説明

質量分析計

【課題】試料導入部を脱着する際、試料導入部固定のための2箇所のネジおよびパイプに電力を供給するための2箇所の電源ケーブル圧着端子を脱着する必要があり合計4箇所の脱着を行うので作業効率が悪く、かつ電源ケーブル圧着端子接続箇所の接触不良が発生しやすい問題がある。
【解決手段】試料導入部3を質量分析計側に固定する2箇所を保持部材6および7からのパイプ5への電力供給部を兼ねたフランジ部6aおよび電極7bとし、あらかじめ装置側の真空の隔壁14に固設した試料導入部固定用の支柱15および16に保持部材6、7をネジ止めする構造とし、支柱15、16にはあらかじめ電源ケーブル圧着端子19、20を接続しており試料導入部3を脱着する際、電源ケーブル圧着端子19、20を脱着する必要のない構造として2箇所のネジの脱着のみで試料導入部3の脱着が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状試料をイオン化室にてイオン化して質量分析する質量分析計に係り、とくに液体クロマトグラフからの試料を導入して測定する液体クロマトグラフ/質量分析計のインタフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ/質量分析計は概略図4に示すような構成になっている。液体クロマトグラフと質量分析計の接続はインタフェース部を介してなされる。このインタフェース部はイオン化プローブ2と試料導入部3により構成され、質量分析計は真空部Bと質量分析部4により構成される。液体クロマトグラフ1からの試料は大気圧のイオン化室A内でイオン化プローブ2から噴霧とともにイオン化される。大気圧であるイオン化室Aと真空部B間における隔壁13と隔壁14間に架設された試料導入部3を介して質量分析計に導かれる。イオン化プローブ2の噴霧方向と試料導入部3の方向は相対的に直角に配置され、ノイズ成分や溶媒成分を除去するために試料導入部3は加熱される。
【0003】
従来における構成をより具体的にみると、図5、図6に示すとおりである。図5および図5の左側面図である図6に示すように試料導入部3はそれぞれの隔壁13、14に架設されたパイプ5とパイプ5を保持する保持部材6とこの保持部材と一体の保持部材7で構成される。8は保持部材6、7の中間に介在された樹脂カラーであり、9は白金センサーである。パイプ5はフェルール10と押しネジ11とプレート12により保持部材6、7に固設されている。すなわち、パイプ5は保持部材6に先端付近でプレート12により保持され、保持部材7に後端付近でフェルール10と押しネジ11により固定されている。
【0004】
ここでパイプ5と保持部材6と保持部材7とプレート12とフェルール10と押しネジ11は全て導電性材料のステンレスで構成され、保持部材6と保持部材7の間は樹脂カラー8にて絶縁されている。この状態で保持部材6のフランジ部6aには加熱電源からのケーブルを接続するためのネジ穴Dが設けられている。他方保持部材7にも電極7aが突設され、それにネジ穴Eが穿設されている。保持部材6と保持部材7の間に電圧を印加するとパイプ5に電流が流れパイプ5はその電気抵抗により発熱し加熱される。なお、保持部材6と隔壁13間および保持部材7と隔壁14間の電気的絶縁は樹脂材部品により保持されている(図示せず)。
【0005】
以上の構成において、試料導入部3は隔壁13を取り外した状態で保持部材6のフランジ部6aに設けた真空部B側の隔壁固定用穴Cを用いて真空部B側の隔壁14にネジ止めして固定し、先端が圧着端子である加熱電源からのケーブルの圧着端子をフランジ部6aおよび保持部材7の電極7aにネジ止めする。加熱電源から電圧を印加することでパイプ5に電流が流れパイプ5は加熱される。パイプ5には白金センサー9が取付けてありパイプ5の温度を検出して温度制御が可能である。
【特許文献1】特開2000−331641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
試料導入部3における隔壁13と隔壁14間に架設する際、質量分析計の分析室側の隔壁14に固定するために、フランジ部6aをネジで2箇所の固定する必要があり、さらに加熱電源からの電源ケーブル(図示せず)の圧着端子をフランジ部6aと保持部材7の電極7aの2箇所をネジで固定する。したがって計4箇所をネジで固定する必要がある。液体クロマトグラフ/質量分析計では試料導入部3のパイプ5は試料による汚染のため取り外しメンテナンスを必要とする部品の一つであり4箇所のネジ脱着は作業性を低下させる。さらにパイプ5を脱着するたびに電源ケーブルを脱着する必要から電源ケーブル接続箇所に接触不良が発生しやすい問題がある。本発明は以上の問題点を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解消するために、試料をイオン化するイオン化室と分析室とを区画するそれぞれの2個の隔壁に対して架設した電熱式で加熱されるパイプの両端部にそれぞれ電力を供給するための導電性接続部材を結合するとともに、この両導電性接続部材のそれぞれの一部を前記いずれかの隔壁部位に配設し、この両導電性部材のそれぞれの一部を電源に接続された端子の接続部とし、導電性接続部材の一部を支柱で構成し、この支柱端が隔壁部位まで伸設されている構造とする。したがって、試料導入部の脱着は、2箇所のみのネジを緩め、締めするだけで行え電源ケーブルの脱着も必要ない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、試料導入部を質量分析計の側に2箇所の固定部にネジ止め固定するだけで試料導入部の脱着と試料導入部への電源の導入が可能であり、従来のように4箇所のネジを緩め、締めすることも電源ケーブルを脱着する作業の必要もなくメンテナンス効率が向上し、電源ケーブル接続箇所の接触不良発生の問題も解消する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1および図2は本発明の実施例1を示す。図2は図1における左側面図を示す。前述の図5、6と同じものには同じ符号が付してある。図1に示すとおりパイプ5は、保持部材として機能するそれぞれ別体の保持部材6および7間で架設される。そしてパイプ5の両端部には導電性を有する材料例えばステンレスでつくられたプレート12とフェルール10と押しネジ11で保持部材6および保持部材7が結合されている。8は保持部材6と保持部材7を絶縁させる樹脂カラーである。保持部材6にはフランジ部6aが一体的に形成されている。他方質量分析計の真空部B側の隔壁14からは支柱15が延設され、この支柱15の先端部がフランジ部6aと電気的に接続されている。
【0010】
このフランジ部6aにはこの両者を固定するための固定用穴Fが穿設されている。また保持部材7には真空部B側の隔壁14から延設した支柱16に固定するための保持部材固定用の電極7bが突設され、この電極7bには固定用穴Gが穿設されている。保持部材6のフランジ部6aおよび保持部材7の電極7bはパイプ5への電力供給部を兼ねている。なお、保持部材6と隔壁13間および保持部材7と隔壁14間、支柱15、16と隔壁14間の電気的絶縁は樹脂材部品により保持されている(図示せず)。
【0011】
以上の構成において、本発明はさらに、質量分析計の真空部B側の隔壁14には試料導入部3の固定に対応する位置にステンレス製の支柱15と支柱16が延設されており、すなわち導電性部材であるこれらの支柱15、16にはあらかじめ電源からの電源ケーブル圧着端子19および20がネジ止めされている。このようにして試料導入部3が固定ネジ17および18により支柱15と支柱16に架設される。この支柱15と16の架設は導電性部材の一部を一方の隔壁14側に配設したことを意味する。導電性部材としては支柱(円筒)の形でなく板でもよい。したがって、パイプ5への電力が適正に供給される。
【0012】
すなわち、電源ケーブル圧着端子19、20間に電源から電圧が印加されることによって保持部材6、7を介して電流がパイプ5に流れパイプ5は加熱される。試料導入部3の着脱は固定ネジ17および18の脱着操作のみで可能となり電源ケーブル圧着端子19および20の脱着操作が省略される。したがって、本発明によれば試料導入部3の脱着は2箇所のネジを脱着操作のみとなる。また、試料導入部3を挿設するのみでパイプ5への電力供給が可能である。
【0013】
図3は本発明の第2の実施例を示す図である。この第2の実施例では、実施例1の試料導入部3における保持部材を簡略化したものである。すなわち保持部材21および22の長さを短小化し、保持部材22を分析室B側の隔壁14に固定するようにしたものである。このような構造であれば保持部材21と22間の絶縁のための樹脂カラー8を省くことができる。なお、実施例1と同様に保持部材21と隔壁13間および保持部材22と隔壁14間、支柱15、24と隔壁14間の電気的絶縁は樹脂材部品により保持されている(図示せず)。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は液状試料をイオン化して質量分析計に導入して測定する液体クロマトグラフ質量分析計のインタフェースに関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による試料導入部を示す図である。
【図2】図1の左側面図を示す図である。
【図3】本発明による試料導入部を示す図である。
【図4】液体クロマトグラフ質量分析計の構造を示す図である。
【図5】従来の試料導入部を示す図である。
【図6】従来の試料導入部を側方より見た図である。
【符号の説明】
【0016】
1 液体クロマトグラフ
2 イオン化プローブ
3 試料導入部
4 質量分析部
5 保持部材
6 保持部材
6a フランジ部
7 保持部材
7a 電極
7b 電極
8 樹脂カラー
9 白金センサー
10 フェルール
11 押しネジ
12 プレート
13 隔壁
14 隔壁
15 支柱
16 支柱
17 固定ネジ
18 固定ネジ
19 電源ケーブル圧着端子
20 電源ケーブル圧着端子
21 保持部材
22 保持部材
24 支柱
A イオン化室
B 真空部
C 固定用穴
D ネジ穴
E ネジ穴
F 固定用穴
G 固定用穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をイオン化するイオン化室と分析室とを区画するそれぞれの2個の隔壁に対して、電熱式で加熱されるパイプを架設しこのパイプを介してイオン化室のイオンを分析室に導入する質量分析計において、パイプの両端部にそれぞれ電力を供給するための導電性接続部材を結合するとともに、前記導電性接続部材のそれぞれの一部を前記いずれかの隔壁部位に配設し、前記導電性接続部材のそれぞれの一部を電源に接続された端子の接続部としたことを特徴とする質量分析計。
【請求項2】
導電性接続部材の一部を支柱で構成し、この支柱端が隔壁部位まで伸設されていることを特徴とする請求項1記載の質量分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−128886(P2008−128886A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315612(P2006−315612)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】