質量分光計のための微分移動度分光計プレフィルタ
微分移動度分光計(DMS)のフィルタ処理電場が除去された時に、質量分光計(MS)がDMSから搬送流を連続的に受容するように、MSと一列になるように構成されるDMSを含む、プレフィルタアセンブリ。一実施形態において、プレフィルタアセンブリは、一対のフィルタ電極間の分析空隙内の時間変動電場に該試料の1つ以上のイオン種を通過させるための微分移動度分光計フィルタと、該微分移動度分光計フィルタからイオン流を提供するための流出口とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は、米国仮出願第60/899,049号(2007年2月1日出願)に基づく優先権および利益を主張する。この仮出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(本発明の技術分野)
本発明は、イオン移動度分光計および微分移動度分光計等のイオン移動度ベースの分光計に関し、より具体的には、質量分光計のためのプレフィルタとして動作する微分移動度分光計に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン移動度分光計および微分移動度分光計等のイオン移動度ベースの分析器は、イオンがガスまたはガスの混合物を通って流れている間、イオンの移動度特性に基づいてイオンを分析する。イオン移動度分光計(Ion Mobility Spectrometer:IMS)は、典型的には、ドリフト領域に沿って検出器に向かってイオンを推進するように、電圧勾配を使用する。飛行時間型(Time−Of−Flight:TOF)IMSは、異なるイオン移動度特性を有するイオン種が、異なる速度でドリフトガスを通って進行するので、異なるイオン種の検出器における到達時間を測定することによって、異なるイオン種を分離および識別する。
【0004】
微分移動度分光計(Differential Mobility Spectrometer:DMS)は、電場非対称性イオン移動度分光計(Field Asymmetric IMS:FAIMS)とも称され、同じく、ガスまたはガスの混合物を通って流れているイオンを分析する。しかしながら、IMSとは異なり、DMSは、イオンが非対称電場を印加するフィルタ電極間の分析空隙を通って流れる時に、時間変動(例えば、非対称の)電場をイオンに受けさせる。非対称電場は、典型的には、より長い低電場期間がその後に続く、高電場期間を含む。典型的には、DMSが選択されたイオン種を通過させることができるようにする補償電場も、フィルタ電極のうちの1つによって(DC補償電圧を電極に印加することによって)発生される。他の種は、典型的には、フィルタ電極のうちの1つに向かって偏向されて、中性化される。IMSまたはDMS等のイオン移動度ベースの分析器は、イオン強度スペクトルを測定し、そのスペクトルを既知のスペクトル、または複数のスペクトルと比較することによって、試料および試料成分を識別することができる。
【0005】
DMSまたはDMS分析器は、典型的には、円筒または平面形状因子を有する。特許文献1に記載されているもの等の円筒形DMS分析器は、イオンをDMSから、またはDMSからMSに導入する前に、イオンの収集および濃縮を可能にするように、終端およびトラップ領域を用いている。この構造による1つの課題は、イオンが、円筒形DMSフィルタによって分散または拡散される傾向があり、その結果、MSへの導入前に、終端およびイオントラップがイオンを濃縮する必要が生じる。
【0006】
質量分析計または質量分光計(Mass Spectrometer:MS)は、イオン移動度ベースの分光計とは異なり、真空中のイオンに加速電場を受けさせることによって、イオンの質量電荷比(m/z)を測定する。TOF MSにおいて、異なる質量電荷比を有するイオンが、同一の電場を受ける。異なるイオン種は、異なる質量電荷比を有するので、異なるイオン種は、異なる量の加速度を受け、したがって、異なる時間に検出器に到達する。したがって、TOF MSは、それらの異なる質量電荷比に基づいて、異なるイオンを検出して測定することができる。MSは、それらの分子量または質量を判定することによって、試料の構成成分を識別することができる。
【0007】
チップベースの、または微細加工されたIMS、DMS、およびMSシステムは、現在市販されているものである。それらが小型および携帯型イオン検出システムの使用を可能にするので、このような微細加工されたシステムが望ましい。
【0008】
IMS、DMS、およびMS分析器は、スタンドアロンのシステムとしてしばしば動作する。しかしながら、タンデム型IMS−MS、タンデム型DMS−MS、またはタンデム型IMS−DMS−MSシステム等の、特定のタイプの組み合わせ分析器を用いてもよい。例えば、Waltham,MAのThermo Fisher Scientific,Inc.は、研究室での研究用のそれらのTSQ Quantum(登録商標)シリーズの質量分析計によってインターフェースすることができる、円筒形DMS(FAIMS)インターフェースを販売している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,621,077号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
プレフィルタとして円筒形DMSまたはDMSをMSに使用することによる1つの課題は、プレフィルタ処理が所望されるときに、研究者が、円筒形DMSプレフィルタをMSに取り付けなければならないが、次いで、DMSのプレフィルタ処理を行わない分析が所望されるときには、円筒形DMSプレフィルタをMSから切り離して除去しなければならないことである。上述のように、円筒形DMSの構造は、イオンを拡散する傾向があるので、これが必要となる。したがって、円筒形DMSフィルタを除去せずに単に無効化した場合、円筒形DMS内のイオンは、MSへ入る前にもはや濃縮またはトラップされなくなり、その結果、システムの感度および性能が低下する。したがって、円筒形DMSは、イオンのMSへの導入前に、無効化した円筒形DMSのイオン拡散効果を防止するように、MSから切り離さなければならない。円筒形DMSの着脱要件は、次の多数の理由から望ましくない。1)着脱は、ユーザを試料汚染に晒し得る。2)着脱に時間がかかる。3)着脱にユーザの訓練を必要とする。4)着脱によって、DMS対MS接続の過度の摩耗および故障が生じ得る。5)着脱は、システムの信頼性を低下させる。および6)着脱可能なDMSインターフェースは、MSから分離されたときに喪失するか、または損傷を受け得る。故に、DMSまたはDMSプレフィルタには、DMSプレフィルタ処理を行わないMS分析が所望されるときに、切り離されるのではなく無効化することができるMSが必要である。
【0011】
DMS−MS分析器に関連する別の課題は、DMSの比較的に高い輸送ガス流速によって、取り付けられたMSへの比較的に高い流速が生じる可能性があることである。MSは、高真空を維持しなければならないので、比較的に高いイオン流速でそのような高真空を維持するように、比較的に強力な、したがって大型のポンプが必要である。DMS−MSシステムのサイズは、研究室環境においては考慮しなくてもよいが、携帯型、現場配置型、または原位置型の試料分析用途および使用には、DMS−MSシステムのサイズおよび電力要件が極めて重要である。故に、より小型で、携帯できる、かつ消費電力の少ないDMS−MSシステムを実現するように、MSに使用される真空ポンプのサイズを縮小することが必要である。
【0012】
本発明は、種々の実施形態において、DMS−MSの実験動作の安全性および効率を高め、かつDMS−MS分析器の携帯性および小型性を高めるような方法で、DMSをMSに連結できるようにする、システム、方法、およびデバイスを提供することによって、従来の技術の欠点に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一側面において、本発明は、試料の1つ以上のイオン種を分析するためのシステムを含む。システムは、試料成分をイオンに形成するためのイオン源を含む。システムはまた、プレフィルタアセンブリを含む。アセンブリは、一対のフィルタ電極間の分析空隙内の時間変動電場に、試料の1つ以上のイオン種を通過させる、DMSフィルタをさらに含んでもよい。アセンブリはまた、DMSフィルタからMSへイオン流を提供する、流出口を含んでもよい。MSは、プレフィルタアセンブリからのイオン流の少なくとも一部を流入口で受容し、1つ以上のイオン種を分析してもよい。システムは、プレフィルタ処理が所望されるときには、DMSフィルタを有効化し、プレフィルタ処理が所望されないときには、DMSフィルタを無効化する、コントローラを含んでもよい。好ましくは、DMSフィルタは、質量分光計の流入口と実質的に一列に位置付けられる。
【0014】
一構成において、DMSフィルタは、一対のフィルタ電極間の分析空隙の長手方向軸が、第1の質量分光計の流入口の長手方向軸と一列であるときに、質量分光計の流入口と一列である。時間変動電場は、調整可能であり、調整可能な補償電場を含んでもよい。
【0015】
別の構成において、コントローラは、マイクロプロセッサを含む。イオン源は、エレクトロスプレーイオン源を含んでもよい。特定の構成において、液体クロマトグラフ(LC)は、エレクトロスプレーイオン源への液体試料の送達を可能にするように、システムに連結されてもよい。分析プロセスは、1つ以上のイオン種の検出を含んでもよい。
【0016】
さらなる構成において、システムは、第1の質量分光計からイオンを受容して検出する、第2の質量分光計を含んでもよい。この場合、第1の質量分光計による分析は、DMSから受容するイオンの一部の集束を含んでもよい。DMSは、少なくとも1つの絶縁基板がフィルタ電極と連通する、1つ以上の絶縁基板を含んでもよい。DMS、MS、および/またはシステムのあらゆる他の構成要素は、チップアセンブリに含まれてもよい。
【0017】
別の側面において、DMS−MS分析器システムのサイズおよび電力消費は、MSへのイオン流速の大幅な削減を可能にするような方法で、DMSに関してMSを配向することによって削減される。したがって、MS内で適切な真空を維持するように、それによってDMS−MS分析器のサイズおよび電力要件を削減する、極めて小さい真空ポンプまたはポンプが必要である。
【0018】
DMS−MS分析器またはイオン分析器は、第1の流速でイオン源からイオン流を発生させる、流動発生器を含んでもよい。流動発生器は、ポンプ、微小加工ポンプ、圧力源、固体の流動発生器、および他の流動発生器のようなものを含んでもよい。イオン分析器は、イオン源からイオン流を受容するように連結されるチップアセンブリを含んでもよい。チップアセンブリは、基板に接続される第1のフィルタ電極を伴う第1の基板を有する、離間されたフィルタを含んでもよい。アセンブリは、第1のフィルタ電極から離間された第2のフィルタ電極を含み、それによって、第1のフィルタ電極と第2のフィルタ電極との間の分析空隙、およびそれを通じてイオン流が生じる流路の一部を画定してもよい。
【0019】
アセンブリは、流路からイオンの一部を受容する質量分光計を含んでもよい。質量分光計は、流路内のイオン流からオフセットされる流入口を含んでもよい。流入口がオフセットされるので、チップアセンブリは、流路からイオンの一部を質量分光計の流入口内へ流すための分流器アセンブリを含んでもよい。第1の流路からのイオンの一部は、第2の流速で流入口を通って流れてもよく、第2の流速は第1の流速より小さい。
【0020】
分析器は、第1および第2のフィルタ電極間に時間変動電場を発生させるように、第1および第2のフィルタ電極のうちの少なくとも1つに接続される、コントローラを含んでもよい。時間変動電場は、イオン種が分析空隙を通って流れている間にイオン種を分離する電場特性を含んでもよい。分析器は、質量分光計の流入口での第2の流速に応じて、質量分光計内を、選択された真空を維持するための真空発生器を含んでもよい。真空発生器は、1つ以上のポンプ、微細加工されたポンプ、圧力源、固体の流動発生器等を含んでもよい。
【0021】
本発明の前述の、および他の目的、特徴、および利点は、以下の本発明の好適な実施形態のより具体的な説明から明らかとなるが、付随の図面に示されているように、異なる図面を通じて、これらの図面は、必ずしも正確な縮尺で示されておらず、代わりに本発明の原理を示す部分が強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の例示的な一実施形態による、化学センサシステムのブロック図である。
【図2】図2は、本発明の例示的な一実施形態による、エレクトロスプレー源を含む液体試料調製区間を備えた化学センサシステムを示す図である。
【図3A】図3Aは、本発明の例示的な一実施形態による、エレクトロスプレー源を含む液体試料調製区間を備えた化学センサシステムを示す図である。
【図3B】図3Bは、本発明の例示的な一実施形態による、機械加工されたエレクトロスプレーヘッドを示す図である。
【図3C】図3Cは、本発明の例示的な一実施形態による、蛇行電極を示す図である。
【図3D】図3Dは、本発明の例示的な一実施形態による、筐体を形成する基板を示す図である。
【図4A】図4Aは、本発明の例示的な一実施形態による、離間した絶縁基板を備えたDMS分光計を示す図である。
【図4B】図4Bは、本発明の例示的な一実施形態による、代替構造の電極を示す図である。
【図4C】図4Cは、本発明の例示的な一実施形態による、電極の縁部に重なる絶縁スペーサを備えたフィルタの側部横断面図を示す図である。
【図4D】図4Dは、本発明の例示的な一実施形態による、スプレー先端部に至る分離チャネルに供給する試料リザーバを備えたエレクトロスプレーを示す図である。
【図5A】図5Aは、本発明の例示的な一実施形態による、イオンの脱溶媒和のための対称性AC無線周波数電場を示す図である。
【図5B】図5Bは、本発明の例示的な一実施形態による、DMSデバイスに統合される脱溶媒和領域を示す図である。
【図6】図6は、質量分光計に接続される従来の技術の円筒形DMSを示す図である。
【図7A】図7Aは、本発明の例示的な一実施形態による、改善された円筒形DMSデバイスを示す図である。
【図7B】図7Bは、本発明の例示的な一実施形態による、改善された円筒形DMSデバイスを示す図である。
【図8】図8は、本発明の例示的な一実施形態による、エレクトロスプレーを載置する塔を示す図である。
【図9A】図9Aは、本発明の例示的な一実施形態による、誘導電極と協働するエレクトロスプレーヘッドを示す図である。
【図9B】図9Bは、本発明の例示的な一実施形態による、誘導電極と協働するエレクトロスプレーヘッドを示す図である。
【図10A】図10Aは、本発明の例示的な一実施形態による、制御システムを示す図である。
【図10B】図10Bは、本発明の例示的な一実施形態による、制御信号を示す図である。
【図11A】図11Aは、本発明の例示的な一実施形態による、チップ容器を示す図である。
【図11B】図11Bは、本発明の例示的な一実施形態による、質量分光計とインターフェースされるチップ容器を示す図である。
【図12A】図12Aは、本発明の例示的な一実施形態による、平面DMS分析器を示す図である。
【図12B】図12Bは、本発明の例示的な一実施形態による、平面DMS分析器を示す図である。
【図12C】図12Cは、従来の技術の円筒形DMSデバイスを示す図である。
【図12D】図12Dは、従来の技術の円筒形DMSデバイスを示す図である。
【図13A】図13Aは、本発明の例示的な一実施形態による、上部基板内のオリフィスを通じて上から、イオン領域内に挿入されたエレクトロスプレー先端部を示す図である。
【図13B】図13Bは、本発明の例示的な一実施形態による、側部からイオン領域内に挿入されたエレクトロスプレー先端部を示す図である。
【図14A】図14Aは、本発明の例示的な一実施形態による、長手方向電場駆動の実施形態を示す図である。
【図14B】図14Bは、本発明の例示的な一実施形態による、長手方向電場駆動の実施形態を示す図である。
【図15A】図15Aは、本発明の例示的な一実施形態による、分裂ガス流の実施形態を示す図である。
【図15B】図15Bは、本発明の例示的な一実施形態による、分裂ガス流の実施形態を示す図である。
【図16】図16は、本発明の例示的な一実施形態による、二重チャネルの実施形態を示す図である。
【図17】図17は、本発明の例示的な一実施形態による、異なるイオン化源のための補償電圧へのケトンの依存性を示す図である。
【図18】図18は、本発明の例示的な一実施形態による、二重チャネルを示す図である。
【図19】図19は、本発明の例示的な一実施形態による、検出スペクトルを示す図である。
【図20】図20は、本発明の例示的な一実施形態による、直列DMS−MS分析器の略図である。
【図21】図21は、本発明の例示的な一実施形態による、LC−ES−DMS−MS分析器のブロック図である。
【図22】図22は、本発明の例示的な一実施形態による、LC−DMS−MS分析器の概略図である。
【図23】図23は、本発明の例示的な一実施形態による、MSへの流速の削減を可能にする分流器アセンブリを含む、DMS−MS分析器の略図である。
【図24】図24は、本発明の例示的な一実施形態による、MSの流入口がDMSの流れからオフセットされる、統合DMS−MS分析器の略図である。
【図25】図25は、本発明の例示的な一実施形態による、統合多層DMS−MS分析器の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本発明は、質量分光計にDMSプレフィルタを使用して、化合物を分析するための方法および装置を提供する。
【0024】
エレクトロスプレー質量分光法(ES−MS)は、ペプチドおよび/またはタンパク質の構造判定のための強力なツールを提供する。これは、構造がタンパク質の機能を定義するのを補助するので重要である。タンパク質に関する構造情報は、典型的には、そのアミノ酸配列から判定される。配列を識別するために、タンパク質は、通常、酵素によって消化され、次いで、タンデム質量分析によってペプチド断片が配列決定される。配列を得るための別の可能な方法は、タンパク質を消化して、ペプチド断片の分子量を測定することである。これらは、コンピュータプログラムのための入力データであり、データベース内に見出される全てのタンパク質が理論的に消化され、理論的な断片が、測定された分子量と比較される。
【0025】
近年、IMSによる等のイオン移動度ベースの分析が、有用な情報をES−MS測定に提供できることが注目されている。イオン移動度ベースの分析は、通常は、分子の形状およびサイズに非常に敏感な大気圧技術である。IMSおよびMSの組み合わせによるタンパク質の識別は、タンパク質を消化する必要性を排除し、試料調製を簡素化し得る。
【0026】
市販のIMSシステムは、飛行時間(TOF)に基づいており、すなわち、それらは、不活性雰囲気(1〜760トール)を通じて、イオンがシャッタゲートから検出器へ進行するのにかかる時間を測定する。ドリフト時間は、イオンの移動度(すなわち、そのサイズ、質量、および電荷)に依存し、検出されるイオン種の特性である。TOF−IMSは、麻薬、爆発物、および化学兵器用薬剤を含む、多数の化合物の検出に有用な技術である。参照することによって本明細書に援用される、PCT出願第PCT/CA99/00715号、また、参照することによって本明細書に援用される、米国特許第5,420,424号を参照されたい。IMSにおける気相イオン移動度は、一定の低電場強度の電場を伴うドリフト管を使用して判定される。イオンは、ゲートを介してドリフト管内へ入り、続いて、それらのドリフト速度の差に基づいて分離される。これらの条件下でのイオンのドリフト速度は、電場強度およびイオン移動度に比例する。現在のIMSデバイスは、イオンの識別のために、事前に加工されたドリフト管(最小サイズ、約40cm3)を使用している。
【0027】
DMS(FAIMSまたはRF−IMSとしても知られている)は、極めて高い電場を利用し、高強度および低強度の電場におけるその移動度の差に基づいて、イオン種を識別する。DMSは、ガス試料を、ガス試料中の特定の化学物質に対応する各イオンタイプを有する、イオン種の混合物に変換するように、紫外光イオン化ランプなどのイオン化源を使用する。イオン種は、次いで、フィルタを通過することができるイオンタイプを選択するように、電極間に特定の電場が印加されるイオンフィルタを通過される。
【0028】
フィルタを通ると、イオン種は、検出器の電極に衝突して、電気信号を生成する。試料中のイオン種の混合物を検出するために、フィルタ電極間に印加される電場は、発生される範囲およびスペクトルを通じて走査することができる。イオンフィルタ処理は、イオンフィルタ電極間で発生される2つの電場、時間変動(例えば、非対称性および周期的)無線周波数(RF)電場、およびdc補償電場の組み合わせを通じて達成される。非対称性RF電場は、そのピークの正電場強度と負電場強度との間に有意差を有する。非対称性RF電場は、イオンを散乱させて、それらが中性化されるイオンフィルタ電極に偏向させ、一方で、補償電場は、特定のイオンの散乱を防止して、検出器へ通過できるようにする。イオンは、低電場でのイオンの移動度と相対的な、高電場でのイオンの移動度の差に基づいて、DMS分析器内でフィルタ処理される。
【0029】
DMSイオンフィルタは、時間変動、または高電場非対称性波形の無線周波数信号に加え、可変DC補償信号の制御によるイオンのフィルタ処理に用いてもよい。DMSフィルタは、高電場非対称性無線周波数信号の波長、周波数、振幅、期間、デューティサイクル等を変化させることによって、イオンのフィルタ処理を制御してもよい。DMSフィルタは、イオンフィルタ電極間の空隙を正確に画定するように、および/またはイオンフィルタ電極を確実に平行にするように、絶縁基板を使用した平面DMSフィルタ構造を含んでもよい。微細加工された基板ベースのDMSの使用は、DMSフィルタによって、安定した、信頼性のある、かつ再生可能な電場を発生できるようにし得、高解像度のDMS分析器がもたらされる。
【0030】
DMSフィルタは、エレクトロスプレー(ES)等の試料スプレー源とともに用いてもよいが、信頼性のある再生可能なスペクトルを得るために、イオンの脱溶媒和が非常に重要である。脱溶媒和電極を、脱溶媒和を補助するように含んでもよく、高められた脱溶媒和が、対称性RF信号を脱溶媒和電極に印加することによって達成される。RF信号は、イオンにエネルギーを提供し、それらの有効温度を上昇させて、脱溶媒和プロセスの向上を補助する。脱溶媒和電極はまた、エレクトロスプレーからの、およびエレクトロスプレー源以外からの、ガス試料内のイオンクラスタ化レベルの制御に使用することができる。イオンクラスタ化の制御によって、より反復可能な測定を可能にすることができ、また、検出されているイオンに関するさらなる情報を提供することができる。
【0031】
ES−DMSシステムは、エレクトロスプレーヘッドを用いてもよく、また、イオンフィルタ電極から分離された誘引電極(attraction electrode)を使用してもよい。誘引電極のイオンフィルタ電極からの分離は、イオンフィルタ電極と相対的な、誘引電極に印加される電位の独立制御を可能にする。誘引電極の独立制御によって、DMSにエレクトロスプレー条件およびイオン導入条件を最適化することができる。誘引電極のイオンフィルタ電極からの分離は、円筒形DMS構成内で実現することもできる。
【0032】
ES−DMSは、DMSイオンフィルタへのイオン注入のさらなる最適化を提供する、誘導電極を含んでもよい。エレクトロスプレーアセンブリは、DMSの基板のうちの1つに取り付けることができ、誘導電極は、イオンをイオン化領域内に誘導するのに使用してもよい。誘導電極は、DMSの基板のうちの1つに取り付けられるか、もしくは接続されるか、またはその近くに自立構造を含んでもよい。アセンブリは、脱溶媒和を高めるように、逆ガス流を含んでもよく、および/または利用してもよい。
【0033】
ES−DMSシステムにおいて、飛行時間型(TOF)測定は、飛行時間型測定によって提供されるさらなる情報を通じてイオン種の識別を高めるように、エレクトロスプレーを使用して、DMSフィルタアプローチと組み合わせてもよい。イオンがDMSのオリフィスから検出器まで進行するのにかかる時間を測定することができる。これは、誘引および誘導電極の電位の独立制御を通じて達成することができる。いかなるイオンもドリフト領域に進ませるのではなく、誘導電極で収集されるように、最初に誘引電極の電位が調整され得る。次いで、一部のイオンがイオン化領域およびDMSフィルタに進むことができるように、誘引電極をパルス化することができる。イオンがイオン化領域から検出器まで進行するのにかかる時間を提供することができ、これは、イオンの識別に関するさらなる情報を提供する。
【0034】
ES−DMSシステムの一部は、半導体製作技術を使用して微細加工または製作されていてもよい。特定のDMS電極は、絶縁する基板または絶縁された基板上に形成してもよく、単一または複数の絶縁する基板は、筐体またはチップアセンブリを形成することができる。ES−DMS構成要素のチップアセンブリおよび/またはマルチチップモジュールへの微細加工は、有利にも、低コストの小型センサをもたらす。
【0035】
ES−DMSシステムは、正荷電および負荷電イオン等の、複数のイオン種を同時に検出する能力を備えた出力セクションを含んでもよい。DMS分析器内での試料分析は、概して、気相中で行われるので、液体試料を液体から気相に変換する必要がある。したがって、エレクトロスプレー(ES)法(「従来の」マイクロおよび/またはナノスプレーを含んでもよい)は、液体試料を気相イオンに変換するのに使用されてもよい。エレクトロスプレー先端部から流出するイオンは、平面DMS分析器に送達されてもよい。ES−DMSシステムにおいて、試料調製、イオン化、フィルタ処理、および検出の全ての機能は、単一の「チップ」上で行われてもよい。
【0036】
ES−DMSシステムは、ES−DMS−MS分析器を形成するように、質量分光計と組み合わされてもよい。MSに連結されるDMSは、解像度を高めること、より良好な検出限界を確立すること、分析される分子の形状および構造情報の抽出を可能にすること、およびタンパク質およびペプチドを含む生体分子等の分子の改善された分析を可能にすることによって、MSの検出プロセスを高める。DMS分析は、イオン移動度に基づいており、イオンのフィルタ処理および識別は、タンパク質の形状が大体においてその機能性を特定するので、ゲノムおよびプロテオミクス研究(すなわち、製薬業界)に有用なものとなり得る、イオンのサイズおよび形状に大きく依存する。したがって、DMSフィルタ処理は、タンパク質を特徴付ける低コストだが高容量の方法として適用されてもよい。
【0037】
MSの流入口に載置される担体内に差し込まれる、使い捨てのDMSフィルタチップが用いられてもよい。ES−DMS−MSデバイスはまた、分析される分子に関する構造(配座)情報、およびES−MS分析だけでは得ることができない配列情報も提供し得る。DMS分析器は、ES−MS分析だけを使用して識別することができない異性体(質量は同じだが、それらの形状が異なる分子)間の弁別を可能にし得る。
【0038】
ES−DMS分析器は、単一の筐体内に含まれてもよい。ES−DMS分析器は、液体試料分析のための独立型センサとして、または、MSのフロントエンドとして使用されてもよい。ES−DMSおよび/またはES−DMS−MS分析器は、液体クロマトグラフィー(LC)、高圧液体クロマトグラフィー、および毛管電気泳動等の、他の液体分離技術によって動作させてもよい。例えば、LC−ES−DMS−MSシステムが用いられてもよい。LC−ES−DMS−MSシステムの一部または全ては、チップアセンブリ上に微細加工および/または形成されてもよい。DMSフィルタ部分は、平面DMS、円筒形DMS、および/または同軸DMSを含んでもよい。
【0039】
微細加工(MEMS)処理は、DMSフィルタを伴うエレクトロスプレー先端部の単純なデバイスへの統合を可能にすることができ、また、正確で、高度に反復可能な液体試料の評価のための、精密でさらに小型の分析システムをもたらす。MEMS ES−MSは、生物学的薬剤を検出するための、携帯可能な、小型で、低コストの生体センサとして使用されてもよい。統合ES−DMSチップは、微細加工製作技術を使用して作製されてもよい。大気圧化学イオン化(Atmospheric Pressure Chemical Ionization:APCI)デバイスは、統合APCI−DMS−MS分析器を形成するように、質量分光器に対するプレフィルタとして使用されるDMSフィルタと統合されてもよい。
【0040】
従来の機械加工は、典型的には、DMS分析器の高い製作コストおよび不十分な再現性を伴っていた。例えば、円筒形DMSの幾何学形状は、MSにインターフェースする時の収集効率を制限するか、または、試料の中性粒子および試料のイオンの両方がMSに入るのを可能にし、より複雑なスペクトルをもたらす。平面および/または微細加工されたDMSにおいて、DMSの形成は、より精密で安定しており、生体分子の識別のための極めて信頼性のある質量スペクトルをもたらす。
【0041】
微細加工されたES−DMSは、低コストの、大量製造が可能で、小さく、小型の、微分イオン移動度に基づいた分光計である。したがって、ES−DMSシステムは、セラミックパッケージング、PCボード製造技術、またはプラスチック加工を含むMEMS製作技術等の、大量製造技術を使用して生成されてもよい。大量製造技術は、使い捨てとすることができる、低コストのデバイスをもたらすことができ、したがって、試料の相互汚染の課題を回避する。ES−DMSチップは、DMSインターフェースフィルタとして生体分子識別にMSを使用する、あらゆる研究室に提供されてもよい。このようなフィルタは、フィルタ処理用電子部品を含むインターフェース治具に差し込むことができる、DMSインターフェースチップを含んでもよい。エレクトロスプレー先端部または電気泳動チップは、DMSチップと統合する(その一部として製作する)ことができる。MEMSアプローチは不要であるが、アプローチによって、1)大量生産されるDMSチップの高信頼性および繰り返し性が可能になること、および2)DMSのコストを低くして使い捨てのDMS分析器を可能にすることから、好ましくなり得る。この使い捨て性は、ある試料から次の試料(またはユーザ)への汚染を回避するが、これは、汚染を懸念するEPA(米国保護庁)およびFDA(米国食品医薬品局)のような管理機関に従って、これに対して、および/またはこれによって行われる試験に極めて重要である。
【0042】
イオンが質量分光計に集束され、収集効率が100%に近くなる平面MEMS DMSチップが製作された。本実施形態において、DMSイオンフィルタ領域内へのイオン注入は不要である。デバイスは、平面上に微小加工される。これによって、イオンのクラスタ化を最小化するように、オンボード加熱器との容易な統合が可能となる。微細加工された、または従来のエレクトロスプレー先端部、および/または微細加工された電気泳動チップと、容易に統合することができる。これは、製作要件が低減された、簡略化された設計であり、単一のガス流路だけを使用するように構成することができる。
【0043】
微細加工は、フィルタの製造および性能の優れた再現性を提供する。これは、試験結果が、デバイス間および研究室間で一致するように、非常に重要である。微細加工は、いかなる他の方法でも成すことができない、DMSフィルタチップの新しい構成を可能にする。これらの新しい構成は、より単純であり、また、イオンを質量分光計に送達して望ましくないイオンをフィルタ処理する時に、より効率的である。
【0044】
生物学的薬剤を検出するための、統合ES−DMSチップを使用した、携帯可能な、小型で低コストの生体センサは、本技術によってサイズの低減およびコストの低減が可能となり、製造が可能となるので、微細加工などの微細製作法を使用することで可能である。これらの機器は、現場での高品質な生体分析の利用を含む、多くの用途を有し得る。例えば、生物学的薬剤に露出されたことが推測される人は、機器に一滴の血液を供給することができる。血液は、緩衝液と混合し、処理して、エレクトロスプレーノズルを介して、イオンが分析されるDMSに導入することができる。特定の生体分子が検出された場合に、警報を作動させることができる。
【0045】
MEMS DMSは、構成部品の形成および結果として生じるアセンブリを簡素化する、多目的の筐体/基板/パッケージングを含んでもよい。さらなる特徴は、その上にフィルタを構築してデバイス全体に構造を提供するように物理的プラットフォームとして基板を使用すること、デバイスを通る流路を画定する絶縁プラットフォームまたはエンクロージャとして基板を使用すること、および/または性能を向上させる隔離構造を提供するように基板を使用すること、を含み得る。スペーサは、デバイス内に組み込むことができ、構造の画定、また、さらなるバイアス制御のための一対のシリコン電極の可能性の両方を提供する。複数の電極形成および機能的なスペーサ配列を利用することができ、性能および能力を向上させる。MEMS DMSは、そのフィルタに印加される、時間変動および/または非対称性の周期的電圧を用いてもよい。制御構成要素は、イオンをパージするための加熱器を含むことができ、さらに、加熱/温度制御のための、フィルタまたは検出器電極等の既存の電極の使用を含んでもよい。
【0046】
ES−DMS−MSシステムは、試料調製、イオン化、フィルタ処理の全ての機能を含んでもよく、検出は、単一のチップ、アセンブリ、または構造上で行うことができる。DMS分析器は、MSに対するプレフィルタとして適用されてもよく、MSは、DMSフィルタ領域の端部で排出ポートに直接連結される。種々の試料調製区間を使用してもよく、周囲空気試料を吸引するポート、エレクトロスプレー、ガスクロマトグラフ、および/または液体クロマトグラフ等を含む。
【0047】
図1は、試料調製区間10A、フィルタ区間10B、および出力区間10Cを含む、化学センサシステム10のブロック図を示している。実際は、液体試料Sは、試料調製区間10A内でイオン化され、次いで、作成されたイオンは、フィルタ区間10Bに渡されてフィルタ処理され、次いで、フィルタ区間を通過したイオンは、検出のために出力区間10Cに送達される。液体試料調製区間10A、フィルタ区間10B、および出力区間10Cは、コントローラ区間10Dの制御および命令の下で動作する。好ましくは、コントローラ区間10Dは、システム10の動作、および検出データDの評価および報告の両方を制御する。
【0048】
一実施形態では、液体試料調製区間10Aは、エレクトロスプレーヘッドを含み、液体試料Sを受容し、調整して、イオン化する。これは、区間10B内の好適な平面DMSフィルタに移送され、その後、イオンを送達して、対象となるイオン種を出力区間10Cに渡す。本発明の種々の実施形態において、出力区間10Cの機能は、イオン種の即時検出、または、そこでイオンを検出するための質量分光計(MS)等の別の構成要素へのイオンの転送を含んでもよく、検出されたイオン種を示すデータDの利用を可能とする読み出しを伴う。
【0049】
当業者には理解されているように、平面を伴うDMSフィルタが示されているが、フィルタ、検出器、流路、電極等を含む、種々の非平面部分および表面を有する他の構成も動作可能となり得る。
【0050】
図2および3Aの実施形態において、液体試料調製区間10Aは、液体試料Sを受容するためのチャンバ14を有する、エレクトロスプレーの試料イオン化源またはヘッド12を含む。本発明の実施において、液体試料Sは、生体化合物、例えば溶媒X中の化合物AおよびBを含有してもよい。本発明は、液体試料中の1つ以上の化合物の識別に関わる。
【0051】
区間10Aのエレクトロスプレーデバイスの実施において、高電圧電位18が、コントローラ10Dによって、エレクトロスプレーヘッド12のチャンバ14内で液体試料Sに印加される。コントローラ10Dによって駆動される、エレクトロスプレー先端部20の液体試料Sと、誘引電極22との間の電位差は、イオン領域23の試料S内の溶媒X中の化合物A、Bをイオン化する。これは、化合物AおよびBを表すイオン24および26、および溶媒分子28を作成する。一実施形態では、イオンおよび溶媒は、流路30に沿って、平面DMSイオンフィルタ40の平行フィルタ電極44、46間のフィルタ区間10B内へ駆動または吸引される。
【0052】
平面DMSフィルタデバイス40におけるフィルタ処理は、イオン移動度の差に基づいており、とくに、イオンのサイズおよび形状の影響を受ける。これは、それらの特性に基づいたイオン種の分離を可能とする。本発明の一実施において、高強度非対称性波形の無線周波数(RF)信号48、およびDC補償信号50は、コントローラ10D内のRF/DC発生器回路によって、フィルタ電極44、46に印加される。非対称性電場は、高および低電場強度状態を交互させて、イオンを、それらの移動度に従って、電場に応じて移動させる。典型的には、高電場時の移動度は、低電場のそれとは異なる。この移動度の差は、イオンがフィルタ電極間のフィルタを通じて長手方向に進行する時に、それらの正味の横方向の変位を生成する。補償バイアス信号の非存在下では、これらのイオンは、フィルタ電極のうちの1つに当たって中性化されるであろう。選択された補償バイアス信号50(または他の補償)の存在下では、特定のイオン種が、流路の中央に向かって戻されて、フィルタを通過することになる。したがって、補償された非対称性RF信号48の存在下では、イオン種に従って、イオンの互いからの分離を達成することができる。選択されていない種は、電極に当たって中性化され、対象となる種は、フィルタを通過することになる。データおよびシステムコントローラ10Dは、どのイオン種をフィルタに通過させるのかを選択するために、フィルタ電極44、46に印加される信号48、50を調節する。
【0053】
平面DMSフィルタ40によって達成できるよう、化合物AおよびBのいずれか、または両方の明確な識別を得ることができるように、イオン24および26を単離させることが望ましいことを理解されるであろう。平面DMSフィルタ40は、原理上は、コントローラ10Dによって印加される補償に従って、出力区間10Cでの検出のために、いずれか1つだけが存在するように、それらの移動度に基づいてイオンAとBを識別する。例えば、イオン24は、図2および2のフィルタ40を通るイオン24’で示されている。
【0054】
再び図2および2を参照すると、出力区間10Cは、検出器電極70、72を伴う検出器69を含む。コントローラ10Dは、フィルタ40を通るイオンの指示として、電極70、72への電流を測定する。これらの電極は、コントローラ10Dからのバイアス信号71、73による電位に維持される。フィルタ40を通ったイオン24’は、電極の極性および検出器電極への制御信号71、73に応じて、コントローラ10Dの制御下で、それらの電荷を検出器電極70、72上に置く。さらに、補償(すなわち、バイアス電圧)を掃引することによって、試料S内のイオン種の完全なスペクトルを検出することができる。
【0055】
コントローラ10Dの知的制御によって、異なる動作制度を選択することが可能になり、その結果、対象となるイオン種のフィルタ処理を目標とすることが可能となる。本発明の一実施形態の実施において、非対称性電気信号48は、補償バイアス電圧50とともに印加され、その結果、フィルタが、電子コントローラ10Dによって制御されるように所望のイオン種を通過させる。同様に、所定の電圧範囲にわたりバイアス電圧50を掃引することによって、試料S内のイオン種の完全なスペクトルを達成することができる。
【0056】
別の実施形態では、非対称性電気信号によって、所望のイオン種を通過させることが可能になり、補償は、補償バイアス電圧を必要とせずに、この場合も電子コントローラによって供給される制御信号の命令下で、非対称性電気信号のデューティサイクルを変化させる形態である。これらの特徴によって、装置はまた、同調させること、すなわち、イオン種をフィルタ処理するように同調させることができ、所望の選択された種だけを検出器に通過させる。
【0057】
本発明のさらなる利点は、フィルタが、極性は異なるが移動度は類似する複数のイオン種を通過させることができること、およびこれらを同時に検出できることである。各検出器電極70、72が異なる極性に維持される場合は、フィルタを通過する(極性は異なるが移動度は類似する)複数のイオン種を同時に検出することができる。検出されたイオンは、図2のデータDで示される、検出されたイオンの種を判定するように、印加された制御信号48、50および電位バイアス信号71、73と相関される。
【0058】
この多機能性は、図2にあるように、出力区間10Cを参照することによってさらに理解され得、上部電極70は、対象となるイオンがフィルタ40を通過するときに、同一極性で所定の電圧に維持されるが、下部電極72は、別のレベルに維持、おそらくは接地されている。上部電極70は、検出のために、イオン24’を電極72へ下方に偏向させる。しかしながら、いずれの電極も、イオンの電荷および極性、ならびに電極に印加される信号に応じてイオンを検出してもよい。したがって、フィルタを通過する、極性は異なるが移動度は類似する複数のイオン種は、1つの検出器として上部電極70を使用し、第2の検出器として下部電極72を使用し、また、コントローラ10D内の2つの異なる検出器回路を使用し、したがって2つの異なる出力が放射されることによって、同時に検出することができる。したがって、検出器69は、水素ガスバックグラウンド中に硫黄を含むガス試料等の、平面DMSフィルタ40を通過する複数の種を同時に検出し得る。
【0059】
電子部品コントローラ10Dは、制御電子信号をシステム10に供給する。制御回路は、オンボードまたはオフボードとすることができ、平面DMSデバイスは、制御回路10Dに接続する、図4Aに示される導線および接触パッドを少なくとも伴う制御部分を有する。コントローラからの信号は、このような接続を介してフィルタ電極に印加される。
【0060】
図4Aの実施形態において、平面DMSシステム10は、(金等の)フィルタ電極44、46がその上に形成される、離間された絶縁基板52、54(例えば、Pyrex(登録商標)、ガラス、セラミック、プラスチック等)を有する、分光計チップ100を含む。基板52、54は、それら自体の間にドリフト管29および流路30を画定し、したがって、筐体機能を果たす。好ましくは、基板は、絶縁しているか、電極を絶縁載置するための表面60、62を有する。電極44、46は、イオンフィルタ40を形成し、これらの絶縁表面60、62上に載置されるフィルタ電極は、流路30を挟んで互いに向き合う。
【0061】
図4A、4B、4Cに示されているように、基板52、54は、スペーサ53、55によって分離されるが、これらは、セラミック、プラスチック、Tefron(登録商標)等で絶縁して形成されてもよく、またはシリコンウエハをエッチングまたはダイシング加工することによって、あるいは、例えば基板52、54の拡張部を作成することによって形成してもよい。スペーサの厚さは、電極44、46を担持する基板52、54の面の間に、距離「D」を画定する。図4Aの一実施形態では、シリコンスペーサを電極53’、55’として使用することができ、閉じ込め電圧は、フィルタ処理されたイオンを流路の中央に閉じ込めるように、コントローラ10Dによってシリコンスペーサ電極に印加される。この閉じ込めによって、より多くのイオンを検出器に衝突させることができ、その結果、検出が向上する。
【0062】
図4Bに示されている本発明のさらなる代替実施形態では、代替構造の電極44x、46xは、基板52、54の代わりとなり、絶縁スペーサ53、55に載置されて分離され、その中に流路30を形成する。流路の一方の端部では、試料調製区間10Aがイオンをフィルタ区間10Bに供給し、他の端部では、フィルタ処理されたイオンが出力区間10Cに入る。基板が構造機能の役目をし、筐体を形成するのと同様に、構造電極44x、46xも、電極であることに加えて、筐体としての機能を果たす。基板と同様に、これらの電極の外側表面は平面であってもなくてもよく、絶縁表面61によって覆われてもよい。
【0063】
側横断面で示されている図4C実施形態において、絶縁スペーサ53、55は、フィルタ電極44、46の縁部44f、46fと重なっている。これは、流路(すなわち、ドリフト管)29内を流れるイオンが、非均一漏れ電場「f」が存在する電極縁部44f、46fから離れて、フィルタ電極44、46間の均一な横方向電場の領域に閉じ込められるようにする。さらなる利益は、全てのイオンが、フィルタ電極間を通されること、およびその均一な電場を受けることである。
【0064】
図2に戻ると、動作中に、イオン24、26は、フィルタ40内へ流れる。一部のイオンは、それらがフィルタ電極44、46と衝突するときに中性化される。これらの中性化されたイオンは、概して、搬送ガスによってパージされる。パージはまた、例えば、適切に構成されたフィルタ電極(例えば、図3Dに示される蛇行44’、46’)に、または抵抗スペーサ電極に電流を印加する等によって、流路30を加熱することによって達成することができる。図4Aのスペーサ電極53、55は、抵抗材料で形成することができ、したがって、加熱可能な電極53r、55rとして使用することができる。
【0065】
イオン24は、図2の出力区間10Cに移動する。排出ポート42は、移動したイオン24から分子28を排出するために提供される。このイオン24の分離は、検出機能を容易にし、より正確な化学分析を可能にする。しかし、この予防措置によっても、一部の溶媒分子が、対象となるイオン24に付着したままとなり得る。したがって、好適な実施形態では、それらをフィルタ処理する前に、イオン24および26等を脱溶媒和するように、装置が提供される。脱溶媒和は、加熱によって達成されてもよい。例えば、電極44、46、53r、55rのうちのいずれかは、コントローラ10Dによってそれらに印加される加熱器信号を有してもよい。別の実施形態では、図3Aに示されているように、流入ガス流は、加熱器要素89によって加熱されてもよい。
【0066】
当業者は、エレクトロスプレーされたイオンの脱溶媒和または「乾燥」は、エレクトロスプレープロセスの重要な部分であることを理解されるであろう。イオンは、最初にエレクトロスプレー先端部から放出される時には、大量の溶媒がイオンを被覆している、液滴の形態である。それが空気を通じて対極に向かって進行するにつれて、溶媒を蒸発させて、最終的に、脱溶媒和されたイオンを残し、次いで分析することができる。分析前の不完全な脱溶媒和は、分析を歪曲する可能性がある。加えて、他の何らかの補助無しでイオンを十分に脱溶媒和できるようにするには、イオンを長距離進行させることが必要となり得る。したがって、この脱溶媒和は、本発明の実施において有益であると理解されるであろう。
【0067】
本発明の別の実施形態では、分析前にエレクトロスプレー中に生成されるイオンの脱溶媒和を高めるように、対称性RF電場が使用される。図5A、5Bに示されているように、イオンがこの信号からの正味の偏向無しで脱溶媒和されるように、それらがドリフト管を進行するときに、エレクトロスプレープロセスで発生されたイオンを対称的に振動させ、加熱されるように、対称性無線周波数電場が、搬送ガス流に垂直に印加される。
【0068】
より具体的には、イオンと中性分子との間の相互作用が、それらの有効温度を上昇させ、それらの脱溶媒和を高める。それらの振動中に、イオンは、中性の空気分子に衝突し、それらの内部温度を上昇させる。イオンの内部温度の上昇は、溶媒の蒸発を高め、脱溶媒和された荷電イオンを実現するための時間を短縮する。この作用によって、比較的に長さが短いドリフト管上で脱溶媒和を行うことが可能となる。脱溶媒和は、より正確な検出データをもたらし、上述のアプローチは、本発明の平面DMSフィルタと容易に統合される。
【0069】
脱溶媒和電場は、それらの間に空隙を伴う、互いに平行に構成される2つの電極間に電圧を印加することによって発生させることができる。例えば、電極対44、46および53、55のうちのいずれかが、コントローラ10Dの制御下で、この機能のために使用されてもよい。好ましくは、図3Aに示されているように、別個の脱溶媒和電極77、79が、この機能のために使用されてもよい。
【0070】
本発明のさらなる実施形態では、図3Aおよび3B内に図式的に示されているように、微細加工されたエレクトロスプレーヘッド80が基板52上に載置される。電極82、84、86、88は、基板52の反対側上に形成され、エレクトロスプレーイオン24、26を、ドリフト管29内の流路30のイオン領域23内へ誘導する。誘引電極22は、イオン24、26をイオン領域23内に誘引するように、それらに印加される電位を有する。搬送ガス流90は、イオン24、26を取り込み、すでに説明したフィルタ処理機能のためのフィルタ40にそれらを搬送するように、所望の流速に設定される。ガス排出口91は、搬送ガス90を含み、非イオン化された構成成分および中性化されたイオンを運び出す。
【0071】
電極22、82、84、86、88、および脱溶媒和電極77、79にも印加される電位は、互いに、およびフィルタ電極44、46に依存せずに設定および制御することができる。例えば、これは、有利には、隣接するフィルタ電極46等のあらゆる他の電極とは異なる信号で、誘引電極22の駆動を可能にする。これは、特に、基板の絶縁表面の提供によって容易にされ、電極の分離によって、フィルタ駆動要件に依存せずに最適化することができる。
【0072】
この構成はまた、誘導電極82、84、86、88および誘引電極22の、パルス化モードで(例えば、スイッチのオンおよびオフ)個々に動作されるのを可能にする。このモードでは、選択された量のイオンを、イオン領域23内に導入することができる。例えばオリフィスから検出器72まで等の、これらのイオンが進行する時間は、「飛行時間」(「TOF」)型DMSモードの動作に使用することができる。このモードにおいて、飛行時間は、イオン種に関連し、したがって、さらなる情報を種の弁別に提供する。これは、円筒形DMSデバイスの改良をもたらす。
【0073】
IMSの当業者には理解されるように、このTOFは、IMSデバイスにおいて実施される飛行時間と類似するが、ここでは、DMS構造内で実施されている。したがって、この新しい技術革新は、1つの動作デバイス内で、IMSおよびDMSの両者の検出データを提供し得る。DMSおよびIMSデータの組み合わせは、より良好な検出結果を生じさせることができる。
【0074】
図2〜3A、4A〜4Bに示されているような好適な実施形態において、筐体64は、基板52、54によって形成され、内部流路30は、入力部10Aから、イオンフィルタ10Bを通じて、出力部10Cまで延在して画定される。より具体的には、基板52、54は、作業表面60、62を提供し、そこでの電極の形成に有利に働く。これらの表面60、62は、覆われるか、または平面であってよく、好ましくは、例えばガラスまたはセラミック基板を使用して形成された時などに、絶縁して(または絶縁されて)もよい。これは、それ自体が、微小電気機械システム(MEMS)または多重チップモジュール(MCM)等の大量製造技術、または他のプロセスに役立ち、超小型パッケージングおよび小電極サイズをもたらす。したがって、イオンフィルタは、好ましくは、雑音を減らして性能を向上させるために、それらの間に流路30が画定される表面フィルタ電極44、46、次に基板の絶縁表面によって、これらの絶縁表面上に画定され、次いで、検出器電極70、72からのフィルタ電極での制御信号48、50を分離する。これは、参照することによって本明細書に援用される第5,420,424号にあるような、従来の技術のDMSデバイスの外側円筒の広範な導電領域とは異なる。
【0075】
さらに、幾何学的および物理的な考慮により、従来の技術の円筒形設計では、イオンは、ドリフト管の横断面内に分散され、したがって、質量分光計の流入口96付近の領域Rでは、わずかなイオンだけしか利用できないことを理解されるであろう。図6に示されている円筒形DMSの従来の技術の構成(参照することによって本明細書に援用される、PCT/CA99/00715を参照のこと)では、質量分光計の流入口96へのさらなるイオンの送達を可能にすることによって、この制限を解決しようとしている。しかしながら、試料イオン24と、溶媒分子28等の中性分子との間にはいかなる分離も生じないので、中性試料分子も、質量分光計の流入口96内に入ることができる。これは、質量分光計内のスペクトルを極めて複雑にし、解像度を低下させる。
【0076】
本発明は、例えば、図3Aの構成においてこれらの欠点を解決する。本発明の実施においては、事実上、検出器領域69に入るイオン24の全てが、質量分光計の流入口96に集束される。これは、特に、流路周辺全体にイオンが分散される円筒形DMSデバイスと比較して、MSの流入口だけでなく、システムの検出効率の飛躍的な向上、および感度の向上をもたらす。
【0077】
さらに、本発明の新しい円筒形設計を参照すると、図7Aに示されるように、エレクトロスプレー先端部20は、外側電極44C内のオリフィス31’を介して、誘引電極22’の誘引の下で、試料を流路30’内に注入し、試料は、ガスGの流れによってフィルタ区間10B’に向かって搬送される。誘引電極は、内側電極46Cに隣接して形成されるが、絶縁体帯In1、In2によって電気的に分離される。したがって、誘引電極は、隣接する電極、例えば46Cとは別に、独立してバイアスすることができる。本実施形態はまた、部品数を削減しながら機能的および構造的構成要素を組み合わせるが、例えば、内側円筒の構成要素を、絶縁層In1、In2の結合機能を介して、互いに係合することができる。
【0078】
図7Bに示されている代替実施形態において、誘引電極22”は、外側リング電極44C’に隣接して形成され、絶縁体リングIn3によってそれらから絶縁される。エレクトロスプレー先端部20は、試料Sを、側部からリング46C”の内側に導入するが、これは、別個の電極であってもよく、または内側電極46C’の拡張部であってもよく、試料は、誘引電極22”の誘引を受け、ガスGによって、フィルタ区間10B”の流路30”内に搬送されている。同じく、電極22”は、絶縁体In3によって電極44C’から分離され、したがって、電極は、独立して駆動することができる。
【0079】
図8に示されている本発明のさらなる実施形態において、エレクトロスプレーアセンブリ80”は、基板52に取り付けられ、エレクトロスプレーヘッド12を含む。イオンは、誘導電極「F」(本実施形態では3つ)によって、オリフィス31に向かって搬送され、誘引電極22、および82、84および/または86、88等の誘導電極によって、イオン領域23内に誘引される。
【0080】
好ましくは、イオン領域23に向かってイオンを誘導する電位勾配を作成するように、別個のDCバイアス「DC」が、各誘導電極に印加される。誘導電極は、上述のように、脱溶媒和を高めるように、同じく対称性RF信号「DS」を印加することによっても、さらなる機能のために使用することができる。
【0081】
洗浄ガスGが、脱溶媒和をさらに高めるように、ポートP1で導入される。このガスは、チャンバ93内に誘導されたイオンとは反対に流れ、ポートP2、P3から排出される。好ましくは、これは、オリフィス31にいかなる圧力勾配も無く動作される。
【0082】
スプレー条件を向上させるために、本発明の実施において、先端部20と上部誘導電極F1との間の間隔20Sを調整することができる。一実施において、筐体12aの位置は、基部Bと相対的に調整することができ、その結果、間隔20Sを調整する。別様において、ヘッド12の高さは、電極F1と相対的に調整することができる。
【0083】
代替実施形態では、図9Aおよび9Bに示されているように、離間された誘導電極F(図9A)、またはF1、F2、F3(図9B)は、カーテンガス流CGを浴びる。この流れは、筐体H1内に閉じ込められなくても、または含まれてもよい。エレクトロスプレーヘッド12は、取り付け台M1に調節可能に載置され、その送達角度は、基板52の表面と相対的に調整することができる。加えて、その高さは、基板と相対的に調整することができる。
【0084】
再び図4Aを参照すると、試料リザーバ92は、液体試料Sを受容し、次いで上述のようにイオン化されてフィルタ処理される。このような実施形態では、単一の分光計チップ100は、マイクロ流体エレクトロスプレーモジュール80’の一部等のイオン化源、および平面高電場非対称性波形イオン移動度フィルタ40の両方を統合する。また、内部検出器を含めてもよく、または検出のためにイオンが出力される。種々の微細加工されたマイクロ流体構成要素は、イオン源として、またはそれらの組み合わせとして使用されてもよく、エレクトロスプレー、ナノエレクトロスプレー、液体クロマトグラフィー、電気泳動分離を含む。
【0085】
別の実施形態では、図4Aのエレクトロスプレーヘッド80’は、(好ましくは、陽極結合またはブレージングを通じて)基板52に取り付けられてもよい。誘導電極82および84は、本実施形態では不要である。
【0086】
図4Dの実施形態において、マイクロ流体エレクトロスプレーモジュール80’は、オリフィス20’に、次いで先端部20に至る、延びた、蛇行する分離チャネル92aに送給する、試料リザーバ92を含む。チャネル92aは、先端部20でイオン化する前に、試料内の成分を調整または分離するための、液体クロマトグラフまたは電気泳動セパレータ等であってもよい。
【0087】
マイクロ流体モジュールの有無に関わらず、このようなチップ100の動機は、試料調整および分析における変動性の排除であり、これは、人間の相互作用を削減することによって、かつ全ての主要な構成要素を単一構造内に組み込むデバイスを提供することによって達成される。これらのチップ100は、低コスト製造に役立ち、その結果、使い捨てにすることができる。各試料分析に対する新しいチップの使用は、試料から試料への二次汚染を排除する。加えて、人間の介在を削減することによって、試料の調製時間が削減される。従来の配列では、エレクトロスプレー先端部またはマイクロ流体構成要素は、あらゆるフィルタまたは質量分光計の流入口に対して、毎回再調整しなければならない。これには、時間およびコストがかかる。本発明の統合マイクロ流体チップ/平面DMS装置によって、マイクロ流体構成要素と平面DMSの流入口との相対的位置が固定される。分析が完了すると、チップ全体が簡単に廃棄され、分析される試料とともに新しいチップが装填され、おそらくは質量分光計上に載置される。これは、極めて速い分析時間および高スループットが可能となる。
【0088】
本発明の例示的な一実施形態では、図10Aに示されているように、コントローラ10Dは、エレクトロスプレー制御10D1と、RF非対称性駆動信号およびDC制御バイアスをフィルタ電極44、46に印加するための、高電圧RF波形およびDC発生器10D3と協働する波形発生器(合成器)10D2と、検出器電極上のイオンを検出するための検出用電子部品10D4とを含む、いくつかのサブシステムを含む。コンピュータ10D5は、データを収集し、システムを制御する。一実施形態では、RF電場は、高電圧パルスを迅速に発生するようにフライバック変圧器を組み込む、ソフトスイッチ半共振回路によって、発生器10D3内で生成される。回路は、約10〜70%のデューティサイクルを伴う約100kHz〜4MHzの周波数で、少なくとも1400ボルトのピークツーピークRF電圧を提供する。フィルタ電極を駆動するための試料のRF波形を図10Bに示すが、その変形例も本発明の実施の範囲内にある。
【0089】
好ましくは、チップ100は、チップ受け具アセンブリ220内に挿入される。アセンブリ220は、チップを受容するためのソケット222を含む。ソケットは、コントローラ10Dに電気的に接続される。チップ受け具220の好適な実施形態は、図11Bに示されているように、化学センサシステム10を質量分光計MS98に連結する、さらなる機能を果たす。チップ受け具アセンブリ220は、システム10の流出口オリフィス99が、オリフィス99xを介して、オリフィス流入口96と一列にされ、それによって、イオン24’が、検出および分析のために、MS内に導かれるように、質量分光計の面224に取り付けられる。
【0090】
フィルタ40を通過するイオン24の検出は、図2の検出器電極70、72と関連して前述されたように行われてもよい。図3Aには代替実施形態が示されており、電極70は、ここでは、質量分光計98の取り入れ口96に向かってイオン24’を偏向させる、偏向電極として使用される。イオンは、集束電極72a、72bによって誘導または集束され、基板54’内のオリフィス99、および取り付けアダプタ102を介してプレナムガスチャンバ101を通過する。チャンバ101内に低流速プレナムガスを提供することで、中性化された試料イオンまたは溶媒分子が、質量分光計の取り入れ口96に入らないようにする。質量分光計の取り入れ口に集束されるイオンは、次いで、標準的な質量分光計の手順に従って検出される。プレナムチャンバ101は、図11Bには示されていないが、本実施形態において有益に使用されてもよいことを理解されるであろう。
【0091】
本発明のアセンブリは、例えば図3A、11B、および12A〜12Bに示されているように、(プレナムチャンバの有無に関わらず)質量分光計の取り入れ口96の真上に容易に載置することができる。偏向電極(側部実装、図3Aまたは12A〜12B)によって、ほぼ100%のイオンを質量分光計に偏向させることができる。
【0092】
この高効率は、質量分光計の流入口96に載置され、ドリフト管内の全体のイオンのうちのごくわずかしか、それらを流入口96内に推進する電場によって影響を受けず、その結果、利用可能なイオンのうちのわずかしか検出されない、図12C〜12Dの従来の技術の円筒形設計とは対照的である。
【0093】
これで、本発明の実施において、いくつかのイオン検出器のうちのいずれかを使用して、化学分析を行うことができることを理解されるであろう。図2および4Aの実施形態において、検出器は、完全にアセンブリ10の内部にある。図3Aの実施形態において、アセンブリ10は、アダプタ102を介して、検出器としての質量分光計98に密接に係合される。図3Aの実施形態において、集束電極72a、72bへの電流が監視される場合は、次いで、さらなる検出器情報が、質量分光計98の検出情報を処理するのに利用可能である。集束電極72a、72bが無くても、本発明のDMSスペクトルは、質量分光計内の全イオン電流を監視することによって再構成することができる。
【0094】
図13Aおよび13Bに本発明の代替実施形態が示されているが、エレクトロスプレー先端部20は、上部基板52’内のオリフィス31を通じて上から(図13A)、または側部から(図13B)、イオン領域23内に挿入されている。誘引電極104、106は、イオンがガス流90内をフィルタ電極44、46に向かって進行する時に、流路30内のイオンを誘引および誘導する。図13Aにおいて、エレクトロスプレー先端部20からの液滴は、リザーバ54a内で収集するが、排出孔54bが提供されてもよい。
【0095】
イオンがイオンフィルタを通過した後、かつ出力区間10Cに入る前に、それらを濃縮することが望ましい。これは、検出器での信号対雑音比を向上させ、感度を向上させる。イオントラップまたはイオンウェルは、このように、イオンを収集し、それらを濃縮し、次いで、濃縮されたイオンを直ちに出力区間に送達することができる。中性粒子は、イオントラップ内には収集されず、ガス流によって、イオントラップTから継続的に除去される。
【0096】
イオントラップは、例えば、図2、B、Cにあるように、本発明の多くの実施形態に適用することができる。例示的な実施形態を図13Aに示すが、イオントラップTは、いくつかの適切にバイアスされる電極対で形成されている。一実施例において、正イオンの場合、電極は、最小電位が電極対76bの領域内に形成され、電極対76aおよび76cの電位がより高くなるようにバイアスされる。イオンは、トラップ内に集積することができ、所望の期間の後に、所望の数のイオンが収集され、トラップは、電極76a、76b、および76cに印加される電圧を調整することによって開くことができる。トラップが開かれた時、トラップされたイオン24’は、出力区間10C内へ流れる。
【0097】
上述の実施形態において、イオンフィルタ40は、イオンがドリフト管29内のガス流90によって推進されるときに、RFおよびDC発生器10D3によって駆動される、離間された電極44、46を含む。図14Aおよび14Bの実施形態は、本発明の長手方向電場駆動の実施形態であり、ドリフト管29内のイオンを運搬する新規方法が示されている。
【0098】
図14Aおよび14Bの実施形態において、イオンは、電極110および112によって発生される長手方向電場を使用して、出力区間10Cに向かって推進される。これらの実施形態は、超小型設計におけるガス流構造の簡略化を特徴とし、ガス流でさえも随意である。
【0099】
一実施形態では、イオンは、ガス流122とは反対方向に進行し、電場ベクトル120によって推進される。このイオンの進行とは反対方向のガス流は、試料イオンの脱溶媒和を高める。また、中性試料分子の無い清浄なイオンフィルタ40を維持する。その結果、これは、イオンクラスタの形成レベルを減少させ、イオン種のより正確な検出をもたらす。さらに、逆ガス流は、イオン化領域23内の以前の試料の記憶効果を空にし、削減する。本実施形態は、示されているように上または側部からイオン領域23内に挿入される、統合エレクトロスプレー先端部20を含むことができる。
【0100】
図14Aおよび14Bの長手方向電場駆動の実施形態において、イオン24、26は、ガス流122によってではなく、長手方向RFおよびDC発生器10D3’とともに、複数組の協働電極110、112によって生成された長手方向電場の作用によって運搬される。特定の電極バイアススキームにおける平面DMSの動作の一実施例として、いくつかの、または全ての電極対110a〜h、112a〜hが、同一のRF電圧が印加され、一方で、DC電位は、イオンを検出器に向かって駆動するよう長手方向の電位勾配が形成されるようにステップ化される。本実施形態は、ガス流無しで動作させることができ、または随意に、中性粒子および溶媒分子を排出ポート124から排出する、排ガス流122を含むことができる。
【0101】
一実施例において、電極110、112aには10vdcが印加される場合があり、次いで、電極110h、112hには100vdcが印加される場合がある。これで、領域10A内の負のイオンは、電極対110a〜112aによって誘引され、さらに対110h、112hによって誘引され、次いで、それらの勢いは、フィルタを通過した場合に、それらを検出器領域10C内に搬送する。
【0102】
RFおよび補償は、種々の電極110a〜h、112a〜hに印加されてもよく、上述の様態で動作する。
【0103】
図14Aの別の実施形態では、エレクトロスプレー先端部は、オリフィス31の上の、イオン化領域23(図示せず)の外部とすることができ、その場合、電極112jが誘引電極として機能する。図14Bの長手方向電場駆動の実施形態において、イオンフィルタは、絶縁媒体140、142、例えば低温酸化材料によって、電極134、136から絶縁される、離間された抵抗層144、146を含む。好ましくは、基板が絶縁している。抵抗層144、146は、好ましくは、絶縁層140、142上に蒸着されるセラミック材料である。端子電極対150、152、154、156は、長手方向電場ベクトル120を発生させるように、抵抗層と接触し、各抵抗層にわたる電圧降下を可能にする。電極150および154は、用途に従ってバイアスされ、例えば、それらを1000ボルトにし、一方で、電極152および156をゼロボルトにしてもよい。
【0104】
図14Bの実施形態が円筒形設計で実装される時には、次いで、電極150および154がリング電極を形成し、電極152および156がリング電極を形成し、抵抗層144、146が円筒を形成する。
【0105】
本発明はまた、飛行時間型イオン移動度分光測定機能を実行することもできる。例えば、図14Aの実施形態において、電極104、106は、先端部20からイオン化される試料を吸引するようにパルス化され、時間サイクルを開始する。電極110a〜h、112a〜hは、発生される長手方向電場勾配によってイオンが出力区間10Cに向かって駆動されるように、隣接するそれらと相対的にバイアスされる。逆ガス流122は、試料の中性粒子を一掃するように印加することができる。これらの電極の組み合わせは、上述したイオントラップTを形成するのに使用することができる(図12を参照されたい)。
【0106】
図15Aの分裂ガス流の実施形態において、エレクトロスプレー針12は、基板52を通じてイオン領域23内に挿入されるが、図2にあるように、外部からドリフト管に載置されてもよい。この設計のイオン流発生器は、長手方向電場Eを作成するように、流路30の反対側に複数のセグメント化電極160、162を含む。好適な実施形態において、1つ以上の個別電極160’、162’は、ガスの分裂流を越えて長手方向電場Eを延在させるように、ガス流入口170の下流に位置し、それによって、ドリフトガス流ストリーム172によって搬送される時に、イオンがフィルタ40内に流れるようにする。
【0107】
図15Bの実施形態において、質量分光計98は、ドリフト管30の端部に直接連結される。この設計の利点は、イオンフィルタ40が、分裂ガス流によって試料の中性粒子の無い状態に維持されることである。これは、イオンによる中性試料分子のクラスタ化を防止し、より高い検出精度をもたらす。中性粒子Nを通気させるための通気デバイス103は、中性粒子をMSの取り入れ口から遠ざける。
【0108】
調節板174は、ドリフトガス流ストリーム172の速度に対して廃ガス流ストリーム176の速度を調節するように、示されるように配置されてもよい。典型的には、ドリフトガス流ストリーム172は、廃ガス流ストリーム176よりも速度が速い。しかしながら、ドリフトガス流ストリームとは異なる速度の廃ガス流ストリームを作成するための他の手段が、本発明の範囲に含まれる。
【0109】
図15A、15Bの実施形態では、単純な周囲空気試料を吸引するポート、またはエレクトロスプレー、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ等に関わらず、種々の試料調製区間を使用することができる。何が使用されるかに関わらず、示されている分裂ガスの実施形態は、クラスタ化を防止することができ、より良好なイオン種の識別を可能にする。
【0110】
概して、試料イオンは、モノマーまたはクラスタ状態で見つけられる傾向にある。所与のイオン種に対するモノマーの量とクラスタイオンの量との関係は、試料の濃度および特定の実験条件(例えば、水分、温度、流速、RF電場の強度)に依存する。モノマーおよびクラスタの両方の状態は、有用な情報を化学的識別に提供する。同一の試料を、クラスタ化を促進する条件とモノマーイオンだけの形成を促進する環境とで、別々に調査することは有用である。これを達成するために、図16に示されているような一実施形態の平面2チャネル平面DMSを使用することができる。
【0111】
図16の二重チャネルの実施形態において、第1のチャネル「I」は、イオン領域194内の、イオン24の受容およびドリフトガス流190中の分子28を示している。また、平面DMSフィルタ電極44、46、および検出器電極70、72が含まれる。
【0112】
モノマー状態の試料イオンを調べるために、イオンは、(電極198と200との間の電場の作用による)流れストリームから抽出され、それらは上部チャンバ「II」内へ上方に流れる。中性分子28は、典型的には溶媒であり、チャネル「I」を通って流れて、ドリフトガス排出口192において流出するのを継続する。エレクトロスプレー先端部20と誘引電極191との間の電位差は、基板56内のオリフィス196を通じてイオン領域194に入るイオンを加速する。第2のガス流202は、試料の中性粒子がチャンバ「II」に入るのを防止し、イオン24を平面DMSフィルタ40(チャンバII内の電極44、46)に搬送し、通過したイオンは、次いで、図2にあるような検出器電極70、72、または図3Aにあるような質量分光計等によって検出される。第2のガス流202は、流れ204として排出する。偏向および誘引電極198、200が通電されていないときは、次いで、局所検出器電極72および70によって、チャンバIにおいて試料イオンをクラスタ状態で観察することができる。電極198および200に通電することと、通電しないこととを交互に行うことによって、化学試料をより良好に識別するために、極めて多くの情報を得ることができる。
【0113】
図17は、本発明の一実施で得られる、ブタノンからデカノンにわたる、同族列のケトン試料を示している。図から、同一の化学種に対して、クラスタイオン(上部線図)は、モノマーイオン(下部線図)と比較して、非常に異なる補償信号を必要とすることは明白である。よって、モノマーおよびクラスタピークのピーク位置の差を観察することによって、化学化合物の識別レベルを大幅に増加させることができる。例えば、ブタノンの場合、モノマー状態におけるピーク位置は、ほぼ−9ボルトで生じるが、クラスタピークは、ほぼゼロである。デカノンの場合、例えば、モノマーピークは、ほぼゼロであるが、クラスタピークは、ほぼ+4ボルトである。
【0114】
図18に示されている実施形態の動機は、実施形態16のそれと同一である。このシステムにおいて、モノマー状態とクラスタ状態との間の動作条件の切り替えは、カーテンガス流190aおよび192aを制御することによって達成される。印加されるカーテンガスによって、試料の中性粒子28が、チャネル「II」に入ることが防止され、モノマー状態のイオンを調査することができる。カーテンガス190aおよび192aは、例えば、同一方向に流れて、オリフィス196で排出されてもよい。一方、チャネル「II」内のガス流は、図16のシステムと同一構成のままである。チャネル「II」にイオンを誘導するように、誘導電極206および208が含まれる。誘引電極200がまた、イオンをチャネル「II」に誘引するのにも使用される。カーテンガスが止められた時には、試料の中性粒子および試料イオンが、ポンプ204aを使用してチャネル「II」内へ吸引され得るので、クラスタ状態のイオンが観察され得る。また、ガス流202および204が使用されてもよい。出力区間は、質量分光計に接続されてもよい。
【0115】
本発明の用途において、高電場非対称性イオン移動度のフィルタ処理技術は、高周波数高電圧波形を使用する。電場は、イオン移送に対して垂直に印加され、平面構成に有利に働く。この好適な平面構成によって、ドリフト管を、好ましくは微細加工によって、小寸法で安価に製作することができる。また、電子部品を小型化することができ、推定される全電力は、4ワット(非加熱)以下の低さとすることができ、そのレベルは、電場測定に好適である。
【0116】
エレクトロスプレーとフィルタ構成要素とを組み合わせた新規な装置が記述された。さらに、微細加工された平面DMS−エレクトロスプレーインターフェースチップを開示する。平面DMS−エレクトロスプレーインターフェースチップは、エレクトロスプレー質量分析のための全ての従来の生体分子フィルタ処理法と比較して、固有の効果を提供する。同時に、本アプローチは、毛管電気泳動等の多くの液体中分離技術とともに使用することができる。
【0117】
本発明の一実施形態の実施において、三ブチルアミンを平面DMSフィルタおよび検出器内にエレクトロスプレーした。溶媒中のアミン、および溶媒溶出剤だけの場合の、結果として生じるスペクトルを図19に示す。溶出剤単独の場合は事実上いかなる反応も無く、アミンに対しては著しい反応があった。これは、本発明の実用的な価値および機能を示す。
【0118】
本発明は、小型かつ低コストのパッケージにおける改善された化学分析を提供する。本発明は、小型で、現場で使用できる(fieldable)パッケージにおけるイオン移動度に基づいた、化学種を弁別するための新規な方法および装置で、従来の技術のTOF−IMSおよびDMSデバイスのコスト、サイズ、または性能限界を解決する。その結果、新規な平面、高電場非対称性イオン移動度分光計デバイスは、新しい種類の化学センサを、すなわち、独立型またはMSに連結されるデバイスとして達成するように、エレクトロスプレー先端部に密に連結することができる。現場で使用できる統合平面DMS化学センサを提供することができ、広範囲の化学化合物を識別するための、正確で、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで、原位置の直交データを迅速に生成することができる。これらのセンサは、広範囲の種の同時検出を提供するさらなる能力を有し、また、試料中の正および負のイオンの同時検出能力を有する。さらに驚くべきは、これは、低電力要件を伴う現場で動作させることができ、さらにまた、種々の検出された種を完全に識別することができる直交データを発生させることができる、費用効果的で小型の大量生産パッケージで達成できることである。
【0119】
従来の技術の円筒形設計を超える平面DMS設計の別の利点は、電場強度に関して異なるアルファα依存性を有する全てのタイプのイオンにフィルタ処理および作用を与える、平面DMSの能力である(アルファαの詳細は、背景技術の項を参照されたい)。この事実は、未知の複合試料混合物の測定を行う複雑さを大幅に削減することができる。
【0120】
当業者には、図12C〜Dに示されている従来の技術の円筒形設計において、放射状の電場分布が不均一であることが理解されるであろう。一方、図2、Bに示されている平面DMSのような本発明の一実施において、平面DMS設計におけるイオンフィルタ電極間の電場分布(漏れ電場は無視する)は、均一であり、電場も均一である。
【0121】
平面DMS設計でのイオンの分離にかかる時間は、イオンを集束するための条件に到達すると、従来の技術の円筒形DMS(FAIMS)設計よりも、大幅に短い(10倍以下)。
【0122】
図20は、本発明の例示的な一実施形態による、直列DMS−MS分析器300の略図である。分析器300は、イオン化領域302と、分析器領域304と、プレフィルタ流入口306と、プレフィルタ流出口308と、流路310と、MS312とを含む。分析器領域304は、選択されたイオンをMS312へ通過させるように非対称性電場が形成される、DMSフィルタ電極314および316を含んでもよい。イオン化領域302は、放射性源、容量放電源、ESI、ナノESI、MALDI、LC出力先端部、または他のイオン化源のようなものであってもよい、イオン化源318を含んでもよい。一実施形態では、分析器領域304を通る流路310の少なくとも一部は、MS312の入口または流入口326と同じ長手方向軸324と実質的に一列であるか、これに沿う。別の実施形態では、プレフィルタ流出口308は、中性粒子が、フィルタ処理されたイオンとともにMS312に入ることができるようにする代わりに、中性粒子を分析器300から放出できるように、流入口326からMS312へオフセットされる。一実施形態では、DMSフィルタ電極314および316は、それぞれ絶縁基板320および322上に微細加工される、および/またはその上に形成される、またはそれに取り付けられる。特定の実施形態において、分析器領域304を少なくとも含むプレフィルタアセンブリ324は、分析器領域304を収容するための統合チップアセンブリを含む。
【0123】
動作において、試料は、流路310に沿って、プレフィルタ流入口306から、試料Sがイオン化されるイオン化領域302へ流れる。イオンは、次いで、選択されたイオンが、電極314と316との間の電場の条件に関して通過できる場合に、分析器領域304を通って流れる。条件は、補償電圧設定を含んでもよい。フィルタ処理される、または分析器領域304を通過することができる、選択されたイオンは、次いで、MS312に送達される。一実施形態では、分析器領域304内の電場は、実質的に全てのイオンがMS312へ流れることができるように、除去される、および/または停止される。分析器300の直列構成の1つの利点は、イオンが、分析器領域304内でフィルタ処理されているかどうかに関わらず、搬送ガスが、プレフィルタ324を通じて試料イオンを連続的に流すことができることである。したがって、特定の実施形態では、イオンをMS312に流す能力に影響を及ぼさずに、イオン移動度のフィルタ処理がオンまたはオフされる。したがって、プレフィルタ324および/またはDMSのフィルタ処理を必要とせずに分析器300が使用されるときには、流路310の変更またはプレフィルタ324の除去は不要である。
【0124】
特定の実施形態において、分析器300は、例えば図1のコントローラ10Dと同一の機能を行い得る、コントローラ328を含む。一実施形態では、コントローラ328は、電極314および316に印加されるフィルタ電圧をオンまたはオフして、それによって、フィルタ電極314および316に関連するあらゆるフィルタ電場の発生または除去ができるように、フィルタ電極314および316を有効化または無効化することができる。
【0125】
図21は、本発明の例示的な一実施形態による、LC−DMS−MS分析器400のブロック図である。分析器400は、LC402と、ESI404と、DMSプレフィルタ406と、MS408と、および随意に第2のMS410とを含む。動作において、LC402は、液体試料を受容して、カラムを介して試料の分離を行う。LC402は、液体試料SがDMSプレフィルタ406内に入る前に、ガスおよび/または蒸気に変換するように、液体−ガス変換区間またはESI404とのインターフェースを含んでもよい。プレフィルタ406は、MS408へ通る選択されたイオン種をフィルタ処理するように、DMS、または他のイオン移動度ベースの分析器、あるいは複数のイオン移動度ベースの分析器の組み合わせを含んでもよい。随意の構成では、さらなる検出および/または分析のために、第2のMS410またはそれより多くを用いてもよい。
【0126】
特定の実施形態では、プレフィルタ406は、着脱可能、モジュール式、および/または交換式である。一実施形態では、プレフィルタ406は、使い捨てで単一用途の、または限定用途の構成要素である。別の実施形態では、プレフィルタ406は、同一タイプのプレフィルタまたは別のタイプのプレフィルタを、直列、並列、または直列と並列の組み合わせで配設された1つ以上のイオン移動度フィルタと交換できるように、着脱可能である。一実施形態では、プレフィルタ406は、MS408のための受容器上に載置することができる、着脱可能な統合チップアセンブリ内に含まれる。別の実施形態では、プレフィルタ406は、恒久的に、または半恒久的にレセプタに載置される。
【0127】
特定の実施形態において、プレフィルタアセンブリは、1つ以上の搬送ガス流入口、1つ以上のドープ剤流入口、1つ以上の分流ガス流入口、および/または1つ以上のカーテンガス流入口または流出口を含む。分析器400は、有利には、薬物代謝および薬物動態学(DMPK)、プロテオミクス、バイオマーカ、ジェノミクス、シトミクス、バイオインフォマティクス、メタボロミクス、リピドミクス、システム生物学、トランスクリプトミクスの分野、および他の類似する分野に用いられてもよい。
【0128】
図22は、本発明の例示的な一実施形態による、LC−DMS−MS分析器500の概略図である。分析器500は、試料Sの流入口532と、LC502と、液体−ガス変換ユニット504と、先端部514と、プレフィルタアセンブリ510と、DMSプレフィルタ506と、チャンバ512と、ガス流入口524および526と、ガス流出口528と、チャンバ試料導入口516と、支持金具530と、MS508とを含む。DMSプレフィルタ506は、フィルタ電極518および520を含む。
【0129】
動作において、液体試料Sは、流入口532で、カラムを使用して試料Sの構成成分を分離する、LC502に導入される。ユニット504および先端部514は、流入口516およびガスチャンバ512への導入のために、液体をガスに変換する。先端部514は、エレクトロスプレーイオン化源の先端部であってもよい。1つ以上のドープ剤を含む搬送ガスは、流入口524を介してチャンバ512内に導入されてもよい。また、チャンバ512は、試料イオンのチャンバ512内への流れ促進するように、先端部514に近接する雰囲気よりも低い圧力に維持されてもよい。流出口528は、チャンバ512内の過剰なガスを排出するように、および/またはその圧力を調節するように用いられてもよい。特定の実施形態において、チャンバ512内の圧力は、中性干渉粒子を脱溶媒和するための、および/またはプレフィルタ510に入るのを防止するための、ガスの逆流(試料Sのイオンとは逆の流れ)を可能にするように、先端部514に近接する雰囲気よりも比較的に高くしてもよい。試料イオンは、流入口534を介してDMSフィルタ506に導入される。選択されたイオンは、電極520および522に印加されるRFおよび/またはDC補償電圧を調整することによって、フィルタ処理されてもよい。図示されていないが、電極520および522を離間するように、分析器領域518の一部または全長に沿って、スペーサを用いてもよい。分析器領域518を出ると、選択されたイオンは、MS508に移送される。分析器領域518からの流出口は、中性粒子および/または他の干渉物のMS508への導入を削減するように、MS508からオフセットされてもよい。
【0130】
分析器500は、試料分析動作を可能にするように、以下の設定範囲を含んでもよく、およそ、U1=2000〜4000v、U1=500〜800v、U3=100〜300v、U4=100〜300v、U5=10〜100v、q=10〜300uL/分、Q1=0.1〜1.1L/分、Q2b=0.1〜0.4L/分、Q3=0.2〜0.5L/分、およびQ4=0.8〜1.5L/分、を含む。Q2aの設定は変化し得る。
【0131】
種々の実施形態において、DMS−MS分析器システムのサイズおよび電力消費は、MSへのイオン流速を大幅に低くすることを可能にするような方法で、DMSに関してMSを配向することによって削減される。したがって、MS内で適切な真空を維持するように、それによってDMS−MS分析器のサイズおよび電力要件を削減する、極めて小さい真空ポンプまたはポンプが必要である。
【0132】
図23は、本発明の例示的な一実施形態による、DMS606からMS604へのイオンの流速の低減を可能にする分流器アセンブリ602を含む、イオン分析器600の略図である。一実施形態では、イオン分析器600は、イオン源612から第1の流速でイオン流610を発生させる、流動発生器608を含む。イオン分析器600は、イオン源612からのイオン610の流れを受容するように連結されるチップアセンブリ(図24を参照されたい)内に含まれてもよい。
【0133】
分析器600のDMS606は、基板616に接続される第1のフィルタ電極618を伴う第1の基板616を含む、離間されたDMSフィルタ614を含んでもよい。第2のフィルタ電極620は、第1のフィルタ電極618から離間され、それによって、第1および第2のフィルタ電極618および620と、それを通じてイオン流が生じる流路624の一部との間に、分析空隙622を画定してもよい。
【0134】
一実施形態では、イオン分析器600は、流路624からのイオンの一部を受容する、質量分光計604を含む。質量分光計604は、流路624のイオン610の流れからオフセットされる、流入口626を含む。したがって、流入口が実質的にイオン流610の方向に位置付けられないので、流入口626はオフセットされている。一実施形態では、イオン分析器600は、イオン流610のイオンの少なくとも一部の流れの向きを、MS604の流入口626の方へ変える、分流器アセンブリを含む。しかしながら、第1の流路からのイオンの一部は、DMSフィルタ606を通じたイオン流の流速未満である第2の流速で、流入口626を通じて流される。MS604への流速を実質的に削減することによって、真空発生器628は、MS604でのイオン分析を可能にする所要の真空圧力を維持するのに必要な電力および容量が少なくなる。
【0135】
したがって、真空発生器のサイズ、およびそれによって使用される電力量を大幅に削減することができ、より小型で携帯型のイオン分析器600をもたらす。特定の実施形態において、真空発生器は、第1の粗引きポンプおよび第2の低温ポンプを含む2段真空ポンプシステムを含む。特定の実施形態では、1つ以上の真空ポンプが微細加工される。真空発生器628は、約10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、および10−6トールを超える真空を維持してもよい。特定の実施形態において、DMS606を通じたイオン流610の流速は、約100cc/分、200cc/分、300cc/分、400cc/分、および500cc/分を超えてもよい。
【0136】
一実施形態では、コントローラ630は、種々のイオン種が分析空隙622を通って流れている間に、イオン種を分離するための電場特性を伴う、時間変動電場を第1および第2のフィルタ電極618および620の間に発生させるように、第1および第2のフィルタ電極618および620のうちの少なくとも1つに接続される。真空発生器628は、質量分光計604の流入口626でのイオン流速に応じて、質量分光計604内を選択された真空に維持してもよい。
【0137】
一実施形態では、分流器アセンブリは、第1の質量分光計604の流入口626に向かってイオンを導く、分流電極602を含む。別の実施形態では、分流器アセンブリは、流入口626に向かってイオンを誘引する、1つ以上の誘引電極632および634を含む。
【0138】
図24、本発明の例示的な一実施形態による、MS706の流入口702がDMS708のイオン流704からオフセットされる、統合DMS−MS分析器700の略図である。一実施形態では、DMS−MS分析器700は、統合チップアセンブリ712の1つ以上の基板710上に含まれる。チップアセンブリは、試料流入口714および排出口716を含んでもよい。図24には図示されていないが、チップインターフェースアセンブリ712が、図23のコントローラ630等の種々の電子部品とインターフェースしてもよい。チップアセンブリ712はまた、DMS708内のイオン流およびMS706内の真空を補助するように、1つ以上の流動発生器および/または真空発生器にも連結される。特定の実施形態において、統合MS706は、英国、SurryのMicrosaic(登録商標) Systems of WorkingによるIonchip(登録商標)等の、統合された、および/または微細加工されたMSを含んでもよい。統合MS706は、米国特許第5,536,939号、第6,972,406号、および第7,208,729号に記載されているタイプの統合MSを含んでもよく、それらの全体の内容は、参照することによって本明細書に援用される。
【0139】
図25は、本発明の例示的な一実施形態による、統合多層DMS−MS分析器800の略図である。特定の実施形態において、分析器800は、図23のDMS606等のDMS分析器を含むDMS層802と、図23のMS604等のMSを含むMS層804と、を含む。
【0140】
本発明の実施形態は、円筒形、平面、および他の構成を使用した方法および装置で行われてもよく、それでも本発明の精神および範囲に含まれる。本発明の用途の実施例には、生物学的および化学センサ等が挙げられる。上述の特定の実施形態の種々の修正も、本発明の精神および範囲に含まれる。本願明細書に開示される実施例は、例示目的で示されたものであり、限定を目的とするものではない。これらの、および他の実施形態の範囲は、以下の特許請求の範囲に記載されているものに限定される。
【0141】
本発明は、その好適な実施形態を参照して特に図示および説明したが、当業者は、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形状および細部に種々の変更を行ってもよいことを理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は、米国仮出願第60/899,049号(2007年2月1日出願)に基づく優先権および利益を主張する。この仮出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(本発明の技術分野)
本発明は、イオン移動度分光計および微分移動度分光計等のイオン移動度ベースの分光計に関し、より具体的には、質量分光計のためのプレフィルタとして動作する微分移動度分光計に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン移動度分光計および微分移動度分光計等のイオン移動度ベースの分析器は、イオンがガスまたはガスの混合物を通って流れている間、イオンの移動度特性に基づいてイオンを分析する。イオン移動度分光計(Ion Mobility Spectrometer:IMS)は、典型的には、ドリフト領域に沿って検出器に向かってイオンを推進するように、電圧勾配を使用する。飛行時間型(Time−Of−Flight:TOF)IMSは、異なるイオン移動度特性を有するイオン種が、異なる速度でドリフトガスを通って進行するので、異なるイオン種の検出器における到達時間を測定することによって、異なるイオン種を分離および識別する。
【0004】
微分移動度分光計(Differential Mobility Spectrometer:DMS)は、電場非対称性イオン移動度分光計(Field Asymmetric IMS:FAIMS)とも称され、同じく、ガスまたはガスの混合物を通って流れているイオンを分析する。しかしながら、IMSとは異なり、DMSは、イオンが非対称電場を印加するフィルタ電極間の分析空隙を通って流れる時に、時間変動(例えば、非対称の)電場をイオンに受けさせる。非対称電場は、典型的には、より長い低電場期間がその後に続く、高電場期間を含む。典型的には、DMSが選択されたイオン種を通過させることができるようにする補償電場も、フィルタ電極のうちの1つによって(DC補償電圧を電極に印加することによって)発生される。他の種は、典型的には、フィルタ電極のうちの1つに向かって偏向されて、中性化される。IMSまたはDMS等のイオン移動度ベースの分析器は、イオン強度スペクトルを測定し、そのスペクトルを既知のスペクトル、または複数のスペクトルと比較することによって、試料および試料成分を識別することができる。
【0005】
DMSまたはDMS分析器は、典型的には、円筒または平面形状因子を有する。特許文献1に記載されているもの等の円筒形DMS分析器は、イオンをDMSから、またはDMSからMSに導入する前に、イオンの収集および濃縮を可能にするように、終端およびトラップ領域を用いている。この構造による1つの課題は、イオンが、円筒形DMSフィルタによって分散または拡散される傾向があり、その結果、MSへの導入前に、終端およびイオントラップがイオンを濃縮する必要が生じる。
【0006】
質量分析計または質量分光計(Mass Spectrometer:MS)は、イオン移動度ベースの分光計とは異なり、真空中のイオンに加速電場を受けさせることによって、イオンの質量電荷比(m/z)を測定する。TOF MSにおいて、異なる質量電荷比を有するイオンが、同一の電場を受ける。異なるイオン種は、異なる質量電荷比を有するので、異なるイオン種は、異なる量の加速度を受け、したがって、異なる時間に検出器に到達する。したがって、TOF MSは、それらの異なる質量電荷比に基づいて、異なるイオンを検出して測定することができる。MSは、それらの分子量または質量を判定することによって、試料の構成成分を識別することができる。
【0007】
チップベースの、または微細加工されたIMS、DMS、およびMSシステムは、現在市販されているものである。それらが小型および携帯型イオン検出システムの使用を可能にするので、このような微細加工されたシステムが望ましい。
【0008】
IMS、DMS、およびMS分析器は、スタンドアロンのシステムとしてしばしば動作する。しかしながら、タンデム型IMS−MS、タンデム型DMS−MS、またはタンデム型IMS−DMS−MSシステム等の、特定のタイプの組み合わせ分析器を用いてもよい。例えば、Waltham,MAのThermo Fisher Scientific,Inc.は、研究室での研究用のそれらのTSQ Quantum(登録商標)シリーズの質量分析計によってインターフェースすることができる、円筒形DMS(FAIMS)インターフェースを販売している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,621,077号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
プレフィルタとして円筒形DMSまたはDMSをMSに使用することによる1つの課題は、プレフィルタ処理が所望されるときに、研究者が、円筒形DMSプレフィルタをMSに取り付けなければならないが、次いで、DMSのプレフィルタ処理を行わない分析が所望されるときには、円筒形DMSプレフィルタをMSから切り離して除去しなければならないことである。上述のように、円筒形DMSの構造は、イオンを拡散する傾向があるので、これが必要となる。したがって、円筒形DMSフィルタを除去せずに単に無効化した場合、円筒形DMS内のイオンは、MSへ入る前にもはや濃縮またはトラップされなくなり、その結果、システムの感度および性能が低下する。したがって、円筒形DMSは、イオンのMSへの導入前に、無効化した円筒形DMSのイオン拡散効果を防止するように、MSから切り離さなければならない。円筒形DMSの着脱要件は、次の多数の理由から望ましくない。1)着脱は、ユーザを試料汚染に晒し得る。2)着脱に時間がかかる。3)着脱にユーザの訓練を必要とする。4)着脱によって、DMS対MS接続の過度の摩耗および故障が生じ得る。5)着脱は、システムの信頼性を低下させる。および6)着脱可能なDMSインターフェースは、MSから分離されたときに喪失するか、または損傷を受け得る。故に、DMSまたはDMSプレフィルタには、DMSプレフィルタ処理を行わないMS分析が所望されるときに、切り離されるのではなく無効化することができるMSが必要である。
【0011】
DMS−MS分析器に関連する別の課題は、DMSの比較的に高い輸送ガス流速によって、取り付けられたMSへの比較的に高い流速が生じる可能性があることである。MSは、高真空を維持しなければならないので、比較的に高いイオン流速でそのような高真空を維持するように、比較的に強力な、したがって大型のポンプが必要である。DMS−MSシステムのサイズは、研究室環境においては考慮しなくてもよいが、携帯型、現場配置型、または原位置型の試料分析用途および使用には、DMS−MSシステムのサイズおよび電力要件が極めて重要である。故に、より小型で、携帯できる、かつ消費電力の少ないDMS−MSシステムを実現するように、MSに使用される真空ポンプのサイズを縮小することが必要である。
【0012】
本発明は、種々の実施形態において、DMS−MSの実験動作の安全性および効率を高め、かつDMS−MS分析器の携帯性および小型性を高めるような方法で、DMSをMSに連結できるようにする、システム、方法、およびデバイスを提供することによって、従来の技術の欠点に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一側面において、本発明は、試料の1つ以上のイオン種を分析するためのシステムを含む。システムは、試料成分をイオンに形成するためのイオン源を含む。システムはまた、プレフィルタアセンブリを含む。アセンブリは、一対のフィルタ電極間の分析空隙内の時間変動電場に、試料の1つ以上のイオン種を通過させる、DMSフィルタをさらに含んでもよい。アセンブリはまた、DMSフィルタからMSへイオン流を提供する、流出口を含んでもよい。MSは、プレフィルタアセンブリからのイオン流の少なくとも一部を流入口で受容し、1つ以上のイオン種を分析してもよい。システムは、プレフィルタ処理が所望されるときには、DMSフィルタを有効化し、プレフィルタ処理が所望されないときには、DMSフィルタを無効化する、コントローラを含んでもよい。好ましくは、DMSフィルタは、質量分光計の流入口と実質的に一列に位置付けられる。
【0014】
一構成において、DMSフィルタは、一対のフィルタ電極間の分析空隙の長手方向軸が、第1の質量分光計の流入口の長手方向軸と一列であるときに、質量分光計の流入口と一列である。時間変動電場は、調整可能であり、調整可能な補償電場を含んでもよい。
【0015】
別の構成において、コントローラは、マイクロプロセッサを含む。イオン源は、エレクトロスプレーイオン源を含んでもよい。特定の構成において、液体クロマトグラフ(LC)は、エレクトロスプレーイオン源への液体試料の送達を可能にするように、システムに連結されてもよい。分析プロセスは、1つ以上のイオン種の検出を含んでもよい。
【0016】
さらなる構成において、システムは、第1の質量分光計からイオンを受容して検出する、第2の質量分光計を含んでもよい。この場合、第1の質量分光計による分析は、DMSから受容するイオンの一部の集束を含んでもよい。DMSは、少なくとも1つの絶縁基板がフィルタ電極と連通する、1つ以上の絶縁基板を含んでもよい。DMS、MS、および/またはシステムのあらゆる他の構成要素は、チップアセンブリに含まれてもよい。
【0017】
別の側面において、DMS−MS分析器システムのサイズおよび電力消費は、MSへのイオン流速の大幅な削減を可能にするような方法で、DMSに関してMSを配向することによって削減される。したがって、MS内で適切な真空を維持するように、それによってDMS−MS分析器のサイズおよび電力要件を削減する、極めて小さい真空ポンプまたはポンプが必要である。
【0018】
DMS−MS分析器またはイオン分析器は、第1の流速でイオン源からイオン流を発生させる、流動発生器を含んでもよい。流動発生器は、ポンプ、微小加工ポンプ、圧力源、固体の流動発生器、および他の流動発生器のようなものを含んでもよい。イオン分析器は、イオン源からイオン流を受容するように連結されるチップアセンブリを含んでもよい。チップアセンブリは、基板に接続される第1のフィルタ電極を伴う第1の基板を有する、離間されたフィルタを含んでもよい。アセンブリは、第1のフィルタ電極から離間された第2のフィルタ電極を含み、それによって、第1のフィルタ電極と第2のフィルタ電極との間の分析空隙、およびそれを通じてイオン流が生じる流路の一部を画定してもよい。
【0019】
アセンブリは、流路からイオンの一部を受容する質量分光計を含んでもよい。質量分光計は、流路内のイオン流からオフセットされる流入口を含んでもよい。流入口がオフセットされるので、チップアセンブリは、流路からイオンの一部を質量分光計の流入口内へ流すための分流器アセンブリを含んでもよい。第1の流路からのイオンの一部は、第2の流速で流入口を通って流れてもよく、第2の流速は第1の流速より小さい。
【0020】
分析器は、第1および第2のフィルタ電極間に時間変動電場を発生させるように、第1および第2のフィルタ電極のうちの少なくとも1つに接続される、コントローラを含んでもよい。時間変動電場は、イオン種が分析空隙を通って流れている間にイオン種を分離する電場特性を含んでもよい。分析器は、質量分光計の流入口での第2の流速に応じて、質量分光計内を、選択された真空を維持するための真空発生器を含んでもよい。真空発生器は、1つ以上のポンプ、微細加工されたポンプ、圧力源、固体の流動発生器等を含んでもよい。
【0021】
本発明の前述の、および他の目的、特徴、および利点は、以下の本発明の好適な実施形態のより具体的な説明から明らかとなるが、付随の図面に示されているように、異なる図面を通じて、これらの図面は、必ずしも正確な縮尺で示されておらず、代わりに本発明の原理を示す部分が強調されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の例示的な一実施形態による、化学センサシステムのブロック図である。
【図2】図2は、本発明の例示的な一実施形態による、エレクトロスプレー源を含む液体試料調製区間を備えた化学センサシステムを示す図である。
【図3A】図3Aは、本発明の例示的な一実施形態による、エレクトロスプレー源を含む液体試料調製区間を備えた化学センサシステムを示す図である。
【図3B】図3Bは、本発明の例示的な一実施形態による、機械加工されたエレクトロスプレーヘッドを示す図である。
【図3C】図3Cは、本発明の例示的な一実施形態による、蛇行電極を示す図である。
【図3D】図3Dは、本発明の例示的な一実施形態による、筐体を形成する基板を示す図である。
【図4A】図4Aは、本発明の例示的な一実施形態による、離間した絶縁基板を備えたDMS分光計を示す図である。
【図4B】図4Bは、本発明の例示的な一実施形態による、代替構造の電極を示す図である。
【図4C】図4Cは、本発明の例示的な一実施形態による、電極の縁部に重なる絶縁スペーサを備えたフィルタの側部横断面図を示す図である。
【図4D】図4Dは、本発明の例示的な一実施形態による、スプレー先端部に至る分離チャネルに供給する試料リザーバを備えたエレクトロスプレーを示す図である。
【図5A】図5Aは、本発明の例示的な一実施形態による、イオンの脱溶媒和のための対称性AC無線周波数電場を示す図である。
【図5B】図5Bは、本発明の例示的な一実施形態による、DMSデバイスに統合される脱溶媒和領域を示す図である。
【図6】図6は、質量分光計に接続される従来の技術の円筒形DMSを示す図である。
【図7A】図7Aは、本発明の例示的な一実施形態による、改善された円筒形DMSデバイスを示す図である。
【図7B】図7Bは、本発明の例示的な一実施形態による、改善された円筒形DMSデバイスを示す図である。
【図8】図8は、本発明の例示的な一実施形態による、エレクトロスプレーを載置する塔を示す図である。
【図9A】図9Aは、本発明の例示的な一実施形態による、誘導電極と協働するエレクトロスプレーヘッドを示す図である。
【図9B】図9Bは、本発明の例示的な一実施形態による、誘導電極と協働するエレクトロスプレーヘッドを示す図である。
【図10A】図10Aは、本発明の例示的な一実施形態による、制御システムを示す図である。
【図10B】図10Bは、本発明の例示的な一実施形態による、制御信号を示す図である。
【図11A】図11Aは、本発明の例示的な一実施形態による、チップ容器を示す図である。
【図11B】図11Bは、本発明の例示的な一実施形態による、質量分光計とインターフェースされるチップ容器を示す図である。
【図12A】図12Aは、本発明の例示的な一実施形態による、平面DMS分析器を示す図である。
【図12B】図12Bは、本発明の例示的な一実施形態による、平面DMS分析器を示す図である。
【図12C】図12Cは、従来の技術の円筒形DMSデバイスを示す図である。
【図12D】図12Dは、従来の技術の円筒形DMSデバイスを示す図である。
【図13A】図13Aは、本発明の例示的な一実施形態による、上部基板内のオリフィスを通じて上から、イオン領域内に挿入されたエレクトロスプレー先端部を示す図である。
【図13B】図13Bは、本発明の例示的な一実施形態による、側部からイオン領域内に挿入されたエレクトロスプレー先端部を示す図である。
【図14A】図14Aは、本発明の例示的な一実施形態による、長手方向電場駆動の実施形態を示す図である。
【図14B】図14Bは、本発明の例示的な一実施形態による、長手方向電場駆動の実施形態を示す図である。
【図15A】図15Aは、本発明の例示的な一実施形態による、分裂ガス流の実施形態を示す図である。
【図15B】図15Bは、本発明の例示的な一実施形態による、分裂ガス流の実施形態を示す図である。
【図16】図16は、本発明の例示的な一実施形態による、二重チャネルの実施形態を示す図である。
【図17】図17は、本発明の例示的な一実施形態による、異なるイオン化源のための補償電圧へのケトンの依存性を示す図である。
【図18】図18は、本発明の例示的な一実施形態による、二重チャネルを示す図である。
【図19】図19は、本発明の例示的な一実施形態による、検出スペクトルを示す図である。
【図20】図20は、本発明の例示的な一実施形態による、直列DMS−MS分析器の略図である。
【図21】図21は、本発明の例示的な一実施形態による、LC−ES−DMS−MS分析器のブロック図である。
【図22】図22は、本発明の例示的な一実施形態による、LC−DMS−MS分析器の概略図である。
【図23】図23は、本発明の例示的な一実施形態による、MSへの流速の削減を可能にする分流器アセンブリを含む、DMS−MS分析器の略図である。
【図24】図24は、本発明の例示的な一実施形態による、MSの流入口がDMSの流れからオフセットされる、統合DMS−MS分析器の略図である。
【図25】図25は、本発明の例示的な一実施形態による、統合多層DMS−MS分析器の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本発明は、質量分光計にDMSプレフィルタを使用して、化合物を分析するための方法および装置を提供する。
【0024】
エレクトロスプレー質量分光法(ES−MS)は、ペプチドおよび/またはタンパク質の構造判定のための強力なツールを提供する。これは、構造がタンパク質の機能を定義するのを補助するので重要である。タンパク質に関する構造情報は、典型的には、そのアミノ酸配列から判定される。配列を識別するために、タンパク質は、通常、酵素によって消化され、次いで、タンデム質量分析によってペプチド断片が配列決定される。配列を得るための別の可能な方法は、タンパク質を消化して、ペプチド断片の分子量を測定することである。これらは、コンピュータプログラムのための入力データであり、データベース内に見出される全てのタンパク質が理論的に消化され、理論的な断片が、測定された分子量と比較される。
【0025】
近年、IMSによる等のイオン移動度ベースの分析が、有用な情報をES−MS測定に提供できることが注目されている。イオン移動度ベースの分析は、通常は、分子の形状およびサイズに非常に敏感な大気圧技術である。IMSおよびMSの組み合わせによるタンパク質の識別は、タンパク質を消化する必要性を排除し、試料調製を簡素化し得る。
【0026】
市販のIMSシステムは、飛行時間(TOF)に基づいており、すなわち、それらは、不活性雰囲気(1〜760トール)を通じて、イオンがシャッタゲートから検出器へ進行するのにかかる時間を測定する。ドリフト時間は、イオンの移動度(すなわち、そのサイズ、質量、および電荷)に依存し、検出されるイオン種の特性である。TOF−IMSは、麻薬、爆発物、および化学兵器用薬剤を含む、多数の化合物の検出に有用な技術である。参照することによって本明細書に援用される、PCT出願第PCT/CA99/00715号、また、参照することによって本明細書に援用される、米国特許第5,420,424号を参照されたい。IMSにおける気相イオン移動度は、一定の低電場強度の電場を伴うドリフト管を使用して判定される。イオンは、ゲートを介してドリフト管内へ入り、続いて、それらのドリフト速度の差に基づいて分離される。これらの条件下でのイオンのドリフト速度は、電場強度およびイオン移動度に比例する。現在のIMSデバイスは、イオンの識別のために、事前に加工されたドリフト管(最小サイズ、約40cm3)を使用している。
【0027】
DMS(FAIMSまたはRF−IMSとしても知られている)は、極めて高い電場を利用し、高強度および低強度の電場におけるその移動度の差に基づいて、イオン種を識別する。DMSは、ガス試料を、ガス試料中の特定の化学物質に対応する各イオンタイプを有する、イオン種の混合物に変換するように、紫外光イオン化ランプなどのイオン化源を使用する。イオン種は、次いで、フィルタを通過することができるイオンタイプを選択するように、電極間に特定の電場が印加されるイオンフィルタを通過される。
【0028】
フィルタを通ると、イオン種は、検出器の電極に衝突して、電気信号を生成する。試料中のイオン種の混合物を検出するために、フィルタ電極間に印加される電場は、発生される範囲およびスペクトルを通じて走査することができる。イオンフィルタ処理は、イオンフィルタ電極間で発生される2つの電場、時間変動(例えば、非対称性および周期的)無線周波数(RF)電場、およびdc補償電場の組み合わせを通じて達成される。非対称性RF電場は、そのピークの正電場強度と負電場強度との間に有意差を有する。非対称性RF電場は、イオンを散乱させて、それらが中性化されるイオンフィルタ電極に偏向させ、一方で、補償電場は、特定のイオンの散乱を防止して、検出器へ通過できるようにする。イオンは、低電場でのイオンの移動度と相対的な、高電場でのイオンの移動度の差に基づいて、DMS分析器内でフィルタ処理される。
【0029】
DMSイオンフィルタは、時間変動、または高電場非対称性波形の無線周波数信号に加え、可変DC補償信号の制御によるイオンのフィルタ処理に用いてもよい。DMSフィルタは、高電場非対称性無線周波数信号の波長、周波数、振幅、期間、デューティサイクル等を変化させることによって、イオンのフィルタ処理を制御してもよい。DMSフィルタは、イオンフィルタ電極間の空隙を正確に画定するように、および/またはイオンフィルタ電極を確実に平行にするように、絶縁基板を使用した平面DMSフィルタ構造を含んでもよい。微細加工された基板ベースのDMSの使用は、DMSフィルタによって、安定した、信頼性のある、かつ再生可能な電場を発生できるようにし得、高解像度のDMS分析器がもたらされる。
【0030】
DMSフィルタは、エレクトロスプレー(ES)等の試料スプレー源とともに用いてもよいが、信頼性のある再生可能なスペクトルを得るために、イオンの脱溶媒和が非常に重要である。脱溶媒和電極を、脱溶媒和を補助するように含んでもよく、高められた脱溶媒和が、対称性RF信号を脱溶媒和電極に印加することによって達成される。RF信号は、イオンにエネルギーを提供し、それらの有効温度を上昇させて、脱溶媒和プロセスの向上を補助する。脱溶媒和電極はまた、エレクトロスプレーからの、およびエレクトロスプレー源以外からの、ガス試料内のイオンクラスタ化レベルの制御に使用することができる。イオンクラスタ化の制御によって、より反復可能な測定を可能にすることができ、また、検出されているイオンに関するさらなる情報を提供することができる。
【0031】
ES−DMSシステムは、エレクトロスプレーヘッドを用いてもよく、また、イオンフィルタ電極から分離された誘引電極(attraction electrode)を使用してもよい。誘引電極のイオンフィルタ電極からの分離は、イオンフィルタ電極と相対的な、誘引電極に印加される電位の独立制御を可能にする。誘引電極の独立制御によって、DMSにエレクトロスプレー条件およびイオン導入条件を最適化することができる。誘引電極のイオンフィルタ電極からの分離は、円筒形DMS構成内で実現することもできる。
【0032】
ES−DMSは、DMSイオンフィルタへのイオン注入のさらなる最適化を提供する、誘導電極を含んでもよい。エレクトロスプレーアセンブリは、DMSの基板のうちの1つに取り付けることができ、誘導電極は、イオンをイオン化領域内に誘導するのに使用してもよい。誘導電極は、DMSの基板のうちの1つに取り付けられるか、もしくは接続されるか、またはその近くに自立構造を含んでもよい。アセンブリは、脱溶媒和を高めるように、逆ガス流を含んでもよく、および/または利用してもよい。
【0033】
ES−DMSシステムにおいて、飛行時間型(TOF)測定は、飛行時間型測定によって提供されるさらなる情報を通じてイオン種の識別を高めるように、エレクトロスプレーを使用して、DMSフィルタアプローチと組み合わせてもよい。イオンがDMSのオリフィスから検出器まで進行するのにかかる時間を測定することができる。これは、誘引および誘導電極の電位の独立制御を通じて達成することができる。いかなるイオンもドリフト領域に進ませるのではなく、誘導電極で収集されるように、最初に誘引電極の電位が調整され得る。次いで、一部のイオンがイオン化領域およびDMSフィルタに進むことができるように、誘引電極をパルス化することができる。イオンがイオン化領域から検出器まで進行するのにかかる時間を提供することができ、これは、イオンの識別に関するさらなる情報を提供する。
【0034】
ES−DMSシステムの一部は、半導体製作技術を使用して微細加工または製作されていてもよい。特定のDMS電極は、絶縁する基板または絶縁された基板上に形成してもよく、単一または複数の絶縁する基板は、筐体またはチップアセンブリを形成することができる。ES−DMS構成要素のチップアセンブリおよび/またはマルチチップモジュールへの微細加工は、有利にも、低コストの小型センサをもたらす。
【0035】
ES−DMSシステムは、正荷電および負荷電イオン等の、複数のイオン種を同時に検出する能力を備えた出力セクションを含んでもよい。DMS分析器内での試料分析は、概して、気相中で行われるので、液体試料を液体から気相に変換する必要がある。したがって、エレクトロスプレー(ES)法(「従来の」マイクロおよび/またはナノスプレーを含んでもよい)は、液体試料を気相イオンに変換するのに使用されてもよい。エレクトロスプレー先端部から流出するイオンは、平面DMS分析器に送達されてもよい。ES−DMSシステムにおいて、試料調製、イオン化、フィルタ処理、および検出の全ての機能は、単一の「チップ」上で行われてもよい。
【0036】
ES−DMSシステムは、ES−DMS−MS分析器を形成するように、質量分光計と組み合わされてもよい。MSに連結されるDMSは、解像度を高めること、より良好な検出限界を確立すること、分析される分子の形状および構造情報の抽出を可能にすること、およびタンパク質およびペプチドを含む生体分子等の分子の改善された分析を可能にすることによって、MSの検出プロセスを高める。DMS分析は、イオン移動度に基づいており、イオンのフィルタ処理および識別は、タンパク質の形状が大体においてその機能性を特定するので、ゲノムおよびプロテオミクス研究(すなわち、製薬業界)に有用なものとなり得る、イオンのサイズおよび形状に大きく依存する。したがって、DMSフィルタ処理は、タンパク質を特徴付ける低コストだが高容量の方法として適用されてもよい。
【0037】
MSの流入口に載置される担体内に差し込まれる、使い捨てのDMSフィルタチップが用いられてもよい。ES−DMS−MSデバイスはまた、分析される分子に関する構造(配座)情報、およびES−MS分析だけでは得ることができない配列情報も提供し得る。DMS分析器は、ES−MS分析だけを使用して識別することができない異性体(質量は同じだが、それらの形状が異なる分子)間の弁別を可能にし得る。
【0038】
ES−DMS分析器は、単一の筐体内に含まれてもよい。ES−DMS分析器は、液体試料分析のための独立型センサとして、または、MSのフロントエンドとして使用されてもよい。ES−DMSおよび/またはES−DMS−MS分析器は、液体クロマトグラフィー(LC)、高圧液体クロマトグラフィー、および毛管電気泳動等の、他の液体分離技術によって動作させてもよい。例えば、LC−ES−DMS−MSシステムが用いられてもよい。LC−ES−DMS−MSシステムの一部または全ては、チップアセンブリ上に微細加工および/または形成されてもよい。DMSフィルタ部分は、平面DMS、円筒形DMS、および/または同軸DMSを含んでもよい。
【0039】
微細加工(MEMS)処理は、DMSフィルタを伴うエレクトロスプレー先端部の単純なデバイスへの統合を可能にすることができ、また、正確で、高度に反復可能な液体試料の評価のための、精密でさらに小型の分析システムをもたらす。MEMS ES−MSは、生物学的薬剤を検出するための、携帯可能な、小型で、低コストの生体センサとして使用されてもよい。統合ES−DMSチップは、微細加工製作技術を使用して作製されてもよい。大気圧化学イオン化(Atmospheric Pressure Chemical Ionization:APCI)デバイスは、統合APCI−DMS−MS分析器を形成するように、質量分光器に対するプレフィルタとして使用されるDMSフィルタと統合されてもよい。
【0040】
従来の機械加工は、典型的には、DMS分析器の高い製作コストおよび不十分な再現性を伴っていた。例えば、円筒形DMSの幾何学形状は、MSにインターフェースする時の収集効率を制限するか、または、試料の中性粒子および試料のイオンの両方がMSに入るのを可能にし、より複雑なスペクトルをもたらす。平面および/または微細加工されたDMSにおいて、DMSの形成は、より精密で安定しており、生体分子の識別のための極めて信頼性のある質量スペクトルをもたらす。
【0041】
微細加工されたES−DMSは、低コストの、大量製造が可能で、小さく、小型の、微分イオン移動度に基づいた分光計である。したがって、ES−DMSシステムは、セラミックパッケージング、PCボード製造技術、またはプラスチック加工を含むMEMS製作技術等の、大量製造技術を使用して生成されてもよい。大量製造技術は、使い捨てとすることができる、低コストのデバイスをもたらすことができ、したがって、試料の相互汚染の課題を回避する。ES−DMSチップは、DMSインターフェースフィルタとして生体分子識別にMSを使用する、あらゆる研究室に提供されてもよい。このようなフィルタは、フィルタ処理用電子部品を含むインターフェース治具に差し込むことができる、DMSインターフェースチップを含んでもよい。エレクトロスプレー先端部または電気泳動チップは、DMSチップと統合する(その一部として製作する)ことができる。MEMSアプローチは不要であるが、アプローチによって、1)大量生産されるDMSチップの高信頼性および繰り返し性が可能になること、および2)DMSのコストを低くして使い捨てのDMS分析器を可能にすることから、好ましくなり得る。この使い捨て性は、ある試料から次の試料(またはユーザ)への汚染を回避するが、これは、汚染を懸念するEPA(米国保護庁)およびFDA(米国食品医薬品局)のような管理機関に従って、これに対して、および/またはこれによって行われる試験に極めて重要である。
【0042】
イオンが質量分光計に集束され、収集効率が100%に近くなる平面MEMS DMSチップが製作された。本実施形態において、DMSイオンフィルタ領域内へのイオン注入は不要である。デバイスは、平面上に微小加工される。これによって、イオンのクラスタ化を最小化するように、オンボード加熱器との容易な統合が可能となる。微細加工された、または従来のエレクトロスプレー先端部、および/または微細加工された電気泳動チップと、容易に統合することができる。これは、製作要件が低減された、簡略化された設計であり、単一のガス流路だけを使用するように構成することができる。
【0043】
微細加工は、フィルタの製造および性能の優れた再現性を提供する。これは、試験結果が、デバイス間および研究室間で一致するように、非常に重要である。微細加工は、いかなる他の方法でも成すことができない、DMSフィルタチップの新しい構成を可能にする。これらの新しい構成は、より単純であり、また、イオンを質量分光計に送達して望ましくないイオンをフィルタ処理する時に、より効率的である。
【0044】
生物学的薬剤を検出するための、統合ES−DMSチップを使用した、携帯可能な、小型で低コストの生体センサは、本技術によってサイズの低減およびコストの低減が可能となり、製造が可能となるので、微細加工などの微細製作法を使用することで可能である。これらの機器は、現場での高品質な生体分析の利用を含む、多くの用途を有し得る。例えば、生物学的薬剤に露出されたことが推測される人は、機器に一滴の血液を供給することができる。血液は、緩衝液と混合し、処理して、エレクトロスプレーノズルを介して、イオンが分析されるDMSに導入することができる。特定の生体分子が検出された場合に、警報を作動させることができる。
【0045】
MEMS DMSは、構成部品の形成および結果として生じるアセンブリを簡素化する、多目的の筐体/基板/パッケージングを含んでもよい。さらなる特徴は、その上にフィルタを構築してデバイス全体に構造を提供するように物理的プラットフォームとして基板を使用すること、デバイスを通る流路を画定する絶縁プラットフォームまたはエンクロージャとして基板を使用すること、および/または性能を向上させる隔離構造を提供するように基板を使用すること、を含み得る。スペーサは、デバイス内に組み込むことができ、構造の画定、また、さらなるバイアス制御のための一対のシリコン電極の可能性の両方を提供する。複数の電極形成および機能的なスペーサ配列を利用することができ、性能および能力を向上させる。MEMS DMSは、そのフィルタに印加される、時間変動および/または非対称性の周期的電圧を用いてもよい。制御構成要素は、イオンをパージするための加熱器を含むことができ、さらに、加熱/温度制御のための、フィルタまたは検出器電極等の既存の電極の使用を含んでもよい。
【0046】
ES−DMS−MSシステムは、試料調製、イオン化、フィルタ処理の全ての機能を含んでもよく、検出は、単一のチップ、アセンブリ、または構造上で行うことができる。DMS分析器は、MSに対するプレフィルタとして適用されてもよく、MSは、DMSフィルタ領域の端部で排出ポートに直接連結される。種々の試料調製区間を使用してもよく、周囲空気試料を吸引するポート、エレクトロスプレー、ガスクロマトグラフ、および/または液体クロマトグラフ等を含む。
【0047】
図1は、試料調製区間10A、フィルタ区間10B、および出力区間10Cを含む、化学センサシステム10のブロック図を示している。実際は、液体試料Sは、試料調製区間10A内でイオン化され、次いで、作成されたイオンは、フィルタ区間10Bに渡されてフィルタ処理され、次いで、フィルタ区間を通過したイオンは、検出のために出力区間10Cに送達される。液体試料調製区間10A、フィルタ区間10B、および出力区間10Cは、コントローラ区間10Dの制御および命令の下で動作する。好ましくは、コントローラ区間10Dは、システム10の動作、および検出データDの評価および報告の両方を制御する。
【0048】
一実施形態では、液体試料調製区間10Aは、エレクトロスプレーヘッドを含み、液体試料Sを受容し、調整して、イオン化する。これは、区間10B内の好適な平面DMSフィルタに移送され、その後、イオンを送達して、対象となるイオン種を出力区間10Cに渡す。本発明の種々の実施形態において、出力区間10Cの機能は、イオン種の即時検出、または、そこでイオンを検出するための質量分光計(MS)等の別の構成要素へのイオンの転送を含んでもよく、検出されたイオン種を示すデータDの利用を可能とする読み出しを伴う。
【0049】
当業者には理解されているように、平面を伴うDMSフィルタが示されているが、フィルタ、検出器、流路、電極等を含む、種々の非平面部分および表面を有する他の構成も動作可能となり得る。
【0050】
図2および3Aの実施形態において、液体試料調製区間10Aは、液体試料Sを受容するためのチャンバ14を有する、エレクトロスプレーの試料イオン化源またはヘッド12を含む。本発明の実施において、液体試料Sは、生体化合物、例えば溶媒X中の化合物AおよびBを含有してもよい。本発明は、液体試料中の1つ以上の化合物の識別に関わる。
【0051】
区間10Aのエレクトロスプレーデバイスの実施において、高電圧電位18が、コントローラ10Dによって、エレクトロスプレーヘッド12のチャンバ14内で液体試料Sに印加される。コントローラ10Dによって駆動される、エレクトロスプレー先端部20の液体試料Sと、誘引電極22との間の電位差は、イオン領域23の試料S内の溶媒X中の化合物A、Bをイオン化する。これは、化合物AおよびBを表すイオン24および26、および溶媒分子28を作成する。一実施形態では、イオンおよび溶媒は、流路30に沿って、平面DMSイオンフィルタ40の平行フィルタ電極44、46間のフィルタ区間10B内へ駆動または吸引される。
【0052】
平面DMSフィルタデバイス40におけるフィルタ処理は、イオン移動度の差に基づいており、とくに、イオンのサイズおよび形状の影響を受ける。これは、それらの特性に基づいたイオン種の分離を可能とする。本発明の一実施において、高強度非対称性波形の無線周波数(RF)信号48、およびDC補償信号50は、コントローラ10D内のRF/DC発生器回路によって、フィルタ電極44、46に印加される。非対称性電場は、高および低電場強度状態を交互させて、イオンを、それらの移動度に従って、電場に応じて移動させる。典型的には、高電場時の移動度は、低電場のそれとは異なる。この移動度の差は、イオンがフィルタ電極間のフィルタを通じて長手方向に進行する時に、それらの正味の横方向の変位を生成する。補償バイアス信号の非存在下では、これらのイオンは、フィルタ電極のうちの1つに当たって中性化されるであろう。選択された補償バイアス信号50(または他の補償)の存在下では、特定のイオン種が、流路の中央に向かって戻されて、フィルタを通過することになる。したがって、補償された非対称性RF信号48の存在下では、イオン種に従って、イオンの互いからの分離を達成することができる。選択されていない種は、電極に当たって中性化され、対象となる種は、フィルタを通過することになる。データおよびシステムコントローラ10Dは、どのイオン種をフィルタに通過させるのかを選択するために、フィルタ電極44、46に印加される信号48、50を調節する。
【0053】
平面DMSフィルタ40によって達成できるよう、化合物AおよびBのいずれか、または両方の明確な識別を得ることができるように、イオン24および26を単離させることが望ましいことを理解されるであろう。平面DMSフィルタ40は、原理上は、コントローラ10Dによって印加される補償に従って、出力区間10Cでの検出のために、いずれか1つだけが存在するように、それらの移動度に基づいてイオンAとBを識別する。例えば、イオン24は、図2および2のフィルタ40を通るイオン24’で示されている。
【0054】
再び図2および2を参照すると、出力区間10Cは、検出器電極70、72を伴う検出器69を含む。コントローラ10Dは、フィルタ40を通るイオンの指示として、電極70、72への電流を測定する。これらの電極は、コントローラ10Dからのバイアス信号71、73による電位に維持される。フィルタ40を通ったイオン24’は、電極の極性および検出器電極への制御信号71、73に応じて、コントローラ10Dの制御下で、それらの電荷を検出器電極70、72上に置く。さらに、補償(すなわち、バイアス電圧)を掃引することによって、試料S内のイオン種の完全なスペクトルを検出することができる。
【0055】
コントローラ10Dの知的制御によって、異なる動作制度を選択することが可能になり、その結果、対象となるイオン種のフィルタ処理を目標とすることが可能となる。本発明の一実施形態の実施において、非対称性電気信号48は、補償バイアス電圧50とともに印加され、その結果、フィルタが、電子コントローラ10Dによって制御されるように所望のイオン種を通過させる。同様に、所定の電圧範囲にわたりバイアス電圧50を掃引することによって、試料S内のイオン種の完全なスペクトルを達成することができる。
【0056】
別の実施形態では、非対称性電気信号によって、所望のイオン種を通過させることが可能になり、補償は、補償バイアス電圧を必要とせずに、この場合も電子コントローラによって供給される制御信号の命令下で、非対称性電気信号のデューティサイクルを変化させる形態である。これらの特徴によって、装置はまた、同調させること、すなわち、イオン種をフィルタ処理するように同調させることができ、所望の選択された種だけを検出器に通過させる。
【0057】
本発明のさらなる利点は、フィルタが、極性は異なるが移動度は類似する複数のイオン種を通過させることができること、およびこれらを同時に検出できることである。各検出器電極70、72が異なる極性に維持される場合は、フィルタを通過する(極性は異なるが移動度は類似する)複数のイオン種を同時に検出することができる。検出されたイオンは、図2のデータDで示される、検出されたイオンの種を判定するように、印加された制御信号48、50および電位バイアス信号71、73と相関される。
【0058】
この多機能性は、図2にあるように、出力区間10Cを参照することによってさらに理解され得、上部電極70は、対象となるイオンがフィルタ40を通過するときに、同一極性で所定の電圧に維持されるが、下部電極72は、別のレベルに維持、おそらくは接地されている。上部電極70は、検出のために、イオン24’を電極72へ下方に偏向させる。しかしながら、いずれの電極も、イオンの電荷および極性、ならびに電極に印加される信号に応じてイオンを検出してもよい。したがって、フィルタを通過する、極性は異なるが移動度は類似する複数のイオン種は、1つの検出器として上部電極70を使用し、第2の検出器として下部電極72を使用し、また、コントローラ10D内の2つの異なる検出器回路を使用し、したがって2つの異なる出力が放射されることによって、同時に検出することができる。したがって、検出器69は、水素ガスバックグラウンド中に硫黄を含むガス試料等の、平面DMSフィルタ40を通過する複数の種を同時に検出し得る。
【0059】
電子部品コントローラ10Dは、制御電子信号をシステム10に供給する。制御回路は、オンボードまたはオフボードとすることができ、平面DMSデバイスは、制御回路10Dに接続する、図4Aに示される導線および接触パッドを少なくとも伴う制御部分を有する。コントローラからの信号は、このような接続を介してフィルタ電極に印加される。
【0060】
図4Aの実施形態において、平面DMSシステム10は、(金等の)フィルタ電極44、46がその上に形成される、離間された絶縁基板52、54(例えば、Pyrex(登録商標)、ガラス、セラミック、プラスチック等)を有する、分光計チップ100を含む。基板52、54は、それら自体の間にドリフト管29および流路30を画定し、したがって、筐体機能を果たす。好ましくは、基板は、絶縁しているか、電極を絶縁載置するための表面60、62を有する。電極44、46は、イオンフィルタ40を形成し、これらの絶縁表面60、62上に載置されるフィルタ電極は、流路30を挟んで互いに向き合う。
【0061】
図4A、4B、4Cに示されているように、基板52、54は、スペーサ53、55によって分離されるが、これらは、セラミック、プラスチック、Tefron(登録商標)等で絶縁して形成されてもよく、またはシリコンウエハをエッチングまたはダイシング加工することによって、あるいは、例えば基板52、54の拡張部を作成することによって形成してもよい。スペーサの厚さは、電極44、46を担持する基板52、54の面の間に、距離「D」を画定する。図4Aの一実施形態では、シリコンスペーサを電極53’、55’として使用することができ、閉じ込め電圧は、フィルタ処理されたイオンを流路の中央に閉じ込めるように、コントローラ10Dによってシリコンスペーサ電極に印加される。この閉じ込めによって、より多くのイオンを検出器に衝突させることができ、その結果、検出が向上する。
【0062】
図4Bに示されている本発明のさらなる代替実施形態では、代替構造の電極44x、46xは、基板52、54の代わりとなり、絶縁スペーサ53、55に載置されて分離され、その中に流路30を形成する。流路の一方の端部では、試料調製区間10Aがイオンをフィルタ区間10Bに供給し、他の端部では、フィルタ処理されたイオンが出力区間10Cに入る。基板が構造機能の役目をし、筐体を形成するのと同様に、構造電極44x、46xも、電極であることに加えて、筐体としての機能を果たす。基板と同様に、これらの電極の外側表面は平面であってもなくてもよく、絶縁表面61によって覆われてもよい。
【0063】
側横断面で示されている図4C実施形態において、絶縁スペーサ53、55は、フィルタ電極44、46の縁部44f、46fと重なっている。これは、流路(すなわち、ドリフト管)29内を流れるイオンが、非均一漏れ電場「f」が存在する電極縁部44f、46fから離れて、フィルタ電極44、46間の均一な横方向電場の領域に閉じ込められるようにする。さらなる利益は、全てのイオンが、フィルタ電極間を通されること、およびその均一な電場を受けることである。
【0064】
図2に戻ると、動作中に、イオン24、26は、フィルタ40内へ流れる。一部のイオンは、それらがフィルタ電極44、46と衝突するときに中性化される。これらの中性化されたイオンは、概して、搬送ガスによってパージされる。パージはまた、例えば、適切に構成されたフィルタ電極(例えば、図3Dに示される蛇行44’、46’)に、または抵抗スペーサ電極に電流を印加する等によって、流路30を加熱することによって達成することができる。図4Aのスペーサ電極53、55は、抵抗材料で形成することができ、したがって、加熱可能な電極53r、55rとして使用することができる。
【0065】
イオン24は、図2の出力区間10Cに移動する。排出ポート42は、移動したイオン24から分子28を排出するために提供される。このイオン24の分離は、検出機能を容易にし、より正確な化学分析を可能にする。しかし、この予防措置によっても、一部の溶媒分子が、対象となるイオン24に付着したままとなり得る。したがって、好適な実施形態では、それらをフィルタ処理する前に、イオン24および26等を脱溶媒和するように、装置が提供される。脱溶媒和は、加熱によって達成されてもよい。例えば、電極44、46、53r、55rのうちのいずれかは、コントローラ10Dによってそれらに印加される加熱器信号を有してもよい。別の実施形態では、図3Aに示されているように、流入ガス流は、加熱器要素89によって加熱されてもよい。
【0066】
当業者は、エレクトロスプレーされたイオンの脱溶媒和または「乾燥」は、エレクトロスプレープロセスの重要な部分であることを理解されるであろう。イオンは、最初にエレクトロスプレー先端部から放出される時には、大量の溶媒がイオンを被覆している、液滴の形態である。それが空気を通じて対極に向かって進行するにつれて、溶媒を蒸発させて、最終的に、脱溶媒和されたイオンを残し、次いで分析することができる。分析前の不完全な脱溶媒和は、分析を歪曲する可能性がある。加えて、他の何らかの補助無しでイオンを十分に脱溶媒和できるようにするには、イオンを長距離進行させることが必要となり得る。したがって、この脱溶媒和は、本発明の実施において有益であると理解されるであろう。
【0067】
本発明の別の実施形態では、分析前にエレクトロスプレー中に生成されるイオンの脱溶媒和を高めるように、対称性RF電場が使用される。図5A、5Bに示されているように、イオンがこの信号からの正味の偏向無しで脱溶媒和されるように、それらがドリフト管を進行するときに、エレクトロスプレープロセスで発生されたイオンを対称的に振動させ、加熱されるように、対称性無線周波数電場が、搬送ガス流に垂直に印加される。
【0068】
より具体的には、イオンと中性分子との間の相互作用が、それらの有効温度を上昇させ、それらの脱溶媒和を高める。それらの振動中に、イオンは、中性の空気分子に衝突し、それらの内部温度を上昇させる。イオンの内部温度の上昇は、溶媒の蒸発を高め、脱溶媒和された荷電イオンを実現するための時間を短縮する。この作用によって、比較的に長さが短いドリフト管上で脱溶媒和を行うことが可能となる。脱溶媒和は、より正確な検出データをもたらし、上述のアプローチは、本発明の平面DMSフィルタと容易に統合される。
【0069】
脱溶媒和電場は、それらの間に空隙を伴う、互いに平行に構成される2つの電極間に電圧を印加することによって発生させることができる。例えば、電極対44、46および53、55のうちのいずれかが、コントローラ10Dの制御下で、この機能のために使用されてもよい。好ましくは、図3Aに示されているように、別個の脱溶媒和電極77、79が、この機能のために使用されてもよい。
【0070】
本発明のさらなる実施形態では、図3Aおよび3B内に図式的に示されているように、微細加工されたエレクトロスプレーヘッド80が基板52上に載置される。電極82、84、86、88は、基板52の反対側上に形成され、エレクトロスプレーイオン24、26を、ドリフト管29内の流路30のイオン領域23内へ誘導する。誘引電極22は、イオン24、26をイオン領域23内に誘引するように、それらに印加される電位を有する。搬送ガス流90は、イオン24、26を取り込み、すでに説明したフィルタ処理機能のためのフィルタ40にそれらを搬送するように、所望の流速に設定される。ガス排出口91は、搬送ガス90を含み、非イオン化された構成成分および中性化されたイオンを運び出す。
【0071】
電極22、82、84、86、88、および脱溶媒和電極77、79にも印加される電位は、互いに、およびフィルタ電極44、46に依存せずに設定および制御することができる。例えば、これは、有利には、隣接するフィルタ電極46等のあらゆる他の電極とは異なる信号で、誘引電極22の駆動を可能にする。これは、特に、基板の絶縁表面の提供によって容易にされ、電極の分離によって、フィルタ駆動要件に依存せずに最適化することができる。
【0072】
この構成はまた、誘導電極82、84、86、88および誘引電極22の、パルス化モードで(例えば、スイッチのオンおよびオフ)個々に動作されるのを可能にする。このモードでは、選択された量のイオンを、イオン領域23内に導入することができる。例えばオリフィスから検出器72まで等の、これらのイオンが進行する時間は、「飛行時間」(「TOF」)型DMSモードの動作に使用することができる。このモードにおいて、飛行時間は、イオン種に関連し、したがって、さらなる情報を種の弁別に提供する。これは、円筒形DMSデバイスの改良をもたらす。
【0073】
IMSの当業者には理解されるように、このTOFは、IMSデバイスにおいて実施される飛行時間と類似するが、ここでは、DMS構造内で実施されている。したがって、この新しい技術革新は、1つの動作デバイス内で、IMSおよびDMSの両者の検出データを提供し得る。DMSおよびIMSデータの組み合わせは、より良好な検出結果を生じさせることができる。
【0074】
図2〜3A、4A〜4Bに示されているような好適な実施形態において、筐体64は、基板52、54によって形成され、内部流路30は、入力部10Aから、イオンフィルタ10Bを通じて、出力部10Cまで延在して画定される。より具体的には、基板52、54は、作業表面60、62を提供し、そこでの電極の形成に有利に働く。これらの表面60、62は、覆われるか、または平面であってよく、好ましくは、例えばガラスまたはセラミック基板を使用して形成された時などに、絶縁して(または絶縁されて)もよい。これは、それ自体が、微小電気機械システム(MEMS)または多重チップモジュール(MCM)等の大量製造技術、または他のプロセスに役立ち、超小型パッケージングおよび小電極サイズをもたらす。したがって、イオンフィルタは、好ましくは、雑音を減らして性能を向上させるために、それらの間に流路30が画定される表面フィルタ電極44、46、次に基板の絶縁表面によって、これらの絶縁表面上に画定され、次いで、検出器電極70、72からのフィルタ電極での制御信号48、50を分離する。これは、参照することによって本明細書に援用される第5,420,424号にあるような、従来の技術のDMSデバイスの外側円筒の広範な導電領域とは異なる。
【0075】
さらに、幾何学的および物理的な考慮により、従来の技術の円筒形設計では、イオンは、ドリフト管の横断面内に分散され、したがって、質量分光計の流入口96付近の領域Rでは、わずかなイオンだけしか利用できないことを理解されるであろう。図6に示されている円筒形DMSの従来の技術の構成(参照することによって本明細書に援用される、PCT/CA99/00715を参照のこと)では、質量分光計の流入口96へのさらなるイオンの送達を可能にすることによって、この制限を解決しようとしている。しかしながら、試料イオン24と、溶媒分子28等の中性分子との間にはいかなる分離も生じないので、中性試料分子も、質量分光計の流入口96内に入ることができる。これは、質量分光計内のスペクトルを極めて複雑にし、解像度を低下させる。
【0076】
本発明は、例えば、図3Aの構成においてこれらの欠点を解決する。本発明の実施においては、事実上、検出器領域69に入るイオン24の全てが、質量分光計の流入口96に集束される。これは、特に、流路周辺全体にイオンが分散される円筒形DMSデバイスと比較して、MSの流入口だけでなく、システムの検出効率の飛躍的な向上、および感度の向上をもたらす。
【0077】
さらに、本発明の新しい円筒形設計を参照すると、図7Aに示されるように、エレクトロスプレー先端部20は、外側電極44C内のオリフィス31’を介して、誘引電極22’の誘引の下で、試料を流路30’内に注入し、試料は、ガスGの流れによってフィルタ区間10B’に向かって搬送される。誘引電極は、内側電極46Cに隣接して形成されるが、絶縁体帯In1、In2によって電気的に分離される。したがって、誘引電極は、隣接する電極、例えば46Cとは別に、独立してバイアスすることができる。本実施形態はまた、部品数を削減しながら機能的および構造的構成要素を組み合わせるが、例えば、内側円筒の構成要素を、絶縁層In1、In2の結合機能を介して、互いに係合することができる。
【0078】
図7Bに示されている代替実施形態において、誘引電極22”は、外側リング電極44C’に隣接して形成され、絶縁体リングIn3によってそれらから絶縁される。エレクトロスプレー先端部20は、試料Sを、側部からリング46C”の内側に導入するが、これは、別個の電極であってもよく、または内側電極46C’の拡張部であってもよく、試料は、誘引電極22”の誘引を受け、ガスGによって、フィルタ区間10B”の流路30”内に搬送されている。同じく、電極22”は、絶縁体In3によって電極44C’から分離され、したがって、電極は、独立して駆動することができる。
【0079】
図8に示されている本発明のさらなる実施形態において、エレクトロスプレーアセンブリ80”は、基板52に取り付けられ、エレクトロスプレーヘッド12を含む。イオンは、誘導電極「F」(本実施形態では3つ)によって、オリフィス31に向かって搬送され、誘引電極22、および82、84および/または86、88等の誘導電極によって、イオン領域23内に誘引される。
【0080】
好ましくは、イオン領域23に向かってイオンを誘導する電位勾配を作成するように、別個のDCバイアス「DC」が、各誘導電極に印加される。誘導電極は、上述のように、脱溶媒和を高めるように、同じく対称性RF信号「DS」を印加することによっても、さらなる機能のために使用することができる。
【0081】
洗浄ガスGが、脱溶媒和をさらに高めるように、ポートP1で導入される。このガスは、チャンバ93内に誘導されたイオンとは反対に流れ、ポートP2、P3から排出される。好ましくは、これは、オリフィス31にいかなる圧力勾配も無く動作される。
【0082】
スプレー条件を向上させるために、本発明の実施において、先端部20と上部誘導電極F1との間の間隔20Sを調整することができる。一実施において、筐体12aの位置は、基部Bと相対的に調整することができ、その結果、間隔20Sを調整する。別様において、ヘッド12の高さは、電極F1と相対的に調整することができる。
【0083】
代替実施形態では、図9Aおよび9Bに示されているように、離間された誘導電極F(図9A)、またはF1、F2、F3(図9B)は、カーテンガス流CGを浴びる。この流れは、筐体H1内に閉じ込められなくても、または含まれてもよい。エレクトロスプレーヘッド12は、取り付け台M1に調節可能に載置され、その送達角度は、基板52の表面と相対的に調整することができる。加えて、その高さは、基板と相対的に調整することができる。
【0084】
再び図4Aを参照すると、試料リザーバ92は、液体試料Sを受容し、次いで上述のようにイオン化されてフィルタ処理される。このような実施形態では、単一の分光計チップ100は、マイクロ流体エレクトロスプレーモジュール80’の一部等のイオン化源、および平面高電場非対称性波形イオン移動度フィルタ40の両方を統合する。また、内部検出器を含めてもよく、または検出のためにイオンが出力される。種々の微細加工されたマイクロ流体構成要素は、イオン源として、またはそれらの組み合わせとして使用されてもよく、エレクトロスプレー、ナノエレクトロスプレー、液体クロマトグラフィー、電気泳動分離を含む。
【0085】
別の実施形態では、図4Aのエレクトロスプレーヘッド80’は、(好ましくは、陽極結合またはブレージングを通じて)基板52に取り付けられてもよい。誘導電極82および84は、本実施形態では不要である。
【0086】
図4Dの実施形態において、マイクロ流体エレクトロスプレーモジュール80’は、オリフィス20’に、次いで先端部20に至る、延びた、蛇行する分離チャネル92aに送給する、試料リザーバ92を含む。チャネル92aは、先端部20でイオン化する前に、試料内の成分を調整または分離するための、液体クロマトグラフまたは電気泳動セパレータ等であってもよい。
【0087】
マイクロ流体モジュールの有無に関わらず、このようなチップ100の動機は、試料調整および分析における変動性の排除であり、これは、人間の相互作用を削減することによって、かつ全ての主要な構成要素を単一構造内に組み込むデバイスを提供することによって達成される。これらのチップ100は、低コスト製造に役立ち、その結果、使い捨てにすることができる。各試料分析に対する新しいチップの使用は、試料から試料への二次汚染を排除する。加えて、人間の介在を削減することによって、試料の調製時間が削減される。従来の配列では、エレクトロスプレー先端部またはマイクロ流体構成要素は、あらゆるフィルタまたは質量分光計の流入口に対して、毎回再調整しなければならない。これには、時間およびコストがかかる。本発明の統合マイクロ流体チップ/平面DMS装置によって、マイクロ流体構成要素と平面DMSの流入口との相対的位置が固定される。分析が完了すると、チップ全体が簡単に廃棄され、分析される試料とともに新しいチップが装填され、おそらくは質量分光計上に載置される。これは、極めて速い分析時間および高スループットが可能となる。
【0088】
本発明の例示的な一実施形態では、図10Aに示されているように、コントローラ10Dは、エレクトロスプレー制御10D1と、RF非対称性駆動信号およびDC制御バイアスをフィルタ電極44、46に印加するための、高電圧RF波形およびDC発生器10D3と協働する波形発生器(合成器)10D2と、検出器電極上のイオンを検出するための検出用電子部品10D4とを含む、いくつかのサブシステムを含む。コンピュータ10D5は、データを収集し、システムを制御する。一実施形態では、RF電場は、高電圧パルスを迅速に発生するようにフライバック変圧器を組み込む、ソフトスイッチ半共振回路によって、発生器10D3内で生成される。回路は、約10〜70%のデューティサイクルを伴う約100kHz〜4MHzの周波数で、少なくとも1400ボルトのピークツーピークRF電圧を提供する。フィルタ電極を駆動するための試料のRF波形を図10Bに示すが、その変形例も本発明の実施の範囲内にある。
【0089】
好ましくは、チップ100は、チップ受け具アセンブリ220内に挿入される。アセンブリ220は、チップを受容するためのソケット222を含む。ソケットは、コントローラ10Dに電気的に接続される。チップ受け具220の好適な実施形態は、図11Bに示されているように、化学センサシステム10を質量分光計MS98に連結する、さらなる機能を果たす。チップ受け具アセンブリ220は、システム10の流出口オリフィス99が、オリフィス99xを介して、オリフィス流入口96と一列にされ、それによって、イオン24’が、検出および分析のために、MS内に導かれるように、質量分光計の面224に取り付けられる。
【0090】
フィルタ40を通過するイオン24の検出は、図2の検出器電極70、72と関連して前述されたように行われてもよい。図3Aには代替実施形態が示されており、電極70は、ここでは、質量分光計98の取り入れ口96に向かってイオン24’を偏向させる、偏向電極として使用される。イオンは、集束電極72a、72bによって誘導または集束され、基板54’内のオリフィス99、および取り付けアダプタ102を介してプレナムガスチャンバ101を通過する。チャンバ101内に低流速プレナムガスを提供することで、中性化された試料イオンまたは溶媒分子が、質量分光計の取り入れ口96に入らないようにする。質量分光計の取り入れ口に集束されるイオンは、次いで、標準的な質量分光計の手順に従って検出される。プレナムチャンバ101は、図11Bには示されていないが、本実施形態において有益に使用されてもよいことを理解されるであろう。
【0091】
本発明のアセンブリは、例えば図3A、11B、および12A〜12Bに示されているように、(プレナムチャンバの有無に関わらず)質量分光計の取り入れ口96の真上に容易に載置することができる。偏向電極(側部実装、図3Aまたは12A〜12B)によって、ほぼ100%のイオンを質量分光計に偏向させることができる。
【0092】
この高効率は、質量分光計の流入口96に載置され、ドリフト管内の全体のイオンのうちのごくわずかしか、それらを流入口96内に推進する電場によって影響を受けず、その結果、利用可能なイオンのうちのわずかしか検出されない、図12C〜12Dの従来の技術の円筒形設計とは対照的である。
【0093】
これで、本発明の実施において、いくつかのイオン検出器のうちのいずれかを使用して、化学分析を行うことができることを理解されるであろう。図2および4Aの実施形態において、検出器は、完全にアセンブリ10の内部にある。図3Aの実施形態において、アセンブリ10は、アダプタ102を介して、検出器としての質量分光計98に密接に係合される。図3Aの実施形態において、集束電極72a、72bへの電流が監視される場合は、次いで、さらなる検出器情報が、質量分光計98の検出情報を処理するのに利用可能である。集束電極72a、72bが無くても、本発明のDMSスペクトルは、質量分光計内の全イオン電流を監視することによって再構成することができる。
【0094】
図13Aおよび13Bに本発明の代替実施形態が示されているが、エレクトロスプレー先端部20は、上部基板52’内のオリフィス31を通じて上から(図13A)、または側部から(図13B)、イオン領域23内に挿入されている。誘引電極104、106は、イオンがガス流90内をフィルタ電極44、46に向かって進行する時に、流路30内のイオンを誘引および誘導する。図13Aにおいて、エレクトロスプレー先端部20からの液滴は、リザーバ54a内で収集するが、排出孔54bが提供されてもよい。
【0095】
イオンがイオンフィルタを通過した後、かつ出力区間10Cに入る前に、それらを濃縮することが望ましい。これは、検出器での信号対雑音比を向上させ、感度を向上させる。イオントラップまたはイオンウェルは、このように、イオンを収集し、それらを濃縮し、次いで、濃縮されたイオンを直ちに出力区間に送達することができる。中性粒子は、イオントラップ内には収集されず、ガス流によって、イオントラップTから継続的に除去される。
【0096】
イオントラップは、例えば、図2、B、Cにあるように、本発明の多くの実施形態に適用することができる。例示的な実施形態を図13Aに示すが、イオントラップTは、いくつかの適切にバイアスされる電極対で形成されている。一実施例において、正イオンの場合、電極は、最小電位が電極対76bの領域内に形成され、電極対76aおよび76cの電位がより高くなるようにバイアスされる。イオンは、トラップ内に集積することができ、所望の期間の後に、所望の数のイオンが収集され、トラップは、電極76a、76b、および76cに印加される電圧を調整することによって開くことができる。トラップが開かれた時、トラップされたイオン24’は、出力区間10C内へ流れる。
【0097】
上述の実施形態において、イオンフィルタ40は、イオンがドリフト管29内のガス流90によって推進されるときに、RFおよびDC発生器10D3によって駆動される、離間された電極44、46を含む。図14Aおよび14Bの実施形態は、本発明の長手方向電場駆動の実施形態であり、ドリフト管29内のイオンを運搬する新規方法が示されている。
【0098】
図14Aおよび14Bの実施形態において、イオンは、電極110および112によって発生される長手方向電場を使用して、出力区間10Cに向かって推進される。これらの実施形態は、超小型設計におけるガス流構造の簡略化を特徴とし、ガス流でさえも随意である。
【0099】
一実施形態では、イオンは、ガス流122とは反対方向に進行し、電場ベクトル120によって推進される。このイオンの進行とは反対方向のガス流は、試料イオンの脱溶媒和を高める。また、中性試料分子の無い清浄なイオンフィルタ40を維持する。その結果、これは、イオンクラスタの形成レベルを減少させ、イオン種のより正確な検出をもたらす。さらに、逆ガス流は、イオン化領域23内の以前の試料の記憶効果を空にし、削減する。本実施形態は、示されているように上または側部からイオン領域23内に挿入される、統合エレクトロスプレー先端部20を含むことができる。
【0100】
図14Aおよび14Bの長手方向電場駆動の実施形態において、イオン24、26は、ガス流122によってではなく、長手方向RFおよびDC発生器10D3’とともに、複数組の協働電極110、112によって生成された長手方向電場の作用によって運搬される。特定の電極バイアススキームにおける平面DMSの動作の一実施例として、いくつかの、または全ての電極対110a〜h、112a〜hが、同一のRF電圧が印加され、一方で、DC電位は、イオンを検出器に向かって駆動するよう長手方向の電位勾配が形成されるようにステップ化される。本実施形態は、ガス流無しで動作させることができ、または随意に、中性粒子および溶媒分子を排出ポート124から排出する、排ガス流122を含むことができる。
【0101】
一実施例において、電極110、112aには10vdcが印加される場合があり、次いで、電極110h、112hには100vdcが印加される場合がある。これで、領域10A内の負のイオンは、電極対110a〜112aによって誘引され、さらに対110h、112hによって誘引され、次いで、それらの勢いは、フィルタを通過した場合に、それらを検出器領域10C内に搬送する。
【0102】
RFおよび補償は、種々の電極110a〜h、112a〜hに印加されてもよく、上述の様態で動作する。
【0103】
図14Aの別の実施形態では、エレクトロスプレー先端部は、オリフィス31の上の、イオン化領域23(図示せず)の外部とすることができ、その場合、電極112jが誘引電極として機能する。図14Bの長手方向電場駆動の実施形態において、イオンフィルタは、絶縁媒体140、142、例えば低温酸化材料によって、電極134、136から絶縁される、離間された抵抗層144、146を含む。好ましくは、基板が絶縁している。抵抗層144、146は、好ましくは、絶縁層140、142上に蒸着されるセラミック材料である。端子電極対150、152、154、156は、長手方向電場ベクトル120を発生させるように、抵抗層と接触し、各抵抗層にわたる電圧降下を可能にする。電極150および154は、用途に従ってバイアスされ、例えば、それらを1000ボルトにし、一方で、電極152および156をゼロボルトにしてもよい。
【0104】
図14Bの実施形態が円筒形設計で実装される時には、次いで、電極150および154がリング電極を形成し、電極152および156がリング電極を形成し、抵抗層144、146が円筒を形成する。
【0105】
本発明はまた、飛行時間型イオン移動度分光測定機能を実行することもできる。例えば、図14Aの実施形態において、電極104、106は、先端部20からイオン化される試料を吸引するようにパルス化され、時間サイクルを開始する。電極110a〜h、112a〜hは、発生される長手方向電場勾配によってイオンが出力区間10Cに向かって駆動されるように、隣接するそれらと相対的にバイアスされる。逆ガス流122は、試料の中性粒子を一掃するように印加することができる。これらの電極の組み合わせは、上述したイオントラップTを形成するのに使用することができる(図12を参照されたい)。
【0106】
図15Aの分裂ガス流の実施形態において、エレクトロスプレー針12は、基板52を通じてイオン領域23内に挿入されるが、図2にあるように、外部からドリフト管に載置されてもよい。この設計のイオン流発生器は、長手方向電場Eを作成するように、流路30の反対側に複数のセグメント化電極160、162を含む。好適な実施形態において、1つ以上の個別電極160’、162’は、ガスの分裂流を越えて長手方向電場Eを延在させるように、ガス流入口170の下流に位置し、それによって、ドリフトガス流ストリーム172によって搬送される時に、イオンがフィルタ40内に流れるようにする。
【0107】
図15Bの実施形態において、質量分光計98は、ドリフト管30の端部に直接連結される。この設計の利点は、イオンフィルタ40が、分裂ガス流によって試料の中性粒子の無い状態に維持されることである。これは、イオンによる中性試料分子のクラスタ化を防止し、より高い検出精度をもたらす。中性粒子Nを通気させるための通気デバイス103は、中性粒子をMSの取り入れ口から遠ざける。
【0108】
調節板174は、ドリフトガス流ストリーム172の速度に対して廃ガス流ストリーム176の速度を調節するように、示されるように配置されてもよい。典型的には、ドリフトガス流ストリーム172は、廃ガス流ストリーム176よりも速度が速い。しかしながら、ドリフトガス流ストリームとは異なる速度の廃ガス流ストリームを作成するための他の手段が、本発明の範囲に含まれる。
【0109】
図15A、15Bの実施形態では、単純な周囲空気試料を吸引するポート、またはエレクトロスプレー、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ等に関わらず、種々の試料調製区間を使用することができる。何が使用されるかに関わらず、示されている分裂ガスの実施形態は、クラスタ化を防止することができ、より良好なイオン種の識別を可能にする。
【0110】
概して、試料イオンは、モノマーまたはクラスタ状態で見つけられる傾向にある。所与のイオン種に対するモノマーの量とクラスタイオンの量との関係は、試料の濃度および特定の実験条件(例えば、水分、温度、流速、RF電場の強度)に依存する。モノマーおよびクラスタの両方の状態は、有用な情報を化学的識別に提供する。同一の試料を、クラスタ化を促進する条件とモノマーイオンだけの形成を促進する環境とで、別々に調査することは有用である。これを達成するために、図16に示されているような一実施形態の平面2チャネル平面DMSを使用することができる。
【0111】
図16の二重チャネルの実施形態において、第1のチャネル「I」は、イオン領域194内の、イオン24の受容およびドリフトガス流190中の分子28を示している。また、平面DMSフィルタ電極44、46、および検出器電極70、72が含まれる。
【0112】
モノマー状態の試料イオンを調べるために、イオンは、(電極198と200との間の電場の作用による)流れストリームから抽出され、それらは上部チャンバ「II」内へ上方に流れる。中性分子28は、典型的には溶媒であり、チャネル「I」を通って流れて、ドリフトガス排出口192において流出するのを継続する。エレクトロスプレー先端部20と誘引電極191との間の電位差は、基板56内のオリフィス196を通じてイオン領域194に入るイオンを加速する。第2のガス流202は、試料の中性粒子がチャンバ「II」に入るのを防止し、イオン24を平面DMSフィルタ40(チャンバII内の電極44、46)に搬送し、通過したイオンは、次いで、図2にあるような検出器電極70、72、または図3Aにあるような質量分光計等によって検出される。第2のガス流202は、流れ204として排出する。偏向および誘引電極198、200が通電されていないときは、次いで、局所検出器電極72および70によって、チャンバIにおいて試料イオンをクラスタ状態で観察することができる。電極198および200に通電することと、通電しないこととを交互に行うことによって、化学試料をより良好に識別するために、極めて多くの情報を得ることができる。
【0113】
図17は、本発明の一実施で得られる、ブタノンからデカノンにわたる、同族列のケトン試料を示している。図から、同一の化学種に対して、クラスタイオン(上部線図)は、モノマーイオン(下部線図)と比較して、非常に異なる補償信号を必要とすることは明白である。よって、モノマーおよびクラスタピークのピーク位置の差を観察することによって、化学化合物の識別レベルを大幅に増加させることができる。例えば、ブタノンの場合、モノマー状態におけるピーク位置は、ほぼ−9ボルトで生じるが、クラスタピークは、ほぼゼロである。デカノンの場合、例えば、モノマーピークは、ほぼゼロであるが、クラスタピークは、ほぼ+4ボルトである。
【0114】
図18に示されている実施形態の動機は、実施形態16のそれと同一である。このシステムにおいて、モノマー状態とクラスタ状態との間の動作条件の切り替えは、カーテンガス流190aおよび192aを制御することによって達成される。印加されるカーテンガスによって、試料の中性粒子28が、チャネル「II」に入ることが防止され、モノマー状態のイオンを調査することができる。カーテンガス190aおよび192aは、例えば、同一方向に流れて、オリフィス196で排出されてもよい。一方、チャネル「II」内のガス流は、図16のシステムと同一構成のままである。チャネル「II」にイオンを誘導するように、誘導電極206および208が含まれる。誘引電極200がまた、イオンをチャネル「II」に誘引するのにも使用される。カーテンガスが止められた時には、試料の中性粒子および試料イオンが、ポンプ204aを使用してチャネル「II」内へ吸引され得るので、クラスタ状態のイオンが観察され得る。また、ガス流202および204が使用されてもよい。出力区間は、質量分光計に接続されてもよい。
【0115】
本発明の用途において、高電場非対称性イオン移動度のフィルタ処理技術は、高周波数高電圧波形を使用する。電場は、イオン移送に対して垂直に印加され、平面構成に有利に働く。この好適な平面構成によって、ドリフト管を、好ましくは微細加工によって、小寸法で安価に製作することができる。また、電子部品を小型化することができ、推定される全電力は、4ワット(非加熱)以下の低さとすることができ、そのレベルは、電場測定に好適である。
【0116】
エレクトロスプレーとフィルタ構成要素とを組み合わせた新規な装置が記述された。さらに、微細加工された平面DMS−エレクトロスプレーインターフェースチップを開示する。平面DMS−エレクトロスプレーインターフェースチップは、エレクトロスプレー質量分析のための全ての従来の生体分子フィルタ処理法と比較して、固有の効果を提供する。同時に、本アプローチは、毛管電気泳動等の多くの液体中分離技術とともに使用することができる。
【0117】
本発明の一実施形態の実施において、三ブチルアミンを平面DMSフィルタおよび検出器内にエレクトロスプレーした。溶媒中のアミン、および溶媒溶出剤だけの場合の、結果として生じるスペクトルを図19に示す。溶出剤単独の場合は事実上いかなる反応も無く、アミンに対しては著しい反応があった。これは、本発明の実用的な価値および機能を示す。
【0118】
本発明は、小型かつ低コストのパッケージにおける改善された化学分析を提供する。本発明は、小型で、現場で使用できる(fieldable)パッケージにおけるイオン移動度に基づいた、化学種を弁別するための新規な方法および装置で、従来の技術のTOF−IMSおよびDMSデバイスのコスト、サイズ、または性能限界を解決する。その結果、新規な平面、高電場非対称性イオン移動度分光計デバイスは、新しい種類の化学センサを、すなわち、独立型またはMSに連結されるデバイスとして達成するように、エレクトロスプレー先端部に密に連結することができる。現場で使用できる統合平面DMS化学センサを提供することができ、広範囲の化学化合物を識別するための、正確で、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで、原位置の直交データを迅速に生成することができる。これらのセンサは、広範囲の種の同時検出を提供するさらなる能力を有し、また、試料中の正および負のイオンの同時検出能力を有する。さらに驚くべきは、これは、低電力要件を伴う現場で動作させることができ、さらにまた、種々の検出された種を完全に識別することができる直交データを発生させることができる、費用効果的で小型の大量生産パッケージで達成できることである。
【0119】
従来の技術の円筒形設計を超える平面DMS設計の別の利点は、電場強度に関して異なるアルファα依存性を有する全てのタイプのイオンにフィルタ処理および作用を与える、平面DMSの能力である(アルファαの詳細は、背景技術の項を参照されたい)。この事実は、未知の複合試料混合物の測定を行う複雑さを大幅に削減することができる。
【0120】
当業者には、図12C〜Dに示されている従来の技術の円筒形設計において、放射状の電場分布が不均一であることが理解されるであろう。一方、図2、Bに示されている平面DMSのような本発明の一実施において、平面DMS設計におけるイオンフィルタ電極間の電場分布(漏れ電場は無視する)は、均一であり、電場も均一である。
【0121】
平面DMS設計でのイオンの分離にかかる時間は、イオンを集束するための条件に到達すると、従来の技術の円筒形DMS(FAIMS)設計よりも、大幅に短い(10倍以下)。
【0122】
図20は、本発明の例示的な一実施形態による、直列DMS−MS分析器300の略図である。分析器300は、イオン化領域302と、分析器領域304と、プレフィルタ流入口306と、プレフィルタ流出口308と、流路310と、MS312とを含む。分析器領域304は、選択されたイオンをMS312へ通過させるように非対称性電場が形成される、DMSフィルタ電極314および316を含んでもよい。イオン化領域302は、放射性源、容量放電源、ESI、ナノESI、MALDI、LC出力先端部、または他のイオン化源のようなものであってもよい、イオン化源318を含んでもよい。一実施形態では、分析器領域304を通る流路310の少なくとも一部は、MS312の入口または流入口326と同じ長手方向軸324と実質的に一列であるか、これに沿う。別の実施形態では、プレフィルタ流出口308は、中性粒子が、フィルタ処理されたイオンとともにMS312に入ることができるようにする代わりに、中性粒子を分析器300から放出できるように、流入口326からMS312へオフセットされる。一実施形態では、DMSフィルタ電極314および316は、それぞれ絶縁基板320および322上に微細加工される、および/またはその上に形成される、またはそれに取り付けられる。特定の実施形態において、分析器領域304を少なくとも含むプレフィルタアセンブリ324は、分析器領域304を収容するための統合チップアセンブリを含む。
【0123】
動作において、試料は、流路310に沿って、プレフィルタ流入口306から、試料Sがイオン化されるイオン化領域302へ流れる。イオンは、次いで、選択されたイオンが、電極314と316との間の電場の条件に関して通過できる場合に、分析器領域304を通って流れる。条件は、補償電圧設定を含んでもよい。フィルタ処理される、または分析器領域304を通過することができる、選択されたイオンは、次いで、MS312に送達される。一実施形態では、分析器領域304内の電場は、実質的に全てのイオンがMS312へ流れることができるように、除去される、および/または停止される。分析器300の直列構成の1つの利点は、イオンが、分析器領域304内でフィルタ処理されているかどうかに関わらず、搬送ガスが、プレフィルタ324を通じて試料イオンを連続的に流すことができることである。したがって、特定の実施形態では、イオンをMS312に流す能力に影響を及ぼさずに、イオン移動度のフィルタ処理がオンまたはオフされる。したがって、プレフィルタ324および/またはDMSのフィルタ処理を必要とせずに分析器300が使用されるときには、流路310の変更またはプレフィルタ324の除去は不要である。
【0124】
特定の実施形態において、分析器300は、例えば図1のコントローラ10Dと同一の機能を行い得る、コントローラ328を含む。一実施形態では、コントローラ328は、電極314および316に印加されるフィルタ電圧をオンまたはオフして、それによって、フィルタ電極314および316に関連するあらゆるフィルタ電場の発生または除去ができるように、フィルタ電極314および316を有効化または無効化することができる。
【0125】
図21は、本発明の例示的な一実施形態による、LC−DMS−MS分析器400のブロック図である。分析器400は、LC402と、ESI404と、DMSプレフィルタ406と、MS408と、および随意に第2のMS410とを含む。動作において、LC402は、液体試料を受容して、カラムを介して試料の分離を行う。LC402は、液体試料SがDMSプレフィルタ406内に入る前に、ガスおよび/または蒸気に変換するように、液体−ガス変換区間またはESI404とのインターフェースを含んでもよい。プレフィルタ406は、MS408へ通る選択されたイオン種をフィルタ処理するように、DMS、または他のイオン移動度ベースの分析器、あるいは複数のイオン移動度ベースの分析器の組み合わせを含んでもよい。随意の構成では、さらなる検出および/または分析のために、第2のMS410またはそれより多くを用いてもよい。
【0126】
特定の実施形態では、プレフィルタ406は、着脱可能、モジュール式、および/または交換式である。一実施形態では、プレフィルタ406は、使い捨てで単一用途の、または限定用途の構成要素である。別の実施形態では、プレフィルタ406は、同一タイプのプレフィルタまたは別のタイプのプレフィルタを、直列、並列、または直列と並列の組み合わせで配設された1つ以上のイオン移動度フィルタと交換できるように、着脱可能である。一実施形態では、プレフィルタ406は、MS408のための受容器上に載置することができる、着脱可能な統合チップアセンブリ内に含まれる。別の実施形態では、プレフィルタ406は、恒久的に、または半恒久的にレセプタに載置される。
【0127】
特定の実施形態において、プレフィルタアセンブリは、1つ以上の搬送ガス流入口、1つ以上のドープ剤流入口、1つ以上の分流ガス流入口、および/または1つ以上のカーテンガス流入口または流出口を含む。分析器400は、有利には、薬物代謝および薬物動態学(DMPK)、プロテオミクス、バイオマーカ、ジェノミクス、シトミクス、バイオインフォマティクス、メタボロミクス、リピドミクス、システム生物学、トランスクリプトミクスの分野、および他の類似する分野に用いられてもよい。
【0128】
図22は、本発明の例示的な一実施形態による、LC−DMS−MS分析器500の概略図である。分析器500は、試料Sの流入口532と、LC502と、液体−ガス変換ユニット504と、先端部514と、プレフィルタアセンブリ510と、DMSプレフィルタ506と、チャンバ512と、ガス流入口524および526と、ガス流出口528と、チャンバ試料導入口516と、支持金具530と、MS508とを含む。DMSプレフィルタ506は、フィルタ電極518および520を含む。
【0129】
動作において、液体試料Sは、流入口532で、カラムを使用して試料Sの構成成分を分離する、LC502に導入される。ユニット504および先端部514は、流入口516およびガスチャンバ512への導入のために、液体をガスに変換する。先端部514は、エレクトロスプレーイオン化源の先端部であってもよい。1つ以上のドープ剤を含む搬送ガスは、流入口524を介してチャンバ512内に導入されてもよい。また、チャンバ512は、試料イオンのチャンバ512内への流れ促進するように、先端部514に近接する雰囲気よりも低い圧力に維持されてもよい。流出口528は、チャンバ512内の過剰なガスを排出するように、および/またはその圧力を調節するように用いられてもよい。特定の実施形態において、チャンバ512内の圧力は、中性干渉粒子を脱溶媒和するための、および/またはプレフィルタ510に入るのを防止するための、ガスの逆流(試料Sのイオンとは逆の流れ)を可能にするように、先端部514に近接する雰囲気よりも比較的に高くしてもよい。試料イオンは、流入口534を介してDMSフィルタ506に導入される。選択されたイオンは、電極520および522に印加されるRFおよび/またはDC補償電圧を調整することによって、フィルタ処理されてもよい。図示されていないが、電極520および522を離間するように、分析器領域518の一部または全長に沿って、スペーサを用いてもよい。分析器領域518を出ると、選択されたイオンは、MS508に移送される。分析器領域518からの流出口は、中性粒子および/または他の干渉物のMS508への導入を削減するように、MS508からオフセットされてもよい。
【0130】
分析器500は、試料分析動作を可能にするように、以下の設定範囲を含んでもよく、およそ、U1=2000〜4000v、U1=500〜800v、U3=100〜300v、U4=100〜300v、U5=10〜100v、q=10〜300uL/分、Q1=0.1〜1.1L/分、Q2b=0.1〜0.4L/分、Q3=0.2〜0.5L/分、およびQ4=0.8〜1.5L/分、を含む。Q2aの設定は変化し得る。
【0131】
種々の実施形態において、DMS−MS分析器システムのサイズおよび電力消費は、MSへのイオン流速を大幅に低くすることを可能にするような方法で、DMSに関してMSを配向することによって削減される。したがって、MS内で適切な真空を維持するように、それによってDMS−MS分析器のサイズおよび電力要件を削減する、極めて小さい真空ポンプまたはポンプが必要である。
【0132】
図23は、本発明の例示的な一実施形態による、DMS606からMS604へのイオンの流速の低減を可能にする分流器アセンブリ602を含む、イオン分析器600の略図である。一実施形態では、イオン分析器600は、イオン源612から第1の流速でイオン流610を発生させる、流動発生器608を含む。イオン分析器600は、イオン源612からのイオン610の流れを受容するように連結されるチップアセンブリ(図24を参照されたい)内に含まれてもよい。
【0133】
分析器600のDMS606は、基板616に接続される第1のフィルタ電極618を伴う第1の基板616を含む、離間されたDMSフィルタ614を含んでもよい。第2のフィルタ電極620は、第1のフィルタ電極618から離間され、それによって、第1および第2のフィルタ電極618および620と、それを通じてイオン流が生じる流路624の一部との間に、分析空隙622を画定してもよい。
【0134】
一実施形態では、イオン分析器600は、流路624からのイオンの一部を受容する、質量分光計604を含む。質量分光計604は、流路624のイオン610の流れからオフセットされる、流入口626を含む。したがって、流入口が実質的にイオン流610の方向に位置付けられないので、流入口626はオフセットされている。一実施形態では、イオン分析器600は、イオン流610のイオンの少なくとも一部の流れの向きを、MS604の流入口626の方へ変える、分流器アセンブリを含む。しかしながら、第1の流路からのイオンの一部は、DMSフィルタ606を通じたイオン流の流速未満である第2の流速で、流入口626を通じて流される。MS604への流速を実質的に削減することによって、真空発生器628は、MS604でのイオン分析を可能にする所要の真空圧力を維持するのに必要な電力および容量が少なくなる。
【0135】
したがって、真空発生器のサイズ、およびそれによって使用される電力量を大幅に削減することができ、より小型で携帯型のイオン分析器600をもたらす。特定の実施形態において、真空発生器は、第1の粗引きポンプおよび第2の低温ポンプを含む2段真空ポンプシステムを含む。特定の実施形態では、1つ以上の真空ポンプが微細加工される。真空発生器628は、約10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、および10−6トールを超える真空を維持してもよい。特定の実施形態において、DMS606を通じたイオン流610の流速は、約100cc/分、200cc/分、300cc/分、400cc/分、および500cc/分を超えてもよい。
【0136】
一実施形態では、コントローラ630は、種々のイオン種が分析空隙622を通って流れている間に、イオン種を分離するための電場特性を伴う、時間変動電場を第1および第2のフィルタ電極618および620の間に発生させるように、第1および第2のフィルタ電極618および620のうちの少なくとも1つに接続される。真空発生器628は、質量分光計604の流入口626でのイオン流速に応じて、質量分光計604内を選択された真空に維持してもよい。
【0137】
一実施形態では、分流器アセンブリは、第1の質量分光計604の流入口626に向かってイオンを導く、分流電極602を含む。別の実施形態では、分流器アセンブリは、流入口626に向かってイオンを誘引する、1つ以上の誘引電極632および634を含む。
【0138】
図24、本発明の例示的な一実施形態による、MS706の流入口702がDMS708のイオン流704からオフセットされる、統合DMS−MS分析器700の略図である。一実施形態では、DMS−MS分析器700は、統合チップアセンブリ712の1つ以上の基板710上に含まれる。チップアセンブリは、試料流入口714および排出口716を含んでもよい。図24には図示されていないが、チップインターフェースアセンブリ712が、図23のコントローラ630等の種々の電子部品とインターフェースしてもよい。チップアセンブリ712はまた、DMS708内のイオン流およびMS706内の真空を補助するように、1つ以上の流動発生器および/または真空発生器にも連結される。特定の実施形態において、統合MS706は、英国、SurryのMicrosaic(登録商標) Systems of WorkingによるIonchip(登録商標)等の、統合された、および/または微細加工されたMSを含んでもよい。統合MS706は、米国特許第5,536,939号、第6,972,406号、および第7,208,729号に記載されているタイプの統合MSを含んでもよく、それらの全体の内容は、参照することによって本明細書に援用される。
【0139】
図25は、本発明の例示的な一実施形態による、統合多層DMS−MS分析器800の略図である。特定の実施形態において、分析器800は、図23のDMS606等のDMS分析器を含むDMS層802と、図23のMS604等のMSを含むMS層804と、を含む。
【0140】
本発明の実施形態は、円筒形、平面、および他の構成を使用した方法および装置で行われてもよく、それでも本発明の精神および範囲に含まれる。本発明の用途の実施例には、生物学的および化学センサ等が挙げられる。上述の特定の実施形態の種々の修正も、本発明の精神および範囲に含まれる。本願明細書に開示される実施例は、例示目的で示されたものであり、限定を目的とするものではない。これらの、および他の実施形態の範囲は、以下の特許請求の範囲に記載されているものに限定される。
【0141】
本発明は、その好適な実施形態を参照して特に図示および説明したが、当業者は、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形状および細部に種々の変更を行ってもよいことを理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の1つ以上のイオン種を分析するためのシステムであって、
イオン源と、
プレフィルタアセンブリであって、
一対のフィルタ電極間の分析空隙内の時間変動電場に該試料の1つ以上のイオン種を通過させるための微分移動度分光計フィルタと、
該微分移動度分光計フィルタからイオン流を提供するための流出口と、
を含む、プレフィルタアセンブリと、
該プレフィルタアセンブリからの該イオン流の少なくとも一部を流入口で受容し、1つ以上のイオン種を分析するための第1の質量分光計と、
プレフィルタ処理が所望されるときには、該微分移動度分光計フィルタを有効化し、プレフィルタ処理が所望されないときには、該微分移動度分光計フィルタを無効化するためのコントローラと
を備え、該微分移動度分光計フィルタは、該第1の質量分光計の該流入口と実質的に一列に位置付けられる、
システム。
【請求項2】
前記微分移動度分光計フィルタは、前記一対のフィルタ電極間の前記分析空隙の長手方向軸が、前記第1の質量分光計の前記流入口の長手方向軸と一列である時に、該第1の質量分光計の該流入口と一列である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記時間変動電場は、調整可能であり、調整可能な補償電場を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、マイクロプロセッサを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記イオン源は、エレクトロスプレーイオン源を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
液体試料を前記エレクトロスプレーイオン源に送達するための液体クロマトグラフ(LC)を備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記分析することは、1つ以上のイオン種の検出を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の質量分光計からイオンを受容して検出するための第2の質量分光計を備え、
前記分析することは、前記微分移動度分光計から受容される前記イオンの一部を集束することを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記微分移動度分光計は、絶縁基板を含み、少なくとも1つの絶縁基板は、フィルタ電極と連通する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記微分移動度分光計は、チップアセンブリに含まれる、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
試料の1つ以上のイオン種を分析するための方法であって、
イオンを形成するように該試料の一部をイオン化するステップと、
一対のフィルタ電極間の分析空隙を通じてイオンを流すステップと、
該流れるイオンの少なくとも一部を第1の質量分光計の流入口で受容し、1つ以上のイオン種を分析するステップと、
該第1の質量分光計のプレフィルタ処理が所望されるときには、該試料の該1つ以上のイオン種を通過させるように、該一対のフィルタ電極間の該分析空隙内の時間変動電場を有効化し、プレフィルタ処理が所望されないときには、該一対のフィルタ電極間の該分析空隙内の該時間変動電場を無効化するステップと、
該一対のフィルタ電極間の該分析空隙を、該第1の質量分光計の該流入口と実質的に一列に位置付けるステップと
を含む、方法。
【請求項12】
前記分析空隙を前記第1の質量分光計の前記流入口と一列に位置付けるステップは、前記一対のフィルタ電極間の前記分析空隙の前記長手方向軸を、該第1の質量分光計の該流入口の該長手方向軸と一列にするステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記時間変動電場は、調整可能であり、調整可能な補償電場を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
マイクロプロセッサを使用して、前記有効化および無効化するステップを制御するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記試料の一部をイオン化するように、エレクトロスプレーイオン源を使用するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
液体クロマトグラフ(LC)から液体試料を溶出させて、前記試料を前記エレクトロスプレーイオン源に送達するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分析するステップは、1つ以上のイオン種を検出するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の質量分光計からのイオンを第2の質量分光計で受容し、検出するステップであって、前記分析するステップは、前記流入口からの前記イオンの一部を集束するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記一対のフィルタ電極のうちの少なくとも1つのフィルタ電極を、絶縁基板上に形成するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記絶縁基板は、チップアセンブリに含まれる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
イオン分析器であって、
第1の流速でイオン源からイオン流を生成する流動発生器と、
該イオン源から該イオン流を受容するように連結されるチップアセンブリであって、
基板に接続される第1のフィルタ電極を伴う第1の基板を含む、離間フィルタと、
第2のフィルタ電極であって、該第1のフィルタ電極から離間され、それによって、該第1のフィルタ電極と第2のフィルタ電極との間の分析空隙、およびそれを通じて該イオン流が生じる流路の一部を画定する、第2のフィルタ電極と、
該流路から該イオンの一部を受容する質量分光計であって、該質量分光計は流入口を含み、該流入口は、該流路内の該イオン流からオフセットされる、質量分光計と、
該流路から該質量分光計の該流入口内へ該イオンの一部を流すための分流器アセンブリであって、該第1の流路からの該イオンの該一部は、第2の流速で該流入口を通って流れ、該第2の流速は、該第1の流速より小さい、分流器センブリと
を有するチップアセンブリと、
該第1のフィルタ電極と第2のフィルタ電極との間に時間変動電場を生成するように、該第1および第2のフィルタ電極のうちの少なくとも1つに接続され、イオン種が該分析空隙を通って流れている間に該イオン種を分離する電場特性を有する、コントローラと、
該質量分光計の該流入口での該第2の流速に応じて、該質量分光計内で選択された真空を維持する真空発生器と
を備えている、分析器。
【請求項22】
前記分流器センブリは、少なくとも1つの誘引力および反発力によって、イオンを前記第1の質量分光計の前記流入口に向かって誘導する分流器電極を含む、請求項21に記載の分析器。
【請求項23】
前記選択された真空を維持することは、約10−1〜約10−6トールの範囲で真空を発生させるステップを含む、請求項21に記載の分析器。
【請求項24】
前記第1の流速は、約100cc/分〜約400cc/分の範囲である、請求項23に記載の分析器。
【請求項25】
前記チップアセンブリは、複数の層を含む、請求項21に記載の分析器。
【請求項1】
試料の1つ以上のイオン種を分析するためのシステムであって、
イオン源と、
プレフィルタアセンブリであって、
一対のフィルタ電極間の分析空隙内の時間変動電場に該試料の1つ以上のイオン種を通過させるための微分移動度分光計フィルタと、
該微分移動度分光計フィルタからイオン流を提供するための流出口と、
を含む、プレフィルタアセンブリと、
該プレフィルタアセンブリからの該イオン流の少なくとも一部を流入口で受容し、1つ以上のイオン種を分析するための第1の質量分光計と、
プレフィルタ処理が所望されるときには、該微分移動度分光計フィルタを有効化し、プレフィルタ処理が所望されないときには、該微分移動度分光計フィルタを無効化するためのコントローラと
を備え、該微分移動度分光計フィルタは、該第1の質量分光計の該流入口と実質的に一列に位置付けられる、
システム。
【請求項2】
前記微分移動度分光計フィルタは、前記一対のフィルタ電極間の前記分析空隙の長手方向軸が、前記第1の質量分光計の前記流入口の長手方向軸と一列である時に、該第1の質量分光計の該流入口と一列である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記時間変動電場は、調整可能であり、調整可能な補償電場を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、マイクロプロセッサを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記イオン源は、エレクトロスプレーイオン源を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
液体試料を前記エレクトロスプレーイオン源に送達するための液体クロマトグラフ(LC)を備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記分析することは、1つ以上のイオン種の検出を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の質量分光計からイオンを受容して検出するための第2の質量分光計を備え、
前記分析することは、前記微分移動度分光計から受容される前記イオンの一部を集束することを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記微分移動度分光計は、絶縁基板を含み、少なくとも1つの絶縁基板は、フィルタ電極と連通する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記微分移動度分光計は、チップアセンブリに含まれる、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
試料の1つ以上のイオン種を分析するための方法であって、
イオンを形成するように該試料の一部をイオン化するステップと、
一対のフィルタ電極間の分析空隙を通じてイオンを流すステップと、
該流れるイオンの少なくとも一部を第1の質量分光計の流入口で受容し、1つ以上のイオン種を分析するステップと、
該第1の質量分光計のプレフィルタ処理が所望されるときには、該試料の該1つ以上のイオン種を通過させるように、該一対のフィルタ電極間の該分析空隙内の時間変動電場を有効化し、プレフィルタ処理が所望されないときには、該一対のフィルタ電極間の該分析空隙内の該時間変動電場を無効化するステップと、
該一対のフィルタ電極間の該分析空隙を、該第1の質量分光計の該流入口と実質的に一列に位置付けるステップと
を含む、方法。
【請求項12】
前記分析空隙を前記第1の質量分光計の前記流入口と一列に位置付けるステップは、前記一対のフィルタ電極間の前記分析空隙の前記長手方向軸を、該第1の質量分光計の該流入口の該長手方向軸と一列にするステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記時間変動電場は、調整可能であり、調整可能な補償電場を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
マイクロプロセッサを使用して、前記有効化および無効化するステップを制御するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記試料の一部をイオン化するように、エレクトロスプレーイオン源を使用するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
液体クロマトグラフ(LC)から液体試料を溶出させて、前記試料を前記エレクトロスプレーイオン源に送達するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分析するステップは、1つ以上のイオン種を検出するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の質量分光計からのイオンを第2の質量分光計で受容し、検出するステップであって、前記分析するステップは、前記流入口からの前記イオンの一部を集束するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記一対のフィルタ電極のうちの少なくとも1つのフィルタ電極を、絶縁基板上に形成するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記絶縁基板は、チップアセンブリに含まれる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
イオン分析器であって、
第1の流速でイオン源からイオン流を生成する流動発生器と、
該イオン源から該イオン流を受容するように連結されるチップアセンブリであって、
基板に接続される第1のフィルタ電極を伴う第1の基板を含む、離間フィルタと、
第2のフィルタ電極であって、該第1のフィルタ電極から離間され、それによって、該第1のフィルタ電極と第2のフィルタ電極との間の分析空隙、およびそれを通じて該イオン流が生じる流路の一部を画定する、第2のフィルタ電極と、
該流路から該イオンの一部を受容する質量分光計であって、該質量分光計は流入口を含み、該流入口は、該流路内の該イオン流からオフセットされる、質量分光計と、
該流路から該質量分光計の該流入口内へ該イオンの一部を流すための分流器アセンブリであって、該第1の流路からの該イオンの該一部は、第2の流速で該流入口を通って流れ、該第2の流速は、該第1の流速より小さい、分流器センブリと
を有するチップアセンブリと、
該第1のフィルタ電極と第2のフィルタ電極との間に時間変動電場を生成するように、該第1および第2のフィルタ電極のうちの少なくとも1つに接続され、イオン種が該分析空隙を通って流れている間に該イオン種を分離する電場特性を有する、コントローラと、
該質量分光計の該流入口での該第2の流速に応じて、該質量分光計内で選択された真空を維持する真空発生器と
を備えている、分析器。
【請求項22】
前記分流器センブリは、少なくとも1つの誘引力および反発力によって、イオンを前記第1の質量分光計の前記流入口に向かって誘導する分流器電極を含む、請求項21に記載の分析器。
【請求項23】
前記選択された真空を維持することは、約10−1〜約10−6トールの範囲で真空を発生させるステップを含む、請求項21に記載の分析器。
【請求項24】
前記第1の流速は、約100cc/分〜約400cc/分の範囲である、請求項23に記載の分析器。
【請求項25】
前記チップアセンブリは、複数の層を含む、請求項21に記載の分析器。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2010−518378(P2010−518378A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548324(P2009−548324)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/001415
【国際公開番号】WO2008/094704
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(506176526)サイオネックス コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/001415
【国際公開番号】WO2008/094704
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(506176526)サイオネックス コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】
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