説明

貯蔵安定性硬化性ポリシラザンの調製プロセス、及びそれにより調製されるポリシラザン

硬化性オリゴマー及び/又はポリマーポリシラザンの調製プロセスは、(a)少なくとも1つのジハロシランを少なくとも1つの塩基と反応させることにより少なくとも1つのジハロシラン−塩基付加生成物を形成する工程と、(b)所望により、少なくとも1つのジハロシラン−塩基付加生成物と少なくとも1つの有機ジハロシランを混ぜ合わせる工程と、(c)少なくとも1つのジハロシラン−塩基付加生成物、又は得られた少なくとも1つのジハロシラン−塩基付加生成物と少なくとも1つの有機ジハロシランの混合物のアンモノリシスを行う工程と、を含み、ただし、塩基を、(1)ジハロシラン中のケイ素−ハロゲン結合の化学量論量の2倍以下の制限量でジハロシラン−塩基付加生成物の形成に用い、又は(2)この制限量より多い量でジハロシラン−塩基付加生成物の形成に用い、アンモノリシスに先立ち、得られた反応済み又は未反応の塩基の全量をこの制限量以下に減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2009年12月22日に出願された、米国仮出願第61/289,101号の優先権を主張し、その内容を本明細書に参考として組み込む。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、硬化性ポリシラザン含有組成物の調製プロセスに関し、別の態様では、それにより調製された組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
セラミックス材料は、周知であり、比較的高い弾性率、硬度、高温安定性、及び/又は耐化学性等の優れた特性のうちの幾つかのために様々な用途で広く使用されている。しかし、セラミックス材料は、比較的重く、脆性であり、及び/又は加工が困難である場合もある。別の材料としては、有機ポリマーは、比較的強靱であり、可撓性であり、並びに/又は製作及び加工が容易であり得るが、比較的弾性が低くかつ比較的分解温度が低いので、一部の用途では使用することができない。欠点を最小化しながら、ポリマー及びセラミックスの両方の利点を共有する材料を生み出すための有望なアプローチとしてプレセラミックポリマー技術が浮上している。
【0004】
多くの重要なエンジニアリングポリマーのゾルゲル溶液内における不溶性を回避するために、(例えば、重合性有機基を含有するテトラアルコキシシランの加水分解によって)混合有機/無機ポリマー組成物が調製されている。このようなゾルゲル処理されたモノマーの硬化によって、有機成分の特性の一部に加えて無機成分の特性の一部を呈する混合系がもたらされた。このような混合系は、典型的に、直鎖有機ポリマーから構成される半相互貫入網目構造及び三次元二酸化ケイ素網目構造を含んでいた。
【0005】
多くのポリマーは、セラミックス前駆体として作用することが知られており、セラミックス構造を生成するための使用が報告されている。ポリシラザン及び変性ポリシラザン(例えば、イソシアネート変性、イソチオシアネート変性、チオ尿素変性、ホウ素変性、ペルオキシド変性、及びアミド変性)が調製されており、セラミックス材料(例えば、窒化ケイ素)に熱分解変換するために使用されている。また、ポリシラザンを使用して、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びポリアミン等の材料が変性されている。
【0006】
ハイブリッド有機/無機ポリマー又はセラマー(ハイブリッドポリシラザンポリマー又はセラマーを含む)は、有機求電子物質と金属含有ポリマーとを反応させることによって調製されている。ハイブリッドポリマーは、有機求電子物質から誘導される有機セグメントと、金属含有ポリマーのセグメントから誘導される無機画分とを含むと言われる。このようなハイブリッドポリマーは、基材物質に対するコーティングとして使用するため、成型用途のため(充填剤を用いる又は用いない)、及びそのハイブリッド特性(例えば、比較的高い機械的強度及び高温安定性の組み合わせ)が有利であり得る他のポリマー用途のために提案されている。
【0007】
硬化性ペルヒドロポリシラザン(無機ホモポリマー)及び硬化性ポリ有機シラザン(有機変性シラザン単位からなるホモポリマー又はコポリマー)は、それぞれ、様々なジハロシラン及び有機ジハロシランのアンモノリシスにより調製されている。加えて、硬化性コポリシラザン(シラザン単位部分が有機変性シラザン単位のみのハイブリッド有機/無機コポリマー)の一例は、ジクロロシランとメチルジクロロシランの組み合わせのアンモノリシスにより調製されている。
【0008】
このような硬化性ポリシラザンは、以下の一般式を有する構造単位を含む主鎖又は骨格鎖を有してよい。
−[Si(R)(R)−N(R)]−
式I、
式中、各R、各R、及び各Rは、独立して、水素、有機基、ヘテロ有機基、又はこれらの組み合わせである。ペルヒドロポリシラザンでは、上式I中の全てのR、R、及びRは水素であり、別のポリシラザンでは、少なくとも1つのR及びRは、構造単位の一部(コポリシラザン)又は全て(ポリ有機シラザン)において、水素以外の基である。
【0009】
ピリジンの使用には多くの欠点(例えば、比較的高い臭気、コスト、親水性、及び沸点)があるが、ペルヒドロポリシラザン及びコポリシラザンの調製法では、典型的には比較的大過剰量のピリジン(例えば、出発シラン中のケイ素−ハロゲン結合の化学量論量の少なくとも約12倍)の使用を伴っている。このような大過剰を用いて、その場において、明らかに全ての出発シランのピリジン付加生成物が形成されており、得られるピリジン付加生成物は、大過剰の塩基の残量の存在下において更にコ−アンモノリシスされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、様々な異なる用途(特に、コーティング用途)の性能要件を満たすことができるハイブリッド有機/無機ポリマー又はセラマー(特に、ハイブリッドポリシラザンポリマー又はセラマー)、及びそれを調製するための効率的かつコスト効率の高い方法に対する必要性が持続的に存在すると認識されている。このような方法は、好ましくは、特化した構造及び物理的特性を有するポリマーを柔軟かつ制御可能に生成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
簡潔にいえば、一態様では、本発明は、
(a)少なくとも1つのジハロシランを少なくとも1つの塩基と反応させることにより、少なくとも1つのジハロシラン−塩基付加生成物を形成する工程と、
(b)所望により、少なくとも1つのジハロシラン−塩基付加生成物と少なくとも1つの有機ジハロシランを混ぜ合わせる工程と、
(c)少なくとも1つのジハロシラン−塩基付加生成物、又は得られた少なくとも1つのジハロシラン−塩基付加生成物と少なくとも1つの有機ジハロシランの混合物のアンモノリシスを行う工程と、を含む、硬化性オリゴマー及び/又はポリマーポリシラザンの調製プロセスであって、
ただし、塩基を、(1)ジハロシラン中のケイ素−ハロゲン結合の化学量論量の2倍以下の制限量でジハロシラン−塩基付加生成物の形成に用いる、又は(2)この制限量より多い(超過の)量でジハロシラン−塩基付加生成物の形成に用い、アンモノリシスに先立ち、得られた反応済み又は未反応の塩基の全量をこの制限量以下に減少させる(例えば、蒸発による塩基の除去により)プロセスを提供する。塩基は、好ましくは、ジハロシラン中のケイ素−ハロゲン結合の化学量論量に少なくとも等しく、しかしこの量の2倍以下の量でジハロシラン−塩基付加生成物の形成に用いられる。
【0012】
好ましくは、ジハロシランはジクロロシランであり、塩基はピリジンであり、及び/又は、アンモノリシスはアンモニアとの反応により行われる。有機ジハロシランは、モノ有機ジハロシラン、ジ有機ジハロシラン、及びこれらの組み合わせから選択してよい。
【0013】
このプロセスの任意の工程(b)は、好ましくは、硬化性コポリシラザンを調製するために行われる(より好ましくは、この工程とアンモノリシス工程の両方が、上で定義した制限量以下の塩基の存在下で行われる)。このプロセスは、所望により、非プロトン性(好ましくは、非極性非プロトン性)溶媒(好ましくは、ヘキサン)の使用する工程、及び/又は精製、単離、コーティング(例えば、任意の溶媒添加又は変更後)工程、及び/又は、得られる硬化性ポリシラザンを硬化する工程を更に含んでよい。
【0014】
ジハロシラン−塩基付加生成物のアンモノリシス中に存在する塩基の量を制限することにより、比較的初期粘度が低い(かつ、それにより、溶媒非存在下(すなわち、未希釈、つまり固体分100パーセントの形態)において比較的貯蔵寿命が長い)硬化性オリゴマー及び/又はポリマーポリシラザンを調製できることが発見されている。驚くべきことに、本硬化性ポリシラザンは、より大量の塩基を用いる従来技術による方法で調製された相当するポリシラザンと比較して、著しく改善された貯蔵安定性を示す。
【0015】
例えば、本発明のプロセスで調製された硬化性ポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン及びコポリシラザン)は、溶媒非存在下(固体分100パーセントの形態)において一般に約1〜約3日間安定であることができ、つまり、ゲル化を回避するために希釈前の溶媒中高濃度が必要になることがある。この時間は、工業的環境において、ゲル化によるバッチ又はケトルのロスなく精製及び/又は加工を可能にするのに十分である。したがって、本発明のプロセスは、(上記典型的な従来技術法で調製された相当するポリシラザンと比較して)より高い工業的適合性を示し、かつ、より容易に保存ができることで必要に応じた硬化が可能な硬化性ポリシラザンを提供できる。
【0016】
特に、本発明のプロセスにより調製されたコポリシラザンは、硬化して架橋網目構造を形成できる、多用途のハイブリッド有機/無機ポリマー又はセラマーを提供する。架橋網目構造の特性は、出発ジハロシラン(硬化性ポリシラザンの無機含量の程度を決定し、有効であり得る硬化剤に影響し、かつ硬化ポリシラザンの硬度を上げる)と、出発有機ジハロシラン(硬化性ポリシラザンの有機含量の程度を決定し、これも有効であり得る硬化剤に影響し、かつ硬化ポリシラザンの可撓性を上げる)の相対量を変化させることにより、様々な異なる用途の要件に対して特化させることができる。
【0017】
ペルヒドロポリシラザンとポリ有機シラザンとの少なくともいくつかの物理的ブレンドとは異なり、コポリシラザンは相分離を示さず、硬化して均質で光学的に透明なコーティングを提供できる。比較的少量の有機変性シラザン単位(例えば、約10モルパーセント)のみを組み込むことにより、ペルヒドロポリシラザンの優れた硬化性及び硬度特性を保持できる一方で、改善された可撓性の利益を得ることができる(したがって、硬化コーティングの亀裂形成が低減される)コポリシラザンを提供できる。
【0018】
本発明のプロセスは、従来技術の方法よりも少ないピリジン(比較的高価な塩基)で実施できるため、比較的よりコスト効率が高くなり得る。このプロセスはまた、少ないピリジン(比較的親水性であり、比較的高温で沸騰する)を使用することにより、ポリシラザン調製中の水分吸収及びゲル化を低減することができ、加工中の精製を促進することができるため、比較的より効率的にもなり得る。得られる硬化性ポリシラザンは、例えば、コーティングの形成又は表面処理において使用すること、様々な成型物品を形成するための成型用途で(所望により、少なくとも1つの充填剤と組み合わせて)使用すること、セラミックスコーティングの形成において使用すること等を含む多数の用途で使用することができる。したがって、本発明のプロセスの少なくともいくつかの実施形態は、様々な異なる用途の性能要件を満たすことができるハイブリッド有機/無機ポリマー又はセラマー(特に、ハイブリッドポリシラザンポリマー又はセラマー)に対する上記の持続的な必要性、並びに、特化した構造及び物理的特性を有するポリマーを柔軟かつ制御可能に生成することができる効率的かつコスト効率の高い調製プロセスに対する必要性をかなえる。
【0019】
別の態様では、本発明はまた、本発明のプロセスによって調製される硬化性ポリシラザン、及び硬化した形態の硬化性ポリシラザンも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の「発明を実施するための形態」では、種々の組の数値範囲(例えば、特定の部分における炭素原子の数、又は特定の成分の量など)が記載され、各組内では、範囲の任意の下限を範囲の任意の上限と対にすることができる。同様に、このような数値範囲は、範囲内に含まれる全ての数を含むことを意味する(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
本明細書で使用するとき、用語「及び/又は」は、1つ若しくは全ての列挙した要素、又は2つ以上の列挙した要素のいずれかの組み合わせを意味する。
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で、特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、同一又は異なる条件下において、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用でないことを含意するものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
用語「含む」及びその変化形は、これらの用語が説明文及び特許請求の範囲において現れる場合、限定的な意味を有するものではない。
本明細書で使用する時、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、同じ意味で使用される。
上記「課題を解決するための手段」の節は、全ての実施形態又は本発明の全ての実施を説明しようとするものではない。以下の「発明を実施するための形態」が実施形態をより具体的に例示する。「発明を実施するための形態」にわたり、複数の実施例の一覧を通してガイダンスが提供されており、それら実施例は様々な組合せで用いられ得る。いずれの場合にも、記載した一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【0021】
定義
本特許出願で使用するとき、
「カテネイトヘテロ原子」とは、(例えば、炭素−ヘテロ原子−炭素鎖又は炭素−ヘテロ原子−ヘテロ原子−炭素鎖を形成するために)炭素鎖中の1個以上の炭素原子に置き換わる炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を意味する。
「硬化」とは、(例えば、放射線照射又は触媒を通した)架橋ポリマー網目構造への変換を意味する。
「フルオロ−」(例えば、「フルオロアルキレン」若しくは「フルオロアルキル」、又は「フルオロカーボン」の場合のような基若しくは部分に関して)又は「フッ素化」とは、炭素に結合した水素原子が少なくとも1つは存在するように、部分的にフッ素化されていることを意味する。
「フルオロケミカル」とはフッ素化又は全フッ素化されていることを意味する。
「ヘテロ有機」とは、少なくとも1個のヘテロ原子(好ましくは、少なくとも1個のカテネイトヘテロ原子)を含有する有機基又は部分(例えば、アルキル又はアルキレン基)を意味する。
「オリゴマー」とは、少なくとも2個の繰り返し単位を含み、かつエンタングルメント分子量未満の分子量を有する分子を意味し、このような分子は、ポリマーとは異なり、1個の繰り返し単位を除去又は付加しただけでも特性が著しく変化する。
「ペルフルオロ−」(例えば、「ペルフルオロアルキレン」又は「ペルフルオロアルキル」又は「ペルフルオロカーボン」の場合のような、基又は部分に関して)又は「全フッ素化」とは、特記しない限り、フッ素で置換可能な炭素に結合した水素原子が存在しないように完全にフッ素化されていることを意味する。
「ペルフルオロエーテル」は、酸素原子により連結された(すなわち、1個のカテネイト酸素原子が存在する)、2つの飽和又は不飽和のペルフルオロカーボン基(直鎖、分枝、環状(好ましくは、脂環式)、又はこれらの組み合わせ)を有する基又は部分を意味する。
「ペルフルオロポリエーテル基(又はセグメント若しくは部分)」は、酸素原子により連結された(すなわち、1個のカテネイト酸素原子が存在する)、3つ以上の飽和又は不飽和のペルフルオロカーボン基(直鎖、分枝、環状(好ましくは、脂環式)、又はこれらの組み合わせ)を有する基又は部分を意味する。
「ポリシラザン」は、複数のSi−N結合を含む少なくとも1つの直鎖、分枝、又は環状の主鎖又は骨格鎖を有する化合物を指す。
「ポリシロキサザン」は、Si−N結合及びSi−O結合の両方を含む少なくとも1つの直鎖、分枝、又は環状の主鎖又は骨格鎖を有する化合物を指し、簡潔にするために、本願では、「ポリシラザン」が「ポリシロキサザン」及び「ポリ尿素シラザン」も含む。
「ポリ尿素シラザン」は、複数のSi−N結合を含み、かつ2つの窒素原子のそれぞれに結合している少なくとも1つのカルボニル基を有する少なくとも1つの直鎖、分枝、又は環状の主鎖又は骨格鎖を有する化合物を指す。
「置換アリール」基とは、ハロゲン、アルキル基、及びヘテロアルキル基のうちの1つ以上等の(硬化に)干渉しない原子によって置換されたアリール基を意味する。
【0022】
シラン
本発明のプロセスの実施において使用するのに好適なジハロシランとして、一般式SIHで表すことができ、式中、各Xが独立してハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、及びこれらの組み合わせから選択され、好ましくは、塩素、臭素、ヨウ素、及びこれらの組み合わせから選択され、より好ましくは、塩素、臭素、及びこれらの組み合わせから選択される)であるものが挙げられる。ジクロロシランが最も好ましい。
【0023】
本発明のプロセスの実施において使用するのに好適な有機ジハロシランとして、一般式RSiXで表すことができ、式中、R及びRは、独立して水素、有機基、ヘテロ有機基、又はこれらの組み合わせであり、ただし、少なくとも1つのR及びRが有機又はヘテロ有機基であり、Xが上で定義されるものであるものが挙げられる。好適な有機及びヘテロ有機基としては、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルキルシリル、アリールシリル、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ等、及びこれらの組み合わせ(好ましくは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、及びこれらの組み合わせ)が挙げられ、基は、好ましくは1〜約18個の炭素原子(より好ましくは、1〜約12個の炭素原子、更により好ましくは1〜約8個の炭素原子、最も好ましくは1〜約2個の炭素原子(例えば、メチル又はビニル))を有する。基は、ハロゲン、アルコキシ、アミノ、カルボキシル、ヒドロキシル、アルコキシカルボニル、ニトロ等、及びこれらの組み合わせ等の1個以上の置換基で更に置換されてもよい。
【0024】
例えば、有用な有機ジハロシランとして、R及びRが独立して水素、約9個未満の炭素原子を有する直鎖、分枝、若しくは環状アルキル基、約7個未満の炭素原子を有する直鎖、分枝、若しくは環状ヘテロアルキル基、約13個未満の炭素原子を有する置換若しくは非置換アリール基、エチレン性不飽和基、合計約8個未満の炭素原子を有するR及びRから形成される環状構造、又はこれらの組み合わせであり、ただし、少なくとも1つのR及びRは水素以外の基であり、Xは上で定義されるものであるものが挙げられる。好ましくは、R及びRは、独立して水素、アルキル(より好ましくは、メチル)、アリール(より好ましくは、フェニル)、アルケニル(より好ましくは、ビニル)、及びこれらの組み合わせから選択され、ただし、少なくとも1つのR及びRは水素以外の基であり、並びに/又は、各Xは好ましくは塩素である。
【0025】
塩基
本発明のプロセスの実施において使用するのに好適な塩基として、ハロシランと塩基付加生成物を形成できるものが挙げられる。有用な塩基として、三級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、及びこれらの組み合わせなどのトリアルキルアミン)、ピリジン、(例えば、メチル又はエチル基などの1つ以上の置換基で)置換されたピリジン(例えば、ピコリン)、立体障害二級アミン、ホスフィン(例えば、トリメチルホスフィン、ジメチルエチルホスフィン、メチルジエチルホスフィン、及びこれらの組み合わせ)、アルシン(例えば、トリメチルアルシン)、その他同種のもの、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
好ましい塩基として、三級アミン、ピリジン、置換ピリジン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。より好ましい塩基として、三級アミン、ピリジン、ピコリン、及びこれらの組み合わせ(更により好ましくは、三級アミン、ピリジン、及びこれらの組み合わせ、いっそうより好ましくは、トリメチルアミン、ピリジン、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。最も好ましいのはピリジンである。
【0027】
ジハロシラン−塩基付加生成物の調製
少なくとも1つの上記ジハロシランを少なくとも1つの上記塩基と組み合わせることにより、ジハロシラン−塩基付加生成物を調製できる。ジハロシランは塩基と反応して付加生成物を形成でき、その形成速度及び安定性は、ジハロシランの酸性度及び塩基の塩基性度に依存し得る。アンモニア又は一級アミンと反応できる反応中間体として機能するため、十分に安定な付加生成物を生成するように、ジハロシラン及び塩基を選択してよい。特に、1モルのジクロロシランは、2モルのピリジンと反応して1:2(ハロゲン化物:塩基)付加生成物を形成する、又は1モルのテトラメチルエチレンジアミンと反応して1:1付加生成物を形成することがわかっている(例えば、H.J.Campbell−Ferguson及びE.A.V.EbsworthのJ.Chem.Soc.(A),1966,1508(この付加生成物に関する記載を参照することによって本明細書に組み込む)に記載されるように、Campbell−Ferguson及びEbsworthによれば、水素をメチルで置換すると(有機ジハロシランを形成する)ケイ素原子の受容体としての力が弱まり、相当するジハロシランと比較して、付加生成物形成の低下、及び/又は付加生成物安定性の低下につながる)。
【0028】
例えば、少なくとも1つのジハロシラン(例えば、ジクロロシラン)、少なくとも1つの塩基(例えば、ピリジン)、及び所望により、少なくとも1つの非プロトン性溶媒(例えば、ヘキサン)は、任意の好適な反応器(例えば、電磁撹拌棒、還流凝縮器、及びガス送入口を備える丸底フラスコ)内で本質的に任意の順序で組み合わせることができ、次いで、これを撹拌し、乾燥(例えば、窒素)雰囲気下で所望の反応温度(例えば、約23℃〜約100℃)に加熱することができる。
【0029】
ジハロシラン−塩基付加生成物の形成には、塩基は、ジハロシラン中のケイ素−ハロゲン結合の化学量論量の約2倍以下の量で用いることができる。したがって、ピリジンなどの一塩基化合物(塩基の化学量論量は、ジハロシランの各モルに対し塩基2モルである)では、ジハロシラン1モルにつき約4モル以下の塩基を使用できる。テトラメチルエチレンジアミンなどの二塩基化合物(塩基の化学量論量は、ジハロシランの各モルに対し塩基1モルである)では、ジハロシラン1モルにつき約2モル以下の塩基を使用できる。
【0030】
塩基は、好ましくは、ジハロシラン中のケイ素−ハロゲン結合の化学量論量に少なくとも等しく、しかしこの量の2倍以下の量でジハロシラン−塩基付加生成物の形成に用いられる。好ましくは、塩基の量は、ジハロシラン中のケイ素−ハロゲン結合の化学量論量の約1.5倍以下である(より好ましくは、化学量論量の約1.25倍以下、最も好ましくは、化学量論量とほぼ同量である)。
【0031】
本発明のプロセスで用いるのに好適な溶媒として、必要に応じて、芳香族溶媒(例えば、キシレン、ベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン等、及びこれらの混合物)、アルカン(例えば、ヘキサン、ヘプタン、イソパラフィン炭化水素等、及びこれらの混合物)、その他同種のもの、及びこれらの混合物などの非プロトン性溶媒が挙げられる。好ましい溶媒として、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、及びこれらの混合物が挙げられ、キシレン、ヘキサン、及びこれらの混合物がより好ましく、ヘキサンが最も好ましい。
【0032】
アンモノリシス
ジハロシラン−塩基付加生成物の形成後、得られた生成物(好ましくは、溶媒は、付加生成物の形成工程で使用されているか、スラリー形成のために後で添加されている)を、化学量論的に過量のアンモニア(例えば、室温でのスラリー中のバブリングにより)、一級アミン、又はこれらの組み合わせ(好ましくは、アンモニア)を添加する前に、所望により攪拌してよい(例えば、室温で約1時間)。アンモノリシスが進行すると、得られる反応混合物の温度は一般的に上昇し、一般には、反応混合物の温度が低下し始める(これは、反応を実行し完了できる十分なアンモニアが添加されていることを示し得る)まで、アンモニア(又はアミン)を反応混合物に添加できる。アンモノリシス反応は、好ましくは不活性ガス雰囲気で(例えば、窒素又はアルゴン下)実施される。
【0033】
アンモノリシス中、塩基は制限量のみで存在でき、ここで、付加生成物の形成工程で得られる反応済み又は未反応の塩基の総量は、ジハロシラン中のケイ素−ハロゲン結合の化学量論量の約2倍以下(「制限量の塩基」)である。このことは、この制限量の塩基のみを用いてジハロシラン−塩基付加生成物を形成することにより、又は、後で十分量の未反応の塩基を除去し、アンモノリシスに先立ち、反応済み又は未反応の塩基の全量をこの制限量まで減少させる(例えば、例えばトリメチルアミン(沸点約3℃)などの比較的揮発性の塩基の蒸発により)ことにより、達成できる。
【0034】
ジハロシラン−塩基付加生成物のアンモノリシスは、硬化性ペルヒドロポリシラザンをもたらし得る。硬化性コポリシラザンが所望されるとき、少なくとも1つのジハロシラン−塩基付加生成物及び少なくとも1つの上記有機ジハロシランを、アンモノリシスに先立って混合できる。このような混合(及び後続のアンモノリシス)工程は、好ましくは上で定義した制限量以下の塩基の存在下で実施できる。したがって、過量(上で定義するように)の塩基は、好ましくは有機ジハロシランの添加前に除去してよい。
【0035】
アンモノリシス反応が完了した後、反応器を冷却し、排気し、反応器の内容物を除去し、所望により更に精製してもよい。例えば、塩副生成物を濾過により除去してよく、溶媒を蒸発により除去してよい。
【0036】
硬化性ポリシラザン
本発明のプロセスにより調製される硬化性ポリシラザンは、一般に粘性の液体(例えば、約1×10−3Pa・s〜約500×10−3Pa・sの初期粘度を有する)である。硬化性ポリシラザンとしては、直鎖、分枝、又は環状構造、又はこれらの組み合わせを有するものが挙げられる。コポリシラザンは、ランダム、交互、若しくはブロックポリマー構造、又はこれらの組み合わせを有してよい。所望により、既知の方法を用いて、変性ポリシラザン(例えば、ポリメタロシラザン、ポリシロキサザン、ポリ尿素シラザン等及びこれらの組み合わせ)を調製できる。
【0037】
必要に応じて、(a)少なくとも1つの有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分と、(b)(ケイ素−窒素結合、ケイ素−水素結合、炭素−炭素二重結合、窒素−水素結合、及びこれらの組み合わせから選択される)化学的反応部位のうち少なくとも1つを介して上記硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザンと反応することができる少なくとも1つの官能基と、を含むものなどの1つ以上のフルオロケミカル化合物との反応により、硬化性ポリシラザンを硬化性有機フッ素変性ポリシラザンに変換できる。好ましくは、フルオロケミカル化合物の有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分は、全フッ素化部分(より好ましくは、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロヘテロアルキル、又はペルフルオロヘテロアルキレン部分)である。
【0038】
有用なフルオロケミカル化合物の分類としては、以下の一般式によって表すことができるものが挙げられる。
−(Y−X)
(式中、Rは、一価若しくは多価(好ましくは、一価又は二価)の直鎖、分枝、脂環式、若しくは芳香族の、フッ素化若しくは全フッ素化された有機若しくはヘテロ有機基、又はこれらの組み合わせであり(好ましくは、全フッ素化有機若しくはヘテロ有機基又はこれらの組み合わせ;より好ましくは、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロエーテル、若しくはペルフルオロポリエーテル基、又はこれらの組み合わせ;更により好ましくは、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、若しくはペルフルオロポリエーテル基、又はこれらの組み合わせ;最も好ましくは、ペルフルオロポリエーテル基である);各Yは、独立して、共有結合、又は二価の直鎖、分枝、脂環式、若しくは芳香族の、有機若しくはヘテロ有機連結基、又はこれらの組み合わせであり(好ましくは、共有結合又はアルキレン若しくはヘテロアルキレン基、又はこれらの組み合わせ;より好ましくは、共有結合、所望により少なくとも1つのカテネイト酸素原子を含有するアルキレン基、スルホンアミド基、又はこれらの組み合わせである);各Xは、独立して、求電子基又は求核基であり(好ましくは、イソシアナト、イソチオシアナト、エポキシド、アミノ、オキサゾリノ、ヒドロキシル、メルカプト、ビニル、及び加水分解性シリル基(例えば、アルコキシ又はアシルオキシ等の少なくとも1つの加水分解性部分を含むシリル基)並びにこれらの組み合わせから選択され、より好ましくは、イソシアナト、エポキシド、アミノ、オキサゾリノ、ヒドロキシル、及び加水分解性シリル基、並びにこれらの組み合わせから選択され、最も好ましくは、イソシアナト、エポキシド、アミノ、オキサゾリノ、ヒドロキシル、及びこれらの組み合わせから選択される);vは、Rの価数に等しい正の整数である(好ましくは、1又は2))。好ましくは、R(飽和であっても不飽和であってもよい;好ましくは飽和)は、約3〜約35個の炭素原子(より好ましくは、約4〜約25個の炭素原子、最も好ましくは、約6〜約18又は20個の炭素原子)を含有し、及び/又はY(飽和であっても不飽和であってもよい;好ましくは飽和)は、約0〜約12個の炭素原子(より好ましくは、約1〜約6個の炭素原子、最も好ましくは、約1〜約3個の炭素原子)を含有する。
【0039】
本発明のプロセスにより調製できる特に好ましい硬化性ポリシラザンとして、各非ハロゲン置換基が、水素、アルキル(好ましくは、メチル)、アルケニル(好ましくは、ビニル)、アリール(好ましくは、フェニル)、及びこれらの組み合わせから独立して選択される(好ましくは、少なくとも1つの非ハロゲン置換基が水素である)出発シラン(上記のような)から調製できるものが挙げられる。このような好ましい硬化性ポリシラザンとして、ペルヒドロポリシラザン(以下で定義するような、H−Hタイプの単位を含むホモポリマー)、及びH−Hタイプの単位と、次に示す少なくとも1つの別のタイプの単位
【化1】

(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルである)に加えて、ビニル−H単位(すなわち、メチルがビニルで置換されているMe−H単位)を含むホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。ペルヒドロポリシラザン又はコポリシラザンの単位の一部は、反応が進むにつれ、得られる硬化性ポリシラザンに分枝度を導入するために、変性体になってもよい(例えば、窒素−水素結合を窒素−ケイ素結合で置換することによる)。
【0040】
特定の用途、所望の特性、及び好ましい硬化方法に応じて、各タイプの単位の性質及び量はコポリシラザン中で大きく異なり得る。例えば、好ましいコポリシラザンは、Me−H及びH−H単位(例えば、約30部のMe−Hに対して約70部のH−H、又は約50部のMe−Hに対して約50部のH−Hのモル比で);Me−H、Me−ビニル、及びH−H単位(例えば、約50部のMe−H対約20部のMe−ビニル対約30部のH−Hのモル比で);又はMe−Me及びH−H単位(例えば、約10部のMe−Hに対して約90部のH−Hのモル比で)を含むことができる。
【0041】
硬化性ポリシラザンの使用及び硬化
本発明のプロセスにより調製された硬化性ポリシラザンは、未希釈(又は固体分100パーセント)の形態で保管しても、比較的長い貯蔵寿命を有することができる。硬化性ポリシラザンは、単独で、又は互いに、1つ以上の別の種類のポリマーと、及び/若しくは一般的に使用される溶媒(例えば、アルキルエステル、ケトン、エーテル、アルカン、芳香族等、及びこれらの混合物)と混合して、使用してもよい比較的粘性の液体の形態であり得る。
【0042】
微量の任意成分を添加して、特定の硬化方法又は用途に対する特定の望ましい特性を硬化性ポリシラザンに付与することができる。有用な組成物は、従来の添加剤、例えば、触媒、反応開始剤、界面活性剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤等、及びこれらの混合物を含むことができる。
【0043】
硬化性ポリシラザン(又はそれを含むか、それからなるか、若しくはそれから本質的になる組成物)は、様々な用途で使用することができる。例えば、硬化性ポリシラザンは、(所望により、少なくとも1つの充填剤と組み合わせて)成型用途で使用して様々な成型物品を形成したり、セラミックス前駆体として使用したり、コーティング用途(例えば、ハードコートを形成するための)で使用したりすることができる。有機フッ素変性されると、硬化性ポリシラザンは、(例えば、表面を保護するため、又は清浄化容易性を高めるために)様々な基材にある程度の疎水性及び/又は疎油性を付与するためのフッ素化表面処理として有用であり得る。
【0044】
硬化性ポリシラザン(又はそれを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる組成物)は、水分に曝露することにより(例えば、上記のようにH−H含量を介して)、フリーラジカル反応開始剤を使用することにより(例えば、上記のようにMe−ビニル、Me−H、又はH−H含量を介して)、白金触媒等のヒドロシリル化触媒を使用することにより(例えば、上記のようにMe−ビニル、Me−H、又はH−H含量を介して)硬化することができる。好ましい硬化方法は、具体的な用途並びにそれに付随する要件及び条件によって変化する。
【0045】
湿分硬化は、H−H含量の程度によって室温(例えば、約23℃)〜最高約80℃又はそれ以上の範囲の温度で作用し得る。湿分硬化時間は、数分間(例えば、高温において)〜数時間(例えば、低温において)に及ぶ場合がある。
【0046】
有用な湿分硬化触媒は、当該技術分野において周知であり、例えば、アンモニア、N−複素環式化合物(例えば、1−メチルピペラジン、1−メチルピペリジン、4,4’−トリメチレンジピペリジン、4,4’−トリメチレン−ビス(1−メチルピペリジン)、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、シス−2,6−ジメチルピペラジン等、及びこれらの組み合わせ)、モノ−、ジ−、及びトリアルキルアミン(例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、DBU(すなわち、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(すなわち、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)、1,5,9−トリアザシクロドデカン、1,4,7−トリアザシクロノナン等、及びこれらの組み合わせ)、有機又は無機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、マレイン酸、ステアリン酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、塩素酸、次亜塩素酸等、及びこれらの組み合わせ)、金属カルボキシレート、金属アセチルアセトネート錯体、金属粉末、ペルオキシド、金属塩化物、有機金属化合物等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい湿分硬化触媒としては、アンモニア、DBU、4,4’−トリメチレン−ビス(1−メチルピペリジン)及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
使用するとき、湿分硬化触媒は、触媒及び硬化性ポリシラザンの総重量に基づいて、約0.1〜約10重量パーセント(好ましくは、約0.1〜約5重量パーセント、より好ましくは、約0.1重量%〜約2重量パーセント)の量で存在し得る。触媒は、貯蔵前、貯蔵中、又は貯蔵後(好ましくは、貯蔵後)に添加でき、低温で活性化できる(例えば、上記のように室温硬化を可能にするため)。
【0048】
好適なフリーラジカル反応開始剤としては、有機及び無機ペルオキシド;アルカリ金属過硫酸塩;過硫酸アンモニウム;レドックス系;脂肪族アゾ化合物;活性化剤としての金属又はアミン化合物と組み合わせられる有機及び無機ペルオキシド等及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましいフリーラジカル反応開始剤としては、有機及び無機ペルオキシド(例えば、過酸化水素、並びにp−メンタンヒドロペルオキシド、エチルケトンペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、アセチルベンジルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、アルコキシベンゾイルペルオキシド、ジカプロイルペルオキシド、クロトニルペルオキシド、ジ−t−アルキルペルオキシド、ジ−tブチルジホスフェートペルオキシド、過酢酸、シクロへキシルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、及びこれらの組み合わせ等のアシル又はアリールペルオキシド)並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
使用するとき、フリーラジカル反応開始剤は、反応開始剤及び硬化性ポリシラザンの総重量に基づいて、約0.1〜約10重量パーセント(好ましくは、約1〜約5重量パーセント)の量で存在し得る。フリーラジカル反応開始剤は、貯蔵前、貯蔵中、又は貯蔵後(好ましくは、貯蔵後)に添加でき、その反応の熱によって(場合によっては)、又は外部源からの放射線照射若しくは熱エネルギー(例えば、対流加熱、誘導加熱、又は電子ビーム若しくはマイクロ波照射)によって活性化できる。例えば、フリーラジカルによって開始される硬化は、数分間から数時間の間(例えば、約18時間)、約150℃の温度に加熱することによって作用し得る。
【0050】
好適なヒドロシリル化触媒としては、ケイ素結合水素基とケイ素結合エチレン基との間のヒドロシリル化反応を触媒するのに有効であり得る熱触媒(例えば、白金触媒)及び光触媒が挙げられる。有用な熱ヒドロシリル化触媒としては、例えば米国特許第2,823,218号(Speierら)、同第2,970,150号(Bailey)、同第3,159,601号及び同第3,159,662号(Ashby)、同第3,220,972号(Lamoreaux)、同第3,516,946号(Modic)、同第3,814,730号(Karstedt)、同第4,029,629号(Jeram)、同第4,533,575号及び同第4,504,645号(Melancon)、並びに同第5,741,552号(Takayamaら)に記載されているものが挙げられ、これらの触媒に関する記載を参照することによって本明細書に組み込む。有用な光触媒としては、例えば、米国特許第4,510,094号及び同第4,530,879号(Drahnak)、並びに同第5,145,886号(Oxmanら)に記載されているものが挙げられ、これらの触媒に関する記載を参照することによって本明細書に組み込む。また、有用なヒドロシリル化触媒及び技術としては、例えば、米国特許第5,520,978号(Boardmanら)に記載されているものが挙げられ、これらのヒドロシリル化触媒及び技術に関する記載を参照することによって本明細書に組み込む。熱触媒と光触媒との組み合わせを使用してもよい。
【0051】
使用するとき、ヒドロシリル化触媒は、典型的に、触媒及び硬化性ポリシラザンの総重量に基づいて、ヒドロシリル化反応を触媒するのに有効な量(例えば、約1〜約1000百万分率(ppm)、好ましくは、約10〜約500ppm、より好ましくは、約50〜約250ppm)で存在し得る。触媒は、貯蔵前、貯蔵中、又は貯蔵後(好ましくは、貯蔵後)に添加でき、その反応の熱によって(場合によっては)、又は外部源からの放射線照射(例えば、紫外線、ガンマ線、電子ビーム等)若しくは熱エネルギー(例えば、対流加熱、誘導加熱、照射等)によって活性化することができる。例えば、白金によって触媒される硬化は、約数秒間から数分間の間、約120℃の温度に加熱することによって作用し得る。
【0052】
硬化性ポリシラザンを硬化させて架橋ハードコートを形成することができる。ハードコートは、架橋の程度を変化させることによって、並びに出発シランの性質及び相対量を変化させることによって特化させることができるハイブリッド特性を呈し得る。
【実施例】
【0053】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した請求項の範囲を限定することを意味するものではない。
【0054】
本明細書の実施例及びその他の部分における部、百分率、比等は全て、特段の規定がない限り、重量による。使用される溶媒及び他の試薬は、特に記載のない限り、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
【0055】
材料
ヘキサンは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
無水ピリジンは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
ジクロロシラン(25重量%キシレン溶液)は、Gelest,Inc.(Morrisville,PA)から入手した。
メチルジクロロシランは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
メチルビニルジクロロシランンは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
アンモニアは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
キシレンは、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手した。
MeNは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
ヘプタンは、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
4,4’−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)は、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
【0056】
実施例1及び比較例A
【化2】

実施例1として、機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える1リットルの3つ口フラスコに、ヘキサン(300mL)及びジクロロシラン(25重量%キシレン溶液、0.16モル、64.6g)を投入した。無水ピリジン(0.32モル、純度99.5パーセント、25.4g、ジクロロシラン中ケイ素−塩素結合の化学量論量に等しい)をフラスコに滴下した。白色固体のピリジン付加生成物が生成された。得られたスラリーを室温で1時間攪拌した。次に、メチルジクロロシラン(0.16モル、18.4g)をスラリーに加え、続いてフラスコ内でアンモニアをゆっくりとバブリングさせた。得られた反応混合物の温度が上昇した。56gのアンモニアが付加されるまで反応を続けた。得られた副生成物の塩を濾過により除去した。得られた濾液から溶媒を蒸発させて(55℃及び668.7Pa(0.0066大気)の真空に設定した油浴を使用)、10.0gの粘性コポリシラザン(収率68.7パーセント)を得た。このコポリシラザンの粘度(Brookfield Engineering Laboratories,Inc.(Middleboro,MA)から入手したBrookfield Model DV−IIIプログラム可能レオメーターを用いて測定)は、25℃において61.9×10−3Pa・s(61.9cP)であった。周囲条件下における1か月のエージング後、粘度は、25℃において103.6×10−3Pa・s(103.6cP)に上昇した。
【0057】
比較例Aとして、機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える1リットルの3つ口フラスコに、ジクロロシラン(25重量%キシレン溶液、0.08モル、32.4g)及びメチルジクロロシラン(0.08モル、9.2g)を投入した。大過剰の無水ピリジン(150mL、1.86モル、ジクロロシラン中ケイ素−塩素結合の化学量論量の11.63倍)をフラスコに滴下した。白色固体のピリジン付加生成物が生成された。得られたスラリーを室温で1時間攪拌した。次に、フラスコ内でアンモニアをゆっくりとバブリングさせた。得られた反応混合物の温度が上昇した。28gのアンモニアが付加されるまで反応を続けた。得られた副生成物の塩を濾過により除去した。得られた濾液から溶媒を蒸発させて(55℃及び668.7Pa(0.0066大気)の真空に設定した油浴を使用)、4.8gの粘性コポリシラザン(収率66パーセント)を得た。コポリシラザンの粘度(本質的に上記のように測定した)は、25℃において1176×10−3Pa・s(1176cP)であった。周囲条件下における1か月のエージング後、粘度は、25℃において4549×10−3Pa・s(4549cP)に上昇した。
【0058】
実施例2及び比較例B
【化3】

実施例2として、機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える3リットルの3つ口フラスコに、ヘキサン(1500mL)及び無水ピリジン(1.98モル、156.6g、ジクロロシラン中ケイ素−塩素結合の化学量論量に等しい)を投入した。ジクロロシラン(25重量パーセントキシレン溶液、0.99モル、400g)をフラスコに滴下した。白色固体のピリジン付加生成物が生成され、析出された。得られたスラリーを室温で1時間攪拌した。次に、ジメチルジクロロシラン(0.099モル、12.77g)をスラリーに加え、続いてフラスコ内でアンモニアをゆっくりとバブリングさせた。得られた反応混合物の温度が上昇した。67gのアンモニアが付加されるまで反応を続けた。得られた副生成物の塩を濾過により除去した。得られた濾液から溶媒を蒸発させて(55℃及び668.7Pa(0.0066大気)の真空に設定した油浴を使用)、30gの粘性コポリシラザン(収率58パーセント)を得た。コポリシラザンの粘度(本質的に上記のように決定した)は、25℃において24.06×10−3Pa・s(24.06cP)であった。このコポリシラザンは、周囲条件下6か月のエージングにおいてゲル化しなかった。
【0059】
比較例Bとして、機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える1リットルの3つ口フラスコに、ジクロロシラン(25重量%キシレン溶液、0.3モル、121.2g)及びジメチルジクロロシラン(0.03モル、3.87g)を投入した。500mL(6.19モル、ジクロロシラン中ケイ素−塩素結合の化学量論量の10.3倍)の無水ピリジンをフラスコに滴下した。白色固体のピリジン付加生成物が生成され、析出された。得られたスラリーを室温で1時間攪拌した。次に、フラスコ内でアンモニアをゆっくりとバブリングさせた。得られた反応混合物の温度が上昇した。50gのアンモニアが付加されるまで反応を続けた。得られた副生成物の塩を濾過により除去した。得られた濾液から溶媒を蒸発させて(55℃及び668.7Pa(0.0066大気)の真空に設定した油浴を使用)、9.5gの粘性コポリシラザン(収率61パーセント)を得た。コポリシラザンの粘度(本質的に上記のように決定した)は、25℃において3886×10−3Pa・s(3886cP)であった。このコポリシラザンは、周囲条件下2日間のエージングにおいて凝固しなかった。
【0060】
実施例3
【化4】

機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える2リットルの3つ口フラスコに、ヘキサン(800mL)及び無水ピリジン(0.84モル、66.4g、ジクロロシラン中ケイ素−塩素結合の化学量論量に等しい)を投入した。ジクロロシラン(25重量パーセントキシレン溶液、0.42モル、169.7g)をフラスコに滴下した。白色固体のピリジン付加生成物が生成され、析出された。得られたスラリーを室温で1時間攪拌した。次に、メチルジクロロシラン(0.18モル、20.7g)をスラリーに加え、続いてフラスコ内でアンモニアをゆっくりとバブリングさせた。得られた反応混合物の温度が上昇した。35gのアンモニアが付加されるまで反応を続けた。得られた副生成物の塩を濾過により除去した。得られた濾液から溶媒を蒸発させて、16.9gの粘性コポリシラザン(収率68.7パーセント)を得た。
【0061】
実施例4
【化5】

機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える3リットルの3つ口フラスコに、ヘキサン(1250mL)及び無水ピリジン(0.6モル、47.5g、ジクロロシラン中ケイ素−塩素結合の化学量論量に等しい)を投入した。ジクロロシラン(25重量パーセントキシレン溶液、0.3モル、121.2g)をフラスコに滴下した。白色固体のピリジン付加生成物が生成され、析出された。得られたスラリーを室温で1時間攪拌した。メチルジクロロシラン(0.5モル、57.5g)及びメチルビニルジクロロシラン(0.2モル、28.2g)をスラリーに加え、続いてフラスコ内でアンモニアをゆっくりとバブリングさせた。得られた反応混合物の温度が上昇した。65gのアンモニアが付加されるまで反応を続けた。得られた副生成物の塩を濾過により除去した。得られた濾液から溶媒を蒸発させて、63gの粘性コポリシラザンを得た。
【0062】
実施例5〜6及び比較例C〜D
【化6】

実施例5として、機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える1リットルの3つ口フラスコに、ジクロロシラン(25重量%キシレン溶液、0.35モル、141.4g)及び500mLのヘキサンを投入した。無水ピリジン(0.7モル、55.4g、ジクロロシラン中ケイ素−塩素結合の化学量論量に等しい)を1時間かけてフラスコに滴下した。白色固体のピリジン付加生成物が生成された。得られたスラリーを室温で1時間攪拌した。次に、フラスコ内でアンモニアをゆっくりとバブリングさせた。得られた反応混合物の温度が上昇した。57gのアンモニアが付加されるまで反応を続けた。得られた副生成物の塩を濾過により除去した。溶媒を蒸発させて(55℃及び668.7Pa(0.0066大気)の真空に設定した油浴を使用)、3.1gの粘性ペルヒドロポリシラザン(収率20パーセント、恐らく溶媒除去中に低分子量分画の一部をロス(蒸留除去)したことによる)を得た。周囲条件下における7日間のエージング後、ペルヒドロポリシラザンは凝固した。
【0063】
実施例6として、機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える1リットルの3つ口フラスコに、ジクロロシラン(25重量%キシレン溶液、0.35モル、141.4g)及び500mLのヘキサンを投入した。無水ピリジン(1.4モル、110.8g、ジクロロシラン中ケイ素−塩素結合の化学量論量の2倍に等しい)を1時間かけてフラスコに滴下した。白色固体のピリジン付加生成物が生成された。得られたスラリーを室温で1時間攪拌した。次に、フラスコ内でアンモニアをゆっくりとバブリングさせた。得られた反応混合物の温度が上昇した。57gのアンモニアが付加されるまで反応を続けた。得られた副生成物の塩を濾過により除去した。溶媒を蒸発させて(55℃及び668.7Pa(0.0066大気)の真空に設定した油浴を使用)、4.7gの粘性ペルヒドロポリシラザン(収率30パーセント、恐らく溶媒除去中に低分子量分画の一部をロス(蒸留除去)したことによる)を得た。周囲条件下における3日間のエージング後、ペルヒドロポリシラザンは凝固した。
【0064】
比較例Cとして、機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える1リットルの3つ口フラスコに、ジクロロシラン(25重量%キシレン溶液、1モル、400g)を投入した。1500mL(18.6モル、1469g、ジクロロシラン中ケイ素−塩素結合の化学量論量の9.3倍)の無水ピリジンをフラスコに滴下した。白色固体のピリジン付加生成物が生成され、析出された。得られたスラリーを室温で1時間攪拌した。次に、フラスコ内でアンモニアをゆっくりとバブリングさせた。得られた反応混合物の温度が上昇した。100gのアンモニアが付加されるまで反応を続けた。得られた副生成物の塩を濾過により除去した。溶媒を蒸発させて(55℃及び668.7Pa(0.0066大気)の真空に設定した油浴を使用)、42gの粘性ペルヒドロポリシラザン(収率94パーセント)を得た。周囲条件下において一晩エージング後、ペルヒドロポリシラザンは凝固した。
【0065】
比較例Dとして、機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える1リットルの3つ口フラスコに、ジクロロシラン(25重量%キシレン溶液、1モル、400g)を投入した。次に、フラスコ内でアンモニアをゆっくりとバブリングさせた。得られた反応混合物の温度が上昇した。100gのアンモニアが付加されるまで反応を続けた。得られた副生成物の塩を濾過により除去した。溶媒を蒸発させて(55℃及び668.7Pa(0.0066大気)の真空に設定した油浴を使用)、0gのポリマーを得た。
【0066】
実施例7
【化7】

機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える1リットルの3つ口フラスコに、ジクロロシラン(25重量%キシレン溶液、0.3モル、121.2g)及び500mLのヘキサンを投入した。次に、トリメチルアミン(160g、2.71モル)をフラスコに加えた。白色固体のトリメチルアミン付加生成物が生成された。1時間後、ドライアイス/アセトン凝縮器を取り外し、本質的に全ての未反応のトリメチルアミンを2時間かけて蒸発させた。続いて、ジメチルジクロロシラン(0.03モル、3.87g)をフラスコに加えた。得られたスラリーを室温で1時間攪拌した。次に、フラスコ内でアンモニアをゆっくりとバブリングさせた。得られた反応混合物の温度が上昇した。67gのアンモニアが付加されるまで反応を続けた。得られた副生成物の塩を濾過により除去した。溶媒を蒸発させて(55℃及び668.7Pa(0.0066大気)の真空に設定した油浴を使用)、6.8gの粘性コポリシラザン(収率44パーセント)を得た。コポリシラザンの粘度(本質的に上記のように測定した)は、25℃において78.46×10−3Pa・s(78.46cP)であった。コポリシラザンは、周囲条件下における2週間のエージングでゲル化しなかった。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例8及び9並びに比較例E
実施例2及び3のコポリシラザンから硬化コーティングを作製した(それぞれ、実施例8及び9とした)。コポリシラザンのヘプタン溶液(及び硬化触媒として4,4’−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)を含有する)であるコーティング溶液を調製し、12番のワイヤを用いてポリカーボネート基材上にコーティングした。コポリシラザン、ヘプタン、及び4,4’−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)の実際量を以下の表2に示すように調整し、同様の粘度であるため同様の厚さになるコーティング溶液を得た。次に、得られたコーティングを乾燥し、60℃、相対湿度95パーセントで12時間硬化した。
【0069】
得られた硬化コーティングの硬度(並びに、コーティングされていないポリカーボネート基材(比較例E)の硬度)を、ナノインデンター(MTS Nano Instruments(Oak Ridge,TN)から入手したDynamic Contact Moduleを備えるNanoindenter XP)を用いて測定した。基材の影響を最小限にするために、100〜150nmの深さ体制においてナノインデンテーションを用い、各コーティングの硬度(H)を決定した。得られたデータを以下の表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含有される参照された記述内容は、その全体が、それぞれ個別に組み込まれているかのように、参照として組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって過度に限定されるものではなく、またかかる実施例及び実施形態は、一例として表されているだけであり、ただし、本発明の範囲は、以下のように本明細書に記載した請求項によってのみ限定されることを意図するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つのジハロシランを少なくとも1つの塩基と反応させることにより、少なくとも1つのジハロシラン−塩基付加生成物を形成する工程と、
(b)所望により、少なくとも1つの該ジハロシラン−塩基付加生成物と少なくとも1つの有機ジハロシランを混ぜ合わせる工程と、
(c)少なくとも1つの該ジハロシラン−塩基付加生成物、又は得られた少なくとも1つの該ジハロシラン−塩基付加生成物と少なくとも1つの前記有機ジハロシランの混合物のアンモノリシスを行う工程と、
を含む、硬化性オリゴマー及び/又はポリマーポリシラザンの調製プロセスであって、前記塩基は、(1)前記ジハロシラン中のケイ素−ハロゲン結合の化学量論量の2倍以下の制限量で、該ジハロシラン−塩基付加生成物の形成、又は(2)前記制限量より多い量で該ジハロシラン−塩基付加生成物の形成に、使用され、前記アンモノリシスの前に、得られた反応済み又は未反応の塩基の全量は前記制限量以下に減少される、プロセス。
【請求項2】
前記ジハロシランが、一般式SIHで表され、式中、各Xが独立してハロゲン原子であるものから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ジハロシランがジクロロシランである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記塩基が、三級アミン、ピリジン、置換ピリジン、立体障害二級アミン、ホスフィン、アルシン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記塩基が、トリメチルアミン、ピリジン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記塩基がピリジンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記塩基の前記制限量が、前記ジハロシラン中のケイ素−ハロゲン結合の前記化学量論量に少なくとも等しく、しかし前記化学量論量の2倍以下である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記塩基の前記制限量が、前記ジハロシラン中のケイ素−ハロゲン結合の前記化学量論量に等しい、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
硬化性ペルヒドロポリシラザンを形成するために前記任意工程(b)が実施されない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
少なくとも1つの硬化性コポリシラザンを形成するために前記任意工程(b)が実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記制限量以下の量で混合される前記工程中に、前記塩基が存在する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記有機ジハロシランは、一般式RSiXで表され、式中、R及びRは独立して水素、有機基、ヘテロ有機基、又はこれらの組み合わせであって、少なくとも1つのR及びRは有機又はヘテロ有機基であり、各Xは独立してハロゲン原子であるものから選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記有機及びヘテロ有機基が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルキルシリル、アリールシリル、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記有機及びヘテロ有機基が1〜18個の炭素原子を有する、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記R及びRが、独立して水素、アルキル、アリール、アルケニル、及びこれらの組み合わせから選択され、並びに/又は、各Xが塩素である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項16】
前記R及びRが、独立して水素、メチル、フェニル、ビニル、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記アンモノリシスがアンモニアとの反応により実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記プロセスが、少なくとも1つの得られた硬化性ポリシラザンを少なくとも1つのフルオロケミカル化合物と反応させて少なくとも1つの硬化性有機フッ素変性ポリシラザンを生成する工程を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
(a)ジクロロシランをピリジンと反応させることによりジクロロシラン−ピリジン付加生成物を形成する工程であって、該ピリジンは、該ジクロロシラン中のケイ素−ハロゲン結合の化学量論量の2倍以下の量で用いられる工程と、
(b)所望により、前記ジクロロシラン−ピリジン付加生成物と少なくとも1つの有機ジクロロシランを混ぜ合わせる工程と、
(c)前記ジクロロシラン−ピリジン付加生成物、又は前記ジクロロシラン−ピリジン付加生成物と前記有機ジクロロシランの少なくとも1つとの混合物のアンモノリシスを行う工程と、
を含む、硬化性オリゴマー及び/又はポリマーポリシラザンの調製プロセス。
【請求項20】
請求項1に記載のプロセスにより調製される硬化性ポリシラザン。
【請求項21】
前記硬化性ポリシラザンが硬化されている、請求項20に記載の硬化性ポリシラザン。

【公表番号】特表2013−515142(P2013−515142A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546060(P2012−546060)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060781
【国際公開番号】WO2011/079020
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】