説明

識別板止め具

【課題】商品情報を持っている識別板と識別板を取り付けるための止め具において、取り付けが簡易かつ確実に取り付けられ、取り付けた後、識別板が商品から外れないため、商品の管理および偽装ができないようにすることができる識別板止め具を提供し、その製造を簡易および安価に提供する。
【解決手段】貫通孔を有した識別板4を取り付ける止め具において、止め具が雄部2と雌部3とそれらを繋ぐバンドから構成され、雄部2には識別板4を装着するための係止部2f、2gを設け、雄部2と雌部3はそれぞれ、結合部2dと結合爪3c、3dによって係合され、識別板4を係止部2f、2gによる係止と、雄部2と雌部3による狭持によって、固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品の管理などに使用する識別板とそれを取り付けるための止め具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年遺伝子組み換え作物の登場や有機農産物への関心の高まり、産地偽装問題などの発生に伴って、食品分野でのトレーサビリティ(蟹などの魚介類や果物などの原産地や加工地、加工時間などを追跡確認できるシステム)が注目されている。トレーサビリティを実現するために生産段階から廃棄段階まで追跡可能なICタグなどの識別板(以下、ICタグ)が必要となる。
【0003】
消費者は商品に取り付けられたICタグの情報を読み取ることで、商品の捕獲や生産、加工の場所、日時、担当者など、商品に係わる情報を得ることが出来、安心して商品を購入、消費することができる。また、商品に取り付けられたICタグにより生産者側はデータによる商品の管理が容易となる。
【0004】
消費者側、生産者側の両観点から必要不可欠になりつつあるICタグではあるが、その取り付けには様々な取り付け方法が提案されている。
【0005】
例えば特許文献1の発明は、止め具の折れ曲がり部に連結部を介してICタグを一体成形によって連結したものである。しかし、ICタグが分離し易く、食品などの様々な商品に利用することができない。
【0006】
特許文献2の発明は、ICタグをバンドに埋め込むものである。ICタグとバンドが分離しにくくなっているが、ICタグをバンドに埋め込むための製造過程が複雑であり、且つ製造コストが非常に掛かってしまう。また、射出圧、高熱に耐えることのできるICタグは高価で、コストがより掛かってしまう。更にバンドにICタグを埋め込むことで、バンドの柔軟性が損なわれてしまう。
【0007】
特許文献3の発明は、上記バンドの柔軟性の問題を解決するためのものである。ICタグをバンドに熱収縮チューブを用いて一体化する。しかし、バンドにICタグが取り付けられることには変わりなく、バンドの柔軟性損失を解消したとはいえない。また、特許文献3の発明も製造過程が複雑であり、製造コストが掛かってしまう問題は同様である。
【0008】
識別板を取り付ける止め具の問題点は第1に識別板が、識別板とバンドの一体化の問題と、バンドの柔軟性損失の問題によって、商品から分離してしまうことである。識別板が外れてしまうと商品の管理が出来ず、また偽造も容易に出来てしまう。
【0009】
第2に、上記問題点を解決するための製造にコストと手間が掛かることである。識別板は商品一つ一つに取り付けなければならず、識別板と取り付けのための止め具は大量にかつ安価に生産できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−190173号公報
【特許文献2】特開2007−8498号公報
【特許文献3】特開2008−33706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、取り付けバンドと識別板が別々に製造され、両者が物理的に固定され、またバンドが柔軟性を失わずに様々な商品への取り付けが可能となる識別板止め具を実現することにある。さらに前述の目的を果たしつつ、大量に生産される識別板止め具の製造を容易かつ低コストにすることである。併せて封緘機能も有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明に係る識別板止め具は、雄部とバンド部と雌部をこの順序で熱可塑性樹脂によって一体的に成形し、貫通孔を備えた識別板を前記雄部と前記雌部の間に狭持して一体化する止め具であって、前記雄部は、皿状台板と該皿状台板の雌部との合面側の中央部にキノコ状を模した突出部と、該突出部の周囲であって等距離に配置された複数の係止部を設け、前記雌部は、前記雄部の皿状台板と合面を持つ皿状台板と、前記突出部が挿嵌される挿入孔と、挿入孔の内部に少なくとも3つの係合爪を設け、前記係止部を前記識別板の貫通孔の縁に係止し、前記識別板を固定し、前記係合爪を前記突出部に形成された係合部の下端と係合するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成により、識別板を止め具の雄部に取り付けることができ、且つ識別板は係止部による係止と、雄部と雌部に狭持されるため、外れることがない。また、バンド部が柔軟性を失わないため、様々な商品に取り付けることができる。さらに、識別板の装着が容易であり、製造コストの削減、及び作業の簡略化が図れる。
【0014】
加えて、本発明の識別板止め具は雄部の係合部と雌部の係合爪の係合は外すことが難しく、識別板を外すには止め具を破壊するしかなく、従って本発明に係る止め具は封緘具としての機能も有している。
【0015】
また本発明の止め具において、前記雌部は挿入孔の外側に溝を設け、前記溝は前記雄部に設けられた係止部を覆い、係止部を遮蔽するように構成され、前記雄部の突出部は下から支柱と係合部と空間閉鎖部の順で形成され、前記空間閉鎖部は前記挿入孔よりも小さく、前記支柱よりも大きく形成され、係合した前記係合爪を略遮蔽するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成により、識別板の係止、及び雄部と雌部の係合がそれぞれ遮蔽、略遮蔽されることで、より識別板を外すことが難しくなる。一度止め具を取り付ければ、識別板は止め具を破壊しなければ外れることがなく、商品を安全に管理することができ、また、封緘機能も備えている。
【0017】
さらに本発明の止め具において、前記止め具は前記係止部を前記雄部又は雌部のどちらか一方に2つ以上設け、前記溝を前記係止部が設けられていない前記雄部又は前記雌部に設け、前記係止部は前記識別板と係止することを特徴とする。
【0018】
最後に本発明の止め具において、前記識別板は平板状に形成され、貫通孔を備え、前記貫通孔の縁が前記係止部と係止するように構成され、内部にICチップとアンテナを有し、または、前記識別板の表裏面は文字や記号を表示できるよう形成される、もしくはその両方を特徴とする。
【0019】
この構成により、本発明の識別板止め具はさまざまな形で商品の情報を提示することができる。ICチップによる管理だけではなく、識別板の表裏に形成された文字や記号によ
り、商品の情報を目視のみで確認することも可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1に識別板の固定が、止め具の雄部に設けられた係止部で止め具に固定され、さらに止め具を取り付けた際には止め具の雄部、雌部によって狭持されるため二重の固定となり、識別板が商品から外れない止め具を提供できる。
【0021】
第2に識別板を係止する係止部が外部から完全に遮蔽された状態のため、係止部を操作し識別板を外すことができない。また、雄部の係合部と係合している雌部の係合爪が、雄部の空間閉鎖部により略遮蔽しており、係合を外すことが難しい。
【0022】
以上のことから、識別板を改竄目的で交換しようとしても、止め具を破壊するしか、識別板を外す方法はなく、商品の情報の偽造などを防ぐことができる。
【0023】
第3に止め具の雄部、又は雌部に係止部を設けたことにより、バンド部は本来の動作を損なわずに動作することが出来る。そのため、対象物にしっかりと取り付けることができ、また、バンドの長さを対象物に合わせた長さにすれば、どのような対象物にも取り付けることができる。また、バンドを商品の周囲に2回以上巻き付けて締め付けを確実にすることができる。
【0024】
最後に識別板と止め具を別々に製造した後、各々を装着する工程が非常に単純な作業で装着できるため、作業の簡略化を達成できる。また、装着の際に別途収縮チューブや接着材などを必要としないため、従来の装着方法とくらべコストダウンを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る実施の形態の止め具を示した平面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の止め具を示した背面図(A)とバンド部のII−IIの断面図(B)である。
【図3】本発明に係る実施の形態の止め具の雄部(III−III)を示した側面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の止め具の雌部(IV−IV)を示した側面図である。
【図5】本発明に係る実施の形態の止め具の雌部のV−Vの断面図である。
【図6】本発明に係る実施の形態の識別板を示した平面図である。
【図7】本発明に係る実施の形態の止め具に識別板を装着した状態を示した断面図である。
【図8】本発明に係る実施の形態の止め具に識別板を装着し、雄部を雌部に挿嵌した状態を示した断面図である。
【図9】本発明に係る実施の形態の止め具を実際に商品に取り付けた図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態の止め具について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
本発明は止め具1と、貫通孔4cを有し、ICタグを内蔵した識別板からなる。
【0028】
止め具1は、図1で示すように雄部2とバンド部5と雌部3の順に合成樹脂素材(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の工業用樹脂)で一体成形される。そのため、適度な柔軟性を持ち、止め具1を取り付けの際、商品にしっかりと密着させることができる。
【0029】
バンド部5は、図2(B)で示すように、その断面は全体が平板状で中央にかまぼこ型の突起5aが突出した形状である。突起5aはバンド部5に適度な柔軟性を持ったまま、使用中にバンド部5が大きく変形することがないように補強する役割をもつ。また突起5aは一方向へのバンド部5の曲げを実現するため、これを表側にすることにより、取り付けの際に逆向きの取り付けを防止する。
【0030】
雄部2は、図3で示すように、皿状の台板2a、キノコ状を模した突出部2b、その周りに識別板4を装着する係止部2f、及び2gを有する。係止部2f、2gは識別板を装着するために少なくとも2つ設ける。
【0031】
突出部2bは空間閉鎖部2cと係合部2d、支柱2eを有する。円板状の空間閉鎖部2cの直径は、図4で示す、雌部3の挿入孔3bの直径よりも小さく、支柱2eの直径より大きい。係合部2dの直径は支柱2eの直径よりも太く、雌部3の挿入孔3bの直径と略等しい、又は一回り小さい。
【0032】
係止部2f、2gは台板2aに垂直方向に設けられる。それぞれ係止部2f、2gは、図3で示すように、雄部の中心からみて、外側に突出した角2f1、2g1を有する。角2f1、2g1の下端と台板2aとの長さ2hは、図7から分かるように識別板4の厚みとほぼ同等の高さを有している。
【0033】
雌部3は、図1及び図4で示すように、皿状の台板3a、中心に挿入孔3bとその内壁に結合爪3c、3d、3eと挿入孔3bの外側に円環状の溝3fを有する。挿入孔3bは台板3aの中心に位置し、台板3aを貫通している。
【0034】
係合爪3c、3d、3eの先端の内周は雄部2の支柱2eの外周よりも大きく、雄部2の係合部2dの外周よりも小さい。係合爪3c、3d、3eは、図5で示すように、断面が釣針状の形状を有している。この係合爪を少なくとも3つ設けることで、係合状態がバランスして外れにくくなる。
【0035】
溝3dは雌部に円環状に設けられ、図5で示すように、断面が雄部2の係止部2f、2gを覆う形状をしており、図8で示すように止め具を挿嵌した際に係止部2f、2gを覆い、外部との接触を防いでいる。
【0036】
識別板4は平板状に形成され、図6で示すように、識別板4は内部にICチップ4aとアンテナ4bと中心部に貫通孔4cを有している。雄部2の係止部2f、2gの角2f1、2g1が貫通孔4cの縁に係止する。
【0037】
実施例では海産物(蟹のハサミの付け根のずれ落ちない位置など)に取り付けを想定しており、その場合止め具1の全体の長さを80mmから120mm、雄部2及び雌部3の直径を10mmから15mm、バンド5の厚さを0.5mmから1.5mmとし、雄部2と雌部3を係合した中心部の高さを5mmから10mmとした。識別板4は海産物に取り付けを行うために最適な大きさ形状として、直径を25mmから30mmの円形、厚さを1.5mmから2mmの円形とした。また、貫通孔4cの直径を5mmから10mmの円形とした。
【0038】
実際に止め具1を取り付ける手順は、先ず図7で示すように、識別板4の貫通孔4cの縁を雄部2の係止部2f、2gに係止する。次に図8で示すように識別板4を装着した雄部2を雌部3に挿嵌する。そして、雄部2の係合部2dと雌部3の係合爪3c、3d、3eが係合される。
【0039】
上記係合状態の結果、図8で示すように、雄部2の空間閉鎖部2cが係合部2dと係合爪3c、3d、3eの係合を外部から略遮蔽する蓋の役割をするため、係合部をいじることが難しい。また、雄部2の空間閉鎖部2cと雌部3の挿入孔3bの隙間に針金のような細いものを差し込んでも係合爪3c、3d、3eを外側に同時に広げなければ、係合を解放することができない、いわゆる封緘状態を構成している。
【0040】
図8で示すように、雄部2の係止部2f、2gから外側の部分と雌部3の溝3fから外側の部分がそれぞれ識別板4を狭持している。また、雄部2に設けた識別板4を係止する係止部2f、2gは外部から遮蔽された状態のため、識別板4を係止している係止部2f、2gを外部から動作させることはできない。
【0041】
つまり、識別板4を止め具1から外すには止め具1を破壊するしかなく、止め具1は封緘具としての役割も果たす。
【0042】
尚、実施例では係止部2f、2gを雄部2に設け、溝3fを雌部3に設けたが、それぞれを互いにもう一方に設けることもできる。
【0043】
雄部2、雌部3の形状及び、識別板4の形状は貫通孔4cさえ有すならば、円形である必要はなく、多角形でも、台形でも、その他使用者が識別板4毎に区別できる形状で同様に使用できる。また、突出部2b、挿入孔3b、貫通孔4cも同様に円形である必要はない。
【0044】
識別板4の表裏面に文字や記号を表示(油性ペン等で直接記入したり、表裏面に産地などを示す文字を金型成形したり、あるいは時には刻印で熱成形したり等)して、使用することができる。このことから商品管理だけではなく、もっと単純に、例えば値札や商品名を記載し、店頭に並べるなどといった使い方も可能になる。
【0045】
実際の作業において、図7の状態、つまり止め具1と識別板4と係合した状態のものを大量に生産しておけば、その後の作業が雄部と雌部を合わせて押圧するだけになるため、作業の簡略化ができる。
【0046】
また簡単な手作業で識別板4と止め具1を一体化することができ、その結果止め具の製造工程を簡略化でき、さらに止め具の製造コストを大幅に抑えることができる。
【0047】
図9は実際に本発明を商品に取り付けた例としてカニ9のハサミの部分に止め具1を前記のような方法で取り付けた図を示す。魚に取り付ける場合は取り付け位置を尾ビレなどにしてもよい。またバンドでまとめることができるため、農作物などにも使用できる。このとき、バンドの長さや識別板の大きさを、農作物に止めたときにずれ落ちない値にする。バンドの長さや識別板の大きさを変えることにより、多種多様に使用できる。
【0048】
尚、実施例として上げた数値は図9を元に算出した数値であって、実施例以外の商品に取り付ける場合は挙げた数値が取り付ける商品によって変わる。
【符号の説明】
【0049】
1 止め具1
2 雄部2
3 雌部3
4 識別板4
5 バンド5
9 カニ9
2a 台板2a
2b 突出部2b
2c 空間閉鎖部2c
2d 結合部2d
2e 支柱2e
2f 係止部2f
2g 係止部2g
3a 台板3a
3b 挿入孔3b
3c 結合爪3c
3d 結合爪3d
3e 結合爪3e
3f 溝3f
4a ICチップ4a
4b アンテナ4b
4c 貫通孔4c
5a バンド厚み5a

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄部とバンド部と雌部をこの順序で熱可塑性樹脂によって一体的に成形し、貫通孔を備えた識別板を前記雄部と前記雌部の間に狭持して一体化する止め具であって、
前記雄部は、皿状台板と該皿状台板の雌部との合面側の中央部にキノコ状を模した突出部と、該突出部の周囲であって等距離に配置された複数の係止部を設け、
前記雌部は、前記雄部の皿状台板と合面を持つ皿状台板と、前記突出部が挿嵌される挿入孔と、挿入孔の内部に少なくとも3つの係合爪を設け、
前記係止部を前記識別板の貫通孔の縁に係止し、前記識別板を固定し、
前記係合爪を前記突出部に形成された係合部の下端と係合するように構成されていることを特徴とする止め具。
【請求項2】
前記雌部は挿入孔の外側に溝を設け、
前記溝は前記雄部に設けられた係止部を覆い、係止部を遮蔽するように構成され、
前記雄部の突出部は下から支柱と係合部と空間閉鎖部の順で形成され、
前記空間閉鎖部は前記挿入孔よりも小さく、前記支柱よりも大きく形成され、係合した前記係合爪を略遮蔽するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の止め具。
【請求項3】
前記止め具は前記係止部を前記雄部又は雌部のどちらか一方に2つ以上設け、
前記溝を前記係止部が設けられていない前記雄部又は前記雌部に設け、
前記係止部は前記識別板と係止することを特徴とする請求項1または2記載の止め具。
【請求項4】
前記識別板は平板状に形成され、貫通孔を備え、前記貫通孔の縁が前記係止部と係止するように構成され、
内部にICチップとアンテナを有し、
または、前記識別板の表裏面は文字や記号を表示できるよう形成される、
もしくはその両方を特徴とする請求項1乃至3記載の止め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−61212(P2012−61212A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209186(P2010−209186)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000127938)株式会社エスケイ工機 (20)
【Fターム(参考)】