説明

赤外線カットフィルタ

【課題】 波長400〜550nmの透過帯域の透過率が90%以上で、透過帯域の長波長側から不透過帯域まで透過率が緩やかに減衰する、透過率特性を変化させてもほとんど厚さが変わらず、光軸方向のスペースを最小限にできる赤外線カットフィルタを提供する。
【解決手段】 波長400nm以上550nm以下の透過帯域と波長750nm以上1050nm以下の不透過帯域を有し、透過帯域と不透過帯域に挟まれた波長領域の透過率が透過帯域側から不透過帯域側にかけて漸減する透過率特性を有するように多層膜4の光学膜厚を設計し、この光学膜厚になるように透明基板1上に高屈折率材料2からなる透明薄膜と低屈折率材料3からなる透明薄膜とを交互に複数積層する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、光学的多層膜を用いた赤外線カットフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】動画撮影に用いられるビデオムービーカメラや静止画撮影に用いられる電子スチルカメラなどのカラーCCDイメージセンサーを含む撮像装置では、カラーCCDイメージセンサーの前面に赤外線カットフィルタが配置されている。これは、700nmより長い波長の光を感じない人間の目の感度と異なり、カラーCCDイメージセンサーの感度が赤外線領域である波長1100nm付近まであるため、黒色を撮影した場合にはその黒色が赤色を帯びるといったように人が見る世界と異なって画像化されてしまうのを防止するためである。このような固体撮像素子装置の光学系に用いられる赤外線カットフィルタには、厚さと成分により透過率特性が変化するガラスタイプと、層数と光学膜厚により透過率特性が変化するコーティングタイプとがある。
【0003】ガラスタイプ赤外線カットフィルタは、可視光線を透過し赤外線を吸収するガラスからなるフィルタであり、赤外線を吸収する成分はガラス中に溶け込んだ金属イオンである。この金属イオンとしては、例えば2価の鉄イオンがある。この場合、鉄はガラス中で2価と3価の状態で存在している。3価の鉄イオンは、紫外線領域から可視光領域に吸収を持ち、黄色の着色を呈する。このため、鉄を用いる場合はベースとなるガラスに還元作用の大きいリン酸塩ガラスを使用したり、鉄イオンの平衡を保つためガラスに還元剤を添加したりしている。また、ほかにも種々の金属と化合物の粒子(例えば、P25,AlF3,Al23,BaF2,BaO,NaF,CaO,SiO2等)を溶解して作製される。一般に、ガラスタイプ赤外線カットフィルタの透過率は、図7に示すように透過帯域の短波長側の境界付近で急激に減衰し、長波長側では緩やかに減衰する。また、透過帯域の透過率は最大でも90%程度である。
【0004】コーティングタイプ赤外線カットフィルタは、光学的多層膜により可視光を透過し赤外線を反射させるフィルタである。この赤外線カットフィルタは、水晶、白板ガラス等の透明基板上に二酸化チタン等の高屈折率材料からなる透明薄膜と二酸化ケイ素等の低屈折率材料からなる透明薄膜とを交互に複数積層したものであり、透明薄膜による光の干渉を利用して所望する波長域の光を反射もしくは透過させる。このため、各波長における光透過率は、交互に積層する各透明薄膜の光学膜厚(薄膜の屈折率と薄膜の膜厚の積)で決まり、所望する波長域の光が反射もしくは透過するように、積層する透明薄膜の屈折率、膜厚及び積層数が設計される。なお、一般的に光学膜厚は、所望する波長の反射率もしくは透過率が最大になるように設計波長の1/4に設定される。従来のコーティングタイプ赤外線カットフィルタは、図8に示すように透過帯域の短波長側及び長波長側の境界付近で透過率が急激に減衰する透過率特性を有する。また、透過帯域の透過率を90%以上にすることが可能である。
【0005】ところで、ビデオムービーカメラでは、従来よりガラスタイプ赤外線カットフィルタが使用されてきた。これは、このタイプの透過率特性が人間の目の感度特性に近いため、光電変換後の赤・緑・青の各信号のカラーバランス調整が簡素化でき、人が見る世界に近いソフトな色再現性が得られるためである。一方、デジタルスチルカメラでは、コーティングタイプ赤外線カットフィルタが主として使用されてきた。これは、水晶等の複屈折材料を用いる光学ローパスフィルタに積層して一体化でき、モアレ縞の発生防止と赤外線カットを同時に行えるコーティングタイプの方が、それ自体厚みがあり、別に光学ローパスフィルタが必要なガラスタイプに比べて薄くできるため、スペースに制約があるデジタルスチルカメラに適しているためである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ガラスタイプ赤外線カットフィルタは、透過率特性が人間の目の感度特性に近く、多くの固体撮像素子装置に使用されているが、厚みがあり光軸方向にスペースを必要とする、透過させたい400〜550nm付近の透過率が90%以下と低い、透過率特性を変化させる場合、透過率50%の波長を10nmシフトさせるために厚さを0.4mm変化させる必要があるので撮像素子光学系の複雑な位置調整が必要になることがある、という課題がある。
【0007】また、従来のコーティングタイプ赤外線カットフィルタは、透過率の立ち下がりが急峻で、人間の目の感度特性と異なるため、光電変換後の赤・緑・青の各信号のカラーバランス調整が複雑になると共に、人が見る世界よりも刺々しく感じられる画像になるという課題がある。この発明の目的は、波長400〜550nmの透過帯域の透過率が90%以上で、透過帯域の長波長側から不透過帯域まで透過率が緩やかに減衰する、透過率特性を変化させてもほとんど厚さが変わらず、光軸方向のスペースを最小限にできる赤外線カットフィルタを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本願発明者はコーティングタイプ赤外線カットフィルタについて研究した。その結果、コーティングタイプ赤外線カットフィルタでは多層膜の層数が増えるほど透過率の立ち下がりが急峻になるため、750〜1050nmの赤外線領域を遮光するのに必要な層数では、透過率を緩やかに減衰させることはできないと思われていた従来の常識を覆し、光学薄膜の干渉理論を用いたマトリクス法によって、750〜1050nmの赤外線領域を遮光し、かつ透過領域から不透過領域まで透過率を緩やかに減衰させる光学膜厚が得られることを見いだした。
【0009】この発明に係る赤外線カットフィルタは、透明基板と、この透明基板上に形成された、高屈折率材料からなる透明薄膜と低屈折率材料からなる透明薄膜とが交互に複数積層された多層膜とからなり、波長400nm以上550nm以下の透過帯域と波長750nm以上1050nm以下の不透過帯域を有し、透過帯域と不透過帯域に挟まれた波長領域の透過率が透過帯域側から不透過帯域側にかけて漸減する透過率特性を有するようにしたことによって特徴づけられる。この場合、透過率特性の一構成例は、90%以上の透過率を有する透過帯域を備えている。
【0010】また、前述した多層膜の一構成例は、透明基板側から、高屈折率材料からなる透明薄膜、低屈折率材料からなる透明薄膜の順で交互に配置され、最終層が低屈折率材料からなる透明薄膜であることによって特徴づけられる。この場合、設計波長をλとするとき、高屈折率材料からなる透明薄膜の層で光学膜厚がλ/4より薄い層が透明基板側に配置され、λ/4以上の厚さの層がλ/4より薄い層と最終層の間に配置され、低屈折率材料からなる透明薄膜の層で光学膜厚がλ/4より薄い層が透明基板側と最終層に配置され、λ/4以上の厚さの層がλ/4より薄い層と最終層の間に配置された赤外線カットフィルタが提供される。また、前述した赤外線カットフィルタの一構成例は、透明基板と多層膜の間に光学膜厚が0.3×λ/4以上の透明薄膜が設けられている。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に図を用いてこの発明の実施の形態を説明する。はじめに、この発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、この発明の第1の実施の形態である赤外線カットフィルタの構成を示す模式図、図2はこの赤外線カットフィルタの光学的多層膜の組成と光学膜厚を示す表である。
【0012】この赤外線カットフィルタは、図1に示すように、透明基板1上に高屈折率材料2からなる透明薄膜と低屈折率材料3からなる透明薄膜とを交互に複数積層したものであり、透明基板1側から数えて奇数層目が高屈折率材料2で、偶数層目が低屈折率材料3で構成されている。ここで、透明基板1は、外形寸法が横8.8mm、縦8.2mm、厚さ1.6mmの水晶である。また、透明薄膜は、高屈折率材料2に二酸化チタン(TiO2)、低屈折率材料3に二酸化ケイ素(SiO2)を用いている。これらの透明薄膜は、図2に示す光学膜厚となるように、透明基板1側から二酸化チタン薄膜2と二酸化ケイ素薄膜3が交互に38層まで積層されて多層膜4を形成している。
【0013】ここで、各層の光学膜厚は、奇数層である二酸化チタン薄膜2の層が水晶基板から数えて1層目から9層目までがλ/4より薄い膜で形成され、11層目から37層目までがλ/4以上の厚さで形成されている。また、偶数層である二酸化ケイ素薄膜3の層では同じく2層目から6層目までと最終層である38層とがλ/4より薄い膜厚で形成され、8層目から36層目までがλ/4以上の厚さで形成されている。なお、図2の光学膜厚欄に記載された値は、設計波長λを755nmとしたときのλ/4の値を1とした場合の比で表したものであり、この値とλ/4との積が光学膜厚を示す。
【0014】次に、図2に示す光学膜厚を求める方法について図3を用いて説明する。図3は、基板上に積層された多層膜を示す説明図である。ここでは、簡単のため波長λの光5がいくつかの異なる材料で構成された多層光学薄膜系に垂直入射し、各層の境界で多重反射が生じるものとする。この場合、反射光束は使用する光源の種類(特に波長)と各層の光学膜厚に依存して位相がそろい、可干渉性を示す場合が生じ、互いに干渉し合うようになる。これが薄膜設計の基本原理である。波長λの光が屈折率nsの透明基板上に蒸着された屈折率n、物理膜厚dの無吸収均質膜に垂直入射をしたとき、その光学的特性は式(1)のマトリクスで表される。
【0015】
【数1】


【0016】ただし、
【0017】
【数2】


【0018】これを特性マトリクスという。このとき、反射率Rは式(3)で表される。
【0019】
【数3】


【0020】図3のような多層膜の場合、各層の特性マトリクスをMk,Mk-1,…,M2,M1とすると、多層膜の光学的特性は、各マトリクスの積
【0021】
【数4】


【0022】で表される。式(3)において、A=a、B=b、C=c、D=dとすると、このk層膜の反射率が簡単に求まる。なお、薄膜の屈折率nは、実際に使用する真空蒸着装置を用いて、屈折率の測定実験を行い、その値をSellmaier近似することにより屈折率分散式を得て設計波長に対する値を求めた。このようにして得た、二酸化チタンの屈折率を式(5)で、二酸化ケイ素の屈折率を式(6)で示す。
【0023】
【数5】


【0024】
【数6】


【0025】この発明の第1の実施の形態に係る赤外線カットフィルタでは、これらの式を用いて、設計波長λを755nm、基板を水晶、式(2)のndを薄膜の光学膜厚とし、400〜550nmの波長領域で90%以上の透過率を有し、550〜650nmの透過率が550nmの90%以上から650nmの20%以下まで直線的に低下し、750〜1050nmの透過率が1%以下となるような光学膜厚を設計した。なお、上記透過率特性が得られる光学膜厚は、図2に記載した光学膜厚に限られるものでなく、製造のしやすさや製造コストを考慮して変更することが可能である。
【0026】次に、この赤外線カットフィルタの製造方法について説明する。この赤外線カットフィルタは、水晶基板に二酸化チタンと二酸化ケイ素を交互に真空蒸着して製造する。その製造方法は次の通りである。まず、大口径の水晶基板を真空蒸着装置の真空容器内に設けられたドーム状の取り付け治具に所定数を取り付けると共に、ペレット状又は粒状の二酸化チタンと二酸化ケイ素をこの真空容器内に設けられた2つの電子ビーム蒸発源に別々に入れ、真空容器を排気する。
【0027】真空容器内の圧力が1×10-3Pa以下になったら、電子ビーム蒸発源に電子ビームを照射して二酸化チタンと二酸化ケイ素をそれぞれ加熱して蒸発させる。2つの電子ビーム蒸発源の直上には、それぞれ開閉可能なシャッターが設けられており、二酸化チタンの蒸着時は二酸化チタン側のシャッターを開いて二酸化ケイ素側のシャッターを閉じ、二酸化ケイ素の蒸着時は二酸化チタン側のシャッターを閉じて二酸化ケイ素側のシャッターを開いて、水晶基板上に二酸化チタンと二酸化ケイ素の透明薄膜を交互に積層する。なお、酸素雰囲気で酸化物の蒸着を行うと蒸着が促進されるため、二酸化チタンの成膜時には、真空容器内に酸素ガスを供給しながら蒸着を行う。また、成膜中は、取り付け治具を自転させると共に、常に真空容器を排気し続ける。
【0028】各透明薄膜の膜厚は、取り付け治具の頭頂部に設けられた開口部の直上に配置された膜厚モニターで蒸着の間測定されており、所定の膜厚でシャッターを閉じるようにして膜厚を制御している。38層まで蒸着されたら、電子ビーム蒸発源の動作を停止し、真空容器の排気をやめて大気圧に戻す。なお、必要により、蒸着終了後に水晶基板を所定時間加熱して、蒸着された薄膜の結晶化を促進し、薄膜の膜特性を向上させるアニーリング処理を行う。蒸着が終わった水晶基板は、所定の外形寸法に切断されて個々の赤外線カットフィルタとなる。なお、この赤外線カットフィルタの製造方法は、上記製造方法に限られるものではない。
【0029】次に、この発明の第1の実施の形態に係る赤外線カットフィルタの透過率特性を図4に示す。同図に示すように、400〜550nmで透過率が90%以上で、550〜650nmで透過率が550nmの93%から650nmの17%までほぼ直線的に低下し、650〜750nmで透過率が0%に漸近し、750〜1050nmで透過率がほぼ0%となるような透過率特性が得られた。
【0030】次に、この発明の第2の実施の形態について説明する。図5は、この発明の赤外線カットフィルタの第2の実施の形態を示しており、同図において図1と同一符号は同一部分を示す。この赤外線カットフィルタが図1に示すものと異なる点は、透明基板1と多層膜4の間に透明薄膜6を1層配置したことである。この透明薄膜6には二酸化ケイ素あるいは酸化アルミニウム(Al23)が用いられるが、この透明薄膜6を設けても、透明薄膜6を加えない場合とほとんど変わらない透過率曲線の形状及び透過率が得られる。この透明薄膜6の光学膜厚は、透明基板1への付着強度を得るために少なくとも0.3×λ/4以上必要であるが、厚さの違いによる透過率特性の変化はほとんどないため、厚さの上限は光学特性ではなく、製造のしやすさや製造コストで決められる。その製造方法は、第1の実施の形態と同様であり、多層膜4を蒸着する前に所定の光学膜厚の二酸化ケイ素あるいは酸化アルミニウムを蒸着する工程を加えるだけでよく、新たな製造設備を必要としない。
【0031】この透明薄膜6を加えた39層の赤外線カットフィルタと、38層の赤外線カットフィルタとの透過率特性の違いを図6に示す。同図において、7が透明薄膜6に酸化アルミニウムを用いたもの、8が透明薄膜6を加えない38層のもの、9が透明薄膜6に二酸化ケイ素を用いたものである。なお、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの光学膜厚はそれぞれ0.5×λ/4である。図6から、透明基板1と多層膜2の間に透明薄膜6を1層配置した場合であっても、必要な透過率特性が得られることが分かる。この第2の実施の形態に係る赤外線カットフィルタは、透明基板1と多層膜2の間に二酸化ケイ素あるいは酸化アルミニウムを配置することにより、剥離剤を用いて膜全体を容易に剥離することができる。これにより蒸着作業が失敗したときに膜全体を剥離して再度膜付けできるようになる。このように、この第2の実施の形態の膜構成は、より量産に適しているという特徴がある。
【0032】なお、この発明の実施の形態では、光学ローパスフィルタと一体化させるため、透明基板に水晶を用いたが、二酸化チタンより屈折率の小さいガラス基板を用いて赤外線カットフィルタ単体として作製してもよいことは言うまでもない。また、所望の透過帯域に吸収がない材料であれば、高屈折率材料として二酸化チタン以外の材料、例えば酸化ジルコニウム(ZrO2)や硫化亜鉛(ZnS)を用いてもよく、低屈折率材料として二酸化ケイ素以外の材料、例えばフッ化マグネシウム(MgF2)を用いてもよい。なお、平板基板に蒸着する場合の高屈折率材料と低屈折率材料の組み合わせは、薄膜に生じる応力が共に小さいか、応力の値が近く方向が逆向きであることが望ましい。
【0033】また、赤外線カットフィルタに用いる透明基板の外形寸法は、使用される機器に合わせて決められるものであり、この実施の形態で示した外形寸法に限られるものではない。また、多層膜の層数として、38層及び39層の構成を示したが、この発明によれば、34層以上であれば薄膜材料又は蒸着条件を変えることにより、透明薄膜の屈折率を変化させて同様の透過率特性を得られると考えられる。なお、層数の上限は、製造しやすさや製造コストなど、製造上の理由で決まるが、実用上は45層以下が望ましい。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、従来のコーティングタイプ赤外線カットフィルタにはなかったガラスタイプ赤外線カットフィルタと同様の立ち下がりの透過率特性を有し、かつ従来のガラスタイプ赤外線カットフィルタでは得られない薄さと透過波長領域での透過率向上とほとんど厚さによらない透過率特性の変更能力を有する赤外線カットフィルタが得られる。また、光学ローパスフィルタの表面に赤外線カットフィルタを形成できるので、光学ローパスフィルタを用いる機器では部品数を削減でき、省スペース化とコスト低減が可能になる。
【0035】また、本発明による赤外線カットフィルタは、従来のコーティングタイプ赤外線カットフィルタと同じ製造装置で製造できるので、初期投資コストが不要で安価にできるという効果が得られる。これにより、ビデオムービーカメラでは、従来の色再現性を保ちつつ、感度向上、省スペース化及びコスト低減が可能となる。また、電子スチルカメラでは、従来の省スペースと低コストを保ちながら、より見た目に近い色再現性が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る赤外線カットフィルタの一構成例を示す模式図である。
【図2】 図1における薄膜材料とその光学膜厚を示す表である。
【図3】 基板上に積層された多層膜を示す説明図である。
【図4】 図1の赤外線カットフィルタの透過率特性を示すグラフである。
【図5】 本発明の第2の実施の形態に係る赤外線カットフィルタの一構成例を示す模式図である。
【図6】 図1と図5の赤外線カットフィルタの透過率特性を比較したグラフである。
【図7】 従来のガラスタイプ赤外線カットフィルタの透過率特性を示すグラフである。
【図8】 従来のコーティングタイプ赤外線カットフィルタの透過率特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1…透明基板(水晶基板)、2…高屈折率材料(二酸化チタン薄膜)、3…低屈折率材料(二酸化ケイ素薄膜)、4…多層膜、5…波長λの光、6…透明薄膜、7…Al23+38層多層膜、8…38層多層膜、9…SiO2+38層多層膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明基板と、この透明基板上に形成された、高屈折率材料からなる透明薄膜と低屈折率材料からなる透明薄膜とが交互に複数積層された多層膜とからなる赤外線カットフィルタであり、波長400nm以上550nm以下の透過帯域と波長750nm以上1050nm以下の不透過帯域を有し、前記透過帯域と前記不透過帯域に挟まれた波長領域の透過率が前記透過帯域側から前記不透過帯域側にかけて漸減する透過率特性を有することを特徴とする赤外線カットフィルタ。
【請求項2】 前記透過帯域の透過率が90%以上であることを特徴とする請求項1記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項3】 前記多層膜は、前記透明基板側から前記高屈折率材料からなる透明薄膜、前記低屈折率材料からなる透明薄膜の順で交互に配置され、最終層が前記低屈折率材料からなる透明薄膜であることを特徴とする請求項1又は2記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項4】 設計波長をλとするとき、前記高屈折率材料からなる透明薄膜の層は、光学膜厚がλ/4より薄い層が前記透明基板側に配置され、λ/4以上の厚さの層が前記λ/4より薄い層と前記最終層の間に配置され、前記低屈折率材料からなる透明薄膜の層は、光学膜厚がλ/4より薄い層が前記透明基板側と前記最終層に配置され、λ/4以上の厚さの層が前記λ/4より薄い層と前記最終層の間に配置されていることを特徴とする請求項3記載の赤外線カットフィルタ。
【請求項5】 前記透明基板と前記多層膜の間に、光学膜厚が0.3×λ/4以上の透明薄膜が設けられていることを特徴とする請求項4記載の赤外線カットフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2000−314808(P2000−314808A)
【公開日】平成12年11月14日(2000.11.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−122058
【出願日】平成11年4月28日(1999.4.28)
【出願人】(000104722)キンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】