説明

貯蔵電力制御装置、貯蔵電力制御方法及びプログラム

【課題】 蓄電システム等において、平常時の充放電による運転だけでなく、非常時にも有効活用するための制御を実現可能な貯蔵電力制御装置等を提供する。
【解決手段】 蓄電システム11の利用者・管理者は、蓄電システム11に対して、運転パターンを切り替えるパターン切替指令を与えるだけで、制御部51は、このパターン切替指令に従って、バッテリ21の電力貯蔵量を貯蔵電力設定量以上にし、かつ、商用電源が停電していない場合には、少なくとも貯蔵電力設定量を確保する。これにより、バッテリを温存して停電時の最大限のバックアップを実現することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵電力制御装置、貯蔵電力制御方法及びプログラムに関し、特に商用電源と負荷との経路に接続された蓄電装置の電力貯蔵量を制御する貯蔵電力制御装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力貯蔵の独立分散電源として、蓄電システム、V2Hシステム等が知られている(以下、「蓄電システム等」という。)。従来の蓄電システム等は、予め設定された運転パターンにより日々運転するものであった(特許文献1及び2参照)。
【0003】
蓄電システム等の運転パターンは、夜間充電、昼間放電を標準としている。そして、従来の蓄電システムでは、この運転パターンを変更する際は、手動で細かく設定していた。例えば、停電の恐れが強くなったり(例えば台風の接近など)、停電が計画されたりした場合には、従来の蓄電システム等を手動で停止させてバッテリ残量を確保したり、設定を変更して事前に充電させたりすることで、停電に備えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−245185号公報
【特許文献2】特願2010−50434
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の蓄電システム等では、運転パターンそのものを変更するためには、手動で細かく設定を変更する必要があった。そのため、特殊状態や急なユーザー要求には迅速に対応できなかった。また、設定ミスなどにより、運転に支障が出る場合があった。さらに、手動によって停電に備えるため、煩わしく、さらに、停電終了後に設定を元に戻す作業を忘れてしまい、システムの正常動作に悪影響を生じてしまうケースもあった。
【0006】
そこで、本願発明は、蓄電システム等において、平常時の充放電による運転だけでなく、非常時にも有効活用するための制御を実現可能な貯蔵電力制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の第1の観点は、商用電源と負荷との経路に接続された蓄電装置の電力貯蔵量を制御する貯蔵電力制御装置であって、前記蓄電装置に対して、充電及び放電が可能な標準運転パターンと、前記標準運転パターンとは別に設定された、前記商用電源が停電していない場合における電力貯蔵量の一部又は全部の放電を禁止する特殊運転パターンとを切り替えて充放電を制御する制御手段を備えるものである。
【0008】
本願発明の第2の観点は、第1の観点において、貯蔵電力設定量を記憶する電力量記憶手段を備え、前記制御手段は、運転パターンを切り替えるパターン切替指令に従って、前記標準運転パターンから、電力貯蔵量を前記貯蔵電力設定量以上にし、かつ、前記商用電源が停電していない場合において、少なくとも電力貯蔵量が前記貯蔵電力設定量以下のときの放電を禁止する計画運転パターンへ変更するものである。
【0009】
本願発明の第3の観点は、第2の観点において、前記パターン切替指令には、パターン切り替えを終了するパターン切替終了条件が含まれており、前記制御手段は、前記パターン切替終了条件が成立すると、前記計画運転パターンから前記標準運転パターンへ戻すものである。
【0010】
本願発明の第4の観点は、第3の観点において、前記パターン切替終了条件は、所定の時間及び/又は時刻の経過である。
【0011】
本願発明の第5の観点は、第1の観点において、貯蔵電力設定量を記憶する電力量記憶手段を備え、前記制御手段は、前記商用電源が停電する可能性が高まる停電危険時刻の情報により、当該停電危険時刻までに、前記標準運転パターンから、電力貯蔵量を前記貯蔵電力設定量以上にし、かつ、前記商用電源が停電していない場合において、少なくとも電力貯蔵量が前記貯蔵電力設定量以下のときの放電を禁止する計画運転パターンへ変更するものである。
【0012】
本願発明の第6の観点は、第2から第5のいずれかの観点において、前記制御手段は、前記計画運転パターンにおいて、前記商用電源が停電することにより連系運転から自立運転に移行し、その後、復電することにより自立運転から連系運転に移行した場合に、前記蓄電装置に対して、前記標準運転時の充電電流よりも大きい電流で充電を行うものである。
【0013】
本願発明の第7の観点は、第6の観点において、前記制御手段は、前記蓄電装置に対して、前記標準運転時の充電電流よりも大きい電流で完全充電を行い、規定値まで前記標準運転時の充電電流よりも大きい電流で充電を行って、充電を停止し、又は、前記規定値まで前記標準運転時の充電電流よりも大きい電流で充電を行って、前記標準運転時の充電電流で完全充電を行うものである。
【0014】
本願発明の第8の観点は、第2から第7のいずれかの観点において、前記制御手段は、前記標準運転パターンでは最大効率で放電させ、前記計画運転パターンでは、前記商用電源が停電していない場合には効率を下げ、前記商用電源が停電した場合には最大値まで放電可能にするものである。
【0015】
本願発明の第9の観点は、第1から第8のいずれかの観点において、前記商用電源が停電することにより連系運転から自立運転に移行した場合に、前記商用電源が復電したとき、表示装置に対して、連系運転へ移行する予測時刻を表示させる表示制御手段を備えるものである。
【0016】
本願発明の第10の観点は、商用電源と負荷との経路に接続された蓄電装置の電力貯蔵量を制御する貯蔵電力制御方法であって、制御手段が、前記蓄電装置に対して、充電及び放電が可能な標準運転パターンと、前記標準運転パターンとは別に設定された、前記商用電源が停電していない場合における電力貯蔵量の一部又は全部の放電を禁止する特殊運転パターンとを切り替えて充放電を制御するステップを含むものである。
【0017】
本願発明の第11の観点は、商用電源と負荷との経路に接続された蓄電装置の電力貯蔵量を制御するコンピュータを、前記蓄電装置に対して、充電及び放電が可能な標準運転パターンと、前記標準運転パターンとは別に設定された、前記商用電源が停電していない場合における電力貯蔵量の一部又は全部の放電を禁止する特殊運転パターンとを切り替えて充放電を制御する制御手段として機能させるためのプログラムである。
【0018】
なお、本願発明を、第11の観点のプログラムを(定常的に)記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体として捉えてもよい。
【0019】
また、本願発明は、複数の蓄電システムを管理する場合にも、各蓄電システムを現場で手動設定する必要がなく、統一的に管理することが可能になる。そのため、システム切替指令は、インターネット等を経由して与えられてもよい。
【0020】
さらに、本願発明において、表示制御手段が、表示装置に対して、自立運転中に、ユーザーに対する注意事項を表示するようにしてもよい。注意事項は、例えば、自立運転中にユーザーにしてほしくない事項であり、「自立運転中は、ドライヤーなど使用電力の大きな家電を使用しないでください。」などである。特に、第7の観点において、予測時刻を表示すると、ユーザーが復電したと勘違いして、負荷の使用量を増やしてしまい、蓄電システムが過負荷により停止するという問題がある。そのため、特に、第7の観点において、予測時刻を表示するとともに、注意事項を表示するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本願発明の各観点によれば、貯蔵電力制御装置に対して、単に複数の運転パターンを切り替えることによって、蓄電システムは、標準的な運転パターンから特殊な状況に対応できる特殊運転パターンに移行することが可能になる。標準運転パターンとは別に設定された特殊運転パターンへ切り替えるだけであれば、専門家でなくても可能である。そのため、例えば、蓄電システムの利用者であっても、このような運転パターンの切り替えを指示することが可能になる。よって、例えば停電対策としても、停電可能性の程度に合わせて、容易にシステムの設定を変更することが可能になる。また、複数の蓄電システムを管理する場合にも、各蓄電システムを現場で手動設定する必要がなくなり、統一的に管理することが可能になる。
【0022】
本願発明の第2の観点にあるように、特殊運転パターンの一例は、計画運転パターンである。本願発明の第2の観点によれば、一定の電力貯蔵量を確保して放電を禁止することによって、バッテリを温存して停電時の最大限のバックアップを実現することが可能になる。
【0023】
また、特殊運転パターンの他の一例は、特定日運転パターンである。近年、太陽光、風力などの自然エネルギーを活用した分散型発電システムが大量に導入された。従来の蓄電システム等では、標準的な運転パターンにより、昼間に一斉に売電するため、特定日(軽負荷時)において系統電圧が上昇する問題が生じている。この問題に対応するためには、自然エネルギーを活用した分散型発電システムが発電した電力を、系統に売電せず、家庭内等で用いることが有効である。そのため、本願発明を、制御手段が、特定日運転パターンに切り替えて、系統電圧上昇抑制開始時刻から系統電圧上昇抑制終了時刻まで、蓄電装置に対して、商用電源が停電していない場合には、充電のみを許容し、放電を禁止する状態にするものとして捉えてもよい。ここで、商用電源が停電していれば、系統電圧の上昇はなく、蓄電装置の放電を禁止する必要はない。このような制御を行うことにより、貯蔵システムの利用者が意識せずに、自然エネルギーを活用した分散型発電システムが発電した電力が、蓄電システムに貯蔵されたり、家庭内等で用いられたりすることによって、系統電圧の上昇を抑制して、系統を安定させることが可能になる。
【0024】
また、本願発明の第3の観点によれば、例えば、パターン移行指令によってパターンを移行させる時点で、パターンを変更する必要性がなくなったときの処理を指示することが可能になる。ここで、パターン切替終了条件は、例えば、時刻又は時間の経過(例えば、装置内部のカレンダーを参照することなども含む。)、ユーザー等による終了操作、ウェブからの終了操作などである。従来の蓄電システム等では、手動により運転パターンを設定していたため、停電終了後に、設定を元に戻す作業を忘れて、システムの正常動作へ悪影響を及ぼす可能性があった。そのため、特に、本願発明の第4の観点にあるように、時刻等を指定することによって、このような悪影響を回避することが可能になる。なお、一度設定したパターン切替終了条件であっても、Webの情報などにより、自動的に修正してもよい。
【0025】
また、本願発明の第5の観点によれば、運転パターンの切り替えは、制御手段が、Webの情報などを参照して、停電情報(例えば、計画停電の予定など)や、台風接近の情報などを得ることにより、自動的に行うようにしてもよい。さらに、計画停電の終了時刻や、台風の通過の予測時刻などから、運転パターンの切り替えが必要なくなる時刻(停電危険回避時刻)の情報も得られる。そのため、この停電危険回避時刻以降の時刻の経過をパターン切替終了条件として、計画停電パターンから標準運転パターンへ戻すようにしてもよい。なお、一度設定したパターン切替終了条件であっても、Webの情報などにより、自動的に修正してもよい。
【0026】
さらに、本願発明の第6及び第7の観点によれば、計画運転パターンでは、復電時に急速充電を行って次の停電に備えることにより、実際に停電して復電した場合に、依然として停電の可能性が高いことを考慮して、再停電に対して適切な対応をすることが可能になる。
【0027】
さらに、本願発明の第8の観点によれば、出力をセーブしながら放電させることにより、ある程度のバッテリの温存を行いつつ、バッテリを使用して、不意に起こる停電や電力ピークに対応することが可能になる。
【0028】
さらに、本願発明の第9の観点によれば、表示装置において、自立運転状態から連系運転までの時間を例えばカウントダウン表示することによって、蓄電システムの利用者に対して、復電したこと及び装置が正常に動いていることを知らせることができる。そのため、蓄電システムの利用者に対して、不要な不信感を与えなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本願発明の実施例に係る電力供給システムの構成を示した概略ブロック図である。
【図2】図1の蓄電システム11の各種運転パターン・モードを示すフロー図である。
【図3】計画運転パターンにおける処理の一例を示すフロー図である。
【図4】特定日運転パターンにおける処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、図面を参照して、本願発明の実施例について説明する。なお、本願発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
図1は、本願発明の実施例に係る電力供給システムの構成を示したブロック図である。電力供給システム1は、商用電源3(本願請求項の「商用電源」の一例)と、分電盤5と、太陽光発電源(PV)7と、燃料電池(FC)9と、蓄電システム11と、表示装置13と、家庭用負荷15(本願請求項の「負荷」の一例)と、ネットワーク16を備える。
【0032】
商用電源3は、家庭用負荷15に対して、商用電力を供給する。PV7及びFC9は、他の電源を基準電源として発電した電力を供給する。蓄電システム11は、標準的な運転パターンとして、電気料金の安く軽負荷の深夜に商用電源3の電力を充電し、電気料金の高い昼間に放電して、例えばPV7が発電した電力のうち余剰分を売電する(本願請求項の「標準運転パターン」の一例)。表示装置13は、家庭用負荷15の利用者に対して、蓄電システム11の動作に関する情報を表示するものである。
【0033】
続いて、各電源と家庭用負荷15との接続関係について説明する。以下では、経路について、商用電源3への向きを上流といい、家庭用負荷15への向きを下流という。蓄電システム11は、商用電源3から家庭用負荷15に至る経路上に接続されている。蓄電システム11に蓄電された電力は、法的に売電が禁止されている。そのため、本実施例では、PV7は、蓄電システム11よりも上流の経路に接続されている。また、FC9は、本実施例では、蓄電システム11を基準電源として動作することも可能にするため、蓄電システム11の下流の経路に接続されている。なお、PV7も、売電するときには蓄電システム11の上流の経路に接続し、売電しない場合には蓄電システム11の下流の経路に接続して、蓄電システム11を基準電源として動作できるようにしてもよい。
【0034】
スイッチ17は、契約ブレーカ(リミッタ又はELCB)である。スイッチ17は、PV7よりも上流の経路に設けられている。
【0035】
続いて、蓄電システム11について、具体的に説明する。蓄電システム11は、バッテリ21(本願請求項の「蓄電装置」の一例)と、双方向コンバータ23と、貯蔵電力制御部25(本願請求項の「貯蔵電力制御装置」の一例)を備える。
【0036】
バッテリ21は、電力を充電し、蓄電している電力を放電するものである。双方向コンバータ23は、バッテリ21に対して、交流から直流へ変換して充電し、蓄電している電力を直流から交流に変換して放電する等、バッテリ21の充放電制御を行う。バッテリ21は、双方向コンバータ23を経由して、商用電源3から家庭用負荷15に至る経路上に接続されている(以下、この接続点を「接続点34」という。)。
【0037】
貯蔵電力制御部25は、制御部51(本願請求項の「制御手段」の一例)と、記憶部53(本願請求項の「電力量記憶手段」の一例)と、計測部55と、表示制御部57を備える。制御部51は、双方向コンバータ23を制御して、バッテリ21の充放電制御を行う。記憶部53は、計画運転パターン時に確保される電力量である貯蔵電力設定量などを記憶する。計測部55は、各種測定結果を得る。表示制御部57は、表示装置13に対して、蓄電システム11の動作に関する情報を表示する。
【0038】
蓄電システム11において、接続点34の上流には、自立運転等のために商用電源3との接続を制御するため、解列用MSであるスイッチ31が設けられている。また、受電及びPRPを測定するセンサ33が設けられている。
【0039】
接続点34と双方向コンバータ23との経路には、ELCB37及びスイッチ39を設けている。例えば、バッテリ21を解列する場合には、蓄電システム11の故障対策など様々な場合がある。そのため、スイッチ39を設けている。そして、双方向コンバータ23の出力を測定するセンサ35が設けられている。バッテリ21と双方向コンバータ23との経路には、バッテリ21の出力を測定するセンサ41が設けられている。センサ33、35及び41の測定結果は、計測部55に送信される。
【0040】
続いて、図2〜図4を参照して、図1の電力供給システム1の動作の一例について説明する。図2は、蓄電システム11の各種運転パターン・モードを示すフロー図である。図3は、計画運転パターンにおける処理の一例を示すフロー図である。図4は、特定日運転パターンにおける処理の一例を示すフロー図である。
【0041】
まず、図2を参照して、蓄電システム11の各種運転パターン・モードについて説明する。従来の蓄電システム等は、日々、繰り返し動作するものであった。そのため、運転パターンは、繰り返しの対象となるべきものが1つだけ存在していた。この運転パターンを修正する場合には、その繰り返しの対象となるべきものを手動にて直接修正していた。そのため、煩雑であり、蓄電システム等の動作は、専門業者により管理するしかなかった。さらに、修正した状態から標準的な状態に戻すのを忘れて、非常時の対策のまま、通常時の動作をしてしまうなどの問題が生じていた。
【0042】
本実施例の特徴の一つは、複数の運転パターンが存在することである。これらの運転パターンを、パターン切替指令等により切り替えることで、蓄電システム11の動作を容易に変更することができる。
【0043】
本実施例では、従来の蓄電システム等と同様に、夜間充電、昼間放電を標準としている(本願請求項の「標準運転パターン」の一例)。本実施例では、これを修正する運転パターン(本願請求項の「特殊運転パターン」の一例)として、計画運転パターン及び特定日運転パターンについて、具体的に説明する。
【0044】
計画運転パターンは、一定の時間帯において、停電の可能性が高くなった場合の運転パターンである。停電の可能性が高くなる場合としては、例えば、台風が接近したり、停電が計画されたりした場合などである。この計画運転パターンは、自動的にバッテリの温存を行うパターンである。
【0045】
特定日運転パターンは、特定日(軽負荷時)において、自然エネルギーを活用した分散型発電システムにより、系統電圧が上昇する問題に対策するための運転パターンである。
【0046】
図2(a)を参照して、各種運転パターンの全体像を説明する。制御部51は、計画運転を行うか否かを判断する(ステップST1)。計画運転を開始する場合には、計画運転パターンにする。その動作については、図3を参照して、具体的に説明する。計画運転パターンへの切り替えは、例えば、蓄電システム11の利用者がパターン切替指令を与えることにより行う。また、複数の蓄電システム11の管理者が、インターネット等により、計画停電や台風接近等の情報により、管理対象の蓄電システム11に対して、パターン切替指令を与えて、停電対応への設定を自動的に更新させるものであってもよい。本実施例では、パターン切替指令には、パターン変更処理を開始させるパターン切替開始時刻と、通常の標準運転パターンへ戻すパターン切替終了時刻(本願請求項の「パターン切替終了条件」の一例)が含まれているとする。なお、一度設定したパターン切替終了条件であっても、Webの情報などにより、自動的に修正してもよい。
【0047】
なお、計画運転パターンへの切り替えは、例えば、制御部51が、ネットワーク16(例えば、インターネットによるWeb上の情報など)を参照して、停電情報(例えば、計画停電の予定など)や、台風接近の情報などを得ることにより、停電の可能性が高まる時刻(停電危険時刻)の情報を得て、この停電危険時刻までに自動的に行うようにしてもよい。さらに、計画停電の終了時刻や、台風の通過の予測時刻などから、運転パターンの切り替えが必要なくなる時刻(停電危険回避時刻)の情報も得られる。そのため、この停電危険回避時刻以降の時刻の経過をパターン切替終了条件として、計画停電パターンから標準運転パターンへ戻すようにしてもよい。なお、一度設定したパターン切替終了条件であっても、Webの情報などにより、自動的に修正してもよい。
【0048】
次に、制御部51は、特定日運転をするか否かを判断する(ステップST2)。特定日運転を開始する場合には、特定日運転パターンにする。その動作については、図4を参照して、具体的に説明する。
【0049】
続いて、図2(b)を参照して、運転モードについて説明する。制御部51は、商用電源3が存在するか否かを判断する(ステップSTU1)。存在する場合には、商用電源3と連系する連系運転モードとする。存在しない場合には、自立運転モードとする。
【0050】
次に、制御部51は、放電条件が成立するか否かを判断する(ステップSTU2)。成立しない場合には、充電を行う充電運転モードとする。放電条件が成立する場合、出力をセーブするか否かを判断する(ステップSTU3)。出力をセーブしない場合には通常の放電を行う放電運転モードとする。出力をセーブする場合には、出力セーブモードとする。出力セーブモードでは、通常放電時に出力をセーブすることで、計画停電でなくても、不意な停電にもバッテリを残し、対応することができる。
【0051】
続いて、図3を参照して、計画運転パターンにおける動作の一例を説明する。蓄電システム11は、標準運転を行っている(ステップSTP1)。制御部51は、計画運転パターンに移行したか否かを判断する(ステップSTP2)。計画運転パターンに移行していない場合には、標準運転を継続する。計画運転パターンに移行する場合、パターン切替開始時刻において、記憶部53に記憶された貯蔵電力設定量以上を確保する(ステップSTP3)。そして、バッテリ21の放電は、貯蔵電力設定量以上の場合にのみ許容する状態とする(ステップSTP4)。このように、蓄電システム11は、計画運転パターンでは、充電は標準運転の状態のままで、かつ、放電が制限された状態で、運転を継続する。
【0052】
制御部51は、停電が発生したか否かを判断する(ステップSTP5)。停電が発生していない場合、パターン切替終了時刻が到来したか否かを判断する(ステップSTP6)。パターン切替終了時刻が到来していない場合には、ステップSTP5の処理に戻る。パターン切替終了時刻が到来している場合には、放電の量的規制制御を解除して、標準運転の状態に戻す。
【0053】
ステップSTP5において、停電が発生した場合、蓄電システム11は、連系運転から自立運転へ移行する(ステップSTP8)。制御部51は、放電の量的禁止制御を解除する(ステップSTP9)。
【0054】
制御部51は、家庭用負荷15に対して、バッテリ21に充電された電力を放電する(ステップSTP10)。自立運転時は、電圧部となるため、負荷に応じた電流が流れる。
【0055】
制御部51は、復電したか否かを判断する(ステップSTP11)。復電するまで、負荷に対して充電された電力を放電する。復電した場合、自立運転から連系運転に移行する(ステップSTP12)。ここで、表示制御部57は、表示装置13に対して、自立運転終了(復電)を表示して、連系運転までの時間をカウントダウン表示する。これにより、利用者に対して、復電した状態と装置が正常に動いていることを知らせ、不要な不信感を与えなくすることができる。
【0056】
制御部51は、バッテリ21の電力貯蔵量が貯蔵電力設定量以上になるまで、充電を行う(ステップSTP13)。このとき、充電効率は、効率を無視して、例えば、最大電流での充電を行う。このような急速充電により、次の停電に備えることが可能になる。なお、貯蔵電力設定量以上も急速充電をしてもよい。また、貯蔵電力設定量は一例であり、この貯蔵電力設定量に至るまで急速充電を行う必要もない。例えば、SOC100%として停電対策を最優先としてもよく、経済性を考慮してSOC80%としてもよい。また、SOC50%まで急速充電して、その後、通常の充電をしてもよい。また、充電する時間帯によって、電気料金が変動する。そのため、充電の時間帯によって充電の量を変更するようにしてもよい。制御部51は、バッテリ21に対して、電力貯蔵量が貯蔵電力設定量以上の場合にのみ放電を許容する状態とする(ステップSTP14)。
【0057】
本実施例によれば、貯蔵電力制御部25に対して、単にパターン切替指令を与えるだけで、蓄電システム11は、標準的な運転パターンから計画運転パターンに移行し、一定の電力貯蔵量を確保して放電を制限することによって、バッテリを温存して停電時の最大限のバックアップを実現することが可能になる。パターン切替指令を与えるだけであれば、専門家でなくても行うことができる。そのため、蓄電システムの利用者が、指定することができる。また、複数の蓄電システムを管理する場合にも、各蓄電システムを現場で手動設定する必要がなくなり、統一的に管理することが可能になる。
【0058】
なお、パターン切替指令は、単にパターン切替終了時刻を含むものでもよい。この場合、制御部51は、例えば、受信した時点でパターン変更処理を行う。また、制御部51は、パターン切替指令においてパターン切替終了時刻が指定されていなかった場合には、標準運転へのパターン切替指令があったときに、標準運転に戻るようにしてもよい。
【0059】
また、ステップSTP4では、放電を禁止するようにしてもよい。この場合、全体的な動作としては、充電を開始し、充電終了後は待機し、停電予定時間(パターン切替終了時刻)が経過した後は標準運転に戻るものになる。
【0060】
また、蓄電システムを効率良く運用するため、標準運転では最大効率での充放電とし、計画運転パターンでは、定格運転や過負荷運転を行うようにしてもよい。このような制御によって、標準運転ではロスを最小化し、他方、非常時にはシステム全体のメリットを得るように充放電量を変化させた運転が可能になる。
【0061】
続いて、図4を参照して、特定日運転パターンについて説明する。まず、制御部51は、スケジュールを把握し、特定日か否かを判断する(ステップSTT1)。特定日か否かは、例えば、利用者や管理者が特定日運転パターンに移行するためのパターン切替指令を送信することによって判断してもよい。また、自動的に変更するためには、家庭用負荷15だけでなく、その地域の発電量と消費量を予測することが有効である。そのため、発電量の観点からは、例えば、PV7の発電量から周囲の発電量を予測して、特定日か否かを判断してもよい。また、消費量の観点からは、例えば、蓄電システム11の内部のカレンダーによって、休日等の軽負荷時を判断してもよい。また、PV7からの情報により運転するようにしてもよい。自動的に切り替えることにより、利用者が意識せずに、特定日運転パターンへの移行を行うことができる。
【0062】
標準運転では、蓄電システム11は、基本的に、料金の安い夜間に電力を充電し、これを昼間に放電する。そのとき、PV7で発電されたものは、商用電源3に売電してよい。しかし、特定日では、各家庭が売電するために、系統電圧が上昇するという問題が生じる。そのため、特定日運転パターンでは、昼間であっても、充電を行う。すなわち、充電開始時刻が到来して(ステップSTT2)、充電運転を行う(ステップSTT3)。そして、最大限に充電(完全充電)されるか(ステップSTT4)、又は、充電終了時刻になるまで(ステップSTT5)、充電運転を行う。満充電か充電終了時刻になると、充電を停止する(ステップSTT6)。
【0063】
このような制御を行うことにより、貯蔵システム11の利用者が意識せずに、自然エネルギーを活用した分散型発電システムが発電した電力が、蓄電システム11に貯蔵され、又は、家庭内等で用いられることによって、系統電圧の上昇を抑制して系統を安定させることが可能になる。
【符号の説明】
【0064】
1 電力供給システム、3 商用電源、5 分電盤、7 PV、9 FC、11 蓄電システム、13 表示装置、15 家庭用負荷、21 バッテリ、23 双方向コンバータ、25 貯蔵電力制御部、51 制御部、53 記憶部、55 計測部、57 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源と負荷との経路に接続された蓄電装置の電力貯蔵量を制御する貯蔵電力制御装置であって、
前記蓄電装置に対して、充電及び放電が可能な標準運転パターンと、前記標準運転パターンとは別に設定された、前記商用電源が停電していない場合における電力貯蔵量の一部又は全部の放電を禁止する特殊運転パターンとを切り替えて充放電を制御する制御手段を備える貯蔵電力制御装置。
【請求項2】
貯蔵電力設定量を記憶する電力量記憶手段を備え、
前記制御手段は、運転パターンを切り替えるパターン切替指令に従って、前記標準運転パターンから、電力貯蔵量を前記貯蔵電力設定量以上にし、かつ、前記商用電源が停電していない場合において、少なくとも電力貯蔵量が前記貯蔵電力設定量以下のときの放電を禁止する計画運転パターンへ変更する、請求項1記載の貯蔵電力制御装置。
【請求項3】
前記パターン切替指令には、パターン切り替えを終了するパターン切替終了条件が含まれており、
前記制御手段は、前記パターン切替終了条件が成立すると、前記計画運転パターンから前記標準運転パターンへ戻す、請求項2記載の貯蔵電力制御装置。
【請求項4】
前記パターン切替終了条件は、所定の時間及び/又は時刻の経過である、請求項3記載の貯蔵電力制御装置。
【請求項5】
貯蔵電力設定量を記憶する電力量記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記商用電源が停電する可能性が高まる停電危険時刻の情報により、当該停電危険時刻までに、前記標準運転パターンから、電力貯蔵量を前記貯蔵電力設定量以上にし、かつ、前記商用電源が停電していない場合において、少なくとも電力貯蔵量が前記貯蔵電力設定量以下のときの放電を禁止する計画運転パターンへ変更する、請求項1記載の貯蔵電力制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記計画運転パターンにおいて、前記商用電源が停電することにより連系運転から自立運転に移行し、その後、復電することにより自立運転から連系運転に移行した場合に、前記蓄電装置に対して、前記標準運転時の充電電流よりも大きい電流で充電を行う、請求項2から5のいずれかに記載の貯蔵電力制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記蓄電装置に対して、
前記標準運転時の充電電流よりも大きい電流で完全充電を行い、
規定値まで前記標準運転時の充電電流よりも大きい電流で充電を行って、充電を停止し、又は、
前記規定値まで前記標準運転時の充電電流よりも大きい電流で充電を行って、前記標準運転時の充電電流で完全充電を行う、請求項6記載の貯蔵電力制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記標準運転パターンでは最大効率で放電させ、
前記計画運転パターンでは、前記商用電源が停電していない場合には効率を下げ、前記商用電源が停電した場合には最大値まで放電可能にする、
請求項2から7のいずれかに記載の貯蔵電力制御装置。
【請求項9】
前記商用電源が停電することにより連系運転から自立運転に移行した場合に、前記商用電源が復電したとき、表示装置に対して、連系運転へ移行する予測時刻を表示させる表示制御手段を備える請求項1から8のいずれかに記載の貯蔵電力制御装置。
【請求項10】
商用電源と負荷との経路に接続された蓄電装置の電力貯蔵量を制御する貯蔵電力制御方法であって、
制御手段が、前記蓄電装置に対して、充電及び放電が可能な標準運転パターンと、前記標準運転パターンとは別に設定された、前記商用電源が停電していない場合における電力貯蔵量の一部又は全部の放電を禁止する特殊運転パターンとを切り替えて充放電を制御するステップを含む貯蔵電力制御方法。
【請求項11】
商用電源と負荷との経路に接続された蓄電装置の電力貯蔵量を制御するコンピュータを、前記蓄電装置に対して、充電及び放電が可能な標準運転パターンと、前記標準運転パターンとは別に設定された、前記商用電源が停電していない場合における電力貯蔵量の一部又は全部の放電を禁止する特殊運転パターンとを切り替えて充放電を制御する制御手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−27136(P2013−27136A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159192(P2011−159192)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(591212718)株式会社正興電機製作所 (25)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】