説明

貯湯式給湯システム

【課題】 外部熱源からの熱回収により蓄熱された貯湯槽の貯湯の熱量を最大限に活用し、結果として補助熱源機の燃料消費量を最小限に抑制し得る貯湯式給湯システムを提供する。
【解決手段】 貯湯槽3の貯湯温度が設定給湯温度よりも低くても、補助加熱路51から取り出した貯湯を補助熱源機6で加熱する一方、これに対し貯湯直接給湯路52から取り出した貯湯を合流点50で合流させて混合する。第1流量調整弁56及び第2流量調整弁57で双方の流量を調整することで、設定給湯温度に温調する。混合弁55で給水を混合させることなく、給湯栓7に給湯させることができる。給湯使用流量が低くて燃焼作動が困難であれば、第1の混合弁53で分岐給水路45からの給水を混合させて燃焼継続させればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスエンジンもしくは燃料電池等の冷却水排熱、ヒートポンプの冷媒が有する熱や、自然エネルギーの太陽熱等の外部熱源からの熱回収によって貯湯にして蓄熱し、蓄熱された貯湯を給湯に用いるようにした貯湯式給湯システムに関し、特に蓄熱された貯湯を最大限に活用し得るようにした技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、貯湯式給湯システムとして、ガスエンジンの冷却水排熱からの熱回収により加熱した湯を貯湯槽に貯湯するものが知られている(例えば特許文献1又は特許文献2参照)。特許文献1では、貯湯温度が設定給湯温度よりも高ければ、貯湯槽の頂部から取り出した湯と給水とを混合することにより設定給湯温度にした上で給湯する一方、貯湯温度が設定給湯温度よりも低ければ、補助熱源機の燃焼作動により加熱した湯と給水とを混合することにより設定給湯温度にした上で給湯することが開示されている。
【0003】
又、特許文献2では、ヒートポンプの冷媒との熱交換により貯湯槽に貯湯し、貯湯槽の貯湯と給水とを混合することにより給湯設定温度の給湯を行う一方、貯湯槽内の貯湯の湯切れが生じると判断された場合には、貯湯槽と並列に設けた補助熱源機の燃焼作動により給水を加熱し、加熱された湯を給湯に用いるようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−125300号公報
【特許文献2】特開2005−214452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、貯湯式給湯システムにおいては、貯湯による蓄熱を外部熱源の状態に依存しているため、外部熱源からの熱回収のバラツキにより蓄熱の程度にもバラツキが生じることから、従来より種々の改良が加えられてきている。しかしながら、従来の貯湯式給湯システムにおいては、折角蓄熱した貯湯を給湯において最大限に利用することはできず、補助熱源機による燃焼作動の増大により燃料消費量が増大してしまっているという不都合を抱えている。
【0006】
例えば、外部熱源である太陽熱をソーラー集熱器により集熱し、この集熱を貯湯槽に貯湯として蓄熱した上で、貯湯槽の貯湯を給湯に利用する場合の貯湯式給湯システムにおいては、季節の変化に伴う太陽熱からの熱回収のバラツキの影響を受けることになる。この場合、炎天下の多い夏場においては、ソーラー集熱器の高温水を積極的に貯湯槽に取り込むことができるため、その貯湯は設定給湯温度よりも高温になることが多く、給湯利用に際しては、補助熱源機を使用することなく、高温の貯湯に給水を混合して設定給湯温度に温調した上で給湯し得る。ところが、外気温が低くなる上に太陽光も弱くなる冬場においては、太陽光から十分な集熱を行い得ず、貯湯槽の貯湯は設定給湯温度以上にはならない場合が多くなるため、補助熱源機による燃焼作動でぬるま湯状態の貯湯を補助加熱した上で給湯に利用する場合が多くなる。
【0007】
この補助熱源機による補助加熱の際には、その補助熱源機である瞬間式給湯器の燃焼運転による結露発生防止のために、通常は60℃以上の温度まで加熱する必要があり、これに伴い、貯湯温度がぬるま湯状態であっても、燃焼作動させるには一旦は60℃以上まで加熱した上で、給水を混合して設定給湯温度まで低下させるということを行わねばならないことになる。この結果、熱回収により貯湯槽に貯湯として蓄熱された熱量を最大限に利よしているとは言い難い状況が生じている。
【0008】
さらに、近年普及してきている潜熱回収式の高効率型の給湯器を補助熱源機として用いる場合、その高効率型給湯器は入水の温度が高いほど熱効率の低下を招くという特性を有しているため、ぬるま湯(中温水)状態の貯湯を対象にして補助加熱する割合の高い太陽熱利用の貯湯式給湯システムにおいては、高効率型給湯器を適用するメリットが削がれるおそれがある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外部熱源からの熱回収により蓄熱された貯湯槽の貯湯の熱量を最大限に活用することにあり、その結果として補助熱源機の補助加熱による燃料消費量(加熱エネルギーの消費)を最小限に抑制し得るようにした貯湯式給湯システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、外部熱源からの熱回収により貯湯として蓄熱する貯湯槽と、補助熱源機と、この補助熱源機により補助加熱されて出湯した補助加熱湯又は上記貯湯槽内から取り出した貯湯に対し外部からの給水を混合した上で給湯させる第1の混合手段とを備えた貯湯式給湯システムを対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記貯湯槽の頂部から取り出した貯湯を上記補助熱源機に対し補助加熱のために供給する補助加熱路と、上記補助熱源機からの出湯路に介装されて上記第1の混合手段に供給される補助加熱湯の流量を調整する第1の流量調整手段と、上記貯湯槽の頂部から取り出した貯湯を上記第1の流量調整手段よりも下流側位置であって上記第1の混合手段の上流側位置の上記出湯路に合流させる貯湯直接給湯路と、この貯湯直接給湯路に介装されて上記出湯路に合流させる上記貯湯の流量を調整する第2の流量調整手段とを備えるようにした(請求項1)。
【0011】
本発明の場合、貯湯槽の貯湯を給湯に活用する上で、特に次のような給湯のさせ方が可能となり、これにより、貯湯槽の貯湯の熱量を最大限に活用することが可能となって、その結果として補助熱源機の補助加熱による燃料消費量を最小限に抑制し得ることとなる。すなわち、補助加熱路から取り出した貯湯槽の貯湯を対象にして補助熱源機で補助加熱する一方、この補助加熱した補助加熱湯に対し貯湯直接給湯路から取り出した上記貯湯槽の貯湯を合流させて混合するようにし、第1の流量調整手段により補助加熱湯の流量を、第2の流量調整手段により貯湯直接給湯路からの貯湯の流量を、それぞれ調整することで設定給湯温度に温調するようにする。つまり、最終的に給湯するための設定給湯温度への温調として、上記第1の混合手段での給水との混合を省略して、貯湯槽内の貯湯を混合させることにより行うようにするのである。これにより、たとえ貯湯槽内の貯湯温度が設定給湯温度よりも低くても、貯湯槽内の貯湯を100%使用して給湯することが可能となる一方、たとえ補助熱源機での補助加熱を使用するとはいえ、給水を混合することによる温調を行わないため、給水を混合して温調する場合と比べ、補助熱源機での燃焼量を低減することが可能となって、これにより、燃料使用消費量の低減化を図ることが可能となる。
【0012】
上記の貯湯式給湯システムにおいて、給湯制御手段を備え、給湯制御手段として、貯湯槽内の貯湯の温度と設定給湯温度との組み合わせにおいて給湯作動のために設定された制御モードとして、設定給湯温度との対比において高温、中温、低温に区分けした貯湯温度区分に基づき、貯湯温度が高温である場合に実行される貯湯直接給湯モードと、貯湯温度が中温である場合に実行される給水予熱給湯モードと、貯湯温度が低温である場合に実行される貯湯混合給湯モードとを備えるようにすることができる。この場合には、上記貯湯直接給湯モードとして、貯湯槽から貯湯直接給湯路を通して取り出した貯湯に対し上記第1の混合手段において給水を混合して設定給湯温度に温調した上で給湯する構成とし、上記給水予熱給湯モードとして、貯湯槽から補助加熱路を通して取り出した貯湯を補助熱源機により補助加熱し、補助加熱した補助加熱湯に対し上記第1の混合手段において給水を混合して設定給湯温度に温調した上で給湯する構成とし、上記貯湯混合給湯モードとして、貯湯槽から補助加熱路を通して取り出した貯湯を補助熱源機により補助加熱し、補助加熱した補助加熱湯に対し上記貯湯槽から貯湯直接給湯路を通して取り出した貯湯を合流させるようにし、その合流の際に、第1の流量調整手段と第2の流量調整手段との双方の流量調整によって設定給湯温度になるように温調した上で給湯する構成とすることができる(請求項2)。この場合、特に貯湯混合給湯モードの実行によって、本発明による上記の作用を具体的に実現し得る給湯制御が具体化されることになる。
【0013】
又、上記補助加熱路に第2の混合手段を介装し、上記第2の混合手段として、上記貯湯槽の頂部から取り出した貯湯と、外部からの給水とを混合した上で上記補助熱源機に対し補助加熱のために供給し得る構成とすることもできる。この場合には、上記給水予熱給湯モード又は貯湯混合給湯モードにおいて、補助熱源機に対し補助加熱のために供給する対象として、貯湯槽から取り出した貯湯のみならず、上記第2の混合手段により給水が混合されたものも選択可能とすることができることになる(請求項3)。このように選択可能とすることで、設定給湯温度と貯湯温度との温度差がごく小さい場合や、給湯使用流量があまりに低くて、貯湯だけを対象とすると補助熱源機が適正に燃焼作動させ得ないようなおそれの有る場合であっても、給水を混合したものを補助加熱の対象にすることで補助熱源機を適正に燃焼作動させて給湯を継続させ得ることになる。
【0014】
さらに、上記の第2の流量調整手段として閉止機能付きのもので構成することができる(請求項4)。このようにすることで、特に給水予熱給湯モードを実行する際に、第2の流量調整手段を閉状態に切換えれば、貯湯直接給湯路から出湯路への流入が阻止されるため、給水予熱給湯モードをより確実に実行させ得ることになる。第2の流量調整手段として閉止機能付きではないもので構成する場合には、補助加熱路に例えばポンプを介装し、ポンプ圧送させることにより貯湯直接給湯路から出湯路への流入を阻止させることが可能となる。従って、第2の流量調整手段を閉止機能付きのもので構成することで、補助加熱路に対するポンプの介装を省略することも可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように、本発明の貯湯式給湯システムによれば、補助加熱路から取り出した貯湯槽の貯湯を対象にして補助熱源機で補助加熱する一方、この補助加熱した補助加熱湯に対し貯湯直接給湯路から取り出した上記貯湯槽の貯湯を合流させて混合するようにし、その際に、第1の流量調整手段により補助加熱湯の流量を、第2の流量調整手段により貯湯直接給湯路からの貯湯の流量を、それぞれ調整することで設定給湯温度に温調するという給湯ができるようになる。つまり、最終的に給湯するための設定給湯温度への温調として、上記第1の混合手段での給水との混合を省略して、貯湯槽内の貯湯を混合させることにより行うようにすることができる。これにより、たとえ貯湯槽内の貯湯温度が設定給湯温度よりも低くても、貯湯槽内の貯湯を100%使用して給湯することができる一方、たとえ補助熱源機での補助加熱を使用するとはいえ、給水を混合することによる温調を行わないため、給水を混合して温調する場合と比べ、補助熱源機での燃焼量を低減することができ、これにより、燃料使用消費量の低減化を図り最小限に抑制することができるようになる。
【0016】
特に、請求項2によれば、給湯制御手段により、貯湯槽内の貯湯の温度と設定給湯温度との組み合わせにおいて設定した給湯のための制御モードとして、貯湯直接給湯モードと、給水予熱給湯モードと、貯湯混合給湯モードとを備えるようにすることで、特に貯湯混合給湯モードの実行によって、本発明による上記の効果を具体的に実現させることができるようになる。
【0017】
又、請求項3によれば、第2の混合手段を設けることによって、上記の給水予熱給湯モード又は貯湯混合給湯モードにおいて、補助熱源機に対し補助加熱のために供給する対象として、貯湯槽から取り出した貯湯のみならず、給水を混合したものも選択することができるようになる。これにより、設定給湯温度と貯湯温度との温度差がごく小さい場合や、給湯使用流量があまりに低くて、貯湯だけを対象とすると補助熱源機が適正に燃焼作動させ得ないようなおそれの有る場合であっても、給水を混合したものを補助加熱の対象にすることで補助熱源機を適正に燃焼作動させることができ、給湯を継続させることができるようになる。
【0018】
さらに、請求項4によれば、特に給水予熱給湯モードを実行する際に、第2の流量調整手段を閉状態に切換えることにより、貯湯直接給湯路から出湯路への流入を阻止することができ、給水予熱給湯モードをより確実に実行させることができるようになる。又、第2の流量調整手段を閉止機能付きのもので構成することにより、補助加熱路に対するポンプの介装を省略することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態を示す模式図である。
【図2】給湯制御に係るブロック図である。
【図3】貯湯直接給湯モードの場合の作動を説明するための図1対応図である。
【図4】給水予熱給湯モードの場合の作動を説明するための図1対応図である。
【図5】貯湯混合給湯モードの場合の作動を説明するための図1対応図である。
【図6】各給湯モードが実行される領域を説明するための設定給湯温度と貯湯温度との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る貯湯式給湯システムを示す。同図中の符号2は外部熱源としての太陽熱を集熱して貯湯槽3内の湯水との熱交換により貯湯として蓄熱する集熱回収回路、4は外部から水道水等を給水する給水回路、5は貯湯槽3からの貯湯又は補助熱源機6からの補助加熱後の湯を用いて給湯栓7に給湯する給湯回路、8は給湯回路5からの湯を暖房熱源とする暖房回路、9は同様に給湯回路5からの湯を追い焚き熱源とする風呂追い焚き回路、10はこの貯湯式給湯システムの作動制御を行うコントローラである。
【0022】
集熱回収回路2は、熱媒循環ポンプ21の作動により熱媒を熱媒循環路22を通してソーラー集熱器23と貯湯槽3内の貯湯熱交換器(例えばコイル型熱交換器)24との間で循環させるように構成されたものである。図1中の符号25は熱媒循環路22に介装された膨張タンクである。貯湯槽3は密閉式に構成され、適所(少なくとも頂部位置)に貯湯の温度を検出するための貯湯温度センサ31が設けられている。
【0023】
給水回路4は、主給水路41の上流端が外部の水道管等に接続され、下流端が逆止弁42を介して貯湯槽3の底部に接続されている。主給水路41の上流側から逆止弁43を介して分岐した混水用給水路44が給湯回路5の後述の第1混合弁55に対し給水可能に接続されている。又、主給水路41の下流側から分岐した分岐給水路45が同じく給湯回路5の後述の第2混合弁53に対し給水可能に接続されている。なお、図1の符号46は給水回路4により給水される水の温度を検出する給水温度センサである。
【0024】
給湯回路5は、貯湯槽3の頂部から出湯される貯湯が補助熱源機6に対し補助加熱のために供給される補助加熱路51と、上記貯湯がそのまま直接に出湯される貯湯直接給湯路52との2つに分岐可能とされている。補助加熱路51は、分岐給水路45からの給水との混合が可能な第2の混合手段としての第2混合弁53及び加熱ポンプ54を経て補助熱源機6に貯湯を導き、この補助熱源機6で補助加熱した上で最終温調用の第1の混合手段である第1混合弁55まで出湯路60を通して導くようになっている。この際、補助熱源機6と第1混合弁55との間の出湯路60で補助加熱後の湯(補助加熱湯)が閉止機能付きの第1の流量調整手段としての第1流量調整弁56を通過するようにされている。貯湯直接給湯路52は、途中に閉止機能付きの第2の流量調整手段としての第2流量調整弁57が介装され、下流端が上記の第1流量調整弁56の下流側の出湯路60に対し合流点50で合流することにより、上記の第1混合弁55に貯湯を給湯し得るようになっている。図1中の符号58は混合手段としての第1混合弁55の下流側位置において最終的に給湯される湯の給湯温度を検出する給湯温度センサであり、符号59は機器異常の発生等に起因する高温水の給湯を阻止して回避するための回避弁である。又、符号61は補助熱源機6により補助加熱された後の湯の温度を検出する加熱後温度センサである。
【0025】
暖房回路8は、暖房循環路81内の暖房用の循環熱媒を熱交換器82で液−液熱交換により加熱し、加熱した循環熱媒を高温暖房端末(例えば浴室乾燥機)83や、低温暖房端末(例えば床暖房)84に対し循環供給するようになっている。そして、上記の熱交換器82での液−液熱交換の加熱源(暖房熱源)として、補助熱源機6から出湯される加熱後の湯が熱交換器82の熱源側に循環供給されるようになっている。すなわち、補助熱源機6の下流側の出湯路60の分岐点80から分岐した熱源供給路85を通して熱源としての加熱後の湯が熱交換器82に暖房用熱源として供給され、液−液熱交換により温度低下した湯が三方切換弁86を経て分岐給水路45に導出され、この分岐給水路45を介して第2混合弁53に導かれた後、加熱ポンプ54を介して補助熱源機6に戻されて再加熱されるというように循環されることになる。又、熱交換器82での液−液熱交換により加熱された循環熱媒は、高温暖房端末83又は低温暖房端末84に供給されて放熱された後、膨張タンク87及び暖房ポンプ88を経て上記熱交換器82に戻されて再加熱されることになる。
【0026】
風呂追い焚き回路9は、追い焚きポンプ91を作動させることにより浴槽92内の湯水を追い焚き循環路93を通して熱交換器94との間で循環させ、この熱交換器94での液−液熱交換により追い焚き加熱するようになっている。熱交換器94の熱源側には、暖房回路8と同様に、補助熱源機6から出湯される加熱後の湯が分岐点90から分岐された熱源供給路95を通して追い焚き用の加熱源として循環供給され、熱交換器94での液−液熱交換により温度低下した湯が上記の三方切換弁86を経て分岐給水路45に導出され、以後、上記と同様に補助熱源機6に戻されて再加熱されるというように循環されることになる。
【0027】
以上の各回路2,5,8,9の運転作動は、リモコン101からの入力設定信号や操作信号の出力や、種々の温度センサ31,46,58,61等からの検出信号の出力を受けて、コントローラ10により作動制御されるようになっている。コントローラ10は、そのような作動制御のために、集熱回収制御部、給湯制御部、暖房制御部、あるいは、追い焚き制御部等の種々の制御を備えている。
【0028】
以下、主として本実施形態の特徴的な給湯制御について図2以降を参照しつつ説明する。図2は特に給湯制御部102を抜き出して図示したものであり、給湯制御部102は3種類の給湯モードと、これを切換処理する給湯モード切換処理部103とを備えたものである。3種類の給湯モードとは、貯湯直接給湯モード104と、給水予熱給湯モード105と、貯湯混合給湯モード106とのことである。
【0029】
貯湯直接給湯モード104は、貯湯槽3内に設定給湯温度よりも高温の高温水が貯湯されている場合、換言すれば十分な蓄熱量を有している場合に、貯湯槽3内の貯湯を直接に給湯として出湯するものである。この場合には、第1流量調整弁56を閉状態に維持したまま、第2流量調整弁57を開状態にする。給湯栓7がユーザにより開操作されると、図3(流れが生じる部分を太線で表示)に示すように、給水回路4の主給水路41から貯湯槽3の底部に給水され、この給水により貯湯槽3内の貯湯が頂部から押し出されて貯湯直接給湯路52及び第2流量調整弁57を通して第1混合弁55に出湯されることになる。貯湯温度センサ31からの貯湯温度などに基づいて第1混合弁55での混水用給水路44からの給水との混合比を設定し、給水との混合により、リモコン101に設定された設定給湯温度に温調した上で給湯栓7に給湯する。なお、上記混合比については給湯温度センサ58の給湯温度に基づいてフィードバック制御すればよい。
【0030】
給水予熱給湯モード105及び貯湯混合給湯モード106は、共に、貯湯槽3内の貯湯温度が設定給湯温度よりも低温である場合、換言すれば蓄熱量が不足している場合に適用される給湯モードのことであり、いずれの場合も補助熱源機6を燃焼作動させて補助加熱する。この内、給水予熱給湯モード105は貯湯槽3内の貯湯温度が設定給湯温度近傍か僅かに低温である場合に、貯湯混合給湯モード106は貯湯温度が設定給湯温度よりもかなり低温側である場合に、それぞれ適用される。
【0031】
給水予熱給湯モード105の場合には、第2流量調整弁57を閉状態に維持したまま、第1流量調整弁56を開状態にする。給湯栓7がユーザにより開操作されると、図4(流れが生じる部分を太線で表示)に示すように、給水回路4の主給水路41から貯湯槽3の底部に給水され、この給水により貯湯槽3内の貯湯が頂部から押し出されて加熱給湯路51及び第2混合弁53を通して補助熱源機6に供給されることになる。図示省略の流量センサにより所定流量以上の流れを検知した上で補助熱源機6が燃焼作動され、供給されたぬるま湯状態の貯湯が所定温度以上まで補助加熱される。この補助加熱された湯が開状態の第1流量調整弁56を通して第1混合弁55に出湯され、第1混合弁55において給湯温度センサ61からの給湯温度と、給水温度センサ46からの給水温度などに基づく所定の混合比での混水により設定給湯温度に温調されて給湯栓7に給湯されることになる。
【0032】
なお、補助熱源機6での補助加熱を行う場合には、補助熱源機6に供給される貯湯の温度があまり高いと不都合が生じるため、これを回避するために、給水予熱給湯モード105において、分岐給水路45からの給水を第2混合弁53で貯湯に混合して補助熱源機に供給される貯湯温度を低下させるようにしている。すなわち、補助熱源機6においては一定以上の最低燃焼量以上の燃焼作動が要求され、一定量未満の燃焼量になると燃焼制御不能となることから、貯湯温度を監視し、必要な場合には燃焼作動停止状態にならない最低限の量の給水を第2混合弁53において混合する制御も併せて行うようにしている。この意味で、第2混合弁53は最低限の給水のみを混合し得るようにするのが望ましく、混合弁の代わりに例えば三方切換弁を用いることも可能ではあるが、三方切換弁にするとその切換により給水のみの100%に切換えられてしまい、その分だけ貯湯の使用量が低減し、貯湯の活用度合の低下を招くことにつながってしまうことになるので、望ましいことではない。
【0033】
貯湯混合給湯モード106の場合には、補助熱源機6での補助加熱は行うものの、最終段階での第1混合弁55での混水は行わずに、ぬるま湯状態の貯湯を混合することにより設定給湯温度までの温調を行うようにするものである。このために第1流量調整弁56と第2流量調整弁57とによる流量調整を行う。すなわち、貯湯混合給湯モード106の場合には、第1流量調整弁56及び第2流量調整弁57を共に所定開度で開いた状態にする。そして、給湯栓7がユーザにより開操作されると、図5(流れが生じる部分を太線で表示)に示すように、給水回路4の主給水路41から貯湯槽3の底部に給水され、この給水により貯湯槽3内の貯湯が頂部から押し出されて加熱給湯路51及び貯湯直接給湯路52の双方に出湯されることになる。加熱給湯路51に出湯された貯湯は第2混合弁53を通して補助熱源機6に供給され、給水予熱給湯モードの場合と同様に所定流量以上の流量検知により補助熱源機6が燃焼作動される。この燃焼作動により、供給されたぬるま湯状態の貯湯が所定温度以上まで補助加熱されて第1流量調整弁56に供給され、加熱後の湯がその開度に対応する流量だけ下流側に通される。一方、貯湯直接給湯路52に出湯された貯湯は、第2流量調整弁57に供給され、その開度に対応する流量だけ下流側に通されて、合流点50において補助加熱された湯と合流・混合され、混合により温調された湯が第1混合弁55を素通りして、つまり混水用給水路44からの給水を混合させることなしに、給湯栓7に給湯されることになる。このような貯湯混合モード106の実行により、貯湯槽3内の貯湯(蓄熱)を最大限(100%)に活用することができるようになる。その上に、給水を混合することによる温調を行わないため、給水を混合して温調する場合(例えば上記の器椅子予熱給湯モード105の場合)と比べ、補助熱源機6での燃焼量を低減することができ、これにより、燃料使用消費量の低減化を図ることができるようになる。
【0034】
なお、この貯湯混合給湯モード106の場合には、補助加熱後の湯に対し給水の代わりに貯湯を混合することにより設定給湯温度への温調を行うようにしているため、貯湯温度と設定給湯温度との温度差があまりない場合や、あるいは、給湯栓7の開度か小さく給湯使用流量が少ない場合には、いずれも補助熱源機6を通過する流量がかなり少なくなって、燃焼作動に必要な最低作動流量をも下回るおそれが生じる。この場合には、上記の給水予熱給湯モード105に切換えて給湯を続行させることが可能となる。
【0035】
以上のように、給湯使用時に設定されている設定給湯温度と、そのときの貯湯温度との関係で、上記の3種類の給湯モードを給湯モード切換処理部103で切換えて実行させるようにすればよい。貯湯温度の高低傾向は日々の天候に左右される場合もあるものの、主としては季節変動に伴い貯湯温度の高低傾向が定まることになる。図6は給湯モードの切換の目安を示すものであり、設定給湯温度と貯湯温度との組み合わせにおいて、3種類の給湯モードに対応して3つの領域を設定したものである。貯湯温度が設定給湯温度に比してかなり高温であれば、貯湯直接給湯モード104に切換えて実行させればよく、逆に、貯湯温度が設定給湯温度よりもかなり低温であれば、貯湯混合給湯モード106に切換えて実行すればよい。貯湯温度が設定給湯温度よりも低いものの、近接している場合には、基本的には給水予熱給湯モード105を選択・実行すればよく、給水予熱給湯モード105を選択・切換するか、貯湯混合給湯モード106を選択・切換するかは、そのときの給湯使用流量との兼ね合いで定めるようにすればよい。
【0036】
図6に示した給湯モード切換の目安の例としては、給湯設定温度が例えば40℃の場合に、貯湯温度が40℃以上であれば貯湯直接給湯モード104に切換えて実行し、貯湯温度が40℃未満で30℃以上であれば給水予熱給湯モード105に切換えて実行し、貯湯温度が30℃未満であれば貯湯混合給湯モード106に切換えて実行する。
【0037】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では貯湯槽3に貯湯して蓄熱する熱回収の対象である外部熱源を太陽熱にした場合を示したが、これに限らず、外部熱源としてガスエンジン(エンジン冷却水排熱)、燃料電池(冷却水排熱)、あるいは、ヒートポンプ(冷媒の排熱)を用いて、貯湯にして蓄熱するようにしてもよく、このような場合においても本発明を適用することができる。
【0038】
又、集熱回収回路2による蓄熱を、貯湯槽3の内部に設置した貯湯熱交換器24で貯湯と熱交換させることによって行うようにしているが、これに限らず、例えば貯湯槽3の貯湯(湯水)を底部から導出して頂部に戻す循環路を設置し、この循環路の途中において集熱回収回路2等の熱回収回路により集熱(熱回収)した熱媒との熱交換を行うことにより蓄熱させるようにしてもよい。
【0039】
上記実施形態の貯湯式給湯システムでは加熱ポンプ54を介装しているが、第2流量調整弁57が閉止機能付きのもので構成されている場合には加熱ポンプ54を省略することもできる。第2流量調整弁57が閉止機能付きではなくて通常の流量調整のみの機能のもので構成されている場合には、給水予熱給湯モードの実行時には貯湯直接給湯路52からの流入を防止すべく加熱ポンプ54を作動させるようにすればよい。
【0040】
上記実施形態の貯湯式給湯システムでは、第1流量調整弁を閉止機能付きにしているが、暖房回路8や風呂追い焚き回路9が附属しない場合には、閉止機能付きである必要はなく、通常の流量調整機能を有するものでよい。すなわち、熱源循環路85,95に対し補助熱源機6からの補助加熱された湯を熱源として循環供給する際には、第1流量調整弁56を閉状態にする必要があるものの、熱源循環路85,95に対し熱源を循環供給する必要が無ければ閉止機能は不要になるからである。なお、貯湯直接給湯モードの実行の際には、補助加熱路51の側は補助熱源機6の存在等により抵抗があるため、第1流量調整弁56を閉止しなくても絞るだけで、貯湯槽3内の貯湯は貯湯直接給湯路52に流れるようになる。このため、第1流量調整弁56は必ずしも閉止機能付きである必要はなく、必須事項ではない。
【符号の説明】
【0041】
3 貯湯槽
6 補助熱源機
7 給湯栓
24 貯湯熱交換器
51 補助加熱路
52 貯湯直接給湯路
53 第1混合弁(第1の混合手段)
55 第2混合弁(第2の混合手段)
56 第1流量調整弁(第1の流量調整手段)
57 第2流量調整弁(第2の流量調整手段)
60 出湯路
102 給湯制御部(給湯制御手段)
103 給湯モード切換処理部
104 貯湯直接給湯モード
105 給水予熱給湯モード
106 貯湯混合給湯モード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部熱源からの熱回収により貯湯として蓄熱する貯湯槽と、補助熱源機と、この補助熱源機により補助加熱されて出湯した補助加熱湯又は上記貯湯槽内から取り出した貯湯に対し外部からの給水を混合した上で給湯させる第1の混合手段とを備えた貯湯式給湯システムであって、
上記貯湯槽の頂部から取り出した貯湯を上記補助熱源機に対し補助加熱のために供給する補助加熱路と、上記補助熱源機からの出湯路に介装されて上記第1の混合手段に供給される補助加熱湯の流量を調整する第1の流量調整手段と、上記貯湯槽の頂部から取り出した貯湯を上記第1の流量調整手段よりも下流側位置であって上記第1の混合手段の上流側位置の上記出湯路に合流させる貯湯直接給湯路と、この貯湯直接給湯路に介装されて上記出湯路に合流させる上記貯湯の流量を調整する第2の流量調整手段とを備えている
ことを特徴とする貯湯式給湯システム。
【請求項2】
請求項1に記載の貯湯式給湯システムであって、
給湯制御手段を備えており、
この給湯制御手段は、貯湯槽内の貯湯の温度と設定給湯温度との組み合わせにおいて給湯作動のために設定された制御モードとして、設定給湯温度との対比において高温、中温、低温に区分けした貯湯温度区分に基づき、貯湯温度が高温である場合に実行される貯湯直接給湯モードと、貯湯温度が中温である場合に実行される給水予熱給湯モードと、貯湯温度が低温である場合に実行される貯湯混合給湯モードとを備え、
上記貯湯直接給湯モードは、貯湯槽から貯湯直接給湯路を通して取り出した貯湯に対し上記第1の混合手段において給水を混合して設定給湯温度に温調した上で給湯するように構成され、
上記給水予熱給湯モードは、貯湯槽から補助加熱路を通して取り出した貯湯を補助熱源機により補助加熱し、補助加熱した補助加熱湯に対し上記第1の混合手段において給水を混合して設定給湯温度に温調した上で給湯するように構成され、
上記貯湯混合給湯モードは、貯湯槽から補助加熱路を通して取り出した貯湯を補助熱源機により補助加熱し、補助加熱した補助加熱湯に対し上記貯湯槽から貯湯直接給湯路を通して取り出した貯湯を合流させるようにし、その合流の際に、第1の流量調整手段と第2の流量調整手段との双方の流量調整によって設定給湯温度になるように温調した上で給湯するように構成されている、貯湯式給湯システム。
【請求項3】
請求項2に記載の貯湯式給湯システムであって、
上記補助加熱路には第2の混合手段が介装され、上記第2の混合手段は、上記貯湯槽の頂部から取り出した貯湯と、外部からの給水とを混合した上で上記補助熱源機に対し補助加熱のために供給し得るように構成され、
上記給水予熱給湯モード又は貯湯混合給湯モードにおいて、補助熱源機に対し補助加熱のために供給する対象として、貯湯槽から取り出した貯湯のみならず、上記第2の混合手段により給水が混合されたものも選択可能とされている、貯湯式給湯システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の貯湯式給湯システムであって、
上記第2の流量調整手段は閉止機能付きのもので構成されている、貯湯式給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−236713(P2010−236713A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82755(P2009−82755)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】