説明

貫入試験装置

【課題】反力対抗機構を設けた貫入試験装置を提案する。
【解決手段】本発明による貫入試験装置は、先端にコーンCを取り付けたコーンロッドC1の後端を押圧してコーンCを地中へ貫入する油圧シリンダ2を設置したフレーム1と、フレーム1の水平面部を垂直方向に貫通するオーガスクリュー3と、水平面部を貫通して下方へ先端側が突出したオーガスクリュー3を回転させるモータ4と、モータ4を支持して上下動させるための支柱5と、オーガスクリュー3に設けられ、モータ4によりオーガスクリュー3を回転させて地中へ進入させたときに水平面部の上面に当接するストッパ6と、を含んで構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーンを地中に貫入しつつデータを取得し、地質調査を行う貫入試験に関する。
【背景技術】
【0002】
建設予定地等の原位置試験において、コーンペネトロメーターテスト(CPT)と言われる電気式静的コーン貫入試験が行われる。このようなコーン貫入試験において、特許文献1にあるような油圧式の貫入試験装置が使用される。この貫入試験装置は、先端にコーンを取り付けたロッドの後端を油圧シリンダにより押圧し、所定の速度で地中へ鉛直に貫入していく装置である。
【特許文献1】特許第2931285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の貫入試験装置では、地盤によってはコーン貫入に20kN(約2tf)を超える圧力が油圧シリンダによりかけられることがある。従来の貫入試験装置は、自重によってその反力に対抗しているが、場合によっては反力で貫入試験装置が浮き上がってしまうことがあり、試験にならない場合があった。
【0004】
本発明はこの点に着目したもので、反力対抗機構を設けた貫入試験装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による貫入試験装置は、先端にコーンを取り付けたコーンロッドの後端を押圧して前記コーンを地中へ貫入する油圧シリンダを設置したフレームと、該フレームの水平面部を垂直方向に貫通するオーガスクリューと、前記水平面部を貫通して下方へ先端側が突出した前記オーガスクリューを回転させるモータと、該モータを支持して上下動させるための支柱と、前記オーガスクリューに設けられ、前記モータにより前記オーガスクリューを回転させて地中へ進入させたときに前記水平面部の上面に当接するストッパと、を含んで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の貫入試験装置によれば、モータにより地中に進入させたオーガスクリュー及びこれに設けられてフレーム上面に当接するストッパが、コーン貫入時に貫入試験装置を浮き上がらせようとする反力に対抗して装置を押さえ込む反力対抗機構として作用する。そのオーガスクリューの進入深さによって、20kN以上になる油圧シリンダの圧力から発生する反力にも十分耐え得る反力対抗機構が形成されるので、電気式静的コーン貫入試験などのコーン貫入試験を円滑に実施可能な貫入試験装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜図3に、貫入試験装置の好適な実施形態を図示している。
【0008】
本実施形態の貫入試験装置は、無限軌道により走行する走行装置Vに取り付けられ、自走できるようになっている。走行装置Vは、前方に突出した二本のアームV1を備えており、このアームV1に、貫入試験装置のフレーム1が軸支され、垂直方向へ回動可能になっている。より詳細には、フレーム1の上面に、アームV1の間隔に対応させて二つの支持壁1aが立設され、当該各支持壁1aの下部に、対応するアームV1の先端部分がピボットピンにて軸支されている。そして、この軸支されたフレーム1を回動させる油圧シリンダを利用したアクチュエータV2が、支持壁1aに対応させて二本、走行装置Vに備えられている。アクチュエータV2のピストンアーム先端は、対応する支持壁1aの上部に軸支されており、当該アクチュエータV2が伸縮することで、アームV1に軸支されたフレーム1が回動するようになっている。
【0009】
貫入試験装置のフレーム1は、上面が概略平坦に形成されており、そのほぼ中央に、試験に要する各種センサを仕込んだコーンCの貫入位置となる垂直方向貫通孔が形成されている。そして、該コーンCの貫入位置を挟んで対称位置に、油圧シリンダ2が二本、上方へ立設されている。各油圧シリンダ2は、そのピストンロッド2aの先端をフレーム1の上面に固定して立設されており、コーンCを先端に取り付けたコーンロッドC1の後端を把持して押圧するための押圧部2bが、当該二本の油圧シリンダ2に固定され、間に架け渡されている。この押圧部2bが、油圧シリンダ2の伸縮動作に従って上下することにより、コーンロッドC1の後端が押圧されて一定の速度で地中へ貫入され、また引き抜かれる。このときのコーンロッドC1は、貫入深さに応じて継ぎ足し可能である。当該コーンCによる測定データは、走行装置Vに搭載された解析用の電子機器(コンピュータ等)へ送られて記憶される。なお、コーンCの内部やこれに関連した電子機器及び押圧部2bの詳細については、ここでは省略する。
【0010】
フレーム1の最も外側の部位となる長手方向両端部1bは、コネクティングピン1cの抜き差しにより着脱可能で、上から見た形状がほぼU字状となる部品となっており、オーガスクリュー3の着脱作業に際して取り外すことができるようになっている。フレーム1に取り付けた両端部1bの上面はフレーム1に続く概略平坦で、当該両端部1bが水平面部となると共に、当該U字状の両端部1bで囲まれた内側には、垂直方向への貫通孔が形成されることになり、ここを通してオーガスクリュー3が貫通し、下方へ突出する。
【0011】
この両端部1bにより形成されるフレーム1の最も外側の水平面部を前記貫通孔により貫通して配置されるオーガスクリュー3は、先端側のスクリュー部分がフレーム1の下方へ突出し、後端が対応する油圧モータ4のチャック4aに装着される。本実施形態の場合、オーガスクリュー3の後端に延長ロッド3aが接続され、該延長ロッド3aの後端がチャック4aにボルトで取り外し可能に固定されている。この延長ロッド3aは深さに応じて継ぎ足し可能であるし、延長ロッド3aを使用しない場合もあり得る。
【0012】
このようにフレーム1の両端部1bの部分を貫通する二本のオーガスクリュー3は、コーンCの貫入位置を挟んで対称位置に二本配置されることになり、そして、該二本のオーガスクリュー3を把持してそれぞれ回転させるように、モータ4も二個設けられている。これら二個のモータ4は、油圧シリンダ2よりも外側で且つ両端部1bよりも内側のフレーム1上面に立設された二本の支柱5に支持されている。より詳細には、各支柱5は、ラックギヤ5aを垂直方向に延設した断面T字状(T形鋼部材)のレール部5bを外側の側面に備えており、該レール部5bのフランジ部分に係止すると共にラックギヤ5aに噛み合うピニオンギヤを内部に備えたモータフレーム5cが、モータ4を支持している。そのラックアンドピニオン機構により、モータ4を上下動させられる仕組みとしてある。
【0013】
また、本実施形態の場合、この支柱5に対し、フレーム1に立設した上述の支持壁1aがボルト固定されており、支持壁の1aの固定をより強いものにしてある。
【0014】
オーガスクリュー3の延長ロッド3aとの接続部分には、延長ロッド3aの外周に被せるようにして、管の下端にフランジを形成したハット形のストッパ6が、延長ロッド3aの接続用ボルトで一緒に留められている(すなわち取り外し可能)。モータ4によりオーガスクリュー3を回転させて地中へ進入させると、当該ストッパ6がフレーム1の水平面部の上面に当接し、これにより、フレーム1が下方へ押さえ付けられることになる。すなわち、オーガスクリュー3により、コーンCの貫入位置の両側で均等に、フレーム1が浮き上がらないように抑えられる。延長ロッド3aには、ストッパ6を取り付けるためのボルト孔が軸方向へ多数配列されているので、ストッパ6の取り付け位置を適宜選択することができるようになっている。
【0015】
この他、本実施形態では、フレーム1から前方へ二本のアーム7を延長してその先端に筒部7aを設けてあり、該筒部7aに挿入されて垂直方向へスライドし、高さを変えられるようにした補助支持脚8をさらに設けている。この補助支持脚8は筒部7aにボルト止めされて地面ないしは地面に置いた鉄板等に当接し、荷重を支える補助となる。さらに、フレーム1の下面にも補助支持脚9が設けられ、接地するようになっている。
【0016】
上記のような貫入試験装置は、図3に示すように、フレーム1及びこれに配設されている支柱5等を倒した状態で、原位置試験の現場へ移動する。そして、原位置試験の現場においてアクチュエータV2を作動させて、倒してあったフレーム1等を起こし、作業を開始する。まず最初に、フレーム1の両端部1bを取り外した状態で、延長ロッド3b及びストッパ6をボルトにて接続したオーガスクリュー3を、モータ4のチャック4aに装着してボルトで留める。継いで、両端部1bをフレーム1に嵌め込んで、コネクティングピン1cを差し込み固定する。これにより、図1及び図2に示すようにオーガスクリュー3は、フレーム1の下方へ先端部のスクリューが突出した地面螺入可能な状態となる。
【0017】
続いて、支柱5に設けたラックアンドピニオン機構によりモータ4を下げつつ、モータ4を回転させると、オーガスクリュー3のスクリュー部分が地面に当たり地中へ螺入し始め、この後は、モータ4により回転するオーガスクリュー3の推進力で徐々に地中深くへオーガスクリュー3が進入していく。そして、ストッパ6がフレーム1の上面に当接するまでオーガスクリュー3を進めたところで、モータ4を停止させる。
【0018】
このオーガスクリュー3の設置後、押圧部2bに、先端にコーンCを取り付けたコーンロッドC1の後端を把持させて垂下し、その付属配線等をセットする。そして、油圧シリンダ2を操作して所定の圧力で押圧部2bを降下させ、一定の貫入速度で地中へ貫入しつつ、データを取得する。
【0019】
このコーンCの貫入に伴って、貫入試験装置を浮き上がらせようとする反力が生じるが、地中に進入させたオーガスクリュー3及びこれに設けられてフレーム1上面に当接するストッパ6が、その反力に対抗して装置を押さえ込む反力対抗機構として作用するので、貫入試験装置の浮き上がりは防止される。したがって、電気式静的コーン貫入試験を円滑に実施可能である。
【0020】
上記の例は、コーンCの貫入位置の両側二箇所にオーガスクリュー3を打ち込んで反力対抗するものであるが、より強い反力に耐え得る反力対抗構造を形成することも可能である。その例を図4及び図5に示して説明する。
【0021】
本実施形態のモータ4は、オーガスクリュー3に対して着脱可能になっているので、一本のオーガスクリュー3を一箇所に設置した後にこれを外し、別の場所にさらなるオーガスクリュー3を設置することが可能となっている。すなわち、まず、最初の場所で、上述のようにして二本の第1のオーガスクリュー3を地中に螺入する。ただしこのときは、ストッパ6がフレーム1上面に当接するまで螺入させる必要はない。図示の例では、ストッパ6は、延長ロッド3bの最後端部分に取り付けてある。螺入後、モータ4のチャック4aからオーガスクリュー3(延長ロッド3a)を取り外し、モータ4は邪魔にならないように上昇させる。そして、コネクティングピン1cを引き抜いてフレーム1の両端部1bを取り除き、オーガスクリュー3をフレーム1から外した状態で、貫入試験装置を後退させる。
【0022】
設置した第1のオーガスクリュー3から所定間隔離した場所(次に作業する桁材の長さ分)まで貫入試験装置を後退させたところで、上述同様にして、二本の第2のオーガスクリュー3をモータ4により回転させて地中に進入させる。そして、第1のオーガスクリュー3のときと同じく、モータ4及びフレーム1から第2のオーガスクリュー3を外す。当該第2のオーガスクリュー3のストッパ6も、最後端部分に取り付けられている。
【0023】
続いて、フレーム1が第1のオーガスクリュー3と第2のオーガスクリュー3との間に位置するように貫入試験装置を前進させ、該フレーム1に両端部1bを取り付ける。そして、フレーム1を間に置いた第1及び第2のオーガスクリュー3の後端、ストッパ6の下に、桁材10を架け渡してストッパ6により上方へ動かないように固定すると共に該桁材10の下面をフレーム1の水平面部の上面に当接させる。言い換えると、フレーム1の上に桁材10を載せてストッパ6にて上方へ動かないように抑えている。
【0024】
桁材10は、この例では、オーガスクリュー3を両脇から挟み込むH形鋼部材11を用いて構成されており、該オーガスクリュー3を挟持したH形鋼部材11の上部どうしをボルト&ナット12にて締め込んで固定してある。
【0025】
このように、コーンCの貫入位置両側に、それぞれ第1及び第2のオーガスクリュー3を設置して桁材10を架け渡し、該桁材10にてフレーム1を押さえ込む反力対抗構造とすることで、合計四本のオーガスクリュー3で反力に対抗する構造を得られるので、より大きな反力に耐え得る構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の貫入試験装置を示した正面図。
【図2】図1の貫入試験装置の側面図。
【図3】図1の貫入試験装置の移動時の状態を示した側面図。
【図4】本発明の貫入試験装置のための反力対抗構造を説明する斜視図。
【図5】本発明の貫入試験装置のための反力対抗構造を説明する斜視図。
【符号の説明】
【0027】
1 フレーム
1a 支持壁
1b 端部
1c コネクティングピン
2 油圧シリンダ
2a ピストンロッド
2b 押圧部
3 オーガスクリュー
3a 延長ロッド
4 モータ
4a チャック
5 支柱
5a ラックギヤ
5b レール部
6 ストッパ
7 アーム
7a 筒部
8 補助支持脚
9 補助支持脚
10 桁材
11 H形鋼部材
12 ボルト&ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にコーンを取り付けたコーンロッドの後端を押圧して前記コーンを地中へ貫入する油圧シリンダを設置したフレームと、
該フレームの水平面部を垂直方向に貫通するオーガスクリューと、
前記水平面部を貫通して下方へ先端側が突出した前記オーガスクリューを回転させるモータと、
該モータを支持して上下動させるための支柱と、
前記オーガスクリューに設けられ、前記モータにより前記オーガスクリューを回転させて地中へ進入させたときに前記水平面部の上面に当接するストッパと、
を含んで構成されることを特徴とする貫入試験装置。
【請求項2】
前記油圧シリンダは、前記コーンの貫入位置を挟んで対称位置に、そのピストンロッド先端を前記フレームに固定して二本立設され、
前記コーンロッド後端を押圧する押圧部が当該二本の油圧シリンダに固定されていることを特徴とする請求項1記載の貫入試験装置。
【請求項3】
前記オーガスクリューは、前記コーンの貫入位置を挟んで対称位置に二本配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の貫入試験装置。
【請求項4】
前記モータは、前記二本のオーガスクリューの後端をそれぞれ把持して回転させるように、二個設けられていることを特徴とする請求項3記載の貫入試験装置。
【請求項5】
前記支柱は、前記油圧シリンダの外側の前記フレーム上に、前記二個のモータをそれぞれ支持するように二本立設されていることを特徴とする請求項4記載の貫入試験装置。
【請求項6】
前記水平面部は、前記フレームの最も外側の部位に形成されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の貫入試験装置。
【請求項7】
前記フレームを支持するアームが備えられた走行装置をさらに含むことを特徴とする請求項6記載の貫入試験装置。
【請求項8】
前記アームは、前記フレームを垂直方向回動可能に軸支し、
該軸支されたフレームを回動させるためのアクチュエータが前記走行装置に備えられていることを特徴とする請求項7記載の貫入試験装置。
【請求項9】
前記走行装置に、前記コーンにより測定されたデータを解析する電子機器が搭載されていることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の貫入試験装置。
【請求項10】
前記モータは、前記オーガスクリューに対して着脱可能になっていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の貫入試験装置。
【請求項11】
請求項10に記載の貫入試験装置のための反力対抗構造であって、
前記モータにより回転させて地中に進入させた後に、前記モータ及び前記フレームから外した第1のオーガスクリューと、
該第1のオーガスクリューから所定間隔離した場所で、前記モータにより回転させて地中に進入させた後に、前記モータ及び前記フレームから外した第2のオーガスクリューと、
これら第1及び第2のオーガスクリューの後端に架け渡して上方へ動かないように固定され、当該第1及び第2のオーガスクリュー間に配置した前記フレームの水平面部の上面に当接する桁材と、
を含んで構成されることを特徴とする反力対抗構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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