説明

質量流量コントローラおよび同コントローラを動作させる方法

本発明の一実施形態は、熱センサおよび同センサを使用する方法を含む。1つの熱センサは、外部の長手方向および直交方向温度勾配に影響を受けない信号を出力するようにする。一実施形態において、質量流量コントローラ熱センサは、上流管部分、管屈曲部分、および下流管部分を備える毛細管を含み、下流部分は、上流部分にほぼ平行である。一実施形態において、上流管部分と下流管部分との間の距離は、上流部分および下流部分長さの半分とほぼ同じであり、第1の対になった熱検知素子は、上流管部分に結合し、第2の対になった熱検知素子は、下流管部分に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には質量流量コントローラに関する。具体的に、限定はしないが、本発明は、質量流量コントローラ熱センサおよび同センサを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な質量流量コントローラ(MFC)は、流体の供給を制御するように構成され、かつ適合化されたデバイスである。流体の指定される供給量は、たとえば、MFCから供給される流体の1分間当りの立方センチメートルまたはグラム数にてユーザーが設定することができる。MFCから供給される流体の流量を制御するために、典型的なMFCは、MFCの実際の流量を示す出力信号を生成する。この実際の流量は、ユーザー指定の流量と比較され、必要があれば、流量を変更するように制御弁が調節され、その結果、MFCから送り出される流体流れは、指定された供給量で放出される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
図面に示される本発明の例示的な実施形態を以下に要約する。これらおよび別の実施形態は、詳細な説明の部分でより十分に説明する。しかし、本発明を、本発明のこの概要または詳細な説明において説明される形態に限定する意図はないことを理解されたい。特許請求の範囲に述べる本発明の技術思想および範囲内にある、多数の変更形態、均等物、および別の構造があることを当業者は理解されたい。
【0004】
本発明の実施形態は、質量流量コントローラ関連のデバイスおよび同デバイスを動作させる方法を提供する。たとえば、一実施形態は、質量流量コントローラ熱センサを含む。熱センサは、毛細管、第1の対になった検知素子、および第2の対になった検知素子を備える。1つの毛細管は、質量流量コントローラバイパスを横断して主流体流路に結合する。第1の対になった検知素子は、毛細管の上流部分に結合し、第2の対になった検知素子は、毛細管の下流部分に結合し、第2の対になった検知素子は、第1の対になった検知素子とほぼ反対方向にある。さらに、一実施形態において、上流部分および下流部分は、ほぼ平行であり、2つの部分間の距離は、2つの部分の長さの半分とほぼ同じである。
【0005】
本発明の別の例示的な実施形態は、質量流量コントローラ熱センサを動作させる方法である。1つの方法において、流体は、第1の方向で少なくとも1つの熱検知素子全体にわたって熱を受け取られる。流体は、第2の方向でも第2の熱検知素子にわたって受け取られる。その際、長手方向および直交方向温度勾配が、第1および第2の検知素子にわたって外部熱源から誘発され、質量流量信号が、熱センサから出力される。この出力は、長手方向および直交方向温度勾配に影響を受けない。
【0006】
本発明の別の実施形態は、質量流量コントローラを含む。一実施形態において、質量流量コントローラは、主流路、熱センサ、および差動増幅器を含む。熱センサは、主流路に結合するu字形の毛細管と、その管に結合する少なくとも1つの検知素子とを備える。少なくとも1つの熱検知素子は、素子の温度にほぼ比例する電圧を有する信号を出力するようにする。差動増幅器は、(i)少なくとも1つの熱検知素子の出力信号を受け取り、(ii)質量流量コントローラを通って流れている流体の流量にほぼ比例する電圧の差動増幅器信号を出力するようにする。さらに、差動増幅器によって出力される電圧は、直交方向および長手方向温度勾配に影響を受けない。
【0007】
これらおよび別の実施形態を、本明細書により詳細に説明する。
【0008】
本発明の様々な目的および利点ならびにより十分な理解は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を参照し、添付の図面と併せて読めば、明らかになり、より容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の例示的な実施形態による、主流路に結合する熱センサを含む質量流量コントローラの部分図である。
【図2】本発明の例示的な実施形態による、反対方向の熱検知素子の2つの対を有し、主流路に結合する熱センサを含む別の質量流量コントローラの部分図である。
【図3】本発明の例示的な実施形態による、熱電対列検知素子を有し、主流路に結合する熱センサを含む、さらに別の質量流量コントローラの部分図である。
【図4】本発明の例示的な実施形態による、質量流量コントローラ熱センサを動作させる方法のフローチャートである。
【図5】本発明の例示的な実施形態による、質量流量コントローラブリッジ回路の概略図である。
【図6A】本発明の一実施形態による、(i)質量流量コントローラ熱センサの一部分、および(ii)熱温度勾配の概略図である。
【図6B】本発明の一実施形態による、(i)質量流量コントローラ熱センサの一部分、および(ii)熱温度勾配の概略図である。
【図7】本発明の例示的な実施形態による、MFCの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
必要に応じて、いくつかの適切な図面を通して同様または類似の素子を同一の参照番号で示すが、特に図1には、本発明の例示的な実施形態による質量流量コントローラ熱センサ100が示される。熱センサ100の一実施形態は、毛細管102および1つまたは複数の熱検知素子116、118を備える。一実施形態は、上流熱検知素子116および下流熱検知素子118から構成することができる。さらに、毛細管102は、上流部分106、下流部分108、および管屈曲部分110を備えてもよい。
【0011】
一実施形態において、流体が質量流量コントローラ(MFC)を通って流れるとき、流体は、主流路112を通ってバイパス114に向かって流れる。流体の一部分は、バイパス114に入る前に、毛細管102に入る。一実施形態において、毛細管102内の流体は、管屈曲部分110まで上流管部分106を通って第1の方向に流れ、主流路112内に戻るまで下流管部分108を通って第1の方向とほぼ反対方向の第2の方向に流れ、バイパス114の主流路112の下流に再び入る。
【0012】
熱センサ100の1つまたは複数の変形形態は、質量流量コントローラを通って流れている流体の流量を決定するのに使用される1つまたは複数の信号(図1には示さず)を出力するようにするものである。流体流量を決定するために、1つまたは複数の上流検知素子116からの出力電圧は、1つまたは複数の下流検知素子118からの出力電圧と比較される。素子116、118の温度が変動すると、出力電圧も変動する。したがって、毛細管102を通る流体は、上流検知素子116から下流検知素子118まで熱を運ぶとき、素子116、118によって異なる電圧が生成される。センサ116、118間の電圧差に基づいて、MFCを通る流体の流量を得ることができる。その際、熱センサ100によって出力される、この流体流量は、実際の流体流量を増加または減少させるために制御弁104を調節するのに使用することができ、その結果、実際の流体流量は、ユーザーによって設定される所定の流体流量に等しくなる。
【0013】
熱センサ100によって測定される流体流量が、熱検知素子116、118の温度変化に依存するので、あらゆる外部熱源が、検知素子116、118によって出力される電圧レベルに影響を及ぼす可能性がある。したがって、外部熱源によって、質量流量コントローラ熱センサ100は、誤った流体流量を出力する可能性がある。外部熱源は、図6Aおよび6Bに示されるように、長手方向勾配680および直交方向勾配690からなる温度勾配を発生させる。長手方向勾配680は、管部分106、108内の流体流れに平行な温度勾配部分を含む。他方、直交方向勾配690は、流体流れに垂直な温度勾配部分を含む。直交方向勾配690は、横勾配と呼ぶこともできる。
【0014】
本発明の一実施形態は、温度勾配680、690が熱センサ100の出力に与える影響を最小化する。たとえば、一実施形態において、上流管部分106と下流管部分108との間の距離120が、長手方向温度勾配680の影響をほぼ相殺するようにする長さに設定される。ほぼ反対方向の上流および下流検知素子116、118は、ほぼ同様の上流および下流管部分106、108を形成する。上流および下流管部分106、108間の適当な距離120で組み合わせられる同様の管部分106、108は、長手方向勾配680の影響を相殺するように機能する。さらに、下流検知素子118とほぼ反対方向に上流検知素子116を配置することが、あらゆる直交方向勾配690の影響を最小化する。
【0015】
図6Aおよび6Bに示されるように、上流検知素子116は、第1の対になった検知素子616’および616’’を含むことができ、下流検知素子118は、第2の対になった検知素子618’および618’’を含むことができる。第1および第2の検知素子対616’、616’’、618’、618’’は、図1に示される上流および下流検知素子116、118に組み込むことができることを理解されたい。上流検知素子A616’およびB616’’は、第1の対になった熱検知素子と呼ぶことができ、下流検知素子C618’およびD618’’は、第2の対になった熱検知素子と呼ぶことができる。第2の対になった熱検知素子618’、618’’は、第1の対になった熱検知素子616’、616’’とほぼ反対方向であることができる。
【0016】
一実施形態において、上流管部分106と下流管部分108との間の距離120は、上流および下流管部分106、108の長さ122の半分とほぼ同じである。しかし、別の実施形態においては、距離120は、可能な限り小さくする必要がある。少なくとも一実施形態においては、距離120は、図6Aおよび6Bに示されるように、第1の対になった検知素子616’、616’’と第2の対になった検知素子618’、618’’との間の距離にほぼ等しくすることができる。
【0017】
図1に示されるように、上流および下流管部分106、108の長さ122は、第1の温度障壁126の端部から第2の温度障壁124の端部まで測定される、上流および下流管部分主要区域を含むことができる。温度障壁126、124は、周囲温度にほぼ等しい温度に保持するようにする材料から構成することができる。したがって、温度障壁126、124は、毛細管102の一部分を周囲温度にほぼ保持するようにすることができる。一実施形態において、上流管部分入口領域128、下流管部分出口領域130、および管屈曲部分110は、周囲温度にほぼ保持することができる。温度障壁124、126は、毛細管区域を周囲温度と異なる温度に保持するようにすることもできる。屈曲部分110の温度が上流管部分入口領域128および下流管部分出口領域130にほぼ等しくなるように確実にすることによって、熱センサ100での熱吸引をほぼ防止する。
【0018】
上流および下流管部分106、108は、ほぼ一直線で、平行で、ほぼ等しい長さ122を有するものとできる。上流および下流部分106、108の1つまたは複数の区域は、ほぼ一直線とはならずに、ほぼ平行で対称的にすることができることも企図される。さらに、上流および下流管部分106、108間の距離120は、反対方向の上流および下流検知素子116、118間の距離120、または対の素子616’、616’’、618’、618’’間の距離120と呼ぶこともできることを理解されたい。一実施形態において、上流および下流管部分長さ122は、約15mmから約30mmまでとすることができ、2つの部分106、108間の距離120は、約3mmから約10mmまでとすることができる。
【0019】
図6Aに示されるように、一実施形態において、上流および下流管部分606、608間の距離620を最小化することによって、長手方向温度勾配680による上流熱検知素子616’、616’’の温度変化は、長手方向温度勾配680による下流熱検知素子618’、618’’の温度変化にほぼ等しくすることが可能である。距離120によって、ほぼ同様の長手方向温度勾配680が、それぞれの熱検知素子616’、616’’、618’、618’’に影響を及ぼし、長手方向温度勾配680の影響を相殺することができる。たとえば、図6Aにおいて、長手方向温度勾配680の方向は、上流管部分606の流体流れ方向とほぼ同様であり、その結果、上流検知素子B616’’の温度が、温度勾配680によって上昇する。長手方向温度勾配680は、下流管部分108に沿って流体流れと反対方向である。したがって、温度勾配680によって、センサC618’の温度が上昇する。長手方向温度勾配680が、管106、108に沿って一定である必要はない。しかし、勾配680は、両管部分106、108で同じである必要があり、それは、管部分106、108間の距離120を最小化することによって達成される。
【0020】
一実施形態において、長手方向温度勾配680によるセンサC618’の温度の上昇は、センサB616’’の温度の上昇にほぼ等しい。センサ616’’、618’に対する長手方向温度勾配680の影響を相殺するために、センサ616’’、618’の一方の温度上昇が、センサ616’’、618’の他方の温度上昇から差し引かれる。一実施形態において、それぞれのセンサ616’’、618’によって出力される電圧信号を処理することによって、温度の相殺が行われる。たとえば、これらの電圧は、限定はしないが、図5に示されるブリッジ回路542などのブリッジ回路542によって相殺することができる。
【0021】
図1に示される例示的な実施形態の変形形態は、同様の方法で横温度勾配690の影響を相殺するようにすることもできる。しかし、上流および下流管部分106、108に対する影響が同様である間は変動する可能性がある長手方向温度勾配680と異なり、直交方向温度勾配690は、上流および下流管部分106、108に沿っては変動しない。たとえば、管部分106、108に沿った、温度勾配690の温度変動は、センサ116、118によって、不正確な流体流量表示値に変換される誤電圧を発生させる可能性がある。
【0022】
再び図6を参照すると、図1の上流熱センサ116は、上流検知素子A616’およびB616’’によって表され、図1の下流熱センサ118は、下流検知素子C618’およびD618’’と表される。ほぼ一定の直交方向温度勾配690は、第1の方法で上流熱検知素子616’、616’’に影響を及ぼし、第2の方法で下流熱検知素子618’、618’’に影響を及ぼす。図6Bに示される温度勾配690は、ほぼ下流管部分608から上流管部分606の方向に進む。したがって、それぞれの上流素子616’、616’’の温度は、ほぼ同じ量だけ上昇する。図6Aに示される長手方向温度勾配680による素子B616’’およびC618’の温度上昇と同様に、素子A616’およびB616’’に対する横温度勾配690の影響を相殺するために、熱センサ100は、素子616’、616’’の一方の温度上昇を素子616’、616’’の他方の温度上昇で差し引くようにする。一実施形態において、それぞれの素子616’、616’’によって出力される電圧上昇は、限定はしないが、図5に示されるブリッジ回路542などのブリッジ回路542によって相殺することができる。
【0023】
図2に示されるように、熱センサ200は、第1の上流抵抗温度計素子216’、上流ヒータ234、および第2の上流抵抗温度計素子216’’を備える上流熱検知素子216を含めることができる。下流検知素子218は、第1の下流抵抗温度計素子218’、下流ヒータ232、および第2の下流抵抗温度計検知素子218’’から構成することができる。上流ヒータ234は、第1および第2の上流抵抗温度計素子216’、216’’間で上流管部分206に結合することができ、下流ヒータ232は、第1および第2の下流抵抗温度計素子218’、218’’間で下流管部分208に結合することができる。別の実施形態において、検知素子216’、216’’、218’、218’’の1つまたは複数は、ヒータ234、232として機能するようにできる。ヒータ/素子は、毛細管202を通って流れている流体を加熱することができる。さらに別の実施形態において、ヒータ232、234は、ヒータではなく、冷却デバイスを備えることができる。そのような実施形態において、熱センサ100は、毛細管202を通って流れている流体を加熱する熱センサ100とほぼ同じ方法で動作し、したがって、検知素子216’、216’’、218’、218’’温度の上昇に比例する様々な検知素子216’、216’’、218’、218’’電圧を出力することができる。しかし、ヒータ232、234の代わりに冷却デバイスを使用するときには、流体を冷却することができ、検知素子216’、216’’、218’、218’’の電圧は、検知素子216’、216’’、218’、218’’の温度の低下にほぼ比例する。
【0024】
さらに図3に示されるように、上流および下流センサ116、118は、熱電対列センサ336から構成することができる。熱電対列センサ336は、第1の出力部338および第2の出力部340から構成することができる。しかし、図1および2に示される熱センサ100と異なり、1つの熱電対列センサ336は、長手方向および直交方向温度勾配680、690による温度の上昇および低下に対して調節される信号を生成するようにすることができる。この調節は、技術的に知られる熱電対測定の原理によって行われる。したがって、センサ出力部338、340における信号は、実際の流体流量を決定するために直接使用することができる。
【0025】
一実施形態において、熱電対列センサ336が上流管部分306に結合する位置の数は、熱電対列センサ336が下流管部分308に結合する位置の数に等しい。さらに、熱電対列センサ336が第1の上流象限380に結合する位置の数は、熱電対列センサ336が第2の下流象限395に結合する位置の数に等しく、熱電対列センサ336が第1の下流象限390に結合する位置の数は、熱電対列センサ336が第2の上流象限385に結合する位置の数に等しい。一実施形態において、熱電対列センサ336は、同じ位置数で4つの全ての象限380、385、390、395に結合することができる。それに加えて、熱電対列センサ336は、「高温」結合位置で第1の上流象限380および第1の下流象限390に結合することができ、熱電対列センサ336は、「低温」結合位置で第2の上流象限385および第2の下流象限395に結合することができる。
【0026】
図5に示されるように、一実施形態がブリッジ542を使用するとき、ブリッジは、1つまたは複数の信号546、548を差動増幅器544に送ることができる。ブリッジ542は、周知のホイートストンブリッジとして機能するようにできる。一実施形態において、差動増幅器544は、1つまたは複数の信号546、548を変換し、その電圧が流体流量にほぼ比例する差動増幅器信号550を出力するようにできる。
【0027】
図4の400で始めているもの(フロー)は、質量流量コントローラ熱センサ100を動作させる方法が示されている。405で、1つの方法は、少なくとも1つの第1の熱検知素子にわたって第1の方向に流れている流体を受け取るステップから構成される。たとえば、図1に示されるように、流体は、管屈曲部分110に向かって主流路112から毛細管102の上流部分106内に流れ、上流管部分106に結合する上流熱検知素子116にわたって通過することができる。同様に、410で、第2の方向の流体は、少なくとも1つの第2の熱検知素子にわたって受け取られる。それは、管屈曲部分110から下流管部分108を通り、下流管部分108に結合する下流検知素子118を通って、主流路112まで流れている流体によって達成される。
【0028】
図4の415および420で、図6Aおよび6Bの長手方向および直交方向温度勾配680、690などの温度勾配は、それぞれ、少なくとも1つの第1および第2の熱検知素子間にわたって外部熱源に誘発される可能性がある。たとえば、該勾配680、690は、図1の上流および下流素子116、118間にわたって動いていくかもしれない。さらに、425で、質量流量信号は、熱センサ100によって出力することができるが、質量流量信号(図1には示さず)は、MFCを通って流れている流体の質量流量にほぼ比例する電圧となる。1つの質量流量信号は、熱検知素子116、118によって出力される電圧を利用することによって得ることができる。熱検知素子116、118の出力電圧は、素子116、118の温度にほぼ比例させることができる。一実施形態において、第1の対になった検知素子616’、616’’および第2の対になった検知素子618’、618’’を備えるとき、それぞれの素子616’、616’’、618’、618’’の電圧は、それぞれの素子の温度にほぼ比例する。熱センサ100によって出力される1つの質量流量信号は、長手方向および直交方向温度勾配680、690に影響を受けない。本方法は、430で終了する。
【0029】
1つの方法において、質量流量出力信号は、長手方向温度勾配680に影響を受けないが、それは、該勾配680が検知素子116、118の一方の少なくとも一部分に与える温度変化が、勾配680が検知素子116、118の他方の少なくとも一部分に与える温度変化によって相殺されるからである。1つの方法において、それぞれの検知素子116、118の少なくとも一部分の温度変化は、距離120が上流または下流管部分106、108の長さ122の半分とほぼ同じため、ほぼ等しくすることができる。
【0030】
別の方法において、第1および第2の熱検知素子116、118は、図6Bに示されるように、対になった上流および下流熱検知素子616’、616’’、618’、および618’’を含む。直交方向温度勾配690は、第1の上流熱検知素子616’と第2の下流熱検知素子618’’との間に温度差振幅を誘発する。1つの方法において、温度差振幅は、第2の下流熱検知素子618’’に対する第1の上流熱検知素子616’の温度上昇から成る。同様に、直交方向温度勾配690は、第2の上流熱検知素子616’’と第1の下流熱検知素子618’との間に温度差振幅を誘発する。この温度差振幅は、第1の下流熱検知素子618’に対する第2の上流熱検知素子616’’の温度上昇から成る。
【0031】
1つの方法において、熱センサ100は、第1の上流熱素子616’の温度変化を第2の上流熱検知素子616’’の温度変化で相殺するようにする。そうするために、第1の上流熱素子616’の温度変化は、第2の下流熱素子618’’の温度変化から差し引かれ、第1の直交方向勾配温度変化を得ることができる。さらに、第1の下流検知素子618’の温度変化は、第2の上流熱検知素子616’’の温度変化から差し引かれ、第2の直交方向勾配温度変化をもたらすことができる。したがって、第2の直交方向温度変化は、第1の直交方向勾配温度変化と比べて符号は異なるが、ほぼ等しい絶対値を有する。その結果、2つの直交方向温度変化を組み合わせることによって、2つの直交方向勾配温度変化の値が互いに相殺するので、基本的に無視できる温度変化をもたらす。
【0032】
上述した温度変化の組合せは、それぞれのセンサ616’、616’’、618’、618’’の出力信号を組み合わせることによって行うことができる。そのような信号の組合せは、回路ブリッジおよび信号変換を行うことによって行うことができる。たとえば、図5に示されるブリッジ542および差動増幅器544を使用することができる。そうするために、第1および第2の信号546、548は、熱検知素子516’、516’’、518’、518’’によって生成される電圧からブリッジ回路542によって生成することができる。信号546、548は、差動増幅器544によって受け取ることができ、次に、増幅器544は、MFCを通る流体の流量にほぼ比例する電圧を有する差動増幅器信号550を生成することができる。
【0033】
図7は、本発明のさらに別の実施形態を示す。図7は、主流路712、熱センサ700、および差動増幅器744を含む質量流量コントローラ752の図である。MFC752は、検知素子716’、716’’、718’、718’’を備えるブリッジ回路742および制御モジュール770を含めることもできる。制御モジュールは、制御弁信号755を生成するようにすることができる。一実施形態において、熱センサ700は、u字形断面を有する毛細管702から構成される。毛細管702は、主流路712に結合する上流管部分706、および主流路712に結合するほぼ平行な下流管部分708から構成させることができる。下流管部分708は、上流管部分706から第1の距離720に位置するが、距離720は、熱センサ700内の毛細管702の上流および下流部分706、708間の距離である。上流管部分入口領域128と下流管部分出口領域130との間の距離は、距離720とは大幅に異なる可能性がある。一実施形態において、第1の距離720により、差動増幅器信号750は、図6Bに示される長手方向温度勾配680にほとんど影響を受けないようにすることもできる。
【0034】
それに加えて、MFC752は、毛細管702に結合する少なくとも1つの検知素子から構成される。少なくとも1つの検知素子は、上流検知素子対716’、716’’、および上流検知素子対716’、716’’とほぼ反対方向の下流検知素子対718’、718’’から構成することができる。それぞれの素子は、ブリッジ回路742によって受け取られるようにする信号を生成することができ、ブリッジ回路は、差動増幅器744によって受け取られるようにする信号の対746、748を出力するようにすることができる。別の実施形態において、MFC752は、図3に示される熱電対列センサ336、または、上流および下流管部分706、708にそれぞれ結合する、図2に示されるほぼ反対方向のヒータの対232、234から構成することができる。
【0035】
MFC752の一実施形態は、差動増幅器信号750を出力するようにする差動増幅器744を含めることもできる。一実施形態において、差動増幅器信号750は、質量流量コントローラ752を通って流れている流体の流量にほぼ比例する電圧となる。さらに、差動増幅器信号750は、図6Aおよび6Bに示されるように、直交方向および長手方向温度勾配680、690にほとんど影響を受けない。
【0036】
MFC752の多くの変形形態において、図6Bに示される直交方向温度勾配690によってもたらされる、熱検知素子116、118の少なくとも一方の第1の温度変化は、熱検知素子116、118の他方の第2の温度変化によって相殺できる。熱検知素子116、118は、図6Bに示される素子A、B、C、およびD616’、616’’、618’、618’’から構成できることを理解されたい。さらに、直交方向温度勾配690によってもたらされる温度変化を相殺するMFC752の能力によれば、差動増幅器信号750は、直交方向温度勾配690に影響を受けない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流管部分、管屈曲部分、および下流管部分を備える毛細管を含む質量流量コントローラ熱センサであって、
前記上流管部分は、上流部分長さを有し、
前記下流管部分は、下流部分長さを有し、前記下流部分長さは、前記上流部分長さにほぼ等しく、前記下流管部分は、前記上流部分にほぼ平行であり、
前記上流管部分と前記下流管部分との間の距離は、前記上流部分および下流部分長さの半分とほぼ同じであり、
第1の対になった熱検知素子は、前記上流管部分に結合し、
第2の対になった検知素子は、前記下流管部分に結合し、前記第1の対になった検知素子とほぼ反対方向である、質量流量コントローラ熱センサ。
【請求項2】
前記上流管部分は、(i)前記管屈曲部分の第1の端部に結合し、(ii)第1の方向のガス流を受け取るようにし、
前記下流管部分は、(i)前記管屈曲部分の第2の端部に結合し、(ii)第2の方向のガス流を受け取るようにし、前記第2の方向は、前記第1の方向とほぼ反対になり、
前記毛細管は、全体的にU字形を有する、請求項1に記載の質量流量コントローラ熱センサ。
【請求項3】
前記上流管部分は、入口領域および上流管部分主要領域をさらに含み、
前記下流管部分は、出口領域および下流管部分主要領域をさらに含み、
前記管屈曲部分、前記入口領域、および前記出口領域の温度は、第1の温度に等しく、前記第1の温度は、ほぼ一定であり、
前記上流および下流管部分主要領域の温度は、第2の温度を有し、前記第2の温度は、前記第1の温度とは異なる、請求項1に記載の質量流量コントローラ熱センサ。
【請求項4】
前記第1の温度は、周囲温度にほぼ等しい、請求項3に記載の質量流量コントローラ熱センサ。
【請求項5】
第1の対になった検知素子の間で前記上流管部分に結合する第1のヒータと、
前記下流管部分に結合し、前記第1のヒータとほぼ反対方向である第2のヒータとをさらに含む、請求項1に記載の質量流量コントローラ熱センサ。
【請求項6】
差動増幅器をさらに含み、前記差動増幅器は、(i)前記第1の対になった検知素子および前記第2の対になった検知素子から少なくとも1つの信号を受け取り、(ii)前記毛細管を通って流れている流体の流量にほぼ比例する電圧となる差動増幅器信号を出力する、請求項1に記載の質量流量コントローラ熱センサ。
【請求項7】
前記差動増幅器によって出力される前記質量流量信号は、前記検知素子にわたって直交方向および長手方向温度勾配にほとんど影響を受けない、請求項6に記載の質量流量コントローラ熱センサ。
【請求項8】
第1の方向で、少なくとも1つの第1の熱検知素子にわたって、流体流を受け取る機能と、
第2の方向で、少なくとも1つの第2の熱検知素子にわたって、流体流を受け取る機能と、
前記少なくとも1つの第1および第2の熱検知素子にわたって、長手方向温度勾配を受ける機能と、
前記少なくとも1つの第1および第2の熱検知素子にわたって、直交方向温度勾配を受ける機能と、
前記長手方向および直交方向温度勾配にほとんど影響を受けない質量流量信号を出力する機能とを含む、質量流量コントローラを動作させる方法。
【請求項9】
前記長手方向温度勾配は、前記少なくとも1つの第1の熱検知素子にわたって温度変化を誘発し、
前記長手方向温度勾配は、前記少なくとも1つの第2の熱検知素子にわたって温度変化を誘発し、前記少なくとも1つの第2の熱検知素子にわたる前記温度変化は、前記少なくとも1つの第1の熱検知素子にわたる前記温度変化にほぼ等しく、
前記少なくとも1つの第1の熱検知素子の温度の上昇および低下の一方を、前記少なくとも1つの第2の熱検知素子の温度の上昇および低下の他方で相殺する機能であって、前記温度の上昇および低下は、前記長手方向温度勾配によってもたらされる、機能をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1および第2の熱検知素子はそれぞれ、対になった熱検知素子を含み、
前記直交方向温度勾配は、第1の上流熱検知素子と第2の下流熱検知素子との間に温度差振幅を誘発し、
前記直交方向温度勾配は、第2の上流熱検知素子と第1の下流熱検知素子との間に温度差振幅を誘発する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1および第2の上流熱検知素子と前記第1および第2の下流熱検知素子との間の前記温度差振幅を相殺する機能をさらに含み、前記相殺する機能は、(i)正および負の第1の直交方向勾配温度変化の一方を得るために、前記第1の上流熱検知素子の温度変化を前記第2の下流熱検知素子の温度変化で加算および減算する機能の一方と、(ii)正および負の第2の直交方向勾配温度変化の他方をもたらすために、前記第1の下流熱検知素子の温度変化を前記第2の上流熱検知素子の温度変化で加算および減算する機能の他方と、(iii)前記第1の直交方向勾配温度変化と前記第2の直交方向勾配温度変化とを組み合わせる機能とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1の熱検知素子によって生成される第1の信号を生成する機能と、
前記少なくとも1つの第2の熱検知素子によって生成される第2の信号を生成する機能と、
前記第1および第2の信号を前記差動増幅器によって受け取る機能とをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
主流路と、
熱センサであって、
u字形断面を有し、前記主流路に結合する上流管部分および前記主流路に結合するほぼ平行な下流管部分を含む毛細管であって、前記下流管部分は、前記上流管部分から第1の距離に位置する毛細管、および
前記毛細管に結合し、少なくとも1つの信号を出力するようにする少なくとも1つの検知素子であって、前記少なくとも1つの信号は、当該少なくとも1つの検知素子の温度にほぼ比例する検知素子電圧を有する、少なくとも1つの検知素子を含む熱センサと、
(i)前記少なくとも1つの信号を受け取り、(ii)前記質量流量コントローラを通って流れている流体の流量にほぼ比例する電圧となる差動増幅器信号を出力するようにする差動増幅器であって、前記差動増幅器信号は、直交方向および長手方向温度勾配に影響を受けない、差動増幅器とを含む質量流量コントローラ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの検知素子は、熱電対列センサを含む、請求項13に記載の質量流量コントローラ。
【請求項15】
前記第1の距離によって、さらに、前記差動増幅器信号が、前記長手方向温度勾配に影響を受けないようにする、請求項13に記載の質量流量コントローラ。
【請求項16】
前記少なくとも1つの検知素子は、2つの反対方向の対になった検知素子を含み、第1の検知素子対は、前記上流管部分に結合し、第2の検知素子対は、反対に前記下流管部分に結合し、検知素子の前記反対方向の対は、前記差動増幅器信号が前記直交方向温度勾配に影響を受けないように構成される、請求項13に記載の質量流量コントローラ。
【請求項17】
対になったヒータをさらに含み、第1のヒータは、前記第1の検知素子対の間で前記上流管部分に結合し、第2のヒータは、反対に前記第2の検知素子対の間で前記下流管部分に結合する、請求項16に記載の質量流量コントローラ。
【請求項18】
前記少なくとも1つの検知素子は、少なくとも2つの検知素子から構成され、
前記少なくとも2つの検知素子の一方により測定される前記直交方向温度勾配によってもたらされる第1の温度変化が、前記少なくとも2つの検知素子の他方により測定される第2の温度変化によって相殺される、請求項13に記載の質量流量コントローラ。
【請求項19】
前記少なくとも1つの検知素子は、第1の対になった検知素子および第2の対になった検知素子を含み、前記第1の対になった検知素子は、前記上流管部分に結合し、前記第2の対になった検知素子は、反対に前記下流管部分に結合し、
前記第2の対になった検知素子は、前記第1の対になった検知素子によって表示されるあらゆる温度変化を相殺するように構成され、前記温度変化は、長手方向温度勾配によるものであり、
第1の下流検知素子は、第2の上流検知素子によって表示されるあらゆる温度変化を相殺するように構成され、前記温度変化は、直交方向温度勾配によるものであり、
第2の下流検知素子は、第1の上流検知素子によって表示されるあらゆる温度変化を相殺するように構成され、前記温度変化は、直交方向温度勾配によるものである、請求項13に記載の質量流量コントローラ。
【請求項20】
前記質量流量コントローラの少なくとも一部分の温度を周囲温度にほぼ等しく設定するようにするデバイスをさらに含む、請求項13に記載の質量流量コントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−505416(P2012−505416A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531248(P2011−531248)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/060415
【国際公開番号】WO2010/045172
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】