調節可能な部分的光学皮膚科的治療のための装置および方法
部分的治療システムでは、調節可能な機構は、治療深さおよび/または結果として生じる病変の特徴に影響を及ぼすように、ビーム形状、ビーム開口数、ビーム焦点深度、および/またはビーム寸法を調節するために使用することができる。これらのパラメータの調節は、治療の効率および有効性を改善することができる。調節可能な機構の例示的実施例は、一組の異なる長さのスペーサ、異なる焦点距離のレンズ素子を持つ回転可能なタレット、光学ズームレンズ、および2つの光学レンズ素子間の間隔を調節するための機械的調節装置を含む。一態様では、部分的治療は、組織がレーザーによって加熱されるとき組織内のレーザー波長の吸収が減少するように選択されるレーザー波長(例えば、1480〜1640nm)で構成される。望ましくは、レーザー波長は、主として皮膚の治療される領域内で水によって吸収され、約7cm-1から約26cm-1の範囲内の熱的に調節された吸収係数を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条第(e)項(35U.S.C.§119(e))に基づき、2006年7月13日に出願されたKin F.ChanおよびLeonard C.DeBenedictisによる名称「Apparatus and method for adjustable fractional optical dermatological treatment」の米国仮出願第60/807341号の優先権を主張するものであり、米国特許法第119条第(e)項に基づき、2007年5月20日に出願されたKin F.Chan、George Frangineas、Leonard C.DeBenedictis、およびDavid Deweyによる名称「Apparatus and method for adjustable fractional optical dermatological treatment」の優先権を主張するものである。先述の全ての対象物は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に光エネルギーを使用して内科または外科治療を提供するための方法および装置に関し、詳細には、光学的放射を使用して組織(例えば、皮膚)の美容のためのおよび非美容のための部分的治療を提供するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
レーザーは、組織の美容のためのおよび非美容のための治療に使用されてもよい。例えば、レーザーは、皮膚再生(しわの治療を含む)、色素性病変の除去、血管病変の治療、にきびの治療、にきびの跡の治療、線状の治療、その他などの美容皮膚科手術で使用される。
【0004】
皮膚科レーザー治療の副作用プロフィールは、治療される皮膚領域の割合、治療ゾーンの寸法、治療ゾーンの形状、および配給される治療の特徴(例えば、切除的または非切除的、選択的または非選択的、その他)などの多数の要因に依存する。副作用はまた、患者集団または治療環境内での変化からも生じる可能性がある。例えば、患者の皮膚の水分含有量は、光の水吸収性(water−absrobed)波長がどの程度深く皮膚内へ侵入するかを決定することができる。皮膚の開始温度および空気の温度などの他の要因は、皮膚へのレーザーの効果を変えることができ、患者によって感じられる痛みの量に影響を及ぼすことができる。
【0005】
部分的治療は、治療の有効性の所与のレベルに関して全体治療と比較していくつかの副作用を低減することができる。副作用の低減は、部分的治療で可能な皮膚反応の予測可能性の改善に一部において起因する。水吸収性波長での部分的治療は、例えば、典型的には全体治療では容認されることがないであろう非常に高い局所的フルエンスで治療する。各微視的治療領域に隣接する組織は取っておかれ、負傷した組織の治癒反応に参加するので、皮膚は非常に高い局所的フルエンスを容認できる。部分的治療では、過剰治療および過少治療は典型的には、病変の寸法および形状の変化をもたらすが、病変が生じるか否かの変化をもたらさない。他方では、全体治療に対して、過剰治療は、皮膚の全領域に傷跡を残す病変をもたらすかもしれず、一方過少治療は、病変を全くもたらさないかもしれない。それゆえに、非常に高い局所的フルエンスの使用を通じて、部分的治療は、各照射領域の所望の部分を確実に変性させることができる。部分的治療は、たとえ過少治療されまたは過剰治療されてもなお臨床的に目に見える効果を確実に創出することができるので、部分的治療フルエンスまたは治療条件の小さな変化は、対応する変化が全体治療で有するであろうよりも少ない影響を有する。
【0006】
全体治療よりもよく制御されているにもかかわらず、部分的治療はなお、病変特徴の制御を改善されたデバイスによって低減され得るかもしれない受け入れられない副作用を有する。例えば、多数の治療に対する副作用プロフィールは、組織部分の真皮〜表皮接合部(「DE接合部」)における治療中に殺される細胞の割合と密接に関連する。この理由のために、領域内の治療される組織の割合を制限することは望ましい可能性がある。しかしながら、治療対象範囲の割合はまた、多数の治療型式における治療の有効性とも関連する。受け入れられる副作用リスクプロフィールを維持しながら所望の有効性を達成するために、治療ゾーンの幅および深さなど、病変寸法特徴を良好に制御することは望ましい。
【0007】
他の部分的治療では、副作用プロフィールは、DE接合部の面内での健全な組織までの距離に強く依存する。治療ゾーンに隣接するDE接合部の細胞は、治療ゾーンにおいてレーザーによって創出される損傷を修復する手助けをし、治療ゾーンを修復するために必要とされる時間は、DE接合部における治療ゾーンの寸法および形状に強く依存する。この理由のために、小さな病変幅を持つ治療ゾーンを創出することがしばしば望ましい。
【0008】
治療の有効性は、皮膚内のより深い組織に到達することによって多くの場合改善され得る。このことは、例えば、真皮網状層内深くに瘢痕組織をしばしば含む真皮瘢痕組織を治療するときに、特に当てはまる。短い治癒時間および深い治療ゾーンを有するためには、大きなアスペクト比を持つ治療ゾーンが、ある種の条件に対しては望ましい。DE接合部における病変の直径および治療の深さを制御するために、治療ゾーン特性を制御することは有益である。
【0009】
病変特性の制御が、改善された治療結果をもたらすであろう別の例は、治療ゾーンの特性を制御することにある。例えば、いくつかの部分的治療は、部分的レーザー治療に続く休止時間および関連する創部のケアの継続期間および強度を低減するために、望ましくは半切除的でない。もし表皮層の破壊を進める理由がないならば、そのときには解放創の創出を通じてなどの感染の増加するリスクを避けるために無傷の表皮を維持することが望ましい。他方では、いくつかの治療に対して、治療が半切除的であることが望ましい。例えば、半切除的治療は、治療された組織の治癒を促進する局所に適用される薬物の侵入を許容できる。既存のレーザー治療システムは典型的には、半切除的であるかまたは半切除的でないかの治療を提供し、半切除的と非半切除的との部分的治療間でモードを切り換える能力を有さない。これらの2つの目的を達成するために2つのシステムが購入される必要がないように、そのような能力を持つシステムが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許出願第11/020648号明細書
【特許文献2】特許出願第11/468275号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえに、治療ゾーンの幅および深さ、治療ゾーンのアスペクト比、ならびに/または微視的治療ゾーンの破壊の程度などの、部分的な病変特性の改善されたおよび調節可能な制御を可能にさせる部分的光学治療システムの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、部分的治療ゾーンの選択された特性の制御を高めることによって、従来技術の制限の多くを克服する。一態様では、本発明のシステムは、組織がレーザーによって加熱されるとき組織内のレーザー波長の吸収が減少するように選択されるレーザー波長で構成される部分的治療システムを含む。好ましくは、レーザー波長は、主として皮膚の治療される領域内で水によって吸収され、次の節で説明されるように、ある種の追加の特性を有する。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、調節可能なレンズ群および/または個別に交換可能な光学素子が、部分的治療システムで用いられる。調節可能なレンズ群および/または個別に交換可能な光学素子は、皮膚の表面におけるスポット寸法、皮膚の表面より下での光ビームの焦点深度、それが皮膚に入るときの光ビームの開口数、および/または皮膚の表面におけるビーム断面形状を変えることによって、所望の治療パラメータに従って部分的パターンを調節するために使用されてもよい。光学パラメータの変化は、手動でまたは電子制御によって実施されてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、水でのレーザー波長の吸収は、特定の特徴でもって選択される。レーザー波長は、例えば、水に対するレーザー波長の吸収が次の特徴の1つまたは複数によって説明されるように選択されてもよい、即ち(1)熱的に調節された吸収係数は、約7cm-1から約26cm-1の範囲内または約7cm-1から約12cm-1の範囲内である、および(2)水でのレーザー波長の吸収は、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき少なくとも12%だけ減少し、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約12%から約20%だけ減少し、または水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約15%から約20%だけ減少する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、レーザー波長は、約1480nmから約1640nmの範囲内である。本発明のいくつかの実施形態では、レーザー波長は、約1560nmから約1640nmの範囲内である。本発明のいくつかの実施形態では、レーザー波長は約1550nmである。
【0016】
いくつかの実施形態では、部分的光学治療システムは、皮膚表面における光パルスのスポット寸法を調節する調節機構を含む。いくつかの実施形態では、この調節機構は、スポット寸法を自動的に調節する。例えば、パルスエネルギーを所与とすると、調節機構は、所与のパルスエネルギーに対して結果として生じる病変の深さを最大にするように、スポット寸法および/または焦点深度(次の段落を参照)を自動的に調節してもよい。
【0017】
従来のシステムでは、光学システムの皮膚との接触面にほぼ対応する基準面から光学治療ビームの伝搬方向に沿った空気中の光学焦点までの距離(即ち、焦点深度)は、所望の病変の深さにおおよそ等しく選択されてもよい。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態では、選択された焦点深度は、病変深さにほぼ等しくはない。むしろ、調節機構は、焦点深度が病変の最深部分の深さの2倍より大きいように、ビームの焦点を調節する。代替方法では、調節機構は、焦点深度が病変の深さの半分未満であるように、または焦点深度が負である(即ち、光ビームの光学焦点が皮膚の外側に置かれる)ように、焦点を調節してもよい。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、ファイバーレーザー、例えばラマンシフト(Raman−shifted)イッテルビウム添加ファイバーレーザー、エルビウム添加ファイバーレーザー、またはラマンシフトエルビウム添加ファイバーレーザーが使用される。ダイオードレーザーまたはダイオードレーザー励起エルビウム添加ファイバー増幅器などの他のレーザーが他の実施形態で使用されてもよい。
【0019】
本発明の他の態様は、上で説明されたシステムに対応する方法、ならびにこれらのシステムおよび方法の応用を含む。
【0020】
本発明は、添付の図面と併用されるとき、本発明の次の詳細な説明および添付の特許請求の範囲からもっと容易に明らかになるであろう他の利点および特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】調節可能なズームレンズおよびスペーサを組み込む部分的治療ハンドピース(handpiece)の異なる視野を表す例示図であり、側面図である。
【図1B】調節可能なズームレンズおよびスペーサを組み込む部分的治療ハンドピースの異なる視野を表す例示図であり、側面図である。
【図1C】調節可能なズームレンズおよびスペーサを組み込む部分的治療ハンドピースの異なる視野を表す例示図であり、斜視図である。
【図2A】一組の異なる長さのスペーサと組み合わせた調節可能なズームレンズの使用を表す図1Aの部分的治療ハンドピースの例示図である。
【図2B】一組の異なる長さのスペーサと組み合わせた調節可能なズームレンズの使用を表す図1Bの部分的治療ハンドピースの例示図である。
【図2C】一組の異なる長さのスペーサと組み合わせた調節可能なズームレンズの使用を表す図1Cの部分的治療ハンドピースの例示図である。
【図3】1480〜1640nmの波長範囲に対する30〜80℃の温度範囲にわたる水の吸収スペクトルの測定された温度依存性を示すグラフである。
【図4】80℃の水の吸収と30℃の水の吸収との測定された百分率差を1460〜1700nmの波長範囲に対する波長の関数として示すグラフである。
【図5A】本発明の実施形態に従って治療された組織の組織学的断面を示す図である。
【図5B】代替方法に従って治療された組織の比較した組織学的構造を示す図である。
【図6】回転タレット(turret)を組み込む部分的治療システムの一態様の例示図である。
【図7】光学焦点深度および組織の表面における光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるハンドピース(handpiece)を使用する治療深さの変化を示すグラフである。
【図8A】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図8B】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図8C】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図8D】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図8E】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図8F】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図8G】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図9】図7および8A〜8Gで表される組織学的構造を生成するために使用されるパラメータに従ってスポット寸法の焦点深度に対する変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本特許応用のために、次の用語が以下で定義される。
【0023】
用語「部分的治療」は、光エネルギーのパターンに起因する一連の治療ゾーンを含む治療を表し、ここでは治療ゾーンの大部分に対して次の条件が満たされる、即ち、治療ゾーン内の各点に対して、健全な組織の領域までの最小横方向距離は約0.5mm以下であり、治療ゾーンはDE接合部の一部分を含む(即ち、治療より前に隣接していた真皮および表皮組織の部分を含む)。皮膚に対しては、そのような横方向距離測定は、DE接合部のおおよその深さにおける2次元平面内で行われるべきである。部分的治療パターンの一実施例は、円形微視的病変の離散的配列であり、ここでは各病変は約1mm(またはより小さい)の直径を有し、各病変は健全な組織の部分に隣接している。部分的治療パターンの別の実施例は、治療の線の離散的配列であり、ここでは各線の幅は約1mm以下であり、各線の周囲は健全な組織の部分に隣接している。切除的部分的治療では、治療ゾーンは切除された領域を含む。それで、例えば、切除された穴を囲む0.2mmの凝固領域を持つ直径0.2mmの切除された穴は、部分的治療を暗示するであろう。凝固の小さな輪内の直径3mmの切除された穴は、部分的治療を暗示しないであろう。
【0024】
用語「レーザー波長」、「レーザーダイオード波長」、「レーザーの波長」、および同様の変形は、興味のある波長ゾーンに対するレーザーのピーク波長を表す。
【0025】
光の波長に対する用語「熱的に調節された吸収係数」は、選択された波長に対して30℃の水に対する吸収係数と80℃の水の吸収係数との平均を意味する。
【0026】
あらかじめ選択されたパルスエネルギーに対して可変の病変の深さ、幅、およびアスペクト比を有する部分的治療レーザーシステムは、1つまたは複数の表皮層における光ビーム開口数またはビーム寸法を調節するために、調節可能なレンズ群および/または個別に交換可能な光学素子を使用して創出されてもよい。そのようなレーザーシステムは、本明細書で説明されるようにレーザービームパラメータの適切な選択によって創出されてもよい。
【0027】
そのようなデバイスを実証するために、治療ゾーンは、1つまたは複数の形成外科手術中に切除された生体外の人間の皮膚上にレーザービームを向けることによって創出された。組織試料内への光学スポット寸法および焦点深度は、組織表面に対して集束レーザービームの焦点位置を調節することによって調節された。皮膚は貯蔵のために凍結され、その後治療される前に体温まで温められた。生体内の治療条件に近づけるために、試料が食塩水を使用して湿った状態に保たれながら、生体外の組織の治療は、ほぼ体温で実施された。皮膚は、標準的な組織学的方法を使用して凍結され、切片化された。染色は、組織内の特徴を装飾するためにヘモトキシリン(hemotoxylin)およびエオシン(eosin)(H&E)染料を使用して実施された。その結果は次いで、顕微鏡に取り付けられた目盛り付きのCCDカメラを使用して測定された。図5A〜Bは、選択された例示的条件のもとでのレーザー治療に続いて皮膚表面にほぼ垂直に薄く切られた組織の切片を示す。対応するレーザー治療パラメータは表1で与えられる。
【0028】
【表1】
【0029】
温度につれての吸収の増加の利点は、比較できる治療パラメータでの1410nmおよび1480nmにおける生体外の治療で示されるように実証された。図5Aおよび5Bでの組織の薄く切られた切片は、他の治療パラメータが一定(皮膚表面において1/e2強度点で180μmのスポット寸法を持つ近似的ガウシアン(Gaussian)ビームを使用する治療ゾーン当たり10mJの治療エネルギー)に保持された状態でのこれらの2つの波長における生体外の治療の結果を示す。両方の治療は、ラマンシフトファイバーレーザーから単一モードファイバーによって配給される光を使用して実施された。ラマンシフトファイバーレーザーは、IPGフォトニクス社(IPG Photonics,Inc.)(オックスフォード、マサチューセッツ州)から入手できる。
【0030】
30℃においては、水の吸収は、これらの2つの波長に対してほぼ同じであり、1410nmにおいて約24cm-1および1480nmにおいて約25cm-1である。30℃においてわずかにより高い吸収を有するにもかかわらず、1480nm光は、1410nm波長よりも深く侵入した。侵入の差は、部分的にはこれらの波長間の散乱係数のわずかな差に起因したが、散乱に起因する差は、治療ゾーン内での水の動的吸収特性に起因する差と比較して小さい。組織は、特に組織の上層内で、レーザー治療によって30℃より著しく高く局所的に加熱されたので、これらの2つの波長で創出された治療ゾーンの深さの差は、主として30℃より高い温度における吸収の差に起因した。皮膚がレーザーによって加熱されたとき、吸収係数は、温度の変化が原因で変化した。1410nmレーザーでの治療から生じた微視的治療ゾーン(図5A)は半切除的であり、半切除的治療を暗示しなかった1480nmレーザーでの治療から生じた微視的治療ゾーン(図5B)よりも浅い侵入を有する。各々の場合で、病変は、皮膚表面から真皮内へ延びる。
【0031】
1410nm波長に対する水の吸収は、30℃から80℃までこの範囲にわたっての約22%の全増分に対して単調に増加する。対照的に、1480nm波長吸収は、この同じ温度範囲にわたって約15%だけ単調に低減される。これらの2つの波長に対する吸収の温度に対する傾向は、水が少なくとも100℃まで加熱される間単調に続く。これらの理由のために、30℃においてほぼ同じ吸収係数を有するにもかかわらず、結果として生じる治療病変は、特性および深さが非常に異なる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、ハンドピースは、レーザー光を治療されるべき皮膚の領域へ配給するために使用される。図1Aで例示されるハンドピースは、レーザー光源140から光エネルギーを配給する光ファイバー120を含む。光ファイバー120の端部は、光ファイバー120から放出される光ビーム130を平行にするために光コリメータユニット121内に取り付けられる。光ビーム130は、3つのレンズ素子101、102、および103からなる調節可能なレンズ群123の方へ向けられる。個々のレンズ素子は、モータ182を使用して調節されてもよい。光ビーム130は、オプションのミラー104から星形スキャナー輪(starburst scanner wheel)124内へ反射される。星形スキャナー輪124は、光ビーム130を出射レンズ群125へ偏向させ、それは、出射窓126を通じて皮膚199内へ光ビーム130を集光する。スペーサチップ128は、出射レンズ群125と皮膚199の表面との間に所望の距離を保つ補助として、基準ピン129に対して機械的に合わせられる。出射レンズ群は、皮膚199内か、皮膚199の表面か、または皮膚199の表面より上かの、任意の所望の位置において光ビームを集光するように選択されてもよい。スペーサチップ128は、オプションとして透明な接触板127を含んでもよい。
【0033】
ハンドピース100は、ページ内または外の方向へ一定の速度で皮膚を横切って動かされてもよく、一方、星形スキャナー輪124は、モータ(図示されず)によって一定速度で動かされる。これは、所望のパターンを持つ部分的治療を創出するために使用されてもよい。皮膚に適用されるコントラスト強化薬剤とともに光学マウスチップを用いるそれらなどのもっと複雑な速度帰還システムは、例えば、同時係属の特許文献1、名称「Method and Apparatus for Monitoring and Controlling Laser-Induced Tissue Treatment」および特許文献2、名称「Method And Apparatus For Monitoring And Controlling Thermally Induced Tissue Treatment」で説明されるように使用されてもよく、それらの両方は、追加の柔軟性を提供するために参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
レーザー光源140は1つまたは複数のレンズを含む。レーザー波長は、1350nmから2500nmの範囲内でよい。この範囲では、レーザーは主としておよび実質的に皮膚内で水によって吸収される。水は、皮膚内で発色団よりも一様に分配されるから、これは、主として水によってより選択性が低く吸収される波長で治療をする。したがって、そのような波長の使用は、水によって実質的に吸収されないまたは皮膚内のメラニンまたは血液などの発色団の特定の分布に依存する波長が使用される場合よりももっと再現可能な治療ゾーンを生成するであろう。
【0035】
適切なレーザーは、多くの異なる波長で作られてもよく、多くの異なる技術から作られてもよい。
【0036】
レーザー波長は、約7cm-1から約26cm-1の範囲内のまたは約7cm-1から約12cm-1の範囲内の熱的に調節された吸収係数を有するように選択されてもよい。約26cm-1より大きい熱的に調節された吸収係数を有するレーザー波長は、典型的には治療されるべき組織内へ深く侵入しない。約7cm-1未満の熱的に調節された吸収係数を有するレーザー波長は、半切除的モードへ切り換わるためにはより多くのレーザーエネルギーを必要とし、したがってより望ましくない。
【0037】
約7cm-1から約26cm-1の範囲内の熱的に調節された吸収係数を有するレーザー波長は、部分的治療応用に対して、有用な治療深さを提供する。これらの吸収範囲の外側の波長を持つレーザーもまた、特に治療ビームのスポット寸法の調節を可能にできる調節可能なレンズ群などの本発明の他の態様と結合されるとき、本発明の範囲内である。
【0038】
部分的レーザー治療システムの熱的に調節された吸収係数は、所望の治療効果に基づいて選択されてもよい。組織内で主として水によって吸収される波長は、しわ、色素性病変、血管病変、その他の治療に有用である。そのような波長に対して、皮膚の水分含有量は重要である。皮膚の真皮層は典型的には、約70%の水分を含む。組織内で主として水によって吸収される波長に対して、光の組織内への侵入は、主として水でのレーザー波長の吸収係数に依存する。それで、例えば、水で27cm-1の吸収係数を持つ光は、皮膚では約19cm-1の吸収係数を有し、この吸収を持つ治療ビームの配給されるパワーは、散乱が無視できると仮定すると、皮膚表面より下の0.5mmの深さにおいて約63%だけ(即ち、その1/e点まで)低減されるであろう。治療ゾーンの実際の深さは、正確なデバイス構成および皮膚特性に依存するであろう。治療ゾーン深さは、侵入深さよりも深いまたは浅いかもしれないが、熱的に調節された吸収係数によって影響されるであろう。小さな開口数を持つ治療ビームに対して、所望の治療深さにおけるエネルギー付与は、皮膚内の熱的に調節された吸収係数をおおよそ所望の最大治療深さの逆数として選択することによって最大化されてもよい。最大病変深さが約0.5から2mmである場合の治療に対して、治療レーザーの波長は、熱的に調節された吸収係数が約7cm-1から約26cm-1の範囲内または約8cm-1から約12cm-1の範囲内であるように選択されてもよい。
【0039】
図3は、水の温度が約30℃から約80℃まで変えられたときの水に対する吸収スペクトルの測定を波長の関数として示す。これらの測定は、透過光分光学を使用して行われ、ここでは光は、水の加熱された試料を貫通して通された。水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき、水による光の吸収は、約1480nmから約1640nmの範囲内の波長を持つ光に対して増加した。
【0040】
上で説明されたように、熱的に調節された吸収係数は、デバイスに対する侵入の最大深さを選択する際に使用されてもよい。もしより深い病変が望まれるならば、治療ゾーンが所望の深さまで創出され得る効率は、皮膚の温度が上がるにつれて動的に減少する吸収を有する波長の選択と併せて、皮膚上への平均フルエンスを調節することによってさらに改善することができる。多くの治療に対して、吸収の動的増加は、皮膚の治療反応に重要な利点を提供することができる。これらの利点のいくつかは、実施例とともに例示されてもよい、即ち、所与のパルスエネルギー、例えば10mJに対して、パルスエネルギーを小さな直径、例えば30〜70μmを持つビームに集光することは、治療領域に高強度を創出し、それゆえに組織を急速に加熱し、その結果侵入の深さを強化するように組織の吸収係数を急速に調節する。治療パルス内のエネルギーは、小さな深さ内で吸収され、吸収の動的な変化なしで生じるであろうよりももっと弱い表面の局所的治療効果を創出する。このことは、治療ゾーンの上側部分より下でビーム強度を低減するようにビームを散乱するまたは反射することができる組織内の泡の創出を回避するのに有用であり、その泡は、組織のより深い層への光学治療エネルギーの侵入を制限するであろう。
【0041】
皮膚表面においてより大きな(および同じエネルギー、パルス幅、その他を有する)光ビームに対しては、皮膚表面における温度の変化率はより遅い。したがって、照射領域が低温であるときには、治療エネルギーのより大きな割合が、照射領域の上側部分を通過することができる。それゆえに、特に吸収が皮膚のおよび/または皮膚内の水の温度とともに動的に減少するときには、治療エネルギーは、より小さなビームと比較して、より大きなビームでは同じくらい深くは侵入しない可能性があるということを、理論は示唆するであろう。しかしながら、典型的には部分的治療で使用される高フルエンスに対して、散乱部位は、例えば、皮膚内の水の気化によって創出される。その理由のため、ビームの侵入深さを最大にするためには、高局所的フルエンスでの治療に対してパルスエネルギーが増加するにつれて、吸収が減少する波長を使用しかつより大きなビーム寸法を使用することは有利であることを、我々は見いだした。
【0042】
それゆえに、システムは、あたかもそれが、焦点位置、開口数、ビーム直径、およびビーム形状などの光ビームパラメータを変えるだけで調節可能な吸収源を有するように、機能することができる。このことは、ある種のレーザー治療システムにおいて高価な調節可能な光源を用いる必要性を回避することを可能にする。
【0043】
水で温度上昇とともに減少する吸収を有するレーザー波長は、高パルスエネルギーおよび高局所的フルエンスを扱うとき、より低い吸収係数を有することが有利である深い病変を創出するために、より低いパルスエネルギーが使用されることを可能にする。そのような波長はまた、脱毛に対するまたは瘢痕、しわ、肝斑、および重要な皮膚要素を持つ他の皮膚病変の治療に対する治療の有効性を高めるために、真皮内の凝固および損傷の深さを増加させるように適切な光学設計と併せて有益に組み込まれてもよい。水でのレーザー波長の吸収が、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき少なくとも12%だけ減少し、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約12%から約20%だけ減少し、または水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約15%から約20%だけ減少するように、レーザー波長は選択されてもよい。
【0044】
水が約30℃から約80℃まで加熱されたときの吸収の変化率が図4で示される。先に述べられたように、水による光の吸収は、約1480nmから約1640nmの波長範囲にわたって温度とともに減少する。測定された吸収の比率の減少は、約1470nmから約1680nmの波長範囲において約12%から約20%の範囲内であった。約1480nmから約1640nmの波長範囲においては、水での吸収の減少は、約15%から約20%の範囲内であった。
【0045】
上で説明された要因の全てを所与とすると、約1480nmから約1640nmの、約1560nmから約1640nmの、または約1550nmの波長範囲内のレーザーを操作することは、多くの応用で望ましい可能性がある。これらの波長のファイバーレーザーおよびラマンシフトファイバーレーザーは、IPGフォトニクス社(IPG Photonics,Inc.)(オックスフォード、マサチューセッツ州)などから普通に入手可能である。
【0046】
レーザー光源140は、1つまたは複数のレーザーを含む。例えば、レーザー光源は、1つまたは複数のファイバーレーザーを含むことができる。ファイバーレーザーは、それらの高ビーム品質、正確に制御された波長、温度依存性の欠如、および整列されるべきミラーの欠如のために望ましい。特に、エルビウム添加グラスファイバーレーザーは、1520〜1620nmの範囲内の波長を生成するために使用されてもよい。
【0047】
上で述べられたように、吸収係数が温度とともに減少するレーザー波長を選択することによって、システムは、あたかもそれが、焦点位置、開口数、ビーム直径、およびビーム形状などの光ビームパラメータを変えるだけで調節可能な吸収源を有するように、機能することができる。このことは、ある種の治療システムにおいて、高価な調節可能な光源を用いる必要性を回避することを可能にする。例えば、単一の固定波長ファイバーレーザーは、レーザー光源140で使用されてもよい。
【0048】
調節可能なレンズ群123は、光ビームパラメータの変化、例えば、皮膚199の表面におけるスポット寸法、皮膚199の表面より下の光ビーム130の焦点深度、それが皮膚199に入るときの光ビーム130の開口数、および/または皮膚199の表面におけるビーム断面形状のそれらの変化から生じる異なる光学治療条件を創出するために、治療中にまたは治療間で調節されてもよい。スポット寸法を調節することによって、光ビーム130内の光学治療エネルギーは、要望通りに組織と皮膚表面との間の相互作用の大きなまたは小さな領域を創出するために、集中されまたは分配されてもよい。小さなスポットは、皮膚199の表面においてより大きな破壊を創出する場合がある。これらの影響は、約1480nmから約1640nmの範囲内の波長などの、動的に減少する吸収を持つ波長を使用することによって、より深い病変を創出するために回避することができる。そのような波長では、もし光ビーム130が小さなスポット寸法で皮膚に入ると、皮膚の上層の温度は急速に加熱され、それらの吸収は素早くシフトするであろうし、それゆえに吸収を増加させ、治療ビームに起因する局所的損傷の減少を引き起こす。もしビームが、光ビーム130が大きなスポット寸法で皮膚に入るように調節されるならば、皮膚の上層の温度はもっとゆっくりと加熱されるであろうし、破壊的な散乱部位は低減され得るし、治療ビームはそれゆえにもっと深く侵入することができるであろう。病変深さを最大にするためには、散乱部位が創出される点の真下に理論的最適条件がある。実際には、より大きなスポット寸法は典型的には、部分的治療を創出するために使用される高強度に対してより良く、光学(例えば、レンズの開口数)の実際的な限界は典型的には、大きな光学寸法が原因でパルス深さの著しい減少がある前に到達されるということが見いだされた。それゆえに、光ビームパラメータを調節することによって、ビーム130は、第2のレーザーまたは調節可能なレーザーを組み込む必要性なく治療病変の深さを増加させることができる。
【0049】
半切除的でない治療モードは、皮膚の上層内での動的加熱を低減することによって皮膚199内の所望の位置に治療ゾーンをより効果的に創出するために、治療ビームの侵入深さを強化するようにさらに最適化されてもよい。様々な光ビームパラメータは、動的吸収を持つ治療ビームの治療効果を変えるために使用されてもよい。例えば、高開口数の使用は、例えばもし表皮組織の節約が望まれるならば、皮膚表面の冷却の必要性を低減するまたは排除するために使用されてもよい。
【0050】
ビーム形状の変更は、皮膚表面より下の所望の深さにおけるビームの集中をなお最大にしながらビームの侵入を可能にするように、皮膚上の可視パターンの影響を最小化するためにおよび皮膚内での熱的分布を変更するために有用である可能性がある。例えば、もっと深い侵入が望まれるときには、ビームは、より大きな領域にわたってビーム強度を分配するために、皮膚表面においてより一層の「上部が平たい」形状となるように調節されてもよい。もしそのようなビームが次いで所望の深さに焦点を合わされるならば、そのときには所望の深さにおける加熱は最大化され得る。例えば、もしレンズ素子101、102、103の1つまたは複数が例えば円筒型素子などのように径方向に非対称であるように選択されるならば、ビーム形状は、別法として変更されてもよい。そのような動径方向に非対称な素子は、治療パターンを変更するためにお互いからの距離を調節されることに加えて、オプションとして回転されてもよい。本発明の装置を使用して望ましく変更されてもよい他のパラメータは、当業者には明らかであろう。
【0051】
調節可能なレンズ群123は、光学ズームレンズに普通用いられる技術を使用して設計され、組み立てられてもよい。例えば、2つ以上の光学素子間の距離を適切に調節することによって、光ビーム130の特性が調節されてもよい。
【0052】
一実施形態では、光学スポット寸法は、約90μm未満のスポット寸法に対して皮膚表面に焦点が合わされる。より小さなスポット寸法を達成するために、レンズ素子101および103は各々、光学軸に沿ってレンズ素子102により近く動かされる。このことは、星形スキャナー輪124内へ注入される光ビーム130の直径を増加させる。皮膚199の表面においてより大きなスポット寸法を達成するために、レンズ素子103は固定されたままで、レンズ素子101と102との間の距離は、ビームの焦点を皮膚199内へ動かす要望通りに低減される。ビーム130の焦点を皮膚199内へ動かすことによって、皮膚199の表面におけるビーム130の直径は、皮膚表面においてより大きな領域にわたって光エネルギーを分配するように増加する。それゆえに、ビーム寸法および焦点深度は、所望の治療に対して調節され得る。
【0053】
適切な光学レンズ設計パラメータの範囲の実施例は、表2で与えられる。これらのパラメータのより広い範囲は、当業者によって創出されてもよい。特定の光学設計は、ビームに対する所望のスパン、スキャナー輪によって創出されるスポットの数、使用されるスキャナーの種類、光学波長、およびハンドピースのための設計の機械的制約に依存する。特定の設計は、特定のシステムに対する制約および所望の性能に基づいて当業者によって容易に最適化されてもよい。
【0054】
【表2】
【0055】
本発明の例となる実施形態は、光源140として約1550nmの波長を放出するエルビウム添加ファイバーレーザーを使用して特徴づけられた。例となる実施形態は、図1A〜Cで示される実施形態と機能的に似ていた。図1A〜Cを参照すると、レンズ素子101および103は、皮膚199の表面におけるスポット寸法および皮膚199内での光ビーム130の焦点深度の両方を同時に調節するために、レンズ素子102に対して光学軸に沿って調節された。生体外の組織は、上で述べられた図5Aおよび5Bに対して説明された通りに入手され、処理された。組織学的薄片は、治療条件のもとで創出された凝固の寸法を評価するために、ヘモトキシリンおよびエオシンで染色され、光学顕微鏡を使用して分析された。
【0056】
図9は、図7および8A〜8Gで要約される生体外の治療に対して使用されるパラメータに従って光学スポット寸法の焦点深度に対する変化を示すグラフである。小さな焦点に対しては、光ビームはこれらの実験に対して皮膚表面に集光されたことに留意されたい。光学焦点および皮膚の表面における光学スポット寸法が変えられたとき、治療深さおよび病変形状の変化をそれぞれ示すために、代表的な測定が記録され、図7および8A〜8Gでプロットされる。図7および8A〜8Gから分かるように、異なるパルスエネルギーに対して最も深い病変は、皮膚表面における異なる光学スポット寸法を使用して達成された。深さにおけるビームの集中性に影響を及ぼす焦点深度の調節に起因してこれらの結果にいくらかの影響があった。しかしながら、この影響は、皮膚表面におけるおよび皮膚の上層内での光学スポット寸法の変化によって生成される影響よりも著しく小さいと信じられる。
【0057】
図7〜9での結果から分かるように、光ビームの焦点は典型的には、代表的な病変の最大深さから著しく移動された深さに生じる。例えば、35〜40mJの範囲内のパルスエネルギーに対して、我々の研究での最大深さは、260μmの皮膚表面における直径を持つビームによって達成され、病変は約1mmの深さを達成しただけであるけれども、そのビームは約7mmの焦点深度に対応する。それゆえに、本発明のシステムは、焦点深度におけるまたはその近傍の光強度を増加させるために、選択された深さにビームを集光することに頼る集光システムと著しく異なることができる。我々の場合では、焦点深度は、典型的な病変の最深部分の深さの2倍よりも大きくすることができる。重要な要因は光学スポット寸法であるから、焦点の深さに対する上限はない。光ビームは実際に平行ビーム(即ち、実質的に無限の焦点深度)とすることができる。焦点はまた組織の外側とすることもできる。いくつかの態様では、焦点深度は、典型的な病変の最深部分の深さの約2倍から約100倍、または典型的な病変の最深部分の深さの約5倍から約500倍である。
【0058】
レーザーシステム設計者は、所与のパルスエネルギーにおいて病変の深さを増加させるために利用できる高価なレーザーパルスエネルギーを効果的に使用することができる。図7〜9によって説明される実施例では、深い病変は、100μmと260μmとの間の皮膚表面における治療ビームの光学スポット寸法を選択することによって、3〜40mJの範囲内の各々の選択されたパルスエネルギーにおいて効果的に達成された。図7から分かるように、パルス幅が、代表的な病変の最大深さを増加させるために増加されるとき、皮膚の表面における光学スポット寸法は、増加されてもよい。
【0059】
例えば、ガルバノメータースキャナー、圧電スキャナー、および音響光学スキャナーなどの、他の適切な種類の走査デバイスが、本発明で使用されてもよい。例えば、他の種類のズームレンズまたは個別に調節可能なレンズ変更システムなどの、他の適切な種類のビーム調節デバイスがまた使用されてもよい。個別に調節可能なレンズ変更システムの一種は図6で例示され、それは、図1Aの調節可能なレンズ群123と交換するために使用されてもよい。図6は、個別のレンズ205A、B、C、Dを含む回転タレット(turret)201を表す。個別のレンズ205A〜Dは、単一の素子またはレンズ群を含んでもよい。回転タレット205または調節可能なレンズ群123は、手動で調節されてもよく、または例えばコンピュータもしくは他の種類のコントローラ180によってオプションとして制御されてもよいモータ182を使用して、電子的に調節されてもよい。コントローラ180は、適切な治療パラメータを選択するためにユーザーインターフェース184を介して使用者によって利用されてもよい。ユーザーインターフェース184を介して、使用者は、半切除的である治療モードと半切除的でない治療モードとの間で切り換わるように部分的光学治療システムを(コントローラを介して)制御することができる。コントローラ180はまた、レーザー光源140から放出される光ビームの波長、パルスエネルギー、パルス形状、パルス繰り返し率、およびパルス幅などの、レーザー光源のパラメータを制御することもできる。
【0060】
調節機構の組合せは、分解能またはスパンの改善のために組み込まれてもよい。例えば、図2A〜Cは、調節可能なレンズ群123および一組のスペーサチップ128A、B、Cの両方を組み込む本発明の装置の一実施形態を例示する。図2Aで使用される光学システムは、図2B(128B)および2C(128C)で使用されるスペーサに比して短い長さのスペーサチップ128Aを有する。焦点深度およびスポット寸法の追加の制御を得るために、焦点深度は、出射レンズ群125と1つまたは複数のビームが入射する皮膚199の表面との間の間隔110を調節することによって調節されてもよい。間隔110は、異なる焦点深度を達成するために交換されてもよい、異なる長さの複数スペーサ−チップを使用することによって、簡単に、安価に、かつ可動部品なしで調節されてもよい。図2A〜2Cは、異なる長さの一組のスペーサと組み合わせた調節可能なズームレンズの使用を表す図1A〜1Cの部分的治療システムの例示図である。この組合せは、ハンドピース100の光学設計のためにそうしやすいであろう所与の制限された空間または予算の制約を超えて焦点の深さを増すために有益に使用されてもよい。
【0061】
本発明のシステムは、非接触チップを含むことができる。非接触チップは、皮膚と接触するように設計されるが、レーザービームが皮膚に入る点においてレーザー治療ビームのビーム経路内に(直接的にかまたは皮膚に適用されるジェルなどの物質を介して間接的に)皮膚と接触する接触素子を有さないチップである。非接触ではないチップは、例えば、接触板が皮膚に触れる点においてレーザービーム経路内にガラスまたはサファイアの板を有するかもしれない。半切除的部分的治療に使用される高光学フルエンスに対して、皮膚表面近傍に創出される高フルエンスレベルは、接触板に損傷を与えるかもしれない。さらに、皮膚表面から除去された組織もまた、接触板に触れ、接触窓への損傷速度の増大を引き起こす吸収部位をもたらすかもしれない。接触窓への損傷は、ビームを遮るかもしれず、それで典型的には望ましくない。
【0062】
本発明のシステムは、接触チップを含むことができる。接触チップは、実質的に透明な接触板が治療中皮膚と接触し、レーザー治療ビームが皮膚に入る点において(直接的にかまたは皮膚に適用されるジェルなどの物質を介して間接的に)接触板が皮膚と接触するように構成されるチップである。接触治療チップは、それらが冷却を配給されることを可能にするのでおよび/またはそれらが熱の拡散を可能にするので、半切除的でない治療モードでの治療のために有益である可能性がある。
【0063】
本発明のシステムは、1つまたは複数の接触チップおよび1つまたは複数の非接触チップを含む一組のチップとともに販売されてもよい。例えば、本発明のシステムは、半切除的でない治療のための接触チップおよび半切除的である治療のための非接触チップを含む一組のチップとともに販売されてもよい。接触または非接触のどちらのチップが使用されるかは、特定のデバイス構成および所望の治療成果に依存するであろう。
【0064】
詳細な説明は多くの細目を含むけれども、これらは、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきでなく、単に本発明の異なる実施例および態様を例示すると解釈されるべきである。本発明の範囲は、上で詳細に論じられなかった他の実施形態を含むことが理解されるべきである。例えば、反射または回折光学が、本明細書で説明された屈折光学の代わりに使用されてもよい。当業者には明らかであろう様々な他の修正、変更および変形は、添付の特許請求の範囲で規定されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される本発明の方法および装置の配置、操作および細部で行われてもよい。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的に同等のものによって決定されるべきである。さらに、素子、部品または方法ステップは、その素子、部品または方法ステップが特許請求の範囲で明確に言及されているかどうかにかかわらず、公衆にささげられることを意図されていない。
【0065】
特許請求の範囲では、素子を単数で参照することは、明確に述べられない限り「唯一の」を意味することを意図されておらず、むしろ「1つまたは複数」を意味することを意図されている。さらに、デバイスまたは方法が、特許請求の範囲によって包含されるために、本発明の異なる実施形態によって解決できるあらゆる問題に対処することは必要ではない。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条第(e)項(35U.S.C.§119(e))に基づき、2006年7月13日に出願されたKin F.ChanおよびLeonard C.DeBenedictisによる名称「Apparatus and method for adjustable fractional optical dermatological treatment」の米国仮出願第60/807341号の優先権を主張するものであり、米国特許法第119条第(e)項に基づき、2007年5月20日に出願されたKin F.Chan、George Frangineas、Leonard C.DeBenedictis、およびDavid Deweyによる名称「Apparatus and method for adjustable fractional optical dermatological treatment」の優先権を主張するものである。先述の全ての対象物は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に光エネルギーを使用して内科または外科治療を提供するための方法および装置に関し、詳細には、光学的放射を使用して組織(例えば、皮膚)の美容のためのおよび非美容のための部分的治療を提供するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
レーザーは、組織の美容のためのおよび非美容のための治療に使用されてもよい。例えば、レーザーは、皮膚再生(しわの治療を含む)、色素性病変の除去、血管病変の治療、にきびの治療、にきびの跡の治療、線状の治療、その他などの美容皮膚科手術で使用される。
【0004】
皮膚科レーザー治療の副作用プロフィールは、治療される皮膚領域の割合、治療ゾーンの寸法、治療ゾーンの形状、および配給される治療の特徴(例えば、切除的または非切除的、選択的または非選択的、その他)などの多数の要因に依存する。副作用はまた、患者集団または治療環境内での変化からも生じる可能性がある。例えば、患者の皮膚の水分含有量は、光の水吸収性(water−absrobed)波長がどの程度深く皮膚内へ侵入するかを決定することができる。皮膚の開始温度および空気の温度などの他の要因は、皮膚へのレーザーの効果を変えることができ、患者によって感じられる痛みの量に影響を及ぼすことができる。
【0005】
部分的治療は、治療の有効性の所与のレベルに関して全体治療と比較していくつかの副作用を低減することができる。副作用の低減は、部分的治療で可能な皮膚反応の予測可能性の改善に一部において起因する。水吸収性波長での部分的治療は、例えば、典型的には全体治療では容認されることがないであろう非常に高い局所的フルエンスで治療する。各微視的治療領域に隣接する組織は取っておかれ、負傷した組織の治癒反応に参加するので、皮膚は非常に高い局所的フルエンスを容認できる。部分的治療では、過剰治療および過少治療は典型的には、病変の寸法および形状の変化をもたらすが、病変が生じるか否かの変化をもたらさない。他方では、全体治療に対して、過剰治療は、皮膚の全領域に傷跡を残す病変をもたらすかもしれず、一方過少治療は、病変を全くもたらさないかもしれない。それゆえに、非常に高い局所的フルエンスの使用を通じて、部分的治療は、各照射領域の所望の部分を確実に変性させることができる。部分的治療は、たとえ過少治療されまたは過剰治療されてもなお臨床的に目に見える効果を確実に創出することができるので、部分的治療フルエンスまたは治療条件の小さな変化は、対応する変化が全体治療で有するであろうよりも少ない影響を有する。
【0006】
全体治療よりもよく制御されているにもかかわらず、部分的治療はなお、病変特徴の制御を改善されたデバイスによって低減され得るかもしれない受け入れられない副作用を有する。例えば、多数の治療に対する副作用プロフィールは、組織部分の真皮〜表皮接合部(「DE接合部」)における治療中に殺される細胞の割合と密接に関連する。この理由のために、領域内の治療される組織の割合を制限することは望ましい可能性がある。しかしながら、治療対象範囲の割合はまた、多数の治療型式における治療の有効性とも関連する。受け入れられる副作用リスクプロフィールを維持しながら所望の有効性を達成するために、治療ゾーンの幅および深さなど、病変寸法特徴を良好に制御することは望ましい。
【0007】
他の部分的治療では、副作用プロフィールは、DE接合部の面内での健全な組織までの距離に強く依存する。治療ゾーンに隣接するDE接合部の細胞は、治療ゾーンにおいてレーザーによって創出される損傷を修復する手助けをし、治療ゾーンを修復するために必要とされる時間は、DE接合部における治療ゾーンの寸法および形状に強く依存する。この理由のために、小さな病変幅を持つ治療ゾーンを創出することがしばしば望ましい。
【0008】
治療の有効性は、皮膚内のより深い組織に到達することによって多くの場合改善され得る。このことは、例えば、真皮網状層内深くに瘢痕組織をしばしば含む真皮瘢痕組織を治療するときに、特に当てはまる。短い治癒時間および深い治療ゾーンを有するためには、大きなアスペクト比を持つ治療ゾーンが、ある種の条件に対しては望ましい。DE接合部における病変の直径および治療の深さを制御するために、治療ゾーン特性を制御することは有益である。
【0009】
病変特性の制御が、改善された治療結果をもたらすであろう別の例は、治療ゾーンの特性を制御することにある。例えば、いくつかの部分的治療は、部分的レーザー治療に続く休止時間および関連する創部のケアの継続期間および強度を低減するために、望ましくは半切除的でない。もし表皮層の破壊を進める理由がないならば、そのときには解放創の創出を通じてなどの感染の増加するリスクを避けるために無傷の表皮を維持することが望ましい。他方では、いくつかの治療に対して、治療が半切除的であることが望ましい。例えば、半切除的治療は、治療された組織の治癒を促進する局所に適用される薬物の侵入を許容できる。既存のレーザー治療システムは典型的には、半切除的であるかまたは半切除的でないかの治療を提供し、半切除的と非半切除的との部分的治療間でモードを切り換える能力を有さない。これらの2つの目的を達成するために2つのシステムが購入される必要がないように、そのような能力を持つシステムが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許出願第11/020648号明細書
【特許文献2】特許出願第11/468275号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえに、治療ゾーンの幅および深さ、治療ゾーンのアスペクト比、ならびに/または微視的治療ゾーンの破壊の程度などの、部分的な病変特性の改善されたおよび調節可能な制御を可能にさせる部分的光学治療システムの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、部分的治療ゾーンの選択された特性の制御を高めることによって、従来技術の制限の多くを克服する。一態様では、本発明のシステムは、組織がレーザーによって加熱されるとき組織内のレーザー波長の吸収が減少するように選択されるレーザー波長で構成される部分的治療システムを含む。好ましくは、レーザー波長は、主として皮膚の治療される領域内で水によって吸収され、次の節で説明されるように、ある種の追加の特性を有する。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、調節可能なレンズ群および/または個別に交換可能な光学素子が、部分的治療システムで用いられる。調節可能なレンズ群および/または個別に交換可能な光学素子は、皮膚の表面におけるスポット寸法、皮膚の表面より下での光ビームの焦点深度、それが皮膚に入るときの光ビームの開口数、および/または皮膚の表面におけるビーム断面形状を変えることによって、所望の治療パラメータに従って部分的パターンを調節するために使用されてもよい。光学パラメータの変化は、手動でまたは電子制御によって実施されてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、水でのレーザー波長の吸収は、特定の特徴でもって選択される。レーザー波長は、例えば、水に対するレーザー波長の吸収が次の特徴の1つまたは複数によって説明されるように選択されてもよい、即ち(1)熱的に調節された吸収係数は、約7cm-1から約26cm-1の範囲内または約7cm-1から約12cm-1の範囲内である、および(2)水でのレーザー波長の吸収は、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき少なくとも12%だけ減少し、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約12%から約20%だけ減少し、または水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約15%から約20%だけ減少する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、レーザー波長は、約1480nmから約1640nmの範囲内である。本発明のいくつかの実施形態では、レーザー波長は、約1560nmから約1640nmの範囲内である。本発明のいくつかの実施形態では、レーザー波長は約1550nmである。
【0016】
いくつかの実施形態では、部分的光学治療システムは、皮膚表面における光パルスのスポット寸法を調節する調節機構を含む。いくつかの実施形態では、この調節機構は、スポット寸法を自動的に調節する。例えば、パルスエネルギーを所与とすると、調節機構は、所与のパルスエネルギーに対して結果として生じる病変の深さを最大にするように、スポット寸法および/または焦点深度(次の段落を参照)を自動的に調節してもよい。
【0017】
従来のシステムでは、光学システムの皮膚との接触面にほぼ対応する基準面から光学治療ビームの伝搬方向に沿った空気中の光学焦点までの距離(即ち、焦点深度)は、所望の病変の深さにおおよそ等しく選択されてもよい。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態では、選択された焦点深度は、病変深さにほぼ等しくはない。むしろ、調節機構は、焦点深度が病変の最深部分の深さの2倍より大きいように、ビームの焦点を調節する。代替方法では、調節機構は、焦点深度が病変の深さの半分未満であるように、または焦点深度が負である(即ち、光ビームの光学焦点が皮膚の外側に置かれる)ように、焦点を調節してもよい。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、ファイバーレーザー、例えばラマンシフト(Raman−shifted)イッテルビウム添加ファイバーレーザー、エルビウム添加ファイバーレーザー、またはラマンシフトエルビウム添加ファイバーレーザーが使用される。ダイオードレーザーまたはダイオードレーザー励起エルビウム添加ファイバー増幅器などの他のレーザーが他の実施形態で使用されてもよい。
【0019】
本発明の他の態様は、上で説明されたシステムに対応する方法、ならびにこれらのシステムおよび方法の応用を含む。
【0020】
本発明は、添付の図面と併用されるとき、本発明の次の詳細な説明および添付の特許請求の範囲からもっと容易に明らかになるであろう他の利点および特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】調節可能なズームレンズおよびスペーサを組み込む部分的治療ハンドピース(handpiece)の異なる視野を表す例示図であり、側面図である。
【図1B】調節可能なズームレンズおよびスペーサを組み込む部分的治療ハンドピースの異なる視野を表す例示図であり、側面図である。
【図1C】調節可能なズームレンズおよびスペーサを組み込む部分的治療ハンドピースの異なる視野を表す例示図であり、斜視図である。
【図2A】一組の異なる長さのスペーサと組み合わせた調節可能なズームレンズの使用を表す図1Aの部分的治療ハンドピースの例示図である。
【図2B】一組の異なる長さのスペーサと組み合わせた調節可能なズームレンズの使用を表す図1Bの部分的治療ハンドピースの例示図である。
【図2C】一組の異なる長さのスペーサと組み合わせた調節可能なズームレンズの使用を表す図1Cの部分的治療ハンドピースの例示図である。
【図3】1480〜1640nmの波長範囲に対する30〜80℃の温度範囲にわたる水の吸収スペクトルの測定された温度依存性を示すグラフである。
【図4】80℃の水の吸収と30℃の水の吸収との測定された百分率差を1460〜1700nmの波長範囲に対する波長の関数として示すグラフである。
【図5A】本発明の実施形態に従って治療された組織の組織学的断面を示す図である。
【図5B】代替方法に従って治療された組織の比較した組織学的構造を示す図である。
【図6】回転タレット(turret)を組み込む部分的治療システムの一態様の例示図である。
【図7】光学焦点深度および組織の表面における光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるハンドピース(handpiece)を使用する治療深さの変化を示すグラフである。
【図8A】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図8B】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図8C】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図8D】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図8E】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図8F】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図8G】選択された治療エネルギーに対して光学焦点深度および光学スポット寸法が変えられるときの、図1A〜Cで例示されるデバイスを使用する治療病変寸法および形状の変化を示すグラフである。
【図9】図7および8A〜8Gで表される組織学的構造を生成するために使用されるパラメータに従ってスポット寸法の焦点深度に対する変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本特許応用のために、次の用語が以下で定義される。
【0023】
用語「部分的治療」は、光エネルギーのパターンに起因する一連の治療ゾーンを含む治療を表し、ここでは治療ゾーンの大部分に対して次の条件が満たされる、即ち、治療ゾーン内の各点に対して、健全な組織の領域までの最小横方向距離は約0.5mm以下であり、治療ゾーンはDE接合部の一部分を含む(即ち、治療より前に隣接していた真皮および表皮組織の部分を含む)。皮膚に対しては、そのような横方向距離測定は、DE接合部のおおよその深さにおける2次元平面内で行われるべきである。部分的治療パターンの一実施例は、円形微視的病変の離散的配列であり、ここでは各病変は約1mm(またはより小さい)の直径を有し、各病変は健全な組織の部分に隣接している。部分的治療パターンの別の実施例は、治療の線の離散的配列であり、ここでは各線の幅は約1mm以下であり、各線の周囲は健全な組織の部分に隣接している。切除的部分的治療では、治療ゾーンは切除された領域を含む。それで、例えば、切除された穴を囲む0.2mmの凝固領域を持つ直径0.2mmの切除された穴は、部分的治療を暗示するであろう。凝固の小さな輪内の直径3mmの切除された穴は、部分的治療を暗示しないであろう。
【0024】
用語「レーザー波長」、「レーザーダイオード波長」、「レーザーの波長」、および同様の変形は、興味のある波長ゾーンに対するレーザーのピーク波長を表す。
【0025】
光の波長に対する用語「熱的に調節された吸収係数」は、選択された波長に対して30℃の水に対する吸収係数と80℃の水の吸収係数との平均を意味する。
【0026】
あらかじめ選択されたパルスエネルギーに対して可変の病変の深さ、幅、およびアスペクト比を有する部分的治療レーザーシステムは、1つまたは複数の表皮層における光ビーム開口数またはビーム寸法を調節するために、調節可能なレンズ群および/または個別に交換可能な光学素子を使用して創出されてもよい。そのようなレーザーシステムは、本明細書で説明されるようにレーザービームパラメータの適切な選択によって創出されてもよい。
【0027】
そのようなデバイスを実証するために、治療ゾーンは、1つまたは複数の形成外科手術中に切除された生体外の人間の皮膚上にレーザービームを向けることによって創出された。組織試料内への光学スポット寸法および焦点深度は、組織表面に対して集束レーザービームの焦点位置を調節することによって調節された。皮膚は貯蔵のために凍結され、その後治療される前に体温まで温められた。生体内の治療条件に近づけるために、試料が食塩水を使用して湿った状態に保たれながら、生体外の組織の治療は、ほぼ体温で実施された。皮膚は、標準的な組織学的方法を使用して凍結され、切片化された。染色は、組織内の特徴を装飾するためにヘモトキシリン(hemotoxylin)およびエオシン(eosin)(H&E)染料を使用して実施された。その結果は次いで、顕微鏡に取り付けられた目盛り付きのCCDカメラを使用して測定された。図5A〜Bは、選択された例示的条件のもとでのレーザー治療に続いて皮膚表面にほぼ垂直に薄く切られた組織の切片を示す。対応するレーザー治療パラメータは表1で与えられる。
【0028】
【表1】
【0029】
温度につれての吸収の増加の利点は、比較できる治療パラメータでの1410nmおよび1480nmにおける生体外の治療で示されるように実証された。図5Aおよび5Bでの組織の薄く切られた切片は、他の治療パラメータが一定(皮膚表面において1/e2強度点で180μmのスポット寸法を持つ近似的ガウシアン(Gaussian)ビームを使用する治療ゾーン当たり10mJの治療エネルギー)に保持された状態でのこれらの2つの波長における生体外の治療の結果を示す。両方の治療は、ラマンシフトファイバーレーザーから単一モードファイバーによって配給される光を使用して実施された。ラマンシフトファイバーレーザーは、IPGフォトニクス社(IPG Photonics,Inc.)(オックスフォード、マサチューセッツ州)から入手できる。
【0030】
30℃においては、水の吸収は、これらの2つの波長に対してほぼ同じであり、1410nmにおいて約24cm-1および1480nmにおいて約25cm-1である。30℃においてわずかにより高い吸収を有するにもかかわらず、1480nm光は、1410nm波長よりも深く侵入した。侵入の差は、部分的にはこれらの波長間の散乱係数のわずかな差に起因したが、散乱に起因する差は、治療ゾーン内での水の動的吸収特性に起因する差と比較して小さい。組織は、特に組織の上層内で、レーザー治療によって30℃より著しく高く局所的に加熱されたので、これらの2つの波長で創出された治療ゾーンの深さの差は、主として30℃より高い温度における吸収の差に起因した。皮膚がレーザーによって加熱されたとき、吸収係数は、温度の変化が原因で変化した。1410nmレーザーでの治療から生じた微視的治療ゾーン(図5A)は半切除的であり、半切除的治療を暗示しなかった1480nmレーザーでの治療から生じた微視的治療ゾーン(図5B)よりも浅い侵入を有する。各々の場合で、病変は、皮膚表面から真皮内へ延びる。
【0031】
1410nm波長に対する水の吸収は、30℃から80℃までこの範囲にわたっての約22%の全増分に対して単調に増加する。対照的に、1480nm波長吸収は、この同じ温度範囲にわたって約15%だけ単調に低減される。これらの2つの波長に対する吸収の温度に対する傾向は、水が少なくとも100℃まで加熱される間単調に続く。これらの理由のために、30℃においてほぼ同じ吸収係数を有するにもかかわらず、結果として生じる治療病変は、特性および深さが非常に異なる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、ハンドピースは、レーザー光を治療されるべき皮膚の領域へ配給するために使用される。図1Aで例示されるハンドピースは、レーザー光源140から光エネルギーを配給する光ファイバー120を含む。光ファイバー120の端部は、光ファイバー120から放出される光ビーム130を平行にするために光コリメータユニット121内に取り付けられる。光ビーム130は、3つのレンズ素子101、102、および103からなる調節可能なレンズ群123の方へ向けられる。個々のレンズ素子は、モータ182を使用して調節されてもよい。光ビーム130は、オプションのミラー104から星形スキャナー輪(starburst scanner wheel)124内へ反射される。星形スキャナー輪124は、光ビーム130を出射レンズ群125へ偏向させ、それは、出射窓126を通じて皮膚199内へ光ビーム130を集光する。スペーサチップ128は、出射レンズ群125と皮膚199の表面との間に所望の距離を保つ補助として、基準ピン129に対して機械的に合わせられる。出射レンズ群は、皮膚199内か、皮膚199の表面か、または皮膚199の表面より上かの、任意の所望の位置において光ビームを集光するように選択されてもよい。スペーサチップ128は、オプションとして透明な接触板127を含んでもよい。
【0033】
ハンドピース100は、ページ内または外の方向へ一定の速度で皮膚を横切って動かされてもよく、一方、星形スキャナー輪124は、モータ(図示されず)によって一定速度で動かされる。これは、所望のパターンを持つ部分的治療を創出するために使用されてもよい。皮膚に適用されるコントラスト強化薬剤とともに光学マウスチップを用いるそれらなどのもっと複雑な速度帰還システムは、例えば、同時係属の特許文献1、名称「Method and Apparatus for Monitoring and Controlling Laser-Induced Tissue Treatment」および特許文献2、名称「Method And Apparatus For Monitoring And Controlling Thermally Induced Tissue Treatment」で説明されるように使用されてもよく、それらの両方は、追加の柔軟性を提供するために参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
レーザー光源140は1つまたは複数のレンズを含む。レーザー波長は、1350nmから2500nmの範囲内でよい。この範囲では、レーザーは主としておよび実質的に皮膚内で水によって吸収される。水は、皮膚内で発色団よりも一様に分配されるから、これは、主として水によってより選択性が低く吸収される波長で治療をする。したがって、そのような波長の使用は、水によって実質的に吸収されないまたは皮膚内のメラニンまたは血液などの発色団の特定の分布に依存する波長が使用される場合よりももっと再現可能な治療ゾーンを生成するであろう。
【0035】
適切なレーザーは、多くの異なる波長で作られてもよく、多くの異なる技術から作られてもよい。
【0036】
レーザー波長は、約7cm-1から約26cm-1の範囲内のまたは約7cm-1から約12cm-1の範囲内の熱的に調節された吸収係数を有するように選択されてもよい。約26cm-1より大きい熱的に調節された吸収係数を有するレーザー波長は、典型的には治療されるべき組織内へ深く侵入しない。約7cm-1未満の熱的に調節された吸収係数を有するレーザー波長は、半切除的モードへ切り換わるためにはより多くのレーザーエネルギーを必要とし、したがってより望ましくない。
【0037】
約7cm-1から約26cm-1の範囲内の熱的に調節された吸収係数を有するレーザー波長は、部分的治療応用に対して、有用な治療深さを提供する。これらの吸収範囲の外側の波長を持つレーザーもまた、特に治療ビームのスポット寸法の調節を可能にできる調節可能なレンズ群などの本発明の他の態様と結合されるとき、本発明の範囲内である。
【0038】
部分的レーザー治療システムの熱的に調節された吸収係数は、所望の治療効果に基づいて選択されてもよい。組織内で主として水によって吸収される波長は、しわ、色素性病変、血管病変、その他の治療に有用である。そのような波長に対して、皮膚の水分含有量は重要である。皮膚の真皮層は典型的には、約70%の水分を含む。組織内で主として水によって吸収される波長に対して、光の組織内への侵入は、主として水でのレーザー波長の吸収係数に依存する。それで、例えば、水で27cm-1の吸収係数を持つ光は、皮膚では約19cm-1の吸収係数を有し、この吸収を持つ治療ビームの配給されるパワーは、散乱が無視できると仮定すると、皮膚表面より下の0.5mmの深さにおいて約63%だけ(即ち、その1/e点まで)低減されるであろう。治療ゾーンの実際の深さは、正確なデバイス構成および皮膚特性に依存するであろう。治療ゾーン深さは、侵入深さよりも深いまたは浅いかもしれないが、熱的に調節された吸収係数によって影響されるであろう。小さな開口数を持つ治療ビームに対して、所望の治療深さにおけるエネルギー付与は、皮膚内の熱的に調節された吸収係数をおおよそ所望の最大治療深さの逆数として選択することによって最大化されてもよい。最大病変深さが約0.5から2mmである場合の治療に対して、治療レーザーの波長は、熱的に調節された吸収係数が約7cm-1から約26cm-1の範囲内または約8cm-1から約12cm-1の範囲内であるように選択されてもよい。
【0039】
図3は、水の温度が約30℃から約80℃まで変えられたときの水に対する吸収スペクトルの測定を波長の関数として示す。これらの測定は、透過光分光学を使用して行われ、ここでは光は、水の加熱された試料を貫通して通された。水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき、水による光の吸収は、約1480nmから約1640nmの範囲内の波長を持つ光に対して増加した。
【0040】
上で説明されたように、熱的に調節された吸収係数は、デバイスに対する侵入の最大深さを選択する際に使用されてもよい。もしより深い病変が望まれるならば、治療ゾーンが所望の深さまで創出され得る効率は、皮膚の温度が上がるにつれて動的に減少する吸収を有する波長の選択と併せて、皮膚上への平均フルエンスを調節することによってさらに改善することができる。多くの治療に対して、吸収の動的増加は、皮膚の治療反応に重要な利点を提供することができる。これらの利点のいくつかは、実施例とともに例示されてもよい、即ち、所与のパルスエネルギー、例えば10mJに対して、パルスエネルギーを小さな直径、例えば30〜70μmを持つビームに集光することは、治療領域に高強度を創出し、それゆえに組織を急速に加熱し、その結果侵入の深さを強化するように組織の吸収係数を急速に調節する。治療パルス内のエネルギーは、小さな深さ内で吸収され、吸収の動的な変化なしで生じるであろうよりももっと弱い表面の局所的治療効果を創出する。このことは、治療ゾーンの上側部分より下でビーム強度を低減するようにビームを散乱するまたは反射することができる組織内の泡の創出を回避するのに有用であり、その泡は、組織のより深い層への光学治療エネルギーの侵入を制限するであろう。
【0041】
皮膚表面においてより大きな(および同じエネルギー、パルス幅、その他を有する)光ビームに対しては、皮膚表面における温度の変化率はより遅い。したがって、照射領域が低温であるときには、治療エネルギーのより大きな割合が、照射領域の上側部分を通過することができる。それゆえに、特に吸収が皮膚のおよび/または皮膚内の水の温度とともに動的に減少するときには、治療エネルギーは、より小さなビームと比較して、より大きなビームでは同じくらい深くは侵入しない可能性があるということを、理論は示唆するであろう。しかしながら、典型的には部分的治療で使用される高フルエンスに対して、散乱部位は、例えば、皮膚内の水の気化によって創出される。その理由のため、ビームの侵入深さを最大にするためには、高局所的フルエンスでの治療に対してパルスエネルギーが増加するにつれて、吸収が減少する波長を使用しかつより大きなビーム寸法を使用することは有利であることを、我々は見いだした。
【0042】
それゆえに、システムは、あたかもそれが、焦点位置、開口数、ビーム直径、およびビーム形状などの光ビームパラメータを変えるだけで調節可能な吸収源を有するように、機能することができる。このことは、ある種のレーザー治療システムにおいて高価な調節可能な光源を用いる必要性を回避することを可能にする。
【0043】
水で温度上昇とともに減少する吸収を有するレーザー波長は、高パルスエネルギーおよび高局所的フルエンスを扱うとき、より低い吸収係数を有することが有利である深い病変を創出するために、より低いパルスエネルギーが使用されることを可能にする。そのような波長はまた、脱毛に対するまたは瘢痕、しわ、肝斑、および重要な皮膚要素を持つ他の皮膚病変の治療に対する治療の有効性を高めるために、真皮内の凝固および損傷の深さを増加させるように適切な光学設計と併せて有益に組み込まれてもよい。水でのレーザー波長の吸収が、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき少なくとも12%だけ減少し、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約12%から約20%だけ減少し、または水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約15%から約20%だけ減少するように、レーザー波長は選択されてもよい。
【0044】
水が約30℃から約80℃まで加熱されたときの吸収の変化率が図4で示される。先に述べられたように、水による光の吸収は、約1480nmから約1640nmの波長範囲にわたって温度とともに減少する。測定された吸収の比率の減少は、約1470nmから約1680nmの波長範囲において約12%から約20%の範囲内であった。約1480nmから約1640nmの波長範囲においては、水での吸収の減少は、約15%から約20%の範囲内であった。
【0045】
上で説明された要因の全てを所与とすると、約1480nmから約1640nmの、約1560nmから約1640nmの、または約1550nmの波長範囲内のレーザーを操作することは、多くの応用で望ましい可能性がある。これらの波長のファイバーレーザーおよびラマンシフトファイバーレーザーは、IPGフォトニクス社(IPG Photonics,Inc.)(オックスフォード、マサチューセッツ州)などから普通に入手可能である。
【0046】
レーザー光源140は、1つまたは複数のレーザーを含む。例えば、レーザー光源は、1つまたは複数のファイバーレーザーを含むことができる。ファイバーレーザーは、それらの高ビーム品質、正確に制御された波長、温度依存性の欠如、および整列されるべきミラーの欠如のために望ましい。特に、エルビウム添加グラスファイバーレーザーは、1520〜1620nmの範囲内の波長を生成するために使用されてもよい。
【0047】
上で述べられたように、吸収係数が温度とともに減少するレーザー波長を選択することによって、システムは、あたかもそれが、焦点位置、開口数、ビーム直径、およびビーム形状などの光ビームパラメータを変えるだけで調節可能な吸収源を有するように、機能することができる。このことは、ある種の治療システムにおいて、高価な調節可能な光源を用いる必要性を回避することを可能にする。例えば、単一の固定波長ファイバーレーザーは、レーザー光源140で使用されてもよい。
【0048】
調節可能なレンズ群123は、光ビームパラメータの変化、例えば、皮膚199の表面におけるスポット寸法、皮膚199の表面より下の光ビーム130の焦点深度、それが皮膚199に入るときの光ビーム130の開口数、および/または皮膚199の表面におけるビーム断面形状のそれらの変化から生じる異なる光学治療条件を創出するために、治療中にまたは治療間で調節されてもよい。スポット寸法を調節することによって、光ビーム130内の光学治療エネルギーは、要望通りに組織と皮膚表面との間の相互作用の大きなまたは小さな領域を創出するために、集中されまたは分配されてもよい。小さなスポットは、皮膚199の表面においてより大きな破壊を創出する場合がある。これらの影響は、約1480nmから約1640nmの範囲内の波長などの、動的に減少する吸収を持つ波長を使用することによって、より深い病変を創出するために回避することができる。そのような波長では、もし光ビーム130が小さなスポット寸法で皮膚に入ると、皮膚の上層の温度は急速に加熱され、それらの吸収は素早くシフトするであろうし、それゆえに吸収を増加させ、治療ビームに起因する局所的損傷の減少を引き起こす。もしビームが、光ビーム130が大きなスポット寸法で皮膚に入るように調節されるならば、皮膚の上層の温度はもっとゆっくりと加熱されるであろうし、破壊的な散乱部位は低減され得るし、治療ビームはそれゆえにもっと深く侵入することができるであろう。病変深さを最大にするためには、散乱部位が創出される点の真下に理論的最適条件がある。実際には、より大きなスポット寸法は典型的には、部分的治療を創出するために使用される高強度に対してより良く、光学(例えば、レンズの開口数)の実際的な限界は典型的には、大きな光学寸法が原因でパルス深さの著しい減少がある前に到達されるということが見いだされた。それゆえに、光ビームパラメータを調節することによって、ビーム130は、第2のレーザーまたは調節可能なレーザーを組み込む必要性なく治療病変の深さを増加させることができる。
【0049】
半切除的でない治療モードは、皮膚の上層内での動的加熱を低減することによって皮膚199内の所望の位置に治療ゾーンをより効果的に創出するために、治療ビームの侵入深さを強化するようにさらに最適化されてもよい。様々な光ビームパラメータは、動的吸収を持つ治療ビームの治療効果を変えるために使用されてもよい。例えば、高開口数の使用は、例えばもし表皮組織の節約が望まれるならば、皮膚表面の冷却の必要性を低減するまたは排除するために使用されてもよい。
【0050】
ビーム形状の変更は、皮膚表面より下の所望の深さにおけるビームの集中をなお最大にしながらビームの侵入を可能にするように、皮膚上の可視パターンの影響を最小化するためにおよび皮膚内での熱的分布を変更するために有用である可能性がある。例えば、もっと深い侵入が望まれるときには、ビームは、より大きな領域にわたってビーム強度を分配するために、皮膚表面においてより一層の「上部が平たい」形状となるように調節されてもよい。もしそのようなビームが次いで所望の深さに焦点を合わされるならば、そのときには所望の深さにおける加熱は最大化され得る。例えば、もしレンズ素子101、102、103の1つまたは複数が例えば円筒型素子などのように径方向に非対称であるように選択されるならば、ビーム形状は、別法として変更されてもよい。そのような動径方向に非対称な素子は、治療パターンを変更するためにお互いからの距離を調節されることに加えて、オプションとして回転されてもよい。本発明の装置を使用して望ましく変更されてもよい他のパラメータは、当業者には明らかであろう。
【0051】
調節可能なレンズ群123は、光学ズームレンズに普通用いられる技術を使用して設計され、組み立てられてもよい。例えば、2つ以上の光学素子間の距離を適切に調節することによって、光ビーム130の特性が調節されてもよい。
【0052】
一実施形態では、光学スポット寸法は、約90μm未満のスポット寸法に対して皮膚表面に焦点が合わされる。より小さなスポット寸法を達成するために、レンズ素子101および103は各々、光学軸に沿ってレンズ素子102により近く動かされる。このことは、星形スキャナー輪124内へ注入される光ビーム130の直径を増加させる。皮膚199の表面においてより大きなスポット寸法を達成するために、レンズ素子103は固定されたままで、レンズ素子101と102との間の距離は、ビームの焦点を皮膚199内へ動かす要望通りに低減される。ビーム130の焦点を皮膚199内へ動かすことによって、皮膚199の表面におけるビーム130の直径は、皮膚表面においてより大きな領域にわたって光エネルギーを分配するように増加する。それゆえに、ビーム寸法および焦点深度は、所望の治療に対して調節され得る。
【0053】
適切な光学レンズ設計パラメータの範囲の実施例は、表2で与えられる。これらのパラメータのより広い範囲は、当業者によって創出されてもよい。特定の光学設計は、ビームに対する所望のスパン、スキャナー輪によって創出されるスポットの数、使用されるスキャナーの種類、光学波長、およびハンドピースのための設計の機械的制約に依存する。特定の設計は、特定のシステムに対する制約および所望の性能に基づいて当業者によって容易に最適化されてもよい。
【0054】
【表2】
【0055】
本発明の例となる実施形態は、光源140として約1550nmの波長を放出するエルビウム添加ファイバーレーザーを使用して特徴づけられた。例となる実施形態は、図1A〜Cで示される実施形態と機能的に似ていた。図1A〜Cを参照すると、レンズ素子101および103は、皮膚199の表面におけるスポット寸法および皮膚199内での光ビーム130の焦点深度の両方を同時に調節するために、レンズ素子102に対して光学軸に沿って調節された。生体外の組織は、上で述べられた図5Aおよび5Bに対して説明された通りに入手され、処理された。組織学的薄片は、治療条件のもとで創出された凝固の寸法を評価するために、ヘモトキシリンおよびエオシンで染色され、光学顕微鏡を使用して分析された。
【0056】
図9は、図7および8A〜8Gで要約される生体外の治療に対して使用されるパラメータに従って光学スポット寸法の焦点深度に対する変化を示すグラフである。小さな焦点に対しては、光ビームはこれらの実験に対して皮膚表面に集光されたことに留意されたい。光学焦点および皮膚の表面における光学スポット寸法が変えられたとき、治療深さおよび病変形状の変化をそれぞれ示すために、代表的な測定が記録され、図7および8A〜8Gでプロットされる。図7および8A〜8Gから分かるように、異なるパルスエネルギーに対して最も深い病変は、皮膚表面における異なる光学スポット寸法を使用して達成された。深さにおけるビームの集中性に影響を及ぼす焦点深度の調節に起因してこれらの結果にいくらかの影響があった。しかしながら、この影響は、皮膚表面におけるおよび皮膚の上層内での光学スポット寸法の変化によって生成される影響よりも著しく小さいと信じられる。
【0057】
図7〜9での結果から分かるように、光ビームの焦点は典型的には、代表的な病変の最大深さから著しく移動された深さに生じる。例えば、35〜40mJの範囲内のパルスエネルギーに対して、我々の研究での最大深さは、260μmの皮膚表面における直径を持つビームによって達成され、病変は約1mmの深さを達成しただけであるけれども、そのビームは約7mmの焦点深度に対応する。それゆえに、本発明のシステムは、焦点深度におけるまたはその近傍の光強度を増加させるために、選択された深さにビームを集光することに頼る集光システムと著しく異なることができる。我々の場合では、焦点深度は、典型的な病変の最深部分の深さの2倍よりも大きくすることができる。重要な要因は光学スポット寸法であるから、焦点の深さに対する上限はない。光ビームは実際に平行ビーム(即ち、実質的に無限の焦点深度)とすることができる。焦点はまた組織の外側とすることもできる。いくつかの態様では、焦点深度は、典型的な病変の最深部分の深さの約2倍から約100倍、または典型的な病変の最深部分の深さの約5倍から約500倍である。
【0058】
レーザーシステム設計者は、所与のパルスエネルギーにおいて病変の深さを増加させるために利用できる高価なレーザーパルスエネルギーを効果的に使用することができる。図7〜9によって説明される実施例では、深い病変は、100μmと260μmとの間の皮膚表面における治療ビームの光学スポット寸法を選択することによって、3〜40mJの範囲内の各々の選択されたパルスエネルギーにおいて効果的に達成された。図7から分かるように、パルス幅が、代表的な病変の最大深さを増加させるために増加されるとき、皮膚の表面における光学スポット寸法は、増加されてもよい。
【0059】
例えば、ガルバノメータースキャナー、圧電スキャナー、および音響光学スキャナーなどの、他の適切な種類の走査デバイスが、本発明で使用されてもよい。例えば、他の種類のズームレンズまたは個別に調節可能なレンズ変更システムなどの、他の適切な種類のビーム調節デバイスがまた使用されてもよい。個別に調節可能なレンズ変更システムの一種は図6で例示され、それは、図1Aの調節可能なレンズ群123と交換するために使用されてもよい。図6は、個別のレンズ205A、B、C、Dを含む回転タレット(turret)201を表す。個別のレンズ205A〜Dは、単一の素子またはレンズ群を含んでもよい。回転タレット205または調節可能なレンズ群123は、手動で調節されてもよく、または例えばコンピュータもしくは他の種類のコントローラ180によってオプションとして制御されてもよいモータ182を使用して、電子的に調節されてもよい。コントローラ180は、適切な治療パラメータを選択するためにユーザーインターフェース184を介して使用者によって利用されてもよい。ユーザーインターフェース184を介して、使用者は、半切除的である治療モードと半切除的でない治療モードとの間で切り換わるように部分的光学治療システムを(コントローラを介して)制御することができる。コントローラ180はまた、レーザー光源140から放出される光ビームの波長、パルスエネルギー、パルス形状、パルス繰り返し率、およびパルス幅などの、レーザー光源のパラメータを制御することもできる。
【0060】
調節機構の組合せは、分解能またはスパンの改善のために組み込まれてもよい。例えば、図2A〜Cは、調節可能なレンズ群123および一組のスペーサチップ128A、B、Cの両方を組み込む本発明の装置の一実施形態を例示する。図2Aで使用される光学システムは、図2B(128B)および2C(128C)で使用されるスペーサに比して短い長さのスペーサチップ128Aを有する。焦点深度およびスポット寸法の追加の制御を得るために、焦点深度は、出射レンズ群125と1つまたは複数のビームが入射する皮膚199の表面との間の間隔110を調節することによって調節されてもよい。間隔110は、異なる焦点深度を達成するために交換されてもよい、異なる長さの複数スペーサ−チップを使用することによって、簡単に、安価に、かつ可動部品なしで調節されてもよい。図2A〜2Cは、異なる長さの一組のスペーサと組み合わせた調節可能なズームレンズの使用を表す図1A〜1Cの部分的治療システムの例示図である。この組合せは、ハンドピース100の光学設計のためにそうしやすいであろう所与の制限された空間または予算の制約を超えて焦点の深さを増すために有益に使用されてもよい。
【0061】
本発明のシステムは、非接触チップを含むことができる。非接触チップは、皮膚と接触するように設計されるが、レーザービームが皮膚に入る点においてレーザー治療ビームのビーム経路内に(直接的にかまたは皮膚に適用されるジェルなどの物質を介して間接的に)皮膚と接触する接触素子を有さないチップである。非接触ではないチップは、例えば、接触板が皮膚に触れる点においてレーザービーム経路内にガラスまたはサファイアの板を有するかもしれない。半切除的部分的治療に使用される高光学フルエンスに対して、皮膚表面近傍に創出される高フルエンスレベルは、接触板に損傷を与えるかもしれない。さらに、皮膚表面から除去された組織もまた、接触板に触れ、接触窓への損傷速度の増大を引き起こす吸収部位をもたらすかもしれない。接触窓への損傷は、ビームを遮るかもしれず、それで典型的には望ましくない。
【0062】
本発明のシステムは、接触チップを含むことができる。接触チップは、実質的に透明な接触板が治療中皮膚と接触し、レーザー治療ビームが皮膚に入る点において(直接的にかまたは皮膚に適用されるジェルなどの物質を介して間接的に)接触板が皮膚と接触するように構成されるチップである。接触治療チップは、それらが冷却を配給されることを可能にするのでおよび/またはそれらが熱の拡散を可能にするので、半切除的でない治療モードでの治療のために有益である可能性がある。
【0063】
本発明のシステムは、1つまたは複数の接触チップおよび1つまたは複数の非接触チップを含む一組のチップとともに販売されてもよい。例えば、本発明のシステムは、半切除的でない治療のための接触チップおよび半切除的である治療のための非接触チップを含む一組のチップとともに販売されてもよい。接触または非接触のどちらのチップが使用されるかは、特定のデバイス構成および所望の治療成果に依存するであろう。
【0064】
詳細な説明は多くの細目を含むけれども、これらは、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきでなく、単に本発明の異なる実施例および態様を例示すると解釈されるべきである。本発明の範囲は、上で詳細に論じられなかった他の実施形態を含むことが理解されるべきである。例えば、反射または回折光学が、本明細書で説明された屈折光学の代わりに使用されてもよい。当業者には明らかであろう様々な他の修正、変更および変形は、添付の特許請求の範囲で規定されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される本発明の方法および装置の配置、操作および細部で行われてもよい。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの法的に同等のものによって決定されるべきである。さらに、素子、部品または方法ステップは、その素子、部品または方法ステップが特許請求の範囲で明確に言及されているかどうかにかかわらず、公衆にささげられることを意図されていない。
【0065】
特許請求の範囲では、素子を単数で参照することは、明確に述べられない限り「唯一の」を意味することを意図されておらず、むしろ「1つまたは複数」を意味することを意図されている。さらに、デバイスまたは方法が、特許請求の範囲によって包含されるために、本発明の異なる実施形態によって解決できるあらゆる問題に対処することは必要ではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調節可能なパルスエネルギーを有する光パルスを放出するレーザー光源と、
前記光パルスを皮膚へ配給する部分的光学治療システムとを含み、
前記部分的光学治療システムは、前記光パルスの前記パルスエネルギーに基づいて、前記光パルスによって創出される病変の深さを最大にするために、前記皮膚の表面における光学スポット寸法を自動的に調節する自動調節機構を含むことを特徴とする部分的皮膚科的治療のための装置。
【請求項2】
前記自動調節機構はさらに、前記光パルスの前記パルスエネルギーに基づいて、前記光パルスによって創出される病変の深さを最大にするために、前記光パルスの焦点深度を自動的に調節することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記病変は、前記皮膚の表面から真皮まで延び、前記自動調節機構が前記皮膚表面における前記光学スポット寸法を増加させるとき、創出される前記病変の前記深さもまた増加することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記調節機構は、前記皮膚表面における前記光ビームの光学スポット寸法を約100μmと約260μmとの範囲内の少なくとも1つの光学スポット寸法に調節するように構成され、ここで光学スポット寸法は、前記ビームの1/e2強度レベルに対して測定されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記部分的光学治療システムはスキャナーシステムを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記調節機構は、調節可能なレンズ群を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記調節機構は、個別に交換可能な光学素子を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記調節機構を電子的に制御するコントローラをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記光源は、以下からなる群内の特徴の少なくとも1つを有するレーザー波長を有する光パルスを放出し、前記群は、
熱的に調節された吸収係数は、約7cm-1から約26cm-1の範囲内であり、
前記熱的に調節された吸収係数は、約7cm-1から約12cm-1の範囲内であり、
水での吸収は、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき少なくとも12%だけ減少し、
水での前記吸収は、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約12%から約20%だけ減少し、
水での前記吸収は、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約15%から約20%だけ減少することからなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記光源は、レーザー波長を有する光パルスを放出し、
前記レーザー波長の熱的に調節された吸収係数は、約7cm-1から約26cm-1の範囲内であり、
水での前記レーザー波長の前記吸収は、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約12%から約20%だけ減少することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記光源は、レーザー波長を有する光パルスを放出し、
前記レーザー波長の熱的に調節された吸収係数は、約17cm-1から約12cm-1の範囲内であり、
水での前記レーザー波長の前記吸収は、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約15%から約20%だけ減少することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記光源は、レーザー波長を有する光パルスを放出し、
前記レーザー波長は、約1480nmから約1640nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記光源は、レーザー波長を有する光パルスを放出し、
前記レーザー波長は、約1560nmから約1640nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記光源は、レーザー波長を有する光パルスを放出し、
前記レーザー波長は約1550nmであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記光源は、レーザー波長を有する光パルスを放出し、
前記レーザー波長は、約1380nmから約1420nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
接触チップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項17】
レーザー波長で光エネルギーを放出するレーザー光源であって、水での前記レーザー波長の吸収は、組織が30℃から80℃まで加熱されるとき減少し、前記レーザー波長は、1350nmから2500nmの範囲内であるレーザー光源と、
皮膚の表面における光学スポット寸法を調節する調節機構を含む部分的光学治療システムとを含み、
前記光学システムの前記皮膚との接触面にほぼ対応する基準面と光学治療ビームの伝搬方向に沿った空気中の光学焦点とからの距離は、選択された光パルスエネルギーにおける病変の最深部分の深さの2倍よりも大きくかつ/もしくは前記病変の最深部分の深さの半分未満である、または前記光ビームの前記光学焦点は、前記皮膚の外側に置かれることを特徴とする部分的皮膚科的治療のための装置。
【請求項18】
レーザー波長で光エネルギーを放出するレーザー光源であって、水での前記レーザー波長の吸収は、組織が30℃から80℃まで加熱されるとき減少し、前記レーザー波長は、1350nmから2500nmの範囲内であるレーザー光源と、
前記レーザー光源から放出される光ビームを皮膚の目標領域へ配給する部分的光学治療システムであって、前記皮膚表面における前記光ビームの寸法、前記皮膚表面より下での前記光ビームの焦点深度、前記光ビームが前記皮膚に入るときの前記光ビームの開口数、および前記皮膚表面におけるビーム断面形状からなるリストから選択される前記光ビームの1つまたは複数のパラメータを調節する調節機構を含む前記部分的光学治療システムとを含むことを特徴とする部分的皮膚科的治療のための装置。
【請求項19】
第1に、レーザー波長で光エネルギーを放出するレーザー光源を提供するステップであって、水での前記レーザー波長の吸収は、組織が30℃から80℃まで加熱されるとき減少し、前記レーザー波長は、1350nmから2500nmの範囲内であるステップと、
第2に、部分的治療を皮膚の目標領域へ配給するために、および病変の最深部分の深さによって特徴づけられる少なくとも1つの前記病変を創出するために、前記レーザー光源によって放出される光ビームを皮膚の前記目標領域の方へ向けるステップと、
第3に、前記皮膚表面における前記光ビームの寸法を増加させるステップと、
第4に、部分的治療を皮膚の目標領域へ配給するために、および病変の最深部分の深さによって特徴づけられる少なくとも1つの前記病変を創出するために、前記レーザー光源によって放出される前記光ビームを皮膚の前記目標領域の方へ向けるステップとを含み、
前記第2のステップ中に創出される病変の深さは、前記第4のステップ中に創出される病変の深さよりも深いことを特徴とする部分的皮膚科的治療のための方法。
【請求項1】
調節可能なパルスエネルギーを有する光パルスを放出するレーザー光源と、
前記光パルスを皮膚へ配給する部分的光学治療システムとを含み、
前記部分的光学治療システムは、前記光パルスの前記パルスエネルギーに基づいて、前記光パルスによって創出される病変の深さを最大にするために、前記皮膚の表面における光学スポット寸法を自動的に調節する自動調節機構を含むことを特徴とする部分的皮膚科的治療のための装置。
【請求項2】
前記自動調節機構はさらに、前記光パルスの前記パルスエネルギーに基づいて、前記光パルスによって創出される病変の深さを最大にするために、前記光パルスの焦点深度を自動的に調節することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記病変は、前記皮膚の表面から真皮まで延び、前記自動調節機構が前記皮膚表面における前記光学スポット寸法を増加させるとき、創出される前記病変の前記深さもまた増加することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記調節機構は、前記皮膚表面における前記光ビームの光学スポット寸法を約100μmと約260μmとの範囲内の少なくとも1つの光学スポット寸法に調節するように構成され、ここで光学スポット寸法は、前記ビームの1/e2強度レベルに対して測定されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記部分的光学治療システムはスキャナーシステムを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記調節機構は、調節可能なレンズ群を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記調節機構は、個別に交換可能な光学素子を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記調節機構を電子的に制御するコントローラをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記光源は、以下からなる群内の特徴の少なくとも1つを有するレーザー波長を有する光パルスを放出し、前記群は、
熱的に調節された吸収係数は、約7cm-1から約26cm-1の範囲内であり、
前記熱的に調節された吸収係数は、約7cm-1から約12cm-1の範囲内であり、
水での吸収は、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき少なくとも12%だけ減少し、
水での前記吸収は、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約12%から約20%だけ減少し、
水での前記吸収は、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約15%から約20%だけ減少することからなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記光源は、レーザー波長を有する光パルスを放出し、
前記レーザー波長の熱的に調節された吸収係数は、約7cm-1から約26cm-1の範囲内であり、
水での前記レーザー波長の前記吸収は、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約12%から約20%だけ減少することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記光源は、レーザー波長を有する光パルスを放出し、
前記レーザー波長の熱的に調節された吸収係数は、約17cm-1から約12cm-1の範囲内であり、
水での前記レーザー波長の前記吸収は、水の温度が30℃から80℃まで上げられるとき約15%から約20%だけ減少することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記光源は、レーザー波長を有する光パルスを放出し、
前記レーザー波長は、約1480nmから約1640nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記光源は、レーザー波長を有する光パルスを放出し、
前記レーザー波長は、約1560nmから約1640nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記光源は、レーザー波長を有する光パルスを放出し、
前記レーザー波長は約1550nmであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記光源は、レーザー波長を有する光パルスを放出し、
前記レーザー波長は、約1380nmから約1420nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
接触チップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項17】
レーザー波長で光エネルギーを放出するレーザー光源であって、水での前記レーザー波長の吸収は、組織が30℃から80℃まで加熱されるとき減少し、前記レーザー波長は、1350nmから2500nmの範囲内であるレーザー光源と、
皮膚の表面における光学スポット寸法を調節する調節機構を含む部分的光学治療システムとを含み、
前記光学システムの前記皮膚との接触面にほぼ対応する基準面と光学治療ビームの伝搬方向に沿った空気中の光学焦点とからの距離は、選択された光パルスエネルギーにおける病変の最深部分の深さの2倍よりも大きくかつ/もしくは前記病変の最深部分の深さの半分未満である、または前記光ビームの前記光学焦点は、前記皮膚の外側に置かれることを特徴とする部分的皮膚科的治療のための装置。
【請求項18】
レーザー波長で光エネルギーを放出するレーザー光源であって、水での前記レーザー波長の吸収は、組織が30℃から80℃まで加熱されるとき減少し、前記レーザー波長は、1350nmから2500nmの範囲内であるレーザー光源と、
前記レーザー光源から放出される光ビームを皮膚の目標領域へ配給する部分的光学治療システムであって、前記皮膚表面における前記光ビームの寸法、前記皮膚表面より下での前記光ビームの焦点深度、前記光ビームが前記皮膚に入るときの前記光ビームの開口数、および前記皮膚表面におけるビーム断面形状からなるリストから選択される前記光ビームの1つまたは複数のパラメータを調節する調節機構を含む前記部分的光学治療システムとを含むことを特徴とする部分的皮膚科的治療のための装置。
【請求項19】
第1に、レーザー波長で光エネルギーを放出するレーザー光源を提供するステップであって、水での前記レーザー波長の吸収は、組織が30℃から80℃まで加熱されるとき減少し、前記レーザー波長は、1350nmから2500nmの範囲内であるステップと、
第2に、部分的治療を皮膚の目標領域へ配給するために、および病変の最深部分の深さによって特徴づけられる少なくとも1つの前記病変を創出するために、前記レーザー光源によって放出される光ビームを皮膚の前記目標領域の方へ向けるステップと、
第3に、前記皮膚表面における前記光ビームの寸法を増加させるステップと、
第4に、部分的治療を皮膚の目標領域へ配給するために、および病変の最深部分の深さによって特徴づけられる少なくとも1つの前記病変を創出するために、前記レーザー光源によって放出される前記光ビームを皮膚の前記目標領域の方へ向けるステップとを含み、
前記第2のステップ中に創出される病変の深さは、前記第4のステップ中に創出される病変の深さよりも深いことを特徴とする部分的皮膚科的治療のための方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図9】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図9】
【公表番号】特表2009−543599(P2009−543599A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519547(P2009−519547)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/016013
【国際公開番号】WO2008/008499
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(504226009)リライアント・テクノロジーズ・インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】RELIANT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/016013
【国際公開番号】WO2008/008499
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(504226009)リライアント・テクノロジーズ・インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】RELIANT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】
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