説明

貯蔵安定性ポリマレイミド・プレポリマー組成物

本発明はアミン触媒の存在下におけるポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物、並びにジオキソランの進歩した反応からもたらされるポリマレイミド・プレポリマーを含む、貯蔵安定性の、進歩したポリイミド・プレポリマー組成物に関する。該貯蔵安定性の、進歩したポリイミド・プレポリマー組成物は、プレプレグ、積層板、印刷回路板、鋳造物、複合材料、成形品、接着剤および皮膜のような種々の適用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願との関係】
【0001】
本出願は、引用により本明細書に取り入れたこととされる、2008年3月31日出願の米国特許出願第61/040,956号に対する優先権を主張する。
【連邦支援研究、開発に関する陳述】
【0002】
適用できない。
【技術分野】
【0003】
本発明は貯蔵安定性の、改善ポリマレイミド・プレポリマー組成物およびそれらから製造されるプレプレグ製品のような製品に関する。貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物は、(i)アミン触媒の存在下におけるポリイミドおよびアルケニルフェノールまたはアルケニルフェノールエーテルの進歩した反応からもたらされるポリマレイミド・プレポリマー並びに(ii)ジオキソランを含む。
【背景技術】
【0004】
ビスマレイミドは重付加および重合製品の製造用原料として使用することができる。例えば、特許文献1は不飽和ビスマレイミドおよびアミンから製造される重付加生成物を開示しており(特許文献物1参照)、特許文献2はビスマレイミドおよび有機ジチオールからの重付加生成物の製造を記載しており(特許文献2参照)、特許文献3および4は重付加生成物を形成するための、触媒の存在下における多価フェノールおよび多価アルコールとのビスマレイミドの反応につき記載しており(特許文献3および4参照)、そして特許文献5はビスマレイミドおよびアルケニルフェノールまたはアルケニルフェノールエーテルから調製される重付加生成物につき記載している(特許文献5参照)。
【0005】
それらの熱安定性および優れた機械的特性のために、ビスマレイミドから製造される重付加生成物は種々のプレプレグ適用に使用することができる。粉末として供給される1つのこのような重付加生成物はビスマレイミド・ジフェニルメタンおよびメチレンジアニリンの反応生成物である。次に粉末の重付加生成物をプレプレグ使用のためにN−メチルピロリドンのような高沸点溶媒中に溶解することができる。しかしこのような溶液の安定度は、静置時に急速に起る沈殿および粘度増加により限定される。従って、溶液の調製は使用直前に実施しなければならない。
【0006】
特許文献6および7に開示された重付加生成物および溶液に改善が認められた(特許文献6および7参照)。特許文献6は、特定の反応時間に対し、そして特定の反応温度下で、特定モル量の塩基性触媒の存在下におけるポリマレイミドおよびアルケニルフェノールまたはアルケニルフェノールエーテルの反応から生成される重付加生成物を開示している(特許文献6参照)。生成される生成物は低沸点溶媒のメチルエチルケトン中における改善された溶解度および沈殿物の不在により証明されるような改善された貯蔵安定度を示す。貯蔵安定度の更なる改善は特許文献8に記載されており、そこでは、ポリマレイミドがアルケニルフェノールまたはアルケニルフェノールエーテルと反応された後にフェノチアジンまたはヒドロキノンが添加される(特許文献8参照)。しかし、重付加生成物は室温状態で貯蔵されると長期間重合し続けて、張り合わせ工程における使用中に樹脂流動性の減少をもたらす可能性がある。樹脂流動性が特定の地点を超えて減少すると、接着力が低下して、最終的には剥離に導く。従って、樹脂流動性低下を防止するために通常、冷蔵を必要とするが、それはプレプレグ使用者に対して経費が高価であり、かつ常に利用可能であるとは限らない。
【0007】
従って、それらから製造されるプレプレグ製品の熱および機械的特性に対して不都合な影響を伴わずに、冷蔵の必要を実質的に排除する、改善された貯蔵安定性の重付加生成物の組成物を提供することが本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,658,764号
【特許文献2】米国特許第3,741,942号
【特許文献3】米国特許第4,038,251号
【特許文献4】米国特許第4,065,433号
【特許文献5】米国特許第4,100,140号
【特許文献6】米国特許第5,189,128号
【特許文献7】米国特許第5,637,387号
【特許文献8】米国特許第5,637,387号
【発明の概要】
【0009】
発明の要約
本発明は(a)アミン触媒の存在下におけるポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物の進歩した(advancement)反応からもたらされるポリマレイミド・プレポリマー;並びに
(b)式(5)
【0010】
【化1】

【0011】
のジオキソラン:
を含んでなる貯蔵安定性の、進歩した(advanced)ポリマレイミド・プレポリマー組成物に関する。
【0012】
貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物は、アミン触媒の存在下でポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物を高められた温度で反応させて、ポリマレイミド・プレポリマーを形成し、実質的にすべてのアミン触媒を除去し、そしてその後、ジオキソランを添加する工程により調製することができる。他の態様において、プレプレグまたは積層構造物は本発明の貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物で含浸された布帛または繊維を硬化することにより調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1−2】種々の貯蔵温度における改善ポリマレイミド・プレポリマー組成物の長期間の安定度を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物は一般的に(i)アミン
触媒の存在下におけるポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物の進歩した反応からもたらされるポリマレイミド・プレポリマー並びに(ii)ジオキソランを含む。驚くべきことには、ポリマレイミド・プレポリマーに対するジオキソランの添加が更なる進行を妨げ、それにより更なる重合を回避または著しく減少させ、そして従ってプレポリマー組成物の貯蔵安定度を実質的に改善することが見いだされた。本発明の貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物は、加工条件に不都合な効果を伴わずに、長期間にわたり、室温または室温より更に高い温度においてすら貯蔵することができ、従って、低温における貯蔵、例えば冷蔵状態の必要を回避することができる。「室温」により約20℃の温度を意味する。更に、ジオキソランの使用は驚くべきことには、組成物の他の加工特徴を改善し、例えばポットライフ(pot−life)を延長し、そして揮発物含量を減少させる。
【0015】
適用可能なポリイミドは、そのRが水素またはメチルである、少なくとも2個の、式
【0016】
【化2】

【0017】
の基を含む。
【0018】
他の態様において、ポリイミドはポリマレイミド、好ましくは式
【0019】
【化3】

【0020】
[式中、Rは水素またはメチルであり、そしてXは−C2n−(ここでn=2〜20)、−CHCHSCHCH−、フェニレン、ナフタレン、キシレン、シクロペンチレン、1,5,5−トリメチル−1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン、1,4−ビス−(メチレン)−シクロヘキシレン、または式(a)
【0021】
【化4】

【0022】
(式(a)中、RおよびRは独立して塩素、臭素、メチル、エチルまたは水素であり、そしてZは直接結合、メチレン、2,2−プロピリデン、−CO−、−O−、−S−、−SO−または−SO−である)の基である]
のビスマレイミドである。好ましくは、Rはメチルであり、Xはヘキサメチレン、トリメチルヘキサメチレン、1,5,5−トリメチル−1,3−シクロヘキシレン、または説明された式(a)[ここでZはメチレン、2,2−プロピリデンまたは−O−であり、そしてRおよびRは水素である]の基である。
【0023】
ポリイミドの例は、N,N’−エチレン−ビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレン−ビスマレイミド、N,N’−m−フェニレン−ビスマレイミド、N,N’−p−フェニレン−ビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルメタン−ビスマレイミド、N,N’−4,4’,3,3’−ジクロロ−ジフェニルメタン−ビスマレイミド、N,N’−4,4’−(ジフェニルエーテル)−ビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルスルホン−ビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジシクロヘキシルメタン−ビスマレイミド、N,N’−α,4,4’−ジメチレンシクロヘキサン−ビスマレイミド、N,N’−m−キシレン−ビスマレイミド、N,N’−p−キシレン−ビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルシクロヘキサン−ビスマレイミド、N,N’−m−フェニレン−ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルメタン−ビスシトラコンイミド、N,N’−4,4’−2,2−ジフェニルプロパン−ビスマレイミド、N,N’−α,1,3−ジプロピレン−5,5−ジメチル−ヒダントイン−ビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルメタン−ビスイタコンイミド、N,N’−p−フェニレン−ビスイタコンイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルメタン−ビスジメチルマレイミド、N,N’−4,4’−2,2’−ジフェニルプロパン−ビスジメチルマレイミド、N,N’−ヘキサメチレン−ビスジメチルマレイミド、N,N’−4,4’−(ジフェニルエーテル)−ビスジメチルマレイミドおよびN,N’−4,4’−ジフェニルスルホン−ビスジメチルマレイミドを含む。
【0024】
適用可能なアルケニルフェノールおよびアルケニルフェノールエーテルはアリルフェノール、メタリルフェノールまたはそれらのエーテルを含むことができる。好ましくは、アルケニルフェノールおよびアルケニルフェノールエーテルは式(1)〜(4):
【0025】
【化5】

【0026】
[式中、Rは直接結合、メチレン、イソプロピリデン、−O−、−S−、−SO−または−SO−である]、
【0027】
【化6】

【0028】
[式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはC〜C10アルケニル、好ましくはアリルまたはプロペニルであり、ただしR、RまたはRの少なくとも1個はC〜C10アルケニルである]、
【0029】
【化7】

【0030】
[式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはC〜C10アルケニル、好ましくはアリルまたはアルケニルであり、ただしR、R、RまたはRの少なくとも1個はC〜C10アルケニルであり、そしてRは式(1)中に定義されたようなものである];並びに
【0031】
【化8】

【0032】
[式中、R、R、R10、R11、R12およびR13はそれぞれ独立して水素、C〜CアルキルおよびC〜C10アルケニル、好ましくはアリルまたはプロペニルであり、ただしR、R、R10、R11、R12およびR13の少なくとも1個はC〜C10アルケニルであり、そしてbは0〜10の整数である]
の化合物である。更に、式(1)〜(4)の化合物の混合物を使用することもできる。
【0033】
アルケニルフェノールおよびアルケニルフェノールエーテル化合物の例は、O,O’−ジアリル−ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジアリルジフェニル、ビス(4−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジアリルフェニル)プロパン、O,O’−ジメタリル−ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメタリルジフェニル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メタリルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメタリルフェニル)−プロパン、4−メタリル−2−メトキシフェノール、2,2−ビス(4−メトキシ−3−アリルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メトキシ−3−メタリルフェニル)プロパン、4,4’−ジメトキシ−3,3’−ジアリルジフェニル、4,4’−ジメトキシ−3,3’−ジメタリルジフェニル、ビス(4−メトキシ−3−アリルフェニル)メタン、ビス(4−メトキシ−3−メタリルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−メトキシ−3,5−ジアリルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メトキシ−3,5−ジメタリルフェニル)プロパン、4−アリルベラトロールおよび4−メタリル−ベラトロールを含む。
【0034】
アルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物はポリイミド1モル当たり約0.05モル〜2.0モルの間の範囲で使用することができる。他の態様において、アルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物はポリイミド1モル当たり約0.1モル〜1.0モルの間の範囲で使用することができる。
【0035】
適用可能なアミン触媒は、第三級、第二級および第一級アミンまたは、異なるタイプの幾つかのアミノ基を含むアミンおよび第四級アンモニウム化合物を含む。アミンはモノアミンまたはポリアミンのいずれでもよく、ジエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリアミルアミン、ベンジルアミン、テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジイソブチルアミノアセトニトリル、N,N−ジブチルアミノアセトニトリル、複素環式塩基(例えば、キノリン、N−メチルピロリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾールおよびそれらの同族体)並びに更にメルカプトベンゾチアゾールを含むことができる。列挙することができる適当な第四級アンモニウム化合物の
例は、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドおよびベンジルトリメチルアンモニウムメトキシドである。トリプロピルアミンが好ましい。
【0036】
アミン触媒は進歩した反応体の総重量当たり約0.1%〜10重量%間の範囲で使用することができる。他の態様において、存在するアミン触媒は改善反応体の総重量当たり約0.2%〜5重量%間の範囲で使用することができる。
【0037】
ポリマレイミド・プレポリマーの製法は、ポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物を混合し、そして透明な溶融体がえられるまで、混合物を約25℃〜150℃の温度に加熱する工程を含む。次にアミン触媒を添加し、約100℃〜140℃の温度で適当な時間にわたり反応を継続し、そこですべてのアミン触媒が減圧除去される。進歩の度合いは125℃で0〜100ポアズ目盛を使用して樹脂溶融体の粘度を測定することによりモニターすることができ、進歩したポリマレイミド・プレポリマーに対しては20〜85ポアズの範囲に入ることができる。ゲル化時間もまた、更なるパラメーターとして使用することができ、約170℃〜175℃の温度で測定される総ゲル形成に対する時間を表し、300秒〜2000秒の範囲にわたることができる。
【0038】
貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物は更に、式(5):
【0039】
【化9】

【0040】
のジオキソランを含む。
【0041】
ジオキソランは、貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物の総重量に基づき約10%〜50重量%の間の範囲で使用することができる。他の態様において、ジオキソランは貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物の総重量に基づき約17.5%〜40重量%の間、好ましくは約20%〜30重量%間の範囲で使用することができる。
【0042】
貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物は進歩した反応の終結時にポリマレイミド・プレポリマーにジオキソランを添加することにより調製することができる。それにより約80重量%までもの高い固形物(solids)および50センチポアズ以下の低い粘度の組成物が形成され、それは沈殿物または粘度増加を伴わずに室温または室温より高い温度で数日間安定である。
【0043】
前記の成分の外に、貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物は場合により、硬化前のあらゆる段階で、1種または複数の安定剤、有機溶媒、増量剤、充填剤、補強剤、顔料、染料、可塑化剤、粘性付与剤、ゴム、硬化促進剤、希釈剤またはそれらのあらゆる混合物と混合してもよい。
【0044】
使用することができる安定剤は、フェノチアジン自体、または1〜3個の置換基を有するC−置換フェノチアジン、または1個の置換基を有するN−置換フェノチアジン、例え
ば3−メチル−フェノチアジン、3−エチル−フェノチアジン、10−メチル−フェノチアジン、3−フェニル−フェノチアジン、3,7−ジフェニル−フェノチアジン、3−クロロフェノチアジン、2−クロロフェノチアジン、3−ブロモフェノチアジン、3−ニトロフェノチアジン、3−アミノフェノチアジン、3,7−ジアミノフェノチアジン、3−スルホニル−フェノチアジン、3,7−ジスルホニル−フェノチアジン、3,7−ジチオシアナトフェノチアジン、置換キニン並びにカテコール、ナフテン酸銅、ジメチルジチオ炭酸亜鉛、リンモリブデン酸水和物およびリンタングステン酸水和物を含む。安定剤は進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物の総重量に基づき約0.1%〜10重量%の量で貯蔵安定性の、改善されたポリマレイミド・プレポリマー組成物に添加することができる。
【0045】
貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物に添加することができる有機溶媒は、低沸点溶媒(約160℃まで、そして好ましくは約100℃までの沸点)、例えば、ケトン、グリコールエーテルおよびグリコールエーテルアセテート、炭化水素、メトキシプロパノール、ジメチルホルムアミドおよびそれらの混合物を含む。有機溶媒が含まれる時は、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物の総重量に基づき約30重量%まで、好ましくは約25重量%まで、そしてもっとも好ましくは約20重量%までの量を貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物に添加することができる。
【0046】
使用することができる増量剤、補強剤、充填剤、硬化促進剤および顔料は例えば、コールタール、ビチューメン、ガラス繊維、ホウ素繊維、炭素繊維、セルロース、ポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末、雲母、アスベスト、石英粉末、石膏、三酸化アンチモン、ベントン、シリカエーロゲル(“aerosil”)、リトポン、重晶石、二酸化チタン、ユージノール、ジクミル過酸化物、イソユージノール、カーボンブラック、黒鉛および鉄粉を含む。他の添加物、例えば難燃剤、流動性調節剤(例えばシリコーン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルブチレート、ワックス、ステアレート等(一部は離型剤としても使用される))を進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物に添加することもできる。
【0047】
前記の貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物は、プレプレグ、種々の厚さの積層板、印刷回路板、鋳型、複合材料、成形品、接着剤および被膜のような広範囲の最終用途に適する。
【0048】
プレプレグは基材を、貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物で含浸または被覆することにより得ることができる。基材は積層板に使用されるすべての基材を含む。それらの例は、Eガラス布、NEガラス布およびDガラス布のような種々のガラス布、天然の無機繊維の布帛、芳香族ポリアミド繊維または芳香族ポリエステル繊維のような液晶繊維から得られる織物布帛および不織布帛、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維またはアクリル繊維のような合成繊維から得られる織物布帛および不織布帛、木綿布帛、麻布帛またはフェルトのような天然繊維の不織布帛、炭素繊維の布帛、クラフトペーパー、コットン・ペーパーまたは紙ガラス混合ペーパーのような天然セルロースタイプの布帛、および多孔質PTFEを含む。
【0049】
1つの態様において、ポリマーの基材は本発明の進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物で含浸または被覆される。ポリマーの基材は、それぞれがポリマーを使用する織物布帛、不織布帛、シートまたは多孔質物体である限り、特に限定はされない。それらの例は、芳香族ポリアミドにより代表されるリオトロピック液晶ポリマー、ポリフェニレンベンゾチアゾール、芳香族ポリエステルにより代表されるサーモトロピック液晶ポリマー、ポリエスレルアミド、ポリアミド、アラミド樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェ
ニレンスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびフルオロ樹脂を含む。ポリマーは意図される適用または性能に応じ、必要に応じて適宜選択される。これらのポリマーは単独で使用しても必要に応じて組み合わせて使用してもよい。基材の厚さは特に限定はされない。一般的に約3μm〜200μmである。
【0050】
プレプレグの製法は、貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物および基材を組み合わせてプレプレグを製造することができる限り、特に限定はされない。1つの態様において、前記の進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物が基材に含浸されるかまたはそれに適用され、次に組成物を例えば、1〜90分間80℃〜200℃で、乾燥機内でB段階まで加熱し、それによりプレプレグを製造する方法が提供される。プレプレグの樹脂含量は約30〜90重量%の範囲にあることができる。
【0051】
メタルクラッド積層板もまた、1枚のプレプレグまたは少なくとも2枚のプレプレグを積み重ね、銅フォイルまたはアルミニウムフォイルのような金属フォイルを、積み重ねたプレプレグの上面および下面または片面上に張り合わせ、そして生成されたセットを加熱し、加圧することにより得ることができる。
【0052】
印刷配線板用の積層板および多層板の一般的技術をメタルクラッド積層板の成形条件に適用することができる。例えば、一般に、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等は約100℃〜300℃の間の温度および約0.2MPa〜10MPa間の圧力で、そして約0.1〜5時間の加熱時間で使用される。更に、本発明のプレプレグを別に調製される内層配線板と組み合わせて、生成されるセットを積層成形することにより多層板を製造することもできる。
【0053】
特定の態様において、プレプレグまたは積層構造物は、(i)アミン触媒の存在下におけるポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物の進歩した反応からもたらされるポリマレイミド・プレポリマー並びに(ii)ジオキソランを含んでなる貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物で含浸または被覆された基材の硬化生成物を含んでなる。
【実施例】
【0054】
実施例1.本実施例は本発明の貯蔵安定性の、改善されたポリマレイミド・プレポリマー組成物の調製を具体的に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
4,4’−(メチルエチリデン)ビス(2−プロペニル)フェノールを反応器に入れ、真空下に置いた。N,N’−4,4’−ジフェニルメタン・ビスマレイミドを反応器に添加し、4,4’−(メチルエチリデン)ビス(2−プロペニル)フェノールと混合して反応混合物を形成した。反応混合物を132℃に加熱し、次に真空下に置き、そして次に、
透明な琥珀色の溶液になったら、100℃に冷却した。トリプロピルアミンを溶液に添加し、30分間連続的に撹拌した。その後、温度を120℃に高め、それを維持し、溶液を1.5時間真空下に置いた。真空を外し、1,3−ジオキソランを溶液に添加し、40〜45ポアズの粘度に到達するまで120℃の温度に維持した。次に溶液を50℃に放置冷却し、そこでリンタングステン酸水和物を添加した。次に、反応器から取り出された、改善されたポリマレイミド・プレポリマー組成物は171℃で963秒のゲル化時間を示した。
【0057】
改善されたポリマレイミド・プレポリマー組成物のサンプルは一定の期間、4℃、室温および50℃で貯蔵され、サンプルのゲル化時間(T=171℃)を特定の間隔を置いて測定した。結果は表1に示される:
【0058】
【表2】

【0059】
更に、沈殿物の量を同様な時間間隔にわたり、各サンプルにつき観察し、結果は表2に示される:
【0060】
【表3】

【0061】
実施例1で調製された改善されたプレポリマー組成物の貯蔵安定度を、ジオキソランをメチルエチルケトンと置き換えたことを除いて、実施例1に従って調製されたプレポリマー組成物に対して比較した。比較用プレポリマー組成物のサンプルは一定の期間、4℃および50℃で貯蔵され、特定の間隔でサンプルのゲル化時間(171℃)を測定した。結果は表3に示される:
【0062】
【表4】

【0063】
図1に示されるように、室温に貯蔵された時の本発明に従う改善プレポリマー組成物のゲル化時間(T=171℃)は少なくとも56日の期間にわたり300秒より長かった。更に、長期間50℃で貯蔵された時の本発明に従う改善プレポリマー組成物は、50℃で貯蔵された比較用プレポリマー組成物に比較してずっと長いゲル化時間を示した。
【0064】
実施例2.本実施例は本発明の貯蔵安定性の、改善ポリマレイミド・プレポリマー組成物の調製を示す。
【0065】
【表5】

【0066】
4,4’−(メチルエチリデン)ビス(2−プロペニル)フェノールを反応フラスコに入れ、真空下に置いた。N,N’−4,4’−ジフェニルメタン・ビスマレイミドを反応フラスコに添加し、4,4’−(メチルエチリデン)ビス(2−プロペニル)フェノールと混合して反応混合物を形成し、それを132℃に加熱した。次に反応フラスコを真空下に置き、透明な琥珀色の溶液になったら、100℃に冷却した。溶液にトリプロピルアミンを添加し、30分間撹拌を継続した。その後、温度を120℃に高め、溶液を真空下に1.5時間置いた。真空を外し、1,3−ジオキソランを添加し、40〜45ポアズの粘度に到達するまで混合物を120℃の温度に維持した。次に混合物を50℃に放置冷却し、そこでフェノチアジンおよびメトキシプロパノールアセテートを添加した。15分の撹拌後、リンタングステン酸水和物を添加した。次に改善されたプレポリマー組成物を反応フラスコから取り出した。
【0067】
次に改善プレポリマー組成物のサンプルを、一定期間、4℃、室温および50℃で貯蔵し、サンプルのゲル化時間(T=171℃)を特定の間隔で測定した。結果は表4に示される:
【0068】
【表6】

【0069】
実施例2で調製された改善プレポリマー組成物の貯蔵安定度をジオキソランをメチルエチルケトンと置き換えたことを除いて、実施例2に従って調製されたプレポリマー組成物に対して比較した。比較用プレポリマー組成物のサンプルを4℃および50℃で一定期間貯蔵し、サンプルのゲル化時間(T=171℃)を特定の間隔で測定した。結果は表5に示される。
【0070】
【表7】

【0071】
図2に示すように、室温および50℃で貯蔵された時の本発明に従う改善ポリマレイミド・プレポリマー組成物のゲル化時間(T=171℃)は、少なくとも56日の期間にわたり300秒を超えていた。更に、50℃で長期間貯蔵された時の本発明に従う改善ポリマレイミド・プレポリマー組成物は50℃で貯蔵された比較用プレポリマー組成物に比較するとずっと長いゲル化時間を示した。
【0072】
以上に開示された主題事項は説明的であり、限定するものではないものと考えられ、そして添付の請求項は本発明の真の範囲内に入るすべてのそのような変更物、強化物および
他の態様を網羅することが意図される。従って、本発明の範囲は、法律により許される最大限度まで、以下の請求項およびそれらの同等物のもっとも広範な、許容可能な解釈により決定されるべきであり、そして以上の詳細な説明により制約または限定されるべきではない。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アミン触媒の存在下におけるポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物の進歩した反応からもたらされるポリマレイミド・プレポリマー;並びに
(b)式(5)
【化1】

のジオキソラン:
を含んでなる貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物。
【請求項2】
ポリイミドが式
【化2】

[式中、
は水素またはメチルであり、そしてXはC2n−(ここでn=2)、−CHCHSCHCH−、フェニレン、ナフタレン、キシレン、シクロペンチレン、1,5,5−トリメチル−1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン、1,4−ビス−(メチレン)−シクロヘキシレン、または式(a)
【化3】

(式(a)中、RおよびRは独立して塩素、臭素、メチル、エチルまたは水素であり、そしてZは直接結合、メチレン、2,2−プロピリデン、−CO−、−O−、−S−、−SO−または−SO−である)の基である]
のビスマレイミドである、請求項1の貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリ
マー組成物。
【請求項3】
がメチルであり、Xがヘキサメチレン、トリメチルヘキサメチレン、1,5,5−トリメチル−1,3−シクロヘキシレン、または式(a)[ここでZはメチレン、2,2−プロピリデンまたは−O−であり、そしてRおよびRは水素である]の基である、請求項2の貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物。
【請求項4】
ビスマレイミドがN,N’−4,4’−ジフェニルメタン・ビスマレイミドである、請求項2の貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物。
【請求項5】
アルケニルフェノールまたはアルケニルフェノールエーテルが式 (1) 〜 (4):
【化4】

[式中、Rは直接結合、メチレン、イソプロピリデン、−O−、−S−、−SO−または−SO−である];
【化5】

[式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはC〜C10アルケニルであり、ただしR、RまたはRの少なくとも1個はC〜C10アルケニルである];
【化6】

[式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはC〜C10アルケニルであり、ただしR、R、RまたはRの少なくとも1個はC〜C10アルケニルであり、そしてRは式(1)中に定義されたようなものである];並びに
【化7】

[式中、R、R、R10、R11、R12およびR13はそれぞれ独立して水素、C−CアルキルおよびC〜C10アルケニルであり、ただしR、R、R10、R11、R12およびR13の少なくとも1個はC〜C10アルケニルであり、そしてbは0〜10の整数である]
の化合物である、請求項1の貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物。
【請求項6】
リンタングステン酸水和物およびリンモリブデン酸水和物から選択される安定剤を更に含んでなる、請求項1の貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物。
【請求項7】
グリコールエーテルを更に含んでなる、請求項6の貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物。
【請求項8】
(a)アミン触媒の存在下でポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物を高められた温度で反応させて、ポリマレイミド・プレポリマーを形成し、
(b)実質的にすべてのアミン触媒を除去し、そして
(c)ポリマレイミド・プレポリマーにジオキソランを添加して、貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物を形成する:
工程を含んでなる、貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物を調製するための方法。
【請求項9】
工程(b)の次に、ポリマレイミド・プレポリマーに安定剤を添加する工程を更に含んでなる、請求項8の方法。
【請求項10】
請求項8に従って調製された貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物。
【請求項11】
(a)アミン触媒の存在下におけるポリイミドおよびアルケニルフェノール、アルケニルフェノールエーテルまたはそれらの混合物の進歩した反応からもたらされるポリマレイミド・プレポリマー;並びに
(b)式(5)
【化8】

のジオキソラン:
を含んでなる貯蔵安定性の、進歩したポリマレイミド・プレポリマー組成物で含浸または被覆された布帛または繊維の硬化生成物を含んでなるプレプレグまたは積層構造物。

【公表番号】特表2011−517715(P2011−517715A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501949(P2011−501949)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/037958
【国際公開番号】WO2009/123876
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(509282365)ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ・アメリカズ・エルエルシー (7)
【Fターム(参考)】