説明

負荷制御装置およびその制御方法、並びに制御プログラム

【課題】エネルギーの利用効率を悪化させることなく、供給電力と消費電力とのバランスを維持する。
【解決手段】負荷制御装置5は、自然エネルギーを利用した分散電源2から供給された電力が負荷装置4にて消費される電力システム1に利用され、負荷装置4の動作を制御するものである。負荷制御装置5は、分散電源2が供給している供給電力値を取得する供給電力取得部30と、負荷装置4が消費している消費電力値を取得する消費電力取得部31と、取得された供給電力値および消費電力値を比較する需給比較部32と、供給電力値が消費電力値よりも大きい場合、負荷装置4のうち、負荷制御装置5による動作の制御が可能であって、動作を開始する必要がある負荷装置4を制御対象として決定する制御対象決定部33と、決定された負荷装置4に対し、動作の開始を指示する負荷動作指示部34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然エネルギーを利用した分散電源から供給された電力が負荷にて消費される電力システムに利用され、上記負荷の動作を制御する負荷制御装置およびその制御方法、並びに制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、化石燃料に替わるエネルギーの確保、および地球環境問題の解決策の1つとして、太陽光発電、風力発電など、自然エネルギーを利用した分散電源が注目されており、これらの分散電源が家庭にも普及し始めている。しかしながら、自然エネルギーを利用した分散電源は、発電出力が天候、風量など自然条件によって影響を受け安定しない。このため、電力供給と電力消費とのバランスが崩れ易く、消費電力が供給電力よりも大きくなったり、供給電力が消費電力よりも大きくなったりし易い。
【0003】
消費電力が供給電力よりも大きくなると、ブレーカが作動して供給電力が遮断され、動作の停止を望まない負荷装置も動作が停止するといった問題が発生する。一方、供給電力が消費電力よりも大きくなると、供給電圧の上昇、周波数変動などが発生して負荷装置が安定して動作しないなどの問題が発生する。このため、集中電源を利用した商用電源と各種の分散電源とによる供給電力と、家庭用電気器具(以下「家電」と略称する。)など、各種の負荷による消費電力とのバランスを維持することが重要となる。
【0004】
例えば、特許文献1には、電力系統内の複数の分散電源の発電出力を調整して分散電源の総発電出力と負荷電力(消費電力)との差を一定にする電力需給制御装置が開示されている。また、特許文献2には、家電から電力供給要求があると、該家電の要求電力と、商用電源、発電装置、蓄電装置等の電源の供給可能電力とに基づいて、電力供給を許可するかどうかかを判断する調停サーバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−271723号公報(2008年11月06日公開)
【特許文献2】特開2010−193562号公報(2010年09月02日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1・2では、各電源の供給電力を調整することにより、供給電力と消費電力とのバランスを維持している。しかしながら、自然エネルギーを利用した分散電源の場合、発電のために燃料を購入する必要が無いので、発電に必要なコストはゼロである。従って、自然エネルギーを利用した分散電源は、供給可能な最大の電力を出力することが望ましい。
【0007】
このため、従来は、上記分散電源の供給電力から消費電力を差し引いた余剰電力を、商用電源の系統に供給する、いわゆる売電を行ったり、上記余剰電力を蓄電池に充電したりしている。しかしながら、上記商用電源の系統に供給するには、直流から交流の変換、昇圧などを行う必要があり、エネルギー損失が発生する。また、蓄電池に充電したり、蓄電池から電力を取り出したりする時にも、エネルギー損失が少なからず発生する。その結果、エネルギーの利用効率が悪化することになる。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、エネルギーの利用効率を悪化させることなく、供給電力と消費電力とのバランスを維持できる負荷制御装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る負荷制御装置は、自然エネルギーを利用した分散電源から供給された電力が負荷にて消費される電力システムに利用され、上記負荷の動作を制御する負荷制御装置であって、上記課題を解決するために、上記電源が供給している供給電力値と、上記負荷が消費している消費電力値とを取得する電力値取得手段と、該電力値取得手段が取得した供給電力値および消費電力値を比較する電力値比較手段と、該電力値比較手段が比較した結果、上記供給電力値が上記消費電力値よりも大きい場合、上記負荷のうち、当該負荷制御装置による動作の制御が可能であって、動作を開始する必要がある負荷を制御対象として決定する制御対象決定手段と、該制御対象決定手段が決定した負荷に対し、動作の開始を指示する負荷動作指示手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る負荷制御装置の制御方法は、自然エネルギーを利用した分散電源から供給された電力が負荷にて消費される電力システムに利用され、上記負荷の動作を制御する負荷制御装置の制御方法であって、上記課題を解決するために、上記電源が供給している供給電力値と、上記負荷が消費している消費電力値とを取得する電力値取得ステップと、該電力値取得ステップにて取得された供給電力値および消費電力値を比較する電力値比較ステップと、該電力値比較ステップにて比較された結果、上記供給電力値が上記消費電力値よりも大きい場合、上記負荷のうち、当該負荷制御装置による動作の制御が可能であって、動作を開始する必要がある負荷を制御対象として決定する制御対象決定ステップと、該制御対象決定ステップにて決定された負荷に対し、動作の開始を指示する負荷動作指示ステップとを含むことを特徴としている。
【0011】
上記の構成および方法によると、自然エネルギーを利用した分散電源からの供給電力が、負荷による消費電力よりも大きい場合、負荷に動作の開始を指示する。これにより、当該負荷が動作を開始し、上記消費電力が増加して、上記供給電力と上記消費電力とのバランスを維持することができる。
【0012】
ところで、負荷には、冷蔵庫のように、常時動作する必要があるもの、テレビジョン受像機(以下、「テレビ」と略称する。)のように、ユーザの操作により直ちに動作する必要があるもの、録画機のように、所定期間動作する必要があるものなどが存在する。このような負荷に対しては、負荷制御装置が動作の開始を指示する余地はほとんど無いと考えられる。
【0013】
一方で、負荷には、設定された期間内で動作が完了すればよいもの(以下、「フレキシブル負荷」と称する。)も存在する。例えば、食器洗浄機の場合、次の食事の準備までに食器の洗浄が完了していればよい。このようなフレキシブル負荷に対しては、上記設定された期間内の適当な時期に負荷制御装置が動作の制御を行うことが可能である。
【0014】
そこで、本発明では、上記供給電力が上記消費電力よりも多い場合に、動作を開始する必要がある上記フレキシブル負荷に動作の開始を指示する。これに対し、上記供給電力が上記消費電力よりも少ない場合に、上記フレキシブル負荷の動作が開始されると、商用電源の系統または蓄電池からの供給電力が必要となり、エネルギーの使用効率が悪化することになる。従って、本発明により、エネルギーの利用効率を悪化させることなく、上記供給電力と上記消費電力とのバランスを維持することができる。
【0015】
なお、本願では、動作の開始には、動作の一時停止から再開する場合も含まれる。また、供給電力値と消費電力値との比較は、特定の分散電源および負荷ごとに行ってもよいが、全ての分散電源の供給電力値の総和と、全ての負荷の消費電力値の総和とを比較することが好ましい。
【0016】
本発明に係る負荷制御装置では、上記制御対象決定手段は、上記供給電力値が上記消費電力値よりも小さい場合、上記負荷動作指示手段が動作の開始を指示した負荷を、一時停止の制御対象として決定し、上記負荷動作指示手段は、上記制御対象決定手段が一時停止の制御対象として決定した負荷に対し、動作の一時停止を指示することが好ましい。この場合、上記供給電力が上記消費電力よりも少ない場合でも、実行中の上記フレキシブル負荷の動作を一時停止することにより、エネルギーの利用効率を悪化させることなく、上記供給電力と上記消費電力とのバランスを確実に維持することができる。
【0017】
本発明に係る負荷制御装置では、上記負荷動作指示手段が動作の開始を指示した負荷の動作履歴を、当該負荷ごとに含む動作履歴情報を記憶する記憶部をさらに備えており、上記制御対象決定手段は、上記記憶部の動作履歴情報を参照して、上記制御対象から上記負荷を除外することが好ましい。
【0018】
ここで、上記制御対象から除外する負荷としては、上記負荷が最後に動作した時点から現時点までの期間が所定期間よりも短い負荷、上記負荷の動作が行われていない時間帯に現時点が含まれるような負荷、などが挙げられる。例えば、食器洗浄機が食器の洗浄を完了してから1時間程度であれば、次の食事に使用された食器が食器洗浄機に入っている可能性が低い。この場合、食器洗浄機は、食器の洗浄を実行する必要が無い。また、集合住宅などでは、洗濯機を夜間に動作させることは望ましくない。
【0019】
従って、本発明によると、動作の開始または一時停止が、不要または望ましくないフレキシブル負荷に対し、動作の開始または一時停止を指示することを防止できる。なお、上記所定期間は、通常、上記フレキシブル負荷ごとに異なるので、上記フレキシブル負荷ごとに設定されることが好ましい。
【0020】
なお、上記負荷制御装置の制御方法における各ステップを、制御プログラムによりコンピュータに実行させることができる。さらに、上記制御プログラムをコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶させることにより、任意のコンピュータ上で上記制御プログラムを実行させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る負荷制御装置は、供給電力が消費電力よりも多い場合に、負荷制御装置による動作の制御が可能であって、動作を開始する必要がある負荷に動作の開始を指示するので、エネルギーの利用効率を悪化させることなく、上記供給電力と上記消費電力とのバランスを維持できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態である電力システムの詳細を示すブロック図である。
【図2】上記電力システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】上記電力システムの負荷制御装置における記憶部に記憶された負荷動作情報の一例を表形式で示す図である。
【図4】上記記憶部に記憶された動作履歴情報の一例を表形式で示す図である。
【図5】上記負荷制御装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。図2は、本実施形態である電力システムの概略構成を示している。なお、図2において、太線は電力の流れを示しており、細線はデータの流れを示している。
【0024】
図2に示すように、電力システム1は、各種の分散電源2からの電力を、配電盤3を介して、各種の負荷装置4に供給するものである。なお、本実施形態では、電力システム1は、家屋に設置する場合を想定しているが、これに限定されるものではない。例えば、オフィス、工場など、複数の電源を利用する任意の建物に設置した電力システムに、本発明を適用することもできるし、複数の建物を含む特定の地域に設置した電力システムに、本発明を適用することもできる。
【0025】
分散電源2は、比較的小規模な発電装置を消費地近くに分散配置して電力の供給を行う装置である。本実施形態では、分散電源2として、自然エネルギーを利用した太陽光発電装置2aおよび風力発電装置2bとを利用しているが、これに限定されるものではない。地熱発電装置、燃料電池装置、蓄電池など、その他の分散電源も、本実施形態の電力システム1に利用することができる。なお、以下では、分散電源2a・2bを総称する場合には「分散電源2」と記載する。
【0026】
配電盤3は、分散電源2から供給された電力を、負荷装置4に分配するものである。負荷装置4は、電力を消費するものである。図2の例では、負荷装置4として、洗濯機4aおよび食器洗浄機4bを使用しているが、冷蔵庫、エアコン、電気ポット、ノートPC(Personal Computer)、電灯など、任意の電気機器を使用することができる。
【0027】
本実施形態では、電力システム1は、負荷制御装置5を備えている。負荷制御装置5は、供給電力および消費電力のバランスを維持するように、負荷装置4を制御するものである。
【0028】
図2に示すように、負荷制御装置5は、太陽光発電装置2a、風力発電装置2b、および負荷装置4と通信可能に接続されている。なお、負荷制御装置5と負荷装置4とは、通信ネットワークにより通信可能に接続されていることが好ましい。この通信ネットワークの例としては、電力線通信(PLC:Power Line Communications)による有線LAN(Local Area Network)、無線LAN(IEEE802.11)などが挙げられる。
【0029】
図1は、電力システム1の詳細を示している。図示のように、分散電源2および負荷装置4のそれぞれには、電力を計測するセンサ10が設けられている。なお、電力を計測する方法は公知であるのでその説明を省略する。また、図示のように、負荷装置4のそれぞれには、当該負荷装置4の動作を制御するコントローラ11が設けられている。コントローラ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびメモリを含むコンピュータによって構成される。そして、当該負荷装置4の動作制御は、制御プログラムをコンピュータに実行させることによって行われる。
【0030】
センサ10およびコントローラ11は、該当する装置に内蔵されていてもよいし、該当する装置と電力線との間に外付けされてもよい。負荷装置4のセンサ10およびコントローラ11は、外付けされる場合には一体となった装置であることが望ましく、さらに、該一体となった装置が負荷制御装置5との通信機能を有することが望ましい。センサ10およびコントローラ11が外付けされる場合には、分散電源2および負荷装置4が通信機能を有する必要は無い。
【0031】
次に、負荷制御装置5の詳細について説明する。図1に示すように、負荷制御装置5は、制御部20および記憶部21を備える構成である。制御部20は、負荷制御装置5内における各種構成の動作を統括的に制御するものであり、例えばCPUおよびメモリを含むコンピュータによって構成される。そして、各種構成の動作制御は、制御プログラムをコンピュータに実行させることによって行われる。記憶部21は、情報を記録するものであり、ハードディスク、フラッシュメモリなどの記録装置によって構成される。
【0032】
次に、制御部20および記憶部21の詳細について説明する。図1に示すように、制御部20は、供給電力取得部(電力値取得手段)30、消費電力取得部(電力値取得手段)31、需給比較部(電力値比較手段)32、制御対象決定部(制御対象決定手段)33、および負荷動作指示部(負荷動作指示手段)34を備える構成である。また、記憶部21は、負荷動作記憶部40および動作履歴記憶部41を備える構成である。
【0033】
負荷動作記憶部40は、制御対象となる負荷装置4ごとに、該負荷装置4の動作に関する情報を含む負荷動作情報を記憶するものである。図3は、該負荷動作情報の一例を表形式で示している。図示の例では、上記負荷動作情報として、負荷装置4に関するID、名称、および制御可否が負荷装置4ごとに格納されている。
【0034】
ここで、制御可否とは、負荷制御装置5による動作の制御が可能か否かを示すものである。図3において、「可」は上記動作が可能であることを示しており、「不可」は上記動作が不可能であることを示している。
【0035】
例えば、テレビおよび掃除機は、ユーザの操作に従う必要があるから、負荷制御装置5による動作の制御が不可能(不可)となっている。一方、洗濯機4aは、例えば帰宅するまでに衣服の洗濯が完了していればよい場合があり、この場合、負荷制御装置5による動作の制御が可能(可)である。同様に、食器洗浄機4bは、次の食事の準備までに食器の洗浄が完了していればよい場合があり、この場合、負荷制御装置5による動作の制御が可能である。従って、負荷装置4によっては、制御可否が可能となったり不可能となったりすることがある。
【0036】
また、図3に示すように、上記負荷動作情報には、制御可否が「可」である負荷装置4ごとに、現在の動作状態が格納されている。同図において、「開始前」は動作が開始前であることを示しており、「動作中」は動作が実行中であることを示しており、「一時停止中」は動作が一時停止中であることを示している。
【0037】
動作履歴記憶部41は、負荷制御装置5が動作を指示した負荷装置4ごとに、当該負荷装置4の動作履歴を含む動作履歴情報を記憶している。図4は、該動作履歴情報の一例を表形式で示している。図示の例では、上記動作履歴情報として、負荷装置4に関するID、名称、および動作履歴が負荷装置4ごとに格納されている。
【0038】
供給電力取得部30は、各分散電源2が供給する供給電力値を取得するものである。具体的には、供給電力取得部30は、各分散電源2のセンサ10から、分散電源2の供給電力値を取得する。供給電力取得部30は、取得した供給電力値を需給比較部32に送出する。
【0039】
消費電力取得部31は、各負荷装置4が消費する消費電力値を、取得するものである。具体的には、消費電力取得部31は、各負荷装置4のセンサ10から消費電力値を取得する。消費電力取得部31は、取得した消費電力値を需給比較部32に送出する。
【0040】
また、消費電力取得部31は、負荷動作指示部34が指示した負荷装置4の消費電力値が待機電力程度に低くなると、負荷装置4の動作が終了したと判断する。そして、消費電力取得部31は、負荷動作記憶部40の負荷動作情報について、当該負荷装置4の動作状態を「動作中」から「開始前」に更新し、動作履歴記憶部41の動作履歴情報について、当該負荷装置4の動作履歴を更新する。
【0041】
需給比較部32は、供給電力値と消費電力値とを比較するものである。具体的には、需給比較部32は、供給電力取得部30から取得した各分散電源2の供給電力値の総和を算出する一方、消費電力取得部31から取得した各負荷装置4の消費電力値の総和を算出し、算出した供給電力値の総和と、算出した消費電力値の総和とを比較する。需給比較部32は、比較結果を制御対象決定部33に通知する。
【0042】
制御対象決定部33は、需給比較部32からの比較結果に基づいて、動作の制御対象となる負荷装置4を決定するものである。制御対象決定部33は、決定結果を負荷動作指示部34に通知する。
【0043】
具体的には、制御対象決定部33は、上記比較結果により、上記供給電力値の総和が上記消費電力値の総和より大きい場合、まず、負荷動作記憶部40の負荷動作情報を参照して、制御可否が「可」であり、動作状態が「開始前」または「一時停止中」である負荷装置4を検索する。検索された負荷装置4は、負荷制御装置5による動作の制御が可能であって、動作を開始する必要がある負荷装置4である。
【0044】
次に、制御対象決定部33は、動作履歴記憶部41の動作履歴情報を参照して、検索された負荷装置4の現時点での動作が、不要である、或いは望ましくない負荷装置4を特定する。そして、制御対象決定部33は、検索された負荷装置4のうち、特定された負荷装置4を除外したものを、動作開始の制御対象として決定し、負荷動作指示部34に通知する。
【0045】
例えば、食器洗浄機4bについて、動作履歴を参照すると、直近の動作完了から現時点までの期間が数時間以下である場合、次の食事に使用された食器が食器洗浄機4bに入っている可能性が低いので、現時点での動作が不要な負荷装置4として特定する。また、洗濯機4aについて、動作履歴を参照すると、昼間しか動作が行われていない場合、夜間の動作が望ましくない可能性が高いので、現時点が夜間であれば動作の望ましくない負荷装置4として特定する。
【0046】
一方、制御対象決定部33は、上記比較結果により、上記供給電力値の総和が上記消費電力値の総和より小さい場合、まず、負荷動作記憶部40の負荷動作情報を参照して、制御可否が「可」であり、動作状態が「動作中」である負荷装置4を検索する。検索された負荷装置4は、負荷制御装置5による動作の制御が可能であって、動作を開始する必要があり、かつ動作を実行中の負荷装置4である。
【0047】
次に、制御対象決定部33は、動作履歴記憶部41の動作履歴情報を参照して、検索された負荷装置4の現時点での動作の一時停止が、不要である、或いは望ましくない負荷装置4を特定する。そして、制御対象決定部33は、検索された負荷装置4のうち、特定された負荷装置4を除外したものを、動作の一時停止の制御対象として決定し、負荷動作指示部34に通知する。
【0048】
負荷動作指示部34は、制御対象決定部33からの通知に基づき、制御対象となる負荷装置4に動作を指示するものである。負荷動作指示部34は、指示内容に基づき、負荷動作記憶部40の負荷動作情報と、動作履歴記憶部41の動作履歴情報とを更新する。なお、該更新は、消費電力取得部31が、制御対象の負荷装置4の消費電力に基づいて行ってもよい。
【0049】
具体的には、負荷動作指示部34は、制御対象決定部33から動作開始の制御対象が通知されると、制御対象の負荷装置4のコントローラ11に動作の開始を指示する。当該コントローラ11により制御対象の負荷装置4の動作が開始される。次に、負荷動作指示部34は、負荷動作記憶部40の負荷動作情報について、制御対象の負荷装置4の動作状態を「開始前」または「一時停止中」から「動作中」に更新する。また、負荷動作指示部34は、動作履歴記憶部41の動作履歴情報について、制御対象の負荷装置4の動作履歴を更新する。
【0050】
一方、負荷動作指示部34は、制御対象決定部33から動作の一時停止の制御対象が通知されると、制御対象の負荷装置4のコントローラ11に動作の一時停止を指示する。当該コントローラ11により、制御対象の負荷装置4の動作が一時停止される。次に、負荷動作指示部34は、負荷動作記憶部40の負荷動作情報について、制御対象の負荷装置4の動作状態を「動作中」から「一時停止中」に更新する。
【0051】
次に、上記構成の負荷制御装置5における処理動作を、図5を参照して説明する。図5は、負荷制御装置5の処理の流れを示している。図示のように、まず、供給電力取得部30が各分散電源2の供給電力値を取得し、消費電力取得部31が各負荷装置4の消費電力値を取得する(S10)。このとき、消費電力取得部31は、取得した消費電力値に基づき、必要があれば、負荷動作記憶部40の負荷動作情報と動作履歴記憶部41の動作履歴情報とを更新する。
【0052】
次に、需給比較部32は、取得された供給電力値の総和と、取得された消費電力値の総和とを比較する(S11)。(上記供給電力値の総和)=(上記消費電力値の総和)の場合、電力の需給バランスが維持されているので、特に何もせずに、ステップS18に進む。
【0053】
一方、(上記供給電力値の総和)>(上記消費電力値の総和)の場合、制御対象決定部33は、負荷制御装置5による動作の制御が可能であって、動作を開始する必要がある負荷装置4を検索する(S12)。次に、制御対象決定部33は、動作履歴記憶部41の動作履歴情報を参照して、検索された負荷装置4の現時点での動作が、不要である、或いは望ましくない負荷装置4を特定する。そして、制御対象決定部33は、検索された負荷装置4のうち、特定された負荷装置4を除外したものを、動作開始の制御対象の負荷装置4として決定する(S13)。
【0054】
次に、負荷動作指示部34は、制御対象の負荷装置4に動作の開始を指示する(S14)。これにより、制御対象の負荷装置4の動作が開始される。また、負荷動作指示部34は、上記指示に基づき、負荷動作記憶部40の負荷動作情報と動作履歴記憶部41の動作履歴情報とを更新する。その後、ステップS18に進む。
【0055】
一方、(上記供給電力値の総和)<(上記消費電力値の総和)の場合、制御対象決定部33は、負荷制御装置5による動作の制御が可能であって、動作を実行中の負荷装置4を検索する(S15)。次に、制御対象決定部33は、動作履歴記憶部41の動作履歴情報を参照して、検索された負荷装置4の現時点での動作の一時停止が、不要である、或いは望ましくない負荷装置4を特定する。そして、制御対象決定部33は、検索された負荷装置4のうち、特定された負荷装置4を除外したものを、動作の一時停止の制御対象の負荷装置4として決定する(S16)。
【0056】
次に、負荷動作指示部34は、制御対象の負荷装置4に動作の一時停止を指示する(S17)。これにより、制御対象の負荷装置4の動作が一時停止される。また、負荷動作指示部34は、上記指示に基づき、負荷動作記憶部40の負荷動作情報と動作履歴記憶部41の動作履歴情報とを更新する。その後、ステップS18に進む。
【0057】
ステップS18にて、所定期間が経過するまで待機し、その後にステップS10に戻って上記処理動作を繰り返す。
【0058】
従って、本実施形態の負荷制御装置5は、上記供給電力の総和が上記消費電力の総和よりも多い場合に、負荷制御装置5が制御可能な負荷であって、動作を開始行する必要がある負荷であるフレキシブル負荷に動作の開始を指示する。これに対し、上記供給電力の総和が上記消費電力の総和よりも少ない場合に、上記フレキシブル負荷の動作が開始されると、商用電源の系統または蓄電池からの供給電力が必要となり、エネルギーの使用効率が悪化することになる。従って、本実施形態の負荷制御装置5により、エネルギーの利用効率を悪化させることなく、上記供給電力と上記消費電力とのバランスを維持することができる。
【0059】
また、上記供給電力の総和が上記消費電力の総和よりも少ない場合、実行中の上記フレキシブル負荷の動作を一時停止させるので、エネルギーの利用効率を悪化させることなく、上記供給電力と上記消費電力とのバランスを確実に維持することができる。また、動作の開始または一時停止が、不要または望ましくないフレキシブル負荷を制御対象から除外するので、当該フレキシブル負荷に対し、動作の開始または一時停止を指示することを防止できる。
【0060】
なお、動作の開始または一時停止が、不要または望ましくないフレキシブル負荷が存在しない場合、動作履歴に関する処理を行わなくてもよい。この場合、図1および図4に示す動作履歴記憶部41、図5に示すステップS13・S16を省略することができる。
【0061】
また、電力システム1は、負荷装置4に電力を安定して供給するために、集中電源である商用電源の系統と、連系可能であることが望ましい。しかしながら、この場合でも、自然エネルギーを最大限利用するために、本実施形態のように、分散電源2からの電力を最大限利用することが望ましい。
【0062】
また、上記実施形態では、負荷制御装置5が、洗濯機4aおよび食器洗浄機4bの動作を制御しているが、洗濯機4aおよび食器洗浄機4bは、ユーザの操作によりユーザの所望する時期に動作してもよい。この場合、図3に示す負荷動作情報における制御可否の項目が「可」から「不可」に変更される。
【0063】
また、洗濯機4aおよび食器洗浄機4bは、負荷制御装置5によって制御されている旨をユーザに報知する、表示デバイス、音声出力デバイスなどの報知手段を備えることが望ましい。この場合、ユーザは、洗濯機4aおよび食器洗浄機4bが外部装置によって制御されているか否かを把握できるので、ユーザの利便性が向上する。
【0064】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
例えば、上記実施形態では、上記フレキシブル負荷として、洗濯機4aおよび食器洗浄機4bを挙げているが、これに限定されるものではない。例えば、携帯機器、自動掃除機など、内蔵の二次電池によって動作する電気機器用の充電器、電気ポット、炊飯器、外灯など、負荷制御装置5が動作を制御することが可能であって、動作を開始する必要のある任意の負荷装置4を利用することができる。
【0066】
最後に、負荷制御装置5の各ブロック、特に制御部20は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0067】
すなわち、負荷制御装置5は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである負荷制御装置5の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記負荷制御装置5に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0068】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0069】
また、負荷制御装置5を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明に係る負荷制御装置は、供給電力が消費電力よりも多い場合に、負荷制御装置による動作の制御が可能であって、動作を開始する必要がある負荷に動作の開始を指示することにより、エネルギーの利用効率を悪化させることなく、上記供給電力と上記消費電力とのバランスを維持できるので、任意の分散電源を利用する電力システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 電力システム
2 分散電源
2a 太陽光発電装置
2b 風力発電装置
3 配電盤
4 負荷装置
4a 洗濯機
4b 食器洗浄機
5 負荷制御装置
10 センサ
11 コントローラ
20 制御部
21 記憶部
30 供給電力取得部(電力値取得手段)
31 消費電力取得部(電力値取得手段)
32 需給比較部(電力値比較手段)
33 制御対象決定部(制御対象決定手段)
34 負荷動作指示部(負荷動作指示手段)
40 負荷動作記憶部
41 動作履歴記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギーを利用した分散電源から供給された電力が負荷にて消費される電力システムに利用され、上記負荷の動作を制御する負荷制御装置であって、
上記電源が供給している供給電力値と、上記負荷が消費している消費電力値とを取得する電力値取得手段と、
該電力値取得手段が取得した供給電力値および消費電力値を比較する電力値比較手段と、
該電力値比較手段が比較した結果、上記供給電力値が上記消費電力値よりも大きい場合、上記負荷のうち、当該負荷制御装置による動作の制御が可能であって、動作を開始する必要がある負荷を制御対象として決定する制御対象決定手段と、
該制御対象決定手段が決定した負荷に対し、動作の開始を指示する負荷動作指示手段とを備えることを特徴とする負荷制御装置。
【請求項2】
上記制御対象決定手段は、上記供給電力値が上記消費電力値よりも小さい場合、上記負荷動作指示手段が動作の開始を指示した負荷を、一時停止の制御対象として決定し、
上記負荷動作指示手段は、上記制御対象決定手段が一時停止の制御対象として決定した負荷に対し、動作の一時停止を指示することを特徴とする請求項1に記載の負荷制御装置。
【請求項3】
上記負荷動作指示手段が動作の開始を指示した負荷の動作履歴を、当該負荷ごとに含む動作履歴情報を記憶する記憶部をさらに備えており、
上記制御対象決定手段は、上記記憶部の動作履歴情報を参照して、上記制御対象から上記負荷を除外することを特徴とする請求項1または2に記載の負荷制御装置。
【請求項4】
自然エネルギーを利用した分散電源から供給された電力が負荷にて消費される電力システムに利用され、上記負荷の動作を制御する負荷制御装置の制御方法であって、
上記電源が供給している供給電力値と、上記負荷が消費している消費電力値とを取得する電力値取得ステップと、
該電力値取得ステップにて取得された供給電力値および消費電力値を比較する電力値比較ステップと、
該電力値比較ステップにて比較された結果、上記供給電力値が上記消費電力値よりも大きい場合、上記負荷のうち、当該負荷制御装置による動作の制御が可能であって、動作を開始する必要がある負荷を制御対象として決定する制御対象決定ステップと、
該制御対象決定ステップにて決定された負荷に対し、動作の開始を指示する負荷動作指示ステップとを含むことを特徴とする負荷制御装置の制御方法。
【請求項5】
自然エネルギーを利用した分散電源から供給された電力が負荷にて消費される電力システムに利用され、上記負荷の動作を制御する負荷制御装置を動作させるための制御プログラムにおいて、
上記電源が供給している供給電力値と、上記負荷が消費している消費電力値とを取得する電力値取得ステップと、
該電力値取得ステップにて取得された供給電力値および消費電力値を比較する電力値比較ステップと、
該電力値比較ステップにて比較された結果、上記供給電力値が上記消費電力値よりも大きい場合、上記負荷のうち、当該負荷制御装置による動作の制御が可能であって、動作を開始する必要がある負荷を制御対象として決定する制御対象決定ステップと、
該制御対象決定ステップにて決定された負荷に対し、動作の開始を指示する負荷動作指示ステップとをコンピュータに実行させるための制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−195990(P2012−195990A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55974(P2011−55974)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】