説明

警報器

【課題】ユーザーに故障の誤認識を与えることなく警報の鳴動原因を確認することができる警報器を提供すること。
【解決手段】警報事象発生を鳴動手段70および/または警報表示手段80,90で警報する警報器であって、鳴動原因を含む警報履歴情報を記憶する記憶手段100と、警報器の通常使用状態時にアクセスできない場所に配設されているスイッチ手段4の操作により、記憶手段100に記憶されている警報履歴情報を読み出して、鳴動手段70および/または警報表示手段80,90で鳴動原因を報知させる制御手段10aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災警報等を行う警報器に関し、特に、警報器の鳴動原因の確認を良好に行うことができる警報器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、警報器の鳴動原因を確認するための技術がいくつか提案されている。たとえば、特開平8−297789号公報(特許文献1)には、ガス漏れ警報器において、ガス漏れ検知後に、通電状態を示す電源表示部の通電表示灯の点滅により警報時のガス種類またはガス濃度の表示を行い、使用者に不快感を与えることなく警報履歴情報を把握することができる技術が開示されている。
【0003】
また、特開2005−292969号公報(特許文献2)には、点検用スイッチの操作時に、点検前に火災警報を行った事実があれば火災警報ランプ、ガス漏れ警報を行った事実があればガス警報ランプ、不完全燃焼警報を行った事実があれば不完全燃焼ランプを所定時間だけ点滅させて、鳴動原因を把握することができる技術が開示されている。
【特許文献1】特開平8−297789号公報
【特許文献2】特開2005−292969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、ガスを検知して警報を報知し、ガスが検知されなくなり自動復帰機能で警報を解除した後、通常使用状態に復帰したのに電源表示部の通電表示灯が点滅するので、ユーザーが電源表示部の故障と勘違いするおそれがある。
【0005】
また、特許文献2に開示されている技術では、通常使用状態で点検用スイッチを安易に操作できるため、ユーザーが誤って点検用スイッチを操作した際にも警報ランプが点滅するので、故障と間違えられるおそれがある。
【0006】
また、電池式警報器の場合は、鳴動原因を常時表示する場合、電池の消耗を早めてしまうという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上述した課題に鑑み、ユーザーに故障の誤認識を与えることなく警報の鳴動原因を確認することができる警報器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、警報事象発生を鳴動手段および/または警報表示手段で警報する警報器であって、鳴動原因を含む警報履歴情報を記憶する記憶手段と、前記警報器の通常使用状態時にアクセスできない場所に配設されているスイッチ手段の操作により、前記記憶手段に記憶されている前記警報履歴情報を読み出して、前記鳴動手段および/または前記警報表示手段で前記鳴動原因を報知させる制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項2記載の発明は、請求項1記載の警報器において、前記スイッチ手段4は、前記警報器を出荷時に出荷モードとし、前記警報器の設置時に監視モードに切り替えるための出荷モードスイッチであることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項3記載の発明は、請求項2記載の警報器において、点検機能を起動するときに操作する引き紐と、本体ケースの背面に形成され、前記引き紐の摘み部を嵌め込む嵌合部とをさらに備え、前記引き紐の摘み部を前記嵌合部に嵌め込むことにより、前記摘み部で前記出荷モードスイッチが操作されることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項4記載の発明は、請求項3記載の警報器において、前記出荷モードスイッチは操作ノブを有するスイッチであって、該操作ノブが前記嵌合部側に突出され、前記摘み部が該嵌合部に嵌め込まれたとき、該摘み部により該操作ノブが変位することにより該出荷モードスイッチが操作されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、鳴動原因を含む警報履歴情報を記憶する記憶手段と、警報器の通常使用状態時にアクセスできない場所に配設されているスイッチ手段の操作により、記憶手段に記憶されている警報履歴情報を読み出して、鳴動手段および/または警報表示手段で鳴動原因を報知させる制御手段とを備えているので、従来のように通常使用状態時に通電表示灯や警報表示灯を点灯または点滅させることがないので、ユーザーが故障と間違えるおそれがなく、容易に鳴動原因の確認作業を行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、スイッチ手段は、警報器を出荷時に出荷モードとし、警報器の設置時に監視モードに切り替えるための出荷モードスイッチであり、ユーザーがアクセスすることのない備え付けのスイッチを利用して操作可能としているので、作業者が特別な機材を用いることなく容易に鳴動原因の確認作業を行うことができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、点検機能を起動するときに操作する引き紐と、本体ケースの背面に形成され、引き紐の摘み部を嵌め込む嵌合部とをさらに備え、引き紐の摘み部を嵌合部に嵌め込むことにより、摘み部で出荷モードスイッチが操作されるので、ユーザーが通常の使用環境で誤って操作するおそれもない。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、出荷モードスイッチは操作ノブを有するスイッチであって、操作ノブが嵌合部側に突出され、摘み部が嵌合部に嵌め込まれたとき、摘み部により操作ノブが変位することにより出荷モードスイッチが操作されるので、簡単な構造で鳴動原因の確認作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る警報器の構成例を示すブロック図である。図1に示す警報器は、本発明を火災警報器に適用した場合を示す。
【0018】
火災警報器は、マイクロコンピュータ(以下、μCOMと記す)10に接続された点検スイッチ20、火災センサ30およびCOセンサ40を備えている。火災センサ30は、たとえば、煙センサであるが、必要に応じて適切な種類のものが用いられる。また、COセンサ40は、たとえば、半導体式COセンサである。
【0019】
μCOM10は、プログラムに従って各種の処理を行う制御手段としてのCPU(中央処理ユニット)10aと、CPU10aが行う処理プログラムなどが格納されたROM10bと、CPU10aでの各種の処理過程で使用するワークエリアや各種データを格納するデータ格納エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM10cとを有する。
【0020】
また、火災警報器は、μCOM10に接続され、火災検出時に火災警報を音声で行うための音声出力回路60および鳴動手段としてのスピーカ70と、CO検出時に警報表示するための警報表示手段としての不完全燃焼警報ランプ80と、火災検出時に警報表示するための警報表示手段としての火災警報ランプ90と、不揮発性メモリである記憶手段としてのEEPROM100を備えている。EEPROM100には、予め設定された火災警報しきい値や不完全燃焼警報しきい値等が格納されている。また、EEPROM100には、火災検出やCO検出により警報が報知された場合、その都度、警報の種類、鳴動原因や発生日時等の警報履歴情報が格納される。
【0021】
不完全燃焼警報ランプ80は、たとえば黄色に発光するLEDからなり、火災警報ランプ90は、たとえば赤色に発光するLEDからなる。また、不完全燃焼ランプ80および火災警報ランプ90は、μCOM10に接続され、μCOM10によって点灯/消灯制御が行われる。
【0022】
また、火災警報器は、電池BaからμCOM10等の各部に電源供給を行う電源回路50と、この電源回路50に接続され、μCOM10に出荷モード信号を供給する出荷モードスイッチ4を備えている。この出荷モードスイッチ4は、ユーザーはアクセスできず火災警報器の製造(または販売)業者やメンテナンス業者が使用するスイッチであり、警報器を出荷時に出荷モードとし、警報器の設置時に監視モードに切り替えるためのものである。
【0023】
火災警報器の製造後の出荷時には、出荷モードスイッチ4はオン状態となっており、この状態では、電源回路50からハイレベルの出荷モード信号がμCOM10に供給されるため、火災警報器は出荷モードになっていると共に、CPU10aは出荷モードスイッチ4の状態を監視する低電力消費状態(スリープ状態)となっている。
【0024】
図1においては、出荷モードスイッチ4は、火災警報器をユーザー宅の適宜な設置場所へ設置した際に、販売業者の作業員によりオフ状態に切り替えられた状態を示している。この状態では、出荷モード信号がμCOM10に供給されないため出荷モードが解除されて、火災警報器は火災監視モード(警報事象監視モード)になっていると共に、スイッチ部4bを介して電源回路50から音声出力回路50へ電源供給が行われている。
【0025】
火災監視モード時には、CPU10aは、火災センサ30およびCOセンサ40を監視しており、火災発生時に火災センサ30が煙により火災を検知すると、CPU10aは、音声出力回路60を駆動してスピーカ70によりブザー音や音声で火災警報を報知すると共に、火災警報ランプ80を駆動して警報表示する。また、COセンサ40がCOを検知すると、CPU10aは、音声出力回路60を駆動してスピーカ70によりブザー音や音声でCO警報を報知すると共に、不完全燃焼警報ランプ80を駆動して警報表示する。
【0026】
点検スイッチ20は、後述する引き紐2の引っ張り操作によりオンとなると、警報器の点検機能が行われ、スピーカ70からの警報の有無等、警報器の動作が正常に行われるかどうかが点検される。
【0027】
なお、ここでは図示しないが、火災警報器が、他の家屋等に設置されている他の火災警報器で検出された火災を連動警報する連動タイプの場合は、他の火災警報器と通信する通信部を備えている。
【0028】
上述の構成を有する火災警報器において、本発明では、出荷モードスイッチ4を利用して、火災警報器の鳴動原因確認を行うことを特徴としている。
【0029】
以下、火災警報器の鳴動原因確認方法について説明する。
【0030】
(鳴動原因確認方法の例1)
メンテナンス業者等が鳴動原因を確認したい時は、図1に示す火災監視モード状態にある出荷モードスイッチ4をオン、オフすることにより、鳴動原因を警報履歴に応じた警報ランプの点灯または点滅とスピーカ70からの音声出力により報知する。
【0031】
すなわち、図2のタイミングチャートに示すように、火災監視モードでオフ状態になっている出荷モードスイッチ4を一度オン、オフし、それに伴う出荷モード信号の立ち上がりおよび立ち下がりをCPU10aが検出し、火災警報器の動作モードを火災監視モードから鳴動原因確認モードにする。
【0032】
続いて、CPU10aは、EEPROM100に格納されている警報履歴情報を読み出し、過去の警報事象発生時の鳴動原因を、警報事象に応じた警報ランプで表示すると共に、スピーカ70から音声で報知する。たとえば、鳴動原因が火災検出によるものであれば、火災警報ランプ90を数秒間フラッシュ点灯させるとともに、音声出力回路60を駆動してスピーカ70から火災警報を特定する警報音を出力して報知する。また、鳴動原因がCO検出によるものであれば、不完全燃焼警報ランプ80を数秒間フラッシュ点灯させるとともに、音声出力回路60を駆動してスピーカ70からCO警報を特定する警報音を出力して報知する。また、鳴動原因が火災連動検出によるものであれば、火災警報警報ランプ80を数秒間点滅させるとともに、音声出力回路60を駆動してスピーカ70から火災連動警報を特定する警報音を出力して報知する。
【0033】
なお、過去に複数回の警報が発生している場合は、所定間隔(たとえば、5秒間隔)でスピーカ70からの確認音により区切ることで、複数回の履歴の確認をすることができる。この確認音は、警報発生事象の種類によって異なるものとし、警報発生事象の種類を認識できるようにする。たとえば、警報発生事象が火災検出であれば、確認音を「ピッ」とし、CO検出であれば、確認音を「ピッピッ」とし、火災連動検出であれば、確認音を「ピッピッピッ」とする。そして、確認終了確認音を、たとえば「ピー」とする。
【0034】
また、警報ランプ80,90およびスピーカ70による警報表示および音声は、複数回の履歴確認ではなく、最新の鳴動原因のみの確認とすることもできる。
【0035】
また、鳴動原因の報知は、「火災警報です」、「CO警報です」、「火災連動警報です」等の1フレーズの音声メッセージ等で報知するようにすることもできる。また、警報時のCO濃度等を音声にて出力するようにすることもできる。さらに、鳴動原因は、火災警報やCO警報に限らず、故障等の内容を報知するようにすることもできる。
【0036】
(鳴動原因確認方法の例2)
メンテナンス業者等が鳴動原因を確認したい時は、図1に示す火災監視モード状態にある出荷モードスイッチ4をオンすることにより、鳴動原因を警報履歴に応じた警報ランプの点灯または点滅とスピーカ70からの音声出力により報知する。
【0037】
図3のタイミングチャートに示すように、火災監視モードになっている出荷モードスイッチ4をオンすると、それに伴う出荷モード信号の立ち上がりをCPU10aが検出し、火災警報器の動作モードを火災監視モードから出荷モードにする。続いて、CPU10aは、出荷モードに切り替えてから所定時間(たとえば、5〜10秒間)待機し、その後火災警報器の火災監視機能を停止し、CPU10aは出荷モードスイッチ4の状態を監視する低電力消費状態となる。
【0038】
そこで、この例2では、機能停止機能が動作する前の上記の所定時間(たとえば、5〜10秒間)の間に鳴動原因確認を行うものである。すなわち、出荷モードスイッチ4をオフからオンすると、CPU10aは、EEPROM100からの鳴動履歴受け付けを確定し、スピーカ70より確認音「ピッ」を報知し、次いで、鳴動履歴中の最新の警報が火災警報であったならば、火災警報ランプ90を数秒間点灯させることにより、鳴動原因が火災検出であることを報知する。あるいは、鳴動履歴中の最新の警報がCO警報であったならば、不完全燃焼警報ランプ80を数秒間点灯させることにより、鳴動原因が火災検出であることを報知する。そして、確認終了音「ピッ」をスピーカ70から出力する。
【0039】
(鳴動原因確認方法の例3)
メンテナンス業者等が鳴動原因を確認したい時は、図1に示す火災監視モード状態にある出荷モードスイッチ4をオン、オフすることにより、鳴動原因を警報履歴に応じた警報ランプの点滅パターンとスピーカ70からの音声出力により報知する。
【0040】
すなわち、図4のタイミングチャートに示すように、火災監視モードでオフ状態になっている出荷モードスイッチ4を一度オン、オフし、それに伴う出荷モード信号の立ち上がりおよび立ち下がりをCPU10aが検出し、火災警報器の動作モードを火災監視モードから鳴動原因確認モードにする。
【0041】
続いて、CPU10aは、EEPROM100に格納されている警報履歴情報を読み出し、過去の警報事象発生時の鳴動原因を、警報事象に応じた警報ランプで表示すると共に、スピーカ70から音声で報知する。
【0042】
たとえば、鳴動原因が火災検出によるものであれば、火災警報ランプ90を1秒周期で煙濃度に比例する回数だけ点滅させる。例として、煙濃度が10%/mなら1回点滅、11%/mなら2回点滅、以下同様に点滅回数を増やす。
【0043】
また、鳴動原因がCO検出によるものであれば、不完全燃焼警報ランプ80を1秒周期でCO濃度に比例する回数だけ点滅させる。例として、CO濃度が100ppmなら1回点滅、200ppmなら2回点滅、以下同様に点滅回数を増やす。
【0044】
また、音声出力回路60を駆動してスピーカ70から鳴動原因確認作業の開始を確認するための確認音「ピッ」を出力し、その後、火災警報ランプ90や不完全燃焼警報ランプ80の点滅に同期した確認音「ピッ」を出力する。
【0045】
以上、鳴動原因確認方法の例を説明したが、この鳴動確認方法は、従来のようにユーザーに故障と間違えられたり不快感を与えたりすることがないように、ユーザーが使用しない出荷モードスイッチ4を利用するものである。そのため、出荷モードスイッチ4は、火災警報器の設置後にユーザーがアクセスできない場所に設置される。
【0046】
以下、本発明が適用される出荷モードスイッチ4を備えた火災警報器の外観および内部構造の一例について、図5〜図8を参照して説明する。
【0047】
図5は、火災警報器の背面斜視図であり、図6は、火災警報器の火災監視モード時の(A)側面断面図、(B)底面図および(C)背面図であり、図7は、火災警報器の出荷モード時の(A)底面図および(B)背面図であり、図8は、火災警報器の要部拡大断面図であって(A)図7(A)のA−A線断面図および(B)図6(B)のA−A線断面図である。
【0048】
火災警報器は、表ケース11と裏ケース12により本体ケース1を構成している。表ケース11には火災センサ30(図1参照)を内蔵したセンサハウジング11aが形成されるとともに、このセンサハウジング11aを覆うパネル11bが取り付けられている。また、この火災警報器は壁掛け式であり、裏ケース12の背面部12aには、壁のネジ等に係合するための係止部13が形成されている。
【0049】
本体ケース1の下部には、点検スイッチ20(図1参照)をオン/オフするための引き紐2が配設されており、この引き紐2の先端には樹脂で形成された摘み部21が取り付けられている。裏ケース12は平筺状の形状をしており、この裏ケース12の下部の側面部12aには、引き紐2の摘み部21を嵌め込む嵌合部3が形成されている。嵌合部3は、裏ケース12の背面側から本体ケース1の内部側に穿たれた溝状になっており、その内部の一カ所にロック用爪31が形成されている。また、嵌合部3の長手方向の幅は、摘み部21の長手方向の幅よりわずかに大きくされ、嵌合部3の短手方向の幅は、摘み部21の厚みに整合する幅とされている。さらに、嵌合部3の端には、この嵌合部3内に摘み部21を嵌め込んだときに引き紐2を嵌め込む切欠き部32が形成されている。
【0050】
図8に示すように、嵌合部3の奥には、裏ケース12内の基板5に搭載した出荷モードスイッチ4が配設されている。この出荷モードスイッチ4は操作ノブ41を有し、この操作ノブ41は嵌合部3内に突出されている。出荷モードスイッチ4は、操作ノブ41が操作されて変位するとオンになり、この出荷モードスイッチ4がオンのときは出荷モードとなる。
【0051】
図8(A) に示すように、火災警報器の出荷時には、引き紐2の摘み部21は嵌合部3内に嵌め込まれており、この摘み部21は、出荷モードスイッチ4の操作ノブ41を押し込んで変位させ、出荷モードスイッチ4がオン状態となっている。この摘み部21は、ロック用爪31により嵌合部3から外れないようになっており、この出荷時の状態では、引き紐2を引いたりする行為はなく、出荷モードスイッチ4のオン状態が維持される。この出荷モードスイッチ4のオン状態により、火災警報器は出荷モードの状態となる。そして、この出荷モードは、出荷モードスイッチ4の状態を監視する程度の電池の低消費状態となっている。
【0052】
図1(B)に示すように、火災警報器を設置する際は、引き紐2の摘み部21を嵌合部3から取り出し、引き紐2及び摘み部21が下方にぶら下がる状態とする。この状態では、出荷モードスイッチ4の操作ノブ41は押されておらず、出荷モードスイッチ4がオフ状態となり、火災監視モードとなる。そして、この火災監視モードでは点検機能等が可能であり、前記のように摘み部21(及び引き紐2)を下方に引っ張ることにより点検スイッチ20がオンとなり、試験的な警報出力(音声出力)が行われる。また、再度、摘み部21を引っ張ると、警報停止となる。なお、設置時には、図1(B)のように点検、音声停止用の引き紐2を取り出すので、図1(A)の状態と明らかに違うため、引き紐2の引き出し忘れは発生しない。
【0053】
このように、出荷モードスイッチ4は、火災警報器の背面の裏ケース12の下部に形成された嵌合部3の奥に配設されているので、ユーザーは、火災警報器の通常使用状態時(火災監視時)には、出荷モードスイッチ4を操作することができない。
【0054】
一方、メンテナンス作業者等は、火災監視状態にある火災警報器を壁から取り外して、背面の嵌合部3へ摘み部21を嵌め込み続いて外すことにより、出荷モードスイッチ4をオフ状態からオン、オフさせて火災監視モードから鳴動原因確認モードに切り換えたり(鳴動原因確認方法の例1および3の場合)、嵌合部3へ摘み部21を嵌め込んだままとすることにより、出荷モードスイッチ4をオフ状態からオンさせて火災監視モードから出荷モードに切り換えたり(鳴動原因確認方法の例2の場合)して、鳴動原因の確認作業を行うことができる。
【0055】
以上説明したように、本発明によれば、鳴動原因確認のために、従来のように通常使用状態時に通電表示灯や警報表示灯を点灯または点滅させることがないので、ユーザーが故障と間違えるおそれがない。また、ユーザーがアクセスすることのない備え付けのスイッチを利用して操作可能としているので、作業者が特別な機材を用いることなく容易に鳴動原因の確認作業を行うことができる。
【0056】
また、鳴動原因の確認作業は、点検スイッチとは異なるスイッチを使用するため、ユーザーが通常の使用環境で誤って操作するおそれもない。また、電池式警報器においては、通常使用時に鳴動原因の報知を行う必要がなく、電池の消耗を抑えることができる。
【0057】
以上の通り、本発明の最良の形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変形、応用が可能である。
【0058】
たとえば、上述の実施の形態では、出荷モードスイッチとして操作ノブ付きの機械式スイッチの例であるが、以下のようなスイッチでもよい。例えば警報器本体にリードスイッチを配置し、引き紐の摘み部に磁石(マグネット)を設け、摘み部を嵌合部に嵌め込むとリードスイッチが磁石の磁力でオンとなるように構成してもよい。また、警報器本体に赤外線LEDとフォトセンサとを対向させた状態で配置し、省電力化のために赤外線LEDを間欠的に点灯してフォトセンサでセンシングし、引き紐の摘み部を嵌合部に嵌め込むことで摘み部により赤外線を遮断してフォトセンサをオフとし、このフォトセンサのオフにより出荷モードとするように構成してもよい。
【0059】
たとえば、上述の実施の形態では、電池式警報器としているが、本発明はこれに限らず、AC電源方式警報器にも適用可能である。
【0060】
また、上述の実施の形態では、火災警報器に適用した場合について説明したが、本発明は、ガス漏れ警報器や複合型警報器等の他の形態の警報器においても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係る警報器の構成例を示すブロック図である。
【図2】鳴動原因確認方法の例1の場合のタイミングチャートである。
【図3】鳴動原因確認方法の例2の場合のタイミングチャートである。
【図4】鳴動原因確認方法の例3の場合のタイミングチャートである。
【図5】火災警報器の背面斜視図である。
【図6】火災警報器の火災監視モード時の(A)側面断面図、(B)底面図および(C)背面図である。
【図7】火災警報器の出荷モード時の(A)底面図および(B)背面図である。
【図8】火災警報器の要部拡大断面図であって、(A)図7(A)のA−A線断面図および(B)図6(B)のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0062】
2 引き紐
4 出荷モードスイッチ(スイッチ手段)
10a CPU(制御手段)
21 摘み部
70 スピーカ(鳴動手段)
80 不完全燃焼警報ランプ(警報表示手段)
90 火災警報ランプ(警報表示手段)
100 EEPROM(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
警報事象発生を鳴動手段および/または警報表示手段で警報する警報器であって、
鳴動原因を含む警報履歴情報を記憶する記憶手段と、
前記警報器の通常使用状態時にアクセスできない場所に配設されているスイッチ手段の操作により、前記記憶手段に記憶されている前記警報履歴情報を読み出して、前記鳴動手段および/または前記警報表示手段で前記鳴動原因を報知させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする警報器。
【請求項2】
請求項1記載の警報器において、
前記スイッチ手段は、前記警報器を出荷時に出荷モードとし、前記警報器の設置時に監視モードに切り替えるための出荷モードスイッチであることを特徴とする警報器。
【請求項3】
請求項2記載の警報器において、
点検機能を起動するときに操作する引き紐と、
本体ケースの背面に形成され、前記引き紐の摘み部を嵌め込む嵌合部とをさらに備え、
前記引き紐の摘み部を前記嵌合部に嵌め込むことにより、前記摘み部で前記出荷モードスイッチが操作されることを特徴とする警報器。
【請求項4】
請求項3記載の警報器において、
前記出荷モードスイッチは操作ノブを有するスイッチであって、該操作ノブが前記嵌合部側に突出され、前記摘み部が該嵌合部に嵌め込まれたとき、該摘み部により該操作ノブが変位することにより該出荷モードスイッチが操作されることを特徴とする警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−42812(P2009−42812A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204021(P2007−204021)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】