説明

貯湯式給湯器

【課題】エネルギー利用効率を向上させることが可能な貯湯式給湯器を提供する。
【解決手段】足し湯保温開始時に、水位センサ53で浴槽Bの水位H1を検出し浴槽Bの水量V1を算出し、風呂サーミスタ55で浴水温度Θ1を検出する。V1,Θ1から全浴水の熱量Q1を算出する。目標温度Θt,目標水量Vtから温度Θtの浴水を水位Htまで浴槽Bに満たすに必要な必要熱量Qtを算出する。Qt−Q1及びVt−V1から浴槽Bに供給する温水の調湯温度Θsを算出する。出湯サーミスタ5が検出する出湯温度Θh及び給水サーミスタ9が検出する冷水温度Θcに基づき、湯張り路31の温水温度が調湯温度Θsとなるよう風呂混合弁41を制御し、湯張り水量センサ46で検出される流量に基づき浴槽Bに供給される温水量が必要給水量Vt−V1となるよう湯張り電磁弁45の開閉制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成層式貯湯タンクに貯湯した温水を風呂などに給湯する貯湯式給湯器に関し、特に、風呂の保温時の貯湯タンクで貯湯された温水の熱の利用効率を高めた貯湯式給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から成層式貯湯タンクに蓄熱し給湯や暖房を行う貯湯式給湯器が広く用いられている。「成層式貯湯タンク」とは、1つのタンク内で温度の低い水が下に、温度の高い水が上にある温度成層を形成させて貯湯する貯湯タンクである。風呂の追焚き機能を備えた成層式貯湯タンクを用いた貯湯式給湯器としては、例えば、特許文献1〜3に記載のものが公知である。
【0003】
(1)図7は、特許文献1の図1に記載の貯湯式給湯器の配管構成図である。尚、図7は、追焚きに関係する配管構成部分のみを抜粋してある。この貯湯式給湯器は、蓄熱のための成層式貯湯タンクを備えたタンク・ユニットと、ヒートポンプを備えたヒートポンプ・ユニットの2つのユニットから構成されている。貯湯タンク下部の温度の低い水は、沸上げポンプP1によりヒートポンプ・ユニットに送られ、ヒートポンプ・ユニットにおいて大気から集熱した熱により加熱される。加熱された高温水は貯湯タンク上部に戻され、貯湯タンク上部が高温、下部が低温の温度成層が形成される。風呂の追焚き時には、風呂循環ポンプP3により浴槽内に溜められた浴水を追焚き用熱交換器の二次側に循環させるとともに、追焚き用循環ポンプP2により貯湯タンク上部の高温水を追焚き用熱交換器の一次側を通して貯湯タンク下部に戻す。これにより、貯湯タンク上部の高温水の熱が浴水に移熱され、浴水の追焚きがなされる。
【0004】
(2)図8は、特許文献2の図1に記載の貯湯式給湯器の配管構成図である。尚、図8は、追焚きに関係する配管構成部分のみを抜粋してある。図8の貯湯式給湯器も、図7と同様、成層式貯湯タンクを備えたタンク・ユニットとヒートポンプ・ユニットとの2つのユニットから構成されている。図7と同様に、ヒートポンプ・ユニットにより貯湯タンク内の水には上部が高温、下部が低温の温度成層が形成される。この貯湯式給湯器では、貯湯タンク内上部に浴水が循環し貯湯タンク上部の水と浴水との熱交換を行う風呂熱交換器を備えている。風呂の追焚き時には、風呂循環ポンプP3により浴槽内に溜められた浴水を風呂熱交換器を通して浴槽に戻す循環を行う。これにより、浴水の沸き上げが行われる。
【0005】
(3)図9は、特許文献3の図1に記載の貯湯式給湯器の配管構成図である。図7,図8と同様、ヒートポンプ・ユニットにより貯湯タンク内の水には上部が高温、下部が低温の温度成層が形成される。この貯湯式給湯器は、図7,図8と異なり追焚き用熱交換器や風呂熱交換器を具備していない。追焚き配管には、この配管内に浴槽内の浴水を循環させる風呂循環ポンプが配設されており、風呂循環ポンプ上流側の追焚き配管内には風呂戻りサーミスタ、風呂循環ポンプ下流側の追焚き配管内には風呂往きサーミスタが設けられている。風呂戻りサーミスタにより、浴槽内の浴水温度が検出される。この浴水温度が設定温度よりも低下すると、風呂の追焚きが開始される。風呂の追焚き時には、給水電磁弁が開弁され、貯湯タンク下部に水を供給することにより、貯湯タンク上部の高温水を湯張り配管、追焚き配管を通して浴槽内に供給される。このとき、浴槽に供給される湯の温度は、風呂混合弁により冷水と高温水との混合比を調整することによって調節される。浴槽の水位が設定水位を超えると、追焚き配管に設けられた排水弁が開弁され、過剰な浴水が排水され、浴槽の水位が設定水位に維持される。浴槽内の浴水温度が設定温度に達すると、給水電磁弁が閉止され、追焚き動作が終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−94848号公報
【特許文献2】特開2009−138966号公報
【特許文献3】特開2011−127876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の貯湯式給湯器のうち、特許文献1,2(図7,図8)のタイプのものは、ともに浴水と貯湯タンクとの高温水とを熱交換器により熱交換させることにより浴水を加熱し追焚きを行うものである。従って、浴水との熱交換によって貯湯タンクの高温水(約60℃以上の水)は奪熱され中温水(約20〜40℃程度の水)となる。従って浴水の追焚きを行うと貯湯タンクには中温水が蓄積されることになるが、この中温水は給湯に使用するには温度が不足しており給湯に直接使用することができず再沸き上げが必要となり、エネルギーの無駄が生じてしまうという問題がある。また、貯湯タンク内の中温水をヒートポンプ・ユニットで沸き上げる場合、入水温度が高いためにヒートポンプの成績係数(COP:Coefficient Of Performance)が低下し熱効率が悪くなるという問題がある。
【0008】
一方、特許文献3(図9)のタイプの貯湯式給湯器は、貯湯タンクの高温水を浴槽に直接足し湯することによって浴水の温度を上げるものである。このタイプの貯湯式給湯器では、貯湯タンク内に中温水が蓄積されることがないため、上述のような問題は生じない。しかしながら、足し湯によって浴槽の水位が設定水位に達しても浴水温度が設定温度まで達しない場合には、追焚き配管の排水弁から余分な浴水が排水されるため、排水により熱が捨てられることになり、システム全体としての熱効率が低下するという問題がある。また、追焚き時の無駄な排水により水の無駄遣いが生じ、水道コストも高くなるという問題もある。一方、浴槽の水位が設定水位に達する前に浴水温度が設定温度に達すると、浴槽の水位が設定水位より低い状態で停止し、足し湯後の水位が一定しないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記のような問題点を解決又は緩和し、よりエネルギー利用効率を向上させることが可能な貯湯式給湯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る貯湯式給湯器の第1の構成は、内部に温度成層を形成させ温水を貯留する貯湯タンクと、
一端が前記貯湯タンク上部に接続された出湯路と、
外部から冷水を供給する給水路と、
前記出湯路の温水と前記給水路の冷水とを任意の割合で混合する風呂混合弁と、
一端が前記風呂混合弁に接続され、他端が前記浴槽に連通する湯張り路と、
前記湯張り路に配設された開閉弁である湯張り弁と、
前記湯張り路を流れる水の流量を検出する湯張り水量センサと、
前記浴槽内の水位を検出する水位センサと、
前記浴槽内の浴水の温度を検出する風呂温度センサと、
前記浴槽内の浴水の目標温度Θtを設定する風呂温度設定手段と、
前記浴槽内の目標水位Htを設定する水位設定手段と、
足し湯保温の開始を指示する足し湯保温開始信号を出力する開始信号発生手段と、
前記足し湯保温開始信号が出力されると、前記水位センサにより前記浴槽内の水位H1を検出し、当該水位H1に基づき前記浴槽内の現水量V1を算出する風呂水量検出手段と、
前記足し湯保温開始信号が出力されると、前記風呂温度センサにより浴水温度Θ1を検出する風呂温度検出手段と、
前記現水量V1と前記浴水温度Θ1から浴槽内の全浴水の熱量Q1を算出する全熱量演算手段と、
前記目標水位Htから目標水量Vtを算出し、前記目標温度Θt及び前記目標水量Vtから、前記目標温度Θtの浴水を前記目標水位Htまで前記浴槽に満たすのに必要な必要熱量Qtを算出する必要熱量演算手段と、
前記目標水量Vtと前記現水量V1との差分である必要給水量Vt−V1、及び前記必要熱量Qtと前記熱量Q1の差分である不足熱量Qt−Q1を算出し、前記不足熱量Qt−Q1及び前記必要給水量Vt−V1から前記浴槽に供給すべき温水の調湯温度Θsを算出する給湯温量算出手段と、
前記湯張り路の温水温度が前記調湯温度Θsとなるよう前記風呂混合弁を制御するとともに、前記湯張り水量センサで検出される流量に基づき前記浴槽に供給される温水量が前記必要給水量Vt−V1となるよう前記湯張り弁の開閉制御を行う足し湯保温制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、開始信号発生手段が足し湯保温開始信号を出力すると浴水の足し湯保温動作が開始する。まず、風呂水量検出手段により浴槽内の現水量V1が算出され、風呂温度検出手段により浴水温度Θ1が検出される。次に、全熱量演算手段により現在の浴槽内の全浴水の熱量Q1が算出される。次に、必要熱量演算手段により必要給水量Vt−V1及び不足熱量Qt−Q1が算出され、これらから浴槽に供給すべき温水の調湯温度Θsが算出される。そして、足し湯保温制御手段は湯張り路の温水温度が調湯温度Θsとなるよう風呂混合弁を制御し、必要給水量Vt−V1となるよう湯張り弁の開閉制御を行う。これにより、貯湯タンクから必要十分な量の高温水が浴槽に補給されるため、システム全体としての熱利用効率を最大にすることができる。また、足し湯保温を行った後は、浴槽の水位が設定水位となり、足し湯後の浴槽の水位を常に設定水位に保つことができる。また、特許文献3の貯湯式給湯器のような浴水の無駄な排水をなくすことができ、熱や水の無駄をなくすことができる。また、貯湯タンクに中温水を戻すこともないため、上述したようなエネルギーの無駄もなくすことができる。
【0012】
本発明に係る貯湯式給湯器の第2の構成は、前記第1の構成において、両端が浴槽に接続され前記浴槽内の浴水が循環する浴水循環路と、
前記浴水循環路内に浴水を循環させる風呂循環ポンプと、を備え、
前記風呂温度センサは、浴水循環路内の浴水の温度を検出するものであり、
前記風呂温度検出手段は、前記足し湯保温開始信号が出力されると、前記風呂循環ポンプを所定の時間起動し前記風呂温度センサにより浴水温度Θ1を検出することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、風呂温度検出手段は、足し湯保温開始信号が出力されると、風呂循環ポンプを所定の時間起動し浴槽内の浴水を擾乱する。これにより、浴槽内の浴水に温度成層が生じていた場合には温度成層が壊されて浴水温度が平均化される。この平均化された浴水温度Θ1を風呂温度センサにより検出することで、全熱量演算手段による全浴水の熱量Q1の演算を精度よく行うことが可能となる。
【0014】
本発明に係る貯湯式給湯器の第3の構成は、前記第1又は2の構成において、前記開始信号発生手段は、前記水位センサが検出する水位H1が前記目標水位Htから所定の距離だけ下がったときに、前記足し湯保温開始信号を出力することを特徴とする。
【0015】
この構成により、浴槽の水位が目標水位Htから所定の距離だけ下がると自動的に足し湯足し湯保温が行われ、浴槽の水位と温度を設定水位・設定温度近傍に安定的に保つことができる。
【0016】
本発明に係る貯湯式給湯器の第4の構成は、前記第1乃至3の何れか一の構成において、前記開始信号発生手段は、前記水位センサが検出する水位H1が所定の時間継続して一定の値を維持した後に水位H1の変化が検出されたときに、前記足し湯保温開始信号を出力することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、浴槽の水位H1が所定の時間継続して一定の値を維持した後に水位H1の変化が検出されたときに足し湯保温が開始される。すなわち、継続的に浴槽の水位H1が一定値を保ち続けている間は利用者が浴槽を使用していないと考えられるため、その間は足し湯保温が行われない。一方、水位H1が所定の時間継続して一定の値を維持した後に水位H1の変化が検出された場合には、利用者が浴槽の使用を開始したと考えられるため、この利用者の浴槽使用開始のイベントをトリガとして足し湯保温を行う。これにより、前の利用者の入浴と次の利用者の入浴の間の時間が長時間にわたった場合、その間の時間に無駄な足し湯保温が行われることが防止され、浴槽からの無駄な熱散逸を抑えることができる。
【0018】
ここで、「所定の時間」は、自由に設定することが可能であるが、浴槽が使用されていない状態を判定するための時間であるため、通常は10分から30分程度とするのがよい。「水位H1の変化が検出」とは、水位H1の低下だけでなく水位H1の増加の場合も含む。利用者が浴槽から浴水を汲み出した場合には水位H1が低下し、利用者が浴槽内に入った場合には水位H1が上昇するからである。
【0019】
本発明に係る貯湯式給湯器の第5の構成は、前記第1乃至4の何れか一の構成において、前記浴槽が設置された浴室内又は当該浴室に隣接する脱衣室の人の有無を検出する人感センサを備え、
前記開始信号発生手段は、所定の時間継続して前記人感センサが人の存在を検出しない状態が続いた後に、前記人感センサが人の存在を検出したときに、前記足し湯保温開始信号を出力することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、継続的に浴室内又は当該浴室に隣接する脱衣室に人のいない状態が続いた後に人感センサにより浴室内又は脱衣室に人が入ったことが検出されたときに、足し湯保温が開始される。これにより、前の利用者の入浴と次の利用者の入浴の間の時間が長時間にわたった場合、その間の時間に無駄な足し湯保温が行われることが防止され、浴槽からの無駄な熱散逸を抑えることができる。
【0021】
本発明に係る貯湯式給湯器の第6の構成は、前記第1乃至5の何れか一の構成において、前記貯湯式給湯器の動作又は設定の指示の入力を行うリモコンを備え、
前記開始信号発生手段は、所定の時間継続して前記リモコンへの入力がない状態が続いた後に、前記リモコンにより動作又は設定の指示が入力されたときに、前記足し湯保温開始信号を出力することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、継続的に入力のない状態が続いた後に利用者によりリモコンが操作された場合、浴室の利用が開始されたと判定されるため、足し湯保温が開始される。これにより、前の利用者の入浴と次の利用者の入浴の間の時間が長時間にわたった場合、その間の時間に無駄な足し湯保温が行われることが防止され、浴槽からの無駄な熱散逸を抑えることができる。
【0023】
本発明に係る貯湯式給湯器の第7の構成は、前記第1乃至6の何れか一の構成において、前記浴槽が設置された浴室の照明のオン・オフを検出する照明スイッチング検知手段を備え、
前記開始信号発生手段は、前記照明スイッチング検知手段が前記照明のオンへの切り替えを検出したときに、前記足し湯保温開始信号を出力することを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、照明スイッチング検知手段が照明のオンを検出した場合、浴室の利用が開始されたと判定されるため、足し湯保温が開始される。これにより、前の利用者の入浴と次の利用者の入浴の間の時間が長時間にわたった場合、その間の時間に無駄な足し湯保温が行われることが防止され、浴槽からの無駄な熱散逸を抑えることができる。
【0025】
本発明に係る貯湯式給湯器の第8の構成は、前記第1乃至7の何れか一の構成において、前記浴槽が設置された浴室の照度を検出する浴室照度センサを備え、
前記開始信号発生手段は、前記浴室照度センサが検出する照度の時間変分量が所定の閾値を超えたときに、前記足し湯保温開始信号を出力することを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、浴室照度センサが検出する照度の時間変分量が所定の閾値を超えた場合、浴室の利用が開始されたと判定されるため、足し湯保温が開始される。これにより、前の利用者の入浴と次の利用者の入浴の間の時間が長時間にわたった場合、その間の時間に無駄な足し湯保温が行われることが防止され、浴槽からの無駄な熱散逸を抑えることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、貯湯タンクに中温水を戻すことなく足し湯保温を行うため、貯湯タンク内に給湯に利用できない中温水が蓄積されることがなく、エネルギーの無駄が生じることを回避することができる。また、足し湯保温時に浴槽に供給する高温水の量を必要最小限にすることができるため、システム全体としての熱効率を向上させることができる。また、利用者が入浴していない時間帯に無駄に足し湯保温を実行することを避けることができるため、浴槽からの熱散逸によるエネルギーロスを最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例1に係る貯湯式給湯器の配管構成を表す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る貯湯式給湯器の制御構成を表すブロック図である。
【図3】実施例1に係る貯湯式給湯器の足し湯保温時の動作を表すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例2に係る貯湯式給湯器の動作を表すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例3に係る貯湯式給湯器の制御構成を表すブロック図である。
【図6】本発明の実施例3に係る貯湯式給湯器の動作を表すフローチャートである。
【図7】特許文献1の図1に記載の貯湯式給湯器の配管構成図である。
【図8】特許文献2の図1に記載の貯湯式給湯器の配管構成図である。
【図9】特許文献3の図1に記載の貯湯式給湯器の配管構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0030】
(1)配管構成
図1は、本発明の実施例1に係る貯湯式給湯器の配管構成を表す図である。本発明の貯湯式給湯器は、貯湯・給湯機能を備えたタンク・ユニット1と、お湯の沸上げ機能を備えたヒートポンプ・ユニット2を備えている。タンク・ユニット1には、成層式で貯湯を行う貯湯タンク3が設けられている。貯湯タンク3は円筒状のタンクであり、貯湯タンク3には、その下部から上部にかけてそれぞれの高さにおける貯湯タンク3内の水の温度を検出する残湯サーミスタ4a,4b,4c,4d,4eが設置されている。また、貯湯タンク3の缶体頂部には、貯湯タンク3頂部の水の温度を検出する出湯サーミスタ5が設置されている。
【0031】
貯湯タンク3の底部には、水道や井戸から冷水を給水するための給水路6が接続されている。給水路6には、上流側から、ストレーナ7、逆止弁8、給水サーミスタ9、及び減圧弁10が設けられている。給水サーミスタ9により、給水路に供給される冷水温度Θcが検出される。また、給水路6は、減圧弁10の下流側で2つの給水路6a,6bに分岐しており、一方の給水路6aが貯湯タンク3の底部に接続されている。この給水路6aにも逆止弁11が設けられている。
【0032】
また、貯湯タンク3内の水を沸き上げるため、貯湯タンク3とヒートポンプ・ユニット2との間で水を循環させる沸上循環路12が設けられている。沸上循環路12は、上流端が貯湯タンク3の底部に接続され、ヒートポンプ・ユニット2を経て、下流端が貯湯タンク3の頂部に接続されている。沸上循環路12上には、上流側から、排水弁13、沸上ポンプ14、接続管12a、ヒートポンプ給水サーミスタ15、水熱交換器16、ヒートポンプ出湯サーミスタ17、接続管12b、及び三方弁18が設けられている。尚、接続管12a,12bはタンク・ユニット1とヒートポンプ・ユニット2とを接続する配管であり、排水弁13、沸上ポンプ14、及び三方弁18はタンク・ユニット1側、ヒートポンプ給水サーミスタ15、水熱交換器16、及びヒートポンプ出湯サーミスタ17はヒートポンプ・ユニット2側にそれぞれ配設されている。三方弁18と貯湯タンク3の底部との間にはバイパス路19が設けられている。
【0033】
ヒートポンプ・ユニット2内には、大気から集熱してその熱により水熱交換器16に給熱するための熱媒循環路20が設けられている。熱媒循環路20内には、アンモニアや二酸化炭素等の冷媒が循環する。熱媒循環路20には、水熱交換器16、膨張弁21、蒸発器22、及び圧縮機23がこの順序で配設されており、通常のヒートポンプ・サイクルが形成されている。蒸発器22により大気から吸収された熱は水熱交換器16により沸上循環路12を循環する水に与熱され、これにより貯湯タンク3の上部から高温水が蓄積され温度成層が形成される。
【0034】
貯湯タンク3の頂部には、タンク内の高温水を取水するための出湯路25が接続されている。出湯路25に出湯される高温水の出湯温度Θtは、出湯サーミスタ5により検出される。出湯路25には、貯湯タンク3内の過大な圧力を放圧するための放圧路26が接続されている。放圧路26には、膨張水三方弁27及び過圧逃し弁28が配設され、膨張水三方弁27は給水路6aに接続されている。貯湯タンク3内の圧力が一定以上増加すると、膨張水が放圧路26を通って過圧逃し弁28から排水されタンク内圧が過圧にならないように対策が施されている。
【0035】
出湯路25は、下流側が2つに分岐しており、一方が逆止弁32を介して給湯混合弁33の入口ポートに接続され、他方が逆止弁40を介して風呂混合弁41の入口ポートに接続されている。
【0036】
給湯混合弁33のもう一方の入口ポートには逆止弁36を介して給水路6bが接続されており、出湯路25から供給される高温水と給水路6bから供給される冷水とが給湯混合弁33で混合される。給湯混合弁33の出口ポートには、給湯栓(図示せず)へ給湯を行うための配管である給湯路30が接続されている。給湯路30上には、上流側(給湯混合弁33に接続された側)から、給湯水量センサ34、及び給湯サーミスタ35がこの順序で配設されている。給湯水量センサ34は給湯路30を通過する水量を検出する流量センサであり、給湯サーミスタ35は給湯路30を通過する温水の温度を検出する温度センサである。
【0037】
一方、風呂混合弁41のもう一方の入口ポートには給水路6bが接続されており、出湯路25から供給される高温水と給水路6bから供給される冷水とが風呂混合弁41において任意の割合で混合される。風呂混合弁41の出口ポートには、浴槽Bへ給湯を行うための配管である湯張り路31が接続されている。湯張り路31は、下流側が浴水循環路50を介して浴槽Bに連通している。湯張り路31上には、上流側(風呂混合弁41に接続された側)から、複合水弁42及び湯張りサーミスタ43が設けられている。湯張りサーミスタ43は、湯張り路31を通過する温水の温度を検出する温度センサである。複合水弁42は、湯張り電磁弁44、逆止弁45、湯張り水量センサ46、逆止弁47、及び排水弁48により構成された複合弁である。これらは、風呂混合弁41の側から、湯張り電磁弁44、逆止弁45、湯張り水量センサ46、及び逆止弁47の順に接続されている。また、湯張り電磁弁44及び逆止弁45をバイパスしてバイパス管路49が形成されており、このバイパス管路49に排水弁48が設けられている。
【0038】
湯張り電磁弁44は開閉弁であり、湯張り路31を流れる温水の通断を行う。湯張り水量センサ46は、湯張り路31を流れる温水の水量を検出する流量センサである。湯張りサーミスタ43は、湯張り路31を流れる温水の調湯温度Θsを検出する温度センサである。
【0039】
浴水循環路50は、両端が接続アダプタ51により浴槽Bに接続された、浴水を循環させるための配管である。浴水循環路50には、浴槽B内の浴水を浴水循環路50に循環させるための風呂循環ポンプ52が設けられている。また、風呂循環ポンプ52の吸入側の浴水循環路50上には、上流側から、水位センサ53、水流スイッチ54、及び風呂サーミスタ55がこの順序で配設されている。また、湯張り路31は、水循環路50の風呂循環ポンプ52吐出側に接続されている。尚、湯張り路31の接続位置は、風呂循環ポンプ52の吸入側とすることもできる。また、接続アダプタに風呂温度センサ(風呂サーミスタ55)を組み込んだ構成とすることもできる。
【0040】
水位センサ53は、浴水の圧力を検出することにより浴槽B内の浴水の水位H1を検出する圧力センサである。水流スイッチ54は、浴水循環路50に浴水が流れているときにONとなるスイッチであり、浴水の循環を検出するために使用される。風呂サーミスタ55は、浴水循環路50を流れる浴水の浴水温度Θ1を検出する温度センサである。
【0041】
(2)制御構成
図2は、本発明の実施例1に係る貯湯式給湯器の制御構成を表すブロック図である。図2において、タンク・ユニット1、出湯サーミスタ5、給水サーミスタ9、風呂混合弁41、湯張り電磁弁44、湯張り水量センサ46、風呂循環ポンプ52、水位センサ53、及び風呂サーミスタ55は、図1の同符号の構成部分に対応している。
【0042】
タンク・ユニット1内には、タンク・ユニット1の制御を行うための回路が搭載された制御基板60が設けられており、制御基板60に対して利用者が指示を入力するためのリモコン61が、タンク・ユニット1の外付けとして設けられている。
【0043】
リモコン61は、浴槽B内の浴水の目標温度Θtを設定する風呂温度設定部62と、浴槽B内の目標水位Htを設定する水位設定部63を備えている。また、制御基板60は、設定条件メモリ65、水量換算テーブル66、開始信号発生部67、風呂水量検出部68、風呂温度検出部69、全熱量演算部70、必要熱量演算部71、給湯温量演算部72、及び足し湯保温制御部73を備えている。
【0044】
設定条件メモリ65は、風呂温度設定部62によって設定される目標温度Θtや水位設定部63により設定される目標水位Htを記憶する不揮発性のメモリである。水量換算テーブル66は、水位センサ53により検出される浴水の水圧から浴槽B内の浴水の水位を換算するための水位及び水量を換算するためのルックアップ・テーブル又は近似曲線式が記憶された不揮発性のメモリである。これらのルックアップ・テーブル又は近似曲線式は、貯湯式給湯器の設置時に、施工業者が実測することにより設定される。
【0045】
開始信号発生部67は、足し湯保温の開始を指示する足し湯保温開始信号を出力する回路である。本実施例においては、開始信号発生部67は、水位センサ53が検出する水位H1が、設定条件メモリ65に設定された目標水位Htから所定の距離ΔHthだけ下がったときに、足し湯保温開始信号を出力する。
【0046】
風呂水量検出部68は、開始信号発生部67により足し湯保温開始信号が出力されると、水位センサ53により浴槽B内の水位H1を検出し、当該水位H1に基づき浴槽B内の現水量V1を算出する。風呂温度検出部69は、開始信号発生部67により足し湯保温開始信号が出力されると、風呂循環ポンプ52を所定の時間起動して浴水循環路50に浴水を循環させ、浴槽B内の浴水を混合した後に、風呂サーミスタ55により浴水温度Θ1を検出する。
【0047】
全熱量演算部70は、風呂水量検出部68が算出する現水量V1と、風呂水量検出部68が検出する浴水温度Θ1から、浴槽B内の全浴水の熱量Q1を算出する。必要熱量演算部71は、設定条件メモリ65に設定された目標水位Htから目標水量Vtを算出し、設定条件メモリ65に設定された目標温度Θtと算出された目標水量Vtから、目標温度Θtの浴水を目標水位Htまで浴槽Bに満たすのに必要な必要熱量Qtを算出する。給湯温量演算部72は、目標水量Vtと現水量V1との差分である必要給水量Vt−V1、及び必要熱量Qtと熱量Q1の差分である不足熱量Qt−Q1を算出し、不足熱量Qt−Q1及び必要給水量Vt−V1から浴槽Bに供給すべき温水の調湯温度Θsを算出する。足し湯保温制御部73は、湯張り路31の温水温度が調湯温度Θsとなるよう風呂混合弁41を制御するとともに、湯張り水量センサ46で検出される流量に基づき浴槽Bに供給される温水量が必要給水量Vt−V1となるよう湯張り電磁弁44の開閉制御を行う。
【0048】
(3)動作
以上のように構成された本実施例の貯湯式給湯器について、以下その足し湯保温時の動作を説明する。図3は、実施例1に係る貯湯式給湯器の足し湯保温時の動作を表すフローチャートである。
【0049】
(ステップS1) 利用者が入浴中に浴槽Bの浴水を汲み出して使用すると、浴槽B内の浴水の水位が低下する。開始信号発生部67は、水位センサ53により浴水の水圧を検出し、水量換算テーブル66を参照してこれを浴槽Bの水位H1に換算する。
【0050】
(ステップS2) 次いで、開始信号発生部67は、設定条件メモリ65に設定された目標水位Htを参照し、検出した水位H1が目標水位Htから所定の距離ΔHthだけ低下したか否かを判定する。ここで、H1>Ht−ΔHthならばステップS1に戻り、H1≦Ht−ΔHthならば、開始信号発生部67は足し湯保温開始信号を出力し、次のステップS3に進む。
【0051】
(ステップS3,S4) 足し湯保温開始信号が入力されると、風呂温度検出部69は、風呂循環ポンプ52を起動するとともに、内部に設けられたタイマ(カウンタ)をリセットした後スタートする。
【0052】
(ステップS5) 風呂温度検出部69は、タイマにより計測される時間tが所定の時間T1(例えば、30秒)に達したかどうかを判定する。t≦T1の場合はそのまま時間カウントを継続し、t>T1となると次のステップS6へ移行する。
【0053】
(ステップS6,S7) 風呂温度検出部69は、風呂循環ポンプ52を停止して、風呂サーミスタ55により浴水温度Θ1を検出する。また、風呂水量検出部68は、浴水の水圧が安定するまでの時間(例えば、30秒)だけ待って、水位センサ53により浴水の水圧を検出し、水量換算テーブル66を参照してこれを浴槽B内の浴水の水量V1に換算する。
【0054】
(ステップS8) 次に、全熱量演算部70は、浴槽B内の浴水の水量V1と浴水温度Θ1から、浴槽B内の浴水の全熱量Q1=V1・Θ1を算出する。
【0055】
(ステップS9,S10) 次に、必要熱量演算部71は、設定条件メモリ65に設定された目標水位Htを読み出し、水量換算テーブル66を参照して、これを目標水量Vtに換算する。次いで、設定条件メモリ65に設定された目標温度Θtを読み出し、
目標温度Θt及び目標水量Vtから、浴槽Bに目標温度Θtの浴水を目標水位Htまで満たしたときの全浴水の熱量である必要熱量Qt=Vt・Θtを算出する。
【0056】
(ステップS11) 次に、給湯温量演算部72は、目標水量Vtと現在の水量V1との差分である必要給水量Vt−V1、及び必要熱量Qtと現在の浴水の全熱量Q1との差分である不足熱量Qt−Q1を算出する。そして、不足熱量Qt−Q1と必要給水量Vt−V1に基づき、浴槽Bに供給する温水の調湯温度Θs=(Qt−Q1)/(Vt−V1)を算出する。
【0057】
(ステップS12) 次に、足し湯保温制御部73は、湯張り電磁弁44を開弁する。このとき、風呂循環ポンプ52の駆動能力が充分に大きい場合には、足し湯保温制御部73は、湯張り路31から浴槽Bに供給する温水と、浴槽B内の浴水とを充分に混合するために、風呂循環ポンプ52を起動させてもよい。足し湯保温制御部73は、湯張り出湯後、湯張りサーミスタ43又は風呂サーミスタ55で調湯温度Θsになるよう、風呂混合弁41の開度をフィードバック制御する。
【0058】
(ステップS13,S14) 次に、足し湯保温制御部73は、湯張り水量センサ46による流量を時間積算し、浴槽Bに供給された温水量Vsを算出し、供給温水量Vsが必要給水量Vt−V1に達したか否かを判定する。Vs≧Vt−V1となると、足し湯保温制御部73は、湯張り電磁弁44を閉止し、ステップS1に戻る。尚、このとき、風呂循環ポンプ52が起動している場合には停止する。
【0059】
以上のような動作により、浴槽Bには設定水位Htまで設定温度Θtの浴水が満たされ、足し湯保温が完了する。本実施例の貯湯式給湯器では、足し湯保温動作において貯湯タンク3からの高温水の給水を実施する前に、足し湯保温に必要な水量Vt−V1と調湯温度Θsを計算し、貯湯タンク3から必要十分な量の高温水を浴槽Bに補給するため、システム全体としての熱利用効率を最大にすることができる。また、足し湯保温を行った後は、浴槽Bの水位は設定水位Htとなり、足し湯保温/足し湯後の浴槽Bの水位を常に設定水位Htに保つことができる。また、貯湯タンク3に中温水を戻すことをしないため、貯湯タンク3内に中温水が蓄積されることによるエネルギーの無駄もなくすことができる。
【実施例2】
【0060】
実施例2では、浴槽の水位H1が所定の時間継続して一定の値を維持した後に水位H1の変化が検出されたときに足し湯保温が開始される貯湯式給湯器について説明する。尚、本発明の実施例2に係る貯湯式給湯器の配管構成及び機能構成は図9と同様であるため説明は省略する。
【0061】
図4は、本発明の実施例2に係る貯湯式給湯器の動作を表すフローチャートである。図4において、ステップS3〜S14までの動作に関しては、実施例1の図3と同様であるため説明は省略する。本実施例では、開始信号発生部67による足し湯保温開始条件の判定部分が実施例1と相違している。
【0062】
(ステップS21) まず、開始信号発生部67は、内部に備えたタイマをリセットした後、タイマのカウントを開始する。
【0063】
(ステップS22) 次に、開始信号発生部67は、水位センサ53により浴水の水圧を検出し、水量換算テーブル66を参照してこれを現時刻tにおける浴槽Bの水位H1(t)に換算する。
【0064】
(ステップS23) 次に、開始信号発生部67は、現時刻tにおける浴槽Bの水位H1(t)とその前の時刻t−1における浴槽Bの水位H1(t−1)とを比較し、水位H1が変化したか否かを判定する。H1(t)=H1(t−1)の場合には、ステップS22に戻り、H1(t)≠H1(t−1)の場合には、次のステップS24に移行する。
【0065】
(ステップS24) 次に、開始信号発生部67は、タイマがカウントした時間tが、所定の未使用判定時間T2を超えているかどうかを判定する。未使用判定時間T2とは、浴槽Bが使用されていない状態か否かを判定するための時間であり、通常は10分から30分程度に設定される。また、未使用判定時間T2はリモコン61により利用者が自由に設定できるようにしてもよい。t≦T2の場合、浴槽Bは使用継続中であると判定され、ステップS21に戻る。一方、t>T2の場合、浴槽Bの使用が開始されたと判定され、次のステップS3へ移行する。
【0066】
以下、ステップS3〜S14については、実施例1で説明した通りである。尚、ステップS7において風呂水量検出部68が浴槽B内の浴水の水量V1を演算する際には、H1(t)>H1(t−1)の場合、前の時刻t−1における浴槽Bの水位H1(t−1)を使用して水量V1を演算する。利用者が浴槽Bに入ったことにより水位H1が変化した場合には、現時刻tの水位H1(t)は利用者が浴水に浸かった体積分だけ上昇しているため、正味の水量V1は前の時刻t−1における水位H1(t−1)から計算すべきだからである。
【0067】
このように、本実施例では、浴槽の水位H1が所定の未使用判定時間T2以上継続して一定の値を維持した後に水位H1の変化が検出されたときに足し湯保温が開始される。すなわち、継続的に浴槽の水位H1が一定値を保ち続けている間は利用者が浴槽を使用していないと判定し、その間は足し湯保温が行われない。また、開始信号発生部67のタイマの計測時間が未使用判定時間T2に達していない場合も、浴槽Bは利用者により継続使用されていると判定し、足し湯保温が行われない。一方、水位H1が未使用判定時間T2以上継続して一定の値を維持した後に水位H1の変化が検出された場合には、利用者が浴槽の使用を開始したと判定し、この利用者の浴槽使用開始のイベントをトリガとして足し湯保温を行う。これにより、前の利用者の入浴と次の利用者の入浴の間の時間が長時間にわたった場合、その間の時間に無駄な足し湯保温が行われることが防止され、浴槽からの無駄な熱散逸を抑えることができる。また、利用者が浴槽の使用を開始した最初の時点で足し湯保温を行うため、利用者の入浴中は浴水が設定温度Θt付近まで上昇し、快適に入浴することができる。また、利用者が入浴し終わる直前で足し湯保温が始まるといったような無駄なエネルギー消費を防止することもできる。
【実施例3】
【0068】
本実施例3では、(1)人感センサが人の存在を検出したときに足し湯保温が開始される貯湯式給湯器、(2)リモコンにより動作又は設定の指示が入力されたときに足し湯保温が開始される貯湯式給湯器、(3)浴槽が設置された浴室の照明のオンを検出したときに足し湯保温が開始される貯湯式給湯器、及び(4)浴室の照度の時間変分量が所定の閾値を超えたときに足し湯保温が開始される貯湯式給湯器の例について説明する。尚、本発明の実施例3に係る貯湯式給湯器の配管構成は図1と同様であるため説明は省略する。
【0069】
図5は、本発明の実施例3に係る貯湯式給湯器の制御構成を表すブロック図である。図5において、制御基板60、リモコン61、風呂温度設定部62、水位設定部63、設定条件メモリ65、水量換算テーブル66、開始信号発生部67、風呂水量検出部68、風呂温度検出部69、全熱量演算部70、必要熱量演算部71、給湯温量演算部72、及び足し湯保温制御部73は、図2の同符号を付した構成部分に対応している。
【0070】
人感センサ80は、浴槽Bが設置された浴室内又は当該浴室に隣接する脱衣室内に設置されており、浴室又は脱衣室内の人の有無を検出するセンサである。照明スイッチング検出部81は、浴槽Bが設置された浴室の照明スイッチのオン・オフを検出する。浴室照度センサ82は、浴槽Bが設置された浴室の照度を検出する。
【0071】
図6は、本発明の実施例3に係る貯湯式給湯器の動作を表すフローチャートである。図4において、ステップS3〜S14までの動作に関しては、実施例1の図3と同様であるため説明は省略する。本実施例では、開始信号発生部67による足し湯保温開始条件の判定部分が実施例1と相違している。
【0072】
(ステップS31) まず、開始信号発生部67は、内部に備えたタイマをリセットした後、タイマのカウントを開始する。
【0073】
(ステップS32) 次に、開始信号発生部67は、足し湯保温開始イベントの検出を行う。ここで、「足し湯保温開始イベント」とは、足し湯保温動作を開始する条件となるイベントである。本実施例の場合、(1)人感センサ80により浴室又は脱衣室内に人が検出されたというイベント、(2)リモコン61により動作又は設定の指示が入力されたというイベント、(3)照明スイッチング検出部81により浴槽Bが設置された浴室の照明スイッチのオンへの切り替えが検出されたというイベント、(4)浴室照度センサ82により検出される浴室の照度の時間変分量が所定の閾値を超えたというイベントの何れかが「足し湯保温開始イベント」とされている。
【0074】
(ステップS33) 次に、開始信号発生部67は、現時刻tにおいて、上記の何れかの足し湯保温開始イベントが検出されたか否かを判定する。検出されなかった場合には、ステップS32に戻り、検出された場合には、次のステップS34に移行する。尚、上記(1)〜(4)の足し湯保温開始イベントのうち、(3),(4)の足し湯保温開始イベントが検出された際には、次のステップS3に移行する。
【0075】
(ステップS34) 次に、開始信号発生部67は、タイマがカウントした時間tが、所定の未使用判定時間T2を超えているかどうかを判定する。未使用判定時間T2とは、浴槽が使用されていない状態か否かを判定するための時間であり、通常は10分から30分程度に設定される。また、未使用判定時間T2はリモコン61により利用者が自由に設定できるようにしてもよい。t≦T2の場合、浴槽Bは使用継続中であると判定され、ステップS31に戻る。一方、t>T2の場合、浴槽Bの使用が開始されたと判定され、次のステップS3へ移行する。
【0076】
以下、ステップS3〜S14については、実施例1で説明した通りである。
【0077】
このように、本実施例では、(1)所定の未使用判定時間T2以上継続して人感センサ80が人の存在を検出しない状態が継続した後に人感センサ80が人の存在を検出したとき、(2)所定の未使用判定時間T2以上継続してリモコン61への入力を検出しない状態が継続した後にリモコン61により動作又は設定の指示が入力されたとき、(3)浴槽Bが設置された浴室の照明のオンへの切り替えを検出したとき、又は(4)浴室の照度の時間変分量が所定の閾値を超えたときに足し湯保温が開始される。すなわち、継続的に人感センサ80が人の存在を検出しない間、継続的にリモコン61への入力を検出しない間、浴室の照明がオフの間、又は浴室の照度が変化しない(照度が低い状態を維持している)間は利用者が浴槽Bを使用していないと判定し、その間は足し湯保温が行われない。また、(1),(2)の場合では、開始信号発生部67のタイマの計測時間が未使用判定時間T2に達していない場合も、浴槽Bは利用者により継続使用されていると判定し、足し湯保温が行われない。一方、(1)では、所定の未使用判定時間T2以上継続して人感センサ80が人の存在を検出しない状態が継続した後に人感センサ80が人の存在を検出した場合、(2)では、所定の未使用判定時間T2以上継続してリモコン61への入力を検出しない状態が継続した後にリモコン61により動作又は設定の指示が入力された場合、(3)では、浴槽Bが設置された浴室の照明のオンへの切り替えを検出した場合、(4)では、浴室の照度の時間変分量が所定の閾値を超えた場合に、利用者が浴槽Bの使用を開始したと判定し、この利用者の浴槽B使用開始のイベントをトリガとして足し湯保温を行う。これにより、前の利用者の入浴と次の利用者の入浴の間の時間が長時間にわたった場合、その間の時間に無駄な足し湯保温が行われることが防止され、浴槽Bからの無駄な熱散逸を抑えることができる。また、利用者が浴槽Bの使用を開始した最初の時点で足し湯保温を行うため、利用者の入浴中は浴水が設定温度Θt付近まで上昇し、快適に入浴することができる。また、利用者が入浴し終わる直前で足し湯保温が始まるといったような無駄なエネルギー消費を防止することもできる。
【符号の説明】
【0078】
1 タンク・ユニット
2 ヒートポンプ・ユニット
3 貯湯タンク
4a,4b,4c,4d,4e 残湯サーミスタ
5 出湯サーミスタ
6,6a,6b 給水路
7 ストレーナ
8,11,32,36,40,45,47 逆止弁
9 給水サーミスタ
10 減圧弁
12 沸上循環路
12a,12b 接続管
13,48 排水弁
14 沸上ポンプ
15 ヒートポンプ給水サーミスタ
16 水熱交換器
17 ヒートポンプ出湯サーミスタ
18 三方弁
19 バイパス路
20 熱媒循環路
21 膨張弁
22 蒸発器
23 圧縮機
25 出湯路
26 放圧路
27 膨張水三方弁
28 過圧逃し弁
30 給湯路
31 湯張り路
33 給湯混合弁
34 給湯水量センサ
35 給湯サーミスタ
41 風呂混合弁
42 複合水弁
43 湯張りサーミスタ
44 湯張り電磁弁
46 湯張り水量センサ
49 バイパス管路
50 浴水循環路
51 接続アダプタ
52 風呂循環ポンプ
53 水位センサ
54 水流スイッチ
55 風呂サーミスタ(風呂温度センサ)
60 制御基板
61 リモコン
62 風呂温度設定部
63 水位設定部
65 設定条件メモリ
66 水量換算テーブル
67 開始信号発生部
68 風呂水量検出部
69 風呂温度検出部
70 全熱量演算部
71 必要熱量演算部
72 給湯温量演算部
73 足し湯保温制御部
80 人感センサ
81 照明スイッチング検出部
82 浴室照度センサ
B 浴槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に温度成層を形成させ温水を貯留する貯湯タンクと、
一端が前記貯湯タンク上部に接続された出湯路と、
外部から冷水を供給する給水路と、
前記出湯路の温水と前記給水路の冷水とを任意の割合で混合する風呂混合弁と、
一端が前記風呂混合弁に接続され、他端が前記浴槽に連通する湯張り路と、
前記湯張り路に配設された開閉弁である湯張り弁と、
前記湯張り路を流れる水の流量を検出する湯張り水量センサと、
前記浴槽内の水位を検出する水位センサと、
前記浴槽内の浴水の温度を検出する風呂温度センサと、
前記浴槽内の浴水の目標温度Θtを設定する風呂温度設定手段と、
前記浴槽内の目標水位Htを設定する水位設定手段と、
足し湯保温の開始を指示する足し湯保温開始信号を出力する開始信号発生手段と、
前記足し湯保温開始信号が出力されると、前記水位センサにより前記浴槽内の水位H1を検出し、当該水位H1に基づき前記浴槽内の現水量V1を算出する風呂水量検出手段と、
前記足し湯保温開始信号が出力されると、前記風呂温度センサにより浴水温度Θ1を検出する風呂温度検出手段と、
前記現水量V1と前記浴水温度Θ1から浴槽内の全浴水の熱量Q1を算出する全熱量演算手段と、
前記目標水位Htから目標水量Vtを算出し、前記目標温度Θt及び前記目標水量Vtから、前記目標温度Θtの浴水を前記目標水位Htまで前記浴槽に満たすのに必要な必要熱量Qtを算出する必要熱量演算手段と、
前記目標水量Vtと前記現水量V1との差分である必要給水量Vt−V1、及び前記必要熱量Qtと前記熱量Q1の差分である不足熱量Qt−Q1を算出し、前記不足熱量Qt−Q1及び前記必要給水量Vt−V1から前記浴槽に供給すべき温水の調湯温度Θsを算出する給湯温量算出手段と、
前記湯張り路の温水温度が前記調湯温度Θsとなるよう前記風呂混合弁を制御するとともに、前記湯張り水量センサで検出される流量に基づき前記浴槽に供給される温水量が前記必要給水量Vt−V1となるよう前記湯張り弁の開閉制御を行う足し湯保温制御手段と、を備えた貯湯式給湯器。
【請求項2】
両端が浴槽に接続され前記浴槽内の浴水が循環する浴水循環路と、
前記浴水循環路内に浴水を循環させる風呂循環ポンプと、を備え、
前記風呂温度センサは、浴水循環路内の浴水の温度を検出するものであり、
前記風呂温度検出手段は、前記足し湯保温開始信号が出力されると、前記風呂循環ポンプを所定の時間起動し前記風呂温度センサにより浴水温度Θ1を検出することを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯器。
【請求項3】
前記開始信号発生手段は、前記水位センサが検出する水位H1が前記目標水位Htから所定の距離だけ下がったときに、前記足し湯保温開始信号を出力することを特徴とする請求項1又は2記載の貯湯式給湯器。
【請求項4】
前記開始信号発生手段は、前記水位センサが検出する水位H1が所定の時間継続して一定の値を維持した後に水位H1の変化が検出されたときに、前記足し湯保温開始信号を出力することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一記載の貯湯式給湯器。
【請求項5】
前記浴槽が設置された浴室内又は当該浴室に隣接する脱衣室の人の有無を検出する人感センサを備え、
前記開始信号発生手段は、所定の時間継続して前記人感センサが人の存在を検出しない状態が続いた後に、前記人感センサが人の存在を検出したときに、前記足し湯保温開始信号を出力することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一記載の貯湯式給湯器。
【請求項6】
前記貯湯式給湯器の動作又は設定の指示の入力を行うリモコンを備え、
前記開始信号発生手段は、所定の時間継続して前記リモコンへの入力がない状態が続いた後に、前記リモコンにより動作又は設定の指示が入力されたときに、前記足し湯保温開始信号を出力することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一記載の貯湯式給湯器。
【請求項7】
前記浴槽が設置された浴室の照明のオン・オフを検出する照明スイッチング検知手段を備え、
前記開始信号発生手段は、前記照明スイッチング検知手段が前記照明のオンへの切り替えを検出したときに、前記足し湯保温開始信号を出力することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一記載の貯湯式給湯器。
【請求項8】
前記浴槽が設置された浴室の照度を検出する浴室照度センサを備え、
前記開始信号発生手段は、前記浴室照度センサが検出する照度の時間変分量が所定の閾値を超えたときに、前記足し湯保温開始信号を出力することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一記載の貯湯式給湯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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