識別媒体の製造方法および識別媒体の製造装置
【課題】見た目で同じような外観にした偽造品を見破ることが容易であり、且つ、コードの読み取り精度の高い識別媒体を得る技術を提供する。
【解決手段】読み取り側から、ホログラムが設けられた右円偏光を反射するコレステリック液晶層102と、読み取りを行う側からλ/4板と直線偏光フィルタ層とが積層され、コレステリック液晶層102の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、左円偏光をコレステリック液晶層102に向かって選択的に透過する円偏光フィルタ層106と、2次元コードが形成されたコード印刷図柄107とを順に備えた識別媒体の製造方法であって、コード印刷図柄107を印刷により形成する工程と、コード印刷図柄107とコレステリック液晶層102とを一体化する工程とを備えることを特徴とする。
【解決手段】読み取り側から、ホログラムが設けられた右円偏光を反射するコレステリック液晶層102と、読み取りを行う側からλ/4板と直線偏光フィルタ層とが積層され、コレステリック液晶層102の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、左円偏光をコレステリック液晶層102に向かって選択的に透過する円偏光フィルタ層106と、2次元コードが形成されたコード印刷図柄107とを順に備えた識別媒体の製造方法であって、コード印刷図柄107を印刷により形成する工程と、コード印刷図柄107とコレステリック液晶層102とを一体化する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次元コードや2次元コードを用いた識別に利用される識別媒体の製造方法および識別媒体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1次元コードや2次元コード(以下、コードと総称)を用いた部品や食品の管理が知られている。このコードを用いると、製造元の情報、履歴(例えば物流過程の履歴)、真贋(偽造品であるか否かの判定)、製造年月日、その他当該対象物に係る各種の情報の取得等が可能となる。また、コードを電子的に読み取って、それを送信することで、各種の申し込みや情報の入手を行う技術も知られている。このコードの偽造を防止する技術として、ホログラムを用いた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−268776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている技術は、ホログラム効果を損なわずに、通常の観察下では埋め込んだコードの情報の視認が困難であるような技術を提供するものである。他方で、リーダーを用いた電子的な読み取りを行う際に、見た目で同じような外観にした偽造品の読み取りが行えないような技術が求められている。この技術としては、コードを複雑化する方法、特殊なインクや透かし技術を用いる方法等があるが、それらの技術の詳細が知られ、利用された場合に偽造防止効果が低下する。また、コードを複雑化したり、透かし技術を用いたりした場合、コードを電子的に読み取る精度の確保が問題となる。
【0005】
このような背景において、本発明は、見た目で同じような外観にした偽造品を見破ることが容易であり、且つ、コードの読み取り精度の高い識別媒体を製造する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、読み取りを行う側から見て、ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、読み取りを行う側から見て、λ/4板と直線偏光フィルタ層とが積層された構造を有し、前記コレステリック液晶層の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、前記第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向の円偏光を前記コレステリック液晶層に向かって選択的に透過する機能を有する光学機能層と、読み取りの対象となるバーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコードから選ばれた一または複数により構成されるコードが形成されたコード形成層とを順に備え、光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されている識別媒体の製造方法であって、前記コード形成層を印刷により形成する工程と、前記コード形成層と前記コレステリック液晶層とを一体化する工程とを備えることを特徴とする識別媒体の製造方法である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、読み取りを行う側から見て、ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、読み取りを行う側から見て、λ/4板と直線偏光フィルタ層とが積層された構造を有し、前記コレステリック液晶層の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、前記第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向の円偏光を前記コレステリック液晶層に向かって選択的に透過する機能を有する光学機能層と、読み取りの対象となるバーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコードから選ばれた一または複数により構成されるコードが形成されたコード形成層とを順に備え、光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されている識別媒体の製造装置であって、前記コード形成層の一部または全部が形成可能な第1のラベル部が貼り付けられた第1のセパレータを巻き取った第1のロールと、前記コレステリック液晶層を含む第2のラベル部が貼り付けられた第2のセパレータを巻き取った第2のロールと、前記コード形成層を印刷する印刷手段と、前記印刷手段により印刷された前記コード形成層に前記第2のラベル部を貼り付けする貼り付け手段とを備えることを特徴とする識別媒体の製造装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、見た目で同じような外観にした偽造品を見破ることが容易であり、且つ、コードの読み取り精度の高い識別媒体を製造する技術が提供される。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、コード形成層を印刷により形成しつつ、その上にコード形成層の読み取りに識別性を与えるコレステリック液晶層のラベル部を貼り付けすることができる識別媒体の製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】識別媒体の断面構造を示す概念図である。
【図2】識別媒体の光学原理を示す原理図である。
【図3】識別媒体の見え方の違いを示す概念図である。
【図4】識別媒体の識別を行うシステムの一例である。
【図5】光学読み取り装置の概念図である。
【図6】光学読み取り装置のブロック図である。
【図7】光学読み取り装置の動作の手順を示すフローチャートである。
【図8】識別媒体の断面構造を示す概念図である。
【図9】識別媒体の正面図(A)、断面図(B)、分離した状態の断面図(C)である。
【図10】識別媒体を構成する紙ラベル部の複数がセパレータに貼り付けられた状態を示す正面図(A)と側面図(B)である。
【図11】識別媒体を構成するホログラムラベル部の複数がセパレータに貼り付けられた状態を示す正面図(A)と側面図(B)である。
【図12】識別ラベル製造装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)第1の例
図1には、識別媒体100が示されている。識別媒体100は、観察が行われる側(識別面側)から、透明保護層101、コレステリック液晶層102、λ/4板104、直線偏光フィルタ層105、コード印刷図柄107、基材フィルム層108、粘着層109と積層された構造を有している。
【0012】
透明保護層101は、最表面を保護する透明な樹脂フィルムの層である。透明保護層101は、TAC(トリアセチルセルロース)等の透過する光の偏光特性を乱さない材質が選択されている。コレステリック液晶層102は、赤の右円偏光を選択的に反射する光学特性とされている。コレステリック液晶層102には、エンボス型を押し付けることで行われたホログラム加工103が施されている。ホログラム加工103により、コレステリック液晶層102に凹凸構造が付与され、この凹凸構造において生じる光学干渉によりホログラム像が生成される。このホログラム像は、コレステリック液晶層102からの反射光を観察することで視認することができる。
【0013】
λ/4板104と直線偏光フィルタ層105は、2層で円偏光フィルタ層106を構成している。円偏光フィルタ層106は、非観察面側であるコード印刷図柄107の側から自然光を入射させた場合に、観察面側(図の上側)に左円偏光を選択的に透過する光学機能となるように、λ/4板104と直線偏光フィルタ層105の向きが調整されている。
【0014】
コード印刷図柄107は、基材フィルム層108上へのインクの印刷により形成された2次元バーコードの図柄でありコード形成層を構成する。基材フィルム層108は、印刷された2次元バーコードの内容を際立たせる背景色を有した樹脂フィルムの層である。粘着層108は、粘着材の層である。粘着層108の機能により、識別媒体100が対象物に貼り付けられる。なお、粘着層108の露出面には図示省略したセパレータ(離型紙)が貼り付けられ、対象物に貼り付ける際にこのセパレータを剥がし、粘着層109を露出させた状態で対象物への識別媒体100の貼り付けが行われる。なお、基材フィルムを用いないで、円偏光フィルタ106の直線偏光フィルタ105側にコード図柄印刷107を印刷により形成してもよい。
【0015】
(ホログラムとコード図柄の関係)
ホログラム加工103により構成されるホログラム像は、ロゴや視認し易い模様とされている。このホログラム像とコード図柄とは、少なくとも一部が重なる位置関係とされている。これにより、ホログラム像を同時に検出した場合にコード図柄の電子的な読み取りが困難となる。また、ホログラム像をコード印刷図柄107と同時にコード読み取り装置によって読み取った際に、ホログラム像の影響でコードがより確実に読み取り難いような内容のホログラム像を特に選択してもよい。こうすることで、より確実にセキュリティ性を高めることができる。
【0016】
(光学機能)
図2には、識別媒体100の光学機能の原理が概念的に示されている。以下、自然光がコレステリック液晶層102の側(図の上側)から照射されている環境下における識別媒体100の光学機能について説明する。なお、図2では、透明保護層101の記載は省略されている。
【0017】
まず、基本的な光学特性を説明する。識別媒体100に照射された自然光の内、コレステリック液晶層102から赤の右円偏光が反射される。このコレステリック液晶層102からの反射光は、ホログラム加工103に起因するホログラム像を含んだ反射光となる。
【0018】
また、コレステリック液晶層102が反射しない左円偏光、直線偏光、赤以外の右円偏光がコレステリック液晶層102を透過し、円偏光フィルタ層106に入射する。この入射光は、円偏光フィルタ層106の直線偏光フィルタ層105のコード印刷図柄107側に出た段階で直線偏光となり、コード印刷図柄107に入射し、そこで反射される。このコード印刷図柄107からの反射光は、コード印刷図柄107の2次元バーコードの画像を含んでいる。
【0019】
このコード印刷図柄107からの反射光は、円偏光フィルタ層106を図の下か上の方向に透過する段階で左円偏光(左旋回円偏光)となる。すなわち、円偏光フィルタ層106は、直線偏光フィルタ層105側から自然光を入射させた場合に、λ/4板104側から左円偏光が出射する特性とされている。よって、コード印刷図柄107からの反射光(直線偏光)は、左円偏光として、円偏光フィルタ層106を図の上方向に透過する。この透過光は、左円偏光であるので、コレステリック液晶層102を透過し、観察面側に出射する。
【0020】
(左円偏光フィルタを介した観察)
識別媒体100を左円偏光フィルタ(左旋回円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタ)110を介して観察する場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層102から反射される右円偏光は、左円偏光110フィルタで遮断される。他方で、コレステリック液晶層102の観察面側に出射する段階で左円偏光となるコード印刷図柄107からの反射光は左円偏光フィルタ110を透過する。よって、被観察光112には、コレステリック液晶層102のホログラム像は含まれておらず、コード印刷図柄107の2次元バーコードの像が含まれている状態となる。つまり、左円偏光フィルタを介して識別媒体100を観察した場合、ホログラム加工103に基づくホログラム像は見えず、コード印刷図柄107の2次元バーコードの像が見える。この状態の一例が図3(A)に示されている。図3(A)には、ホログラム加工103に基づくホログラム像103’(図3(B)参照)は見えず、コード印刷図柄107の二次元バーコードの画像107’が選択的に見えている状態が示されている。
【0021】
(右円偏光フィルタを介した観察)
識別媒体100を右円偏光フィルタ(右旋回円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタ)111を介して観察した場合、コレステリック液晶層102から反射される右円偏光は、右円偏光フィルタ111を透過するので、被観察光113には、ホログラム加工103に基づくホログラム像が含まれる。他方で、コレステリック液晶層102を観察面側に出射する段階で左円偏光となるコード印刷図柄107からの反射光は、右円偏光フィルタ111で遮断される。このため、コード印刷図柄107の2次元バーコードの像は、被観察光113には含まれない。つまり、右円偏光フィルタを介して識別媒体100を観察した場合、ホログラム加工103に基づくホログラム像が見え、コード印刷図柄107の2次元バーコードの像は見えない。この状態の一例が図3(B)に示されている。図3(B)には、ホログラム加工103に基づくホログラム像103’が選択的に見え、コード印刷図柄107の二次元バーコードの画像107’が見えない状態が示されている。
【0022】
(円偏光フィルタを利用しない場合)
左右の円偏光フィルタを利用しない場合、識別媒体100から右円偏光であるコレステリック液晶層102からのホログラム像と、左円偏光であるコード印刷図柄107から2次元バーコードの像とが同時に観察可能となる。この状態の一例が図3(C)に示されている。図3(C)には、ホログラム加工103に基づくホログラム像103’と、コード印刷図柄107の二次元バーコードの画像107’とが同時に見える状態が示されている。この場合、ホログラム像103’の方が観察する側から見て手前側にあるので、両者が重なった部分で二次元バーコードの画像107’はマスクされ、認識し難くなる。なお、図3(C)では、この様子が誇張して示されている。
【0023】
(利用例)
以下、識別媒体100の利用例の一例を説明する。ここでは、識別媒体100を商品に付けられた2次元バーコードに適用した場合の例を説明する。図4には、識別媒体100を利用した識別を行うシステムの一例が示されている。図4(A)には、全体の概要が示され、図4(B)には、カメラ付携帯電話で識別媒体100を撮像する様子が示されている。
【0024】
図4には、データサーバ201、インターネット回線202、携帯基地局203、携帯基地局のアンテナ204、携帯電話205、製品206、識別媒体100、カメラ208、左円偏光フィルタ209が示されている。データサーバ201は、識別媒体100の2次元バーコード情報のデコードされた情報を照合する。インターネット回線202は、携帯基地局203と接続され、携帯基地局203は、アンテナ204を介して携帯電話205と通信を行う。携帯電話205は、カメラ208を備え、カメラ208で撮像した二次元バーコード情報をデコードし、携帯基地局203を介してインターネット202経由でデータサーバ201に送信する機能を有する。製品206は、電子部品や機械部品等の各種の部品、食料品、日用品、衣料品、コンピュータのアプリケーションソフトウェア等の製品や製品パッケージである。製品206には、真贋判定機能および決められた内容(例えば、製造者を特定する情報や物流過程の履歴情報等)をコード化して印刷した識別媒体100が貼り付けられている。
【0025】
図4に示す例において、ユーザは、携帯電話205のカメラ208を利用し、左円偏光フィルタ209を介して識別媒体100を撮像する。カメラ208が取得したデータは、携帯基地局203、インターネット回線202を介して、データサーバ201に送られる。データサーバ201は、受け取ったデータに基づいて、識別媒体100のコードを自身が記憶している比較対象となるデータと照合する。そしてデータサーバ201は、取得したコードの内容に基づいて、特定の情報(例えば、製品206に関する製造者を特定する情報)を携帯電話205に送る。このようにして、識別媒体100を撮像し、その画像データをデコードし、データサーバ201に送ることで問い合わせが行われ、その問い合わせの結果(回答)が、データサーバ201から携帯電話205に送られ、携帯電話205に表示される。
【0026】
なお、円偏光フィルタを介さず直接識別媒体100を撮像した場合、コレステリック液晶層のホログラム像も同時に撮像される。よって、その画像データはコレステリック液晶のホログラム像が障害になって二次元バーコード(コード印刷図柄107)のデコードは行えない。
【0027】
(読み取り装置)
図5には、図1の識別媒体100の読み取りを行う読み取り装置300が示されている。読み取り装置300は、CCD等の撮像装置301、制御部302、ライト303、円偏光フィルタ304、拡大レンズ320、ステージ305を備えている。撮像装置301は、識別媒体100の撮像を行う。制御部302は、装置全体の動作制御、撮像装置301が撮像した画像に基づくコードの解読および真贋判定を行う。ライト303は、識別媒体100に白色自然光を照射する。円偏光フィルタ304は、識別媒体100のコレステリック液晶層102が選択反射する円偏光(この場合は、右円偏光)を遮断する光学フィルタ(この場合は、左円偏光フィルタ)である。円偏光フィルタ304は、光軸上(撮像装置301の前)からの退避が自在にできるように図示省略した移動手段により、移動が可能とされている。拡大レンズ320は、例えばマイクロOCRコード等の肉眼では小さくて視認し難いコードを用いた場合に利用される拡大光学系である。拡大レンズ320も光軸から退避可能とされている。ステージ305は、識別媒体100が貼り付けられた対象物(例えば、電子部品や各種商品等)306が置かれるステージである。
【0028】
図6は、制御部302の構成を示すブロック図である。制御部302には、後述するフローチャートの手順を実行するコンピュータとして機能する。制御部は、CPU、メモリ、インターフェースを備え、ソフトウェアー的に構成された以下の機能部を有している。制御部302は、画像抽出部306、デコード部307、デコード内容出力部308、画像判定部309、デコード可否判定部310、真贋判定部311、報知部312、駆動部313を備えている。
【0029】
画像抽出部306は、画像データから画像の内容を抽出する。デコード部307は、抽出された画像を解析し、コード(2次元バーコードデータ)を解析しデコードする。デコード内容出力部308は、デコードされた2次元バーコードの情報を出力する。ここで、2次元バーコードの情報としては、対象物306の固有情報(例えば、製造番号や各種履歴情報)が挙げられる。
【0030】
画像判定部309は、抽出された画像が予め記憶されている画像(リファレンス画像)と整合するか否か、を判定する。デコード可否判定部310は、デコード部307におけるコードデータのデコードが正常に行われたか否か、を判定する。真贋判定部311は、画像判定部309およびデコード可否判定部310の判定の結果に基づき、識別媒体100の真贋を判定する。報知部312は、各種判定の結果を報知する報知信号を出力する。駆動部313は、ライト303の点灯制御、円偏光フィルタ304および拡大レンズ320の移動制御を行うための駆動信号を出力する。
【0031】
(読み取り装置の動作)
図7は、読み取り装置300の動作の一例を示すフローチャートである。図7の処理の手順を実行するプログラムは、制御部302内の適当なメモリ領域に記憶され、制御部302によって実行される。このプログラムは、適当な記憶媒体に記憶され、そこから提供される形態であってもよい。
【0032】
図5のステージ305上に、識別媒体100が貼り付けられた対象物306が置かれた状態で処理が開始される。処理が開始されると(ステップS501)、ライト303の発光を開始し(ステップS502)、円偏光フィルタ(左円偏光フィルタ)304を撮像装置301と識別媒体100との間から退避させる(ステップS503)。
【0033】
次に、撮像装置301により識別媒体100を図1の観察面側(透明保護層101の側)から撮像し、識別媒体100を撮像した画像データを取得する(ステップS504)。識別媒体100の画像データを取得したら、2次元バーコード情報のデコードが不可で、且つ、得られた画像が予め用意しておいたリファレンス画像と整合(合致)するか否かが判定される(ステップS505)。この判定要件が満たされない場合、コレステリック液晶層102のホログラム画像による2次元バーコードの読み取りを阻害する作用が正常に機能しておらず、またこのホログラム画像が偽物の可能性が高いと判定され、真正でない疑がある旨(贋物の疑いあり)の報知情報を出力する処理を行う(ステップS506)。
【0034】
ステップS505において、2次元バーコード情報のデコードが不可で、且つ、得られた画像が予め用意しておいたリファレンス画像と整合する場合、円偏光フィルタ304を撮像装置301と識別媒体100との間に挿入し(ステップS507)、再度識別媒体100の撮像を行いその画像データを得る(ステップS508)。次に、この再度取得した画像データに対してデコード処理を行い、正常なデコードが行えた否か、を判定する(ステップS509)。ここで、正常なデコードが行えなければ、エラー処理を行い(ステップS510)、正常なデコードができた場合、デコードした内容(識別媒体100の2次元バーコード情報)を出力する(ステップS511)。その後、ライト303の発光を停止し(ステップS512)、処理を終了する(ステップS513)。
【0035】
(真贋判定機能)
まず、図2に関連して説明したように、識別媒体100は、直視した場合に2次元バーコードの模様とホログラム像が同時に見える。そして、左円偏光フィルタを介して見ると2次元バーコードのみが見え、右円偏光フィルタを介して見るとホログラム像のみが見える。この視認される像の切り替わりで真贋の判定が可能となる。2次元バーコードのみであると、偽造された場合にその真贋の判定が困難となるが、識別媒体100では、上記の目視による観察で、真贋の判定が行える。
【0036】
また、図5、図6に関連して説明したように、機械による電子的な読み取りにおいても真贋の判定が可能となる。すなわち、見た目を似せて作った贋物の識別媒体100は、コレステリック液晶層102へのホログラム加工103が上手く再現できないので、ステップS505の判定がNOとなる。また、仮にステップS505の判定をクリアしたとしても、ステップS509の判定において、ホログラム像が画像データ中に残っていると2次元バーコードのデコードが不可となり、エラーとなるので、偽造品の2次元バーコード情報が正常な情報として読み取られる不都合が回避される。
【0037】
このように識別媒体100は、目視での観察による真贋判定、および電子的な読み取りによる真贋判定を行うことで、2次元バーコード情報の偽造を見破ることが容易となる。
【0038】
(その他)
コレステリック液晶層102が選択反射する中心波長(色)は、赤に限定されず、緑等の他の色であってもよい。また、コレステリック液晶層102が選択反射する円偏光の旋回方向は、右旋回方向に限定されず、左旋回方向であってもよい。例えば、コレステリック液晶層102が選択反射する円偏光の旋回方向を左旋回方向とした場合、符号106の部分は、右円偏光フィルタ層となる。
【0039】
基材フィルム層108と粘着層109を透明にし、貼り付けた面が透けて見える構成も可能である。また、粘着層109を暗色の色として、粘着層を光吸収層として機能させてもよい。この場合、直視した場合にホログラム像が強調され、2次元バーコードが見え難くなる。2次元バーコードの図柄は、予め印刷された薄いフィルムを張り合わせても形成してもよい。
【0040】
(変形例1)
図1に示す構成において、円偏光フィルタ層106を省いた構成も可能である。この場合、右円偏光フィルタを介した観察において、ホログラム像に加えて、コード印刷図柄も薄く見える。左円偏光フィルタを介した観察の場合は、図1の識別媒体の場合と同じである。変形例1の場合、円偏光フィルタを切り替えての観察において、2次元バーコードの図柄とホログラム像との明確な切り替わりが図1の識別媒体100に比較して不明瞭となるが、図7の処理による真贋判定および2次元バーコード情報の読み取り処理は可能である。
【0041】
(変形例2)
コード印刷図柄107として、2次元バーコードの図柄の代わりに肉眼では識別できない大きさのマイクロ文字を利用したOCRコード(以下、マイクロOCRコード)を用いる。マイクロコードOCRコードは、特定のデータを文字により記号化(暗号化)したもので、肉眼では読み取り難い大きさを有し、レンズを介して読み取る。この場合の識別媒体の使用方法や特徴は、図5の装置において、拡大レンズ320が利用される点、コードの方式が変わる点を除いて2次元バーコードの場合と同じである。
【0042】
マイクロOCRコードを用いた場合、目視でコードが読み取り難いので、コレステリック液晶層のホログラム像が強調されて見え、ホログラム像を用いた目視での識別性が高くなる。また、マイクロOCRコードは文字が小さいので、円偏光フィルタを介さずにマイクロOCRコードを画像認識により読み取ろうとした場合に、ホログラム像による幻惑作用がより大きく、ホログラム像がより明瞭な画像となる点と相まって、図7のステップS505の判定による真贋判定をより効果的に行うことができる。なお、バーコードの表示を小さくし、光学系で拡大することで読み取る形態も可能である。
【0043】
(変形例3)
2次元バーコードの変わりにID番号を用いることもできる。この場合、図5、図6の構成においてID番号が画像認識され、ID番号に対応した固有情報(例えば、製造番号や、認識番号、固有の名称等)がデコードされる。
【0044】
この構成では、円偏光フィルタ304を退避させた状態で画像認識を行うと、コレステリック液晶層102のホログラム像に幻惑されて、ID番号が読み取れず、左円偏光フィルタを光路に挿入した状態で画像認識を行うと、ホログラム像が消えて、ID番号の読み取りが可能となる。
【0045】
この場合もID番号を何らかの方法で入手され、識別媒体が偽造されたとしても、偽造の困難なコレステリック液晶のホログラム像を用いた円偏光フィルタ不使用時のID番号の読み取りを困難にする光学機能、また逆に円偏光フィルタ使用時のID番号をホログラム像の影響(幻惑)を受けずに精度よく読み取れる機能、および再現の困難なホログラム画像の画像内容によって高い偽造判定機能を得ることができる。
【0046】
(変形例4)
ホログラム加工103によって形成されるホログラム像としてホログラムコードを含むものを採用してもよい。この場合、右円偏光フィルタを介した撮像によって、ホログラム加工103によるホログラムコードの読み取りが行われる。そして、左円偏光フィルタを介した撮像によって、コード印刷図柄107のコードの読み取りが行われる。つまり、円偏光フィルタの切り替えにより、2つのコードの選択的な読み取りが可能となる。
【0047】
この場合、図5に示す装置は、右円偏光フィルタと左円偏光フィルタを備え、右円偏光フィルタの光路への挿入および退避、左円偏光フィルタの光路への挿入および退避が可能とされる。すなわち、右円偏光フィルタを光路に挿入した場合、右円偏光フィルタを介した識別媒体100の撮像となり、ホログラム加工103によって形成されるホログラム像に含まれるホログラムコードの読み出しが行われる。また、左円偏光フィルタを光路に挿入した場合、左円偏光フィルタを介した識別媒体100の撮像となり、コード印刷図柄107のコードの読み取りが行われる。
【0048】
またこの場合、円偏光フィルタと読み取ったコードの内容との組み合わせに基づいた真贋の判定も可能となる。つまり、右円偏光フィルタ採用時のデコード内容と右円偏光フィルタ採用時のデコード内容が、予め定めた内容と一致するか否かを判定することで、識別媒体の真贋の判定が可能となる。
【0049】
この方法は、図4のシステムで実現することもできる。この場合、携帯電話205のカメラ208の前に配置する円偏光フィルタとして、左右の円偏光フィルタを用意し、また上記の方法を実行するプログラムを用意し、それをコード読み取りサーバ201において実行する。
【0050】
(製造方法)
図1の識別媒体100の製造方法の一例を説明する。まず、コレステリック液晶層102を図示しない形成用基板上に形成する。形成用基板上でコレステリック液晶層102を形成したら、ホログラム型を押し付け、ホログラム加工103を施す。次いで、この形成用基板からコレステリック液晶層102を剥がし、予め接着剤により一体化しておいた円偏光フィルタ層106にコレステリック液晶層102を熱プレスまたは接着により固定する。また、コレステリック液晶層102の露出した面(観察面)側に透明保護層101を接着する。
【0051】
他方で、裏面側に粘着層109を取り付けた基材フィルム層108上に、コード印刷図柄107を印刷したものを用意する。そして、コード印刷層107と直線偏光フィルタ層105が密着するように両者を熱プレスまたは接着により固定することで、図1に示す識別媒体100を得る。
【0052】
この方法によれば、透明保護層101、ホログラムが形成されたコレステリック液晶層102、円偏光フィルタ層106と積層された第1の部材と、粘着層109、基材フィルム層108と積層された第2の部材とを用意しておき、コード印刷図柄107の形成後に、第1の部材と第2の部材とを貼りあわせて識別媒体100を得、更にこの識別媒体100を対象物に貼り付ける作業が可能となる。このため、部品の製造ラインや物流ライン等において、オンデマンドでコードを印刷により形成し、このコードが印刷された識別媒体を対象物に貼り付ける作業が可能となる。これにより、本発明を利用した識別媒体を、例えば偽造防止機能を備えた履歴管理タグとして利用することができる。
【0053】
(2)第2の例
図8には、識別媒体600が示されている。なお、図1と同じ符号の部分は、図1の場合と同じである。識別媒体600は、円偏光フィルタ層106の非観察面側に、観察面側から金属反射層601、エンボス加工層602と積層されたホログラム反射層603を備えている。エンボス加工層602は、樹脂フィルムにホログラム像を構成するためのエンボス加工が施された層である。金属反射層601は、アルミ蒸着層等の光反射層であり、下地のエンボス加工層602の凹凸構造に倣った凹凸表面を有している。
【0054】
この構成によれば、金属反射層601とエンボス加工層602とによりホログラム反射層603が構成されている。このホログラム反射層603のホログラム像は、特定のデータを記号化したホログラムコードを含んでいる(他の図柄を含んでいてもよい)。ここでホログラムコードを転写箔で構成し、それを貼り付ける形態としてもよい。この技術に関しては、例えば特開平6−191525号公報に記載された技術を利用することができる。
【0055】
識別媒体600は、図5の読み取り装置300におけるコードの読み取りにおいて、円偏光フィルタ304を光軸上から退避させた状態において、ホログラム加工103のホログラムとホログラム反射層603のホログラムとが同時に撮像される。この際、ホログラム反射層603のホログラムコードがホログラム加工103のホログラムによってマスクされ、ホログラム反射層603のホログラムコードを選択的に読み取ることが困難となる。そして、右円偏光フィルタを介して当該識別媒体600を撮像すると、ホログラム加工103のホログラムが選択的に撮像され、左円偏光フィルタを介して当該識別媒体600を撮像すると、ホログラム反射層603のホログラムが選択的に撮像される。この場合も第1の例の場合と同様に、円偏光フィルタを介した撮像によって、コードを読み取ることができる。
【0056】
(その他)
粘着層109と基材フィルム層108に溶剤が侵入(浸透)し易いようにする溶剤進入経路を設け、さらにコード図柄印刷107の層やその下地に溶剤に触れると発色する材料を存在させてもよい。例えば、溶剤に触れると破れるマイクロカプセル中に発色剤や顕色剤を内包させ、このマイクロカプセルをコード図柄印刷107の層中に存在させる。この場合、溶剤を用いて粘着層109の粘着機能を低下させ、識別媒体100を不正に対象物から剥がそうとすると、粘着層109から溶剤が内部に侵入する。この結果、マイクロカプセルは破れ、コード印刷図柄107に加えて発色模様が観察されるようになる。これにより、溶剤を用いて剥がした識別媒体100の不正な再利用が防止される。上記の溶剤に触れると発色する技術としては、特開2008−055813号公報に記載されている技術を利用することができる。
【0057】
また上記の粘着層109および基材フィルム層108に溶剤が侵入し易いようにする溶剤進入経路を設けた構成において、溶剤で溶解する染料を含有するインクによりコード図柄印刷107を形成してもよい。この場合、溶剤で識別媒体100を対象物から剥がそうとすると、コード図柄印刷107の印刷内容が滲み、コードの読み取りができなくなる。すなわち、識別媒体100の不正な再利用ができなきなくなる。この技術としては、特開平10−250228号公報に記載されて技術が利用可能である。上記の溶剤で溶解する染料を含有するインクとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレートを58重量部、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレートを29重量部、有機溶剤溶解染料を8重量部、2,2−ジメトキン−2−フェニルアセトフェノンを5重量部により構成されるものを挙げることができる。
【0058】
(3)第3の例
(構成)
図9(A)には、識別媒体700を正面から見た状態が示されている。ここで、識別媒体700は、セパレータ(離型紙)701上に貼り付けられた状態が示されている。識別媒体700は、機械部品、電子部品、その他各種製品等(あるいはそのパッケージ)に貼り付けられて使用される。識別媒体700は、2次元コード表示702、2次元コード表示702に重ねて設けられたホログラム表示703を備えている。2次元コード表示は、例えば2次元バーコードであり、当該識別媒体が貼り付けられる対象物に係る各種の情報や当該対象物に関する情報を取得できるインターネットアドレス等の情報がコード化されて記憶されている。また、識別媒体700は、例えば製品名、製造メーカ、ロット番号、その他情報が印刷表示されたその他印刷表示704を備えている。
【0059】
図9(B)には、識別媒体700にセパレータ701を貼り付けた状態の断面構造が示されている。以下、識別媒体700の断面構造について説明する。識別媒体700は、基材紙712を基材としている。基材紙712の図の下面側には、粘着材料による粘着層711が設けられている。識別媒体700を対象物に貼り付ける際には、セパレータ701を粘着層711から剥がし、露出した粘着層711を対象物に接触させることで、対象物に識別媒体700を固定する。
【0060】
基材紙712の粘着層711が設けられた側と反対の側の面(図の上面)には、印刷により設けられた2次元コード表示702とその他印刷表示704を構成するインクの層が設けられている。2次元コード表示702の上には、光学的に透明な粘着層714が設けられ、その上には、直線偏光フィルタ層715と(λ/4)板716を積層した円偏光フィルタ層717が配置されている。
【0061】
円偏光フィルタ層717の上には、コレステリック液晶層718が設けられている。コレステリック液晶層718には、ホログラム表示703を行なうための型押加工が施されている。ここで、コレステリック液晶層718が選択反射する円偏光の旋回方向と、円偏光フィルタ層717を図の下から上に向けて透過する円偏光の旋回方向とが逆方向となるように設定されている。また、ホログラム表示703は、2次元コード表示702と重なる位置に形成されている。そして、コレステリック液晶層718の上には、TACフィルム等により構成される透明保護層719が設けられている。
【0062】
(光学機能)
以下の説明において、コレステリック液晶層718が右円偏光を選択反射し、円偏光フィルタ層717を図の下から上に向けて左円偏光が選択的に透過する設定であるとする。この場合、識別媒体700を直視すると、2次元コード表示702、ホログラム表示703、その他印刷表示704が視認される。この場合、ホログラム表示703が障害となり、2次元コード表示からのコードの読み取りは行えない。
【0063】
ここで、左円偏光フィルタを介して識別媒体700を観察すると、コレステリック液晶層718からの反射光が観察できない。他方で、2次元コード表示702からの反射光に含まれる左円偏光は、円偏光フィルタ層717を図の下から上に向けて透過し、更にこの左円偏光の透過光は、コレステリック液晶層718とビューアである左円偏光フィルタを透過する。このため、左円偏光フィルタを介した観察において、2次元コード表示が選択的に明瞭に観察できる。当然、この状況で読取装置を利用した2次元コード表示702の光学的な読み取りが可能となる。
【0064】
また、右円偏光フィルタを介して識別媒体700を観察すると、コレステリック液晶層718からの反射光が優先的に観察され、2次元コード表示702からの反射光は観察できない。これは、ビューアである右円偏光フィルタにより、2次元コード表示702からの左円偏光の反射光が遮断されるからである。また、この状態で識別媒体700を傾け、見る角度を変化させると、コレステリック液晶層718のカラーシフトが観察され、その色合いの変化による識別機能が得られる。
【0065】
(製造方法)
図9(C)に示すように、セパレータ701に貼り付けられた識別媒体700は、紙ラベル部720とホログラムラベル部730とで構成されている。この構成では、紙ラベル部720とホログラムラベル部730とを別に作り、粘着層714の粘着機能により、両者を合体させることで、識別媒体700を得る。
【0066】
図10には、複数の紙ラベル部720がリボン状のセパレータ701に貼り付けられ、テープ状にされた状態が示されている。図10(A)は、正面から見た様子であり、図10(B)は、ロール721に巻き取られた状態を示す側面図である。図11には、複数のホログラムラベル部730がリボン状のセパレータ731に貼り付けられ、テープ状にされた状態が示されている。図11(A)は、正面から見た様子であり、図11(B)は、ロール732に巻き取られた状態を示す側面図である。
【0067】
例えば、セパレータ731からホログラムラベル部730を剥がし、それを紙ラベル部720のホログラム表示部702(図9参照)に貼り付けることで、図9に示すセパレータ701に貼り付けられた状態の識別媒体700が得られる。
【0068】
(製造装置)
図12には、図9に示すセパレータ701に識別媒体700が貼り付けられた構成を有する識別ラベルを製造する識別ラベル製造装置の一例が示されている。図12には、識別ラベル製造装置750が示されている。識別ラベル製造装置750には、図10のロール721が装着されている。ロール721には、複数の紙ラベル部720(図9(C)参照)が貼り付けられたセパレータ701が巻き取られている。ここで、セパレータ701には、ミシン目が設けられており、後に簡単に分離が可能な構造とされている。複数の紙ラベル部720が貼り付けられたセパレータ701は、ロール721から巻き出され、ガイドロール751を経て、ガイドロール752に至る。ガイドロール752に対向して印刷手段である印刷ヘッド753が配置されており、紙ラベル部720に対する印刷が可能とされている。印刷ヘッド753において印刷可能な内容は、図9の2次元コード印刷702およびその他印刷表示704の一部または全部である。印刷ヘッド753としては、インクジェット方式のものを挙げることができる。
【0069】
他方で、識別ラベル製造装置750には、図11のロール732が装着されている。ロール732には、粘着層714の粘着力により、複数のホログラムラベル部730(図9(C)参照)が貼り付いたリボン状のセパレータ731が巻き取られている。上述したロール721からのセパレータ701の巻き出しに同期させて、ロール732からのセパレータ731の巻き出しが行なわれる。
【0070】
ロール732から巻き出されたホログラムラベル部730を有したセパレータ731は、対抗した一対のロールにより構成される貼り付けローラー754に送られ、そこで紙ラベル部720の2次元コード印刷702およびその他印刷表示704が行われている面と接触する。この際、図9(C)に示すように、ホログラムラベル730の粘着層714が紙ラベル部720の2次元コード印刷702の部分に接触する。ここで、貼り付けローラー754から受ける圧力により、ホログラムラベル730が紙ラベル部720に確実に貼り付けられる。なお、図9(C)には、図12のセパレータ731は図示されていない。この貼り付けは、粘着層714の粘着機能によって行われる。この際、粘着層714の材質に応じて熱や紫外光を照射し、粘着機能の発現を助長してもよい。ホログラムラベル730を紙ラベル部720側に貼り付けした後のセパレータ731は、巻き取りロール755に巻き取られる。
【0071】
こうして、貼り付けローラー754において、図9(B)に示す識別媒体700の複数が、セパレータ701に固定された状態が得られ、それが識別ラベル製造装置750の外部に出力される。ここで、セパレータ701には、個々の識別媒体700をセパレータ701ごと切り離すことができるようにミシン目が入れられており、簡単な作業でセパレータ701に貼り付けられた状態のラベル状の識別媒体700を得ることができる。
【0072】
図12に示す識別ラベル700は、紙ラベル部720に対して、印刷ヘッド735においてリアルタイムに印刷を行いつつ、その印刷内容の読み取りに識別性を持たせるホログラムラベル部730を形成することができる。この作業は、識別対象となる製品の製造現場や流通現場(例えば、出荷のための包装を行なう現場)において可能である。例えば、製品の出荷が行なわれる施設内において、顧客ごとにカスタマイズされた多様な仕様の製品毎に対応する情報を印刷ヘッド753から2次元コード表示702として印刷し、その上に識別性を持たせるためのホログラム表示703を形成する作業が可能となる。
【0073】
(その他の開示内容)
以下、本明細書中で開示されている内容を説明する。第1の開示内容は、読み取りを行う側から見て、ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、読み取りの対象となるコードが形成されたコード形成層とを順に備え、光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されていることを特徴とする識別媒体である。
【0074】
第1の開示内容によれば、円偏光フィルタを介さずに光学読み取り装置(例えば、バーコードリーダー)によって当該識別媒体からのデータの読み取りを行った場合に、光学読み取り装置は、コード層のコード画像(例えば、2次元バーコード)とコレステリック液晶層のホログラム像とを同時に検出する。この際、ホログラム像によりコード画像の読み取りが阻害されるので、光学読み取り装置で直接光学的な読み取りを行っただけでは、データの読み取りはできない。
【0075】
他方で、コレステリック液晶層が選択反射する旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介して、光学読み取り装置による読み取りを行う場合、コレステリック液晶層からの反射光が上記円偏光フィルタによって遮断されるので、光学読み取り装置はコレステリック液晶層のホログラム像を検出しない。このため、コード形成層のコードの情報を検出するS/Nが高くなり、当該コードの検出および当該コードのデコードが可能となる。つまり、コードの選択的な読み取りが可能となる。
【0076】
コレステリック液晶層の反射光は、左右どちらかの旋回方向の円偏光であり、円偏光フィルタによりその反射光を遮断した場合の遮断性(透過されない特性)が極めて高い。また、円偏光であるので、円偏光フィルタを回転させてもこの逆旋回方向の円偏光を遮断する特性は変化しない。このため、円偏光フィルタを用いない場合におけるコレステリック液晶層のホログラム像によるコード形成層のコードの読み取りを阻害する機能と、コレステリック液晶層からの反射光を円偏光フィルタで遮断することによる上記コード形成層のコード情報を光学的に検出する際の検出S/Nの確保とを両立できる。
【0077】
また、コレステリック液晶層へのホログラム加工には、ノウハウが必要であり、ホログラム像の内容が分かっていても簡単には再現できない。また、コレステリック液晶層は、特定の中心波長を選択反射する光学特性を有しているので、感光材料を用いたホログラム干渉構造(ホログラムを構成するエンボス構造)のコンタクトコピーが簡単には行えず、ホログラム型を再現することが困難であるという偽造困難性も有している。これは、コレステリック液晶層から選択反射される反射光のスペクトルと同じ感光特性を有する感光材料を用いないと、コンタクトコピーではホログラム像の色合いや仔細な画像情報の再現性が得られないことに起因する。
【0078】
この技術によれば、見た目では、ホログラム像に邪魔されてコードが明瞭に見えない状態であるが、使用しているコレステリック液晶が選択反射する円偏光と逆旋回方向の円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタを介してコードの光学的な検出を行うと、ホログラム像の影響が排除されて、コードを読み取ることができる識別媒体が提供される。
【0079】
また、この技術によれば、以下に述べるような偽造防止効果が得られる。まず、コードを偽装してもコレステリック液晶層のホログラムを偽造するのが困難であるので、コードが同じでも見た目で同じものを製造(偽造)することが困難となる。また、例えばコレステリック液晶のホログラムではなく、通常のホログラムをコードに重ねたものを偽造し、見た目を精巧に似せた偽造品を製造しても、円偏光フィルタを介した観察で、コードのみが鮮明に見える、あるいはコードの像が弱くなり、逆にホログラムが鮮明に浮かび上がって見える、といった視覚効果は得られないので、偽造を見破ることが容易となる。
【0080】
なお、光学読み取り装置の読み取り形式は、光学的にコードを読み取る形式であれば限定されず、例えば、CCD等の撮像装置による画像を得る形式、光学受光センサによる直接反射光や散乱反射光の検出による形式、受光センサアレイによる反射光のパターンを検出する形式等が挙げられる。
【0081】
第2の開示内容は、第1の開示内容において、前記コレステリック液晶層の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、前記第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向の円偏光を前記コレステリック液晶層に向かって選択的に透過する光学機能層が前記コレステリック液晶層と前記コード形成層との間に配置されていることを特徴とする。
【0082】
第2の開示内容によれば、コード形成層からの反射光が光学機能層を透過した後にコレステリック液晶層の非観察面側(光学的な読み取りを行う側と反対の面側)から入射する。この入射光は、光学機能層の機能によりコレステリック液晶層が選択反射する円偏光の旋回方向(第1の旋回方向)と逆の第2の旋回方向の円偏光となる。よって、第1の旋回方向の円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタを介して当該識別媒体を観察した場合に、この円偏光フィルタによって第2の旋回方向の円偏光が遮断されるので、コードが見えず、コレステリック液晶層からのホログラム像が鮮明に視認される。よって、ホログラム像を用いた肉眼での識別性が高くなる。これは光学読み取り装置を用いた場合も同じであり、ホログラム像の検出による識別性が高くなる。
【0083】
仮に、第2の開示内容における光学機能層がない場合、第1の旋回方向を選択的に透過する円偏光フィルタを介した観察において、コード形成層から反射されるランダム光成分の内の第1の旋回方向の円偏光成分がコレステリック液晶層からの反射光に混じって、円偏光フィルタを透過する。このため、ホログラム像だけを鮮明に視認することはできず、コードも同時に視認される。これは、光学読み取り装置を用いた読み取りにおいても同じである。よって、コレステリック液晶層のホログラム像単独の視認性や画像読み取り装置による読み取り精度が低下する。
【0084】
第3の開示内容は、第1または第2の開示において、前記コードが、バーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコードから選ばれた一または複数により構成されることを特徴とする。コードは、各種の方式や規格のものが知られているが(あるいは提案されているが)、本発明では、それらの何れでも利用することができる。ここで、OCRコードは、文字で表示されたコードであり、また、カラーコードは複数の色彩の組み合わせで構成したコードである。これらのコードは、複数種類を組み合わせて利用することもできる。コードの読み取りは、反射光の明暗を0、1(Hi状態、Lo状態)に対応させてデジタル信号として検出する方法、携帯電話のカメラ機能を用いた2次元バーコードの読み取りのように撮像装置を用いてコードの模様を画像として取り込み、それに基づき画像処理によりコードをデコードする方法が挙げられる。
【0085】
第4の開示内容は、第3の開示内容において、前記コードが肉眼では認識し難い大きさを有することを特徴とする。第4の開示内容では、バーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコード等のコードを肉眼では認識し難い大きさとし、拡大光学系を介して拡大することで読み取ることが可能な形態としている。こうすることで、直視した場合にコレステリック液晶層のホログラム像の見え方が支配的となり、肉眼でコードが視認し難い識別媒体が提供される。
【0086】
第5の開示内容は、第1〜第4の開示内容のいずれか一つにおいて、前記ホログラム像が前記コード形成層に形成された前記コードとは別のコードを構成していることを特徴とする。第5に記載の発明によれば、コード形成層に形成されたコードに加えて、コレステリック液晶層のホログラム像を利用してのコード(ホログラムコード)も用いられるので、それらの組み合わせにより扱うデータ量を多くできる。また、一方のデータのみの読み取り、両方のデータの読み取りの組み合わせによって、より高い識別性を得ることができる。
【0087】
また、第2の開示内容を採用した場合、右円偏光フィルタと左円偏光フィルタとで、コード形成層からの反射光とコレステリック液晶層からの反射光とを明確に分離して検出することができる。このため、第1の円偏光フィルタを利用することで、コレステリック液晶層からの反射光を選択的に検出し、それによりホログラムコードを選択的に読み取ることができる。また、第2の円偏光フィルタを利用することで、コード形成層からの反射光を選択的に検出し、それによりコード形成層のコード情報を選択的に読み取りことができる。
【0088】
第6の開示内容は、読み取りを行う側から見て、ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、読み取りの対象となるコードが形成されたコード形成層とを備え、光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されている識別媒体からデータを読み取る方法であって、光学読み取り装置により前記第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介して前記コードの選択的な読み取りが行われることを特徴とするデータの読み取り方法である。
【0089】
第6の開示内容によれば、第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介さない場合は、コードが読み取れず、第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介した場合に、コードが読み取れるデータの読み取り方法が提供される。すなわち、円偏光フィルタを用いないとコレステリック液晶層のホログラム像とコードが同時に見えるので、コードの読み取りが阻害される。また、第1の旋回方向の円偏光を透過する円偏光フィルタを介して当該識別媒体を観察した場合はコレステリック液晶層からの反射光しか見えないので、やはりコードの読み取りが行えない。このように、特定の旋回方向を透過する円偏光フィルタを用いないとコードの読み取りが行えない技術が提供される。
【0090】
第7の開示内容は、第6の開示内容において、光学読み取り装置により前記コレステリック液晶層の前記ホログラムと前記コードとの同時読み取りが行われ、前記コードの選択的な読み取りおよび前記ホログラムと前記コードとの同時読み取りに基づき、前記識別媒体の真贋の判定が行われることを特徴とする。
【0091】
第8の開示内容は、第1〜第5の開示内容のいずれか一つに記載の識別媒体の真贋を判定する装置であって、前記第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介して前記コードを選択的に読み取る読み取り手段を備えることを特徴とする識別装置である。
【0092】
第9の開示内容は、第1〜第5の開示内容のいずれか一つに記載の識別媒体を製造する方法であって、前記コード形成層を印刷により形成する工程と、前記コード形成層と前記コレステリック液晶層とを一体化する工程とを備えることを特徴とする識別媒体の製造方法である。
【0093】
第10の開示内容は、第1〜第5の開示内容のいずれか一つに記載の識別媒体を製造する識別媒体の製造装置であって、前記コード形成層の一部または全部が形成可能な第1のラベル部が貼り付けられた第1のセパレータを巻き取った第1のロールと、前記コレステリック液晶層を含む第2のラベル部が貼り付けられた第2のセパレータを巻き取った第2のロールと、前記コード形成層を印刷する印刷手段と、前記印刷手段により印刷された前記コード形成層に前記第2のラベル部を貼り付けする貼り付け手段とを備えることを特徴とする識別媒体の製造装置である。
【0094】
第1の開示内容によれば、コレステリック液晶層のホログラムによって見た目で同じような外観にした偽造品を見破ることが容易な識別媒体が提供される。また、それと同時に、コレステリック液晶層が特定の旋回方向の円偏光を選択的に反射し、それと逆方向の円偏光を透過する性質を利用した円偏光フィルタを介すことで、コレステリック液晶層のホログラムの影響を受けずに高い精度でコードの読み取りが行える識別媒体が提供される。
【0095】
第2の開示内容によれば、円偏光フィルタを介した観察において、コード形成層のコード図柄が見えず、コレステリック液晶層のホログラムが鮮明に見える観察が可能となる。
【0096】
第3の開示内容によれば、多様なコード規格に適合した識別媒体が得られる。
【0097】
第4の開示内容によれば、コードを肉眼で認識し難くした識別媒体が提供される。
【0098】
第5の開示内容によれば、更に多くのコード情報を扱うことができ、またより高い識別機能が得られる識別媒体が提供される。
【0099】
第6の開示内容によれば、第1の開示内容の優位性を有する識別媒体からのデータの読み取り方法が提供される。
【0100】
第7の開示内容によれば、更に多くのコード情報を扱うことができ、またより高い識別機能が得られるデータの読み取り方法が提供される。
【0101】
第8の開示内容によれば、第1〜第5の開示内容のいずれか一つに記載の発明の優位性を備えた識別媒体の識別装置が提供される。
【0102】
第9の開示内容によれば、第1〜第5の開示内容のいずれか一つに記載の発明の優位性を備えた識別媒体を製造する方法が提供される。
【0103】
第10の開示内容によれば、コード形成層を印刷により形成しつつ、その上にコード形成層の読み取りに識別性を与えるコレステリック液晶層のラベル部を貼り付けすることができる識別媒体の製造装置が提供される。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、真贋の識別を行うための技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0105】
100…識別媒体、101…透明保護層、102…コレステリック液晶層、103…ホログラム加工、104…λ/4板、105…直線偏光フィルタ層、106…円偏光フィルタ層、107…コード印刷図柄、108…基材フィルム層、109…粘着層、300…読み取り装置、303…ライト、304…円偏光フィルタ、305…ステージ、320…拡大レンズ、700…識別媒体、701…セパレータ(離型紙)、702…2次元コード表示、703…ホログラム表示、704…その他印刷表示、711…粘着層、712…基材紙、714…粘着層、715…直線偏光フィルタ層、716…λ/4板、717…円偏光フィルタ層、718…コレステリック液晶層、719…透明保護層、720…紙ラベル部、721…ロール、730…ホログラムラベル部、731…セパレータ、732…ロール、750…識別ラベル製造装置、751…ガイドロール、752…ガイドロール、753…印刷ヘッド、754…貼り付けローラー、755…巻き取りロール。
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次元コードや2次元コードを用いた識別に利用される識別媒体の製造方法および識別媒体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1次元コードや2次元コード(以下、コードと総称)を用いた部品や食品の管理が知られている。このコードを用いると、製造元の情報、履歴(例えば物流過程の履歴)、真贋(偽造品であるか否かの判定)、製造年月日、その他当該対象物に係る各種の情報の取得等が可能となる。また、コードを電子的に読み取って、それを送信することで、各種の申し込みや情報の入手を行う技術も知られている。このコードの偽造を防止する技術として、ホログラムを用いた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−268776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている技術は、ホログラム効果を損なわずに、通常の観察下では埋め込んだコードの情報の視認が困難であるような技術を提供するものである。他方で、リーダーを用いた電子的な読み取りを行う際に、見た目で同じような外観にした偽造品の読み取りが行えないような技術が求められている。この技術としては、コードを複雑化する方法、特殊なインクや透かし技術を用いる方法等があるが、それらの技術の詳細が知られ、利用された場合に偽造防止効果が低下する。また、コードを複雑化したり、透かし技術を用いたりした場合、コードを電子的に読み取る精度の確保が問題となる。
【0005】
このような背景において、本発明は、見た目で同じような外観にした偽造品を見破ることが容易であり、且つ、コードの読み取り精度の高い識別媒体を製造する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、読み取りを行う側から見て、ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、読み取りを行う側から見て、λ/4板と直線偏光フィルタ層とが積層された構造を有し、前記コレステリック液晶層の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、前記第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向の円偏光を前記コレステリック液晶層に向かって選択的に透過する機能を有する光学機能層と、読み取りの対象となるバーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコードから選ばれた一または複数により構成されるコードが形成されたコード形成層とを順に備え、光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されている識別媒体の製造方法であって、前記コード形成層を印刷により形成する工程と、前記コード形成層と前記コレステリック液晶層とを一体化する工程とを備えることを特徴とする識別媒体の製造方法である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、読み取りを行う側から見て、ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、読み取りを行う側から見て、λ/4板と直線偏光フィルタ層とが積層された構造を有し、前記コレステリック液晶層の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、前記第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向の円偏光を前記コレステリック液晶層に向かって選択的に透過する機能を有する光学機能層と、読み取りの対象となるバーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコードから選ばれた一または複数により構成されるコードが形成されたコード形成層とを順に備え、光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されている識別媒体の製造装置であって、前記コード形成層の一部または全部が形成可能な第1のラベル部が貼り付けられた第1のセパレータを巻き取った第1のロールと、前記コレステリック液晶層を含む第2のラベル部が貼り付けられた第2のセパレータを巻き取った第2のロールと、前記コード形成層を印刷する印刷手段と、前記印刷手段により印刷された前記コード形成層に前記第2のラベル部を貼り付けする貼り付け手段とを備えることを特徴とする識別媒体の製造装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、見た目で同じような外観にした偽造品を見破ることが容易であり、且つ、コードの読み取り精度の高い識別媒体を製造する技術が提供される。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、コード形成層を印刷により形成しつつ、その上にコード形成層の読み取りに識別性を与えるコレステリック液晶層のラベル部を貼り付けすることができる識別媒体の製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】識別媒体の断面構造を示す概念図である。
【図2】識別媒体の光学原理を示す原理図である。
【図3】識別媒体の見え方の違いを示す概念図である。
【図4】識別媒体の識別を行うシステムの一例である。
【図5】光学読み取り装置の概念図である。
【図6】光学読み取り装置のブロック図である。
【図7】光学読み取り装置の動作の手順を示すフローチャートである。
【図8】識別媒体の断面構造を示す概念図である。
【図9】識別媒体の正面図(A)、断面図(B)、分離した状態の断面図(C)である。
【図10】識別媒体を構成する紙ラベル部の複数がセパレータに貼り付けられた状態を示す正面図(A)と側面図(B)である。
【図11】識別媒体を構成するホログラムラベル部の複数がセパレータに貼り付けられた状態を示す正面図(A)と側面図(B)である。
【図12】識別ラベル製造装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)第1の例
図1には、識別媒体100が示されている。識別媒体100は、観察が行われる側(識別面側)から、透明保護層101、コレステリック液晶層102、λ/4板104、直線偏光フィルタ層105、コード印刷図柄107、基材フィルム層108、粘着層109と積層された構造を有している。
【0012】
透明保護層101は、最表面を保護する透明な樹脂フィルムの層である。透明保護層101は、TAC(トリアセチルセルロース)等の透過する光の偏光特性を乱さない材質が選択されている。コレステリック液晶層102は、赤の右円偏光を選択的に反射する光学特性とされている。コレステリック液晶層102には、エンボス型を押し付けることで行われたホログラム加工103が施されている。ホログラム加工103により、コレステリック液晶層102に凹凸構造が付与され、この凹凸構造において生じる光学干渉によりホログラム像が生成される。このホログラム像は、コレステリック液晶層102からの反射光を観察することで視認することができる。
【0013】
λ/4板104と直線偏光フィルタ層105は、2層で円偏光フィルタ層106を構成している。円偏光フィルタ層106は、非観察面側であるコード印刷図柄107の側から自然光を入射させた場合に、観察面側(図の上側)に左円偏光を選択的に透過する光学機能となるように、λ/4板104と直線偏光フィルタ層105の向きが調整されている。
【0014】
コード印刷図柄107は、基材フィルム層108上へのインクの印刷により形成された2次元バーコードの図柄でありコード形成層を構成する。基材フィルム層108は、印刷された2次元バーコードの内容を際立たせる背景色を有した樹脂フィルムの層である。粘着層108は、粘着材の層である。粘着層108の機能により、識別媒体100が対象物に貼り付けられる。なお、粘着層108の露出面には図示省略したセパレータ(離型紙)が貼り付けられ、対象物に貼り付ける際にこのセパレータを剥がし、粘着層109を露出させた状態で対象物への識別媒体100の貼り付けが行われる。なお、基材フィルムを用いないで、円偏光フィルタ106の直線偏光フィルタ105側にコード図柄印刷107を印刷により形成してもよい。
【0015】
(ホログラムとコード図柄の関係)
ホログラム加工103により構成されるホログラム像は、ロゴや視認し易い模様とされている。このホログラム像とコード図柄とは、少なくとも一部が重なる位置関係とされている。これにより、ホログラム像を同時に検出した場合にコード図柄の電子的な読み取りが困難となる。また、ホログラム像をコード印刷図柄107と同時にコード読み取り装置によって読み取った際に、ホログラム像の影響でコードがより確実に読み取り難いような内容のホログラム像を特に選択してもよい。こうすることで、より確実にセキュリティ性を高めることができる。
【0016】
(光学機能)
図2には、識別媒体100の光学機能の原理が概念的に示されている。以下、自然光がコレステリック液晶層102の側(図の上側)から照射されている環境下における識別媒体100の光学機能について説明する。なお、図2では、透明保護層101の記載は省略されている。
【0017】
まず、基本的な光学特性を説明する。識別媒体100に照射された自然光の内、コレステリック液晶層102から赤の右円偏光が反射される。このコレステリック液晶層102からの反射光は、ホログラム加工103に起因するホログラム像を含んだ反射光となる。
【0018】
また、コレステリック液晶層102が反射しない左円偏光、直線偏光、赤以外の右円偏光がコレステリック液晶層102を透過し、円偏光フィルタ層106に入射する。この入射光は、円偏光フィルタ層106の直線偏光フィルタ層105のコード印刷図柄107側に出た段階で直線偏光となり、コード印刷図柄107に入射し、そこで反射される。このコード印刷図柄107からの反射光は、コード印刷図柄107の2次元バーコードの画像を含んでいる。
【0019】
このコード印刷図柄107からの反射光は、円偏光フィルタ層106を図の下か上の方向に透過する段階で左円偏光(左旋回円偏光)となる。すなわち、円偏光フィルタ層106は、直線偏光フィルタ層105側から自然光を入射させた場合に、λ/4板104側から左円偏光が出射する特性とされている。よって、コード印刷図柄107からの反射光(直線偏光)は、左円偏光として、円偏光フィルタ層106を図の上方向に透過する。この透過光は、左円偏光であるので、コレステリック液晶層102を透過し、観察面側に出射する。
【0020】
(左円偏光フィルタを介した観察)
識別媒体100を左円偏光フィルタ(左旋回円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタ)110を介して観察する場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層102から反射される右円偏光は、左円偏光110フィルタで遮断される。他方で、コレステリック液晶層102の観察面側に出射する段階で左円偏光となるコード印刷図柄107からの反射光は左円偏光フィルタ110を透過する。よって、被観察光112には、コレステリック液晶層102のホログラム像は含まれておらず、コード印刷図柄107の2次元バーコードの像が含まれている状態となる。つまり、左円偏光フィルタを介して識別媒体100を観察した場合、ホログラム加工103に基づくホログラム像は見えず、コード印刷図柄107の2次元バーコードの像が見える。この状態の一例が図3(A)に示されている。図3(A)には、ホログラム加工103に基づくホログラム像103’(図3(B)参照)は見えず、コード印刷図柄107の二次元バーコードの画像107’が選択的に見えている状態が示されている。
【0021】
(右円偏光フィルタを介した観察)
識別媒体100を右円偏光フィルタ(右旋回円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタ)111を介して観察した場合、コレステリック液晶層102から反射される右円偏光は、右円偏光フィルタ111を透過するので、被観察光113には、ホログラム加工103に基づくホログラム像が含まれる。他方で、コレステリック液晶層102を観察面側に出射する段階で左円偏光となるコード印刷図柄107からの反射光は、右円偏光フィルタ111で遮断される。このため、コード印刷図柄107の2次元バーコードの像は、被観察光113には含まれない。つまり、右円偏光フィルタを介して識別媒体100を観察した場合、ホログラム加工103に基づくホログラム像が見え、コード印刷図柄107の2次元バーコードの像は見えない。この状態の一例が図3(B)に示されている。図3(B)には、ホログラム加工103に基づくホログラム像103’が選択的に見え、コード印刷図柄107の二次元バーコードの画像107’が見えない状態が示されている。
【0022】
(円偏光フィルタを利用しない場合)
左右の円偏光フィルタを利用しない場合、識別媒体100から右円偏光であるコレステリック液晶層102からのホログラム像と、左円偏光であるコード印刷図柄107から2次元バーコードの像とが同時に観察可能となる。この状態の一例が図3(C)に示されている。図3(C)には、ホログラム加工103に基づくホログラム像103’と、コード印刷図柄107の二次元バーコードの画像107’とが同時に見える状態が示されている。この場合、ホログラム像103’の方が観察する側から見て手前側にあるので、両者が重なった部分で二次元バーコードの画像107’はマスクされ、認識し難くなる。なお、図3(C)では、この様子が誇張して示されている。
【0023】
(利用例)
以下、識別媒体100の利用例の一例を説明する。ここでは、識別媒体100を商品に付けられた2次元バーコードに適用した場合の例を説明する。図4には、識別媒体100を利用した識別を行うシステムの一例が示されている。図4(A)には、全体の概要が示され、図4(B)には、カメラ付携帯電話で識別媒体100を撮像する様子が示されている。
【0024】
図4には、データサーバ201、インターネット回線202、携帯基地局203、携帯基地局のアンテナ204、携帯電話205、製品206、識別媒体100、カメラ208、左円偏光フィルタ209が示されている。データサーバ201は、識別媒体100の2次元バーコード情報のデコードされた情報を照合する。インターネット回線202は、携帯基地局203と接続され、携帯基地局203は、アンテナ204を介して携帯電話205と通信を行う。携帯電話205は、カメラ208を備え、カメラ208で撮像した二次元バーコード情報をデコードし、携帯基地局203を介してインターネット202経由でデータサーバ201に送信する機能を有する。製品206は、電子部品や機械部品等の各種の部品、食料品、日用品、衣料品、コンピュータのアプリケーションソフトウェア等の製品や製品パッケージである。製品206には、真贋判定機能および決められた内容(例えば、製造者を特定する情報や物流過程の履歴情報等)をコード化して印刷した識別媒体100が貼り付けられている。
【0025】
図4に示す例において、ユーザは、携帯電話205のカメラ208を利用し、左円偏光フィルタ209を介して識別媒体100を撮像する。カメラ208が取得したデータは、携帯基地局203、インターネット回線202を介して、データサーバ201に送られる。データサーバ201は、受け取ったデータに基づいて、識別媒体100のコードを自身が記憶している比較対象となるデータと照合する。そしてデータサーバ201は、取得したコードの内容に基づいて、特定の情報(例えば、製品206に関する製造者を特定する情報)を携帯電話205に送る。このようにして、識別媒体100を撮像し、その画像データをデコードし、データサーバ201に送ることで問い合わせが行われ、その問い合わせの結果(回答)が、データサーバ201から携帯電話205に送られ、携帯電話205に表示される。
【0026】
なお、円偏光フィルタを介さず直接識別媒体100を撮像した場合、コレステリック液晶層のホログラム像も同時に撮像される。よって、その画像データはコレステリック液晶のホログラム像が障害になって二次元バーコード(コード印刷図柄107)のデコードは行えない。
【0027】
(読み取り装置)
図5には、図1の識別媒体100の読み取りを行う読み取り装置300が示されている。読み取り装置300は、CCD等の撮像装置301、制御部302、ライト303、円偏光フィルタ304、拡大レンズ320、ステージ305を備えている。撮像装置301は、識別媒体100の撮像を行う。制御部302は、装置全体の動作制御、撮像装置301が撮像した画像に基づくコードの解読および真贋判定を行う。ライト303は、識別媒体100に白色自然光を照射する。円偏光フィルタ304は、識別媒体100のコレステリック液晶層102が選択反射する円偏光(この場合は、右円偏光)を遮断する光学フィルタ(この場合は、左円偏光フィルタ)である。円偏光フィルタ304は、光軸上(撮像装置301の前)からの退避が自在にできるように図示省略した移動手段により、移動が可能とされている。拡大レンズ320は、例えばマイクロOCRコード等の肉眼では小さくて視認し難いコードを用いた場合に利用される拡大光学系である。拡大レンズ320も光軸から退避可能とされている。ステージ305は、識別媒体100が貼り付けられた対象物(例えば、電子部品や各種商品等)306が置かれるステージである。
【0028】
図6は、制御部302の構成を示すブロック図である。制御部302には、後述するフローチャートの手順を実行するコンピュータとして機能する。制御部は、CPU、メモリ、インターフェースを備え、ソフトウェアー的に構成された以下の機能部を有している。制御部302は、画像抽出部306、デコード部307、デコード内容出力部308、画像判定部309、デコード可否判定部310、真贋判定部311、報知部312、駆動部313を備えている。
【0029】
画像抽出部306は、画像データから画像の内容を抽出する。デコード部307は、抽出された画像を解析し、コード(2次元バーコードデータ)を解析しデコードする。デコード内容出力部308は、デコードされた2次元バーコードの情報を出力する。ここで、2次元バーコードの情報としては、対象物306の固有情報(例えば、製造番号や各種履歴情報)が挙げられる。
【0030】
画像判定部309は、抽出された画像が予め記憶されている画像(リファレンス画像)と整合するか否か、を判定する。デコード可否判定部310は、デコード部307におけるコードデータのデコードが正常に行われたか否か、を判定する。真贋判定部311は、画像判定部309およびデコード可否判定部310の判定の結果に基づき、識別媒体100の真贋を判定する。報知部312は、各種判定の結果を報知する報知信号を出力する。駆動部313は、ライト303の点灯制御、円偏光フィルタ304および拡大レンズ320の移動制御を行うための駆動信号を出力する。
【0031】
(読み取り装置の動作)
図7は、読み取り装置300の動作の一例を示すフローチャートである。図7の処理の手順を実行するプログラムは、制御部302内の適当なメモリ領域に記憶され、制御部302によって実行される。このプログラムは、適当な記憶媒体に記憶され、そこから提供される形態であってもよい。
【0032】
図5のステージ305上に、識別媒体100が貼り付けられた対象物306が置かれた状態で処理が開始される。処理が開始されると(ステップS501)、ライト303の発光を開始し(ステップS502)、円偏光フィルタ(左円偏光フィルタ)304を撮像装置301と識別媒体100との間から退避させる(ステップS503)。
【0033】
次に、撮像装置301により識別媒体100を図1の観察面側(透明保護層101の側)から撮像し、識別媒体100を撮像した画像データを取得する(ステップS504)。識別媒体100の画像データを取得したら、2次元バーコード情報のデコードが不可で、且つ、得られた画像が予め用意しておいたリファレンス画像と整合(合致)するか否かが判定される(ステップS505)。この判定要件が満たされない場合、コレステリック液晶層102のホログラム画像による2次元バーコードの読み取りを阻害する作用が正常に機能しておらず、またこのホログラム画像が偽物の可能性が高いと判定され、真正でない疑がある旨(贋物の疑いあり)の報知情報を出力する処理を行う(ステップS506)。
【0034】
ステップS505において、2次元バーコード情報のデコードが不可で、且つ、得られた画像が予め用意しておいたリファレンス画像と整合する場合、円偏光フィルタ304を撮像装置301と識別媒体100との間に挿入し(ステップS507)、再度識別媒体100の撮像を行いその画像データを得る(ステップS508)。次に、この再度取得した画像データに対してデコード処理を行い、正常なデコードが行えた否か、を判定する(ステップS509)。ここで、正常なデコードが行えなければ、エラー処理を行い(ステップS510)、正常なデコードができた場合、デコードした内容(識別媒体100の2次元バーコード情報)を出力する(ステップS511)。その後、ライト303の発光を停止し(ステップS512)、処理を終了する(ステップS513)。
【0035】
(真贋判定機能)
まず、図2に関連して説明したように、識別媒体100は、直視した場合に2次元バーコードの模様とホログラム像が同時に見える。そして、左円偏光フィルタを介して見ると2次元バーコードのみが見え、右円偏光フィルタを介して見るとホログラム像のみが見える。この視認される像の切り替わりで真贋の判定が可能となる。2次元バーコードのみであると、偽造された場合にその真贋の判定が困難となるが、識別媒体100では、上記の目視による観察で、真贋の判定が行える。
【0036】
また、図5、図6に関連して説明したように、機械による電子的な読み取りにおいても真贋の判定が可能となる。すなわち、見た目を似せて作った贋物の識別媒体100は、コレステリック液晶層102へのホログラム加工103が上手く再現できないので、ステップS505の判定がNOとなる。また、仮にステップS505の判定をクリアしたとしても、ステップS509の判定において、ホログラム像が画像データ中に残っていると2次元バーコードのデコードが不可となり、エラーとなるので、偽造品の2次元バーコード情報が正常な情報として読み取られる不都合が回避される。
【0037】
このように識別媒体100は、目視での観察による真贋判定、および電子的な読み取りによる真贋判定を行うことで、2次元バーコード情報の偽造を見破ることが容易となる。
【0038】
(その他)
コレステリック液晶層102が選択反射する中心波長(色)は、赤に限定されず、緑等の他の色であってもよい。また、コレステリック液晶層102が選択反射する円偏光の旋回方向は、右旋回方向に限定されず、左旋回方向であってもよい。例えば、コレステリック液晶層102が選択反射する円偏光の旋回方向を左旋回方向とした場合、符号106の部分は、右円偏光フィルタ層となる。
【0039】
基材フィルム層108と粘着層109を透明にし、貼り付けた面が透けて見える構成も可能である。また、粘着層109を暗色の色として、粘着層を光吸収層として機能させてもよい。この場合、直視した場合にホログラム像が強調され、2次元バーコードが見え難くなる。2次元バーコードの図柄は、予め印刷された薄いフィルムを張り合わせても形成してもよい。
【0040】
(変形例1)
図1に示す構成において、円偏光フィルタ層106を省いた構成も可能である。この場合、右円偏光フィルタを介した観察において、ホログラム像に加えて、コード印刷図柄も薄く見える。左円偏光フィルタを介した観察の場合は、図1の識別媒体の場合と同じである。変形例1の場合、円偏光フィルタを切り替えての観察において、2次元バーコードの図柄とホログラム像との明確な切り替わりが図1の識別媒体100に比較して不明瞭となるが、図7の処理による真贋判定および2次元バーコード情報の読み取り処理は可能である。
【0041】
(変形例2)
コード印刷図柄107として、2次元バーコードの図柄の代わりに肉眼では識別できない大きさのマイクロ文字を利用したOCRコード(以下、マイクロOCRコード)を用いる。マイクロコードOCRコードは、特定のデータを文字により記号化(暗号化)したもので、肉眼では読み取り難い大きさを有し、レンズを介して読み取る。この場合の識別媒体の使用方法や特徴は、図5の装置において、拡大レンズ320が利用される点、コードの方式が変わる点を除いて2次元バーコードの場合と同じである。
【0042】
マイクロOCRコードを用いた場合、目視でコードが読み取り難いので、コレステリック液晶層のホログラム像が強調されて見え、ホログラム像を用いた目視での識別性が高くなる。また、マイクロOCRコードは文字が小さいので、円偏光フィルタを介さずにマイクロOCRコードを画像認識により読み取ろうとした場合に、ホログラム像による幻惑作用がより大きく、ホログラム像がより明瞭な画像となる点と相まって、図7のステップS505の判定による真贋判定をより効果的に行うことができる。なお、バーコードの表示を小さくし、光学系で拡大することで読み取る形態も可能である。
【0043】
(変形例3)
2次元バーコードの変わりにID番号を用いることもできる。この場合、図5、図6の構成においてID番号が画像認識され、ID番号に対応した固有情報(例えば、製造番号や、認識番号、固有の名称等)がデコードされる。
【0044】
この構成では、円偏光フィルタ304を退避させた状態で画像認識を行うと、コレステリック液晶層102のホログラム像に幻惑されて、ID番号が読み取れず、左円偏光フィルタを光路に挿入した状態で画像認識を行うと、ホログラム像が消えて、ID番号の読み取りが可能となる。
【0045】
この場合もID番号を何らかの方法で入手され、識別媒体が偽造されたとしても、偽造の困難なコレステリック液晶のホログラム像を用いた円偏光フィルタ不使用時のID番号の読み取りを困難にする光学機能、また逆に円偏光フィルタ使用時のID番号をホログラム像の影響(幻惑)を受けずに精度よく読み取れる機能、および再現の困難なホログラム画像の画像内容によって高い偽造判定機能を得ることができる。
【0046】
(変形例4)
ホログラム加工103によって形成されるホログラム像としてホログラムコードを含むものを採用してもよい。この場合、右円偏光フィルタを介した撮像によって、ホログラム加工103によるホログラムコードの読み取りが行われる。そして、左円偏光フィルタを介した撮像によって、コード印刷図柄107のコードの読み取りが行われる。つまり、円偏光フィルタの切り替えにより、2つのコードの選択的な読み取りが可能となる。
【0047】
この場合、図5に示す装置は、右円偏光フィルタと左円偏光フィルタを備え、右円偏光フィルタの光路への挿入および退避、左円偏光フィルタの光路への挿入および退避が可能とされる。すなわち、右円偏光フィルタを光路に挿入した場合、右円偏光フィルタを介した識別媒体100の撮像となり、ホログラム加工103によって形成されるホログラム像に含まれるホログラムコードの読み出しが行われる。また、左円偏光フィルタを光路に挿入した場合、左円偏光フィルタを介した識別媒体100の撮像となり、コード印刷図柄107のコードの読み取りが行われる。
【0048】
またこの場合、円偏光フィルタと読み取ったコードの内容との組み合わせに基づいた真贋の判定も可能となる。つまり、右円偏光フィルタ採用時のデコード内容と右円偏光フィルタ採用時のデコード内容が、予め定めた内容と一致するか否かを判定することで、識別媒体の真贋の判定が可能となる。
【0049】
この方法は、図4のシステムで実現することもできる。この場合、携帯電話205のカメラ208の前に配置する円偏光フィルタとして、左右の円偏光フィルタを用意し、また上記の方法を実行するプログラムを用意し、それをコード読み取りサーバ201において実行する。
【0050】
(製造方法)
図1の識別媒体100の製造方法の一例を説明する。まず、コレステリック液晶層102を図示しない形成用基板上に形成する。形成用基板上でコレステリック液晶層102を形成したら、ホログラム型を押し付け、ホログラム加工103を施す。次いで、この形成用基板からコレステリック液晶層102を剥がし、予め接着剤により一体化しておいた円偏光フィルタ層106にコレステリック液晶層102を熱プレスまたは接着により固定する。また、コレステリック液晶層102の露出した面(観察面)側に透明保護層101を接着する。
【0051】
他方で、裏面側に粘着層109を取り付けた基材フィルム層108上に、コード印刷図柄107を印刷したものを用意する。そして、コード印刷層107と直線偏光フィルタ層105が密着するように両者を熱プレスまたは接着により固定することで、図1に示す識別媒体100を得る。
【0052】
この方法によれば、透明保護層101、ホログラムが形成されたコレステリック液晶層102、円偏光フィルタ層106と積層された第1の部材と、粘着層109、基材フィルム層108と積層された第2の部材とを用意しておき、コード印刷図柄107の形成後に、第1の部材と第2の部材とを貼りあわせて識別媒体100を得、更にこの識別媒体100を対象物に貼り付ける作業が可能となる。このため、部品の製造ラインや物流ライン等において、オンデマンドでコードを印刷により形成し、このコードが印刷された識別媒体を対象物に貼り付ける作業が可能となる。これにより、本発明を利用した識別媒体を、例えば偽造防止機能を備えた履歴管理タグとして利用することができる。
【0053】
(2)第2の例
図8には、識別媒体600が示されている。なお、図1と同じ符号の部分は、図1の場合と同じである。識別媒体600は、円偏光フィルタ層106の非観察面側に、観察面側から金属反射層601、エンボス加工層602と積層されたホログラム反射層603を備えている。エンボス加工層602は、樹脂フィルムにホログラム像を構成するためのエンボス加工が施された層である。金属反射層601は、アルミ蒸着層等の光反射層であり、下地のエンボス加工層602の凹凸構造に倣った凹凸表面を有している。
【0054】
この構成によれば、金属反射層601とエンボス加工層602とによりホログラム反射層603が構成されている。このホログラム反射層603のホログラム像は、特定のデータを記号化したホログラムコードを含んでいる(他の図柄を含んでいてもよい)。ここでホログラムコードを転写箔で構成し、それを貼り付ける形態としてもよい。この技術に関しては、例えば特開平6−191525号公報に記載された技術を利用することができる。
【0055】
識別媒体600は、図5の読み取り装置300におけるコードの読み取りにおいて、円偏光フィルタ304を光軸上から退避させた状態において、ホログラム加工103のホログラムとホログラム反射層603のホログラムとが同時に撮像される。この際、ホログラム反射層603のホログラムコードがホログラム加工103のホログラムによってマスクされ、ホログラム反射層603のホログラムコードを選択的に読み取ることが困難となる。そして、右円偏光フィルタを介して当該識別媒体600を撮像すると、ホログラム加工103のホログラムが選択的に撮像され、左円偏光フィルタを介して当該識別媒体600を撮像すると、ホログラム反射層603のホログラムが選択的に撮像される。この場合も第1の例の場合と同様に、円偏光フィルタを介した撮像によって、コードを読み取ることができる。
【0056】
(その他)
粘着層109と基材フィルム層108に溶剤が侵入(浸透)し易いようにする溶剤進入経路を設け、さらにコード図柄印刷107の層やその下地に溶剤に触れると発色する材料を存在させてもよい。例えば、溶剤に触れると破れるマイクロカプセル中に発色剤や顕色剤を内包させ、このマイクロカプセルをコード図柄印刷107の層中に存在させる。この場合、溶剤を用いて粘着層109の粘着機能を低下させ、識別媒体100を不正に対象物から剥がそうとすると、粘着層109から溶剤が内部に侵入する。この結果、マイクロカプセルは破れ、コード印刷図柄107に加えて発色模様が観察されるようになる。これにより、溶剤を用いて剥がした識別媒体100の不正な再利用が防止される。上記の溶剤に触れると発色する技術としては、特開2008−055813号公報に記載されている技術を利用することができる。
【0057】
また上記の粘着層109および基材フィルム層108に溶剤が侵入し易いようにする溶剤進入経路を設けた構成において、溶剤で溶解する染料を含有するインクによりコード図柄印刷107を形成してもよい。この場合、溶剤で識別媒体100を対象物から剥がそうとすると、コード図柄印刷107の印刷内容が滲み、コードの読み取りができなくなる。すなわち、識別媒体100の不正な再利用ができなきなくなる。この技術としては、特開平10−250228号公報に記載されて技術が利用可能である。上記の溶剤で溶解する染料を含有するインクとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレートを58重量部、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレートを29重量部、有機溶剤溶解染料を8重量部、2,2−ジメトキン−2−フェニルアセトフェノンを5重量部により構成されるものを挙げることができる。
【0058】
(3)第3の例
(構成)
図9(A)には、識別媒体700を正面から見た状態が示されている。ここで、識別媒体700は、セパレータ(離型紙)701上に貼り付けられた状態が示されている。識別媒体700は、機械部品、電子部品、その他各種製品等(あるいはそのパッケージ)に貼り付けられて使用される。識別媒体700は、2次元コード表示702、2次元コード表示702に重ねて設けられたホログラム表示703を備えている。2次元コード表示は、例えば2次元バーコードであり、当該識別媒体が貼り付けられる対象物に係る各種の情報や当該対象物に関する情報を取得できるインターネットアドレス等の情報がコード化されて記憶されている。また、識別媒体700は、例えば製品名、製造メーカ、ロット番号、その他情報が印刷表示されたその他印刷表示704を備えている。
【0059】
図9(B)には、識別媒体700にセパレータ701を貼り付けた状態の断面構造が示されている。以下、識別媒体700の断面構造について説明する。識別媒体700は、基材紙712を基材としている。基材紙712の図の下面側には、粘着材料による粘着層711が設けられている。識別媒体700を対象物に貼り付ける際には、セパレータ701を粘着層711から剥がし、露出した粘着層711を対象物に接触させることで、対象物に識別媒体700を固定する。
【0060】
基材紙712の粘着層711が設けられた側と反対の側の面(図の上面)には、印刷により設けられた2次元コード表示702とその他印刷表示704を構成するインクの層が設けられている。2次元コード表示702の上には、光学的に透明な粘着層714が設けられ、その上には、直線偏光フィルタ層715と(λ/4)板716を積層した円偏光フィルタ層717が配置されている。
【0061】
円偏光フィルタ層717の上には、コレステリック液晶層718が設けられている。コレステリック液晶層718には、ホログラム表示703を行なうための型押加工が施されている。ここで、コレステリック液晶層718が選択反射する円偏光の旋回方向と、円偏光フィルタ層717を図の下から上に向けて透過する円偏光の旋回方向とが逆方向となるように設定されている。また、ホログラム表示703は、2次元コード表示702と重なる位置に形成されている。そして、コレステリック液晶層718の上には、TACフィルム等により構成される透明保護層719が設けられている。
【0062】
(光学機能)
以下の説明において、コレステリック液晶層718が右円偏光を選択反射し、円偏光フィルタ層717を図の下から上に向けて左円偏光が選択的に透過する設定であるとする。この場合、識別媒体700を直視すると、2次元コード表示702、ホログラム表示703、その他印刷表示704が視認される。この場合、ホログラム表示703が障害となり、2次元コード表示からのコードの読み取りは行えない。
【0063】
ここで、左円偏光フィルタを介して識別媒体700を観察すると、コレステリック液晶層718からの反射光が観察できない。他方で、2次元コード表示702からの反射光に含まれる左円偏光は、円偏光フィルタ層717を図の下から上に向けて透過し、更にこの左円偏光の透過光は、コレステリック液晶層718とビューアである左円偏光フィルタを透過する。このため、左円偏光フィルタを介した観察において、2次元コード表示が選択的に明瞭に観察できる。当然、この状況で読取装置を利用した2次元コード表示702の光学的な読み取りが可能となる。
【0064】
また、右円偏光フィルタを介して識別媒体700を観察すると、コレステリック液晶層718からの反射光が優先的に観察され、2次元コード表示702からの反射光は観察できない。これは、ビューアである右円偏光フィルタにより、2次元コード表示702からの左円偏光の反射光が遮断されるからである。また、この状態で識別媒体700を傾け、見る角度を変化させると、コレステリック液晶層718のカラーシフトが観察され、その色合いの変化による識別機能が得られる。
【0065】
(製造方法)
図9(C)に示すように、セパレータ701に貼り付けられた識別媒体700は、紙ラベル部720とホログラムラベル部730とで構成されている。この構成では、紙ラベル部720とホログラムラベル部730とを別に作り、粘着層714の粘着機能により、両者を合体させることで、識別媒体700を得る。
【0066】
図10には、複数の紙ラベル部720がリボン状のセパレータ701に貼り付けられ、テープ状にされた状態が示されている。図10(A)は、正面から見た様子であり、図10(B)は、ロール721に巻き取られた状態を示す側面図である。図11には、複数のホログラムラベル部730がリボン状のセパレータ731に貼り付けられ、テープ状にされた状態が示されている。図11(A)は、正面から見た様子であり、図11(B)は、ロール732に巻き取られた状態を示す側面図である。
【0067】
例えば、セパレータ731からホログラムラベル部730を剥がし、それを紙ラベル部720のホログラム表示部702(図9参照)に貼り付けることで、図9に示すセパレータ701に貼り付けられた状態の識別媒体700が得られる。
【0068】
(製造装置)
図12には、図9に示すセパレータ701に識別媒体700が貼り付けられた構成を有する識別ラベルを製造する識別ラベル製造装置の一例が示されている。図12には、識別ラベル製造装置750が示されている。識別ラベル製造装置750には、図10のロール721が装着されている。ロール721には、複数の紙ラベル部720(図9(C)参照)が貼り付けられたセパレータ701が巻き取られている。ここで、セパレータ701には、ミシン目が設けられており、後に簡単に分離が可能な構造とされている。複数の紙ラベル部720が貼り付けられたセパレータ701は、ロール721から巻き出され、ガイドロール751を経て、ガイドロール752に至る。ガイドロール752に対向して印刷手段である印刷ヘッド753が配置されており、紙ラベル部720に対する印刷が可能とされている。印刷ヘッド753において印刷可能な内容は、図9の2次元コード印刷702およびその他印刷表示704の一部または全部である。印刷ヘッド753としては、インクジェット方式のものを挙げることができる。
【0069】
他方で、識別ラベル製造装置750には、図11のロール732が装着されている。ロール732には、粘着層714の粘着力により、複数のホログラムラベル部730(図9(C)参照)が貼り付いたリボン状のセパレータ731が巻き取られている。上述したロール721からのセパレータ701の巻き出しに同期させて、ロール732からのセパレータ731の巻き出しが行なわれる。
【0070】
ロール732から巻き出されたホログラムラベル部730を有したセパレータ731は、対抗した一対のロールにより構成される貼り付けローラー754に送られ、そこで紙ラベル部720の2次元コード印刷702およびその他印刷表示704が行われている面と接触する。この際、図9(C)に示すように、ホログラムラベル730の粘着層714が紙ラベル部720の2次元コード印刷702の部分に接触する。ここで、貼り付けローラー754から受ける圧力により、ホログラムラベル730が紙ラベル部720に確実に貼り付けられる。なお、図9(C)には、図12のセパレータ731は図示されていない。この貼り付けは、粘着層714の粘着機能によって行われる。この際、粘着層714の材質に応じて熱や紫外光を照射し、粘着機能の発現を助長してもよい。ホログラムラベル730を紙ラベル部720側に貼り付けした後のセパレータ731は、巻き取りロール755に巻き取られる。
【0071】
こうして、貼り付けローラー754において、図9(B)に示す識別媒体700の複数が、セパレータ701に固定された状態が得られ、それが識別ラベル製造装置750の外部に出力される。ここで、セパレータ701には、個々の識別媒体700をセパレータ701ごと切り離すことができるようにミシン目が入れられており、簡単な作業でセパレータ701に貼り付けられた状態のラベル状の識別媒体700を得ることができる。
【0072】
図12に示す識別ラベル700は、紙ラベル部720に対して、印刷ヘッド735においてリアルタイムに印刷を行いつつ、その印刷内容の読み取りに識別性を持たせるホログラムラベル部730を形成することができる。この作業は、識別対象となる製品の製造現場や流通現場(例えば、出荷のための包装を行なう現場)において可能である。例えば、製品の出荷が行なわれる施設内において、顧客ごとにカスタマイズされた多様な仕様の製品毎に対応する情報を印刷ヘッド753から2次元コード表示702として印刷し、その上に識別性を持たせるためのホログラム表示703を形成する作業が可能となる。
【0073】
(その他の開示内容)
以下、本明細書中で開示されている内容を説明する。第1の開示内容は、読み取りを行う側から見て、ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、読み取りの対象となるコードが形成されたコード形成層とを順に備え、光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されていることを特徴とする識別媒体である。
【0074】
第1の開示内容によれば、円偏光フィルタを介さずに光学読み取り装置(例えば、バーコードリーダー)によって当該識別媒体からのデータの読み取りを行った場合に、光学読み取り装置は、コード層のコード画像(例えば、2次元バーコード)とコレステリック液晶層のホログラム像とを同時に検出する。この際、ホログラム像によりコード画像の読み取りが阻害されるので、光学読み取り装置で直接光学的な読み取りを行っただけでは、データの読み取りはできない。
【0075】
他方で、コレステリック液晶層が選択反射する旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介して、光学読み取り装置による読み取りを行う場合、コレステリック液晶層からの反射光が上記円偏光フィルタによって遮断されるので、光学読み取り装置はコレステリック液晶層のホログラム像を検出しない。このため、コード形成層のコードの情報を検出するS/Nが高くなり、当該コードの検出および当該コードのデコードが可能となる。つまり、コードの選択的な読み取りが可能となる。
【0076】
コレステリック液晶層の反射光は、左右どちらかの旋回方向の円偏光であり、円偏光フィルタによりその反射光を遮断した場合の遮断性(透過されない特性)が極めて高い。また、円偏光であるので、円偏光フィルタを回転させてもこの逆旋回方向の円偏光を遮断する特性は変化しない。このため、円偏光フィルタを用いない場合におけるコレステリック液晶層のホログラム像によるコード形成層のコードの読み取りを阻害する機能と、コレステリック液晶層からの反射光を円偏光フィルタで遮断することによる上記コード形成層のコード情報を光学的に検出する際の検出S/Nの確保とを両立できる。
【0077】
また、コレステリック液晶層へのホログラム加工には、ノウハウが必要であり、ホログラム像の内容が分かっていても簡単には再現できない。また、コレステリック液晶層は、特定の中心波長を選択反射する光学特性を有しているので、感光材料を用いたホログラム干渉構造(ホログラムを構成するエンボス構造)のコンタクトコピーが簡単には行えず、ホログラム型を再現することが困難であるという偽造困難性も有している。これは、コレステリック液晶層から選択反射される反射光のスペクトルと同じ感光特性を有する感光材料を用いないと、コンタクトコピーではホログラム像の色合いや仔細な画像情報の再現性が得られないことに起因する。
【0078】
この技術によれば、見た目では、ホログラム像に邪魔されてコードが明瞭に見えない状態であるが、使用しているコレステリック液晶が選択反射する円偏光と逆旋回方向の円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタを介してコードの光学的な検出を行うと、ホログラム像の影響が排除されて、コードを読み取ることができる識別媒体が提供される。
【0079】
また、この技術によれば、以下に述べるような偽造防止効果が得られる。まず、コードを偽装してもコレステリック液晶層のホログラムを偽造するのが困難であるので、コードが同じでも見た目で同じものを製造(偽造)することが困難となる。また、例えばコレステリック液晶のホログラムではなく、通常のホログラムをコードに重ねたものを偽造し、見た目を精巧に似せた偽造品を製造しても、円偏光フィルタを介した観察で、コードのみが鮮明に見える、あるいはコードの像が弱くなり、逆にホログラムが鮮明に浮かび上がって見える、といった視覚効果は得られないので、偽造を見破ることが容易となる。
【0080】
なお、光学読み取り装置の読み取り形式は、光学的にコードを読み取る形式であれば限定されず、例えば、CCD等の撮像装置による画像を得る形式、光学受光センサによる直接反射光や散乱反射光の検出による形式、受光センサアレイによる反射光のパターンを検出する形式等が挙げられる。
【0081】
第2の開示内容は、第1の開示内容において、前記コレステリック液晶層の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、前記第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向の円偏光を前記コレステリック液晶層に向かって選択的に透過する光学機能層が前記コレステリック液晶層と前記コード形成層との間に配置されていることを特徴とする。
【0082】
第2の開示内容によれば、コード形成層からの反射光が光学機能層を透過した後にコレステリック液晶層の非観察面側(光学的な読み取りを行う側と反対の面側)から入射する。この入射光は、光学機能層の機能によりコレステリック液晶層が選択反射する円偏光の旋回方向(第1の旋回方向)と逆の第2の旋回方向の円偏光となる。よって、第1の旋回方向の円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタを介して当該識別媒体を観察した場合に、この円偏光フィルタによって第2の旋回方向の円偏光が遮断されるので、コードが見えず、コレステリック液晶層からのホログラム像が鮮明に視認される。よって、ホログラム像を用いた肉眼での識別性が高くなる。これは光学読み取り装置を用いた場合も同じであり、ホログラム像の検出による識別性が高くなる。
【0083】
仮に、第2の開示内容における光学機能層がない場合、第1の旋回方向を選択的に透過する円偏光フィルタを介した観察において、コード形成層から反射されるランダム光成分の内の第1の旋回方向の円偏光成分がコレステリック液晶層からの反射光に混じって、円偏光フィルタを透過する。このため、ホログラム像だけを鮮明に視認することはできず、コードも同時に視認される。これは、光学読み取り装置を用いた読み取りにおいても同じである。よって、コレステリック液晶層のホログラム像単独の視認性や画像読み取り装置による読み取り精度が低下する。
【0084】
第3の開示内容は、第1または第2の開示において、前記コードが、バーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコードから選ばれた一または複数により構成されることを特徴とする。コードは、各種の方式や規格のものが知られているが(あるいは提案されているが)、本発明では、それらの何れでも利用することができる。ここで、OCRコードは、文字で表示されたコードであり、また、カラーコードは複数の色彩の組み合わせで構成したコードである。これらのコードは、複数種類を組み合わせて利用することもできる。コードの読み取りは、反射光の明暗を0、1(Hi状態、Lo状態)に対応させてデジタル信号として検出する方法、携帯電話のカメラ機能を用いた2次元バーコードの読み取りのように撮像装置を用いてコードの模様を画像として取り込み、それに基づき画像処理によりコードをデコードする方法が挙げられる。
【0085】
第4の開示内容は、第3の開示内容において、前記コードが肉眼では認識し難い大きさを有することを特徴とする。第4の開示内容では、バーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコード等のコードを肉眼では認識し難い大きさとし、拡大光学系を介して拡大することで読み取ることが可能な形態としている。こうすることで、直視した場合にコレステリック液晶層のホログラム像の見え方が支配的となり、肉眼でコードが視認し難い識別媒体が提供される。
【0086】
第5の開示内容は、第1〜第4の開示内容のいずれか一つにおいて、前記ホログラム像が前記コード形成層に形成された前記コードとは別のコードを構成していることを特徴とする。第5に記載の発明によれば、コード形成層に形成されたコードに加えて、コレステリック液晶層のホログラム像を利用してのコード(ホログラムコード)も用いられるので、それらの組み合わせにより扱うデータ量を多くできる。また、一方のデータのみの読み取り、両方のデータの読み取りの組み合わせによって、より高い識別性を得ることができる。
【0087】
また、第2の開示内容を採用した場合、右円偏光フィルタと左円偏光フィルタとで、コード形成層からの反射光とコレステリック液晶層からの反射光とを明確に分離して検出することができる。このため、第1の円偏光フィルタを利用することで、コレステリック液晶層からの反射光を選択的に検出し、それによりホログラムコードを選択的に読み取ることができる。また、第2の円偏光フィルタを利用することで、コード形成層からの反射光を選択的に検出し、それによりコード形成層のコード情報を選択的に読み取りことができる。
【0088】
第6の開示内容は、読み取りを行う側から見て、ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、読み取りの対象となるコードが形成されたコード形成層とを備え、光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されている識別媒体からデータを読み取る方法であって、光学読み取り装置により前記第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介して前記コードの選択的な読み取りが行われることを特徴とするデータの読み取り方法である。
【0089】
第6の開示内容によれば、第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介さない場合は、コードが読み取れず、第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介した場合に、コードが読み取れるデータの読み取り方法が提供される。すなわち、円偏光フィルタを用いないとコレステリック液晶層のホログラム像とコードが同時に見えるので、コードの読み取りが阻害される。また、第1の旋回方向の円偏光を透過する円偏光フィルタを介して当該識別媒体を観察した場合はコレステリック液晶層からの反射光しか見えないので、やはりコードの読み取りが行えない。このように、特定の旋回方向を透過する円偏光フィルタを用いないとコードの読み取りが行えない技術が提供される。
【0090】
第7の開示内容は、第6の開示内容において、光学読み取り装置により前記コレステリック液晶層の前記ホログラムと前記コードとの同時読み取りが行われ、前記コードの選択的な読み取りおよび前記ホログラムと前記コードとの同時読み取りに基づき、前記識別媒体の真贋の判定が行われることを特徴とする。
【0091】
第8の開示内容は、第1〜第5の開示内容のいずれか一つに記載の識別媒体の真贋を判定する装置であって、前記第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介して前記コードを選択的に読み取る読み取り手段を備えることを特徴とする識別装置である。
【0092】
第9の開示内容は、第1〜第5の開示内容のいずれか一つに記載の識別媒体を製造する方法であって、前記コード形成層を印刷により形成する工程と、前記コード形成層と前記コレステリック液晶層とを一体化する工程とを備えることを特徴とする識別媒体の製造方法である。
【0093】
第10の開示内容は、第1〜第5の開示内容のいずれか一つに記載の識別媒体を製造する識別媒体の製造装置であって、前記コード形成層の一部または全部が形成可能な第1のラベル部が貼り付けられた第1のセパレータを巻き取った第1のロールと、前記コレステリック液晶層を含む第2のラベル部が貼り付けられた第2のセパレータを巻き取った第2のロールと、前記コード形成層を印刷する印刷手段と、前記印刷手段により印刷された前記コード形成層に前記第2のラベル部を貼り付けする貼り付け手段とを備えることを特徴とする識別媒体の製造装置である。
【0094】
第1の開示内容によれば、コレステリック液晶層のホログラムによって見た目で同じような外観にした偽造品を見破ることが容易な識別媒体が提供される。また、それと同時に、コレステリック液晶層が特定の旋回方向の円偏光を選択的に反射し、それと逆方向の円偏光を透過する性質を利用した円偏光フィルタを介すことで、コレステリック液晶層のホログラムの影響を受けずに高い精度でコードの読み取りが行える識別媒体が提供される。
【0095】
第2の開示内容によれば、円偏光フィルタを介した観察において、コード形成層のコード図柄が見えず、コレステリック液晶層のホログラムが鮮明に見える観察が可能となる。
【0096】
第3の開示内容によれば、多様なコード規格に適合した識別媒体が得られる。
【0097】
第4の開示内容によれば、コードを肉眼で認識し難くした識別媒体が提供される。
【0098】
第5の開示内容によれば、更に多くのコード情報を扱うことができ、またより高い識別機能が得られる識別媒体が提供される。
【0099】
第6の開示内容によれば、第1の開示内容の優位性を有する識別媒体からのデータの読み取り方法が提供される。
【0100】
第7の開示内容によれば、更に多くのコード情報を扱うことができ、またより高い識別機能が得られるデータの読み取り方法が提供される。
【0101】
第8の開示内容によれば、第1〜第5の開示内容のいずれか一つに記載の発明の優位性を備えた識別媒体の識別装置が提供される。
【0102】
第9の開示内容によれば、第1〜第5の開示内容のいずれか一つに記載の発明の優位性を備えた識別媒体を製造する方法が提供される。
【0103】
第10の開示内容によれば、コード形成層を印刷により形成しつつ、その上にコード形成層の読み取りに識別性を与えるコレステリック液晶層のラベル部を貼り付けすることができる識別媒体の製造装置が提供される。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、真贋の識別を行うための技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0105】
100…識別媒体、101…透明保護層、102…コレステリック液晶層、103…ホログラム加工、104…λ/4板、105…直線偏光フィルタ層、106…円偏光フィルタ層、107…コード印刷図柄、108…基材フィルム層、109…粘着層、300…読み取り装置、303…ライト、304…円偏光フィルタ、305…ステージ、320…拡大レンズ、700…識別媒体、701…セパレータ(離型紙)、702…2次元コード表示、703…ホログラム表示、704…その他印刷表示、711…粘着層、712…基材紙、714…粘着層、715…直線偏光フィルタ層、716…λ/4板、717…円偏光フィルタ層、718…コレステリック液晶層、719…透明保護層、720…紙ラベル部、721…ロール、730…ホログラムラベル部、731…セパレータ、732…ロール、750…識別ラベル製造装置、751…ガイドロール、752…ガイドロール、753…印刷ヘッド、754…貼り付けローラー、755…巻き取りロール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
読み取りを行う側から見て、
ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、
読み取りを行う側から見て、λ/4板と直線偏光フィルタ層とが積層された構造を有し、前記コレステリック液晶層の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、前記第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向の円偏光を前記コレステリック液晶層に向かって選択的に透過する機能を有する光学機能層と、
読み取りの対象となるバーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコードから選ばれた一または複数により構成されるコードが形成されたコード形成層と
を順に備え、
光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されている識別媒体の製造方法であって、
前記コード形成層を印刷により形成する工程と、
前記コード形成層と前記コレステリック液晶層とを一体化する工程と
を備えることを特徴とする識別媒体の製造方法。
【請求項2】
読み取りを行う側から見て、
ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、
読み取りを行う側から見て、λ/4板と直線偏光フィルタ層とが積層された構造を有し、前記コレステリック液晶層の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、前記第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向の円偏光を前記コレステリック液晶層に向かって選択的に透過する機能を有する光学機能層と、
読み取りの対象となるバーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコードから選ばれた一または複数により構成されるコードが形成されたコード形成層と
を順に備え、
光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されている識別媒体の製造装置であって、
前記コード形成層の一部または全部が形成可能な第1のラベル部が貼り付けられた第1のセパレータを巻き取った第1のロールと、
前記コレステリック液晶層を含む第2のラベル部が貼り付けられた第2のセパレータを巻き取った第2のロールと、
前記コード形成層を印刷する印刷手段と、
前記印刷手段により印刷された前記コード形成層に前記第2のラベル部を貼り付けする貼り付け手段と
を備えることを特徴とする識別媒体の製造装置。
【請求項1】
読み取りを行う側から見て、
ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、
読み取りを行う側から見て、λ/4板と直線偏光フィルタ層とが積層された構造を有し、前記コレステリック液晶層の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、前記第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向の円偏光を前記コレステリック液晶層に向かって選択的に透過する機能を有する光学機能層と、
読み取りの対象となるバーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコードから選ばれた一または複数により構成されるコードが形成されたコード形成層と
を順に備え、
光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されている識別媒体の製造方法であって、
前記コード形成層を印刷により形成する工程と、
前記コード形成層と前記コレステリック液晶層とを一体化する工程と
を備えることを特徴とする識別媒体の製造方法。
【請求項2】
読み取りを行う側から見て、
ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、
読み取りを行う側から見て、λ/4板と直線偏光フィルタ層とが積層された構造を有し、前記コレステリック液晶層の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、前記第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向の円偏光を前記コレステリック液晶層に向かって選択的に透過する機能を有する光学機能層と、
読み取りの対象となるバーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコードから選ばれた一または複数により構成されるコードが形成されたコード形成層と
を順に備え、
光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されている識別媒体の製造装置であって、
前記コード形成層の一部または全部が形成可能な第1のラベル部が貼り付けられた第1のセパレータを巻き取った第1のロールと、
前記コレステリック液晶層を含む第2のラベル部が貼り付けられた第2のセパレータを巻き取った第2のロールと、
前記コード形成層を印刷する印刷手段と、
前記印刷手段により印刷された前記コード形成層に前記第2のラベル部を貼り付けする貼り付け手段と
を備えることを特徴とする識別媒体の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−32771(P2012−32771A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67432(P2011−67432)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【分割の表示】特願2010−249422(P2010−249422)の分割
【原出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【分割の表示】特願2010−249422(P2010−249422)の分割
【原出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
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