説明

識別装置及び識別方法

【課題】登録時の画像と認証時の画像との位置や姿勢が異なっていても高精度に識別対象者を識別できるようにする。
【解決手段】登録者の被写体の血管画像に基づいて、前記被写体の位置及び姿勢によらずに特徴付けられる、前記登録者の特徴量を記憶する記憶部と、識別対象者の被写体の血管画像を撮影する撮影部と、前記識別対象者の血管画像に基づいて前記識別対象者の特徴量を抽出し、前記登録者の特徴量と前記識別対象者の特徴量とを照合することによって前記識別対象者を識別する識別部と、を備える識別装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別装置及び識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影した静脈画像等に基づいて認証を行うシステムが開発されている。このようなシス
テムにおいては、撮影した画像とテンプレートを比較して認証を行うテンプレート比較方
式が一般的である。テンプレート比較方式においては認証精度を高めるために正確に位置
合わせする必要がある。例えば、特許文献1には、認証時に指の輪郭から回転補正を行う
ことが示されている。また、特許文献2には、登録時に複数の角度のテンプレートを保存
しておき、それぞれに対して認証処理をすることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−87363号公報
【特許文献2】特開2007−287080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1または特許文献2に記載の方法には、以下のように正確に補
正ができない場合があるという問題がある。
【0005】
例えば、特許文献1の手法であると、指の先端まで撮影されていない場合、輪郭だけで
は指の向きを判別できないので正確に補正ができない。また、指の太さや形状が異なる場
合、正確にテンプレートとマッチングできない。さらに、複数の指が画像内に存在する場
合にもマッチングすることができない。また、特許文献2の手法であると、撮影された画
像とテンプレートとの間で回転以外に位置シフトが発生した場合、合致するテンプレート
が存在しなくなる。登録する角度が少ない場合、認証時の角度とズレが生じて認証精度が
低下する。
よって、登録時の画像と認証時の画像との位置や方向が異なっていても高精度に認証で
きるようにすることが望ましい。ここで、認証とは、登録された画像等と認証時に得られ
た画像等を照合することによって、認証(識別)対象者が登録者であるか否かを識別し、
識別結果に基づいて、例えば電子錠等の制御対象を制御することである。したがって、認
証の精度は識別の精度に依存するので、認証においては、登録時の画像と認証時の画像と
で撮影された指の位置や姿勢が異なっていても高精度に識別できるようにすることが望ま
しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、登録時の画像と認証時の画像
との位置や姿勢が異なっていても高精度に識別対象者を識別できるようにすることを目的
とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、
登録者の被写体の血管画像に基づいて、前記被写体の位置及び姿勢によらずに特徴付け
られる、前記登録者の特徴量を記憶する記憶部と、
識別対象者の被写体の血管画像を撮影する撮影部と、
前記識別対象者の血管画像に基づいて前記識別対象者の特徴量を抽出し、前記登録者の
特徴量と前記識別対象者の特徴量とを照合することによって前記識別対象者を識別する識
別部と、
を備える識別装置である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態における静脈認証装置1のブロック図である。
【図2】登録処理のフローチャートである。
【図3】特徴量抽出処理を説明するフローチャートである。
【図4】特徴点の一例を示す図である。
【図5】得られた輝度勾配の一例を示す図である。
【図6】輝度勾配のヒストグラムの一例を示す図である。
【図7】図7Aは、基準方向に座標軸を合わせたときの輝度勾配の一例を示す図、図7Bは図7Aの輝度勾配に基づいて求めたベクトルの一例を示す図である。
【図8】特徴量のデータベースの例を示す表である。
【図9】認証処理のフローチャートである。
【図10】認証処理の概念を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
登録者の被写体の血管画像に基づいて、前記被写体の位置及び姿勢によらずに特徴付け
られる、前記登録者の特徴量を記憶する記憶部と、
識別対象者の被写体の血管画像を撮影する撮影部と、
前記識別対象者の血管画像に基づいて前記識別対象者の特徴量を抽出し、前記登録者の
特徴量と前記識別対象者の特徴量とを照合することによって前記識別対象者を識別する識
別部と、
を備える識別装置。
【0011】
このようにすることで、記憶部に記憶されている登録者の特徴量及び識別対象者の特徴
量を照合できる。被写体の位置及び姿勢によらない特徴量に基づいて照合を行うので、登
録者の被写体の血管画像と識別対象者の被写体の血管画像とで被写体の位置や姿勢が異な
っていても高精度に識別対象者を識別することができる。
【0012】
かかる識別装置であって、前記特徴量は、SIFT(Scale Invariant
Feature Transform)特徴量であることが望ましい。
このようにすることで、被写体の位置及び姿勢によらない特徴量として好適なSIFT
特徴量を採用することができる。
【0013】
また、前記識別対象者の被写体の血管画像は、前記登録者の被写体の血管画像よりも狭
い範囲を撮影した画像であることが望ましい。
このようにすることで、識別対象者の被写体の血管画像に基づいて抽出された特徴量が
、記憶部に記憶されている登録者の特徴量に高い確率で含まれる。したがって、より高精
度に識別対象者を識別することができる。
【0014】
また、前記記憶部には、前記登録者について複数の前記特徴量が記憶されることが望ま
しい。
このようにすることで、登録者についての複数の特徴量を識別に使用できるので、正確
に識別できる確率が高くなる。したがって、より高精度に識別対象者を識別することがで
きる。
【0015】
また、前記識別部は、前記識別対象者の特徴量と前記登録者の特徴量との類似度に応じ
て前記識別対象者を識別することが望ましい。
このようにすることで、識別対象者の特徴量と登録者の特徴量とを類似度に応じて識別
を行う事ができる。したがって、統計学に基づいて、より高精度に識別対象者を識別でき
る。
【0016】
また、前記類似度は、前記識別対象者の特徴量と前記登録者の特徴量とのユークリッド
距離に基づいて求められることが望ましい。
このようにすることで、ユークリッド距離に基づいて、適切に類似度を求めることがで
きる。
【0017】
また、前記識別部は、前記類似度が所定の値よりも高い特徴量の数をカウントし、前記
カウントした値が所定の値よりも大きい場合に、前記識別対象者が前記登録者であると識
別することが望ましい。
このようにすることで、類似度が高い特徴量の数に応じて識別対象者を識別することが
できるので、高精度に識別対象者を識別することができる。
【0018】
また、本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項も明らかとなる。
すなわち、
識別対象者の血管画像を撮影することと、
前記識別対象者の血管画像に基づいて前記識別対象者の特徴量を抽出し、記憶部に記憶
された登録者の特徴量と前記識別対象者の特徴量とを照合して識別することと、
を含む識別方法である。
このようにすることで、記憶部に記憶されている登録者の特徴量及び識別対象者の特徴
量を照合できる。被写体の位置及び姿勢によらない特徴量に基づいて照合を行うので、登
録者の被写体の血管画像と識別対象者の被写体の血管画像とで被写体の位置や姿勢が異な
っていても高精度に識別対象者を識別することができる。
【0019】
===実施形態===
図1は、本実施形態における静脈認証装置1のブロック図である。静脈認証装置1は、
識別(認証)対象者を認証する。すなわち、静脈認証装置1は、識別対象者を識別して、
後述する制御対象50を制御する。静脈認証装置1は、演算部10とセンサー部20と光
源部30とを備える。センサー部20はインターフェース28を介して演算部10に接続
されており、また、光源部30はインターフェース38を介して演算部10に接続されて
いる。また、静脈認証装置1は、インターフェース48とインターフェース58を介して
トリガーセンサー40と制御対象50に接続されている。
【0020】
演算部10は、演算を行うCPU(Central Processing Unit)12と記憶部としてのR
AM(Random Access Memory)14及びEEPROM(Electronically Erasable and Progr
ammable Read Only Memory)16を含む。CPU12は、EEPROM16に記憶された
プログラムを実行することにより静脈認証を行う。RAM14には、静脈認証を行う際に
必要な演算結果等が記憶される。そして、演算部10は、後述する登録処理及び認証処理
を行う。つまり、演算部10は認証部および記憶部として機能し、認証部は識別を行う識
別部および制御対象を制御する制御部としての機能を含む。
【0021】
センサー部20は、指の静脈を撮影するためのセンサーである。つまり、本実施形態に
おける被写体は指であり、静脈画像(血管画像)が撮影される。センサー部20は、識別
対象者の指を撮影するが、その際の露光時間を調整することができるようになっている。
【0022】
光源部30は、撮影する指に所定波長の光を照らすための装置である。ここでは、近赤
外線のLED(Light Emitting Diode)光源を含み、700nm〜900nmの波長帯を多
く含む光を照射する。このように、700nm〜900nmの波長帯を多く含む光を照射
することとしているのは、この波長帯は特に、血液のヘモグロビンと水の両方の吸収が低
くなり、透過率が高くなる波長であるためである。本実施形態においては、センサー部2
0及び光源部30が撮影部に相当する。
【0023】
トリガーセンサー40は、指の接近を感知し、撮影処理を開始するためのトリガーを演
算部10に送る装置である。トリガーセンサー40には、例えば、静電容量センサーが用
いられる。このトリガーセンサー40により、後述するドアなどに静脈認証装置1を設け
た場合において、指をドアに近づけただけでセンサー部20が指の撮影処理を開始するこ
とができるようになる。
【0024】
制御対象50は、静脈認証装置1による識別結果に応じて制御される対象物である。例
えば、制御対象50がコンピュータであるときには、静脈認証装置1による識別結果に応
じて、識別対象者に対してコンピュータのアクセス権を付与する。また、制御対象50は
、ドアの電子錠である場合には、静脈認証装置1による識別結果に応じてドアの電子錠の
解錠を行う。本実施形態では、以下に制御対象50がドアの電子錠であるものとして説明
を行う。
【0025】
本実施形態における静脈認証装置1では、後述する登録処理と、認証処理の2つの処理
が行われる。
【0026】
図2は、登録処理のフローチャートである。登録処理とは、登録者の指の静脈の特徴量
を登録する処理である。本実施形態における特徴量は、位置不変、及び、回転不変なもの
が採用される。これは、同じ人物の静脈パターンに対しては、撮影範囲が変化(位置が変
化した場合)した場合でも、撮影方向が回転(回転変化)した場合でも、パターンに対し
て同じ位置が特定され(位置不変)、その位置周辺の局所領域の特徴を数値化した特徴量
と同じ値が得られる(回転不変)という特性を有するものである。
【0027】
まず、登録者の静脈画像撮影が行われる(S102)。指の静脈パターン画像を撮影す
るにあたり、光源部30から700nm〜900nmの波長帯を多く含む光が照射される
。この波長帯においては、ヘモグロビンによる光の吸収が水による光の吸収よりも大きい
ため、指の静脈が影となった画像が撮影される。静脈画像の撮影は、静脈認証装置1のセ
ンサー部20を用いて行うこともできるし、他の撮影可能な装置を用いて行うこともでき
る。このようにすることにより、指の静脈画像が撮影される。
【0028】
静脈画像撮影処理(S102)において、識別に用いる可能性のある領域は全て撮影し
ておくことが好ましい。例えば、全ての指を撮影することとしてもよいし、手のひらの領
域も撮影することとしてもよい。また、左右両方の手の指について撮影することとしても
よい。特にここでは、後述する認証処理で撮影される領域よりも広い領域が撮影されるこ
とになる。また、このような広い領域を撮影するにあたり、一括で撮影を行う必要はなく
、分割して撮影することとしてもよい。
【0029】
次に、撮影された静脈画像から特徴量抽出を行う(S104)。
図3は、特徴量抽出処理を説明するフローチャートである。
本実施形態の特徴量抽出処理(S104)においては、最初に、撮影した静脈画像の画
像補正が行われる(S202)。ここで画像補正が行われるのは、主に以下の3つの理由
からである。
【0030】
(1)指の透過率には個人差があり、取得した画像の全体の輝度がばらつくことがある。
(2)指の透過率の個人差により明暗分布が生じてしまうことがある。例えば、指の関節
部は明るく画像が取得され、関節と関節との間は暗く画像が取得される。
(3)静脈と表皮との間の生体組織により、光が拡散し、撮影した静脈パターンがぼやけ
る場合がある。
【0031】
これらの課題を解決するために、フィルタ処理を行う。上記(1)の課題を解決するた
めには、正規化が必要であり、そのために平均値(直流成分)を除去する必要がある。ま
た、上記(2)の課題を解決するためには、均一化が必要であり、そのために、緩やかな
変動を除去する必要がある。よって、これら(1)と(2)の課題を解決するために、静
脈画像に対してハイパスフィルタを適用する。
【0032】
また、上記(3)の課題を解決するためには、シャープネス処理が必要であるから、静
脈画像に対してアンシャープマスクを適用し高周波成分を強調する。すなわち、これらハ
イパスフィルタとアンシャープマスクを統合したフィルタを作成し適用する。具体的には
、2つのフィルタの周波数応答(MTF: Modulation Transfer Function)を周波数空間で積
算し、これを逆フーリエ変換したフィルタを適用することになる。
【0033】
次に、特徴点抽出処理(S204)が行われる。本実施形態における特徴点抽出及び特
徴量抽出は、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)が採用される。センサー部
20と指との位置関係が固定ではない場合、センサー部20に対する指の位置及び角度が
一定とならない可能性がある。このような認証装置において高精度な識別を行うために、
位置及び回転によらない特徴量を与える特徴点を抽出したいという要求がある。この要求
を満たす手法の一例としてSIFTを採用している。
【0034】
S204の処理においては、まず、ノイズを取り除き、安定した特徴点を得るために、
静脈画像にガウスフィルタを適用して平均化処理を行う。そして、ある周波数以上の成分
をカットする処理を行う。また、ガウスフィルタを適用した画像の二次微分を算出し、そ
の極値を特徴点候補とする。さらに、ノイズに由来する特徴点を取り除くために、極値の
絶対値が所定のしきい値以上の点を特徴点として採用する。上記において、特徴点候補を
得るために二次微分を算出しているのは、均一な領域ではなく、変化があるエッジ部を画
像から抽出するためである。また、撮影において斜めから光源照射がなされたときにおい
て、一定の傾きで変化する領域が画像に生ずることがあるが、このような領域を特徴点候
補としないためである。二次微分の算出は、具体的には、ガウス導関数の畳み込み積分に
より行われる。
【0035】
図4は、特徴点の一例を示す図である。図には、撮影された静脈と、その静脈の分岐点
において特定された特徴点が示されている。特徴点は、輝度勾配の二次微分の極値の場所
が選択されるので、輝度の変化量が大きな箇所が選択されることになる。また、二次微分
の極値の場所は、一次微分の変化量が極大となる場所であるから、周囲に比べて曲率(す
なわり曲がり方)が大きい点が選択される。よって、静脈の分岐点や血管内部も特徴点と
して選択されることになる。すなわち、静脈とそうでない場所とを分ける場所が特徴点と
して選択されることになる。
【0036】
次に、特徴量抽出が行われる(S206)。特徴量抽出は、上記の処理において得られ
たそれぞれの特徴点に対して以下の処理を行うことにより行われる。まず、特徴点周辺の
輝度勾配を算出する。
【0037】
図5は、得られた輝度勾配の一例を示す図である。図5には、特徴点を中心とした複数
のマス目(本実施形態では、8×8のマス目)が示されている。そして、各マス目におけ
る輝度勾配がベクトル量として示されている。
【0038】
次に、図5のように得られた輝度勾配についてヒストグラムを作成する。そして、最も
頻度の高い方向を特徴量の基準方向とする。
【0039】
図6は、輝度勾配のヒストグラムの一例を示す図である。本図では、36方向のヒスト
グラムが示されている。本図では、「peak」と記載した方向の値が最も高くなってい
る。よって、この方向が特徴量の基準方向となる。
【0040】
次に、特徴点を中心として、前述の処理で選択された基準方向に合わせて、再度8×8
のマス目を作成する。そして、この8×8のマス目を4×4のマス目に対応させ、この4
×4のマス目毎の輝度勾配について、マス目ごとに8方向のベクトルに分解する。
【0041】
図7は、基準方向に座標軸を合わせたときの輝度勾配の一例を示す図である。図7Aに
おいては、太矢印の方向が前述の基準方向であり、基準方向に方向を合わせた8×8のマ
ス目を再作成して、基準方向を基準として輝度勾配を求め直したものである。また、図7
Bは、この8×8のマス目を4×4のマス目に対応させ、マス目毎に輝度勾配を8方向の
ベクトルに分解したものである。
【0042】
ここでは、8方向のベクトルに分解しているので、0°、45°、90°、135°、
180°、225°、270°、及び、315°のそれぞれの方向について、ベクトルの
スカラー量が得られる。また、4×4のマス目のそれぞれについて、これらのスカラー量
が得られるため、4×4×8=128次元のスカラー量を得ることができる。本実施形態
において、特徴点における特徴量は、これら複数次元のスカラー量である。
【0043】
次に、上述のようにして求めた特徴量と登録者のIDとをセットにして演算部10(記
憶部)に保存する。すなわち、特徴量と登録者のIDの登録処理を行う(ステップS10
6)。
【0044】
図8は、特徴量のデータベースの例を示す表である。表には、登録者のIDと、特徴量
として0〜127の128次元のスカラー量が示されている。登録者IDとして複数の同
じ数字が並んでいるのは、一人の登録者について複数の特徴点に関する特徴量が登録され
るためである。なお、一人の登録者について一つの特徴点に関する特徴量が登録されるよ
うにしてもよい。
【0045】
保存する特徴量の数は任意である。但し、複数の登録者が登録されている場合には、後
述する識別時において、特定の登録者の特徴量の登録数が他の登録者の特徴量の登録数よ
りも極端に多いと、識別対象者が登録数の多い登録者に一致すると誤って識別してしまう
可能性が確率的に高まる。このような認証の偏りを減らすために、各登録者についてそれ
ぞれ一定数の制限を設けた数の特徴量を保存することとしてもよい。また、その際、保存
しておく特徴量は、ランダムに選択することとしてもよいし、選択基準を設けてその上位
から一定数を登録することとしてもよい。
【0046】
また、一人の登録者が複数本の指の特徴量を登録することとしてもよい。このようにす
ることによって、認証可能な指の本数を増やすことができる。
【0047】
以上のような登録処理が完了すると、静脈認証装置1の演算部10に記憶された、登録
者の特徴量を用いて認証処理を行うことができるようになる。以下、認証処理について説
明する。
【0048】
図9は、認証処理のフローチャートである。図10は、認証処理の概念を説明するため
の図である。認証処理では、最初に、静脈画像撮影処理(S302)が行われる。静脈画
像撮影処理は、前述の登録処理における静脈画像撮影処理と同様に、識別対象者の指の静
脈画像を撮影する処理であり、前述のステップS102と同様の処理であるので説明を省
略する。尚、ここで撮影される指の面積は、登録処理において撮影された面積よりも少な
くてもよい。言い換えると、認証処理で撮影される静脈画像は、登録処理において記憶部
に記憶される静脈画像よりも狭い範囲を撮影した画像であってもよい。また、撮影される
指の本数も、登録された指よりも少ない本数でよい。すなわち、認証時において取得され
る画像のサイズは、登録時において取得された画像のサイズの一部に相当するものでよい
ことになる。また、登録時と撮影される指の位置及び角度が異なっていてもよい。
【0049】
次に、特徴量抽出処理(S304)が行われる。特徴量抽出処理も、前述のステップS
202〜S206の処理と同様であるので説明を省略する。尚、ここではS203におい
て撮影された静脈画像内の特徴点の特徴量を全て抽出することになる。
【0050】
このようにして求められた特徴量は、前述のように128次元のスカラー量として得る
ことができる。図10には、予め登録された登録者の特徴量が「登録特徴量」として複数
の棒グラフとして示されている。また、ステップS304において求められた識別対象者
の特徴量が「認証特徴量」として複数の棒グラフとして示されている。概念的には、以下
において、認証特徴量に類似する登録特徴量を検索し、類似度として示す指数が所定の値
よりも大きいか否かに基づいて識別対象者を識別する。
【0051】
次に、類似特徴量抽出処理(S306)が行われる。この処理では、登録された特徴量
と比較するために、登録された特徴量と認証時に取得された特徴量との類似度を求める。
ここで類似度は、得られた128次元のスカラー量についてのユークリッド距離に基づい
て求めることができる。そして、これらの距離の値が所定のしきい値よりも小さい場合に
は類似度が高いと判定することができる。尚、ここでは、ユークリッド距離に基づいて類
似度を求めることとしたが、市街地距離やマハラノビスの距離に基づいて類似度を求める
こととしてもよい。このようにすることによって、認証処理において撮影された静脈画像
に基づいて求められた特徴量と登録された特徴量との類似度を求めることができる。
【0052】
次に、統合判定(S308)が行われる。統合判定では、求められた上記の全ての類似
度を統合して、登録されたIDごとに統合類似度を求める。具体的には、前述の類似特徴
量抽出処理(S306)において、類似度が高い(所定のしきい値よりも値が小さい)と
判定された特徴量のIDの登録者のカウンタを増やすことを行う。
【0053】
また、ここでは、類似度が高いと判定された特徴量に対応するIDの登録者のカウンタ
を増やす、すなわち類似度が所定の値よりも高い特徴量の数をカウントすることとしたが
、類似度が高いと複数の特徴量において判定された場合には、その中で最も類似度が高い
(すなわち、距離が近い)特徴量を有するIDの登録者のカウンタのみを増やすこととし
てもよい。また、上記のユークリッド距離が所定のしきい値以内となる全ての登録者のカ
ウンタを増やすこととしてもよい。このようにして、IDの登録者ごとにカウンタの総和
を算出する。そして、このIDの登録者ごとに算出したカウンタの総和をその登録者の統
合類似度とする。
【0054】
次に、識別処理(S310)が行われる。ここでは、最も高い統合類似度が所定のしき
い値以上であった場合に、識別対象者がその統合類似度に対応するIDの登録者であると
判定する。最も高い統合類似度が所定のしきい値よりも小さかった場合には、識別対象者
は登録者でないと判定する。このようにすることで、識別対象者が登録者であると判定さ
れた場合には、識別対象者がどのIDの登録者であるかも特定することができる。そして
、S310の識別結果に基づいて、制御対象50を演算部10が制御する(S312)。
すなわち、識別対象者が登録者であると判定された場合には、制御対象であるドアの電子
錠を解錠する。識別対象者は登録者でないと判定された場合には、電子錠を解錠しないよ
うに制御する。
【0055】
上述のようにして登録処理を行い、さらに識別処理を行うことによって、撮影時におい
て被写体に回転及び位置シフトが発生した場合であっても、適切に認証を行うことができ
る。
【0056】
尚、特徴点の検索手法、及び、特徴量の算出において、上記ではSIFTを用いること
としたが、特徴点及び特徴量の求め方はこれに限られない。
【0057】
例えば、MSER(Maximally Stable External Regions)を用いることとし、グレース
ケール画像に対して領域分割を行い、しきい値を徐々に上げて行った場合に、二値化の結
果が最も変わらない領域を特徴点として採用することとしてもよい。
【0058】
また、特徴量を求める際に、SURF(Speeded Up Robust Features)、GLOH(Gradi
ent Location and Orientation Histogram)、Shape Contextなどの手法を
用いることとしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では静脈認証装置を例として説明したが、これに限らず、動脈
を撮影し、認証するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 静脈認証装置、
10 演算部、12 CPU、14 RAM、16 EEPROM、
20 センサー部、
30 光源部、
40 トリガーセンサー、
50 制御対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
登録者の被写体の血管画像に基づいて、前記被写体の位置及び姿勢によらずに特徴付け
られる、前記登録者の特徴量を記憶する記憶部と、
識別対象者の被写体の血管画像を撮影する撮影部と、
前記識別対象者の血管画像に基づいて前記識別対象者の特徴量を抽出し、前記登録者の
特徴量と前記識別対象者の特徴量とを照合することによって前記識別対象者を識別する識
別部と、
を備える識別装置。
【請求項2】
前記特徴量は、SIFT(Scale Invariant Feature Tra
nsform)特徴量である、請求項1に記載の識別装置。
【請求項3】
前記識別対象者の被写体の血管画像は、前記登録者の被写体の血管画像よりも狭い範囲
を撮影した画像である、請求項1又は2に記載の識別装置。
【請求項4】
前記記憶部には、前記登録者について複数の前記特徴量が記憶される、請求項1〜3の
いずれか1項に記載の識別装置。
【請求項5】
前記識別部は、前記識別対象者の特徴量と前記登録者の特徴量との類似度に応じて前記
識別対象者を識別する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の識別装置。
【請求項6】
前記類似度は、前記識別対象者の特徴量と前記登録者の特徴量とのユークリッド距離に
基づいて求められる、請求項5に記載の識別装置。
【請求項7】
前記識別部は、前記類似度が所定の値よりも高い特徴量の数をカウントし、前記カウン
トした値が所定の値よりも大きい場合に、前記識別対象者が前記登録者であると識別する
、請求項5又は6に記載の識別装置。
【請求項8】
識別対象者の血管画像を撮影することと、
前記識別対象者の血管画像に基づいて前記識別対象者の特徴量を抽出し、記憶部に記憶
された登録者の特徴量と前記識別対象者の特徴量とを照合して識別することと、
を含む識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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