説明

貯留タンク

【課題】貯留タンク容量を可変にした貯留タンク60を提供すること。
【解決手段】 上部開口部から入れた粉体、粒体及び流体を含む内容物を貯留し、個別に伸縮可能な対向する側壁を備えた貯留タンク60を設け、一方の側壁を対向する他方の側壁より収縮させることにより側壁部から貯留タンク60内に粉粒体を供給でき、また貯留タンク60内に雨水が入りにくくなる。また、両側壁とも伸張することにより、貯留タンク60容積が増大し、肥料を貯留タンク60内に補給する場合に肥料搭載量を増加させることができる、また両側壁とも収縮することによる格納が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施肥装置(田植機)や薬剤散布装置等の粉粒体繰出し装置等に用いられる粉粒体などを貯留する貯留タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体貯留タンクは、その上面を開閉する蓋を備え、該蓋をあけて貯留タンク内部に肥料や薬剤などの粉粒体を収納し、必要なときに外部に取り出して使用する。たとえば、粉粒体貯留タンク内の粉粒体をその下側に設けた繰出部によって繰り出し、繰り出された粉粒体をエアチャンバから供給されるエアによって圃場まで搬送するようにした粉粒体繰出し装置の一部として利用する。前記粉粒体繰出し装置は田植機に付属した施肥機として用いることがある。
【0003】
前記施肥機は屋外で使用されることが多く、粉粒体貯留タンクの上蓋を屋外で開閉することも多くなる。
【0004】
なお、本明細書では施肥装置や薬剤散布装置の前進方向を向いて左右方向をそれぞれ左、右と言い、前進方向を前、後退方向を後と言うことにする。
【特許文献1】特開2004−81099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された粉粒体繰出し装置の粉粒体貯留タンクは、壁面を構成する部材が変形不能なプラスチック又は金属でできているため、貯留タンク容量は決まった大きさである。
【0006】
しかし、貯留タンクの用途又は貯留タンクを据え付ける田植機などの構成との関係から貯留タンク容量が一定であることが不便な場合がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、貯留タンク容量を可変にした貯留タンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、上部開口部から入れた粉体、粒体及び流体を含む内容物を貯留し、個別に伸縮可能な対向する側壁を備えた貯留タンク60により解決される。
【0009】
なお、本発明の貯留タンク60は肥料や薬剤などの粉体、粒体に限らず、固体、流体などの内容物を屋外で補充したり、入れ替えたりする場合に有用な貯留タンク60として利用できる。
【0010】
上記粉体と粒体は目安として直径が数センチメートル以下の不定形固形物であり、上記粉体は粒体より粒径が小さい固形物をいうこととし、流体とは液体又は固形物を含む液体をいうものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、貯留タンク60の一方の側壁を対向する他方の側壁より収縮させることにより側壁部から貯留タンク60内に粉粒体を供給でき、また貯留タンク60内に雨水が入りにくくなる。また、両側壁とも伸張することにより、貯留タンク60容積が増大し、肥料を貯留タンク60内に補給する場合に肥料搭載量を増加させることができる、また両側壁とも収縮することによる格納が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明の貯留タンク60を用いた一実施例である施肥装置を装着した施肥装置付き乗用型田植機を表している。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0013】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10、10及び左右一対の後輪11、11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13、13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13、13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10、10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18、18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18、18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11、11が取り付けられている。
【0014】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、第一ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13、13に伝達されて前輪10、10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18、18に伝達されて後輪11、11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構27によって施肥装置5へ伝動される。
【0015】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10、10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0016】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38、38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0017】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41、41を備えている。これらリンク40、41、41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム45の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダを油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0018】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を苗植付具52aで圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ53、53等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56、56がそれぞれ設けられている。これらフロート55、56、56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55、56、56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55、56、56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が上下動検出機構57により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0019】
施肥装置5は、肥料貯留タンク60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55、56、56の左右両側に取り付けた施肥ガイド63、…まで導き、施肥ガイド63、…の前側に設けた作溝体64、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。電動モータ66で駆動のブロア67で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ68を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0020】
以下、図3〜図8に示す施肥装置本体部の各部の構成について説明する。
肥料貯留タンク60は各条共用で、上部に開閉可能な蓋60aが取り付けられている。肥料貯留タンク60の下部は施肥条数分に分岐して漏斗状になっており、その下部が繰出部61、…の上端に接続されている。肥料貯留タンク60は、左右方向に長い施肥フレーム70に支持された左右2箇所の回動アーム71に取り付けられていて、この回動アーム71の下端部を支点に後方に回動させて繰出部61、…から分離させられるようになっている。回動アーム71は外側から1条目の繰出部と2条目の繰出部との間に配置されている(左右対称位置に2つ設けられている)。肥料貯留タンク60の下部を肥料繰出部61、…の上端に接続した通常位置では、係止具72により肥料貯留タンク60を固定しておく。
【0021】
繰出部61は、肥料貯留タンク60内の肥料を下方に繰り出す2個の繰出ロール73A、73Bを内蔵している。これらの繰出ロール73A、73Bは、外周部に溝状の凹部74、…が形成された回転体で、左右方向に設けた共通の繰出軸75の角軸部75a(図示例は四角軸)にそれぞれ一体回転するように嵌合している。繰出ロール73A、73Bが図6の矢印方向に回転することにより、肥料貯留タンク60から落下供給される肥料が凹部74に収容されて下方に繰り出される。両繰出ロール73A、73Bにより繰り出された肥料は、下端の吐出口61aから吐出される。
【0022】
図示例の繰出ロール73A、73Bの凹部の数は6個であり、両者の凹部の位相が異ならせてある。このため、両繰出ロール73A、73Bの凹部が交互に肥料を繰り出すこととなり、吐出口61aから吐出される肥料の量が時間的に均等化されている。いずれかの繰出ロール73A又は73Bを繰出軸75から外して位相を適当に変更して付け直すことにより、両繰出ロール73A、73Bの凹部の位相を等しくすることもできる。これで、圃場に点状に肥料を散布する場合に適用可能となる。
【0023】
また、繰出部61の内部には、凹部74が下方に移動する側(前側)の繰出ロール73の外周面に摺接するブラシ76が着脱自在に設けられている。このブラシ76によって繰出ロール73A、73Bの凹部74に肥料が摺り切り状態で収容され、繰出ロール73A、73Bによる肥料繰出量が一定に保たれる。
【0024】
さらに、ブラシ76の上側には、繰出ロール73A、73Bの上方に突出して肥料貯留タンク60から繰出部61に肥料が落下供給されないようにする繰出停止シャッタ77A、77B(図7)が設けられている。繰出停止シャッタ77A、77Bは、繰出部ケース78のスライド支持部79(図6)にスライド自在に支持されていて、ケース外の前端部に形成された把手77aをつかんでスライドさせるようになっている。
【0025】
繰出部61の吐出口61aには、前後方向に連通する接続管80(図3)が接続されている。そして、この接続管80の後端部に施肥ホース62(図5)が接続されている。施肥ホース62の外周螺旋溝に施肥フレーム70の下端部が係合しているので、施肥ホース62が接続管80から抜けにくい。一方、各条の接続管80の前端部はエアチャンバ68(図4、図5)の背面部に挿入連結されている。エアチャンバ68の左端部はエア切替管81を介してブロア67(図3、図4)に接続されており、該ブロア67からのエアがエアチャンバ68を経由し接続管80から施肥ホース62に吹き込まれるようになっている。なお、ブロア67は、図3、図4に仮想線で示すように、そのエア吐出口67aをエア切替管81から外して機体内方に回動収納できる構成としている。
【0026】
エアチャンバ68は、接続管80が取り付けられたゴム管68aと、中間部分の樹脂管68bとを交互に繋ぎ合わせて構成されている。この構成とすると、エアチャンバ68を簡単に分解、組み立てできるので、繰出部61を一体的に取り外してのメンテナンスが容易である。ゴム管68aの長さを一対の繰出部の間隔よりも長くしておくと、樹脂管68bからゴム管68aを抜きやすい。
【0027】
また、繰出部ケース78の背面部には、肥料貯留タンク60内の肥料を取り出すための肥料排出口83(図6)が形成されている。この肥料排出口83には、上端側を支点にして開閉自在な排出シャッタ84が取り付けられている。各繰出部の肥料排出口83は、繰出部61の後方に設けた左右方向に長い肥料回収管85に接続されている。肥料回収管85の左端部は、前記エア切替管81を介してブロア67に接続されている。エア切替管81は二股状の管であって、一方にエアチャンバ68が接続され、他方に肥料回収管85が接続されている。エア切替管81にはエア切替部としてのエア切替シャッタ86が設けられ、ブロア67から吹き出されるエアをエアチャンバ68側に供給する状態と肥料回収管85側に供給する状態とに切り替えられようになっている。エア切替シャッタ86はエアチャンバ68と肥料回収管85の間の前後中央部にあるので、両者へのエア供給が安定している。肥料回収管85の右端部は肥料回収口87になっている。
【0028】
図8は上記各シャッタ84、…、86の開閉機構を示す図である。肥料回収口87の近傍に肥料回収レバー90が回動自在に設けられている。この肥料回収レバー90の回動支点軸90aと同軸上に、繰出部61の前側に配置された左右方向に長いシャッタ開閉伝達軸91(図6)が設けられている。シャッタ開閉伝達軸91には扇形プレート92が取り付けられており、この扇形プレート92に形成された円弧状の長穴92aに、肥料回収レバー90に固着されたピン90bが遊嵌している。シャッタ開閉伝達軸91には各繰出部ごとに開閉ギヤ93が取り付けられ、該ギヤ93が排出シャッタ84の回動軸84aに取り付けた半円形ギヤ94と噛み合っている。なお、半円形ギヤ94の端部には当該ギヤ94の歯よりも径の大きいストッパ部94aが形成されているので、両ギヤ93、94の噛み合いが外れることはない。また、肥料回収レバー90には、エア切替ワイヤ95の一端が繋がれている。エア切替ワイヤ95の他端は、エア切替シャッタ86の回動軸86aに取り付けたアーム96に付勢手段である引張りスプリング97を介して繋がれている。
【0029】
肥料回収レバー90を回動操作すると、エア切替ワイヤ95が引かれてエア切替シャッタ86を切り替え、ブロア67から引き出されるエアが肥料回収管85に供給されるようになる。肥料回収レバー90の回動操作量が少ないうちは、ピン90bが長穴92aの中を移動するだけにすぎないので、シャッタ開閉伝達軸91は回動しない。しかしながら、肥料回収レバー90を一定量以上回動操作すると、ピン90bが扇形プレート92に係合し、シャッタ開閉伝達軸91が回動する。これにより、排出シャッタ84、…が開き、肥料貯留タンク60内の肥料が肥料回収管85に排出される。つまり、1本のレバー90の操作だけでエア切替シャッタ86及び排出シャッタ84、…を操作することができる。しかも、必然的に、始めにエアが肥料回収管85に供給され、その後で肥料が肥料回収管85に排出されるのである。このため、肥料回収管85での肥料の搬送が円滑に行われ、肥料回収管85での肥料詰まりが生じない。また、肥料回収レバー90が肥料回収口87の近傍に設けられているので、肥料回収容器等を肥料回収口87の下側に容易に確保でき、さらに肥料回収の状況を確認しながら作業を行え好都合である。
【0030】
肥料回収レバー90はレバーガイド98に沿って回動操作するようになっている。このレバーガイド98にはガイド穴98a、98bが形成されており、肥料回収レバー90の撓みを利用して肥料回収レバー90の係合部(図示せず)をガイド穴98a、98bに係合させることにより、肥料回収レバー90をエア切替シャッタ86だけが切り替えられる位置P1(図8)と、エア切替シャッタ86及び排出シャッタ84、…の両方が切り替えられる位置P2とに固定することができるようになっている。肥料回収レバー90を上記以外の位置にも停止させられるようにし、排出シャッタ84の開度を無段階又は段階的に調節できるようにしてもよい。
【0031】
従って、肥料回収時にはブロア67より気流搬送される肥料は肥料回収管85を流れ、排出口87からスムーズに肥料が排出される。
【0032】
なお、エア切替シャッタ86は上下方向を向く回動軸86aを中心に回動するので、エア切替シャッタ86の開閉操作時の抵抗が変動しない。また、肥料回収時には引張りスプリング97の張力に抗して強制的にエア切替シャッタ86を切り替えるようにしているので、肥料回収時におけるエア切替シャッタ86の気密性が良好である。
【0033】
図4に示す開閉ギヤ93と半円形ギヤ94との噛み合いに予め融通性を持たせておくと、各条のギヤの組み付けに多少の誤差があっても、各条の排出シャッタ84の動作タイミングに狂いが出ず、確実に排出シャッタ84が閉じるようにすることができる。
【0034】
一方、肥料回収レバー90を図8に示す施肥作業位置にすると「ON」になるスイッチを設けると共に、各畦クラッチレバー110L、110C、110R(図4)をクラッチ入り位置にすると「ON」になるスイッチを各々設けて、これらスイッチの検出により、肥料回収レバー90が肥料排出位置(肥料回収レバー90が施肥作業位置でない時)で全ての畦クラッチレバー110L、110C、110Rがクラッチ入りの時(施肥作業時)に、肥料回収レバー90が施肥作業位置でないことを警報するハンドル34下方のモニター部に設けたランプを点灯するか若しくはブザーを鳴らすように制御装置で制御している。これは、肥料回収レバー90を図8のP2位置にして肥料回収作業をした後、肥料回収レバー90をP2位置にしたまま、メインスイッチを切って作業を中断し、後に(後日)、施肥・植付け作業を行なう時に肥料回収レバー90をP2位置にしたまま施肥・植付け作業をすると施肥作業が行なえないまま植付け作業をしてしまう不具合を防止するためで、肥料回収レバー90をP2位置にしたままでメインスイッチを入れるとランプが点灯するか若しくはブザーが鳴って作業者に肥料回収レバー90が施肥作業位置になっていないことを知らせ、即座に作業者は肥料回収レバー90を施肥作業位置に操作して前記のような不具合を未然に防止でき作業性が良い。
【0035】
繰出部ケース78は、側面視で前下がりに傾斜した分割面F−F(図5)で、下側の固定部分78aと上側の離脱部分78bとに分割されている。繰出ロール73A、73B及び排出シャッタ84(肥料排出口83)は固定部分78aに設けられている。一方、ブラシ76及び繰出停止シャッタ77は離脱部分78bに設けられている。肥料貯留タンク60が接続される上部開口部及び吐出口61aは分割されていないので、両者の気密性が良好に保たれる。
【0036】
肥料貯留タンク60を最も後方に回動させると、側面視で前記離脱部分78bを離脱させる方向に投影した区域外に肥料貯留タンク60が位置するようになっている。このため、離脱部分78bを無理なく離脱させられる。また、分割面F−F(図5)の延長先はエアチャンバ68の上端よりも下側に位置するとともに、側面視で離脱部分78bを離脱させる方向に投影した区域外にエアチャンバ68が位置している。このため、離脱部分78bを取り外した状態で、走行車体2上から繰出ロール73A、73Bのメンテナンスを行いやすい。
【0037】
図9に上記肥料貯留タンク60の縦断面図(乗用型田植機の側断面図)を示す。貯留タンク60の対向する両側壁(施肥装置付き乗用型田植機に前後方向に配置された一対の側壁)は、それぞれ個別に伸縮可能な構成からなっている。図9(a)は両側壁とも収縮した状態、図9(b)は蓋を開けた状態、図9(c)は両側壁とも伸張した状態をそれぞれ示す。
【0038】
図9(b)に示すように、一方の側壁を対向する他方の側壁より収縮させることにより側壁部から貯留タンク60内に粉粒体を供給でき、蓋60aをあまり開けずに側方から粉粒体を供給できるので、また貯留タンク60内に雨水が入りにくくなる。また、図9(c)に示すように両側壁とも伸張することにより、貯留タンク60容積が増大し、肥料を貯留タンク60内に補給する場合に肥料搭載量を増加させることができる、また図9(a)に示すように両側壁とも収縮することによる格納が容易になる。
【0039】
図10に示す貯留タンク60の断面図は、貯留タンク60の上方開口部に蓋60aをしたまま、蓋60aの上に肥料袋101を搭載した例を示す。なお、図2には3つの肥料袋101を貯留タンク60の上に搭載した場合の田植機の平面図を示す。この場合は1つの肥料袋101が植付2条分(図1)に対応している。
【0040】
こうして、肥料の田植機への搭載量を多くすることができ、また多くの肥料を田植機に搭載しても貯留タンク60が機体の中央にあるため機体のバランスを損なうことがない。
【0041】
また、図10に示すように貯留タンク60内には上端にパイプ状の切り口を有するカッター102が設けられている。
該カッター102の上端の切り口102aは蓋体60aの穴を貫通して上方に突き出しており、この状態で肥料袋101を蓋体60aの上に置くと、切り口102aが肥料袋101を破り、袋内部の肥料がパイプ状の切り口102aから貯留タンク60内に補給される構成になっている。上述のように蓋体60aの穴を貫通して上方に突き出したカッター切り口102aが肥料袋101を破るので、肥料袋101を貯留タンク60上に容易に固定化できる。また、カッター切り口102aが傾斜面を有するエッジ状になっているので、肥料袋101を容易に破ることができる。さらに、貯留タンク60の蓋体60aとカッター切り口102aの間には隙間を設け、該隙間の外側の袋受け部に立ち上がり部60a1を設けておけば、前記隙間から水が貯留タンク60内に浸入することを防止できる。
【0042】
また、カッター基部は切り口102aのパイプ下端部に続く貯留タンク60の内部水平方向の断面積と同一面積を有する水平部102bを備え、該水平部102bは網体で構成されている。
上記構成により施肥装置への肥料搭載量を多くすることができ、肥料の補給も容易となる。
【0043】
また 図11には別実施例の貯留タンク60の縦断面図を示すが、蓋体60aの中央にそれぞれ肥料袋101に対応した数のカッター切り口先端部102aが貫通する穴60a2を設け、該穴60a2に取外し自在の栓60bを取り付けると、蓋60aを開けないで栓60bの取り外しだけで肥料袋101のカッティングを行うことができ、貯留タンク60内への肥料補給が容易に行える。また、図12に示すように蓋体60aの裏面に上方に窪んだ凹部60a3を設ける、当該凹部60a3にカッターの切り口102aが嵌り込むようにすると、蓋体60aを開放した時にカッターの切り口102aがタンク上面から突出しているので、肥料袋101をタンク上に載せてカッティングすることで肥料補給が容易に行える。
【0044】
カッターの切り口102aを貯留タンク繰出ローラ73A(73B)のほぼ中央上方に設置することで、貯留タンク60内で肥料がスムーズに繰出ローラ73A(73B)(図6)に向けて流れる。
【0045】
また、図示しないがカッターの切り口102aを田植機の苗植付条数分だけ設けると貯留タンク60内から圃場への肥料流れ性が良好となる。
【0046】
さらに図13に示すように貯留タンク60には比較的深い裏側空間を有する蓋体60aを設け、該蓋体60aを閉じても、カッターの切り口102aの先端が蓋体60aの裏側空間に収まるように配置し、肥料袋101を貯留タンク60の上面に置くときには予め蓋体60aを開けておく。この場合は肥料袋101のカッティング高さは貯留タンク60の上面と同じか又は貯留タンク60上面より低くなる。
【0047】
また図14には別実施例の貯留タンク60の蓋体60aにカッター部60a4を設けた構造を示す。図14(a)は蓋体60aのカッター部60a4の平面図、図14(b)は図14(a)のA−A線断面矢視図であり、カッター部60a4の先端部の切り口60a5を栓103で覆った状態を示す。なお蓋体60aには栓103を挿着するためのリング状突起60a7が設けられており、該リング状突起60a7の中央にはカッター部60a4がブリッジ60a6を介してリング状突起60a7 に支持される。
【0048】
このように、図13と図14に示す実施例ではカッター部60a4の先端部の切り口60a5を使用しない場合には該切り口60a5が貯留タンク60の蓋体60aでカバーされているので安全である。
【0049】
次に防雨タイプの肥料貯留タンク60を用いて貯留タンク60へ肥料を投入するための構成を採用した実施例を図15により説明する。
雨天時にも田植機の貯留タンク60に肥料を補給可能にするためには、バイザー型の屋根などを用いることが考えられるが、横降りの雨に会うと肥料補給時に貯留タンク60内に雨が入り込むことがあり、またバイザーが苗補給の妨げになるおそれがある。また、肥料袋101を田植機の貯留タンク60上に運ぶ段階で肥料袋101が濡れてしまうため、貯留タンク60への肥料補給の際に肥料が濡れるおそれがある。
【0050】
そこで、図15(a)の貯留タンク60部分の側面図に示す防雨タイプの肥料貯留タンク105に、納屋、軒下又は軽トラックのキャビン内等の雨を防げる場所で肥料を移しておき、該防雨型肥料貯留タンク105の脚105aを貯留タンク60の上にセットする。本実施例では防雨型肥料貯留タンク105の底部に設けた開口を開閉する蓋105bと貯留タンク60の上面に設けた蓋体60aの開口を開閉する蓋60a8をそれぞれノブ105b1,60a9で引っ張って開けるスライド式の開閉機構としている。
【0051】
防雨型肥料貯留タンク105の蓋105bと貯留タンク60の蓋60a8をそれぞれ引っ張って各開口を開けると防雨型肥料貯留タンク105から肥料が貯留タンク60に投入される。なお、図15(b)の貯留タンク60正面図に示すように、蓋60a8を設けた肥料投入用の開口の下方、すなわち貯留タンク60の内部に貯留タンク60の長手方向に肥料を分散可能なガイド60a10を設けておくと、細長い貯留タンク60の全体に比較的均一に肥料を投入することができる。
【0052】
図15に示す構成を採用すると、雨天時でも貯留タンク60内に肥料を補給することができる。またこの構成は現行で多く採用されている施肥機からの変更点が少なく、また苗補給の妨げにならない。
【0053】
また図16(a)の貯留タンク60の側面図と図16(b)の貯留タンク60の正面図に示すように、貯留タンク60の内部で肥料を全体にまんべんなく分散させるために送風機106とダクト107を設けた構成にしても良い。この場合は、貯留タンク60に送風機106を付設しておき、該送風機106からの送風を貯留タンク60内に送るダクト107と貯留タンク60内の蓋60a8を備えた開口の下方に設けた送風ダクト107を用いて貯留タンク60内に肥料を全体にまんべんなく分散させ、さらに図示しない肥料繰り出しロールから各苗の植付条に肥料を送ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば肥料や薬剤等の粉粒体を貯留した貯留タンク60内に雨水が入り込まないようにすることができる粉粒体貯留タンク60として、農業機械だけでなく、建設機械、物流機械などの貯留タンク60として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例の施肥装置付き乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の施肥装置付き乗用型田植機の平面図である。
【図3】図1の施肥装置の(a)肥料回収管部分を省略した背面図、及び(b)伝動関係を省略した背面図である。
【図4】図1の施肥装置の平面図である。
【図5】図1の施肥装置の一断面の側面断面図である。
【図6】図1の施肥装置の粉粒体繰出部の側面断面図である。
【図7】図6のS−S断面図である。
【図8】図1の施肥装置の肥料回収レバー及びその関連部材の側面図である。
【図9】図1の施肥装置等に使用できる貯留タンク60の実施例の縦断面図である。
【図10】貯留タンク60と肥料袋を配置した場合の実施例の縦断面図である。
【図11】貯留タンク60内にカッター配置した場合の実施例の縦断面図である。
【図12】貯留タンク60内にカッター配置した場合の実施例の縦断面図である。
【図13】貯留タンク60内にカッター配置した場合の実施例の縦断面図である。
【図14】貯留タンク60内にカッター配置した場合の実施例の平面図(図14(a))とその一部縦断面図(図14(b))である。
【図15】防雨型肥料貯留タンク60から肥料を貯留タンク60内に投入する構成の実施例の側面図(図15(a))と貯留タンク60正面図(図15(b))である。
【図16】貯留タンク60内にブロアで送風する場合の実施例の貯留タンク60側面図(図16(a))と貯留タンク60正面図(図16(b))である。
【符号の説明】
【0056】
1 施肥装置付き乗用型田植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 粉粒体繰出し装置(施肥装置) 10 前輪
11 後輪 12 ミッションケース
13 前輪ファイナルケース 15 メインフレーム
18 後輪ギヤケース 20 エンジン
21 第一ベルト伝動装置 23 HST
25 植付クラッチケース 26 植付伝動軸
27 施肥伝動機構 30 エンジンカバー
31 座席 32 フロントカバー
34 ハンドル 35 フロアステップ
36 リヤステップ 38 予備苗載台
40 上リンク 41 下リンク
42 リンクベースフレーム 43 縦リンク
44 連結軸 45 スイングアーム
46 昇降油圧シリンダ 50 伝動ケース
51 苗載台 51a 苗取出口
51b 苗送りベルト 52 苗植付装置
52a 苗植付具 53 線引きマーカ
55 センターフロート 56 サイドフロート
57 上下動検出機構
60 貯留タンク60(肥料貯留タンク60)
60a 蓋 60a1 蓋体立ち上がり部
60a2 蓋体穴 60a3 蓋体凹部
60a4 貯留タンク蓋体カッター部 60a5 カッター部切り口
60a6 ブリッジ 60a7 リング状突起
60a8 蓋 60a9,105b1 ノブ
60a10 ガイド 60b 栓
61 繰出部 61a 吐出口
62 施肥ホース 63 施肥ガイド
64 作溝体 66 電動モータ
67 ブロア 67a エア吐出口
68 エアチャンバ 68a ゴム管
68b 樹脂管 70 施肥フレーム
71 回動アーム 72 係止具
73、73A、73B 繰出ロール 74 凹部
75 繰出軸 75a 角軸部
76 ブラシ
77、77A、77B 繰出停止シャッタ
77a 把手 78 繰出部ケース
78a 固定部分 78b 離脱部分
79 スライド支持部 80 接続管
81 エア切替管 83 肥料排出口
84 排出シャッタ 84a 回動軸
85 肥料回収管 86 エア切替シャッタ
86a 回動軸 87 肥料回収口
90 肥料回収レバー 90a 回動支点軸
90b ピン 91 シャッタ開閉伝達軸
92 扇型プレート 92a 長穴
93 開閉ギヤ 94 半円形ギヤ
94a ストッパ部 95 エア切替ワイヤ
96 アーム 97 引張りスプリング
98 レバーガイド 98a、98b ガイド穴
101 肥料袋 102 カッター
102a カッター切り口 102b カッター水平部
103 栓 105 防雨タイプ肥料貯留タンク
105a 防雨型肥料貯留タンクの脚
105b 防雨型肥料貯留タンク開口用蓋
106 送風機 107 ダクト
110L、110C、110R クラッチレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口部から入れた粉体、粒体及び流体を含む内容物を貯留し、個別に伸縮可能な対向する側壁を備えたことを特徴とする貯留タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−121978(P2006−121978A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314515(P2004−314515)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】