説明

豆乳と野菜汁を含有する液状食品

【課題】
豆乳と野菜汁を含有する液状食品において、乳化剤の使用や煩雑な野菜汁の処理を行うことなしに、該液状食品中の豆乳蛋白質に起因する凝集沈殿現象を防止する。
【解決手段】
豆乳と野菜汁を含有する液状食品に乾燥おから粉末を添加することにより、長期保存しても、蛋白の凝集や沈殿が生ずることがなく、また適度の粘性をもったスープ,飲料,調味料を得ることができる。なお添加する乾燥おからの量は0.5〜3%であり、その粒度はできるだけ小さい方が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆乳と野菜汁を含有する液状食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
豆乳と野菜汁等の野菜処理物を原料とする飲料等の液状食品においては、乳化剤であるカゼインナトリウムの添加やカゼインナトリウムと多リン酸塩との添加によって、若しくは遅効性ペクチンの添加や遅効性ペクチンと多リン酸塩との添加によって、沈殿が生じない均一で長期保存性に優れた野菜ジュース入り豆乳飲料の製造法(特許文献1)や、トマトや人参等を搾汁して、これら蔬菜汁の不溶性固形分を除去した後に、陰イオン交換樹脂を用いてpHを豆乳より高く調整した蔬菜汁を豆乳に混合した、凝集沈殿を生じない安定した性状を持つ蔬菜汁と豆乳の混合飲料の製造法が提案されている(特許文献2)。また、緑色野菜を微アルカリ液に浸漬した後、ブランチングして急冷した後に搾汁して、緑色野菜汁を得る。次いで該緑色野菜汁をその緑色が安定なpH域に調整してから豆乳に混合して、味や色調の緩衝性を持ち、栄養分に富んだ野菜独特の緑色を保持した緑色野菜ジュースの製造法(特許文献3)もある。
【0003】
一方、おからの、豆乳を原料とする液状食品への利用方法には以下のものがある。おからを大豆蛋白質抽出して抽出粕を得、該抽出粕を加水分解して製造される水溶性大豆多糖類を分散剤に用いる、蛋白質粒子の凝集、沈殿、相分離を防止した、果汁を豆乳に添加してなる酸性蛋白飲料(特許文献4)や、大豆の通常油脂や蛋白質を除いた殻を原料とした水溶性ヘミセルロース(アラビノキシラン、アラビノガラクタン等の多糖類、又はこれら任意の混合物)を乳化剤に用いて、精油類、油溶性色素類、動植物性油脂類の油性物質を原料とする香料や色素添加物を、豆乳と果汁を原料とする酸性蛋白飲料に添加した際の、蛋白質の凝集や沈殿が防止された酸性蛋白飲料乳化組成物がある(特許文献5)。また、ジェランガム、ペクチン及び/又は大豆食物繊維から成る安定剤を用いることによって、風味良好な長期保存時においても凝集、沈殿の生じることのない、酸性乳と混濁果汁及び/又は混濁野菜等の混濁物質からなる乳性酸性飲料(特許文献6)がある。
このように豆乳と野菜汁を含有する飲料においては、豆乳が含有する蛋白質に起因する凝集や沈殿を防止するためには、乳化剤、安定剤や分散剤等の食品添加物を添加したり、野菜の搾汁、不溶性固形分の除去及びpH調整等の煩雑な野菜処理をする必要があり、また、おからの、豆乳や果汁等を原料とする液状食品の凝集や沈殿防止への利用においては、おからの大豆蛋白質を抽出した後に、加水分解する等の処理が必要であった。
【0004】
【特許文献1】特開昭54−49366号公報
【特許文献2】特開昭58−56664号公報
【特許文献3】特開昭59−63175号公報
【特許文献4】特開平05−7458号公報
【特許文献5】特開平07−99947号公報
【特許文献6】特開平11−262379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
豆乳と野菜汁を含有する飲料等の液状食品においては、該液状食品中の蛋白質の凝集や沈殿を抑制するには、カゼインナトリウム、おからの大豆蛋白質を抽出して加水分解して得る水溶性大豆多糖類、または大豆の通常油脂や蛋白質を除いた殻を原料とした水溶性ヘミセルロース等の各種乳化剤の添加や、不溶性固形分を除去した野菜汁を陰イオン交換樹脂に供して、所定のpHに調整するなどの煩雑な操作を行わねばならなかった。よって、乳化剤の添加や煩雑な原料処理をすることなしに、長期保存時においても豆乳蛋白質の凝集や沈殿の生じない、豆乳と野菜処理物を原料とした液状食品が望まれていた。そこで本発明は、乳化剤を使用することなしに、及び煩雑な野菜処理をすることなしに、蛋白質の凝集・沈殿現象が防止されたシェルフライフの長い、豆乳と野菜を含有する液状食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、豆乳と野菜汁を含有する液状食品に乾燥おから粉末を添加すると、該液状食品中の豆乳蛋白質の凝集や沈殿現象を防止できることを見出し、本発明を完成した。
上記課題を解決する本発明は、豆乳と野菜汁と乾燥おから粉末とを含有する液状食品であり、
又本発明は、乾燥おから粉末を0.5〜3重量%含有する、豆乳と野菜汁を含有する液状食品であり、
又本発明は、乾燥おから粉末を0.5〜3重量%含有した、豆乳と野菜汁を含有するスープ、飲料、調味料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、食品添加物である乳化剤の使用や煩雑な野菜処理を行うことなしに、豆乳や豆腐の副産物であるおからを乾燥し、微粉末化するだけで得られる製造コストの大変低い乾燥おから粉末を添加するだけで、豆乳に由来する蛋白質の凝集や沈殿現象が長期間抑制された、シェルフライフの長い、豆乳と野菜汁とを含有する液状食品を得ることができる。よって、本発明の豆乳と野菜汁とを含有する液状食品は、簡単に製造することができ、そして、その製造コストも大変低く、産業の発展に資すること大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の豆乳と野菜汁を含有する液状食品で用いる豆乳は、日本農林規格(JAS)に規定する豆乳、調整豆乳、豆乳飲料及び大豆たん白飲料を5〜50重量%用いることができる。又、本発明で用いる野菜汁は、人参、サツマイモ、ジャガイモなどの根菜類、トマト、ピーマン、カボチャなどの果菜類、タマネギ、ニンニクなどの鱗茎菜類、インゲン豆、エンドウ豆、ソラマメ、枝豆の莢実類、又はトウモロコシ等の搾汁液(ジュース)やピューレ、ペースト、ホールカット、若しくはダイスカットされたものや各種形状にカットされた野菜処理物、又は該搾汁液や該野菜処理物を加熱処理したものなどを一種又は二種以上を組み合わせて、10〜50重量%を用いることができる。
そして、本発明に用いる乾燥おから粉末は、豆乳や豆腐の製造時に生成する呉から豆乳を濾過した際に生ずるおからを乾燥し、微粉末化したものであり、その乾燥方法や製粉方法は特に問わない。又、該乾燥おから粉末の粒度は細かいほどよく、好ましくは60メッシュパス、より好ましくは80メッシュパス、さらに好ましくは100メッシュパスである。
又、乾燥おから粉末の含有量は、0.5〜3重量%である。ここで乾燥おから粉末の含有量が0.5重量%未満では、豆乳野菜汁含有液状食品中の凝集沈殿が防止できない。又、乾燥おから粉末の含有量が3重量%を超えると、該液状食品の粘性が必要以上に大きくなってしまう。
【0009】
本発明の豆乳と野菜汁を含有する液状食品の製造方法は、豆乳と野菜汁の混合液に乾燥おから粉末0.5〜3重量%を均一に混合する。本発明の豆乳と野菜汁とを含有する液状食品を所定のpHに調整する場合には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、乳酸及びグルコン酸等の有機酸、並びに有機酸を含むレモン及びオレンジ等の果汁の酸味料を用いることができ、又、所定のBrixに調整する場合には、蜂蜜、砂糖、ブドウ糖及び果糖等の糖類、ソルビット、マルチトール及び還元乳糖等の糖アルコール並びにキシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖及び乳化オリゴ糖等のオリゴ糖、リンゴ果汁、ぶどう果汁及びパイナップル果汁等の糖類を含む果汁を配合することができる。そして、食塩濃度は食塩で調整することができる。
又、本発明の豆乳と野菜汁を含有する食品は、食塩、味噌及び醤油等の各種調味料やカルダモン、クローブ、フェンネル、フェヌグリーク、ガーリック、ナツメグ、オニオン、クミン、ターメリック、コリアンダー、ローレル、唐辛子、胡椒及びシナモン等の各種香辛料や、該pH調整やBrix調整に用いる酸味料や糖類も味を調整するために用いることができる。
【0010】
そして、豆乳と野菜汁を含有する液状食品を調合した後、該液状食品を構成する原料によっては、ホモジナイザー、マイルダーやコミトロールなどの装置に供して、該液状食品を均質化したり、該液状食品中の野菜処理物をより微細化することもできる。
このようにして調製した豆乳と野菜汁を含有する液状食品は、例えば缶詰やパウチ詰の場合は、該液状食品を該容器に充填後、レトルト殺菌を行い、又、紙パック詰やPETボトル詰の場合、該液状食品をHTST殺菌して、紙パックやPETボトルに無菌充填する。
【実施例1】
【0011】
(実験例1)
調整豆乳350g、カボチャペースト250g、人参ピューレ30g、砂糖20g、食塩10g、ブラックペッパー0.5g、及び乾燥おから粉末100メッシュパス0、1、5、10、20、30、40又は50gに水を加えて1000gとした。そして、該混合物を撹拌混合して、pHを6.9、Brixを9.2、食塩濃度を0.51重量%に調整した後、ホモジナイザー(圧力200kg/cm2)で均質化して、豆乳と野菜汁を含有するスープを調製した。そして、該スープを150g容量の透明パウチに充填し、レトルト殺菌(121℃、20分)して、カボチャと人参を配合した豆乳と野菜汁を含有するスープを製造した。
そして、該スープを室温に2週間保存して、凝集及び沈殿の発生状態を観察し、又、専門パネル8名による官能検査も実施した。その結果を表1に示す。
【0012】
【表1】


*;凝集沈殿の評価基準 ++:凝集沈殿が多い、+:凝集沈殿あり、±:凝集沈殿が僅かに認められる、−:凝集沈殿は認められない
【0013】
表1の結果から、豆乳と野菜汁を含有するスープにおける、乾燥おから粉末の添加濃度は、0.5〜3%が適正であることが判明した。
【実施例2】
【0014】
調整豆乳250g、コーンピューレ250g、チキンブイヨン35g、砂糖12g、食塩3.5g、ホワイトペッパー0.5g、及び乾燥おから粉末100メッシュパス10gに水を加えて1000gとした(乾燥おから粉末1.0重量%)。そして、該混合物を撹拌混合して、pHを6.6、Brixを9.3、食塩濃度を0.51重量%に調整した後、コミトロール処理して微細化し、混合溶液を調製した。そして、該混合溶液を150g容量の透明パウチに充填し、レトルト殺菌(121℃、20分)して、本発明の豆乳と野菜汁を含有するスープを製造した。
【実施例3】
【0015】
調整豆乳450g、人参濃縮汁150g、トマトペースト25g及び乾燥おから粉末100メッシュパス5gの混合物をホモジナイザー処理して微細化した後、水を加えて1000gとした(乾燥おから粉末0.5重量%)。そして、該混合物を撹拌混合して、pHを6.3、Brixを10.0に調整して、豆乳と野菜を含有する飲料を調製した。そして、該飲料を135℃、4秒の加熱殺菌を行った後、90℃に冷却して、500ml容量の透明PETボトルに充填し、本発明の豆乳と野菜汁を含有する飲料を製造した。
【実施例4】
【0016】
調整豆乳100g、トマトペースト100g、タマネギピューレ50g、人参ピューレ50g、チキンブイヨン5g、砂糖15g、食塩50g、及び乾燥おから粉末100メッシュパス30gの混合物をコミトロール処理して微細化した後、水を加えて1000gとした(乾燥おから粉末3重量%)。そして、該混合物を撹拌混合して、pHを7.0、Brixを16.0、食塩濃度を5.0重量%に調整して、豆乳と野菜を含有するサラダ用調味料を調製した。そして、該調味料を130℃、30秒の加熱殺菌を行った後、70℃に冷却して、50ml容量の透明PETボトルに充填し、本発明の豆乳と野菜汁を含有する調味料を製造した。
【0017】
実施例2、3、4で製造した豆乳と野菜汁を含有するスープ、飲料、及び調味料は共に、室温で2週間保存した後も凝集や沈殿を生じなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆乳と野菜汁と乾燥おから粉末とを含有することを特徴とする液状食品。
【請求項2】
乾燥おから粉末を0.5〜3重量%含有することを特徴とする請求項1記載の液状食品。
【請求項3】
液状食品が、スープ、飲料、調味料である請求項1、2記載の液状食品。


【公開番号】特開2006−254803(P2006−254803A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77251(P2005−77251)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000104559)日本デルモンテ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】