説明

貫通欠陥検出装置及び貫通欠陥検出方法

【課題】内面側と外面側とで圧力差のある中空構造体の貫通欠陥を検出するのに好適な貫通欠陥検出装置及び貫通欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】貫通欠陥検出処理装置30は、照射制御部31において、光照射装置10による中空構造体200の外表面のシート光50による走査処理を制御し、撮影制御部32において、撮影装置20による光照射装置10の走査位置及びその近傍の領域である撮影領域の撮影処理を制御し、画像処理部33において、撮影領域の撮影画像データを画像処理し、流動状態検出部34において、この画像処理結果に基づき、撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動状態を検出し、貫通欠陥検出部35において、浮遊粒子の流動状態の検出結果に基づき、中空構造体200の貫通欠陥を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内外面に圧力差が形成された状態の配管や容器等の中空構造体の貫通欠陥を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管等に生じた微小な亀裂、ピンホールなどの貫通欠陥による気体漏洩は、その欠陥箇所の発見に石鹸水による目視検査が一般的に用いられている。また、微細な亀裂の場合には、カラーチェックもよく使用されている。しかし、これらの検査方法は、対象設備が比較的小さく、人が至近から全面を確認できることが必要であり、大型の配管設備や容器では、全面に足場が必要であり、また、保温材などが巻かれている場合には使用できないなど、制約も多い。
【0003】
一方、大型容器の貫通欠陥を検査する技術として、例えば、特許文献1に、レーザ光源と、レーザ光源の出力光を水平面に対し任意に回転させ且つ任意の仰角又は俯角で出射させ、タンク内面の検査部分に照射するレーザ照射手段と、タンク外面から内面に漏洩した検知ガスからの散乱光ないし蛍光を集光後、波長選択して検出する漏洩ガス検出手段とを備えたタンク検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−337437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の検査方法では、タンク内部に検査装置を設ける又は運び込む必要があり、また、検知ガスを用いた検査のためタンク内部の液体やガス等を全て排出した状態での検査となる。従って、検査を行う度に、設備の稼働を停止する必要がある上に、検査装置の設置や内容物の排出作業等の煩わしい作業を伴うものであった。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、内外面に圧力差を有する中空構造体の貫通欠陥を検出するのに好適な貫通欠陥検出装置及び貫通欠陥検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔形態1〕 上記目的を達成するために、形態1に記載の貫通欠陥検出装置は、内外面に圧力差が形成された状態で使用される中空構造体の貫通欠陥を検出する貫通欠陥検出装置であって、前記中空構造体の外表面に光を照射する光照射装置と、前記中空構造体の前記光の照射位置を含む該中空構造体の外周における前記照射位置近傍に予め設定された領域である撮影領域を撮影する撮影装置と、前記撮影装置で前記撮影領域を時系列に撮影して得られる複数の撮影画像を画像処理して、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動状態を検出する流動状態検出部と、前記流動状態検出部で検出した前記流動状態に基づき、前記中空構造体の貫通欠陥を検出する貫通欠陥検出部と、を備える。
【0007】
このような構成であれば、光照射装置によって、中空構造体の外表面に光が照射され、撮影装置によって、光の照射位置を含む中空構造体の外周における照射位置近傍に予め設定された領域である撮影領域が撮影される。そして、流動状態検出部において、撮影装置によって撮影領域を時系列に撮影して得られる複数の撮影画像が画像処理され、撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動状態が検出される。流動状態が検出されると、貫通欠陥検出部において、検出された流動状態に基づき中空構造体の貫通欠陥が検出される。
【0008】
つまり、中空構造体がその内外面に圧力差を有するため、中空構造体に貫通欠陥が生じている場合に、例えば、中空構造体内部の圧力が外部に対して高い場合は、内部から気体が貫通欠陥を介して外部へと吹き出す。この吹き出した気体は、中空構造体の周辺に浮遊している浮遊粒子を吹き出し方向に流動させる。従って、このような浮遊粒子の流動状態を検出することができれば、中空構造体に貫通欠陥が生じていることを検出することができる。
【0009】
〔形態2〕 更に、形態2に記載の貫通欠陥検出装置は、形態1の構成に対して、前記光照射装置は、シート光を照射する。
このような構成であれば、シート光によって、浮遊粒子の流動を2次元的に捉えることが可能となる。これにより、浮遊粒子の流動状態を容易に検出することができる。
〔形態3〕 更に、形態3に記載の貫通欠陥検出装置は、形態1又は2の構成に対して、前記流動状態検出部は、前記時系列に撮影された複数の撮影画像に基づき、前記流動状態として、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流速を検出し、前記貫通欠陥検出部は、前記流動状態検出部で検出した前記流速に基づき、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の少なくとも一部の流速が予め設定した閾値以上であると判定すると、前記中空構造体の前記光の照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定する。
【0010】
ここで、中空構造体の内外面に圧力差があるため、中空構造体の壁面に貫通欠陥が生じている場合に、貫通欠陥から吹き出す又は貫通欠陥に吸い込まれる気体によって、浮遊粒子は気体の吹き出し速度又は吸い込み速度に応じた流速で流動する。また、中空構造体の内外面の圧力差が解っていれば、その圧力差及び貫通欠陥のサイズや形状等に応じた流速の閾値を設定することができる。上記形態3の構成であれば、このように設定された閾値を用いて、流速を判定することが可能となるので、中空構造体に貫通欠陥が生じているか否かを精度良く判定することができる。
【0011】
〔形態4〕 更に、形態3に記載の貫通欠陥検出装置は、形態1乃至3のいずれか1の構成に対して、前記流動状態検出部は、前記時系列に撮影された複数の撮影画像に基づき、前記流動状態として、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動方向及び流速を検出し、前記貫通欠陥検出部は、前記流動状態検出部で検出した前記流動方向及び流速に基づき、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の少なくとも一部の、前記外表面に対して離間又は接近する方向の流速成分が予め設定した閾値以上であると判定すると、前記中空構造体の前記光の照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定する。
【0012】
ここで、貫通欠陥から吹き出す又は貫通欠陥に吸い込まれる気体は、中空構造体の外表面に対して離間又は接近する方向の流速成分を多く含む。従って、中空構造体の内外面の圧力差が解っていれば、その圧力差及び貫通欠陥のサイズや形状等に応じた中空構造体の外表面に対して離間又は接近する方向の流速成分の閾値を設定することができる。上記形態4の構成であれば、このように設定された閾値を用いて、中空構造体の外表面に対して離間又は接近する方向の流速成分を判定することが可能となるので、中空構造体に貫通欠陥が生じているか否かを精度良く判定することができる。
【0013】
〔形態5〕 更に、形態5に記載の貫通欠陥検出装置は、形態1乃至4のいずれか1の構成に対して、前記流動状態検出部は、前記時系列に撮影された複数の撮影画像に基づき、前記流動状態として、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動方向及び流速を検出し、前記貫通欠陥検出部は、前記流動状態検出部で検出した前記流動方向及び流速に基づき、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の一部の流速と、他部の流速との速度差が予め設定した閾値以上であると判定すると、前記中空構造体の前記光照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定する。
【0014】
例えば、空調設備等によって、常時一定方向から一定風量の風が中空構造体に向かって吹いているような場合に、空調からの風の影響を受けて流動する浮遊粒子と、空調からの風に加えて貫通欠陥を介して吹き出す又は吸い込まれる気体の影響を受けて流動する浮遊粒子との間には速度差が生じる。上記形態5の構成であれば、貫通欠陥を介して吹き出す又は吸い込まれる気体の影響を受ける浮遊粒子と、それ以外の浮遊粒子との速度差を、予め設定された閾値を用いて判定することが可能となるので、定常的に風を受けている環境下においても、中空構造体に貫通欠陥が生じているか否かを精度良く判定することができる。
【0015】
〔形態6〕 更に、形態6に記載の貫通欠陥検出装置は、形態1乃至5のいずれか1の構成に対して、前記流動状態検出部は、前記時系列に撮影された複数の撮影画像に基づき、前記流動状態として、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動方向を検出し、前記貫通欠陥検出部は、前記流動状態検出部で検出した前記流動方向に基づき、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の少なくとも一部の流動方向の変化量が予め設定した閾値以上であると判定すると、前記中空構造体の前記光照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定する。
【0016】
ここで、貫通欠陥の周辺を浮遊する浮遊粒子は、貫通欠陥を介して吹き出す又は吸い込まれる気体の影響を受けて、その流動方向が大きく変化する。上記形態6の構成であれば、貫通欠陥を介して吹き出す又は吸い込まれる気体の影響を受ける浮遊粒子と、それ以外の浮遊粒子との流動方向の変化量を、予め設定された閾値を用いて判定することが可能となるので、中空構造体に貫通欠陥が生じているか否かを精度良く判定することができる。
【0017】
〔形態7〕 更に、形態7に記載の貫通欠陥検出装置は、形態1乃至6のいずれか1の構成に対して、前記光照射装置は、照射光によって前記中空構造体の外表面を走査する走査機構を備え、前記撮影装置は、前記照射光の走査位置における前記撮影領域を撮影する。
このような構成であれば、走査機構によって、中空構造体の外表面を照射光で走査することが可能となり、撮影装置は、照射光の走査位置における撮影領域を撮影することが可能となる。これによって、光照射装置の台数を低減することができる。
【0018】
〔形態8〕 一方、上記目的を達成するために、形態8に記載の貫通欠陥検出方法は、内外面に圧力差が形成された状態で使用される中空構造体の貫通欠陥を検出する貫通欠陥検出方法であって、前記中空構造体の外表面に光を照射する光照射ステップと、前記中空構造体の前記光の照射位置を含む該中空構造体の外周における前記照射位置近傍に予め設定された領域である撮影領域を撮影する撮影ステップと、前記撮影ステップにおいて前記撮影領域を時系列に撮影して得られる複数の撮影画像を画像処理して、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動状態を検出する流動状態検出ステップと、前記流動状態検出部において検出した前記流動状態に基づき、前記中空構造体の貫通欠陥を検出する貫通欠陥検出ステップとを含む。
これにより、形態1に記載の貫通欠陥検出装置と同等の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る貫通欠陥検出装置又は貫通欠陥検出方法によれば、内外面に圧力差が形成された状態で使用される中空構造体について、中空構造体の外周面の周辺に存在する粉塵等の浮遊粒子の撮影画像に基づき浮遊粒子の流動状態を検出する。そして、この流動状態に基づき、中空構造体の貫通欠陥の有無を検出する。これにより、従来と比較して、簡易に、かつ設備を停止することなく貫通欠陥の有無を検出することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】貫通欠陥検出装置1の概略構成を示す図である。
【図2】貫通欠陥検出処理装置30の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】(a)及び(b)は、本実施形態に係る光照射装置10と撮影装置20の配置構成例及び移動構成例を示す図であり、(c)は、他の移動構成例を示す図である。
【図4】貫通欠陥検出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】(a)は、中空構造体200に貫通欠陥が無い場合の浮遊粒子の流動状態の一例を示す図であり、(b)及び(c)は、中空構造体200に貫通欠陥がある場合の浮遊粒子の流動状態の一例を示す図である。
【図6】(a)は、撮影画像データIt及び検査領域窓の一例を示す図であり、(b)は、撮影画像データIt及び探査領域窓の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1〜図6は、本発明に係る貫通欠陥検出装置及び貫通欠陥検出方法の一実施形態を示す図である。
(構成)
まず、本発明に係る貫通欠陥検出装置の概略構成を図1に基づき説明する。図1は、本発明に係る貫通欠陥検出装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、貫通欠陥検出装置1は、光照射装置10と、撮影装置20と、貫通欠陥検出処理装置30とを含んで構成される。本実施形態において、貫通欠陥検出装置1は、内面側と外面側とに圧力差が形成された状態で使用される中空構造体200の貫通欠陥を検出する。なお、光照射装置10と撮影装置20とは、それぞれ貫通欠陥検出処理装置30と通信可能に接続されている。なお、有線通信に限らず、無線通信可能に構成してもよい。
【0022】
光照射装置10は、レーザ光を射出するレーザ装置10aと、レーザ装置10aから射出されたレーザ光からシート光50を生成するシート光生成部10bとを含んで構成される。
レーザ装置10aは、YAGレーザ等の固体レーザ装置、アルゴンイオンレーザ等のガスレーザ装置などのレーザ装置から構成される。なお、シート光50の厚さをより薄くしたい場合は、YAGレーザよりもアルゴンイオンレーザを用いることが望ましい。
シート光生成部10bは、球面レンズと、シリンドリカルレンズとを含む光学系を備えており、レーザ装置10aから射出されたレーザ光を球面レンズで円錐状の光に変化させる。本実施形態では、この円錐状に変化させた光をシリンドリカルレンズで横長に変化させて、水平面と平行な面を持つシート状の光(シート光50)を生成する。
【0023】
光照射装置10は、図1に示すように、貫通欠陥の検査対象である中空構造体200の外表面に対して交差(本実施形態では直交)する方向にシート光50を照射可能に配設されている。このシート光50は、該シート光50の照射範囲内に存在する粉塵やトレーサ粒子等の浮遊粒子を2次元面(シート面)上に撮影できるようにする役割を有している。具体的に、シート光50の照射範囲内を浮遊する浮遊粒子において反射された散乱光を撮影装置20で撮影する。これにより、中空構造体200の外表面から所定範囲内を浮遊する浮遊粒子をシート面上に撮影する。
【0024】
更に、光照射装置10は、貫通欠陥検出処理装置30からの駆動制御信号に応じて、レーザ装置10aからレーザ光を射出する。射出されたレーザ光は、シート光生成部10bに入射し、シート光生成部10bからシート光50が射出される。なお更に、光照射装置10は、貫通欠陥検出処理装置30からの移動制御信号に応じて後述する直動案内装置を駆動し、直線状のガイド部材である直状ガイド部材11及び円環状のガイド部材である円環状ガイド部材12に沿って、中空構造体200の周辺を、中空構造体200の高さ方向及び円周方向に移動可能に構成されている。
【0025】
撮影装置20は、デジタルビデオカメラを含んで構成され、中空構造体200におけるシート光50の照射位置(走査位置)を含む当該中空構造体200の外周における照射位置近傍に予め設定された領域(以下、撮影領域と称す)を撮影可能に配設されている。具体的には、シート光50のシート面に対して撮影軸が交差(本実施形態では直交)する方向にレンズを向けることが可能に配設されている。更に、撮影装置20は、貫通欠陥検出処理装置30からの駆動制御信号に応じて、撮影領域を適切に撮影できるようにズームや露光量の設定等を行うと共に撮影領域の動画撮影を行う。そして、この撮影によって得られる撮影画像データ(デジタルデータ)を貫通欠陥検出処理装置30に送信する。なお更に、撮影装置20は、円環状のガイド部材である円環状ガイド部材21に沿って、中空構造体200の円周方向に移動可能に構成されている。
【0026】
貫通欠陥検出処理装置30は、光照射装置10の駆動制御及び移動制御と、撮影装置20の駆動制御及び移動制御を行う機能を有している。更に、貫通欠陥検出処理装置30は、撮影装置20から受信した撮影画像データを画像処理して、撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動状態を検出する機能を有している。更に、貫通欠陥検出処理装置30は、検出した流動状態に基づき、中空構造体200のシート光50の照射位置又はその近傍に貫通欠陥があるか否かを判定(推定)する機能を有している。なお更に、貫通欠陥検出処理装置30は、貫通欠陥の検査結果に係る情報を表示する機能を有している。
【0027】
中空構造体200は、内面側と外面側とに圧力差を有した状態で使用される中空の構造体(配管や容器など)である。従って、中空構造体200に貫通欠陥があると、内面側の圧力が外面側よりも高い場合は、中空構造体200の内部ガスが貫通欠陥を通って外面側に吹き出す。一方、内面側の圧力が外面側よりも低い場合は、外面側のガス(空気等)が貫通欠陥を通って内面側へと吸い込まれる。
【0028】
つまり、本実施形態の貫通欠陥検出処理装置30は、この吹き出し又は吸い込みによって、外面側の貫通欠陥の近傍を浮遊している浮遊粒子が吹き出し方向又は吸い込み方向に流動する状態を撮影画像から検出することで、貫通欠陥を検出する。
なお、中空構造体200の例としては、真空脱気装置の脱気缶などが挙げられる。脱気缶は、密閉タンクとなっており、真空槽内に、気体のみ通過する疎水膜の片側に液体を充填し、反対側を減圧状態としてそこに窒素ガスを充填する仕組みとなっている。
【0029】
次に、図2に基づき、貫通欠陥検出処理装置30の詳細な構成を説明する。図2は、貫通欠陥検出処理装置30の詳細な構成を示すブロック図である。
貫通欠陥検出処理装置30は、本実施形態において、図2に示すように、制御部300と、表示装置301と、記憶装置302とを含んで構成される。
制御部300は、照射制御部31と、撮影制御部32と、画像処理部33と、流動状態検出部34と、貫通欠陥検出部35と、情報表示部36とを含んで構成される。
【0030】
照射制御部31は、中空構造体200の外表面をシート光50で走査するための光照射装置10の駆動制御信号LC並びに移動制御信号LMC1及びLMC2を生成し、生成した駆動制御信号LC並びに移動制御信号MC1及びMC2を光照射装置10に送信する。
撮影制御部32は、光照射装置10によって走査された撮影領域を撮影するための駆動制御信号CC及び移動制御信号CMCを生成し、生成した駆動制御信号CC及び移動制御信号CMCを撮影装置20に送信する。更に、撮影制御部32は、撮影装置20において動画撮影された少なくとも2フレーム分の撮影画像データを受信し、受信した撮影画像データを記憶装置302に記憶する。
【0031】
画像処理部33は、公知の流速計測法(例えば、PIV(Particle Image Velocimetry)、PTV(Particle Tracking Velocimetry)など )を用いて、撮影画像データを画像処理し、浮遊粒子の流動状態を検出する。
本実施形態では、PIVの一手法である画像相関法を用いて、浮遊粒子の流動状態を検出する。画像相関法は、例えば、シート光50によって2次元的に分布する浮遊粒子群を時刻t0で撮影した撮影画像It0における検査領域内の輝度値分布と、時刻t1=t0+Δtで撮影した撮影画像It1における探査領域内の輝度値分布との相互相関関数を順次求める。そして相互相関関数の最大値となる探査領域の位置を検査領域内の粒子群の平均的な移動位置として推定し、変位ベクトルを求める方法である。
【0032】
画像処理部33は、画像相関法を用いる場合に、記憶装置302に記憶された少なくとも2フレーム分の撮影画像データに基づき、撮影画像It(n=0,1,2,・・・)中の検査領域内の浮遊粒子群の輝度値分布と、撮影画像It(m=n+α(α≧1))中の探査領域内の浮遊粒子群の輝度値分布とを求める。なお、撮影画像データItは、nの値が小さいほど早い時刻に撮影した画像データとなる。そして、この画像処理結果の情報と、撮影時刻の情報等を含む画像処理結果を流動状態検出部34に出力する。
【0033】
流動状態検出部34は、画像処理部33から入力された画像処理結果に基づき、撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動状態を検出する。
具体的に、流動状態検出部34は、各検査領域と各探査領域の輝度値分布に基づき、これらの相互相関関数を求める。そして、相互相関関数の最大値となる探査領域を検出する。その後、相互相関関数の最大値となる検査領域及び探査領域の情報(座標情報など)と、撮影時刻の情報とに基づき撮影領域内に存在する浮遊粒子の流動状態を検出する。流動状態検出部34は、この流動状態の検出結果の情報を含む流動情報を貫通欠陥検出部35に出力する。
【0034】
なお、本実施形態において、流動状態検出部34は、流動状態として、複数の浮遊粒子の流速、流動方向、流動量、流動方向の変化量等を検出する。また、本実施形態では、これらの平均値、最大値、最小値を検出する。
貫通欠陥検出部35は、流動状態検出部34から入力された流動状態の検出結果に基づき、シート光50の照射位置又はその近傍に存在する貫通欠陥を検出する。具体的に、予め設定された条件との比較処理に基づき、貫通欠陥の有無を判定する。なお、この判定処理の詳細については後述する。
【0035】
貫通欠陥検出部35は、判定結果と流動情報とを含む検出結果情報を情報表示部36に出力する。
情報表示部36は、貫通欠陥検出部35から入力された検出結果情報に基づき、貫通欠陥の有無、貫通欠陥がある場合の撮影画像中の予め設定された位置範囲などの情報を表示すると共に、浮遊粒子の流動状態の情報を表示するための画像表示信号を生成する。そして、情報表示部36は、画像表示信号を表示装置301に出力する。
【0036】
表示装置301は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスから構成されており、情報表示部36から入力された画像表示信号に基づき、表示画面上に画像表示信号に応じた画像を表示する。
記憶装置302は、フレームメモリとメモリコントローラとから構成され、撮影装置20で撮影された各フレームの撮影画像データを記憶する。
なお、貫通欠陥検出処理装置30は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、専用のプログラムの記憶されたROM(Read Only Memory)と、を備えており、CPUにより専用のプログラムを実行することによって上記各部の機能を実現する。
【0037】
次に、図3に基づき、光照射装置10と撮影装置20の配置構成及び移動構成を説明する。図3(a)及び(b)は、本実施形態に係る光照射装置10と撮影装置20の配置構成例及び移動構成例を示す図であり、(c)は、他の移動構成例を示す図である。
本実施形態において、光照射装置10は、図3(a)に示すように、第1の直動案内装置13を備えており、第1の直動案内装置13は、中空構造体200の高さ方向と平行に直立する直状ガイド部材11に対して、該直状ガイド部材11に沿って摺動可能に取り付けられている。かかる構成によって、光照射装置10は、貫通欠陥検出処理装置30からの移動制御信号LMC1に応じて第1の直動案内装置13の駆動源(サーボモータ等)を駆動し、直状ガイド部材11に沿って、上下方向(高さ方向)に移動可能となっている。また、図3(b)に示すように、光照射装置10は、第2の直動案内装置14を備えており、第2の直動案内装置14は、円環状ガイド部材12に対して、該円環状ガイド部材12に沿って摺動可能に取り付けられている。かかる構成によって、貫通欠陥検出処理装置30からの移動制御信号LMC2に応じて、第2の直動案内装置14の駆動源(サーボモータ等)を駆動し、円環状ガイド部材12に沿って、光照射装置10を中空構造体200の外表面と交差(本実施形態では直交)する方向にレーザ光(シート光50)の照射部を向けた状態で、中空構造体200の円周方向に沿って時計周り又は反時計周りに移動可能となっている。この構成によって、光照射装置10は、シート光50によって、高さ方向に中空構造体200の外表面上を走査すると共に、円周方向に中空構造体200の外表面上を走査することが可能となっている。
【0038】
また、図3(a)に示すように、撮影装置20は、中空構造体200の下端近傍に、上方にレンズを向けて配設されている。具体的に、撮影装置20は、光照射装置10の照射するシート光50のシート面に撮影軸が交差(本実施形態では直交)する方向にレンズを向けて配設されている。また、撮影装置20は、第3の直動案内装置22を備えており、図3(b)に示すように、円環状ガイド部材21に対して、該円環状ガイド部材21に沿って摺動可能に取り付けられている。かかる構成によって、貫通欠陥検出処理装置30からの移動制御信号CMCに応じて、第3の直動案内装置22の駆動源(サーボモータ等)を駆動し、円環状ガイド部材21に沿って、撮影装置20を光照射装置10の照射するシート光50のシート面に直交する方向にレンズを向けることが可能な状態で、中空構造体200の円周方向に沿って時計周り又は反時計周りに移動可能となっている。
【0039】
なお、本実施形態においては、撮影装置20は、高さ方向については固定となっているが、この構成に限らず、図3(c)に示すように、撮影装置20についても、第1の直動案内装置13と同様な構成の第4の直動案内装置24によって直状ガイド部材23に沿って高さ方向に上下動可能に構成してもよい。但し、直状ガイド部材23が、光照射装置10の照射するシート光50を遮断しないように、直状ガイド部材23の最上部が光照射装置10の照射位置よりも低くなるように構成するなど、工夫をする必要がある。また、円環状のガイド部材に沿って、1台の光照射装置10及び1台の撮影装置20を中空構造体200の円周方向に沿って時計周り又は反時計周りに移動可能な構成としたが、この構成に限らない。例えば、複数台の光照射装置10又は複数台の撮影装置20を備えて、これらを中空構造体200の周囲に等間隔で並設し、時計周り又は反時計周りへの移動を不要な構成とするか、又は個々の装置の移動範囲を小さくする構成としてもよい。
【0040】
(貫通欠陥検出処理)
次に、図4に基づき、貫通欠陥検出処理装置30において実行される貫通欠陥検出処理の処理手順を説明する。図4は、貫通欠陥検出処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
貫通欠陥検出処理は、CPUにおいて実行されると、図4に示すように、まず、ステップS100に移行する。
ステップS100では、貫通欠陥検出処理装置30において、検査要求があったか否かを判定し、検査要求があったと判定した場合(Yes)は、ステップS102に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、検査要求があるまで判定処理を繰り返す。
ステップS102に移行した場合は、貫通欠陥検出処理装置30において初期化処理が実行され、ステップS104に移行する。
【0041】
初期化処理では、照射制御部31において、光照射装置10を予め設定された初期位置へと移動させるための移動制御信号LMC1及びLMC2が生成され、生成されたLMC1及びLMC2が、光照射装置10に送信される。一方、撮影制御部32において、撮影装置20を予め設定された初期位置へと移動させるための移動制御信号CMCが生成され、生成されたCMCが撮影装置20に送信される。これにより、光照射装置10及び撮影装置20が初期位置へと移動する。
【0042】
ステップS104では、照射制御部31において、駆動制御信号LCを生成し、生成したLCを光照射装置10に送信することで、光照射装置10によるレーザ光(シート光50)の照射を開始して、ステップS106に移行する。
ステップS106では、撮影制御部32において、駆動制御信号CCを生成し、生成したCCを撮影装置20に送信することで、撮影装置20による撮影領域の撮影を開始して、ステップS108に移行する。
【0043】
なお、本実施形態において、光照射装置10によるシート光50の照射と撮影装置20によるこの照射位置に対応する撮影領域の撮影とは、同期して行われる。
ステップS108では、撮影制御部32において、撮影装置20から、ステップS106の駆動制御信号CCに応じた撮影によって得られた同じ撮影領域の少なくとも2フレーム分の撮影画像データを取得し、取得した撮影画像データを記憶装置302に記憶して、ステップS110に移行する。
【0044】
ステップS110では、画像処理部33において、記憶装置302に記憶された少なくとも2フレーム分の撮影画像データのうち、先に撮影した撮影画像データである撮影画像データItに基づき、検査領域の画像処理を実行する。そして、画像処理結果を流動状態検出部34に出力して、ステップS112に移行する。
本実施形態において、検査領域の画像処理は、予め設定された検査領域窓毎に撮影画像内の画像部分の輝度分布を求める処理となる。例えば、撮影画像が1600×1200画素の画素数で構成されている場合に、例えば、300×300画素の検査領域窓を設定し、撮影画像上をこの検査領域窓を走査させながら、各走査位置の検査領域窓に対応する画像部分の輝度分布を求める。
【0045】
ステップS112では、画像処理部33において、記憶装置302に記憶された少なくとも2フレーム分の撮影画像データのうち、撮影画像データItよりも後に撮影した撮影画像データである撮影画像データIt(m=n+α(α≧1))に基づき、探査領域の画像処理を実行する。そして、画像処理結果を流動状態検出部34に出力して、ステップS114に移行する。
【0046】
本実施形態において、探査領域の画像処理は、検査領域の画像処理と同様となる。つまり、検査領域窓と同じ領域範囲の探査領域窓によって、撮影画像上を走査し、各走査位置の探査領域窓に対応する画像部分の輝度分布を求める。なお、本実施形態では、流動状態の検出に、例えば、時系列に撮影された4つの撮影画像データを用いる場合、ステップS110において、撮影画像データIt0の検査領域の画像処理を実行し、ステップS112において、撮影画像データIt1〜It3に対して探査領域の画像処理を実行する。なお、検査対象に対応する流動状態の内容に応じて、探査領域の画像処理を実行する撮影画像データの数を増やしたり、数を変えずに時間間隔を空けたりすることが望ましい。
【0047】
ステップS114では、流動状態検出部34において、検査領域の画像処理結果と、探査領域の画像処理結果と、撮影画像データItとItとの撮影時刻の情報とに基づき、撮影領域内に存在する粉塵等の浮遊粒子の流動状態を検出して、ステップS116に移行する。
ここで、流動状態検出部34は、検査領域の輝度値分布と探査領域の輝度値分布とに基づき、両者の相互相関関数を求める。そして、相互相関関数が最大値となる検査領域と探査領域との各組み合わせから、浮遊粒子の各撮影時点の位置を検出する。そして、各浮遊粒子の各撮影時点の位置の情報から流動方向及び流動量を算出する。更に、各浮遊粒子の流動量と撮影時間差とから流動速度を算出する。更に、検査領域と探査領域との複数の組み合わせにおける流動方向の情報から、流動方向の変化量を算出する。更に、流動速度、流動量、流動方向の変化量の平均値、最大値及び最小値を算出する。これら算出結果は、流動情報として、貫通欠陥検出部35に出力される。
【0048】
ステップS116では、貫通欠陥検出部35において、流動状態検出部34からの流動情報に基づき、中空構造体200の貫通欠陥を検出する処理を実行する。
本実施形態において、貫通欠陥検出部35は、対象領域の浮遊粒子群の流速(例えば、平均流速、最大流速、最小流速のいずれか)が予め設定した閾値以上であると判定すると、照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定する。一方、閾値未満であると判定すると、照射位置又はその近傍に貫通欠陥が無いと判定する。なお、対象領域は、中空構造体200の外表面上におけるシート光50の照射位置を含む外表面から所定距離内の複数に区分された範囲領域など、貫通欠陥によって浮遊粒子が影響を受ける範囲を考慮して決定する。特に、ピンホール等の極小の貫通欠陥の場合は、外表面から数センチといった範囲にしか影響を及ぼさないことが想定される。
【0049】
また、貫通欠陥検出部35は、対象領域の浮遊粒子群の中空構造体200の外表面に対して離間又は接近する方向の流速成分が予め設定した閾値以上であると判定すると、照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定する。一方、閾値未満であると判定すると、照射位置又はその近傍に貫通欠陥が無いと判定する。
また、貫通欠陥検出部35は、対象領域の浮遊粒子群と、その周辺の領域の浮遊粒子群との流速差が予め設定した閾値以上であると判定すると、照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定し、閾値未満であると判定すると、照射位置又はその近傍に貫通欠陥が無いと判定する。なお、注目している対象領域については、他の対象領域も周辺の領域として判定に用いる。このことは、以降の判定方法についても同様である。
【0050】
また、貫通欠陥検出部35は、対象領域の浮遊粒子群と、その周辺の領域の浮遊粒子群との流動方向の変化量の差が予め設定した閾値以上であると判定すると、照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定し、閾値未満であると判定すると、照射位置又はその近傍に貫通欠陥が無いと判定する。
本実施形態では、上記いずれかの判定方法において、1つでも貫通欠陥があると判定された場合に、シート光50の照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定(推定)し、上記いずれの方法でも貫通欠陥が無いと判定された場合に、貫通欠陥が無いと判定する。
【0051】
なお、上記各判定方法において、閾値は、測定環境に応じて任意に設定する。また、上記4つの判定方法の全てを用いるのではなく、該4つの判定方法のうちいずれか1〜3を用いて判定を行うようにしてもよい。
貫通欠陥検出部35は、判定に係る撮影画像データ、流動情報及び判定結果の情報とを含む検出結果情報を情報表示部36に出力して、ステップS118に移行する。
【0052】
ステップS118では、情報表示部36において、貫通欠陥検出部35から入力された検出結果情報に基づき、検出結果情報に係る画像情報を表示装置301で表示するための画像表示信号を生成する。そして、生成した画像表示信号を表示装置301に出力して、ステップS120に移行する。
表示装置301は、情報表示部36からの画像表示信号を受信すると、受信した画像表示信号に応じた画像を表示する。
ステップS120では、貫通欠陥検出処理装置30において、中空構造体200の全走査領域に対する検査が終了したか否かを判定し、終了したと判定した場合(Yes)は、一連の処理を終了し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS122に移行する。
【0053】
ステップS122では、照射制御部31において、次の走査位置へと光照射装置10を移動させるための移動制御信号LMC1及びLMC2を生成し、生成したLMC1及びLMC2を光照射装置10に送信する。一方、撮影制御部32において、次の撮影位置(光照射装置10の走査位置に対応)へと撮影装置20を移動させるための移動制御信号CMCを生成し、生成したCMCを撮影装置20に送信する。その後、ステップS104に移行する。
これにより、移動制御信号LMC1及びLMC2に基づき、第1の直動案内装置13及び第2の直動案内装置14が駆動して、光照射装置10を高さ方向及び円周方向に移動して、次の走査位置へと移動する。また、移動制御信号CMCに基づき、第3の直動案内装置22が駆動して、撮影装置20を円周方向に移動して、次の撮影位置へと移動する。
【0054】
(動作)
次に、図5及び図6に基づき、本実施形態の貫通欠陥検出装置1の動作を説明する。図5(a)は、中空構造体200に貫通欠陥が無い場合の浮遊粒子の流動状態の一例を示す図であり、(b)及び(c)は、中空構造体200に貫通欠陥がある場合の浮遊粒子の流動状態の一例を示す図である。図6(a)は、撮影画像データIt及び検査領域窓の一例を示す図であり、(b)は、撮影画像データIt及び探査領域窓の一例を示す図である。なお、貫通欠陥の検査を行うに際しては、検査対象物周囲の風を起こす要因となるもの(空調の稼働、窓を開けることによる外からの風など)は排除することが望ましい。
【0055】
貫通欠陥検出処理装置30は、検査要求が入力されると(S100のYes)、まず、照射制御部31及び撮影制御部32において、初期化処理を実行する(S102)。
初期化処理では、照射制御部31において、光照射装置10の位置を、予め設定された検査開始位置まで移動させるための移動制御信号LMC1及びLMC2を生成する。そして、生成したLMC1及びLMC2を光照射装置10に送信する。光照射装置10は、LMC1及びLMC2を受信すると、受信したLMC1に基づき第1の直動案内装置13を駆動して、光照射装置10を直状ガイド部材11に沿って高さ方向に移動し、光照射装置10を高さ方向の検査開始位置まで変位させる。一方、光照射装置10は、受信したLMC2に基づき第2の直動案内装置14を駆動して、光照射装置10を円環状ガイド部材12に沿って時計周り又は反時計周りに移動し、光照射装置10を円周方向の検査開始位置まで変位させる。
【0056】
また、初期化処理では、撮影制御部32において、撮影装置20の位置を、予め設定された撮影開始位置まで移動させるための移動制御信号CMCを生成する。そして、生成したCMCを撮影装置20に送信する。撮影装置20は、CMCを受信すると、受信したCMCに基づき第3の直動案内装置22を駆動して、撮影装置20を円環状ガイド部材21に沿って時計周り又は反時計周りに移動し、撮影装置20を円周方向の撮影開始位置まで変位させる。
【0057】
初期化処理が完了すると、次に、照射制御部31において、駆動制御信号LCが生成され、生成されたLCが光照射装置10に送信される(S104)。これにより、光照射装置10は、駆動制御信号LCに応じて、レーザ装置10aからレーザ光を射出する。射出されたレーザ光はシート光生成部10bにおいてシート光50に変化し、中空構造体200の外表面における現在の走査位置へと照射される。
具体的に、図5(a)〜(c)に示すように、シート光50が、中空構造体200の走査位置に向けて照射されると、その行路途中に存在する粉塵等の浮遊粒子にもシート光50が照射される。なお、図5は、光照射装置10のシート光50の照射位置において中空構造体200をその長手方向と直交する線で切った場合の断面図となる。
【0058】
一方、撮影制御部32において、駆動制御信号CCが生成され、生成されたCCが撮影装置20に送信される(S106)。これにより、撮影装置20は、駆動制御信号CCに応じて、カメラのピントやズーム等の調整を現在の走査位置及びその近傍の領域である撮影領域に合わせて行う。なお、図5(a)〜(c)における、点線で囲まれた四角い領域が撮影領域となる。
【0059】
更に、撮影装置20は、シート光50の照射に同期して、シート光50の現在の走査位置への照射期間における撮影領域の動画撮影を行う。撮影装置20は、撮影によって得られる各フレームの撮影画像データを、貫通欠陥検出処理装置30へと送信する。
このようにして撮影が開始されると、撮影制御部32は、撮影装置20から送信される各フレームの撮影画像データを受信し、受信した撮影画像データを記憶装置302に記憶する(S108)。本実施形態では、撮影制御部32は、各撮影画像データに対応付けて撮影時刻(又は撮影時間差)の情報も記憶装置302に記憶する。
【0060】
画像処理部33は、記憶装置302に撮影画像データが記憶されると、記憶装置302から撮影画像データを読み出し、読み出した撮影画像データに対して、検査領域窓による走査を行い、走査した窓の範囲内の画像部分に対して輝度値分布を算出する(S110)。
ここでは、説明の便宜上、各走査位置に対して、時刻t0と時刻t1(t0+Δt)との2つの時刻の撮影画像データを読み出したとする。
【0061】
画像処理部33は、まず、図6(a)に示すように、撮影画像データIt0において、検査領域窓を設定し、設定した検査領域窓によって撮影画像It0を走査し、例えば、図6(a)中に示す走査位置の検査領域窓(座標{(x0,y0),(x0,y1),(x,y0),(x1,y1)}の4つの頂点を有する矩形領域)内の画像部分について、輝度値分布を算出する。この算出処理は、検査領域窓の各走査位置に対して順次実行する。
【0062】
画像処理部33は、検査領域窓による画像処理が終了すると、記憶装置302から、検査領域窓に対応する撮影画像データよりも後の時刻に撮影された撮影画像データIt1を読み出す。そして、読み出した撮影画像データIt1に対して、探査領域窓による走査を行い、走査した窓の範囲内の画像部分に対して輝度値分布を算出する(S112)。
具体的に、画像処理部33は、図6(b)に示すように、撮影画像データIt1において、探査領域窓を設定し、設定した探査領域窓によって撮影画像It1を走査し、例えば、図6(b)中に示す走査位置の探査領域窓(座標{(x2,y2),(x2,y3),(x3,y2),(x3,y3)}の4つの頂点を有する矩形領域)内の画像部分について、輝度値分布を算出する。この算出処理は、探査領域窓の各走査位置に対して順次実行する。
【0063】
画像処理部33は、これら算出した輝度値分布の情報と走査位置の情報と撮影時刻の情報とを対応付けてなる情報を含む画像処理結果を、流動状態検出部34に出力する。
流動状態検出部34は、画像処理部33からの画像処理結果に基づき、各走査位置における検査領域窓の各輝度値分布と、各走査位置における探査領域窓の各輝度値分布との相互相関関数を算出する。そして、各検査領域窓の輝度値分布に対して相互相関関数が最大となる探査領域窓の輝度値分布を流動先の位置として、各検査領域窓の走査位置に対応する探査領域窓の浮遊粒子群を検出する。
【0064】
更に、流動状態検出部34は、相互相関関数が最大となる、各走査位置に対応する検査領域窓の範囲内に存在する浮遊粒子群と、各走査位置に対応する探査領域窓の範囲内に存在する浮遊粒子群との組み合わせに基づき、撮影時刻の異なる2つの撮影画像データにおける、両者間で対応する浮遊粒子群(画像)を検出する。
具体的に、撮影画像データIt0中の浮遊粒子群と、この浮遊粒子群に対応する撮影画像データIt1中の浮遊粒子群を検出する。そして、検出した浮遊粒子群について、撮影時刻t0及びt1の時間差(差分)などに基づき、各浮遊粒子の流動方向、流速、流動量、これらの平均値、最大値及び最小値を算出する。なお、流動方向の変化量については、時系列に撮影された3つ以上の撮影画像データを要するため、ここでは算出しないこととする。
【0065】
ここで、撮影画像データIt0及びIt1において、図6(a)に示す検査領域窓の画像部分と、図6(b)に示す探査領域窓の画像部分との相互相関関数が最大となったとする。この場合、検査領域窓の画像部分に含まれる浮遊粒子群(図中の複数の小さい丸)が、座標{(x0,y0),(x0,y1),(x,y0),(x1,y1)}から、座標{(x2,y2),(x2,y3),(x3,y2),(x3,y3)}へと流動(変位)したと予測できる(厳密には検査領域窓の画像部分全体の移動予測となる)。
【0066】
これら画像部分から各浮遊粒子画像を抽出することで、両者の位置関係から、これらの画像部分に含まれる各浮遊粒子画像に基づき、各浮遊粒子の流動方向、流動量を算出することが可能となる。また、流動量と、撮影画像データIt0及びIt1の撮影時刻の情報とから流速を算出することができる。なお、この算出処理において、各浮遊粒子の検出を容易にするために撮影画像データを二値化したものを用いてもよい。流動状態検出部34は、これら算出結果の情報を、流動情報として、貫通欠陥検出部35に出力する(S114)。
【0067】
貫通欠陥検出部35は、流動状態検出部34から入力された流動情報に基づき、中空構造体200の現在の走査位置又はその近傍に貫通欠陥があるか否かを判定する(S116)。
貫通欠陥検出部35は、まず、流動情報に含まれる予め設定された対象領域の浮遊粒子群の流速の情報に基づき、該対象領域の浮遊粒子群の流速(平均流速、最大流速又は最小流速)と、予め設定された流速閾値とを比較し、流速が流速閾値以上であると判定すると、貫通欠陥があると判定する。一方、閾値未満であると判定すると貫通欠陥が無いと判定する。以下、この判定方法を第1判定方法と呼ぶ。
【0068】
また、流速について貫通欠陥が無いと判定し場合は、次に、流動情報に含まれる予め設定された対象領域の浮遊粒子群の流速及び流動方向の情報に基づき、該対象領域の浮遊粒子群の中空構造体200の外表面に対して離間又は接近する方向の流速成分を算出する。そして、算出した流速成分と、予め設定された流速成分の閾値とを比較し、流速成分が閾値以上であると判定すると、貫通欠陥があると判定する。一方、閾値未満であると判定すると貫通欠陥が無いと判定する。以下、この判定方法を第2判定方法と呼ぶ。
【0069】
また、流速成分について貫通欠陥が無いと判定した場合は、次に、流動情報に含まれる予め設定された対象領域内の浮遊粒子群の流速と、該対象領域周辺の浮遊粒子群の流速との差分である流速差を算出する。そして、算出した流速差と予め設定された流速差の閾値とを比較し、流速差が閾値以上であると判定すると、貫通欠陥があると判定する。一方、閾値未満であると判定すると貫通欠陥が無いと判定する。以下、この判定方法を第3判定方法と呼ぶ。
【0070】
また、流速差について貫通欠陥が無いと判定した場合は、次に、流動情報に含まれる予め設定された対象領域内の浮遊粒子群の流動方向の変化量と、該対象領域周辺の浮遊粒子群の流動方向の変化量との差分を算出する。そして、算出した流動方向の変化量の差分と予め設定された該差分の閾値とを比較し、該差分が閾値以上であると判定すると、貫通欠陥があると判定する。一方、該差分が閾値未満であると判定すると、貫通欠陥が無いと判定する。以下、この判定方法を第4判定方法と呼ぶ。
なお、上記第1〜第4の判定方法における対象領域は、例えば、図5(a)〜(c)に示すように、一点鎖線で囲まれた対象領域A〜Cの3つの領域となる。また、ここでは、流動方向の変化量を算出していないので、上記第4判定方法については実施しない。
【0071】
ここで、シート光50の照射位置又はその近傍において、中空構造体200に貫通欠陥が無い場合は、図5(a)に示すように、撮影領域内の浮遊粒子群は、空気の流れ等の発生しない環境下において、外力を受けずに自由に浮遊する状態となる。従って、撮影領域内の浮遊粒子群は、重力等の影響もあるため全く動かないという訳ではないが、大きな動きの変化を生じない。そのため、上記いずれの判定方法においても貫通欠陥が無い(閾値未満である)と判定される。
【0072】
一方、中空構造体200の内圧と外圧との関係が、「内圧>外圧」となっている場合で、かつ貫通欠陥がある場合は、図5(b)に示すように、貫通孔を通って、中空構造体200内部の気体が外部へと吹き出す。そのため、図5(b)中の2本の点線矢印に挟まれた浮遊粒子群に示すように、吹き出してくる気体の影響を受けた浮遊粒子群が気体の吹き出す方向(図5(b)中の矢印方向)に大きく流動する。また、吹き出す気体の影響を受けない浮遊粒子は、自由浮遊の状態のままとなる。加えて、貫通孔近辺において吹き出す気体の影響を受ける浮遊粒子群は、中空構造体200の外表面から離間する方向に向かってより速い流速で流動する。従って、上記第1〜第3判定方法において、貫通欠陥があると判定される。また、貫通孔近辺において吹き出す気体の影響を受ける浮遊粒子群は、急激な方向転換をすることになるので、この流動方向の変化量が周辺の影響を受けない浮遊粒子群と比較して大きくなる。従って、上記第4判定方法を実施した場合でも、貫通欠陥があると判定される。
【0073】
また、中空構造体200の内圧と外圧との関係が、「内圧<外圧」となっている場合で、かつ貫通欠陥がある場合は、図5(c)に示すように、外部の気体が貫通孔を通って、中空構造体200内部へと吸い込まれる。そのため、図5(c)中の2本の点線矢印に挟まれた浮遊粒子群に示すように、吸い込まれる気体の影響を受けた浮遊粒子群が気体の吸い込まれる方向(図5(c)中の矢印方向)に大きく流動する。また、吸い込まれる気体の影響を受けない浮遊粒子は、自由浮遊の状態のままとなる。加えて、貫通孔近辺において吸い込まれる気体の影響を受ける浮遊粒子群は、中空構造体200の外表面に対して接近する方向に向かってより速い流速で流動する。従って、上記第1〜第3判定方法において、貫通欠陥があると判定される。また、貫通孔近辺において吸い込まれる気体の影響を受ける浮遊粒子群は、急激な方向転換をすることになるので、この流動方向の変化量が周辺の影響を受けない浮遊粒子群と比較して大きくなる。従って、上記第4判定方法を実施した場合でも、貫通欠陥があると判定される。
貫通欠陥検出部35は、第1〜第3判定方法のいずれか1つでも貫通欠陥があると判定された場合に、シート光50の照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定し、全ての判定方法において貫通欠陥が無いと判定された場合に、貫通欠陥が無いと判定する。
【0074】
そして、この判定結果の情報と流動情報と判定処理に係る撮影画像データIt0及びIt1とを含む検出結果情報を情報表示部36に出力する。
情報表示部36は、貫通欠陥検出部35からの検出結果情報に基づき、検出結果情報のうち判定結果を示す情報の示す検出結果(貫通欠陥の有無)の情報と、撮影画像データとに基づき、検査領域及び該検査領域における貫通欠陥の有無を明示する情報を生成する。また、検出結果情報に含まれる流動情報に基づき、該流動情報を明示する情報を生成する。そして、これら明示情報を表示装置301に表示するための画像表示信号を生成し、生成した画像表示信号を表示装置301に出力する(S118)。これにより、表示装置301には、検査領域の撮影画像と、貫通欠陥の有無を明示する情報と、流動情報とが表示される。
【0075】
例えば、図5(b)及び(c)のケースでは、少なくとも対象領域Bを含む撮影画像と、貫通欠陥有りを明示する画像と、流動情報を示す画像とが表示される。
貫通欠陥検出処理装置30は、上記同様の処理を各走査位置に対して実行し、全走査領域に対して処理が終了すると(S120のYes)、貫通欠陥の検出処理を終了する。
なお、本実施形態の貫通欠陥検出装置1の貫通欠陥検出処理は、中空構造体200に保温材、防音材などが巻かれている状態でも有効である。具体的に、中空構造体200内部から貫通孔を通って外部へと吹き出す気体、又は外部から貫通孔を通って中空構造体200内部へと吸い込まれる気体は、保温材、防音材などの隙間を通るので、この隙間を通る気体による浮遊粒子の流れを捉えることができれば、保温材、防音材などが巻かれていない状態と同様に貫通欠陥を検出することが可能である。
【0076】
また、本実施形態の貫通欠陥検出装置1は、中空構造体200の周囲に定常的に存在する粉塵等の浮遊粒子の流動状態を検出するようにした。しかし、中空構造体200の周囲に粉塵等の浮遊粒子が殆ど存在しないような環境も存在しうる場合がある。このような場合、水やアルコール等の中空構造体200等の設備に対して害を与えないトレーサ粒子を中空構造体200の周辺に散布する。これにより、粉塵等が存在しない(あるいは著しく少ない)環境下においても、精度良く貫通欠陥の検出を行うことが可能である。
なお、トレーサ粒子としては、他にも、ポリスチレン、アルミニューム、中空ガラス玉、コーディング粒子、ディオクチバサレート、各種オイル、煙等がある。
また、貫通欠陥のおおよその位置を検出後に、その範囲に対して閾値を別途設定して、上記同様の検出処理を実施することで、貫通欠陥のより正確な位置を絞り込むことが可能である。
【0077】
以上説明したように、本実施形態の貫通欠陥検出装置1は、光照射装置10からシート光50を照射すると共に、第1の直動案内装置13及び第2の直動案内装置14によって、中空構造体200の外表面をシート光50により高さ方向及び円周方向に走査することが可能である。一方、撮影装置20は、第3の直動案内装置22によって、光照射装置10の円周方向の移動に同期して移動し、光照射装置10の走査位置及びその近傍の領域である撮影領域を撮影することが可能である。そして、貫通欠陥検出処理装置30は、撮影装置20で時系列に複数フレーム分撮影された撮影領域の撮影画像データを取得し、該取得した撮影画像データに基づき、公知の流速計測法を用いて、撮影領域内を浮遊する浮遊粒子群の流動状態(流速、流動量、流動方向、流動方向の変化量など)を検出することが可能である。更に、この流動状態の検出結果に基づき、上記第1〜第4判定方法を用いて、中空構造体200に貫通欠陥があるか否かを判定することが可能である。
【0078】
以上のことから、空気中を浮遊する粉塵等の浮遊粒子にシート光を当てて、その反射光(散乱光)を撮影して得られる撮影画像データに基づき、中空構造体の貫通欠陥を検出することができるので、非接触で簡易に貫通欠陥を検出することができる。また、貫通欠陥の検出(検査)対象である設備に対して、外部から非接触で検査を行うことができるので、設備の稼働を停止することなく検査を行うことができる。また、内圧>外圧、内圧<外圧のいずれでも貫通欠陥を検出することができる。
【0079】
ここで、光照射装置10は、光照射装置を構成し、撮影装置20は、撮影装置を構成する。画像処理部33及び流動状態検出部34は、流動状態検出部を構成し、貫通欠陥検出部35は、貫通欠陥検出部を構成する。直状ガイド部材11、円環状ガイド部材12、第1の直動案内装置13及び第2の直動案内装置14は、走査機構を構成する。
また、ステップS104は、光照射ステップを構成し、ステップS106〜S110は、撮影ステップを構成する。ステップS112〜S114は、流動状態検出ステップを構成し、ステップS116は、貫通欠陥検出部を構成する。
【0080】
(変形例)
なお、上記実施形態において、レーザ光源からのレーザ光を変化させたシート光を照射する構成を例に挙げて説明したが、この構成に限らず、浮遊粒子をその流動状態を検出可能な状態で撮影できる光であれば、他の光源や形状の光を照射する構成としてもよい。
また、上記実施形態において、光照射装置10を、高さ方向及び円周方向に移動可能な構成とし、撮影装置20は、円周方向に移動可能な構成としたが、この構成に限らない。例えば、光照射装置で検査対象の外表面を走査し、固定撮影装置(固定カメラ)で走査位置を含む領域を撮影する構成としてもよい。また、光照射装置で検査対象の外表面の直近でかつ外表面と平行な方向に光を照射し、その照射光を含む領域を、移動可能な撮影装置で走査しながら撮影する構成としてもよい。また、移動可能な光照射装置及び撮影装置によって、双方を走査しながら光の照射及び撮影を行う構成としてもよい。
【0081】
また、上記実施形態において、シート光50を中空構造体200の外表面と直交する方向に照射する例を説明したが、この構成に限らない。外表面と直交以外で交差する方向、外表面に対して平行な方向等の他の方向としてもよい。
また、上記実施形態において、撮影装置20の撮影軸を、シート光50のシート面に直交する方向とする例を挙げて説明したが、この構成に限らず、シート面と交差する方向であれば、他の方向としてもよい。
【0082】
また、上記実施形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、上記の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、上記の説明で用いる図面は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例1】
【0083】
次に、上記実施形態に係る貫通欠陥検出装置1を利用した実施例1を説明する。
本実施例においては、製鋼工場に配備された真空脱ガス設備の吸引装置に対して、貫通欠陥の検査を行った。吸引装置は、蒸気エグゼクタにより「内部圧力<1[Pa]」で稼働しており、かつ外表面を保温材が施工されている状態となっている。この状態において、上記実施形態の貫通欠陥検出装置1を利用した貫通欠陥の検査を行った。その結果、流速の突出している箇所が見つかり、その箇所が貫通欠陥の存在箇所として検出(推定)された。後日、定期修理において、推定範囲の保温材を取り外して再度検査を行った結果、亀裂を発見した。
このように、事前に貫通欠陥の存在箇所を推定し、再検査においては推定した範囲に絞り込んで保温材の脱着を行って検査を行った結果、作業時間を大幅に削減することができた。これにより、定期修理時の作業工数を1/10に削減することができた。
【符号の説明】
【0084】
1 貫通欠陥検出装置
10 光照射装置
11 直状ガイド部材
12,21 円環状ガイド部材
13 第1の直動案内装置
14 第2の直動案内装置
22 第3の直動案内装置
20 撮影装置
30 貫通欠陥検出処理装置
31 照射制御部
32 撮影制御部
33 画像処理部
34 流動状態検出部
35 貫通欠陥検出部
36 情報表示部
300 制御部
301 表示装置
302 記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外面に圧力差が形成された状態で使用される中空構造体の貫通欠陥を検出する貫通欠陥検出装置であって、
前記中空構造体の外表面に光を照射する光照射装置と、
前記中空構造体の前記光の照射位置を含む該中空構造体の外周における前記照射位置近傍に予め設定された領域である撮影領域を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置で前記撮影領域を時系列に撮影して得られる複数の撮影画像を画像処理して、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動状態を検出する流動状態検出部と、
前記流動状態検出部で検出した前記流動状態に基づき、前記中空構造体の貫通欠陥を検出する貫通欠陥検出部と、を備えることを特徴とする貫通欠陥検出装置。
【請求項2】
前記光照射装置は、シート光を照射することを特徴とする請求項1に記載の貫通欠陥検出装置。
【請求項3】
前記流動状態検出部は、前記時系列に撮影された複数の撮影画像に基づき、前記流動状態として、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流速を検出し、
前記貫通欠陥検出部は、前記流動状態検出部で検出した前記流速に基づき、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の少なくとも一部の流速が予め設定した閾値以上であると判定すると、前記中空構造体の前記光の照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の貫通欠陥検出装置。
【請求項4】
前記流動状態検出部は、前記時系列に撮影された複数の撮影画像に基づき、前記流動状態として、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動方向及び流速を検出し、
前記貫通欠陥検出部は、前記流動状態検出部で検出した前記流動方向及び流速に基づき、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の少なくとも一部の、前記外表面に対して離間又は接近する方向の流速成分が予め設定した閾値以上であると判定すると、前記中空構造体の前記光の照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の貫通欠陥検出装置。
【請求項5】
前記流動状態検出部は、前記時系列に撮影された複数の撮影画像に基づき、前記流動状態として、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動方向及び流速を検出し、
前記貫通欠陥検出部は、前記流動状態検出部で検出した前記流動方向及び流速に基づき、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の一部の流速と、他部の流速との速度差が予め設定した閾値以上であると判定すると、前記中空構造体の前記光照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の貫通欠陥検出装置。
【請求項6】
前記流動状態検出部は、前記時系列に撮影された複数の撮影画像に基づき、前記流動状態として、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動方向を検出し、
前記貫通欠陥検出部は、前記流動状態検出部で検出した前記流動方向に基づき、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の少なくとも一部の流動方向の変化量が予め設定した閾値以上であると判定すると、前記中空構造体の前記光照射位置又はその近傍に貫通欠陥があると判定することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の貫通欠陥検出装置。
【請求項7】
前記光照射装置は、照射光によって前記中空構造体の外表面を走査する走査機構を備え、
前記撮影装置は、前記照射光の走査位置における前記撮影領域を撮影することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の貫通欠陥検出装置。
【請求項8】
内外面に圧力差が形成された状態で使用される中空構造体の貫通欠陥を検出する貫通欠陥検出方法であって、
前記中空構造体の外表面に光を照射する光照射ステップと、
前記中空構造体の前記光の照射位置を含む該中空構造体の外周における前記照射位置近傍に予め設定された領域である撮影領域を撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップにおいて前記撮影領域を時系列に撮影して得られる複数の撮影画像を画像処理して、前記撮影領域内を浮遊する浮遊粒子の流動状態を検出する流動状態検出ステップと、
前記流動状態検出部において検出した前記流動状態に基づき、前記中空構造体の貫通欠陥を検出する貫通欠陥検出ステップとを含むことを特徴とする貫通欠陥検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate