説明

豆乳発酵乳酸菌飲料及びこの製造方法

【課題】3種の乳酸菌を用いて発酵した豆乳発酵乳酸菌飲料は風味が非常に優れ、沈殿防止安定剤をさらに添加し、殺菌処理して容器に無菌充填する場合、長期保存しても風味を維持できる豆乳発酵乳酸菌飲料及びこの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による豆乳発酵乳酸菌飲料の製造方法は、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)とラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)からなる群から選択される菌株1種と、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)で構成された3種の乳酸菌を豆乳に接種し、この豆乳を発酵させる段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆乳発酵乳酸菌飲料及びこの製造方法に関するものであって、本発明による豆乳発酵乳酸菌飲料は、風味と嗜好性に優れ、殺菌処理及び容器への無菌充填により長期保存が可能である。
【背景技術】
【0002】
最近、健康食品に対する需要者の関心が高まり、植物性タンパク質含有食品が注目を浴びている。特に、豆から製造される豆乳は、良質のタンパク質を含有しており、牛乳とほぼ同様の栄養素を有する。したがって、牛乳アレルギーを有する人々は、牛乳の代わりに豆乳を摂取しており、特に豆乳は、動脈硬化などの成人病を起こす飽和脂肪酸ではなく、不飽和脂肪酸を含有し、また酸性体質を防止する効果のあるアルカリ分を多く含有していると知られている。
【0003】
しかしながら、豆乳は、固有の豆臭(Beany flavor)により飲用が制約的である。それで、豆乳固有の豆臭を誘発する要素を除去するか、または減衰させるための研究が盛んであるが、これら研究を原理的な側面から次の3つに分類することができる。第1は、豆臭を生成する主な酵素として知られているリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase、LOX)を不活性化する方法、第2は、好ましくないにおいや、その前駆体を除去する方法、第3は、豆臭を他の香りによりマスキングする方法がある。この中、リポキシゲナーゼを不活性化して豆乳の風味を改善する研究が盛んであり、従来は加熱処理やタンパク質分解酵素方法などが研究されてきたが、最近は豆乳を発酵させる方法が注目されている。
【0004】
豆乳を発酵させる方法として、特許文献1ではビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium属)に属する乳酸菌を用いて豆乳を発酵させる方法が、特許文献2、特許文献3、特許文献4などではビフィドバクテリウム属に属する乳酸菌と共に他の乳酸菌を混合して豆乳を発酵させる方法が提示されている。しかし、上記技術は、発酵過程でビフィドバクテリウム属に属する乳酸菌を用いるため、酢酸臭を発生させる問題があり、嗜好性に悪影響を及ぼす虞があった。また、従来の発酵豆乳は、貯蔵過程で豆臭が発生する問題があり、これを解決するために、熱処理により菌を破壊したが、熱処理により製品が凝析したり、不快な味が発生したりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10−0485267号
【特許文献2】大韓民国公開特許第10−1995−0013395号
【特許文献3】大韓民国公開特許第10−1998−075078号
【特許文献4】大韓民国登録特許第10−454760号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは上記のような問題点を解決するために鋭意研究した結果、乳酸菌単独菌株を使用する方法より、混合菌株を使用する方法が風味改善にさらに効果的であり、この場合、酢酸臭を除去するためにビフィドバクテリウム属に属する乳酸菌の使用を排除し、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)とラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)からなる群から選択される菌株1種と、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)を豆乳に接種して発酵させることにより、嗜好性に優れた豆乳発酵乳酸菌飲料が得られ、また、製品の保存期間を増やすために発酵後に沈殿防止安定剤を添加し、殺菌処理をして容器に無菌充填することにより、本発明を完成した。
【0007】
したがって、本発明は、風味及び嗜好性に優れた豆乳発酵乳酸菌飲料及びこの製造方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)とラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)からなる群から選択される菌株1種と、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)で構成された3種の乳酸菌により発酵される豆乳発酵乳酸菌飲料をその特徴とする。
【0009】
また、本発明は、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)とラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)からなる群から選択される菌株1種と、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)で構成された3種の乳酸菌を豆乳に接種し、この豆乳を発酵させる段階を含む豆乳発酵乳酸菌飲料の製造方法をその特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明による豆乳発酵乳酸菌飲料は、風味及び嗜好性に優れただけでなく、沈殿防止安定剤をさらに添加した後、殺菌処理をして容器に無菌充填することにより長期保存が可能となり、流通期間を延長することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0012】
本発明は、豆乳の豆臭を除去するためにラクトバチルス・ブルガリクスとラクトバチルス・アシドフィルスからなる群から選択される菌株1種と、ラクトバチルス・カゼイ及びストレプトコッカス・サーモフィルスの3種の菌株を豆乳に接種して発酵させた、風味と嗜好性に優れた豆乳発酵乳酸菌飲料に関する。
【0013】
本発明に使用する乳酸菌は、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ及びストレプトコッカス・サーモフィルスであり、全て公知されたものであるか、市販される菌株である。
【0014】
上記ラクトバチルス・ブルガリクスとラクトバチルス・アシドフィルスは、牛乳の中で効率よく増殖するが、豆乳の中ではあまり増殖しないものと知られている。したがって、これをビフィドバクテリウム属に属する乳酸菌と共に豆乳に接種すると、あまり増殖しないため、風味は改善されない。また、通常、ラクトバチルス・カゼイやビフィドバクテリウム属の乳酸菌を単独発酵させた豆乳は、発酵中に生成された不要な成分、例えば酢酸及びジアセチルなどを含有するため、チーズのような臭いがする。しかし、ラクトバチルス・ブルガリクスとラクトバチルス・アシドフィルスから選択された1種と共にストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・カゼイを加えて豆乳に接種すると、豆乳の中で良好に増殖して製造されるため、発酵豆乳の風味及び嗜好性を改善することができる。
【0015】
発酵豆乳において、ラクトバチルス・ブルガリクスとラクトバチルス・アシドフィルスからなる群から選択される1種の乳酸菌による発酵生成物である乳酸の濃度は、0.03〜0.05重量%であることが好ましい。ストレプトコッカス・サーモフィルスは、ラクトバチルス・ブルガリクスや、ラクトバチルス・アシドフィルスを容易に増殖するように助ける役割で、乳酸の生成は微々たるものであり、ラクトバチルス・カゼイによる生成物である乳酸の濃度は0.05〜0.07重量%であることがよい。このような乳酸濃度により、上記3種の乳酸菌により発酵された豆乳の乳酸酸度は0.16〜0.20重量%であることがよい。
【0016】
乳酸酸度が低すぎると、豆臭(Beany Flavor)の除去が困難で、他の雑菌の増殖に問題があり、乳酸酸度が高すぎると、酸味が非常に強くて風味に問題があるため、上記範囲の濃度を維持することが好ましい。
【0017】
上記発酵豆乳の保存期間を増やすために、沈殿防止安定剤をさらに添加してもよい。使用可能な沈殿防止安定剤としては、水溶性大豆多糖類、微結晶セルロース、及びペクチンから選択された1種以上を使用し、好ましくは、水溶性大豆多糖類を用いることがよい。水溶性大豆多糖類は、分離大豆タンパク質を製造する過程で生成される植物繊維であって、タンパク質が酸により沈殿、分離することを防止する。添加量は、総発酵豆乳飲料100重量%に対して0.1〜0.3重量%となるように調節することが好ましいが、添加量が0.1重量%未満であれば、沈殿の問題があり、添加量が0.3重量%を超えると、風味に問題がある。
【0018】
また、必要に応じて、上記発酵豆乳に香料、甘味料、着色料、安定剤、及び果実製剤などをさらに添加してもよく、製造された豆乳発酵液を希釈及び殺菌して豆乳発酵乳酸菌飲料などの製品にしてもよい。
【0019】
また、本発明は、ラクトバチルス・ブルガリクスとラクトバチルス・アシドフィルスからなる群から選択される菌株1種と、ラクトバチルス・カゼイ及びストレプトコッカス・サーモフィルスの3種の菌株を豆乳に接種して発酵させた風味と嗜好性に優れた豆乳発酵乳酸菌飲料の製造方法に関する。
【0020】
上記豆乳は、従来方法により大豆または脱脂大豆から製造されたものであってもよく、従来の市販の豆乳であってもよい。例えば、豆乳は、大豆または皮を剥いた豆を水に浸漬するか、その他の方法で浸水した後、水と共に粉末化してスラリー化し、濾過などの方法でスラリー中の不溶性成分を除去して豆乳を製造する段階を含む製造方法により製造してもよい。好ましくは、豆乳を製造する過程において、豆を粉砕する前に豆を50〜100℃の熱水に接触させ、豆の熱水可溶性成分を除去することがよい。この場合、豆乳の風味が良好になるだけでなく、糖類の濃度が比較的低くなるため、後の発酵過程で乳酸菌により利用される糖類を豆乳に添加することにより、豆乳の発酵を制御し易くする長所がある。
【0021】
乳酸菌を豆乳に接種する前に豆乳を殺菌処理することが好ましく、一例として135〜150℃で約1〜120秒殺菌処理してもよい。また、殺菌処理の後、乳酸菌を豆乳に接種する前に乳酸菌が利用する糖類を豆乳に添加して発酵を促進させることが好ましい。上記糖類は、乳酸菌が利用できる糖類であれば何れもよく、例えば、ブドウ糖、液状果糖、異性化糖などを使用でき、好ましくは、ブドウ糖がよい。添加量は、豆乳100重量部に対して1〜5重量部、好ましくは、1〜2重量部であることがよいが、添加量が少なすぎると、増殖活性に問題があり、多すぎると、製品の風味に問題がある。
【0022】
次の段階では、本発明で使用する乳酸菌のラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、及びストレプトコッカス・サーモフィルスを豆乳に接種する。乳酸菌の接種は、上記菌を純粋培養した後に豆乳に接種してバルクスターター(bulk starter)を形成し、これを発酵器に入れた豆乳に再び接種してもよく、凍結乾燥濃縮菌を豆乳に直接接種してもよい。バルクスターターを使用する場合、豆乳100重量部を基準として凍結乾燥濃縮菌を0.1重量部接種して36〜38℃で24時間静置または振とう培養する方法により乳酸菌のそれぞれのバルクスターターを製造することができる。接種するバルクスターターの総使用量は、豆乳100重量部を基準として0.1〜15重量部であることがよい。上記凍結乾燥濃縮菌の場合、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・アシドフィルス、及びストレプトコッカス・サーモフィルスは0.04〜0.06unit/kgの活性度を有するものを使用することがよく、ラクトバチルス・カゼイは0.08〜0.12unit/kgの活性度を有するものを使用することがよい。バルクスターターの接種量が多すぎるか、凍結乾燥濃縮菌の活性度が高すぎる場合は、目標にした乳酸酸度を超えて発酵がずっと進む問題があり、接種量が少なすぎるか、活性度が低すぎる場合は、培養時間が長くなり、途中で他菌による汚染の問題がある。
【0023】
次に、接種した豆乳を20〜50℃で3〜48時間、好ましくは25〜45℃で4〜24時間発酵させ、その結果、ラクトバチルス・ブルガリクスとラクトバチルス・アシドフィルスからなる群から選択される1種の乳酸菌による発酵生成物の乳酸の濃度は0.03〜0.05%重量となる。ストレプトコッカス・サーモフィルスは、ラクトバチルス・ブルガリクスの発酵を活性化するように助ける役割をし、ラクトバチルス・カゼイによる生成物の乳酸の濃度は0.05〜0.07%重量である。発酵処理は、上記3つの菌をそれぞれ別途に使用して豆乳を別途に発酵させた後、混合してもよいが、好ましくは、これら3つの菌を共に豆乳に接種して乳酸菌発酵処理をすることがよく、製造された発酵豆乳の乳酸酸度は0.16〜0.20重量%となるようにする。この時、発酵雰囲気は、実質的に嫌気条件、すなわち酸素濃度が5.0体積%以下、好ましくは3.0体積%以下の条件下で豆乳を発酵させ、この場合、豆乳に溶解された酸素の濃度は2.0ppm以下であることがよい。このような低い酸素濃度の状態及び低い酸素溶解度の条件下で発酵させることにより、発酵豆乳は大豆固有の臭味がなく、牛乳とほぼ同様の食感と良好な風味を有することになる。
発酵豆乳の保存性を高め、より有用な製品として製造するために、発酵された豆乳に沈殿防止安定剤をさらに添加した後、殺菌処理及び容器への無菌充填の段階をさらに含むことができる。
【0024】
通常、豆乳や発酵豆乳は、豆を粉砕して得られた不溶性固形分を多量に含有するため、沈殿が発生し、植物性タンパク質が大部分であり、保存期間が短い。本発明では発酵豆乳の風味を改善させ、保存期間を増やすために、沈殿防止安定剤を添加し、その後、乳酸菌を高温で短時間殺菌処理して乳酸菌を全て死滅させる。殺菌処理は120〜135℃で20〜40秒行うが、この場合、殺菌温度が低すぎるか、殺菌時間が短すぎると、死滅しない乳酸菌により、時間が経つにつれて豆乳が変質する虞があって長期保存が困難であり、殺菌温度が高すぎるか、殺菌時間が長すぎる場合、豆乳タンパク質の変性の問題が発生して相分離及び劣化の問題が生じる。
【0025】
殺菌処理の完了後、発酵豆乳を容器に無菌状態で充填する。上記容器は酸素透過度が低いほど豆乳発酵液と外部酸素との接触が防止されるため、製品から豆の戻り臭(reversed odor)発生を防止することができる。このような容器の材質としては、ガラス、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデンコーティングポリエチレンテレフタレート(K−PET)、セラミック真空蒸着PET、アルミニウム真空蒸着PETなどがある。容器の蓋も上記材質からなるものでなければならない。このような容器に、本発明により特定の乳酸菌を接種した豆乳を無菌条件下で、例えば滅菌充填装置を用いて充填する。この時、発酵豆乳が酸素に接触しないようにするために、発酵豆乳を容器に充填することが好ましく、容器にヘッドスペース(headspace)が少し存在する場合、これを窒素などの不活性ガスで満たす。
このように、沈殿防止安定剤を添加して殺菌処理及び無菌充填した結果、上記豆乳を5〜20℃の低温で貯蔵する場合、1年以上良好な風味を維持することができる。
【0026】
本発明による豆乳発酵乳酸菌飲料は、ラクトバチルス・ブルガリクスとラクトバチルス・アシドフィルスからなる群から選択される菌株1種と、ラクトバチルス・カゼイ及びストレプトコッカス・サーモフィルスの3種菌株を用いて豆乳を発酵させることにより、豆乳固有の豆臭がなく、風味及び嗜好性に優れ、また、沈殿防止安定剤を添加して殺菌処理及び容器に無菌充填することにより、長期保存しても不快な臭いと味が発生しない。
【0027】
以下、本発明を実施例に基づいて詳しく説明するが、本発明が次の実施例により限定されることはない。
【実施例】
【0028】
製造例
皮を剥ぎ取った豆1重量部を130℃で30秒間加熱して酵素失活処理した後、水(80〜82℃)7重量部に3分間浸漬し、水を除去した。水を除去した後、得られた豆1重量部を熱水(95〜97℃)4重量部と共に粉砕してスラリーを製造し、スクリュー式傾斜分離器(Decanter)を用いておからを除去して豆乳を得た後、この豆乳を4秒間145〜149℃で加熱・殺菌・脱臭した後、30℃に冷却した。
【0029】
試験例1:乳酸菌による発酵豆乳の風味試験
上記製造例により製造した豆乳100重量部にブドウ糖2重量部を添加した後、下記表1のように凍結乾燥した濃縮乳酸菌を接種し、この混合物をガラス材質の容器に入れた。この混合物を37℃で24時間培養した後、5℃に冷却して乳酸菌発酵豆乳を製造した。その後、発酵豆乳のpH、糖度、及び乳酸酸度を測定し、官能テストを行い、その結果を下記表1に示した。pHの測定は水素イオン濃度をpH測定器で、糖度の測定は総固形分をブリックス測定器(Brix Meter)で、乳酸酸度はNaOH試薬を用いてpH測定器で測定した。官能テストは、5人のパネルにより豆臭、えぐみ、及び総合的な味を評価したが、非常に優秀「10」、優秀「8」、良好「6」、不良「4」、非常に不良「2」と点数化し、その平均値で評価した。
【0030】
【表1】

【0031】
上記表1に示すように、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・カゼイ、及びストレプトコッカス・サーモフィルスを併用し、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、及びストレプトコッカス・サーモフィルスを併用した結果、味が非常に優れた発酵豆乳を製造した。しかし、上記菌を単独で用いて製造した発酵豆乳の総合的な味は、満足する風味には到っていない。また、ビフィドバクテリウム・ロンガムを含む従来の混合乳酸菌は、豆臭の除去には効果的であったが、特有の酢酸臭があり、乳酸の生成が低いため、総合的な味が満足のいくものではなかった。
【0032】
試験例2:沈殿防止安定剤の添加効果試験
沈殿防止安定剤の添加による効果を評価するために、実施例2で製造した発酵豆乳20重量%、沈殿防止安定剤として水溶性大豆多糖類(ソヤファイブ−S−ZR100)0.2重量%、液状果糖(果糖55、Samyang Genex)10重量%、及び香料のヨーグルト香味料(Yogurt Flavor−1、LOTTESAMKANG CO,.LTD.)0.05〜0.20重量%を、100重量%になるように水に希釈した後、殺菌処理(135℃、40秒)した発酵豆乳飲料(実施例3)と、上記実施例3と同様に実施するが、水溶性大豆多糖類の代わりにアラビアゴム(GUM ARABIC POWDER、C.N.I.)を添加した比較例8及び沈殿防止安定剤を添加しない比較例9の豆乳発酵飲料のpH、糖度、乳酸酸度を測定して官能テストを実施した。評価方法は5人のパネルにより、非常に優秀「10」、優秀「8」、良好「6」、不良「4」、非常に不良「2」と点数化し、その平均値で評価し、その結果は下記表2の通りである。
【0033】
【表2】

【0034】
上記表2に示すように、沈殿防止安定剤として水溶性大豆多糖類を用いた実施例3は、比較例9に比して風味はほぼ差がないが、タンパク質の沈殿による相分離がないため性状が良好である。沈殿防止安定剤としてガム類の一種であるアラビアゴムを添加した比較例8の場合、豆乳発酵飲料の粘度増加により製品の総合的評価が良くない。
【0035】
試験例3:殺菌処理及び無菌充填による微生物安定性試験
上記実施例3の殺菌処理された豆乳発酵乳酸菌飲料を滅菌充填装置を用いてPET容器に無菌充填したもの(実施例4)と、実施例2で製造した発酵豆乳20重量%、水溶性大豆多糖類(ソヤファイブ−S−ZR100)0.2重量%、及びヨーグルト香味料(Yogurt Flavor−1、LOTTESAMKANG CO,.LTD.)0.05〜0.20重量%を、100重量%になるように水に希釈した後、加熱充填(Hot filling、殺菌温度100℃、殺菌時間30秒、充填温度88℃)したもの(比較例10)の官能テストを製造直後及び製造して1年経過時点で実施した。評価方法は5人のパネルにより、非常に優秀「10」、優秀「8」、良好「6」、不良「4」、非常に不良「2」と点数化し、その平均値で評価した。また、微生物安定性評価は、一般細菌及び大腸菌群試験器具を用いて食品公典上の微生物試験方法により実施した。官能テスト及び微生物安定性評価結果は下記表3の通りである。
【0036】
【表3】

【0037】
上記表3の結果によると、加熱充填(Hot filling)製品は、1年経過後に相当数の微生物が増殖したことが分かる。増殖した微生物は糖類などを分解して酸を生成した結果、糖度及びpHが低くなり、乳酸酸度が増加して製品を変質させる問題があった。しかし、無菌充填製品は、豆乳内に残存する好熱性好酸性細菌(thermophilic acidophilic bacteria、TAB)を効果的に抑制したことが分かる。したがって、豆乳発酵乳酸菌飲料の長期保存のためには、加熱充填より、殺菌処理して容器に無菌充填することが効果的であることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)とラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)からなる群から選択される菌株1種と、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)で構成された3種の乳酸菌により発酵されることを特徴とする豆乳発酵乳酸菌飲料。
【請求項2】
前記3種の乳酸菌により発酵された豆乳の乳酸酸度が0.16〜0.20重量%であることを特徴とする請求項1に記載の豆乳発酵乳酸菌飲料。
【請求項3】
前記3種の乳酸菌により発酵された豆乳に沈殿防止安定剤をさらに添加することを特徴とする請求項1に記載の豆乳発酵乳酸菌飲料。
【請求項4】
前記沈殿防止安定剤が、水溶性大豆多糖類、微結晶セルロース、及びペクチンから選択された1種以上であることを特徴とする請求項3に記載の豆乳発酵乳酸菌飲料。
【請求項5】
ラクトバチルス・ブルガリクスとラクトバチルス・アシドフィルスからなる群から選択される菌株1種と、ラクトバチルス・カゼイ及びストレプトコッカス・サーモフィルスで構成された3種の乳酸菌を豆乳に接種し、この豆乳を発酵させる段階を含むことを特徴とする豆乳発酵乳酸菌飲料の製造方法。
【請求項6】
前記3種の乳酸菌が、バルクスターター(bulk starter)または凍結乾燥濃縮菌の状態で豆乳に接種することを特徴とする請求項5に記載の豆乳発酵乳酸菌飲料の製造方法。
【請求項7】
前記バルクスターターの総使用量が、豆乳100重量部に対してバルクスターター0.1〜15重量部であることを特徴とする請求項6に記載の豆乳発酵乳酸菌飲料の製造方法。
【請求項8】
前記凍結乾燥濃縮菌が、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・アシドフィルス、及びストレプトコッカス・サーモフィルスの場合に0.04〜0.06unit/kg、ラクトバチルス・カゼイの場合に0.08〜0.12unit/kgの活性度を有することを特徴とする請求項6に記載の豆乳発酵乳酸菌飲料の製造方法。
【請求項9】
前記発酵段階において、20〜50℃で3〜48時間発酵させることを特徴とする請求項5に記載の豆乳発酵乳酸菌飲料の製造方法。
【請求項10】
前記豆乳発酵乳酸菌飲料に沈殿防止安定剤をさらに添加する段階をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の豆乳発酵乳酸菌飲料の製造方法。
【請求項11】
前記豆乳発酵乳酸菌飲料を殺菌処理及び無菌充填する段階をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の豆乳発酵乳酸菌飲料の製造方法。
【請求項12】
前記殺菌処理が、120〜135℃で20〜40秒行うことを特徴とする請求項11に記載の豆乳発酵乳酸菌飲料の製造方法。

【公開番号】特開2011−167190(P2011−167190A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31791(P2011−31791)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(503031684)ロッテ七星飲料株式会社 (3)
【氏名又は名称原語表記】Lotte Chilsung Beverage Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1322−1,Seocho 2dong,Seochogu,Seoul,Korea
【出願人】(307013857)株式会社ロッテ (101)
【Fターム(参考)】