負極活物質およびそれを用いた電池
【課題】 高容量で、サイクル特性に優れた電池、およびそれに用いられる負極活物質を提供する。
【解決手段】 負極22は、リチウムと反応可能な負極活物質を含んでいる。この負極活物質は、構成元素として、スズとコバルトと鉄と炭素とを少なくとも含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、鉄の含有量は0.3質量%以上5.9質量%以下であり、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合が30質量%以上70質量%以下である。これにより高い容量を保ちつつ、サイクル特性が改善される。
【解決手段】 負極22は、リチウムと反応可能な負極活物質を含んでいる。この負極活物質は、構成元素として、スズとコバルトと鉄と炭素とを少なくとも含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、鉄の含有量は0.3質量%以上5.9質量%以下であり、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合が30質量%以上70質量%以下である。これにより高い容量を保ちつつ、サイクル特性が改善される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成元素としてスズ(Sn)とコバルト(Co)と炭素(C)と鉄(Fe)とを含む負極活物質およびそれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ),携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。これらの電子機器のポータブル電源として用いられている電池、特に二次電池はキーデバイスとして、エネルギー密度の向上を図る研究開発が活発に進められている。中でも、非水電解質二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池、ニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため、その改良に関する検討が各方面で行われている。
【0003】
リチウムイオン二次電池に使用される負極活物質としては、比較的高容量を示し良好なサイクル特性を有する難黒鉛化性炭素あるいは黒鉛などの炭素材料が広く用いられている。ただし、近年の高容量化の要求を考えると、炭素材料の更なる高容量化が課題となっている。
【0004】
このような背景から、炭素化原料と作成条件とを選ぶことにより炭素材料で高容量を達成する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、かかる炭素材料を用いた場合には、負極放電電位が対リチウム(Li)で0.8V〜1.0Vであり、電池を構成したときの電池放電電圧が低くなることから、電池エネルギー密度の点では大きな向上が見込めない。さらには、充放電曲線形状にヒステリシスが大きく、各充放電サイクルでのエネルギー効率が低いという欠点もある。
【0005】
一方で、炭素材料を上回る高容量負極として、ある種の金属がリチウムと電気化学的に合金化し、これが可逆的に生成・分解することを応用した合金材料に関する研究も進められている。例えば、Li−Al合金あるいはSn合金を用いた高容量負極が開発され、さらには、Si合金からなる高容量負極が開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、Li−Al合金,Sn合金あるいはSi合金は、充放電に伴って膨張収縮し、充放電を繰り返すたびに負極が微粉化するので、サイクル特性が極めて悪いという大きな問題がある。
【0007】
そこで、サイクル特性を改善する手法として、スズやケイ素(Si)を合金化することによりこれらの膨張を抑制することが検討されており、例えば鉄とスズとを合金化することが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。また、Mg2 Siなども提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−315825号公報
【特許文献2】米国特許第4950566号明細書等
【非特許文献1】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p414
【非特許文献2】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p4401
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの手法を用いた場合においても、サイクル特性改善の効果は十分とは言えず、合金材料における高容量負極の特長を十分に活かしきれていないのが実状である。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高容量で、サイクル特性に優れた電池およびそれに用いられる負極活物質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の負極活物質は、構成元素として、スズと、コバルトと、炭素と、鉄とを少なくとも含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量が0.3質量%以上5.9質量%以下であり、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合が30質量%以上70質量%以下のものある。
【0011】
本発明の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、構成元素としてスズと、コバルトと、炭素と、鉄とを少なくとも含む負極活物質を含有し、負極活物質における炭素の含有量は9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量は0.3質量%以上5.9質量%以下で、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合は30質量%以上70質量%以下のものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の負極活物質によれば、構成元素として、スズを含むようにしたので、高容量を得ることができる。また、構成元素としてコバルトと鉄とを含み、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合を30質量%以上70質量%以下とし、鉄の含有量を0.3質量%以上5.9質量%以下とするようにしたので、高容量を保ちつつ、サイクル特性を向上させることができる。更に、構成元素として炭素を含み、その含有量を9.9質量%以上29.7質量%以下とするようにしたので、サイクル特性をより向上させることができる。よって、この負極活物質を用いた本発明の電池によれば、高容量を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができる。
【0013】
更に、負極活物質に、構成元素としてケイ素を含むようにすれば、更に高い容量を得ることができる。
【0014】
更にまた、負極活物質に、構成元素として、インジウム(In),ニオブ(Nb),ゲルマニウム(Ge),チタン(Ti),モリブデン(Mo),アルミニウム(Al),リン(P),ガリウム(Ga)およびビスマス(Bi)からなる群のうちの少なくとも1種を含み、これらの含有量を14.9質量%以下とするようにすれば、サイクル特性を更に向上させることができ、特に2.4質量%以上とすれば、高い効果が得られる。
【0015】
加えて、電解質にハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、負極における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施の形態に係る負極活物質は、リチウムなどと反応可能なものであり、構成元素として、スズとコバルトと鉄とを含んでいる。スズは単位質量あたりのリチウムの反応量が高く、高い容量を得ることができるからである。また、スズ単体では十分なサイクル特性を得ることは難しいが、コバルトあるいは鉄を含むことによりサイクル特性を向上させることができるからである。
【0018】
コバルトの含有量は、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合で、30質量%以上70質量%以下の範囲内であることが好ましく、30質量%以上60%質量以下の範囲内であればより好ましい。割合が低いとコバルトの含有量が低下し十分なサイクル特性が得られず、また、割合が高いとスズの含有量が低下し、従来の負極材料、例えば炭素材料を上回る容量が得られないからである。
【0019】
鉄の含有量は、0.3質量%以上5.9質量%以下の範囲内であることが好ましい。少ないとサイクル特性を向上させる効果が十分でなく、また、多いとスズの含有量が低下し十分な容量が得られないからである。
【0020】
この負極活物質は、また、構成元素として、スズ,コバルトおよび鉄に加えて炭素を含んでいる。炭素を含むことによりサイクル特性をより向上させることができるからである。炭素の含有量は、9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内であることが好ましく、14.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、特に16.8質量%以上24.8質量%以下の範囲内であればより好ましい。この範囲内において高い効果を得ることができるからである。
【0021】
この負極活物質は、更に、構成元素として、これらに加えてケイ素を含んだ方が好ましい場合もある。ケイ素は単位質量あたりのリチウムの反応量が高く、容量をより向上させることができるからである。ケイ素の含有量は、0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内であることが好ましい。少ないと容量を高くする効果が十分でなく、多いと充放電に伴い微粉化してサイクル特性を低下させてしまうからである。
【0022】
この負極活物質は、更にまた、構成元素として、インジウム,ニオブ,ゲルマニウム,チタン,モリブデン,アルミニウム,リン,ガリウムおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を含んだ方が好ましい場合もある。サイクル特性をより向上させることができるからである。これらの含有量は、14.9質量%以下の範囲内であることが好ましく、2.4質量%以上14.9質量%以下の範囲内であればより好ましく、特に4.0質量%以上12.9質量%以下の範囲内であれば望ましい。少ないと十分な効果が得られず、多いとスズの含有量が低下して十分な容量が得られず、またサイクル特性も低下してしまうからである。
【0023】
また、この負極活物質は、結晶性の低いまたは非晶質な相を有している。この相は、リチウムなどと反応可能な反応相であり、これにより優れたサイクル特性を得ることができるようになっている。この相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用い、挿引速度を1°/minとした場合に、回折角2θで1.0°以上であることが好ましい。リチウムなどをより円滑に吸蔵および放出させることができると共に、電解質との反応性をより低減させることができるからである。
【0024】
なお、X線回折により得られた回折ピークがリチウムなどと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムなどとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較することにより容易に判断することができる。例えば、リチウムなどとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムなどと反応可能な反応相に対応するものである。この負極活物質では、結晶性の低いまたは非晶質な反応相の回折ピークが例えば2θ=20°〜50°の間に見られる。この結晶性の低いまたは非晶質な反応相は、例えば上述した各構元素を含んでおり、主に炭素により低結晶化または非晶質化しているものと考えられる。
【0025】
なお、この負極活物質は、この結晶性の低いまたは非晶質な相に加えて、各構成元素の単体または一部を含む相を有している場合もある。
【0026】
更に、この負極活物質は、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズなどが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集あるいは結晶化を抑制することができるからである。
【0027】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSは、軟X線(市販の装置ではAl−Kα線、またはMg−Kα線を用いる)を試料表面に照射し、試料表面から飛び出してくる光電子の運動エネルギーを測定することによって、試料表面から数nmの領域の元素組成、および元素の結合状態を調べる方法である。
【0028】
元素の内殻軌道電子の束縛エネルギーは、第1近似的には、元素上の電荷密度と相関して変化する。例えば、炭素元素の電荷密度が近傍に存在する元素との相互作用により減少した場合には、2p電子などの外殻電子が減少しているので、炭素元素の1s電子は殻から強い束縛力を受けることになる。すなわち、元素の電荷密度が減少すると、束縛エネルギーは高くなる。XPSでは、束縛エネルギーが高くなると、高いエネルギー領域にピークはシフトするようになっている。
【0029】
XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、負極活物質について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
【0030】
なお、負極活物質のXPS測定に際しては、表面が表面汚染炭素で覆われている場合、XPS装置に付属のアルゴンイオン銃で表面を軽くスパッタすることが好ましい。また、測定対象の負極活物質が後述のように電池の負極中に存在する場合には、電池を解体して負極を取り出した後、炭酸ジメチルなどの揮発性溶媒で洗浄するとよい。負極の表面に存在する揮発性の低い溶媒と電解質塩とを除去するためである。これらのサンプリングは、不活性雰囲気下で行うことが望ましい。
【0031】
また、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、物質表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。なお、XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークと負極活物質中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、負極活物質中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0032】
この負極活物質は、例えば各構成元素の原料を混合して電気炉,高周波誘導炉あるいはアーク溶解炉などにより溶解しその後凝固することにより、また、ガスアトマイズあるいは水アトマイズなどの各種アトマイズ法、各種ロール法、またはメカニカルアロイング法あるいはメカニカルミリング法などのメカノケミカル反応を利用した方法により製造することができる。中でも、メカノケミカル反応を利用した方法により製造することが好ましい。負極活物質を低結晶化あるいは非晶質な構造とすることができるからである。この方法には、例えば、遊星ボールミル装置を用いることができる。
【0033】
原料には、各構成元素の単体を混合して用いてもよいが、炭素以外の構成元素の一部については合金を用いることが好ましい。このような合金に炭素を加えてメカニカルアロイング法により合成することにより、低結晶化あるいは非晶質な構造を有するようにすることができ、反応時間の短縮も図ることができるからである。なお、原料の形態は粉体であってもよいし、塊状であってもよい。
【0034】
原料として用いる炭素には、難黒鉛化炭素,易黒鉛化炭素,グラファイト,熱分解炭素類,コークス,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,活性炭およびカーボンブラックなどの炭素材料のいずれか1種または2種以上を用いることができる。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子化合物を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。これらの炭素材料の形状は、繊維状,球状,粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
【0035】
この負極活物質は、例えば次のようにして二次電池に用いられる。
【0036】
(第1の電池)
図1は第1の二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池はいわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して積層し巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケルのめっきがされた鉄により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、液状の電解質である電解液が注入され、セパレータ23に含浸されている。また、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0037】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0038】
巻回電極体20は、例えば、センターピン24を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウムなどよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケル(Ni)などよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0039】
図2は図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面あるいは片面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。
【0040】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質としては、例えば、硫化チタン(TiS2 ),硫化モリブデン(MoS2 ),セレン化ニオブ(NbSe2 )あるいは酸化バナジウム(V2 O5 )などのリチウムを含有しない金属硫化物あるいは金属酸化物などが挙げられる。また、Lix MO2 (式中、Mは1種以上の遷移金属を表し、xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05≦x≦1.10である)を主体とするリチウム複合酸化物なども挙げられる。このリチウム複合酸化物を構成する遷移金属Mとしては、コバルト,ニッケルあるいはマンガン(Mn)が好ましい。このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2 ,LiNiO2 ,Lix Niy Co1-y O2 (式中、x,yは電池の充放電状態によって異なり、通常0<x<1,0<y<1.0である)、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物等を挙げることができる。
【0041】
負極22は、例えば、正極21と同様に、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面あるいは片面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
【0042】
負極活物質層22Bは、例えば、本実施の形態に係る負極活物質を含み、必要に応じてポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。このように本実施の形態に係る負極活物質を含むことにより、この二次電池では、高容量が得られると共に、サイクル特性を向上させることができるようになっている。負極活物質層22Bは、また、本実施の形態に係る負極活物質に加えて他の負極活物質、または導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。他の負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な炭素材料が挙げられる。この炭素材料は、充放電サイクル特性を向上させることができると共に、導電剤としても機能するので好ましい。炭素材料としては、例えば、負極活物質を製造する際に用いたものと同様のものが挙げられる。
【0043】
この炭素材料の割合は、本実施の形態の負極活物質に対して、1質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましい。炭素材料が少ないと負極22の導電率が低下し、多いと電池容量が低下してしまうからである。
【0044】
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0045】
セパレータ23に含浸された電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。溶媒としては、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステルあるいはプロピオン酸エステルなどが挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
溶媒は、また、ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含んでいればより好ましい。負極22における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を向上させることができるからである。このような炭酸エステル誘導体について具体的に例を挙げれば、化1に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化2に示した4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化3に示した4,5−ジフルオロ−1, 3−ジオキソラン−2−オン、化4に示した4−ジフルオロ−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化5に示した4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化6に示した4,5−ジクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化7に示した4−ブロモ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化8に示した4−ヨード−1,3−ジオキソラン−2−オン、化9に示した4−フルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、あるいは化10に示した4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどがあり、中でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが望ましい。より高い効果を得ることができるからである。
【0047】
【化1】
【0048】
【化2】
【0049】
【化3】
【0050】
【化4】
【0051】
【化5】
【0052】
【化6】
【0053】
【化7】
【0054】
【化8】
【0055】
【化9】
【0056】
【化10】
【0057】
溶媒は、この炭酸エステル誘導体のみにより構成するようにしてもよいが、大気圧(1.01325×105 Pa)において沸点が150℃以下である低沸点溶媒と混合して用いることが好ましい。イオン伝導性を高くすることができるからである。この炭酸エステル誘導体の含有量は、溶媒全体に対して0.1質量%以上80質量%以下の範囲内であることが好ましい。少ないと負極22における溶媒の分解反応を抑制する効果が十分ではなく、多いと粘度が高くなりイオン伝導性が低くなるからである。
【0058】
電解質塩としては例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiClO4 ,LiAsF6 ,LiPF6 ,LiBF4 ,LiB(C6 H5 )4 ,CH3 SO3 Li,CF3 SO3 Li,LiClあるいはLiBrなどが挙げられる。なお、電解質塩としては、リチウム塩を用いることが好ましいが、リチウム塩でなくてもよい。充放電に寄与するリチウムイオンは、正極21などから供給されれば足りるからである。
【0059】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0060】
まず、例えば、正極活物質と必要に応じて導電剤および結着剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの混合溶剤に分散させて正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ圧縮して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。続いて、正極21に正極リード25を溶接する。
【0061】
また、例えば、本実施の形態に係る負極活物質と必要に応じて他の負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの混合溶剤に分散させて負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し乾燥させ圧縮して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。続いて、負極22に負極リード26を溶接する。
【0062】
そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。次いで、電解液を電池缶11の内部に注入する。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
【0063】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解質を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、電解質を介して正極21に吸蔵される。ここでは、負極22が、スズ,コバルト,鉄および炭素を上述した割合で含む負極活物質を含有しているので、高い容量を保ちつつ、サイクル特性が改善される。
【0064】
このように本実施の形態に係る負極活物質によれば、構成元素として、スズを含むようにしたので、高容量を得ることができる。また、構成元素としてコバルトと鉄とを含み、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合を30質量%以上70質量%以下とし、鉄の含有量を0.3質量%以上5.9質量%以下とするようにしたので、高容量を保ちつつ、サイクル特性を向上させることができる。更に、構成元素として炭素を含み、その含有量を9.9質量%以上29.7質量%以下とするようにしたので、サイクル特性をより向上させることができる。よって、この負極活物質を用いた本実施の形態に係る電池によれば、高容量を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができる。
【0065】
更に、負極活物質に、構成元素としてケイ素を含むようにすれば、更に高い容量を得ることができる。
【0066】
更にまた、負極活物質に、構成元素として、インジウム,ニオブ,ゲルマニウム,チタン,モリブデン,アルミニウム,リン,ガリウムおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を含み、これらの含有量を14.9質量%以下とするようにすれば、サイクル特性を更に向上させることができ、特に2.4質量%以上とすれば、高い効果が得られる。
【0067】
加えて、電解質にハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、負極22における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を更に向上させることができる。
【0068】
(第2の電池)
図3は、第2の二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化,軽量化および薄型化が可能となっている。
【0069】
正極リード31,負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム,銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0070】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0071】
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0072】
図4は、図3に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
【0073】
正極33は、正極集電体33Aの片面あるいは両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの片面あるいは両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bの側が正極活物質層33Bと対向するように配置されている。正極集電体33A,正極活物質層33B,負極集電体34A,負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ上述した正極集電体21A,正極活物質層21B,負極集電体22A,負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
【0074】
電解質層36は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質層36は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。電解液(すなわち溶媒および電解質塩)の構成は、図1に示した円筒型の二次電池と同様である。高分子化合物は、例えばポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、またはポリアクリロニトリルなどが挙げられる。特に、酸化還元安定性の観点からは、フッ素系高分子化合物が望ましい。
【0075】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0076】
まず、正極33および負極34のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質層36を形成する。そののち、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接により取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接により取り付ける。次いで、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図3および図4に示した二次電池が完成する。
【0077】
また、この二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付けたのち、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材40で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。続いて、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物とを用意し、外装部材40の内部に注入する。
【0078】
電解質用組成物を注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次いで、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成し、図3に示した二次電池を組み立てる。
【0079】
この二次電池は、第1の二次電池と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。
【0080】
(第3の電池)
図5は、第3の二次電池の断面構成を表すものである。この二次電池は、正極リード51が取り付けられた正極52と、負極リード53が取り付けられた負極54とを、電解質層55を介して対向配置させた平板状の電極体50をフィルム状の外装部材56に収容したものである。外装部材56の構成は、上述した外装部材40と同様である。
【0081】
正極52は、正極集電体52Aに正極活物質層52Bが設けられた構造を有している。負極54は、負極集電体54Aに負極活物質層54Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層54Bの側が正極活物質層52Bと対向するように配置されている。正極集電体52A,正極活物質層52B,負極集電体54A,負極活物質層54Bの構成は、それぞれ上述した正極集電体21A,正極活物質層21B,負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bと同様である。
【0082】
電解質層55は、例えば、固体電解質により構成されている。固体電解質には、例えば、リチウムイオン導電性を有する材料であれば無機固体電解質、高分子固体電解質のいずれも用いることができる。無機固体電解質としては、窒化リチウムあるいはヨウ化リチウムなどを含むものなどが挙げられる。高分子固体電解質は、主に、電解質塩と電解質塩を溶解する高分子化合物とからなるものである。高分子固体電解質の高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物を単独あるいは混合して、または共重合させて用いることができる。
【0083】
高分子固体電解質は、例えば、高分子化合物と、電解質塩と、混合溶剤とを混合したのち、混合溶剤を揮発させて形成することができる。また、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを、混合溶剤に溶解させ、混合溶剤を揮発させたのち、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることにより形成することもできる。
【0084】
無機固体電解質は、例えば、正極52あるいは負極54の表面にスパッタリング法,真空蒸着法,レーザーアブレーション法,イオンプレーティング法,あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition )法などの気相法、またはゾルゲル法などの液相法により形成することができる。
【0085】
この二次電池は、第1または第2の二次電池と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0086】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0087】
(実施例1−1〜1−7)
まず、負極活物質を作製した。原料としてコバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末と炭素粉末とを用意し、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とを合金化してコバルト・スズ・鉄合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末を加えて乾式混合した。その際、原料の割合は、表1に示したように、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合(以下、Co/(Sn+Co) 比という)を37質量%で一定とすると共に、鉄を0.8質量%で一定とし、炭素を10質量%以上30質量%以下の範囲内で変化させた。続いて、この混合物20gを直径9mmの鋼玉約400gと共に、伊藤製作所製の遊星ボールミルの反応容器中にセットした。次いで、反応容器中をアルゴン雰囲気に置換し、毎分250回転の回転速度による10分間の運転と、10分間の休止とを運転時間の合計が30時間になるまで繰り返した。そののち、反応容器を室温まで冷却して合成された負極活物質粉末を取り出し、280メッシュのふるいを通して粗粉を取り除いた。
【0088】
得られた負極活物質について組成の分析を行った。炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、コバルト,スズおよび鉄の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。これらの分析値を表1に示す。表1に示した原料比および分析値は小数点以下2桁の数値を四捨五入したものである。なお、以下の実施例においても同じようにして示した。また、得られた負極活物質についてX線回折を行ったところ、2θ=20°〜50°の間に広い半値幅を有する回折ピークが観察された。この回折ピークの半値幅についても表1に示す。更に、XPSを行ったところ、図6に示したようにピークP1が得られた。ピークP1を解析すると、表面汚染炭素のピークP2と、ピークP2よりも低エネルギー側に負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られた。実施例1−1〜1−7のいずれについてもピークP3は、284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質中の炭素が他の元素と結合していることが確認された。
【0089】
【表1】
【0090】
次に、実施例1−1〜1−7の負極活物質粉末を用いて、図7に示したようなコイン型の二次電池を作製して初回充電容量を調べた。このコイン型電池は、本実施例の負極活物質を用いた試験極61を外装部材62に収容すると共に、対極63を外装部材64に貼り付け、電解液を含浸させたセパレータ65を介して積層したのち、ガスケット66を介してかしめたものである。
【0091】
試験極61は次のようにして作製した。まず、得られた負極活物質粉末70質量部と、導電剤および他の負極活物質である黒鉛20質量部と、導電剤であるアセチレンブラック1質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン4質量部とを混合し、適当な混合溶剤に分散させてスラリーとしたのち、これを銅箔集電体上に塗布、乾燥して直径15.2mmのペレットに打ち抜いた。
【0092】
対極63には、直径15.5mmに打ち抜いた金属リチウム板を用いた。電解液には炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとの混合溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を溶解させたものを用いた。
【0093】
初回充電容量は、1mAの定電流で電池電圧が0.2mVに達するまで定電流充電を行ったのち、0.2mVの定電圧で電流が10μAに達するまで定電圧充電を行い、試験極61の質量から銅箔集電体および結着剤の質量を除いた単位質量あたりの充電容量を求めた。なお、ここでいう充電は負極活物質へのリチウム挿入反応を意味する。この結果を表1および図8に示す。
【0094】
また、図1に示した円筒型の二次電池を作製した。まず、ニッケル酸化物からなる正極活物質と、導電剤であるケッチェンブラックと、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを、ニッケル酸化物:ケッチェンブラック:ポリフッ化ビニリデン=94:3:3の質量比で混合し、N−メチル−2−ピロリドンなどの混合溶剤に分散させて正極合剤スラリーとしたのち、これを帯状のアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し正極21を作製した。そののち、正極集電体21Aの一端にアルミニウム製の正極リード25を取り付けた。
【0095】
また、上述のように作製した負極活物質を含むスラリーを帯状銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層22Bを形成し負極22を作製した。続いて、負極集電体22Aの一端にニッケル製の負極リード26を取り付けた。
【0096】
正極21および負極22をそれぞれ作製したのち、セパレータ23を用意し、負極22,セパレータ23,正極21,セパレータ23の順に積層してこの積層体を渦巻状に多数回巻回し、巻回電極体20を作製した。
【0097】
巻回電極体20を作製したのち、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に、正極リード25を安全弁機構15に溶接して、巻回電極体20をニッケルめっきした鉄製の電池缶11の内部に収納した。そののち、電池缶11の内部に上述した電解液を減圧方式により注入した。
【0098】
電池缶11の内部に電解液を注入したのち、表面にアスファルトを塗布したガスケット17を介して電池蓋14を電池缶11にかしめることにより、図1に示した円筒型の二次電池を得た。
【0099】
得られた二次電池について、サイクル特性を測定した。これらの結果を表1および図8に示す。その際、サイクル特性は次のようにして測定した。
【0100】
まず、0.5Aの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電を行ったのち、4.2Vの定電圧で電流が10mAに達するまで定電圧充電を行い、引き続き、0.25Aの定電流で電池電圧が2.6Vに達するまで定電流放電を行うことにより、1サイクル目の充放電を行った。
【0101】
2サイクル目以降は、1.4Aの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電を行ったのち、4.2Vの定電圧で電流が10mAに達するまで定電圧充電を行い、引き続き、1.0Aの定電流で電池電圧が2.6Vに達するまで定電流放電を行った。サイクル特性は、2サイクル目の放電容量に対する300サイクル目の容量維持率(300サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100(%)を求めた。
【0102】
実施例1−1〜1−7に対する比較例1−1として、原料として炭素粉末を用いなかったことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。また、比較例1−2〜1−6として、炭素粉末の原料比を表1に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。比較例1−1〜1−6の負極活物質についても、実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析および2θ=20°〜50°の間に見られた広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を測定した。それらの結果を表1に示す。また、XPSを行ったところ、比較例1−3〜1−6では、図6に示したようにピークP1が得られた。ピークP1を解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。一方、比較例1−1では図9に示したようにピークP4が得られ、これを解析したところ、表面汚染炭素のピークP2のみが得られた。また、比較例1−2では、原料として用いた炭素の量が少なかったので、解析によりピークP2のみが得られ、ピークP3はほとんど検出されなかった。
【0103】
また、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。これらの結果についても表1および図8に示す。
【0104】
表1および図8から分かるように、負極活物質における炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量以下である実施例1−1〜1−7によれば、炭素の含有量がこの範囲外である比較例1−1〜1−6よりも容量維持率を飛躍的に向上させることができた。また、初回充電容量および放電容量も向上させることができた。
【0105】
更に、負極活物質における炭素の含有量が14.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、更には16.8質量%以上24.8質量%以下の範囲内においてより高い値が得られた。
【0106】
すなわち、炭素の含有量を9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内とすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができ、14.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、更には16.8質量%以上24.8質量%以下の範囲内とすればより好ましいことが分かった。
【0107】
(実施例2−1〜2−9)
コバルトとスズと鉄と炭素との原料比を表2に示したように変化させて負極活物質を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして二次電池を作製した。具体的には、鉄の原料比を0.8質量%で一定とすると共に、炭素の原料比を10質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下の範囲内で変化させた。
【0108】
【表2】
【0109】
また、実施例2−1〜2−9に対する比較例2−1〜2−4として、Co/(Sn+Co) 比を表2に示したように変化させたことを除き、他は実施例2−1〜2−9と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例2−1〜2−4におけるCo/(Sn+Co) 比は、それぞれ28質量%,25質量%,20質量%,75質量%とした。
【0110】
得られた実施例2−1〜2−9および比較例2−1〜2−4の負極活物質についても、実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析および2θ=20°〜50°の間に見られた広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を測定した。それらの結果を表2に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表2および図10に示す。
【0111】
表2および図10から分かるように、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下とした実施例2−1〜2−9によれば、30質量%未満である比較例2−1〜2−3よりも容量維持率を飛躍的に向上させることができ、70質量%超である比較例2−4よりも初回充電容量を飛躍的に高くすることができた。特に、Co/(Sn+Co) 比を60質量%以下とすれば、高い初回充電容量が得られた。
【0112】
すなわち、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下とすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができることが分かった。また、Co/(Sn+Co) 比を60質量%以下とすればより好ましいことが分かった。
【0113】
(実施例3−1〜3−9)
コバルトとスズと鉄と炭素との原料比を表3に示したように変化させて負極活物質を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして二次電池を作製した。具体的には、鉄の原料比を0.8質量%で一定とすると共に、炭素の原料比を20質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下の範囲内で変化させた。
【0114】
【表3】
【0115】
また、実施例3−1〜3−9に対する比較例3−1〜3−4として、Co/(Sn+Co) 比を表3に示したように変化させたことを除き、他は実施例3−1〜3−9と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例3−1〜3−4におけるCo/(Sn+Co) 比は、それぞれ28質量%,25質量%,20質量%,75質量%とした。
【0116】
実施例3−1〜3−9および比較例3−1〜3−4の負極活物質についても、実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析および2θ=20°〜50°の間に見られた広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を測定した。それらの結果を表3に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表3および図11に示す。
【0117】
表3および図11から分かるように、実施例2−1〜2−9と同様の結果が得られた。すなわち、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下とすれば、炭素の含有量が19.8質量%の場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0118】
(実施例4−1〜4−9)
コバルトとスズと鉄と炭素との原料比を表4に示したように変化させて負極活物質を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして二次電池を作製した。具体的には、鉄の原料比を0.8質量%で一定とすると共に、炭素の原料比を30質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下の範囲内で変化させた。
【0119】
【表4】
【0120】
また、実施例4−1〜4−9に対する比較例4−1〜4−4として、Co/(Sn+Co) 比を表4に示したように変化させたことを除き、他は実施例4−1〜4−9と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例4−1〜4−4におけるCo/(Sn+Co) 比は、それぞれ28質量%,25質量%,20質量%,75質量%とした。
【0121】
得られた実施例4−1〜4−9および比較例4−1〜4−4の負極活物質についても、実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析および2θ=20°〜50°の間に見られた広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を測定した。それらの結果を表4に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表4および図12に示す。
【0122】
表4および図12から分かるように、実施例4−1〜4−9と同様の結果が得られた。すなわち、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下とすれば、炭素の含有量が29.7質量%の場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0123】
(実施例5−1〜5−6,6−1〜6−6)
負極活物質を合成する際の運転時間および回転数を変えて2θ=20°〜50°の間に見られる広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。その際、コバルトとスズと鉄と炭素との原料比は、実施例5−1〜5−6と実施例6−1〜6−6とで表5に示したように炭素の原料比を変化させ、Co/(Sn+Co) 比は同一とした。
【0124】
【表5】
【0125】
実施例5−1〜5−6,6−1〜6−6の負極活物質についても、実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析および2θ=20°〜50°の間に見られた広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を測定した。それらの結果を表5に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表5に示す。
【0126】
表5から分かるように、実施例5−1〜5−6においても、実施例6−1〜6−6においても、半値幅が大きくなるにつれて容量維持率が向上した。すなわち、回折ピークの半値幅がより大きい反応相を有するようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0127】
(実施例7−1〜7−5)
コバルトとスズと鉄と炭素との原料比を表6に示したように変化させて負極活物質を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして二次電池を作製した。具体的には、鉄の原料比を0.3質量%以上6.0質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比を37質量%で一定とすると共に、炭素の原料比を20質量%で一定とした。
【0128】
【表6】
【0129】
また、実施例7−1〜7−5に対する比較例7−1〜7−4として、鉄の原料比を表6に示したように変化させたことを除き、他は実施例7−1〜7−5と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例7−1〜7−4における鉄の原料比は0.1質量%,0.2質量%,6.5質量%,7.0質量%とした。
【0130】
得られた実施例7−1〜7−5および比較例7−1〜7−4の負極活物質についても、実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析および2θ=20°〜50°の間に見られた広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を測定した。それらの結果を表6に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表6および図13に示す。
【0131】
表6および図13から分かるように、鉄の含有量を0.3質量%以上5.9質量%以下とした実施例7−1〜7−5によれば、0.3質量%未満である比較例7−1,7−2よりも容量維持率を向上させることができ、5.9質量%超である比較例7−3,7−4よりも初回充電容量を高くすることができた。
【0132】
すなわち、鉄の含有量を0.3質量%以上5.9質量%以下とすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0133】
(実施例8−1〜8−11)
原料として、更にケイ素粉末を用い、コバルトとスズと鉄と炭素とケイ素との原料比を表7に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。具体的には、ケイ素粉末の原料比を0.3質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比および炭素の原料比を一定とした。実施例8−1〜8−11の二次電池についても実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表7に示す。なお、ケイ素の含有量はICP発光分析により測定した。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表8に示す。
【0134】
【表7】
【0135】
【表8】
【0136】
表8から分かるように、ケイ素を含む実施例8−1〜8−11によれば、ケイ素を含まない実施例1−5よりも初回充電容量を向上させることができた。但し、ケイ素の含有量が多くなるに従い、容量維持率は低下する傾向が見られた。
【0137】
すなわち、負極活物質にケイ素を含有するようにすれば、容量を向上させることができ、その含有量は0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内が好ましいことが分かった。
【0138】
(実施例9−1〜9−10)
実施例9−1では、コバルトとスズと鉄と炭素との原料比を表9に示したようにしたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。また、実施例9−2〜9−10では、原料としてコバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末と炭素粉末とチタン粉末とを用意し、それらの原料比を表9に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。具体的には、チタンの原料比を0質量%以上16.0質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比および炭素の原料比を一定とした。また、負極活物質は、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とチタン粉末とを合金化してコバルト・スズ・鉄・チタン合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末を混合して合成した。実施例9−1〜9−10の負極活物質についても実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表9に示す。なお、チタンの含有量は、ICP発光分析により測定した。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表9および図14に示す。
【0139】
【表9】
【0140】
表9および図14から分かるように、チタンを14.9質量%以下の範囲内で含む実施例9−2〜9−9によれば、チタンを含まない実施例9−1、あるいは14.9質量%超である実施例9−10よりも容量維持率を向上させることができた。また、チタンの含有量が2.4質量%以上、特に4.0質量%以上12.9質量%以下の範囲内でより高い値が得られた。
【0141】
すなわち、負極活物質にチタンを14.9質量%以下の範囲内で含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができ、2.4質量%以上とすればより好ましく、特に4.0質量%以上12.9質量%以下の範囲内とすれば更に好ましいことが分かった。
【0142】
(実施例10−1〜10−9)
原料として、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末と炭素粉末とビスマス粉末とを用意し、これらの原料比を表10に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。具体的には、ビスマスの原料比を1.2質量%以上16.0質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比および炭素の原料比を一定とした。また、また、負極活物質は、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とビスマス粉末とを合金化してコバルト・スズ・鉄・ビスマス合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末を混合して合成した。負極活物質についても実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表10に示す。なお、ビスマスの含有量は、ICP発光分析により測定した。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表10および図15に示す。
【0143】
【表10】
【0144】
表10および図15に示したように、ビスマスを添加した実施例10−1〜10−9についてもチタンを添加した実施例9−2〜9−10と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質にビスマスを14.9質量%以下の範囲内で含むようにした場合にも、サイクル特性をより向上させることができ、4.0質量%以上とすればより好ましいことが分かった。
【0145】
(実施例11−1〜11−14)
原料として、コバルト粉末、スズ粉末、鉄粉末、炭素粉末、ならびにモリブデン粉末,ニオブ粉末,アルミニウム粉末,ゲルマニウム粉末,インジウム粉末,ガリウム粉末,リン粉末,またはアルミニウム粉末およびリン粉末を用い、コバルト,スズ,鉄,炭素,モリブデン,ニオブ,アルミニウム,ゲルマニウム,インジウム,ガリウム,およびリンの原料比を表11に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。具体的には、モリブデン,ニオブ,アルミニウム,ゲルマニウム,インジウム,ガリウム,リン,またはアルミニウムおよびリンの原料比を、3.0質量%,4.0質量%,5.0質量%または6.0質量%とし、Co/(Sn+Co) 比を35質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とした。また、負極活物質は、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とを合金化してコバルト・スズ・鉄合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末、ならびにモリブデン粉末,ニオブ粉末,アルミニウム粉末,ゲルマニウム粉末,インジウム粉末,ガリウム粉末,リン粉末,またはアルミニウム粉末およびリン粉末を混合して合成した。実施例11−1〜11−14の負極活物質についても実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表11に示す。なお、モリブデン,ニオブ,アルミニウム,ゲルマニウム,インジウム,ガリウムおよびリンの含有量は、ICP発光分析により測定した。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。また、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表12に示す。
【0146】
【表11】
【0147】
【表12】
【0148】
表11,12に示したように、実施例11−1〜11−14についても、実施例9−2〜9−10,10−1〜10−9と同様にサイクル特性を向上させることができた。すなわち、負極活物質にモリブデン,ニオブ,アルミニウム,ゲルマニウム,インジウム,ガリウムおよびリンからなる群のうちの少なくとも1種を含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0149】
(実施例12−1〜12−8)
原料として、コバルト粉末、スズ粉末、鉄粉末、炭素粉末、ケイ素粉末、チタン粉末、およびインジウム粉末を用意し、それらの原料比を表13に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。具体的には、チタン、またはチタンおよびインジウムの原料比を0質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比,炭素の原料比およびケイ素の原料比を一定とした。また、負極活物質は、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とチタン粉末、またはコバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とチタン粉末とインジウム粉末とを合金化して、コバルト・スズ・鉄・チタン合金粉末、またはコバルト・スズ・鉄・チタン・インジウム合金粉末を作製したのち、これらの合金粉末に炭素粉末およびケイ素粉末を混合して合成した。実施例12−1〜12−8の負極活物質についても実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表14に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。また、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表14に示す。
【0150】
【表13】
【0151】
【表14】
【0152】
表13,14から分かるように、ケイ素に加えてチタン、またはチタンとインジウムとを添加した実施例12−2〜12−8によれば、これらを含まない実施例9−1,12−1よりも初回充電容量および容量維持率をより向上させることができた。
【0153】
すなわち、負極活物質にチタン,モリブデン,ニオブ,アルミニウム,ゲルマニウム,インジウム,ガリウム, リンおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種と、ケイ素とを含むようにすれば、容量およびサイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0154】
(実施例13−1〜13−8)
原料として、コバルト粉末と、スズ粉末と、鉄粉末と、炭素粉末と、ケイ素粉末と、チタン粉末とを用意し、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末、またはコバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とチタン粉末とを合金化して、コバルト・スズ・鉄合金粉末、またはコバルト・スズ・鉄・チタン合金粉末を作製したのち、これらの合金粉末に炭素粉末、または炭素粉末およびケイ素粉末を混合したことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成した。その際、原料比を表15に示したように変化させた。また、この負極活物質を用い、実施例13−1〜13−4と、13−5〜13−8とで電解液の組成を変えて、実施例1−1〜1−7と同様の図1に示した円筒型の二次電池を作製した。その際、実施例13−1〜13−4では、炭酸エチレンと炭酸プロピレンと炭酸ジメチルとを、炭酸エチレン:炭酸プロピレン:炭酸ジメチル=30:10:60の質量比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1mol/lの割合で溶解させた電解液を用い、実施例13−5〜13−8では4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと炭酸エチレンと炭酸プロピレンと炭酸ジメチルとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸プロピレン:炭酸ジメチル=20:10:10:60の質量比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1mol/lの割合で溶解させたものを用いた。なお、実施例12−1と実施例12−5、実施例12−2と実施例12−6、実施例12−3と実施例12−7、および実施例12−4と実施例12−8とは同一の負極活物質を用いた。
【0155】
【表15】
【0156】
実施例13−1〜13−8の負極活物質についても実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表15に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。また、二次電池についても同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表15に示す。
【0157】
表15から分かるように、溶媒に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた実施例13−5〜13−8によれば、これを用いていない実施例13−1〜13−4よりも容量維持率を向上させることができた。
【0158】
(実施例14−1〜14−18)
溶媒の組成を表16に示したように変えたことを除き、他は実施例13−1,13−5と同様にして円筒型の二次電池を作製した。実施例14−1〜14−18の二次電池についても実施例1−1〜1−7と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表16に示す。
【0159】
【表16】
【0160】
表16から分かるように、容量維持率は4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量が増加するに伴い大きくなり、極大値を示したのち低下した。
【0161】
すなわち、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、溶媒の組成に関わらず、サイクル特性を向上させることができ、特に0.1質量%以上80質量%以下の範囲内で含むようにすれば、高い効果を得ることができることが分かった。
【0162】
(実施例15−1〜15−6)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンに変えて、他のハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を用いたことを除き、他は実施例13−5と同様にして円筒型の二次電池を作製した。その際、実施例15−1では4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用い、実施例15−2では4−ジフルオロ−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用い、実施例15−3では4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用い、実施例15−4では4−ブロモ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用い、実施例15−5では4−ヨード−1,3−ジオキソラン−2−オンを用い、実施例15−6では4−フルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた。
【0163】
実施例15−1〜15−6の二次電池についても、実施例1−1〜1−7と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表17に示す。
【0164】
【表17】
【0165】
表17から分かるように、他のハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を用いても、実施例13−5と同様にサイクル特性を向上させることができた。但し、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた実施例13−5が特に容量維持率が高かった。すなわち、溶媒にハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、サイクル特性を向上させることができ、中でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば特に効果的であることが分かった。
【0166】
(実施例16−1〜16−7)
液状の電解液に代えて、ゲル状の電解質よりなる電解質層を試験極61および対極63の表面に形成したことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にしてコイン型の二次電池を作製した。すなわち、試験極61には、表18に示したようにコバルトとスズと鉄と炭素とを実施例1−1〜1−7と同様の割合で混合して合成した負極活物質を用いた。また、電解質層は次のように作製した。まず、溶媒として炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンと、電解質塩としてLiPF6 とを、炭酸エチレン:炭酸プロピレン:LiPF6 =11.5:11.5:4の質量比で混合した電解液に、高分子化合物としてフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体と、混合溶剤として炭酸ジエチルとを、電解液:高分子化合物:混合溶剤=27:10:60の質量比となるように混合して前駆溶液を作製した。フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体の分子量は、600000とした。得られた前駆溶液を試験極61と対極63とが対向するそれぞれの面に均一に塗布し、常温で6時間放置することにより炭酸ジエチルを揮発させゲル状の電解質層を形成した。
【0167】
【表18】
【0168】
得られたコイン型の二次電池について、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量を測定した。結果を表18および図16に示す。
【0169】
また、図3および図4に示した二次電池を作製した。まず、実施例1−1〜1−7と同様にして正極33および負極34を作製し、正極リード31および負極リード32を取り付けた。
【0170】
次いで、上述した前駆溶液を正極33および負極34に均一に塗布し、常温で6時間放置することにより炭酸ジエチルを揮発させゲル状の電解質層36を形成した。
【0171】
そののち、正極33と負極34とを、電解質層36が形成された面が対向するようにセパレータ35を介して積層し、巻回して巻回電極体30を形成した。
【0172】
得られた巻回電極体30を防湿性アルミラミネートフィルムよりなる外装部材40に真空封入することにより、図3および図4に示した二次電池を作製した。
【0173】
これらの二次電池について、実施例1−1〜1−7と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表18および図16に示す。
【0174】
実施例16−1〜16−7に対する比較例16−1〜16−6として、コバルトとスズと鉄と炭素とを表18に示した割合で混合して合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、比較例1−1〜1−6と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。
【0175】
得られた比較例16−1〜16−6の二次電池についても、初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表18および図16に示す。
【0176】
表18および図16から分かるように、実施例1−1〜1−7と同様の結果が得られた。すなわち、ゲル状の電解質を用いても、炭素の含有量を9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内とすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができ、14.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、更には16.8質量%以上24.8質量%以下の範囲内とすればより好ましいことが分かった。
【0177】
(実施例17−1〜17−9,18−1〜18−9,19−1〜19−9)
実施例17−1〜17−9として、表19に示したように、炭素の原料比を10質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下の範囲内で変化させて合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例2−1〜2−9と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。また、実施例17−1〜17−9に対する比較例17−1〜17−4として、表19に示したように、炭素の原料比を10質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を、それぞれ28質量%,25質量%,20質量%,75質量%として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、比較例2−1〜2−4と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例17−1〜17−9と同様にして二次電池を作製した。
【0178】
【表19】
【0179】
実施例18−1〜18−9として、表20に示したように、炭素の原料比を20質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下の範囲内で変化させて合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例3−1〜3−9と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。また、実施例18−1〜18−9に対する比較例18−1〜18−4として、表20に示したように、炭素の原料比を20質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を、それぞれ28質量%,25質量%,20質量%,75質量%として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、比較例3−1〜3−4と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例18−1〜18−9と同様にして二次電池を作製した。
【0180】
【表20】
【0181】
実施例19−1〜19−9として、表21に示したように、炭素の原料比を30質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下の範囲内で変化させて合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例4−1〜4−9と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。また、実施例19−1〜19−9に対する比較例19−1〜19−4として、表21に示したように、炭素の原料比を30質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を、それぞれ28質量%,25質量%,20質量%,75質量%として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、比較例4−1〜4−4と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例19−1〜19−9と同様にして二次電池を作製した。
【0182】
【表21】
【0183】
得られた実施例17−1〜17−9,18−1〜18−9,19−1〜19−9および比較例17−1〜17−4,18−1〜18−4,19−1〜19−4の二次電池についても、実施例1−1〜1−7と同様にして充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表19〜21および図17〜19に示す。
【0184】
表19〜21および図17〜19から分かるように、実施例2−1〜2−9,3−1〜3−9,4−1〜4−9と同様の結果が得られた。すなわち、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下とすれば、ゲル状の電解質を用いた場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができることが分かった。また、Co/(Sn+Co) 比を60質量%以下とすればより好ましいことが分かった。
【0185】
(実施例20−1〜20−5)
表22に示したように、Co/(Sn+Co) 比および炭素の原料比を一定とし、鉄の原料比を0.3質量%以上6.0質量%以下の範囲内で変化させて合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例7−1〜7−5と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。
【0186】
【表22】
【0187】
また、実施例20−1〜20−5に対する比較例20−1〜20−4として、表22に示したように、Co/(Sn+Co) 比および炭素の原料比を一定とし、鉄の原料比を、それぞれ0.1質量%,0.2質量%,6.5質量%,7.0質量%として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、比較例7−1〜7−4と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例20−1〜20−5と同様にして二次電池を作製した。
【0188】
得られた実施例20−1〜20−5,および比較例20−1〜20−4の二次電池についても、実施例1−1〜1−7と同様にして充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表22および図20に示す。
【0189】
表22および図20から分かるように、実施例7−1〜7−5と同様の結果が得られた。すなわち、鉄の含有量を0.3質量%以上5.9質量%以下とすれば、ゲル状の電解質を用いた場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0190】
(実施例21−1〜21−11)
表23に示したようにケイ素粉末の原料比を0.3質量%以上10質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比および炭素の原料比を一定として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例8−1〜8−11と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。
【0191】
得られた実施例21−1〜21−11の二次電池について、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表24に示す。
【0192】
【表23】
【0193】
【表24】
【0194】
表23,24から分かるように、実施例8−1〜8−11と同様の結果が得られた。すなわち、ゲル状の電解質を用いた場合にも、負極活物質にケイ素を含有するようにすれば、容量を向上させることができ、その含有量は0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内が好ましいことが分かった。
【0195】
(実施例22−1〜22−10)
表25に示したように、チタンの原料比を0質量%以上16質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比および炭素の原料比を一定として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例9−1〜9−10と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−9と同様にして二次電池を作製した。
【0196】
【表25】
【0197】
得られた実施例22−1〜22−10の二次電池について、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表25および図21に示す。
【0198】
表25および図21から分かるように、実施例9−1〜9−10と同様の結果が得られた。すなわち、ゲル状の電解質を用いても、負極活物質にチタンを14.9質量%以下の範囲内で含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができ、2.4質量%以上とすればより好ましく、特に4.0質量%以上12.9質量%以下の範囲内とすれば更に好ましいことが分かった。
【0199】
(実施例23−1〜23−8)
表26に示したように、チタンおよびインジウムの原料比を4.0質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比および炭素の原料比を一定として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例12−1〜12−8と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。
【0200】
得られた実施例23−1〜23−8の二次電池について、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表27に示す。
【0201】
【表26】
【0202】
【表27】
【0203】
表26,27から分かるように、実施例12−1〜12−8と同様の結果が得られた。すなわち、ゲル状の電解質を用いても、負極活物質にチタン,モリブデン,ニオブ,アルミニウム,ゲルマニウム,インジウム,ガリウム,リンおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種と、ケイ素とを含むようにすれば、容量およびサイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0204】
(実施例24−1〜24−3)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸プロピレン=1:10.5:11.5、5:6.5:11.5、または10:1.5:11.5の質量比で混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例16−5と同様にして二次電池を作製した。
【0205】
得られた実施例24−1〜24−3の二次電池について、実施例1−1〜1−7と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表28に示す。
【0206】
【表28】
【0207】
表28から分かるように、溶媒に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた実施例24−1〜24−3によれば、これを用いていない実施例16−5よりも容量維持率を向上させることができた。すなわち、溶媒にハロゲン原子を有する環状の炭酸エステルを含むようにすれば、ゲル状の電解質を用いた場合にも、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0208】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、コイン型,シート型,および巻回構造を有する二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は、ボタン型あるいは角型などの外装部材を用いた他の形状を有する二次電池、または正極および負極を複数積層した積層構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。
【0209】
また、実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、負極活物質と反応可能であればナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その際、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な正極活物質あるいは非水溶媒などは、その電極反応物質に応じて選択される。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した二次電池における巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る他の二次電池の構成を表す分解斜視図である。
【図4】図3に示した巻回電極体のI−I線に沿った構成を表す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る他の二次電池の構成を表す断面図である。
【図6】実施例で作製した負極活物質に係るX線光電子分光法により得られたピークの一例を表すものである。
【図7】実施例で作製したコイン型電池の構成を示す断面図である。
【図8】負極活物質における炭素の含有量と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す特性図である。
【図9】比較例で作製した負極活物質に係るX線光電子分光法により得られたピークの一例を表すものである。
【図10】負極活物質におけるスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図11】負極活物質におけるスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図12】負極活物質におけるスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図13】負極活物質における鉄の含有量と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す特性図である。
【図14】負極活物質におけるチタンの含有量と、容量維持率との関係を表す特性図である。
【図15】負極活物質におけるビスマスの含有量と、容量維持率との関係を表す特性図である。
【図16】負極活物質における炭素の含有量と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図17】負極活物質におけるスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図18】負極活物質におけるスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図19】負極活物質におけるスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図20】負極活物質における鉄の含有量と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図21】負極活物質におけるチタンの含有量と、容量維持率との関係を表す他の特性図である。
【符号の説明】
【0211】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17,66…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33,52…正極、21A, 33A,52A…正極集電体、21B,33B,52B…正極活物質層、22,34,54…負極、22A,34A,54A…負極集電体、22B,34B,54B…負極活物質層、23,35,65…セパレータ、24…センターピン、25,31,51…正極リード、26,32,53…負極リード、36,55…電解質層、37…保護テープ、40,56,62,64…外装部材、41…密着フィルム、50…電極体、61…試験極、63…対極。
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成元素としてスズ(Sn)とコバルト(Co)と炭素(C)と鉄(Fe)とを含む負極活物質およびそれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ),携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。これらの電子機器のポータブル電源として用いられている電池、特に二次電池はキーデバイスとして、エネルギー密度の向上を図る研究開発が活発に進められている。中でも、非水電解質二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池、ニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため、その改良に関する検討が各方面で行われている。
【0003】
リチウムイオン二次電池に使用される負極活物質としては、比較的高容量を示し良好なサイクル特性を有する難黒鉛化性炭素あるいは黒鉛などの炭素材料が広く用いられている。ただし、近年の高容量化の要求を考えると、炭素材料の更なる高容量化が課題となっている。
【0004】
このような背景から、炭素化原料と作成条件とを選ぶことにより炭素材料で高容量を達成する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、かかる炭素材料を用いた場合には、負極放電電位が対リチウム(Li)で0.8V〜1.0Vであり、電池を構成したときの電池放電電圧が低くなることから、電池エネルギー密度の点では大きな向上が見込めない。さらには、充放電曲線形状にヒステリシスが大きく、各充放電サイクルでのエネルギー効率が低いという欠点もある。
【0005】
一方で、炭素材料を上回る高容量負極として、ある種の金属がリチウムと電気化学的に合金化し、これが可逆的に生成・分解することを応用した合金材料に関する研究も進められている。例えば、Li−Al合金あるいはSn合金を用いた高容量負極が開発され、さらには、Si合金からなる高容量負極が開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、Li−Al合金,Sn合金あるいはSi合金は、充放電に伴って膨張収縮し、充放電を繰り返すたびに負極が微粉化するので、サイクル特性が極めて悪いという大きな問題がある。
【0007】
そこで、サイクル特性を改善する手法として、スズやケイ素(Si)を合金化することによりこれらの膨張を抑制することが検討されており、例えば鉄とスズとを合金化することが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。また、Mg2 Siなども提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−315825号公報
【特許文献2】米国特許第4950566号明細書等
【非特許文献1】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p414
【非特許文献2】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p4401
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの手法を用いた場合においても、サイクル特性改善の効果は十分とは言えず、合金材料における高容量負極の特長を十分に活かしきれていないのが実状である。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高容量で、サイクル特性に優れた電池およびそれに用いられる負極活物質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の負極活物質は、構成元素として、スズと、コバルトと、炭素と、鉄とを少なくとも含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量が0.3質量%以上5.9質量%以下であり、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合が30質量%以上70質量%以下のものある。
【0011】
本発明の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、構成元素としてスズと、コバルトと、炭素と、鉄とを少なくとも含む負極活物質を含有し、負極活物質における炭素の含有量は9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量は0.3質量%以上5.9質量%以下で、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合は30質量%以上70質量%以下のものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の負極活物質によれば、構成元素として、スズを含むようにしたので、高容量を得ることができる。また、構成元素としてコバルトと鉄とを含み、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合を30質量%以上70質量%以下とし、鉄の含有量を0.3質量%以上5.9質量%以下とするようにしたので、高容量を保ちつつ、サイクル特性を向上させることができる。更に、構成元素として炭素を含み、その含有量を9.9質量%以上29.7質量%以下とするようにしたので、サイクル特性をより向上させることができる。よって、この負極活物質を用いた本発明の電池によれば、高容量を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができる。
【0013】
更に、負極活物質に、構成元素としてケイ素を含むようにすれば、更に高い容量を得ることができる。
【0014】
更にまた、負極活物質に、構成元素として、インジウム(In),ニオブ(Nb),ゲルマニウム(Ge),チタン(Ti),モリブデン(Mo),アルミニウム(Al),リン(P),ガリウム(Ga)およびビスマス(Bi)からなる群のうちの少なくとも1種を含み、これらの含有量を14.9質量%以下とするようにすれば、サイクル特性を更に向上させることができ、特に2.4質量%以上とすれば、高い効果が得られる。
【0015】
加えて、電解質にハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、負極における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施の形態に係る負極活物質は、リチウムなどと反応可能なものであり、構成元素として、スズとコバルトと鉄とを含んでいる。スズは単位質量あたりのリチウムの反応量が高く、高い容量を得ることができるからである。また、スズ単体では十分なサイクル特性を得ることは難しいが、コバルトあるいは鉄を含むことによりサイクル特性を向上させることができるからである。
【0018】
コバルトの含有量は、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合で、30質量%以上70質量%以下の範囲内であることが好ましく、30質量%以上60%質量以下の範囲内であればより好ましい。割合が低いとコバルトの含有量が低下し十分なサイクル特性が得られず、また、割合が高いとスズの含有量が低下し、従来の負極材料、例えば炭素材料を上回る容量が得られないからである。
【0019】
鉄の含有量は、0.3質量%以上5.9質量%以下の範囲内であることが好ましい。少ないとサイクル特性を向上させる効果が十分でなく、また、多いとスズの含有量が低下し十分な容量が得られないからである。
【0020】
この負極活物質は、また、構成元素として、スズ,コバルトおよび鉄に加えて炭素を含んでいる。炭素を含むことによりサイクル特性をより向上させることができるからである。炭素の含有量は、9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内であることが好ましく、14.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、特に16.8質量%以上24.8質量%以下の範囲内であればより好ましい。この範囲内において高い効果を得ることができるからである。
【0021】
この負極活物質は、更に、構成元素として、これらに加えてケイ素を含んだ方が好ましい場合もある。ケイ素は単位質量あたりのリチウムの反応量が高く、容量をより向上させることができるからである。ケイ素の含有量は、0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内であることが好ましい。少ないと容量を高くする効果が十分でなく、多いと充放電に伴い微粉化してサイクル特性を低下させてしまうからである。
【0022】
この負極活物質は、更にまた、構成元素として、インジウム,ニオブ,ゲルマニウム,チタン,モリブデン,アルミニウム,リン,ガリウムおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を含んだ方が好ましい場合もある。サイクル特性をより向上させることができるからである。これらの含有量は、14.9質量%以下の範囲内であることが好ましく、2.4質量%以上14.9質量%以下の範囲内であればより好ましく、特に4.0質量%以上12.9質量%以下の範囲内であれば望ましい。少ないと十分な効果が得られず、多いとスズの含有量が低下して十分な容量が得られず、またサイクル特性も低下してしまうからである。
【0023】
また、この負極活物質は、結晶性の低いまたは非晶質な相を有している。この相は、リチウムなどと反応可能な反応相であり、これにより優れたサイクル特性を得ることができるようになっている。この相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用い、挿引速度を1°/minとした場合に、回折角2θで1.0°以上であることが好ましい。リチウムなどをより円滑に吸蔵および放出させることができると共に、電解質との反応性をより低減させることができるからである。
【0024】
なお、X線回折により得られた回折ピークがリチウムなどと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムなどとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較することにより容易に判断することができる。例えば、リチウムなどとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムなどと反応可能な反応相に対応するものである。この負極活物質では、結晶性の低いまたは非晶質な反応相の回折ピークが例えば2θ=20°〜50°の間に見られる。この結晶性の低いまたは非晶質な反応相は、例えば上述した各構元素を含んでおり、主に炭素により低結晶化または非晶質化しているものと考えられる。
【0025】
なお、この負極活物質は、この結晶性の低いまたは非晶質な相に加えて、各構成元素の単体または一部を含む相を有している場合もある。
【0026】
更に、この負極活物質は、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズなどが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集あるいは結晶化を抑制することができるからである。
【0027】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSは、軟X線(市販の装置ではAl−Kα線、またはMg−Kα線を用いる)を試料表面に照射し、試料表面から飛び出してくる光電子の運動エネルギーを測定することによって、試料表面から数nmの領域の元素組成、および元素の結合状態を調べる方法である。
【0028】
元素の内殻軌道電子の束縛エネルギーは、第1近似的には、元素上の電荷密度と相関して変化する。例えば、炭素元素の電荷密度が近傍に存在する元素との相互作用により減少した場合には、2p電子などの外殻電子が減少しているので、炭素元素の1s電子は殻から強い束縛力を受けることになる。すなわち、元素の電荷密度が減少すると、束縛エネルギーは高くなる。XPSでは、束縛エネルギーが高くなると、高いエネルギー領域にピークはシフトするようになっている。
【0029】
XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、負極活物質について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
【0030】
なお、負極活物質のXPS測定に際しては、表面が表面汚染炭素で覆われている場合、XPS装置に付属のアルゴンイオン銃で表面を軽くスパッタすることが好ましい。また、測定対象の負極活物質が後述のように電池の負極中に存在する場合には、電池を解体して負極を取り出した後、炭酸ジメチルなどの揮発性溶媒で洗浄するとよい。負極の表面に存在する揮発性の低い溶媒と電解質塩とを除去するためである。これらのサンプリングは、不活性雰囲気下で行うことが望ましい。
【0031】
また、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、物質表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。なお、XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークと負極活物質中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、負極活物質中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0032】
この負極活物質は、例えば各構成元素の原料を混合して電気炉,高周波誘導炉あるいはアーク溶解炉などにより溶解しその後凝固することにより、また、ガスアトマイズあるいは水アトマイズなどの各種アトマイズ法、各種ロール法、またはメカニカルアロイング法あるいはメカニカルミリング法などのメカノケミカル反応を利用した方法により製造することができる。中でも、メカノケミカル反応を利用した方法により製造することが好ましい。負極活物質を低結晶化あるいは非晶質な構造とすることができるからである。この方法には、例えば、遊星ボールミル装置を用いることができる。
【0033】
原料には、各構成元素の単体を混合して用いてもよいが、炭素以外の構成元素の一部については合金を用いることが好ましい。このような合金に炭素を加えてメカニカルアロイング法により合成することにより、低結晶化あるいは非晶質な構造を有するようにすることができ、反応時間の短縮も図ることができるからである。なお、原料の形態は粉体であってもよいし、塊状であってもよい。
【0034】
原料として用いる炭素には、難黒鉛化炭素,易黒鉛化炭素,グラファイト,熱分解炭素類,コークス,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,活性炭およびカーボンブラックなどの炭素材料のいずれか1種または2種以上を用いることができる。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子化合物を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。これらの炭素材料の形状は、繊維状,球状,粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
【0035】
この負極活物質は、例えば次のようにして二次電池に用いられる。
【0036】
(第1の電池)
図1は第1の二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池はいわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して積層し巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケルのめっきがされた鉄により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、液状の電解質である電解液が注入され、セパレータ23に含浸されている。また、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0037】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0038】
巻回電極体20は、例えば、センターピン24を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウムなどよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケル(Ni)などよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0039】
図2は図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面あるいは片面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。
【0040】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質としては、例えば、硫化チタン(TiS2 ),硫化モリブデン(MoS2 ),セレン化ニオブ(NbSe2 )あるいは酸化バナジウム(V2 O5 )などのリチウムを含有しない金属硫化物あるいは金属酸化物などが挙げられる。また、Lix MO2 (式中、Mは1種以上の遷移金属を表し、xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05≦x≦1.10である)を主体とするリチウム複合酸化物なども挙げられる。このリチウム複合酸化物を構成する遷移金属Mとしては、コバルト,ニッケルあるいはマンガン(Mn)が好ましい。このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2 ,LiNiO2 ,Lix Niy Co1-y O2 (式中、x,yは電池の充放電状態によって異なり、通常0<x<1,0<y<1.0である)、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物等を挙げることができる。
【0041】
負極22は、例えば、正極21と同様に、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面あるいは片面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
【0042】
負極活物質層22Bは、例えば、本実施の形態に係る負極活物質を含み、必要に応じてポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。このように本実施の形態に係る負極活物質を含むことにより、この二次電池では、高容量が得られると共に、サイクル特性を向上させることができるようになっている。負極活物質層22Bは、また、本実施の形態に係る負極活物質に加えて他の負極活物質、または導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。他の負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な炭素材料が挙げられる。この炭素材料は、充放電サイクル特性を向上させることができると共に、導電剤としても機能するので好ましい。炭素材料としては、例えば、負極活物質を製造する際に用いたものと同様のものが挙げられる。
【0043】
この炭素材料の割合は、本実施の形態の負極活物質に対して、1質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましい。炭素材料が少ないと負極22の導電率が低下し、多いと電池容量が低下してしまうからである。
【0044】
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0045】
セパレータ23に含浸された電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。溶媒としては、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステルあるいはプロピオン酸エステルなどが挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
溶媒は、また、ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含んでいればより好ましい。負極22における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を向上させることができるからである。このような炭酸エステル誘導体について具体的に例を挙げれば、化1に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化2に示した4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化3に示した4,5−ジフルオロ−1, 3−ジオキソラン−2−オン、化4に示した4−ジフルオロ−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化5に示した4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化6に示した4,5−ジクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化7に示した4−ブロモ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化8に示した4−ヨード−1,3−ジオキソラン−2−オン、化9に示した4−フルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、あるいは化10に示した4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどがあり、中でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが望ましい。より高い効果を得ることができるからである。
【0047】
【化1】
【0048】
【化2】
【0049】
【化3】
【0050】
【化4】
【0051】
【化5】
【0052】
【化6】
【0053】
【化7】
【0054】
【化8】
【0055】
【化9】
【0056】
【化10】
【0057】
溶媒は、この炭酸エステル誘導体のみにより構成するようにしてもよいが、大気圧(1.01325×105 Pa)において沸点が150℃以下である低沸点溶媒と混合して用いることが好ましい。イオン伝導性を高くすることができるからである。この炭酸エステル誘導体の含有量は、溶媒全体に対して0.1質量%以上80質量%以下の範囲内であることが好ましい。少ないと負極22における溶媒の分解反応を抑制する効果が十分ではなく、多いと粘度が高くなりイオン伝導性が低くなるからである。
【0058】
電解質塩としては例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiClO4 ,LiAsF6 ,LiPF6 ,LiBF4 ,LiB(C6 H5 )4 ,CH3 SO3 Li,CF3 SO3 Li,LiClあるいはLiBrなどが挙げられる。なお、電解質塩としては、リチウム塩を用いることが好ましいが、リチウム塩でなくてもよい。充放電に寄与するリチウムイオンは、正極21などから供給されれば足りるからである。
【0059】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0060】
まず、例えば、正極活物質と必要に応じて導電剤および結着剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの混合溶剤に分散させて正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ圧縮して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。続いて、正極21に正極リード25を溶接する。
【0061】
また、例えば、本実施の形態に係る負極活物質と必要に応じて他の負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの混合溶剤に分散させて負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し乾燥させ圧縮して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。続いて、負極22に負極リード26を溶接する。
【0062】
そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。次いで、電解液を電池缶11の内部に注入する。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
【0063】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解質を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、電解質を介して正極21に吸蔵される。ここでは、負極22が、スズ,コバルト,鉄および炭素を上述した割合で含む負極活物質を含有しているので、高い容量を保ちつつ、サイクル特性が改善される。
【0064】
このように本実施の形態に係る負極活物質によれば、構成元素として、スズを含むようにしたので、高容量を得ることができる。また、構成元素としてコバルトと鉄とを含み、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合を30質量%以上70質量%以下とし、鉄の含有量を0.3質量%以上5.9質量%以下とするようにしたので、高容量を保ちつつ、サイクル特性を向上させることができる。更に、構成元素として炭素を含み、その含有量を9.9質量%以上29.7質量%以下とするようにしたので、サイクル特性をより向上させることができる。よって、この負極活物質を用いた本実施の形態に係る電池によれば、高容量を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができる。
【0065】
更に、負極活物質に、構成元素としてケイ素を含むようにすれば、更に高い容量を得ることができる。
【0066】
更にまた、負極活物質に、構成元素として、インジウム,ニオブ,ゲルマニウム,チタン,モリブデン,アルミニウム,リン,ガリウムおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を含み、これらの含有量を14.9質量%以下とするようにすれば、サイクル特性を更に向上させることができ、特に2.4質量%以上とすれば、高い効果が得られる。
【0067】
加えて、電解質にハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、負極22における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を更に向上させることができる。
【0068】
(第2の電池)
図3は、第2の二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化,軽量化および薄型化が可能となっている。
【0069】
正極リード31,負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム,銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0070】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0071】
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0072】
図4は、図3に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
【0073】
正極33は、正極集電体33Aの片面あるいは両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの片面あるいは両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bの側が正極活物質層33Bと対向するように配置されている。正極集電体33A,正極活物質層33B,負極集電体34A,負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ上述した正極集電体21A,正極活物質層21B,負極集電体22A,負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
【0074】
電解質層36は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質層36は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。電解液(すなわち溶媒および電解質塩)の構成は、図1に示した円筒型の二次電池と同様である。高分子化合物は、例えばポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、またはポリアクリロニトリルなどが挙げられる。特に、酸化還元安定性の観点からは、フッ素系高分子化合物が望ましい。
【0075】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0076】
まず、正極33および負極34のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質層36を形成する。そののち、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接により取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接により取り付ける。次いで、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図3および図4に示した二次電池が完成する。
【0077】
また、この二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付けたのち、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材40で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。続いて、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物とを用意し、外装部材40の内部に注入する。
【0078】
電解質用組成物を注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次いで、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成し、図3に示した二次電池を組み立てる。
【0079】
この二次電池は、第1の二次電池と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。
【0080】
(第3の電池)
図5は、第3の二次電池の断面構成を表すものである。この二次電池は、正極リード51が取り付けられた正極52と、負極リード53が取り付けられた負極54とを、電解質層55を介して対向配置させた平板状の電極体50をフィルム状の外装部材56に収容したものである。外装部材56の構成は、上述した外装部材40と同様である。
【0081】
正極52は、正極集電体52Aに正極活物質層52Bが設けられた構造を有している。負極54は、負極集電体54Aに負極活物質層54Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層54Bの側が正極活物質層52Bと対向するように配置されている。正極集電体52A,正極活物質層52B,負極集電体54A,負極活物質層54Bの構成は、それぞれ上述した正極集電体21A,正極活物質層21B,負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bと同様である。
【0082】
電解質層55は、例えば、固体電解質により構成されている。固体電解質には、例えば、リチウムイオン導電性を有する材料であれば無機固体電解質、高分子固体電解質のいずれも用いることができる。無機固体電解質としては、窒化リチウムあるいはヨウ化リチウムなどを含むものなどが挙げられる。高分子固体電解質は、主に、電解質塩と電解質塩を溶解する高分子化合物とからなるものである。高分子固体電解質の高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物を単独あるいは混合して、または共重合させて用いることができる。
【0083】
高分子固体電解質は、例えば、高分子化合物と、電解質塩と、混合溶剤とを混合したのち、混合溶剤を揮発させて形成することができる。また、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを、混合溶剤に溶解させ、混合溶剤を揮発させたのち、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることにより形成することもできる。
【0084】
無機固体電解質は、例えば、正極52あるいは負極54の表面にスパッタリング法,真空蒸着法,レーザーアブレーション法,イオンプレーティング法,あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition )法などの気相法、またはゾルゲル法などの液相法により形成することができる。
【0085】
この二次電池は、第1または第2の二次電池と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0086】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0087】
(実施例1−1〜1−7)
まず、負極活物質を作製した。原料としてコバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末と炭素粉末とを用意し、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とを合金化してコバルト・スズ・鉄合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末を加えて乾式混合した。その際、原料の割合は、表1に示したように、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合(以下、Co/(Sn+Co) 比という)を37質量%で一定とすると共に、鉄を0.8質量%で一定とし、炭素を10質量%以上30質量%以下の範囲内で変化させた。続いて、この混合物20gを直径9mmの鋼玉約400gと共に、伊藤製作所製の遊星ボールミルの反応容器中にセットした。次いで、反応容器中をアルゴン雰囲気に置換し、毎分250回転の回転速度による10分間の運転と、10分間の休止とを運転時間の合計が30時間になるまで繰り返した。そののち、反応容器を室温まで冷却して合成された負極活物質粉末を取り出し、280メッシュのふるいを通して粗粉を取り除いた。
【0088】
得られた負極活物質について組成の分析を行った。炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、コバルト,スズおよび鉄の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。これらの分析値を表1に示す。表1に示した原料比および分析値は小数点以下2桁の数値を四捨五入したものである。なお、以下の実施例においても同じようにして示した。また、得られた負極活物質についてX線回折を行ったところ、2θ=20°〜50°の間に広い半値幅を有する回折ピークが観察された。この回折ピークの半値幅についても表1に示す。更に、XPSを行ったところ、図6に示したようにピークP1が得られた。ピークP1を解析すると、表面汚染炭素のピークP2と、ピークP2よりも低エネルギー側に負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られた。実施例1−1〜1−7のいずれについてもピークP3は、284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質中の炭素が他の元素と結合していることが確認された。
【0089】
【表1】
【0090】
次に、実施例1−1〜1−7の負極活物質粉末を用いて、図7に示したようなコイン型の二次電池を作製して初回充電容量を調べた。このコイン型電池は、本実施例の負極活物質を用いた試験極61を外装部材62に収容すると共に、対極63を外装部材64に貼り付け、電解液を含浸させたセパレータ65を介して積層したのち、ガスケット66を介してかしめたものである。
【0091】
試験極61は次のようにして作製した。まず、得られた負極活物質粉末70質量部と、導電剤および他の負極活物質である黒鉛20質量部と、導電剤であるアセチレンブラック1質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン4質量部とを混合し、適当な混合溶剤に分散させてスラリーとしたのち、これを銅箔集電体上に塗布、乾燥して直径15.2mmのペレットに打ち抜いた。
【0092】
対極63には、直径15.5mmに打ち抜いた金属リチウム板を用いた。電解液には炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとの混合溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を溶解させたものを用いた。
【0093】
初回充電容量は、1mAの定電流で電池電圧が0.2mVに達するまで定電流充電を行ったのち、0.2mVの定電圧で電流が10μAに達するまで定電圧充電を行い、試験極61の質量から銅箔集電体および結着剤の質量を除いた単位質量あたりの充電容量を求めた。なお、ここでいう充電は負極活物質へのリチウム挿入反応を意味する。この結果を表1および図8に示す。
【0094】
また、図1に示した円筒型の二次電池を作製した。まず、ニッケル酸化物からなる正極活物質と、導電剤であるケッチェンブラックと、結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを、ニッケル酸化物:ケッチェンブラック:ポリフッ化ビニリデン=94:3:3の質量比で混合し、N−メチル−2−ピロリドンなどの混合溶剤に分散させて正極合剤スラリーとしたのち、これを帯状のアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し正極21を作製した。そののち、正極集電体21Aの一端にアルミニウム製の正極リード25を取り付けた。
【0095】
また、上述のように作製した負極活物質を含むスラリーを帯状銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層22Bを形成し負極22を作製した。続いて、負極集電体22Aの一端にニッケル製の負極リード26を取り付けた。
【0096】
正極21および負極22をそれぞれ作製したのち、セパレータ23を用意し、負極22,セパレータ23,正極21,セパレータ23の順に積層してこの積層体を渦巻状に多数回巻回し、巻回電極体20を作製した。
【0097】
巻回電極体20を作製したのち、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に、正極リード25を安全弁機構15に溶接して、巻回電極体20をニッケルめっきした鉄製の電池缶11の内部に収納した。そののち、電池缶11の内部に上述した電解液を減圧方式により注入した。
【0098】
電池缶11の内部に電解液を注入したのち、表面にアスファルトを塗布したガスケット17を介して電池蓋14を電池缶11にかしめることにより、図1に示した円筒型の二次電池を得た。
【0099】
得られた二次電池について、サイクル特性を測定した。これらの結果を表1および図8に示す。その際、サイクル特性は次のようにして測定した。
【0100】
まず、0.5Aの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電を行ったのち、4.2Vの定電圧で電流が10mAに達するまで定電圧充電を行い、引き続き、0.25Aの定電流で電池電圧が2.6Vに達するまで定電流放電を行うことにより、1サイクル目の充放電を行った。
【0101】
2サイクル目以降は、1.4Aの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電を行ったのち、4.2Vの定電圧で電流が10mAに達するまで定電圧充電を行い、引き続き、1.0Aの定電流で電池電圧が2.6Vに達するまで定電流放電を行った。サイクル特性は、2サイクル目の放電容量に対する300サイクル目の容量維持率(300サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100(%)を求めた。
【0102】
実施例1−1〜1−7に対する比較例1−1として、原料として炭素粉末を用いなかったことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。また、比較例1−2〜1−6として、炭素粉末の原料比を表1に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。比較例1−1〜1−6の負極活物質についても、実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析および2θ=20°〜50°の間に見られた広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を測定した。それらの結果を表1に示す。また、XPSを行ったところ、比較例1−3〜1−6では、図6に示したようにピークP1が得られた。ピークP1を解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。一方、比較例1−1では図9に示したようにピークP4が得られ、これを解析したところ、表面汚染炭素のピークP2のみが得られた。また、比較例1−2では、原料として用いた炭素の量が少なかったので、解析によりピークP2のみが得られ、ピークP3はほとんど検出されなかった。
【0103】
また、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。これらの結果についても表1および図8に示す。
【0104】
表1および図8から分かるように、負極活物質における炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量以下である実施例1−1〜1−7によれば、炭素の含有量がこの範囲外である比較例1−1〜1−6よりも容量維持率を飛躍的に向上させることができた。また、初回充電容量および放電容量も向上させることができた。
【0105】
更に、負極活物質における炭素の含有量が14.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、更には16.8質量%以上24.8質量%以下の範囲内においてより高い値が得られた。
【0106】
すなわち、炭素の含有量を9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内とすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができ、14.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、更には16.8質量%以上24.8質量%以下の範囲内とすればより好ましいことが分かった。
【0107】
(実施例2−1〜2−9)
コバルトとスズと鉄と炭素との原料比を表2に示したように変化させて負極活物質を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして二次電池を作製した。具体的には、鉄の原料比を0.8質量%で一定とすると共に、炭素の原料比を10質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下の範囲内で変化させた。
【0108】
【表2】
【0109】
また、実施例2−1〜2−9に対する比較例2−1〜2−4として、Co/(Sn+Co) 比を表2に示したように変化させたことを除き、他は実施例2−1〜2−9と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例2−1〜2−4におけるCo/(Sn+Co) 比は、それぞれ28質量%,25質量%,20質量%,75質量%とした。
【0110】
得られた実施例2−1〜2−9および比較例2−1〜2−4の負極活物質についても、実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析および2θ=20°〜50°の間に見られた広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を測定した。それらの結果を表2に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表2および図10に示す。
【0111】
表2および図10から分かるように、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下とした実施例2−1〜2−9によれば、30質量%未満である比較例2−1〜2−3よりも容量維持率を飛躍的に向上させることができ、70質量%超である比較例2−4よりも初回充電容量を飛躍的に高くすることができた。特に、Co/(Sn+Co) 比を60質量%以下とすれば、高い初回充電容量が得られた。
【0112】
すなわち、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下とすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができることが分かった。また、Co/(Sn+Co) 比を60質量%以下とすればより好ましいことが分かった。
【0113】
(実施例3−1〜3−9)
コバルトとスズと鉄と炭素との原料比を表3に示したように変化させて負極活物質を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして二次電池を作製した。具体的には、鉄の原料比を0.8質量%で一定とすると共に、炭素の原料比を20質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下の範囲内で変化させた。
【0114】
【表3】
【0115】
また、実施例3−1〜3−9に対する比較例3−1〜3−4として、Co/(Sn+Co) 比を表3に示したように変化させたことを除き、他は実施例3−1〜3−9と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例3−1〜3−4におけるCo/(Sn+Co) 比は、それぞれ28質量%,25質量%,20質量%,75質量%とした。
【0116】
実施例3−1〜3−9および比較例3−1〜3−4の負極活物質についても、実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析および2θ=20°〜50°の間に見られた広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を測定した。それらの結果を表3に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表3および図11に示す。
【0117】
表3および図11から分かるように、実施例2−1〜2−9と同様の結果が得られた。すなわち、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下とすれば、炭素の含有量が19.8質量%の場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0118】
(実施例4−1〜4−9)
コバルトとスズと鉄と炭素との原料比を表4に示したように変化させて負極活物質を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして二次電池を作製した。具体的には、鉄の原料比を0.8質量%で一定とすると共に、炭素の原料比を30質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下の範囲内で変化させた。
【0119】
【表4】
【0120】
また、実施例4−1〜4−9に対する比較例4−1〜4−4として、Co/(Sn+Co) 比を表4に示したように変化させたことを除き、他は実施例4−1〜4−9と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例4−1〜4−4におけるCo/(Sn+Co) 比は、それぞれ28質量%,25質量%,20質量%,75質量%とした。
【0121】
得られた実施例4−1〜4−9および比較例4−1〜4−4の負極活物質についても、実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析および2θ=20°〜50°の間に見られた広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を測定した。それらの結果を表4に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表4および図12に示す。
【0122】
表4および図12から分かるように、実施例4−1〜4−9と同様の結果が得られた。すなわち、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下とすれば、炭素の含有量が29.7質量%の場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0123】
(実施例5−1〜5−6,6−1〜6−6)
負極活物質を合成する際の運転時間および回転数を変えて2θ=20°〜50°の間に見られる広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。その際、コバルトとスズと鉄と炭素との原料比は、実施例5−1〜5−6と実施例6−1〜6−6とで表5に示したように炭素の原料比を変化させ、Co/(Sn+Co) 比は同一とした。
【0124】
【表5】
【0125】
実施例5−1〜5−6,6−1〜6−6の負極活物質についても、実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析および2θ=20°〜50°の間に見られた広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を測定した。それらの結果を表5に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表5に示す。
【0126】
表5から分かるように、実施例5−1〜5−6においても、実施例6−1〜6−6においても、半値幅が大きくなるにつれて容量維持率が向上した。すなわち、回折ピークの半値幅がより大きい反応相を有するようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0127】
(実施例7−1〜7−5)
コバルトとスズと鉄と炭素との原料比を表6に示したように変化させて負極活物質を合成したことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして二次電池を作製した。具体的には、鉄の原料比を0.3質量%以上6.0質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比を37質量%で一定とすると共に、炭素の原料比を20質量%で一定とした。
【0128】
【表6】
【0129】
また、実施例7−1〜7−5に対する比較例7−1〜7−4として、鉄の原料比を表6に示したように変化させたことを除き、他は実施例7−1〜7−5と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例7−1〜7−4における鉄の原料比は0.1質量%,0.2質量%,6.5質量%,7.0質量%とした。
【0130】
得られた実施例7−1〜7−5および比較例7−1〜7−4の負極活物質についても、実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析および2θ=20°〜50°の間に見られた広い半値幅を有する回折ピークの半値幅を測定した。それらの結果を表6に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表6および図13に示す。
【0131】
表6および図13から分かるように、鉄の含有量を0.3質量%以上5.9質量%以下とした実施例7−1〜7−5によれば、0.3質量%未満である比較例7−1,7−2よりも容量維持率を向上させることができ、5.9質量%超である比較例7−3,7−4よりも初回充電容量を高くすることができた。
【0132】
すなわち、鉄の含有量を0.3質量%以上5.9質量%以下とすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0133】
(実施例8−1〜8−11)
原料として、更にケイ素粉末を用い、コバルトとスズと鉄と炭素とケイ素との原料比を表7に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。具体的には、ケイ素粉末の原料比を0.3質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比および炭素の原料比を一定とした。実施例8−1〜8−11の二次電池についても実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表7に示す。なお、ケイ素の含有量はICP発光分析により測定した。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表8に示す。
【0134】
【表7】
【0135】
【表8】
【0136】
表8から分かるように、ケイ素を含む実施例8−1〜8−11によれば、ケイ素を含まない実施例1−5よりも初回充電容量を向上させることができた。但し、ケイ素の含有量が多くなるに従い、容量維持率は低下する傾向が見られた。
【0137】
すなわち、負極活物質にケイ素を含有するようにすれば、容量を向上させることができ、その含有量は0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内が好ましいことが分かった。
【0138】
(実施例9−1〜9−10)
実施例9−1では、コバルトとスズと鉄と炭素との原料比を表9に示したようにしたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。また、実施例9−2〜9−10では、原料としてコバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末と炭素粉末とチタン粉末とを用意し、それらの原料比を表9に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。具体的には、チタンの原料比を0質量%以上16.0質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比および炭素の原料比を一定とした。また、負極活物質は、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とチタン粉末とを合金化してコバルト・スズ・鉄・チタン合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末を混合して合成した。実施例9−1〜9−10の負極活物質についても実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表9に示す。なお、チタンの含有量は、ICP発光分析により測定した。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表9および図14に示す。
【0139】
【表9】
【0140】
表9および図14から分かるように、チタンを14.9質量%以下の範囲内で含む実施例9−2〜9−9によれば、チタンを含まない実施例9−1、あるいは14.9質量%超である実施例9−10よりも容量維持率を向上させることができた。また、チタンの含有量が2.4質量%以上、特に4.0質量%以上12.9質量%以下の範囲内でより高い値が得られた。
【0141】
すなわち、負極活物質にチタンを14.9質量%以下の範囲内で含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができ、2.4質量%以上とすればより好ましく、特に4.0質量%以上12.9質量%以下の範囲内とすれば更に好ましいことが分かった。
【0142】
(実施例10−1〜10−9)
原料として、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末と炭素粉末とビスマス粉末とを用意し、これらの原料比を表10に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。具体的には、ビスマスの原料比を1.2質量%以上16.0質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比および炭素の原料比を一定とした。また、また、負極活物質は、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とビスマス粉末とを合金化してコバルト・スズ・鉄・ビスマス合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末を混合して合成した。負極活物質についても実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表10に示す。なお、ビスマスの含有量は、ICP発光分析により測定した。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表10および図15に示す。
【0143】
【表10】
【0144】
表10および図15に示したように、ビスマスを添加した実施例10−1〜10−9についてもチタンを添加した実施例9−2〜9−10と同様の結果が得られた。すなわち、負極活物質にビスマスを14.9質量%以下の範囲内で含むようにした場合にも、サイクル特性をより向上させることができ、4.0質量%以上とすればより好ましいことが分かった。
【0145】
(実施例11−1〜11−14)
原料として、コバルト粉末、スズ粉末、鉄粉末、炭素粉末、ならびにモリブデン粉末,ニオブ粉末,アルミニウム粉末,ゲルマニウム粉末,インジウム粉末,ガリウム粉末,リン粉末,またはアルミニウム粉末およびリン粉末を用い、コバルト,スズ,鉄,炭素,モリブデン,ニオブ,アルミニウム,ゲルマニウム,インジウム,ガリウム,およびリンの原料比を表11に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。具体的には、モリブデン,ニオブ,アルミニウム,ゲルマニウム,インジウム,ガリウム,リン,またはアルミニウムおよびリンの原料比を、3.0質量%,4.0質量%,5.0質量%または6.0質量%とし、Co/(Sn+Co) 比を35質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とした。また、負極活物質は、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とを合金化してコバルト・スズ・鉄合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末、ならびにモリブデン粉末,ニオブ粉末,アルミニウム粉末,ゲルマニウム粉末,インジウム粉末,ガリウム粉末,リン粉末,またはアルミニウム粉末およびリン粉末を混合して合成した。実施例11−1〜11−14の負極活物質についても実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表11に示す。なお、モリブデン,ニオブ,アルミニウム,ゲルマニウム,インジウム,ガリウムおよびリンの含有量は、ICP発光分析により測定した。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。また、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表12に示す。
【0146】
【表11】
【0147】
【表12】
【0148】
表11,12に示したように、実施例11−1〜11−14についても、実施例9−2〜9−10,10−1〜10−9と同様にサイクル特性を向上させることができた。すなわち、負極活物質にモリブデン,ニオブ,アルミニウム,ゲルマニウム,インジウム,ガリウムおよびリンからなる群のうちの少なくとも1種を含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0149】
(実施例12−1〜12−8)
原料として、コバルト粉末、スズ粉末、鉄粉末、炭素粉末、ケイ素粉末、チタン粉末、およびインジウム粉末を用意し、それらの原料比を表13に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。具体的には、チタン、またはチタンおよびインジウムの原料比を0質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比,炭素の原料比およびケイ素の原料比を一定とした。また、負極活物質は、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とチタン粉末、またはコバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とチタン粉末とインジウム粉末とを合金化して、コバルト・スズ・鉄・チタン合金粉末、またはコバルト・スズ・鉄・チタン・インジウム合金粉末を作製したのち、これらの合金粉末に炭素粉末およびケイ素粉末を混合して合成した。実施例12−1〜12−8の負極活物質についても実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表14に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。また、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表14に示す。
【0150】
【表13】
【0151】
【表14】
【0152】
表13,14から分かるように、ケイ素に加えてチタン、またはチタンとインジウムとを添加した実施例12−2〜12−8によれば、これらを含まない実施例9−1,12−1よりも初回充電容量および容量維持率をより向上させることができた。
【0153】
すなわち、負極活物質にチタン,モリブデン,ニオブ,アルミニウム,ゲルマニウム,インジウム,ガリウム, リンおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種と、ケイ素とを含むようにすれば、容量およびサイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0154】
(実施例13−1〜13−8)
原料として、コバルト粉末と、スズ粉末と、鉄粉末と、炭素粉末と、ケイ素粉末と、チタン粉末とを用意し、コバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末、またはコバルト粉末とスズ粉末と鉄粉末とチタン粉末とを合金化して、コバルト・スズ・鉄合金粉末、またはコバルト・スズ・鉄・チタン合金粉末を作製したのち、これらの合金粉末に炭素粉末、または炭素粉末およびケイ素粉末を混合したことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にして負極活物質を合成した。その際、原料比を表15に示したように変化させた。また、この負極活物質を用い、実施例13−1〜13−4と、13−5〜13−8とで電解液の組成を変えて、実施例1−1〜1−7と同様の図1に示した円筒型の二次電池を作製した。その際、実施例13−1〜13−4では、炭酸エチレンと炭酸プロピレンと炭酸ジメチルとを、炭酸エチレン:炭酸プロピレン:炭酸ジメチル=30:10:60の質量比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1mol/lの割合で溶解させた電解液を用い、実施例13−5〜13−8では4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと炭酸エチレンと炭酸プロピレンと炭酸ジメチルとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸プロピレン:炭酸ジメチル=20:10:10:60の質量比で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1mol/lの割合で溶解させたものを用いた。なお、実施例12−1と実施例12−5、実施例12−2と実施例12−6、実施例12−3と実施例12−7、および実施例12−4と実施例12−8とは同一の負極活物質を用いた。
【0155】
【表15】
【0156】
実施例13−1〜13−8の負極活物質についても実施例1−1〜1−7と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表15に示す。また、XPSを行い、得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−7と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。また、二次電池についても同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表15に示す。
【0157】
表15から分かるように、溶媒に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた実施例13−5〜13−8によれば、これを用いていない実施例13−1〜13−4よりも容量維持率を向上させることができた。
【0158】
(実施例14−1〜14−18)
溶媒の組成を表16に示したように変えたことを除き、他は実施例13−1,13−5と同様にして円筒型の二次電池を作製した。実施例14−1〜14−18の二次電池についても実施例1−1〜1−7と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表16に示す。
【0159】
【表16】
【0160】
表16から分かるように、容量維持率は4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量が増加するに伴い大きくなり、極大値を示したのち低下した。
【0161】
すなわち、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば、溶媒の組成に関わらず、サイクル特性を向上させることができ、特に0.1質量%以上80質量%以下の範囲内で含むようにすれば、高い効果を得ることができることが分かった。
【0162】
(実施例15−1〜15−6)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンに変えて、他のハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を用いたことを除き、他は実施例13−5と同様にして円筒型の二次電池を作製した。その際、実施例15−1では4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用い、実施例15−2では4−ジフルオロ−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用い、実施例15−3では4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用い、実施例15−4では4−ブロモ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用い、実施例15−5では4−ヨード−1,3−ジオキソラン−2−オンを用い、実施例15−6では4−フルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた。
【0163】
実施例15−1〜15−6の二次電池についても、実施例1−1〜1−7と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表17に示す。
【0164】
【表17】
【0165】
表17から分かるように、他のハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を用いても、実施例13−5と同様にサイクル特性を向上させることができた。但し、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた実施例13−5が特に容量維持率が高かった。すなわち、溶媒にハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、サイクル特性を向上させることができ、中でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを含むようにすれば特に効果的であることが分かった。
【0166】
(実施例16−1〜16−7)
液状の電解液に代えて、ゲル状の電解質よりなる電解質層を試験極61および対極63の表面に形成したことを除き、他は実施例1−1〜1−7と同様にしてコイン型の二次電池を作製した。すなわち、試験極61には、表18に示したようにコバルトとスズと鉄と炭素とを実施例1−1〜1−7と同様の割合で混合して合成した負極活物質を用いた。また、電解質層は次のように作製した。まず、溶媒として炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンと、電解質塩としてLiPF6 とを、炭酸エチレン:炭酸プロピレン:LiPF6 =11.5:11.5:4の質量比で混合した電解液に、高分子化合物としてフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体と、混合溶剤として炭酸ジエチルとを、電解液:高分子化合物:混合溶剤=27:10:60の質量比となるように混合して前駆溶液を作製した。フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体の分子量は、600000とした。得られた前駆溶液を試験極61と対極63とが対向するそれぞれの面に均一に塗布し、常温で6時間放置することにより炭酸ジエチルを揮発させゲル状の電解質層を形成した。
【0167】
【表18】
【0168】
得られたコイン型の二次電池について、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量を測定した。結果を表18および図16に示す。
【0169】
また、図3および図4に示した二次電池を作製した。まず、実施例1−1〜1−7と同様にして正極33および負極34を作製し、正極リード31および負極リード32を取り付けた。
【0170】
次いで、上述した前駆溶液を正極33および負極34に均一に塗布し、常温で6時間放置することにより炭酸ジエチルを揮発させゲル状の電解質層36を形成した。
【0171】
そののち、正極33と負極34とを、電解質層36が形成された面が対向するようにセパレータ35を介して積層し、巻回して巻回電極体30を形成した。
【0172】
得られた巻回電極体30を防湿性アルミラミネートフィルムよりなる外装部材40に真空封入することにより、図3および図4に示した二次電池を作製した。
【0173】
これらの二次電池について、実施例1−1〜1−7と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表18および図16に示す。
【0174】
実施例16−1〜16−7に対する比較例16−1〜16−6として、コバルトとスズと鉄と炭素とを表18に示した割合で混合して合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、比較例1−1〜1−6と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。
【0175】
得られた比較例16−1〜16−6の二次電池についても、初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表18および図16に示す。
【0176】
表18および図16から分かるように、実施例1−1〜1−7と同様の結果が得られた。すなわち、ゲル状の電解質を用いても、炭素の含有量を9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内とすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができ、14.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、更には16.8質量%以上24.8質量%以下の範囲内とすればより好ましいことが分かった。
【0177】
(実施例17−1〜17−9,18−1〜18−9,19−1〜19−9)
実施例17−1〜17−9として、表19に示したように、炭素の原料比を10質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下の範囲内で変化させて合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例2−1〜2−9と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。また、実施例17−1〜17−9に対する比較例17−1〜17−4として、表19に示したように、炭素の原料比を10質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を、それぞれ28質量%,25質量%,20質量%,75質量%として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、比較例2−1〜2−4と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例17−1〜17−9と同様にして二次電池を作製した。
【0178】
【表19】
【0179】
実施例18−1〜18−9として、表20に示したように、炭素の原料比を20質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下の範囲内で変化させて合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例3−1〜3−9と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。また、実施例18−1〜18−9に対する比較例18−1〜18−4として、表20に示したように、炭素の原料比を20質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を、それぞれ28質量%,25質量%,20質量%,75質量%として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、比較例3−1〜3−4と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例18−1〜18−9と同様にして二次電池を作製した。
【0180】
【表20】
【0181】
実施例19−1〜19−9として、表21に示したように、炭素の原料比を30質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下の範囲内で変化させて合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例4−1〜4−9と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。また、実施例19−1〜19−9に対する比較例19−1〜19−4として、表21に示したように、炭素の原料比を30質量%で一定とすると共に、鉄の原料比を0.8質量%で一定とし、Co/(Sn+Co) 比を、それぞれ28質量%,25質量%,20質量%,75質量%として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、比較例4−1〜4−4と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例19−1〜19−9と同様にして二次電池を作製した。
【0182】
【表21】
【0183】
得られた実施例17−1〜17−9,18−1〜18−9,19−1〜19−9および比較例17−1〜17−4,18−1〜18−4,19−1〜19−4の二次電池についても、実施例1−1〜1−7と同様にして充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表19〜21および図17〜19に示す。
【0184】
表19〜21および図17〜19から分かるように、実施例2−1〜2−9,3−1〜3−9,4−1〜4−9と同様の結果が得られた。すなわち、Co/(Sn+Co) 比を30質量%以上70質量%以下とすれば、ゲル状の電解質を用いた場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができることが分かった。また、Co/(Sn+Co) 比を60質量%以下とすればより好ましいことが分かった。
【0185】
(実施例20−1〜20−5)
表22に示したように、Co/(Sn+Co) 比および炭素の原料比を一定とし、鉄の原料比を0.3質量%以上6.0質量%以下の範囲内で変化させて合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例7−1〜7−5と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。
【0186】
【表22】
【0187】
また、実施例20−1〜20−5に対する比較例20−1〜20−4として、表22に示したように、Co/(Sn+Co) 比および炭素の原料比を一定とし、鉄の原料比を、それぞれ0.1質量%,0.2質量%,6.5質量%,7.0質量%として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、比較例7−1〜7−4と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例20−1〜20−5と同様にして二次電池を作製した。
【0188】
得られた実施例20−1〜20−5,および比較例20−1〜20−4の二次電池についても、実施例1−1〜1−7と同様にして充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表22および図20に示す。
【0189】
表22および図20から分かるように、実施例7−1〜7−5と同様の結果が得られた。すなわち、鉄の含有量を0.3質量%以上5.9質量%以下とすれば、ゲル状の電解質を用いた場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0190】
(実施例21−1〜21−11)
表23に示したようにケイ素粉末の原料比を0.3質量%以上10質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比および炭素の原料比を一定として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例8−1〜8−11と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。
【0191】
得られた実施例21−1〜21−11の二次電池について、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表24に示す。
【0192】
【表23】
【0193】
【表24】
【0194】
表23,24から分かるように、実施例8−1〜8−11と同様の結果が得られた。すなわち、ゲル状の電解質を用いた場合にも、負極活物質にケイ素を含有するようにすれば、容量を向上させることができ、その含有量は0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内が好ましいことが分かった。
【0195】
(実施例22−1〜22−10)
表25に示したように、チタンの原料比を0質量%以上16質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比および炭素の原料比を一定として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例9−1〜9−10と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−9と同様にして二次電池を作製した。
【0196】
【表25】
【0197】
得られた実施例22−1〜22−10の二次電池について、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表25および図21に示す。
【0198】
表25および図21から分かるように、実施例9−1〜9−10と同様の結果が得られた。すなわち、ゲル状の電解質を用いても、負極活物質にチタンを14.9質量%以下の範囲内で含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができ、2.4質量%以上とすればより好ましく、特に4.0質量%以上12.9質量%以下の範囲内とすれば更に好ましいことが分かった。
【0199】
(実施例23−1〜23−8)
表26に示したように、チタンおよびインジウムの原料比を4.0質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させ、Co/(Sn+Co) 比,鉄の原料比および炭素の原料比を一定として合成した負極活物質を用いたことを除き、すなわち、実施例12−1〜12−8と同様にして合成した負極活物質を用いたことを除き、他は実施例16−1〜16−7と同様にして二次電池を作製した。
【0200】
得られた実施例23−1〜23−8の二次電池について、実施例1−1〜1−7と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表27に示す。
【0201】
【表26】
【0202】
【表27】
【0203】
表26,27から分かるように、実施例12−1〜12−8と同様の結果が得られた。すなわち、ゲル状の電解質を用いても、負極活物質にチタン,モリブデン,ニオブ,アルミニウム,ゲルマニウム,インジウム,ガリウム,リンおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種と、ケイ素とを含むようにすれば、容量およびサイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0204】
(実施例24−1〜24−3)
4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンとを、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸エチレン:炭酸プロピレン=1:10.5:11.5、5:6.5:11.5、または10:1.5:11.5の質量比で混合した溶媒を用いたことを除き、他は実施例16−5と同様にして二次電池を作製した。
【0205】
得られた実施例24−1〜24−3の二次電池について、実施例1−1〜1−7と同様にしてサイクル特性を測定した。それらの結果を表28に示す。
【0206】
【表28】
【0207】
表28から分かるように、溶媒に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた実施例24−1〜24−3によれば、これを用いていない実施例16−5よりも容量維持率を向上させることができた。すなわち、溶媒にハロゲン原子を有する環状の炭酸エステルを含むようにすれば、ゲル状の電解質を用いた場合にも、サイクル特性をより向上させることができることが分かった。
【0208】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、コイン型,シート型,および巻回構造を有する二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は、ボタン型あるいは角型などの外装部材を用いた他の形状を有する二次電池、または正極および負極を複数積層した積層構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。
【0209】
また、実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、負極活物質と反応可能であればナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その際、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な正極活物質あるいは非水溶媒などは、その電極反応物質に応じて選択される。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した二次電池における巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る他の二次電池の構成を表す分解斜視図である。
【図4】図3に示した巻回電極体のI−I線に沿った構成を表す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る他の二次電池の構成を表す断面図である。
【図6】実施例で作製した負極活物質に係るX線光電子分光法により得られたピークの一例を表すものである。
【図7】実施例で作製したコイン型電池の構成を示す断面図である。
【図8】負極活物質における炭素の含有量と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す特性図である。
【図9】比較例で作製した負極活物質に係るX線光電子分光法により得られたピークの一例を表すものである。
【図10】負極活物質におけるスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図11】負極活物質におけるスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図12】負極活物質におけるスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図13】負極活物質における鉄の含有量と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す特性図である。
【図14】負極活物質におけるチタンの含有量と、容量維持率との関係を表す特性図である。
【図15】負極活物質におけるビスマスの含有量と、容量維持率との関係を表す特性図である。
【図16】負極活物質における炭素の含有量と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図17】負極活物質におけるスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図18】負極活物質におけるスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図19】負極活物質におけるスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図20】負極活物質における鉄の含有量と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図21】負極活物質におけるチタンの含有量と、容量維持率との関係を表す他の特性図である。
【符号の説明】
【0211】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17,66…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33,52…正極、21A, 33A,52A…正極集電体、21B,33B,52B…正極活物質層、22,34,54…負極、22A,34A,54A…負極集電体、22B,34B,54B…負極活物質層、23,35,65…セパレータ、24…センターピン、25,31,51…正極リード、26,32,53…負極リード、36,55…電解質層、37…保護テープ、40,56,62,64…外装部材、41…密着フィルム、50…電極体、61…試験極、63…対極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素として、スズ(Sn)と、コバルト(Co)と、炭素(C)と、鉄(Fe)とを少なくとも含み、
炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量が0.3質量%以上5.9質量%以下であり、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合が30質量%以上70質量%以下である
ことを特徴とする負極活物質。
【請求項2】
X線光電子分析法により284.5eVよりも低い領域に前記炭素の1sピークが得られることを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項3】
リチウムと反応可能であり、X線回折により得られる回折ピークの半値幅が1.0°以上である反応相を有することを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項4】
更に、構成元素として、ケイ素(Si)を含むことを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項5】
前記ケイ素の含有量は、0.5質量%以上7.9質量%以下であることを特徴とする請求項4記載の負極活物質。
【請求項6】
更に、構成元素として、インジウム(In),ニオブ(Nb),ゲルマニウム(Ge),チタン(Ti),モリブデン(Mo),アルミニウム(Al),リン(P),ガリウム(Ga)およびビスマス(Bi)からなる群のうちの少なくとも1種を、14.9質量%以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項7】
前記インジウム,ニオブ,ゲルマニウム,チタン,モリブデン,アルミニウム,リン,ガリウムおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を、2.4質量%以上含むことを特徴とする請求項6記載の負極活物質。
【請求項8】
更に、ケイ素を0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内で含むと共に、インジウム,ニオブ,ゲルマニウム,チタン,モリブデン,アルミニウム,リン,ガリウムおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を、2.4質量%以上14.9質量%以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項9】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記負極は、構成元素としてスズ(Sn)と、コバルト(Co)と、炭素(C)と、鉄(Fe)とを少なくとも含む負極活物質を含有し、
前記負極活物質における炭素の含有量は9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量は0.3質量%以上5.9質量%以下で、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合は30質量%以上70質量%以下である
ことを特徴とする電池。
【請求項10】
前記負極活物質は、X線光電子分析法により284.5eVよりも低い領域に前記炭素の1sピークが得られることを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項11】
前記負極活物質は、リチウムと反応可能であり、X線回折により得られる回折ピークの半値幅が1.0°以上である反応相を有することを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項12】
前記負極活物質は、更に、構成元素としてケイ素(Si)を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項13】
前記負極活物質におけるケイ素の含有量は、0.5質量%以上7.9質量%以下であることを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項14】
前記負極活物質は、更に、構成元素として、インジウム(In),ニオブ(Nb),ゲルマニウム(Ge),チタン(Ti),モリブデン(Mo),アルミニウム(Al),リン(P),ガリウム(Ga)およびビスマス(Bi)からなる群のうちの少なくとも1種を、14.9質量%以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項15】
前記負極活物質は、前記インジウム,ニオブ,ゲルマニウム,チタン,モリブデン,アルミニウム,リン,ガリウムおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を、2.4質量%以上含むことを特徴とする請求項14記載の電池。
【請求項16】
前記負極活物質は、更に、ケイ素を0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内で含むと共に、インジウム,ニオブ,ゲルマニウム,チタン,モリブデン,アルミニウム,リン,ガリウムおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を、2.4質量%以上14.9質量%以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項17】
前記電解質は、ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含有することを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項1】
構成元素として、スズ(Sn)と、コバルト(Co)と、炭素(C)と、鉄(Fe)とを少なくとも含み、
炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量が0.3質量%以上5.9質量%以下であり、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合が30質量%以上70質量%以下である
ことを特徴とする負極活物質。
【請求項2】
X線光電子分析法により284.5eVよりも低い領域に前記炭素の1sピークが得られることを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項3】
リチウムと反応可能であり、X線回折により得られる回折ピークの半値幅が1.0°以上である反応相を有することを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項4】
更に、構成元素として、ケイ素(Si)を含むことを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項5】
前記ケイ素の含有量は、0.5質量%以上7.9質量%以下であることを特徴とする請求項4記載の負極活物質。
【請求項6】
更に、構成元素として、インジウム(In),ニオブ(Nb),ゲルマニウム(Ge),チタン(Ti),モリブデン(Mo),アルミニウム(Al),リン(P),ガリウム(Ga)およびビスマス(Bi)からなる群のうちの少なくとも1種を、14.9質量%以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項7】
前記インジウム,ニオブ,ゲルマニウム,チタン,モリブデン,アルミニウム,リン,ガリウムおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を、2.4質量%以上含むことを特徴とする請求項6記載の負極活物質。
【請求項8】
更に、ケイ素を0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内で含むと共に、インジウム,ニオブ,ゲルマニウム,チタン,モリブデン,アルミニウム,リン,ガリウムおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を、2.4質量%以上14.9質量%以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項9】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記負極は、構成元素としてスズ(Sn)と、コバルト(Co)と、炭素(C)と、鉄(Fe)とを少なくとも含む負極活物質を含有し、
前記負極活物質における炭素の含有量は9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量は0.3質量%以上5.9質量%以下で、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合は30質量%以上70質量%以下である
ことを特徴とする電池。
【請求項10】
前記負極活物質は、X線光電子分析法により284.5eVよりも低い領域に前記炭素の1sピークが得られることを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項11】
前記負極活物質は、リチウムと反応可能であり、X線回折により得られる回折ピークの半値幅が1.0°以上である反応相を有することを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項12】
前記負極活物質は、更に、構成元素としてケイ素(Si)を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項13】
前記負極活物質におけるケイ素の含有量は、0.5質量%以上7.9質量%以下であることを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項14】
前記負極活物質は、更に、構成元素として、インジウム(In),ニオブ(Nb),ゲルマニウム(Ge),チタン(Ti),モリブデン(Mo),アルミニウム(Al),リン(P),ガリウム(Ga)およびビスマス(Bi)からなる群のうちの少なくとも1種を、14.9質量%以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項15】
前記負極活物質は、前記インジウム,ニオブ,ゲルマニウム,チタン,モリブデン,アルミニウム,リン,ガリウムおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を、2.4質量%以上含むことを特徴とする請求項14記載の電池。
【請求項16】
前記負極活物質は、更に、ケイ素を0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内で含むと共に、インジウム,ニオブ,ゲルマニウム,チタン,モリブデン,アルミニウム,リン,ガリウムおよびビスマスからなる群のうちの少なくとも1種を、2.4質量%以上14.9質量%以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項17】
前記電解質は、ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含有することを特徴とする請求項9記載の電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−128051(P2006−128051A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323994(P2004−323994)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]