説明

豆腐用凝固製剤用の乳化剤組成物

【課題】凝固速度が適度に遅効化され、きめの細かい品質良好な豆腐を製造できる、低粘度で透明な均一溶液のポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを含有する豆腐用凝固製剤用の乳化剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、(b)凝固点が15℃以下の多価アルコール脂肪酸エステル、及び(c)水を含み、所定の透過率が88%以上である、豆腐用凝固製剤用の乳化剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを含有する豆腐用凝固製剤用の乳化剤組成物及び当該乳化組成物を含有した豆腐用凝固剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、豆腐用凝固剤としては、主に塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム又は硫酸カルシウム等の無機塩、あるいはグルコノデルタラクトン等の有機酸が用いられてきた。しかしながら、これらの無機塩を豆腐用凝固剤として使用した場合、豆乳の凝固速度が速く相当な熟練者でなければ豆腐の内相のきめが細かく均質で、保水性に富み、且つ食感及び風味に優れた豆腐を造ることは困難であった。とりわけ塩化マグネシウムは古くから苦汁として豆腐の製造に用いられ、これを用いた豆腐は独特のおいしさを有することから消費者に好まれてきたが、その凝固速度は極めて速く、例えば二次的な成形を行わない「絹ごし豆腐」では内相が細かく均質な豆腐を造ることは困難であった。従って、苦汁は手造りの豆腐店等で一部用いられているのみで、工場規模での大量生産でこれを用いることは極めて難しかった。
【0003】
そこで、苦汁等の無機塩系豆腐用凝固剤を使用した豆腐の製造法において、苦汁等の凝固剤の凝固反応を遅効化させて安定した品質の豆腐を得る方法が見い出されるようになり、例えば、苦汁の乳化物を調製するために、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等を用いる方法が特許文献1、2に開示されている。
【特許文献1】特開2006−101848号公報
【特許文献2】特開2006−204184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、乳化剤として用いるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルは、それ自体の粘度が高いために移送等の操作性、作業性等が悪い。また、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルは、懸濁したり、沈降物が発生する等があるため、撹拌して均一分散させる等の煩雑な作業が必要となり、改善の余地がある。
【0005】
本発明の課題は、凝固速度が適度に遅効化され、きめの細かい品質良好な豆腐を製造できる、低粘度で透明な均一溶液のポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを含有する豆腐用凝固製剤用の乳化剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル〔以下、(a)成分という〕、(b)凝固点15℃以下の多価アルコール脂肪酸エステル〔以下、(b)成分という〕、及び(c)水〔以下、(c)成分という〕を含む乳化剤組成物であって、その組成物の700nmにおける透過率が常温(25℃)の測定条件で88%以上である豆腐用凝固製剤用の乳化剤組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、上記本発明の乳化剤組成物と、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び塩化カルシウムからなる群から選ばれる一種以上の無機塩系凝固剤とを含有する豆腐用凝固製剤に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の乳化剤組成物は、低粘度であるため流動性に優れ、操作性、作業性等が良好となる。その上、透明で均一な乳化剤組成物であるために安定な乳化性能が得られ、凝固速度が適度に遅効化され、きめの細かい品質良好な豆腐を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<豆腐用凝固製剤用の乳化剤組成物>
本発明の乳化剤組成物に用いられる(a)成分のポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとしては、グリセリン単位が2〜15、好ましくは5〜10のポリグリセリンとリシノール酸の縮合度が2〜10、好ましくは3〜6の縮合リシノレートとのエステルが挙げられ、市販品には、阪本薬品工業(株)製のSY グリスターCR-310、CR-500、更に太陽化学(株)製のサンソフト818SK等がある。
【0010】
本発明の乳化剤組成物に用いられる(b)成分の多価アルコール脂肪酸エステルは、操作性、作業性等の観点から、凝固点(日本油化学会 基準油脂 分析試験法 3.2.3.2−1996)が15℃以下を示すものが好ましく、更に0℃以下が特に好ましい。(b)成分は、例えばトリグリセリド、ジグリセリド等がある。トリグリセリドとしては、例えば、ナタネ油、大豆油、サフラワー油、コーン油、ぶどう油、ひまわり油、綿実油、ごま油、米ぬか油、落花生油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、牛脂等、又はこれらを分別した油、或いは炭素数8〜10の中鎖脂肪酸からなるトリグリセリド、或いはこれらを任意に混合したトリグリセリドが挙げられ、ナタネ油、大豆油、サフラワー油、コーン油、ぶどう油、ひまわり油、綿実油、ごま油、米ぬか油、落花生油、オリーブ油がより好ましく、ナタネ油、大豆油、サフラワー油、コーン油、オリーブ油が更に好ましい。ジグリセリドとしては、構成脂肪酸の炭素数が6〜24で、構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸含量が70重量%以上のものが好ましく、75重量%以上含むジグリセリドが更に好ましい。特に、操作性、作業性等の理由から、トリグリセリドが好ましい。
【0011】
本発明の乳化剤組成物に含まれる(a)成分と(b)成分の割合は、凝固製剤配合時の(a)成分と(b)成分の構成比率と乳化剤組成物の粘度及び透明性の観点から、〔(b)/(a)〕×100で10〜150重量%が好ましく、より好ましくは、10〜100重量%、更に好ましくは、40〜100重量%である。また、(a)成分と(c)成分の割合は、乳化剤組成物の透明性を得る観点から、〔(c)/(a)〕×100で0.5〜1.2重量%が好ましく、より好ましくは、0.6〜1.1重量%、更に好ましくは、0.7〜1.0重量%である。
【0012】
乳化剤組成物に(b)成分を含有させることは、粘度を低下させることに加え、透明性のある乳化剤組成物が得られる(c)成分の含有許容量を広げることができるので有用である。
【0013】
本発明の乳化剤組成物は、700nmにおける透過率が室温(25℃)の測定条件下で88%以上であることが必要である。乳化剤組成物の透明性は、目視での判別基準から、透過率で88%以上、好ましくは90%以上である。透過率は通常の分光光度計で測定できるが、本発明では、(株)島津製作所製、UV−VISIBLE SPECTROPHOTOMETER UV−1600により測定されたものとする。なお、測定セルは10mmのポリスチレン製のものを使用する。
【0014】
また、本発明の乳化剤組成物は、取り扱いのし易さの観点から、50℃の粘度が1300mPa・s以下であることが好ましく、1000mPa・s以下であることがより好ましく、800mPa・s以下であることが更に好ましい。また、多価アルコール脂肪酸エステルとポリグリセリン縮合リシノール酸エステル混合比率の観点から、20mPa・s以上であることがより好ましく、40mPa・s以上であることが更に好ましい。この粘度は、試料を内径45mm、高さ200mmの容器に適量を入れ50℃恒温槽へ1時間つけた後、粘度計(株式会社トキメック製、型番DVL−B2、製造年度1996年8月)を用い、ローターNo.1〜3、6〜60r/minで、測定開始1〜5分後に測定したものである。
【0015】
<豆腐用凝固製剤>
本発明の豆腐用凝固製剤は、上記本発明の乳化剤組成物と、(d)塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び塩化カルシウムからなる群から選ばれる一種以上の無機塩系凝固剤〔以下、(d)成分という〕とを含有する。
【0016】
本発明で用いられる(d)成分の無機塩系凝固剤としては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムが挙げられる。これら無機塩は無水物、結晶水含有物(例.塩化マグネシウム・6水和物、硫酸マグネシウム・7水和物、塩化カルシウム・2水和物等)のどちらでもよい。又、これらの無機塩系凝固剤は1種又は2種以上の混合物で用いることができるが、豆腐の風味の点からは塩化マグネシウムの単独使用が好ましい。
【0017】
本発明の豆腐用凝固製剤は、特に限定されるものではないが、例えば(a)成分を0.1〜5重量%、更に0.5〜3重量%、特に0.5〜2.5重量%含有することが好ましく、(b)成分を10〜60重量%、更に30〜60重量%含有することが好ましい。また(c)成分を、1〜50重量%、更に5〜40重量%含有することが好ましく、(d)成分を、5〜30重量%、更に8〜28重量%、特に10〜25重量%含有することが好ましい。
【0018】
本発明の豆腐用凝固製剤は、(a)〜(d)成分以外の成分を含有することもできる。
【0019】
また、本発明の豆腐用凝固製剤は、(e)ポリグリセリン脂肪酸エステル〔以下、(e)成分という〕を含有することができる。本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、自体公知のエステル化反応等により製造される。前記ポリグリセリンは、通常グリセリン又はグリシドールあるいはエピクロルヒドリン等を加熱し、重縮合反応させて得られる重合度の異なるポリグリセリンの混合物である。本発明で用いられるポリグリセリンとしては平均重合度が約2〜10程度のもの、例えば、ジグリセリン(平均重合度2)、トリグリセリン(平均重合度3)、テトラグリセリン(平均重合度4)、ヘキサグリセリン(平均重合度6)、オクタグリセリン(平均重合度8)又はデカグリセリン(平均重合度10)等が挙げられる。
【0020】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びエルカ酸等の群から選ばれる1種あるいは2種以上の混合物、好ましくはカプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の群から選ばれる1種又は2種以上を脂肪酸全体に対して約50重量%以上、好ましくは約70重量%以上、更に好ましくは約90重量%以上含有する脂肪酸又は脂肪酸混合物が挙げられる。
【0021】
本発明の豆腐用凝固製剤における(e)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば0.1〜5重量%、更に0.2〜4重量%が好ましく、0.4〜3重量%が特に好ましい。
【0022】
また、本発明の豆腐用凝固製剤は、(f)プロピレングリコール脂肪酸エステル〔以下、(f)成分という〕を含有することができる。本発明で用いられるプロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールと脂肪酸のエステル化生成物であり、自体公知のエステル化反応等により製造される。該エステルはモノエステルであってもジエステルであってもよいし、あるいはそれらの混合物であってもよい。好ましくはジエステルであり、混合物であればジエステルを約50重量%以上、好ましくは約80重量%以上、より好ましくは90重量%以上含むものがよい。本発明の豆腐用凝固製剤における(f)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば0.1〜5重量%、更に0.2〜4重量%が好ましく、0.4〜3重量%が特に好ましい。
【0023】
また、本発明の豆腐用凝固製剤は、(g)ソルビタン脂肪酸エステル〔以下、(g)成分という〕を含有することができる。ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール又はソルビタンと脂肪酸のエステル化生成物であり、自体公知のエステル化反応等により製造される。本発明の豆腐用凝固製剤における(g)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば0.1〜5重量%、更に0.2〜4重量%が好ましく、0.4〜3重量%が特に好ましい。
【0024】
(f)成分のプロピレングリコール脂肪酸エステル又は(g)成分のソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸等の群から選ばれる1種あるいは2種以上の混合物が挙げられる。好ましくはカプリル酸、カプリン酸及びラウリン酸の群から選ばれる1種又は2種以上を脂肪酸全体に対して約50重量%以上、好ましくは約70重量%以上、更に好ましくは約90重量%以上含有する脂肪酸又は脂肪酸混合物が挙げられる。
【0025】
また、本発明の豆腐用凝固製剤は、(h)糖類、糖アルコール及び多価アルコールの群から選ばれる1種又は2種以上〔以下、(h)成分という〕を含有することができる。
【0026】
本発明で用いられる糖類としては、例えばキシロース、ブドウ糖又は果糖等の単糖、ショ糖、乳糖又は麦芽糖等のオリゴ糖、デキストリン又は水飴等の澱粉分解物、あるいはマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース又はマルトヘキサオース等のマルトオリゴ糖等が挙げられ、好ましくはデキストリン又は水飴等の澱粉分解物である。
【0027】
本発明で用いられる糖アルコールとしては、ソルビトール、マンニトール、マルチトール又は還元水飴等があげられ、好ましくはソルビトール又は還元水飴である。
【0028】
本発明で用いられる多価アルコールとしては、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられ、好ましくはグリセリンである。
【0029】
上記した(h)成分は、単独で用いるか、又は2種以上の混合物として用いることができる。好ましくは多価アルコール単独での使用である。上記した(h)成分は、例えば水等の溶媒で溶解又は混合した溶液を用いてもよい。溶媒で溶解又は混合する場合、使用する糖類等によっても異なるが、例えばグリセリンの場合、水1重量部に対し、グリセリン約1〜20重量部、好ましくは約2〜15重量部、更に好ましくは約5〜10重量部である。
【0030】
本発明の豆腐用凝固製剤における(h)成分の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば1〜20重量%、更に5〜15重量%が好ましい。
【0031】
本発明の豆腐用凝固製剤を製造する方法は特に限定されるものではないが、以下に、好ましい豆腐用凝固製剤の製造方法を例示する。例えば、凝固点15℃以下の多価アルコール脂肪酸エステルに、(a)成分〜(c)成分を含む本発明の乳化剤組成物を加え、該混合物を約50〜80℃、好ましくは約60〜70℃に加熱する。加熱した該混合物を攪拌しながら、この中に無機塩類系凝固剤(例えば塩化マグネシウム)及びグリセリン−水混合溶液(例えばグリセリン:水=約9:1)を順次加えた後、高速回転式ホモジナイザー等を用いて、回転数約6000〜20000回転/分にて、約10〜60分間撹拌して無機塩類系凝固剤が均一に分散した分散液を得る。得られる分散液を好ましくは湿式粉砕機等で微粒化することにより、本発明による豆腐用凝固製剤を製造することができる。このようにして製造される本発明の豆腐用凝固製剤は、分散媒に無機塩類系凝固剤の微粒子(粒子径約0.01〜50μm)が超微分散された均一で、安定な組成物となり得る。
【0032】
本発明の豆腐用凝固製剤は、各成分を混合することにより製造されるが、本発明の豆腐用凝固製剤を製造するための装置としては、特に限定されず、例えば攪拌機、加熱用ジャケット等を備えた通常の攪拌混合槽を用いることができる。用いられる攪拌機としては、例えばプロペラ攪拌機、ホモミキサー又はクレアミックス等が挙げられ、好ましくはホモミキサーである。攪拌機により撹拌されて得られた分散液をさらに、湿式粉砕機等を用いて分散液中の粒子を微粒化するのが好ましい。湿式粉砕機は、粉砕機の粉砕室内に充填されたガラスビーズ又はジルコニアビ−ズ等を分散メディアとして分散液中の粒子を微粒化するものである。湿式粉砕機としては、例えばサンドミル、ビーズミル或いはダイノーミル等が挙げられ、これらを好ましく使用することができる。
【0033】
本発明による豆腐用凝固製剤中の超微分散される無機塩類系凝固剤の最大粒子径は好ましくは約50μm以下、より好ましくは約40μm以下、更に好ましくは約30μm以下である。豆腐用凝固製剤中の無機塩類系凝固剤の粒子を微粒子化することにより無機塩類系凝固剤の微粒子表面に、豆腐用凝固製剤中の他成分が効果的に吸着される。その結果、豆腐製造時、豆乳中に本発明の豆腐用凝固製剤が加えられ、混合されると、豆乳中に無機塩類系凝固剤の微粒子が均一に分散し、該無機塩類系凝固剤が豆乳中で徐々に且つ均一に溶解して豆乳の凝固が進められるため、豆腐の内相のきめが細かく均質で、保水性の良好な食感に優れた豆腐が得られる。また、無機塩類系凝固剤自体の沈殿の発生も抑制される。
【0034】
また、本発明による豆腐用凝固製剤中には、本発明の目的を阻害しない範囲で、例えば澱粉、寒天又はゼラチン等の増粘安定剤等を配合しても良い。ここで澱粉としては、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、エンドウ豆澱粉、又はそれらのエステル化処理(例えば、酢酸澱粉等)、エーテル化処理(例えば、ヒドロキシプロピル澱粉等)、架橋処理(例えば、リン酸架橋澱粉等)、酸化処理(例えば、ジアルデヒド澱粉等)もしくは湿熱処理等の処理を単一で又は組み合わせて施した加工澱粉等が挙げられる。
【0035】
本発明による豆腐用凝固製剤の豆乳に対する添加量は、本発明の凝固製剤中の無機塩系凝固剤量を通常豆乳に使用する量、すなわち、無機塩系凝固剤(無水物換算)として好ましくは約0.05〜0.5重量%の範囲で用いればよい。
【実施例】
【0036】
調製例1(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル)
攪拌、コンデンサー、受液槽、真空装置、窒素吹込み管が装着された290リットルのSUS316L製の反応装置に、ひまし油脂肪酸(伊藤製油(株)製CO-FA)97.1kgを仕込み、窒素置換を十分に行った後、反応液中に少量の窒素を吹き込みながら33.3kPaまで減圧にしてから昇温した。反応温度が210℃に到達してから7.5時間縮合反応を行い、冷却して酸価が41.3mgKOH/gの縮合リシノール酸を得た。次いで、得られた縮合リシノール酸73.2kgにポリグリセリン(坂本薬品工業(株)製ポリグリセリン#500)8.8kgと48%水酸化ナトリウム水溶液253gを加えて反応系内を33.3kPaまで減圧にしてから昇温した。反応温度が190℃に到達してから14時間エステル化反応を行った後、冷却した。得られた反応生成物に75%リン酸水溶液を加えて75〜82℃、1時間攪拌して中和し、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(酸価:1.9mgKOH/g、ケン化価:179.1mgKOH/g)を得た。
【0037】
実施例1〜6、比較例1〜3
調製例1で得たポリグリセリン縮合リシノール酸エステル〔(a)成分〕に、コーンサラダ油(S)(日清オイリオグループ株式会社製、日清コーン油(S)、製造番号060512)〔(b)成分〕と水〔(c)成分〕が表1に示した比率となるように調整、混合し、乳化剤組成物を得た。各組成物について透過率と粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例7
重量基準で60%塩化マグネシウム6水塩水溶液(赤穂化成製クリスタリン)61%、実施例4で得られた乳化剤組成物2.5%、コーンサラダ油(S)(実施例1等と同じもの)36.5%を配合して、その配合物を60℃に加温し、ホモミキサーを用いて5000r/minで混合を行った後、10000 r/minで1分間の混合を行い、豆腐凝固製剤を得た。次に下記の如く豆腐を製造した。
【0040】
[豆腐の製造]
豆乳は大豆ビントンを用い常法によって得られたBrix 12の豆乳を用いた。83℃に調整し、定量ポンプにより750g/分で送液されている該豆乳に、上記の凝固製剤を豆乳中の塩化マグネシウム濃度が0.5重量%になるように定量ポンプを用いてライン中で混合し、さらにマイルダー(荏原製作所製)を用いて6000r/minの回転数で機械的分散を行った。分散処理液を型枠(8cm×7cm×3cm(高さ))に150g充填した。20分間熟成した後、1晩5℃保存した。豆腐の物性、なめらかさ、風味を下記基準で評価を行い、結果を表2に示す。
【0041】
[豆腐の物性]
豆腐を半径1cm、高さ1.5cmの円柱に切り出し、クリープメーター(山電(株)製)を用い圧縮破断試験を行った。破断点の強度(N)は豆腐の硬さ、〔(破断点の圧縮距離)/破断歪率〕×100(%)は豆腐の弾力性の指標となる。破断強度5(N)以上、破断歪率50(%)以上の豆腐は充分な固さ、優れた弾力性を有する。
【0042】
[豆腐のなめらかさ]
専門パネラー5人により官能評価を行い、○、△、×の3段階で評価した。
【0043】
[豆腐の風味]
専門パネラー5人により官能評価を行った。評価はモナディック5点採点法により行い、最も風味の良い豆腐を5点、最も風味の悪い豆腐を1点とした。5人の平均値から、2.3点未満を×、2.3点以上3.7点未満を△、3.7点以上を○とした。
【0044】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、(b)凝固点15℃以下の多価アルコール脂肪酸エステル、及び(c)水を含む乳化剤組成物であって、その組成物の700nmにおける透過率が常温(25℃)の測定条件で88%以上である豆腐用凝固製剤用の乳化剤組成物。
【請求項2】
50℃の粘度が1300mPa・s以下である請求項1記載の豆腐用凝固剤用の乳化剤組成物。
【請求項3】
(a)と(b)の割合が、〔(b)/(a)〕×100で10〜150重量%である請求項1又は2記載の豆腐用凝固製剤用の乳化剤組成物。
【請求項4】
(a)と(c)の割合が、〔(c)/(a)〕×100で0.5〜1.2重量%である請求項1〜3の何れか記載の豆腐用凝固製剤用の乳化剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載の乳化剤組成物と、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び塩化カルシウムからなる群から選ばれる一種以上の無機塩系凝固剤とを含有する豆腐用凝固製剤。

【公開番号】特開2008−193999(P2008−193999A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34697(P2007−34697)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】