説明

貼合用紙

【課題】水系接着剤を用いながら、内包する各種薬剤の効果を妨げることなく、積層される樹脂フィルムとの貼合性、外表面への高精細な印刷適性に優れた貼合紙を提供する。
【解決手段】JIS P 8220に準拠して離解することで得られる貼合用紙の離解パルプの重量平均繊維長が0.5〜1.2mmであり、JIS Z 0208に準拠して測定された透湿度が4500〜9000g/m・24hであり、JIS P 8122に準拠して測定したステキヒトサイズ度が0.5〜7秒であり、JIS P 8135に準拠して測定された湿潤引張強度が0.15kN/m以上であり、JIS P 8124に準拠して測定された坪量が25〜50g/mである貼合用紙は、透湿・透気性を有する複数枚の樹脂素材と貼合される貼合用紙として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、透湿・透気性を有する樹脂素材と貼合される貼合用紙に関する。更に詳細には、水分の低い乾燥加工食品を防湿包装してその包装内を乾燥状態に保つ乾燥剤封入袋、通気性を有さない密閉包装内に例えば食品と共に密封して包装内を無酸素状態に保つ脱酸素剤封入袋、果実や野菜等の食品の保管中や搬送中に使用され、熟成や成長を促進させる物質であるエチレンを吸収する鮮度保持剤封入袋、殺菌や細菌の増殖を阻止するために食品と共に密封して使用するアルコール製剤封入袋等、通気性及び透湿性を有する樹脂素材からなる封入袋の外表面に用いられる貼合用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密閉包装内に食品等の保存対象物(商品)と共に包装されて用いられる乾燥剤(石灰系,シリカゲル系など),脱酸素剤(鉄粉,アスコルビン酸など)などの粉体状・顆粒状・錠剤状等の薬剤は、共に包装される食品等の保存対象物(商品)と直接接触しないように、不織布、合成樹脂ラミネート紙、合成樹脂の多層状を含む合成樹脂フィルム、アルミなどの金属箔、アルミ蒸着などの金属ラミネート樹脂フィルム、及び該ラミネート紙などにて包装される。そして包装された状態で食品等の保存対象物(商品)と共に密閉される。
【0003】
例えば乾燥剤を包装した状態で、包装された乾燥剤の効果を発現させるために、透湿性、透気性などのガス透過性の大きい不織布の場合には、そのままでは過度の透湿性や透気性により効果が短期に消失したり、石灰やシリカゲル等の様に多量の水分吸収により発熱を生じる問題が発現する。このため、透湿性、透気性の劣る合成樹脂ラミネート紙、合成樹脂フィルム等と組合せ、積層して用いられている。また、透湿性の小さい合成樹脂フィルム、該樹脂によるラミネート紙などでは、穿孔を施したうえで包装袋の形態とされる。そして各種薬剤が内包され、食品等の保存対象物(商品)と共に密閉される。
【0004】
包装袋は、通常、一辺が3〜20cm程度の正方形又は長方形である。そして薬剤を中に入れた状態で、例えば四周がヒートシール法などで接合され袋状とされ使用される。
【0005】
各種薬剤を内包する包装材に要求される性質(気体を透過する透気性、湿分を透過する透湿性)は、食品等の保存対象物(商品)の種類や内包する薬剤の目的によって異なる。例えば乾燥剤の場合には、包装内の余分な、あるいは外部から浸入してくる僅かな湿分を吸収することが求められるので、透湿性が必要である。一方脱酸素剤の場合には、酸素ガスの透過性が必要となるので、透気性が求められる。
【0006】
透湿性,透気性などのガス透過性の大きい不織布の場合には、穿孔された合成樹脂ラミネート紙、合成樹脂フィルム等と組合せ、積層して用いられる。これに対して、透過性が不十分な合成樹脂ラミネート紙、合成樹脂フィルムなどの場合には、合成樹脂フィルムに穿孔を施したり、包袋用の袋に加工するときに隅をカットしたり、袋状の四周接合部に非接合部を設けたりする。このことによって、食品等の保存対象物(商品)が包装された状態の保存対象物(商品)の包装内と薬剤との通路を作っている。
【0007】
加えて、誤用問題や内包される薬剤に関わる表示を明確にするための高精細な印刷性が求められてきている。高精細な印刷は、外表面の平坦性に依存する。このため従来の合成繊維を用いた不織布などの素材では、外表面の平坦性が劣るので、満足する印刷適性を得る事が出来なかった。また、合成樹脂フィルムへの印刷では、保存対象物(商品)との接触により印刷部位が剥がれたり、インクが保存対象物(商品)に転写する問題が散見された。
【0008】
これに対し引用文献1では、透湿度が大きく、外部から印刷層の文字を容易に読むことができ、且つ孔あけ加工を行う必要のない乾燥剤用包装材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−225953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、食品等の保存対象物(商品)に対する安全性の追求が高まり、薬剤の包装素材に対しても安全性が求められている。このため、包装素材を構成するために用いられる接着剤が、従来の溶剤系から水系に置き換わりつつある。これに対して特許文献1に記載の包装材では、上述した効果を得るために、ウレタン系接着剤や熱接着性の接着剤を用いなければならず、安全性を有する水系接着剤の使用と高精細な印刷の要求を満足できない。
【0011】
また一般的に水系の接着剤は、保存対象物(商品)と接触する包装の外表面(包装される「保存対象物(商品)」と接触する面)に多用されてきた不織布、及び、穿孔された合成樹脂フィルムなどの合成樹脂を主原料とした素材に対する接着力が劣る。このため、不用意に剥がれてしまうことがある。また、接着を強固にするために過多の接着剤を使用した場合、包装の外表面から接着剤が染み出し、接着剤が保存対象物(商品)に接触する問題が発現する。
【0012】
従来の包装用や印刷・筆記用に市販されている紙を貼合用紙として用いることが考えられるが、包装用や印刷・筆記用の紙は、それぞれの用途である強度や印刷適性等の要求品質に特化したものである。このため、透気性や透湿性と相待って、湿潤紙力をも必要とする薬剤の包装素材に用いられる貼合用紙の機能を充分に満足する紙は見当たらない。
【0013】
本願発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、水系接着剤を用いながら、内包する各種薬剤の効果を妨げることなく、積層される合成樹脂フィルムとの貼合性、外表面への高精細な印刷適性に優れた、特に乾燥剤を内包する包装用途に好適に使用できる貼合用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の問題点を解決するために、請求項1に係る発明の貼合用紙は、透気、透湿性を有する合成樹脂フィルムに貼合して用いられる貼合用紙であって、前記貼合用紙は、JIS P 8220に準拠して離解することで得られる前記貼合用紙の離解パルプの重量平均繊維長が0.5〜1.2mmであり、前記貼合用紙は、JIS Z 0208に準拠して測定された透湿度が4500〜9000g/m・24hであり、JIS P 8122に準拠して測定したステキヒトサイズ度が0.5〜7秒であり、JIS P 8135に準拠して測定された横方向の湿潤引張強度が0.15kN/m以上であり、JIS P 8124に準拠して測定された坪量が25〜50g/mであることを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に係る発明の貼合用紙は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記貼合用紙の離解パルプ成分は、広葉樹クラフトパルプを40質量%以上含有し、前記貼合用紙の合成樹脂フィルムに対する貼合面のJIS P 8119に準拠したベック平滑度が20秒以下、非貼合面のベック平滑度が70秒以上であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項3に係る発明の貼合用紙は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加えて、前記貼合用紙は、サイズ剤と湿潤紙力増強剤とを含有し、前記サイズ剤は、アルキルケテンダイマーを主成分とし、対パルプ固形分あたりの固形分が0.2〜1.0質量%となるように前記貼合用紙中に含有され、前記湿潤紙力増強剤は、ポリアミドエピクロロヒドリンを主成分とし、対パルプ固形分あたりの固形分が0.3〜1.5質量%となるように前記貼合用紙に含有されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の貼合用紙は、内包する薬剤の機能を阻害せず、優れた透湿性、透気性と湿潤強度を兼ね備え、かつ水系接着剤との貼合適性、印刷適性が良好なものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<パルプ成分>
本実施の形態の貼合用紙は、従来の合成繊維を用いた不織布と異なり、植物性繊維から成る天然素材を100%使用した原料パルプを用いて製造される。貼合用紙の構成パルプ成分は、広葉樹クラフトパルプを40質量%以上、より好適には70%以上含有することが好ましい。樹木の特徴として繊維が太く長い針葉樹クラフトパルプを多く用いた紙の場合、細く短い広葉樹クラフトパルプを多く用いた紙よりも透湿性が高くなり、平滑性が低く、地合、厚薄ムラが発生しやすい特徴がある。広葉樹クラフトパルプの配合割合を40質量%未満にすると、透湿性が高くなりすぎることにより単位時間辺りの透湿量が多くなり、短期保存の保存用に用いる場合の封入袋を考えてもその機能を果たせない。また、地合、厚薄ムラによる透湿度の均一性に欠け、平滑性低下により印刷適性も低下する。
【0019】
広葉樹クラフトパルプと併用可能な残余の原料パルプ成分としては、先の針葉樹クラフトパルプが湿潤引張強度や貼合適性から好適に用いることができる。また、古紙パルプや機械パルプを残余のパルプとして用いることも想定される。しかしながら、幾度となく再生処理された古紙パルプや摩砕により得られる機械パルプは、紙粉の発生や引張り等の紙力低下の問題、特に古紙パルプは疲弊したパルプ繊維による透湿性を阻害する要因となり好ましくない。
<重量平均繊維長>
【0020】
JIS P 8121に準拠して離解して得られる原料パルプの重量平均繊維長は、0.5〜1.2mm、より好ましくは0.7〜1.1mmであることが好ましい。原料パルプの重量平均繊維長を0.5〜1.2mmとすることで、紙としての地合いが均一になりやすく、各種薬剤・助剤との組合せにおいて薬効の相乗効果を得る事ができる。0.5mm未満では短繊維が多くなり、繊維間の空隙が無く非常に密になるため、内包する薬剤の機能を効果的に発現するための包装袋用の貼合用紙として最低限必要な透湿度が得られない。また、食品等の保存対象物(商品)と包装袋の外表面に設けられた貼合用紙が触れる際に紙粉が発生しやすくなる。1.2mmを越えると長繊維が多いため、抄造時に地合、厚薄ムラが発生するため均一な透湿性にならず、特に長期輸送等の透湿度の均一性が求められる乾燥剤封入袋用途では、その機能を果たせない。
<サイズ剤>
【0021】
貼合用紙に用いるサイズ剤は、アルキルケテンダイマーを主成分とすることが好ましい。アルキルケテンダイマーは、加水分解による凝集欠陥が発生しにくい、定着に優れる等の点から添加量増加による欠陥の影響が小さいため、貼合時のトラブルが発生しない。また、サイズ度に応じて添加量を設けることが出来、経時によりサイズ性の効果が安定するため、透湿性の制御が必要な本件では有効であると言える。また添加量としては、0.2〜1.0質量%、より好適には0.2〜0.7質量%であることが好ましい。0.2質量%未満では、サイズ剤の紙への定着が不十分になり、サイズの不均一性によるサイズ不良等の問題が発生する。1.0質量%を越えると、封入材として必要なサイズ度が高くなり過ぎる。また、添加過剰により未定着部分が発生し、表面に残るサイズ剤の成分により紙表面が滑りやすくなり、印刷、合成樹脂フィルム貼合時の加工の不具合に繋がる。
【0022】
アルキルケテンダイマーに組み合わせて用いられるサイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸等、公知のものが挙げられる。しかしながら、ロジン系サイズ剤やアルケニル無水コハク酸等のアルキルケテンダイマー以外のサイズ剤は、原料パルプへの定着性に劣る傾向があるため、不用意な濡れ等の際に未定着のサイズ剤が保存対象物に転移する懸念がある。
<湿潤紙力増強剤>
【0023】
貼合用紙に用いる湿潤紙力増強剤は、ポリアミドエピクロロヒドリンを主成分とすることが好ましい。ポリアミドエピクロロヒドリンは反応性が高く安定したカチオン性を示すため、紙への定着率が高い。また、少ない添加量で高湿潤強度を付与出来る点から、凝集欠陥の発生を防ぐことが出来る。また添加量としては、0.3〜1.5質量%、より好適には0.5〜1.0質量%であることが好ましい。0.3質量%未満では、湿潤紙力剤の紙への定着が不十分になり、湿潤紙力不良等の問題が発生する。1.5質量%を越えると、湿潤紙力増強剤による紙中の疎水性の成分が多くなるので、水系接着剤で合成樹脂フィルムと貼合する際の接着強度低下を招く。
【0024】
湿潤紙力増強剤は、本願発明で好適に用いることができるポリアミドエピクロロヒドリン系の湿潤紙力増強剤以外に、ポリアミドエポキシ系等が使用できる。しかしながら、貼合用紙のように比較的低坪量で過度の湿潤紙力が要求されず、透気性、透湿性を得ること、サイズ剤との組合せによる相乗効果が得られる点から、ポリアミドエピクロロヒドリンが好適に選定される。
【0025】
本願発明者等の知見では、地合いが均一になりやすい重量平均繊維長が0.5〜1.2mmの原料パルプを用い、経時による効能が安定する性質を有するアルキルケテンダイマーとポリアミドエプクロロヒドリンを組合わせて用いることで、使用履歴が比較的長い乾燥剤用途への使用において安定した透気性や透湿性を維持することができる。また、水系接着剤を用いながら、内包する各種薬剤の効果を妨げることなく、積層される合成樹脂フィルムとの貼合性、外表面への高精細な印刷適性に優れた貼合用紙を提供することができる。
<乾燥工程>
【0026】
貼合用紙は、パルプと填料を主原料とし適宜必要な薬品を添加したスラリーから、通常の長網、円網、短網、傾斜等のワイヤーパートからなる抄紙機を使用することによって製造できる。抄紙機は特に限定されるものではない。乾燥工程にヤンキードライヤーを用いることで、多筒ドライヤーによる乾燥方式よりも、湿紙に対しテンションをさほど掛けることなく乾燥処理を行える。また印刷時、貼合時の寸法安定性に優れるとともに、表裏の平滑度の差を設けることが出来る。このため、本件のように合成樹脂フィルム貼合面の平滑性の粗さ、印刷面の平滑性の高さが必要な用途には好ましい。
【0027】
特に本願発明においては、好適な用途である乾燥剤を封入する包装袋のように、比較的小さな加工品に応用されるので、その寸法安定性が加工適性に必要である。従って、ヤンキー式の乾燥機を用いて乾燥した原紙を貼合用紙として用いることによって、原紙の表裏の平滑性の有用性に加え高い寸法安定性が得られるため好ましい。
【0028】
本願発明において、原料パルプ中にアルキルケテンダイマーサイズ剤を主成分として含有することにより、適度なサイズ性を有しながら、紙表面の摩擦係数が低い貼合用紙が得られる。通常、アルキルケテンダイマーを原料パルプ中に含有すると、摩擦係数が顕著に低下してしまう。これに対し、好適な乾燥手段とともに平坦性の付与手段であるヤンキー式乾燥機にて乾燥処理することで、印刷適性向上と摩擦による紙粉の発生を抑制する付随効果を発現する。また、本願発明において好適な態様である、湿潤紙力増強剤として好ましく用いられるポリアミドエピクロロヒドリンとの相溶性に優れ、組合せによる相乗効果により、サイズ剤や湿潤紙力向上剤の単独添加より秀でた効果を示す。
【0029】
ドライヤー剥離剤は、前記サイズ剤に加え、ドライヤー表面への外添サイズ剤を併用することが好ましい。内添剥離剤を使用すると、強度低下、薬品凝集物が発生する問題があるが、外添剥離剤では起きにくい。またヤンキードライヤーと接触する面(非貼合面)にのみ剥離剤が存在するため、合成樹脂フィルムと貼合する際に接着剤の浸透を阻害することも無いためより好ましい。
【0030】
前記外添加剥離剤は特に植物油系剥離剤を用いることが好ましい。植物油系の剥離剤は少ない添加量で剥離効果を得ることが出来、本願発明の主たる用途である食品に対しても安全性が高く、透気性や透湿性を阻害しないため好適に用いることができる。
<坪量>
【0031】
貼合用紙は、JIS P 8124に準拠して測定された坪量が25〜50g/m、好適には30〜40g/mであることが好ましい。25g/m未満であると、透湿性が高くなり過ぎる他、破袋強度確保のために湿潤紙力増強剤の添加量を増加させなくてはならず、薬品による凝集物が発生し、加工歩留が低下する。またクッション性が低下するためグラビア印刷適性が悪化し、白抜けが発生しやすくなる。50g/mを越えると、透湿性が低くなりすぎるため封入材に必要な透湿量を満たせない。
<透湿度>
【0032】
貼合用紙は、JIS Z 0208に準拠して測定された透湿度が4500〜9000g/m・24h、より好適には5500〜7500g/m・24hであることが好ましい。好適な用途である乾燥剤の保存用の封入袋としては、透湿度の適度な高さが必要な短期保存と、透湿度の適度な低さが必要な長期保存の両方での使用用途が考えられる。ここで、4500g/m・24h未満であると、長期保存で用いる場合においても単位時間辺りに最低限必要な透湿量を満たさないため、包装対象である食品等の腐食等を引き起こす。9000g/m・24hを越えると、単位時間辺りの透湿量が多くなり、短期保存の保存用に用いる場合の封入袋を考えてもその機能を果たせない。
【0033】
貼合用紙の透湿度を制御することで、貼合する合成樹脂フィルムの選択範囲が広がるため好ましい。貼合用紙を構成する植物性の原料パルプの選択と、JIS P 8121に準拠して離解して得られる原料パルプの重量平均繊維長を所定の範囲に調整することで、透湿度を調整可能になる。また、原料パルプ中に含有する薬剤の選択と添加量により調整可能である。特には、水系接着剤を用いながら、内包する各種薬剤の効果を妨げることなく、積層される合成樹脂フィルムとの貼合性、外表面への高精細な印刷適性に優れた貼合用紙を提供するために、サイズ剤、湿潤紙力増強剤を用いて透湿度を調整することが好ましい。
<透気度>
【0034】
貼合用紙は、ガス(エチレン、アルコール)封入材として用いる場合、ガス透過性が重要になる。その場合に最低限の透過性を確保するため、JIS P 8117に準拠した透気度が15秒以下であることが好ましい。透気度が15秒を超えると、貼合用紙での薬剤効果の調整が困難となり、積層される高価な合成樹脂フィルムに依存せざるを得ないため、製造工程が煩雑になり、コストアップになる問題が発現する。
【0035】
透気度は、本願発明において好適に用いることができる乾燥剤等を内包する包装用途において適度に包装内の湿度やガスを吸収するために必要である。貼合用紙と積層される合成樹脂フィルムに穿孔を設けることによって、透気度を調整することができる。しかしながら、水系接着剤を用いながら、内包する各種薬剤の効果を妨げることなく、積層される樹脂フィルムとの貼合性、外表面への高精細な印刷適性に優れた貼合紙を提供するためには、原料パルプの構成やJIS P 8121に準拠して離解して得られる原料パルプの重量平均繊維長を所定の範囲に調整すること、更には内添する湿潤紙力増強剤とサイズ剤とを組合せることによる相乗効果で、より好適に透気度調整可能になり好ましい。
<ステキヒトサイズ度>
【0036】
貼合用紙は、JIS P 8122に準拠して測定したステキヒトサイズ度が0.5〜7秒、より好適には3〜6秒であることが好ましい。好適な用途である乾燥剤封入袋においては、石灰等の水と発熱反応を示す物質を乾燥剤として用いることが多い。ステキヒトサイズ度が0.5秒未満の低いサイズ性であると、食品の水分が貼合用紙を通過する際に水滴として通過し、そのまま乾燥剤に水滴が触れることで発熱する問題が生じ、好ましくない。ステキヒトサイズ度が7秒を越える高いサイズ性であると、水滴が貼合用紙を通さずに表面に水滴として残り、食品等に水滴として触れた際に汚損や腐敗に繋がる原因となるため好ましくない。また水系インクがはじきやすくなり、印刷適性が低下する場合がある。
【0037】
ステキヒトサイズ度は、原料パルプ中に内添されるサイズ剤による調整が主たる調整手段である。しかしながら、水系接着剤を用いながら、内包する各種薬剤の効果を妨げることなく、積層される合成樹脂フィルムとの貼合性、外表面への高精細な印刷適性に優れた貼合用紙を提供するためには、原料パルプの構成やJIS P 8121に準拠して離解して得られる原料パルプの重量平均繊維長を所定の範囲に調整すること、内添する湿潤紙力増強剤と組合せることによる相乗効果で、より好適にステキヒトサイズ度を調整可能になり好ましい。
<湿潤引張強度>
【0038】
貼合用紙は、JIS P 8135に準拠して測定された湿潤引張強度(横方向)が0.15kN/m以上、より好ましくは0.25〜0.40kN/mであることが好ましい。本願発明の好適な用途である乾燥剤用の封入袋は、薬剤の水分の吸着により膨潤が生じる。過剰な水分は、膨潤時に合成樹脂フィルム層を抜け、貼合用紙を湿潤状態にする場合がある。紙は、湿潤時において、マシン流れ方向と横方向を比較した場合に相対的に横方向に伸びる性質があり、同方向の湿潤引張強度が湿潤時の貼合用紙の破れと関係している。
【0039】
湿潤引張強度(横方向)が0.15kN/m未満では、膨潤時に貼合用紙が破れるため、透湿性の変動や、破れた貼合用紙の一部が共に密閉包装内で包装されている食品等に付着する等の問題が発生する。湿潤引張強度(横方向)が0.40kN/mを超えた場合、過度の湿潤強度を有してしまう。また、コスト的に問題が有ると共に、透湿性が低下する問題が生じる。
【0040】
湿潤引張強度は、原料パルプ中に内添される湿潤紙力増強剤による調整が主たる調整手段である。しかしながら、水系接着剤を用いながら、内包する各種薬剤の効果を妨げることなく、積層される合成樹脂フィルムとの貼合性、外表面への高精細な印刷適性に優れた貼合用紙を提供するためには、原料パルプの構成やJIS P 8121に準拠して離解して得られる原料パルプの重量平均繊維長を所定の範囲に調整すること、内添するサイズ剤と組合せることによる相乗効果で、より好適に湿潤引張強度を調整可能になり好ましい。
<ベック平滑度>
【0041】
貼合用紙の合成樹脂フィルムに対する貼合面のJIS P 8119に準拠したベック平滑度は20秒以下、特に好ましくは8〜16秒であることが好ましい。非貼合面のベック平滑度は70秒以上、好適には110〜185秒であることが好ましい。本願発明で好適に使用される乾燥剤封入用の包装材の構成として、合成樹脂フィルム/貼合用紙/印刷層の構成になっており、合成樹脂フィルムの貼合面との接着適性と印刷層との印刷適性が必要となる。貼合面のベック平滑度が20秒を越えると、合成樹脂フィルムとの接着面積が減るため接合強度が低下する。また、接合強度を維持するために接着剤の量を増やすと、接着剤の裏抜けが発生し、加工歩留の低下を招く。非貼合面の平滑度が70秒未満であると、高精細な印刷を施す際にインク量を多く要する等の問題があり、加工歩留の低下を招く。
【0042】
貼合用紙は、表裏面の平滑度を、表裏差が生じるように所定の値に設定することが好ましく、例えば、印刷を施す高平滑面を金属ロールにて、合成樹脂フィルムと貼合する低平滑面を弾性ロールにて平坦化処理する所謂ソフトカレンダー処理手段や、ヤンキー式の乾燥手段にて原紙を乾燥し、ヤンキー式乾燥機のドライヤー面に接触する高平滑面を印刷面に、非接触面の低平滑面を合成樹脂フィルムとの貼合面に利用することにより得られる。これらのうち、表裏面の差異を設け易いヤンキー式の乾燥手段にて原紙を乾燥する手段が製造効率の面から好ましい。
【0043】
平坦化処理における平滑度を所定の範囲に調整することが好ましい。平滑度が所定の範囲となるように調整する場合、原料パルプの選択や叩解・分級等の公知の処理により重量平均繊維長を調整することによって容易に平滑度を調整することができるので好ましい。
<紙面PH>
【0044】
貼合用紙は、紙面PHが中性条件に近いことが好ましく、紙面PHが5.5以上であることが好ましい。乾燥剤封入材においては、金属製品の輸送等に用いることもあり、酸性条件であると紙が金属と接触する際に金属腐食を引き起こすことがある。
<水系糊>
【0045】
合成樹脂フィルムとの貼合に使用する水系糊は、紙の接着剤や顔料塗工紙の塗工剤中のバインダーに用いられる公知の材料が使用できる。例えば、水溶性接着剤としては、酸化澱粉、酵素変性澱粉などの澱粉誘導体、各種ケン化度のPVA、およびその誘導体、カゼインなどの水溶性蛋白質、CMCなどのセルロース誘導体などが使用できる。水分散性接着剤としては、SBR、MBRなどの各種ラテックス、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルなどの各種共重合物エマルジョンなどが使用できる。これらは単独もしくは2種以上を混合して使用される。操業性、接着強度などを考慮して、炭酸カルシウムなどの無機顔料を添加することもできる。特に好適な接着剤として、食品用途においても多用されている、セルロース樹脂との相溶性が非常に良好なポリビニルアルコールを主成分とした水系接着剤が挙げられる。これらは、透気性、透湿性やサイズ性に対する影響が少ないため好ましい。
【0046】
以上説明したように、本実施の貼合用紙は、内包する薬剤の機能を阻害せず、優れた透湿性、透気性と湿潤強度を兼ね備え、かつ水系接着剤との貼合適性、印刷適性が良好なものである。
【実施例1】
【0047】
以下に実施例を掲げて本願発明を詳細に説明するが、本願発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の質量%の数値はすべて固形換算の数値である。
<試料調整>
【0048】
実施例1では、ナイテンスチップを主原料とした広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と、北欧産スプルースを主原料とした針葉樹クラフトパルプ(NBKP)とを使用した。実施例2〜13及び比較例1〜3では、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)としてユーカリチップを使用し、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)としてダグラスファーを使用した。パルプ調整段階で粘状叩解を施して、得られる貼合用紙をJIS P 8121に準拠して離解して得られる原料パルプの重量平均繊維長が表1記載となるように調整した。実施例2〜13では、ダブルディスクレファイナーを用いた叩解手段を用いると共に、分級手段を併用し、重量平均繊維長を調整した。
【0049】
硫酸バンド(商品名:硫酸バンド 住友化学株式会社製)を0.6質量%、アルキルケテンダイマーを主成分としたサイズ剤(商品名:AD1606、星光PMC株式会社製)、ロジンエマルジョンを主成分としたサイズ剤(商品名:NES555、ハリマ化成株式会社製)、ポリアミドエピクロロヒドリンを主成分とした湿潤紙力増強剤(商品名:WS4024 星光PMC株式会社)、ポリアミドポリ尿素樹脂を主成分とした湿潤紙力増強剤(商品名:スミレーズレジン633 住友化学工業株式会社)を適宜選択し、添加した。原料調整した後、ヤンキードライヤーを有する抄紙機で抄紙し、所定の坪量を有する貼合用紙を抄造した。作成した試料(実施例1〜13、比較例1〜3)及び貼合用紙用途の異なる坪量の化繊混抄品である市販品について、表1に示す。
【表1】

<評価方法>
【0050】
坪量は、JIS P 8124に準拠して測定した。重量平均繊維長は、得られた貼合用紙をJIS P 8220に準拠して離解し、得られる離解パルプを基に、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.52「パルプ及び紙−繊維長試験方法−光学的自動計測法」に準拠して、カヤニ繊維長測定機FS−100を用いて測定した。ダブルディスクレファイナーにて原料パルプを叩解処理し、重量平均繊維長を調整した。
【0051】
透湿度は、JIS Z 0208に準拠し、約10gの無水塩化カルシウムをカップ内に収め、恒温恒湿装置内の温度を40℃、相対湿度を90%に保持して1時間後に計量した透湿量から24時間換算して算出される透湿度を測定した。ステキヒトサイズ度は、JIS P 8122に準拠して測定した。ベック平滑度は、得られた貼合用紙の合成樹脂フィルムに貼合する面、非貼合面について、JIS P 8119に準拠して測定した。湿潤引張強度は、JIS P 8135に準拠して、横方向(紙の幅方向)を測定した。透気度は、JIS P 8117に準拠して測定した。
<包装する薬剤との適性>
【0052】
包装する薬剤として、塩化カルシウムや生石灰等が使用された場合、水に触れると発熱するという問題がある。この問題の評価手法として以下の手法を採用した。平坦な試験台上に、貼合用紙とティシュペーパーを重ね合わせて静置した。ティッシュペーパーは、該貼合用紙の貼合面側(貼合用紙の下側)に重ねた。次いで、貼合用紙の外表面(非貼合面)に蒸留水をスポイトで滴下し、5分間の経時変化を評価した。判断基準について以下に示す。尚、評価3以上が実施可能範囲である。
5:5分経過後も、水滴が貼合用紙表面でハジかれ、水滴付着が全く発生しない。
4:水滴が貼合用紙上に留まるものの、水滴の浸透は無い。
3:5分経過時に、水滴が貼合用紙表面に見られ、水滴が貼合用紙を僅かに通過浸透するが、裏面のティッシュペーパーに水の浸透は見られない。
2:5分経過後において、水滴が僅かに貼合用紙上に残るのみで、殆ど浸透し、裏面のテッシュペーペーに水が浸透した痕跡が生じる。
1:水滴滴下後、5分経過に至る前に水滴が速やかに貼合用紙を通過し、裏面のテッシュペーペーに水による濡れが生じる。
<貼合適性>
【0053】
ポリビニルアルコール樹脂(クラレ製 PVA103)100gを蒸留水900gに溶解した接着剤溶液を準備し、合成樹脂フィルムと貼合する貼合用紙面に絶乾接着剤量20g/m塗布した。次いで、60℃、湿度30%恒温恒室条件下で5分間乾燥させた。次いで、貼合用紙の接着剤塗布面に合成樹脂フィルム(ポリエチレンシート(無穿孔:厚み5μm))を重ね、ハンドローラ(素材:ウール)にて圧着し、塗布直後の接着剤の貼合用紙への裏抜け状況を目視確認した。その後、温度23℃、湿度50%の恒温恒室条件下で5日間静置し、合成樹脂フィルムと貼合用紙の貼合状況を目視しにて評価した。評価基準について以下に示す。尚、評価3以上が実施可能範囲である。
5:接着剤の裏抜けが無く、貼合にも問題が生じていない。
4:接着剤の裏抜けが若干生じているが、貼合に問題は生じていない。
3:接着剤の裏抜けは生じていないものの、貼合用紙から合成樹脂フィルムの剥離が部分的に生じている。加工に問題は無い。
2:接着剤の裏抜けが若干生じている、又は貼合用紙から合成樹脂フィルムの剥離が全体的に生じている。
1:接着剤の裏抜けが全体的に生じている、又は、貼合用紙から合成樹脂フィルムが脱落する。
<印刷適性>
【0054】
貼合用紙に、油性インキ(東洋インキ社製、PCNT 391T)を用いて印刷速度10m/minで階調印刷を行った。印刷機として、クラボウ社製グラビア試験印刷機(印刷機:GP2、版:クロムメッキ製、圧胴:エチレンプロピレンゴム(硬度70°))を使用した。印刷後、白抜けを目視により観察した。評価基準について以下に示す。尚、評価3以上が実施可能範囲である。
5:白抜けがない
4:白抜けが少ない
3:白抜けがやや目立つ
2:白抜けが多く目立つ
1:白抜けがかなり多く目立つ
結果を表2に示す。
【表2】


<結果>
【0055】
重量平均繊維長が0.5〜1.2mmである場合(実施例1〜13)、0.5mm未満(比較例1)である場合や、1.2mm超(比較例2、比較例3)と比較して、貼合適性や印刷適性が良好となることがわかった(実施例1〜13:貼合適性3〜5、印刷適性3〜5)(比較例1〜3:貼合適性1〜2)(比較例2,3:印刷適性2)。同様に、重量平均繊維長が0.5〜1.2mmである場合(実施例1〜13)、ベック平滑度が良好となることがわかった(実施例1〜13:ベック平滑度(貼合面)20秒以下、ベック平滑度(非貼合面)70秒以上)(比較例1:ベック平滑度(貼合面)30秒)(比較例2:ベック平滑度(貼合面)21秒、ベック平滑度(非貼合面)27秒)(比較例3:ベック平滑度(非貼合面)60秒)。また、重量平均繊維長が0.5〜1.2mmである場合(実施例1〜13)、0.5mm未満である場合(比較例1)や、1.2mm超(比較例2、比較例3)と比較して、透湿度が良好となることがわかった(実施例1〜13:透湿度4500〜9000g/m・24h)(比較例1:透湿度4200g/m・24h)(比較例2:透湿度9500g/m・24h)(比較例3:透湿度10500g/m・24h)。このことから、重量平均繊維長を0.5mm〜1.2mmとすることによって、貼合適性、印刷適性、ベック平滑度、及び透湿度の良好な貼合用紙を作製できることがわかった。
【0056】
また重量平均繊維長が0.5〜1.2mmである場合(実施例1〜13)、ステキヒトサイズ度や湿潤引張強度が良好となることがわかった(実施例1〜13:ステキヒトサイズ度0.5〜7秒、湿潤引張強度0.15kN/m以上)。このことから、重量平均繊維長を0.5〜1.2mmとすることによって、ステキヒトサイズ度や湿潤引張強度が良好な貼合用紙を作製できることがわかった。また、坪量を25〜50g/mとすることができることがわかった。
【0057】
広葉樹パルプの含有量が40質量%以上である場合(実施例1〜13)、40質量%未満である場合(比較例2、3)と比較して、透湿度が良好となることがわかった(実施例1〜13:透湿度4500〜9000g/m・24h)(比較例2:9500g/m・24h、比較例3:10500g/m・24h)。またベック平滑度が良好となることがわかった(実施例1〜13:ベック平滑度(貼合面)20秒以下、ベック平滑度(非貼合面)70秒以上)(比較例2:ベック平滑度(貼合面)21秒、ベック平滑度(非貼合面)27秒)(比較例3:ベック平滑度(非貼合面)60秒)。このことから、広葉樹パルプの含有量を40質量%以上とすることによって、透湿度やベック平滑度の良好な貼合用紙を作製できることがわかった。
【0058】
アルキルケテンダイマーを主成分とするサイズ剤を使用した場合(実施例1〜9、12、13)、ロジンエマルジョンを主成分とするサイズ剤を使用した場合(実施例10)と比較して、貼合適性が良好となることがわかった(実施例1〜9、12、13:貼合適性4〜5)(実施例10:貼合適性3)。このことから、アルキルケテンダイマーを主成分とするサイズ剤を使用することによって、貼合適性の良好な貼合用紙を作製できることがわかった。
【0059】
また、アルキルケテンダイマーの配合量を0.2〜1.0質量%とした場合(実施例5〜9)、0.2質量%未満(比較例2)である場合と比較して、ステキヒトサイズ度が良好となることがわかった(実施例5〜9:ステキヒトサイズ度0.5〜6秒)(比較例2:ステキヒトサイズ度0.4秒)。また、アルキルケテンダイマーの配合量を0.2〜1.0質量%とした場合(実施例5〜9)、1.0質量%超である場合(比較例3)と比較して、貼合適性が良好となることがわかった(実施例5〜9:貼合適性4)(比較例3:貼合適性2)。このことから、アルキルケテンダイマーの配合量を0.2〜1.0質量%とすることによって、ステキヒトサイズ度、貼合適性の良好な貼合用紙を作製できることがわかった。
【0060】
ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を主成分とする湿潤紙力増強剤を0.5質量%の割合で使用した場合(実施例8)、ポリアミドポリ尿素樹脂を主成分とする湿潤紙力増強剤を1.0質量%の割合で使用した場合(実施例7)と比較して、含有量が少量であるにもかかわらず湿潤強度が同程度となることがわかった(実施例8:湿潤強度0.18kN/m)(実施例7:湿潤強度0.18kN/m)。このことから、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を主成分とする湿潤紙力増強剤を使用することによって、含有量を少量としつつ湿潤強度の良好な貼合用紙を作製できることがわかった。
【0061】
また、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂の配合量を1.5質量%とした場合(実施例1)、1.8質量%とした場合(実施例11)と比較して、包装薬剤との適性、貼合適性、及び印刷適性が良好となることがわかった(実施例1:包装薬剤との適性4、貼合適性5、印刷適性4)(実施例11:包装薬剤との適性3、貼合適性4、印刷適性3)。また、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂の配合量を0.3質量%とした場合(実施例4)、包装薬剤との適性、貼合適性、及び印刷適性が実施可能範囲となることがわかった(実施例4:包装薬剤との適性3、貼合適性4、印刷適性4)。このことから、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂の配合量を0.3〜1.5質量%とすることによって、包装薬剤との適性、貼合適性、及び印刷適性の良好な貼合用紙を作製できることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透気、透湿性を有する合成樹脂フィルムに貼合して用いられる貼合用紙であって、
前記貼合用紙は、JIS P 8220に準拠して離解することで得られる前記貼合用紙の離解パルプの重量平均繊維長が0.5〜1.2mmであり、
前記貼合用紙は、JIS Z 0208に準拠して測定された透湿度が4500〜9000g/m・24hであり、JIS P 8122に準拠して測定したステキヒトサイズ度が0.5〜7秒であり、JIS P 8135に準拠して測定された横方向の湿潤引張強度が0.15kN/m以上であり、
JIS P 8124に準拠して測定された坪量が25〜50g/mであることを特徴とする貼合用紙。
【請求項2】
前記貼合用紙の離解パルプ成分は、広葉樹クラフトパルプを40質量%以上含有し、
前記貼合用紙の合成樹脂フィルムに対する貼合面のJIS P 8119に準拠したベック平滑度が20秒以下、非貼合面のベック平滑度が70秒以上であることを特徴とする請求項1に記載の貼合用紙。
【請求項3】
前記貼合用紙は、サイズ剤と湿潤紙力増強剤とを含有し、
前記サイズ剤は、アルキルケテンダイマーを主成分とし、対パルプ固形分あたりの固形分が0.2〜1.0質量%となるように前記貼合用紙中に含有され、
前記湿潤紙力増強剤は、ポリアミドエピクロロヒドリンを主成分とし、対パルプ固形分あたりの固形分が0.3〜1.5質量%となるように前記貼合用紙に含有されることを特徴とする請求項1又は2に記載の貼合用紙。


【公開番号】特開2011−69024(P2011−69024A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221874(P2009−221874)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】