説明

質問文候補提示装置

【課題】インタビューに不慣れな質問者であっても、回答者から質の良いデータを引き出すことができる質問文候補提示装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】回答データと、この回答データの話題分野と、回答分量とに応じて、回答者が持っている興味・関心の度合いを示す指標である話題分野の興味得点を算出し、回答者による回答データに関する各話題分野の興味得点に基づいて、優先的に質問する質問項目を選定し、この選定した質問項目の候補を、質問者に提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質問文候補提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
社会学・看護学を始めとする多くの研究分野で、面接調査を用い、調査対象者の抱える問題を抽出する手法が採用されている。
【0003】
面接調査の方法には、様々な手法があり、特に近年、「半構造化面接」と呼ばれる手法が、社会学・看護学に加え、工学の研究分野でも行われている。この「半構造化面接」は、大まかな質問項目のみを予め定め、インタビュー回答者(以下、「回答者」という)との会話の流れに応じて、質問順序や質問の深さを柔軟に変える手法である。
【0004】
たとえば、コンテキストインタビューという手法によって、具体例を聞き出したり、小道具を使う等の方法によって、効果的なインタビューを行う方法が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】樽本徹也著「ユーザビリティエンジニアリング」オーム社版、pp.37-47
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回答者との会話の流れに応じて、質問順序や質問の深さを柔軟に変える面接手法は、回答者の本音を聞き出せる効果的な手法ではあるが、質問者(インタビューを行う者)が話の流れに応じて柔軟に質問を選択する必要があり、非常に高度なインタビュー技術が、質問者に求められる。
【0007】
特に、質的研究を目的とするインタビューでは、質問者が予め用意した質問項目を必ずしも全て質問する必要はない。インタビューのやりとりの中から、質問者は、回答者の興味・関心が強く、回答者が回答しやすい部分を鋭敏に察知し、回答者の興味・関心が強く、回答者が回答しやすい項目に焦点を絞って、深い質問を行うことによって、質の良いデータを収集することができる。
【0008】
上記「質の良いデータ」は、今まで明らかではなかった新たな発見を可能とするデータであり、たとえば、体験談のバリエーションが豊富であるデータ、より具体的な事例に基づくデータ、体験談についての詳細な説明・考えが含まれているデータである。
【0009】
一方、インタビュー回答者は、質問者の質問に対して、適切な回答をするとは限らない。しかし、インタビューに不慣れな質問者は、「全ての項目を漏れなく質問すること」に気をとられ、質問内容と回答内容との不一致に気付かずに、質問を先に進めることがあるという問題がある。
【0010】
さらに、インタビューに不慣れな質問者は、回答者の興味・関心に沿わない質問に時間をかけ、結果として、質の良いデータ(回答)を得ることができないという問題がある。
【0011】
つまり、上記従来例では、インタビューに不慣れな質問者は、回答者から質の良いデータを引き出すことができないという問題がある。
【0012】
本発明は、インタビューに不慣れな質問者であっても、回答者から質の良いデータを引き出すことができる質問文候補提示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、回答者の関心が高い話題を推定し、質問候補を提示する。回答の話題がずれたことを判定し、ずれた話題について、回答者の興味度合いが増えたと判断し、ずれた話題を、質問候補として優先する。また、話題を階層構造し、上位の話題が興味範囲であると推定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インタビューに不慣れな質問者であっても、回答者から質の良いデータを引き出すことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1である質問文候補提示装置100を示す図である。
【図2】実施例1において、質問項目記憶手段30に記憶されている質問項目のID、質問項目、話題分野の例を示す図である。
【図3】実施例1の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施例2において、履歴記憶手段60に記憶されている質問データ・話題分野・回答データと、それに対応する話題分野の例を示す図であり、対応する話題分野の興味得点の例を示す図である。
【図5】実施例3において、質問項目記憶手段30に記憶されている記憶内容例を示す図である。
【図6】実施例3において、履歴記憶手段60に保存されている興味得点の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明を実施するための形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1である質問文候補提示装置100を示す図である。
【0018】
質問文候補提示装置100は、入力手段10と、会話解釈手段20と、質問・回答照合手段40と、質問項目記憶手段30と、興味得点算出手段50と、履歴記憶手段60と、質問文候補選定手段70と、出力手段80とを有する。
【0019】
入力手段10は、会話生データ(音声データ、またはテキストデータ)を入力する。
【0020】
会話解釈手段20は、入力手段10が出力した会話生データと入力時刻とを、解釈可能な形式に変換する。
【0021】
質問項目記憶手段30は、インタビューで回答者に質問すべき質問項目のIDと、質問項目と、各質問に対応する話題分野とを記憶している。
【0022】
質問・回答照合手段40は、会話解釈手段20が解釈した質問データ、回答データ、各データが入力された時刻を受け取り、質問項目記憶手段30に記憶されている質問項目、話題分野を参照し、質問データと質問項目とを照合し、回答データと話題分野とを照合する。
【0023】
興味得点算出手段50は、回答データとその話題分野とを入力し、興味得点に応じて、回答者が持っている興味・関心の度合いを示す指標である話題分野の興味得点を算出し、出力する。
【0024】
履歴記憶手段60は、質問・回答照合手段40が出力した質問項目のIDと、興味得点算出手段50が出力した各話題分野の興味得点とを、逐次記憶し、質問文候補選定手段70へ出力する。
【0025】
質問文候補選定手段70は、履歴記憶手段60に記憶されている質問項目のIDと、話題分野と、話題分野に対応する興味得点とを入力し、質問文候補に優先順位を付けて、出力手段80へ出力する手段であり、質問文候補を選定する手段である。つまり、質問文候補選定手段70は、各話題分野の得点に応じて、優先的に質問する話題分野候補を選定する。
【0026】
出力手段80は、質問項目の候補を、質問者に提示する。
【0027】
次に、上記構成要素の機能について、詳細に説明する。
【0028】
入力手段10は、会話生データ(音声データ、またはテキストデータ)を入力し、この入力された会話生データと、入力された入力時刻とを、会話解釈手段20へ出力する。
【0029】
会話解釈手段20は、入力手段10が出力した会話生データと入力時刻とを、解釈可能な形式に変換し、記憶装置に記憶する。具体的には、たとえば入力手段10が出力した会話生データが音声データであれば、音声認識を行い、話者(質問者または回答者)を判別し、また、会話の区切りを判定する。話者が質問者であるか回答者であるかを判別する場合、たとえば、質問者、回答者のそれぞれの声の特徴を予め記憶装置に記憶し、話者の音声データを音声認識し、この音声認識の結果を、上記記憶装置に記憶されている質問者、回答者の声の特徴とを比較することによって、話者が質問者であるか回答者であるかを判別する。
【0030】
なお、区切られた会話データの話者が質問者である場合、その会話データを「質問データ」と呼ぶ。また、区切られた会話データの話者が回答者である場合、その会話データを「回答データ」と呼ぶ。会話解釈手段20は、質問データ、回答データ、各データが入力された時刻を、質問・回答照合手段40に出力する。
【0031】
質問項目記憶手段30は、インタビューで質問すべき質問項目のIDと、質問項目と、各質問に対応する話題分野(質問カテゴリ)とを記憶している。
【0032】
質問項目は、質問者がインタビュー中に行う予定の質問項目の内容である。質問項目は、質問者が質問時に参照できる形式であれば足り、質問項目が、文章や図・絵として登録されていてもよく、質問内容を想起できるようなキーワードが複数羅列している形式であってもよい。話題分野は、質問の内容が含まれている話題が属する分野である。質問項目が、複数の話題分野に跨る場合、1つの質問項目について、複数の話題分野が記憶されていてもよい。また、話題分野の登録形式は、キーワードであっても、文章形式であっても、図や絵であってもよい。
【0033】
図2は、実施例1において、質問項目記憶手段30に記憶されている質問項目のID、質問項目、話題分野の例を示す図である。
【0034】
質問項目、話題分野を登録する場合、インタビュー前に、質問者が予め登録することが考えられるが、質問者が登録者である必要はない。たとえば、質問項目を質問者が登録した後に、システム側で各質問項目の類似度に応じて、質問項目をグルーピングし、各グループ内に含まれている質問項目に共通するキーワード等を、話題分野を示すタグとして使用して、タグ付けする方法等が考えられる。
【0035】
質問・回答照合手段40は、会話解釈手段20が出力した質問データ、回答データ、各データが入力された時刻を受け取り、質問項目記憶手段30に記憶されている質問項目、話題分野を参照し、質問データと質問項目とを照合し、回答データと話題分野とを照合し、照合結果を記憶装置に記憶する。つまり、回答データと話題分野とを照合することによって、当該回答データがどの話題分野に属するかを判定する。
【0036】
質問項目と質問データとを照合することによって、インタビュー中の会話データの中で、質問者がどの質問を行ったのかを判別する。たとえば、質問項目記憶手段30に記憶されている全ての質問項目と質問データとのそれぞれの文章について形態素解析を実行し、質問項目と質問データとの類似度を計算し、計算された類似度のうちで、類似度が最も高い質問項目が、質問データに対応する質問項目であると判定することが考えられる。また、質問データと質問項目との照合を、自動で行う必要はなく、たとえば、質問者がインタビュー中に、自分が質問した内容を、GUI上で選択するようにしてもよい。
【0037】
回答データと話題分野とを照合することによって、回答データがどの話題分野に属するかを判別する。回答データと話題分野とを照合する場合、回答データの中に、話題分野のキーワード(またはその言い換え)が含まれている個数に応じて、回答データに対応する話題分野を特定するようにしてもよい。
【0038】
質問・回答照合手段40は、照合された質問データのIDを、履歴記憶手段60に、逐次出力する。また、質問・回答照合手段40は、回答データと、話題分野と、回答データに対応する会話の時間とを、興味得点算出手段50に出力する。
【0039】
興味得点算出手段50は、回答データとその話題分野とを入力し、話題分野の興味得点を算出し、記憶装置に記憶する。上記「興味得点」は、各話題分野について、回答者がどれだけ興味・関心を持っているかを示す指標である。回答データの属する話題分野について、回答者が発言した回数や文章量に基づいて、興味得点を算出する。
【0040】
具体的には、質問・回答照合手段40が出力した回答データの文字数または単語数が、その回答データの属する話題分野の興味得点であると考える。話題分野の興味得点を算出する場合、回答データの発言で費やした時間に応じて、話題分野の興味得点を算出するようにしてもよい。
【0041】
また、人間は、得意分野や興味関心の高い分野について発言する場合、声が大きくなり、声のトーンが上がる傾向にあるので、回答した際の声の大きさや、声の高さに基づいて、話題分野の興味得点を算出するようにしてもよい。たとえば、一定の閾値以上の大きさの声を発すれば、興味得点を加算するようにしてもよい。興味得点算出手段50は、入力された話題分野についての得点を、逐次、履歴記憶手段60に出力する。
【0042】
履歴記憶手段60は、質問・回答照合手段40が出力した質問項目のIDと、興味得点算出手段50が出力した各話題分野の興味得点とを、逐次記憶し、質問文候補選定手段70へ出力する。なお、上記質問項目のIDは、質問者が質問した質問項目のIDである。
【0043】
質問文候補選定手段70は、履歴記憶手段60に記憶されている質問項目のIDと、話題分野と、その話題分野に対応する興味得点とを入力し、質問文候補に優先順位を付けて、記憶手段に記憶し、出力手段80へ出力する。
【0044】
各話題分野について、複数の質問項目が存在するので、対応する回答データも複数存在する。そして、1つの回答データに1つまたは複数の話題分野が対応し、回答の仕方によっては、同じ話題分野でも、興味得点が異なり、1つの質問データについて、回答データが1つまたは複数存在する場合がある。したがって、質問文候補選定手段70は、各話題分野のそれぞれについて、履歴記憶手段60に記憶されている1種類の話題分野についての複数の興味得点の和を求めることによって、各話題分野の得点を算出する。
【0045】
その後に、質問文候補選定手段70は、各話題分野の得点に応じて、優先的に質問する話題分野の候補を選定する。話題分野を選定する場合、インタビューの初期(回答データがあまり揃っていないとき、または用意していた質問データを一通り回答者に質問したとき)に、回答データに対応する話題分野が1つもない話題分野(質問しても回答者が回答しない質問データに対応する話題分野、または、質問し忘れた質問データに対応する話題分野)があれば、この話題分野を、質問文候補として選定するようにしてもよい。予め入力した全ての話題分野(用意していた質問データに対応する話題分野の全て)についての回答データが一通り揃った後には、興味得点の一番高い話題分野を選定することによって、回答者の興味が高い分野について質問し、これによって、深く集中的に質問することができる。
【0046】
話題分野を選定した後に、選定した話題分野の質問項目の中から、まだ質問を行っていない質問項目を選定し、出力手段80に出力する。
【0047】
出力手段80に出力する質問項目は、1つであってもよく、複数の質問項目候補を同時に出力するようにしてもよい。複数の質問項目候補を提示する場合、1つの話題分野に特化せずに、優先順位の高い複数の話題分野について、それぞれ質問項目を提示するようにしてもよい。
【0048】
出力手段80は、質問項目の候補を、質問者に提示する。提示手段は、音声・画像・テキスト等、その形態は問わない。
【0049】
次に、実施例1の実際の動作について説明する。
【0050】
図3は、実施例1の動作を示すフローチャートである。
【0051】
まず、S1で、入力を待ち、S2で、入力手段10が会話データを入力すると、S3で、会話解釈手段20が、会話データを、「質問データ」、「回答データ」に変換し、質問・回答照合手段40に出力する。そして、S4で、質問・回答照合手段40が、質問データについて、質問項目記憶手段30内の質問文と照合し、IDを付与し、回答データに、話題分野を付与する。
【0052】
S5で、質問・回答照合手段40は、照合された質問データのIDを、履歴記憶手段60に出力し、興味得点算出手段50に、話題分野と回答データとを出力する。S6で、興味得点算出手段50が、話題分野と回答データとに基づいて、興味得点を算出し、履歴記憶手段60に出力する。S7で、質問文候補選定手段70は、履歴記憶手段60に記憶されている興味得点の一覧に基づいて、質問文候補に優先順位を付け、出力手段80へ出力する。そして、S8で、出力手段80が質問候補リストを出力する。
【0053】
つまり、回答者は、自分の得意分野や、興味・関心の高い分野の話題については、多くの体験談や詳細な説明、意見を述べる傾向にある。そこで、実施例1では、インタビュー中の回答者の各話題の興味得点に応じて、回答者の興味・関心の高い話題を推定し(ランク付けし)、回答者が回答しやすい質問項目候補を、優先的に質問者に提示する。これによって、インタビューに不慣れな質問者であっても、回答者から、質の良い有用なデータ(回答)を引き出すことができる。
【実施例2】
【0054】
本発明の実施例2は、各質問について、質問と回答とが、同じ話題分野に属しているかどうかを判定し、質問とは異なる話題分野について回答があった場合、質問とは異なる話題分野についての興味が高いと判定するスコアリング方法を用いる実施例である。
【0055】
実施例2である質問文候補提示装置の構成は、基本的には、図1に示す質問文候補提示装置100と同じであるので、以下の実施例2の説明では、図1に示す質問文候補提示装置100を構成する各手段の符号を使用する。
【0056】
なお、以下では、実施例2と実施例1との差分についてのみ説明する。
【0057】
質問・回答照合手段40は、興味得点算出手段50へ、質問項目と、それに対応する話題分野と、回答データと、それに対応する話題分野とをセットにして出力する。興味得点算出手段50は、質問項目の属する話題分野と、回答データの属する話題分野とが異なる場合、回答データの属する話題分野の得点を、通常(質問データに対応する話題分野と回答データに対応する話題分野とが一致した場合における興味得点)よりも高く設定し、質問項目の属する話題分野の得点を、低く設定する。つまり、質問した話題分野とは異なる話題分野について回答した場合、回答者の心理として次のことが考えられる。つまり、回答者にとって、質問された話題分野にはそれ程、興味、必要性、重要性が無く、それよりも他の話題分野に、関心、必要性、重要性を認め、この関心がある話題分野について、話したいという欲望があり、この欲望に沿って応答した結果、質問した話題分野とは異なる話題分野について回答したと、考えられる。
【0058】
図4(a)は、履歴記憶手段60に記憶されている質問データ、話題分野、回答データと、回答データに対応する話題分野の例を示す図であり、図4(b)は、回答データに対応する話題分野の興味得点の例を示す図である。
【0059】
実施例2では、質問データの属する話題分野と回答データの話題分野とが同じである場合には、その話題分野について、興味得点として10点を加点する。質問データの属する話題分野であって、回答データの話題分野ではない話題分野について、その話題分野が無視されたと考え、興味得点として10点を減点する。一方、質問データの属する話題分野ではないが、回答データの話題分野である話題分野について、その話題分野に回答者が大きな興味を持っていると考え、興味得点として20点を加点する。
【0060】
つまり、質問データ(1)の属する話題分野が「インターネット」であり、対応する回答データ(2)〜(4)の話題分野も「インターネット」であり、話題分野が同じであるので、図4(b)に示す興味得点が、それぞれ10点ずつ加算される。話題分野が「テレビ」である質問データ(5)に対して、回答データ(6)も、話題分野が「テレビ」であり、話題が同じであるので、興味得点は10点である。
【0061】
一方、回答データ(7)については、質問項目の話題分野が「テレビ」であるのに、回答データの話題分野は「インターネット」であるので、話題分野が異なり、話題分野「インターネット」が始めて登場した。したがって、回答データの属する話題分野「インターネット」の興味得点は、通常よりも高い20点を付与し、逆に、質問項目における話題分野「テレビ」については、回答データに「テレビ」が含まれていないので、興味得点を10点減じる。
【0062】
また、回答データ(8)は、2つの話題分野「インターネット」、「テレビ」に属する。話題分野「テレビ」は、質問データが属している話題分野であるので、話題分野「テレビ」の興味得点は、10点であり、話題分野「インターネット」は、質問データが属する話題分野には存在していないので、興味得点として、通常よりも高い20点が付与されている。
【0063】
上記のように、質問者が質問していないのに、ユーザが自ら話し始めた話題分野の点数を高く設定することによって、回答者が興味・関心の高い話題を、精度良く抽出することができる。
【実施例3】
【0064】
本発明の実施例3は、質問項目候補を予め階層化し、回答データが属する上位層の話題にも関心が高いと判定するスコアリング方法を用いる実施例である。
【0065】
実施例3である質問文候補提示装置の構成は、基本的には、図1に示す質問文候補提示装置100と同じであるので、以下の実施例3の説明では、図1に示す質問文候補提示装置100を構成する各手段の符号を使用する。
【0066】
なお、以下では、実施例3と実施例1との差分についてのみ説明する。
【0067】
図5は、実施例3において、質問項目記憶手段30に記憶されている記憶内容例を示す図である。
【0068】
質問項目記憶手段30に記憶されている質問項目は、たとえば図5に示すように、内容や分野毎にカテゴライズされ、階層化されている。
【0069】
図5に示す質問項目は、右に行くほど「深い」質問になり、上下方向は、話題を広げる方向の質問である。ID=1の質問項目を詳細化した質問(深い質問)が、ID=1−1,1−2,1−3,1−4の質問であり、ID=1−1を深める質問が、ID=1−1−1,1−1−2の質問である。
【0070】
図5に示す例では、各質問項目そのものが、実施例1で説明した話題分野であるが、それぞれの質問項目に対して、話題分野を指定するようにしてもよい。つまり、図5における「質問文」の右に、話題分野をそれぞれ記入するようにしてもよい。
【0071】
ある回答がされた場合、興味得点算出手段53で、その回答データが属する上位層の話題にも関心が高いと判定し、興味得点を加算する。たとえば、仮に、ID=1−1−1の質問の興味得点が10点であった場合、ID=1−1−1の質問だけでなく、ID=1−1、ID=1の質問のそれぞれが属する話題分野にも、10点を加算する。
【0072】
また、次の質問候補を選択する際、話題分野を選定する際、質問文候補選定手段70は、同階層の質問文間で興味得点を比較し、興味得点の多い順に、質問文候補としての優先順位を決定する。質問文候補選定手段70における質問候補の選択方法は、複数考えられ、質問文が階層化されているので、たとえば「上位階層から順に見て、興味得点が0点である質問文が1つでもあれば(質問していない質問文、または質問したが回答を得ていない質問文があれば)、興味得点が0点である質問文を第一優先で質問する質問文候補とし、0点のものが無い場合、最も高い興味得点の質問文を第一優先で質問する質問文候補とする」等の基準を作ることが可能となる。
【0073】
図6は、実施例3において、履歴記憶手段60に保存されている興味得点の例を示す図である。
【0074】
質問文候補選定手段70は、ID=1の質問とID=2の質問とは、同じ階層に存在している質問であるので、まず、ここの興味得点を比較し、ID=1の質問の興味得点が1300であり、ID=2の質問の興味得点が20であるので、興味得点が高いID=1の質問を選択する。次に、ID=1−1,1−2,1−3,1−4の質問を互いに比較し、ID=1‐1の質問の興味得点が300であり、ID=1‐2の質問の興味得点が700であり、ID=1‐3の質問の興味得点が200であり、ID=1‐4の質問の興味得点が200であるので、興味得点の最も高いID=1−2の質問を選択する。
【0075】
これによって、多岐の話題に渡った複数の質問を行う場合であっても、回答者の興味・関心の高い話題を、精度良く抽出することができる。
【0076】
実施例3では、上記のように、質問項目候補を予め階層化し、回答データが属する上位層の話題にも関心が高いと判定するスコアリング方法を用いる。これによって、多岐の話題に渡った複数の質問を行う場合であっても、回答者の興味・関心の高い話題を、精度良く抽出することができる。
【0077】
上記実施例において、会話解釈手段20は、会話生データを、質問データ、回答データに変換する会話解釈手段の例である。
【0078】
質問項目記憶手段30は、インタビューで回答者に質問すべき質問項目のIDと、質問項目と、各質問項目に対応する話題分野とを記憶している質問項目記憶手段の例である。
【0079】
質問・回答照合手段40は、上記質問項目記憶手段に記憶されている質問項目、話題分野を参照し、上記会話解釈手段が解釈した質問データと質問項目とを照合し、回答データと話題分野とを照合する質問・回答照合手段の例である。
【0080】
興味得点算出手段50は、上記質問・回答照合手段が照合した回答データと、この回答データの話題分野と、興味得点とに応じて、回答者が持っている興味・関心の度合いを示す指標である話題分野の興味得点を算出する興味得点算出手段の例である。
【0081】
履歴記憶手段60は、上記質問・回答照合手段が出力した質問項目のIDと、上記興味得点算出手段が出力した各話題分野の興味得点とを、逐次記憶する履歴記憶手段の例である。
【0082】
質問文候補選定手段70は、回答者による回答データに関する各話題分野の興味得点に基づいて、優先的に質問する話題分野候補を選定する質問文候補選定手段の例である。
【0083】
出力手段80は、上記質問文候補選定手段が選定した質問項目の候補を、質問者に提示する出力手段の例である。
【0084】
なお、上記興味得点算出手段は、質問データの話題分野と、この質問データに対応する回答データの話題分野とを比較し、質問データの話題分野ではないが、質問データに対応する回答データの話題分野である話題分野の興味得点を、他の場合よりも高くする手段である。
【0085】
また、質問項目記憶手段は、質問項目候補を予め階層化して記憶する手段であり、上記興味得点算出手段は、回答データが属する上位層の話題分野についての興味得点を、他の場合よりも高くする手段である。
【0086】
さらに、上記実施例をプログラムの発明として把握することができる。つまり、上記実施例は、上記各質問文候補提示装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるプログラムの例である。具体的には、上記実施例は、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の質問文候補提示装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるプログラムの例である。
【符号の説明】
【0087】
100…質問文候補提示装置、
10…入力手段、
20…会話解釈手段、
30…質問項目記憶手段、
40…質問・回答照合手段、
50…興味得点算出手段、
60…履歴記憶手段、
70…質問文候補選定手段、
80…出力手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
会話生データを、質問データ、回答データに変換する会話解釈手段と;
インタビューで回答者に質問すべき質問項目のIDと、質問項目と、各質問項目に対応する話題分野とを記憶している質問項目記憶手段と;
上記質問項目記憶手段に記憶されている質問項目、話題分野を参照し、上記会話解釈手段が解釈した質問データと質問項目とを照合し、回答データと話題分野とを照合する質問・回答照合手段と;
上記質問・回答照合手段が照合した回答データと、この回答データの話題分野と、興味得点とに応じて、回答者が持っている興味・関心の度合いを示す指標である話題分野の興味得点を算出する興味得点算出手段と;
上記質問・回答照合手段が出力した質問項目のIDと、上記興味得点算出手段が出力した各話題分野の興味得点とを、逐次記憶する履歴記憶手段と;
回答者による回答データに関する各話題分野の興味得点に基づいて、優先的に質問する話題分野候補を選定する質問文候補選定手段と;
上記質問文候補選定手段が選定した質問項目の候補を、質問者に提示する出力手段80と;
を有することを特徴とする質問文候補提示装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記興味得点算出手段は、質問データの話題分野と、この質問データに対応する回答データの話題分野とを比較し、質問データの話題分野ではないが、質問データに対応する回答データの話題分野である話題分野の興味得点を、他の場合よりも高くする手段であることを特徴とする質問文候補提示装置。
【請求項3】
請求項1において、
質問項目記憶手段は、質問項目候補を予め階層化して記憶する手段であり、
上記興味得点算出手段は、回答データが属する上位層の話題分野についての興味得点を、他の場合よりも高くする手段であることを特徴とする質問文候補提示装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の質問文候補提示装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−2872(P2011−2872A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142969(P2009−142969)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】