説明

貯液温度の管理システム及び貯液温度の管理方法

【課題】貯液温度の均一化及び高精度の温度安定化を可能にし、温度制御を簡単且つ低コストに行えるものとし、更に設備的にも簡潔化できるようにする。
【解決手段】水和性の有機物と水とを混合させた加熱用溶液Lを貯める加熱処理槽2と、この加熱処理槽2内の加熱用溶液Lに被加熱物Wを浸漬させ所定時間後に取り出す出し入れ装置3と、加熱処理槽2内の加熱用溶液Lを沸騰させる煮沸手段4と、加熱処理槽2内の加熱用溶液Lの沸騰温度を検出する液温検出部6と、この液温検出部6の検出温度に基づき必要に応じて加熱処理槽2内へ有機物又は水を補給可能にする補給制御部7とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯液温度の管理システム及び貯液温度の管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高温液体を貯めた処理槽内へ食品を浸漬させることで、食品を加工(加熱調理)するようにした装置は周知である(例えば、特許文献1等参照)。この種の装置において、処理槽内に貯めた高温液体の温度を一定に保持させる場合が生じたとして、これを実現させる方法としては、例えば、加熱時間の制御を行ったり(特許文献2等参照)、高温水や低温水を供給する各配管に設けた開閉弁等を制御してそれらの混合割合を変えたり(特許文献3等参照)する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−177138号公報
【特許文献2】特開2002−260086号公報
【特許文献1】特開昭61−223435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理槽に貯めた液体の温度制御を一定に保持させるうえで、加熱時間を制御する方法では、液体に対流が起こり難いことが原因して温度分布の均一性を図りにくい問題がある。また、温度を上昇させるのに長い時間を要する(制御の応答性が悪い)ために効率が悪く、且つ目標温度に合わせる精度も低いという問題や、ランニングコストが高コスト化するといった問題もあった。
一方、処理槽へ供給する高温水や低温水の量によってそれらの混合割合を変える方法は、制御回路やシステムが複雑であり、また設備が大掛かりとなるなどの問題がある。そのうえ、処理槽内で増加した水量を排水せざるを得ない点で無駄が多いという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、貯液温度の均一化及び高精度の温度安定化が可能であり、温度制御が簡単、低コストに行え、また設備的にも簡潔化できるようにした貯液温度の管理システム及び貯液温度の管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る貯液温度の管理システムは、水和性の有機物と水とを混合させた加熱用溶液を貯める加熱処理槽と、この加熱処理槽内の加熱用溶液に被加熱物を浸漬させ所定時間後に取り出す出し入れ装置と、加熱処理槽内の加熱用溶液を沸騰させる煮沸手段と、加熱処理槽内の加熱用溶液の沸騰温度を検出する液温検出部と、この液温検出部の検出温度に基づき必要に応じて加熱処理槽内へ有機物又は水を補給可能にする補給制御部とを有している。
【0007】
このような構成のシステムであると、まず原則として、加熱処理槽内に溜められた加熱用溶液が煮沸手段によって沸騰状態を保持するようになることで、加熱用溶液は、その沸騰温度に保たれることになる。しかも、加熱用溶液は沸騰状態による攪拌効果を受けることで、温度分布が均一となる。
このような状態を前提としたうえで、加熱用溶液の沸騰温度が設定温度を逸脱するか否かを液温検出部によって監視し、沸騰温度が設定温度を逸脱したとき又は逸脱することを見越して、補給制御部によって加熱処理槽内へ有機物又は水を補給するものである。なお、加熱用溶液の沸騰温度は、加熱用溶液に含まれる有機物又は水が蒸発や揮発を起こし、両者の混合割合が変化することに起因して、連動(温度変化)する。
【0008】
従って、有機物又は水を補給することによってこれら両者の混合割合を元の適正な状態に戻せば、加熱用溶液としての沸騰温度を、目標とする設定温度に合わせることができるのである。なお、このような有機物又は水の補給を行っている間も、加熱用溶液は常に、
沸騰状態を保持したままであるため、温度分布が均一となる効果は常に得られていることになる。
このことから明かなように、本発明に係る貯液温度の管理システムは、加熱用溶液の加熱時間を制御するようなものではなく、また高温の加熱用溶液と低温の加熱用溶液との混合割合を弁操作で変えるようなものでもない。従って、加熱時間制御や弁操作制御を行うことが原因であった従来の各種問題点を一気に解消除去できるものである。
【0009】
そのうえで、本発明に係る貯液温度の管理システムは、貯液温度の均一化及び高精度の温度安定化が可能であり、しかも温度制御が簡単、低コストに行え、また設備的にも簡潔化できる、という利点が得られるものである。
なお、本発明に係る貯液温度の管理システムにおいて、被加熱物は何ら限定されるものではない。また有機物についても、被加熱物の材質、使用(加熱)の目的、目標とする設定温度、ランニングコストなどの諸条件に応じて適宜選択可能なものであって、特に限定されるものではない。
【0010】
具体的な一例として、補給制御部は、液温検出部の検出温度が加熱処理槽内に設定した設定温度を逸脱したとき又は逸脱することを見越して、加熱処理槽内へ給水可能にさせる給水手段を有したものとすればよい。
この場合、補給制御部の給水手段は、液温検出部の検出温度が加熱処理槽内に設定した設定温度を逸脱したとき又は逸脱することを見越して、加熱処理槽内へ自動的に給水を開始すると共に、給水開始後に液温検出部の検出温度が設定温度又は準設定温度に達した時点で給水手段の給水を自動的に停止させるための給水制御部を有したものとすればよい。このようにすることで自動化が可能となる。
【0011】
ここにおいて「設定温度」は最終的に目標とする到達温度を言うものであり、「準設定温度」は、オーバーシュートを見込んだ温度、即ち、最終的に目標とする到達温度の少し手前(到達温度目前)で給水を停止してもその後の温度上昇によって到達温度に達することが予測される温度(ある程度の温度幅を許容)を言うものである。
補給制御部の給水手段は、加熱処理槽内の加熱用溶液が沸騰によって蒸発又は揮発する量を補給する範囲で加熱処理槽内へ継続的に給水し、液温検出部の検出温度が加熱処理槽内に設定した設定温度を逸脱したとき又は逸脱することを見越して加熱処理槽内への給水量を自動的に増加させると共に、給水開始後に液温検出部の検出温度が設定温度又は準設定温度に達した時点で給水手段の給水量を自動的に減少又は停止させるための給水制御部を有したものとしてもよい。
【0012】
なお、本発明に係る貯液温度の管理システムにおいて、出し入れ装置は、食品の搬送用コンベアとすることができる。
一方、本発明に係る貯液温度の管理方法は、水和性の有機物と水とを混合させた加熱用溶液を加熱処理槽内に貯めると共にこの加熱用溶液を加熱し、加熱用溶液の沸騰温度が所定の設定温度に到達したことを確認後に当該加熱用溶液に被加熱物を浸漬させると共に所定時間後に取り出すことを繰り返しつつ、加熱用溶液の沸騰状態が保持されるように加熱状態を管理し、加熱用溶液の沸騰温度を監視し、加熱用溶液の沸騰温度が設定温度を逸脱したとき又は逸脱することを見越して加熱処理槽内へ有機物又は水を補給することによって加熱用溶液の沸騰温度を設定温度に保持させるようにする。
【0013】
このような管理方法であれば、有機物又は水の補給量を調整することで、加熱用溶液の沸騰温度を設定温度に合わせることができるので、貯液温度の均一化が図れると共に、高精度の温度安定化が可能となる。また、温度制御が簡単、低コストに行え、また設備的にも簡潔化できる、という利点が得られるものである。
本発明に係る貯液温度の管理方法は、被加熱物を加熱前の食品とすると共に有機物をグリセリンとして、加熱用溶液の沸騰温度が設定温度を逸脱したとき又は逸脱することを見越して加熱処理槽内へ水を補給するものとして実施可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る貯液温度の管理システム及び貯液温度の管理方法は、貯液温度の均一化及び高精度の温度安定化が可能であり、温度制御が簡単、低コストに行え、また設備的にも
簡潔化できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る貯液温度の管理システムの第1実施形態を示した概略構成図である。
【図2】出し入れ装置における取出部の別実施形態を示した側断面図である。
【図3】本発明に係る貯液温度の管理システムの第2実施形態を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る貯液温度の管理システム1の第1実施形態を示している。この管理システム1は、加熱用溶液Lを貯めることのできる加熱処理槽2と、この加熱処理槽2内の加熱用溶液Lに被加熱物Wを出し入れするための出し入れ装置3と、加熱処理槽2内の加熱用溶液Lを沸騰させる煮沸手段4とを有した処理装置5を核として、この処理装置5に、加熱処理槽2内の加熱用溶液Lの沸騰温度を検出する液温検出部6と、加熱処理槽2内へ有機物又は水を補給する補給制御部7とが付加されたものとなっている。
【0017】
加熱用溶液Lは、水和性の有機物と水とを混合させた混合物(水溶液)である。なお、本第1実施形態では、被加熱物Wが加熱調理前の食品(例えば、包装袋に生米、水、空気を密封したものなど)である場合とし、またこれに伴い、加熱用溶液Lに含まれる有機物には無害のグリセリンを用いた場合として、説明する。
出し入れ装置3は搬送用コンベアを構成したものとしてあり、加熱処理槽2内に対して被加熱物Wを所定時間かけて連続搬送又は間欠搬送しつつ、被加熱物Wを加熱用溶液L中に浸漬させる状態に保持させるようになっている。また加熱処理槽2に対する被加熱物Wの搬入と槽外への搬出とを兼ねるようになっている。
【0018】
被加熱物Wが加熱用溶液Lに対して浸漬される時間を確保するため、加熱処理槽2の長さや出し入れ装置3の搬送速度、出し入れ装置3が加熱用溶液L中を経由する距離などが適宜設定されている。なお、被加熱物Wは、その複数をひとまとめにして整然と収納できるようにした収納ケース(図示略)に入れて、この収納ケースを出し入れ装置3により所定ピッチで搬送させるようにするとよい。この場合、収納ケースは、出し入れ装置3に対して必要に応じて係合離脱自在としつつ、搬送ピッチが不動となるように保持させる構造にするのが好適である。
【0019】
煮沸手段4は、ボイラー等の蒸気発生装置(図示略)で発生させた蒸気を加熱処理槽2内へ導いて、噴射ノズル10から加熱用溶液L中へ噴射させる間接加熱方式のものを採用している。
なお、これら加熱処理槽2、出し入れ装置3及び煮沸手段4は、特にそれらの細部構成が限定されるものではない。要は、加熱処理槽2内の加熱用溶液L中に被加熱物Wを所定時間にわたって浸漬させ、沸騰させた加熱用溶液Lで被加熱物Wを加熱させることができればよいものである。従って例えば、出し入れ装置3は網や多孔ベルト等を用いたベルトコンベアとしてもよいし、煮沸手段4は直火焚きや電熱加熱等による直接加熱方式としてもよい。
【0020】
液温検出部6は、適宜センサ類を用いた検出子12を加熱処理槽2の加熱用溶液L中へ浸漬させたものである。検出の対象とする温度は加熱用溶液Lの沸騰温度であるから、加熱用溶液Lに対して検出子12を浸漬させる深度は特に限定されない。また加熱処理槽2(加熱用溶液L)に対して検出子12を浸漬させる配置も特に限定されるものではなく、検出子12の感度や精度、出し入れ装置3による被加熱物Wの浸漬位置などを考慮して、適宜設定すればよい。この検出子12の検出データは、後述する給水制御部13へ取り込まれるようになっている。
【0021】
補給制御部7は、液温検出部6の検出温度に基づき、必要に応じて加熱処理槽2内へ有機物又は水を補給するところである。本第1実施形態では、上記したように加熱処理槽2内へ貯める加熱用溶液Lをグリセリンと水との混合物としているので、この補給制御部7
は給水手段15を有したものとしてある。
すなわち、グリセリンと水との混合物である加熱用溶液Lは、沸騰させ続けることで相対的に蒸発しやすい水の混合割合が小さくなる。すなわち、グリセリンの占める割合が高くなるためにこの加熱用溶液Lの沸騰温度は上昇する。そこで加熱処理槽2に対し、蒸発したぶんの水を補給することで、グリセリンと水との混合割合を元の適正な状態に戻し、加熱用溶液Lの沸騰温度を設定温度まで低下させることができるのである。
【0022】
グリセリンと水との混合割合(重量比)において、グリセリンの重量部が変化した場合の加熱用溶液Lとしての沸騰温度の上昇傾向を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
この給水手段15は、液温検出部6の検出温度が加熱処理槽2内に設定した設定温度を逸脱したとき又は逸脱することを見越して、加熱処理槽2内へ給水(水を補給)可能にさせるところである。本第1実施形態では、貯水槽16と加熱処理槽2とを連結させた給水管17にポンプ18及び開閉弁19を設けて、開閉弁19を開弁させると同時にポンプ18を駆動させる構成としてある。また、開閉弁19として電動弁又は電磁弁を採用したうえで、これらポンプ18及び開閉弁19の動作を自動化させるための給水制御部13を具備させたものとしてある。
【0025】
貯水槽16に対し適宜加熱装置を設けておき、貯水温度を適度に上昇させておくようにしてもよい(例えば40℃〜80℃)。このようにすることで、加熱処理槽2から被加熱物Wが搬出されるときに、被加熱物Wに付着した加熱用溶液Lを剥離させやすくなり、結果、加熱処理槽2から持ち出される加熱用溶液L(特に有機物)を可及的に抑制できる利点がある。
この場合の熱源として、煮沸手段4の蒸気発生装置で発生させた蒸気や、加熱処理槽2から回収した排熱などを利用するとよい。なお、貯水槽16に加熱装置を設けることは限定されるものではない。加熱装置を設けない場合では、上水道などに対して給水管17を直結することで貯水槽16を省略することも可能である。この場合、ポンプ18を省略することも可能である。
【0026】
給水制御部13は、上記したように給水手段15を自動化するためのものである。すなわち、再記すれば、液温検出部6で検出される検出温度が、加熱処理槽2内に設定した設定温度を超えたときに、開閉弁19を開弁させると同時にポンプ18を駆動させ、加熱処理槽2内へ自動的に給水を開始させる。また、この給水制御部13は、給水開始後、液温検出部6の検出温度が設定温度又は準設定温度に達した時点で、開閉弁19を閉弁させると同時にポンプ18を停止させ、給水手段15の給水を自動的に停止させる。
次に、上記構成を具備して成る本発明に係る管理システム1の動作状況に基づいて、本発明に係る貯液温度の管理方法を説明する。
【0027】
いま仮に、加熱処理槽2内(加熱用溶液L中)で被加熱物Wを加熱する処理温度を123℃に設定したとする。加熱用溶液Lをグリセリンと水との混合物とする場合にあって、この加熱用溶液Lを沸騰させたときの温度が123℃になるようにするには、表1から明かなように、加熱用溶液Lは水1重量部に対してグリセリン4重量部の混合割合とすればよい。
このような混合割合とした加熱用溶液Lを加熱処理槽2内に貯めた状態で、煮沸手段4によりこの加熱用溶液Lを加熱し、沸騰させる。加熱用溶液Lが沸騰することで、加熱処理槽2内において加熱用溶液Lは攪拌効果を受け、温度分布が均一となる。
【0028】
給水制御部13において、液温検出部6によって取り込まれた加熱用溶液Lの沸騰温度が所定の設定温度(123℃)に到達したことを確認している状態のとき、出し入れ装置3は、加熱処理槽2(加熱用溶液L)に対して被加熱物Wを搬入し、浸漬及び搬出させるようにする。
加熱処理槽2を被加熱物Wが通過する(加熱用溶液Lへ浸漬される)ことで、被加熱物Wは所定時間、加熱されることになる。上記したように、被加熱物Wが加熱調理前の食品(例えば、包装袋に生米、水、空気を密封したものなど)であれば、被加熱物Wはこの加熱によって加熱調理(炊飯など)され且つ殺菌されることになる。
【0029】
このような出し入れ装置3の作動を繰り返しつつ、給水制御部13では、加熱用溶液Lの沸騰状態が保持されるように加熱状態を管理し、液温検出部6によって取り込まれる加熱用溶液Lの沸騰温度を監視する。
加熱用溶液Lの沸騰温度が設定温度から逸脱したとき(例えば、液温検出部6が124℃を検出したとき等)又は逸脱することを見越して(例えば、時間的な経過によって123℃を超えることが予測されるとき、給水制御部13は、給水手段15の開閉弁19を開弁させると同時にポンプ18を駆動させ、加熱処理槽2内へ自動的に給水を開始させる。
【0030】
また、この給水制御部13は、給水開始後、液温検出部6の検出温度が設定温度に達した時点(設定温度としての123℃に戻った時点)で、開閉弁19を閉弁させると同時にポンプ18を停止させ、給水手段15の給水を自動的に停止させる。かくして、加熱処理槽2内における加熱用溶液Lの沸騰温度は設定温度に保持される。
なお、オーバーシュートによって給水停止後にも温度低下が予測される場合には、設定温度に達するより少し手前(到達温度目前)の準設定温度(例えば、123.5℃など)で給水手段15の給水を自動的に停止させるようにしてもよい。
【0031】
このようして行う貯液温度の管管理方法であれば、水の補給量を調整することで、加熱用溶液Lの沸騰温度を設定温度に合わせることができるので、加熱用溶液Lの温度を均一化でき、また高精度の温度安定化ができるものとなる。
ところで、被加熱物Wが食品である場合には、出し入れ装置3によって加熱処理槽2から搬出する時点で、速やかに処理温度から冷却させるのが好適とされる。それは過調理状態になるのを阻止して味や食品の硬さなどを良質な状態に統一させたり、加熱処理槽2の下流工程において被加熱物Wの取り扱いを容易にさせたりするのが、その主な理由である。
【0032】
このような要請を満たすには、例えば図2に示すように、出し入れ装置3において、加熱処理槽2から被加熱物Wを取り出す経路を設けると共に、この部分に、被加熱物Wに対して冷却水を噴射させるシャワー装置25を設けるようにする。使用後の冷却水を回収して、ポンプ26で再利用できるような配管構造を採用しておけば尚よい。
[第2実施形態]
図3は、本発明に係る貯液温度の管理システム1の第2実施形態を示している。この第2実施形態の管理システム1が上記した第1実施形態と最も異なるところは、補給制御部6の給水手段15が、加熱処理槽2内に対して継続的に給水を行うようになっている点にある。
【0033】
給水手段15が加熱処理槽2に対して給水する給水量は、加熱処理槽2内の加熱用溶液Lが沸騰によって蒸発又は揮発する量を補給する範囲で行われる。従って、原則として、加熱処理槽2内の液面が上昇する(液量が増加する)ことは防止される。
そして、このような給水手段15の動作状況に応じ、給水制御部13は、液温検出部5の検出温度が加熱処理槽2内に設定した設定温度を逸脱したときに、加熱処理槽2内への給水量を自動的に増加させると共に、給水開始後に液温検出部5の検出温度が設定温度又は準設定温度に達した時点で給水手段15の給水量を自動的に減少又は停止させるようになっている。すなわち、給水手段15が具備する開閉弁19は、流量調整弁として使用される。
【0034】
具体的には、ポンプ18が動作状態を継続しつつ、開閉弁19は原則として開弁状態を保持するようになっている。そして、加熱用溶液Lの沸騰温度が設定温度から逸脱したとき(例えば、液温検出部6が124℃を検出したとき等)又は逸脱することを見越して(例えば、時間的な経過によって123℃を超えることが予測されるとき、給水制御部13は、開閉弁19の開度を大きくさせ、加熱処理槽2内への給水量を増加させる。
また、給水開始後、液温検出部6の検出温度が設定温度に達した時点(設定温度としての123℃に戻った時点)で、開閉弁19の開度を小さくさせ、場合によっては暫時的に停止させて、加熱処理槽2内への給水量を少なくさせる(絞る)。かくして、加熱処理槽2内における加熱用溶液Lの沸騰温度は設定温度に保持される。
【0035】
なお、給水管17は、出し入れ装置3が加熱処理槽2内の加熱用溶液Lから被加熱物W
を取り出す位置で、加熱処理槽2への給水(シャワー状の吐出)を行うように配管されている。そのため、被加熱物Wに付着した加熱用溶液Lを剥離させる効果が一層高められ、従って同時に、加熱処理槽2から持ち出される加熱用溶液L(特に有機物)を抑制できる効果も高められるものである。
給水管17からの給水(シャワー状の吐出)でも、被加熱物Wからどうしても洗い落とせない加熱用溶液Lがある場合は、加熱処理槽2から取り出した後の被加熱物Wを貯水槽16内の貯水へ浸漬させるようにしてもよい。このような場合、貯水槽16内の貯水温度(即ち、給水管17からシャワー状に吐出させる水)を40℃程度に抑えておくと、被加熱物Wの取扱作業がしやすくなり便利である。
【0036】
本第2実施形態では、上記の他にも、煮沸手段4として、ボイラー等の蒸気発生装置(図示略)で発生させた蒸気を加熱処理槽2内に設けた熱交換器30へと導き、この熱交換器30内から再び上記発生装置側へ還流させるようにした循環式のものを採用した点で、第1実施形態と異なっている。
[その他]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【0037】
例えば、加熱用溶液Lにおいて、有機物は特に限定されるものではなく、例えば被加熱物Wが食品であって、無害物質であることが要求される場合では、カルボン酸などを使用することもできる。液体に限定されず、砂糖や塩などの固体(粉体、顆粒体、ジェリー状のものなどを含む)でもよい。
また被加熱物Wが食品であることも何ら限定されるものではなく、段ボールなどの紙類や繊維類などの工業製品をはじめとして、その他、加熱処理が必要とされる殆どのものを対象として実施することができる。このような場合、加熱用溶液Lの有機物には、アルコール系等をはじめとする種々の液体又は固体を採用することができる。
【0038】
液温検出部6に採用する検出子12しだいで、液温の制御精度を高くすることも粗くすることも任意に選択できることは言うまでもない。
補給制御部7は、給水制御部13を具備させず、液温検出部6が表示する検出温度に基づいて作業者が給水手段15を人為的に操作するような構成としてもよい。
これらの例示から明かなように、本発明に係る貯液温度の管理システム及び貯液温度の管理方法において、設定温度も特に限定されるものではなく、水の沸騰温度である100℃より高温の場合でも、反対に100℃より低温の場合でもよい。これらの条件によっては、水を補給する場合だけでなく、有機物を補給する場合も含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る貯液温度の管理システム及び貯液温度の管理方法は、殊に、密封袋入り食品の加熱調理及び殺菌処理として好適に採用可能であり、このようにして加熱調理及び殺菌された食品は、長期保存性に優れたものとなる。それ故、食料(殊に保存食や携行食など)の将来にとって極めて有益とされるものであり、宇宙食などとしての敷衍性にも大いに期待されるところとなる。
【符号の説明】
【0040】
1 管理システム
2 加熱処理槽
3 出し入れ装置
4 煮沸手段
6 液温検出部
7 補給制御部
13 給水制御部
15 給水手段
L 加熱用溶液
W 被加熱物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和性の有機物と水とを混合させた加熱用溶液(L)を貯める加熱処理槽(2)と、
この加熱処理槽(2)内の加熱用溶液(L)に被加熱物(W)を浸漬させ所定時間後に取り出す出し入れ装置(3)と、
加熱処理槽(2)内の加熱用溶液(L)を沸騰させる煮沸手段(4)と、
加熱処理槽(2)内の加熱用溶液(L)の沸騰温度を検出する液温検出部(5)と、
この液温検出部(5)の検出温度に基づき必要に応じて加熱処理槽(2)内へ有機物又は水を補給可能にする補給制御部(6)と
を有していることを特徴とする貯液温度の管理システム。
【請求項2】
前記補給制御部(6)は、液温検出部(5)の検出温度が加熱処理槽(2)内に設定した設定温度を逸脱したとき又は逸脱することを見越して加熱処理槽(2)内へ給水可能にさせる給水手段(15)を有していることを特徴とする請求項1記載の貯液温度の管理システム。
【請求項3】
前記補給制御部(6)の給水手段(15)は、液温検出部(5)の検出温度が加熱処理槽(2)内に設定した設定温度を逸脱したとき又は逸脱することを見越して加熱処理槽(2)内へ自動的に給水を開始すると共に、給水開始後に液温検出部(5)の検出温度が設定温度又は準設定温度に達した時点で給水手段(15)の給水を自動的に停止させるための給水制御部(13)を有していることを特徴とする請求項2記載の貯液温度の管理システム。
【請求項4】
前記補給制御部(6)の給水手段(15)は、加熱処理槽(2)内の加熱用溶液(L)が沸騰によって蒸発又は揮発する量を補給する範囲で加熱処理槽(2)内へ継続的に給水し、液温検出部(5)の検出温度が加熱処理槽(2)内に設定した設定温度を逸脱したとき又は逸脱することを見越して加熱処理槽(2)内への給水量を自動的に増加させると共に、給水開始後に液温検出部(5)の検出温度が設定温度又は準設定温度に達した時点で給水手段(15)の給水量を自動的に減少又は停止させるための給水制御部(13)を有していることを特徴とする請求項2記載の貯液温度の管理システム。
【請求項5】
前記出し入れ装置(3)は、食品の搬送用コンベアであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の貯液温度の管理システム。
【請求項6】
水和性の有機物と水とを混合させた加熱用溶液(L)を加熱処理槽(2)内に貯めると共にこの加熱用溶液(L)を加熱し、
加熱用溶液(L)の沸騰温度が所定の設定温度に到達したことを確認後に当該加熱用溶液(L)に被加熱物(W)を浸漬させると共に所定時間後に取り出すことを繰り返しつつ、
加熱用溶液(L)の沸騰状態が保持されるように加熱状態を管理し、
加熱用溶液(L)の沸騰温度を監視し、
加熱用溶液(L)の沸騰温度が設定温度を逸脱したとき又は逸脱することを見越して加熱処理槽(2)内へ有機物又は水を補給することによって加熱用溶液(L)の沸騰温度を設定温度に保持させる
ことを特徴とする貯液温度の管理方法。
【請求項7】
前記被加熱物(W)を加熱前の食品とすると共に有機物をグリセリンとして、加熱用溶液(L)の沸騰温度が設定温度を逸脱したとき又は逸脱することを見越して加熱処理槽(2)内へ水を補給することを特徴とする請求項6記載の貯液温度の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−207137(P2010−207137A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56516(P2009−56516)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(509069478)株式会社味きっこう (1)
【Fターム(参考)】