貫入型パイプひずみ計
【課題】
本願発明は、地盤浅層等への埋設時間を更に短縮化した貫入型パイプひずみ計の提供。
【解決手段】
ひずみゲージ8を外周に複数有する内パイプ部材7と、それらの外側を覆う外パイプ部材9からなるパイプひずみ計本体2と、パイプひずみ計本体2の先端部の掘削用スクリュー3と、パイプひずみ計本体2の後端部7bに設けられた回動工具取付部5と、を備え、斜面等に埋設されることで、土砂崩壊等の前兆現象となる地盤のひずみを計測するパイプひずみ計1において、パイプひずみ計本体2の後端部7bの外周には、円形の垂直断面を有する受圧部4が一体に設けられ、受圧部4は、垂直断面の断面積Sがパイプひずみ計本体2の中心軸L1に沿って後方に末広がりに増加するよう形成され、受圧部4の前端部4aが、パイプひずみ計本体2の外周面に連続するようした。
本願発明は、地盤浅層等への埋設時間を更に短縮化した貫入型パイプひずみ計の提供。
【解決手段】
ひずみゲージ8を外周に複数有する内パイプ部材7と、それらの外側を覆う外パイプ部材9からなるパイプひずみ計本体2と、パイプひずみ計本体2の先端部の掘削用スクリュー3と、パイプひずみ計本体2の後端部7bに設けられた回動工具取付部5と、を備え、斜面等に埋設されることで、土砂崩壊等の前兆現象となる地盤のひずみを計測するパイプひずみ計1において、パイプひずみ計本体2の後端部7bの外周には、円形の垂直断面を有する受圧部4が一体に設けられ、受圧部4は、垂直断面の断面積Sがパイプひずみ計本体2の中心軸L1に沿って後方に末広がりに増加するよう形成され、受圧部4の前端部4aが、パイプひずみ計本体2の外周面に連続するようした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貫入によって地盤や積雪の浅層に埋設し、前記浅層で発生する地盤や積雪のひずみの変化を簡易かつ迅速に検出することにより、斜面の土砂崩壊、豪雨における地盤表層の崩壊、土石流の発生又は雪崩等の前兆現象を測定する貫入型パイプひずみ計の技術である。
【背景技術】
【0002】
斜面に貫入させることで斜面の地盤の表層に埋設し、斜面で発生する土砂災害の前兆現象を検出する貫入型パイプひずみ計には、下記特許文献1に示すものがある。特許文献1の貫入型パイプひずみ計は、外周面に複数のひずみゲージを貼付した内パイプの外側に外パイプを配置し、内パイプと外パイプの間にエポキシ樹脂を充填することで内パイプと外パイプを一体化したパイプひずみ計本体と、パイプひずみ計本体の先端に設けられた掘削用スクリューと、後端に設けられた工具取付用スリットを有する。この貫入型パイプひずみ計は、持ち運びを容易にするため全長が大人の肩の高さよりも低い長さに形成され、パイプひずみ計本体の後端部には、工具取付用スリットに着脱自在に固定された工具固定治具を介して携帯用電動回動工具等が取り付けられる。また、パイプひずみ計本体の後端部の外周には、雄ねじ部が形成され、雄ねじ部の内側には、前記ひずみゲージに接続されたコネクタが設けられる。
【0003】
特許文献1の貫入型パイプひずみ計は、貫入型パイプひずみ計を掘削用スクリューを下にして斜面に対して垂直に立てられ、後端部に取り付けた電動回動工具を回動させることによって斜面の浅層に埋設される。貫入型パイプひずみ計は、後端部のコネクタが地表に露出するように埋設され、前記コネクタには、測定器から伸びる接続ケーブルが接続される。土砂崩壊の前兆現象として斜面にひずみが発生した場合には、複数のひずみゲージを貼付したパイプひずみ計本体に曲げ応力が作用する。パイプひずみ計に接続された計測器は、ひずみゲージの検出結果から斜面に発生した単位時間当りのひずみの増分値を計測する。前記ひずみの増分値が所定数値を超えた場合、計測器は、警告発生装置(図示せず)に警告発生指令を送り、警告発生装置に儲けされた警告表示灯や警告音発生用のスピーカー等(図示せず)から警告を発生させることにより、貫入型パイプひずみ計の埋設地点に土砂崩壊の前兆現象が発生していることをその周囲の人員に認知させる。
【0004】
また、貫入型パイプひずみ計を埋設した後、パイプひずみ計本体の後端部には、斜面のひずみの検出感度を向上させるための受圧板が取り付けられる。受圧板は、パイプひずみ計本体の後端部に固定される円筒部の左右に先端が鋭角に形成された一対の板状受圧部を一体化した形状を有する。受圧板は、板状受圧部の先端部を下にし、その板面が斜面の傾斜方向と直交するようにして斜面に押し込まれる。また、受圧板は、貫入型パイプひずみ計の後端部の雄ねじ部を円筒部内側の円孔に挿通させ、雄ねじ部に雌ネジ付キャップを螺着することによって後端部に一体に固定される。貫入型パイプひずみ計は、板状受圧部が斜面の傾斜方向に移動する土砂の圧力を受けて、パイプひずみ計本体に曲げ応力が作用しやすくなることにより、土砂崩壊の前兆現象をより早期に検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−192626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1以前のパイプひずみ計(特許文献1で引用した実用新案登録第2514095号公報)は、全長が20m〜30mもあり、製造コストの高さに加え、事前に行なうボーリング作業や地中への設置作業に多大な作業労力とコストが必要であったため、土砂崩壊が起きそうな斜面の浅層に短時間で多数を埋設することにより、土砂崩壊の前兆現象をいち早く検出するような用途には不向きであった。
【0007】
そこで、本願特許出願人は、特許文献1の貫入型パイプひずみ計において、全長を大人の肩の高さよりも短くして人力による運搬を容易にし、更に先端部の掘削用スクリューと後端部に取り付けた携帯用電動回動工具によってボーリングと埋設作業の同時進行を可能にし、貫入型パイプひずみ計一つ当りの設置コストと埋設時間を大幅に削減することに成功した。その結果、土砂崩壊の起きそうな斜面に特許文献1の貫入型パイプひずみ計を短時間に多数のものを斜面に埋設可能にすることで土砂崩壊の前兆現象がいち早く検出出来るようになった。
【0008】
一方、短時間に多数を斜面に設置する観点からすると、貫入型パイプひずみ計一つ当りに必要とされる斜面への埋設時間は、少しでも短縮されることが望ましい。そのような観点から、本願発明は、地盤浅層等への埋設時間を更に短縮化した貫入型パイプひずみ計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の貫入型パイプひずみ計は、複数のひずみゲージを外周に取り付けた内パイプ部材と、該内パイプ部材の外側を覆う外パイプ部材からなるパイプひずみ計本体と、前記パイプひずみ計本体の先端部に設けられた掘削用スクリューと、前記パイプひずみ計本体の後端部に設けられた回動工具取付部と、を備え、地盤や積雪の浅層に埋設することにより、地盤や積雪の移動に基づいて生じるひずみを計測するパイプひずみ計において、前記パイプひずみ計本体の後端部近傍の外周には、前記パイプひずみ計本体と同心円となる円形の垂直断面を有する受圧部が一体に設けられ、前記受圧部は、垂直断面の断面積が前記パイプひずみ計本体の中心軸に沿って後方に末広がりに増加するように形成され、前記受圧部の前端部は、前記パイプひずみ計本体の外周面に連続するように形成されるようにした。
【0010】
従来の板状の受圧板は、貫入型パイプひずみ計に取付けられたままであると貫入型パイプひずみ計の回動を阻害するため、貫入型パイプひずみ計の埋設後に別途埋設され、貫入型パイプひずみ計の後端部に後から一体化されていた。
【0011】
(作用)本願請求項1の貫入型パイプひずみ計の受圧部は、円形の垂直断面と前方に向けた先細り形状を有するため、貫入型パイプひずみ計と一体となって回動しつつ埋設されたとしても、貫入型パイプひずみ計の回動を阻害することが無い。即ち、受圧部を貫入型パイプひずみ計と同時に埋設することが出来る。
【0012】
請求項2は、請求項1記載の貫入型パイプひずみ計において、前記受圧部が、円錐形状を有するように構成した。
【0013】
(作用)受圧部の外周面が後方に向けて円錐状に末広がりに傾斜するため、受圧部は、貫入型パイプひずみ計の回動を阻害することなく、貫入型パイプひずみ計と同時に埋設される。
【0014】
請求項3は、請求項1に記載の貫入型パイプひずみ計において、前記受圧部が、弾丸形状を有するように構成した。
【0015】
受圧部の貫入作業によって押し拡げられた地盤が押し固められることによる地盤の弾性係数の増加や、パイプひずみ計全体との間に発生する摩擦力の増加や、地盤の押し広げ面積の増加によって受圧部に作用する圧力の増加により、通常、受圧部は、埋設作業が進むほど埋設されにくくなるものと考えられる。
【0016】
(作用)しかし、請求項3の弾丸形状の受圧部においては、外周面が垂直断面の半径方向内側に湾曲するため、埋設作業の後半において受圧部の単位埋設量当りの(垂直断面の)断面積の増分が一定になるか、または少なくなる。言い換えると、請求項3の弾丸形状の受圧部は、埋設作業の後半において地盤の押し広げ面積の増分が一定または少なくなるため、地盤を押し拡げる際に受圧部に作用する圧力の増加が抑制される。その結果、請求項3の受圧部は、埋設作業の後半において貫入されやすくなる。
【0017】
請求項4は、請求項1に記載の貫入型パイプひずみ計において、前記受圧部は、円錐形状と弾丸形状が前後に連続した形状を有するように構成した。
【0018】
(作用)請求項4の受圧部は、前部が円錐の傾斜面を有するため、受圧部の埋設作業の前半において地盤に貫入されやすい。また、円錐形状に連続する後部が弾丸形状を有し、埋設作業の後半に受圧部に作用する圧力の増加が抑制されるため、請求項4の受圧部は、受圧部の貫入作業後半においても貫入されやすい。
【0019】
請求項5は、請求項3または4に記載の貫入型パイプひずみ計において、前記弾丸形状が、前記パイプひずみ計の中心軸に沿って後方に伸びる第1の座標軸と、前記第1の座標軸に直交する第2の座標軸からなる直交座標上の原点から後方に伸びる2乗根曲線(例えば、第1の座標軸をy、第2の座標軸をr、aを所定の比例定数とした場合において、r=aで表される2乗根曲線)を前記中心軸(第1の座標軸)周りに回転させてなる形状を有するように構成した。
【0020】
(作用)受圧部の弾丸形状部位は、地盤の押し広げ面積の増分が一定になるため、埋設作業の後半において受圧部に作用する圧力の増加が抑制される。その結果、弾丸型の受圧部は、埋設作業の後半においても貫入されやすくなる。
【0021】
請求項6の貫入型パイプひずみ計は、複数のひずみゲージを外周に取り付けた内パイプ部材と、該内パイプ部材の外側を覆う外パイプ部材からなるパイプひずみ計本体と、前記パイプひずみ計本体の先端部に設けられた掘削用スクリューと、前記パイプひずみ計本体の後端部に設けられた回動工具取付部と、を備え、地盤や積雪の浅層に埋設することにより、地盤や積雪の移動に基づいて生じるひずみを計測するパイプひずみ計において、前記外パイプ部材は、耐候性を有すると共に前記ひずみゲージと前記内パイプ部材とを外側から被覆する被覆材で構成した。
【0022】
(作用)従来の貫入型パイプひずみ計においては、ひずみゲージを外周に取り付けた内パイプ部材の外側に外パイプ部材を配置していたため、内パイプ部材と外パイプ部材の間に樹脂を充填することにより、外パイプ部材からひずみゲージへのひずみの伝達感度を上げる必要が有った。本願においては、内パイプ部材を被覆しており、ひずみゲージと被覆材が密着しているため、樹脂材の充填作業が不要になる。その結果、被覆材を含むパイプひずみ計本体を細く形成できる。
【0023】
請求項7は、請求項1から6のうちいずれかに記載の貫入型パイプひずみ計において、前記ひずみゲージが前記回動工具取付部の内側から後方に露出するコネクタに接続され、前記コネクタには、パイプひずみ計本体と別体に形成された警告発生装置が接続ケーブルを介して接続されるようにした。
【0024】
(作用)警告発生装置は、ケーブルを介してパイプひずみ計本体の後端に取り付けられるため、パイプひずみ計本体の後端に直に取り付けられる場合に比べ、容易かつ短時間で取り付けられる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1と2の貫入型パイプひずみ計によれば、受圧部を貫入型パイプひずみ計から取り外さなくても、受圧部と貫入型パイプひずみ計を一体にしたまま埋設出来るため、貫入型パイプひずみ計と受圧部の埋設作業時間が短縮される。
【0026】
請求項3の貫入型パイプひずみ計によれば、受圧部の貫入作業後半における労力が低減される。
【0027】
請求項4の貫入型パイプひずみ計によれば、貫入作業前半において受圧部が貫入されやすくなり、貫入作業後半においても、受圧部が貫入されにくくならない。従って、受圧部を含む貫入型パイプひずみ計の貫入作業が作業全般で容易になる。
【0028】
請求項5の貫入型パイプひずみ計によれば、受圧部の貫入作業後半における労力が低減される。
【0029】
請求項6の貫入型パイプひずみ計によれば、被覆材を含むパイプひずみ計本体を細く形成できるため、地盤へ埋設されやすくなる。また、樹脂の充填が不要になるため、貫入型パイプひずみ計の製造コストが安価になる。
【0030】
請求項7の貫入型パイプひずみ計によれば、警告発生装置の取付時間が短縮されるため、貫入型パイプひずみ計の設置時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施例の貫入型パイプひずみ計の外観を表す斜視図。
【図2】パイプひずみ計本体の内部構造を表す軸方向部分断面図。
【図3】第1実施例の受圧部の拡大部分断面図。
【図4】ひずみゲージの配置を示す図2のI−I断面図。
【図5】第2実施例の受圧部の拡大部分断面図
【図6】第2実施例の受圧部の形状説明図。
【図7】第3実施例の貫入型パイプひずみ計の外観を表す斜視図。
【図8】第3実施例の受圧部の拡大部分断面図
【図9】第3実施例の受圧部の形状説明図。
【図10】電動工具の取付状況を説明する斜視図。
【図11】(a) 貫入型パイプひずみ計の斜面への設置前の状況を表す参考図。(b) 貫入型パイプひずみ計の埋設状況を表す参考図。(c)貫入型パイプひずみ計への警告発生装置の取付状況を表す参考図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
まず図面1〜4を参照して本願発明の第1実施例を説明する。図1〜3(後述する図5〜9も同様)においては、紙面下側を貫入型パイプひずみ計1の先端側とし、紙面上側を貫入型パイプひずみ計の後端側として説明する。
【0033】
貫入型パイプひずみ計1は、パイプひずみ計本体2、掘削用スクリュー3,受圧部4,回動工具取付部5及び雌コネクタ6によって構成されている。掘削用スクリュー3,受圧部4,回動工具取付部5及び雌コネクタ6は、パイプひずみ計本体2と共通する中心軸L1上に配置される。
【0034】
掘削用スクリュー3は、パイプひずみ計本体2の先端(後述する内パイプ部材7の先端7a)に一体固定され、受圧部4は、パイプひずみ計本体2の後端(後述する内パイプ部材7の後端7b)の周辺に一体化される。回動工具取付部5は、外径が6角ナット形状に形成され、中央部に円孔5aを有し、中心軸L1と直交する受圧部の後端面4bに一体化される。雌コネクタ6は、円孔5aから後方に露出した状態でパイプひずみ計本体2の後端(後述する内パイプ部材7の後端7b)の近傍に固定される。また、貫入型パイプひずみ計1の全長L(掘削用スクリュー3の先端から回動工具取付部5の後端までの長さ)は、人力による持ち運びを可能にするため、例えば60cm〜2m(望ましくは60cm)程度に形成される。
【0035】
パイプひずみ計本体2は、円環状の内パイプ部材7と、内パイプ部材7の外周面に取り付けられた複数のひずみゲージ8と、ひずみゲージ8を貼付した内パイプ部材7の外周を被覆する被覆材9によって構成される。本願第1実施例の内パイプ部材7は、一例として、直径10mm及び肉厚1mm程度の金属製の円筒部材等によって形成されている。尚、内パイプ部材7及び掘削用スクリュー3の素材は、埋設時に電動回動工具35のトルク(例えば12Vの電動ドリル、電動ドライバ等を使用する場合には、140N.m程度)によって塑性変形をしない十分な剛性を備え、更に地中に埋設する点から耐腐食性を備えた素材とすべき点からステンレス等の金属素材を用いることが望ましい。また、軽量化が図れる面から十分な剛性等を備えた樹脂素材を用いる事も考えられる。また被覆材9には、例えば、地盤に貫入する際に破損の無い十分な強度と耐候性を有する厚さ1mm程度の樹脂製の熱収縮チューブを利用する。ひずみゲージ8を取り付けた内パイプ部材7は、外側から熱収縮チューブである被覆材9を被せ、熱をかけられることにより、被覆材9に被覆される。
【0036】
受圧部4は、軌跡上の頂点Tが内パイプ部材7の中心軸L1上に位置する円錐形状を有し、内パイプ部材7の外径と内径が同一となる円孔4cを中心軸L1に沿って有する。また、一例として受圧部の長さは、7.5cm程度に形成され、受圧部後端面4bの外径は、5cm前後に形成される。回動工具取付部5の円孔5aは、中心軸L1と同軸に形成され、円孔4cと連続する。内パイプ部材7は、後端近傍の外周面を受圧部4の円孔4cに係合させ、かつ円孔5aの後方に後端7bを露出させた状態で受圧部4に一体固定される。受圧部4は、後述する第2実施例の受圧部22及び第3実施例の受圧部32と同様に垂直断面が円形であるため、貫入型パイプひずみ計1に一体化したままパイプひずみ計本体2及び掘削用スクリュー3と共に回動させて地盤に埋設することが出来る。尚、図2,3の受圧部4においては、内パイプ部材7の固定用の円孔7を形成した他中実構造を有するが、内部に中空部分を形成して受圧部4の重量を軽減してもよい。
【0037】
ひずみゲージ8は、図4に示すように受圧部4の前方において、内パイプ部材7の外周面の周方向に対向して2枚貼付される。また、内パイプ部材7の外周面の長手方向には、対向する2枚を1組として2組のひずみゲージ8が貼付される。対向する2枚のひずみゲージ8を結ぶ線をL2とすると、上下2組のひずみゲージ8は、対向する向き(直線L2に沿った方向)が上下で一致するように内パイプ部材7に貼付される。上下2組で合計4枚のひずみゲージ8は、ダミーゲージを含まないアクティブなひずみゲージであり、ホイートストンブリッジ接続されている。その結果、貫入型パイプひずみ計1においては、ひずみゲージを1枚または2枚とすることに比べて地盤のひずみの感度が向上している。
【0038】
尚、貫入型パイプひずみ計1を斜面に埋設する場合においては、ひずみの検出感度を最大にするため、ひずみゲージ8の対向する向き(直線L2に沿った方向)を斜面の傾斜方向と一致させることが望ましい。従って、受圧部4には、ひずみゲージ8の貼付位置を示すマーク(図示せず)を設けることが望ましい。マークを設ける方法には、例えば、中心軸L1を通り直線L2と平行になるケガキ線を後端面4bに形成したり、ひずみゲージ8の上方に矢印状のマークを設けることなどが考えられる。また、パイプ部材7の外周面には、対向する2枚のひずみゲージ8を周方向に複数組貼付してもよい。その場合には、埋設時におけるひずみゲージ8の対向する向きを斜面の傾斜方向に合わせなくても、各組で得られたひずみの検出結果の平均値を取ることによって地盤のひずみが正確に検出される。
【0039】
被覆材9は、十分な摩擦強度と耐候性を有する樹脂素材で構成される。また、被覆材9は、内パイプ部材7の先端7aから受圧部の先端4aにかけて、複数のひずみゲージ8と共に内パイプ部材7の外周面を被覆する。被覆材9は、被覆材9の外周面と受圧部4の先端4aの境界がなめらかに連続するよう、内パイプ部材7aの外周面に被覆される。
【0040】
各ひずみゲージ8から導出するリード線10は、内パイプ部材7の側壁に穿孔された挿通孔(図示せず)から内パイプ部材7の内部を通り、内パイプ部材7の後端部に固定した雌コネクタ6へ接続される。尚、リード線10は、前記図示しない挿通孔へ通す前に一部を内パイプ部材7の外周面に沿って配線しても良い。雌コネクタ6は、リード線10に接続された状態で、開口穴を閉塞するように内パイプ部材7の後端7bに固定される。
【0041】
次に、図5及び図6により、貫入型パイプひずみ計の第2実施例を説明する。第2実施例の貫入型パイプひずみ計21においては、第1実施例に示す受圧部4の外周形状を円錐型から弾丸型(符号22)に変えた他、第1実施例の貫入型パイプひずみ計1と共通する構成を有する。
【0042】
受圧部22は、図5、6に示す弾丸形状を有し、内パイプ部材7の外径と内径が同一となる円孔22aを中心軸L1に沿って有する。また、回動工具取付部5の円孔5aは、中心軸L1と同軸に形成され、円孔22aと連続する。内パイプ部材7は、後端近傍の外周面を受圧部22の円孔22aに係合させ、かつ円孔5aの後方に後端7bを露出させた状態で受圧部22に一体固定される。
【0043】
また受圧部22の弾丸形状は、図6に示すように内パイプ部材7の中心軸L1上を原点Oとし、中心軸L1に沿って上下に伸びる軸をY軸、Y軸に直交する軸をR軸とした座標において、R=aの2重根曲線(aは、比例定数。第2実施例では一例としてa=1としている。)からなる曲線をY軸周りに回転させてなる曲面形状を有する。また、受圧部22は、第1実施例と同様に中心軸Lに直交する後端面22bを有する。この場合、第2実施例における受圧部22の外周面は、R=0.5cm、Y=0.25cmの位置において直径1cmの内パイプ部材7の外周面に連続するよう形成される。また、受圧部22の垂直断面の半径は、図6に示すようにY=1、2,3,4に対してR=1,、、2となるため、垂直断面の断面積Sは、Y=1、2,3,4に対してS=π,2π、3π、4πとなる。
【0044】
即ち、受圧部22が地中へ1cm貫入される毎に受圧部22の断面積Sは、πcm2増加するため、受圧部22の断面積Sの増分が貫入量に対して一定になる。また、a=1以外の場合であっても、断面積S(地盤の押し広げ面積)の増分(断面積の微分値)は貫入量に対して一定になる。
【0045】
次に、図7〜9により、貫入型パイプひずみ計の第3実施例を説明する。第3実施例の貫入型パイプひずみ計31は、第2実施例の弾丸形状を有する受圧部22の先端近傍の一部外周面をテーパー面にすることにより、弾丸形状の受圧部22の先端近傍を一部だけ円錐形状にした他、第2実施例の貫入型パイプひずみ計21と共通する構成を有する。
【0046】
即ち、図7〜9に示す受圧部32は、先端側の円錐形状部33の後端側の弾丸形状部34が前後に連続した形状を有する。受圧部32は、内パイプ部材7の外径と内径が同一となる円孔32aを中心軸L1に沿って有する。また、回動工具取付部5の円孔5aは、中心軸L1と同軸に形成され、円孔32aと連続する。内パイプ部材7は、後端近傍の外周面を受圧部32の円孔32aに係合させ、かつ円孔5aの後方に後端7bを突出させた状態で受圧部32に一体固定される。
【0047】
また第3実施例の受圧部32は、図9に示すように内パイプ部材7の中心軸L1上を原点Oとし、中心軸L1に沿って上下に伸びる軸をY軸、Y軸に直交する軸をR軸とした座標において、一例として0≦Y≦1cm以下においては、Y=aR(第2実施例では一例としてa=1としているが、これに限られない)なる直線をY軸周りに回転させてなる円錐形状を有し(図9のAB間)、Y≧1cmにおいては、第2実施例と同様にR=bの2重根曲線(bは比例定数。第2実施例では一例としてb=1としている。)をY軸周りに回転させてなる曲面形状(弾丸形状の一部)を有し(図9のBC間)、円錐形状と弾丸形状が前後に連続した形状を有する。また、受圧部32は、第2実施例と同様に中心軸Lに直交する後端面32bを有する。この場合、第3実施例の受圧部32は、R=0.5cm、Y=0.5cmの位置において直径1cmの内パイプ部材7の外周面に連続するよう形成される。
【0048】
図8,9に示すように、0≦Y≦1cmにおいて、受圧部32の先端の円錐形状部33は、中心軸L1に対してテーパー状の傾斜面を有する。中心軸L1に対する円錐形状部33の傾斜は、第2実施例における受圧部先端の外周面(図9の二点鎖線部分)に比べて小さくなるため、地盤から受圧部32の外周面が受ける力の内、中心軸L1方向の分力が小さくなる。従って、受圧部32は、受圧部32の地盤への貫入位置が0≦Y≦1cmとなる貫入作業前半において地盤に第2実施例のパイプひずみ計21よりも貫入されやすくなる。
【0049】
一方、Y≧1cmにおいて、受圧部32の垂直断面の断面積Sは、第2実施例と同様にY=1、2,3,4に対してS=π,2π、3π、4πとなり、受圧部32の貫入量に対する断面積Sの増分は、第2実施例と同様に一定になる(b=1以外の場合においても、受圧部32の貫入量に対する断面積Sの増分は、一定になる)。従って、第3実施例の貫入型パイプひずみ計31は、受圧部32の地盤への貫入位置がY≧1cmとなる貫入作業後半においても貫入されやすくなる。尚、第3実施例の受圧部32においては、受圧部32の前部を円錐形状部33とし、Y=1から後方を弾丸形状部34としているが、円錐形状部33と弾丸形状部34が連続する位置は、Y=1となる位置に限られず、後端面32bの外径等を考慮し、Y軸上においてY=1より前後する位置に形成しても良い。
【0050】
次に、図10と11により、市販の電動回動工具35を利用した貫入型パイプひずみ計1の埋設方法を説明する。まず、携帯可能な市販の電動回動工具35と、六角ナット形状を有する回動工具取付部5に係合可能なサイズのレンチソケット36を用意する。作業者は、図11(a)に示すように、レンチソケット36をチャック35aに固定した電動回動工具35を雄コネクタ6の上から回動工具取付部5に係合させ、掘削用スクリュー3を下にしつつ貫入型パイプひずみ計1を斜面37に垂直に立てる。
【0051】
作業者が、電動回動工具35を回転させると、貫入型パイプひずみ計1は、掘削スクリュー3の回転によって地盤にねじ込まれる。作業者は、図11(b)に示すように、受圧部4の後端面4bが斜面37とほぼ面一になるまで貫入型パイプひずみ計1を斜面に埋設する。受圧部後端面4bにひずみゲージ8の貼付位置を示すマーク(図示せず)が設けられた場合、作業者は、マークが示すひずみゲージ8の対向する向きと斜面37の傾斜方向とが一致するように受圧部4の周方向向きを埋設時に調節する。雌コネクタ6を回動工具取付部5の円孔から地上に露出させた状態で貫入型パイプひずみ計1を地盤に埋設する。埋設した貫入型パイプひずみ計1には、雌コネクタ6に接続されるケーブル45を介して警告装置41が接続される。
【0052】
警告発生装置41は、装置本体42、警告表示ランプ43、貫入固定部44、ケーブル45によって構成される。装置本体42には、CPU、市販電池等を含む警告発生回路(図示せず)が内蔵される。警告表示ランプ43は、カラーLEDや蛍光灯・白熱電球に黄赤のカバーを被せたものや黄赤色の回転灯等によって構成され、装置本体42の後端に設けられる。警告表示ランプ43は、図示しない前記警告発生回路と電気的に接続され、前記警告発生回路の動作指令によって警告表示ランプ43を点灯させる。貫入固定部44は、くさび形状を有し、装置本体42の先端に一体化される。ケーブル45の一端は、前記警告発生回路に電気的に接続され、他端には、貫入型パイプひずみ計1,21,31の雌コネクタ6に接続可能な雄コネクタ45aが設けられる。警告発生装置41は、貫入型パイプひずみ計1の埋設箇所の近傍において貫入固定部44を斜面に突き立てることで地盤に固定され、ケーブル45によって貫入型パイプひずみ計1の雌コネクタ6に接続される。
【0053】
前記警告発生回路は、ひずみゲージ8を介して貫入型パイプひずみ計1が埋設された地盤にひずみが発生したことを検知し、検出されるひずみの増分が土砂崩壊の前兆現象と言える所定の値を超えたことを検出した場合、警告表示ランプ43に所定の点灯指令を送信することにより、警告表示ランプ43を点灯させる。貫入型パイプひずみ計1の埋設された地点の周辺にいる人は、警告表示ランプ43の点灯を確認し、前記埋設地点に土砂崩壊の前兆現象が発生していることを認識することによって早期に避難出来る。
【0054】
尚、第1から第3実施例における貫入型パイプひずみ計は、斜面などの土砂崩壊のおそれがある斜面などの地盤に埋設するほか、雪崩の発生するおそれが有る積雪斜面や雪庇等に埋設することにより、積雪の崩壊の前兆現象の検出にも使用できるものと考えられる。
【符号の説明】
【0055】
1 21 31 貫入型パイプひずみ計
2 パイプひずみ計本体
3 掘削用スクリュー
4 (円錐形状の)受圧部
5 回動工具取付部
7 内パイプ部材
7b (パイプひずみ計本体の)後端部
8 ひずみゲージ
9 被覆材(外パイプ部材)
22 (弾丸形状の)受圧部
33 円錐形状部
34 弾丸形状部
35 電動回動工具
L1 パイプひずみ計本体の中心軸
S 受圧部の垂直断面の断面積
R 受圧部の垂直断面の半径
Y 中心軸L1上の原点から垂直断面の切断位置までの長さ
【技術分野】
【0001】
この発明は、貫入によって地盤や積雪の浅層に埋設し、前記浅層で発生する地盤や積雪のひずみの変化を簡易かつ迅速に検出することにより、斜面の土砂崩壊、豪雨における地盤表層の崩壊、土石流の発生又は雪崩等の前兆現象を測定する貫入型パイプひずみ計の技術である。
【背景技術】
【0002】
斜面に貫入させることで斜面の地盤の表層に埋設し、斜面で発生する土砂災害の前兆現象を検出する貫入型パイプひずみ計には、下記特許文献1に示すものがある。特許文献1の貫入型パイプひずみ計は、外周面に複数のひずみゲージを貼付した内パイプの外側に外パイプを配置し、内パイプと外パイプの間にエポキシ樹脂を充填することで内パイプと外パイプを一体化したパイプひずみ計本体と、パイプひずみ計本体の先端に設けられた掘削用スクリューと、後端に設けられた工具取付用スリットを有する。この貫入型パイプひずみ計は、持ち運びを容易にするため全長が大人の肩の高さよりも低い長さに形成され、パイプひずみ計本体の後端部には、工具取付用スリットに着脱自在に固定された工具固定治具を介して携帯用電動回動工具等が取り付けられる。また、パイプひずみ計本体の後端部の外周には、雄ねじ部が形成され、雄ねじ部の内側には、前記ひずみゲージに接続されたコネクタが設けられる。
【0003】
特許文献1の貫入型パイプひずみ計は、貫入型パイプひずみ計を掘削用スクリューを下にして斜面に対して垂直に立てられ、後端部に取り付けた電動回動工具を回動させることによって斜面の浅層に埋設される。貫入型パイプひずみ計は、後端部のコネクタが地表に露出するように埋設され、前記コネクタには、測定器から伸びる接続ケーブルが接続される。土砂崩壊の前兆現象として斜面にひずみが発生した場合には、複数のひずみゲージを貼付したパイプひずみ計本体に曲げ応力が作用する。パイプひずみ計に接続された計測器は、ひずみゲージの検出結果から斜面に発生した単位時間当りのひずみの増分値を計測する。前記ひずみの増分値が所定数値を超えた場合、計測器は、警告発生装置(図示せず)に警告発生指令を送り、警告発生装置に儲けされた警告表示灯や警告音発生用のスピーカー等(図示せず)から警告を発生させることにより、貫入型パイプひずみ計の埋設地点に土砂崩壊の前兆現象が発生していることをその周囲の人員に認知させる。
【0004】
また、貫入型パイプひずみ計を埋設した後、パイプひずみ計本体の後端部には、斜面のひずみの検出感度を向上させるための受圧板が取り付けられる。受圧板は、パイプひずみ計本体の後端部に固定される円筒部の左右に先端が鋭角に形成された一対の板状受圧部を一体化した形状を有する。受圧板は、板状受圧部の先端部を下にし、その板面が斜面の傾斜方向と直交するようにして斜面に押し込まれる。また、受圧板は、貫入型パイプひずみ計の後端部の雄ねじ部を円筒部内側の円孔に挿通させ、雄ねじ部に雌ネジ付キャップを螺着することによって後端部に一体に固定される。貫入型パイプひずみ計は、板状受圧部が斜面の傾斜方向に移動する土砂の圧力を受けて、パイプひずみ計本体に曲げ応力が作用しやすくなることにより、土砂崩壊の前兆現象をより早期に検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−192626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1以前のパイプひずみ計(特許文献1で引用した実用新案登録第2514095号公報)は、全長が20m〜30mもあり、製造コストの高さに加え、事前に行なうボーリング作業や地中への設置作業に多大な作業労力とコストが必要であったため、土砂崩壊が起きそうな斜面の浅層に短時間で多数を埋設することにより、土砂崩壊の前兆現象をいち早く検出するような用途には不向きであった。
【0007】
そこで、本願特許出願人は、特許文献1の貫入型パイプひずみ計において、全長を大人の肩の高さよりも短くして人力による運搬を容易にし、更に先端部の掘削用スクリューと後端部に取り付けた携帯用電動回動工具によってボーリングと埋設作業の同時進行を可能にし、貫入型パイプひずみ計一つ当りの設置コストと埋設時間を大幅に削減することに成功した。その結果、土砂崩壊の起きそうな斜面に特許文献1の貫入型パイプひずみ計を短時間に多数のものを斜面に埋設可能にすることで土砂崩壊の前兆現象がいち早く検出出来るようになった。
【0008】
一方、短時間に多数を斜面に設置する観点からすると、貫入型パイプひずみ計一つ当りに必要とされる斜面への埋設時間は、少しでも短縮されることが望ましい。そのような観点から、本願発明は、地盤浅層等への埋設時間を更に短縮化した貫入型パイプひずみ計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の貫入型パイプひずみ計は、複数のひずみゲージを外周に取り付けた内パイプ部材と、該内パイプ部材の外側を覆う外パイプ部材からなるパイプひずみ計本体と、前記パイプひずみ計本体の先端部に設けられた掘削用スクリューと、前記パイプひずみ計本体の後端部に設けられた回動工具取付部と、を備え、地盤や積雪の浅層に埋設することにより、地盤や積雪の移動に基づいて生じるひずみを計測するパイプひずみ計において、前記パイプひずみ計本体の後端部近傍の外周には、前記パイプひずみ計本体と同心円となる円形の垂直断面を有する受圧部が一体に設けられ、前記受圧部は、垂直断面の断面積が前記パイプひずみ計本体の中心軸に沿って後方に末広がりに増加するように形成され、前記受圧部の前端部は、前記パイプひずみ計本体の外周面に連続するように形成されるようにした。
【0010】
従来の板状の受圧板は、貫入型パイプひずみ計に取付けられたままであると貫入型パイプひずみ計の回動を阻害するため、貫入型パイプひずみ計の埋設後に別途埋設され、貫入型パイプひずみ計の後端部に後から一体化されていた。
【0011】
(作用)本願請求項1の貫入型パイプひずみ計の受圧部は、円形の垂直断面と前方に向けた先細り形状を有するため、貫入型パイプひずみ計と一体となって回動しつつ埋設されたとしても、貫入型パイプひずみ計の回動を阻害することが無い。即ち、受圧部を貫入型パイプひずみ計と同時に埋設することが出来る。
【0012】
請求項2は、請求項1記載の貫入型パイプひずみ計において、前記受圧部が、円錐形状を有するように構成した。
【0013】
(作用)受圧部の外周面が後方に向けて円錐状に末広がりに傾斜するため、受圧部は、貫入型パイプひずみ計の回動を阻害することなく、貫入型パイプひずみ計と同時に埋設される。
【0014】
請求項3は、請求項1に記載の貫入型パイプひずみ計において、前記受圧部が、弾丸形状を有するように構成した。
【0015】
受圧部の貫入作業によって押し拡げられた地盤が押し固められることによる地盤の弾性係数の増加や、パイプひずみ計全体との間に発生する摩擦力の増加や、地盤の押し広げ面積の増加によって受圧部に作用する圧力の増加により、通常、受圧部は、埋設作業が進むほど埋設されにくくなるものと考えられる。
【0016】
(作用)しかし、請求項3の弾丸形状の受圧部においては、外周面が垂直断面の半径方向内側に湾曲するため、埋設作業の後半において受圧部の単位埋設量当りの(垂直断面の)断面積の増分が一定になるか、または少なくなる。言い換えると、請求項3の弾丸形状の受圧部は、埋設作業の後半において地盤の押し広げ面積の増分が一定または少なくなるため、地盤を押し拡げる際に受圧部に作用する圧力の増加が抑制される。その結果、請求項3の受圧部は、埋設作業の後半において貫入されやすくなる。
【0017】
請求項4は、請求項1に記載の貫入型パイプひずみ計において、前記受圧部は、円錐形状と弾丸形状が前後に連続した形状を有するように構成した。
【0018】
(作用)請求項4の受圧部は、前部が円錐の傾斜面を有するため、受圧部の埋設作業の前半において地盤に貫入されやすい。また、円錐形状に連続する後部が弾丸形状を有し、埋設作業の後半に受圧部に作用する圧力の増加が抑制されるため、請求項4の受圧部は、受圧部の貫入作業後半においても貫入されやすい。
【0019】
請求項5は、請求項3または4に記載の貫入型パイプひずみ計において、前記弾丸形状が、前記パイプひずみ計の中心軸に沿って後方に伸びる第1の座標軸と、前記第1の座標軸に直交する第2の座標軸からなる直交座標上の原点から後方に伸びる2乗根曲線(例えば、第1の座標軸をy、第2の座標軸をr、aを所定の比例定数とした場合において、r=aで表される2乗根曲線)を前記中心軸(第1の座標軸)周りに回転させてなる形状を有するように構成した。
【0020】
(作用)受圧部の弾丸形状部位は、地盤の押し広げ面積の増分が一定になるため、埋設作業の後半において受圧部に作用する圧力の増加が抑制される。その結果、弾丸型の受圧部は、埋設作業の後半においても貫入されやすくなる。
【0021】
請求項6の貫入型パイプひずみ計は、複数のひずみゲージを外周に取り付けた内パイプ部材と、該内パイプ部材の外側を覆う外パイプ部材からなるパイプひずみ計本体と、前記パイプひずみ計本体の先端部に設けられた掘削用スクリューと、前記パイプひずみ計本体の後端部に設けられた回動工具取付部と、を備え、地盤や積雪の浅層に埋設することにより、地盤や積雪の移動に基づいて生じるひずみを計測するパイプひずみ計において、前記外パイプ部材は、耐候性を有すると共に前記ひずみゲージと前記内パイプ部材とを外側から被覆する被覆材で構成した。
【0022】
(作用)従来の貫入型パイプひずみ計においては、ひずみゲージを外周に取り付けた内パイプ部材の外側に外パイプ部材を配置していたため、内パイプ部材と外パイプ部材の間に樹脂を充填することにより、外パイプ部材からひずみゲージへのひずみの伝達感度を上げる必要が有った。本願においては、内パイプ部材を被覆しており、ひずみゲージと被覆材が密着しているため、樹脂材の充填作業が不要になる。その結果、被覆材を含むパイプひずみ計本体を細く形成できる。
【0023】
請求項7は、請求項1から6のうちいずれかに記載の貫入型パイプひずみ計において、前記ひずみゲージが前記回動工具取付部の内側から後方に露出するコネクタに接続され、前記コネクタには、パイプひずみ計本体と別体に形成された警告発生装置が接続ケーブルを介して接続されるようにした。
【0024】
(作用)警告発生装置は、ケーブルを介してパイプひずみ計本体の後端に取り付けられるため、パイプひずみ計本体の後端に直に取り付けられる場合に比べ、容易かつ短時間で取り付けられる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1と2の貫入型パイプひずみ計によれば、受圧部を貫入型パイプひずみ計から取り外さなくても、受圧部と貫入型パイプひずみ計を一体にしたまま埋設出来るため、貫入型パイプひずみ計と受圧部の埋設作業時間が短縮される。
【0026】
請求項3の貫入型パイプひずみ計によれば、受圧部の貫入作業後半における労力が低減される。
【0027】
請求項4の貫入型パイプひずみ計によれば、貫入作業前半において受圧部が貫入されやすくなり、貫入作業後半においても、受圧部が貫入されにくくならない。従って、受圧部を含む貫入型パイプひずみ計の貫入作業が作業全般で容易になる。
【0028】
請求項5の貫入型パイプひずみ計によれば、受圧部の貫入作業後半における労力が低減される。
【0029】
請求項6の貫入型パイプひずみ計によれば、被覆材を含むパイプひずみ計本体を細く形成できるため、地盤へ埋設されやすくなる。また、樹脂の充填が不要になるため、貫入型パイプひずみ計の製造コストが安価になる。
【0030】
請求項7の貫入型パイプひずみ計によれば、警告発生装置の取付時間が短縮されるため、貫入型パイプひずみ計の設置時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施例の貫入型パイプひずみ計の外観を表す斜視図。
【図2】パイプひずみ計本体の内部構造を表す軸方向部分断面図。
【図3】第1実施例の受圧部の拡大部分断面図。
【図4】ひずみゲージの配置を示す図2のI−I断面図。
【図5】第2実施例の受圧部の拡大部分断面図
【図6】第2実施例の受圧部の形状説明図。
【図7】第3実施例の貫入型パイプひずみ計の外観を表す斜視図。
【図8】第3実施例の受圧部の拡大部分断面図
【図9】第3実施例の受圧部の形状説明図。
【図10】電動工具の取付状況を説明する斜視図。
【図11】(a) 貫入型パイプひずみ計の斜面への設置前の状況を表す参考図。(b) 貫入型パイプひずみ計の埋設状況を表す参考図。(c)貫入型パイプひずみ計への警告発生装置の取付状況を表す参考図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
まず図面1〜4を参照して本願発明の第1実施例を説明する。図1〜3(後述する図5〜9も同様)においては、紙面下側を貫入型パイプひずみ計1の先端側とし、紙面上側を貫入型パイプひずみ計の後端側として説明する。
【0033】
貫入型パイプひずみ計1は、パイプひずみ計本体2、掘削用スクリュー3,受圧部4,回動工具取付部5及び雌コネクタ6によって構成されている。掘削用スクリュー3,受圧部4,回動工具取付部5及び雌コネクタ6は、パイプひずみ計本体2と共通する中心軸L1上に配置される。
【0034】
掘削用スクリュー3は、パイプひずみ計本体2の先端(後述する内パイプ部材7の先端7a)に一体固定され、受圧部4は、パイプひずみ計本体2の後端(後述する内パイプ部材7の後端7b)の周辺に一体化される。回動工具取付部5は、外径が6角ナット形状に形成され、中央部に円孔5aを有し、中心軸L1と直交する受圧部の後端面4bに一体化される。雌コネクタ6は、円孔5aから後方に露出した状態でパイプひずみ計本体2の後端(後述する内パイプ部材7の後端7b)の近傍に固定される。また、貫入型パイプひずみ計1の全長L(掘削用スクリュー3の先端から回動工具取付部5の後端までの長さ)は、人力による持ち運びを可能にするため、例えば60cm〜2m(望ましくは60cm)程度に形成される。
【0035】
パイプひずみ計本体2は、円環状の内パイプ部材7と、内パイプ部材7の外周面に取り付けられた複数のひずみゲージ8と、ひずみゲージ8を貼付した内パイプ部材7の外周を被覆する被覆材9によって構成される。本願第1実施例の内パイプ部材7は、一例として、直径10mm及び肉厚1mm程度の金属製の円筒部材等によって形成されている。尚、内パイプ部材7及び掘削用スクリュー3の素材は、埋設時に電動回動工具35のトルク(例えば12Vの電動ドリル、電動ドライバ等を使用する場合には、140N.m程度)によって塑性変形をしない十分な剛性を備え、更に地中に埋設する点から耐腐食性を備えた素材とすべき点からステンレス等の金属素材を用いることが望ましい。また、軽量化が図れる面から十分な剛性等を備えた樹脂素材を用いる事も考えられる。また被覆材9には、例えば、地盤に貫入する際に破損の無い十分な強度と耐候性を有する厚さ1mm程度の樹脂製の熱収縮チューブを利用する。ひずみゲージ8を取り付けた内パイプ部材7は、外側から熱収縮チューブである被覆材9を被せ、熱をかけられることにより、被覆材9に被覆される。
【0036】
受圧部4は、軌跡上の頂点Tが内パイプ部材7の中心軸L1上に位置する円錐形状を有し、内パイプ部材7の外径と内径が同一となる円孔4cを中心軸L1に沿って有する。また、一例として受圧部の長さは、7.5cm程度に形成され、受圧部後端面4bの外径は、5cm前後に形成される。回動工具取付部5の円孔5aは、中心軸L1と同軸に形成され、円孔4cと連続する。内パイプ部材7は、後端近傍の外周面を受圧部4の円孔4cに係合させ、かつ円孔5aの後方に後端7bを露出させた状態で受圧部4に一体固定される。受圧部4は、後述する第2実施例の受圧部22及び第3実施例の受圧部32と同様に垂直断面が円形であるため、貫入型パイプひずみ計1に一体化したままパイプひずみ計本体2及び掘削用スクリュー3と共に回動させて地盤に埋設することが出来る。尚、図2,3の受圧部4においては、内パイプ部材7の固定用の円孔7を形成した他中実構造を有するが、内部に中空部分を形成して受圧部4の重量を軽減してもよい。
【0037】
ひずみゲージ8は、図4に示すように受圧部4の前方において、内パイプ部材7の外周面の周方向に対向して2枚貼付される。また、内パイプ部材7の外周面の長手方向には、対向する2枚を1組として2組のひずみゲージ8が貼付される。対向する2枚のひずみゲージ8を結ぶ線をL2とすると、上下2組のひずみゲージ8は、対向する向き(直線L2に沿った方向)が上下で一致するように内パイプ部材7に貼付される。上下2組で合計4枚のひずみゲージ8は、ダミーゲージを含まないアクティブなひずみゲージであり、ホイートストンブリッジ接続されている。その結果、貫入型パイプひずみ計1においては、ひずみゲージを1枚または2枚とすることに比べて地盤のひずみの感度が向上している。
【0038】
尚、貫入型パイプひずみ計1を斜面に埋設する場合においては、ひずみの検出感度を最大にするため、ひずみゲージ8の対向する向き(直線L2に沿った方向)を斜面の傾斜方向と一致させることが望ましい。従って、受圧部4には、ひずみゲージ8の貼付位置を示すマーク(図示せず)を設けることが望ましい。マークを設ける方法には、例えば、中心軸L1を通り直線L2と平行になるケガキ線を後端面4bに形成したり、ひずみゲージ8の上方に矢印状のマークを設けることなどが考えられる。また、パイプ部材7の外周面には、対向する2枚のひずみゲージ8を周方向に複数組貼付してもよい。その場合には、埋設時におけるひずみゲージ8の対向する向きを斜面の傾斜方向に合わせなくても、各組で得られたひずみの検出結果の平均値を取ることによって地盤のひずみが正確に検出される。
【0039】
被覆材9は、十分な摩擦強度と耐候性を有する樹脂素材で構成される。また、被覆材9は、内パイプ部材7の先端7aから受圧部の先端4aにかけて、複数のひずみゲージ8と共に内パイプ部材7の外周面を被覆する。被覆材9は、被覆材9の外周面と受圧部4の先端4aの境界がなめらかに連続するよう、内パイプ部材7aの外周面に被覆される。
【0040】
各ひずみゲージ8から導出するリード線10は、内パイプ部材7の側壁に穿孔された挿通孔(図示せず)から内パイプ部材7の内部を通り、内パイプ部材7の後端部に固定した雌コネクタ6へ接続される。尚、リード線10は、前記図示しない挿通孔へ通す前に一部を内パイプ部材7の外周面に沿って配線しても良い。雌コネクタ6は、リード線10に接続された状態で、開口穴を閉塞するように内パイプ部材7の後端7bに固定される。
【0041】
次に、図5及び図6により、貫入型パイプひずみ計の第2実施例を説明する。第2実施例の貫入型パイプひずみ計21においては、第1実施例に示す受圧部4の外周形状を円錐型から弾丸型(符号22)に変えた他、第1実施例の貫入型パイプひずみ計1と共通する構成を有する。
【0042】
受圧部22は、図5、6に示す弾丸形状を有し、内パイプ部材7の外径と内径が同一となる円孔22aを中心軸L1に沿って有する。また、回動工具取付部5の円孔5aは、中心軸L1と同軸に形成され、円孔22aと連続する。内パイプ部材7は、後端近傍の外周面を受圧部22の円孔22aに係合させ、かつ円孔5aの後方に後端7bを露出させた状態で受圧部22に一体固定される。
【0043】
また受圧部22の弾丸形状は、図6に示すように内パイプ部材7の中心軸L1上を原点Oとし、中心軸L1に沿って上下に伸びる軸をY軸、Y軸に直交する軸をR軸とした座標において、R=aの2重根曲線(aは、比例定数。第2実施例では一例としてa=1としている。)からなる曲線をY軸周りに回転させてなる曲面形状を有する。また、受圧部22は、第1実施例と同様に中心軸Lに直交する後端面22bを有する。この場合、第2実施例における受圧部22の外周面は、R=0.5cm、Y=0.25cmの位置において直径1cmの内パイプ部材7の外周面に連続するよう形成される。また、受圧部22の垂直断面の半径は、図6に示すようにY=1、2,3,4に対してR=1,、、2となるため、垂直断面の断面積Sは、Y=1、2,3,4に対してS=π,2π、3π、4πとなる。
【0044】
即ち、受圧部22が地中へ1cm貫入される毎に受圧部22の断面積Sは、πcm2増加するため、受圧部22の断面積Sの増分が貫入量に対して一定になる。また、a=1以外の場合であっても、断面積S(地盤の押し広げ面積)の増分(断面積の微分値)は貫入量に対して一定になる。
【0045】
次に、図7〜9により、貫入型パイプひずみ計の第3実施例を説明する。第3実施例の貫入型パイプひずみ計31は、第2実施例の弾丸形状を有する受圧部22の先端近傍の一部外周面をテーパー面にすることにより、弾丸形状の受圧部22の先端近傍を一部だけ円錐形状にした他、第2実施例の貫入型パイプひずみ計21と共通する構成を有する。
【0046】
即ち、図7〜9に示す受圧部32は、先端側の円錐形状部33の後端側の弾丸形状部34が前後に連続した形状を有する。受圧部32は、内パイプ部材7の外径と内径が同一となる円孔32aを中心軸L1に沿って有する。また、回動工具取付部5の円孔5aは、中心軸L1と同軸に形成され、円孔32aと連続する。内パイプ部材7は、後端近傍の外周面を受圧部32の円孔32aに係合させ、かつ円孔5aの後方に後端7bを突出させた状態で受圧部32に一体固定される。
【0047】
また第3実施例の受圧部32は、図9に示すように内パイプ部材7の中心軸L1上を原点Oとし、中心軸L1に沿って上下に伸びる軸をY軸、Y軸に直交する軸をR軸とした座標において、一例として0≦Y≦1cm以下においては、Y=aR(第2実施例では一例としてa=1としているが、これに限られない)なる直線をY軸周りに回転させてなる円錐形状を有し(図9のAB間)、Y≧1cmにおいては、第2実施例と同様にR=bの2重根曲線(bは比例定数。第2実施例では一例としてb=1としている。)をY軸周りに回転させてなる曲面形状(弾丸形状の一部)を有し(図9のBC間)、円錐形状と弾丸形状が前後に連続した形状を有する。また、受圧部32は、第2実施例と同様に中心軸Lに直交する後端面32bを有する。この場合、第3実施例の受圧部32は、R=0.5cm、Y=0.5cmの位置において直径1cmの内パイプ部材7の外周面に連続するよう形成される。
【0048】
図8,9に示すように、0≦Y≦1cmにおいて、受圧部32の先端の円錐形状部33は、中心軸L1に対してテーパー状の傾斜面を有する。中心軸L1に対する円錐形状部33の傾斜は、第2実施例における受圧部先端の外周面(図9の二点鎖線部分)に比べて小さくなるため、地盤から受圧部32の外周面が受ける力の内、中心軸L1方向の分力が小さくなる。従って、受圧部32は、受圧部32の地盤への貫入位置が0≦Y≦1cmとなる貫入作業前半において地盤に第2実施例のパイプひずみ計21よりも貫入されやすくなる。
【0049】
一方、Y≧1cmにおいて、受圧部32の垂直断面の断面積Sは、第2実施例と同様にY=1、2,3,4に対してS=π,2π、3π、4πとなり、受圧部32の貫入量に対する断面積Sの増分は、第2実施例と同様に一定になる(b=1以外の場合においても、受圧部32の貫入量に対する断面積Sの増分は、一定になる)。従って、第3実施例の貫入型パイプひずみ計31は、受圧部32の地盤への貫入位置がY≧1cmとなる貫入作業後半においても貫入されやすくなる。尚、第3実施例の受圧部32においては、受圧部32の前部を円錐形状部33とし、Y=1から後方を弾丸形状部34としているが、円錐形状部33と弾丸形状部34が連続する位置は、Y=1となる位置に限られず、後端面32bの外径等を考慮し、Y軸上においてY=1より前後する位置に形成しても良い。
【0050】
次に、図10と11により、市販の電動回動工具35を利用した貫入型パイプひずみ計1の埋設方法を説明する。まず、携帯可能な市販の電動回動工具35と、六角ナット形状を有する回動工具取付部5に係合可能なサイズのレンチソケット36を用意する。作業者は、図11(a)に示すように、レンチソケット36をチャック35aに固定した電動回動工具35を雄コネクタ6の上から回動工具取付部5に係合させ、掘削用スクリュー3を下にしつつ貫入型パイプひずみ計1を斜面37に垂直に立てる。
【0051】
作業者が、電動回動工具35を回転させると、貫入型パイプひずみ計1は、掘削スクリュー3の回転によって地盤にねじ込まれる。作業者は、図11(b)に示すように、受圧部4の後端面4bが斜面37とほぼ面一になるまで貫入型パイプひずみ計1を斜面に埋設する。受圧部後端面4bにひずみゲージ8の貼付位置を示すマーク(図示せず)が設けられた場合、作業者は、マークが示すひずみゲージ8の対向する向きと斜面37の傾斜方向とが一致するように受圧部4の周方向向きを埋設時に調節する。雌コネクタ6を回動工具取付部5の円孔から地上に露出させた状態で貫入型パイプひずみ計1を地盤に埋設する。埋設した貫入型パイプひずみ計1には、雌コネクタ6に接続されるケーブル45を介して警告装置41が接続される。
【0052】
警告発生装置41は、装置本体42、警告表示ランプ43、貫入固定部44、ケーブル45によって構成される。装置本体42には、CPU、市販電池等を含む警告発生回路(図示せず)が内蔵される。警告表示ランプ43は、カラーLEDや蛍光灯・白熱電球に黄赤のカバーを被せたものや黄赤色の回転灯等によって構成され、装置本体42の後端に設けられる。警告表示ランプ43は、図示しない前記警告発生回路と電気的に接続され、前記警告発生回路の動作指令によって警告表示ランプ43を点灯させる。貫入固定部44は、くさび形状を有し、装置本体42の先端に一体化される。ケーブル45の一端は、前記警告発生回路に電気的に接続され、他端には、貫入型パイプひずみ計1,21,31の雌コネクタ6に接続可能な雄コネクタ45aが設けられる。警告発生装置41は、貫入型パイプひずみ計1の埋設箇所の近傍において貫入固定部44を斜面に突き立てることで地盤に固定され、ケーブル45によって貫入型パイプひずみ計1の雌コネクタ6に接続される。
【0053】
前記警告発生回路は、ひずみゲージ8を介して貫入型パイプひずみ計1が埋設された地盤にひずみが発生したことを検知し、検出されるひずみの増分が土砂崩壊の前兆現象と言える所定の値を超えたことを検出した場合、警告表示ランプ43に所定の点灯指令を送信することにより、警告表示ランプ43を点灯させる。貫入型パイプひずみ計1の埋設された地点の周辺にいる人は、警告表示ランプ43の点灯を確認し、前記埋設地点に土砂崩壊の前兆現象が発生していることを認識することによって早期に避難出来る。
【0054】
尚、第1から第3実施例における貫入型パイプひずみ計は、斜面などの土砂崩壊のおそれがある斜面などの地盤に埋設するほか、雪崩の発生するおそれが有る積雪斜面や雪庇等に埋設することにより、積雪の崩壊の前兆現象の検出にも使用できるものと考えられる。
【符号の説明】
【0055】
1 21 31 貫入型パイプひずみ計
2 パイプひずみ計本体
3 掘削用スクリュー
4 (円錐形状の)受圧部
5 回動工具取付部
7 内パイプ部材
7b (パイプひずみ計本体の)後端部
8 ひずみゲージ
9 被覆材(外パイプ部材)
22 (弾丸形状の)受圧部
33 円錐形状部
34 弾丸形状部
35 電動回動工具
L1 パイプひずみ計本体の中心軸
S 受圧部の垂直断面の断面積
R 受圧部の垂直断面の半径
Y 中心軸L1上の原点から垂直断面の切断位置までの長さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のひずみゲージを外周に取り付けた内パイプ部材と、該内パイプ部材の外側を覆う外パイプ部材からなるパイプひずみ計本体と、
前記パイプひずみ計本体の先端部に設けられた掘削用スクリューと、
前記パイプひずみ計本体の後端部に設けられた回動工具取付部と、
を備え、地盤や積雪の浅層に埋設することにより、地盤や積雪の移動に基づいて生じるひずみを計測するパイプひずみ計において、
前記パイプひずみ計本体の後端部近傍の外周には、前記パイプひずみ計本体と同心円となる円形の垂直断面を有する受圧部が一体に設けられ、
前記受圧部は、垂直断面の断面積が前記パイプひずみ計本体の中心軸に沿って後方に末広がりに増加するように形成され、前記受圧部の前端部は、前記パイプひずみ計本体の外周面に連続するように形成されたことを特徴とする貫入型パイプひずみ計。
【請求項2】
前記受圧部は、円錐形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の貫入型パイプひずみ計。
【請求項3】
前記受圧部は、弾丸形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の貫入型パイプひずみ計。
【請求項4】
前記受圧部は、円錐形状と弾丸形状が前後に連続した形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の貫入型パイプひずみ計。
【請求項5】
前記弾丸形状は、前記パイプひずみ計の中心軸に沿って後方に伸びる第1の座標軸と、前記第1の座標軸に直交する第2の座標軸からなる直交座標上の原点から後方に伸びる2乗根曲線を前記中心軸周りに回転させてなる形状を有することを特徴とする、請求項3または4に記載の貫入型パイプひずみ計。
【請求項6】
複数のひずみゲージを外周に取り付けた内パイプ部材と、該内パイプ部材の外側を覆う外パイプ部材からなるパイプひずみ計本体と、
前記パイプひずみ計本体の先端部に設けられた掘削用スクリューと、
前記パイプひずみ計本体の後端部に設けられた回動工具取付部と、
を備え、地盤や積雪の浅層に埋設することにより、地盤や積雪の移動に基づいて生じるひずみを計測するパイプひずみ計において、
前記外パイプ部材は、耐候性を有すると共に前記ひずみゲージと前記内パイプ部材とを外側から被覆する被覆材であることを特徴とする、貫入型パイプひずみ計。
【請求項7】
前記ひずみゲージは、前記回動工具取付部の内側から後方に露出するコネクタに接続され、前記コネクタには、パイプひずみ計本体と別体に形成された警告発生装置が接続ケーブルを介して接続されたことを特徴とする、請求項1から6のうちいずれかに記載の貫入型パイプひずみ計。
【請求項1】
複数のひずみゲージを外周に取り付けた内パイプ部材と、該内パイプ部材の外側を覆う外パイプ部材からなるパイプひずみ計本体と、
前記パイプひずみ計本体の先端部に設けられた掘削用スクリューと、
前記パイプひずみ計本体の後端部に設けられた回動工具取付部と、
を備え、地盤や積雪の浅層に埋設することにより、地盤や積雪の移動に基づいて生じるひずみを計測するパイプひずみ計において、
前記パイプひずみ計本体の後端部近傍の外周には、前記パイプひずみ計本体と同心円となる円形の垂直断面を有する受圧部が一体に設けられ、
前記受圧部は、垂直断面の断面積が前記パイプひずみ計本体の中心軸に沿って後方に末広がりに増加するように形成され、前記受圧部の前端部は、前記パイプひずみ計本体の外周面に連続するように形成されたことを特徴とする貫入型パイプひずみ計。
【請求項2】
前記受圧部は、円錐形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の貫入型パイプひずみ計。
【請求項3】
前記受圧部は、弾丸形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の貫入型パイプひずみ計。
【請求項4】
前記受圧部は、円錐形状と弾丸形状が前後に連続した形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の貫入型パイプひずみ計。
【請求項5】
前記弾丸形状は、前記パイプひずみ計の中心軸に沿って後方に伸びる第1の座標軸と、前記第1の座標軸に直交する第2の座標軸からなる直交座標上の原点から後方に伸びる2乗根曲線を前記中心軸周りに回転させてなる形状を有することを特徴とする、請求項3または4に記載の貫入型パイプひずみ計。
【請求項6】
複数のひずみゲージを外周に取り付けた内パイプ部材と、該内パイプ部材の外側を覆う外パイプ部材からなるパイプひずみ計本体と、
前記パイプひずみ計本体の先端部に設けられた掘削用スクリューと、
前記パイプひずみ計本体の後端部に設けられた回動工具取付部と、
を備え、地盤や積雪の浅層に埋設することにより、地盤や積雪の移動に基づいて生じるひずみを計測するパイプひずみ計において、
前記外パイプ部材は、耐候性を有すると共に前記ひずみゲージと前記内パイプ部材とを外側から被覆する被覆材であることを特徴とする、貫入型パイプひずみ計。
【請求項7】
前記ひずみゲージは、前記回動工具取付部の内側から後方に露出するコネクタに接続され、前記コネクタには、パイプひずみ計本体と別体に形成された警告発生装置が接続ケーブルを介して接続されたことを特徴とする、請求項1から6のうちいずれかに記載の貫入型パイプひずみ計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−32330(P2012−32330A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173739(P2010−173739)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】
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