説明

論理インタフェース設定方法、及び無線基地局

【課題】プラグ・アンド・プレイ型の無線基地局eNBにおいて、自律的な動作で周辺eNBや上位ノードとの間にX2、S1論理インタフェースを設定する。
【解決手段】 論理インタフェース設定方法において、ネットワークに新規に追加される無線基地局から、当該新規の無線基地局の存在を知らせる報知信号を無線送信し、前記報知信号を受信した移動端末において前記新規の無線基地局の無線品質を測定し、前記測定結果と、前記報知信号に含まれる前記新規の無線基地局の無線識別情報を、前記移動端末から既存の無線基地局に通知し、前記既存の無線基地局で、前記新規の無線基地局の無線識別情報をIPアドレスに変換し、前記IPアドレスに基づいて、前記新規の無線基地局と上位ノードとの間に論理インタフェースを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは通信ネットワークの構築に関し、特に、プラグ・アンド・プレイ型の無線基地局(PnP eNB)を新規にネットワークに追加する場合に、新規eNBと上位ノードの間、及び新規eNBと既存の近隣eNBの間で、自律的に論理インタフェースを設定する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークに新規ノードを追加する場合、従来は、追加される新規ノードごとに、オペレータがどの上位ノードや隣接基地局と接続すべきかを決定し、手動で設定を行っていた。しかし、オペレータの手動による新規ノードの導入は煩雑である上に、コストもかかり望ましくない。
【0003】
そこで、最小限の作業で新規ノードを設置したあとは、新規ノードの自律的な動作によって近隣基地局や上位ノード(通信管理装置)との間に論理接続(論理インタフェース)が設定されるネットワーク構築技術が必要となってくる。
【0004】
このようなネットワークを実現するために、プラグ・アンド・プレイ(PnP:plug and play)型、すなわち無線基地局がケーブル接続されると自律的に論理接続網が設定される無線アクセスネットワークの指針が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。この提案では、PnP型の無線基地局(eNB)がパワーオンすると、eNBは動的に与えられる自局のIPアドレスや、ゲートウェイアドレス、DNSサーバアドレスを用いて、OAMサーバとの間に初期接続を確立し、ネットワーク参加に必要な情報を、OAMサーバから取得する。そして、自動的に最適な上位ノード(MME/UPE)と接続する。ここまでが、基本セットアップの段階であり、その後、無線関連のパラメータを設定する。
【非特許文献1】"Standardization policy for plug and play RAN", R2-061929, 3GPP TSG RAN WG2 Ad Hoc on LTE, 27th-30th June 2006, Cannes, France
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の文献には、新規eNBと上位ノード(MME/UPE)の間、及び新規eNBと近隣のeNBの間で、どのようにして自律的に論理インタフェースを確立するのか、具体的な方法は開示されていない。
【0006】
また、まず新規eNBをOAMサーバにアクセスできる状態にして、OAMサーバからネットワーク参加のための必要情報を受け取らせる必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、プラグ・アンド・プレイ型の無線基地局(PnP eNB)を新規にネットワークに追加する場合に、新規無線基地局(eNB)と上位ノード(通信管理装置)の間、及び新規eNBと既存の近隣eNBの間で、自動的に論理インタフェースの設定を実現する方法を提供することを課題とする。
また、このような論理接続の設定を行うことのできる無線基地局(eNB)と、上位の通信管理装置(たとえばMME/UPE)の新規な構成を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の側面では、論理インタフェース設定方法は、
(a)ネットワークに新規に追加される無線基地局において、当該新規の無線基地局のIPアドレスをトランスポートネットワーク上にアドバタイズし、
(b)前記IPアドレスを受信した既存の無線基地局または上位ノードにおいて、前記新規の無線基地局から自局までのホップ数を検出し、
(c)検出したホップ数が所定の閾値以下である場合に、前記新規の無線基地局との間に初期論理インタフェースを設定する
ことを特徴とする。
【0009】
第2の側面では、論理インタフェース設定方法は、
(a)ネットワークに新規に追加される無線基地局から、当該新規の無線基地局の存在を知らせる報知信号を無線送信し、
(b)前記報知信号を受信した移動端末において前記新規の無線基地局の無線品質を測定し、
(c)前記測定結果と、前記報知信号に含まれる前記新規の無線基地局の無線識別情報を前記移動端末から既存の無線基地局に通知し、
(d)前記既存の無線基地局で、前記新規の無線基地局の無線識別情報をIPアドレスに変換し、
(e)前記IPアドレスに基づいて、前記新規の無線基地局と上位ノードとの間に論理インタフェースを設定する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記の手法により、新規eNBがネットワークに参入する際の論理インタフェースの設定に、オペレータによる判断や手動の設定が不要になる。
また、新規eNBおよび既存のeNBの自律的な動作により、最適かつ広範囲にわたる論理インタフェースを設定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下で、図面を参照して、本発明の良好な実施形態を説明する。図1は、本発明が適用される自己組織型(self-organizing)のネットワークの概略構成図である。複数の無線基地局(eNB)10−1〜10−nの各々が、トランスポートネットワーク40を介して上位の管理ノードであるMME(mobile management entity)/UPE(user plane entity)20に接続されている。実施形態では、複数のMME/UPE(20−1〜20−3)をひとつのグループとしてMME/UPEプール20A、20B、…を構成している。プール内の各MME/UPE20は、トランスポートネットワーク40を介して複数のeNB10と接続される。また、ひとつのeNB10は複数のMME/UPE20と接続され、メットワーク内でのロードバランシングが図られている。なお、実施例では、MMEとUPEを一体としているが、別ユニットであってもよい。
【0012】
トランスポートネットワーク40は、ルータ30−1〜30−5を含む。図示の便宜上、ルータ30−2と30−4がOAM(Operations, Administration and Maintenance)サーバと、MME/UPEプール20に接続されている。ルータ30はまた、図示しないHLR(home location register)やIASA(inter-access system anchor)にも接続されるが、本発明とは無関係なので説明を省略する。
【0013】
実施形態において、無線基地局(eNB)10は、プラグ・アンド・プレイ(PnP)型のノードである。PnP無線基地局(eNB)間の論理接続(論理インタフェース)をX2と称し、PnP無線基地局10と上位ノード(MME/UPE)20との間の論理接続(論理インタフェース)をS1と称する。
【0014】
PnP無線基地局10は、電源に差し込まれてパワーオンされると、自己の存在を有線又は無線で報知する。報知情報を受け取った既存のeNB10又は上位ノードMME/UPE20の少なくとも一方が、新規参入のeNB10に対する初期X2又は初期S1を設定する。新規eNB10は、初期X2又は初期S1を介して論理インタフェース情報を取得し、これに基づいて、さらに追加のS1やX2を設定する。
【0015】
以下で、具体的な実施形態に基づいて、どのようにして初期X2や初期S1が張られ、どのようにして、ネットワークを広くカバーする最適なX2インタフェースやS1インタフェースが設定されるかを説明する。
<第1実施形態>
図2は、第1実施形態のX2/S1設定方法を示すシーケンス図である。第1実施形態では、新規eNB10は、トランスポートネットワーク40上で自局のIPアドレスをアドバタイズ又はブロードキャストする。これを受け取った周辺のeNB10は、自局までのホップ数が閾値以下であるならば、新規eNB10との間で初期X2を設定し、自己が保持する周辺リスト、自己がS1を張っているMME/UPE20のIPアドレスなどを新規eNBに通知する。新規eNBはこの情報を基にして自局の周辺リストを作成し、上位ノードとの間にS1を設定する。
【0016】
より具体的には、新規eNBがプラグに差し込まれて電源が投入されると(S11)、自動的に自己のIPアドレスをトランスポートネットワーク40上でアドバタイズする(S12)。IPアドレスは、最初に運用者から固定的に割り当てられたものであってもよいし、一般的なルータに内蔵されているDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)機能によって動的に割り当てられてもよい。
【0017】
トランスポートネットワーク40を介して新規eNBのIPアドレスを受け取った周辺eNBは、自局までのホップ数を検出して、それが閾値以下であるかどうかを判断する(S21)。たとえば、図1のeNB10−1が新規参入してIPアドレスをトランスポートネットワーク40でアドバタイズする場合、隣接ノードであるeNB10−2やeNB10−3までのホップ数は2である。また、eNB10−4、10−5,10−6までのホップ数は4である。閾値T=3とすると、周辺のeNB10−2やeNB10−3は、自己が検出したホップ数が閾値以下なので、新規eNB10−1に対して、X2確立プロトコルのプロシージャを走らせる(S22)。一方、その他の周辺eNBでは、検出したホップ数が閾値を越えているので、何もせずに、次のアドバタイズを待つ。
【0018】
ホップ数の判断に用いられる閾値は、設計であらかじめ各eNB10に設定されていてもよいし、IPアドレスをアドバタイズする際に、新規eNB10−1のアプリケーションによりパケットで通知してもよい。
【0019】
所定のホップ数以下の既存の周辺eNB10−2、eNB10−3と、新規eNB10−1との間に初期X2が張られると、これらの周辺eNBは、自己が保持する周辺リストと、現在S1が張られている上位ノード(たとえばMME/UPE20A−1)のIPアドレスを、新規eNB10−1に通知する(S23)。周辺リストは、自局が現在X2インタフェースを張っている相手先eNBのリスト(第1リスト)を含み、オプションで、無線でブロードキャストする範囲内(ハンドオーバ範囲内)にある周辺セルリスト(第2リスト)を含んでもよい。また、周辺eNB10−2、10−3がS1インタフェースを張っているMME/UPEは1つに限定されず、同じプール20A内のすべてのMME/UPE20A−1〜20A−3との間でS1が張られていてもよい。
【0020】
新規eNB10−1は、初期X2を介して周辺eNB10−2、eNB10−3から受け取った情報を基にして、自局の周辺リストを作成して、必要な周辺eNBとの間に追加のX2を設定する(S13)。また、通知されたMME/UPE20A−1のIPアドレスに基づいて、上位ノードであるMME/UPE20A−1との間にS1を設定する(S14)。
【0021】
周辺リストの作成(S13)にあたって、新規eNB10−1は統計処理を行ってもよい。ホップ数の閾値次第で、多数の周辺eNB10から周辺リスト情報が送られてくる可能性がある。その場合、送られてきた周辺リストの中で登場頻度の高い周辺eNBから優先的に一定数のeNBだけをピックアップして、自局の周辺リストを作成する。登場頻度の低い、すなわち、重複の少ないeNBは、新規eNBから比較的離れたノードと考えられ、X2を設定する必要性が少ないからである。
【0022】
同様に、S1についても、多数の周辺eNBからS1情報が送られてきたときに統計処理を行って、登場頻度の高いMME/UPE20に対してだけS1を張ることにしてもよい。
【0023】
新規eNB10−1との間にS1が設定されたMME/UPE20A−1は、同じMME/UPEプール20A内の他のMME/UPE20A−2、20A−3に対して、新規eNB10−1に対してS1を張るように指示する(S31a)。或いは新規eNB10−1に対して、同じプール20A内の他のMME/UPE20A−2、20A−3との間にS1を張るように指示してもよい(S31b)。これにより、新規eNB10−1と、追加の上位ノード(MME/UPE)との間にもS1が拡張される(S15)。
【0024】
ステップS21で用いるホップ数の閾値Tは、可変にしてもよい。たとえば、T=2から始めて、周辺eNB10から返ってくる情報が無い、あるいは非常に少ない場合に、十分な周辺情報が集まるまでTの値をインクリメントする構成としてもよい。この場合、新規eNB10−1において、閾値Tをインクリメントする都度、アプリケーションにより更新されたTの値をトランスポートネットワーク40上でパケット送信し、集められた周辺リストの数が一定数以上になったときに、統計処理を開始する構成としてもよい。
【0025】
このような方法により、従来はオペレータが周辺セルの関係を判断して手動で行っていた周辺リストの設定が、自動化されるだけでなく、最適な周辺eNBや上位ノードとの間にX2インタフェースやS1インタフェースが設定されることになる。
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態に係るS1/X2設定方法を示すシーケンス図である。第2実施形態では、周辺eNBに代わって、上位ノードであるMME/UPE20がトランスポートネットワーク40上でアドバタイズされる新規eNBのIPアドレスを受け取って、ホップ数を判断する。ホップ数が所定の閾値以下であれば、新規eNBとの間にS1を設定する。
【0026】
具体的には、新規eNB(たとえばeNB10−1)がプラグに差し込まれて電源が投入されると(S41)、自己のIPアドレスをトランスポートネットワーク40上でアドバタイズする(S42)。IPアドレスは、最初に運用者から固定的に割り当てられたものであってもよいし、一般的なルータなどに内蔵されているDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)機能によって動的に割り当てられてもよい。
【0027】
トランスポートネットワーク40を介して新規eNB10−1のIPアドレスを受け取ったMME/UPE20は、新規eNB10−1からのホップ数を検出して、それが閾値以下であるかどうかを判断する(S61)。たとえば、図1のMME/UPE20A−1は新規eNB10−1から3ホップ目であり、MME/UPE20B−1は、5ホップ目である。閾値T=3であるとすると、MME/UPE20A−1は、新規eNB10−1に対してS1を張り(S62)、自己が所属するMME/UPEプール20A内のMME/UPEリストと、MME/UPEプール20Aで用いているeNBリストとを、新規eNBに通知する(S63)。一方、MME/UPE20B−1は、S1を設定する必要性なしとして、次のアドバタイズを待つ。
【0028】
新規eNB10−1は、受け取った情報に基づいて、周辺リストとS1リストを作成する(S43)。このとき、オプションで統計処理を行ってもよい。すなわち、MME/UPEプール20A内に登録されている既存eNB10の数が多い場合に、登場頻度が高いeNBから優先的に選択して、最適化した周辺リストを作成する。新規eNB10−1は作成した周辺リストとS1リストに基づいて、接続すべき周辺eNBとの間にX2を設定する(S44)。
【0029】
この方法によっても、新規eNB10が物理的にネットワークにつながれてパワーオンされると、新規eNB10の自律的な動作により、上位ノード(MME/UPE20)との間、及び周辺eNBとの間に、それぞれ論理インタフェースとしてのS1、X2を自動的に設定することができる。
図4は、図1のネットワークで用いられる無線基地局(eNB)10の構成例を示す概略ブロック図である。このeNB10は、第1実施形態と第2実施形態の双方において、好適に用いられる。
無線基地局(eNB)10は、送受信部11、統計処理部12、周辺リスト/S1リスト作成部13、周辺リスト/S1リスト保持部14、ホップ数判断部15、X2確立プロトコル実行部16、S1確立プロトコル実行部17を有する。
送受信部11は、コアネットワークで送受信を行うCN送受信部11aと、移動端末との間で無線信号を送受信する無線送受信部11bを含む。CN送受信部11aは、当該eNB10が始めてネットワークに物理的に接続されたときに、自己のIPアドレスをトランスポートネットワーク40上にアドバタイズ送信し、既存の周辺eNB10又は上位ノード(MME/UPE)20から、周辺リスト情報やS1情報(上位ノード情報)を受信する。また、別の新規eNBがネットワークに参入してきたときに、トランスポートネットワーク40上でアドバタイズされるIPアドレスを受信する。
統計処理部12は、必要に応じて、受信した周辺リスト情報や、S1情報を統計処理して、登場頻度の高い周辺eNBや上位ノード(MME/UPE)を選択する。上述したように、周辺リストは、X2が張られている周辺eNBリストに加えて、ハンドオーバの範囲にある周辺セルリストを含んでもよい。
周辺リスト/S1リスト作成部13は、CN送受信部11aで受信した周辺リスト情報や上位ノード情報に基づき、必要に応じて統計処理結果を参照して、当該eNB10のための周辺リストとS1リストを生成する。S1確立プロトコル設定部17は、S1リストにしたがって、上位ノード(MME/UPE20)との間にS1インタフェースを設定する。
周辺リスト/S1リスト保持部14は、作成された周辺リストと、上位ノード(MME/UPE20)との間に張られるS1インタフェースのリストを保持する。同じMME/UPEプール内に含まれる別のMME/UPE20との間にもS1を設定する場合には、S1リストを更新する。
ホップ数判断部15は、第1実施形態のX2/S1設定を実行する場合は、別の新規eNBがネットワークに参入して、そのIPアドレスをトランスポートネットワーク40から受け取ったときに、自局が前記別の新規eNBから何ホップ目であるかを決定し、それが所定の閾値以下であるかどうかを判断する。自局が所定のホップ数以下である場合は、X2確立プロトコル実行部16により、前記別の新規eNBとの間にX2を設定し、周辺リスト/S1リスト保持部14が保持する情報を、CN送受信部11aから送信する。
ホップ数閾値変更部15aは、自局が新規eNBとしてネットワークに参加する場合、周辺eNBからの周辺リスト情報が不十分である場合に、閾値を変更する。変更後の閾値は、IPアドレスとともに、CN送受信部11bから送信される。自局が既存のeNBである場合は、別の新規eNBから閾値変更通知を受け取った際に、それにしたがって自局に設定されたホップ数閾値を更新する。
一方、第2実施形態のように、ホップ数の判断をMME/UPE20で行う場合は、周辺リスト/S1リスト作成部13は、MME/UPE20から送られてくるプール内MME/UPEリストや、プール内eNBリストを参照して、周辺リストとS1リストを作成する。X2確立プロトコル実行部16とS1確立プロトコル実行部17は、作成されたリストに基づいて、接続すべき既存のeNB10やMME/UPE20に対して、それぞれX2、S1を設定する。
このような構成により、無線基地局(eNB)10は自律的な動作でネットワークに参加することが可能になる。
図5は、図1のネットワークで用いる上位ノード(MME/UPE)20の構成例を示す概略ブロック図である。MME/UPE20も、第1実施形態と第2実施形態の双方に好適に用いられる。
MME/UPE20は、送受信部21と、指示制御部22と、ホップ数判断部25と、S1確立プロトコル実行部27と、プール内MME/UPEリスト及びeNBリスト保持部24とを含む。第1実施形態の場合は、新規eNB10−1との間でS1が設定されると、指示制御部22は、同一プール内の他のMME/UPE20に対して、この新規eNB10−1との間にS1を張るように指示する。或いは、プール内MME/UPEリスト及びeNBリスト保持部24を参照して、新規eNBに対して同一プール内のMME/UPE20のIPアドレスを通知し、追加のMME/UPE20に対してS1を張るように指示する構成としてもよい。このような指示通知は、送受信部21から送信される。
第2実施形態を実現する場合は、送受信部21にてトランスポートネットワーク40上にアドバタイズされる新規eNB10−1のIPアドレスを受信したときに、ホップ数判断部25が新規eNB10−1からのホップ数を検出し、閾値以下であるかを判断する。ホップ数閾値変更部25aは、新規eNBから閾値更新通知を受け取った場合に、ホップ数判断に用いる閾値を変更する。ホップ数が閾値以下であると判断された場合に、S1確立プロトコル実行部27は、新規eNB10−1に対しS1確立プロトコルのプロシージャを走らせ、S1が設定されたならば、プール内MME/UPEリスト及びeNBリスト保持部24が保持する情報を、送受信部21から新規eNB10−1に送信する。
このような構成により、新規参入のeNBとの間に速やかにS1を設定すると同時に、同一プール内の他のMME/UPEとの間にもS1を設定させて、ネットワーク内のロードバランシング機能を維持することができる。
<第3実施形態>
図6は、本発明の第3実施形態のS1設定方法の第1の例を示すシーケンス図である。第3実施形態では、移動端末UEの測定に基づいてS1を確立する。
【0030】
まず、新規eNBがプラグに差し込まれて電源がONされると(S71)、新規eNBは、ネットワークへの新規参入を無線でブロードキャストする(S72)。この報知信号は、たとえばリファレンスシンボルと報知情報とから構成され、報知情報として新規eNBの無線識別情報、たとえば、セルIDを含む。リファレンスシンボルや報知情報は、セル固有のスクランブリングコードによってスクランブルされてもよい。この際に使用するセルID又はスクランブリングコードIDは、あらかじめシステムから与えられたものであってもよいし、動的に割り当てられるものであってもよい。
【0031】
報知信号は、セル内に存在する1以上の移動端末UE(不図示)で受信される。移動端末UEは、報知信号の受信パワーレベル、受信SIR、パスロスなどに基づいて、新規eNBの無線品質を測定する(S81)。移動端末UEは、新規eNBのセルID又はスクランブリングコードIDと測定結果を、上りリンクで通知する(S82)。たとえば、図1において新規eNB10−1の参入を知らせる報知信号が、周辺eNB10−2や周辺eNB10−4との境界付近に位置する1以上の移動端末で受信されたとすると、これらの移動端末UEが送信するセルID報告と測定報告は、既存の周辺eNB10−2、10−4で受信される。
【0032】
報告を受けた周辺eNB10−2、10−4の各々は、セルID又はスクランブリングコードIDをIPアドレスに変換する(S91)。変換方法としては、OAMサーバやDNS(domain name server)に問い合わせて新規eNBのIPアドレスを取得する方法がある。新規eNB10−1のIPアドレスの取得に先だって、複数の移動端末からの報告値を統計処理してもよい。たとえば、統計処理によって求められる平均無線品質が所定のレベルに達しない場合は、新規eNBのIPアドレスの取得は行わない構成としてもよい。これは、その周辺eNBが新規eNBから比較的遠いことを意味し、X2を張る必要性に乏しいからである。たとえば、周辺eNB10−2での統計処理の結果、新規eNBの無線品質が所定レベル以上であり、別の周辺eNB10−4での統計処理では所定レベルに達していない場合、周辺eNB10−2は新規eNB10−1のIPアドレスを取得して、新規eNB10−1に対してX2確立プロトコルのプロシージャを走らせるが(S92)、他方の周辺eNB10−4は、IPアドレスへの変換を行うことなく、処理を終了させる。
【0033】
周辺eNB10−2は、確立した初期X2により、現在S1が張られているMME/UPE20のリストを新規eNB10−1に通知する(S93)。このリストには、たとえば、プール20A内のMME/UPE20A−1、20A−2、20A−3が含まれる。新規eNB10−1は、リスト中の任意のMME/UPEに対してS1確立プロトコルのプロシージャを走らせる(S73)。S1設定後は、図2(第1実施形態)のS31aのように、プール内の他のMME/UPEから新規eNB10−1に対してS1を張らせてもよいし、また、図3(第2実施形態)のS63のように、MME/UPEプール20Aで用いているeNBノードリストを新規eNB10−1に通知してもよい。これにより、新規eNB10―1は、S1を追加し、周辺リストを作成することができる(S75)。
【0034】
図7は、第3実施形態のS1設定方法の第2の例を示すシーケンス図である。新規eNBのパワーオン(S71)から周辺eNBでのIPアドレスの取得(S91)までは、第1の例と同じである。周辺eNB(たとえばeNB10−2)は、取得した新規eNBのIPアドレスを、自局がS1を確立している上位ノード(たとえばMME/UPE20A−2)に通知する(S95)。この場合も、統計処理の結果、統計処理によって求められる平均無線品質が所定のレベルに達している場合にだけ、新規eNB10−1のIPアドレスを通知する構成にしてもよい。
【0035】
通知を受けたMME/UPE20A−1は、新規eNB10−1に対してS1確立プロトコルのプロシージャを走らせる(S101)。設定されたS1を介して、MME/UPEプール内で用いているMME/UPEリストやeNBリストを新規eNB10−1に送信してもよいし(第2実施形態のS63)、同一MME/UPEプール内の他のMME/UPEに対して、新規eNB10−1との間でS1を設定するように指示し(S31a)、或いは、新規eNBに対して同一プール内の他のMME/UPEとの間にS1を張るように指示してもよい(S31b)。これにより、新規eNBはS1を追加し、周辺リストを作成することができる(S75)。
【0036】
第3実施形態では、第1、第2のいずれの例によっても、新規eNBのパワーオンにより報知信号が無線ブロードキャストされ、この信号を移動局で測定することによって、最適なS1網が自律的に設定される。
図8は、第3実施形態で用いられる無線基地局(eNB)10の構成例を示す概略ブロック図である。無線基地局(eNB)10は、送受信部11、統計処理部12、周辺リスト/S1リスト作成部13、周辺リスト/S1リスト保持部14、X2確立プロトコル実行部16、S1確立プロトコル実行部17、報知信号生成部18、IPアドレス取得部19を有する。送受信部11は、コアネットワークで送受信を行うCN送受信部11aと、移動端末との間で無線信号を送受信する無線送受信部11bを含む。
無線基地局10が新規eNB10−1である場合は、パワーオンされると、報知信号生成部18はセルID又はスクランブリングコードIDを含む報知信号を生成し、無線送受信部11bからブロードキャスト送信する。第1の例(図6)の手法の場合、CN送受信部11aにて、既存の周辺eNBが有するMME/UPEのリスト(S1リスト)を受信する。S1確立プロトコル実行部17は、受信した情報に含まれるMME/UPEとの間に初期S1を設定する。このS1を介して、接続されたMME/UPEから同一プール内のMME/UPEリストやeNBリストを受信すると、周辺リスト/S1リスト作成部13は、自局用の周辺リストを作成し、S1を追加する。周辺リストおよびS1リストは、周辺リスト/S1リスト保持部14に保持される。
第2の手法を採用する場合は、報知信号を無線で飛ばした後は、適切なMME/UPEからプール内MME/UPEリストやeNBリストを受信するのを待つだけでよい。その後、S1確立プロトコル実行部17によりS1を追加し、周辺リスト/S1リスト作成部13により周辺リストの作成、S1リストの更新を行う。
無線基地局(eNB)が既存の周辺eNB10−2である場合は、無線送受信部11bにて、1以上の移動端末から、新規eNBのセルID情報と測定結果を受信する。統計処理部12は、必要に応じて、受信した測定結果を統計処理する。統計処理の結果、新規eNBの無線品質が所定のレベル以上である場合に、IPアドレス取得部19において、セルID又はスクランブリングコードIDを、新規eNBのIPアドレスに変換する。第1の手法では、得られたIPアドレスに基づいて、X2確立プロトコル実行部16が新規eNBの間にX2を設定し、周辺リスト/S1リスト保持部14を参照して、自局のMME/UPEリストを新規eNBに通知する。第2の手法では、統計処理の結果、新規eNBの無線品質が所定レベル以上のときに、現在S1が張られているMME/UPE20に対して、新規eNBのIPアドレスを通知する。
【0037】
このような構成により、新規eNB10が差し込まれ、電源が投入されると、報知信号が無線ブロードキャストされ、移動端末UEでの測定に基づいて、最適な周辺eNBや上位ノード(MME/UPE)との間に、X2インタフェースおよびS1インタフェースが自律的に設定される。
【0038】
なお、第3実施形態のMME/UPE20の構成は、図5の構成からホップ数判断部25を省略したものであり、その余の構成は同一である。
【0039】
以上のように、第1〜第3実施形態によれば、従来オペレータが周辺セルの関係を判断して手動で設定したX2論理インタフェースやS1論理インタフェースを、自動的に設定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明が適用される通信ネットワークの概略構成図である。
【図2】第1実施形態のX1/S1設定方法のシーケンスズである。
【図3】第2実施形態のS1/X2設定方法のシーケンス図である。
【図4】第1実施形態及び第2実施形態で用いられる無線基地局eNBの概略ブロック図である。
【図5】第1実施形態及び第2実施形態で用いられる上位ノードMME/UPEの概略ブロック図である。
【図6】第3実施形態のS1設定方法の第1の例を示すシーケンス図である。
【図7】第3実施形態のS1設定方法の第2の例を示すシーケンス図である。
【図8】第3実施形態で用いられる無線基地局eNBの概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
10 無線基地局(eNB)
11 送受信部
11a CN送受信部
11b 無線送受信部
12 統計処理部
13 周辺リスト/S1リスト作成部(論理インタフェース情報作成部)
14 周辺リスト/S1リスト保持部
15 ホップ数判断部
15a ホップ数閾値変更部
16 X2確立プロトコル実行部(論理インタフェース設定部)
17 S1確立プロトコル実行部(論理インタフェース設定部)
18 報知信号生成部
19 IPアドレス取得部
20 上位ノード(MME/UPE又は通信管理装置)
21 送受信部
22 指示制御部
24 プール内MME/UPEリスト及びeNBリスト保持部
25 ホップ数判断部
25a ホップ数閾値変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに新規に追加される無線基地局から、当該新規の無線基地局の存在を知らせる報知信号を無線送信し、
前記報知信号を受信した移動端末において前記新規の無線基地局の無線品質を測定し、
前記測定結果と、前記報知信号に含まれる前記新規の無線基地局の無線識別情報を、前記移動端末から既存の無線基地局に通知し、
前記既存の無線基地局で、前記新規の無線基地局の無線識別情報をIPアドレスに変換し、
前記IPアドレスに基づいて、前記新規の無線基地局と上位ノードとの間に論理インタフェースを設定する
ことを特徴とする論理インタフェース設定方法。
【請求項2】
前記既存の無線基地局で、1以上の移動端末から前記新規の無線基地局の無線品質測定結果を受信した場合に、統計処理を行う工程
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無線インタフェース設定方法。
【請求項3】
前記IPアドレスに基づいて、前記既存の無線基地局から前記新規の無線基地局に対して、前記既存の無線基地局が有する論理インタフェース情報を通知し、
前記論理インタフェース情報に基づいて、前記新規の無線基地局と上位ノードとの間に論理インタフェースを設定する工程
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無線インタフェース設定方法。
【請求項4】
前記IPアドレスを、前記既存の無線基地局から上位ノードに通知し、
前記IPアドレスに基づいて、前記上位ノードと前記新規の無線基地局の間に論理インタフェースを設定する工程
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無線インタフェース設定方法。
【請求項5】
移動局から、新規にネットワークに参入する無線基地局の無線識別情報と、無線品質測定情報とを無線で受信する第1送受信部と、
前記無線識別情報をIPアドレスに変換するIPアドレス取得部と、
前記IPアドレスに基づいて、前記新規の無線基地局に、自局が有する上位ノード情報を通知する第2送受信部と
を有することを特徴とする無線基地局。
【請求項6】
移動局から、新規にネットワークに参入する無線基地局の無線識別情報と、無線品質測定情報とを無線で受信する第1送受信部と、
前記無線識別情報をIPアドレスに変換するIPアドレス取得部と、
前記IPアドレスを、上位ノードに通知する第2送受信部と
を有することを特徴とする無線基地局。
【請求項7】
前記第1送受信部で複数の移動局から無線品質測定情報を受信した場合に、統計処理を行う統計処理部
をさらに有することを特徴とする請求項5又は6に記載の無線基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−109710(P2011−109710A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23099(P2011−23099)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2007−8541(P2007−8541)の分割
【原出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】