説明

貯水槽

【課題】貯水した雨水の常に清浄な水質を保ち、非常時等に飲料水等の生活用水として利用できるようにする。
【解決手段】底部に凸面部3を設けた槽本体1の上部に流入管を配置し、この流入管の下方の位置に槽本体1の内周面から所定の角度の傾きで内側に突出したホッパ8を設け、流入管4に取り入れた雨水を槽本体1の中央部に落とし込んで、槽本体1内に貯留すると共に、落下する雨水の勢いと凸面部3の斜面または曲面により下から上に向かう水の流れを生じさせ、その流れをホッパ8により槽本体1の中央部に導くことで還流を発生させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を集水して清浄な状態を保ったまま貯水する貯水槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の貯水槽として、例えば、特許文献1に示されるものがある。この特許文献1に示される貯水槽は地中に埋設して使用するもので、上端部の開口縁に透水コンクリート筒体を配設して、この透水コンクリート筒体に流入管と流出管を挿通固定するとともに、流入管の先端に臨むようにフィルターを配設し、流入管を通ってくる雨水をフィルターを通して貯水槽に貯めるものとなっている。流出管は貯水槽内の過剰な水を排水するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−170220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術においては、雨水を流入管からフィルターを通して貯水槽に取り込むため、貯水槽に入った雨水はほとんど静水に近い状態となり、そのまま貯水されるため、長期間貯水を続けると苔が発生して水質が劣化し、非常時等に飲料水等の生活用水として利用できないという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明の貯水槽は、底部に凸面部を設けた槽本体の上部に流入管を配置し、この流入管の下方の位置に槽本体の内周面から所定の角度の傾きで内側に突出したホッパを設け、流入管に取り入れた雨水を槽本体の中央部に落とし込んで、槽本体内に貯水すると共に、落下する雨水の勢いと凸面部の斜面または曲面により下から上に向かう水の流れを生じさせ、その流れをホッパにより槽本体の中央部に導くことで還流を発生させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、槽本体内の雨水は長期間貯水を続けても苔が発生することはなく、常に清浄な水質を保つことができるので、非常時等に飲料水等の生活用水として利用できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施例を示す側断面図、
【図2】第1の実施例を示す横断平面図
【図3】第1の実施例の設置例を示す側断面図
【図4】第1の実施例の作用を示す側断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明による貯水槽の実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は第1の実施例を示す側断面図、図2は第1の実施例を示す横断平面図であり、図において1は貯水槽の槽本体で、上端開口部に開閉可能(取外し可能)な蓋2を有し、底部には断面形状台形あるいは山形等の凸面部3が形成されている。
槽本体1の上部には、流入管4と、この流入管4に継手5を介してほぼ直角に接続された流出管6を貫通させてほぼ水平に設けてあり、継手5には注水孔7が設けられていて、この注水孔7は槽本体1の径のほぼ中心部に位置するように配置されている。
【0010】
また、槽本体1内には、流入管4及び流出管6より下方の位置において、槽本体1の内周面から内側に突出するようにホッパ(突縁)8が槽本体1の内周全長に渡って設けられていて、このホッパ8は水平面に対して下方に所定の角度、例えば10度乃至40度の範囲の角度θを成すようにしてあり、更に流入管4及び流出管6とホッパ8の間の位置に槽本体1を貫通するように排水用の浸透管9が複数本放射状に設けられている。
【0011】
図3は第1の実施例の設置例を示す側断面図で、地表から穴を掘り、その穴の底に砕石等による基礎11を作って、その基礎11の上に上述した構成を有する貯水槽を載せる。そして、貯水槽と基礎11の周りを山砂12で覆い、その外側に比較的大粒の砕石13を浸透管9に達する高さまで充填し、その上に小粒の砕石(ビリ砕石)14を敷き均す。
このようにして、槽本体1を蓋2のみが地表に露出するように地中に埋設して設置するが、蓋2の部分から槽本体1の上部を斜めに覆うように遮水シート15を山砂12に埋め込むようにするとよい。
【0012】
上述した構成の作用について説明する。図4はその作用を示す側断面図で、降水した雨水(蒸留水)は屋根の樋等などから流入管4に流れ込み、継手5に設けられた注水孔7から槽本体1内に落下する。このとき流入管4に流れ込んだ雨水が多量の場合、余分な雨水は流出管6を通って槽本体1外へ排出される。
【0013】
注水孔7は槽本体1の径のほぼ中心部に位置するように配置されているので、注水孔7から落下した雨水は、槽本体1の底部に形成された凸面部3に当たり、その斜面あるいは曲面上を流れて槽本体1内に溜まって行き、溜った雨水の量がホッパ8を超えて浸透管9に達すると、各浸透管9により排水が行われ、水面に浮いている塵芥等が槽本体1の外部に排出、除去される。
【0014】
一方、槽本体1内では、注水孔7から落下する雨水の勢いと凸面部3の斜面あるいは曲面により下から上へ向かう水の流れが生じ、そして、その水の流れが所定角度θで下方に傾いているホッパ8により槽本体1の中央部に導かれて下方に向かう流れとなり、それによって槽本体1の内面と中心部の領域で図4に矢印Aで示したような還流が発生する。このような水の還流により槽本体1内の雨水は苔の発生のない常に清浄な状態に保たれるので、槽本体1内の雨水を蛇口に接続した浅井戸用ポンプ等で汲み上げ、蛇口から流出させて飲料用等に用いることができる。
【0015】
尚、本実施例における槽本体1内に貯水した雨水(降水があれば槽本体1に常に取り込まれる状態)を、約3ヶ月間測定したところ、以下の結果が得られた。
pH値 5.1〜6.8 平均値 5.6
溶存酸素 (mg/1) 7.9〜11.9 平均値 10.5
電気伝導率(mS/1) 0.2〜0.7 平均値 0.4
濁 度 (NTU) 3.3〜9.0 平均値 6.0
水 温 (℃) 6.9〜20 平均値 11.8
透 視 度 >100 平均値 >100
臭 気 (冷零臭) 無臭 平均値 無臭
【0016】
また、水道水を入れた容器と槽本体1内に貯水した雨水を入れた容器にそれぞれ切花を挿し、室内に載置して観察したところ、水道水を入れた容器に挿した花が散った後も、雨水を入れた容器に挿した花は散らず、水の消費量も雨水の方が少なかった。
【0017】
以上説明したように第1の実施例では、底部に凸面部3を設けた槽本体1の上部に流入管を配置し、この流入管の下方の位置に槽本体1の内周面から所定の角度の傾きで内側に突出したホッパ8を設け、流入管4に取り入れた雨水を槽本体1の中央部に落とし込んで貯留すると共に、落下する雨水の勢いと凸面部3の斜面または曲面により下から上に向かう水の流れを生じさせ、その流れをホッパ8により槽本体1の中央部に導くことで還流を発生させるようにしているため、槽本体1内の雨水は長期間貯水を続けても苔が発生することはなく、常に清浄な水質を保つことができるので、非常時等に飲料水等の生活用水として利用できるという効果が得られる。
【0018】
尚、上述した実施例では、流入管4に継手5を介して流出管6をほぼ直角に接続することで、流出管6を流入管4から延長するように設けたものとしたが、流入管4と流出管6を直線的な一本の管で形成して、その管に注水孔7を設けるようにしてもよい。
また、上述した実施例では、浸透管9を複数本放射状に設けるものとしたが、これに限られず、浸透管9は少なくとも1本設けてあればよい。
更に、槽本体1は地中に埋設する必要はなく、地上に設置した場合でも同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0019】
1 槽本体
2 蓋
3 凸面部
4 流入管
5 継手
6 流出管
7 注水孔
8 ホッパ
9 浸透管
11 基礎
12 山砂
13 砕石
14 砕石
15 遮水シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に凸面部を設けた槽本体の上部に流入管を配置し、この流入管の下方の位置に槽本体の内周面から所定の角度の傾きで内側に突出したホッパを設け、
流入管に取り入れた雨水を槽本体の中央部に落とし込んで、槽本体内に貯水すると共に、落下する雨水の勢いと凸面部の斜面または曲面により下から上に向かう水の流れを生じさせ、その流れをホッパにより槽本体の中央部に導くことで還流を発生させるようにしたことを特徴とする貯水槽。
【請求項2】
請求項1に記載の貯水槽において、
前記流入管から延長する流出管を設け、前記流入管に流れる雨水の量が多い場合、余分な量の雨水を前記流出管により槽本体外に流出させることを特徴とする貯水槽。
【請求項3】
請求項1に記載の貯水槽において、
前記流入管と前記ホッパの間に位置するように浸透管を前記槽本体を貫通させて設け、前記槽本体の雨水が前記浸透管の位置に達したとき、前記浸透管により排水されるようにしたことを特徴とする貯水槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−219497(P2012−219497A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85622(P2011−85622)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(503069045)株式会社 萬水 (3)
【Fターム(参考)】