説明

貯水槽

【課題】本発明は、シートの再利用が可能な貯水槽を提供することを課題とする。
【解決手段】貯水槽Tは、底壁31aおよび側壁31cに複数の貫通孔31b,31dを有する複数の有底筒状の第1パレット31と、この第1パレット31の積層体上に載置される第2パレット32と、これらのパレット3を積層した積層体の下面および側面を包み込むことで、上面開口型の容器状に形成されるシート2と、パレット3およびシート2が設置される凹部1と、容器状のシート2内の水を外部へ汲み上げるポンプ5と、ポンプ5に接続されて容器状のシート2内の水を外部へ導く吐出管6と、容器状のシート2内に導入される水のうち余剰分を外部へ排出させるオーバーフロー管7と、を備えている。そして、シート2をパレット3の積層体の下面および側面に沿うように折り曲げたときのシート2の余り部分は、積層体と凹部1とで挟まれることによって支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水などを溜めて有効利用するための貯水槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯水槽として、地面に形成した矩形の穴にシートを敷くとともに、このシート上に、一面が開口した箱状の農業用コンテナやパレットを積層することで、これらの内部に雨水を貯溜させるものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。そして、このような貯水槽では、十字状に形成したシートを箱状に折り畳んだ後に四つの側壁同士を熱溶着または接着剤で接着させる方法や、矩形のパレットを包むようにシートを折り畳んだ後、その四隅の余り部分を熱溶着等で接着させることで箱状のシートを地上で完成させ、それを穴にセットする方法などを採ることで、矩形の穴に沿ってシートを敷設している。
【0003】
【特許文献1】特開2003−113625号公報
【特許文献2】特開2005−299237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した貯水槽では、シートの形状が熱溶着等によって箱状に維持されてしまうため、例えば、現状よりも貯水槽の大きさを変えたい場合などにおいて、シートを再利用することができないといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、シートを再利用することが可能な貯水槽を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、有底筒状に形成され、かつ、その底壁および側壁に複数の貫通孔を有する複数の樹脂製箱体と、積層される前記複数の樹脂製箱体の上に載置され、前記樹脂製箱体の浮力による浮き上がりを抑制するための重し部材と、前記重し部材と前記樹脂製箱体とを積層して構成される積層体の下面および側面を包み込むことで、上面開口型の容器状に形成されるシートと、前記積層体および前記シートが設置される凹部と、前記容器状のシート内の水を外部へ汲み上げるポンプと、前記ポンプに接続されて前記容器状のシート内の水を外部へ導く吐出管と、前記容器状のシート内に導入される水のうち余剰分を外部へ排出させるオーバーフロー管と、を備えた貯水槽であって、前記シートを前記積層体の下面および側面または前記凹部の内面に沿うように折り曲げたときの前記シートの余り部分が、前記積層体と前記凹部とで挟まれることによって支持されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、容器状に折り曲げられたシートの余り部分が、樹脂製箱体等で構成される積層体と凹部とで挟まれることのみによって支持されるので、例えば、現状よりも貯水槽の大きさを変えたい場合などにおいて現状の貯水槽を分解したとしても、シートを元の平面状態に戻すことができる。したがって、そのシートを新たな貯水槽や別の貯水槽などに再利用することができる。
【0008】
また、本発明は、複数の樹脂製箱体のうちの少なくとも一対の樹脂製箱体を、その開口同士を当接させた状態で積層し、前記一対の樹脂製箱体の内部に、前記ポンプを設けた構造であってもよい。
これによれば、有底筒状の一対の樹脂製箱体を、その開口同士が当接するように積層することにより、一対の樹脂製箱体内に所定の大きな空間が形成されるので、樹脂製箱体に特別な加工を施さなくても、樹脂製箱体内にポンプを設置することができる。
【0009】
さらに、本発明では、複数の樹脂製箱体のうちの少なくとも2つの樹脂製箱体の貫通孔に、棒が上下方向に挿入されていてもよい。
これによれば、例えば複数の樹脂製箱体の全てを貫通するように棒を挿入すると、積層された複数の樹脂製箱体の水平方向への移動が棒によって規制されるので、地震により複数の樹脂製箱体同士がずれることが抑制される。したがって、樹脂製箱体同士のずれに起因したシートの破れが抑制され、その破れた箇所からの水漏れを抑制することができる。なお、樹脂製箱体として既存の部品搬送用のパレットを採用した場合、パレットには通常その開口縁部と底壁とに互いに嵌合自在な凹凸が形成されていることから、その開口縁部と底壁とが当接するように積層された樹脂製箱体同士は、地震があったとしても水平方向にずれることはないので、このような樹脂製箱体には棒を挿入する必要はない。
【0010】
また、本発明では、前記重し部材に回転自在に設けられる滑車と、前記滑車に掛け渡され、かつ、前記重し部材に形成される所定の貫通孔を介して外部から視認可能な水位表示帯と、前記水位表示帯の一端に設けられる錘と、前記水位表示帯の他端に設けられる浮きと、を有する水位計を設けてもよい。
これによれば、センサ等を設けることなく、簡易な構造で水位を知ることができる。
【0011】
さらに、本発明では、前記吐出管が、前記オーバーフロー管内を通って外部に導出されていてもよい。
これによれば、凹部の側面やシートなどに吐出管用の孔を設ける必要がなくなるので、その分コストを下げることができるとともに、水漏れの抑制にも寄与することとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、貯水槽の大きさを変えたい場合などにおいて現状の貯水槽を分解したとしても、シートを元の平面状態に戻すことができるので、そのシートを新たな貯水槽などに再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は第1の実施形態に係る貯水槽を示す概略断面図であり、図2は第1パレットを示す斜視図であり、図3は第2パレットを示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、貯水槽Tは、凹部1と、シート2と、パレット3と、雨水配管4と、ポンプ5と、吐出管6と、オーバーフロー管7とを主に備えて構成されている。
【0015】
凹部1は、地面に形成された矩形の開口を有する穴であり、積層された複数のパレット3に略沿った形状に形成されている。そして、この凹部1の側面11には、雨水側溝SDへ連通する連通孔THが形成されている。
【0016】
シート2は、凹部1の内面の面積よりも大きな面積を有する矩形の防水シートであり、その材料として例えばPP(ポリプロピレン)が使用されている。そして、このシート2は、パレット3の積層体の下面および側面を包み込むことで、上面開口型の容器状に形成されている。また、このシート2の適所には、オーバーフロー管7を挿入するための孔2aが形成されている。なお、このシート2をパレット3の積層体の下面および側面に沿うように折り曲げたときには、パレット3の積層体の四つの角に余り部分2b(図4(c)参照)が生じることとなるが、この余り部分2bは、熱溶着等によって他の部分と接合されることなく、パレット3に沿って折り畳まれた上でパレット3の積層体と凹部1の側面11とで挟まれることのみによって支持されている。
【0017】
パレット3は、工場等で一般に使用される部品搬送用のパレットであり、その材料としてPP(ポリプロピレン)が使用されている。そして、本実施形態においては、下から5段目までのパレット3として所定の空隙率で形成される第1パレット31を用い、最上段のパレット3として第1パレット31よりも空隙率の小さな第2パレット32を用いている。ここで、第1パレット31は、樹脂製箱体の一例であり、第2パレット32は、重し部材の一例である。なお、図1は、説明の便宜上、各パレット31,32などの構造を簡易化して示しているため、以下の各パレット31,32の説明においては、詳細に示した図2および図3を主に用いて説明する。
【0018】
第1パレット31は、図2に示すように、有底筒状の矩形の箱状に形成されており、通常は、その開口を下向きとすることで上側に位置する底壁31a上に部品を載置するようにして使用されるものである。そして、この第1パレット31の底壁31aには複数の貫通孔31bが格子状のリブによって形成されるとともに、その各側壁31cには、フォークリフトの爪を挿入するための二つの貫通孔31dが形成されている。すなわち、この第1パレット31は後記する第2パレット32よりも空隙率が大きく形成されるため、その内部において多く貯水することが可能となっている。また、この第1パレット31の中心には、支持柱31e(図1参照)が形成されており、これにより、第1パレット31上に重量部品が載置された場合であっても、第1パレット31は潰れることなく、その重量部品を良好に支持できるようになっている。そして、この第1パレット31は、図1に示すように、シート2上に5枚積層されており、そのうち最下段の第1パレット31のみが、その開口を上向きとして配置されるようになっている。これにより、最下段と下から二段目の第1パレット31の底壁31a間の空間A1が、その他の空間A2よりも大きく形成されている。なお、この第1パレット31としては、例えば大日本インキ化学工業株式会社製のパレット(型式SLA−1111)を用いればよい。
【0019】
第2パレット32は、図3に示すように、矩形の上壁32aおよび下壁32bを有するとともに、これらの壁32a,32bの間に3本のリブ32cが形成されることで、これらのリブ32c間に、フォークリフトの爪を挿入するための二つの貫通孔32dが形成される構造となっている。また、上壁32aおよび下壁32bの適所には、貫通孔32dに連通する複数の貫通孔32eが形成されている。そして、このように形成される第2パレット32は、図1に示したオーバーフロー管7の配置により最大水位よりも上にでている部分が多いから、容器状のシート2内に水を入れることにより第1パレット31が浮き上がるのを抑制する重しとしての役目を果たしている。また、上壁32aが板状に形成されることにより、その上を通過する歩行者や自動車などを面で良好に支えることが可能となっている。なお、この第2パレット32としては、例えば大日本インキ化学工業株式会社製のパレット(型式ZR−1111E)を用いればよい。
【0020】
ここで、第1パレット31として前記した型式SLA−1111のパレットを用い、第2パレット32として前記した型式ZR−1111Eのパレットを用いた場合、各パレット31,32の空隙率が8〜9割と高いため、その空隙を利用して容器状のシート2内に多くの水を溜めることができる。詳しくは、第1パレット31の空隙率は計算値で約94%、第2パレット32の空隙率は計算値で約88%であり、極めて大きな空隙が各パレット31,32に存在するのが判明した。
【0021】
図1に示すように、雨水配管4は、容器状のシート2内に水W(雨水)を導入する配管である。例えば、家屋の屋根に設けられる樋で雨を受ける場合には、その樋に雨水配管4を連結させればよい。
【0022】
ポンプ5は、容器状のシート2内に溜まった水Wを外部へ汲み上げるものであり、容器状のシート2内の水Wを生活用水や花木への散水等に利用したいときに適宜起動される。そして、このポンプ5は、その開口が合わさるように積層された最下段と下から二段目の第1パレット31内の大きな空間A1に配設される。
【0023】
吐出管6は、容器状のシート2内の水Wを外部(詳しくは、散水用や洗車用の蛇口)へ導く配管である。詳しくは、この吐出管6は、その一端がポンプ5に接続され、このポンプ5から各パレット31,32の各貫通孔31b,32eを通って上方へ延びた後、第2パレット32内で屈曲して後記するオーバーフロー管7内を通って外部へ延びるように形成されており、その他端が図示せぬ蛇口に接続されている。なお、この吐出管6は、洗車、生活用水、花木への散水などに利用できるように途中で分岐させてもよい。また、この吐出管6は、パレット3内で屈曲させ、また、オーバーフロー管7内に通すので、ゴムホースやフレキシブルホースなど撓みやすいものを利用するのが好ましい。
【0024】
オーバーフロー管7は、容器状のシート2内に導入される水Wのうち余剰分を外部の雨水側溝SDへ排出させる配管である。詳しくは、このオーバーフロー管7は、地中に形成した連通孔THに通され、その一端が第2パレット32のフォークリフト用の貫通孔32d(図3参照)内に挿入され、その他端が雨水側溝SDに臨むように配設されている。ここで、このオーバーフロー管7は、第2パレット32の下面に近い位置に設けるのが望ましい。これによれば、第2パレット32の水に浸かる部分が少なくなるので、第2パレット32自体の浮力により重しとしての機能が阻害されるのを抑制できる。
【0025】
また、本実施形態に係る貯水槽Tには、その第2パレット32の上に、吸水性シートS1、多孔シートS2および草木PLが設けられている。
吸水性シートS1は、不織布等の水を吸水・保持できるシートであり、第2パレット32の上面全域を覆うようにして載置されている。この吸水性シートS1は、雨天時において空から降ってくる雨や、容器状のシート2内の水の蒸発等で上昇する水分を捕捉・保持して、草木PLに水分を供給する機能を有している。なお、吸水性シートS1を第2パレット32の上面よりも大きく形成し、その端部を容器状のシート2内に貯溜した水Wに浸からせるようにしてもよい。これによれば、シート2内の水が、吸水性シートS1の端部から毛管現象によって吸水性シートS1全体に広がるため、草木PLへの水分補給をより容易に行うことができる。
【0026】
多孔シートS2は、複数の孔が形成されたシートであり、吸水性シートS1上に載置されている。なお、この多孔シートS2としては、例えば大日本インキ化学工業株式会社製のグリッドマットを用いればよい。
【0027】
草木PLは、多孔シートS2の複数の孔内の吸水性シートS1上に、直接または土などを介して植設されている。なお、この草木PLとしては、例えば万年草を用いるのが好ましく、さらに好ましくは、多孔シートS2の上面から上方へ突出しない程度の背丈で成長するものを用いるのが望ましい。これによれば、草木PL上を歩行者や自動車が通過した場合であっても、草木PLが多孔シートS2によって保護される。
【0028】
次に、本実施形態に係る貯水槽Tの製造方法について説明する。参照する図面において、図4は貯水槽の製造工程を示す図であり、地面に設けた基礎穴に砂を入れる工程を示す概略断面図(a)と、シートを容器状に折り曲げる工程を示す概略断面図(b)と、シートの余り部分を折り曲げる工程を示す概略斜視図(c)と、容器状のシートの周りに砂を埋める工程を示す概略断面図(d)である。
【0029】
図4(a)に示すように、まず、地面に凹部1(図1参照)よりも平面方向に大きく、かつ、深い基礎穴1’を形成する。そして、この基礎穴1’に砂Saを入れ、その上面が水平となるように砂Saをならす。
【0030】
次に、図4(b)に示すように、砂Sa上にシート2を敷くとともに、このシート2上にパレット3を積層する。なお、この積層作業の際には、ポンプ5や吐出管6も適宜パレット3内に配設する。そして、パレット3の積層が完了した後は、このパレット3の積層体の側面に沿うように、シート2を折り畳み、パレット3の積層体の四つの角で余っている余り部分2b(図4(c)参照)をパレット3の側面に沿って折り畳む。なお、この余り部分2bは、作業者によって抑えておくか、作業完了後に簡単に取り外せるもの(例えば、クリップや針など)によって抑えておくことで、作業終了までパレット3側へ折り畳まれた形状に維持される。また、このようにシート2を上面開口型の容器状に維持させた後は、雨水側溝SDと基礎穴1’に連通する連通孔THに相当する溝TH’を形成し、この溝TH’に沿ってオーバーフロー管7を、シート2の孔2aに差し込むとともに、このシート2の孔2aとオーバーフロー管7との間にシール部材(図示せず)を取り付ける。なお、このオーバーフロー管7の敷設作業は、オーバーフロー管7内に吐出管6を通しながら行われ、これにより、作業完了後は、吐出管6が雨水側溝SD側へ出た状態となっている。
【0031】
そして、図4(d)に示すように、オーバーフロー管7の上部(溝TH’上の部分)に土を被せるとともにシート2の周りから砂Saを入れていくことで、連通孔THや凹部1が完成し、これにより、凹部1の側面11とパレット3の積層体との間でシート2が挟持され、シート2が上面開口型の容器状に維持されることとなる。その後は、パレット3の上に、吸水性シートS1、多孔シートS2を順次載せていくとともに、草木PLの植設や雨水配管4(図1参照)の設置を行うことで、貯水槽Tが完成することとなる。
【0032】
以上によれば、第1の実施形態において、以下のような効果を得ることができる。
容器状に折り曲げられたシート2の余り部分2bが、パレット3の積層体と凹部1の側面11とで挟まれることのみによって支持されるので、例えば、現状よりも貯水槽の大きさを変えたい場合などにおいて現状の貯水槽Tを分解したとしても、シート2を元の平面状態に戻すことができる。したがって、そのシート2を新たな貯水槽や別の貯水槽などに再利用することができる。
シート2を容器状にするための熱溶着などが不要であることから、この熱溶着などに起因したシート2の破れが生じることがないので、水漏れのおそれを少なくすることができる。
【0033】
オーバーフロー管7内に吐出管6を通した構造であるため、凹部1の側面11やシート2などにオーバーフロー管7用の連通孔THとは別に吐出管6用の孔や溝を設ける必要がない。そのため、吐出管6用の孔等の形成に必要となるコストを削減することができるとともに、シート2に余分な孔を開けない分水漏れの抑制にも寄与することとなる。さらに、吐出管6内を水Wが流れるときはポンプ5で水Wを汲み上げるときなので、オーバーフロー管7内には水Wは流れず、逆に、オーバーフロー管7内を水Wが流れるときは水位が最高となって貯水槽T内の水Wの余剰分が流れ出るときなので、ポンプ5が駆動していない状態、すなわち吐出管6内には水Wは流れないようになっている。そのため、吐出管6をゴムホースなどの撓みやすい管とした場合であっても、吐出管6の内部・外部のどちらか一方のみに水Wが流れるため、吐出管6の内部を水Wが流れるときにはその水Wが吐出管6を押し広げながら良好に流れ、また、吐出管6の外部を水Wが流れるときにはその水Wが吐出管6を押し潰しながら良好に流れるといった効果を得ることができる。
【0034】
シート2やパレット3がPPで形成されることから、貯水槽T内の水Wに有害物質が溶け込むことがないので、貯水槽T内の水Wを非常時の飲み水としても利用することが可能となる。また、シート2やパレット3がPPで形成されることから、耐荷重性や耐衝撃性等の機械的強度に優れるとともに、腐食や錆が発生しない耐水性に優れた貯水槽Tを提供することができる。
シート2の周りを砂Saで囲んだので、例えば尖った石を含む砂利などで囲んだ場合に比べて、シート2の傷付きを抑制することができる。また、砂Saは、透水性がよいため、降雨時に地盤がゆるむことも抑制することができる。
貯水槽Tの上部に草木Pを配設することにより、日光が草木Pで遮られて水に当たることがないので、水の腐食を抑制することができる。
【0035】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態は、前記した第1の実施形態に係る貯水槽Tの一部を変更したものであるため、第1の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略することとする。参照する図面において、図5は、第2の実施形態に係る貯水槽を示す概略断面図である。
【0036】
図5に示すように、第2の実施形態に係る貯水槽T’は、積層される複数のパレット3の所定の貫通孔32e,31bに、ゴムや樹脂等の弾性変形可能な長尺状の棒Poが上下方向に挿入された構造となっている。そのため、この貯水槽T’においては、積層された複数のパレット3の水平方向への移動が棒Poによって規制されることとなり、その結果、地震によって複数のパレット3同士がずれることが抑制されるようになっている。ここで、パレット3には、通常その上面と下面とに互いに嵌合自在な凹凸が形成されているため、正規の向きで積層される同一種類のパレット3(2段目から5段目までのパレット3)は、棒Poがなくても、それらの凹凸の嵌合により、地震があったとしても水平方向にずれることはない。したがって、パレット3の積層体の上面から下面まで延びる棒Poに代えて、最下段から2段目のパレット3まで延びる棒と5段目から最上段のパレット3まで延びる棒を設けるようにしても、各パレット3の水平方向のずれを抑制できる。
【0037】
以上によれば、第2の実施形態において、以下のような効果を得ることができる。
複数のパレット3の水平方向への移動が棒Poによって規制されるので、パレット3同士のずれに起因したシート2の破れが抑制され、その破れた箇所からの水漏れを抑制することができる。
【0038】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態は、前記した第1の実施形態に係る貯水槽Tの一部を変更したものであるため、第1の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略することとする。参照する図面において、図6は第3の実施形態に係る貯水槽を示す概略断面図である。
【0039】
図6に示すように、第3の実施形態に係る貯水槽T”は、最上段に位置する第2パレット32に、水位計8が設けられた構造となっている。
水位計8は、滑車81と、水位表示帯82と、錘83と、浮き84とを備えて構成されている。
【0040】
滑車81は、第2パレット32のリブ32cに対して回転自在に設けられている。
水位表示帯82は、滑車81に掛け渡される帯状のものであり、その表面には数値や色分けなどによって水位が表示されている。そして、この数値や色は、第2パレット32の上壁32aに形成された所定の貫通孔32eから視認可能となっている。なお、この水位表示帯82を視認することにより水位を確認したいときには、適宜吸水性シートS1および多孔シートS2をめくればよいが、これらのシートS1,S2に窓(孔)を設けることで常時水位を確認できる構成にしてもよい。また、この水位表示帯82の一端には、錘83が設けられ、他端には、浮き84が設けられている。なお、錘83は、水よりも密度が高い材料で形成されるとともに、その質量が浮き84よりも小さくなるように形成され、浮き84は、水よりも密度が低い材料で形成されている。
【0041】
続いて、錘83と浮き84の関係について図7を参照して詳細に説明する。参照する図面において、図7は、錘と浮きの関係を示す説明図であり、貯水槽内に水が入っていないときの状態を示す図(a)と、水に浮きのみが浸かっている状態を示す図(b)と、水に錘と浮きの両方が浸かっている状態を示す図(c)である。
【0042】
図7(a)に示すように、貯水槽T”内に水Wが入っていない状態においては、質量が大きい方の浮き84には、錘83に加わる重力G2よりも大きな重力G1が加わる。そのため、浮き84は、水Wが入ってくるまで貯水槽T”の底面に位置することとなる。なお、このときの力関係は、以下の式(1)のようになっている。
(1) G1−N=G2
(G1;浮きに加わる重力、N;底面からの反力、G2;錘に加わる重力)
【0043】
図7(b)に示すように、貯水槽T内に水Wを入れ始めた初期の段階においては、浮き84の一部のみが水Wに浸かり、錘83は宙に浮いた状態となっている。そのため、このときの力関係は、以下の式(2)のようになっている。
(2) G1−F1=G2
(G1;浮きに加わる重力、F1;浮きに加わる浮力、G2;錘に加わる重力)
【0044】
図7(c)に示すように、貯水槽T”内に水Wを入れ始めてから所定時間が経過した段階においては、図7(b)に示す状態のときよりも浮き84の水Wに浸かる部分が増えるとともに、錘83全体が水Wに浸かった状態となっている。そのため、このときの力関係は、以下の式(3)のようになっている。
(3) G1−F1’=G2−F2
(G1;浮きに加わる重力、F1’;浮きに加わる浮力、G2;錘に加わる重力、F2;錘に加わる浮力)
【0045】
前記した各条件が成立すると、水面の上昇・下降に伴って浮き84が確実に上昇・下降するので、水位計8が適切に動くこととなる。すなわち、錘83や浮き84の質量や体積は、前記した各条件が成立するように、適宜決定すればよい。
【0046】
以上によれば、第3の実施形態において、以下のような効果を得ることができる。
水位計8が錘83や浮き84などによって簡単に構成されるので、例えばセンサ等によって水位を検知する水位計に比べ、コストを下げることができる。
【0047】
なお、本発明は前記各実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記各実施形態では、貯水槽内に水を導入するための導入管として雨水配管4を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えば貯水槽T内に水道水を供給する水道管を採用してもよい。これによれば、夏場などの枯渇時であっても、貯水槽T内に常時貯水しておくことができる。
【0048】
前記各実施形態では、基礎穴1’内にてシート2をパレット3の積層体に沿って折り畳んで容器状とした後に砂Saを周りに埋めることで凹部1を形成するようにしたが、本発明はこれに限定されず、凹部1を先に形成し、この凹部1の内面に沿ってシート2を容器状に折り畳んでいってもよい。
前記各実施形態では、オーバーフロー管7を第2パレット32と略同位置に設けるようにしたが、本発明はこれに限定されず、第2パレット32よりも下側に設けるようにしてもよい。これによれば、第2パレット32が水に浸かることがなくなるので、第2パレット32の重しとしての機能をより発揮させることができる。
【0049】
前記各実施形態では、パレット3やシート2の材料をPPとしたが、本発明はこれに限定されず、任意に設定可能であることはいうまでもない。
前記各実施形態では、樹脂製箱体として部品搬送用のパレット3を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばビンケースや農業用コンテナなどを採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施形態に係る貯水槽を示す概略断面図である。
【図2】第1パレットを示す斜視図である。
【図3】第2パレットを示す斜視図である。
【図4】貯水槽の製造工程を示す図であり、地面に設けた基礎穴に砂を入れる工程を示す概略断面図(a)と、シートを容器状に折り曲げる工程を示す概略断面図(b)と、シートの余り部分を折り曲げる工程を示す概略斜視図(c)と、容器状のシートの周りに砂を埋める工程を示す概略断面図(d)である。
【図5】第2の実施形態に係る貯水槽を示す概略断面図である。
【図6】第3の実施形態に係る貯水槽を示す概略断面図である。
【図7】錘と浮きの関係を示す説明図であり、貯水槽内に水が入っていないときの状態を示す図(a)と、水に浮きのみが浸かっている状態を示す図(b)と、水に錘と浮きの両方が浸かっている状態を示す図(c)である。
【符号の説明】
【0051】
1 凹部
2 シート
2b 余り部分
3 パレット
4 雨水配管
5 ポンプ
6 吐出管
7 オーバーフロー管
8 水位計
31 第1パレット(樹脂製箱体)
32 第2パレット(重し部材)
81 滑車
82 水位表示帯
83 錘
Po 棒
T 貯水槽


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状に形成され、かつ、その底壁および側壁に複数の貫通孔を有する複数の樹脂製箱体と、
積層される前記複数の樹脂製箱体の上に載置され、前記樹脂製箱体の浮力による浮き上がりを抑制するための重し部材と、
前記重し部材と前記樹脂製箱体とを積層して構成される積層体の下面および側面を包み込むことで、上面開口型の容器状に形成されるシートと、
前記積層体および前記シートが設置される凹部と、
前記容器状のシート内の水を外部へ汲み上げるポンプと、
前記ポンプに接続されて前記容器状のシート内の水を外部へ導く吐出管と、
前記容器状のシート内に導入される水のうち余剰分を外部へ排出させるオーバーフロー管と、を備えた貯水槽であって、
前記シートを前記積層体の下面および側面または前記凹部の内面に沿うように折り曲げたときの前記シートの余り部分が、前記積層体と前記凹部とで挟まれることによって支持されていることを特徴とする貯水槽。
【請求項2】
複数の樹脂製箱体のうちの少なくとも一対の樹脂製箱体が、その開口同士を当接させた状態で積層され、
前記一対の樹脂製箱体の内部に、前記ポンプが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の貯水槽。
【請求項3】
複数の樹脂製箱体のうちの少なくとも2つの樹脂製箱体の貫通孔に、棒が上下方向に挿入されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の貯水槽。
【請求項4】
前記重し部材に回転自在に設けられる滑車と、
前記滑車に掛け渡され、かつ、前記重し部材に形成される所定の貫通孔を介して外部から視認可能な水位表示帯と、
前記水位表示帯の一端に設けられる錘と、
前記水位表示帯の他端に設けられる浮きと、を有する水位計が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の貯水槽。
【請求項5】
前記吐出管が、前記オーバーフロー管内を通って外部に導出されていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の貯水槽。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−315124(P2007−315124A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147809(P2006−147809)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(504145065)鈴鹿防災株式会社 (2)
【Fターム(参考)】