説明

質量分析用デバイス、これを用いる質量分析装置および質量分析方法

【課題】測定対象物質から脱離させたイオンを検出して測定対象物質の質量分析を行う場合、測定対象物質以外の物質から別離されたイオンが検出され、測定対象物質の解析が困難になる。例えば、MALDI法を用いた場合は、イオン化したマトリックスが検出され、SALDI法を用いた場合は、測定対象物質を載置している基板に由来したイオンが検出されてしまう。簡単な構成でかつ高精度に測定対象物質の質量分析を行うことができる質量分析用デバイスを提供する。
【解決手段】検出面が形成された基板と、基板の検出面に形成され、少なくとも測定対象物質が載置された測定領域と、基板の検出面の前記測定領域と異なる領域に形成された参照領域とを有し、前記参照領域は、測定対象物質が載置されていない以外は測定領域と同一に構成されている質量分析用デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物質の検出に用いる質量分析用デバイス、これを用いる質量分析装置および質量分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
測定対象物質の同定等に用いられる質量分析法としては、測定対象物質に光またはイオンビームを照射し、測定対象物をイオン化させて脱離させ、脱離させた物質を検出する質量分析法(MS、Mass Spectrometry)がある。
【0003】
この質量分析の際に測定対象物質をイオン化させる方法としては、例えば、MALDI法(マトリックス支援レーザ脱離イオン化法、matrix-assisted laser desorption ionization)や、SALDI法(表面支援レーザ脱離イオン化法、surface-assisted laser desorption ionization)、電子イオン化法、化学イオン化法、高速原子衝撃法、エレクトロンスプレーイオン化法、大気圧化学イオン化法がある。
具体的には、MALDI法とは、測定対象物質をマトリックス(例えば、シナピン酸やグリセリン等)に混入した試料に光を照射し、照射された光のエネルギをマトリックスに吸収させ、マトリックスとともに測定対象物質を気化させ、さらにマトリックスと測定対象物質との間でプロトン移動を発生させることで測定対象物質をイオン化する方法である。
また、SALDI法とは、マトリックスを用いず、試料を載置する基板の表面にマトリックスと同様の機能を持たせ、測定対象試料を基板表面で直接イオン化する方法である。
【0004】
ここで、MALDI法を利用した質量分析に用いるサンプルプレート(質量分析用デバイス)としては、例えば、ステンレスプレートが用いられる。
また、特許文献1には、導電性の基板の表面上に疎水性コーティングをした後に、マトリックス及び境界ポリマーの混合液でコーティングをしたサンプルプレートが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特表2007−592980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、測定対象物質から脱離させたイオンを検出して測定対象物質の質量分析を行う場合、測定対象物質以外の物質から別離されたイオンが検出され、測定対象物質の解析が困難になるという問題がある。
例えば、MALDI法を用いた場合は、イオン化したマトリックスが検出され、SALDI法を用いた場合は、測定対象物質を載置している基板に由来したイオンが検出されてしまうという問題がある。
【0007】
これに対して、特許文献1のサンプルユニットは、マトリックスをコーティングすることで、マトリックスが脱離し、イオン化することを抑制することはできるが、マトリックスのイオン化を完全に無くすことはできず、検出対象物質以外の物質に由来するマススペクトルも検出することになる。
【0008】
また、検出される測定対象物質のマススペクトル及び測定対象物質以外の物質に由来するマススペクトルのスペクトル形状は、照射したレーザの強度によって変化する。そのため、測定対象物質の質量を正確に分析するためには、レーザの強度毎にスペクトル形状が変化する、測定対象物質以外の物質に由来するマススペクトルを除去する必要がある。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術に基づく問題点を解消し、簡単な構成でかつ高精度に測定対象物質の質量分析を行うことができる質量分析用デバイス、これを用いる質量分析装置および質量分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、検出面に光またはイオンビームを照射して、前記検出面に載置される測定試料をイオン化するとともに、前記検出面の表面から脱離させ、前記検出面の表面から脱離され、イオン化された前記測定試料の質量を検出する質量分析装置に用いる質量分析用デバイスであって、前記検出面が形成された基板と、前記基板の前記検出面に形成され、少なくとも測定対象物質が載置された測定領域と、前記基板の前記検出面の前記測定領域と異なる領域に形成された参照領域とを有し、前記参照領域は、前記測定対象物質が載置されていない以外は前記測定領域と同一に構成されていることを特徴とする質量分析用デバイスを提供するものである。
【0011】
また、上述した本発明の質量分析用デバイスをMALDI法を用いる質量分析装置に用いる場合は、前記測定領域には、前記測定対象物質を含有する試料が載置され、前記参照領域には、前記測定対象物質を含有しない試料が載置されている、または、前記測定領域には、前記測定対象物質及びマトリックスを含有する試料が載置され、前記参照領域には、前記測定対象物質を含まず、前記マトリックスを含有する試料が載置されていることが好ましい。
また、前記参照領域は、前記測定領域を通過し、かつ、第1の方向に直交する直線を含む領域に形成されていることが好ましい。または、前記測定領域は、前記基板表面の前記検出面内の第1の方向の所定範囲内に存在し、前記参照領域は、前記基板表面の前記検出面の前記第1の方向の所定範囲を含むものであることが好ましい。
また、前記参照領域は、前記測定領域上の任意点を通過する直交する2つ直線をそれぞれ含む、少なくとも2つの領域に形成されていることが好ましい。または、前記測定領域が前記第1の方向とは略垂直な第2の方向の所定範囲内に存在するものであり、前記参照領域が、前記第2の方向の所定範囲を含むものであることも好ましい。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の形態は、上記のいずれかに記載の質量分析用デバイスと、前記質量分析用デバイスに光またはイオンビームを照射する照射手段と、前記質量分析用デバイスの測定領域から射出されるイオンと、参照領域から射出されるイオンを検出するイオン検出手段と、測定領域から射出されるイオンの検出結果に基づいて第1マススペクトルを算出し、参照領域から射出されるイオンの検出結果に基づいて第2マススペクトルを算出するマススペクトル算出手段と、前記マススペクトル手段で算出された第2マススペクトルに基づいて前記第1マススペクトルを補正するマススペクトル補正手段と、マススペクトル補正手段で補正した値に基づいて測定対象物質の質量を検出する質量検出手段とを有することを特徴とする質量分析装置を提供するものである。
【0013】
ここで、質量分析装置は、さらに、前記測定領域と前記参照領域を結んだ線と平行な方向に前記質量分析用デバイスを移動させる移動手段を有するを有することが好ましい。
また、前記照射手段は、強度及び波長の少なくとも一方が異なる複数の光を射出できる光射出機構であり、光射出機構から射出する光の強度および波長の少なくとも一方を切り換え、前記質量分析用デバイスに光を照射することが好ましい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の形態は、上記のいずれかに記載の質量分析用デバイスの測定領域に光またはイオンビームを照射し前記測定領域から射出されるイオンを検出し、検出結果から第1マススペクトルを算出する第1マススペクトル検出ステップと、前記質量分析用デバイスの参照領域に光またはイオンビームを照射し前記測定領域から射出されるイオンを検出し、検出結果から第2マススペクトルを算出する第2マススペクトル検出ステップと、第2マススペクトルを用いて第1マススペクトルを補正する補正ステップと、前記補正ステップで補正した結果に基づいて、測定対象物質の質量を検出する質量分析方法を提供するものである。
【0015】
ここで、前記第1マススペクトル検出ステップで前記第1マススペクトルを検出した後、前記第2マススペクトル検出ステップで前記第2マススペクトルを検出することが好ましい。
また、前記第2マススペクトル検出ステップで前記第2マススペクトルを検出した後、前記第1マススペクトル検出ステップで前記第1マススペクトルを検出することも好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単な構成で、測定対象物質以外の物質に起因するマススペクトルを適切に検出することができる。これにより、測定対象物質のマススペクトルを含むマススペクトルから、測定対象物質以外の物質に起因するマススペクトルを適切に検出し、取り除くことができ、測定対象物質の質量を高い精度で検出し、分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る質量分析用デバイス、これを用いる質量分析装置及び質量分析方法について、添付の図面に示す実施形態を基に詳細に説明する。
【0018】
図1(A)は、本発明の質量分析用デバイスを用いる質量分析装置の概略構成を示す正面図であり、図1(B)は、図1(A)に示す質量分析装置のデバイス移動手段の周辺部の概略構成を示す斜視図である。また、図2は、図1に示した質量分析用デバイスの概略構成を示す上面図である。
【0019】
図1(A)に示すように、質量分析装置10は、質量分析用デバイスから脱離した物質を所定距離飛行させてその飛行時間により物質の質量(正確には質量/電荷)を分析する飛行時間型質量分析装置(TOF−MS)であり、ボックス11と、ボックス11内に配置され、測定対象物質Mを含む試料を載置する質量分析用デバイス(以下単に「デバイス」ともいう)12と、デバイス12を一方向に移動させるデバイス移動手段13と、デバイス12に配置された試料に測定光L1を照射して、試料中の測定対象物質Mをデバイス12から脱離させる光照射手段14と、脱離した測定対象物質Mを所定方向に飛翔させる飛翔方向制御手段16と、脱離した測定対象物質Mを検出して測定対象物質Mの質量/電荷を分析する質量分析手段18とを有する。
【0020】
ボックス11は、内部を真空にすることができる真空チャンバであり、図示しない吸引ポンプ等が接続されている。ボックス11は、密閉された状態で吸引ポンプにより内部の空気が吸引されることで、内部が真空にされる。
【0021】
デバイス12は、図2に示すように、基板20と、基板20の表面に形成された測定領域21及び参照領域22とで構成されており、ボックス11内に配置されている。
基板20は、板状の部材である。
測定領域21は、基板20の表面の一部に形成されており、その表面上に測定対象物質Mとマトリックスとが混合された試料S1が載置されている。
ここで、マトリックスとは、レーザ光を吸収し、試料(測定対象物質M)のイオン化を促進する化合物である。
参照領域22は、基板20の表面(正確には、測定領域21が形成されている面と同一の面)に、測定領域21とは所定間隔離間して形成されており、測定対象物質Mが混合されていない以外は試料S1と同様の構成の試料(つまり、マトリックスのみで構成された試料)S2が載置されている。
【0022】
図1(B)に示すように、デバイス移動手段13は、測定領域21及び参照領域22が形成されている面とは反対側の面からデバイス12を支持する支持体13aと、支持体13aを所定方向に移動させる駆動機構13bとを有する。
デバイス移動手段13は、駆動機構13bは、支持体13aを、支持体13a上に載置するデバイス12の測定領域21と参照領域22とを結んだ線と平行な方向に移動させる。したがって、デバイス移動手段13は、支持体13a上に配置されたデバイス12を、測定領域21と参照領域22とが同一位置を通過するように移動させる。また、デバイス移動手段13には、電源が接続されており、デバイス12には、デバイス移動手段13から所定電圧が印加されている。
【0023】
光照射手段14は、レーザ光源であり、射出した光ビームで支持体13aに支持されたデバイス12を照射する。なお、本実施形態では、光照射手段14から射出する光の照射位置は一定位置であり、光照射手段14は、デバイス移動手段13により照射位置に移動されたデバイス12の所定領域(測定領域21または参照領域22)を照射する。
【0024】
飛翔方向制御手段16は、デバイス保持手段13と質量分析手段18との間に配置された引き出しグリッド23と、エンドプレート24とを有し、デバイス12から脱離された測定対象物質Mに一定の力を作用させ、質量分析手段18に向けてに飛翔させる。
引き出しグリット23は、デバイス12と質量分析手段18との間に、デバイス12の表面に対向して配置された中空の電極である。また、エンドプレート24は、引き出しグリット23と質量分析手段18との間に配置された中空の電極である。また、引き出しグリット23とエンドプレート24とは、接地されている。
飛翔方向制御手段16は、所定電圧が印加されたデバイス12と接地された引き出しグリット23との間で電界を形成して、デバイス12から脱離された測定対象物質Mに一定の力を作用させてデバイス12から引き出しグリット23側に所定加速度で飛翔させる。さらに、飛翔している測定対象物質Mの飛翔経路を引き出しグリット23とエンドプレート24により制御し、引き出しグリット23の中空部分の穴を通過させた後、エンドプレート24の中空部分の穴を通過させ、質量分析手段18まで飛翔させる。
【0025】
質量分析手段18は、測定光L1が照射されてデバイス12の表面から脱離され、引き出しグリッド23およびエンドプレート24の中空部分の孔を通過して飛行してきた測定対象物質Mを検出する検出器26と、検出器26の検出値を増幅させるアンプ27と、アンプ27からの出力信号を処理するデータ処理部28とを有する。なお、検出器26は、ボックス11の内部に配置され、アンプ27及びデータ処理部28は、ボックス11の外に配置されている。
質量分析手段18は、検出器26で検出した検出結果に基づいて、データ処理部28で測定対象物質Mのマススペクトルを検出し、測定対象物質の質量/電荷(質量の分布)を検出する。
質量分析装置10は、基本的に以上のような構成である。
【0026】
以下、質量分析装置10を用いた質量分析について説明する。
ここで、図3(A)は、測定領域21に載置された試料S1のマススペクトルの測定結果を示すグラフであり、図3(B)は、参照領域22に載置された参照試料S2のマススペクトルの測定結果を示すグラフであり、図3(C)は、図3(A)及び図3(B)に示す測定結果から算出した検出対象物質のマススペクトルを示すグラフである。なお、図3(A)〜(C)では、それぞれ横軸を、質量/電荷(m/z値)とし、縦軸を相対強度の任意単位[a.u.]とした。
【0027】
まず、基板20の測定対象物質Mとマトリックスが混合された試料S1を測定領域21に載置し、マトリックスのみで構成される参照試料S2を参照領域22に載置する。
その後、2つの領域にそれぞれ試料S1、参照試料S2が載置されたデバイス12をデバイス保持手段13の支持体13a上に載置する。
【0028】
次に、デバイス移動手段13の駆動機構13aにより、測定領域21が光照射手段14から射出される光の照射位置となるようにデバイス12を移動させる。
その後、デバイス12に電圧Vsを印加し、所定のスタート信号により光照射手段14から測定光L1を射出させ、測定光L1をデバイス12の測定領域21に照射する。
測定光L1が照射されることにより、照射された光のエネルギを測定領域21に載置された試料S1のマトリックスが吸収し、マトリックスとともに測定対象物質Mが気化する。さらに、マトリックスと測定対象物質との間でプロトン移動が発生し、測定対象物質がイオン化され、脱離される。
【0029】
イオン化され、脱離された測定対象物質M、または、脱離され、イオン化された測定対象物質Mは、デバイス12と引き出しグリッド23との電位差Vsにより引き出しグリッド24の方向に引き出されて加速し、引き出しグリッド23の中央の孔を通ってエンドプレート24の方向に略直進して飛行し、更にエンドプレート24の中央の孔を通過して検出器26に到達して検出される。ここで、検出器26には、イオン化したマトリックスも到達するため、検出器26では、測定対象物質Mとマトリックスが検出される。
また、脱離後の分析物質Mの飛行速度は、初速度と荷電数が同じなら物質の質量に依存し、質量が小さいほど速いため、質量の小さいものから順に検出器26に検出される。
【0030】
検出器26からの出力信号は、アンプ27により所定のレベルに増幅され、その後データ処理部28に入力される。
データ処理部28は、上記スタート信号と同期して同期信号が入力されており、この同期信号とアンプ27からの出力信号とに基いて検出した物質の飛行時間をそれぞれ算出する。
さらに、データ処理部28は、飛行時間から質量/電荷を導出してマススペクトル(質量スペクトル)を算出する(図3(A)参照)。
【0031】
試料S1のマススペクトルの検出が終了したら、次に、デバイス移動手段13の駆動機構13aにより、参照領域22が光照射手段14から射出される光の照射位置となるようにデバイス12を移動させる。
その後、測定領域21上の試料S1を検出した場合と同様に、参照領域22に測定光L1を照射し、参照領域22上の参照試料S2(つまり、マトリックス)を脱離させ、脱離した参照試料S2を検出器26で検出し、その検出結果と飛行時間と関係に基づいて、参照試料S2のマススペクトルを算出する(図3(B)参照)。
【0032】
次に、図3(A)に示す試料S1のマススペクトルと図3(B)に示す参照試料S2のマススペクトルとに基づいて、図3(C)に示す測定対象物質Mのマススペクトルを算出する。
具体的には、試料S1のマススペクトルから、測定対象物質Mを含まない以外、試料S1と同様の構成の参照領域22上の参照試料S2のマススペクトルを取り除く(差分を検出する)ことで、図3(C)に示すような測定対象物質Mのマススペクトルを算出する。
質量分析装置10は、以上のようにして、測定対象物質Mの質量/電荷を分析する(つまり、質量分布を検出する)。
【0033】
このように、本発明は、デバイス12に測定対象物質Mとマトリックスとを混合した試料S1を載置した測定領域21と、測定対象物質Mが含まない以外は試料S1と同じ構成の参照試料S2を載置した参照領域22とを設け、それぞれの領域からマススペクトルを検出し、差分を検出することで、測定対象物質Mに起因するマススペクトルと測定対象物質M以外の物質に起因するマススペクトルとを適切に分離することができ、より正確に測定対象物質Mの質量/電荷を分析することができる。
また、同一基板上に測定領域21と参照領域22とを形成することで、測定対象物質Mの有無を除いた他の条件を略同一にすることができる。さらに、連続して2つの領域のマススペクトルを検出することができる。これにより、測定領域21の検出時と参照領域22の検出時とで、測定条件を実質的に同一にすることができ、同一物質に起因するマススペクトルをずれなく検出することができ、より正確に測定対象物質Mの質量/電荷を分析することができる。
また、光照射手段14を固定し、デバイス移動手段13によりデバイス12を移動させることで、測定光が測定領域21を照射する条件(例えば入射角度、強度)と、参照領域22を照射する条件を略同一にすることができ、さらに正確に、測定対象物質Mの質量/電荷を分析することができる。
【0034】
また、本実施形態のようにマトリックスを用いる方法では、マトリックスに由来するマススペクトルを除去することができ、マトリックスに分子量が近い、低分子の測定対象物質も容易に検出することができる。
【0035】
ここで、質量分析装置10は、デバイス移動手段13によりデバイス12の位置を調整し、デバイス12の測定領域21の複数箇所のマススペクトルと参照領域22の複数箇所のマススペクトルを検出することが好ましい。
複数箇所のマススペクトルを検出することで、検出結果の平均値で測定対象物質の質量分析を行うことができ、測定対象物質の質量分析をより正確に行うことができる。
【0036】
ここで、デバイス12は、基板20の製造時に圧延される方向または射出される方向等に垂直な方向(以下「第1の方向」ともいう。)における座標が同一となる領域に測定領域21と参照領域22を形成することが好ましい。つまり、デバイス12は、第1の方向に垂直な直線を含むように(つまり同一直線上に)、測定領域21と参照領域22とを形成することが好ましい。なお、図2では、図中上下方向が、第1の方向となる。
このように、圧延される方向または射出される方向等の、製造時に物性や形状等の誤差がより小さくなる第1の方向に垂直な直線を含むように測定領域21と参照領域22とを形成することで、質量分析用デバイスの物性、形状等により、両領域で検出されるマススペクトルが変化することをより確実に防止することができる。
【0037】
より具体的には、質量分析用デバイスは、基板の表面上(測定領域内及び参照領域内)で、物性、形状等のバラツキが生じることがある。この場合は、測定領域、参照領域のどの点からマススペクトルを検出するかによって、マススペクトルにバラツキが生じてしまうことがある。
ここで、このような質量分析用デバイスの基板の各領域内における物性、形状等のバラツキは、一定の傾向を有している場合が多い。例えば、基板として圧延により薄膜化されたアルミニウムなどを用いる場合であれば、アルミニウムの圧延方向等の所定の方向では物性、形状がほぼ一定になり、圧延方向と垂直な方向では物性、形状にバラツキが生じる。
このため、測定領域が質量分析用デバイスの表面の第1の方向の所定範囲(つまり、所定座標範囲)内に存在する場合に、この第1の方向の所定範囲を含むように参照領域も形成することで、例えば、測定領域内の所定座標の試料S1からマススペクトルを測定し、該所定座標と第1の方向の座標が同一となる座標に載置された参照領域内の参照試料S2からマススペクトルを測定し、測定領域内の試料S1から測定したマススペクトルのスペクトル強度を、参照領域内の参照試料S2から測定したマススペクトルのスペクトル強度を用いて補正することにより、一つの質量分析用デバイス内でバラツキが生じている場合であっても、測定領域の測定位置と参照領域の測定位置との間でのバラツキを抑制することができ、測定対象物質の質量/電荷を高い精度で検出することができる。
【0038】
以下、具体例とともにより詳細に説明する。
図4、図5、図6は、それぞれ本発明の他の一例の質量分析用デバイスの概略構成を示す上面図である。
図4に示すように、質量分析用デバイス(以下単に「デバイス」ともいう。)210は、基板211と、基板211の表面211に形成された、測定対象物質Mとマトリックスを含有する試料S1を載置する測定領域212と、測定対象物質含まない以外は試料S1と同様の構成の参照試料S2を載置する参照領域214とを有する。
このデバイス210の測定領域212は、基板211の第1の方向、すなわち図4中Y軸方向において、所定範囲内(Y軸座標0.5〜9.5)に形成され、また、参照領域214もY軸方向において、所定範囲内(Y軸座標0.5〜〜9.5)に形成されている。なお、デバイス210は、基体121が第1の方向に直交する方向(図4中X軸方向に)圧延することで製造されている。
【0039】
以下、一例として、図4の測定領域212のA1点(Y座標7)およびA2点(Y座標3)からマススペクトルを測定し、測定対象物質Mの質量/電荷を検出する場合の動作について説明する。なお、本実施形態では、デバイス移動手段として、デバイス210を支持体13a上に載置し、駆動機構でX−Y方向の2次元方向に移動させるX−Yステージを用いた場合で説明する。
【0040】
まず、駆動機構により、測定領域212のA1点(Y座標7)が測定光L1から射出される光の照射位置となるようにデバイス210を移動させる。
次に、測定光L1を照射し、A1点に載置された試料S1のマススペクトルを測定し、データ処理部28に記憶させる。なお、試料S1から脱離した物質のマススペクトルの測定方法は上述と同様の方法であるので、説明は省略する。以下、マススペクトルの検出の方法の説明は同様に省略する。
【0041】
次に、駆動機構により、参照領域214のB1点(Y座標7)が測定光L1から射出される光の照射位置となるように、デバイス210を移動させる。
次に、測定光L1を照射し、B1点に載置された参照試料S2のマススペクトルを測定し、データ処理部28に記憶させる。
データ処理部28は、参照試料S2のマススペクトルを用いて、試料Sのマススペクトルから、測定対象試料M以外の物質に起因するマススペクトルを除去し、測定対象物質Mのマススペクトルを算出し、測定対象物質Mの質量/電荷を算出する。
【0042】
まず、駆動機構により、測定領域212のA2点(Y座標3)が測定光L1から射出される光の照射位置となるように質量分析用デバイス210を移動させる。
次に、測定光L1を照射し、A2点に載置された試料S1のマススペクトルを測定し、データ処理部28に記憶させる。
【0043】
次に、駆動機構により、参照領域214のB2点(Y座標3)が測定光L1から射出される光の照射位置となるように、デバイス210を移動させる。
次に、測定光L1を照射し、B2点に載置された参照試料S2のマススペクトルを測定し、データ処理部28に記憶させる。
データ処理部28は、参照試料S2のマススペクトルを用いて、試料Sのマススペクトルから、測定対象試料M以外の物質に起因するマススペクトルを除去し、測定対象物質Mのマススペクトルを算出し、測定対象物質Mの質量/電荷を算出する。
なお、測定対象物質Mの質量/電荷は、A1、B1で検出した質量/電荷とA2、B2で検出した質量/電荷の両方を検出値としても、その平均値を質量/電荷の検出値としてもよい。
【0044】
以上の説明で明らかなように、測定領域212内のY方向における所定座標に載置された試料S1から測定されたマススペクトルと、参照領域214内のY方向における同じ座標に設けられた参照試料S2から測定したマススペクトルと用いて、測定対象物質以外の物質に起因したマススペクトルを除去し、測定対象物質のマススペクトルを検出している。
ここで、デバイス210は、X軸に平行な直線の各位置では、基板の特性が一定であるため、Y軸における座標が略同一であれば、その基板に起因して射出されるマススペクトルは略等しいとみなすことができる。このため、デバイス210の測定領域212内のY方向において、基板に起因するマススペクトルにバラツキが生じても、良好な測定精度で測定対象物質の質量分析を行うことができる。
【0045】
なお、デバイス210の変形例として以下のような質量分析用デバイスも用いることができる。
例えば、図5に示すような、基板311上に、X軸に平行な方向において2つに分割された測定領域312aおよび312bが形成され、各測定領域312aおよび312bと並んで参照領域314aおよび314bが形成されているデバイス310を用いることもできる。つまり、デバイス310は、基板311上に、X軸に平行な線分の一方の端部から他方の端部に向かうに従って、参照領域314b、測定領域312b、参照領域314a、測定領域312aの順に形成されている。
デバイス310も、測定領域の所定点から測定したマススペクトルと、隣接している参照領域の中で、Y軸における座標が等しい点からマススペクトルを測定すればよく、さらに、X軸に平行な方向な直線上に測定領域と参照領域を複数設けることで、Y軸における座標が同一でかつ、X軸における座標がことなる複数の点でマススペクトルを検出することができる。これにより、Y軸方向における基板のバラツキに加え、X軸方向の基板のバラツキも加味して測定対象物質の質量/電荷を検出することができる。
また、他の変形例として、図6に示すような、基板411上に、X軸方向およびY軸方向にそれぞれ複数に分割されている測定領域412a〜412hを形成し、各測定領域に対応して、同様にX軸方向およびY軸方向にそれぞれ複数に分割されている参照領域414a〜414hを形成したデバイス410も用いることができる。
デバイス410も、各測定領域から測定したマススペクトルと、隣接する参照領域から測定したマススペクトルとを用いて、測定対象物質の質量/電荷を算出することができる。
また、X軸方向に隣接する複数の参照領域のマススペクトルを用いることができるため、Y軸方向の基板のバラツキに加え、X軸方向の基板のバラツキも加味して測定対象物質の質量/電荷を分析することができる。
また、各測定領域に別々の測定対象物質を載置することができるため、容易に多種類の測定対象物質のマススペクトルを検出することができる。
【0046】
なお、基板が圧延され、または射出されること等により製造される場合は、上述したように測定領域と参照領域を第1の方向に垂直な直線上に配置することが好ましいが、本発明はこれに限定されない。
【0047】
質量分析用デバイスは、測定領域の任意の点を通過し、かつ、表面上の任意の一方向(主方向)と平行な直線上に、参照領域を形成し、さらに、該任意の点を通過し、かつ該任意の一方向に垂直な方向(副方向)に平行な直線上にも参照領域を形成することも好ましい。
質量分析用デバイスを上記構成とすることで、測定領域で検出したマススペクトルを、直交する2方向の直線上にそれぞれ形成された参照領域で検出した2つのマススペクトル(の平均値)を用いて補正することができる。
これにより、2方向で発生する基板のバラツキを補正することができるため、測定対象物質以外の物質に起因するマススペクトルを適切に除去することができ、測定対象物質の質量/電荷をより高い精度で検出することができる。
【0048】
例えば、測定領域内の所定座標に載置された試料S1からマススペクトルを測定し、その後、主方向の座標が所定座標と同一で参照領域に載置された参照試料S2、および、副方向の座標が所定座標と同一の参照領域に載置された参照試料S2からそれぞれマススペクトルを測定し、試料S1から測定したマススペクトルと、複数の参照領域の参照試料S2からそれぞれ測定したマススペクトとに基づいて、測定対象物質Sの質量/電荷を検出することで、主方向における基板のバラツキと副方向における基板のバラツキを加味した補正を行うことができ、測定対象物質の質量/電荷を精度よく検出することができる。
【0049】
以下、具体例とともにより詳細に説明する。
図7、図8、図9は、それぞれ本発明の他の一例の質量分析用デバイスの概略構成を示す上面図である。
【0050】
図7に示すように、デバイス510は、基板511上に、試料S1を載置する測定領域512と、参照試料S2を載置する2つの参照領域514a及び514bとが形成されている。
測定領域512は、基板511の主方向(すなわち図7中Y軸方向)の所定範囲内(Y座標0.5〜7)で、かつ、副方向(すなわち図7中X軸方向)の所定範囲内(座標3〜9.5)を満たす領域に形成され、また、参照領域514aは、Y軸方向の所定領域(Y座標0.5〜7)内に形成され、参照領域514bは、X軸方向の所定領域(X座標3〜9.5)に形成されている。
【0051】
以下、一例として、図7の測定領域512のA3点から試料S1のマススペクトルを検出し、さらに、測定対象物質Mの質量/電荷を検出する場合の動作について説明する。
【0052】
まず、駆動機構により、測定領域512のA3点(Y座標4、X座標6)が測定光L1の照射位置となるようにデバイス510を移動させる。
次に、測定光L1を照射し、A3点に載置された試料S1のマススペクトルを測定し、データ処理部28に記憶させる。
【0053】
次に、駆動機構により、参照領域514aのB3点(Y座標4)が測定光L1の照射位置となるように、デバイス510を移動させる。
次に、測定光L1を照射し、B3点に載置された参照試料S2のマススペクトルを測定し、データ処理部28に記憶させる。
さらに、駆動機構により、参照領域514aのB4点(X座標6)が測定光L1の照射位置となるように、デバイス510を移動させる。
次に、測定光L1を照射し、B4点に載置された参照試料S2のマススペクトルを測定し、データ処理部28に記憶させる。
その後、B3点で検出したマススペクトルとB4点で検出したマススペクトルとの平均値を、参照試料S2のマススペクトルとして算出する。
データ処理部28は、平均値で算出した参照試料S2のマススペクトルを用いて、試料Sのマススペクトルから、測定対象試料M以外の物質に起因するマススペクトルを除去し、測定対象物質Mのマススペクトルを算出し、測定対象物質Mの質量/電荷を算出する。
【0054】
以上の説明で明らかなように、測定領域512内の所定座標(つまり、A3点)に載置された試料S1から測定されたマススペクトルと、参照領域514a内の、Y軸方向の座標が該所定座標と同じとなる位置(つまり、B3点)に載置された参照試料S2から測定したマススペクトルと、参照領域514b内のX軸方向の座標が該所定座量と同じ位置(つまり、B4点)に載置された参照試料S2から測定したマススペクトルとを用いて測定対象物質Mの質量/電荷を検出することで、デバイス510の測定領域512内のY軸方向における基板のバラツキと、X軸方向における基板のバラツキの両者を加味して、測定対象物質Mの質量/電荷を検出することができ、さらに良好な測定精度で測定対象物質の質量/電荷を検出することができる。
【0055】
なお、デバイス510の変形例として以下のような質量分析用デバイスも用いることができる。
例えば、図8に示すような、基板611上に、測定領域612が形成され、測定領域612の外周を囲むように参照領域614が形成されているデバイス610を用いることもできる。
また、図9に示すような、デバイス表面711に十字状に参照領域714が形成され、この参照領域714により分割された測定領域712a〜712dが設けられているデバイス710も用いることができる。
また、基板上に、参照領域を、メッシュ状に設けてもよい。この場合には、測定領域から測定したマススペクトルと、測定位置とY軸座標が等しくかつ最も近い距離にある参照領域から測定したマススペクトル及びX軸座標が等しくかつ最も近い距離にある参照領域から測定したマススペクトルの平均値を用いて、測定対象物質の質量/電荷を検出すればよい。
【0056】
また、Y方向およびX方向の両方向ではなく、至近距離にある参照領域からマススペクトルを測定し、そのスペクトル強度を用いて、補正を行ってもよい。
【0057】
なお、各実施の形態においては、測定領域と参照領域のマススペクトルを交互に測定したが、必ずしもその必要はなく、例えば、まず、参照領域において該当する全ての点のマススペクトルを測定して記憶しておき、その後、測定領域においてマススペクトルを測定して、測定対象物質のマススペクトルを検出してもよい。
また、測定領域のマススペクトルを検出した後に、参照領域のマススペクトルを検出しても、参照領域のマススペクトルを検出した後に、測定領域のマススペクトルを検出してもよい。
【0058】
ここで上記実施形態では、いずれも試料S1及び参照試料S2として、マトリックスを有する試料を用い、測定領域に試料S1を配置し、参照領域に参照試料S2を配置したMALDI方式の質量分析装置の場合として説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、SALDI方式の質量分析装置にも用いることができる。
ここで、SALDI方式の質量分析装置及び質量分析用デバイスは、試料にマトリックスを混合しない点と、測定領域及び参照領域に微細構造体が配置されることを除いて、その他の構成は基本的に図1(A)及び(B)に示す質量分析装置10、図2に示すデバイス12と同様の構成であるので、その詳細な説明は省略する。
【0059】
質量分析用デバイスは、デバイス12と同様に、基板と基板上に形成された測定領域及び参照領域とで構成されている。
なお、本実施形態の質量分析用デバイスは、測定領域に測定対象物質を載置し、参照領域には、参照試料を載置しないことを除いて、測定領域と参照領域は同様の構成である。つまり、本実施形態の質量分析用デバイスを用いる場合は、試料を測定対象物質とし、参照領域は、参照試料を載置しないことで、測定対象物質が配置されていない以外は測定領域と同一の構成とする。
また、測定領域及び参照領域には、測定光が照射されることで増強電場を形成する微細構造体29が配置されている。
【0060】
以下、微細構造体29について説明する。
図10は、測定領域及び参照領域に配置される微細構造体29の概略構成を示す斜視図である。
図10に示すように、微細構造体29は、誘電体基材32および誘電体基材32の一面に配置された導電体34で構成された基体30と、誘電体基材32の導電体34が配置された面とは反対側の面に配置された金属体36とを有する。
【0061】
基体30は、金属酸化物体(Al)で形成された誘電体基材32と、誘電体基材32の一面に設けられ、陽極酸化されていない金属(Al)で形成された導電体34とを有する。ここで、誘電体基材32と導電体34とは、一体で形成されている。
また、誘電体基材32には、導電体34が配置される面とは反対側の面から導電体34側の面に向けて延びる略ストレートな形状(直管形状)の微細孔40が複数の開孔されている。
複数の微細孔40は、導電体34が配置される面とは反対側の面側の端部は、誘電体基材32の表面まで貫通して開口が形成され、導電体34側の端部は、誘電体基材32の表面まで貫通していない。つまり、微細孔40は、導電体34までは到達していない孔となる。また、複数の微細孔40は、測定光の波長より小さい径及びピッチで略規則的に配列されている。
ここで、測定光として可視光を用いる場合は、微細孔40の配置ピッチを200nm以下とすることが好ましい。
【0062】
金属体36は、誘電体基材32の微細孔40内に充填されている充填部45と、微細孔40上に誘電体基材32の表面より突出して形成され、充填部45の外径よりも大きい外径を有する突出部(つまり凸部)46とからなる複数の棒部44で構成されている。ここで、金属体36を形成する材料としては、局在プラズモンを発生させる種々の金属を使用でき、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Pt、Ni、Ti、及びこれらの合金等が挙げられる。また、金属体36は、これらの金属を2種以上含むもので形成してもよい。また、電場増強効果をより高くすることができるため、金属体36は、Au、Ag等を用いて形成することがより好ましい。
微細構造体29は、以上のような構成であり、金属体36の複数の棒部44の突出部46が配置される面が、測定光が照射される面となる。
【0063】
ここで、微細構造体29の作製方法について説明する。
図11(A)〜(C)は、それぞれ微細構造体29の作製方法の一例を示す工程図である。
まず、図11(A)に示すような直方体形状の被陽極酸化金属体48に陽極酸化処理を行う。具体的には、被陽極酸化金属体48を陽極とし、陰極と共に電解液に浸漬させ、陽極陰極間に電圧を印加することで陽極酸化する。
ここで、陰極としては、カーボンやアルミニウム等が使用される。電解液としては制限されず、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等の酸を、1種又は2種以上含む酸性電解液が好ましく用いられる。
なお、本実施形態では、被陽極酸化金属体48を直方体形状としたが、その形状は制限されず、種々の形状とすることができる。また、支持体の上に被陽極酸化金属体48が層状に成膜されたものなど、支持体付きの形態で用いることができる。
【0064】
被陽極酸化金属体48を陽極酸化すると、図11(B)に示すように、被陽極酸化金属体の表面から該面に対して略垂直方向に酸化反応が進行し、誘電体基材32となる金属酸化物体(Al)が生成される。陽極酸化により生成される金属酸化物体(つまり、誘電体基材32)は、多数の平面視略正六角形状の微細柱状体42が隙間なく配列した構造を有するものとなる。
また、各微細柱状体42は、底面が丸みを帯びた形状となり、さらに、略中心部には、表面から深さ方向(つまり、微細柱状体42の軸方向)に略ストレートに延びる微細孔40が開孔される。陽極酸化により生成される金属酸化物体の構造は、益田秀樹、「陽極酸化法によるメソポーラスアルミナの調製と機能材料としての応用」、材料技術Vol.15,No.10、1997年、p.34等に記載されている。
【0065】
また、規則配列構造の金属酸化物体を生成する場合の好適な陽極酸化条件例としては、電解液としてシュウ酸を用いる場合、電解液濃度0.5M、液温14〜16℃、印加電圧40〜40±0.5V等が挙げられる。この条件で生成される微細孔40は例えば、径が約30nm、ピッチが約100nmである。
【0066】
次に、誘電体基材32の微細孔40に電気メッキ処理を施すことにより、図11(C)に示すように、充填部45と突出部46とからなる棒部44を形成する。
ここで、電気メッキを行うと、導電体34が電極として機能し、電場が強い微細孔40の底部から優先的に金属が析出する。この電気メッキ処理を継続して行うことにより、微細孔12内に金属が充填されて棒部44の充填部45が形成される。充填部45が形成された後、更に電気メッキ処理を続けると、微細孔40から充填金属が溢れるが、微細孔40付近の電場が強いことから、微細孔40周辺に継続して金属が析出していき、充填部45上に誘電体基材32の表面より突出し、充填部45の径よりも大きい径を有する突出部46が形成される。
微細構造体29は、以上のようにして作製される。
【0067】
以下、本実施形態の質量分析装置を用いた質量分析について説明する。
まず、質量分析用デバイスの測定領域上に測定対象物質M(つまり試料)を載置し、その後、質量分析用デバイスをデバイス移動手段13の支持体13a上に載置する。
【0068】
次に、デバイス移動手段13の駆動機構13aにより、測定領域21が光照射手段14から射出される光の照射位置となるように質量分析用デバイスを移動させる。
その後、質量分析用デバイスに電圧Vsを印加し、所定のスタート信号により光照射手段14から測定光L1を射出させ、測定光L1を質量分析用デバイスの測定領域21に照射する。
測定光L1が照射されることで、測定領域に配置された微細構造体の表面において局在プラズモンに起因する増強電場が形成され、その増強電場により増強された測定光L1の光エネルギにより測定対象物質Mが測定領域から脱離される。
離脱された測定対象物質Mは、上述した質量分析装置10と同様に、検出器26に到達し検出される。さらに、その検出結果に基づいて、マススペクトルが算出される。なお、この際、測定対象物質M以外にも基板上の物質も脱離されるため、検出される。
【0069】
測定領域内の試料のマススペクトルの検出が終了したら、次に、デバイス移動手段13の駆動機構13aにより、参照領域が光照射手段14から射出される光の照射位置となるようにデバイス12を移動させる。
その後、測定領域上の試料を検出した場合と同様に、参照領域に測定光L1を照射する。
ここで、参照領域22上には、試料が載置されていないが、微細構造体の表面で増強電場が形成されることで、参照領域22上の物質が脱離する。この脱離した物質を検出器26で検出し、その検出結果と飛行時間と関係に基づいて、参照領域におけるマススペクトルを算出する。
【0070】
次に、測定領域から検出したマススペクトルと、参照領域から検出したマススペクトルとに基づいて、測定対象物質Mのマススペクトルを算出する。
具体的には、測定領域のマススペクトルから、測定対象物質Mを含まない以外、測定領域と同様の構成の参照領域上から検出されたマススペクトルを取り除く(差分を検出する)ことで、測定対象物質Mのマススペクトルを算出する。
本実施形態の質量分析装置も、以上のようにして、測定対象物質Mの質量/電荷を分析する(つまり、質量分布を検出する)。
【0071】
本実施形態のように、SALDI法を用いる質量分析装置の場合も、質量分析用デバイスに測定領域と測定対象物質が載置されていない以外は測定領域と同一の構成の参照領域とを形成し、測定領域で測定したマススペクトルから参照領域で測定したマススペクトルを取り除くことで、測定対象物質を高い精度で検出することができるという質量分析装置10と同様の効果を得ることができる。
【0072】
ここで、SALDI法を用いる質量分析用デバイス、例えば基体上に凹凸構造を有する金属体を設けた質量分析用デバイスは、凹凸構造を有する金属体を形成する際に、金属体領域の領域内で増強電場の増強度にバラツキが生じることがあり、このような場合に測定領域のどの点からマススペクトルを測定するかによって、測定結果にバラツキが生じてしまう。
そこで、本実施形態の質量分析用デバイスも、上述したように、測定領域が質量分析用デバイスの表面の第1の方向の所定範囲(つまり、所定座標範囲)内に存在する場合に、この第1の方向の所定範囲を含むように参照領域も形成することが好ましい。また、測定領域の任意の点を通過し、かつ、表面上の任意の一方向(主方向)と平行な直線上に、参照領域を形成し、さらに、該任意の点を通過し、かつ該任意の一方向に垂直な方向(副方向)に平行な直線上にも参照領域を形成することも好ましい。
質量分析用デバイスの測定領域と参照領域を上記配置とすることで、基板及び微細構造体のバラツキに関わらず、測定対象物質をより高い精度で検出することができる。
【0073】
ここで、質量分析用デバイスは、測定領域及び参照領域の両面に、測定対象物質を捕捉可能であり、測定光L1の照射により測定対象物質を脱離可能な表面修飾(捕捉部材)を施すことが好ましい。
例えば、測定対象物質が抗原である場合、その抗原と特異的に結合可能な抗体により微細構造体の表面を修飾しておくことにより、表面に配置された測定対象物質の量を増大させることができ、質量分析測定の感度を向上させることができる。
【0074】
図12(A)は、表面修飾が施された微細構造体の概略構成を示す断面図であり、図12(B)は、図12(A)に示す微細構造体から測定対象物質が脱離した状態を示す断面図である。なお、図12(A)及び(B)では視認しやすくするために表面修飾Rおよび表面修飾Rの構成要素は拡大して示してある。
図12(A)に示すように、表面修飾Rは、微細構造体29の表面に、微細構造体29の表面と結合する第1のリンカー機能部Aと、測定対象物質Mと結合する第2のリンカー機能部Cと、第1のリンカー機能部Aと第2のリンカー機能部Cとの間に介在し、測定光L1の照射により生じる電場で分解する分解機能部Bとを有するものである。図示例では、測定対象物質Mは、表面修飾Rを介して、質量分析用デバイスの測定領域の近傍に配置されている。
【0075】
なお、表面修飾Rは、第1のリンカー機能部Aと、分解機能部Bと、第2のリンカー機能部Cとを全て備えた一つの物質であってもよいし、それぞれが異なる物質からなっていてもよい。また、第1のリンカー機能部Aと分解機能部B、あるいは、分解機能部Bと第2のリンカー機能部Cが一つの物質であってもよい。
【0076】
ここで、デバイス12に測定光L1が照射されると、微細構造体の表面で局在プラズモンが発生し、測定領域の表面において増強電場が発生する。また、測定光L1の光エネルギは、測定領域の表面に発生した増強電場により、表面付近において高められる。
この高められたエネルギにより表面修飾Rの分解機能部Bが分解され、図12(B)に示すように、測定対象物質Mに第2のリンカー機能部Cが結合されたものが、測定領域表面から脱離される。
【0077】
このように表面修飾を用いることで、測定対象物質を微細構造体の表面から脱離させることができる。
また、表面修飾Rを介して測定対象物質Mと微細構造体29とが結合していることで、測定対象物質Mは、測定領域の微細構造体の表面から離れて存在させることができる。
ここで、微細構造体の表面において得られる電場増強効果は、局在プラズモンにより生じる近接場光による電場増強効果であるので、表面からの距離に対して指数関数的に減少していくものである。従って、図12(A)に示すように、測定対象物質Mが表面1sから比較的離れて存在させることにより、測定対象物質Mに照射される測定光L1の光エネルギは、電場増強による影響の少ないものとすることができる。すなわち、増強された光エネルギにより測定対象物質Mがダメージを受けることを抑制でき、高精度な質量分析が可能となる。
【0078】
また、微細構造体の形状は、微細構造体29の形状に限定されず、基体上に局在プラズモンを誘起し得る大きさの凸部が形成されていればよく、種々の形状とすることができる。
【0079】
図13(A)は、微細構造体の他の一例の概略構成を示す斜視図であり、図13(B)は、図13(A)の上面図である。
図13(A)及び図13(B)に示す微細構造体80は、基体82と基体82上に配置された多数の金属微粒子84とで構成されている。
基体82は、板状の基板である。基体82は、金属微粒子84を電気的に絶縁して支持可能な材料で形成すればよく、材料としては、例えば、シリコン、ガラス、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、サファイヤ、およびシリコンカーバイド等が挙げられる。
【0080】
多数の金属微粒子84は、局在プラズモンを誘起し得る大きさの微粒子であり、基体82の一面上に分散された状態で固定されている。
また、金属微粒子84は、上述した金属体36で例示した各種金属で形成することができる。また、金属微粒子84は、上述した金属微粒子62と同様の金属微粒子でも異なる金属微粒子でもよい。また、金属微粒子の形状は特に限定されず、例えば、丸型で、直方体型でもよい。
このような構成の微細構造体80も金属微粒子が配置された検出面に励起光が照射されることで、増強電場を発生させることができる。
【0081】
次に、図14は、微細構造体の他の一例の概略構成を示す上面図である。
図14に示す微細構造体90は、基体92と基体92上に配置された多数の金属ナノロッド94とで構成されている。
ここで、基体92は、上述した基体82と同様の構成であるのでその詳細な説明は省略する。
【0082】
金属ナノロッド94は、局在プラズモンを誘起し得る大きさであり、短軸長さと長軸長さが異なる棒状の金属ナノ粒子であり、基体92の一面に、分散された状態で固定されている。金属ナノロッド94は、長軸長さは励起光の波長よりも小さいサイズのものである。金属ナノロッド94は、上述した金属微粒子と同様の金属で作製することができる。なお、金属ナノロッドの詳細な構成については、例えば、特開2007−139612号公報に記載されている。
ここで、微細構造体90は、上述した微細構造体80と同様の方法で作製することができる。
このような構成の微細構造体90も金属ナノロッドが配置された検出面に励起光が照射されることで、増強電場を発生させることができる。
【0083】
次に、図15(A)は、微細構造体の他の一例の概略構成を示す斜視図であり、図15(B)は、図15(A)の断面図である。
図15に示す微細構造体95は、基体96と基体96上に配置された多数の金属細線98とで構成されている。
ここで、基体96は、上述した基体82と同様の構成であるのでその詳細な説明は省略する。
【0084】
金属細線98は、局在プラズモンを誘起し得る線幅の線状部材であり、基体96の一面に格子状に配置されている。金属細線98は、上述した金属微粒子、金属体と同様の金属で作製することができる。また、金属細線98の作製方法は、特に限定されず、蒸着、メッキ等、金属配線を作製する種々の方法で作製することができる。
ここで、金属細線98の線幅は、具体的には50nm以下、特に30nm以下であることが好ましい。また、金属細線98の配置パターンは、特に限定されない。例えば、複数の金属細線を交差させずに、互いに平行に配置してもよい。また、金属細線の形状も直線に限定されず、曲線としてもよい。
【0085】
このような構成の微細構造体95も金属細線が配置された検出面に励起光が照射されることで、局在プラズモンに起因する増強電場を発生させることができる。
【0086】
また、微細構造体は、上述した微細構造体29、微細構造体80、微細構造体90及び微細構造体95にも限定されず、ぞれぞれの局在プラズモンを誘起し得る凸部を組み合わせた構成としてもよい。
【0087】
以上、本発明に係る質量分析用デバイス、それを用いる質量分析装置及び質量分析方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【0088】
例えば、質量分析装置10では、飛行時間型質量分析法(Time of Flight Mass Spectroscopy:TOF−MS)を利用して質量分析をする装置の場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、質量分析用デバイスの表面に配置された測定対象物質を脱離させ、脱離させた物質を検出する種々の装置に用いることができる。例えば、四重極型の質量分析装置、イオントラップ型の質量分析装置、磁場型の質量分析装置、FT−ICR型の質量分析装置にも用いることができる。
【0089】
また、上記実施形態では、検出面に光を照射して測定対象物質をイオン化するMALDI法とSALDI法を用いる場合を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、高速原子衝撃法等の測定対象物質にイオンビームを照射して、測定対象物質をイオン化する方法にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】(A)は、本発明の質量分析用デバイスを用いる質量分析装置の概略構成を示す正面図であり、(B)は、(A)に示す質量分析装置のデバイス移動手段の周辺部の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した質量分析用デバイスの概略構成を示す上面図である。
【図3】(A)〜(C)は、それぞれ測定または算出したマススペクトルを示すグラフである。
【図4】本発明の質量分析用デバイスの他の一例の概略構成を示す上面図である。
【図5】本発明の質量分析用デバイスの他の一例の概略構成を示す上面図である。
【図6】本発明の質量分析用デバイスの他の一例の概略構成を示す上面図である。
【図7】本発明の質量分析用デバイスの他の一例の概略構成を示す上面図である。
【図8】本発明の質量分析用デバイスの他の一例の概略構成を示す上面図である。
【図9】本発明の質量分析用デバイスの他の一例の概略構成を示す上面図である。
【図10】図1に示す被検体検出装置の微細構造体の一実施形態の概略構成を示す斜視図である。
【図11】(A)〜(C)は、それぞれ微細構造体の作製方法を示す工程図である。
【図12】(A)は、表面修飾が施された微細構造体の概略構成を示す断面図であり、(B)は、(A)に示す微細構造体から測定対象物質が脱離した状態を示す断面図である。
【図13】(A)は、微細構造体の他の一例の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、(A)の部分上面図である。
【図14】微細構造体の他の一例の概略構成を示す上面図である。
【図15】(A)は、微細構造体の他の一例の概略構成を示す斜視図であり、(B)は、(A)の断面図である。
【符号の説明】
【0091】
10 質量分析装置
11 ボックス
12 質量分析用デバイス
13 デバイス移動手段
14 光照射手段
16 飛翔方向制御手段
18 質量分析手段
20 基板
21 測定領域
22 参照領域
23 グリッド
24 エンドプレート
26 検出器
27 アンプ
28 データ処理部
29、80、90、95 微細構造体
30、82、92、96 基体
32 アルミナ層(誘電体基材)
34 導電体
36 金属体
40 微細孔
42 微細柱状体
44 棒部
45 充填部
46 突出部
48 被陽極酸化金属体
60、84 金属微粒子
62 被検体
94 金属ナノロッド
98 金属細線
M 測定対象物質
S1 試料
S2 参照試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出面に光またはイオンビームを照射して、前記検出面に載置される測定試料をイオン化するとともに、前記検出面の表面から脱離させ、イオン化された前記測定試料の質量を検出する質量分析装置に用いる質量分析用デバイスであって、
前記検出面が形成された基板と、
前記基板の前記検出面に形成され、少なくとも測定対象物質が載置された測定領域と、
前記基板の前記検出面の前記測定領域と異なる領域に形成された参照領域とを有し、
前記参照領域は、前記測定対象物質が載置されていない以外は前記測定領域と同一に構成されていることを特徴とする質量分析用デバイス。
【請求項2】
前記測定領域及び前記参照領域には、それぞれ光が照射されることで局在プラズモンを誘起する微細構造体が配置されている請求項1または2に記載の質量分析用デバイス。
【請求項3】
前記測定領域には、前記測定対象物質を含有する試料が載置され、
前記参照領域には、前記測定対象物質を含有しない試料が載置されている請求項1または2に記載の質量分析用デバイス。
【請求項4】
前記測定領域には、前記測定対象物質及びマトリックスを含有する試料が載置され、
前記参照領域には、前記測定対象物質を含まず、前記マトリックスを含有する試料が載置されている請求項1に記載の質量分析用デバイス。
【請求項5】
前記参照領域は、前記測定領域を通過し、かつ、第1の方向に直交する直線を含む領域に形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の質量分析用デバイス。
【請求項6】
前記参照領域は、前記測定領域上の任意点を通過する直交する2つ直線をそれぞれ含む、少なくとも2つの領域に形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の質量分析用デバイス。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の質量分析用デバイスと、
前記質量分析用デバイスに光またはイオンビームを照射する照射手段と、
前記質量分析用デバイスの測定領域から射出されるイオンと、参照領域から射出されるイオンを検出するイオン検出手段と、
測定領域から射出されるイオンの検出結果に基づいて第1マススペクトルを算出し、参照領域から射出されるイオンの検出結果に基づいて第2マススペクトルを算出するマススペクトル算出手段と、
前記マススペクトル手段で算出された第2マススペクトルに基づいて前記第1マススペクトルを補正するマススペクトル補正手段と、
マススペクトル補正手段で補正した値に基づいて測定対象物質の質量を検出する質量検出手段とを有することを特徴とする質量分析装置。
【請求項8】
さらに、前記測定領域と前記参照領域を結んだ線と平行な方向に前記質量分析用デバイスを移動させる移動手段を有する請求項7に記載の質量分析装置。
【請求項9】
前記照射手段は、強度及び波長の少なくとも一方が異なる複数の光を射出できる光射出機構であり、
光射出機構から射出する光の強度および波長の少なくとも一方を切り換え、前記質量分析用デバイスに光を照射する請求項7または8に記載の被検体検出装置。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の質量分析用デバイスの測定領域に光またはイオンビームを照射し前記測定領域から射出されるイオンを検出し、検出結果から第1マススペクトルを算出する第1マススペクトル検出ステップと、
前記質量分析用デバイスの参照領域に光またはイオンビームを照射し前記測定領域から射出されるイオンを検出し、検出結果から第2マススペクトルを算出する第2マススペクトル検出ステップと、
第2マススペクトルを用いて第1マススペクトルを補正する補正ステップと、
前記補正ステップで補正した結果に基づいて、測定対象物質の質量を検出する質量分析方法。
【請求項11】
前記第1マススペクトル検出ステップで前記第1マススペクトルを検出した後、
前記第2マススペクトル検出ステップで前記第2マススペクトルを検出する請求項10に記載の質量分析方法。
【請求項12】
前記第2マススペクトル検出ステップで前記第2マススペクトルを検出した後、
前記第1マススペクトル検出ステップで前記第1マススペクトルを検出する請求項10に記載の質量分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−243902(P2009−243902A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87352(P2008−87352)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】