+(マイクロ波率)/(食材の質量)}
【0038】
第1の式においては、入手可能なマイクロ波エネルギーが一定であると理解する方が容易であり、実際そのようになっている。マイクロ波エネルギーはオーブン中の食材の塊全体を均一に分散する。マイクロ波のみを取りあげると、調理時間はオーブン中の食材の量に依存する。またこの式より、オーブンから伝わる熱および蒸気エネルギーの合計は、オーブン中の食材の量に応じて変わることが分かる。
【0039】
第2の式においては、熱および/または蒸気エネルギーのみを用いるこれらのアルゴリズムでは、負荷がオーブンの容量範囲内にある限り調理時間は負荷に左右されないものと考える方が理解しやすい。
【0040】
以下、調理時間および湿度設定サブアルゴリズム、または典型的な食材グループサイクルと条件の詳細を示す。ここに示すサイクルは最も単純なサイクルで、ある食材分類に対し最短の調理時間を与えるものである。実用的には多くの場合、基本サイクルを2つの部分に分けて、これらのサブサイクルを繋ぐことが好ましい。この場合、所望の結果を達成する、または調理された食材の特性を強調するために1つ以上のパラメータを工程毎に変える必要がある。この際、調理時間が基本サイクルより長くなることがしばしばある。場合によっては、サイクルの組み合わせ(これらサイクルの同時実行)、例えば「焦がし」を「ロースト」と組み合わせる、または解凍と調理を同時に行うことなどによりこの問題は軽減される。
【0041】
焦がしサイクル
約175℃より高いの温度における(焦がし時間)は、15−(T−260)×0.18分で与えられる。湿度は高く、ただし凝縮しない程度に設定する。
【0042】
ローストサイクル
調理時間は、肉の所定内部温度およびオーブンの調理温度に依存する。発明者らの分析および実験により、肉を冷蔵温度からあぶる際に要求される一般的なエネルギーを下記の表から求められることが判明した。相対湿度は高く、ただし凝縮しない程度に設定して、ロースト中に湿分がなくならないようにする。理想的には湿度設定は凝縮が起こらない範囲で高いほど好ましく、典型的には湿度を約95℃までの範囲の結露点に設定する。
【0043】
内部温度 ℃ エネルギー KJ/kg
40 120
50 160
60 210
70 250
80 290
85 310
【0044】
肉をローストする際の(調理時間)は、以下に等しい。
(肉の総質量)×(食材固有の調理エネルギー)/{(伝熱率)×(肉の質量)+(マイクロ波加熱速度)}
【0045】
内部温度60℃のレア−を175℃でローストする場合、標準的なオーブン負荷を12kg、標準的伝熱率を120J/秒kg更にマイクロ波加熱速度を2000J/秒とすると、調理時間は12×210000/(120×12+2000}、すなわち729秒となり約12分掛かることが分かる。この時間は、上記したオーブンにおける最短のロースト時間である。ローストの内部温度をより均一(色をより均一)にすることが好ましい場合、時間を長くする必要がある。マイクロ波パワーを1/3だけ減じ、時間を20分とすることで非常に良好な結果を得ることができる。このように調理時間を短くする場合、通常は焦がしサイクルを同時に行うことが好ましい。この場合、サイクルを連続させても良いし、温度を175℃以上の高めに設定して調理を行っても良い。
【0046】
このローストサイクルは鶏のローストに適している。入力パラメータは、例えば最終温度を高くする、調理時間を長くするなど、鶏肉に適したものとする。
【0047】
解凍サイクル
解凍サイクルは調理サイクルの一部として冷凍野菜の調理を行うことを意図したものであるが、場合によっては冷凍食品を室温に戻すために使用することもできる。
【0048】
(解凍時間)は以下に等しい。
(凝固潜熱)×(食品質量)/{(マイクロ波加熱速度)×(曲線因子)+[(蒸気加熱速度)+(加熱速度)]×(食品質量)}
【0049】
1.25kgの鶏12羽の標準ケースにおけるこの値は336000×16/{2000×0.3+[140+60]×16}、すなわち1415秒に等しくなる。この解凍の式では(曲線因子)の項が明示されているが、これはある種の食材の熱伝導率が比較的低く、小さな曲線因子が温度分布の不均一を招く場合があるためである。
【0050】
野菜サイクル
野菜サイクルでは、マイクロ波パワーに加え凝縮蒸気および熱を使用する。新鮮な野菜に対する(調理時間)は次に等しい。
【0051】
(野菜の質量)×(食材固有の調理エネルギー)/{[(蒸気加熱速度)+(熱加熱速度)]×(野菜の質量)+(マイクロ波率)}
【0052】
9kgのインゲンを調理する標準的ケース、すなわちkg当たりの表面積が大きい多孔性野菜の場合、(調理時間)は9×165000/(420+60)×9+2000、つまり424秒となる。ジャガイモなどキログラム当たりの表面積が小さい高密度な野菜の場合、(調理時間)は9×336000/(140+60)+2000、すなわち796秒となる。これらの例において、ある種の野菜は大きな表面積のため加熱速度の項が影響を受けることに留意すべきである。
【0053】
ベーキングサイクル
湿度を最低レベルに設定し、オーブンを通気する。ベーキングの主要工程の1つは湿分の低減にある。ベーキングの(調理時間)は以下に等しい。
【0054】
(食材の質量)×(食材固有の調理エネルギー)/{(加熱速度)×製品質量+マイクロ波加熱速度)}
【0055】
クロワッサン90個(9kg)を調理する標準ケースの調理時間は9×150000/{120×9+2000}、すなわち438秒となる。
【0056】
衝撃サイクル
多くの食品では、食材の表面を素早く直接加熱するため調理の第1段階として熱衝撃が加えられる。パンはその典型例で、パンの表面を素早く調理するため、凝縮蒸気のみをオーブンに注入する。凝縮蒸気による衝撃時間は10秒である。
【0057】
リサーム、再生または再加熱
多くの料理は給仕される遙か前に、完全またはほぼ完全な状態に調理され、給仕の際に再加熱される。特に、非常に短い時間で多くの料理を給仕する宴会場や飲食店などでは再加熱が一般的に行われている。相対湿度は高非凝縮露点、典型的には95Cに設定される。(再加熱時間)は以下に等しい。
(食材の質量)×(固有の再加熱時間)/{[(蒸気加熱速度)+(熱加熱速度)]×(食材の質量)+(マイクロ波率)×(曲線因子)}
【0058】
標準ケースの場合、再加熱時間は9×165000/{(140+60)×9+2000×0.3}、すなわち648秒である。
【0059】
このアルゴリズムは幅広い分類の食品用に一般化されたものであるが、特定の調理エネルギーおよび加熱速度をより狭義の食材分類に適用するという、本発明者らの意図する方法の範囲内である。実際に必要であれば、これらのパラメータを食材毎に定義することも出来る。更に、1つの調理サイクルにいくつかのプロセスを組み合わせることが好ましい場合がある。例えば、「解凍」と「多孔性野菜」、または、「焦がし」と「ロースト」の各アルゴリズムを組み合わせる。またある種の野菜については、多孔性サイクルを高密度アルゴリズムの前または後に組み合わせることが好ましい場合もある。
【0060】
図3の表にアルゴリズムをまとめる。
【0061】
自動制御
マイクロプロセッサー、シーケンスプロセス制御器、その他の制御器などのオーブン制御システムに上記のアルゴリズムを組み込むことが出来る。オーブンは、例えば文字入力やアイコンを用いた食品タイプの識別手段と、食材重量の入力手段と、レア、ウェル・ダンなどの調理条件を含める手段と、例えば調理加減、調理器具、地域的な調理スタイル、要望その他に応じ調理師が調理を補正できるように所定の条件からの逸脱を許可する手段と、を有するグラフィカルユーザーインターフェースを含むことが出来る。
【0062】
制御装置によって、調理、保持、開始延期オプションが可能になる。
これらのアルゴリズムを用いて、古い対流オーブンや蒸気対流コンビオーブン用に調理師が既に開発した食材−調理サイクルを、トリプルコンビオーブンの3つのエネルギー源を生かした新たなサイクルに変換することができる。
【0063】
制御システムは、検索テーブルおよび複数の調理サイクルを保管できる容量を有している。
【0064】
パラメータ、調理サイクルおよび食材分類の追加、既存のパラメータテーブルおよび調理サイクルの修正は本発明者らの意図する範囲内である。また、温度、時間、露点、曲線因子など基本的なオーブンパラメータを用いた調理サイクルの手入力を出来るようにすることも発明者らの意図することころである。
【0065】
制御システムはオーブンの基本機能と接続し、全てのオーブン機能を制御して所望の調理結果を達成する。
【0066】
図4は基本的なオーブン構造100の模式図で、外部筐体102、オーブンドア104および制御パネル106が示されている。この筐体内部には調理室108が画定される。このオーブンは、蒸気を調理室108に適宜送るように配管された付属の蒸気発生器110(例えば、電気またはガスボイラー)を含む。蒸気発生器110は図示したように主筐体102内部に組み込んでもよく、また主筐体102に接続された別のユニットであってもよい。マイクロ波発生器112はマイクロ波を放射し、このマイクロ波が導波管などによって画定される適当な通路を介してオーブン空洞108に送られる。対流熱源114は、電気またはガスを用いた加熱要素116、1つ以上のブロアー118、調理室108を出入りする空気流の適当な往復通路などとともに形成してもよい。オーブンの構成は様々である。
【0067】
ユーザーインターフェース106、蒸気発生器110、マイクロ波発生器112、対流熱源114とともに制御装置150を用いたオーブン100の基本制御図を図5に示す。上述のアルゴリズムおよび方法に従い制御装置150をプログラム化することができる。
【0068】
上記のアルゴリズムおよび関連する前提条件を利用すれば、対流、蒸気およびマイクロ波を用いたトリプルコンビオーブンに基づく有利な方法および装置を様々に実行することができる。以下、この点について詳述する。
【0069】
異なる食品生産重量に対する調理サイクル時間の一貫性
業務用厨房では、食品生産物の等質性と準備時間の一貫性が所望されている。蒸気と対流のみを用いたコンビオーブンの場合、オーブン容量を超えない限り、調理時間はオーブン内に置かれた食品生産物の質量の影響を受けない。しかしながら上述したように、マイクロ波エネルギーを用いた際の調理時間は、調理される食品生産物の質量の影響を受ける。従い、このような要因を考慮したトリプルコンビオーブンを提供することが望ましい。
【0070】
マイクロ波調理源と、少なくとも1つの非マイクロ波調理源とを含むコンビオーブンを用いた食品生産物の調理方法が提供される。このオーブンは食品生産物に対しユーザーが選択できる(例えば、図4、5のインターフェース106を介して選択可能な)調理プログラムを含む。ユーザー選択が可能な調理プログラムによって実行される調理は、マイクロ波源および非マイクロ波源(例えば、蒸気または対流のいずれか、または蒸気と対流の両者)を使用する。この方法は、オーブン容量を超えない食品生産物の質量値を識別して食品生産物が調理プログラムの操作間に調理できるようにすること、ユーザー選択が可能な調理プログラムに従って調理操作を実行することを含み、前記調理プログラムの操作間に前記食品生産物に適用されるマイクロ波エネルギーレベルを、前記調理プログラムによって設定される調理時間を変えずに、前記食品生産物質量値を利用することによって設定できるようにすることを特徴とする。
【0071】
一実施形態において、コンビオーブン調理プログラムを開始する第1の工程は、特定の食品生産物タイプに合った調理プログラムを選択するインターフェースボタン(または表示されたグラフィックアイコン)のオペレータによる操作であってもよい。例えば、オペレータが鶏のアイコンを押すと鶏調理プログラムが開始する、野菜アイコンのボタンを押すと野菜調理プログラムが開始する、またはローストアイコンを押すとロースト調理プログラムが開始するなどである。別の例では、異なる調理プログラムにそれぞれ異なる番号を付け、調理プログラム番号と調理プログラムタイプとの関連表をオペレータが参照(または記憶)してもよい。
【0072】
食品生産物の質量値を識別する工程は、食品生産物固有の既知の重量(例えば、1kg)をユーザーに入力させることでもよい。代わりに、ユーザーに対して表示された重量範囲(例えば、質量範囲表示)からユーザーが選択してもよい。別の例として、業務用厨房において各品の大きさが変わらず重量または質量がほぼ一定であると考えられる場合、ユーザーはオーブン中に入れる食品生産物の数(例えば、鶏のむね肉10個など)を入力することもできる。このように、食品生産物の質量値は食品生産物の質量を示すどのような値でもよい。
【0073】
例として、食品生産物が鶏で、調理師が鶏を常に15分で調理できるように業務用厨房が整えられている場合を考える。この際2kgの鶏を調理するには、ある鶏調理プログラムのマイクロ波エネルギーレベルを例えば60%に設定して調理時間を15分にする。一方、1kgの鶏を調理する際の調理時間も15分にするためには、同じ鶏調理プログラムのマイクロ波エネルギーを例えば40%に設定する。このように、食品生産物の質量が大きくなるとマイクロ波エネルギーが概して大きくなる。上の式5または式6をオーブン制御に使用すれば、"マイクロ波率"パラメータを導入することで適用されるマイクロ波エネルギーレベルを適宜調整することができる。適用されるマイクロ波エネルギーは、一般的に、少なくとも1つのマイクロ波発生器の稼働時間(例えば、60%稼働または40%稼働などマイクロ波制御信号の負荷サイクルによって決められる時間)を調整することで設定される。一般に非マイクロ波熱源は、識別された食品生産物の質量値とは無関係なレベル(例えば、対流温度レベル)で操作される。
【0074】
上記の方法では、マイクロ波を使用したコンビオーブンにおいて、オーブンが自動的に食品生産物の質量を考慮して一定の調理時間内に同等の調理加減を達成する。この特徴により、比較的経験の浅いオペレータ(すなわち調理師ではない者)が、厨房を管理する調理師の要望に叶った食品生産物を一定の調理時間内に安定して作ることができるようになる。
【0075】
調理加減は、食品生産物のタイプに依存する1つ以上の要因に基づいて評価される。例えば肉の場合、調理加減の程度はレア、メディアム・レア、メディアム、メディアム・ウェル、ウェル・ダンの尺度、または温度スケールで決められる。肉についての別の例として、調理加減を温度や焼き加減で決めることも一般に行われている。野菜の調理加減は固さおよび/または食感に基づいて評価することもある。野菜に関する調理加減を示す用語として"歯ごたえがある"、"アルデンテ"または"非常に軟らかい"などが一般に使用される。焼き料理の調理加減は、焼き色および/または湿分で表すことができる。
【0076】
非マイクロ波調理プログラムのマイクロ波強化型調理への変換プログラム
上述のように、ダブルコンビオーブン(すなわち、対流および蒸気)を従来使用してきた市場にトリプルコンビオーブン(すなわち、対流、蒸気およびマイクロ波)を導入すると、新たな調理プログラムを決めることがユーザーにとって難しい場合がある。したがってオーブンの使用者がこのような変換を容易にできることが望ましい。1つの例では、このような変換機能をオーブン制御部に一体化することができる。他の例ではこのような変換機能を、別のコンピュータ化された装置で動作するプログラムとして提供することができる。
【0077】
統合変換機能
マイクロ波調理源、蒸気調理源および対流調理源を含むコンビオーブンを使用する方法が提供される。オーブンは調理操作をコントロールする制御部を含む。この方法は、蒸気または対流の少なくとも一方を利用する食品生産物用非マイクロ波調理プログラムを受信する制御部を含み、前記制御部が前記非マイクロ波調理プログラムを、蒸気または対流の少なくとも一方に加えてマイクロ波を使用するマイクロ波強化型調理プログラムに自動変換し、前記マイクロ波強化型調理プログラムを前記制御部が保存し後に選択・使用できるようにすることを含む。
【0078】
図4、5に示すインターフェース106からのユーザーインプットを介して上記制御部が非マイクロ波調理プログラムを受信してもよい。代わりに制御装置150が(例えば、有線または無線の)通信リンクを備え、これにより非マイクロ波調理プログラムを取り込んでもよい。上記理論に基づいたアルゴリズムおよび/または検索テーブルに従って上記制御部が変換を行う。具体的には、非マイクロ波プログラムによって食品生産物に送られる食材固有の調理エネルギーを上記の式4を用いて求めることができる。この際、蒸気または対流に対して予め決められた加熱速度、すなわち非マイクロ波プログラムに関連するオーブンの速度を用いる。(例えばこの場合、ユーザーが非マイクロ波プログラムを実行するための特定のオーブンを識別する場合もある。)次いで上記の式5または式6を用いて、マイクロ波強化型調理プログラムにより、実質的に同等な調理エネルギーを達成するために必要な調理時間の合計を計算することができる。この際、マイクロ波率(すなわちマイクロ波エネルギーレベル)を、特定の食品生産物について事前に求めた許容可能な速度に選定してもよい。例として高いマイクロ波率は肉よりも野菜に対して好ましい。従って自動変換が、マイクロ波強化型プログラムの最短調理時間を導き出すとは限らない。むしろ自動変換は、非マイクロ波強化型調理プログラムより速いマイクロ波強化型プログラムを作りだし、同時に食品生産物の品質を高いレベルに維持する。
【0079】
補助的変換
オーブン制御部とは別の装置の助けを借りて、同様な方法を実行することもできる。このような方法は特に、蒸気または対流の少なくとも一方を利用した食品生産物の非マイクロ波調理プログラムを、コンビオーブンから切り離されたコンピュータ装置にアップロードすることを含み、この非マイクロ波調理プログラムを、蒸気または対流の少なくとも一方に加えマイクロ波を使用するマイクロ波強化型調理プログラムにコンピュータ装置が自動変換し、このマイクロ波強化型調理プログラムをコンピュータ装置から前記コンビオーブンの制御部に送信し、マイクロ波強化型調理プログラムをコンビオーブンの制御部内で分類して後に選択・使用できるようにする。
【0080】
前述の方法における変換は、コンピュータ化された装置で実行されるアルゴリズムおよび/または検索テーブルを用いて行われる。コンピュータ化された装置としては、パーソナコンピュータ、ハンド・ヘルド・コンピュータまたはその他のコンピュータ装置が使用できる。コンピュータ化された装置へのアップロードは、電子式もしくは手入力方式、または両者の組み合わせによって行うことができる。また送信は、コンビオーブン制御部とコンピュータ装置との有線接続、コンピュータ装置からコンビオーブン制御部への無線送信、または両者の組み合わせによって行ってもよい。またウェブサイトを立ち上げ、ここにオーブン購入者がログオンしてトリプルコンビオーブンにアップロードする、さもなければ入力した非マイクロ波プログラムに対して送り返されたマイクロ波強化型プログラムをアップロードすることも考えられる。
【0081】
調理源間のパワー共有利用
コンビオーブンで起こり得るもう一つの課題として動力制限を考慮する必要がある。特に、コンビオーブンには定格パワーが定められており、複数の調理源を同時に操作する際に必要な合計パワーがこの定格パワーを超える場合がある。このため、調理プログラムによって動作する各調理源のパワーが確保できない場合、調理操作をどのように修正するかが課題となる。
【0082】
このため、コンビオーブンにおけるパワー共有利用の制御方法が提供される。オーブンは、対流調理、蒸気調理、マイクロ波エネルギー調理の各熱源を含む。対流調理、蒸気調理、マイクロ波エネルギー調理の各熱源のパワー消費能力の合計はコンビオーブンが使用できる電源の定格パワーよりも大きい。本方法は、(a)調理プログラムに従ってある量の食品生産物を調理するのに必要な調理源の何れかから要求される個別のパワーが調理源のパワー容量を超える場合、このような調理源のパワー容量を利用してパワー共有利用の必要性を評価できるようにする、(b)調理プログラムに従い複数の調理源を同時に用いて前記量の食品生産物を調理する際に必要なパワーが、工程(a)での調整を考慮しても、電源の定格パワーより大きい場合、前記複数の調理源からのパワー需要の合計が前記電源の定格パワー以下になるまで、食品生産物への固有パワー吸収率が最も低い調理源に供給されるパワーを減少させる。
【0083】
工程(a)は比較的簡単な規則を応用したもので、この規則とは、調理プログラムがある調理源に要求するパワーがその調理源のパワー容量を上回る場合、調理源をその最高パワー(すなわちそのパワー容量)に初期設定するということである。仮に調理プログラムが24.0kWのパワーを容量18kWの対流源に要求する場合、仮のオーブン操作とパワー共有利用分析の目的で、この対流源のパワーレベルは18kWに初期設定される。蒸気または対流調理源から要求されるパワーは、食品生産物の正または仮の表面積に対する食品生産物へのパワー吸収率を考慮して求めることができる。例えば、鶏のむね肉、エンドウ豆またはインゲンはそれぞれ特定の比表面積を有し、それぞれ対応するパワー吸収率(例えば、J/秒−kg)を有するものと見なすことができる。調理しようとする食品生産物の質量にこのパワー吸収率を掛けると、各調理源に必要とされるパワーの合計を求めることができ、これら調理源のパワー容量を超えるか否かを判定することができる。マイクロ波源の場合、パワー吸収率は食品生産物の質量によって実際に変化し、一般にマイクロ波から要求されるパワーはそのパワー容量を超えない。
【0084】
工程(b)は、調理プログラムによって調理源から要求されるエネルギーレベルが達成できない場合(すなわち要求されるパワーの合計が電源の容量を上回る場合)に必要とされる追加的な調理時間を可能な限り短くするための規則を実行するためのものである。食品生産物へのエネルギー供給量が最も小さな調理源、すなわち食品生産物への固有パワー吸収率が最も低い調理源、に供給されるパワーを低減することにより上記の目的が達成される。調理源毎に予め決められた吸収効率値に基づいて各調理源固有のパワー吸収率を算出することができる。固有パワー吸収率は、多くの用途で対流調理源が最も小さく、これに続いて蒸気調理源、マイクロ波調理源(質量に依存)の順に大きくなる。対流、マイクロ波および蒸気のそれぞれを同時操作する場合、例えばロースト調理時に蒸気源を短時間操作してオーブン中の湿度を維持するとともに対流およびマイクロ波も同時に操作する場合、蒸気調理源にある種の優先権を与えることが望ましい場合がある。この場合、例えば対流とマイクロ波とのみに基づいてパワー共有利用の必要性と方法を決定し、一方で蒸気源の短時間作動が必要な際には、対流源またはマイクロ波源の何れかを一時的に無効にするようにオーブンを制御してもよい。代わりに、パワー共有利用の必要性評価に蒸気源を含める一方、蒸気源はパワー削減の対象としない方法も可能である。別の代替法として、例えば、対流源またはマイクロ波源の何れかが休止している際には蒸気源のみにパワーが供給されるようにオーブンを制御してもよい。
【0085】
上記の工程(b)または規則を実行する際には、料理の品質を考慮することが好ましい。その方法の1つは、定められた調理源のパワー比限界(例えば、マイクロ波エネルギーにより伝えられるパワーのうち対流により伝えられる比パワー)の1つ以上を利用することである。鶏を調理する場合を例に挙げると、マイクロ波のパワーが対流に比べて高すぎる場合、鶏の食感が悪くなる。このような調理源のパワー比限界を監視することにより、仮に工程(b)でこのような限界比とならなかった場合、調理源のパワー比限界に関連する両方の調理源へのパワーを、(i)複数の調理源からのパワー需要の合計が電源の定格パワー以下になり、(ii)調理源パワー比限界の侵害が防げるようになるまで減らすことができる。
【0086】
必要な追加的調理時間の自動見積
調理源が供給できる以上のパワーを調理プログラムが要求する場合、または同時に作動する複数の調理源の間でパワー共有利用が必要な場合、最終製品の調理加減が同等になるまで調理時間を延長する必要が生じる。このため、対流熱調理源と、蒸気調理源と、マイクロ波エネルギー調理源とをそれぞれ含み、対流熱調理源、蒸気調理源およびマイクロ波エネルギー調理源のパワー消費量の合計がコンビオーブン電源の定格パワーより高いコンビオーブンの調理操作を制御する方法が提供される。本方法は、所定の調理時間を有する調理プログラムに従いある量の食品生産物を調理するいずれか1つの調理源から要求される個別のパワーが、前記調理源のパワー容量より大きい場合には、必要とされる延長調理時間の決定にこのような調理源のパワー容量を利用する。延長調理時間は上記の式2を用いて求めることができる。オーブン制御部によって調理プログラムのクロックを自動調整し(例えば、6分の調理プログラム用タイマーに対し、6分30秒作動させるなどして)延長調理時間を反映してもよい。
【0087】
以上の記述は説明と例示を意図したものであり、限定を意図したものではないことは明確に理解されるべきである。様々な変形例が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】マイクロ波パワー吸収と深さの関係を示すグラフである。
【図2】各種の食品生産物タイプにおける単位重量あたりの代表的表面積を示す棒グラフである。
【図3】いくつかの代表的な調理アルゴリズムをまとめた表である。
【図4】対流、蒸気およびマイクロ波源を含むコンビオーブンの模式図である。
【図5】図4のオーブンの制御装置の模式図である。
【符号の説明】
【0089】
100 基本的なオーブン構造
102 外部筐体
104 オーブンドア
106 制御パネル(ユーザーインターフェース)
108 調理室
110 蒸気発生器
112 マイクロ波発生器
114 対流熱源
116 加熱要素
118 ブロアー
150 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理用マイクロ波源と、少なくとも1つの非マイクロ波調理源と、食品生産物に対しユーザー選択が可能な調理プログラムとを含み、前記ユーザー選択が可能な調理プログラムが、前記マイクロ波源と前記非マイクロ波源との両方を利用して調理操作を実行するコンビオーブンによる食品生産物の調理方法であって、
前記オーブンの容量を超えない食品生産物質量値を識別して食品生産物が調理プログラムの操作間に調理できるようにすること、
前記ユーザー選択が可能な調理プログラムに従って調理操作を実行すること、
前記調理プログラムの操作間に前記食品生産物に適用されるマイクロ波エネルギーレベルを、前記調理プログラムによって設定される調理時間を変えずに、前記食品生産物質量値を利用することによって設定できるようにすることを含む方法。
【請求項2】
調理時間を変えずに作られる最終製品の調理加減が質量に係わらず同程度となるように前記マイクロ波エネルギーレベルが設定される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調理操作を実行することが、識別された食品生産物質量値とは無関係なレベルで前記非マイクロ波源を操作することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記食品生産物質量値が、特定の質量または質量範囲指標の何れか1つである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
低いマイクロ波エネルギーレベルが小さな食品生産物質量に適用されるように前記マイクロ波エネルギーレベルを設定する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのマイクロ波発生器の作動時間を制御することにより、適用されるマイクロ波エネルギーレベルが設定される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
適用されるマイクロ波エネルギーレベルが、前記マイクロ波発生器の負荷サイクルを制御することにより設定される請求項7に記載の方法。
【請求項8】
調理用マイクロ波源と、調理用蒸気源と、調理用対流源とを含み、調理操作を制御する制御部を含むコンビオーブンの使用方法であって、
蒸気または対流の少なくとも1つを利用する食品生産物の非マイクロ波調理プログラムを前記制御部が受信すること、
蒸気または対流の少なくとも1つに加えてマイクロ波を使用するマイクロ波強化型調理プログラムに前記非マイクロ波調理プログラムを前記制御部が自動変換すること、
前記マイクロ波強化型調理プログラムを後に選択・使用できるように前記制御部が保管することを含む、方法。
【請求項9】
前記制御部によって実行されるアルゴリズムを利用することにより前記自動変換が行われる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記制御部によってアクセスされる検索テーブルを用いて前記自動変換が行われる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記蒸気または対流用に予め規定された加熱速度を用いて前記自動変換が行われる請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記制御部によって前記自動変換が行われ、
前記非マイクロ波調理プログラムを介して前記食品生産物に適用される調理エネルギーを決定し、
前記マイクロ波強化型調理プログラムが実質的に同じ調理エネルギーを達成するために必要な調理時間の合計を計算する請求項8に記載の方法。
【請求項13】
調理用マイクロ波源と、調理用蒸気源と、調理用対流源と、調理操作を制御する制御部とを含むコンビオーブンの設定方法であって、
前記コンビオーブンから分離したコンピュータ装置に食品生産物の非マイクロ波調理プログラムをアップロードし、前記非マイクロ波調理プログラムは蒸気または対流の少なくとも1つを利用すること、
蒸気または対流の少なくとも1つに加えマイクロ波を使用するマイクロ波強化型調理プログラムに前記非マイクロ波調理プログラムを前記コンピュータ装置が自動変換すること、
前記マイクロ波強化型調理プログラムを前記コンピュータ装置から前記コンビオーブンの制御部に送信すること、
前記コンビオーブンの制御部に前記マイクロ波強化型調理プログラムを後に選択・使用できるように保存することを含む方法。
【請求項14】
前記コンピュータ装置によって実行されるアルゴリズムを利用して前記自動変換が行われる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コンピュータ装置によってアクセスされる検索テーブルを用いて前記自動変換が行われる請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記蒸気または対流用に予め規定された加熱速度を用いて前記自動変換が行われる請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記コンピュータ装置によって前記自動変換が行われ、
前記非マイクロ波調理プログラムを介して前記食品生産物に適用される調理エネルギーを決定し、
前記マイクロ波強化型調理プログラムにより実質的に同じ調理エネルギーを達成するために必要な調理時間の合計を計算する請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記アップロードが電子的に達成されるか、前記アップロードが手入力を介して達成されるか、または前記アップロードがこれら2つの組み合わせにより達成される請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記送信が前記コンビオーブン制御部と前記コンピュータ装置との間の有線接続によって達成されるか、前記送信が前記コンピュータ装置との間の無線通信によって達成されるか、または前記送信がこれら2つの組み合わせにより達成される請求項13に記載の方法。
【請求項20】
対流熱調理源、蒸気調理源およびマイクロ波エネルギー調理源をそれぞれ含み、対流熱調理源、蒸気調理源およびマイクロ波エネルギー調理源の合計パワー消費能力が電源から供給可能な定格パワーよりも大きなコンビオーブンにおいてパワー共有利用を制御する方法であって、
(a)調理プログラムに従いある量の食品生産物を調理するために必要とされ前記調理源のいずれか1つから要求される個別のパワーが、前記調理源のパワー容量より大きな場合、このような調理源のパワー容量を利用してパワー共有利用の必要性を評価できるようにする工程と、
(b)調理プログラムに従い複数の調理源を同時に用いて前記量の食品生産物を調理する際に必要なパワーが、工程(a)での調整を考慮しても、電源の定格パワーより大きい場合、前記複数の調理源からのパワー需要の合計が前記電源の定格パワー以下になるまで、食品生産物への固有パワー吸収率が最も低い調理源に供給されるパワーを減少させる工程とを含む方法。
【請求項21】
(c)前記工程(b)によって要求される減少が、確立された調理源パワー比限界を侵害する場合、(i)複数の調理源からのパワー需要の合計が電源の定格パワー以下になるまで(ii)前記調理源パワー比限界を維持するように、前記調理源パワー比限界に関連する両方の調理源に供給されるパワーを減らす工程を更に含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
各調理源の固有パワー吸収率が、各調理源について予め決められた吸収効率値に基づいて評価される請求項20に記載の方法。
【請求項23】
対流熱調理源と、蒸気調理源とマイクロ波エネルギー調理源とをそれぞれ含むコンビオーブンにおいて、前記対流熱調理源、蒸気調理源およびマイクロ波エネルギー調理源の合計パワー消費能力が、前記コンビオーブンの電源から供給できる定格パワーより大きいコンビオーブンにおける調理操作の制御方法であって、
所定の調理時間を有する調理プログラムに従いある量の食品生産物を調理する調理源のいずれかから要求される個別のパワーが、前記調理源のパワー容量より大きい場合には、必要とされる延長調理時間の決定にこのような調理源のパワー容量を利用する工程を含む方法。
【請求項24】
前記調理プログラムの調理クロックが延長調理時間を反映するように自動調整される請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−529646(P2009−529646A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558514(P2008−558514)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/063449
【国際公開番号】WO2007/103958
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(503158936)プレマーク エフイージー リミティド ライアビリティー カンパニー (11)
【Fターム(参考)】