説明

貯水槽構成用のL型部材及び貯水槽における枠組構造並びに貯水槽

【課題】土圧に抵抗できる強度を有するのは元より、施工性よくしかも、より安全に構築可能な貯水槽を提供する。
【解決手段】支柱部材4を、その継手面部相互を当接状態にして一列に並設して構成した支柱部材の列が、所要間隔で並設され、支柱部材の並列体が構成される。選択された隣り合う2列の支柱部材の列に関し、対向する支柱部材4,4の上端支持部5,5は同一高さに設定され、該両上端支持部5,5でL型部材51が支持される。該L型部材51は、垂直立壁部8の下部に水平スラブ24が突設されたL字状を呈する。垂直立壁部8は、対向する支柱部材の内の何れか一方4aの上端支持部5に載置されて立設状態とされ且つ該上端支持部に固定される。該水平スラブ24の先端部分14は、他方の支柱部材4bの上端支持部5で下方から支持され且つ先端部分14が該上端支持部5に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土圧に抵抗できる強度を有する貯水槽を構築できるのは元より、該貯水槽を施工性よくしかもより安全に構築可能とする貯蓄槽構成用のL型部材に関するものであり、該L型部材を用いる、貯水槽における枠組構造及び、該枠組構造を用いる貯水槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば地下に設置されて大量の雨水を一時的に貯留し得ると共に、その上部を公園や駐車場等の人工施設として利用可能となされた、中間仕切り部によって上下二分割された貯水槽の一例として、例えば特許文献1記載のものが提案されている。
【0003】
該貯水槽aは、図37に示すように、側方に突出する載置部bを一体に有すると共に該載置部bの下方の所定位置にて側方に突出する中間載置部cを一体に有する柱状体dを該載置部b及び該中間載置部cの突出方向と交差する方向に並列に地盤上に複数配設した複数の柱状体列eと、側方に突出する外枠載置部fを一体に有すると共に該外枠載置部fの下方の所定位置にて側方に突出する外枠中間載置部gを一体に有し、前記柱状体列eの外周を囲む外枠部hとを具えていた。又、互いに隣接する前記柱状体列e,eの前記柱状体dの載置部b,b間、及び、前記柱状体列eの前記柱状体の載置部bと前記外枠部hの前記外枠載置部fとの間に夫々架設される頂版部jと、互いに隣接する前記柱状体列e,eの前記柱状体dの前記中間載置部c,c間、及び、前記柱状体列eの前記柱状体の中間載置部cと前記外枠部hの前記外枠中間載置部gとの間に夫々架設された分割床版部kとを具えるものであった。
【0004】
このように特許文献1記載の貯水槽aは、前記柱状体列eを構成する柱状体dが、全体が一体に形成されると共に、前記柱状体列eの外周を囲む外枠部hも全体が一体に形成されていた。そして、前記分割床版部kが、互いに隣接する前記柱状体列e,eの前記柱状体d,dの中間載置部c,c間、及び、前記柱状体列eの前記柱状体dの中間載置部cと前記外枠部hの外枠中間載置部gとの間に架設されることによって中間仕切り部mを形成する構成を有していた。
【0005】
かかることから、前記のようにして複数の柱状体列e,eを構築した後に、前記分割床版部kを、互いに隣接する前記柱状体列e,eの前記柱状体d,dの中間載置部c,c間、及び、前記柱状体列eの前記柱状体dの中間載置部cと前記外枠部hの外枠中間載置部gとの間に架設せんとする場合、該分割床版部kを、隣り合う載置部b,b間及び隣り合う載置部bと外枠載置部fとの間を通して吊り下ろす必要があった。
【0006】
その際、前記分割床版部kを、隣り合う前記載置部b,b間の狭い導入開放部nや、隣り合う前記載置部bと前記外枠載置部f間の狭い導入開放部pを通して、柱状体列e,e間の上部空間部qや柱状体列eと外枠部hとの間の上部空間部sに吊り下ろさなければならないのであるが、該分割床版部kの長さが該導入開放部n,pの開放幅よりも大きいために、前記分割床版部kを水平面内等で適宜回転させて吊り下ろさなければならなかった。
【0007】
又、前記分割床版部kを前記空間部q,sに吊り下ろした後も、該狭い空間部q,sにおいて該分割床版部kを適宜水平面内等で回転させて所要に位置決めを行ない、該分割床版部kの両端部分t,tを、隣り合う前記中間載置部c,cに載置し、又、前記載置部cと前記外枠中間載置部gに載置しなければならず、該分割床版部kの架設作業に慎重さと多くの手間を要して施工能率が悪く施工コストの上昇を招く問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−23687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来の貯水槽の問題点に鑑みて開発されたものであり、中間仕切り部によって上下分割された貯水槽を構築するに際し、土圧に抵抗できる強度を有する貯水槽を構築できるのは元より、該貯水槽を施工性よくしかもより安全に構築可能とする、貯水槽構成用のL型部材の提供を課題とするものである。又本発明は、該L型部材を用いて、施工性よくしかもより安全に構築し得る、貯水槽における枠組構造に関するものである。更に本発明は、該枠組構造を用いて施工性よくしかもより安全に構築し得る貯水槽の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
本発明に係る貯水槽構成用のL型部材(以下L型部材という)は、所要間隔を置いて立設された対向する支柱部材の上端支持部で下方から支持される、貯水槽構成用のL型部材であって、該対向する支柱部材の内の何れか一方の上端支持部に載置されて立設状態とされ且つ該上端支持部に固定される垂直立壁部の下部に、先端部分が、該対向する支柱部材の他方の上端支持部で下方から支持され且つ該先端部分が、該上端支持部に固定される水平スラブが突設されてなるL字状形態を呈していることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る貯水槽における枠組構造は、所要間隔を置いて立設された対向する支柱部材の上端支持部は同一高さに設定され、該両上端支持部でL型部材が支持されており、該L型部材は、該対向する支柱部材の内の何れか一方の上端支持部に載置されて立設状態とされ且つ該上端支持部に固定される垂直立壁部の下部に、先端部分が、該対向する支柱部材の他方の上端支持部で下方から支持され且つ該先端部分が該上端支持部に固定される水平スラブが突設されてなるL字状形態を呈していることを特徴とするものである。
【0012】
又、本発明に係る貯水槽は、支柱部材を、その継手面部相互を当接状態にして一列に並設して構成した支柱部材の列が所要間隔で並設されることにより支柱部材の並列体が構成されており、選択された隣り合う2列の支柱部材の列に関し、その全長に亘って又はその一部分において、対向する支柱部材の上端支持部は同一高さに設定され、該両上端支持部でL型部材が支持されており、該L型部材は、該対向する支柱部材の内の何れか一方の上端支持部に載置されて立設状態とされ且つ該上端支持部に固定される垂直立壁部の下部に、先端部分が、該対向する支柱部材の他方の上端支持部で下方から支持され且つ先端部分が該上端支持部に固定される水平スラブが突設されてなるL字状形態を呈していることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る貯水槽のより具体的な態様は、前記L型部材を用いてなる貯水槽であって、左右の立面の上下方向の中間部に、中間スラブの端部分を下方から支持する中間受部が設けられると共に、該左右の立面の上部には、上部スラブの端部分を下方から支持する上部受部が設けられてなる内壁支柱部材と、
前記貯水槽の内部側に位置する内側の立面の上下方向の中間部に、前記中間スラブの端部分を下方から支持する中間受部が設けられると共に、該内側の立面の上部には、前記上部スラブの端部分を下方から支持する上部受部が設けられてなる外壁支柱部材とを具えている。前記内壁支柱部材は、その前後の立面としての継手面部相互を当接状態にして一列に並設されることにより内壁支柱部材列を構成でき、該内壁支柱部材列が左右方向に所要間隔で並設されることにより内壁支柱部材列並列体を構成でき、又、前記外壁支柱部材は、前記内壁支柱部材列並列体を構成する両外側の内壁支柱部材列に沿って、且つ該内壁支柱部材列と所要間隔を置いて、前後の立面としての継手面部相互を当接状態にして並設されて外壁支柱部材列を構成できるものである。そして、前記内壁支柱部材列の少なくとも一列を構成する内壁支柱部材の全部又はその一部、前記2列の外壁支柱部材列の少なくとも一列を構成する外壁支柱部材の全部又はその一部は、下支柱部材の上端支持部に上支柱部材が立設状態に連結されてなり、該下支柱部材の立面の上部には、前記中間スラブの端部分を下方から支持する前記中間受部が設けられると共に、前記上支柱部材の立面の上部には、前記上部スラブの端部分を下方から支持する前記上部受部が設けられてなる。又、前記中間スラブが、同一高さで対向する前記中間受部間に架設されることによって中間仕切り部が構成される如くなされており、又、前記上部スラブが、同一高さで対向する前記上部受部間に架設されることによって水槽頂板部が構成される如くなされており、前記上支柱部材の所要のものと、これに隣接する前記中間スラブとが一体のL字状に連結されて前記L型部材とされていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるときは、土圧に抵抗できる強度を有する貯水槽を構築できるのは元より、該貯水槽を施工性よくしかもより安全に構築可能とする、貯水槽構成用のL型部材を提供できる。又本発明によるときは、該L型部材を用いて、施工性よくしかもより安全に構築し得る貯水槽における枠組構造を提供できる。更に本発明によるときは、該枠組構造を用いて施工性よくしかもより安全に構築し得る貯水槽を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る貯水槽を示す斜視図である。
【図2】その一部欠切斜視図である。
【図3】中間スラブを架設することによって形成した中間仕切り部の全体構成を示す斜視図である。
【図4】その平面図である。
【図5】貯水槽の縦断面図である。
【図6】貯水槽の横断面図である。
【図7】中間スラブの架設状態を示す正面図である。
【図8】内壁支柱部材の組立工程を説明する斜視図である。
【図9】内壁支柱部材を構成する上支柱部材をサポート装置で支持した状態を示す正面図である。
【図10】内支柱部材による中間スラブ及び上部スラブの端部分の支持状態を示す断面図である。
【図11】下支柱部材の中間受部で中間スラブの端部分を支持した状態を示す断面図である。
【図12】外壁支柱部材を示す斜視図である。
【図13】外壁支柱部材とこれに隣り合う内壁支柱部材間に中間スラブと上部スラブを架設した状態を示す断面図である。
【図14】内壁支柱部材の並設によって形成された内壁支柱部材列並列体と、中間スラブの架設状態を示す部分斜視図である。
【図15】内壁支柱部材の他の構成を説明する分解斜視図である。
【図16】その部分断面図である。
【図17】内壁支柱部材のその他の構成を示す分解斜視図である。
【図18】その部分断面図である。
【図19】内壁支柱部材のその他の構成を示す分解斜視図である。
【図20】その部分断面図である。
【図21】内壁支柱部材のその他の構成を、下支柱部材と上支柱部材との連結部分で示す断面図である。
【図22】内壁支柱部材のその他の構成を、下支柱部材と上支柱部材との連結部分で示す断面図である。
【図23】内壁支柱部材のその他の構成を、下支柱部材と上支柱部材との連結部分で示す断面図である。
【図24】外壁支柱部材の他の構成を示す斜視図である。
【図25】外壁支柱部材のその他の構成を示す斜視図である。
【図26】L字部材を用いて貯水槽を構築する場合を示す部分斜視図である。
【図27】その部分正面図である。
【図28】その別態様を示す部分正面図である。
【図29】その別態様を示す部分正面図である。
【図30】その別態様を示す部分正面図である。
【図31】L型部材とU型部材とを組み合わせて貯水槽を構築する場合を示す部分正面図である。
【図32】その他の態様を示す部分正面図である。
【図33】L型部材を2段積みして貯水槽を構築する場合を示す部分正面図である。
【図34】貯水槽のその他の構成を示す断面図である。
【図35】貯水槽のその他の構成を示す断面図である。
【図36】貯水槽のその他の構成を示す断面図である。
【図37】従来の上下二分割型貯水槽を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
図1〜6において本発明に係る貯水槽1は、中間仕切り部2によって上下二分割されており、下支柱部材3の上端支持部5に上支柱部材6を立設状態に連結して構成されるプレキャストコンクリート製の内壁支柱部材7と、全体が一体に形成されたプレキャストコンクリート製の外壁支柱部材9と、該内壁支柱部材7と該外壁支柱部材9の上下方向の中間高さ位置に配設されて前記中間仕切り部2を構成するプレキャストコンクリート製の中間スラブ10と、該内壁支柱部材7と該外壁支柱部材9の上端側位置で貯水槽頂板部11を構成するプレキャストコンクリート製の上部スラブ12とを具えている。
【0017】
前記下支柱部材3は、図6〜11に示すように、その左右の立面13,15の上部に、前記中間スラブ10の端部分16,16を下方から支持する中間受部17,17が設けられると共に、前記上支柱部材6の左右の立面19,20の上部には、前記上部スラブ12の端部分21,21を下方から支持する上部受部22,22が設けられている。
【0018】
又、前記外壁支柱部材9は図6、図12〜13に示すように、全体が一体に形成されると共に、前記貯水槽の内部側に位置する内側の立面23の上下方向の中間高さ位置には、前記中間スラブ10の端部分16を下方から支持する中間受部25が設けられると共に、該内側の立面23の上部には、前記上部スラブ12の端部分21を下方から支持する上部受部26が設けられている。
【0019】
そして前記内壁支柱部材7は、図2、図4、図14に示すように、その前後の立面27,29としての継手面部30,30相互を当接状態にして1列に並設されることにより内壁支柱部材列31を形成でき、該内壁支柱部材列31が左右方向に所要間隔で並列されることにより内壁支柱部材列並列体32を構成できる。又、前記外壁支柱部材9は、該内壁支柱部材列並列体32を構成する両外側の内壁支柱部材列31a,31aに沿って、且つ、該内壁支柱部材列31a,31aと所要間隔を置いて、前後の立面33,33としての継手面部35,35相互を当接状態にして並設されることにより外壁支柱部材列34を構成できる。本実施例においては、前記内壁支柱部材列並列体32の外周の全体を囲むように該継手面部35,35相互を当接状態にして並設されることにより、図1〜4に示すように外壁囲枠体36を構成できるようになされている。
【0020】
又、前記中間スラブ10が、図4、図7〜9に示すように、同一高さで対向する前記中間受部17,17間に、本実施例においてはその側部37,37相互を当接させて架設されると共に、図13に示すように、同一高さにある前記中間受部17と前記中間受部25間に、本実施例においてはその側部37,37相互を当接させて架設されることによって前記中間仕切り部2が構成される如くなされている。
【0021】
該中間仕切り部2は、より具体的には図4に示すように、前記内壁支柱部材列31の延長方向の両端側の部分53,53においては、矩形板状を呈する前記中間スラブ10aを架設して構成されると共に、該両端側の部分間55においては、前記延長方向で見た両側部分が内側に向けて欠切されることによって欠切開口部56,56が形成された中間スラブ10bを架設して構成されている。そして、該延長方向で見て隣り合う該欠切開口部56,56の合致によって、貯水槽底部を目視観察するための開口部57が形成されている。なお、該両端側の部分間55に架設される中間スラブ10bには、その中央部分等に円形孔や角形孔等の開口が設けられることもある。かかる開口や前記開口部57は、貯水や空気の上下移動も可能とする。
【0022】
そしてこのように、両端側の部分53,53においては矩形板状を呈する中間スラブ10aを配設しているため、前記延長方向の土圧に対する抵抗力の大きい上下二槽の貯水槽を構築できることとなる。なお、構造耐力上有害でない限り、該矩形板状の中間スラブ10aには、下の貯水部に水が流入する際の該下の貯水部内の空気をより円滑に上昇させる等の目的で、適宜小孔が設けられることがある。
【0023】
そして、前記上部スラブ12が、同一高さで対向する前記第1の上部受部22,22間に、側部39,39相互を当接させて架設されると共に、同一高さにある前記上部受部22と前記上部受部26間に、側部39,39相互を当接させて架設されることによって、図2に示す水槽頂板部40が構成される如くなされている。
【0024】
かかる構成を有する貯水槽1によるときは、前記外壁支柱部材9が一体に構成されているために、土圧に対する抵抗力が大なる貯水槽1を構築できるのは元より、上支柱部材6を立設するに先立って、図3に示すように広い作業スペースを確保して前記中間スラブ10を障害なく所要に架設でき、これによって前記中間仕切り部2を容易に構成できることとなる。その後、前記上支柱部材6を下支柱部材3の上端に立設させるのであるが、この立設施工は、構成された該中間仕切り部2を足場にして能率良く容易に施工できることとなる。
【0025】
図10〜11においては、上下方向に突出する連結筋42を、上支柱部材6の下部に埋設したスリーブ43に挿入し且つ該スリーブ43内に無収縮モルタルやグラウト等の充填材45を充填することによって、下支柱部材3の上端に上支柱部材6を立設状態に連結してなる内壁支柱部材7が示されている。又、図10〜11においては、垂直に植立された接合用ボルト46を前記端部分16,16に設けた上下方向の貫通挿入孔47に挿入した後、該貫通挿入孔47に、前記と同様の充填材45を充填することによって、該端部分16,16を前記第1の中間受部17,17に固定している。同様にして、前記端部分16を前記外壁支柱部材9の中間受部25に固定すると共に、前記端部分21を前記上部受部22,26に固定している。
【0026】
図7、図9において、符号41は、立設状態の上支柱部材6を垂直状態で仮支持するためのサポート装置である。
【0027】
図15〜16、図17〜18、図19〜20は、前記下支柱部材3の上端に上支柱部材6を立設状態にして内壁支柱部材7を構成するに際して用いる、該上支柱部材6の他の態様を示すものであり、左右の立面の19,20の下部の両側に側部支持部49,49が突設されている。
【0028】
又図21〜23は、前記下支柱部材3の上端に上支柱部材6を立設状態にして内壁支柱部材7を構成するに際して、前記スリーブ43を下支柱部材3の上部に設ける一方、上下方向に突出する連結鉄筋42を上支柱部材6の下端に突設した場合を示しており、上支柱部材6の左右の立面19,20の下側部分に、側部支持片49,49が突設されている。
【0029】
図24は、前記貯水槽1のコーナ部分に配設される外壁支柱部材9を示すと共に、図25は、前記内壁支柱部材列31の両端部に連結される外壁支柱部材9を示している。
【0030】
本発明に係る貯水槽1は、前記内壁支柱部材列並列体32の延長方向で見た両端部分50,50(図3〜4)を、プレキャストコンクリート製や現場打ちコンクリート製の平板状の端面板で閉じることもある。更に、本発明に係る貯水槽1の、前記内壁支柱部材列並列体32の延長方向で見た両端部分は施工現場の地形によっては、平面視で直線状ではなく段階状に形成されることもある。
【0031】
図26は、本発明に係るL型部材51の一例を示すものであり、所要間隔を置いて立設された対向する支柱部材4,4(本実施例においては前記下支柱部材3,3)の上端支持部5,5で下方から支持されるL字状形態を呈し、プレキャストコンクリート製である。より具体的には、該対向する支柱部材4,4の内の何れか一方の支柱部材4aの上端支持部5に載置されて立設状態とされ且つ該上端支持部5に固定される垂直立壁部8(本実施例においては上支柱部材6)の下部18に、先端部分14(本実施例においては端部分16)が、該対向する支柱部材4,4の他方4bの上端支持部5で下方から支持され且つ該先端部分14が該上端支持部5に固定される水平スラブ24(本実施例においては中間スラブ10)が突設されてなるL字状形態を呈している。該L型部材51の前記下部18と前記先端部分14(端部分16)を前記対向する上端支持部5,5に載置すれば、該L型部材51を安定した立設状態で自立させることができる。
【0032】
図27〜30は、前記L型部材51の配置状態の一例を示すものであり、該L型部材51は、前記内壁支柱部材列並列体32を構成する少なくとも一列の内壁支柱部材列31を構成するために用いることができる。又、前記2列の外壁支柱部材列34,34の双方又は一方を構成するために用いることができる。又、該内壁支柱部材列31のみを構成するためや該外壁支柱部材列34のみを構成するために用いられることもある。かかることから、内壁支柱部材列31の全て及び2列の外壁支柱部材列34,34を、該L型部材51を配設して構成できる他、全ての内壁支柱部材列31及び2列の外壁支柱部材列34,34から選択された複数列を構成するために該L型部材を用いることができる。或いは、これらのうちの一列のみ(内壁支柱部材列31又は外壁支柱部材列34)を構成するために該L型部材51を用いることができる。更には、該一列を構成する内側支柱部材31の一部のみや外側支柱部材の一部のみに該L型部材51を用いることもできる。
【0033】
図31〜32は、前記L型部材51とU型部材52とを組み合わせて用いた場合を示すものであり、この場合は、独立した中間スラブ10を一切用いることなく貯水槽1を構成できることとなる。
【0034】
かかる構成を有するL型部材51は、小形化できるために運搬が容易であり、又、前記のように上支柱部材6と前記中間スラブ10を独立部材とする場合に比し、貯水槽の強度向上を図り得る。更に該L型部材51は、前記の上支柱部材6と前記中間スラブ10とを一体化してなるため、該L型部材51を前記のように架設しさえすれば、上支柱部材6と中間スラブ10の双方を位置決め設置できるため、該上支柱部材6と該中間スラブ10を個別に位置決め設置する場合に比し、貯水槽の組立て施工能率の向上を達成できる。そして該L型部材51を、両外壁支柱部材列34,34の内の一方のみを構成するために配設するときも、該L型部材51を設置する前においては、その設置すべき部分の下部空間を、鉄筋等の資材置き場として有効活用できると共に、資材置き場として役目が終わった後は、前記と同様に、該L型部材51を施工性よく設置できる。
【0035】
かかる構成を有するL型部材51は、例えば図33に示すように複数段に積重されることもある。このように構成する場合は、貯水槽1を多槽に構築でき、貯水槽容積を増大させることができる。
【0036】
その他、本発明に係る貯水槽1は、前記内壁支柱部材列31及び外壁支柱部材列34の少なくとも一列を構成する内壁支柱部材7の全部又はその一部、外壁支柱部材9の全部又はその一部のみを、前記下支柱部材3の上端に上支柱部材6を立設状態に連結した上下連結型支柱として構成できる。然して、この中には、外壁支柱部材列34のみや内壁支柱部材列31の所要数の列のみを前記上下連結型支柱を用いて構成するものが含まれることになる。
【0037】
図34はその一例を示すものであり、外壁支柱部材列34は、全体が一体に構成された外壁支柱部材9を用いて構成する一方、内支柱並列体32は、全体が一体に構成された内壁支柱部材7aを一列に並設して構成された内壁支柱部材列31aと、前記上下連結型の内壁支柱部材7bを一列に並設して構成された内壁支柱部材列31bを交互に所要間隔で並設して構成されている。このように構成する場合も、隣り合う内壁支柱部材列31a,31a間や該内壁支柱部材列31aと前記外壁支柱部材列34との間には、上支柱部材6を立設する前において、広い作業スペースを形成できることになるため、中間スラブ10の架設作業を容易化できる。
【0038】
図35は、他の例を示すものであり、前記内支柱並列体32は、全体が一体に構成された内壁支柱部材7aを一列に並設して構成された内壁支柱部材列31aのみを所要間隔で並設して構成されており、前記外壁支柱部材列34を構成する前記外壁支柱部材9は、前記上下連結型に構成されている。この場合、図36に示すように、該外壁支柱部材9を構成する前記下支柱部材3と中間スラブ10とがL字状に一体化されることもある。このように構成する場合は、該一体化されたL字状部材60によって、土圧に対する貯水槽1の強度向上を期待できる。
【0039】
又、前記中間仕切り部2を、例えば図3〜4に示すように、前記内壁支柱部材列31の延長方向の両端側の部分53,53においては、矩形板状を呈する前記中間スラブ10aを架設して構成すると共に、該両端側の部分間55においては、前記延長方向で見た両側部分が内側に向けて欠切されることによって欠切開口部56,56が形成された中間スラブ10bを架設して構成する場合は、該欠切開口部56が形成された中間スラブ10bが存する部分においては、前記内壁支柱部材7を構成する上支柱部材6を図7、図9に示すようにサポート装置41で仮支持することが難しい。そのため、該中間スラブ10bが存する場所では、全体が一体に構成された内壁支柱部材7aを立設することとし、矩形板状を呈する前記中間スラブ10aが存する部分においては、上支柱部材6を図7、図9に示すようにサポート装置41で仮支持することが容易であるため、この部分では、前記上下連結型の支柱からなる内壁支柱部材7bを立設することがある。
【0040】
又、前記貯水槽1を構築する前記L型部材の所要のものには、その上支柱部材6や中間スラブ10に適宜、図26に一点鎖線で示すような連通開口59が設けることがある。
【符号の説明】
【0041】
1 貯水槽
2 中間仕切り部
3 下支柱部材
4 支柱部材
5 上端支持部
6 上支柱部材
7 内壁支柱部材
8 垂直立壁部
9 外壁支柱部材
10 中間スラブ
11 貯水槽頂板部
12 上部スラブ
13 左の立面
14 先端部分
15 右の立面
16 中間スラブの端部分
17 中間受部
18 下部
19 左の立面
20 右の立面
21 上部スラブの端部分
22 上部受部
23 内側の立面
24 水平スラブ
25 中間受部
26 上部受部
27 前の立面
29 後の立面
30 継手面部
31 内壁支柱部材列
32 内壁支柱部材列並列体
33 立面
34 外壁支柱部材列
35 継手面部
36 外壁囲枠体
40 水槽頂板部
42 連結筋
43 スリーブ
45 充填材
46 接合用ボルト
47 貫通挿入孔
49 側部支持片
51 L型部材
53 中間仕切り部の両端側の部分
55 両端側の部分間
56 欠切開口部
57 開口部
59 連通開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要間隔を置いて立設された対向する支柱部材の上端支持部で下方から支持される、貯水槽構成用のL型部材であって、該対向する支柱部材の内の何れか一方の上端支持部に載置されて立設状態とされ且つ該上端支持部に固定される垂直立壁部の下部に、先端部分が、該対向する支柱部材の他方の上端支持部で下方から支持され且つ該先端部分が該上端支持部に固定される水平スラブが突設されてなるL字状形態を呈していることを特徴とする貯水槽構成用のL型部材。
【請求項2】
所要間隔を置いて立設された対向する支柱部材の上端支持部は略同一高さに設定され、該両上端支持部でL型部材が支持されており、該L型部材は、該対向する支柱部材の内の何れか一方の上端支持部に載置されて立設状態とされ且つ該上端支持部に固定される垂直立壁部の下部に、先端部分が、該対向する支柱部材の他方の上端支持部で下方から支持され且つ該先端部分が該上端支持部に固定される水平スラブが突設されてなるL字状形態を呈していることを特徴とする貯水槽における枠組構造。
【請求項3】
支柱部材を、その継手面部相互を当接状態にして一列に並設して構成した支柱部材の列が所要間隔で並設されることにより支柱部材の並列体が構成されており、選択された隣り合う2列の支柱部材の列に関し、その全長に亘って又はその一部分において、対向する支柱部材の上端支持部は略同一高さに設定され、該両上端支持部でL型部材が支持されており、該L型部材は、該対向する支柱部材の内の何れか一方の上端支持部に載置されて立設状態とされ且つ該上端支持部に固定される垂直立壁部の下部に、先端部分が、該対向する支柱部材の他方の上端支持部で下方から支持され且つ先端部分が該上端支持部に固定される水平スラブが突設されてなるL字状形態を呈していることを特徴とする貯水槽。
【請求項4】
請求項1記載の貯水槽構成用のL型部材を用いてなる貯水槽であって、
左右の立面の上下方向の中間部に、中間スラブの端部分を下方から支持する中間受部が設けられると共に、該左右の立面の上部には、上部スラブの端部分を下方から支持する上部受部が設けられてなる内壁支柱部材と、
前記貯水槽の内部側に位置する内側の立面の上下方向の中間部に、前記中間スラブの端部分を下方から支持する中間受部が設けられると共に、該内側の立面の上部には、前記上部スラブの端部分を下方から支持する上部受部が設けられてなる外壁支柱部材とを具えており、
前記内壁支柱部材は、その前後の立面としての継手面部相互を当接状態にして一列に並設されることにより内壁支柱部材列を構成でき、該内壁支柱部材列が左右方向に所要間隔で並設されることにより内壁支柱部材列並列体を構成でき、
又、前記外壁支柱部材は、前記内壁支柱部材列並列体を構成する両外側の内壁支柱部材列に沿って、且つ該内壁支柱部材列と所要間隔を置いて、前後の立面としての継手面部相互を当接状態にして並設されて外壁支柱部材列を構成できるものであり、
前記内壁支柱部材列の少なくとも一列を構成する内壁支柱部材の全部又はその一部、前記2列の外壁支柱部材列の少なくとも1列を構成する外壁支柱部材の全部又はその一部は、下支柱部材の上端支持部に上支柱部材が立設状態に連結されてなり、該下支柱部材の立面の上部には、前記中間スラブの端部分を下方から支持する前記中間受部が設けられると共に、前記上支柱部材の立面の上部には、前記上部スラブの端部分を下方から支持する前記上部受部が設けられてなり、
前記中間スラブが、略同一高さで対向する前記中間受部間に架設されることによって中間仕切り部が構成される如くなされており、又、前記上部スラブが、同一高さで対向する前記上部受部間に架設されることによって水槽頂板部が構成される如くなされており、
前記上支柱部材の所要のものと、これに隣接する前記中間スラブとが一体のL字状に連結されて前記L型部材とされていることを特徴とする貯水槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2012−193604(P2012−193604A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−44530(P2012−44530)
【出願日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【出願人】(000137074)株式会社ホクコン (40)
【Fターム(参考)】