説明

貼付剤

【課題】 ベラプロストの皮膚透過性に優れた貼付剤を提供すること。
【解決手段】 粘着剤層と支持体層とを備えており、有効成分としてのベラプロスト又はその薬理学的に許容される塩と、経皮吸収促進剤としての炭素数14〜20の脂肪族アルコールと、を前記粘着剤層中に含有することを特徴とする貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物の投与方法としては、従来から経口投与、直腸投与、皮内投与、静脈投与等の種々の方法が知られており、吸収後肝臓において一次代謝を受けにくいことや、副作用が少なく、安全かつ持続的に薬物を吸収させることが期待できる方法として、貼付剤等により経皮投与をする方法が注目されている。しかしながら、異物の体内への進入を防ぐバリヤー機能を持っている皮膚は薬物に対して強力なバリヤー機能を発揮するため、経皮投与においては、薬物の透過性が低く、十分な薬効が期待できないという問題を有していた。そのため、経皮投与における薬物の皮膚透過性を高めるための様々な検討がなされており、例えば、国際公開第01/005381号(特許文献1)には、塩形態を有する酸性薬物と塩化アンモニウムのような塩基性物質の付加塩化合物とを含有する経皮吸収製剤が記載されている。
【0003】
また、ベラプロストは強力な血小板凝集抑制作用及び血管拡張作用を有する薬物であり、血管障害の治療薬として期待されている。しかしながら、ベラプロストは化学的にきわめて不安定であるため、従来、その投与方法としては静脈内投与や経口投与等の限られた方法しかなかった。現在ではベラプロストの経皮投与に関する開発が行われており、例えば、国際公開第1996/015793号(特許文献2)にはベラプロストと飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸とを含有する経皮吸収製剤として、貼付剤が記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の貼付剤においては、ベラプロストの皮膚透過性は未だ十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第01/005381号
【特許文献2】国際公開第1996/015793号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ベラプロストの皮膚透過性に優れた貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、支持体と粘着剤層とを備える貼付剤において、前記粘着剤層中に、有効成分としてベラプロスト又はその薬理学的に許容される塩と、経皮吸収促進剤として炭素数14〜20の脂肪族アルコールとを組み合わせて含有せしめることにより、ベラプロストの皮膚透過性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。なお、特許文献1〜2においては、貼付剤においてベラプロストと炭素数14〜20の脂肪族アルコールとを組み合わせることについて何ら言及されていない。
【0007】
すなわち、本発明の貼付剤は、
粘着剤層と支持体層とを備えており、有効成分としてのベラプロスト又はその薬理学的に許容される塩と、経皮吸収促進剤としての炭素数14〜20の脂肪族アルコールと、を前記粘着剤層中に含有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の貼付剤としては、前記脂肪族アルコールがミリスチルアルコール又はオレイルアルコールであることが好ましい。また、前記脂肪族アルコールがミリスチルアルコールである場合には、その含有量が前記粘着剤層中において5〜10質量%であることが好ましく、前記脂肪族アルコールがオレイルアルコールである場合には、その含有量が前記粘着剤層中において2.5〜10質量%であることがより好ましい。
【0009】
さらに、本発明の貼付剤としては、前記粘着剤層中に塩化アンモニウムをさらに含有することがより好ましい。また、本発明の貼付剤としては、前記粘着剤層中にスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体をさらに含有することが好ましく、さらに、前記粘着剤層中に粘着付与剤及び可塑剤をさらに含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベラプロストの皮膚透過性に優れた貼付剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0012】
本発明の貼付剤は、粘着剤層と支持体層とを備えている。前記粘着剤層は、前記支持体層の面上(通常は一方の面上)に形成された層であり、有効成分、経皮吸収促進剤及び粘着基剤を含有している層である。本発明に係る粘着剤層は、前記有効成分としてベラプロスト又はその薬理学的に許容される塩を含有しており、前記経皮吸収促進剤として炭素数14〜20の脂肪族アルコールを含有している。また、このような粘着剤層の厚さとしては特に制限されないが、通常10〜300μm程度であることが好ましい。
【0013】
前記ベラプロストとは、分子式C2430で表わされる2,3,3a,8b−テトラヒドロ−2−ヒドロキシ−1−(3−ヒドロキシ−4−メチル−1−オクテン−6−イン−1−イル)−1H−シクロペンタ(b)ベンゾフラン−5−ブタン酸[2,3,3a,8b−tetrahydro−2−hydroxy−1−(3−hydroxy−4−methyl−1−octen−6−yn−1−yl)−1H−cyclopenta(b)benzofuran−5−butanoic acid]を指す。前記ベラプロストはプロスタグランジンI誘導体の1種であり、血小板凝集抑制作用及び血管拡張作用を有する薬物である。
【0014】
本発明において有効成分として含有されるベラプロストの形態としては、遊離体であってもその薬理学的に許容される塩であってもよく、製造中及び/又は製造された製剤中においてベラプロストの塩が脱塩されて遊離体となったものであってもよく、これらのうちの1種であっても2種以上が混合されていてもよい。これらの中でも、本発明に係るベラプロストの形態としては、薬物の安定性が向上し、酸によりひきおこされる皮膚への刺激や製剤物性の低下を抑制できる傾向にあるという観点から、ベラプロストの薬理学的に許容される塩であることが好ましい。
【0015】
前記ベラプロストの薬理学的に許容される塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム等の金属塩;トロメタミン等のアミン塩が挙げられ、これらの中でもナトリウム塩であることが好ましい。
【0016】
本発明の貼付剤において、このようなベラプロスト及びその薬理学的に許容される塩の合計含有量としては、前記粘着剤層中において0.2〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、ベラプロストの皮膚透過性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、ベラプロストの結晶が析出して粘着剤層の粘着力が低下する傾向にある。
【0017】
本発明に係る炭素数14〜20の脂肪族アルコールとしては、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。このような炭素数14〜20の脂肪族アルコールとしては、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、リノリルアルコールが挙げられ、これらの中でも、ベラプロストの皮膚透過性がより向上する傾向にあるという観点から、炭素数14〜20の直鎖状の脂肪族アルコールであることが好ましく、ミリスチルアルコール、オレイルアルコールであることがより好ましい。また、本発明に係る炭素数14〜20の脂肪族アルコールとしては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明の貼付剤において、このような炭素数14〜20の脂肪族アルコールの含有量としては、前記粘着剤層中において1〜20質量%であることが好ましく、2.5〜10質量%であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、ベラプロストの皮膚透過性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、粘着剤層の粘着力や凝集力が低下する傾向にある。特に、本発明に係る炭素数14〜20の脂肪族アルコールがミリスチルアルコールである場合には、その含有量は前記粘着剤層中において1〜20質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。また、本発明に係る炭素数14〜20の脂肪族アルコールがオレイルアルコールである場合には、その含有量は前記粘着剤層中において1〜20質量%であることが好ましく、2.5〜10質量%であることがより好ましい。前記ミリスチルアルコール又はオレイルアルコールの含有量が前記下限未満である場合には、ベラプロストの皮膚透過性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、粘着剤層の粘着力や凝集力が低下する傾向にある。
【0019】
本発明の貼付剤としては、前記粘着剤層中に塩化アンモニウムをさらに含有することが好ましい。塩化アンモニウムをさらに含有せしめることにより、ベラプロストの皮膚透過性をより向上させることができる傾向にある。特に、通常、薬物が塩の形態である場合には、皮膚における異物の体内への進入を防ぐバリヤー機能がより強力に発揮されるため、薬物の透過性が低くなり、十分な薬効が期待できない傾向にあるが、前記塩化アンモニウムをさらに含有せしめることにより、ベラプロストが塩の形態であってもその皮膚透過性をより向上させることができる傾向にある。
【0020】
前記塩化アンモニウムを本発明の貼付剤に含有せしめる場合、その含有量としては、前記粘着剤層中において0.13〜2.5質量%であることが好ましく、0.13〜1.3質量%であることがより好ましい。前記塩化アンモニウムの含有量が前記下限未満である場合には、ベラプロストの皮膚透過性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、塩化アンモニウムの溶解性が低下し、製剤物性が低下する傾向にある。
【0021】
また、前記粘着剤層中における前記塩化アンモニウムの含有量としては、前記ベラプロスト及びその薬理学的に許容される塩の合計含有量に対して0.5〜10倍モル、より好ましくは0.5〜7倍モルとなるような含有量であることが好ましい。前記含有量が前記下限未満である場合には、ベラプロストの皮膚透過性が不十分となり、十分な薬効が得られない傾向にある。他方、前記上限を超える場合には、ベラプロストの皮膚透過性は向上するものの、塩化アンモニウムの溶解性が低下し、製剤物性の低下が起こりやすくなる傾向にある。
【0022】
また、本発明に係る粘着剤層における粘着基剤としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、アクリル系ポリマー、天然ゴム、ポリウレタン系ゴム等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明において、前記粘着基剤としては、ベラプロストの皮膚透過性をより向上させることができる傾向にあるという観点から、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体であることが好ましい。前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体としては、具体的には、カリフレックスTR−1107、TR−1111、TR−1112又はTR−1117(商品名、シェル化学(株)製)、クインタック3530、3570C又は3421(商品名、日本ゼオン(株)製)、JSR SIS−5000又は5002(商品名、日本合成ゴム(株)製)、ソルプレン428(商品名、フィリップペトロリアム(株)製)等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
前記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を前記貼付剤に含有せしめる場合、その含有量としては、前記粘着剤層中において5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。前記含有量をこのような範囲内にすることにより、粘着性や長時間の皮膚への付着性、薬物の経皮吸収性・分散性、剥離時の痛み、皮膚のかぶれ等が大きく改善される傾向にある。また、前記含有量が前記下限未満である場合には、粘着剤層の凝集力や保型性等が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、粘着剤層の凝集力が増加して粘着力の低下や、粘着剤層の不均一化を招く傾向にある。
【0025】
前記ポリイソブチレンとしては、具体的には、オパノールB−3、B−10、B−15、B−50、B−100、B−200(商品名、BASF製)、ビスタネックスLM−MS、LM−MH、MML−80、LLM−100、LLM−120、LLM−140(商品名、エクソン化学(株)製)、テトラックス3T、4T、5T、6T(商品名、日本石油化学(株)製)等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記ポリイソブチレンを前記貼付剤に含有せしめる場合、その含有量としては、前記粘着剤層中において2〜30質量%であることが好ましく、4〜20質量%であることがより好ましい。前記含有量をこのような範囲内にすることにより、粘着性や長時間の皮膚への付着性、薬物の経皮吸収性・分散性、剥離時の痛み、皮膚のかぶれ等が大きく改善される傾向にある。また、前記含有量が前記下限未満である場合には、粘着力や長時間の皮膚への付着性が低下し、剥離時の痛みや皮膚のかぶれ等が増加する傾向にある。他方、前記上限を超える場合には、粘着剤層の保型性等が低下しべたつきが増加する傾向にある。
【0026】
前記アクリル系ポリマーとしては、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、メタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリル酸からなる群から選択される少なくとも2種類の化合物の共重合体が挙げられ、具体的には、DURO−TAK 87−2097、87−2194、87−2196、87−2287、87−2516、87−2852、87−235A(商品名、ヘンケル・ジャパン製)、ニッセツKP−77、AS−370(商品名、日本カーバイト工業(株)製)等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記アクリル系ポリマーを前記貼付剤に含有せしめる場合、その含有量としては、ベラプロストの皮膚透過性をより向上させることができる傾向にあるという観点から、前記粘着剤層中において93質量%以下であることが好ましい。
【0027】
また、前記貼付剤としては、前記粘着剤層中に粘着付与剤及び可塑剤をさらに含有することが好ましい。前記粘着付与剤としては、例えば、ロジンエステル、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペンフェノール等が挙げられ、具体的には、エステルガムA、AA−G、H又はHP(商品名、荒川化学工業(株)製)、ハリエスターL、S又はP(商品名、荒川化学工業(株)製)、パインクリスタルKE−100(商品名、荒川化学工業(株)製)、KE−311(商品名、荒川化学工業(株)製)、ハーコリンD(商品名、理化ハーキュレス(株)製)、フォーラル85又は105(商品名、理化ハーキュレス(株)製)、ステベライトエステル7又は10(商品名、理化ハーキュレス(株)製)、ペンタリン4820又は4740(商品名、理化ハーキュレス(株)製)、アルコンP−85又はP−100(商品名、荒川化学工業(株)製)等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
前記粘着付与剤を前記貼付剤に含有せしめる場合、その含有量としては、前記粘着剤層中において5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。前記含有量をこのような範囲内にすることにより、粘着性や長時間の皮膚への付着性、薬物の経皮吸収性・分散性、剥離時の痛み、皮膚のかぶれ等が大きく改善される傾向にある。また、前記含有量が前記下限未満である場合には、粘着力や長時間の皮膚への付着性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、薬物の経皮吸収性、粘着剤層の保型性等が低下し、剥離時の痛み、皮膚のかぶれ、べたつき等が増加する傾向にある。
【0029】
前記可塑剤としては、石油系オイル(例えば、流動パラフィン等のパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例えば、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油)、二塩基酸エステル(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、液状ゴム(例えば、液状ポリブテン、液状イソプレンゴム等)等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような可塑剤としては、粘着剤層の皮膚への付着性がより向上し、皮膚への刺激が低減される傾向にあるという観点から、流動パラフィン、液状ポリブテンが好ましい。
【0030】
前記可塑剤を前記貼付剤に含有せしめる場合、その含有量としては、前記粘着剤層中において7〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましい。前記含有量をこのような範囲内にすることにより、粘着性や長時間の皮膚への付着性、薬物の経皮吸収性・分散性、剥離時の痛み、皮膚のかぶれ等が大きく改善される傾向にある。また、前記含有量が前記下限未満である場合には、粘着力や薬物の経皮吸収性・分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、粘着剤層の凝集力や保型性が低下し、剥離時の痛み、べたつき等が増加する傾向にある。
【0031】
さらに、前記貼付剤としては、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ノルジヒドログアヤレチン酸、トコフェロール、酢酸トコフェロール等)、紫外線吸収剤(例えばパラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エステル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、サリチル酸エステル、アントラニル酸メチル、ウンベリフェロン、エスクリン、ケイヒ酸ベンジル、シノキサート、グアイアズレン、ウロカニン酸、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクタペンゾン、ジオキシベンゾン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、スリンペンゾン、ベンゾレルシノール、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート等)、抗菌剤(例えばパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸、安息香酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、ヒノキチオール、クレゾール、2,4,4−トリクロロ−2‘−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’−トリクロロカルバニド、クロロブタノール等)、充填剤(例えば水酸化アルミニウム、含水ケイ酸アルミニウム、カオリン、酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、含水シリカ、炭酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、無水ケイ酸、ベントナイト、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等)、抗ヒスタミン剤(例えば塩化イソペンチル、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イプロヘプチン、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸トリプロリジン、塩酸プロメタジン、塩酸ホモクロルシクリジン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、フマル酸クレマスチン、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸ジメチンデン、メキタジン等)、清涼剤、香料等を前記粘着剤層中に含有していてもよい。
【0032】
本発明に係る支持体層としては、前記粘着剤層を支持可能なものであればよく、特に制限されないが、貼付剤の皮膚に対する粘着性を高める観点から、適度な柔軟性を有していることが好ましい。また、前記支持体層の厚さとしては特に制限されないが、通常2〜3000μm程度であることが好ましい。
【0033】
このような支持体層の形態としては、フィルム、織布及び不織布を挙げることができる。前記フィルム、織布及び不織布の材質としては、特に制限されず、通常貼付剤の支持体層の材質として使用できるものを適宜用いることができる。このような材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;レーヨン、パルプ、綿等のセルロース又はその誘導体;ポリアクリロニトリル等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、本発明の貼付剤としては、貼付剤を使用する時まで前記粘着剤層の表面を被覆して保護するために、剥離ライナー層をさらに備えていてもよい。前記剥離ライナー層の材質としては、特に制限されず、通常貼付剤の剥離ライナー層の材質として使用できるものを適宜用いることができる。このような材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;ポリアクリロニトリル;セルロース又はその誘導体;アルミニウム等の金属箔等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記剥離ライナー層としては、前記材質からなるフィルム及びシートが挙げられ、このようなフィルム及びシートとしては、その離型性を増すために、前記粘着剤層に接する面にあらかじめシリコーン処理やフッ素樹脂処理等が施されたものであってもよい。
【0035】
本発明に係る貼付剤は、特に制限されず、公知の貼付剤の製造方法を適宜採用することにより製造することができ、例えば、以下の方法により製造することができる。先ず、前記ベラプロスト又はその薬理学的に許容される塩と、前記脂肪族アルコールと、必要に応じて前記塩化アンモニウムと、前記粘着基剤とを常法に従って練合して均一な粘着剤層組成物を得る。次いで、この粘着剤層組成物を前記支持体層の面上(通常は一方の面上)に所定の厚みで塗布して粘着剤層を形成する。次いで、前記粘着剤層の前記支持体層と反対の面上に前記剥離ライナー層を貼り合わせ、所定の形状に裁断することにより本発明の貼付剤を得ることができる。あるいは、前記粘着剤層組成物を先ず前記剥離ライナー層の一方の面上に所定の厚みで塗布して粘着剤層を形成した後に、前記粘着剤層の前記剥離ライナー層と反対の面上に前記支持体層を貼り合わせ、所定の形状に裁断することにより本発明の貼付剤を得てもよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において得られた貼付剤において、皮膚透過試験は以下に示す方法により行った。
【0037】
(皮膚透過試験)
先ず、ヘアレスマウスの背部皮膚を剥離し、その真皮側がレセプター槽側となるようにして、32℃の温水を外周部に循環させたフランツ型フロースルーセルに装着した。次いで、この皮膚の角質層側に5cmの大きさに切断して剥離ライナー層を除去した貼付剤を貼付した。前記フロースルーセルのレセプター槽にはリン酸緩衝溶液(pH7.4)を5mL/hrの流量でフローして、レセプター槽から4時間毎に24時間まで試料液を採取し、採取したそれぞれの試料液について高速液体クロマトグラフ法により薬物(ベラプロスト)の濃度を測定し、得られた測定値から、1時間あたりの薬物の皮膚透過速度最大値(Jmax:μg/cm/hr)を、以下の式:
Jmax(μg/cm/hr)=[薬物濃度(μg/ml)×流量(ml)]/貼付剤面積(cm)/時間(hr)
により算出した。また、測定開始から24時間経過後まで、24時間分の薬物の累積皮膚透過量(μg/cm/24hr)を、上記により得られた薬物透過量を24時間分積算することにより求めた。さらに、薬物の利用率(%)を、以下の式:
利用率(%)={(24時間分の薬物の累積皮膚透過量)/(貼付剤1cmあたりの薬物の含有量)}×100
により算出した。皮膚透過速度最大値及び/又は累積皮膚透過量の値が大きい製剤は、薬物の皮膚透過性に優れたものと認められる。
【0038】
(実施例1)
先ず、ベラプロストナトリウムが2.00質量%、ミリスチルアルコールが5.00質量%、塩化アンモニウムが0.25質量%、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)が24.41質量%、粘着付与剤(「アルコンP−100」、荒川化学工業(株)製)が43.93質量%、流動パラフィンが24.41質量%となるようにそれぞれ秤取して混合し、粘着剤層組成物を得た。次いで、得られた粘着剤層組成物を100g/mとなるようにポリエステルフィルムの一方の面上に展延した後、前記粘着剤層組成物の塗布面をポリプロピレン製の剥離ライナー層で覆い、所定の大きさ(10cm×14cm)に裁断して貼付剤(粘着剤)を得た。得られた貼付剤について皮膚透過試験を行った結果を粘着剤層組成物の組成と共に表1に示す。
【0039】
(実施例2〜4)
ミリスチルアルコールに代えてオレイルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコールをそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様にして貼付剤を得た。得られた貼付剤について皮膚透過試験を行った結果を各粘着剤層組成物の組成と共に表1に示す。
【0040】
(比較例1〜13)
ミリスチルアルコールに代えてそれぞれ表1に示す経皮吸収促進剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして貼付剤を得た。得られた貼付剤について皮膚透過試験を行った結果を各粘着剤層組成物の組成と共に表1に示す。なお、表1中、「オイドラギット(*1)」とは、ローム・ファーマ社製の「オイドラギッドL−100」を指す。
【0041】
【表1】

【0042】
(実施例5〜6)
塩化アンモニウム、SIS、粘着付与剤、流動パラフィンの含有量をそれぞれ表2に示す含有量としたこと以外は実施例1と同様にして貼付剤を得た。得られた貼付剤について皮膚透過試験を行った結果を各粘着剤層組成物の組成と共に表2に示す。また、実施例1において得られた貼付剤についても併せて示す。
【0043】
【表2】

【0044】
(実施例7〜9)
ミリスチルアルコール、SIS、粘着付与剤、流動パラフィンの含有量をそれぞれ表3に示す含有量としたこと以外は実施例1と同様にして貼付剤を得た。得られた貼付剤について皮膚透過試験を行った結果を各粘着剤層組成物の組成と共に表3に示す。また、実施例1において得られた貼付剤についても併せて示す。
【0045】
【表3】

【0046】
(実施例10〜12)
オレイルアルコール、SIS、粘着付与剤、流動パラフィンの含有量をそれぞれ表4に示す含有量としたこと以外は実施例2と同様にして貼付剤を得た。得られた貼付剤について皮膚透過試験を行った結果を各粘着剤層組成物の組成と共に表4に示す。また、実施例2において得られた貼付剤についても併せて示す。
【0047】
【表4】

【0048】
表1〜4に示した結果から明らかなように、本発明の貼付剤は、ベラプロストの皮膚透過性が優れることが確認された。これに対して、炭素数14〜20の脂肪族アルコールを含有しない貼付剤は、従来の経皮吸収促進剤が含有されていてもベラプロストの皮膚透過性が劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本発明によれば、ベラプロストの皮膚透過性に優れた貼付剤を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と支持体層とを備えており、有効成分としてのベラプロスト又はその薬理学的に許容される塩と、経皮吸収促進剤としての炭素数14〜20の脂肪族アルコールと、を前記粘着剤層中に含有することを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
前記脂肪族アルコールがミリスチルアルコール又はオレイルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
前記脂肪族アルコールがミリスチルアルコールであり、その含有量が前記粘着剤層中において5〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の貼付剤。
【請求項4】
前記脂肪族アルコールがオレイルアルコールであり、その含有量が前記粘着剤層中において2.5〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の貼付剤。
【請求項5】
前記粘着剤層中に塩化アンモニウムをさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項6】
前記粘着剤層中にスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体をさらに含有することを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項7】
前記粘着剤層中に粘着付与剤及び可塑剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。

【公開番号】特開2013−67584(P2013−67584A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207241(P2011−207241)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】